JP3580441B2 - Ni基超耐熱合金 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、主に900℃以下の温間、熱間の温度域で使用される温間、熱間鍛造金型や、CuやAlまたはそれらの合金の熱間押出し工具や部品等に使用されるNi基超耐熱合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の自動車産業の部品共通化と作業工数低減の流れを受けて、自動車用のクランクシャフトやコンロッド等自動車部品を成形する温・熱間鍛造金型の寿命向上が望まれている。しかし、従来のSKD61に代表される熱間工具鋼では、そのニーズに応えきれていないのが現状である。また、CuやAlまたはそれらの合金の熱間押し出し工具には、A286のようなFe基超耐熱合金が用いられたり、インコネル718合金が使用されたりしているが、この用途においても寿命改善による工数の低減が求められている。
これらの他に、継ぎ目無し鋼管の製造に用いる穿孔プラグやマンドレル等、1200℃程度の高温域で使用される熱間工具を対象として特開平3−61345号、また、1000℃〜1150℃の高温大気雰囲気中で使用される恒温鍛造金型を対象として特開平4−41641号等のNi基超耐熱合金が開示されている。
さらに、本発明と目的は異なるが、Ni−Cr−Wを基本とする超耐熱合金としては、例えば特公昭54−33212号、特公昭60−58773号、特公昭58−502号、特公昭562−1061号に記載の合金等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
熱間や温間で用いる鍛造金型、あるいはCuやAlまたはそれらの合金の押し出し工具には、熱間加工が可能で、被削性にも優れ、さらに常温での高い耐力と靭性、および700℃〜900℃程度の高温域での優れた熱間摺動性と熱間での耐摩耗性および耐ヒートクラック性とが要求される。
ここで、熱間摺動性および熱間での耐摩耗性の改善には、酸化皮膜の密着性と安定性および高温耐力を高めることが要求される。しかし、従来のSKD61クラスの熱間工具鋼では、700℃を越えると焼き戻しマルテンサイトの軟化が生じて高温耐力が低下し、同時に鋼中のCr量が低いために密着性および安定性に優れた酸化皮膜が形成されず、被加工材と工具が直接接触するため早期に摩耗を生じ、最後には焼付きを生じてしまう。
【0004】
一方、耐ヒートクラック性の改善には、熱膨張係数の低減と高い高温耐力が要求される。しかし、A286のようなFe基超耐熱合金は、熱膨張係数が高く、また析出強化相であるガンマプライム相は、Ni3Tiを主とする組成のために700℃を越える温度域で安定相であるイータ相に変態してしまい、その結果、高温強度が低下してしまう問題がある。
また、熱間工具は被削性が優れることが要求されるが、A286のような超耐熱合金は、一般に被削性がマルテンサイト系の材料に比べて大幅に悪い欠点がある。
ところで、Niをベースとする熱間工具用の超耐熱合金もいくつか提案されているが、例えば、特開平3−61345号に開示される合金は、耐酸化性が十分でなく、熱間での耐摩耗性が不十分である。また、特開平4−41641号に開示される合金は、恒温鍛造型を意図しているために、高い摺動速度下での熱間摺動性が不十分な問題があった。
【0005】
また、前述のNi−Cr−W系統のNi基超耐熱合金は、いずれも1000℃付近の非常に高い温度域で、耐熱性と高温での大きいクリープ強度を第一目的として使用することを前提としている。したがって、従来のWを多量に添加するNi基超耐熱合金は、いずれもWの固溶強化により高温クリープ強度を増加させたものであり、本発明の目的とする700〜900℃における高強度、熱間摺動性の改善に対しては十分ではなく、本発明が意図する利用分野では特性上使用することは困難であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこれら熱間工具鋼とFe基およびNi基超耐熱合金の問題点を鑑み、熱間工具鋼の代替を主目的の一つとして熱間加工が可能で、かつ耐酸化性、高温強度、熱膨張係数、および被削性の改善が可能な材料の発明に鋭意取り組んだ。その結果、Wを固溶限まで含むNiを主とするオーステナイト相を主相とし、時効処理によって析出させるNi3(Al,Ti)を主とするガンマプライム相、Wの固溶体(α−W)およびMC型1次炭化物の最適な含有量を見出すことで、特に熱間工具に適した熱間摺動性、熱間での耐摩耗性と耐ヒートクラック性および耐酸化性に優れたNi基超耐熱合金を発明するに至った。さらに、この組織を有する合金で、高温大気中で生成する表面スケールの構造が、表面側から、Crを主とする外部酸化層、粒状α−W層、およびAl,Tiを主とする内部酸化層の少なくとも3層以上の構造からなるものは、酸化皮膜の密着性を改善し、高温耐酸化性と熱間摺動性の改善に役立つことを新規に見出した。
【0007】
本発明に係るNi基超耐熱合金の特徴は、下記に示される第1発明や第2発明の構成要件から理解できるように、合金組成のみに存在するのではない。すなわち、本発明のNi基超耐熱合金と、従来のW含有のNi基超耐熱合金の決定的な相違点は、本発明ではガンマプライム相に特徴づけられる時効処理された組織を有することである。時効処理は600〜850℃で行なうので、従来のNi基超耐熱合金のように1000℃付近以上で使用する用途では、せっかく析出した時効硬化相が固溶するから事前の時効処理自体が無意味であり、認識されていなかったのである。
本発明では、従来の類似の組成のNi基超耐熱合金では、採用できなかった時効析出相を積極的に利用する。したがって、本発明のNi基超耐熱合金の組織は、10〜30%の多量のガンマプライム相が存在することが特徴となっている。
【0008】
即ち、本発明は、時効処理された組織を有し、該組織を構成する相が原子%から式(1)により計算されるMC型炭化物量で0.02〜1.5%、原子%から式(2)により計算されるガンマプライム量で10〜30%、および体積%で表されるα−W量で0.5〜30%と、残部がNiを主体とするオーステナイト相からなることを特徴とするNi基超耐熱合金である。
(1)2[C]
(2)4(0.026〔Cr〕+0.13〔Mo〕+0.13〔W〕+0.61〔Al〕+0.68〔Ti〕+0.5〔Nb〕+0.5〔Ta〕−〔C〕)
(但し、上記式のうち、無添加の元素は0として計算する)
【0009】
上記本発明を具現化するためのNi基超耐熱合金の化学組成は、重量%で、C0.002〜0.15%、Si2%以下、Mn3%以下、Cr10%を越え25%以下、W10〜30%、Fe15%以下、Al0.4〜2.5%、Ti0.4〜3.5%を含み、残部が不可避の不純物とNiからなる。
【0010】
上記の本発明の望ましい合金の組成は、さらにNiの一部を置換して、重量%で、3.0%以下のNbと3.0%以下のTaの1種または2種を添加できる。またさらに上記の組成に加えてNiの一部を置換して、重量%で、10%以下のMoを、W+2Mo≦30の範囲で添加すること、さらに重量%で、0.2%以下のZrと0.02%以下のBの1種または2種を添加すること、重量%で、0.02%以下のMgと0.02%以下のCaの1種または2種を添加することもできる。以上の合金元素のうち、Nb以下に記述されるものは、いずれも可能なすべての組合せで選択的に添加できるものである。また、選択的に添加された元素は、前述のガンマプライム量の推定式を満足する必要がある。
【0011】
【作用】
本発明のNi基超耐熱合金で規定する組織の作用について述べる。
MC型の一次炭化物は、本発明のNi基超耐熱合金中において最も硬質の相であり、本合金製造の熱間加工中にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する作用と、使用中の熱間摺動性を高める作用を持つ。MC炭化物量は、添加したCの全量がTi,NbおよびTaと結びついて存在しているものと考えると、原子%で表されるC量の2倍がMC型炭化物の含有量とみなすことができる。したがって、前述のMC型炭化物量は(1)式の2[C]で計算される値とする。このMC型炭化物の効果を発揮するために、MC量は原子%で最低0.02%を越える添加が必要であるが、1.5%を越える過度の添加は、MC型炭化物の連鎖状組織を形成し、その部分がヒートクラック発生の起点となり、工具寿命を低下させる。よって原子%から計算されるMC型炭化物量は、0.02〜1.5%の添加とする。好適なMC炭化物の量は0.1〜1.0%である。
【0012】
常温や高温強度の向上には、時効処理によるガンマプライム(γ’)相の析出が最も効果を及ぼす。ガンマプライム相の基本組成は、Ni3Alで表わされるが、多元系の合金においては、実際には、種々の添加元素がガンマプライム相のAlサイトに固溶する。このガンマプライム相の析出量を実測するのは、大変困難であるため、本発明においては、文献値(原田広史、山崎道夫:「Ti,Ta,Wを含むγ’析出強化型Ni基耐熱鋳造合金の合金設計」,鉄と鋼,vol.65,(1979),p1059)を用いて、後述の実施例1の本発明合金No.5のγ相とγ’相の組成および両相の割合を求め、原子%から各元素がγ’相のAlサイトに入る係数を求めた。ここで、本発明合金の成分範囲から、Ni3AlのAlサイトに固溶する元素として、Cr,Mo,W,Ti,Nb,Taを考えた。ただし、実施例1のNo.5は、MoとTaを含まない成分系であるため、MoとTaの係数は計算できない。そこでMoとTaのγ’相のAlサイトを占める係数は、それぞれ同族のWとNbの係数を用いることにした。
【0013】
また、その計算に際して、Ti,Nb,Taは、添加したCの全量とMC型炭化物を形成した残部がγ−γ’相の平衡に関与するものとした。この計算結果から、添加元素のうち、γ’相のAlサイトに入る総量を求め、さらにこの4倍を計算γ’量とした。即ち、本発明におけるガンマプライム量は、次式で計算されるものとし、前述の(2)式に相当する。
計算γ’=4(0.026[Cr]+0.13[Mo]+0.13[W]+0.61[Al]+0.68[Ti]+0.5[Nb]+0.5[Ta]−[C])
([ ]内の元素は原子%を表わし、無添加の元素は0として計算する)
【0014】
次に本発明のNi基超耐熱合金では、γ’相を析出させるための熱処理が施されているものである。この熱処理は、まず熱間加工後の組織を均一にし、析出物を一旦固溶させるための、固溶化処理を行なう。この固溶強化の温度は、900〜1200℃の範囲が望ましい。900℃以下では析出物の固溶が不十分で、1200℃以上では結晶粒が粗大化し、強度、耐ヒートクラック性に不利である。但し、常温の強度を重視する場合には、鍛造の歪を残す目的で固溶化処理をより低温で行なうか、あるいは省略することもできる。
【0015】
引き続き時効処理を行なうが、この時効処理は、本発明合金のNi基超耐熱合金では、γ’相を析出させ、高温強度を増加させるために不可欠である。時効処理は、600〜850℃の温度が望ましい。600℃未満では、γ’相の析出に多大な時間を要し、850℃を越えると析出するγ’相が粗大になるか、またはγ’相が固溶したままで析出せず、十分な高温強度が得られない。
この時効処理は、1回または2回以上の処理を行なうことができるが、処理時間は合計で少なくとも3Hr以上が必要である。
時効処理により析出した上記計算γ’量が10%を下回ると、高温強度が低下し、それに伴い、熱間摩耗や、熱間摺動に対する抵抗が低下して工具寿命の低下を引き起こす。逆に、計算γ’量が30%を越えると、高温変形抵抗が増加し、熱間鍛造が困難となる。よって上記式による計算γ’量は、10〜30%の範囲とする。好適には、13〜25%の範囲である。
【0016】
なお、前述の特公昭54−33212号、特公昭60−58773号、特公昭58−502号、特公昭56−21061号に記載の合金は、W添加による固溶強化を目的としており、ガンマプライム形成元素をほとんど含んでいない。あるいは少量含む場合でも時効処理を行なわないので、ガンマプライム相による強化は図られていない。なぜなら、使用温度が1000℃付近であるのでγ’相は、使用中に固溶してしまうからであり、この場合のγ’形成元素であるAl,Ti,Nb等の作用は、例えばAlは耐酸化性の向上、Ti,Nbは炭化物形成による強度向上の作用等で、本発明のように積極的にγ’相による強化を狙ったものではなく目的が全く異なる。
さらに、上記の各合金は1000℃付近の高温クリープ強度を重視するため、1200℃以上の温度で固溶化処理を行なったままか、あるいは固溶化処理後、1080℃以上再加熱を行なった状態で使用するので、結晶粒が粗大化しており、本発明の目的とする700〜900℃における強度、耐ヒートクラック性を必要とする用途には不利である。
【0017】
次に、均一に分散したα−W相(bcc構造を有するWの固溶体)は、本発明合金に必須の重要な合金相である。α−W相は、合金の熱膨張係数の低下に寄与するとともに、熱間摺動時の焼付きを防止する。さらに、α−Wは、以下でも述べるが、酸化皮膜の密着性を改善する効果をももたらす。このα−Wの効果は、画像解析などの実側による体積%にして、0.5%以上から発揮されるが、30%を越えると、耐酸化性と、熱間加工性の低下を招くので、α−Wの含有量は体積%にして、0.5〜30%の範囲とする。好適には、3〜20%の範囲である。
本発明のNi基超耐熱合金の特徴は、γ’相とα−W相が同時に存在することであり、これは従来の超耐熱合金には見られなかったことである。
すなわち、通常のγ’析出強化型超耐熱合金には当然γ’相が存在するが、α−W相は存在しない。
【0018】
従来のNi基超耐熱合金のうち、高Wである合金はα−W相が存在する可能性があるが、それはせいぜい結晶粒界や粒内に少量析出させてクリープ強度を高める効果を図ったもので、本発明における作用効果とは全く異なる。また、従来のこれらの合金には、前述のようにγ’相は存在しない点で決定的な相違がある。本発明合金においては、γ’相とα−W相が同時に存在することで、初めて700〜900℃における強度、熱間摺動、熱間摩耗、耐ヒートクラック、耐酸化性等の要求特性を同時に満足することが可能となったのである。
さらに、本発明のNi基超耐熱合金は、例えば実施例1における図1に示すように高温大気中で生成する表面スケールの構造が、表面側から、Crを主とする外部酸化層、粒状α−W層、およびAl,Tiを主とする内部酸化層の少なくとも3層以上の構造をとることを特徴とする。この酸化皮膜形成のメカニズムは明らかではないが、酸化皮膜構造がこの少なくとも3層以上の構造を取らない場合には、酸化皮膜の密着性と耐酸化性の低下が生じるようになる。
【0019】
例えば、本発明のNi基超耐熱合金においても5μmを越えるα−W粒子が表面に出ているとその部分はWO3の酸化皮膜が生成し、その部分は、十分な密着性を持たないが、全体としてα−Wの総量が30%以下に抑えられているので、工具自身の寿命を大きく低下させるほどの要因とはならない。なお、スケール中の粒状α−W層は析出相のα−W相から変化させ、粒子径は1μm以下のものが多くするのが望ましい。よって本発明合金を大気中で加熱した場合の表面スケールの構造は、表面側から、Crを主とする外部酸化層、粒状α−W層、およびAl,Tiを主とする内部酸化層の少なくとも3層以上の構造をとることが望ましい。
【0020】
さらに、上記の量のMC型炭化物と、γ’相およびα−W相と不可避の不純物を除き、残部は、Niを主体とするオーステナイト相である。この母相は、Wの固溶度が大きく高温強度が高い。さらに上記範囲のγ’相の固溶と析出が可能である。そのために、Niを主体とするNi基合金にする必要がある。
【0021】
次に、上記発明を具現化するための本発明のNi基超耐熱合金の各元素の作用を以下に述べる。
Cは、脱酸元素としての作用の他に、Ti,NbおよびTaと結び付いて、安定なMC型の一次炭化物を形成し、熱間加工中にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する作用と、熱間摺動性を高める作用を持つために添加する。Cの効果は、0.002%の添加から発揮されるが、0.15%を越える過度の添加は、MC型炭化物の連鎖状組織を形成し、その部分がヒートクラック発生の起点となり、工具寿命を低下させる。よってCは、重量%で0.002〜0.15%の添加とする。好適には0.01〜0.07%である。
【0022】
Siは脱酸剤として添加され、酸化皮膜の密着性改善にも効果がある。しかし、2%を越える過度の添加は、熱間加工性の低下と常温の延性の低下を招く。よってSiは、重量%で2%以下とする。好適には、0.7%以下である。
Mnは、脱酸剤として添加されるが、3%を越える過度の添加は、高温強度の低下を招くため、重量%で3%以下の添加とする。好適には、1%以下である。
Crは、高温加熱中に合金の表面に密着性の高い酸化皮膜を形成し、耐酸化性を高めるとともに熱間摺動性も高めることができる。この効果のために、最低10%を越える添加を必要とするが、25%を越える過度の添加は、σ相の析出とそれに伴う延性の低下を招くので、Crは、重量%で10%を越え、25%以下の範囲とする。好適には、13〜20%の範囲である。
【0023】
Wは、α−Wの析出と高温強度の高いオーステナイト相を得るために、必須の添加元素である。これらの効果を得るために、Wは、重量%で最低10%の添加を必要とするが、30%を越える過度の添加は、α−Wの過度の析出と耐酸化性、酸化皮膜の密着性の低下を招くので、Wは、10〜30%の範囲とする。好適には、12〜22%の範囲である。
Moは、Wと同族の元素であり、Wの一部をMoに置換して、Wと同様の作用をもたらすことができる。しかし、その効果は、Wには及ばないので、Moは、重量%で10%以下の範囲で、かつW+2Mo≦30の範囲とする。
Feは、本合金において、必ずしも添加する必要はないが、Niを主とするオーステナイト相に固溶して熱間加工性を改善し、また省資源化と低価格化にも役立つため、必要に応じて添加することができる。しかし、過度の添加は、オーステナイト相を軟化させ、γ’相の析出量を減らし、高温強度の低下を招くので、Feは重量%で15%以下の添加とする。好適には、2〜10%の範囲である。
【0024】
Alは、時効処理後に安定なγ’相を形成するのに必須の添加元素であり、重量%で最低0.4%以上の添加を必要する。しかし、2.5%を越える過度の添加は、γ’相の増量を招き、熱間加工性を低下させるので、Alは、0.4〜2.5%の範囲とする。好適には、0.7〜1.5%の範囲である。
Tiの一部は、Cと結び付いて安定なMC型の一次炭化物を形成し、熱間加工中にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する作用と、熱間摺動性を高める。また、残部のTiはγ’相に固溶し、γ’相を固溶強化して高温強度向上に役立つ。そのために、Tiは、重量%で最低0.4%以上の添加を必要とするが、3.5%を越える過度の添加は、熱間加工性を低下させるのと同時にγ’相を不安定化して、高温長時間使用後の強度の低下を招くので、Tiは0.4〜3.5%の範囲とする。好適には、0.7〜2.5%の範囲である。
また、Al,Tiは耐酸化性に対しても重要な作用を有する。すなわち、Al,Tiは、表面スケール形成において、前述の粒状α−W層の内部に酸化層を形成することで、粒状α−W層の効果と相まって酸化皮膜の密着性を改善し、高温耐酸化性と熱間摺動性を改善する。
【0025】
NbとTaは、Tiと同様、一部がCと結び付いて安定なMC型の一次炭化物を形成し、熱間加工中にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する作用と、熱間摺動性を高める。また、残部のNbとTaはγ’相に固溶し、γ’相を固溶強化して高温強度向上に役立つので、必要に応じて添加できる。しかし、両者とも重量%で3%を越える過度の添加は、熱間加工性を低下させるので、NbとTaの添加範囲は、それぞれ3%以下とする。
ZrとBは、本発明において粒界強化作用により高温の強度と延性を高めるのに有効であり、本発明合金に1種または2種を適量添加できる。その効果は少量の添加量から始まるが、ZrおよびBがそれぞれ重量%で0.2%および0.02%を越えると加熱時の初期溶融温度が低下して熱間加工性が劣化するので、ZrおよびBの上限は、それぞれ0.2%および0.02%とする。
【0026】
MgとCaは、強力な脱酸・脱硫元素として合金の清浄度を高めるとともに、高温引張やクリープ変形時さらに熱間加工時の延性改善に役立つため、1種または2種を適量添加できる。その効果は少量の添加量から始まるが、Mg,Caがそれぞれ重量%で0.02%を越えると加熱時の初期溶融温度が低下して熱間加工性が劣化するので、MgおよびCaの上限は、それぞれ0.02%とする。
Niは、安定なオーステナイト相を形成し、ガンマプライム相の固溶および析出の基地となる。また、Niは、多量のWを固溶できるため、高温強度の高いオーステナイト基地が得られるため、残部とする。
【0027】
上記元素の他、重量%で10%以下のCoを本発明合金に添加してもよい。
Coは、基地のオーステナイト中に固溶し、若干の固溶強化作用を有するとともに、酸化皮膜の密着性を改善させる効果も有する。Coは、Ni基地中に固溶するのでγ’相の析出にはほとんど効果を及ぼさないので好都合である。
しかしながら、Coは高価な元素であるので多量の添加は好ましくない。
【0028】
上記元素の他、不可避の不純物元素は以下の範囲であれば本発明合金に含まれてもよい。
P≦0.02%,S≦0.02%,O≦0.03%,N≦0.03%
望ましい範囲は次の通りである。
P≦0.01%,S≦0.01%,O≦0.01%,N≦0.01%
一方、Y,REM,Hf等の元素は熱間加工性を低下させるので本発明合金に特に添加しなくてもよいが、酸化皮膜の密着性と耐酸化性を改善させる効果をもつので、以下の範囲で添加してもよい。
Y≦0.2,REM≦0.2,Hf≦0.2
【0029】
また、Vは高温強度を向上させる効果が本発明合金の添加元素に劣り、またReは高温強度向上に寄与するが合金価格が高いことにより、本発明合金に特に添加しなくてもよいが、以下の範囲ならば添加してもよい。
V≦1%,Re≦1%
以上述べた本発明のNi基超耐熱合金は、単一の真空溶解、または真空溶解後のエレクトロスラグ再溶解や真空アーク再溶解等の精練工程を経て得られたインゴットを熱間鍛造や熱間圧延等の加工工程を通して1次製品に仕上げられる。
これらの素材は前述のようにγ’相を析出させるため、900〜1150℃の固溶化処理と600〜850℃の時効処理を実施したのち実用に供される。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す組成の合金について、本発明合金No.1〜28、比較合金No.41、42および従来合金No.51〜54について真空誘導溶解によって15kgのインゴットを溶製した後、熱間加工によって30mm角の棒材を作成した。本発明合金No.1〜No.28と比較合金No.41、42および従来合金No.51については、原子%で表されるC量の2倍の値である計算MC型炭化物量と画像解析により実測したα−W量を、本発明合金No.1〜No.28と比較合金No.41、42については、次式で表される計算γ’量を表1に併せ示す。
計算γ’=4(0.026[Cr]+0.13[Mo]+0.13[W]+0.61[Al]+0.68[Ti]+0.5[Nb]+0.5[Ta]−[C])
([ ]内の元素は原子%)
【0031】
【表1】
【0032】
なお、α−W量の測定は、以下に示す熱処理後の試料断面を鏡面研摩後、王水にて腐食した試料を用いた。直径5μm以上の粒子径のものは、光学顕微鏡により観察し、8000mm2の面積について画像解析を行なって、面積率を求め、また、直径5μm未満の粒子径のものは、走査型電子顕微鏡により観察し、8000μm2の面積について画像解析を行なって面積率を求め、それぞれ算出した両者の面積率の和をα−W量とした。
ここで、比較合金No.41は本発明合金に比べてC量が高く、比較合金No.42は計算γ’量とCr量が本発明合金より低い組成である。従来合金No.51は特開平3−61345号に記載のNi−W合金、従来合金No.52はFe基超耐熱合金 A286、従来合金No.53は析出硬化型熱間工具鋼、従来合金No.54はJIS SKD61である。
【0033】
これらの熱間加工材のうち、本発明合金No.1〜28と比較合金No.41、42については、1050℃×30分保持後油冷の固溶化処理と720℃×8時間保持後徐冷した後620℃×8時間保持後空冷の時効処理を行った。また、従来合金No.51は950℃×30分保持後空冷の固溶化処理を行った。従来合金No.52は980℃×30分保持後空冷の固溶化処理と730℃×16時間保持後空冷の時効処理を行った。従来合金No.53は1000℃×30分保持後徐冷の焼入れ後、硬さ382HVとなるごとく焼もどしを行った。従来合金No.54は1020℃×30分保持後空冷の焼入れ後、硬さが446HVとなるごとく焼もどしを行った。
【0034】
表1の合金について室温および700℃における硬さ測定、室温および700℃における引張試験、室温から700℃までの熱膨張係数測定を行った。硬さ試験は、ビッカース硬度計を用い荷重98Nにて測定を行い、引張試験についてはASTM法に基づき平行部直径6.35mm、標点間距離25.4mmに加工した試験片を用いて実施した。
熱間での摺動性を評価するために、熱間摺動試験を行った。この試験は、直径5mm×長さ20mmの丸棒試験片を作成し、それをボール盤のチャックに固定する。試験片端面を600℃に加熱したJIS SNCM439製のブロックに1540rpmの回転速度で30秒間押しつける。押しつけ荷重を大きくし試験片がブロックに焼付いた荷重をもって焼付き発生荷重とした。この焼付き発生荷重が大きいほど、高負荷における熱間摺動性がよいと評価できる。
【0035】
また、熱間での耐摩耗性を評価するために、熱間摩耗試験を行った。この試験は熱間鍛造型の摩耗をシミュレートする簡便な試験法である。
より具体的には、本願出願人の発明として特開平5−260556号に記載されている。この試験は直径16mmの丸棒試験片の端面に加熱冷却の熱サイクルを与えることと約800℃に加熱されたJIS S45C製ピンを摩擦摺動させることを繰返して、試験片端面にヒートクラックを伴った摩耗を起こさせる。試験片の加熱温度は600℃とし、ピンとの摺動は面圧14N/mm2を400rpmの回転速度で5秒間、冷却は32℃の水で3.5秒間行った。加熱、摩擦摺動、冷却を1サイクルとして2000サイクル繰返した後、試験片端面の摩耗深さを表面粗さ計にて測定して摩耗量とし、また試験片摩耗部の断面ミクロ組織を観察して発生したヒートクラックの本数および最大長を測定した。
【0036】
さらに、耐酸化性を評価するために、表1に示す合金より、直径8mm×長さ15mmの丸棒試験片を作成し、大気中にて900℃×16時間保持後室温まで空冷の処理を5回繰返した後の酸化重量変化を測定した。
上記の各種試験結果を表2にそれぞれ示す。本発明合金は700℃の硬さ、700℃の引張強さが比較合金や従来合金より高く高温域での機械的性質に優れることが確認された。熱膨張係数は従来合金No.54に代表される熱間工具鋼と近い値を示した。従来合金No.52は従来合金No.54に代表される熱間工具鋼に比べて熱膨張係数が高いことがわかる。
大気中にて900℃×16時間保持を5回繰返した後の酸化重量変化は、従来合金No.53,54を除き、他はいずれも増量値を示し、酸化皮膜の密着性は良好である。
【0037】
【表2】
【0038】
ただし、比較合金No.42のようにCr量が低いと増量値が大きくなり、従来合金No.51のようにCrがさらに低くなると本発明合金に比べて明らかに増量値が大きくなり、耐酸化性の向上には、本発明合金並みのCr量が必要であることがわかる。一方、従来合金No.53,54のような熱間工具鋼では減量値を示した。これは酸化試験中に酸化皮膜が剥離し、酸化重量はこの剥離した酸化皮膜を除外して計算したためで、酸化皮膜の密着性が本発明合金に比べて劣ることがわかる。
【0039】
なお、図1に本発明合金No.10の酸化試験後の断面表層部の走査型電子顕微鏡によるミクロ組織ならびにミクロ組織を解説するために、観察に基づく構成相の模式図を示す。酸化皮膜を構成する相の同定は、微小部X線回折ならびにエネルギー分散型X線分析により実施した。本発明合金は、いずれも700℃〜1000℃の高温酸化雰囲気では、このような表面側からCrを主とする表面酸化層、粒状α−W層およびAl,Tiを主とする内部酸化層の3層構造をとる。すなわち、粒状のα−W層がCrを主とする表面酸化層とAl,Tiを主とする内部酸化層にはさまれた形になっており、このような酸化皮膜構造が、本発明合金の高い耐酸化性と酸化皮膜密着性およびそれらに付随する高い熱間摺動性と熱間での耐摩耗性を有する理由である。
【0040】
熱間摺動試験では本発明合金は従来合金No.54に代表される熱間工具鋼に比べて焼付き発生荷重が高いことが確認された。熱間摺動性は密着性および安定性に優れた酸化皮膜の生成と高温耐力が要求されるが、本発明合金はこれを満たし、熱間摺動性に優れることが確認された。
熱間摩耗試験では、本発明合金は摩耗量が従来合金No.54に代表される熱間工具鋼に比べて非常に少ない結果となった。Wを多量に含有する従来合金No.51は熱間摺動試験の焼付き発生荷重は高いが、α−W量が体積%で30%を越えており、またCr量も低いので、生成される酸化皮膜が長時間における密着性および安定性に欠けるため本発明合金に比べて耐摩耗性に劣る。従来合金No.53を除いて、ヒートクラックが発生した。従来合金No.53はAC1点が低いため摩擦摺動によって試験片端面の温度は容易にこの温度を越えオーステナイト化し、それに伴い摩擦摺動部の強度が極端に低下し、ヒートクラックが発生してもすぐ摩耗してしまい試験後には観察されない。
【0041】
従来合金No.52は熱膨張係数が高いためヒートクラックが発生しやすく、従ってヒートクラックが摩擦摺動面の摩擦係数を増加し摩耗が本発明合金より多くなった。C量の高い比較合金No.41はMC型炭化物の連鎖状組織を形成しており、その部分がヒートクラックの起点となっており、ヒートクラックが多く発生し、それに伴い摩耗も多い。比較合金No.42はγ’量が原子%で10%より低いため700℃の引張強さが本発明合金より低く摩耗が多い。本発明合金はこの試験によりヒートクラックを伴った熱間での耐摩耗性に優れることが確認された。
【0042】
(実施例2)
表1に示す本発明合金No.4と従来合金No.52,53について実施例1と同じ熱処理を行い、ボールエンドミルを用いた被削性試験を行った。マシニングセンターを用い、セラミックコーティング超硬製ボールエンドミルにより、水溶性切削油を使用し、刃先摩耗量の測定により、被削性を調査した。試験条件は、切削速度50m/min、送り0.05mm/刃、切り込み量は、軸方向2mm、外周刃方向1mm、切削長25mの条件で実施し、エンドミルの切刃逃げ面摩耗幅を測定した。試験結果を表3に示す。
本発明合金は、Ni基超耐熱合金の範疇に属するにもかかわらず、被削性が従来のFe基超耐熱合金No.52はいうまでもなく、従来の熱間工具鋼No.53に比べても優れた被削性を示した。この良好な被削性は微細α−W相の分散によってもたらされる。このように本発明合金は、時効処理後でも十分な被削性を有するので、金型加工後の熱処理が不要なプリハードン工具としても使用できる。
【0043】
【表3】
【0044】
(実施例3)
以下、本発明合金を熱間鍛造金型に実施した例を示す。
表1に示す、本発明合金No.10、No.14の類似成分で溶製し直したもの、および従来合金No.54の組成のものの素材を準備し、これから熱間鍛造金型を製作し、実用テストを行った結果を表4に示す。金型は自動車部品のギヤシャフトを製作する型であり、寸法は直径80mm×長さ160mmである。このギヤシャフトを製作する金型は粗地成形用の粗地型と仕上成形用の仕上型よりなるが、摩耗の激しい粗地型にてテストを行った。ワーク材はS35Cであり、高周波加熱装置により1200℃に加熱する。鍛造成形は最大能力1600tのクランクプレスを使用し、各型打ち後に白色系潤滑剤を型表面に噴霧した。
従来合金No.54はJIS SKD61である。熱処理は、熱間鍛造金型に荒加工した後、1020℃に加熱し、200℃の油に浸漬する油焼入れを行い、硬さが446HVとなるごとく焼もどしを行った。その後仕上加工を行い、実用テストに供した。
【0045】
【表4】
【0046】
表4にこれら合金で製作した熱間鍛造金型の寿命を示す。この熱間鍛造作業により金型は高温のワークとの接触およびワークとの摺動により金型表層部は熱影響を大きく受けるが、本金型は従来、黒鉛系潤滑剤による作業が、白色系潤滑剤に変更になったことに伴い、特にワークとの摺動発熱作用が大きくなったため、従来合金No.54は熱影響により焼もどしマルテンサイトの軟化およびAC1変態点を越えることによりオーステナイト変態を起こし、表層部の強度が低下し摩耗が起こりやすく早期に寿命となった。また白色系潤滑剤が各型打ち後に型表面に噴霧されるため、型表面には加熱冷却の熱サイクルが負荷され、型表面にヒートクラックが発生する。金型表面に発生したヒートクラックはワークとの摩擦係数を増加するため、ワークとの摺動発熱が大きくなり型表層部の熱影響を増加させ、また金型表層部に発生する剪断応力が大きくなり型表層部の塑性流動が増加するため、摩耗を促進させる。従来合金No.54はヒートクラック発生により熱影響が大きくなり、発生する剪断応力が型表層部強度を越えて摩耗が起こりやすく早期に寿命となった。
【0047】
本発明合金No.10、No.14は、その優れた酸化被膜特性によりワークとの摺動発熱を抑制するとともに、熱影響を受けた場合でも高温の強度が鍛造作業により発生する剪断応力より勝っているので、表層部の塑性流動は起こらず、摩耗が起こりにくく、寿命が延びた。
本発明合金No.10、No.14にもヒートクラックは発生した。ヒートクラックはNo.14の方が多く発生しており、寿命も短い。No.14はα−W量の多い合金であるが、実用テスト後の金型の摩耗部のミクロ組織を観察した結果、ヒートクラックはα−Wに沿って発生しており、α−W量の多い点でヒートクラックが発生しやすく摩耗が多くなった。本実用テストではヒートクラックの発生が摩耗と関係深いが、潤滑の不十分な金型での適用においてはα−Wの熱間摺動時の耐焼付き性の効果が表われた。
【0048】
本発明合金は熱間での硬さでは従来合金に勝るが、室温の硬さでは従来合金に劣る場合がある。その場合、厚みのある金型では鍛造作業時にプレスの負荷を受けて金型が変形する場合があるが、型彫り部に本発明合金を、土台部分を従来合金No.54やJIS SKT4等を組み合わせた金型にすることにより、本発明合金の耐摩耗性向上の効果が表われた。
以上より、本発明合金は主に700〜900℃程度の温度域で作業することの多い熱間鍛造型として優れた性能を有することが明らかとなった。
【0049】
(実施例4)
以下、本発明合金をCu合金押出し工具に実施した例を示す。
表1に示す、本発明合金No.10の類似成分で溶製し直したもの、および従来合金No.52の組成のものの素材を準備し、これから熱間押出し工具を製作し、実用テストを行った結果を表5に示す。表1に示す従来合金No.52はJIS SUH660でありA286の名で知られている。この合金はCuまたはCu合金の熱間押出し工具として知られている。
【0050】
【表5】
【0051】
熱間押出し工具は焼ばめによる二重構造のものを用い、外筒にJIS SKT4を用い、内筒を本発明合金No.10製と従来合金No.52製のものを製作し比較した。外筒は外径200mm、内筒は外径100mm、内径60mmとし、長さはともに200mmの小型の二重構造の工具を本発明合金No.10製と従来合金No.52製について製作した。これらの工具を用いて100tプレスにより、950℃の純銅ビレットの押出し実験を行った。内筒は800℃程度の高温と500N/mm2前後の高圧にさらされ、熱応力により亀甲状のヒートクラックが生じ、表面剥離を起こして寿命となる。
従来合金No.52の場合、約10000ケ成形時に、既に内径面にヒートクラックの発生が認められたが、本発明合金No.10の場合は、約30000ケ成形後に僅かにヒートクラックが認められる程度であった。
本発明合金No.10は従来合金No.52に比べて、高温域での引張強さが大きい上、熱膨張係数が小さいのでヒートクラックが発生しにくく、このことが押出し工具の寿命を飛躍的に向上させた。この結果より、本発明合金は熱間押出し工具として優れた性能を有することが明らかとなった。
【0052】
【発明の効果】
本発明合金は、熱間摺動性、熱間での耐摩耗性、耐ヒートクラック性や耐酸化性等の高温特性と被削性および熱間加工性に優れた合金であり、自動車用のクランクシャフトやコンロッド等自動車部品を成形する温・熱間鍛造金型や、CuやAlまたはそれらの合金の熱間押し出し工具等に適用すれば、従来材に比較して工具の寿命を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明合金No.10を、大気中にて900℃×16時間保持後、室温まで空冷処理を5回繰り返した後の断面表層部の走査型電子顕微鏡による金属ミクロ組織写真ならびに構成相の模式図を示す図である。
Claims (5)
- 時効処理された組織を有し、該組織を構成する相が原子%から式(1)により計算されるMC型炭化物量で0.02〜1.5%、原子%から式(2)により計算されるガンマプライム(γ')量で10〜30%、および体積%で表されるα−W量で0.5〜30%と、残部がNiを主体とするオーステナイト相からなり、合金の組成が、重量%で、C0.002〜0.15%、Si2%以下、Mn3%以下、Cr10%を越え25%以下、W10〜30%、Fe15%以下、Al0.4〜2.5%、Ti0.4〜3.5%を含み、残部が不可避の不純物とNiからなることを特徴とするNi基超耐熱合金。
(1)2[C]
(2)4(0.026〔Cr〕+0.13〔Mo〕+0.13〔W〕+0.61〔Al〕+0.68〔Ti〕+0.5〔Nb〕+0.5〔Ta〕−〔C〕)
(但し、上記式のうち、無添加の元素は0として計算する) - Niの一部を重量%で、3.0%以下のNbと3.0%以下のTaの1種または2種で置換した請求項1に記載のNi基超耐熱合金。
- 重量%で、10%以下のMoを、W+2Mo≦30の範囲でNiの一部と置換した請求項1または2に記載のNi基超耐熱合金。
- Niの一部を重量%で、0.2%以下のZrと0.02%以下のBの1種または2種で置換した請求項1〜3のいずれかに記載のNi基超耐熱合金。
- Niの一部を重量%で、0.02%以下のMgと0.02%以下のCaの1種または2種で置換した請求項1〜4のいずれかに記載のNi基超耐熱合金。
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