JP3711652B2 - 偏光回折素子及びそれを用いた光ヘッド装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、DVD(デジタルビデオディスク)、LD(レーザディスク)、CD(コンパクトディスク)、CD−ROM等の光ディスク、相変化光ディスク及び光磁気ディスク等の光学ディスクに光学的情報を書き込んだり、光学的情報を読み取るための光ヘッド装置に使用されるに適した偏光回折素子及びそれを用いた光ヘッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光ディスク、光磁気ディスク等の光学ディスクに光学的情報を書き込んだり、光学的情報を読み取る光ヘッド装置としては、ディスクの記録面から反射された信号光を検出部へ導光(ビームスプリット)する光学部品としてプリズム式ビームスプリッタを用いたものと、回折格子又はホログラム素子を用いたものとが知られていた。
【0003】
従来、光ヘッド装置用の回折格子又はホログラム素子は、ガラスやプラスチック基板上に、矩形の断面を有する矩形格子(レリーフ型)をドライエッチング法又は射出成形法によって形成し、これによって光を回折しビームスプリット機能を付与していた。
【0004】
また、光の利用効率が10%程度の等方性回折格子よりも光の利用効率を上げようとした場合、偏光を利用することが考えられる。偏光を利用しようとすると、プリズム式ビームスプリッタにλ/4板を組み合わせて、往路(光源から光学ディスクへ向かう方向)及び復路(光学ディスクから検出部へ向かう方向)の効率を上げて往復効率を上げる方法があった。
【0005】
しかし、プリズム式偏光ビームスプリッタは高価であり、他の方式が模索されていた。一つの方式としてLiNbO3 等の複屈折結晶の平板を用い、表面に異方性回折格子を形成し偏向選択性をもたす方法が知られている。しかし、複屈折結晶自体が高価であり、民生分野への適用は困難である。
【0006】
一方、等方性回折格子は、前述のように光の利用効率が往路で50%程度、復路で20%程度であるため、往復での光の利用効率は10%程度が限界である。
【0007】
上記の問題点を解決し、高光利用効率の光ヘッドを実現するために、基板上に、格子状凸部を形成し、その凹部に光学異方性材料を充填する偏光回折素子、又は、そのような偏光回折素子を用いた光ヘッドが提案されている。
【0008】
この偏光回折素子の例を図3に示す。図3において、11は第1の基板、12は凹凸、13は第2の基板、15はシール材、16は光学異方性材料である液晶を示す。
【0009】
この偏光回折素子は、往路では光源からの光は回折せずに直進して光学ディスクに到達し、復路では偏光方向が90°回転した光のため光は回折して光検知器に到達するようにされる。
【0010】
しかし、実際のシステム上では、例えば、CD再生とDVD再生を単一の光ヘッドで行う必要があるが、DVDではトラッキング方式が通常1ビーム方式であり、CDではトラッキング方式が通常3ビーム方式である。
【0011】
そのためCDとDVDを両方再生するために、3ビーム発生用の単純回折格子を上記の光学異方性回折格子とは別に何らかの方法で設置する必要がある。このため、従来以下のような方式が提案されている。
【0012】
1つの例としては、図4に示すように光学異方性回折格子とは別に3ビーム発生用の単純回折格子を光源と光学異方性回折格子との間に設置する方式がある。図4において、21は光源、22は3ビーム発生用の単純回折格子、23は光学異方性回折格子、24はλ/4板、25は集光レンズ、26は光学ディスク、27A、27Bは回折光、28A、28Bは光検知器を示す。この方式では、部品点数が増え、調整、組立が煩雑になる問題があった。
【0013】
この部品点数を減らすために、単純回折格子を別置せずに、光学異方性回折格子を形成した基板の反対面(外側の面)に単純回折格子を形成することも考えられた。この方式では、光学異方性格子による復路の回折光の干渉(光学異方性格子から出射した回折光が単純回折格子を通ること)を避けるために、光学異方性格子と単純回折格子の距離を極端に空けたり、又は光学異方性回折格子の回折角を広くとるために光学異方性格子のピッチを極端に細かくする必要があった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
光学異方性格子と単純回折格子の距離を空けるためには、透明基板の厚みを厚くする必要がある。これは光学異方性格子自体の重量増を生じ、加工が困難になる問題がある。また、格子のピッチを細かくすることは、加工が難しく生産性が低下する問題がある。
【0015】
本発明は、前述の問題を解消し、DVD、CDの両方を再生するための、3ビーム発生用の単純回折格子を、ビームスプリッタとして使用する光学異方性回折格子と共存させて、軽量で小型な多機能光学異方性回折格子を安価に生産性よく提供することを目的とする。また、光学異方性回折格子と3ビーム発生用の単純回折格子の位置関係に関して設計上の自由度を確保することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一対の基板間に光学異方性材料が充填された偏光回折素子において、2枚の基板がいずれもその内面に格子状の凹凸が形成された基板であって、一方の基板の凹凸の 凸部の屈折率が光学異方性材料の常光屈折率にほぼ等しくされ、他方の基板の凹凸の凸部の屈折率が光学異方性材料の異常光屈折率にほぼ等しくされていることを特徴とする偏光回折素子を提供する。
【0017】
また、格子の長手方向が2枚の基板で異なっていることを特徴とする上記偏光回折素子を提供する。
【0018】
また、少なくとも一方の基板の凹凸の凸部が基板の表面に形成された透明材料膜で形成されていることを特徴とする上記偏光回折素子、及び、光学異方性材料が液晶であり、格子の長手方向が2枚の基板でほぼ直交しており、液晶のツイスト角が90°+180°×n(nは0以上の整数)とされていることを特徴とする上記偏光回折素子を提供する。
【0019】
また、上記偏光回折素子を光源と光学ディスクとの間に配置したことを特徴とする光ヘッド装置を提供する。また、偏光回折素子の光源側の格子状の凹凸の長手方向を光源の光の偏光方向とほぼ一致するようにするとともに凹凸の凸部の屈折率を光学異方性材料の異常光屈折率にほぼ等しくするか、又は、光源側の格子状の凹凸の長手方向を光源の光の偏光方向とほぼ直交するようにするとともに凹凸の凸部の屈折率を光学異方性材料の常光屈折率にほぼ等しくするようにしたことを特徴とする上記光ヘッド装置とすることが好ましい。
【0020】
本発明の偏光回折素子は、2枚の基板がいずれもその内面に格子状の凹凸が形成された基板であり、1個の素子で往路で光を3分割可能にし、復路で回折して光検知器に導くという多機能を有し、光ヘッド装置に組み込んでその小型多機能化に有用である。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の偏光回折素子の断面図であり、図2はその基板をずらした状態で示す平面図である。図1及び図2において、1はガラス、プラスチック等の第1の基板、2はその内面に形成された格子状の第1の凹凸、3はガラス、プラスチック等の第2の基板、4はその内面に形成された格子状の第2の凹凸、5はシール材、6は液晶を示す。P1は第1の基板1の格子のピッチ、P2は第2の基板3の格子のピッチ、θは第1の基板1の格子の長手方向7と第2の基板3の格子の長手方向8との交差角を示す。
【0022】
本発明の偏光回折素子で用いる基板は、ガラス、プラスチック等の透明基板が使用でき、透過損失、信頼性等の点からみてガラス基板の使用が好ましい。また、基板と光学異方性材料との界面での反射を低減するために基板の屈折率は光学異方性材料のいずれかの屈折率と一致するようにされていることが好ましい。
【0023】
本発明における光学異方性材料の代表的なものとして液晶がある。この液晶は種々の液晶が使用でき、最も一般的な正の誘電異方性のネマチック液晶が好適に使用できるので、以下の説明では正の誘電異方性のネマチック液晶を用いたものとして説明する。
【0024】
なお、本発明では電界をオンオフしなくてもよいので、このネマチック液晶は電界のオンオフによる配列の変化は生じなくてもよい。このため、このネマチック液晶はその配列状態のまま重合されて高分子化されたものであってもよい。
【0025】
本発明で形成する凹凸は、基板自体に直接凹凸を形成してもよく、基板表面に透明材料膜を形成し透明材料膜に凹凸を形成してもよい。この透明材料膜は、各種の透明材料が使用でき、基板に対する接着性がよく、後で充填する液晶等の光学異方性材料の屈折率と一致する屈折率を有する材料が好ましい。
【0026】
具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、SiON、ZrO2等の透明な無機の酸化物、窒化物等の膜が使用できる。特に、SiONが酸素と窒素の量を変えることにより得られる膜の屈折率を容易に変化させうるので好ましい。これらの透明材料膜は、基板上に反応性スパッタ法、蒸着法、プラズマCVD法等によって形成すればよい。
【0027】
なお、上記の説明では、SiONと記載したが、これは一般式で書けば、SiOxNy(0<x<2、0<y<1.3)とされるべきものであり、煩雑さを避けるために、以下の説明においてもSiONと表記する。同様なことがSiO2等にも適用される。
【0028】
基板に凹凸を形成するには、基板自体又は基板上に形成された透明材料膜をフォトリソグラフィ、ドライエッチング等によって加工し、格子状凹凸を形成すればよい。
【0029】
より具体的には、例えばSiON等の透明材料膜上にフォトレジストをスピンコートし、そのフォトレジストに、フォトマスクを通して紫外線を照射し、その後現像処理することによって、格子状のレジスト形状を形成し、これをマスク材として、ドライエッチングによって、レジスト形状を転写することによって、透明ガラス基板上に格子状の凹凸を形成する。
【0030】
本発明では、2つの格子状の凹凸を夫々の基板上に形成する。この2枚の基板の格子状の凹凸の長手方向は異なった方向にすることが好ましい。通常は、夫々が相互に影響しにくくするために、相互にほぼ直交する方向にされることがさらに好ましい。
【0031】
夫々の格子状の凹凸のピッチP1 及びP2 は、夫々の目的である往路で光を3分割し、復路で回折して光検知器に導くのに適したピッチで設けられればよい。
【0032】
この格子状の凹凸を形成した基板は、凹凸面をラビング、斜め蒸着等によりその格子の長手方向に液晶分子が整列するように配向処理することが好ましい。この配向処理は、ネマチック液晶自体が固有のねじれピッチを有している場合には、一方の基板にのみ行ってもよい。また、配向処理前にポリイミドやポリアミド等の薄膜を形成してから配向処理してもよい。
【0033】
本発明では、液晶分子のツイスト角は90°+180°×n(nは0以上の整数)とすることが好ましい。これは、2枚の基板の格子状の凹凸の長手方向の交差角θがほぼ90°にされ、それに沿った方向に配向処理されることにより容易に得られる。この場合、nがいくつになるかは、液晶自体の固有のねじれピッチをどの程度にするかで決まる。
【0034】
図5は、本発明の偏光回折素子を用いた光ヘッド装置の基本的な構成を示す模式図である。図5において、31は光源、33は本発明の偏光回折素子、34はλ/4板、35は集光レンズ、36は光学ディスク、37A、37Bは回折光、38A、38Bは光検知器を示す。この光ヘッド装置では、偏光回折素子33が偏光ビームスプリッタとして機能するとともに、3ビーム発生用の単純回折格子としても機能する。
【0035】
光源31には、半導体レーザが通常用いられるが、波長変換素子等を組み込んでより短波長化したレーザも使用できる。λ/4板34は偏光方向を回転させるために使用される位相差板であり、所望の角度の偏光方向の回転ができるような位相差板が使用されればよい。
【0036】
図5の光ヘッド装置の構成は基本的な構成であり、必要に応じて、焦点距離を変える機構やレンズの開口率を変える機構を設けてもよい。また、偏光回折素子の格子を1つの基板に2種以上設けて回折光の数を増やしたりすることもできる。また、光検知器への回折に用いる格子は、凹凸を完全に平行にするのでなく、わずかに湾曲させてレンズ効果を持たせるようにしてもよい。
【0037】
図5のような構成をとることにより、本発明の光ヘッド装置は以下のような機能が得られる。本発明の偏光回折素子は、一方の基板の格子状の凹凸で偏光ビームスプリッタとして機能し、他方の基板の格子状の凹凸でトラッキングエラー検出のために必要な3ビーム発生用の光学異方性回折格子として機能している。
【0038】
例えば、一方の基板では、液晶の常光屈折率にほぼ等しい基板上に、同じく液晶の異常光屈折率にほぼ等しいSiONの透明材料膜による格子状の凹凸を形成する。この格子は通常は3ビーム発生のためであるので、通常直線状の格子である。これは液晶が基板間に充填された状態で、光源から光デイスクに向かうある偏光状態の光を持つ往路においては、例えばその70%を透過し、15%をおのおの+1次と−1次の方向へ回折させる。一方、それと直交した偏光状態を持つ復路においては、全透過し、無視できる。
【0039】
この場合、他方の基板では、液晶の常光屈折率にほぼ等しい透明基板上に、同じく液晶の常光屈折率にほぼ等しいSiONの透明薄膜による格子状の凹凸を形成する。この格子は偏光ビームスプリッタとして機能し、通常はフォーカスエラー検出のための複雑な湾曲を有する。液晶が基板間に充填された状態で、光源から光デイスクに向かうある偏光状態の光を持つ往路においてはほぼ全透過する。一方、それとほぼ直交した偏光状態を持つ復路においては、光に対しフォーカスエラー検出のための光学処理をした状態で、ほぼ全面的に回折し、光検知器に導かれる。
【0040】
すなわち、光源からの往路においては、光源から出た特定の偏光方向を持つ光は偏光ビームスプリッタとして機能する格子は透過し、3ビーム発生用の光学異方性回折格子として機能する格子はある量の光を+1次と−1次の方向へ回折させて3ビームを発生させる。
【0041】
一方、光学ディスクからの復路の光は、位相差板を往復で2度通過することにより往路の光に対して90°偏光方向が回転する。このため、3ビーム発生用の光学異方性回折格子として機能する格子はそのまま通過し、偏光ビームスプリッタとして機能する格子により回折を生じて光検知器に導かれる。
【0042】
この代表的な例として、図5の例で、光源31からの光がP偏光(紙面に平行な方向の偏光)であるとした場合で説明する。偏光回折素子33は光源側で格子状の凹凸の長手方向が紙面に垂直であり、その凸部の屈折率が液晶の常光屈折率と一致するようにされ、光学ディスク側で格子状の凹凸の長手方向が紙面に平行であり、その凸部の屈折率が液晶の異常光屈折率と一致するようにされる。これらの2枚の基板に挟持された液晶は、基板間で90°ツイストするようにされている。
【0043】
このような光ヘッド装置の場合、光源から出射した光は、P偏光で偏光回折素子33に入射するが、上側の格子状の凹凸では液晶分子はP偏光に対しては常光屈折率を示すので、凹凸の凸部の屈折率と等しくなり、この格子状の凹凸は回折格子として機能しなくなるので、光はこの上側の回折格子をそのまま透過する。
【0044】
液晶層に入射した光の偏光方向は90°ねじられてS偏光(紙面に垂直な方向の偏光)になり、下側の格子状の凹凸に入射する。液晶分子は90°ツイストしているので、下側の凹凸では紙面に平行な方向に配列している。この液晶分子はS偏光に対しては常光屈折率を示すので、下側の凹凸の凸部の屈折率と異なることになり、この格子状の凹凸は回折格子として機能するので、光はこの下側の回折格子で回折され3本のビームにされる。
【0045】
λ/4板等の位相差板を経由して光学ディスクで反射して戻ってきた光は偏光方向が90°回転していて、P偏光になっている。下側の格子状の凹凸では液晶分子はP偏光に対しては異常光屈折率を示すので、下側の凹凸の凸部の屈折率と一致することになり、この格子状の凹凸は回折格子として機能せず、光はこの下側の回折格子をそのまま透過する。
【0046】
液晶層に入射した光の偏光方向は再度90°回転してS偏光になり、上側の格子状の凹凸に入射する。上側の格子状の凹凸では液晶分子はS偏光に対しては異常光屈折率を示すので、凹凸の凸部の屈折率と異なることになり、この格子状の凹凸は回折格子として機能するので、光はこの上側の回折格子で回折されて光検知器に到達する。
【0047】
また、2枚の基板に挟持された液晶が、基板間でツイストしていない場合も同様に機能する。ただし、この場合には、一方の基板では格子状の凹凸の長手方向にラビングする等配向処理が容易にできるが、他方の基板では格子状の凹凸の短手方向に配向処理することになり、格子状の凹凸により配向の安定度が低下する傾向にあるので、液晶がツイストしている場合に比して性能が低下しやすい。
【0048】
この他方の基板の格子状の凹凸はピッチが大きいほど影響を受けにくいので、通常はピッチが大きくてよい3ビーム発生用の回折格子側とすることが好ましい。特に、このピッチを30μm以上とすると影響を生じにくい。
【0049】
この場合には、光源から出射した光はP偏光で偏光回折素子33に入射するが、上側の格子状の凹凸では上記の場合と同様に液晶分子はP偏光に対しては常光屈折率を示すので、凹凸の凸部の屈折率と等しくなり、この格子状の凹凸は回折格子として機能しなくなるので、光はこの上側の回折格子をそのまま透過する。
【0050】
液晶層に入射した光はそのまま透過してP偏光のまま下側の格子状の凹凸に入射する。液晶分子はツイストしていないので、下側の凹凸では紙面に垂直な方向に配列している。この液晶分子はP偏光に対しては常光屈折率を示すので、下側の凹凸の凸部の屈折率と異なることになり、上記の場合と同様にこの格子状の凹凸は回折格子として機能するので、光はこの下側の回折格子で回折され3本のビームにされる。
【0051】
λ/4板等の位相差板を経由して光ディスクで反射して戻ってきた光は偏光方向が90°回転していて、S偏光になっている。下側の格子状の凹凸では液晶分子(紙面に垂直な方向に配列)はS偏光に対しては異常光屈折率を示すので、下側の凹凸の凸部の屈折率と一致することになり、この格子状の凹凸は回折格子として機能せず、光はこの下側の回折格子をそのまま透過する。
【0052】
液晶層に入射した光はそのまま透過しS偏光のまま、上側の格子状の凹凸に入射する。上側の格子状の凹凸では液晶分子はS偏光に対しては異常光屈折率を示すので、凹凸の凸部の屈折率と異なることになり、この格子状の凹凸は回折格子として機能することになるので、光はこの上側の回折格子で回折されて光検知器に到達する。
【0053】
この例は一例にすぎず、表1に示すような態様がある。なお、光源からの光はP偏光(図5で紙面に平行な方向の偏光)であるとした場合で示す。S偏光の場合には、全てが90°回転すれば同じことになる。また、液晶分子は90°ツイストしているものとする。これも上記したように、液晶分子がツイストしていなくてもほぼ同様に機能する。
【0054】
各格子の目的は「ホロ」が光検知器への光の回折のためのホログラムを意味し、「3B」が3ビームに分けるグレーティングを意味する。長手方向は、「平行」は図5の紙面に平行方向、「垂直」は紙面に垂直(奥行き)方向を意味する。凸部屈折率は各基板の凹凸の凸部が、「常光」は常光屈折率、「異常」は異常光屈折率と一致していることを意味する。
【0055】
前記した例は、この表1では例1に該当する。なお、本発明では光検知器への光の回折のためのホログラムが光源側に設けられることが所望以外の余分な光の回折を生じにくく好ましく思われたが、逆に光学ディスク側に配置された方が高い効率が得られることが判明した。
【0056】
すなわち、グレーティングが光源側に配置され、ホログラムが光ディスク側に配置された方が高い効率が得られる。この原因は不明であるが、復路において液晶部を通過するときに、何らかの光学的擾乱を受けることが推定される。
【0057】
また、この光検知器への光の回折のためのホログラム用の凹凸のピッチは、光の回折角により決めればよいが、3ビームに分割する方よりも回折角を大きくとることが多いので、小さいピッチとされる。具体的には、ピッチを3〜20μm程度にすればよい。また、3ビームに分割する側の凹凸のピッチは、具体的には10〜50μm程度にすればよい。
【0058】
【表1】
【0059】
【実施例】
「実施例1」
2枚の透明ガラス基板上に、SiON等の透明材料膜を夫々SiONの組成を変えることによって、膜の屈折率を1.52と1.80となるように形成した。これら2枚の基板の透明薄膜上にフォトレジストをスピンコートし、そのフォトレジストに、フォトマスクを通して紫外線を照射し、その後現像処理して、格子状のレジスト形状を形成し、これをマスク材として、ドライエッチングによって、レジスト形状を転写して、透明ガラス基板上に格子状凹凸を形成した。
【0060】
これにより透明材料膜の層のみがエッチングされ、透明ガラス基板の表面に透明材料膜の凸部が格子状に形成された基板が作成された。このとき形成した格子としては、3ビーム発生用として、ピッチが15μmで凸部の屈折率が1.80の直線格子とし、また、光検知器に回折させるためのホログラム用として、ピッチが約5μmで凸部の屈折率が1.52のほぼ直線格子とした。このホログラム用の格子はその格子をわずかに湾曲させてレンズ効果を生じるようにしたものを用いた。
【0061】
その後、この2枚の基板の格子形成面に、ポリイミドを塗布し、さらに夫々の格子状の凹凸の長手方向にほぼ平行にラビング処理を施した。この格子状の凹凸の長手方向をほぼ直交させるようにこれら2枚の基板を凸部間のギャップ8μmで貼り合せた。そこに正の誘電異方性を有するネマチック液晶を注入し、90°ツイストしたセルを作製した。使用した液晶は、常光屈折率が1.52、異常光屈折率が1.80であった。
【0062】
このように作成した偏光回折素子を図5に示すように、光源31側にホログラム用の格子が来るようにかつ前記表1の例1と同様に配置した。図5のようにP偏光(紙面に平行な方向の偏光)の半導体レーザを素子に照射すると、光は紙面に垂直方向に長手方向を有するホログラムの格子に達した。このとき基板上の屈折率1.52のSiON膜の凸部と液晶の常光屈折率1.52の差がほとんどないことから光はこの格子により回折されることなく透過した。
【0063】
その後、ツイストした液晶内を進行することとなり偏光方向は紙面に垂直となった(S偏光)。そして、3ビーム用の格子に到達し、基板上の屈折率1.80のSiON膜の凸部と液晶の常光屈折率1.52の差により、ほぼ紙面に平行な格子により光が回折した。このときの±1次回折光と0次透過光の強度は、15:70で、所望の3ビームを得ることができた。
【0064】
さらにこれらの光は、λ/4板を通過することにより円偏光となり、ディスクに到達し反射してもう一度λ/4板を通過することにより円偏光が紙面に平行な偏光方向(P偏光)となった。
【0065】
この戻り光は、3ビーム用の格子では屈折率1.80のSiON膜の凸部と液晶の異常光屈折率1.80がほぼ等しいために回折されることなしに透過した。その後、液晶内を進行し、偏光方向が紙面とほぼ垂直に回転された(S偏光)。この光は、屈折率1.52のSiON膜の凸部と液晶の異常光屈折率1.80の差のために、このホログラムで回折された。このときの回折効率は±1次ともに約35%であった。この回折された光は、光検知器に到達した。
【0066】
本例では、基板の表面に透明材料膜を形成し、それによる凸部を設け、その凸部の屈折率をホログラム側の基板では液晶の異常光屈折率と一致させ、3ビーム発生用の基板では液晶の常光屈折率と一致するようにした。
【0067】
この凸部の格子の長手方向、屈折率等については、前記したような種々の組み合わせが使用できる。
【0068】
「実施例2」
3ビーム用の格子は屈折率1.52のSiON膜の凸部で形成し、ホログラムの格子は屈折率1.80のSiON膜の凸部で形成し、光源側に3ビーム用の格子の凸部を設けた基板を配置した。3ビーム用の格子の長手方向は、図5の紙面に平行になるように配置した。その他は実施例1と同様にして、光ヘッド装置を作成した。
【0069】
図5のようにP偏光(紙面に平行な方向の偏光)の半導体レーザを素子に照射すると、光は紙面に平行方向に長手方向を有するグレーティングの格子に達した。このとき基板上の屈折率1.52のSiON膜の凸部と液晶の異常光屈折率1.80の差により、ほぼ紙面に平行な格子となり光が回折した。このときの±1次回折光と0次透過光の強度は、15:70で、所望の3ビームを得ることができた。
【0070】
その後、ツイストした液晶内を進行することとなり偏光方向は紙面に垂直となった(S偏光)。そして、ホログラム用の格子に到達し、基板上の屈折率1.80のSiON膜の凸部と液晶の異常光屈折率1.80との差がほとんどないことから光はこの格子により回折されることなく透過した。
【0071】
さらにこれらの光は、λ/4板を通過することにより円偏光となり、ディスクに到達し反射してもう一度λ/4板を通過することにより円偏光が紙面に平行な偏光方向(P偏光)となった。
【0072】
この戻り光は、ホログラム用の格子に到達し、基板上の屈折率1.80のSiON膜の凸部と液晶の常光屈折率1.52の差によりこのホログラムで回折された。この回折光は液晶内を進行し、偏光方向が紙面とほぼ垂直に回転された(S偏光)。この光は屈折率1.52のSiON膜の凸部と液晶の常光屈折率1.52との差がほとんどないことから光はこの格子により回折されることなく透過した。
【0073】
このときの回折効率は±1次合計で71.3%であった。この回折された光は、光検知器に到達した。
【0074】
本例では、基板の表面に透明材料膜を形成し、それによる凸部を設け、その凸部の屈折率をホログラム側の基板では液晶の異常光屈折率と一致させ、3ビーム発生用の基板では液晶の常光屈折率と一致するようにした。
【0075】
この凸部の格子の長手方向、屈折率等については、前記したような種々の組み合わせが使用できる。
【0076】
【発明の効果】
本発明の偏光回折素子は、2枚の基板がいずれもその内面に格子状の凹凸が形成された基板であり、その格子の長手方向が2枚の基板で異なっており、好ましくは直交しているように配置しているので、2種類の回折を生じさせうる。これにより、簡単な構成で往路で3ビームを発生させるとともに、復路で光検知器に回折でき、光ヘッド装置の小型化軽量化に有用である。
【0077】
また、液晶に代表される光学異方性材料を用いた偏光回折素子を用いているので、光の利用効率が高く、少ない光量ですみ、低消費電力にもなる。本発明は、本発明の効果を損しない範囲内で、種々の応用ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偏光回折素子の断面図。
【図2】図1の偏光回折素子の基板をずらした状態で示す平面図。
【図3】従来の偏光回折素子の例の断面図。
【図4】従来の光学異方性回折格子と単純回折格子とを併用した光ヘッド装置の模式図。
【図5】本発明の偏光回折素子を用いた光ヘッド装置の模式図。
【符号の説明】
1:第1の基板
2:第1の凹凸
3:第2の基板
4:第2の凹凸
5:シール材
6:液晶
Claims (5)
- 一対の基板間に光学異方性材料が充填された偏光回折素子において、2枚の基板がいずれもその内面に格子状の凹凸が形成された基板であって、一方の基板の凹凸の凸部の屈折率が光学異方性材料の常光屈折率にほぼ等しくされ、他方の基板の凹凸の凸部の屈折率が光学異方性材料の異常光屈折率にほぼ等しくされていることを特徴とする偏光回折素子。
- 格子の長手方向が2枚の基板で異なっていることを特徴とする請求項1記載の偏光回折素子。
- 少なくとも一方の基板の凹凸の凸部が基板の表面に形成された透明材料膜で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の偏光回折素子。
- 光学異方性材料が液晶であり、格子の長手方向が2枚の基板でほぼ直交しており、液晶のツイスト角が90°+180°×n(nは0以上の整数)とされていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の偏光回折素子。
- 請求項1、2、3又は4記載の偏光回折素子を光源と光学ディスクとの間に配置したことを特徴とする光ヘッド装置。
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