JP3566120B2 - 高サイクル疲労寿命および被削性に優れた冷間工具鋼 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高サイクル疲労寿命および被削性に優れた冷間工具鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、冷間加工用金型には、JIS−SKD11が広く用いられている。しかし、繰返し応力が負荷される用途では、粗大なCr系炭化物を起点とした亀裂が発生するために疲労特性に劣るという問題がある。これに対し、例えば特公昭57−59298号公報や特公平3−36897号公報等の発明が提案されている。また、SKD11の被削性を改善する発明として、特公昭63−66384号公報や特開平8−120333号公報等が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特公昭57−59298号公報は、従来用いられている型用鋼にほぼ対応する合金組成に対して、Ca:0.0005〜0.010%を添加することにより金型の寿命を向上させているが、疲労限の向上に関する記載がなく、また、この発明では、Ca以外の被削性改善元素の添加は型寿命にとってはどちらかと言えばマイナスに作用すると示されている。また、特公平3−36897号公報は、SKD11を低C−低Cr化し、粗大なCr系炭化物量を大幅に減少させることにより、強度、靱性および疲労特性を向上させたものであるが、被削性改善について何ら示されていない。
【0004】
さらに、特公昭63−66384号公報は、REM添加により非金属介在物を大幅に粒状化させ、被削性を向上させたものであるが、疲労限の向上に関する記載がなく、しかもVおよびNb添加におけるV+1/2Nbの規制がなく、REM添加によりコストが高くなり、経済性に劣るという問題がある。また、特開平8−120333号公報は、S添加により被削性の改善を図ったものであるが、疲労限の向上に関する記載がなく、しかもMoおよびW添加におけるMo+1/2Wの規制がなく、これらの解明がされていないのが実状である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述した問題を解消すべき、発明者らは鋭意開発を進めた結果、鋼中にSを添加しMnSを分散形成させることにより、S無添加鋼に比べ疲労限を向上させ、一方、S添加量の増加に伴い、併せて被削性も向上させるというものである。
その発明の要旨とするところは、
(1)重量%で、C:0.65〜1.50%、Si:2.0%以下、Cr:5.0〜13.0%、S:0.030〜0.20%、Mn:1.50%以下を主成分とし、MoまたはWのいずれか1種または2種をMo当量(Mo+1/2W):1.0〜5.0%、および、VまたはNbのいずれか1種または2種をV当量(V+1/2Nb):0.05〜1.0%含み、残部Feおよび不可避的不純物よりなることを特徴とする高サイクル疲労寿命および被削性に優れた冷間工具鋼。
(2)前記(1)記載の鋼に、さらにCo:0.20〜3.0%添加することを特徴とする高サイクル疲労寿命および被削性に優れた冷間工具鋼にある。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における各種成分の限定理由について説明する。
C:0.65〜1.50%
Cは、焼入、焼戻しにより十分なマトリックス硬さを与えると共に、Cr,Mo,Vなどと結合して炭化物を形成し、耐摩耗性を与える。しかし過剰に添加すると、凝固時に粗大炭化物が多く析出し、靱性を阻害する。一方、十分な二次硬化硬さを得るためには、0.65%が必要である。従って、その範囲を0.65〜1.50%とした。
【0007】
Si:2.0%以下
Siは、脱酸剤として添加されるとともに、耐酸化性、焼入性に有効である。また、焼戻過程において炭化物の凝集を抑え二次硬化を促進する。しかし、2.0%を超えると冷間加工性を阻害し、靱性を劣化させる。従って、上限を2.0%とした。
Cr:5.0〜13.0%
Crは、焼入性を高めるとともに、焼戻軟化抵抗を高める。この効果を得るためには、5.0%以上が必要である。しかし、凝固時にCと結合して巨大一時炭化物を形成し易く、過剰に添加すると靱性を劣化させる。従って、その範囲を5.0〜13.0%とした。
【0008】
S:0.030〜0.20%
Sは、Mnと結合し、MnSを形成する。鋼中にMnSを分散形成させることにより、繰返し応力が比較的低い場合、マトリックス内の辷りをMnSが抑制し、疲労破壊の伝播を遅らせる。この効果は、0.03%以上添加しないと発揮されず、過剰な添加は、靱性を劣化させる。従って、その範囲を0.030〜0.20%とした。また、S添加量の増加に伴い、併せて被削性も向上する。十分な被削性を得、熱間加工性を低下させないためには、望ましくは、0.040〜0.10%とする。
【0009】
Mn:1.50%以下
Mnは、Sと結合し、疲労特性および被削性を向上させる。また、脱酸剤として鋼の清浄度を高め、焼入性を高める元素である。1.5%を超えると冷間加工性を阻害し、靱性を劣化させるので、上限を1.50%とする。
MoまたはWのいずれか1種または2種をMo当量(Mo+1/2W):1.0〜5.0%
Mo,Wは、微細な炭化物を形成し、二次硬化に寄与し、耐軟化抵抗性を改善する元素である。ただし、その効果はMoの方がWよりも2倍強く、同じ効果を得るにWはMoの2倍必要である。Mo当量(Mo+1/2W)で少なくとも1.0%必要である。しかし、過剰添加は靱性の低下を招くため、上限を5.0%とした。
【0010】
VまたはNbのいずれか1種または2種をV当量(V+1/2Nb):0.05〜1.0%
V,Nbは、二次硬化に有効であり、Cと硬い炭化物を形成して耐摩耗性に寄与するとともに結晶粒を微細化する。V当量(V+1/2Nb)で少なくとも0.05%必要である。しかし、過剰添加は靱性の低下を招くため、上限を1.0%とした。
Co:0.20〜3.0%
Coは、焼戻しによる炭化物凝集粗大化を抑制し、耐軟化抵抗性に有効である。
これらの効果を得るには、0.20%が必要であり、また、3.0%を超えて添加すると靱性が低下する。従って、その範囲を0.20〜3.0%とした。
【0011】
以下、実施例に基づき本発明鋼の特徴を具体的に説明する。
【実施例】
表1に供試鋼の化学成分、およびこの供試鋼により焼入焼戻し硬さ、疲労限、被削性、靱性の試験結果を示す。また、この疲労限については、小野式回転曲げ疲労試験における107 回繰返し応力回数の負荷応力値であり、被削性は、各鋼種の焼なまし材を、SKH51製、φ5mmのドリルで10mm穿孔するのに要する時間で示し、さらに、靱性は、圧延方向より採取した、10R−Cノッチシャルピー試験片にて評価した。
【0012】
【表1】
【0013】
表1に示すように、No1〜5は本発明鋼であり、No6〜8は比較鋼である。本発明鋼No1は、比較鋼No6に比べ、靱性を低下させることなく、疲労限および被削性を向上させる。本発明鋼No2〜5は、比較鋼No7に比べ、疲労限および被削性を向上させ、その傾向はS量の増加に伴い大きくなる。また、本発明鋼No2〜5の靱性は、比較鋼No7とほぼ同水準である。比較鋼No8は、本発明鋼No2〜5よりも多くのSを添加したものであり、疲労限および被削性は発明鋼よりも優れるものの、靱性が劣化している。
【0014】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、高価なREMの添加や鋼種成分の大幅な変更を必要とせず、SKD11系の鋼にSをうまくバランスさせることにより、大きなコスト上昇がなく、金型の靱性を低下させることなく、疲労特性に優れ、併せて被削性に優れた鋼を提供することが出来る極めて優れた効果を奏するものである。
Claims (2)
- 重量%で、
C:0.65〜1.50%、
Si:2.0%以下、
Cr:5.0〜13.0%、
S:0.030〜0.20%、
Mn:1.50%以下
を主成分とし、MoまたはWのいずれか1種または2種をMo当量(Mo+1/2W):1.0〜5.0%、および、VまたはNbのいずれか1種または2種をV当量(V+1/2Nb):0.05〜1.0%含み、残部Feおよび不可避的不純物よりなることを特徴とする高サイクル疲労寿命および被削性に優れた冷間工具鋼。 - 請求項1記載の鋼に、さらにCo:0.20〜3.0%添加することを特徴とする高サイクル疲労寿命および被削性に優れた冷間工具鋼。
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JP03475199A JP3566120B2 (ja) | 1999-02-12 | 1999-02-12 | 高サイクル疲労寿命および被削性に優れた冷間工具鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP03475199A JP3566120B2 (ja) | 1999-02-12 | 1999-02-12 | 高サイクル疲労寿命および被削性に優れた冷間工具鋼 |
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JP2000234148A JP2000234148A (ja) | 2000-08-29 |
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JP03475199A Expired - Lifetime JP3566120B2 (ja) | 1999-02-12 | 1999-02-12 | 高サイクル疲労寿命および被削性に優れた冷間工具鋼 |
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CN104178694A (zh) * | 2014-08-13 | 2014-12-03 | 上海恺虹实业有限公司 | 一种高寿命热作模具钢 |
-
1999
- 1999-02-12 JP JP03475199A patent/JP3566120B2/ja not_active Expired - Lifetime
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