JP3557240B2 - 非水電解液二次電池 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、非水電解液二次電池に関し、特にリチウム遷移金属複合酸化物を正極に、リチウムイオンのドープ・脱ドープ可能な炭素材料を負極に用いたリチウムイオン系の非水電解液二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般的な二次電池としては、水溶液系の電解液を用いるニッケルカドミウム電池や鉛電池等が広く用いられている。しかし、カメラ一体型VTR、携帯電話、ラップトップコンピュータ等,新しいポータブル電子機器が近年次々に出現する中、これら電子機器のさらなる小型軽量化を達成するために携帯可能なポータブル電源である二次電池に対してもさらなる高エネルギー密度化の要求がされ、前記ニッケルカドミウム電池や鉛電池では不十分になってきている。また、カドミウムや鉛は、地球環境保護の観点からも好ましくなく、実際に使用を法規制し始めている国もあることから、これらに代わる材料を用いた二次電池の開発が望まれている。
【0003】
上述のニッケルカドミウム電池,鉛電池に代わるものとしては電解質を非水溶媒に溶解してなる非水電解液を用いた非水電解液電池が注目されている。
【0004】
ここで、上記非水電解液電池としては、一次電池仕様のものが既に開発されている。一次電池の場合、負極は放電するのみで可逆性は必要なく、電池のエネルギー密度は正極の特性で略決まると言える。このため、正極に用いる活物質については非常に多くの材料が提案され評価検討されている。
【0005】
しかし、上記非水電解液電池を二次電池仕様のものとして開発しようとするには、良好なサイクル特性を達成するために負極活物質の特性が非常に重要となってくる。ところが、かかる観点からの検討は数多くなされているものの、その成果は甚だ少ないと言わざるを得ない。
【0006】
例えば一次電池仕様の非水電解液電池の負極活物質としてはリチウム金属が用いられているが、このリチウム金属を二次電池の負極材料として使用する場合の問題点は検討初期段階から指摘されている。
【0007】
すなわち、リチウム金属を二次電池の負極活物質として使用すると、充放電の繰り返しによって負極でリチウムの溶解析出反応が起こって、リチウムがデンドライト状に析出し、この析出したリチウムがセパレータを貫通して正極に達し、内部ショートが発生する。このため、電池寿命が短いというものである。特に、このようなリチウム析出は、大電流密度による充電(急速充電)において顕著である。
【0008】
ここで、このようなリチウム析出も緩やかな充放電を行うことで進行を遅延させることができ、これによりサイクル寿命を幾分長くすることは可能である。
【0009】
しかし、実用電池として使用する上では、安全性能に優れることも重要な要件となってくる。このような点からリチウム金属を負極材料として用いる場合を見ると、緩やかな充放電を行ったとしても溶解析出の繰り返し過程で、電流密度によらずに負極上には微粉化した活性なリチウムが生成する。その状態で内部ショートが起こったり、誤って電池が変形するようなショックを受けたりすると、電池は非常に危険な状態に陥る。すなわち、最悪の場合、約0.4%の確率で発火,破裂が起こるという報告もある。(1991年電気化学協会秋季大会講演要旨集p127)。
【0010】
このような問題を解決するために、非水電解液を改良してリチウム析出形態の改善を試みたり、負極活物質としてリチウム−アルミニウム等の合金を用いることが検討されている。しかし、このような手法によっては、大きな成果は得られておらず、例えば合金を負極材料として用いた場合には、深い充放電時のサイクル寿命に劣り、しかも合金は硬質のためスパイラル状に巻けずコイン形のような小型偏平電池に使用されるに留まってしまう。
【0011】
そこで、さらにリチウムイオンが黒鉛の層間にドープされ安定化合物として存在できるといったいわゆるリチウム−黒鉛層間化合物の研究結果から、このリチウム−黒鉛層間化合物を電池の負極材料へ応用することが試みられている。そして、種々の炭素材料が電気化学的にリチウムイオンのドープ・脱ドープが可能であることが明らかとなっている。
【0012】
このような炭素材料を負極に、リチウムコバルト複合酸化物等のリチウム複合酸化物を正極に用いると、充放電に際してリチウムはイオンの状態で正負極間を行き来するのみで金属として析出することはない。したがって、リチウム金属の析出によって生じる安全性、サイクル寿命、急速充電時等における問題点が克服可能となる。しかも、この炭素材料を負極活物質とする負極の作動電圧は0〜1.5Vであるのでリチウム複合酸化物を正極活物質とする正極の4V以上という高い作動電圧を犠牲にすることなく、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が完成されることとなる。
【0013】
さらに、この他の二次電池仕様の非水電解液電池としては、充放電電位の卑な金属酸化物を負極活物質とし、正極活物質,負極活物質とも金属層間化合物を用いたRC型(Rocking Chair)電池が提案されている。炭素材料よりも充放電電位が貴な金属酸化物を負極活物質として使用する場合、上記炭素材料を負極活物質として使用する場合に比べエネルギー密度は低くなるものの安全性等の問題はクリアできることから高電圧を必要としないリチウムイオン二次電池系のシステムとして有望視されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の如くエネルギー密度、サイクル寿命に優れる二次電池仕様の非水電解液電池が各種提案されているが、民生用ポータブル電源として使用するにはさらに異常モード,例えば過充電時や外部短絡時の安全性能や夏期の自動車内のような高温環境下での放置等を想定した耐環境性能についても問題の無いものでなければならない。
【0015】
特に、夏期における自動車のダッシュボード上の温度は、最高100℃まで上昇すると言われている。もしそのような場所に電池が置かれたとすると、昼間の8時間は100℃前後の高温に曝されることになる。この場合、電池自身が使用不能になったとしても少なくとも周囲の環境に対しては安全性,信頼性を確保しなければならない。
【0016】
このような過充電,高温環境下放置に対する安全性能,耐環境性能は例えば電解液に用いる非水溶媒の選択によって改善される。すなわち、電解液の非水溶媒は高誘電率溶媒と低粘度溶媒によって構成されるが、従来では高誘電率溶媒として炭酸プロピレン(PC)が低粘度溶媒としてジメトキシエタン(DME)が用いられている。このジメトキシエタンの代わりに炭酸ジエチル(DEC)をもちいた炭酸プロピレンと炭酸ジエチルの混合溶媒を非水溶媒として用いると、炭酸プロピレンとジメトキシエタンの混合溶媒を用いる場合に生じていた高温使用時におけるサイクル寿命の大きな低下が抑えられるということが特開平4−067998号公報に記載されている。
【0017】
しかしながら、炭酸プロピレンと炭酸ジエチルよりなる混合溶媒を用いれば高温使用時におけるサイクル寿命の大きな低下は抑えられるものの過充電となった場合に大きく温度上昇し、例えば電池内圧応答型の電流遮断装置が具備されている場合にこの電流遮断装置が作動した後でも温度上昇が停止せずさらに続行し、比較的急速に電池が破損するといったトラブルがしばしば発生する。
【0018】
このようなトラブルの原因は明らかではないが、炭酸ジエチルとリチウム金属を密閉容器に入れ60℃程度の高温に保存すると、炭酸ジエチルとリチウム金属とが急激に反応して液が黄色化する。そして、ガス発生を伴いながら反応熱によりさらに反応が加速し、終には液が固化するという実験事実から、過充電時の温度上昇の過程において炭酸ジエチルと炭素負極のドープ可能量を越えて析出したリチウム金属とが反応を起こしたことが原因しているものと考えられる。
【0019】
また、炭酸プロピレンと炭酸ジエチルよりなる混合溶媒を用いた非水電解液二次電池では、充電状態で高温下に保存すると、自己放電が起こって電圧が低下し再び充放電サイクルを行っても回復させることができない不可逆的な容量劣化が引き起こる場合がある。
【0020】
この理由は定かではないが、充電状態で高温下に保存した後の電池は、インピーダンスが高くなっていることから何らかの原因で正極、負極或いは電解液等が劣化し、これにより電池容量の劣化が起こったものと考えられる。
【0021】
このようにこれまでの非水電解液二次電池は、エネルギー密度,環境保護の点からはニッケルカドミウム電池,鉛電池に比べて優れるものの安全性能や耐環境性能が不十分であり、実用化は遠いものと言わざるを得ない。
【0022】
そこで、本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであって、高エネルギー密度,長サイクル寿命であるとともに安全性能,耐環境性能に優れた非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の目的を達成するためには低粘度溶媒としてリチウムと反応性の低い低粘度溶媒を用いることが必要であると考え、そのような低粘度溶媒を網羅的に検索した結果、炭酸メチルエチルと炭酸ジメチルの混合溶媒を見い出すに至った。
【0024】
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであって、集電体にリチウムイオンのドープ及び脱ドープが可能な炭素材料を負極活物質として含む合剤が成型された負極と、集電体に正極活物質として一般式LiXMO2(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種を表す)で表されるリチウムと遷移金属の複合酸化物を含む合剤が成型された正極とを有し、前記合剤の層が成型された電極の幅及び長さにおいて上記正極より前記負極が大きく形成され、上記正極及び負極がセパレータを介して多数回巻回された渦巻型電極体と、非水溶媒に電解質を溶解してなる非水電解液と、上記渦巻型電極及び上記非水電解液が収容された電池缶と、電池内圧で変形する薄板を有する安全装置を備えた非水電解液二次電池において、前記非水溶媒は、炭酸メチルエチルと炭酸ジメチルを含有し、前記炭酸メチルエチルと前記炭酸ジメチルの混合率が、非水溶媒全容量をT、炭酸メチルエチル容量をM、炭酸ジメチル容量をDとしたときに、2/8≦D/M≦9/1であって、且つ、2/10≦(M+D)/T≦8/10であることを特徴とするするものである。
【0025】
また、本発明に係る非水電解液二次電池は、負極活物質として、(002)面の面間隔が0.37nm以上、真密度が1.7g/cm3以下、且つ空気気流中における示差熱分析において観測される酸化発熱ピークが700℃以下にある炭素材料を用い、正極は、定常状態で負極活物質1g当たり250mAh以上の充放電容量相当のLiを含んでおり、非水溶媒は、炭酸プロピレン、炭酸メチルエチル及び炭酸ジメチルを含有することを特徴とするものである。
【0026】
さらに、非水溶媒の炭酸メチルエチルと炭酸ジメチルの混合率が、非水溶媒全容量をT、炭酸メチルエチル容量をM、炭酸ジメチル容量をDとしたときに、3/10≦(M+D)/T≦7/10であることを特徴とするものである。
【0027】
本発明に係る非水電解液二次電池においては、非水溶媒に、炭酸ジエチルが1〜20容量%なる割合で添加されていることを特徴とするものである。
【0028】
本発明の非水電解液二次電池は、電池缶内に負極,正極.非水電解液が収容されてなる。
【0029】
負極に用いる負極活物質としては、この種の二次電池に用いられるものがいずれも使用可能であるが、特に以下に列挙される炭素材料が好適である。
【0030】
まず、3000℃程度で熱処理されても黒鉛化しない炭素材料、すなわち難黒鉛化炭素が挙げられる。
【0031】
このような難黒鉛化炭素材料を生成するための出発原料としては、フルフリルアルコールあるいはフルフラールのホモポリマー、コポリマーよりなるフラン樹脂が好適である。それは、このフラン樹脂を炭素化した炭素材料が、(002)面の面間隔が0.37nm以上、真密度1.70g/cc以下で示差熱分析(DTA)で700℃以上に酸化発熱ピークを持たす、電池の負極材料として非常に良好な特性を示すからである。
【0032】
また、この他の出発原料としては、特定のH/C原子比を有する石油ピッチに酸素を含む官能基を導入(いわゆる酸素架橋)した有機材料も前記フラン樹脂と同様、炭素化したときに優れた特性の炭素材料となることから使用することが可能である。
【0033】
前記石油ピッチは、コールタール、エチレンボトム油、原油等の高温熱分解で得られるタール類、アスファルトなどより蒸留(真空蒸留,常圧蒸留,スチーム蒸留)、熱重縮合、抽出、化学重縮合等の操作によって得られる。
このとき石油ピッチのH/C原子比が重要で、難黒鉛化炭素とするためにはこのH/C原子比を0.6〜0.8とする必要がある。
【0034】
これら石油ピッチに酸素を含む官能基を導入する具体的な手段は限定されないが、例えば硝酸,混酸、硫酸、次亜塩素酸等の水溶液による湿式法、あるいは酸化性ガス(空気、酸素)による乾式法、さらに硫酸、硝酸アンモニア、過硫酸アンモニア、塩化第二鉄等の固体試薬による反応などが用いられる。
例えば、上記手法により石油ピッチに酸素を含む官能基を導入した場合、炭素化の過程(約400℃)で溶融することなく固相状態で最終の炭素材料が得られ、それは難黒鉛化炭素の生成過程に類似する。
【0035】
前述の手法により酸素を含む官能基を導入した石油ピッチを炭素化して負極材とするが、炭素化の際の条件は特に問わない。(002)面の面間隔が0.37nm以上、真密度1.70g/cc以下、示差熱分析(DTA)で700℃以上に酸化発熱ピークを持たないという特性を満足する炭素材料が得られるような炭素化条件に設定すれば、単位重量あたりのリチウムドープ量の大きな負極材が得られる。例えば石油ピッチを酸素架橋した前駆体の酸素含有量が10重量%以上となるように条件設定することで、生成される炭素材料の(002)面間隔を0.37nm以上とすることができる。したがって、前記前駆体の酸素含有量は10重量%以上にすることが好ましく、実用的には10〜20重量%の範囲である。
【0036】
なお、前記酸素架橋を行う有機材料としては、H/C原子比が0.6〜0.8であれば良く、以下の出発原料をピッチ化等の前熱処理を行うことにより得られたものが使用可能である。
【0037】
そのような出発原料としては、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、共役系樹脂、セルロースおよびその誘導体、等の有機高分子系化合物や、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセンなどの縮合多環炭化水素化合物、その他誘導体(例えばこれらのカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸イミド等)、前記各化合物の混合物を主成分とする各種ピッチ、アセナフチレン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、フタラジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、フェナントリジン等の縮合複素環化合物、その誘導体である。
【0038】
さらに負極活物質としては、3000℃程度で熱処理されたときに黒鉛化する炭素材料、すなわち易黒鉛化炭素が挙げられる。
【0039】
易黒鉛化炭素の出発原料となる有機材料としては、代表的なものとして石炭やピッチが挙げられる。
ピッチは、コールタール、エチレンボトム油、原油等の高温熱分解で得られるタール類、アスファルトなどより蒸留(真空蒸留、常圧蒸留、スチーム蒸留)、熱重縮合、抽出、化学重縮合等の操作によって得られるものや、その他木材乾留時に生成するピッチ等もある。
【0040】
また、高分子化合物原料としてはポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラート、3,5−ジメチルフェノール樹脂等がある。
【0041】
これらの出発原料は、炭素化の途中最高400℃程度で液状で存在し、その温度で保持することで芳香環同士が縮合、多環化して積層配向した状態となり、その後500℃程度以上の温度になると固体の炭素前駆体則ちセミコークスを形成する。このような過程を液相炭素化過程と呼び、易黒鉛化炭素の典型的な生成過程である。
【0042】
前記の石炭、ピッチ、高分子化合物の原料は、炭素化する際、当然のことながら前述の液相炭素過程を経るものである。
その他、出発原料としてはナフタレン、フェナントレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン等の縮合多環炭化水素化合物、その他誘導体(例えばこれらのカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸イミド等)、前記各化合物の混合物、アセナフチレン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、フタラジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、フェナントリジン等の縮合複素環化合物、その誘導体も使用可能である。
【0043】
以上の原料有機材料を用いて炭素材料を得る場合、例えば、窒素気流中、300〜700℃で炭化した後、窒素気流中、昇温速度毎分1〜20℃、到達温度900〜1300℃、到達温度での保持時間0〜5時間程度の条件で焼成すれば良い。勿論、場合によっては炭化操作を省略しても良い。
【0044】
また、さらに、負極活物質としては、(002)面の面間隔が0.340nm以下、C軸方向の結晶子厚みが14.0nm以上、真密度が2.1g/cm3 以上である黒鉛系の炭素材料も電極充填性に優れ、高容量の電池が得られる。
【0045】
前記物性パラメータを示す炭素材料の代表としては、天然黒鉛が挙げられる。また、有機材料を炭素化し、さらに高温処理された人造黒鉛も前記物性パラメータを示す。人造黒鉛を得るには前記易黒鉛化炭素材料を前駆体とし、2000℃以上の高温で熱処理されることによって得られる。
【0046】
以上の炭素材料は、粉砕・分級することで負極材料に供されるが、この粉砕は炭化、か焼、高温熱処理の前後あるいは昇温過程の間いずれで行っても良い。
【0047】
さらには、前記難黒鉛化炭素材料或いは易黒鉛化炭素材料の前駆体に対し炭素化する際にリン化合物を添加することで、リチウムドープ量の大きな特殊な化合物が得られ、これも負極活物質として使用可能である。
【0048】
添加するリン化合物としては、五酸化リンなどのリン酸化物や、オルトリン酸等のオキソ酸やその塩等が挙げられるが、取扱やすさ等の点からリン酸化物及びリン酸が好適である。
リン化合物の添加量は、原料すなわち有機材料もしくは炭素材料に対してリン換算で0.2〜30重量%、好ましくは0.5〜15重量%、また負極材料中に残存するリンの割合は0.2〜9.0重量%、好ましくは0.3〜5重量%とする。
【0049】
この化合物は炭素、酸素、リンを主成分とするもの(以後C−P−O化合物と称する)であり、リンの存在状態としては、31P核−固体NMRスペクトルにおいて、オルトリン酸(0ppm)基準で±100ppmの範囲にピークを有し、且つX線光電子分光法測定において、炭素原子1s軌道スペクトルの炭素と炭素の結合エネルギーを284.6eVとしたときに、リン原子2p軌道スペクトルが135.0eV以下にピークを有するものが良好な特性を示す。
【0050】
リン化合物の添加時期は、基本的には既に炭素材料となっているものに添加してもC−P−O化合物を形成するが、残存するリンの量が少なくなり、結果としてリチウムドープ量はあまり増えない。したがって、出来る限り出発原料からリン化合物を添加するほうが好ましい。
【0051】
また、焼成して得られたC−P−O化合物は粉砕・分級して負極材料に供されるが、この粉砕は焼成の前後あるいは昇温過程の間いずれで行っても良い。
【0052】
一方、正極に用いる正極活物質としては、一般式LiX MO2 (但し、MはCo,Ni、Mnの少なくとも1種を表す。)で表されるリチウム複合金属酸化物やLiを含んだ層間化合物等である。このうち、特にLiCoO2 を使用した場合に高いエネルギー密度を示す。
【0053】
また、本発明の非水電解液電池は、高容量を達成することを狙ったものであるので、前記正極は、定常状態(例えば5回程度充放電を繰り返した後)で負極活物質1g当たり250mAh以上の充放電容量相当分のLiを含むことが必要で300mAh以上の充放電容量相当分のLiを含むことが望ましく、350mAh以上の充放電容量相当分のLiを含むことがより好ましい。なお、Liはかならずしも正極からすべて供給される必要はなく、要は電池内に負極活物質1g当たり250mAh以上の充放電容量相当分のLiが存在すれば良い。なお、このLiの量は、電池の放電容量を測定することによって換算することができる。
【0054】
以上の負極,正極は非水溶媒に電解質が溶解されてなる非水電解液とともに電池缶に収容されることで充放電反応を行うものとなる。
【0055】
ここで、電池が過充電,高温下放置等を経ても負極,正極が正常な充放電反応を維持できるようにするには、用いる非水溶媒の選定が重要となる。つまり、電解液の非水溶媒は高誘電率溶媒と低粘度溶媒によって構成されるが、炭酸ジエチル等,低粘度溶媒として用いられているものの中には、過充電によって温度が上昇すると負極上に析出したリチウムと温度上昇を伴いながら反応して電池破損を誘発したり、電池を充電状態で高温環境下に放置した場合に劣化を来し、電池の容量劣化を生じさせるからである。
【0056】
そこで、本発明においては、過充電、さらには充電状態での高温環境下放置を経ても正常な充放電反応が維持できる安全性能,耐環境性能に優れた電池を獲得するために、電解液に用いる低粘度溶媒として炭酸メチルエチルと炭酸ジメチルの混合溶媒を使用する。
【0057】
まず、炭酸メチルエチルは、リチウム金属との反応性が極めて低い非水溶媒である。したがって、このような炭酸メチルエチルを用いることにより、過充電時の温度上昇によってリチウム金属と低粘度溶媒が反応することによって生じる電池破損が防止される。しかし、炭酸プロピレン等の高誘電率溶媒と炭酸メチルエチルのみで非水溶媒を構成した場合には、充電状態で高温放置した場合に電圧が徐々に低下して再び充放電サイクルを行っても回復させることができない不可逆的な容量劣化が引き起こる。
【0058】
そこで、さらに本発明では非水溶媒に第2の低粘度溶媒として炭酸ジメチルを混合する。非水溶媒に高誘電率溶媒,炭酸メチルエチルとともに炭酸ジメチルを混合すると、上述の充電状態で高温放置された場合に生じる電圧低下が抑えられ、過充電さらには充電状態での高温環境下放置を経ても正常な充放電反応が維持できる非水電解液二次電池が得られることとなる。
【0059】
なお、非水溶媒に使用する高誘電率溶媒としては、炭酸プロピレン,炭酸エチレン等通常用いられているものが使用可能であるが、負極活物質に用いる炭素材料によって適宜選択することが好ましい。例えば、黒鉛系の炭素材料を負極活物質として用いる場合には炭酸プロピレンを高誘電率溶媒とすると溶媒の分解が生じることから炭酸エチレンを高誘電率溶媒とすることが好ましい。黒鉛系以外の炭素材料を負極活物質として用いる場合には、炭酸プロピレンが好適である。
【0060】
ここで、炭酸メチルエチルと炭酸ジメチルの混合率は、非水溶媒の全容量をT,炭酸メチルエチル容量をM,炭酸ジメチル容量をDとしたときに、
2/10≦(M+D)/T≦8/10
より望ましくは、
3/10≦(M+D)/T≦7/10
と設定することが好ましい。
【0061】
さらに、低粘度溶媒となる炭酸メチルエチルと炭酸ジメチルの混合率は、
1/9≦D/M≦8/2
と設定することが好ましい。D/Mが1/9未満であると炭酸ジメチルによる容量劣化防止効果が十分に得られず、D/Mが8/2を越え、炭酸ジメチルの混合率が高くなり過ぎた場合には炭酸ジメチルの沸点が90℃と比較的低いことから高温環境下に放置した場合に電池内圧が高くなる虞れがある。
【0062】
また、上記非水溶媒には炭酸ジエチルを添加して耐環境性能の向上を図るようにしても良い。
すなわち、夏期における自動車のダッシュボード上に電池が放置されるような条件では、沸点の低い炭酸メチルエチル(沸点108℃)と炭酸ジメチル(沸点90℃)の混合溶媒では電池内圧の上昇を抑えることができない。しかし、より沸点の高い炭酸ジエチル(沸点126℃)を添加することで電池内圧の上昇を抑制することが可能となる。
【0063】
前記高誘電率溶媒,炭酸メチルエチル,炭酸ジメチルの混合溶媒に対しては、炭酸ジエチルを1〜20容量%添加することが好ましく、3〜15容量%添加することがさらに好ましい。本発明に規定する範囲を逸脱して炭酸ジエチルを多量に添加すると、過充電時の安全性が損なわれたり、充電状態で高温環境下に放置した後の容量劣化が大きくなる。したがって、この炭酸ジエチルの添加量は必要最小限に留めるべきである。
【0064】
上記非水溶媒に溶解される電解質としては、この種の電池に用いられるものであればいずれでも良いが、特にLiPF6 が好適であり、LiClO4 、LiAsF6 ,LiBF4 も使用可能である。これら電解質は、非水溶媒中に0.1〜3mol/lなる濃度で溶解させることができるが、0.5〜2mol/lなる濃度で溶解することが好ましい。
【0065】
【作用】
リチウムのドープ・脱ドープが可能な炭素材料を負極活物質に、リチウム遷移金属複合酸化物を正極に用いる非水電解液二次電池において、電解液の非水溶媒として高誘電率溶媒、炭酸メチルエチル、炭酸ジメチルの混合溶媒を用いると、炭酸メチルエチルは金属リチウムとの反応性が低いので、過充電となって温度上昇した場合でも負極上に析出した金属リチウムと反応せず、低粘度溶媒と金属リチウムとが反応することによって生じる電池破損が防止される。また、充電状態で高温環境下放置された場合に生じる電圧低下が炭酸ジメチルによって抑えられ、充放電サイクルを行っても回復させることができない不可逆的な容量低下が防止される。
【0066】
また、前記高誘電率溶媒、炭酸メチルエチル,炭酸ジメチルの混合溶媒に、さらに沸点の高い炭酸ジエチルを一定量添加すると、夏期における自動車のダッシュボード上に電池が放置された場合のような、かなりの高温環境に電池が曝されて場合でも電池内圧の上昇が抑えられ、電池の信頼性が向上する。
【0067】
【実施例】
本発明の好適な実施例について実験結果に基づいて説明する。
【0068】
作製した電池の構造
後述の各実施例において作製した電池の構造を図1に示す。
【0069】
この非水電解液二次電池は、図1に示すように、負極集電体9に負極活物質を塗布してなる負極1と、正極集電体10に正極活物質を塗布してなる正極2とを、セパレータ3を介して巻回し、この巻回体の上下に絶縁体4を載置した状態で電池缶5に収納してなるものである。
前記電池缶5には電池蓋7が封口ガスケット6を介してかしめることによって取付けられ、それぞれ負極リード11及び正極リード12を介して負極1あるいは正極2と電気的に接続され、電池の負極あるいは正極として機能するように構成されている。
【0070】
そして、本実施例の電池では、前記正極リード12は電池遮断用薄板8に溶接されて取り付けられ、この電流遮断用薄板8を介して電池蓋7との電気的接続が図られている。
このような構成を有する電池において、電池内部の圧力が上昇すると、前記電流遮断等薄板8が押し上げられた変形する。すると、正極リード12が電流遮断用薄板8と溶接された部分を残して切断され、電流が遮断される。
【0071】
実施例1〜実施例5
先ず、負極1を次のようにして作製した。
出発原料である石油ピッチに酸素を含む官能基10〜20重量%導入して酸素架橋させた後、不活性ガス気流中で炭素化して炭素前駆体を得た。この炭素前駆体を温度1200℃で焼成して、ガラス状炭素に近い性質を持った炭素材料を生成した。この炭素材料についてX線回折測定を行った結果、(002)面の面間隔が0.381nm、C軸方向の結晶子厚さが1.2nmであった。また空気気流中に於ける示差熱分析を行った結果、659℃に発熱ピークが認められた。さらに、ピクノメータ法によって測定された真比重が1.54g/cm3 、レーザ回折法で測定された50%累積粒径が23.5μmであった。
【0072】
このようにして得られた炭素材料の粉末を90重量部、結着材となるポリフッ化ビニリデン(PVDF)10重量部を混合して負極合剤を調製し、該負極合剤を溶剤となるN−メチルピロリドンに分散させて負極合剤スラリー(ペースト状)を調製した。
【0073】
この負極合剤スラリーを、厚さ10μmの帯状の銅箔製の負極集電体の両面に塗布して乾燥させた後、圧縮成型して帯状負極1を作製した。なお、帯状負極1の合剤厚さは両面共に80μmで同一とし、電極の幅は41.5mm、長さは700mmである。
【0074】
正極2は次のようにして作製した。
炭酸リチウム0.5モルと炭酸コバルト1モルを混合し、900℃の空気中で5時間焼成してLiCoO2 を得た。得られたLiCoO2 についてX線回折測定を行った結果、JCPDSファイルに登録されたLiCoO2 のピークと良く一致していた。この材料を粉砕し、50%累積粒径が15μmのLiCoO2 粉末を得た。このLiCoO2 の粉末95重量部と炭酸リチウム粉末5重量部からなる混合物を91重量部、導電材となるグラファイト6重量部、結着剤となるポリフッ化ビニリデン3重量部を混合して正極合剤を調製し、N−メチルピロリドンに分散させて正極合剤スラリー(ペースト状)を調製した。
【0075】
この正極合剤スラリーを、厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔製の正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、圧縮成型して帯状正極2を作製した。なお、上記帯状正極2の合剤厚さは両面共に80μmで同一とし、電極の幅は40.5mm、長さは650mmである。
【0076】
このようにして作製された帯状負極1,帯状正極2及び厚さ25μm,幅44mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータ3を、負極、セパレータ、正極、セパレータの順に積層してから多数回巻回し、外径20mmの渦巻型電極を作製した。
【0077】
この渦巻型電極体を、ニッケルめっきが施された鉄製電池缶5に収納した。そして渦巻式電極の上下両面には絶縁板4を配置し、アルミニウム製正極リード12を正極集電体から導出して電池蓋7に、ニッケル製負極リード11を負極集電体から導出して電池缶5に溶接した。
【0078】
そして渦巻式電極が収納された電池缶5の中に、炭酸プロピレン(PC),炭酸メチルエチル(MEC)及び炭酸ジメチル(DMC)が各種混合比率で混合された混合溶媒にLiPF6 が1mol/lなる濃度で溶解された電解液を注入した後、アスファルトで表面を塗布した絶縁封口ガスケット6を介して電池缶5をかしめることにより、電流遮断機構を有する安全弁装置8並びに電池蓋7を固定し、電池内の気密性を保持し、直径20mm、高さ50mmの円筒型非水電解液二次電池を作製した。
【0079】
なお、電池缶5に注入した電解液の非水溶媒の容量混合率を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
比較例1
電解液の非水溶媒としてPCとMECがPC:MEC=5:5なる容量混合率で混合された混合溶媒を用いること以外は実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製した。
【0082】
比較例2
電解液の非水溶媒としてPCとDECがPC:DEC=5:5なる容量混合率で混合された混合溶媒を用いること以外は実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製した。
【0083】
〔溶媒のリチウム金属との反応性の検討〕
このようにして作製された非水電解液二次電池に用いた低粘度溶媒のリチウム金属との反応性を調べるために以下の実験を行った。
【0084】
先ず、DEC,DMC,MECをそれぞれテフロン製容器に入れ、これら溶媒にリチウム金属片を投入した。そして、溶媒,リチウム金属片が入れられたテフロン製容器を水が入らないように密閉して高温槽内に各種温度で放置した。
放置中における溶媒とリチウム金属片の反応状況を表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
リチウム金属片は、表面に自然酸化膜があるのでただちに反応を起こすということはないが、DEC中に投入された場合には温度80℃下とある程度高温環境下であると10分でDECとの反応が始まる。また、DEC中に投入された状態で、温度60℃下、1週間保存すると、DECと反応して終には消滅する。またリチウム金属片が投入されたDECは褐色に固化する。
【0087】
一方、DMC,MECにリチウム金属片を投入した場合には、DECにリチウム金属片を投入した場合のような反応は生じない。
【0088】
このことからDECは、非水電解液二次電池の低粘度溶媒として使用した場合に該電池が過充電状態になると負極上に析出したリチウム金属と反応する可能性が大きく、不適当であることがわかった。
【0089】
〔DMC添加の検討〕
次に、非水溶媒にDMCを混合する効果を調べるために作製された非水電解液二次電池について、充放電サイクルを繰り返し行ったときの11サイクル目充電直後の開回路電圧、内部抵抗(交流1kHz)及び11サイクル充電後、充電状態で温度90℃下40時間保存した後の開回路電圧、内部抵抗(交流1kHz)を測定した。また、保存前の電池内圧と保存後の電池内圧比及び保存前の充放電10サイクル目の容量に対する保存後の充放電2サイクル目の容量の比率(容量回復率)を求めた。これら結果を表3に、電解液中のDMC容量混合率と保存後の開回路電圧の関係を図2に、DMC容量混合率と保存後の内部抵抗の関係を図3に、DMC容量混合率と容量回復率の関係を図4に、DMC容量混合率と保存前と保存後の電池内圧比の関係を図5に示す。
【0090】
なお、充放電サイクルは、充電電流1A,上限電圧4.2V(定電圧)の条件で定電流充電を行った後、抵抗6.2Ω,終止電圧2.75Vの条件で放電することによって行った。
【0091】
【表3】
【0092】
表3及び図2〜図4を見てわかるように、電解液中のDMC容量混合率が大きくなる程、保存後の内部抵抗は低下し、開路電圧は高くなり、容量回復率は上昇する。このことから、非水溶媒にDMCを添加することによって電池を充電状態で高温環境下に放置することによって生じる容量劣化が防止されることがわかった。
【0093】
しかし、図5からも明らかなように、電解液中のDMC容量混合率があまり大きくなると、DMCは沸点が比較的低いことから高温環境下に放置後の電池内圧が高くなる。すなわち、DMCは電解液中のMEC容量をM、DMC容量をDとしたとき、2/8≦D/M≦9/1となるように添加することが好ましいことがわかった。
【0094】
〔DEC添加の検討〕
次に、非水溶媒にDECを添加する効果を調べるために、PC:MEC:DMC=4:3:3なる組成の非水溶媒にさらにDECを1〜30容量%の範囲で添加すること以外は実施例4と同様にして電池を作製した(実施例4−A〜実施例4−F)。
【0095】
そして、DECを添加した電池及び実施例4の電池,比較例2の電池について、夏期における自動車のダッシュボード上に放置されたことを想定し、充電状態で温度105℃下、8時間電池を保存し、電池内圧の上昇を測定するとともに外観を観察した。なお、充電は、充電電流1A,上限電圧4.2V(定電圧)の定電流充電であり、2.5時間行った。
【0096】
また、上述と同様にして充放電サイクルを繰り返し行ったときの11サイクル目充電直後の開回路電圧、内部抵抗(交流1kHz)及び11サイクル充電後、充電状態で温度90℃下40時間保存した後の開回路電圧、内部抵抗(交流1kHz)を測定した。また、保存前の電池内圧と保存後の電池内圧比及び保存前の充放電10サイクル目の容量に対する保存後の充放電2サイクル目の容量の比率(容量回復率)を求めた。
【0097】
温度105℃8時間保存試験の結果を表4に、温度90℃40時間保存試験の結果を表5にそれぞれ示す。
【0098】
【表4】
【0099】
【表5】
【0100】
表4からわかるように、温度105℃下で8時間保存した後の電池内圧は、非水溶媒へのDEC添加量が大きくなる程低くなる。このことから、非水溶媒にDECを添加することは、高温保存中におけるガス発生を抑える上で有効であることがわかる。
【0101】
しかし、表5を見ると、温度90℃下40時間保存後の電池特性については、DEC添加量が大きくなると、開回路電圧の低下、内部抵抗の上昇、容量回復率の低下が生じてくる。これらのことから、DECは余り多く添加するのは好ましくなく、1〜20容量%の範囲内で添加するのが適当であることがわかる。
【0102】
実施例6
人造黒鉛KS−75(ロンザ社製:(002)面の面間隔=0.3358nm、C軸結晶子厚み=25.4nm,ラマンスペクトルG値=8.82,真比重=2.23,平均粒径28.4μm)を負極の炭素材料として用い、EC,MEC,DMCがEC:MEC:DMC=5:2:3なる容量混合率で混合されてなる混合溶媒を電解液の非水溶媒として用いる以外は実施例1と同様にして非水電解液電池を作製した。
【0103】
比較例3
ECとMECがEC:MEC=5:5なる容量混合率で混合されてなる混合溶媒を電解液の非水溶媒として用いる以外は実施例2と同様にして非水電解液二次電池を作製した。
【0104】
このようにして作製された非水電解液二次電池について、上述と同様にして充放電サイクルを繰り返し行ったときの11サイクル目充電直後の開回路電圧、内部抵抗(交流1kHz)及び11サイクル充電後、充電状態で温度90℃下40時間保存した後の開回路電圧、内部抵抗(交流1kHz)を測定した。また、保存前の電池内圧と保存後の電池内圧比及び保存前の充放電10サイクル目の容量に対する保存後の充放電2サイクル目の容量の比率(容量回復率)を求めた。これら結果を表6に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
表6からわかるように、電解液にDMCを混合した実施例6の非水電解液二次電池は、電解液にDMCを混合していない比較例3の非水電解液二次電池に比べて保存後の内部抵抗が低く、開路電圧、容量回復率が高い。
このことから、負極に黒鉛系の炭素材料を用い、高誘電率溶媒としてECを用いた場合でも、DMCを電解液に混合することによって電池を充電状態で高温環境下に放置することによって生じる容量劣化が防止されることがわかった。
【0107】
以上、本発明を適用した具体的な実施例について説明したが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0108】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明では、リチウムのドープ・脱ドープが可能な炭素材料を負極活物質に、リチウム遷移金属複合酸化物を正極に用いる非水電解液二次電池において、電解液の低粘度溶媒として炭酸メチルエチルと炭酸ジメチルの混合溶媒を用いるので、過充電,充電状態での高温環境下放置を経ても正常な充放電反応が維持でき、高エネルギー密度,長サイクル寿命を有するとともに安全性能,耐環境性能に優れた非水電解液二次電池を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した非水電解液二次電池の一構成例を示す概略縦断面図である。
【図2】非水電解液二次電池について、電解液のDMC混合率と充電状態で高温環境下放置した後の開回路電圧の関係を示す特性図である。
【図3】非水電解液二次電池について、電解液のDMC混合率と充電状態で高温環境下放置した後の内部抵抗の関係を示す特性図である。
【図4】非水電解液二次電池について、電解液のDMC混合率と容量回復率の関係を示す特性図である。
【図5】非水電解液二次電池について、電解液のDMC混合率と高温環境下保存前後の電池内圧比の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1・・・負極
2・・・正極
3・・・セパレータ
4・・・絶縁板
5・・・電池缶
6・・・封口ガスケット
7・・・電池蓋
8・・・安全板
9・・・負極集電体
10・・正極集電体
11・・負極リード
12・・正極リード
Claims (4)
- 集電体にリチウムイオンのドープ及び脱ドープが可能な炭素材料を負極活物質として含む合剤が成型された負極と、集電体に正極活物質として一般式LiXMO2(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種を表す)で表されるリチウムと遷移金属の複合酸化物を含む合剤が成型された正極とを有し、上記合剤の層が成型された電極の幅及び長さにおいて上記正極より上記負極が大きく形成され、上記正極及び負極がセパレータを介して多数回巻回された渦巻型電極体と、
非水溶媒に電解質を溶解してなる非水電解液と、
上記渦巻型電極及び上記非水電解液が収容された電池缶と、
電池内圧で変形する薄板を有する安全装置を備えた非水電解液二次電池において、
上記非水溶媒は、炭酸メチルエチルと炭酸ジメチルを含有し、上記炭酸メチルエチルと炭酸ジメチルの混合率が、非水溶媒全容量をT、炭酸メチルエチル容量をM、炭酸ジメチル容量をDとしたときに、2/8≦D/M≦9/1であって、且つ、2/10≦(M+D)/T≦8/10であることを特徴とする非水電解液二次電池。 - 上記負極活物質は、(002)面の面間隔が0.37nm以上、真密度が1.7g/cm3以下、且つ空気気流中における示差熱分析において観測される酸化発熱ピークが700℃以下にある炭素材料であり、
上記正極は、定常状態で負極活物質1g当たり250mAh以上の充放電容量相当のLiを含んでおり、
上記非水溶媒は、炭酸プロピレン、炭酸メチルエチル及び炭酸ジメチルを含有することを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池。 - 上記非水溶媒の炭酸メチルエチルと炭酸ジメチルの混合率が、非水溶媒全容量をT、炭酸メチルエチル容量をM、炭酸ジメチル容量をDとしたときに、3/10≦(M+D)/T≦7/10であることを特徴とする請求項2記載の非水電解液二次電池。
- 上記非水溶媒に、炭酸ジエチルが1〜20容量%なる割合で添加されていることを特徴とする請求項2記載の非水電解液二次電池。
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