JP3656624B2 - 鍵盤装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、電子オルガンや電子ピアノ等の電子鍵盤楽器、あるいはピアノ等の鍵盤楽器の練習装置などに適した鍵盤装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電子鍵盤楽器等の鍵盤装置としては、例えば特公平1−28956号公報(以下「第1従来例」という)あるいは特公昭45−8828号公報(以下「第2従来例」という)等に見られるようなものがある。
【0003】
上記第1従来例のものは、鍵の後端部下面に設けた略L字状の係合突起を、鍵支持部材である鍵盤フレームに穿設した係合孔に係合させ、その鍵を鍵盤フレームに対して上記係合突起と係合孔の縁部との当接部を支点として上下方向に回動自在に支持させ、その支点部と案内部材とによって鍵の左右方向及びローリング方向(鍵の前後方向に沿う軸線を中心として回転する方向)の動きを規制するようにしたものである。
【0004】
また、上記第2従来例のものは、鍵の後端部と鍵支持部材とを左右方向(水平方向)に沿う1本の接触線を有する線接触状態及び左右方向の略中間部に1つの接触点を有する点接触状態で接触させることにより、鍵を鍵支持部材にその接触部を支点として上下方向に回動自在に支持させ、この支点部と案内部材とによって鍵の左右方向及びローリング方向の動きを規制するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した第1従来例のものは、支点部で鍵の左右方向及びローリング方向の動きを抑制すると共に、案内部材でも鍵の左右方向とローリング方向の動きを抑制しているため、鍵自体の反りや捩じれ、あるいは案内部材の傾斜や捩じれ、さらに係合突起のゆがみ等、構成部品の加工精度や取付精度にわずかな誤差があっても、鍵が案内部材にねじる方向の作用力を及ぼしてしまう。
【0006】
そのため、鍵操作時に雑音が発生したり鍵が円滑に揺動せず、鍵のタッチ感(操作感)が悪くなるという問題があった。また、鍵の下面と係合突起との間の寸法と鍵支持部材の板厚寸法とが正確に一致しないと、係合突起と係合孔との係合部に隙間が生じてがつたき、それによって雑音を発生することもあった。
【0007】
また第2従来例のものは、鍵の左右方向へのずれを吸収し得るように構成されていないため、鍵をずれたままセットすると、押鍵時にがたつきが生じた部分で雑音を発生する。また、線接触部は左右方向に沿う1本の接触線を有する線接触状態のため、鍵のローリング方向への動きを抑制するための案内部材が必要であり、それだけ鍵の摩擦部が多くなって鍵が円滑に動作せず、鍵のタッチ感が悪くなるという問題がある。
これらの問題は鍵長が長くなるほど顕著になるため、設計の自由度を狭めることにもなっていた。、さらに、これらの鍵支点構造では鍵の長手方向の中間部を揺動支点とするシーソ鍵には適用できず、電磁アクチュエータを用いた自動演奏可能な鍵盤楽器の鍵盤装置としては使用できなかった。
【0008】
この発明は、上記のような従来の鍵盤装置、特にその揺動支点部の構造による問題を解決するためになされたものであり、鍵長が長い場合でも寸法誤差を吸収でき、がたつきや雑音を発生することなく、全ストロークに亘って無理のないスムーズな鍵操作を可能にし、設計の自由度もあり、シーソ鍵でも安定した鍵動作を可能にすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記の目的を,達成するため、支持部材と、この支持部材に対して支点部を中心に揺動自在に設けられた複数の鍵とからなる鍵盤を有する鍵盤装置において、各鍵の操作部の後方で鍵幅方向に対向する2つの内壁面に、楔状壁面を形成した楔状壁面形成部を設け、その楔状壁面形成部の一方の壁面を平面とし、他方の壁面に曲面を形成して鍵側支点部を構成する。
【0010】
前記各鍵に対してそれぞれ立設され、該各鍵の前記楔状壁面間に該鍵の下面側から高さ方向に
一方、上記支持部材に、上記各鍵に対してそれぞれ立設され、該各鍵の前記楔状壁面間に鍵の下面側から高さ方向に嵌入する突状体を設け、その突状体に、上記鍵の楔状壁面の一方である平面と上記嵌入時に線接触する柱面と、上記楔状壁面の他方に形成された曲面に点又はそれに近い小面積で当接する曲面対応部とを設けて支持部材側支点部を構成する。
そして、上記支持部材上に配設され、前記鍵に嵌入して該鍵の配列方向の位置を規制する鍵ガイドを設けたものである。
【0011】
この鍵盤装置において、記各鍵に上記楔状壁面形成部から後方へ延びる延設部を設け、その延設部に電磁アクチュエータのアクチュエータ部を嵌入させこともできる。
その場合、上記鍵側支点部を各鍵の操作部の後方であって鍵長手方向の中間部に設けることになる。
【0012】
【作用】
この発明による鍵盤装置は、その鍵側の支点部と支持部材側の支点部とを上記のように構成したことにより、各鍵は、この鍵側支点部の楔状壁面形成部の一方の壁面に形成された曲面と支持部材側支点部に設けられた突状体の曲面部との接触点を支点として、上下方向(押鍵方向)及び左右方向(鍵幅方向)に揺動可能であり、鍵側支点部の平面状の壁面と突状体の柱面とがその嵌入時に線接触しているため、鍵の長手方向を軸線とする回動すなわちローリングは阻止される。また、鍵側支点部の曲面と突状体の曲面部との係合により鍵の支点部が所定の高さ位置に保持される。
【0013】
これによって、鍵取り付け部の寸法誤差を吸収することができ、鍵長が長い場合でもその誤差を吸収して全ストロークに亘って無理のないスムーズな鍵駆動が可能になる。また、鍵のローリングが阻止されるので、鍵の上下方向への案内部材は不要になり、鍵ガイドは鍵の配列方向の位置を規制するだけでよいから、鍵の内壁面と点接触するだけでよい。そのため、摩擦部が少なくなり、鍵の動きが円滑になってタッチ感が向上すると共に、雑音を発生しなくなる。
【0014】
また、鍵側支点部は楔状壁面を形成しており、付勢手段の付勢力によって常時支持部材側支点部の突状体に押し付けられているため、楔効果によってガタが生じないので雑音を発することがなく、自動調芯される効果もある。
なお、鍵盤を構成する各鍵が左右方向に揺動できることを利用して、演奏中に鍵を左右方向へ微妙に動かすことによって、ビブラートやトレモロ,パン,リバーブ等の変調効果を付与し得るようにすることもできる。その場合には、各鍵ガイドの鍵の両側内壁面に当接する部位に、横揺れセンサとして、感圧フイルムあるいは感圧ゴム等の感圧センサを貼着すればよい。
【0015】
各鍵の楔状壁面形成部の後面を鍵後端面とすることにより、鍵側支点部の強度が増すとともに、その後端面を後方へ延設することによってシーソ鍵にすることができる。
上記鍵側支点部を各鍵の操作部の後方で鍵長手方向の中間部に設けた場合はシーソ鍵となり、電磁アクチュエータを用いて各鍵を動作させて自動演奏を行なうことができる鍵盤装置において、上述した安定した鍵動作が可能になる。
さらに、設計の自由度が増し、オルガンキーとピアノキーのように、タッチ感が全然違う鍵に対してもその揺動支点部の構造を共通化して、それを成形する際に金型の一部又は全部を共用することも可能にすることができる。
【0016】
【実施例】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
〔第1実施例〕
図1はこの発明の第1実施例を示す鍵盤装置の非押鍵状態における黒鍵の長手方向に沿う断面図、図2は同じくその最大ストローク押鍵状態における白鍵の長手方向に沿う断面図、図3はこの鍵盤装置の鍵を一部取外して示す部分的な平面図である。
【0017】
まず、主として図1を参照して説明する。1は支持部材である第1フレーム、2も支持部材である第2フレームであり、両者はねじ止めによって固着され、楽器筐体の鍵盤装置支持台である棚板3上に、木ねじ8及びボルト9によって取り付け固定される。第1フレーム1と第2フレーム2の間には、鍵の配列方向に間隔を置いて補強材としてのスペーサ柱17が介挿されている。
【0018】
この第1フレーム1及び第2フレーム2は鉄板等の金属板の板金加工により形成されている。そして、第1フレーム1の平面部の後部に各鍵に対応して形成した切り起こし片1aに、それぞれ各鍵を支持する支持部材側支点部4を樹脂によってアウトサート成形しており、そこに樹脂によって成形された白鍵5W(図1では仮想線で示す)及び黒鍵5Bの鍵側支点部6を嵌入させて、各白鍵5W及び黒鍵5Bを揺動自在に支持している。以下、白鍵5Wと黒鍵5Bに共通な説明のために両者を総称する場合は「鍵5」という。
【0019】
各鍵5と支持部材側支点部4との間に板バネ7を弓型に湾曲させて係着しており、その弾性復元力によって、鍵側支点部6と支持部材側支点部4とを常時接触状態に保持する付勢手段として作用させる。10は操作パネルを含む本体カバーであり、この本体カバー10に隠れる各鍵5の後部には、板バネ7を着脱するための開口5aと鍵着脱を可能にする開孔5kを設けている。
【0020】
この支持部材側支点部4と鍵側支点部6は、第1フレーム1に対して鍵5の押離鍵方向(上下方向)及び鍵幅方向(図3で左右方向)への揺動を許容し、ローリング(鍵5の長手方向に沿う軸線を中心としての回転)を阻止する構造になっているが、その詳細については後述する。
【0021】
黒鍵5Bの自由端部は、隣接する白鍵5Wの操作部の下側を通ってその白鍵5Wの自由端部方向に延設し、その延設部5bは第1フレーム1に形成された透孔1bから第1フレーム1の下側に入り込み、その自由端部に後述するアクション部材の被駆動部を駆動する駆動部5cを形成している。黒鍵5Bの中間部の下面には鍵スイッチ駆動用のアクチュエータ5dが設けられている。
【0022】
白鍵5Wの自由端部付近にも、図2に明示されるように下方に延びる駆動部5eが形成され、第1フレーム1に形成された透孔1cを通して第1フレーム1の下側に入り、対応するアクション部材の被駆動部を駆動するようになっている。この白鍵5Wの中間部にも、黒鍵5Bのアクチュエータ5dと並ぶ位置に鍵スイッチ駆動用のアクチュエータ5dが設けられている。5gは鍵5の後端面であり、これを設けることにより鍵側支点部6の強度が増すと共に、後述する第2実施例のようなシーソ型鍵への変更が容易になる。
【0023】
第1フレーム1上の各鍵5のアクチュエータ5dに対応する位置には、鍵スイッチ用の透孔1dが形成され、その前後にスイッチ基板保持用の貫通孔を有するスペーサ11,11が樹脂によりアウトサート成形されて設けられている。そして、スイッチ基板12をそのスペーサ11,11を介して第1フレーム1の裏面側に所定の間隔を置いて並行に配置し、ねじ止めによって取り付け保持させる。
【0024】
そのスイッチ基板12の上面には、各鍵5のアクチュエータ5dにそれぞれ対向して椀状の弾性部材を備えた鍵スイッチ13が列設されており、押鍵により図2に示すように、その椀状の弾性部材がアクチュエータ5dによって所定ストローク押圧されると内部の接点が閉じ、押鍵信号を発生するようになっている。
このような椀状の弾性部材を備えた鍵スイッチは、前掲の実開昭56−99596号公報や実開平4−107296号公報等に見られるように公知のものであるから詳細な説明は省略する。
【0025】
第1フレーム1の透孔1dより手前側の黒鍵装着位置に形成した切り起こし片1eに、樹脂をアウトサート成形して黒鍵ガイド14を設け、それを各黒鍵5Bに嵌入させてその鍵配列方向の位置を規制している。
また、第1フレーム1の切り起こし片1eよりさらに手前側の白鍵装着位置に形成した切り起こし片1f(図2)に、樹脂をアウトサート成形して白鍵ガイド15を設け、それを各白鍵5Wに嵌入させてその鍵配列方向の位置を規制している。
【0026】
その白鍵ガイド15の上端部は図4に示すように、鍵幅方向に球面状に膨出する膨出部15a,15aを有し、白鍵5Wの対向する内壁面S1,S2に点又はそれに近い小面積で当接するようになっている。
黒鍵ガイド14もこの白鍵ガイド15と同様に膨出部を有し、黒鍵5Bの対向する内壁面に点又はそれに近い小面積で当接する。
これによって、鍵5と鍵ガイド部材である黒鍵ガイド14及び白鍵ガイド15との摩擦が少なくなるので、よりスムーズな鍵操作が可能になる。
【0027】
図1及び図2に示す20は、この鍵盤装置のアクション部材である質量体アッセンブリであり、アクション部材本体である第1アーム21と、質量体である第2アーム22と、ピアノのジャックに相当するウイペン機能部材であるレットオフレバー23等を集成したアッセンブル体である。第1アーム21とレットオフレバー23は樹脂によって成形され、第2アーム22は重り部材22aとその一部にアウトサート成形した樹脂部22bとからなる。
【0028】
第1アーム21は、鍵5の前端部(自由端部)付近に対応する前端部21aから鍵の後端部(支点部)付近に対応する後端部21bまで、鍵5の長手方向に沿って延びており、その前端部21aから全長のほぼ1/3弱程度の位置が最も幅(図1,2で上下方向)が広く、その下部に部分円柱状の揺動支点部21cを設けており、それを第2フレーム2上に固設した支持体16上に載置し、両者の接触部を支点として図1において矢印Cで示す方向に揺動可能に支持されるとともに、支点部21cは回動に際して支持体16上を鍵長手方向にも若干移動できるように構成されている。
【0029】
この第1アーム21の揺動支点部21cより前端部側は、細長い三角形状に形成されており、その前端部21a付近に黒鍵5Bの駆動部5cあるいは白鍵5Wの駆動部5eと係合する被駆動部21dを設けると共に、上辺に沿って片持ちの弾性片21eを一体に設け、その弾性片21eの先端部と基部付近に形成したバネ係止部21fとの間に第1リーフスプリング24を湾曲させて係着し、被駆動部21dに駆動部5c又は5eを係合させて、弾性片21eと第1リーフスプリング24の付勢力によって常時その係合状態を維持させている。
【0030】
第1リーフスプリング24は、図5にその平面図を示すように細長いフレーム状に形成され、前端に弾性片21eの先端部との係合部24aを、後端にバネ係止部21fとの係合部24bをそれぞれ有し、その間に第1アーム21の両側に振り分けられる2本の側片部24c,24dを平行に形成した中抜き構成をしている。
【0031】
第1アーム21の揺動支点部21cより後端部側は先細り形状で細長く延び、揺動支点部21cに比較的近い位置に軸25によって第2アーム22の前端部を相対回動可能に軸支しており、第2アーム22の前部は第1アーム21の中間部を厚さ方向の中間に割り込ませて、両側からそれを挟むように嵌合している。
この第1アーム21の軸25よりやや後方の下部に、第2アーム係止片21gを後方へ少し傾斜させて突設し、その係止面にアクション部材単体状態での第1アーム21と第2アーム22の過変形防止部を形成し、これは組み込み時のバウンド防止用部にすることもできるもので、フエルト等のパット26を貼着している。
【0032】
さらに、この第1アーム21の後端部寄りの位置に、軸28によってレットオフレバー23を相対回動可能に軸支している。
レットオフレバー23は、三角形に近い形状をなし、図6の平面図でも示すように、一端に第2アーム当接部23aを、他端にストッパ当接部23bを有し、これらの部分を除いて厚さ方向に中空であり、その中空部23cに第1アーム21の後部を貫通させている。この第1アーム21とレットオフレバー23とがウイペン機能部材として作用する。
【0033】
第1アーム21は、外周に沿った縁部21hと長手方向に間隔を置いて形成した複数本のリブ状部21iが肉厚であり、それらによって仕切られた平面部21jは肉薄に形成されており、充分な強度を確保しながら成形時のひけを防止すると共に、なるべく軽量にして、質量体アッセンブリ20全体の重心ができるだけ後端部寄りになるようにしている。
【0034】
第2アーム22は、鉄材等の質量が大きい金属材による重り部材22aを露出させた部分と、その鉄材の前半部に樹脂でアウトサート成形した樹脂部22bとからなり、その中間部に上側を開放した凹溝を設け、その内周に幾分柔軟性のある樹脂等の緩衝材29を貼着し、押鍵初期にレットオフレバー23の第2アーム当接部23aと当接する第1当接面22cと、図2に示す押鍵終期にその第2アーム当接部23aの外面が当接する第2当接面22dを形成し、バックチェック機構を構成する。バックチェック機能を果たすのは、主にレットオフレバー23の第2アーム当接部23aと第2アーム22の第2当接面22dとの当接による。
【0035】
この第2アーム22の重り部材22aの露出部は、わずかにクランク状をなし、第1フレーム1の後端垂直部に形成された透孔1gを通して後方に突出しており、その後端部に弾性片持ち片30aを一体とするキャップ30を樹脂によってアウトサートして成形し、嵌着している。また、重り部材22aの上面の弾性片持ち片30aの自由端部に対応する位置にフエルト等によるパット31を貼着し、押鍵時の片持ち片30aの保護をしている。
【0036】
棚板3の上面には、図1に示す非押鍵時に第2アーム22の重り部材22aの下面が当接する下限ストッパ32を配設している。この下限ストッパ32はフエルト,ゴム等からなる。
一方、第1フレーム1にアウトサート成形した支持部材側支点部4の第1フレーム1内に露出している下面に、フエルト,ゴム等からなる上限ストッパ33を貼着して、図2に示すように押鍵終期にレットオフレバー23のストッパ当接部23b及び弾性片持ち片30aの自由端部を当接させるようにしている。
【0037】
第2アーム22の前端上部にバネ係止部22eが形成され、レットオフレバー23の軸28の下部と上部とにバネ係止部23dが形成されており、その間に第2リーフスプリング34を湾曲させて係着している。
【0038】
この第2リーフスプリング34は、図7に平面図を示すように、前端に第2アーム22のバネ係止部22eとの係合部34aを有し、そこから平行に延びる2本のバネ片34b,34cからなり、一方のバネ片34bの後端をレットオフレバー23の一方の側(図1,図2で見える側)の軸28の下側のバネ係止部23dに係合させ、他方のバネ片34cの後端をレットオフレバー23の他方の側(図1,図2で見えない側)の軸28の上側のバネ係止部23dに係合させる。
【0039】
この第2リーフスプリング34によって、2本のバネ片34b,34cの差分回転トルクを発生させ、レットオフレバー23に軸28を中心とする左旋方向の復帰力を付与している。
この質量体アッセンブリ20全体の重心は、第2アーム22の重り部材22aの重心に近く、揺動支点部21cから被駆動部21dと反対側に大きく離れた位置にあり、質量体アッセンブリ20全体を軽く形成したとしても押鍵時に大きな慣性モーメントが生じ、ピアノのハンマと同様な作用を果たす。
【0040】
また、白鍵5Wと黒鍵5Bの駆動部5c,5eをそれぞれ鍵の揺動支点部からの距離がほぼ同じになる位置に設けることができ、それはいずれも白鍵5Wの先端部(自由端部)付近になるので、支点部からの距離が長くなり、駆動部と被駆動部との当接部で発生するストローク誤差が演奏者の指が鍵に触れる位置(操作部)においても増幅される要素がないので、被駆動部材である質量体アッセンブリ20の駆動部に対するストローク精度が向上する。
【0041】
この実施例では被駆動部材が質量体を含むアクション部材であるから、鍵及びアクション部材のストローク精度の向上とタッチ感触精度の向上を計ることができ、そのアクション部材の白鍵用と黒鍵用をほぼ同一に形成することができる。また、図1に仮想線で示すように、駆動部5c,5eに対向する位置の第2フレーム2上に鍵スイッチ13′を設け、押鍵時に第1アーム21を介してその鍵スイッチ13′を駆動するようにすれば、押鍵ストロークに対する鍵スイッチのON位置、すなわち発音位置の精度を向上させることもできる。
【0042】
なお、第1アーム21の揺動支点部21cと被駆動部21dの位置は、図1に実線で示す黒鍵用の場合と仮想線で示す白鍵用の場合とで若干異ならせており、それによって被駆動部と揺動支点との距離が、黒鍵用の方が白鍵用のものより幾分長くなるようにして、白鍵と黒鍵のタッチ感触(反力)が同じになるようにしている。
【0043】
しかしながら、第1アーム21の図1に示す一点鎖線A−Aより左側の部分の形状が黒鍵用と白鍵用とで若干変わるだけで、質量体アッセンブリ20全体としてはほぼ同一形状であり、第1アーム21の一点鎖線A−Aより右側の部分、及びそこに装着されている第2アーム22,レットオフレバー23,キャップ30,第2リーフスプリング34等はすべて、黒鍵用も白鍵用も同じ形状及び材質の同一部材でよい。
【0044】
したがって、作用の項において述べたように、質量体アッセンブリ20を構成する殆どの部品を白鍵用と黒鍵用で共通化でき、第2アーム22及びレットオフレバー23をそれぞれ成形するための分割金型は1組ずつあればよい。
第1アーム21だけは白鍵用と黒鍵用で別の金型で成形する必要があるが、一点鎖線A−Aの左側部分と右側部分で分割した金型を使用するようにすれば、右側部分の金型は共用できるので、左側部分の金型だけを別々に用意して、共用金型と組み合わせて使用すればよいことになり、大幅なコスト低減を計ることができる。この経済的効果は大きい。
この点については、後述する第3実施例の説明において詳述する。
また、押鍵時におけるこの質量体アッセンブリ20の作用及び効果等については追って詳述する。
【0045】
ここで、前述した支持部材側支点部4及び鍵側支点部6の詳細について説明する。図8は図3において一点鎖線Lで囲んだ支持部材側支点部4付近の拡大平面図であり、図9はそのX−X線に沿う断面図、図10は図8の矢示M方向から見た背面図である。また、図11は支持部材側支点部4を斜め前方から見た斜視図である。
【0046】
これらの図によって、まず支持部材側支点部4について説明する。
第1フレーム1に形成された透孔1fにアウサート成形による樹脂が回り込んで基部4aが形成され、それと一体に図1,図2に示した切り起こし片1aにアウトサート成形された突状体4bが、各鍵5に対して立設されている。図8において基部4aの両側には第1フレーム1の露出面1iが見える。
【0047】
突状体4bの一方の側面には垂直方向に軸線をもつ円柱面4cが形成され、他方の側面は、その前半部は鍵5の長手方向に沿う平面4dで、後半部は後方に向って突状体4bを細くするように傾斜した斜面4eに形成され、その斜面4eの上下方向の中央よりやや上部に球面状の膨出都(曲面対応部)4fが形成されている。ここで、円柱面4cは外周が完全な円孤状をなす必要はなく、変形した曲柱状面であってもよい。
【0048】
一方、図12は鍵を裏返してその鍵側支点部6付近を斜め前方から見た要部拡大斜視図である。この図に示すように、鍵5(白鍵も黒鍵も同じ)の後端面5gに近い後部の鍵幅方向に対向する2つの内壁面S1,S2に、鍵後方に向かって間隔が狭まる楔状壁面6a,6b(楔状壁面6aは内壁面S1と平行)を形成した楔状壁面形成部6cを設け、その楔状壁面形成部6cの一方の壁面6aを平面とし、他方の壁面6bに鍵高さ方向の中間部に同方向に湾曲した凹曲面6dを鍵長手方向に沿って形成して、鍵側支点部6を構成している。
【0049】
図13はこの鍵5を図11に示した突状体4bに支持させた状態の図15のC−C線に沿う断面図である。図14は図8及び図13におけるA−A線に沿う断面図、図15はB−B線に沿う断面図である。
これらの図によって、この実施例による鍵5の支持状態について説明する。
【0050】
図14及び図15に示すように、鍵側支点部6の楔状壁面6a,6b間に支持部材側支点部4の突状体4bを、鍵5の下面側から高さ方向に嵌入させるようにして、各鍵5を第1フレーム1に装着し、図1に示した板バネ7を係着すると、楔状壁面6a,6bが突状体4bの円柱面4cと膨出部4fに押し付けられる。
それによって、鍵側支点部6の平面状の壁面6aと突状体4bの円柱面4cとが嵌入時にその嵌入方向である鍵高さ方向に沿ってほぼ直線状に当接(線接触)し、他方の楔状壁面6bに形成された凹曲面6dと突状体4bの球面状膨出部4fとは点又はそれに近い小面積で当接(点接触)する。
【0051】
図14によると、膨出部4fの球面に沿って微小線接触している。膨出部4fの曲率半径より凹曲面6dのそれをわずかに大とすることにより点接触となり、ほぼ同一にすることにより微小線接触もしくは小面積接触となる。また、凹曲面6dの中央谷線も水平面と平行にかつ湾曲していることにより、上記微小線は小面積を有することになる。鍵のローリングのみを禁止した鍵盤装置であって、なおかつ長期的に安定した支点構造にするには、上記接触に小面積を有するのが望ましい。
また、楔状壁面6b側と突状体4b側とが当接する曲面の凹凸関係がこの実施例と逆であってもよい。
【0052】
鍵側の支点部6と鍵支持部材であるフレーム側の支点部4とをこのように構成したことにより、鍵5は、この鍵側支点部6の凹曲面6dと突状体4bの球面状膨出部4fとの接触点を支点として、上下方向(押鍵方向)及び左右方向(鍵幅方向)に揺動可能であり、鍵側支点部6の平面状の壁面6aと突状体4bの円柱面4cとが鍵高さ方向に線接触しているため、鍵5の長手方向を軸線とする回動すなわちローリングは阻止される。また、鍵側支点部6の凹曲面6dと突状体4bの球面状膨出部4fとの凹凸面の係合により鍵の支点部が所定の高さ位置に保持される。
【0053】
これによって、鍵支点部と鍵ガイド部との鍵並び方向の配設寸法誤差、あるいは鍵成形時のそりによる寸法誤差等を吸収することができ、鍵長が長い場合でもその誤差を吸収して全ストロークに亘って無理のないスムーズな鍵駆動が可能になる。また、鍵のローリングが阻止されるので、質量体等でガイドされるようにすると、鍵の上下方向への案内部材は鍵側でも不要にすることもできる。
この実施例の場合は、鍵ガイドは鍵の配列方向の位置を規制するだけのために、図4で説明したように鍵の内壁面と点接触するガイド15を設けている。そのため、摩擦部が少なくなり、鍵の動きが円滑になり、上記寸法誤差があったとしても雑音を発生しなくなる。
【0054】
また、鍵側支点部6は楔状壁面を形成しており、それが板バネ7の付勢力によって常時支持部材側支点部4の突状体4bに押し付けられているので、楔効果によってガタが生じることがなく、雑音を発することがないとともに、自動調芯される効果もある。
【0055】
なお、鍵盤を構成する各鍵が左右方向に揺動できることを利用して、演奏中に鍵を左右方向へ微妙に動かすことによって、ビブラートやトレモロ,パン,リバーブ等の変調効果を付与し得るようにすることもできる。その場合には、各鍵ガイドの鍵の両側内壁面に当接する部位に、横揺れセンサとして、感圧フイルムあるいは感圧ゴム等の感圧センサを貼着すればよい。
【0056】
また、この支点部の構造によれば、鍵は直交する2方向に揺動可能になるから、上記実施例における左右方向を押鍵方向にして、上下方向を鍵幅方向にするように、鍵を横向きにして(鍵の形状は変わるが)、支持部材側支点部の突状体をL字状に折り曲げて、鍵側支点部に対して水平方向に嵌入させるようにすることも可能である。この場合の鍵側支点部の楔状壁面は、鍵高さ方向に対向する2つの内壁面に形成されることになる。
【0057】
次に、図1及び図2で説明したアクション部材である質量体アッセンブリ20の作用及び効果について詳述する。
図16の(イ)〜(ホ)は、上述した第1実施例による非押鍵状態から最大ストローク押鍵状態までの質量体アッセンブリ20の主としてウイペン機能部分の動作を段階的に示す説明図である。この図において、レットオフレバー23は縦断面で示している。
【0058】
(イ)に示す非押鍵状態では、質量体アッセンブリ20は第2アーム22側が自重によって下降して図1に示した位置に復帰しており、第2アーム22は下限ストッパ32に当接し、第1アーム21の後端部21bのパット27が第2アーム22の重り部材22a上に当接している。レットオフレバー23は第2リーフスプリング34の付勢力によって左旋復帰し、第2アーム当接部23aが第2アーム22の第1当接面22cの下側に入り込んでいるが、両者は当接しておらず若干の隙間を形成している。
【0059】
鍵5が押し下げられると、図1に示した駆動部5c又は5eによって第1アーム21の前端部の被駆動部21dが押し下げられ、第1アーム21が揺動支点部21cと支持体16との当接部を支点として図で左旋揺動を開始する。
押鍵動作がある程度スピードを有している(ピアニシモ以上)と、その初期に図16の(ロ)に示すように、第2アーム22は静止したままで、第1アーム21がレットオフレバー23を伴って僅かに左旋し、レットオフレバー23の第2アーム当接部23aが第2アーム22の第1当接面22cに当接する。ピアニシモ以下の弱いタッチで押鍵したとすると、上記隙間を有したまま第2アーム22は下限ストッパ32から離れる。
【0060】
続いて、ピアニシモ以上の場合、第1アーム21と第2アーム22がレットオフレバー23を介して連結され、質量体アッセンブリ20全体が左旋して、図16の(ハ)示すように揺動し、弾性片持ち片30aの先端が上限ストッパ33に当接する。
その後、弾性片持ち片30aを若干撓ませながらさらに左旋し、(ニ)に示すようにレットオフレバー23のストッパ当接部23bが上限ストッパ33に当接する。
【0061】
そして、さらに質量体アッセンブリ20が左旋することにより、レットオフレバー23が軸28を中心に右旋され、それによって図16の(ホ)に示すように、第2アーム当接部23aが第2アーム22の第1当接面22cから離脱し、第2アーム22の拘束を解く。
タッチがピアニシモ以下の場合、(イ)の状態を維持しつつ(ロ),(ハ)の状態へ移行するが、弾性片持ち片30aと上限ストッパ33とが当接した後、第2アーム当接部23aの上部隙間がなくなるよう、上限ストッパ33で第2アーム22を押し下げる。その後の動きは前記強タッチの場合と同じである。
【0062】
その後、第2アーム22は重り部材22a等の自重及び弾性片持ち片30aの復元力によって右旋復帰しようとする力と、左旋方向の慣性モーメントとが微妙につり合いながら全体として左旋され、レットオフレバー23の第2アーム当接部23aはすぐに第2アーム22の第2当接面22dに当接し、第2アーム22をホールドするバックチェック機能が作用し、また第2リーフスプリング34によって第2アーム22に左旋方向の付勢力も与えられているので、第2アーム22が急激に右旋するようなことはない。
基本的な作用としては、弱タッチであればある程、第2アーム22等の左旋方向の弾性モーメントが小さくなることを考慮すればよい。
【0063】
また、第1アーム21に対して第2アーム22が必要以上に右旋したとしても、図1及び図2に示した第2アーム係止片21gに当接してそこで係止される。そして、第2アーム22の第2当接面22dは緩衝材29によって形成されており、第1アーム21の第2アーム係止片21gの係止面にもパット26が貼着されているので、第2アーム22が衝撃により振動を起こすようなことはない。
【0064】
このレットオフレバー23による第2アーム22の拘束解除によって、押鍵時にグランドピアノと同様な静的及び動的レットオフ感が得られるが、その説明のために、まずピアノのアクション機構における各機能の定義について説明しておく。
【0065】
レットオフ機能とは、鍵連動により、打鍵した力で駆動したハンマが弦に当接した後、そのリバウンドで戻る余地を与えるためのもので、鍵により連動されたハンマの連動部分を解放する機能である。
バックチェック機能とは、レットオフされたハンマをホールドする機能である。
レペティション機能とは、離鍵時のバックチェック解放後に、ハンマを押鍵可能状態に戻す機能である。
ピアノのウイペンアッセンブリの中では、上記レットオフ機能及びレペティション機能を行なっており、バックチェック機能は鍵で行なっていると言える。これに対して、本件実施例では質量体アッセンブリ20で、上記全機能を行なうものとなっている。
【0066】
静的レットオフ感とは、鍵を音が出るか出ない程度に極めてゆっくり押した時、ジャックとハンマとで発生する摩擦力が徐々に大きくなって、鍵により連動されたハンマの連動部分を解放するときに上記摩擦力が減少して発生する脱進感のことである。
動的レットオフ感とは、鍵をピアニシモ(pp)以上の強さで打鍵したとき、打鍵終了直前で鍵とハンマの連動が解消されると、それにより打鍵途中で慣性モーメントが減少し、抜ける感じ(脱進感)が生まれること。すなわち、打鍵途中に慣性モーメントが減少することにより、指への反力が減少する打鍵感のことである。
【0067】
ここで、グランドピアノにおける鍵盤装置の機能的な特徴を挙げると、次のようなものである。
▲1▼静的タッチ感が押鍵ストロークに対してあまり変化しない。
▲2▼弱タッチ時の脱進感(静的レットオフ感)がある。
▲3▼動的タッチ感(質量感)があって、強打時の質量解放感(動的レットオフ感)がある。
▲4▼白黒鍵同一タッチ感である。
【0068】
前述したこの発明の第1実施例によれば、上記特徴を備えたグランドピアノの鍵盤装置に極めて似たタツチ感が得られるのである。
そこで、グランドピアノのタッチ感がよいと云われているが、どのような要素があってどこがどうよいかを解明し、この発明ではどの要素をどうしたのかを説明する。
【0069】
まず、ニュートンの運動の第2方程式をすべての要素を考慮して表すと数1のようになる。
すなわち、図17に示すような系において、質量mの物体をFという力で押した場合、数1の右辺の反発力が発生する。
【0070】
【数1】
【0071】
ここで、m;物体の質量(鍵盤装置の場合は鍵及びアクション部材全体の質量と考えてよい)、x;移動距離(鍵ストローク)、ks ;ばね定数、μ;摩擦係数、N;抗力、d2x/dt2;加速度、である
この式は、F=mα として広く知られているが、からみ構造があると数1のようになる。
グランドピアノでは、鍵及びアクション部材の重さが数1の〈1〉項に対応し、従来の電子鍵盤楽器でもみかけ上同様であるが、両者はアクション機構が異なるため、押鍵途中においてm,αがその形態を変える。
【0072】
グランドピアノでは、バネが作用するところとしてレペティションバネがあり、電子鍵盤楽器では鍵復帰バネが数1の〈3〉項に対応する。また、グランドピアノには主にレペティションレバーとハンマ(ローラスキン)とのこすれ構造等、こすれるところが多数あり、その摩擦力が〈2〉項に対応するが、従来の電子鍵盤楽器では、タッチ感触に影響する程のこすれ部は存在していなかった。
【0073】
極論を云えば、グランドピアノの鍵盤そのものを用いて電子音源回路を搭載すれば最高の電子鍵盤楽器が得られるが、それはコスト的に実現できないことである。そこで、この発明がなされたのである。
【0074】
一般に、運動をする(している/やめる)物体について、その物体が外界に対して与える力(数1の右辺)と物体へ作用する力(左辺)とは数1の関係が成り立つことを述べたが、この実施例のタッチ感触は、特に〈1〉項と〈2〉項がたくみにからみ合って、静的レットオフ感と動的レットオフ感とが良好に付与される(図18参照)。
【0075】
これを詳細に検証する。まず、静的レットオフ感について検証する。
グランドピアノでは、押鍵初期には大きな摩擦力は発生せず、押鍵ストローク前半は数1の式で〈1〉項は加速度が重力加速度であるので、鍵操作部が指に与える力はほぼ50〜60gに設定されてる。μ,Nも共にほぼゼロなので〈2〉項もほぼゼロであり、バネ力も作用しないので〈3〉項もゼロであるので、
F=Mα=50〜60gを受けながら動く。
【0076】
押鍵ストロークの後半において、レペティションバネに抗してレギュレーティングボタンがジャックを押していくので〈3〉項の力が発生する。これに続いてジャックの上にハンマが載ったところ(ジャックとハンマローラの当接)から、摩擦力が増大するので〈2〉項の力が発生する。この摩擦がオフになるときに静的レットオフ感が発生する。
【0077】
この発明の場合、押鍵ストローク前半は〈1〉項のF=mαに左右されて動く。弾性片持ち片30aが上限ストッパ33に当たる押鍵ストローク後半から(図16の(ハ)から)、F=mα+(ks+ksh)・x に左右されて動き、反力が増大する。ここで ksh は弾性片持ち片30aのバネ定数である。
【0078】
そして、レットオフレバー23が上限ストッパ33に当接する。ピアニシモ以下の場合は、質量体アッセンブリ20特に第2アーム22が左旋方向の慣性モーメントを有していないので、その第2アーム当接部23aと第2アーム22の第1当接面22cとの当接部をスライドさせ始める。この時摩擦力が発生する。すなわち、F=mα+μN+kso・x に左右されて動く。
ここで、kso=ks +ksh である。そして、レットオフレバー23と第2アーム22との係合が外れると、数1の式の〈2〉項がほぼゼロになるため、脱進感(静的レットオン感)を得る。
【0079】
次に、動的レットオフ感について検証する。
グランドピアノでは、タッチがピアニシモ以上の場合ハンマが押鍵にアクティブに連動する。一般に物体が動く時と止まる時に慣性力が働くことが知られている。この慣性力を慣性モーメントIという形で表すと、I=mr2 となる。ここで、rは例えば回動支点sと押鍵位置との距離であり、慣性モーメントは回転するものを前提として系ができている。
【0080】
そして、外力のモーメントをN,角速度をωとすると、N=I(dω/dt)で表わせる。この式は、明らかに前記数1の式の〈1〉項と同じ概念で捉えることができる。上記式における慣性モーメントIを質量mに、角加速度dω/dtを加速度αに、外力のモーメントNを力Fに置き換えると、数1の式の〈1〉項と同じように扱える。
【0081】
そこで、グランドピアノの場合、押鍵初期には数1の右辺の全項の系が働くが、特に目立つのは〈1〉項である。すなわち、ハンマが動き出すのに必要な慣性力を得るために数1の〈1〉項により大きな反力を指に受ける。
【0082】
そして、押鍵終了の直前で、鍵とハンマの連動が解消される。すなわち、鍵からの力を受けずにハンマが弦に近づいていくので、ハンマが有する慣性モーメントが減少し、動的脱進感が得られる。これらの動作は、数1の全項が同時に起っているのであるが、特に押鍵初期を除いた後半において、ハンマが有する全項がなくなったと同様の作用を指に受ける。
【0083】
これに対し、前述したこの発明の実施例においても、押鍵初期には数1の右辺の全項が働く。但し、レットオフレバー23(ジャックに相当する)と第2アーム22(ハンマに相当する質量体)との嵌合部に、図16の(イ)に示したように遊び(隙間)が上下にあるため、次のような目的を果たす。
上記嵌合部の遊び(0.3mm〜1.0mm)の目的は、鍵復帰時(再発音を可能にする時)のレットオフレバー23と第2アーム22との嵌合をスムーズにさせることである。
【0084】
タッチがピアニシモ以上の場合慣性力が働くので、図16の(イ)の状態から(ロ)の状態を経て(ハ),(ニ),(ホ)と状態を変える。したがって、押鍵初期の最初期には上記遊びのために、第2アーム22は慣性力で動こうとしない。第2アーム22は(ロ)の状態の後、上限ストッパ33に向かって動き始める。この時は、数1の式における〈1〉項を目立たせながら全項作用している。
【0085】
弱い方のタッチでは加速度が小さいだけであって、図16の(ロ)から(ニ)の状態では弱,強タッチにおいて〈1〉項による力に変化はない。(ハ)で弾性片持ち片30aが上限ストッパ33に当接した時点から、静的レットオフの場合と同様にkso・x が増す。(ニ)でμNが増して(主にNが増す)摩擦面がずれていく。レットオフレバー23と第2アーム22との嵌合がはずれると、kso・x は減少し、回転モーメントも減少して(ホ)の状態に至る。
【0086】
強いタッチの場合、慣性モーメントがなぜ減少するかというと、慣性モーメントの要素である質量mの大部分を占める第2アーム22が鍵から解き放たれてフリーな動きをすることによる。つまり、m1−m2(m1は鍵及びアクション部材全体の質量、m2は第2アームの質量)に仮想的に質量が小さくなるため、結果として慣性モーメントが減少する。
【0087】
図18に、この発明による鍵盤装置の鍵ストローク(mm)と荷重(反力:kg)の関係の実測結果を線図で示す。実線は押鍵強さが中強(mf)の場合、一点鎖線は中弱(mp)の場合、二点鎖線は弱(p)の場合で、いずれも指を鍵に添えて打鍵した場合である。P1,P2,P3の各ポイントは、レットオフレバー23が上限ストッパ33に当接する点である。
【0088】
この線図において、極大値からのディップ量(D1,D2,D3)が動的レットオフ感の大きさを表わしており、打鍵強度が大きい程そのレベルが大となり、図示の場合は、D1<D2<D3 となる。これは、F=mα の式において、加速度αは打鍵強度が大きい程大きいため、質量との積であるmαも大きくなるので、質量体が鍵から解放されたときの質量の減少によるmαの減少量(図18に1,D2,D3)も大きくなるのである。
【0089】
この図18に示す特性は、グランドピアノの特性に極めて近似しており、この実施例によってグランドピアノに近似した動的レットオフ感が得られることが実証された。
このように、この発明の第1実施例によれば、グランドピアノと同様な高級タッチ感が得られる鍵盤装置を比較的安価に提供することができる。
【0090】
特にこの実施例では、質量体本体である第2アーム22と、ウイペン機能部材(第1アーム21及びレットオフレバー23)とを集成して、アクション部材である質量体アッセンブリ20を構成し、押鍵途中のストローク位置で質量体本体を解放するようにした点に特徴を有する。
この実施例は、電子ピアノの鍵盤装置として好適であるが、その他の鍵盤楽器にも利用でき、また、ピアノや電子ピアノ等の鍵盤楽器の練習装置としても使用できる。
【0091】
〔第2実施例〕
次に、この発明の第2実施例を図19及び図20によって説明する。
この第2実施例は、この発明を鍵盤を電磁アクチュエータで駆動して自動演奏する自動演奏用鍵盤装置に適用した実施例であり、図19は前述した第1実施例の図1と同様な非押鍵状態における白鍵の長手方向に沿う断面図である。
この第2実施例の機構及び作用は殆ど第1実施例と共通しているので、図1と共通する部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0092】
この図19及び図20に示す第2実施例において第1実施例と異なるのは、鍵盤を構成する各白鍵5W及び図示していない黒鍵5B(図1参照)に、それぞれその後端面5gからさらに後方へ延びる後方延設部5hを設けると共に、その後端部付近の両側壁間に、棚板3上に各鍵ごとに立設した電磁アクチュエータ40のアクチュエータ部40aを嵌入させ、それをピン41によって枢着した点である。この枢着部のD−D線に沿う断面図を図20に示す。
【0093】
すなわち、この実施例における鍵はシーソー鍵であり、後方延設部5h側を電磁アクチュエータ40のアクチュエータ部40aで押し上げることによって、前端部側を演奏者が押鍵操作した場合と同様に鍵側支点部6を中心に回動させて、自動演奏することができる。
その電磁アクチュエータ40は、予め記憶されているか外部から入力される演奏情報に基づいて、図示しない制御回路及び駆動回路によって通電制御され、通電時にアクュエータ部40aを突出させるが、非通電時にはアクチュエータ部40aをフリーにしている。そのアクチュエータ部40aは軽量であり、演奏者の押鍵による演奏時には、前述したタッチ感に殆ど影響しない。
【0094】
前記第1実施例(図1等)とこの第2実施例(図19)とでわかるように、この発明で使用される鍵は、支点構造を図示のような構造に工夫することにより、ほとんど構造を変えずに鍵を短かくも長くもすることができる。すなわち、鍵構造を変更しても、鍵金型の大部分を共通使用することができる。
【0095】
〔第3実施例〕
次に、この発明の第3実施例を図21によって説明する。
この第3実施例は、第1実施例におけるアクション機構を簡略化したものであり、図21はその鍵盤装置の図1と同様な非押鍵状態における黒鍵の長手方向に沿う断面図である。この図21において図1とほぼ同等な部分には同一符号を付してあり、それらの説明は省略する。
【0096】
50は支持部材である鍵盤フレームであり、鉄板等の金属板の板金加工によって形成され、楽器筐体の棚板3にねじ止め固定(ねじは図示を省略)される。
この鍵盤フレーム50の上部水平面50aの後端部に、樹脂のアウトサート成形によって支持部材側支点部54が、各鍵の支持位置に立設されており、そこに各鍵5(白鍵5W及び黒鍵5Bを総称する)の後端部に設けた鍵側支点部56を嵌入させる。そして、両者間に支点圧接バネ57を係着して、鍵側支点部56を支持部材側支点部54に常時圧接させる。
【0097】
それによって、各鍵5を鍵盤フレーム50に対して上下方向(押鍵方向)及び左右方向(鍵幅方向)に揺動可能に、且つ鍵長手方向の軸線に対するローリングを阻止するように支持する。
この両支点部の構造は、例えば前述した第1実施例の支持部材側支点部4と鍵側支点部6における凹凸関係を逆にした構造にすることができるが、その詳細な説明は省略する。
【0098】
この鍵盤フレーム50の上部水平面50aの前部には、鍵スイッチ用の透孔50bが形成されており、その下側にスイッチ基板12を手前側下がりに傾斜させて、基板保持部材58,59を介して取り付ける。
そのスイッチ基板12の上面には、各鍵に対して2個ずつの椀状弾性部材を用いた鍵スイッチ51,52が鍵長手方向に並んで配設されており、鍵5に設けた2連の鍵スイッチ駆動用アクチュエータ5d′によって、押鍵時に鍵スイッチ51,52の順に押されて接点をONする。
【0099】
これは、押鍵を検知すると同時に、2個の鍵スイッチ51,52がONになるタイミングの時間差によって、その押鍵強さあるいは押鍵速度を検知できるようにしたものであり、鍵スイッチ51,52が2メイクのタッチレスポンス・スイッチを構成している。
【0100】
さらに、この鍵盤フレーム50の透孔50bから切り起こした切り起こし片50dを手前側に折り曲げて水平より若干手前上がりに傾斜させ、その先端部に樹脂によるアウトサート成形による黒鍵ガイド14′を設け、それを各黒鍵5Bの両側壁間に嵌入させ、その両側壁に点接触させて黒鍵5Bの配列方向の位置を規制する。また、この鍵盤フレーム50の下部水平面の前端から立上がった立上り片50fに、樹脂によるアウトサート成形により白鍵ガイド15′を設け、それを各白鍵5Wの両側壁間に嵌入させ、その両側壁に点接触させて、白鍵5Wの配列方向の位置を規制する。
【0101】
この第3実施例では、アクション部材として質量体アーム55を各鍵に対して設けている。この質量体アーム55は、上下方向に屈曲して鍵長手方向に延びるアーム本体55aと、その後端部に固着されてさらに後方へ延びる重り部材55bとからなる。
【0102】
アーム本体55aは樹脂による成形品であり、第1実施例の第1アーム21と同様に、外周に沿った縁部55h及び長手方向に間隔を置いて設けた補強用のリブ状部55iは肉圧であるが、それらによって仕切られた平面部55jは肉薄に形成されており、充分な強度を確保しながら成形時のひけを防止すると共に、なるべく軽量にして質量体アーム全体の重心ができるだけ後端部寄りになるようにしている。
【0103】
このアーム本体55aは、前部の上方に屈曲した部分の下縁に円柱状の揺動支点部55cを形成しており、その揺動支点部55cが、鍵盤フレーム50の切り起こし片50eを逆L字状に折り曲げて形成した支持部50gに貼着された支持パット61上に載置される。この揺動支点部55cと間隔を置いて対向するように、外周を円孤状に形成した補助支点部55eを設け、支持部50gの下面に貼着された補助パット62に近接させている。支持パット61及び補助パット62は布又はフエルトである。
【0104】
そして、このアーム本体55aの前端部には被駆動部55dが形成され、そこに黒鍵5Bの第1実施例と同様な延設部5b又は白鍵5Wの自由端部付近に設けられた駆動部(アクチュエータ)5c又は5eを係合させて、両者間に圧接バネ60を係着して、駆動部5c又は5eと被駆動部55dとを常に圧接させている。
【0105】
重り部材55bは、鉄等の質量の大きい金属材で、アーム本体55aの後端部に嵌着,ねじ止め,接着等によって固着され、その後端部が上方へクランク状に曲がり、そこにキャップ63を固着している。そのキャップには、下面に下向き円錐状のゴム片等による弾性突起63aを、上面にも上向き円錐状のゴム片等による弾性突起63bをそれぞれ設けている。
【0106】
この各弾性突起63a,63bに対向して、鍵盤フレーム50の下部上面に下限ストッパ64を、上部下面に上限ストッパ65をそれぞれ設けている。この下限ストッパ64及び上限ストッパ65は、フエルト又はゴムからなり、弾性突起63a,63bを当接させて、質量体アーム55の揺動時のバウンドを防止すると共に、その揺動範囲を規制する。
【0107】
この実施例でも黒鍵5Bの自由端部は隣接する白鍵5Wの操作部5Sの下側を通って白鍵の自由端方向に延設し、その延設した自由端部に黒鍵の駆動部5cを形成しているので、第1実施例(図1等)と同様、被駆動部材(質量体アーム55もしくは鍵スイッチ51,52)の駆動部に対するストローク精度が向上する。
【0108】
また、黒鍵5B又は白鍵5Wの操作部を押下すると、その駆動部5c又は5eによって質量体アーム55の被駆動部55dが押し下げられ、被駆動部材である質量体アーム55が、その揺動支点部55cを中心に矢示Eで示す方向に回動する。それによって重り部材55bが上昇し、質量体アーム55の重心が移動するが、その重心の移動量は押鍵ストロークに対して、揺動支点から駆動部と被駆動部の係合点までの距離と揺動支点から重心までの距離との比に応じて拡大される。これがグランドピアノにおけるハンマと同様に機能し、その慣性モーメントによって演奏者の指に押鍵強さに応じたタッチ感を与える。
【0109】
そして、弾性突起63bが上限ストッパ65に当接すると、質量体アーム55の揺動が衝撃を吸収しながら停止されてバウンドが防止される。その後離鍵されると、質量体アーム55が自重によって矢示Eと逆方向に回動復帰し、それに連動して鍵5も上昇復帰される。したがって、この鍵盤装置には鍵復帰用のスプリングを設けていない。
【0110】
この実施例によっても、従来のこの種の鍵盤装置(例えば、実公平5−954号公報に見られるようなもの)に比べて、アクション部材のストローク精度及びタッチ感触精度が向上するとともに、ローコスト化を計ることができるのは、前述した第1実施例の場合と同様であるが、これらの点について図23を用いて補足説明する。
【0111】
この図23におけるBKとWK及びGbとGwは、それぞれ図21における黒鍵5Bと白鍵5W及び黒鍵用と白鍵用の質量体アーム55に対応し、図23における支点O,揺動支点Q,位置Pは、それぞれ図21における支持部材側支点部54と鍵側支点部56による揺動支点,質量体アーム55の揺動支点部55cと支持パット61との接触部による揺動支点、鍵の駆動部5c又は5eによる質量体アーム55の駆動位置(被駆動部55dとの係合位置)にそれぞれ該当する。
【0112】
まずストローク精度の観点から説明すると、白鍵WKと黒鍵BKの支点Oからアクション部材Gw,Gbの駆動位置P(この駆動位置Pの下方に設けられるアクチュエータATにより鍵スイッチを押下する場合も同様)までの距離をLとしたとき、これが白黒鍵で同じであるとし、支点Oから白鍵の押鍵位置Pwまでの距離をW1、支点Oから黒鍵の押鍵位置Pbまでの距離をB1とすると、白鍵のストローク精度は、L/W1≒1である(W1≒Lであるから)。
【0113】
一方、黒鍵のストローク精度は、L/B1≒1.2 となる。この数値が大きい方が精度がよいことになるが、従来の鍵盤装置では、一般に L<B1<W1 の関係になっていたので、この値が「1」未満であり、特に白鍵の場合のストローク精度が悪かった。
【0114】
この数値はあくまで一例であるが、この実施例によれば白鍵も黒鍵もアクション部材の駆動位置が白鍵の操作位置付近になっているので、その駆動位置の誤差が操作位置で拡大されることはなく(上記精度が1以上)、黒鍵の場合はむしろ縮小されることになる。したがって、ストローク精度が向上する。
【0115】
タッチ感触(指に受ける反力)については、白鍵WKと黒鍵BKのタッチ感触,を同じにするには、W1/B1=a′/a の関係にすればよい。ここで、a,a′はそれぞれ白鍵用と黒鍵用のアクション部材Gw,GbのP−Q間の水平方向の距離である。そして、アクション部材Gw,Gbの揺動支点Qから後方部分(B部)の水平方向の長さをb,b′とすると、b/a≫1(b/a=3〜4)であるから、b′=b すなわちB部は白黒鍵用同一にして、短いA部を少し変えるだけで白黒鍵同一タッチ感を実現することができる。
【0116】
例えば、説明を簡単にするため
a=50mm b=200mm a′/a=1.2
としたとき、b=b′として a′=1.2a=60mm となり、黒鍵用のアクション部材のB部を白鍵用のアクション部材のB部より10mm長くするだけでよくなる。
【0117】
これを鍵長手方向に割り振ることができるので、白鍵用と黒鍵用のアクション部材、すなわち図21における質量体アーム55を殆ど同じ位置に配置することができる。それによって、アクション部材に対する各ストッパや支持部材側支点部を全鍵共通に使用できる。
【0118】
そして、図21に示した実施例では、質量体アーム55の一点鎖線Y−Yから右側の長い部分を白鍵用と黒鍵用で同一に形成し、左側の短い部分だけを白鍵用の方を黒鍵用のものより少し短かく形成している。
この場合でも、支持部50g及びその上下面の支持パット61と補助パット62、下限ストッパ64と上限ストッパ65は、全鍵共通にして鍵配列方向に細長く配設している。
【0119】
また、この質量体アーム55のような樹脂部品を成形するには、アンダーカット回避構造であっても原理的には2金型でよいはずであるが、実際には4〜8個に分割した分割金型を使用する。その理由は、加工のしやすさのためと、失敗があっても部分的にそのブロックを取り替えるだけで済むからである。
そこで、この実施例の質量体アーム55のアーム本体55aを成形するには、白鍵用と黒鍵用とで一点鎖線Y−Yから左側の部分だけ変えればよいので、分割金型の大部分を共通に使用できることになる。
【0120】
例えば、右側部分用の共通の分割金型に白鍵用の左側部分成形用の分割金型を組み合わせて、白鍵用のアーム本体55aを所要個数製造し、その後左側部分成形用の分割金型のみを黒鍵用のものに組み替えて、黒鍵用のアーム本体55aを所要個数製造することができる。
したがって、使用する金型の種類が大幅に少なくなり、ローコスト化を計ることができる。
【0121】
〔第4実施例〕
次に、この発明の第4実施例を図22によって説明する。
図22は、この発明の第4実施例を示す図1と同様な非押鍵状態における黒鍵の長手方向に沿う断面図であり、図1と同一あるいは対応する部分には同一符号を付してあり、それらの説明は省略する。
【0122】
この第4実施例は、アクション部材を設けておらず、鍵の駆動部によって駆動される被駆動部材として鍵スイッチのみを設けたものである。
そのため、第2フレーム2の前部に鍵スイッチ用の透孔2aを形成し、その下面側にスイッチ基板12を基板保持部材71,72によって保持している。そのスイッチ基板12の上面に椀状弾性部材を用いた鍵スイッチ73を、各鍵に対応させて配設しており、その椀状弾性部材を透孔2aから突出させている。
【0123】
黒鍵5Bの自由端部を、隣接する白鍵5Wの操作部の下側を通してその自由端部方向に延設した延設部5bの先端部(自由端部)に、下向きに鍵スイッチ駆動用アクチュエータ5iを突設して、対応する鍵スイッチ73の椀状弾性部材に対向させている。図中に仮想線で示す白鍵5Wの自由端部付近にも、下向きに鍵スイッチ駆動用アクチュエータ5jを突設して、対応する鍵スイッチ73の椀状弾性部材に対向させている。74は第1フレーム1上の黒鍵ガイド14の後側に近接して配設した白黒鍵共通のストッパで、フエルト等によって全鍵共通に鍵配列方向に沿って貼着している。
【0124】
この実施例によれば、白黒鍵共にその揺動支点からの距離を充分にとった位置(白鍵操作位置付近)に鍵スイッチ駆動用のアクチュエータ5j,5iを設けているので、押鍵ストロークに対して鍵スイッチ73がONになる位置の誤差が拡大されることがなく、発音開始点のストローク精度を向上させることができる。
【0125】
しかも、白黒鍵でほぼ同一の精度が得られ、鍵スイッチ73も鍵長手方向の同じ位置に鍵配列方向に沿って列設すればよいので、スイッチ基板12を複雑化することがなく、組立て性もよい。
なお、鍵スイッチとして、図21に示した第3実施例のような2メイクのタッチレスポンス・スイッチを設けるようにしてもよい。
【0126】
〔その他の適用例〕
上述したこの発明の各実施例は鍵スイッチを備えており、その鍵スイッチのON信号によって電子音源回路を用いて楽音を発生する電子ピアノや電子オルガン等の電子鍵盤楽器の鍵盤装置の例であるが、この発明による鍵盤装置はこれに限るものではない。
例えば、鍵操作によって直接またはアクション機構を介して弦や振動板等の発音体を振動させたり、弁を開閉して吹奏音を発生したりする鍵盤楽器、あるいはその発音を電気的に増幅して放音する鍵盤電気楽器、さらにはアクション機構を有するピアノや電子ピアノ等の練習用鍵盤装置などにも適用できる。
【0127】
【発明の効果】
以上説明してきたように、この発明による鍵盤装置は、鍵長が長い場合でも寸法誤差を吸収でき、全ストロークに亘って無理のないスムーズな鍵駆動ができる。その場合、各鍵と鍵ガイド部材との間にねじれる方向の作用力が生じることはなく、各鍵の配列位置が揃い且つスムーズな鍵操作が可能になる。
【0128】
また、鍵側支点部は楔状壁面を形成しており、付勢手段の付勢力によって常時支持部材側支点部の突状体に押し付けられているため、楔効果によってガタが生じないので雑音を発することがなく、自動調芯される効果もある。
各鍵の楔状壁面形成部の後面を鍵後端面とすることにより、鍵側支点部の強度が増すとともに、その後端面を後方へ延設することによってシーソ型鍵にすることができる。鍵側支点部を各鍵の操作部の後方で鍵長手方向の中間部に設けた場合はシーソ型鍵となり、電磁アクチュエータを用いて各鍵を動作させて自動演奏を行なうことができる鍵盤装置において、安定した鍵動作が可能になる。
【0129】
さらに、設計の自由度が増し、オルガンキーとピアノキーのように、タッチ感がま全然違う鍵に対してもその揺動支点部の構造を共通化して、それを成形する際に金型の一部又は全部を共用することも可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施例を示す鍵盤装置の非押鍵状態における黒鍵の長手方向に沿う断面図である。
【図2】同じくその最大ストローク押鍵状態における白鍵の長手方向に沿う断面図である。
【図3】同じくその鍵盤装置の鍵を一部取外して示す部分的な平面図である。
【図4】図2におる白鍵5Wと白鍵ガイド15との当接状態を示す鍵幅方向の断面図である。
【図5】図1及び図2に示す第1リーフスプリング24の平面図である。
【図6】同じくレットオフレバー23の平面図である。
【図7】同じく第2リーフスプリング34の平面図である。
【図8】図3において一点鎖線Lで囲んだ支持部材側支点部4付近の拡大平面図である。
【図9】図8のX−X線に沿う断面図である。
【図10】図8の矢示M方向から見た背面図である。
【図11】同じくその斜め前方から見た斜視図である。
【図12】鍵を裏返してその鍵側支点部6付近を斜め前方から見た要部拡大斜視図である。
【図13】図12に示した鍵を図11に示した突状体に支持させた状態の図15のC−C線に沿う断面図である。
【図14】図8及び図13におけるA−A線に沿う断面図である。
【図15】図8及び図13におけるB−B線に沿う断面図である。
【図16】この発明の第1実施例による非押鍵状態から最大ストローク押鍵状態までの質量体アッセンブリ20の主としてウイペン機能部分の動作を段階的に示す説明図である。
【図17】この実施例の作用を説明するための物体の運動系を示す原理図である。
【図18】この発明の鍵盤装置による押鍵ストロークと荷重との関係の実測結果を示す線図である。
【図19】この発明の第2実施例を示す図1と同様な非押鍵状態における白鍵の長手方向に沿う断面図である。
【図20】図19のD−D線に沿う断面図である。
【図21】この発明の第3実施例を示す図1と同様な非押鍵状態における黒鍵の長手方向に沿う断面図である。
【図22】この発明の第4実施例を示す図1と同様な非押鍵状態における黒鍵の長手方向に沿う断面図である。
【図23】この発明の第3実施例によるストローク精度の向上と白黒鍵のアクション部材共通化について説明するための図である。
【符号の説明】
1…第1フレーム(支持部材)、2…第2フレーム、3…棚板(鍵盤装置支持台)4…支持部材側支点部、4a…基部、4b…突状体、4c…円柱面、4f…膨出部(曲面対応部)、5…鍵、5W…白鍵、5B…黒鍵、5b…黒鍵の延設部、5c:黒鍵の駆動部、5d,5d′,5i,5j…鍵スイッチ駆動用アクチュエータ、5e…白鍵の駆動部、5g…後端面、5h…後方延設部、6…鍵側支点部、6a,6b…楔状壁面、6c…楔状壁面形成部、6d…凹曲面、7…板バネ(付勢手段)、10…本体カバー、12…スイッチ基板、13…鍵スイッチ、14,14′…黒鍵ガイド、15,15′…白鍵ガイド、15a…膨出部、6…支持体、20…質量体アッセンブリ(アクション部材)、21…第1アーム(アクション部材本体)、21c…揺動支点部、21d…被駆動部、21e…弾性片、21g…第2アーム係止片、22…第2アーム(質量体)、22a…重り部材、22b…成形部、22c…第1当接面、22d…第2当接面、23…レットオフレバー、23a…第2アーム当接部、23b…ストッパ当接部、24…第1リーフスプリング、25,28…軸、26,27,31…パット、29…緩衝材、30…キャップ、30a…弾性片持ち片、32…下限ストッパ、33…上限ストッパ、34…第2リーフスプリング、40…電磁アクチュエータ、40a…アクチュエータ部、41…ピン、50…鍵盤フレーム(支持部材)、51,52…鍵スイッチ、54…支持部材側支点部、55…質量体アーム(アクション部材)、55a…アーム本体、55b…重り部材、55c…揺動支点部、55d…被駆動部、55e…補助支点部、56…鍵側支点部、57…支点圧接バネ、60…圧接バネ、61…支持パット、62…補助パット、63…キャップ、63a,63b…円錐状の弾性突起、64…下限ストッパ、65…上限ストッパ、71,72…基板保持部材、73…鍵スイッチ、74…鍵ストッパ
Claims (2)
- 支持部材と、この支持部材に対して支点部を中心に揺動自在に設けられた複数の鍵とからなる鍵盤を有する鍵盤装置において、
前記各鍵の操作部の後方で鍵幅方向に対向する2つの内壁面に、楔状壁面を形成した楔状壁面形成部を設け、その楔状壁面形成部の一方の壁面を平面とし、他方の壁面に曲面を形成して鍵側支点部を構成すると共に、
前記支持部材に、前記各鍵に対してそれぞれ立設され、該各鍵の前記楔状壁面間に該鍵の下面側から高さ方向に嵌入する突状体を設け、
該突状体に、前記鍵の楔状壁面の一方である平面と前記嵌入時に線接触する柱面と、前記楔状壁面の他方に形成された曲面に点又はそれに近い小面積で当接する曲面対応部とを設けて支持部材側支点部を構成し、
前記支持部材上に配設され、前記鍵に嵌入して該鍵の配列方向の位置を規制する鍵ガイドを設けたことを特徴とする鍵盤装置。 - 請求項1記載の鍵盤装置において、前記各鍵に前記楔状壁面形成部から後方へ延びる延設部を設け、該延設部に電磁アクチュエータのアクチュエータ部を嵌入させるようにしたことを特徴とする鍵盤装置。
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