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JP3579200B2 - 耐熱性高分子電解質ゲルおよびその製造方法 - Google Patents

耐熱性高分子電解質ゲルおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子電解質ゲルおよびその製造方法に関し、さらに詳細には、実用性に満足し得る高いイオン伝導性と耐熱性とを有する、耐熱性高分子電解質ゲルおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電池、表示素子、センサなどの電気化学デバイスには、水または有機溶媒にKOH、LiBF、LiClOなどの電解質を溶解した電解液が実用的に多く用いられている。この電解液は、イオン伝導度が高く、そして電極との接触が良好である。
【0003】
しかし、上記電解液は液体であるために、電解液を用いて作製される電気化学デバイスには、液漏れの問題が常に存在し、電解液を封鎖するための構造が必要とされる。さらにこのような電気化学デバイスにはシート状のデバイスに加工することが困難である、軽量化が困難であるなどの問題があった。
【0004】
近年では、RbAg、NaO・MgO・5Al、NaO・5Ga、NaO・11Al、LiNなどの無機固体電解質が知られている。これらの無機固体電解質は、上記液漏れのような電気化学デバイスの問題を解消し得る。しかし、無機固体電解質は、電極との密着性が悪い、成形加工が困難であるなどの間題があった。
【0005】
これらの問題を解決する電気化学デバイス用材料として、高分子固体電解質の使用が注目されている。高分子固体電解質を用いることにより、上記電気化学デバイスは、上記電解液のような流動性を有しない、いわゆる全固体型のデバイスに置き換えられる。さらに、この高分子固体電解質内の高分子が有する粘弾性により、電極との密着性、加工性などの上記問題が解消される。高分子固体電解質はまた、電極間に配置された場合には該電極間の隔膜も兼ね備えており、しかもmm以下の厚みに成形可能である。これらの理由から、電気化学デバイスに対してより効率的な高分子固体電解質の製造が期待されており、その研究開発が盛んに行われている。
【0006】
例えば、二次電池を作製する場合、無機固体電解質では、充放電反応に伴ってその中の陽極活性物質に形状変化が起こり、電極−電解質界面に歪みが生じて、二次電池の性能低下を引き起こす問題があった。これに対して、高分子固体電解質は、それ自体が可撓性を有しているので、陽極活性物質の形状変化に追従でき、良好な充放電特性を有し得る。高分子固体電解質はまた、薄型化することにより高度な集積が可能であるので、自動車用電源および家庭用電源を作製するための材料として応用が期待されている。
【0007】
さらに、従来の電解液を金属リチウム二次電池に使用した場合、充放電の繰り返しにより、電解液中にリチウムのデンドライトが生成するという問題があった。このようなデンドライトの生成は、二次電池のショートおよび破裂のような問題を引き起こす。従って、金属リチウム二次電池は、実用化に至っていなかった。これに対して、高分子固体電解質を金属リチウム二次電池に使用した場合、該高分子固体電解質は、リチウムのデンドライトの生成を抑制するか、または全く生成させないので、高分子固体電解質は金属リチウム二次電池の材料としても非常に期待されている。
【0008】
電解液、無機固体電解質、または高分子固体電解質を用いる電気化学デバイスの他の例として、エレクトロクロミックディスプレイが知られている。エレクトロクロミックディスプレイは、電気化学的な酸化還元反応によって可逆的発消色挙動を示す。エレクトロクロミックディスプレイは、表示角に影響されない;メモリー性が良好である;セルの構成が簡単である;色調が多様である;などの優れた利点を有しており、液晶表示素子に代わる表示素子として期待されている。
【0009】
このエレクトロクロミックディスプレイには、例えば、高いイオン伝導性を有する高分子固体電解質の膜と、可逆的発消色挙動を示す材料(例えば、酸化タングステン、プルシアンブルー、フタロシアニンのコバルト塩など)でなる層とが組合わせて使用され得る。このような組合せを用いて作製されたエレクトロクロミックディスプレイは良好な発色消色応答を示すものと期待されている。
【0010】
高分子固体電解質はまた、全固体型のエレクトロクロミックディスプレイの設計を可能とし、電極と膜との間の接着性を常に高く保持させ得る。従って、高分子固体電解質を用いるエレクトロクロミックディスプレイは、従来のものと比較して、種々の環境下(例えば、連続的に振動が加えられる環境下、および大きな歪み変形がかけられる環境下)において使用可能であると考えられる。
【0011】
電解液、無機固体電解質、または高分子固体電解質を用いる電気化学デバイスのさらに別の例として、電気二重層コンデンサーが知られている。電気二重層コンデンサーは、コンデンサー本来の長所である長寿命特性および急速充放電特性に加えて、通常の二次電池に匹敵する静電容量を有するという利点がある。特に、この電気二重層コンデンサーについては、薄膜化を可能とし、生産性を向上させ、そして電解液などの液体成分の流出を防止する観点から、全固体型の電気二重層コンデンサーを作製する関心が高まっている。このような全固体型の電気二重層コンデンサーの作製においては、電極との密着性を向上させ、そして急速充放電特性を維持するために、電解液に匹敵するイオン伝導度を有する高分子固体電解質を作製することが所望されている。
【0012】
高分子固体電解質に対する多くの研究が行われている。例えば、J. Amer. Chem. Soc., 21, 648(1988)は、ポリエチレンオキサイドのようなポリエーテルを用いた高分子固体電解質を記載している。これは、高分子鎖の熱運動(セグメント運動)に伴って、高分子鎖に包接されたイオンが移動するタイプ(ポリエーテルタイプ)の固体電解質である。
【0013】
しかし、上記ポリエーテルタイプの高分子固体電解質においては、通常、最も必要とされる室温付近でのイオン伝導度が10−4S/cmを越えることが困難であった。
【0014】
従って、室温付近でのイオン伝導度を高めるには、分子量の低いポリエーテルを使用するか、またはポリエーテル自体を軟化させる必要があった。しかし、このような分子量の低下または軟化は、高分子固体電解質の機械的強度を低下させ、その使用を耐え難いものにさせていた。
【0015】
J. Polym. Sci., 27, 4191(1982)、J. Polym. Sci. Polym. Phys. Ed., 21, 939(1983)、J. Electrochem. Soc., 137, 1657(1990)、特開平4−306560号公報、特開平7−45271号公報、および特開平7−82450号公報は、ポリアクリロニトリルのような極性高分子と電解質を有機溶媒に溶解した電解液とでなる高分子固体電解質(いわゆる高分子電解質ゲル)について記載している。特公昭58−56467号公報は、ポリメタクリル酸メチルのような極性高分子と、電解質を有機溶媒に溶解した電解液とでなる高分子電解質ゲルを開示している。さらに、特開平7−37419号公報は、アクリロニトリルの共重合体およびポリアルキレンオキサイドと、電解質を有機溶媒に溶解した電解液とでなる高分子電解質ゲルを開示している。
【0016】
これらの高分子電解質ゲルは、上記ポリエーテルを用いた高分子固体電解質よりも比較的高いイオン伝導度を有するが、極性高分子を約12重量%以上の濃度で含有しているために、必然的に溶解し得る電解質の量が低下し、高分子電解質ゲルのイオン伝導度は電解液単独の5分の1程度しかなかった。
【0017】
このような高分子電解質ゲルのイオン伝導度を向上させるためには、含有される極性高分子の濃度を低下させ、電解質濃度を上昇させる方法が考えられる。しかし、極性高分子の濃度が約10重量%以下では、その高分子電解質ゲルは実用に耐え得る温度範囲(例えば、−20℃〜80℃;これは自動車内で得られる温度範囲である)において、その形態を保持し得ないという問題がある。例えば、50℃〜80℃の温度下では、高分子電解質ゲルが液状化する;高分子電解質ゲル中の極性高分子が電解液を担持することができず、極性高分子と電解液とが分離する;などの問題が生じる。このように、高温下においては、上記高分子電解質ゲルの利点は損なわれるので、高温下に曝された上記高分子電解質ゲルは、長期間の使用に対して不安定となり、満足し得る信頼性を提供し得ない。
【0018】
上記極性高分子を用いる高分子電解質ゲルは、例えば、キャスト方法により製造される。キャスト方法は、アセトニトリルのような揮発性の有機溶媒を含有する電解液に極性高分子を溶解させた(あるいは、通常の電解液に極性高分子を溶解させ、次いで、これを揮発性の有機溶媒で希釈した)後に、得られた液体を水平な板の上に展開し、加熱減圧下または大気圧下でこの揮発性の有機溶媒を蒸発させ、濃厚な高分子含有電解液とすることによってゲル化させるという(揮発−濃縮)方法である。しかし、この方法においては、揮発性の有機溶媒を蒸発させる工程を必須とするために、火災発生および取扱者への中毒症状の誘発などの安全性の問題、ならびに薄膜タイプの高分子電解質ゲルを大面積で得られないという製造方法自体の問題があり、工業的に実用可能ではなかった。
【0019】
高分子電解質ゲルを含む高分子固体電解質は、薄型電池のような携帯用機器に使用される場合、一般に500μm以下、好ましくは100μm以下の厚みが要求される。さらに、センサなどの電気化学デバイスに使用される場合、この高分子固体電解質は膜という形状に限定されず、種々の形状に加工され得ることが要求されている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題の解決を課題とし、その目的とするところは、高いイオン伝導度を有し、例えば、80℃の高温下においても固体の形態を保持し、液体成分と固体成分との相分離がなく、電極と密着し得る弾性と成形加工に耐え得る強度とを備え、そして適切な厚みで種々の形状に成形可能な耐熱性高分子電解質ゲル、および該ゲルを工業的に有利かつ安全に製造する方法を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アクリロニトリル系ポリマー、少なくとも1種の電解質、および溶媒を含有する耐熱性高分子電解質ゲルであって、
該アクリロニトリル系ポリマーが、89重量%から98重量%の割合のアクリロニトリル含量を有し、かつ以下の式:
【0022】
【数3】
Figure 0003579200
【0023】
を満足し、20℃において10−3S/cm以上のイオン伝導度を有し、耐熱テストにおいて「形態保持」を示し、かつ該アクリロニトリル系ポリマーを3重量%から9重量%の割合で含有する、耐熱性高分子電解質ゲルである。そのことにより上記目的が達成される。
【0024】
好適な実施態様では、本発明の耐熱性高分子電解質ゲルは、1μmから500μmの厚みを有する膜である
好適な実施態様では、上記電解質はリチウムイオンおよび4級アンモニウムイオンのいずれかのカチオンを含有し、そして上記溶媒が有機溶媒である。
【0025】
本発明はまた、耐熱性高分子電解質ゲルの製造方法であって、
溶媒に、アクリロニトリル系ポリマーと少なくとも1種の電解質とを溶解してポリマー溶液を調製する工程;および
該ポリマー溶液を0℃以下に冷却する工程;を包含し、
該アクリロニトリル系ポリマーが、89重量%から98重量%の割合のアクリロニトリル含量を有し、かつ以下の式:
【0026】
【数4】
Figure 0003579200
【0027】
を満足し、20℃において10−3S/cm以上のイオン伝導度を有し、耐熱テストにおいて「形態保持」を示し、かつ該アクリロニトリル系ポリマーを3重量%から9重量%の割合で含有する、方法である。
【0028】
好適な実施態様では、上記アクリロニトリル系ポリマーは繊維または該繊維で構成される成形体である。
【0029】
好適な実施態様では、上記ポリマー溶液の調製工程は、基板または型枠上に配置された上記アクリロニトリル系ポリマーに、上記溶媒と上記少なくとも1種の電解質とでなる電解液を添加することにより行われる。
【0030】
好適な実施態様では、上記冷却工程は、上記ポリマー溶液を基板または型枠上で薄膜状に配置して行われる。
【0031】
なお、これらの製造方法において、上記冷却工程の前(すなわち、ゲル化する前)および/または上記冷却工程の後(すなわち、ゲル化の後)に、上記溶媒の一部を蒸発除去する工程をさらに付加することも勿論可能である。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明を以下に詳述する。
【0033】
本発明の耐熱性高分子電解質ゲルは、アクリロニトリル系ポリマー、少なくとも1種の電解質、および溶媒を含有する。
【0034】
本発明に用いられるアクリロニトリル系ポリマーは、アクリロニトリルと、該アクリロニトリルに共重合可能な共重合成分の少なくとも1種とからなる。本発明においては、アクリロニトリル系ポリマーは、特に1種に限定されず、2種以上が組合わせて用いられ得る。
【0035】
共重合成分は、得られるアクリロニトリル系ポリマーが後述する溶媒に溶解するものであればその種類は特に限定されない。その例としては、メタクリロニトリルなどのシアノ基を有する単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸、またはそれらの誘導体(例えば、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸ナトリウムなどの塩、無水マレイン酸などの酸無水物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ノルマルプロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ノルマルブチル、アクリル酸ノルマルオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ヒドロキシルエチルメタクリレートなどのエステル、アクリルアミド、モノメタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、モノエチルアクリルアミド、ノルマル−t−ブチルアクリルアミド、メタクリルアミド、モノメチルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミドなどのアミド);塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル化合物;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン系単量体;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ジクロロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、モノフルオロ酢酸ビニル、ジフルオロ酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル;p−スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート、ビニルステアリン酸、ビニルスルフィン酸などのビニル基含有酸化合物、あるいはそれらの塩、無水物、または誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどのビニルケトン;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ビニルフラン、ビニルピリジンなどのビニル基含有複素環化合物;N−ビニルフタルイミド、N−ビニルサクシノイミドなどのビニルイミド;ならびにブタジエン、イソプレン、クロロブレンなどのジエンなどが挙げられる。
【0036】
上記共重合成分においては、共重合により形成されるアクリロニトリル系ポリマーの溶解性を向上させる点から、ゲル化がより容易な単量体を選択することが好ましい。このような単量体の好ましい例としては、塩化ビニリデン、塩化ビニル、臭化ビニリデン、臭化ビニルなどが挙げられる。
【0037】
本発明に用いられるアクリロニトリル系ポリマーは、以下の式:
【0038】
【数5】
Figure 0003579200
【0039】
を満足する。
【0040】
本発明に用いられるアクリロニトリル系ポリマーはまた、アクリロニトリルを89重量%〜98重量%、好ましくは92重量%〜97.5重量%の割合で含有し、そして上記アクリロニトリルと共重合成分の少なくとも1種を好ましくは2重量%〜11重量%、より好ましくは2.5重量%〜8重量%の割合で含有する。
【0041】
上記数5の式から明らかなように、本発明に用いられるアクリロニトリル系ポリマーの重量平均分子量Bは、上述したそのアクリロニトリル含量の範囲(89重量%〜98重量%)に従って、決定される。
【0042】
本発明においては、アクリロニトリル系ポリマー中のアクリロニトリルの含量が98重量%を越えると、たとえ、上記数5の式が満足される場合であっても、このときのアクリロニトリル系ポリマーの溶媒への溶解性は不充分となり、高い溶解性を得るために高温とすると、アクリロニトリル系ポリマー自体が分解する、および/または着色して濃褐色となる場合がある。これに対して、アクリロニトリル系ポリマーが分解することなく溶解し得る比較的低い温度を用いるために、揮発性の高い溶媒を含有する電解液に少量のアクリロニトリル系ポリマーを該ポリマーが分解しない程度の温度で溶解し、次いで、揮発性の高い溶媒を蒸発によって除去することによりゲルを得る方法が考えられるが、このように比較的低温での溶解性が良好であり、かつ安全性を有する溶媒を選択することは工業的に困難である。あるいは、アクリロニトリル系ポリマーの分解を生じない温度で溶解が行われたとしても、均一な高分子電解質ゲルが形成されずに脆いゲルが生じる。さらに、上記アクリロニトリルを高濃度で含有するアクリロニトリル系ポリマーを含む高分子電解質ゲルは、高温(例えば、80℃)下に曝されると、アクリロニトリル系ポリマーと電解質および溶媒でなる電解液とが相分離して、例えば、電極と密着し得る粘弾性および成形加工に耐え得る充分な強度を有するゲルを提供しない。
【0043】
アクリロニトリル系ポリマー中のアクリロニトリルの含量が89重量%未満であると、たとえ、上記数5の式が満足される場合であっても、得られるアクリロニトリル系ポリマーの溶媒に対する溶解性は高くなる。このような場合、高温(例えば、80℃)下における高分子電解質ゲルの形態を保持するために、溶媒に対するアクリロニトリル系ポリマーの濃度を高くする必要がある。その結果、電解質の溶媒に対する溶解量が低下し、得られる高分子電解質ゲルは充分なイオン伝導度と耐熱性との両方を満足するものとならない。
【0044】
一般に、アクリロニトリル含量を高めて該ポリマーの極性を若干大きくすることにより、溶媒に対する該ポリマーの溶解性を若干抑えることが可能であるとも考えられる。しかし、そのような場合、アクリロニトリルに共重合する共重合成分の種類または量を適切に選択しない限り、以下の問題が生じる。すなわち、溶媒に対するアクリロニトリル系ポリマーの溶解可能な温度が高くなって該ポリマーが溶解時に着色する。あるいはアクリロニトリル系ポリマーの溶解性が大きくなって高分子電解質ゲルにおける該ポリマーの濃度を極端に高くせざるを得ず、一方で、電解質の溶媒に対する溶解量が低下し、得られる高分子電解質ゲルは充分なイオン伝導度を有さない。
【0045】
アクリロニトリル含量Aが89重量%〜98重量%の範囲内であっても、該ポリマーの重量平均分子量Bの値が低すぎて上記数5の式を満足しない場合(例えば、Aが89重量%であって、Bが150000未満である場合、およびAが98重量%であって、Bが60000未満である場合;これらのBはいずれも数5の式の1040000−(A×10000)より求められる)、以下の問題が生じる。これらの場合においては、溶媒に対するアクリロニトリル系ポリマーの溶解性が高くなり、充分な耐熱性を有する高分子電解質ゲルが得られない。これに対し、アクリロニトリル系ポリマーの含量を増加させることが考えられるが、この含量を増加すると、ゲル中の電解質の濃度が低くなり、得られる高分子電解質ゲルのイオン伝導度は低くなる。さらに、これらの高分子電解質ゲルは脆いという問題がある。
【0046】
さらに、アクリロニトリル含量Aが89重量%〜98重量%の範囲内であっても、該ポリマーの重量平均分子量Bの値が高すぎて上記数5の式を満足しない場合(例えば、Aが89重量%であって、Bが600000を越える場合、およびAが98重量%であって、Bが510000を越える場合;これらのBはいずれも数5の式の1490000−(A×10000)より求められる)には、以下の問題が生じる。これらの場合においては、アクリロニトリル系ポリマーは、溶媒に対する溶解性に劣り、分解する、着色する、脆いなどの欠点を有し、高分子電解質ゲルが均一な膜として得られない。特に、高分子電解質ゲルから形成される膜が不均一であると、場所によってイオン伝導度にばらつきがあり、その膜は不透明となる問題がある。これらの問題を解消するために、揮発性の高い溶媒を含有する電解液に少量のアクリロニトリル系ポリマーを溶解して、揮発性の高い溶媒を蒸発除去することによりゲルを得る方法が考えられるが、比較的低温での溶解性が良好であり、かつ安全性を有する溶媒を選択することは工業的に困難である。
【0047】
このようにアクリロニトリル系ポリマーの重量平均分子量は、上記数5の式に従って、適切に決定される必要がある。
【0048】
一般に、アクリロニトリル系ポリマーの重量平均分子量を大きくすることにより、溶媒に対する該ポリマーの溶解性を若干抑えることが可能であるとも考えられる。しかし、そのような場合、溶媒に対する該ポリマーの溶解温度は高くなり、特に150℃以上の温度では該ポリマーは濃褐色に着色し、分解するという欠点がある。
【0049】
本発明の耐熱性高分子電解質ゲルは、上記アクリロニトリル系ポリマーを3重量%〜9重量%、好ましくは4.5重量%〜8.5重量%の割合で含有する。アクリロニトリル系ポリマーをこのような割合で含有することにより、本発明の耐熱性高分子電解質ゲルは、その中に含まれる後述の電解質の濃度をより高く設定し得、その結果、より高いイオン伝導度を提供し得る。これに対し、上記アクリロニトリル系ポリマーの割合が3重量%未満では、得られる高分子電解質ゲルの耐熱性が失われる。さらに、上記アクリロニトリル系ポリマーの割合が9重量%を上回ると、溶媒に溶解し得る電解質の濃度が低下してイオン伝導度を低下させる。
【0050】
一般に、アクリロニトリル系ポリマーの溶解性を若干抑える目的においては、該ポリマーの立体規則性を制御することも考えられる。しかし、アクリロニトリル系ポリマーの立体規則性自体を制御することも報告されてはいるが、生産性、製造コスト、品質安定性などの点から工業的に満足するものを得ることは困難である。
【0051】
本発明に用いられる電解質は、一般に電解質として用いられる物質であり、かつアクリロニトリル系ポリマーと共に、後述する溶媒に対して可溶の物質であれば特に限定されず、1種またはそれ以上の組合せが用いられ得る。本発明に用いられる電解質の例としては、AgClO、AgNO、AlCl、CuCl、HNO、KCl、KI、KPF、KSCN、LiAsF、Li10Cl10、LiBF、LiBr、LiCFSO、LiCSO、LiClO、LiI、LiN(SOCF、LiPF、LiSCN、ステアリルスルホン酸リチウム、MgCl、Mg(ClO、NaBF、NaBr、NaClO、NaI、NaSCN、NaPF、オクチルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、NHAsF、NHBF、NHBr、NHCFSO、NHClO、NHI、NHPF、NHSCN、ZnCl、(CNAsF、(CNBF、(CNBr、(CNCFSO、(CNClO、(CNI、(CNPF、(CNSCN、(CNAsF、(CNBF、(CNBr、(CNCFSO、(CNClO、(CNI、(CNPF、(CNSCNなどが挙げられる。
【0052】
本発明に用いられる電解質は、以下の目的に応じて特にリチウムイオンおよび4級アンモニウムイオンのいずれかのカチオンを含有することが好ましい。
【0053】
例えば、本発明の耐熱性高分子電解質ゲルを、電極がリチウム系の物質でなる電気化学デバイス(例えば、リチウムイオン二次電池および金属リチウム二次電池)に使用する場合、電解質のカチオンはリチウムイオンであることが好ましい。このようなリチウムイオンを含有する電解質の好ましい例としては、LiAsF、Li10Cl10、LiBF、LiBr、LiCFSO、LiCSO、LiClO、LiI、LiN(SOCF、LiPF、LiSCN、およびステアリルスルホン酸リチウムなどが挙げられる。
【0054】
他方、本発明の耐熱性高分子電解質ゲルを電気二重層コンデンサーのような電気化学デバイスに使用する場合、電解質は特に限定されないが、高いイオン伝導度が得られ、そして電気化学的安定性が高い点から、電解質のカチオンは4級アンモニウムイオンであることが好ましい。このような4級アンモニウムイオンを含有する電解質の好ましい例としては、NHAsF、NHBF、NHBr、NHCFSO、NHClO、NHI、NHPF、NHSCN、ZnCl、(CNAsF、(CNBF、(CNBr、(CNCFSO、(CNClO、(CNI、(CNPF、(CNSCN、(CNAsF、(CNBF、(CNBr、(CNCFSO、(CNClO、(CNI、(CNPF、および(CNSCNなどが挙げられる。
【0055】
得られる高分子電解質ゲルにより高いイオン伝導度(例えば、20℃で5.5×10−3S/cmを越えるイオン伝導度)が要求される場合、イオンサイズが小さい電解質を選択することがさらに好ましい。このような電解質の例としては、アニオンとしてCFSO よりもClO 、カチオンとして(Cよりも(C)Nを有するものが挙げられる。
【0056】
本発明に用いられる電解質の濃度は、溶媒中で最も高いイオン伝導度を示し、かつ使用時(特に、低温時)に溶媒から析出しない濃度に調製されることが好ましい。例えば、本発明に用いられる溶媒が有機溶媒である場合、電解質は、好ましくは0.5モル/リットル〜1.5モル/リットルの濃度に調製することにより、最も高いイオン伝導度を示す。
【0057】
本発明に用いられる溶媒は、アクリロニトリル系ポリマーと電解質との両方を溶解し得る溶媒であれば特に限定されず、1種類または複数でなる混合溶媒のいずれが用いられてもよい。すなわち、単独では溶解性に乏しくても混合溶媒とした場合に充分な溶解性を示す溶媒も包含される。本発明に用いられる溶媒の例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、サクシノニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,3−ジオキソラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メチルアセテートなどが挙げられる。
【0058】
本発明においては、溶媒単独ではアクリロニトリル系ポリマーを溶解させることが困難であっても、上記電解質を溶解させたときに該ポリマーを溶解し得る溶媒もまた、利用され得る。このような溶媒の例としては水が挙げられる。水に好適に溶解し得、このような目的に利用し得る電解質としては、LiBr、ZnCl、NaSCN、NHSCN、HNO、Al(ClOなどが挙げられ、一般に濃厚水溶液として用いられる。電解質の濃度が高すぎるとアクリロニトリル系ポリマーが溶解しなかったり、使用環境下において電解質が析出する場合があるので、上記水溶液が用いられる場合、電解質の濃度は、該ポリマーを溶解し得、かつゲルを形成するに充分機能し得る程度の濃度の下限付近に調製される。
【0059】
本発明に用いられる溶媒は、上記電解質がリチウムイオンおよび4級アンモニウムイオンのいずれかのカチオンを含有する場合、好ましくは有機溶媒であり得る。好適に用いられる有機溶媒の例としては、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、スルホラン、メチルスルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどが挙げられる。実用的には、揮発性が低く、沸点が80℃を越え、粘性が低く、かつ上記アクリロニトリル系ポリマーおよび電解質を容易に溶解し得る有機溶媒を選択することが、安全性および生産性を高める点でさらに好ましい。このようなさらに好ましい溶媒の例としては、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0060】
一般に、上記のように溶媒に対するアクリロニトリル系ポリマーの溶解濃度が高いと、電解質の溶解濃度は低下し、得られる高分子電解質ゲルのイオン伝導度が低下するという欠点があるため、アクリロニトリル系ポリマーに対する溶解性が低いが、電解質に対する溶解性が高い溶媒を用いることが考えられる。しかし、そのような場合、得られる高分子電解質ゲルは50℃以上の温度下に曝された際に固体成分と液体成分との相分離を生じ易い。
【0061】
本発明の耐熱性高分子電解質ゲルは、20℃において10−3S/cm以上、好ましくは2.5×10−3S/cm以上1S/cm以下のイオン伝導度を有し、かつ耐熱テストにおいて形態保持を示す。ここで、本明細書中で用いられる用語「耐熱テスト」とは、本発明の高分子電解質ゲルを1cm×2cm×500μm厚の大きさに切り出し、サンプル瓶の内壁の下から1cmの位置にゲルの粘着力によって付着させ、次いで、このサンプル瓶を密栓し、80℃の恒温槽内に2日間放置した後、取り出して該ゲルの形態変化を目視により観察する試験をいう。ここで「形態保持」とは、サンプル瓶に付着したゲルが、形状の変化を生じないこと;溶融による流出を生じていないこと;およびアクリロニトリル系ポリマーと、電解質および溶媒でなる電解液との相分離が観察されないことを指していう。上記耐熱テストにおいて、80℃で2日間という条件は、通常の条件下および高温下などの過酷な条件下において該ゲルの形態変化が生じるか否かを判断するに充分な条件である。
【0062】
本発明の耐熱性高分子電解質ゲルを小型電子機器内の電気化学デバイスとして使用する場合、この耐熱性高分子電解質ゲルは、特に小型でかつ軽量化がなされていることが所望される。このような場合、本発明の耐熱性高分子電解質ゲルは、好ましくは1μm〜500μm、より好ましくは10μm〜100μmの厚みを有する膜である。
【0063】
以下に本発明の耐熱性高分子電解質ゲルの製造方法の好ましい一例について詳述する。
【0064】
まず、上記溶媒にアクリロニトリル系ポリマーと少なくとも1種の電解質とを溶解してポリマー溶液が調製される。
【0065】
このポリマー溶液の調製においては、アクリロニトリル系ポリマーは溶媒に容易に溶解させるために、表面積の大きな形状(例えば、粉末、フレーク、繊維、または多孔質粒子)で使用される。特に、繊維または該繊維でなる成形体の形状で使用されることが好ましい。用語「繊維で構成される成形体」とは、アクリロニトリル系ポリマーの繊維を用いて作製されたシート、不織布、編み地、織り地などの成形体を包含していう。アクリロニトリル系ポリマーが繊維の形状で使用される場合、その繊維径および繊維長は特に限定されず、必要に応じて適宜選択され得る。アクリロニトリル系ポリマーでなる繊維または該繊維で構成される成形体を作製する方法は、当業者に公知である。
【0066】
高分子電解質ゲルは、一般に電気化学デバイスの軽量化および小型化を可能にし、かつ充分な可撓性を得るために、その厚みをより小さくさせることが要求される。これに対し、本発明に用いられるアクリロニトリル系ポリマーは、数万以上の分子量を有しているので、溶解したときの粘度が高く、通常のコーティング方法を用いても、本発明の耐熱性高分子電解質ゲルは、均一でかつ充分小さい厚みを有さない場合がある。
【0067】
アクリロニトリル系ポリマーを繊維または該繊維で構成される成形体の形状で使用する場合、上記ポリマー溶液は、予め上記溶媒と少なくとも1種の電解質とで調製された電解液を、例えば、電気化学デバイスを作製するための基板(電極または支持体を包含する)あるいは型枠上に配置されたアクリロニトリル系ポリマー繊維に添加することにより調製され得る。このような手順によれば、ポリマー溶液の調製のために撹拌を特別に行うことなく、ポリマー溶液の調製から本発明の耐熱性高分子電解質ゲルを製造するまでの時間を短縮し得る。製造された耐熱性高分子電解質ゲルは、均一でかつ充分小さい厚みを有する。この方法で製造される耐熱性高分子電解質ゲルはまた、その強度がさらに向上することが見出されている。この理由としては、繊維形成時に生じるアクリロニトリル系ポリマーの配向が、ゲルの形成時にも有効に作用し、ゲル強度の向上に寄与しているためと考えられる。
【0068】
本発明においては、調製されたポリマー溶液自体が、上記基板または型枠上で薄膜状に配置され得る。ポリマー溶液の配置方法としては、アプリケーターロールなどを用いるローラーコーティング、バーコーターコーティング、スクリーンコーティング、スピンコーティング、ドクターブレードコーティングなどのコーティング方法が挙げられる。これらのコーティングを行う場合、ポリマー溶液の粘性が重要な因子となる。従って、コーティングは、アクリロニトリル系ポリマーが分解し難い温度領域下でポリマー溶液の粘性を制御することにより行われ得る。これにより、ポリマー溶液は基板または型枠上に任意の厚みおよび形状で配置され得る。
【0069】
次いで、ポリマー溶液は0℃以下に冷却される。冷却の温度を0℃以下とすることにより、ポリマー溶液内のアクリロニトリル系ポリマーの微結晶が速く形成され、ゲル化が容易になる。冷却の温度が0℃を越えると、アクリロニトリル系ポリマーの微結晶の形成は遅くなるので工業的には有効ではない。あるいは、0℃を上回る温度で冷却され、短時間で高分子電解質ゲルが製造されたとしても、そのゲルの強度および弾性は不充分となる。本発明においては、さらに充分な強度と弾性とを有する耐熱性高分子電解質ゲルを製造するために、ポリマー溶液を一旦0℃付近に冷却して所定の時間保持した後、さらに低温(例えば、−20℃)で冷却することが好ましい。
【0070】
冷却時間は、アクリロニトリル系ポリマーの微結晶を効率的になるべく多く形成させるために、好ましくは0.5時間〜6時間が選択される。
【0071】
このように本発明においては、この冷却の温度および時間を制御することにより、製造される耐熱性高分子電解質ゲルの強度および弾性を制御することが可能である。一般に、高分子電解質ゲルを冷却して製造する場合には、ポリマー溶液が固体成分と液体成分との相分離を生じる場合があるが、本発明においてはそのような相分離は生じない。
【0072】
なお、このような冷却工程の前および/または後で、ポリマー溶液中の溶媒の一部を蒸発または揮発させることも勿論許容される。この蒸発などの操作には、例えば、ポリマー溶液の粘度の調製手段またはゲル化を容易にする手段が用いられ得るが、イオン伝導度を高める目的ならびに空気汚染などを避けた安全な製造方法を提供する目的から、必ずしも有効ではない。
【0073】
このようにして本発明の耐熱性高分子電解質ゲルが製造される。得られた耐熱性高分子電解質ゲルは、ローラーなどを用いてさらに引き延ばされ所望の形状に成形され得る。
【0074】
以下に本発明の作用について説明する。
【0075】
本発明の耐熱性高分子電解質ゲルが高いイオン伝導度を有し、80℃のような高温下においても溶融せず、固体成分と液体成分との相分離を生じることなく形態を保持する理由は、充分には解明されていないが、以下のように考えられている。本発明に用いられるアクリロニトリル系ポリマーは、溶媒に対して適度に溶解し易く、かつ適度に溶解し難い。このようなアクリロニトリル系ポリマーを用いることにより、溶媒に溶解する該ポリマーの濃度を従来よりも低く設定し、かつ電解質を溶媒に充分に溶解させ得る。その結果、従来よりも高いイオン伝導度を有する高分子電解質ゲルが得られる。さらに、本発明に用いられるアクリロニトリル系ポリマーは溶媒に対する親和性も高いので、本発明の耐熱性高分子電解質ゲルを高温下に曝す、および/または長期保存しても、固体成分と液体成分との相分離は起こらず、広い温度範囲で安定にゲルの形態を保持し得る。
【0076】
さらに、本発明の耐熱性高分子電解質ゲルが、電極と密着し得る適切な粘弾性と成形加工に耐え得る強度とを有し、工業的に有効かつ安全に提供され得る理由は、以下のように考えられている。本発明の耐熱性高分子電解質ゲルにおいては、大量に含まれている液体成分が電極との密着性に有効に機能している。さらに本発明に用いられるアクリロニトリル系ポリマーは可撓性のゲル化物であるので、耐熱性高分子電解質ゲル中において該ポリマーの分子同士は、架橋しているかのように絡み合った立体構造を有すると考えられる。従って、本発明の耐熱性高分子電解質ゲルは、粘弾性が向上し、付与される電極の環境変化に追従し得る。
【0077】
本発明の製造方法により、工業的に有効かつ安全に耐熱性高分子電解質ゲルが製造され得る理由は以下の通りである。本発明においては、ゲル化の目的で揮発性の溶媒を蒸発させる必要がないので、蒸発した溶媒による空気汚染および人体に及ぼす影響を考慮する必要がない。さらに、ポリマー溶液を0℃以下に冷却すればよいので、種々の加工手段(例えば、型枠加工、コーティング、粉末状のゲルの製造を目的とする噴霧冷却、およびフレーク状のゲルの製造を目的とするカプセル封入)が用いられ得る。さらにまた、溶媒の蒸発およびアクリロニトリル系ポリマーの濃度変化がほとんど起こらないので、耐熱性高分子電解質ゲルを安定して製造し得る。これに対し、従来のキャスト方法を用いてゲルの形成速度を高めようとする場合には、溶媒が蒸発する効率を高めるために、ゲルは特定の形状(例えば、その表面積が大きく、かつ薄膜の形状)にのみ成形されていた。さらに、従来のキャスト方法を用いて溶媒を蒸発させるためには、特別な設備と時間とが必要であった。
【0078】
本発明において、アクリロニトリル系ポリマーが特に繊維または該繊維で構成される成形体の形態で用いられる場合、その比表面積が大きいために電解質と溶媒とでなる電解液に速やかに溶解し得る。そのため、このポリマーでなる繊維または繊維で構成される成形体を基板または型枠上に配置して、この上に電解液を添加するだけで、特に撹拌を行わなくとも、ポリマー溶液が容易に調製され、より短時間で耐熱性高分子電解質ゲルを製造し得る。
【0079】
本発明の耐熱性高分子電解質ゲルは、実用性に耐え得る高いイオン伝導度と耐熱性とを有し、さらに電極に密着し得る適切な粘弾性と成形加工可能な強度とを有する。このような特性を有する本発明の耐熱性高分子電解質は、薄型電池、エレクトロクロミックディスプレイ、電気二重層コンデンサー、種々のセンサなどの電気化学デバイス用の材料として有用である。
【0080】
【実施例】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本実施例で得られた高分子電解質ゲルの評価方法を以下に示す。
【0081】
<イオン伝導度>
得られた高分子電解質ゲルを直径2cmの均一な厚み(約500μm)の円形板に切断し、これを直径1.5cmの円形の2枚の白金電極の間に挟み、白金電極間に交流インピーダンスアナライザーを接続して、20℃でのイオン伝導度(S/cm)を測定した。なお、電解質にリチウム塩を使用した場合は、露点が−40℃である乾燥アルゴンガス雰囲気下で、上記高分子電解質ゲルの作製から評価までを行った。
【0082】
<耐熱テスト>
得られた高分子電解質ゲルを、1cm×2cm×500μm厚の大きさに切り出し、サンプル瓶の内壁の下から1cmの位置にゲルの粘着力によって付着させ、次いで、このサンプル瓶を密栓し、80℃の恒温槽内に2日間放置した後、取り出して該ゲルの形態変化を目視により観察した。観察結果を以下のように評価した:
「形態保持」・・・形態変化を生じなかった。
「分離」 ・・・サンプル瓶内でゲルが溶融により流れ出していないが、固体成分と液体成分との相分離が観察された。
「溶融」 ・・・サンプル瓶内でゲルが溶融してサンプル瓶の底面に流れ出した。
【0083】
<強度/弾性テスト>
厚み50μmの高分子電解質ゲルの形成を支持体(SUS304平滑板)上で行い、次いで、該ゲルを剥離したときのゲルの状態を以下のように評価した:
○・・・完全に剥離し得るに充分な強度と形状を元に戻す弾性とを有し、成形加工に耐え得る充分な曲げ強度も有していた。
△・・・完全に剥離し得るに充分な強度を有しているが、ゲルが伸びて弾性に劣っていた。
×・・・脆いか、または粘性が高すぎて完全に剥離できなかった。
【0084】
<実施例1>
エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとを1:1のモル比で含有する混合溶媒を用いて、1.2モル/リットルのLiBFを含有する電解液を調製した。次いで、この電解液に、4重量%のアクリル酸メチル(MA)と96重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(重量平均分子量(Mw):150000)の乾燥粉末を7.8重量%の割合で添加し、攪拌により分散させ、徐々に昇温し、約120℃にて溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液の調製においては、溶媒の揮発が殆ど無い条件で行った。
【0085】
ポリマー溶液を50μmおよび500μmのスペーサーを配置した支持体(SUS304平滑板)上に展開し、さらにその上にテフロン(登録商標)シートを被せ、−20℃の冷凍庫に4時間放置して高分子電解質ゲルを作製した。なお、上記混合溶媒の調整から高分子電解質ゲルの作製までは、全て乾燥アルゴンガスの雰囲気下で行った。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表1に示す。
【0086】
<実施例2>
実施例1のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、3重量%のMAと97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:440000)の乾燥粉末を7.0重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表1に示す。
【0087】
<実施例3>
LiBFの代わりにLiClOを用い、そして実施例1のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、3重量%の酢酸ビニル(VAc)と97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:470000)の乾燥粉末を6.9重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表1に示す。
【0088】
<実施例4>
LiBFの代わりにLiClOを用い、そして実施例1のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、10重量%のメタクリル酸メチル(MMA)と90重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:560000)の乾燥粉末を8.9重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表1に示す。
【0089】
<比較例1>
実施例1のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、100重量%のアクリロニトリルでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:240000)の乾燥粉末を2.8重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表1に示す。
【0090】
<比較例2>
実施例1のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、10重量%のMAと90重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:100000)の乾燥粉末を9.0重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表1に示す。
【0091】
<比較例3>
LiBFの代わりにLiClOを用い、そして実施例1のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、3重量%のVAcと97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:760000)の乾燥粉末を2.7重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
Figure 0003579200
【0093】
表1に示されるように、実施例1〜4で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも耐熱テストの結果が形態保持であり、20℃において2.5×10−3S/cm以上の高いイオン伝導度を有していた。実施例1〜4で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも強度/弾性テストの結果が良好であり、成形加工に充分耐え得ることがわかる。
【0094】
これに対し、比較例1で用いたアクリロニトリル系ポリマーは、120℃では電解液に対して少量しか溶解しなかった。これを用いて作製された高分子電解質ゲルは脆く、常温下では液体成分が分離してイオン伝導度を測定することができなかった。比較例2で用いたアクリロニトリル系ポリマーは、電解液に対する溶解性は優れていたが、得られた高分子電解質ゲルは、80℃の温度下では溶融し実用に耐え得るものではなかった。さらに、比較例3で用いたアクリロニトリル系ポリマーは、120℃では電解液に対して少量しか溶解しなかった。これを用いて作製された高分子電解質ゲルは脆く、常温下では液体成分が分離してイオン伝導度を測定することができなかった。
【0095】
なお、比較例1および3で用いたアクリロニトリル系ポリマーが、各比較例で用いた電解液に約7重量%の割合で溶解する温度を調べたところ、いずれも140℃以上となり、このとき得られたポリマー溶液は着色が著しかった。
【0096】
<実施例5>
実施例1と同様の混合溶媒を用いて、1.2モル/リットルのLiBFを含有する電解液を調製した。次いで、この電解液に、3重量%のMAと97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:70000)の乾燥粉末を8.0重量%の割合で添加し、攪拌により分散させ、徐々に昇温し、約120℃にて溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液の調製においては、溶媒の揮発が殆ど無い条件で行った。
【0097】
このポリマー溶液を用い、実施例1と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表2に示す。
【0098】
<実施例6>
実施例5のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、3重量%のMAと97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:120000)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表2に示す。
【0099】
<実施例7>
実施例5のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、3重量%のMAと97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:520000)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表2に示す。
【0100】
<比較例4>
実施例5のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、3重量%のMAと97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:60000)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表2に示す。
【0101】
<比較例5>
実施例5のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、3重量%のMAと97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:550000)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
Figure 0003579200
【0103】
表2に示されるように、実施例5〜7で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも耐熱テストの結果が形態保持であり、20℃において2.5×10−3S/cm以上の高いイオン伝導度を有していた。実施例5〜7で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも強度/弾性テストの結果が良好であり、成形加工に充分耐え得るものであるとわかる。
【0104】
これに対し、比較例4で作製された高分子電解質ゲルは弾性が低く、強度/弾性テストにおいて、ゲルを剥離したときの伸びが戻らず、そして耐熱性もなく使用に耐え得るものではなかった。比較例5で用いたアクリロニトリル系ポリマーは、電解液に対する溶解性が低く、ポリマー溶液を得るために145℃以上で長時間加熱する必要があった。さらにこのポリマー溶液はアクリロニトリル系ポリマーの分解に起因すると思われる茶褐色に着色した。得られた高分子電解質ゲルは、均一な厚みを有する膜に成形することが困難であった。
【0105】
<実施例8>
実施例1と同様の混合溶媒を用いて、1.2モル/リットルのLiBFを含有する電解液を調製した。次いで、この電解液に、2重量%のMAと98重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:250000)の乾燥粉末を8.0重量%の割合で添加し、攪拌により分散させ、徐々に昇温し、約120℃にて溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液の調製においては、溶媒の揮発が殆ど無い条件で行った。
【0106】
このポリマー溶液を用い、実施例1と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表3に示す。
【0107】
<実施例9>
実施例8のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、6重量%のMAと94重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:250000)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表3に示す。
【0108】
<実施例10>
実施例8のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、11重量%のMAと89重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:250000)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表3に示す。
【0109】
<比較例6>
実施例8のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、1重量%のMAと99重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:250000)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表3に示す。
【0110】
<比較例7>
実施例8のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、12重量%のMAと88重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:250000)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表3に示す。
【0111】
【表3】
Figure 0003579200
【0112】
表3に示されるように、実施例8〜10で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも耐熱テストの結果が形態保持であり、20℃において2.5×10−3S/cm以上の高いイオン伝導度を有していた。実施例8〜10で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも強度/弾性テストの結果が良好であり、成形加工に充分耐え得るものであるとわかる。
【0113】
これに対し、比較例6で用いたアクリロニトリル系ポリマーは、電解液に対する溶解性が低く、ポリマー溶液を得るために145℃以上で長時間加熱する必要があった。さらにこのポリマー溶液はアクリロニトリル系ポリマーの分解に起因すると思われる茶褐色に着色した。得られた高分子電解質ゲルは、均一な厚みを有する膜に成形することが困難であった。比較例7で作製された高分子電解質ゲルは弾性が低く、強度/弾性テストにおいて、ゲルを剥離したときの伸びが戻らず、そして80℃の温度下での耐熱性もなく実際の使用に耐え得るものではなかった。
【0114】
<実施例11>
実施例1と同様の混合溶媒を用いて、1.2モル/リットルのLiBFを含有する電解液を調製した。次いで、この電解液に、3重量%のメタクリル酸メチルと97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:200000)の乾燥粉末を3.0重量%の割合で添加し、攪拌により分散させ、徐々に昇温し、約120℃にて溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液の調製においては、溶媒の揮発が殆ど無い条件で行った。
【0115】
このポリマー溶液を用い、実施例1と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表4に示す。
【0116】
<実施例12>
実施例11のアクリロニトリル系ポリマーの乾燥粉末を8.0重量%の割合で用いたこと以外は、実施例11と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表4に示す。
【0117】
<実施例13>
実施例11のアクリロニトリル系ポリマーの乾燥粉末を9.0重量%の割合で用いたこと以外は、実施例11と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表4に示す。
【0118】
<比較例8>
実施例11のアクリロニトリル系ポリマーの乾燥粉末を2.4重量%の割合で用いたこと以外は、実施例11と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表4に示す。
【0119】
<比較例9>
実施例11のアクリロニトリル系ポリマーの乾燥粉末を9.5重量%の割合で用いたこと以外は、実施例11と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表4に示す。
【0120】
【表4】
Figure 0003579200
【0121】
表4に示されるように、実施例11〜13で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも耐熱テストの結果が形態保持であり、20℃において2.5×10−3S/cm以上の高いイオン伝導度を有していた。実施例11〜13で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも強度/弾性テストの結果が良好であり、成形加工に充分に耐え得るものであるとわかる。
【0122】
これに対し、比較例8で得られた高分子電解質ゲルは、高いイオン伝導度を有していたが、耐熱テストの結果が「分離」を示し、弾性がわずかに劣るため、実際の使用に耐え得るものでなかった。また、比較例9で用いたアクリロニトリル系ポリマーは、全てのポリマーを溶解させるためには140℃以上の温度を長時間保つ必要があり、分解に起因すると思われる茶褐色に着色した。また、得られたポリマー溶液を均一な厚みで展開することは困難であり、実用性に問題があった。
【0123】
<実施例14>
実施例1と同様の混合溶媒を用いて、1.2モル/リットルのLiBFを含有する電解液を調製した。次いで、この電解液に、3重量%の酢酸ビニルと97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:120000)の乾燥粉末を8.0重量%の割合で添加し、攪拌により分散させ、徐々に昇温し、約120℃にて溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液の調製においては、溶媒の揮発が殆ど無い条件で行った。
【0124】
ポリマー溶液を50μmおよび500μmのスペーサーを配置した支持体(SUS304平滑板)上に展開し、さらにその上にテフロン(登録商標)シートを被せ、0℃の冷凍庫に1時間放置して高分子電解質ゲルを作製した。なお、上記混合溶媒の調整から高分子電解質ゲルの作製までは、全て乾燥アルゴンガスの雰囲気下で行った。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表5に示す。
【0125】
<実施例15>
展開したポリマー溶液を−10℃の冷凍庫に1時間放置したこと以外は、実施例14と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表5に示す。
【0126】
<比較例10>
展開したポリマー溶液を3℃の温度下で1時間放置したこと以外は、実施例14と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表5に示す。
【0127】
<比較例11>
展開したポリマー溶液を5℃の温度下で1時間放置したこと以外は、実施例14と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表5に示す。
【0128】
<比較例12>
展開したポリマー溶液を10℃の温度下で1時間放置したこと以外は、実施例14と同様の操作を行った。しかし、ゲル化は起こらず、高分子電解質ゲルを作製し得なかった。
【0129】
【表5】
Figure 0003579200
【0130】
表5に示されるように、実施例14および15で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも耐熱テストの結果が形態保持であり、20℃において2.5×10−3S/cm以上の高いイオン伝導度を有していた。実施例14および15で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも強度/弾性テストの結果が良好であり、成形加工に充分耐え得るものであるとわかる。
【0131】
これに対し、比較例10で作製された高分子電解質ゲルは、高いイオン伝導度を有する一方で、弾性および耐熱性が劣っていた。比較例11で作製された高分子電解質ゲルは脆く、80℃の温度下では液体成分が分離した。比較例12で用いた冷却温度ではゲル化は起こらず、高分子電解質ゲルの製造には不適切な温度であるとわかる。
【0132】
<実施例16>
プロピレンカーボネートとジメトキシエタンとを9:1のモル比で含有する混合溶媒を用いて、1.0モル/リットルのテトラエチルホウフッ化アンモニウム((CNBF:以下、TEABFと省略する)を含有する電解液を調製した。次いで、この電解液に、4重量%のMAと96重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:150000)の乾燥粉末を7.8重量%の割合で添加し、攪拌により分散させ、徐々に昇温し、約120℃にて溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液の調製においては、溶媒の揮発が殆ど無い密閉系で行った。
【0133】
このポリマー溶液を用い、実施例1と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表6に示す。
【0134】
<実施例17>
実施例16のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、3重量%のMAと97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:440000)の乾燥粉末を7.0重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例16と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表6に示す。
【0135】
<実施例18>
TEABFの代わりにテトラブチルホウフッ化アンモニウム((CNBF:以下、TBABFと省略する)を用い、そして実施例16のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、3重量%のVAcと97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:470000)の乾燥粉末を6.9重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例16と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表6に示す。
【0136】
<実施例19>
TEABFの代わりにTBABFを用い、そして実施例16のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、10重量%のMMAと90重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:560000)の乾燥粉末を8.9重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例16と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表6に示す。
【0137】
<比較例13>
実施例16のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、100重量%のアクリロニトリルでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:240000)の乾燥粉末を2.7重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例16と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表6に示す。
【0138】
<比較例14>
実施例16のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、10重量%のMAと90重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:100000)の乾燥粉末を9.0重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例16と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表6に示す。
【0139】
<比較例15>
実施例16のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、3重量%のMAと97重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:790000)の乾燥粉末を2.6重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例16と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表6に示す。
【0140】
【表6】
Figure 0003579200
【0141】
表6に示されるように、実施例16〜19で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも耐熱テストの結果が形態保持であり、20℃において5.1×10−3S/cm以上の高いイオン伝導度を有していた。実施例16〜19で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも強度/弾性テストの結果が良好であり、成形加工に充分耐え得るものであるとわかる。
【0142】
これに対し、比較例13で用いたアクリロニトリル系ポリマーは、120℃では電解液に対して少量しか溶解しなかった。これを用いて作製された高分子電解質ゲルは脆く、温度を−20℃から常温に戻した場合に液体成分が分離してゲルの形態を充分に維持し得ず、そのイオン伝導度を測定することができなかった。比較例14で用いたアクリロニトリル系ポリマーは、電解液に対する溶解性は優れていたが、得られた高分子電解質ゲルは、80℃の温度下では溶融し、実用に耐え得るものではなかった。比較例15で用いたアクリロニトリル系ポリマーは、120℃では電解液に対して少量しか溶解しなかった。これを用いて作製された高分子電解質ゲルは脆く、常温下では液体成分が分離してゲルの形態を充分に維持し得ず、イオン伝導度を測定することができなかった。
【0143】
比較例13および15で用いたアクリロニトリル系ポリマーが、各比較例で用いた電解液に約7重量%の割合で溶解する温度を調べたところ、いずれも140℃以上となり、このとき得られたポリマー溶液は着色が著しかった。
【0144】
<実施例20>
プロピレンカーボネートとジメトキシエタンとを9:1のモル比で含有する混合溶媒を用いて、1.0モル/リットルのTEABFを含有する電解液を調製した。次いで、この電解液に、4重量%のMAと96重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:150000)の乾燥粉末を7.0重量%の割合で添加し、攪拌により分散させ、徐々に昇温し、約115℃にて溶解してポリマー溶液を調製した。
【0145】
このポリマー溶液30mlを、内径2cmおよび長さ18cmの円筒状の試験管内に注入し、密栓して−20℃の冷凍庫中で4時間放置して高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルは、全体にわたって均一に透明であった。
【0146】
次いで、この高分子電解質ゲルを試験管から取り出し、直径2cmの均一な厚み(約500μm)の円形板に切断してイオン伝導度を測定した。得られた高分子電解質ゲルのイオン伝導度は、5.0×10−3S/cmであった。この高分子電解質ゲルに対する耐熱テストの結果は、「形態保持」であった。このことから試験管のような型枠の中であっても、本発明の耐熱性高分子電解質ゲルは容易に製造され得ることがわかる。
【0147】
<比較例16>
実施例20と同様にしてポリマー溶液を調製した。次いで、このポリマー溶液30mlを、内径2cmおよび長さ18cmの円筒状の試験管内に注入し、密栓して70℃の減圧乾燥機中で4時間放置して当業者に公知の濃縮によるゲル化を行った。
【0148】
上記乾燥機から取り出した試験管においては、上層部分でゲル化が観察されたが、中層部分から下層部分にかけてはポリマー溶液が残存していた。このことから、従来の濃縮によりゲル化させる方法では、ある程度の厚みを有する高分子電解質ゲルを型枠中で製造することが非常に困難であることがわかる。
【0149】
<実施例21>
純水を用いて、38重量%のNaSCNを含有する電解液を調製した。次いで、この電解液に、10重量%のMAと90重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:150000)の乾燥粉末を8.9重量%の割合で添加し、攪拌により分散させ、徐々に昇温し、約85℃にて溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液の調製は密閉系で行われ、溶媒の揮発は殆ど無い条件で行った。
【0150】
ポリマー溶液を50μmおよび500μmのスペーサーを配置した支持体(SUS316L平滑板)上に展開し、さらにその上にテフロン(登録商標)シートを被せ、−5℃の冷凍庫に2時間放置して高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表7に示す。
【0151】
<実施例22>
実施例21のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、4重量%のVAcと96重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:210000)の乾燥粉末を7.0重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例21と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表7に示す。
【0152】
<比較例17>
実施例21のアクリロニトリル系ポリマーの代わりに、100重量%のアクリロニトリルでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:210000)の乾燥粉末を2.8重量%の割合で添加してポリマー溶液を調製したこと以外は、実施例21と同様にして高分子電解質ゲルを作製した。得られた高分子電解質ゲルの評価結果を表7に示す。
【0153】
【表7】
Figure 0003579200
【0154】
表7に示されるように、実施例21および22で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも耐熱テストの結果が形態保持であり、20℃において7.5×10−1S/cm以上の極めて高いイオン伝導度を有していた。実施例21および22で作製された高分子電解質ゲルは、いずれも強度/弾性テストの結果が良好であり、成形加工に充分耐え得るものであるとわかる。
【0155】
これに対し、比較例17で用いたアクリロニトリル系ポリマーは、85℃では電解液に対して少量しか溶解しなかった。これを用いて作製された高分子電解質ゲルはイオン伝導度が高いものの、脆く、80℃の温度下に曝した場合に液体成分と固体成分とが相分離した。
【0156】
<実施例23>
プロピレンカーボネートとジメトキシエタンとを9:1のモル比で含有する混合溶媒を用いて、1.0モル/リットルのTEABFを含有する電解液を調製した。次いで、この電解液に、4重量%のMAと96重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:150000)の乾燥粉末を7.0重量%の割合で添加し、攪拌により分散させ、徐々に昇温し、約115℃にて溶解してポリマー溶液を調製した。
【0157】
このポリマー溶液を85℃に加熱し、支持体(SUS304平滑板)の上にスプレーにより散布し、直ちにこの支持体を−20℃の冷凍庫に入れ、4時間放置して高分子電解質ゲルを作製した。これらは全て、密閉系で行い、溶媒の揮発は殆ど無い条件で行った。
【0158】
高分子電解質ゲルは、スプレーの回数を調整することにより数μm〜数十μmの異なる厚みで得られた。さらにこの高分子電解質ゲルは、80℃の温度下においても形態を保持し、約5.0×10−3S/cmのイオン伝導度を有していた。
【0159】
<実施例24>
10重量%のMAと90重量%のアクリロニトリルとでなるアクリロニトリル系ポリマー(Mw:180000)10重量部を、48重量%のロダンソーダ水溶液90重量部に溶解して紡糸原液を調製し、当業者に公知の手段により紡糸および延伸(全延伸倍率は10倍であった)処理を行った後、乾球/湿球=120℃/60℃の雰囲気下で乾燥(工程収縮率は14%であった)して単繊維繊度1.5dの原料繊維を得た。
【0160】
次いで、この原料繊維を当業者に公知の手段で抄紙およびカレンダー処理を行って、厚み20μmのシートを得た。このシートを支持体(SUS304平滑板)上に配置し、その上に、実施例1で調製した電解液をアクリロニトリル系ポリマーの割合が7.8重量%となるように添加した。電解液の添加後、その上にテフロン(登録商標)シートを被せ、−20℃の冷凍庫に4時間放置して厚み8μmの薄膜状の高分子電解質ゲルを作製した。
【0161】
得られた薄膜状の高分子電解質ゲルは、2.5×10−2S/cmのイオン伝導度を有し、耐熱テストにおいて「形態保持」と評価された。
【0162】
<実施例25>
実施例24と同様にしてアクリロニトリル系ポリマーでなる原料繊維を作製した。次いで、この原料繊維を当業者に公知の手段で紡績し、さらに厚み40μmの織り地を作製した。この織り地を支持体(SUS304平滑板)上に配置し、その上に、実施例1で調製した電解液をアクリロニトリル系ポリマーの割合が7.8重量%となるように添加した。電解液の添加後、その上にテフロン(登録商標)シートを被せ、−20℃の冷凍庫に4時間放置して厚み22μmの薄膜状の高分子電解質ゲルを作製した。
【0163】
得られた薄膜状の高分子電解質ゲルは、1.5×10−2S/cmのイオン伝導度を有し、耐熱テストにおいて「形態保持」と評価された。
【0164】
【発明の効果】
本発明によれば、高いイオン伝導度を有し、例えば、80℃以上の温度でも固体の形態を保持し得る耐熱性高分子電解質ゲルが提供され得る。この耐熱性高分子電解質ゲルはまた、電極と密着し得る適切な弾性と、成形加工に耐え得る強度を有するので、小型の軽量薄膜状の金属リチウム二次電池、エレクトロクロミックディスプレイ、種々のセンサ、電気二重層コンデンサーなどの電気化学的デバイス用の材料として有用である。さらに、本発明の耐熱性高分子電解質ゲルは、従来の薄膜に限定されず、その表面積に関係なく任意の形状に成形可能であるので、高分子電解質ゲルを作製する際の形状の制約がほとんど無い。
【0165】
さらに、本発明によれば、揮発性の有機溶媒を揮発させる必要がなく、火災発生および取扱者の中毒症状の誘発のような危険性の問題が回避され、工業的に有効かつ安全に耐熱性高分子電解質ゲルを生産性良く提供することができる。

Claims (7)

  1. アクリロニトリル系ポリマー、少なくとも1種の電解質、および溶媒を含有する耐熱性高分子電解質ゲルであって、
    該アクリロニトリル系ポリマーが、89重量%から98重量%の割合のアクリロニトリル含量を有し、かつ以下の式:
    Figure 0003579200
    を満足し;
    20℃において10−3S/cm以上のイオン伝導度を有し、耐熱テストにおいて「形態保持」を示し、かつ該アクリロニトリル系ポリマーを3重量%から9重量%の割合で含有する、耐熱性高分子電解質ゲル。
  2. 1μmから500μmの厚みを有する膜である、請求項1に記載の耐熱性高分子電解質ゲル。
  3. 前記電解質がリチウムイオンおよび4級アンモニウムイオンのいずれかのカチオンを含有し、そして前記溶媒が有機溶媒である、請求項1または2に記載の耐熱性高分子電解質ゲル。
  4. 耐熱性高分子電解質ゲルの製造方法であって、
    溶媒に、アクリロニトリル系ポリマーと少なくとも1種の電解質とを溶解してポリマー溶液を調製する工程;および
    該ポリマー溶液を0℃以下に冷却する工程;を包含し、
    該アクリロニトリル系ポリマーが、89重量%から98重量%の割合のアクリロニトリル含量を有し、かつ以下の式:
    Figure 0003579200
    を満足し、
    20℃において10−3S/cm以上のイオン伝導度を有し、耐熱テストにおいて「形態保持」を示し、かつ該アクリロニトリル系ポリマーを、3重量%から9重量%の割合で含有する、方法。
  5. 前記アクリロニトリル系ポリマーが繊維または該繊維で構成される成形体である、請求項4に記載の耐熱性高分子電解質ゲルの製造方法。
  6. 前記ポリマー溶液の調製工程が、基板または型枠上に配置された前記アクリロニトリル系ポリマーに、前記溶媒と前記少なくとも1種の電解質とでなる電解液を添加することにより行われる、請求項5に記載の耐熱性高分子電解質ゲルの製造方法。
  7. 前記冷却工程が、前記ポリマー溶液を基板または型枠上で薄膜状に配置して行われる、請求項4または5に記載の耐熱性高分子電解質ゲルの製造方法。
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