JP3593719B2 - 新規なトリフェニルアミン誘導体、その製造方法及び用途 - Google Patents
新規なトリフェニルアミン誘導体、その製造方法及び用途 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3593719B2 JP3593719B2 JP18320194A JP18320194A JP3593719B2 JP 3593719 B2 JP3593719 B2 JP 3593719B2 JP 18320194 A JP18320194 A JP 18320194A JP 18320194 A JP18320194 A JP 18320194A JP 3593719 B2 JP3593719 B2 JP 3593719B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- layer
- general formula
- compound
- organic
- hole transport
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Luminescent Compositions (AREA)
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
- Photoreceptors In Electrophotography (AREA)
- Electroluminescent Light Sources (AREA)
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なトリフェニルアミン誘導体、その製造方法及びその用途に関するものであり、本誘導体は感光材料、有機光導電材料等に使用でき、さらに具体的には、平面光源や表示に使用される有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子あるいは電子写真感光体の正孔輸送材料として有用な材料である。
【0002】
【従来の技術】
感光材料や正孔輸送材料として開発されている有機光導電材料は、低コスト、加工性が多様であり、無公害性などの多くの利点があり、多くの化合物が提案されている。例えば、オキサジアゾール誘導体(米国特許第3,189,447号)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号、特開昭54−59,143号、米国特許第4,150,978号)、トリアリールピラゾリン誘導体(米国特許第3,820,989号、特開昭51−93,224号、特開昭55−108,667号)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,180,730号、米国特許第4,232,103号、特開昭55−144,250号、特開昭56−119,132号)、スチルベン誘導体(特開昭58−190,953号、特開昭59−195,658号)などの有機光導電性材料が開示されている。
【0003】
正孔輸送材料を利用した技術の一つとしては、有機EL素子が挙げられる。有機物質を使用したEL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。一般にELは発光層および該層をはさんだ一対の対向電極から構成されている。発光は、両電極間に電界が印加されると、陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。さらに、この電子が発光層において正孔と再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出する現象である。
【0004】
従来の有機EL素子は、無機EL素子に比べて駆動電圧が高く、発光輝度や発光効率も低かった。また、特性劣化も著しく実用化には至っていなかった。
近年、10V以下の低電圧で発光する高い蛍光量子効率を持った有機化合物を含有した薄膜を積層した有機EL素子が報告され、関心を集めている(アプライド・フィジクス・レターズ、51巻、913ページ、1987年参照)。
この方法は、金属キレート錯体を蛍光体層、アミン系化合物を正孔注入層に使用して、高輝度の緑色発光を得ており、6〜7Vの直流電圧で輝度は数100cd/m2、最大発光効率は1.5lm/Wを達成して、実用領域に近い性能を持っている。
【0005】
しかしながら、現在までの有機EL素子は、構成の改善により発光強度は改良されているが、未だ充分な発光輝度は有していない。また、繰り返し使用時の安定性に劣るという大きな問題を持っている。従って、より大きな発光輝度を持ち、繰り返し使用時での安定性の優れた有機EL素子の開発のために、優れた正孔輸送能力を有し、耐久性のある正孔輸送材料の開発が望まれている。
【0006】
さらに、正孔輸送材料を利用した技術としては、電子写真感光体が挙げられる。電子写真方式は、カールソンにより発明された画像形成法の一つである。この方式は、コロナ放電により感光体を帯電した後、光像露光して感光体に静電潜像を得、該静電潜像にトナーを付着させて現像し、得られたトナー像を紙へ転写することからなる。このような電子写真方式における感光体に要求される基本的な特性としては、暗所において適当な電位が保持されること、暗所における電荷の放電が少ないこと、光照射により速やかに電荷を放電することなどが挙げられる。従来までの電子写真感光体は、セレン、セレン合金、酸化亜鉛、硫化カドミウムおよびテルルなどの無機光導電体が使用されてきた。これらの無機光導電体は、耐久性が高く、耐刷枚数が多いなどの利点を有しているが、製造コストが高く、加工性が劣り、毒性を有するなどの問題点が指摘されている。これらの欠点を克服するために有機感光体の開発が行われているが、従来までの有機光導電材料を正孔輸送材料として用いた電子写真感光体は、帯電性、感度および残留電位などの電子写真特性が、必ずしも満足されているものとは言えないのが現状であり、優れた電荷輸送能力を有し、耐久性のある正孔輸送材料の開発が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐久性のある正孔輸送材料として有用な、新規トリフェニルアミン誘導体、その製造方法及びその用途を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、第一の発明は、一般式[1]で示されるトリフェニルアミン誘導体である。
一般式[1]
【化4】
[式中、A1は一般式[2]で示されるトリフェニルアミン化合物残基を示し、A2は水素原子もしくは一般式[2]で示されるトリフェニルアミン化合物残基を示す。]
一般式[2]
【化5】
[式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、未置換のアルキル基を示す。]
【0009】
第二の発明は、1,2−シクロヘキサジオンと、下記一般式[3]で示されるトリフェニルアミン化合物とを反応させることを特徴とする請求項1記載のトリフェニルアミン誘導体の製造方法である。
一般式[3]
【化6】
[式中、R1〜R4は、上記と同じ意味を表す。]
【0010】
第三の発明は、請求項1記載のトリフェニルアミン誘導体からなる正孔輸送材料である。
【0011】
第四の発明は、一対の電極間に発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子において、少なくとも一層が請求項3記載の正孔輸送材料を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0012】
第五の発明は、導電性支持体上に、電荷発生材料および正孔輸送材料を使用してなる電子写真感光体において、正孔輸送材料が、請求項3記載の正孔輸送材料である電子写真感光体である。
【0013】
本発明における一般式[1]で示される化合物の、A1は一般式[2]で示されるトリフェニルアミン化合物残基を示し、A2は、それぞれ独立に水素原子もしくは、一般式[2]で示されるトリフェニルアミン化合物残基を示す。
式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、未置換のアルキル基である。
R1〜R4の具体例は、未置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基等がある。
【0014】
本発明において、一般式[1]で示される化合物は、新規物質であり、例えば以下の方法により製造することができる。
1,2−シクロヘキサジオンに、4〜5倍モルの下記一般式[3]で示される置換基を有するトリフェニルアミン化合物を酢酸溶媒中、メタンスルホン酸等の酸触媒を用いて脱水反応させることにより、一般式[1]で示されるトリフェニルアミン誘導体を製造することができる。また、本発明で用いられる酸触媒としては、メタンスルホン酸の代わりに、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸の様な有機酸、または、硫酸、塩酸、ルイス酸等も可能である。また、有機溶剤としては、酢酸の他に、1,4−ジオキサン、エーテル、石油エーテル等も可能である。ここで、1,2−シクロヘキサジオン及び一般式[3]の混合比を1:4以下にするとトリフェニルアミン化合物の導入個数が4個より少なくなり、反応時間を20時間以上にすることにより、トリフェニルアミン誘導体の収率が50%以上に向上する。
【0015】
以下に、本発明の化合物の代表例を、表1に具体的に例示するが、本発明は以下の代表例に限定されるものではない。
【0016】
【表1】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
本発明のトリフェニルアミン誘導体は、他の正孔もしくは電子輸送性化合物と混合して使用してもさしつかえない。本発明の化合物は正孔輸送性に優れているので、正孔輸送性材料として極めて有効に使用することができる。
【0022】
また、請求項2の製造方法は、ジカルボニル化合物と前記一般式[3]で示されるトリフェニルアミン化合物との脱水反応を利用する方法であり、工業的に極めて有用な製造方法である。
【0023】
まず、一般式[1]で示される化合物を有機EL素子の正孔輸送材料として用いる場合について説明する。図1〜3に、本発明で使用される有機EL素子構造の模式図の一例を示した。図中、一般的に電極Aである2は陽極であり、電極Bである6は陰極である。また、(電極A/発光層/電子注入層/電極B)の層構成で積層した有機EL素子もあり、一般式[1]の化合物は、どの素子構成においても好適に使用することが出来る。
一般式[1]の化合物は、大きな正孔輸送能力をもっているので、正孔注入層
3もしくは発光層4のいずれの層においても、正孔輸送材料として使用できる。
【0024】
図1の発光層4には、必要があれば、本発明の一般式[1]の化合物に加えて、発光物質、発光補助材料、キャリア輸送を行う正孔輸送材料や電子輸送材料を使用することもできる。
図2の構造は、発光層4と正孔注入層3を分離している。この構造により、正孔注入層3から発光層4への正孔注入効率が向上して、発光輝度や発光効率を増加させることができる。この場合、発光効率のためには、発光層に使用される発光物質自身が電子輸送性であること、または発光層中に電子輸送輸送材料を添加して発光層を電子輸送性にすることが望ましい。
【0025】
図3の構造は、正孔注入層3に加えて電子注入層5を有し、発光層4での正孔と電子の再結合の効率を向上させている。このように、有機EL素子を多層構造にすることにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができる。図2および図3の素子においても、必要があれば、発光物質、発光補助材料、キャリア輸送を行う正孔輸送材料や電子輸送材料を組み合わせて使用することが出来る。また、正孔注入層、発光層、電子注入層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良い。
【0026】
有機EL素子の陽極に使用される導電性物質としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが好適であり、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等およびそれらの合金、ITO基板、NESA基板と称される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。
陰極に使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが好適であり、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン等およびそれらの合金が用いられるが、これらに限定されるものではない。陽極および陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていても良い。
【0027】
有機EL素子では、効率良く発光させるために、2で示される電極Aまたは6で示される電極Bのうち、少なくとも一方は素子の発光波長領域において充分透明にすることが望ましい。また、基板1も透明であることが望ましい。透明電極は、上記した導電性物質を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように設定する。発光面の電極は、光透過率が10%以上であることが望ましい。
【0028】
基板1は、機械的、熱的強度を有し、透明なものであれば限定されるものではないが、例示すると、ガラス基板、ポリエチレン板、ポリエーテルサルフォン板、ポリプロピレン板等の透明樹脂があげられる。
【0029】
本発明に係わる有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング等の湿式成膜法のいずれの方法を適用することができる。膜厚は特に限定されるものではないが、各層は適切な膜厚に設定する必要がある。膜厚が厚すぎると、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり効率が悪くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電界を印加しても充分な発光輝度が得られない。通常の膜厚は5nmから10μmの範囲が好適であるが、10nmから0.2μmの範囲がさらに好ましい。
【0030】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、クロロフォルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な溶媒に溶解または分散させた薄膜を形成する。また、いずれの薄膜においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用しても良い。
このような樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げることができる。
【0031】
本有機EL素子は、発光層、正孔注入層、電子注入層において、必要があれば、一般式[1]の化合物に加えて、公知の発光物質、発光補助材料、正孔輸送材料、電子輸送材料を使用することもできる。
【0032】
公知の発光物質または発光物質の補助材料としては、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、オキシン、アミノキノリン、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレン等およびそれらの誘導体があるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
一般式[1]の正孔輸送材料と併せて使用できる正孔輸送材料としては、正孔を輸送する能力を持ち、発光層または発光物質に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子注入層または電子輸送材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能の優れた化合物が挙げられる。具体的には、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体、およびポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料等があるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
電子輸送材料としては、電子を輸送する能力を持ち、発光層または発光物質に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成した励起子の正孔注入層または正孔輸送材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能の優れた化合物が挙げられる。例えば、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサジアゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体があるが、これらに限定されるものではない。
また、正孔輸送材料に電子受容物質を、電子輸送材料に電子供与性物質を添加することにより増感させることもできる。
【0035】
図1,2および3に示される有機EL素子において、本発明の一般式[1]の化合物は、いずれの層に使用することもでき、一般式[1]の化合物の他に、発光物質、発光補助材料、正孔輸送材料および電子輸送材料の少なくとも1種が同一層に含有されてもよい。
また、本発明により得られた有機EL素子の、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、シリコンオイル等を封入して素子全体を保護することも可能である。
以上のように、本発明では有機EL素子に一般式[1]の化合物を用いたため、発光効率と発光輝度を高くできた。また、この素子は熱や電流に対して非常に安定であり、さらには低い駆動電圧で実用的に使用可能の発光輝度が得られるため、従来まで大きな問題であった劣化も大幅に低下させることができた。
【0036】
本発明の有機EL素子は、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや、平面発光体として、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等
の光源、表示板、標識灯等へ応用が考えられ、その工業的価値は非常に大きい。
【0037】
次に、本発明の一般式[1]で示される化合物を電子写真感光体として用いる場合について説明する。本発明の一般式[1]で示される化合物は、電子写真感光体の何れの層においても使用できるが、高い正孔輸送特性を有することから正孔輸送材料として使用することが望ましい。該化合物は正孔輸送物質として作用し、光吸収により発生した、もしくは電極より注入した電荷を極めて効率よく輸送できるので、高速応答性に優れた感光体を得ることが可能である。また、該化合物は、耐オゾン性、光安定性に優れているので、耐久性に優れた感光体を得ることができる。
【0038】
電子写真感光体は、導電性基板上に電荷発生材料と、必要があれば電荷輸送材料を結着樹脂に分散させてなる感光層を設けた単層型感光体、導電性基板上に下引き層、電荷発生層、正孔輸送層の順に積層した、もしくは導電性基板または下引き層上に正孔輸送層、電荷発生層の順に積層した積層型感光体等がある。ここで、下引き層は必要がなければ使用しなくても良い。該感光体は、必要があれば活性ガスからの表面保護およびトナーによるフィルミング防止等の意味でオーバーコート層を設けることも出来る。
【0039】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、キナクリドン、ジケトピロロピロール、インジゴ、ペリレン、ペリノン、多環キノン、スクアリリウム塩、アズレニウム塩、フタロシアニン、ナフタロシアニン等の有機化合物、もしくは、セレン、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン等の無機物質が挙げられる。
【0040】
感光体の各層は蒸着もしくは分散塗工方式により成膜することが出来る。分散塗工は、スピンコーター、アプリケーター、スプレーコーター、浸漬コーター、ローラーコーター、カーテンコーターおよびビードコーター等を用いて行い、乾燥は室温から200℃、10分から6時間の範囲で静止または送風条件下で行う。乾燥後の感光層の膜厚は単層型感光体の場合、5ミクロンから50ミクロン、積層型感光体の場合、電荷発生層は0.01から5ミクロン、好ましくは0.1から1ミクロンであり、正孔輸送層は5から50ミクロン、好ましくは10から20ミクロンが好適である。
【0041】
単層型感光体の感光層、積層型感光体の電荷発生層もしくは正孔輸送層を形成する際に使用する樹脂は広範な絶縁性樹脂から選択出来る。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンやポリシラン類などの有機光導電性ポリマーから選択出来る。好ましくは、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、フェノキシ、アクリル、ポリアミド、ウレタン、エポキシ、シリコン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、塩酢ビ共重合体、フェノールおよびメラミン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げることが出来る。電荷発生層もしくは正孔輸送層を形成するために使用される樹脂は、電荷発生材料もしくは正孔輸送材料に対して、100重量%以下が好ましいがこの限りではない。樹脂は2種類以上組み合わせて使用しても良い。また、必要があれば樹脂を使用しなくてもよい。また、電荷発生層を蒸着、スパッタリング等の物理的成膜法により形成させることも出来る。蒸着、スパッタリング法では、好ましくは10−5Toor以下の真空雰囲気下で成膜することが望ましい。また、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス中で成膜することも可能である。
【0042】
電子写真感光体の各層を形成する際に使用する溶剤は、下引き層や他の感光層に影響を与えないものから選択することが好ましい。具体的には、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、メチルセロソルブ等のエステル類、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素類、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン
、ジオキサン等のエーテル類等が用いられるがこれらに限られるものではない。
【0043】
正孔輸送層は正孔輸送材料のみ、もしくは正孔輸送材料を樹脂に溶解させた塗液を塗布することにより形成される。本感光体に使用される正孔輸送材料は、一般式[1]の化合物に加えて他の正孔輸送材料を組み合わせて使用することもできる。一般式[1]の化合物は、樹脂との相溶性が良く、結晶が析出しにくいので、感度、耐久性の向上のために有利である。
【0044】
電子写真特性、画像特性等の向上のために、必要があれば基板と有機層の間に下引き層を設けることができ、下引き層としてはポリアミド類、カゼイン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルブチラール等の樹脂類、酸化アルミニウム等の金属酸化物などが用いられる。
【0045】
本発明の材料は、有機EL素子もしくは電子写真感光体の正孔輸送材料としてのみでなく、光電変換素子、太陽電池、イメージセンサー等の分野においても好適に使用できる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。
化合物(1)の合成方法
酢酸18部中に、1,2−シクロヘキサジオン5部、トリフェニルアミン15部、およびメタンスルホン酸1.5部を入れ、100℃にて20時間加熱撹拌した。その後、500部の水で希釈し、希水酸化ナトリウム水溶液で中和した。この後、酢酸エチルで抽出を行い、濃縮し、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して白色の蛍光を有する粉末6部を得た。分子量分析の結果、化合物(1)であることを確認した。
以下に生成物の元素分析結果を示す。
元素分析結果
C78H64N4として
計算値(%):C:88.64 H:6.06 N:5.30
実測値(%):C:88.39 H:6.22 N:5.39
この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図6に示す。
【0047】
化合物(3)の合成方法
酢酸30部中に、1,2−シクロヘキサジオン7部、4,4−ジメチルトリフェニルアミン23部、およびメタンスルホン酸2部を入れ、105℃にて30時間加熱撹拌した。その後、500部の水で希釈し、希水酸化ナトリウム水溶液で中和した。この後、酢酸エチルで抽出を行い、濃縮し、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して黄色の蛍光を有する粉末10部を得た。分子量分析の結果、化合物(3)であることを確認した。
以下に生成物の元素分析結果を示す。
元素分析結果
C86H76N4として
計算値(%):C:88.66 H:6.53 N:4.81
実測値(%):C:88.45 H:6.81 N:4.74
この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図7に示す。
【0048】
実施例1
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(2)、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体、ポリカーボネート樹脂(PC−A)を3:2:5の比率でテトラヒドロフランに溶解させ、スピンコーティング法により膜厚100nmの発光層を得た。その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚150nmの電極を形成して図1に示す有機EL素子を得た。この素子は、直流電圧5Vで150cd/m2の発光が得られた。
【0049】
実施例2
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(3)をテトラヒドロフランに溶解させ、スピンコーティング法により膜厚50nmの正孔注入層を得た。次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を真空蒸着して膜厚30nmの発光層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚100nmの電極を形成して図2に示す有機EL素子を得た。正孔注入層および発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで約270cd/m2の発光が得られた。
【0050】
実施例3
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(5)をテトラヒドロフランに溶解させ、スピンコーティング法により膜厚50nmの正孔注入層を得た。次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を真空蒸着して膜厚30nmの発光層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚100nmの電極を形成して図2に示す有機EL素子を得た。発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで約450cd/m2の発光が得られた。
【0051】
実施例4
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(6)を真空蒸着して、膜厚20nmの正孔注入層を得た。さらに、N,N’―ジフェニル―N,N’―(3―メチルフェニル)―1,1’―ビフェニル―4,4’―ジアミンを真空蒸着して、膜厚30nmの正孔輸送層を得た。次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を真空蒸着して膜厚30nmの発光層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚100nmの電極を形成して有機EL素子を得た。正孔注入層および発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで約330cd/m2の発光が得られた。
【0052】
実施例5
洗浄したITO電極付きガラス板上に、N,N’―ジフェニル―N,N’―(3―メチルフェニル)―1,1’―ビフェニル―4,4’―ジアミンを真空蒸着して、膜厚50nmの正孔注入層を得た。次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体と化合物(10)を3:1の割合で真空蒸着して膜厚50nmの発光層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚150nmの膜厚の電極を形成して図2に示す有機EL素子を得た。正孔注入層および発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで約370cd/m2の発光が得られた。
【0053】
実施例6
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(4)をクロロフォルムに溶解させ、スピンコーティング法により膜厚50nmの正孔注入層を得た。次いで、真空蒸着法によりトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体の膜厚50nmの発光層を作成し、さらに真空蒸着法により[2−(4−tert−ブチルフェニル)−5−(ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール]の膜厚20nmの電子注入層を得た。その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚150nmの電極を形成して図3に示す有機EL素子を得た。この素子は、直流電圧5Vで約550cd/m2の発光が得られた。
【0054】
本実施例で示された全ての有機EL素子について、1mA/cm2で連続発光させたところ、1000時間以上安定な発光を観測することができた。
本発明の有機EL素子は発光効率、発光輝度の向上と長寿命化を達成するものであり、併せて使用される発光物質、発光補助材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、増感剤、樹脂、電極材料等および素子作製方法を限定するものではない。
【0055】
実施例7
ε型銅フタロシアニン4g、化合物(1)2g、ポリエステル樹脂(バイロン200:東洋防(株)製)14gをテトラヒドロフラン80gと共にボールミルで5時間分散した。この分散液をアルミニウム基板上に塗工、乾燥して、図4に示す膜厚20ミクロンの単層型電子写真感光体を作製した。
【0056】
実施例8
ジブロモアントアントロン6g、化合物(3)2g、ポリエステル樹脂(バイロン200:東洋防(株)製)12gをテトラヒドロフラン80gと共にボールミルで5時間分散した。この分散液をアルミニウム基板上に塗工、乾燥して、図4に示す膜厚20ミクロンの単層型電子写真感光体を作製した。
【0057】
実施例9
τ型無金属フタロシアニン2g、ポリビニルブチラール樹脂(BH−3:積水化学(株)製)2gをテトラヒドロフラン96gと共にボールミルで2時間分散した。この分散液をアルミニウム基板上に塗工、乾燥して、膜厚0.3ミクロンの電荷発生層を作製した。次に化合物(4)10g、ポリカーボネート樹脂(L−1250;帝人化成(株)製)10gをジクロロメタン80gに溶解した。この塗液を電荷発生層上に塗工、乾燥して、膜厚20ミクロンの電荷輸送層を形成し、図5に示す積層型電子写真感光体を作製した。
【0058】
実施例10
N,N’−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミド2g、ポリビニルブチラール樹脂(BH−3:積水化学(株)製)2gをテトラヒドロフラン96gと共にボールミルで2時間分散した。この分散液をアルミニウム基板上に塗工、乾燥して、膜厚0.3ミクロンの電荷発生層を作製した。次に化合物(6)10g、ポリカーボネート樹脂(L−1250;帝人化成(株)製)10gをジクロロメタン80gに溶解した。この塗液を電荷発生層上に塗工、乾燥して、膜厚20ミクロンの電荷輸送層を形成し、図5に示す積層型電子写真感光体を作製した。
【0059】
電子写真感光体の電子写真特性は以下の方法で測定した。静電複写紙試験装置(EPA−8100;川口電機製作所(株)製)により、スタティックモード2、コロナ帯電は−5.2(kV)、5(lux)の白色光を照射して、初期表面電位(V0)、V0と2秒間暗所に放置した時の表面電位(V2)の比(暗減衰率:DDR2=V2/V0)、光露光後に帯電量が初期の1/2まで減少する時間から半減露光量感度(E1/2)および光露光3秒後の表面電位(VR3)を調べた。実施例7〜10の電子写真感光体の電子写真特性を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
1万回以上繰り返して電子写真特性を測定したところ、本実施例で示された全ての電子写真感光体について、安定な表面電位、感度を得ることができた。
【0062】
【発明の効果】
本発明により、優れた正孔輸送能力を有する化合物を得ることができた。本発明が提供した化合物は、従来に比べて高発光効率、高輝度であり、長寿命の有機EL素子および感度、正孔輸送特性、初期表面電位、暗減衰率等の初期電子写真特性に優れ、繰り返し使用に対する疲労も少ない電子写真感光体を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用した有機EL素子の概略構造を表す断面図
【図2】実施例で使用した有機EL素子の概略構造を表す断面図
【図3】実施例で使用した有機EL素子の概略構造を表す断面図
【図4】実施例で使用した電子写真感光体の概略構造を表す断面図
【図5】実施例で使用した電子写真感光体の概略構造を表す断面図
【図6】化合物1の赤外吸収スペクトル図
【図7】化合物3の赤外吸収スペクトル図
【符号の説明】
1.基板
2.電極A
3.正孔注入層
4.発光層
5.電子注入層
6.電極B
7.Al基板
8.感光層
9.電荷発生層
10.正孔輸送層
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なトリフェニルアミン誘導体、その製造方法及びその用途に関するものであり、本誘導体は感光材料、有機光導電材料等に使用でき、さらに具体的には、平面光源や表示に使用される有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子あるいは電子写真感光体の正孔輸送材料として有用な材料である。
【0002】
【従来の技術】
感光材料や正孔輸送材料として開発されている有機光導電材料は、低コスト、加工性が多様であり、無公害性などの多くの利点があり、多くの化合物が提案されている。例えば、オキサジアゾール誘導体(米国特許第3,189,447号)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号、特開昭54−59,143号、米国特許第4,150,978号)、トリアリールピラゾリン誘導体(米国特許第3,820,989号、特開昭51−93,224号、特開昭55−108,667号)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,180,730号、米国特許第4,232,103号、特開昭55−144,250号、特開昭56−119,132号)、スチルベン誘導体(特開昭58−190,953号、特開昭59−195,658号)などの有機光導電性材料が開示されている。
【0003】
正孔輸送材料を利用した技術の一つとしては、有機EL素子が挙げられる。有機物質を使用したEL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。一般にELは発光層および該層をはさんだ一対の対向電極から構成されている。発光は、両電極間に電界が印加されると、陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。さらに、この電子が発光層において正孔と再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出する現象である。
【0004】
従来の有機EL素子は、無機EL素子に比べて駆動電圧が高く、発光輝度や発光効率も低かった。また、特性劣化も著しく実用化には至っていなかった。
近年、10V以下の低電圧で発光する高い蛍光量子効率を持った有機化合物を含有した薄膜を積層した有機EL素子が報告され、関心を集めている(アプライド・フィジクス・レターズ、51巻、913ページ、1987年参照)。
この方法は、金属キレート錯体を蛍光体層、アミン系化合物を正孔注入層に使用して、高輝度の緑色発光を得ており、6〜7Vの直流電圧で輝度は数100cd/m2、最大発光効率は1.5lm/Wを達成して、実用領域に近い性能を持っている。
【0005】
しかしながら、現在までの有機EL素子は、構成の改善により発光強度は改良されているが、未だ充分な発光輝度は有していない。また、繰り返し使用時の安定性に劣るという大きな問題を持っている。従って、より大きな発光輝度を持ち、繰り返し使用時での安定性の優れた有機EL素子の開発のために、優れた正孔輸送能力を有し、耐久性のある正孔輸送材料の開発が望まれている。
【0006】
さらに、正孔輸送材料を利用した技術としては、電子写真感光体が挙げられる。電子写真方式は、カールソンにより発明された画像形成法の一つである。この方式は、コロナ放電により感光体を帯電した後、光像露光して感光体に静電潜像を得、該静電潜像にトナーを付着させて現像し、得られたトナー像を紙へ転写することからなる。このような電子写真方式における感光体に要求される基本的な特性としては、暗所において適当な電位が保持されること、暗所における電荷の放電が少ないこと、光照射により速やかに電荷を放電することなどが挙げられる。従来までの電子写真感光体は、セレン、セレン合金、酸化亜鉛、硫化カドミウムおよびテルルなどの無機光導電体が使用されてきた。これらの無機光導電体は、耐久性が高く、耐刷枚数が多いなどの利点を有しているが、製造コストが高く、加工性が劣り、毒性を有するなどの問題点が指摘されている。これらの欠点を克服するために有機感光体の開発が行われているが、従来までの有機光導電材料を正孔輸送材料として用いた電子写真感光体は、帯電性、感度および残留電位などの電子写真特性が、必ずしも満足されているものとは言えないのが現状であり、優れた電荷輸送能力を有し、耐久性のある正孔輸送材料の開発が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐久性のある正孔輸送材料として有用な、新規トリフェニルアミン誘導体、その製造方法及びその用途を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、第一の発明は、一般式[1]で示されるトリフェニルアミン誘導体である。
一般式[1]
【化4】
[式中、A1は一般式[2]で示されるトリフェニルアミン化合物残基を示し、A2は水素原子もしくは一般式[2]で示されるトリフェニルアミン化合物残基を示す。]
一般式[2]
【化5】
[式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、未置換のアルキル基を示す。]
【0009】
第二の発明は、1,2−シクロヘキサジオンと、下記一般式[3]で示されるトリフェニルアミン化合物とを反応させることを特徴とする請求項1記載のトリフェニルアミン誘導体の製造方法である。
一般式[3]
【化6】
[式中、R1〜R4は、上記と同じ意味を表す。]
【0010】
第三の発明は、請求項1記載のトリフェニルアミン誘導体からなる正孔輸送材料である。
【0011】
第四の発明は、一対の電極間に発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子において、少なくとも一層が請求項3記載の正孔輸送材料を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0012】
第五の発明は、導電性支持体上に、電荷発生材料および正孔輸送材料を使用してなる電子写真感光体において、正孔輸送材料が、請求項3記載の正孔輸送材料である電子写真感光体である。
【0013】
本発明における一般式[1]で示される化合物の、A1は一般式[2]で示されるトリフェニルアミン化合物残基を示し、A2は、それぞれ独立に水素原子もしくは、一般式[2]で示されるトリフェニルアミン化合物残基を示す。
式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、未置換のアルキル基である。
R1〜R4の具体例は、未置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基等がある。
【0014】
本発明において、一般式[1]で示される化合物は、新規物質であり、例えば以下の方法により製造することができる。
1,2−シクロヘキサジオンに、4〜5倍モルの下記一般式[3]で示される置換基を有するトリフェニルアミン化合物を酢酸溶媒中、メタンスルホン酸等の酸触媒を用いて脱水反応させることにより、一般式[1]で示されるトリフェニルアミン誘導体を製造することができる。また、本発明で用いられる酸触媒としては、メタンスルホン酸の代わりに、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸の様な有機酸、または、硫酸、塩酸、ルイス酸等も可能である。また、有機溶剤としては、酢酸の他に、1,4−ジオキサン、エーテル、石油エーテル等も可能である。ここで、1,2−シクロヘキサジオン及び一般式[3]の混合比を1:4以下にするとトリフェニルアミン化合物の導入個数が4個より少なくなり、反応時間を20時間以上にすることにより、トリフェニルアミン誘導体の収率が50%以上に向上する。
【0015】
以下に、本発明の化合物の代表例を、表1に具体的に例示するが、本発明は以下の代表例に限定されるものではない。
【0016】
【表1】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
本発明のトリフェニルアミン誘導体は、他の正孔もしくは電子輸送性化合物と混合して使用してもさしつかえない。本発明の化合物は正孔輸送性に優れているので、正孔輸送性材料として極めて有効に使用することができる。
【0022】
また、請求項2の製造方法は、ジカルボニル化合物と前記一般式[3]で示されるトリフェニルアミン化合物との脱水反応を利用する方法であり、工業的に極めて有用な製造方法である。
【0023】
まず、一般式[1]で示される化合物を有機EL素子の正孔輸送材料として用いる場合について説明する。図1〜3に、本発明で使用される有機EL素子構造の模式図の一例を示した。図中、一般的に電極Aである2は陽極であり、電極Bである6は陰極である。また、(電極A/発光層/電子注入層/電極B)の層構成で積層した有機EL素子もあり、一般式[1]の化合物は、どの素子構成においても好適に使用することが出来る。
一般式[1]の化合物は、大きな正孔輸送能力をもっているので、正孔注入層
3もしくは発光層4のいずれの層においても、正孔輸送材料として使用できる。
【0024】
図1の発光層4には、必要があれば、本発明の一般式[1]の化合物に加えて、発光物質、発光補助材料、キャリア輸送を行う正孔輸送材料や電子輸送材料を使用することもできる。
図2の構造は、発光層4と正孔注入層3を分離している。この構造により、正孔注入層3から発光層4への正孔注入効率が向上して、発光輝度や発光効率を増加させることができる。この場合、発光効率のためには、発光層に使用される発光物質自身が電子輸送性であること、または発光層中に電子輸送輸送材料を添加して発光層を電子輸送性にすることが望ましい。
【0025】
図3の構造は、正孔注入層3に加えて電子注入層5を有し、発光層4での正孔と電子の再結合の効率を向上させている。このように、有機EL素子を多層構造にすることにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができる。図2および図3の素子においても、必要があれば、発光物質、発光補助材料、キャリア輸送を行う正孔輸送材料や電子輸送材料を組み合わせて使用することが出来る。また、正孔注入層、発光層、電子注入層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良い。
【0026】
有機EL素子の陽極に使用される導電性物質としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが好適であり、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等およびそれらの合金、ITO基板、NESA基板と称される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。
陰極に使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが好適であり、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン等およびそれらの合金が用いられるが、これらに限定されるものではない。陽極および陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていても良い。
【0027】
有機EL素子では、効率良く発光させるために、2で示される電極Aまたは6で示される電極Bのうち、少なくとも一方は素子の発光波長領域において充分透明にすることが望ましい。また、基板1も透明であることが望ましい。透明電極は、上記した導電性物質を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように設定する。発光面の電極は、光透過率が10%以上であることが望ましい。
【0028】
基板1は、機械的、熱的強度を有し、透明なものであれば限定されるものではないが、例示すると、ガラス基板、ポリエチレン板、ポリエーテルサルフォン板、ポリプロピレン板等の透明樹脂があげられる。
【0029】
本発明に係わる有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング等の湿式成膜法のいずれの方法を適用することができる。膜厚は特に限定されるものではないが、各層は適切な膜厚に設定する必要がある。膜厚が厚すぎると、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり効率が悪くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電界を印加しても充分な発光輝度が得られない。通常の膜厚は5nmから10μmの範囲が好適であるが、10nmから0.2μmの範囲がさらに好ましい。
【0030】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、クロロフォルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な溶媒に溶解または分散させた薄膜を形成する。また、いずれの薄膜においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用しても良い。
このような樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げることができる。
【0031】
本有機EL素子は、発光層、正孔注入層、電子注入層において、必要があれば、一般式[1]の化合物に加えて、公知の発光物質、発光補助材料、正孔輸送材料、電子輸送材料を使用することもできる。
【0032】
公知の発光物質または発光物質の補助材料としては、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、オキシン、アミノキノリン、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレン等およびそれらの誘導体があるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
一般式[1]の正孔輸送材料と併せて使用できる正孔輸送材料としては、正孔を輸送する能力を持ち、発光層または発光物質に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子注入層または電子輸送材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能の優れた化合物が挙げられる。具体的には、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体、およびポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料等があるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
電子輸送材料としては、電子を輸送する能力を持ち、発光層または発光物質に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成した励起子の正孔注入層または正孔輸送材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能の優れた化合物が挙げられる。例えば、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサジアゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体があるが、これらに限定されるものではない。
また、正孔輸送材料に電子受容物質を、電子輸送材料に電子供与性物質を添加することにより増感させることもできる。
【0035】
図1,2および3に示される有機EL素子において、本発明の一般式[1]の化合物は、いずれの層に使用することもでき、一般式[1]の化合物の他に、発光物質、発光補助材料、正孔輸送材料および電子輸送材料の少なくとも1種が同一層に含有されてもよい。
また、本発明により得られた有機EL素子の、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、シリコンオイル等を封入して素子全体を保護することも可能である。
以上のように、本発明では有機EL素子に一般式[1]の化合物を用いたため、発光効率と発光輝度を高くできた。また、この素子は熱や電流に対して非常に安定であり、さらには低い駆動電圧で実用的に使用可能の発光輝度が得られるため、従来まで大きな問題であった劣化も大幅に低下させることができた。
【0036】
本発明の有機EL素子は、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや、平面発光体として、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等
の光源、表示板、標識灯等へ応用が考えられ、その工業的価値は非常に大きい。
【0037】
次に、本発明の一般式[1]で示される化合物を電子写真感光体として用いる場合について説明する。本発明の一般式[1]で示される化合物は、電子写真感光体の何れの層においても使用できるが、高い正孔輸送特性を有することから正孔輸送材料として使用することが望ましい。該化合物は正孔輸送物質として作用し、光吸収により発生した、もしくは電極より注入した電荷を極めて効率よく輸送できるので、高速応答性に優れた感光体を得ることが可能である。また、該化合物は、耐オゾン性、光安定性に優れているので、耐久性に優れた感光体を得ることができる。
【0038】
電子写真感光体は、導電性基板上に電荷発生材料と、必要があれば電荷輸送材料を結着樹脂に分散させてなる感光層を設けた単層型感光体、導電性基板上に下引き層、電荷発生層、正孔輸送層の順に積層した、もしくは導電性基板または下引き層上に正孔輸送層、電荷発生層の順に積層した積層型感光体等がある。ここで、下引き層は必要がなければ使用しなくても良い。該感光体は、必要があれば活性ガスからの表面保護およびトナーによるフィルミング防止等の意味でオーバーコート層を設けることも出来る。
【0039】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、キナクリドン、ジケトピロロピロール、インジゴ、ペリレン、ペリノン、多環キノン、スクアリリウム塩、アズレニウム塩、フタロシアニン、ナフタロシアニン等の有機化合物、もしくは、セレン、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン等の無機物質が挙げられる。
【0040】
感光体の各層は蒸着もしくは分散塗工方式により成膜することが出来る。分散塗工は、スピンコーター、アプリケーター、スプレーコーター、浸漬コーター、ローラーコーター、カーテンコーターおよびビードコーター等を用いて行い、乾燥は室温から200℃、10分から6時間の範囲で静止または送風条件下で行う。乾燥後の感光層の膜厚は単層型感光体の場合、5ミクロンから50ミクロン、積層型感光体の場合、電荷発生層は0.01から5ミクロン、好ましくは0.1から1ミクロンであり、正孔輸送層は5から50ミクロン、好ましくは10から20ミクロンが好適である。
【0041】
単層型感光体の感光層、積層型感光体の電荷発生層もしくは正孔輸送層を形成する際に使用する樹脂は広範な絶縁性樹脂から選択出来る。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンやポリシラン類などの有機光導電性ポリマーから選択出来る。好ましくは、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、フェノキシ、アクリル、ポリアミド、ウレタン、エポキシ、シリコン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、塩酢ビ共重合体、フェノールおよびメラミン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げることが出来る。電荷発生層もしくは正孔輸送層を形成するために使用される樹脂は、電荷発生材料もしくは正孔輸送材料に対して、100重量%以下が好ましいがこの限りではない。樹脂は2種類以上組み合わせて使用しても良い。また、必要があれば樹脂を使用しなくてもよい。また、電荷発生層を蒸着、スパッタリング等の物理的成膜法により形成させることも出来る。蒸着、スパッタリング法では、好ましくは10−5Toor以下の真空雰囲気下で成膜することが望ましい。また、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス中で成膜することも可能である。
【0042】
電子写真感光体の各層を形成する際に使用する溶剤は、下引き層や他の感光層に影響を与えないものから選択することが好ましい。具体的には、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、メチルセロソルブ等のエステル類、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素類、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン
、ジオキサン等のエーテル類等が用いられるがこれらに限られるものではない。
【0043】
正孔輸送層は正孔輸送材料のみ、もしくは正孔輸送材料を樹脂に溶解させた塗液を塗布することにより形成される。本感光体に使用される正孔輸送材料は、一般式[1]の化合物に加えて他の正孔輸送材料を組み合わせて使用することもできる。一般式[1]の化合物は、樹脂との相溶性が良く、結晶が析出しにくいので、感度、耐久性の向上のために有利である。
【0044】
電子写真特性、画像特性等の向上のために、必要があれば基板と有機層の間に下引き層を設けることができ、下引き層としてはポリアミド類、カゼイン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルブチラール等の樹脂類、酸化アルミニウム等の金属酸化物などが用いられる。
【0045】
本発明の材料は、有機EL素子もしくは電子写真感光体の正孔輸送材料としてのみでなく、光電変換素子、太陽電池、イメージセンサー等の分野においても好適に使用できる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。
化合物(1)の合成方法
酢酸18部中に、1,2−シクロヘキサジオン5部、トリフェニルアミン15部、およびメタンスルホン酸1.5部を入れ、100℃にて20時間加熱撹拌した。その後、500部の水で希釈し、希水酸化ナトリウム水溶液で中和した。この後、酢酸エチルで抽出を行い、濃縮し、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して白色の蛍光を有する粉末6部を得た。分子量分析の結果、化合物(1)であることを確認した。
以下に生成物の元素分析結果を示す。
元素分析結果
C78H64N4として
計算値(%):C:88.64 H:6.06 N:5.30
実測値(%):C:88.39 H:6.22 N:5.39
この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図6に示す。
【0047】
化合物(3)の合成方法
酢酸30部中に、1,2−シクロヘキサジオン7部、4,4−ジメチルトリフェニルアミン23部、およびメタンスルホン酸2部を入れ、105℃にて30時間加熱撹拌した。その後、500部の水で希釈し、希水酸化ナトリウム水溶液で中和した。この後、酢酸エチルで抽出を行い、濃縮し、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して黄色の蛍光を有する粉末10部を得た。分子量分析の結果、化合物(3)であることを確認した。
以下に生成物の元素分析結果を示す。
元素分析結果
C86H76N4として
計算値(%):C:88.66 H:6.53 N:4.81
実測値(%):C:88.45 H:6.81 N:4.74
この化合物の赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図7に示す。
【0048】
実施例1
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(2)、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体、ポリカーボネート樹脂(PC−A)を3:2:5の比率でテトラヒドロフランに溶解させ、スピンコーティング法により膜厚100nmの発光層を得た。その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚150nmの電極を形成して図1に示す有機EL素子を得た。この素子は、直流電圧5Vで150cd/m2の発光が得られた。
【0049】
実施例2
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(3)をテトラヒドロフランに溶解させ、スピンコーティング法により膜厚50nmの正孔注入層を得た。次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を真空蒸着して膜厚30nmの発光層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚100nmの電極を形成して図2に示す有機EL素子を得た。正孔注入層および発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで約270cd/m2の発光が得られた。
【0050】
実施例3
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(5)をテトラヒドロフランに溶解させ、スピンコーティング法により膜厚50nmの正孔注入層を得た。次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を真空蒸着して膜厚30nmの発光層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚100nmの電極を形成して図2に示す有機EL素子を得た。発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで約450cd/m2の発光が得られた。
【0051】
実施例4
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(6)を真空蒸着して、膜厚20nmの正孔注入層を得た。さらに、N,N’―ジフェニル―N,N’―(3―メチルフェニル)―1,1’―ビフェニル―4,4’―ジアミンを真空蒸着して、膜厚30nmの正孔輸送層を得た。次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体を真空蒸着して膜厚30nmの発光層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚100nmの電極を形成して有機EL素子を得た。正孔注入層および発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで約330cd/m2の発光が得られた。
【0052】
実施例5
洗浄したITO電極付きガラス板上に、N,N’―ジフェニル―N,N’―(3―メチルフェニル)―1,1’―ビフェニル―4,4’―ジアミンを真空蒸着して、膜厚50nmの正孔注入層を得た。次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体と化合物(10)を3:1の割合で真空蒸着して膜厚50nmの発光層を作成し、その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚150nmの膜厚の電極を形成して図2に示す有機EL素子を得た。正孔注入層および発光層は10−6Torrの真空中で、基板温度室温の条件下で蒸着した。この素子は、直流電圧5Vで約370cd/m2の発光が得られた。
【0053】
実施例6
洗浄したITO電極付きガラス板上に、化合物(4)をクロロフォルムに溶解させ、スピンコーティング法により膜厚50nmの正孔注入層を得た。次いで、真空蒸着法によりトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体の膜厚50nmの発光層を作成し、さらに真空蒸着法により[2−(4−tert−ブチルフェニル)−5−(ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール]の膜厚20nmの電子注入層を得た。その上に、マグネシウムと銀を10:1で混合した合金で膜厚150nmの電極を形成して図3に示す有機EL素子を得た。この素子は、直流電圧5Vで約550cd/m2の発光が得られた。
【0054】
本実施例で示された全ての有機EL素子について、1mA/cm2で連続発光させたところ、1000時間以上安定な発光を観測することができた。
本発明の有機EL素子は発光効率、発光輝度の向上と長寿命化を達成するものであり、併せて使用される発光物質、発光補助材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、増感剤、樹脂、電極材料等および素子作製方法を限定するものではない。
【0055】
実施例7
ε型銅フタロシアニン4g、化合物(1)2g、ポリエステル樹脂(バイロン200:東洋防(株)製)14gをテトラヒドロフラン80gと共にボールミルで5時間分散した。この分散液をアルミニウム基板上に塗工、乾燥して、図4に示す膜厚20ミクロンの単層型電子写真感光体を作製した。
【0056】
実施例8
ジブロモアントアントロン6g、化合物(3)2g、ポリエステル樹脂(バイロン200:東洋防(株)製)12gをテトラヒドロフラン80gと共にボールミルで5時間分散した。この分散液をアルミニウム基板上に塗工、乾燥して、図4に示す膜厚20ミクロンの単層型電子写真感光体を作製した。
【0057】
実施例9
τ型無金属フタロシアニン2g、ポリビニルブチラール樹脂(BH−3:積水化学(株)製)2gをテトラヒドロフラン96gと共にボールミルで2時間分散した。この分散液をアルミニウム基板上に塗工、乾燥して、膜厚0.3ミクロンの電荷発生層を作製した。次に化合物(4)10g、ポリカーボネート樹脂(L−1250;帝人化成(株)製)10gをジクロロメタン80gに溶解した。この塗液を電荷発生層上に塗工、乾燥して、膜厚20ミクロンの電荷輸送層を形成し、図5に示す積層型電子写真感光体を作製した。
【0058】
実施例10
N,N’−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミド2g、ポリビニルブチラール樹脂(BH−3:積水化学(株)製)2gをテトラヒドロフラン96gと共にボールミルで2時間分散した。この分散液をアルミニウム基板上に塗工、乾燥して、膜厚0.3ミクロンの電荷発生層を作製した。次に化合物(6)10g、ポリカーボネート樹脂(L−1250;帝人化成(株)製)10gをジクロロメタン80gに溶解した。この塗液を電荷発生層上に塗工、乾燥して、膜厚20ミクロンの電荷輸送層を形成し、図5に示す積層型電子写真感光体を作製した。
【0059】
電子写真感光体の電子写真特性は以下の方法で測定した。静電複写紙試験装置(EPA−8100;川口電機製作所(株)製)により、スタティックモード2、コロナ帯電は−5.2(kV)、5(lux)の白色光を照射して、初期表面電位(V0)、V0と2秒間暗所に放置した時の表面電位(V2)の比(暗減衰率:DDR2=V2/V0)、光露光後に帯電量が初期の1/2まで減少する時間から半減露光量感度(E1/2)および光露光3秒後の表面電位(VR3)を調べた。実施例7〜10の電子写真感光体の電子写真特性を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
1万回以上繰り返して電子写真特性を測定したところ、本実施例で示された全ての電子写真感光体について、安定な表面電位、感度を得ることができた。
【0062】
【発明の効果】
本発明により、優れた正孔輸送能力を有する化合物を得ることができた。本発明が提供した化合物は、従来に比べて高発光効率、高輝度であり、長寿命の有機EL素子および感度、正孔輸送特性、初期表面電位、暗減衰率等の初期電子写真特性に優れ、繰り返し使用に対する疲労も少ない電子写真感光体を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用した有機EL素子の概略構造を表す断面図
【図2】実施例で使用した有機EL素子の概略構造を表す断面図
【図3】実施例で使用した有機EL素子の概略構造を表す断面図
【図4】実施例で使用した電子写真感光体の概略構造を表す断面図
【図5】実施例で使用した電子写真感光体の概略構造を表す断面図
【図6】化合物1の赤外吸収スペクトル図
【図7】化合物3の赤外吸収スペクトル図
【符号の説明】
1.基板
2.電極A
3.正孔注入層
4.発光層
5.電子注入層
6.電極B
7.Al基板
8.感光層
9.電荷発生層
10.正孔輸送層
Claims (5)
- 請求項1記載のトリフェニルアミン誘導体からなる正孔輸送材料。
- 一対の電極間に発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子において、少なくとも一層が請求項3記載の正孔輸送材料を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 導電性支持体上に、電荷発生材料および正孔輸送材料を使用してなる電子写真感光体において、正孔輸送材料が、請求項3記載の正孔輸送材料であることを特徴とする電子写真感光体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP18320194A JP3593719B2 (ja) | 1994-08-04 | 1994-08-04 | 新規なトリフェニルアミン誘導体、その製造方法及び用途 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP18320194A JP3593719B2 (ja) | 1994-08-04 | 1994-08-04 | 新規なトリフェニルアミン誘導体、その製造方法及び用途 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0840997A JPH0840997A (ja) | 1996-02-13 |
JP3593719B2 true JP3593719B2 (ja) | 2004-11-24 |
Family
ID=16131546
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP18320194A Expired - Fee Related JP3593719B2 (ja) | 1994-08-04 | 1994-08-04 | 新規なトリフェニルアミン誘導体、その製造方法及び用途 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3593719B2 (ja) |
Families Citing this family (33)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CA2253819C (en) | 1996-05-15 | 2004-11-02 | Chemipro Kasei Kaisha, Limited | Multicolor organic el element, method for manufacturing the same, and display using the same |
JPH10270171A (ja) * | 1997-01-27 | 1998-10-09 | Junji Kido | 有機エレクトロルミネッセント素子 |
JP2998707B2 (ja) | 1997-07-09 | 2000-01-11 | 日本電気株式会社 | 有機エレクトロルミネッセンス素子 |
US6582837B1 (en) | 1997-07-14 | 2003-06-24 | Nec Corporation | Organic electroluminescence device |
US6329083B1 (en) | 1997-11-05 | 2001-12-11 | Nec Corporation | Organic electroluminescent device containing a benzoperylene compound |
US6492041B2 (en) | 1997-12-25 | 2002-12-10 | Nec Corporation | Organic electroluminescent device having high efficient luminance |
JP4514841B2 (ja) | 1998-02-17 | 2010-07-28 | 淳二 城戸 | 有機エレクトロルミネッセント素子 |
JPH11251067A (ja) | 1998-03-02 | 1999-09-17 | Junji Kido | 有機エレクトロルミネッセント素子 |
JP2956691B1 (ja) | 1998-05-22 | 1999-10-04 | 日本電気株式会社 | 有機エレクトロルミネッセンス素子 |
US6468675B1 (en) | 1998-05-29 | 2002-10-22 | Nec Corporation | Organic electroluminescent device having high luminance efficiency |
US6699594B1 (en) | 1998-06-08 | 2004-03-02 | Nec Corporation | Organic electroluminescent device |
US6465116B1 (en) | 1998-06-08 | 2002-10-15 | Nec Corporation | Organic electroluminescent device |
JP3548839B2 (ja) | 1998-10-23 | 2004-07-28 | 三星エスディアイ株式会社 | 正孔輸送性発光材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 |
JP4505067B2 (ja) | 1998-12-16 | 2010-07-14 | 淳二 城戸 | 有機エレクトロルミネッセント素子 |
US6759144B2 (en) | 1998-12-16 | 2004-07-06 | Samsung Sdi Co., Ltd. | Organic electroluminescence device |
US6180267B1 (en) | 1999-01-08 | 2001-01-30 | Nec Corporation | Organic electroluminescent device containing a 1,3-dibenzylideneindane compound |
TW474114B (en) | 1999-09-29 | 2002-01-21 | Junji Kido | Organic electroluminescent device, organic electroluminescent device assembly and method of controlling the emission spectrum in the device |
JP2001167886A (ja) | 1999-12-13 | 2001-06-22 | Nec Corp | 有機エレクトロルミネッセンス素子 |
US6821644B2 (en) | 1999-12-15 | 2004-11-23 | Samsung Sdi Co., Ltd. | Organic electroluminescent device |
US6899961B2 (en) | 1999-12-15 | 2005-05-31 | Samsung Sdi Co., Ltd. | Organic electroluminescence device |
JP3836300B2 (ja) | 2000-05-25 | 2006-10-25 | 三星エスディアイ株式会社 | 有機エレクトロルミネッセンス素子 |
US6746784B2 (en) | 2000-11-07 | 2004-06-08 | Samsung Electronics Co., Ltd. | Organic electroluminescent device |
DE60143776D1 (de) | 2000-12-25 | 2011-02-10 | Samsung Mobile Display Co Ltd | Organische elektrolumineszente Vorrichtung |
JP4030722B2 (ja) | 2001-02-15 | 2008-01-09 | 三星エスディアイ株式会社 | 有機エレクトロルミネッセンス素子およびこの製造方法 |
US6602619B2 (en) | 2001-10-19 | 2003-08-05 | Lightronik Technology Inc. | Organic EL device |
US6706423B2 (en) | 2001-12-27 | 2004-03-16 | Lightronik Technology Inc. | Organic EL device |
EP1501337B1 (en) | 2002-05-01 | 2012-12-12 | Nissan Chemical Industries, Ltd. | Organic electroluminescence device and material thereof |
JP4683829B2 (ja) | 2003-10-17 | 2011-05-18 | 淳二 城戸 | 有機エレクトロルミネッセント素子及びその製造方法 |
JP4476594B2 (ja) | 2003-10-17 | 2010-06-09 | 淳二 城戸 | 有機エレクトロルミネッセント素子 |
TW200517469A (en) | 2003-10-30 | 2005-06-01 | Nissan Chemical Ind Ltd | Charge-transporting compound, charge-transporting material, charge-transporting varnish, charge-transporting thin film, and organic electroluminescent device |
JP4175273B2 (ja) | 2004-03-03 | 2008-11-05 | セイコーエプソン株式会社 | 積層型有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び表示装置 |
JP4939284B2 (ja) | 2007-04-05 | 2012-05-23 | 財団法人山形県産業技術振興機構 | 有機エレクトロルミネッセント素子 |
JP2009161516A (ja) * | 2007-12-11 | 2009-07-23 | Konica Minolta Business Technologies Inc | アミン化合物、電子写真感光体及び画像形成装置 |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2840372B2 (ja) * | 1990-04-11 | 1998-12-24 | 出光興産株式会社 | ヒドロキシアリールアミン化合物の製造方法 |
JP3150330B2 (ja) * | 1990-09-19 | 2001-03-26 | 株式会社東芝 | 有機薄膜素子 |
JPH04178487A (ja) * | 1990-11-13 | 1992-06-25 | Nec Corp | 有機薄膜el素子 |
JP3476855B2 (ja) * | 1992-01-07 | 2003-12-10 | 株式会社東芝 | 有機el素子 |
JP3296147B2 (ja) * | 1994-08-04 | 2002-06-24 | 東洋インキ製造株式会社 | トリフェニルアミン重合体、その製造方法及び用途 |
-
1994
- 1994-08-04 JP JP18320194A patent/JP3593719B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0840997A (ja) | 1996-02-13 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3593719B2 (ja) | 新規なトリフェニルアミン誘導体、その製造方法及び用途 | |
JP3593717B2 (ja) | 新規なトリフェニルアミン誘導体、その製造方法及び用途 | |
JP2686418B2 (ja) | ジアリールアミン誘導体、その製造方法及び用途 | |
JP3463358B2 (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 | |
EP0699654B1 (en) | Hole-transporting material and use thereof | |
JPH0887122A (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 | |
JP3640090B2 (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 | |
JPH10310574A (ja) | 新規アミノ化合物、その製造方法および用途 | |
JP3463402B2 (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 | |
US5968675A (en) | Hole-transporting material and use thereof | |
JP3780619B2 (ja) | 新規スチリル系高分子化合物、その製造方法および用途 | |
JP3269300B2 (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 | |
JP3296147B2 (ja) | トリフェニルアミン重合体、その製造方法及び用途 | |
JP3593718B2 (ja) | 新規なトリフェニルアミン誘導体、その製造方法及び用途 | |
JPH07145372A (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 | |
JP2000095766A (ja) | 新規ベンゾイミダゾール化合物、その製造法および用途 | |
JP3709637B2 (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 | |
JP3261930B2 (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 | |
JP3079903B2 (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 | |
EP0779765B1 (en) | Hole-transporting material and use thereof | |
JP3575104B2 (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 | |
JP3800720B2 (ja) | 新規スチリル系高分子化合物、その製造方法および用途 | |
JP3261881B2 (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 | |
JPH07331237A (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 | |
JP3261882B2 (ja) | 正孔輸送材料およびその用途 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040615 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040716 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040810 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040823 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |