JP3554112B2 - インサート成形用ファスナー部材及びそのインサート成形用ファスナー部材を成形主体に連結する方法 - Google Patents
インサート成形用ファスナー部材及びそのインサート成形用ファスナー部材を成形主体に連結する方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主要面及び主要面の反対側の裏面を有する基部と、基部の主要面に設けられる複数の係合要素とを備えた対面係合式のファスナー部材に関し、特に、基部の裏面に設けられる連結要素をさらに備え、インサート成形工程により、成形主体に埋め込まれる連結要素を介して、成形主体の表面に係合要素を露出させた状態で成形主体に固定的に連結されるインサート成形用ファスナー部材に関する。本発明はさらに、そのようなインサート成形用ファスナー部材を成形主体に固定的に連結する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用座席、事務用又は家庭用の椅子、マットレス等の、種々の備品、家具類において、発泡性樹脂材料の成形体からなるクッション部材の表面に、布帛や皮革等からなるカバー部材を被着したものが知られている。この種の備品、家具類では、使用中にカバー部材が弛んだりずれたりしないように、カバー部材をクッション部材に強固に固着する必要がある。
【0003】
従来、例えば自動車用の座席においては、カバー部材をクッション部材に固着するために、ホグリングと称する環状金具や、平板状の基部の主要面に複数の係合要素を配設した対面係合式のファスナー部材(いわゆる面ファスナー)を使用していた。ホグリングは、1つ1つは固着強度に優れる利点を有するが、カバー部材の全体をクッション部材に実質的に密着させて外観を向上させるためには、多数のホグリングを使用しなければならず、固着作業が極めて煩雑でしかも熟練を要するという課題を有していた。
【0004】
これに対し、対面係合式のファスナー部材を用いる場合は、ファスナー部材をクッション部材の表面の所定位置に固定的に設置するとともに、ファスナー部材の係合要素群と係合可能な対応係合要素をカバー部材の裏面に形成し、クッション部材にカバー部材を被せた後に両係合要素を相互に押し付けて係合させることにより、比較的容易にカバー部材をクッション部材に固着することができる。この場合、ファスナー部材の形状や配置、並びに係合要素の形状や配置を工夫することにより、充分な固着強度及び密着性が得られる。
【0005】
このような目的で使用されるファスナー部材は、全体が樹脂材料から一体成形されるものや、布帛製又は樹脂製の基部に多数の樹脂製モノフィラメントを植設してなるものがあるが、いずれの場合もクッション部材へ基部を強固に固定する目的で、一般に基部の裏面に、クッション部材に埋込式に連結可能な連結要素を備える。そしてこのファスナー部材を、クッション部材の成形型内にインサートとして配置してクッション部材を成形することにより、クッション部材の表面に係合要素が露出した状態で、連結要素を介してクッション部材に固定的に連結することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成を有するファスナー部材は、座席等の備品の触感や外観を損なわないように、カバー部材の固着強度及び密着性を低下させない範囲で可及的に小形であることが所望される。特に自動車用座席では、着席者による荷重が座席上で頻繁に移動するので充分な固着強度が要求され、しかも疲労を軽減するために異物感を排除した高水準の安楽性を提供することが望まれるので、クッション部材の表面に設けた溝部やカバー部材の縫目に沿って配置可能な細長い帯形状を有したファスナー部材が有効に利用されている。
【0007】
他方、一般に対面係合式のファスナー部材は、係合要素や連結要素の基部からの突出長さに比べて基部の厚みが小さいので、基部に反りや撓みを生じ易い傾向がある。特に全体が樹脂材料から一体成形される構造の場合、押出成形工程や射出成形工程を経て製造されたファスナー部材は、基部の主要面側と裏面側とで、注入される樹脂量の差や係合要素と連結要素との形状及び配置の違い等により生じる収縮率の差異に起因して、成形後に基部の何れかの面を凸とする反りが生じる傾向がある。このような反りは、特にファスナー部材が細長い帯形状を有する場合、及び押出成形工程により成形された場合に、顕著に発生することが判っている。
【0008】
ところで、対面係合式のファスナー部材を前述したようなインサート成形工程によりクッション部材に固定する際には、クッション部材の型の成形空間内にファスナー部材の支持凹部を設け、この凹部に基部裏面の連結要素を成形空間に露出させてファスナー部材を配置する。このとき、ファスナー部材の係合要素群を凹部に挿入し、かつ基部周縁を凹部壁面に密接させて基部主要面側への発泡性樹脂原液の浸入を防止している。この状態で成形空間に発泡性樹脂原液を注入し、クッション部材を成形すると、ファスナー部材が連結要素を介してクッション部材に固定的に連結される。
【0009】
したがって、基部に反りを有したファスナー部材を、インサート成形工程によりクッション部材に固定しようとすると、ファスナー部材支持凹部に配置したファスナー部材の基部周縁と凹部壁面との間に隙間が形成され、成形空間に注入された樹脂原液がそのような隙間から基部主要面側へ浸入する危惧が生じる。基部主要面側へ浸入した樹脂原液は、係合要素群に絡まりつつ固化して、ファスナー部材の係合機能を低下させる。また、ファスナー部材が基部に反りを有したままでクッション部材に固定されると、ファスナー部材の係合要素群とカバー部材の対応係合要素との正確な相互係合が困難になってカバー部材の固着強度が劣化したり、カバー部材の固着部位にて触感や外観が損なわれたりする傾向がある。
【0010】
したがって本発明の目的は、インサート成形工程により成形主体に固定されるファスナー部材において、型内に配置したときの基部の反りや撓みを修正して、係合要素の係合機能を低下させたり、被着体の触感や外観を損なったりすることなく、成形主体の所定位置に強固に固定できるインサート成形用ファスナー部材を提供することにある。さらに本発明は、そのようなインサート成形用ファスナー部材を成形主体に容易に固定的に連結する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、主要面及び主要面の反対側の裏面を有する略平坦な帯形状の基部と、基部の主要面に設けられる複数の係合要素と、基部の裏面に設けられる連結要素とを具備し、インサート成形工程により、成形主体に埋め込まれる連結要素を介して、成形主体の表面に係合要素を露出させた状態で成形主体に固定的に連結されるインサート成形用ファスナー部材において、基部は、長手方向へ延びる一対の第1縁と第1縁より短く横断方向へ延びる一対の第2縁とを備え、それら第1縁には、基部より小さな厚みを有した弾性変形可能な薄肉延長部が、第1縁の略全長に亙って横断方向へそれぞれ延設されることを特徴とするインサート成形用ファスナー部材を提供する。
【0012】
さらに本発明は、上記インサート成形用ファスナー部材において、基部の一対の第2縁に、基部より小さな厚みを有した弾性変形可能な薄肉延長部が、第2縁の略全長に亙って長手方向へそれぞれ延設されてなるファスナー部材を提供する。
【0013】
さらに本発明は、上記インサート成形用ファスナー部材において、連結要素が、基部の長手方向に延びる長手部分と横断方向に延びる横断部分とを交互に備えて長手方向へ蛇行状に連続して裏面に突設される突条からなるファスナー部材を提供する。
【0014】
さらに本発明は、上記インサート成形用ファスナー部材において、突条の少なくとも一部分が、裏面との結合基端から先端の自由端へ向かって徐々に拡幅する形状を有するファスナー部材を提供する。
【0015】
さらに本発明は、上記インサート成形用ファスナー部材において、連結要素が、基部の長手方向へ直線状に連続して裏面に突設される突条からなり、この突条が、裏面から離れた自由端に、裏面との結合基端よりも大きな横断方向寸法を有したアンカー部を備えるファスナー部材を提供する。
【0016】
さらに本発明は、上記インサート成形用ファスナー部材を成形主体の表面に係合要素を露出させた状態で固定的に連結する方法であって、
a)ファスナー部材の基部を受容支持する第1部分と複数の係合要素を収容する第2部分とを備え、第1部分が、成形空間を画成する成形面の所定位置に開口する蟻溝形状を有し、蟻溝を画成する一対の対向傾斜側壁の間の最大間隔がファスナー部材の基部と薄肉延長部との合計横断方向寸法よりも小さく、第2部分が蟻溝の底部に凹設されて第2部分の開口を囲繞する略平坦な環状棚壁が第1部分に形成されてなるファスナー部材支持凹部を備えた成形主体の型を用意し、
b)ファスナー部材の複数の係合要素を支持凹部の第2部分に挿入するとともに、基部の薄肉延長部の各々の自由端を支持凹部の一対の傾斜側壁にそれぞれ当接してそれら薄肉延長部を弾性変形させつつ基部を第1部分に収容し、
c)薄肉延長部の弾性復元力によりファスナー部材の基部を支持凹部内で第2部分に向けて付勢し、それにより基部の主要面の周縁領域を支持凹部の棚壁に密接させて基部の撓曲を修正し、
d)型の成形空間に樹脂原液を注入して、支持凹部の第1部分に配置されたファスナー部材の連結要素を樹脂原液に没入させ、その状態で樹脂原液を固化させて成形主体を成形し、
e)成形主体及び成形主体に連結されたファスナー部材から型を脱離する、
各ステップを有した方法を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明をその好適な実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明の一実施形態によるインサート成形用のファスナー部材10を示す。ファスナー部材10は、樹脂材料の一体成形品からなる対面係合式のファスナー部材であり、略平坦でかつ相互に平行な主要面12及び裏面14を有する帯形状の基部16と、基部16の主要面12に所定の離間配置で立設される複数の係合要素18と、基部16の裏面14に突設される連結要素20とを備える。
【0018】
帯形状の基部16は、長手方向へ直線状にかつ相互に平行に延びる一対の第1縁22と、横断方向へ直線状にかつ相互に平行に第1縁22より短く延びる一対の第2縁24(1つの第2縁24のみ図示)とを備える。基部16の一対の第1縁22からは、基部16より小さな厚みを有した薄肉延長部26が、第1縁22の略全長に沿って横断方向へそれぞれ延設される。薄肉延長部26は、基部16の主要面12と同一面上に延長され、したがって基部16の裏面14側で第1縁22に段部28が形成される。
【0019】
薄肉延長部26は、ファスナー部材10の成形工程において、基部16の成形と同時に基部16と同一の樹脂材料から一体成形される。したがって、基部16より小さな厚みを有した薄肉延長部26は、基部16よりも容易に弾性変形可能となっている。この弾性変形は主に、基部16と薄肉延長部26との結合部位を支点とした薄肉延長部26の撓曲ないし揺動として生じる。なお薄肉延長部26の自由端26aは、基部16の第1縁22に対し略平行に直線状に延びる。
【0020】
複数の係合要素18は、ファスナー部材10の成形工程において、基部16の成形と同時に基部16と同一の樹脂材料から一体成形される。各係合要素18は、基部16の主要面12から略直立状に突出する脚部30と、脚部30の先端近傍にて側方へ突設される複数の係合片32とを備える。したがってファスナー部材10では、複数の係合要素18が先端の係合片32にて相手部材の対応係合要素に係合する。
【0021】
図3に示すように、複数の係合要素18は、基部16上で長手方向へ延びる略平行な2列に沿って、かつ各列間で各係合要素18の位置を長手方向への配置間隔の半分だけ相互にずらして、いわゆる千鳥状に整列配置される。このような配置は、帯形状のファスナー部材10において、可及的に少ない樹脂量で相手部材に対する充分な固着強度を確保でき、しかもファスナー部材10を成形する際の型抜きを容易にする点で有利である。
【0022】
連結要素20は、ファスナー部材10の成形工程において、基部16の成形と同時に基部16と同一の樹脂材料から一体成形される。図3に破線で示すように、連結要素20は、基部16の長手方向に延びる長手部分34と、基部16の横断方向に延びる横断部分36とを交互に備え、所定断面形状を有する突条として基部16の長手方向へ蛇行状に連続して形成される。図示実施形態では、長手部分34は基部16の第1縁22に略平行に配置され、横断部分36は基部16の第2縁24に対し僅かに傾斜して配置される。連結要素20は、後述するインサート成形工程により成形主体に埋め込まれ、それによりファスナー部材10を、成形主体の表面に複数の係合要素18を露出させた状態で成形主体に強固に固定的に連結する。
【0023】
基部16の裏面14に蛇行突条として形成される連結要素20は、成形主体に埋め込まれたときに、連結要素20と成形主体との接触面積を基部16の長手方向及び横断方向の両方向に同等かつ充分に確保することを可能にする。その結果、成形主体に連結されたファスナー部材10は、基部16をその第1縁22又は第2縁24を起点(すなわちきっかけ)として横断方向又は長手方向へ成形主体から捲り上げるように働く分離作用に抗して、連結要素20による強固な連結力のもとに成形主体の所定位置に保持される。
【0024】
連結要素20は、その連結力を向上させるために、少なくとも長手部分34及び横断部分36の一部分が、基部裏面14との結合基端から他端の自由端へ向かって徐々に拡幅する形状(図1及び図2参照)を有することが好ましい。このような形状によれば、連結要素20は成形主体内に楔状に埋め込まれるので、外力に抗してファスナー部材10を成形主体の所定位置にさらに強固に保持する。
【0025】
さらに、蛇行形状を有する連結要素20は、長手部分34と横断部分36とにおいて基部16の厚みを局部的に増大することにより、基部16の捩じれに対する剛性を高める作用も果たす。なお、連結要素20による連結力及び基部補強作用を充分に発揮させるためには、長手部分34及び横断部分36を基部16の裏面14の長手方向全長及び横断方向全長に亙って配置することが有利である。
【0026】
上記のような連結力及び基部補強作用を一層向上させるために、連結要素20はさらに、横断方向へ延びる第2横断部分38を選択的に備えることができる。第2横断部分38は、長手方向へ隣接する2つの横断部分36の間で、1つの長手部分34に略直角に交差して配置される。第2横断部分38は、例えば図1及び図2に示すように、角柱状脚部38aと脚部先端から膨出する円柱状頭部38bとを有することができる。
【0027】
上記構成を有するファスナー部材10は、樹脂材料から成形主体を成形する際に成形主体の型内にインサートとして配置され、それにより成形主体に強固に固定的に連結される。このインサート成形工程を、図5〜図8を参照して以下に説明する。
【0028】
まず準備ステップとして、成形空間40を画成する成形面42の所定位置に、ファスナー部材10を支持する支持凹部44を設けた成形主体の型46を用意する。支持凹部44は、ファスナー部材10の基部16の長手方向寸法dに略等しい長手方向寸法D1と、基部16と両薄肉延長部26とを合わせた横断方向寸法w1(図4)より小さい横断方向寸法W1とを有した略矩形の開口48を備える。また支持凹部44は、開口48から徐々に相互間隔を拡げて延びる略平坦な一対の長手傾斜側壁50、開口48から相互に平行に延びる略平坦な一対の横断側壁52、及びそれら側壁50、52に交差して同一面上で略矩形環状に延びる略平坦な棚壁54によって画成される第1部分44aと、棚壁54に交差する周壁56を有して第1部分44aからさらに凹設される第2部分44bとを備える。したがって図5に示すように、支持凹部44の第1部分44aは、横断方向断面において開口48から徐々に拡幅した蟻溝形状を有する。
【0029】
支持凹部44の第2部分44bは、ファスナー部材10の基部16の長手方向寸法dより小さい長手方向寸法D2と、基部16の横断方向寸法w2(図4)より小さい横断方向寸法W2とを有した略矩形の開口58を、棚壁54に隣接して備える。ファスナー部材10は、複数の係合要素18を支持凹部44の第2部分44bに挿入し、かつ基部16及び連結要素20を第1部分44aに収容して、基部裏面14を成形空間40に露出させた状態で型46内の所定位置に配置される。なお、第2部分44bは、ファスナー部材10の係合要素18が周壁56との摩擦や熱伝達等により損傷を受けないように、収容した複数の係合要素18に接触しないだけの広さを有することが望ましい。
【0030】
支持凹部44の一対の長手傾斜側壁50の間の最大間隔W3(すなわち長手側壁50と棚壁54との交差部において測った間隔)は、ファスナー部材10の基部16と両薄肉延長部26とを合わせた横断方向寸法w1に略等しいか僅かに小さく設定される。したがって、ファスナー部材10を支持凹部44内に配置すると、ファスナー部材10の両薄肉延長部26が弾性的に撓曲して、各薄肉延長部26の自由端26aが支持凹部44の各長手傾斜側壁50に密接支持される。このとき、両長手側壁50が開口48から凹部内奥へ向かって相互間隔を徐々に拡げるように傾斜しているので、ファスナー部材10の各薄肉延長部26は、棚壁54に向かって凸状に撓曲し、かつそれ自体の弾性復元力の反力として、各長手側壁50から棚壁54に接近する方向への力を受ける。この力により、ファスナー部材10の基部16は、支持凹部44の内奥すなわち第2部分44bへ向かって付勢される。
【0031】
支持凹部44の第2部分44bの開口58は、上記したようにファスナー部材10の基部16の主要面12よりも一回り小さい。したがって、両薄肉延長部26の弾性的撓曲によりファスナー部材10が第2部分44bへ向かって付勢されると、基部16の主要面12の第1縁22近傍の小幅領域12a(図5)及び第2縁24近傍の小幅領域12b(図6)が、支持凹部44の棚壁54に当接される。このようにして、支持凹部44の各長手側壁50から受ける付勢力により、基部16の主要面12がその周縁近傍の各領域12a、12bにて平坦な棚壁54に押し付けられるので、ファスナー部材10の成形時に生じていた基部16の反りや撓みが修正され、基部16の主要面12の周縁近傍領域12a、12bと棚壁54とが密接する。その状態で、ファスナー部材10が支持凹部44内に固定的に支持される。
【0032】
このようにしてファスナー部材10を支持凹部44内に支持した後、型46の成形空間40に例えば発泡性の樹脂原液60を注入する。このときファスナー部材10は、上記したように各薄肉延長部26の弾性復元力により支持凹部44内で固定的に保持されているので、第1部分44aに流入する樹脂原液60の流動圧力を受けても移動を生じない。しかも、各薄肉延長部26の自由端26aと各長手側壁50との密接、及び基部主要面12の周縁近傍領域12a、12bと棚壁54との密接により、樹脂原液60が支持凹部44の第2部分44bに浸入することは確実に防止される。その結果、樹脂片の混在によるファスナー部材10の係合要素18の係合機能の低下が回避される。
【0033】
樹脂原液60が固化して成形主体62が成形されると、ファスナー部材10は連結要素20を介して成形主体62に強固に固定される。その後、成形主体62から型46を脱離すると、基部16を平坦状に保持したファスナー部材10を、その係合要素18が露出した状態で表面の所定位置に固定した成形主体62が得られる。特に樹脂原液60が発泡性樹脂原液からなる場合、図8に示すようにファスナー部材10の基部16の各薄肉延長部26はそれ自体の弾性復元力により基部主要面12に平行な原形に復帰し、ファスナー部材10の基部16の平坦性が一層向上する。基部16を平坦状に保持したこのようなファスナー部材10は、成形主体62に被着される被着体(図示せず)の対応係合要素にファスナー部材10の複数の係合要素18を正確に係合させることを可能にするので、被着体の固着強度を向上させることができる。しかもこのとき、成形主体62への被着体の固着部位にて、被着体の触感や外観を些かも損なうことがない。
【0034】
なお、型46の支持凹部44において各長手側壁50と棚壁54との成す角度αは、例えば80°以上90°未満、好ましくは85°〜88°の範囲で設定される。この角度αが上記範囲より小さいと、成形主体62から型46を脱離する際にファスナー部材10との連結部位で成形主体62が損傷したり、長手側壁50にファスナー部材10が衝突してファスナー部材10が成形主体62から分離したりする傾向がある。他方、角度αが90°以上では、ファスナー部材10の基部16に支持凹部44の第2部分44bへ向けて及ぼす弾性的付勢力が得られなくなる。
【0035】
また、支持凹部44の第2部分44bの開口58は、ファスナー部材10の基部16の横断方向寸法w2に略等しいか僅かに大きい横断方向寸法W2を有していてもよい。この場合、ファスナー部材10の各薄肉延長部26の弾性的付勢作用により、各薄肉延長部26の基部16との結合基端近傍領域が支持凹部44の棚壁54に密接されることになるが、それによっても基部16の反りや撓みを修正することは可能である。さらに、支持凹部44の第1部分44aの長手方向寸法D1は、図6に示すようにファスナー部材10の基部16の長手方向寸法dより僅かに大きく設定することができる。それにより、各薄肉延長部26を弾性変形させつつファスナー部材10を支持凹部44内に挿入する作業が容易になる。
【0036】
上記構成を有するファスナー部材10は、例えば図9に示す自動車用座席100において、発泡性樹脂材料の成形体からなるクッション部材102の表面に、布帛や皮革等からなるカバー部材104を被着する際の、カバー部材104の固着手段として特に好適に使用される。この場合、ファスナー部材10は、前述したインサート成形工程により、クッション部材102の成形時にクッション部材102の表面の所定位置に固定的に連結される。なお、自動車用座席100へのこのような適用では、着席者に異物感を与えないように、図10に示すようにクッション部材102の所定位置に設けられる溝106内にファスナー部材10を配置することが望ましい。そのためには、図5に示す型46において、支持凹部44を設けるために成形面42から所定高さに突設した突部64の突出高さを、さらに増加させればよい。しかしながら、ファスナー部材10の適用によっては、このような突部を介さずに支持凹部44を型46の成形面42に直接に凹設することもできる。
【0037】
上記した自動車用座席100への適用において、カバー部材104の裏面(クッション部材102との接触面)には、ファスナー部材10の複数の係合要素18と係合する対応係合要素108が設けられる。対応係合要素108は、例えば図11(a)に示すように、カバー部材104の裏面の所定位置に縫着されたループ材110からなる。或いは図11(b)に示すように、カバー部材104の裏面の全体にループ材112を被着することもできる。いずれの場合も、図示のようにカバー部材104を部分的に撓曲縫合してリブ部分114を形成し、このリブ部分114に配置されるループ材110、112を、ファスナー部材10の基部16上で2列に並ぶ係合要素18群の各列間に挿入すれば、各係合要素18の係合片32が容易にループ材110、112に係合し、強固な固着力が得られるので有利である(図12参照)。
【0038】
このように、自動車用座席100へ適用した場合は、クッション部材102に連結されたファスナー部材10の基部16が平坦状に保持されているので、カバー部材104の対応係合要素108にファスナー部材10の複数の係合要素18を正確に係合させることが可能になり、カバー部材104がクッション部材102に強固に固着される。しかも、クッション部材102へのカバー部材104の固着部位にて、カバー部材104の触感や外観を些かも損なうことがないので、着席者に高水準の安楽性を提供するとともに高品質感を与えることができる。
【0039】
本発明に係るインサート成形用ファスナー部材は、様々な形状及び寸法を有することができる。
例えば上記実施形態において、ファスナー部材10の基部16は、被着体の固着強度や成形主体への密着性を低下させない範囲で、被着体の触感や外観を損なわないように可及的に小形であることが望ましく、したがって横断方向寸法より大きな長手方向寸法を有する細長い帯形状とされる。基部16の長手方向寸法dは、例えば50mm〜500mmである。また基部16の横断方向寸法w2は、例えば3mm〜30mm、好ましくは4mm〜10mmである。これらの寸法d、w2が上記範囲より小さいと、被着体を強固に固着することが困難となり、上記範囲より大きいと、基部16の反りや撓みが修正困難なほど顕著になる傾向がある。さらに、基部16の厚みt1(主要面12と裏面14との間の距離)は、例えば0.5mm〜5mm、好ましくは1mm〜3mmである。厚みt1が上記範囲より小さいと、基部16の反りや撓みが修正困難なほど顕著になり、上記範囲より大きいと、被着体の触感や外観を損なう傾向がある。
【0040】
基部16の薄肉延長部26は、基部16の反りや撓みを全体に亙って確実に修正するために、基部16の第1縁22の略全長に沿って設けられることが有利である。薄肉延長部26の横断方向寸法eは、例えば1mm〜10mm、好ましくは1.2mm〜3mmである。横断方向寸法eが上記範囲より小さいと、薄肉延長部26の弾性変形が困難となって基部16の反りの修正機能が低下し、上記範囲より大きいと、基部16への弾性的付勢力が低下したり、支持凹部44内への配置が困難となったりする傾向がある。薄肉延長部26の厚みt2は、例えば0.2mm〜3mm、好ましくは0.3mm〜1mmである。厚みt2が上記範囲より小さいと、基部16への弾性的付勢力が低下し、また支持凹部44内への配置時に損傷し、上記範囲より大きいと、薄肉延長部26の弾性変形が困難となって基部16の反りの修正機能が低下する傾向がある。
【0041】
基部16の薄肉延長部26は、インサート成形工程において型46の支持凹部44への基部16の挿入配置を容易にするために、図13に示すように、長手方向へ鋸歯状に延びる自由端26aを備えることができる。あるいは薄肉延長部26は、正弦波状又は矩形波状の自由端26aを備えてもよい。このような構成によれば、薄肉延長部26の自由端26aと支持凹部44の長手傾斜側壁50との接触長さが、図1の実施形態の場合に比べて減少するので、支持凹部44に基部16を挿入するに要する力が低減される。この作用効果は、基部16の長手方向寸法が増加するほど有利なものとなり、作業者の労力負担を軽減する。なおこの場合、基部16への弾性的付勢力の低下による基部16の反りの修正機能の劣化が生じない範囲で、薄肉延長部26の形状を決定することが望まれる。
【0042】
さらに基部16は、横断方向へ延びる一対の第2縁24にも、基部16より小さな厚みを有した弾性変形可能な薄肉延長部(図示せず)を設けることができる。この薄肉延長部は、第2縁24の略全長に亙って第2縁24から長手方向へ延設されることにより、第1縁22の薄肉延長部26と同様に、インサート成形工程において型46の支持凹部44へ基部16を挿入する際に弾性変形し、基部16の反りを修正して基部主要面12の周縁近傍領域を棚壁54に密着させる作用を促進する。
【0043】
係合要素18は、図1に示す矢尻状頭部を有する突子形状の他に、半球状、球状、錐体状又は笠状の頭部を有する茸形や、フック形、ループ形、傘形、椰子の木形、等の多様な突子形状を有することができる。或いは係合要素として、舌(tongue)と溝(groove)との組合せ構造や、米国特許第 4,875,259号に開示されるような錐体又は円錐台状の噛合可能な先細り支柱群を適用することもできる。例えば図1及び図14に示す矢尻状頭部を有する係合要素18では、基部主要面12からの突出高さh1は、例えば1mm〜8mm、好ましくは3mm〜6mmである。高さh1が上記範囲より小さいと、係合要素18の係合機能が低下し、上記範囲より大きいと、被着体の触感や外観を損なう傾向がある。また、係合要素18の対向係合片32の先端間距離rは、例えば0.5mm〜2mm、脚部30の太さsは、例えば0.5mm〜2mm、脚部30の長さh2は、例えば1mm〜5mmである。さらに、基部主要面12上での係合要素18の立設密度は、例えば10本/cm2 〜100本/cm2 、好ましくは25本/cm2 〜60本/cm2 である。
【0044】
複数の係合要素18は、図3に示すような基部16上で長手方向に沿った2列に並ぶ千鳥状配置に限らず、各列間で横断方向へ重畳する並列配置とすることもできる。また、千鳥状配置及び並列配置のいずれも、長手方向に沿った3列以上の配置とすることができる。このように、複数の係合要素の配置を適宜選択すれば、本発明に係るインサート成形用ファスナー部材と相手部材とを対面状態で1つだけ又は複数の相対回転位置に配置した状態での、両部材の相互係合を可能にすることもできる。ところで、ファスナー部材10は、その成形時に生じる基部16の反りや撓みを可及的に低減するために、射出成形工程によって製造することが望まれるが、その場合、2列以上の並列配置では、成形型の脱離が困難となる。そのような場合には、米国特許第5,242,646号に開示される脚部型のような破壊的に脱離可能な型を使用した射出成形工程によって、基部、係合要素、及び連結要素を、樹脂材料から一体的に形成する方法が有利である。
【0045】
なお、本発明に係るファスナー部材は、このように基部と係合要素とが同一の樹脂材料から一体成形されるもの(「スーパーデュアルロック」(3M社の商標名)として知られている)だけでなく、例えばプラスチック製の基部と基部に植設される複数の樹脂製モノフィラメントからなる係合要素とを備えたもの(「デュアルロック」(3M社の商標名)として知られている)にも適用できる。また係合要素として、フックアンドループ式ファスナー(「スコッチメイト」(3M社の商標名)として知られている)に用いられるフック又はループを採用することもできる。
【0046】
連結要素20は、基部16を横断方向又は長手方向へ成形主体から捲り上げるように働く分離作用に抵抗するとともに、基部16の捩じれに対する剛性を高めるために、長手部分34と横断部分36とを備えることが好ましい。この場合、連結要素20は、図3に示す蛇行突条の形状に限らず、例えば図15(a)の長手部分34と横断部分36とのみからなる蛇行突条20a、図15(b)の長手部分34に溝を有する分離形蛇行突条20b、図15(c)の分離形T字突条20c、等の形状を採用できる。これらいずれの形状も、ファスナー部材10の成形時の型の脱離を容易にするとともに、インサート成形時の成形主体の樹脂原液を、空気を基部横断方向へ追い出しつつ連結要素20の表面の隅々まで容易に行き渡らせるので、ファスナー部材10と成形主体との連結強度を向上させることができる。
【0047】
連結要素20の基部裏面14からの突出高さcは、例えば1mm〜20mmである。また、ファスナー部材10と成形主体との連結強度を向上させる図1の楔形状の連結要素20において、基部裏面14と連結要素20の傾斜側面との成す角度は、例えば5°〜30°である。さらに、ファスナー部材10と成形主体との連結強度を一層向上させるために、連結要素20に加えて、例えば係合要素18と同様の突子形状を有する2次連結要素(図示せず)を選択的に追加することもできる。基部16に対して垂直方向へ働く引抜き力に対する連結強度は、例えば5kg以上であり、基部16に対して第1縁22から捲り上げるように作用する剥離力に対する連結強度は、例えば2kg以上である(いずれも基部16の寸法がd=50cm、w2=8mmの場合)。
【0048】
ところで、前述したように、図1のファスナー部材10における連結要素20は、蛇行状に延びる長手部分34と横断部分36とを備えることにより、基部16の捩じれに対する剛性を高める作用を果たす。それと共に、蛇行形状の連結要素20は、主要面12に平行な方向(以下、水平方向と称する)への基部16の撓曲に対し、高い剛性を発揮することが判っている。したがってファスナー部材10は、成形主体に直線状に連結される用途には適しているが、水平方向へ基部16を撓曲した状態で成形主体に連結することが要求される場合には、適用が困難である。このような適用としては、例えば着席者の体形に沿う立体形状を有するバケットシート形式の自動車用座席において、クッション形状に合わせて立体縫製されたカバー部材の曲線状に延びる縫目に沿ってファスナー部材を配置する場合が挙げられる。図16〜図18は、このような場合にファスナー部材の適用を可能にする連結要素の幾つかの変形実施形態を示す。
【0049】
図16に示す変形実施形態による連結要素70は、基部16と同一の樹脂材料から一体成形され、基部16の長手方向へ直線状に連続して裏面14に突設される突条からなる。この突条は、基端で裏面14の横断方向略中央に結合される薄板状の脚部72を備える。脚部72は、全体に略均一な厚み(横断方向寸法)を有し、裏面14の長手方向へ延びる中心線に沿って略直立状に配置される。さらに、裏面14から離れた側の脚部72の自由端には、脚部72の横断方向両側に、基部16に略平行に延びる薄板状のアンカー部74が形成される。アンカー部74は、全体に略均一な厚みを有し、基部16と両薄肉延長部26とを合わせた横断方向寸法w1に略等しい横断方向寸法を有する。
【0050】
このような構成を有する連結要素70は、材料強度的に平衡した基部16とアンカー部74とが脚部72により所定間隔を開けて結合されているので、基部16を水平方向へ撓曲する際に、応力が基部16とアンカー部74とに略均等に分散して加わる。しかも脚部72は、それ自体、基部16の水平方向への撓曲を妨げない。その結果、基部16は、捩じれたり波状に撓んだりすることなく、水平方向へ容易に撓曲できるようになる。したがって連結要素70を備えたファスナー部材は、例えばバケットシート形式の自動車用座席において、クッション部材の曲線状に延びる溝に容易にインサート成形でき、しかも立体縫製カバー部材の曲線状縫目の対応係合要素に強固に係合してカバー部材をクッション部材に密着させ、機能性及び意匠性を向上させることができる。また、成形主体の形状に関わらず、人体(例えば着席者)に触れないか又は触れる頻度の少ない位置にファスナー部材を撓曲して設置できるので、使用時の被着体(例えばカバー部材)の触感を損なわずに、充分なファスナー機能を発揮できる。なお連結要素70は、インサート成形工程により成形主体に埋め込まれたときに、アンカー部74が成形主体に楔状に食い込んで強固な連結力を発揮することは言うまでもない。
【0051】
連結要素70は、基部16と両薄肉延長部26とを合わせた横断方向寸法w1、基部16と連結要素70とを合わせた高さp、及びアンカー部74の横断方向寸法yが互いに略等しいときに、特に基部16の水平方向への撓曲を容易にする。この場合、撓曲半径に関して内側に脚部72をずらして配置する(すなわち図16(b)のH状断面をコ状断面に修正する)と、さらに撓曲が容易になる。しかしながらそのような構成では、インサート成形時に作業者が脚部72の位置を確認しつつ型内に配置しなければならない煩雑さが生じる。また、水平方向へS状に蛇行撓曲させることも考慮すれば、やはり図示のように裏面14の横断方向略中央に脚部72を配置することが好ましい。
【0052】
連結要素70においては、図16(a)に示すように、アンカー部74に長手方向へ所定間隔を開けて複数のスリット76を設けることができる。このような構成によれば、インサート成形時に、成形主体がアンカー部74のスリット76に侵入した状態で固化するので、ファスナー部材を成形主体に連結する連結力をさらに高めることができる。特にスリット76は、成形主体を侵入させることにより、基部16をその第2縁24を起点として長手方向へ成形主体から捲り上げるように働く分離力に抗して、アンカー部74を成形主体に強固に掛止するように作用する。このような観点では、基部16を長手方向へ捲り上げる起点となり得る第2縁24に隣接して、少なくとも1つのスリット76を設ければよい。
【0053】
スリット76はさらに、主要面12を凹面にすべく基部16を主要面12に直交する方向(以下、垂直方向と称する)へ撓曲することを容易にする作用も果たす。この作用により、連結要素70を備えたファスナー部材は、特に車両用座席のクッション部材の表面の多様な三次元曲面部分に設置でき、カバー部材の固着部位を所望位置に設定できるので、座席デザインの自由度が広がる利点がある。なおこのような観点では、スリット76の個数を増やし、また脚部72にもスリット76を連続して形成することが有利である。しかしながらその場合、基部16を水平方向へ撓曲する際の応力の平衡/分散効果が薄れ、水平方向への撓曲が困難になる傾向がある。したがって、要求される撓曲方向に対応して、スリット76の形状及び個数を選択することが望ましい。
【0054】
スリット76の長手方向寸法xは、水平方向への撓曲を容易にする観点では可及的に小さいことが望ましいが、xが小さすぎると成形主体を侵入させることが困難となり、基部16を長手方向へ成形主体から捲り上げるように働く分離作用に対する抵抗力が低下する危惧が生じる。したがってスリット76は、図示のようにxが脚部72に隣接する部位で可及的に小さく、アンカー部74の先端に向かって徐々に拡大されるような形状を有することが好ましい。
【0055】
図17に示す変形実施形態による連結要素80は、基部16と同一の樹脂材料から一体成形され、基部16の長手方向へ直線状に連続して裏面14に突設される突条からなる。この突条は、基端で裏面14の横断方向略中央に結合される薄板状の脚部82を備える。脚部82は、裏面14との結合基端から先端の自由端に向かって徐々に拡大される厚み(横断方向寸法)を有し、自由端の最大横断方向寸法を有する領域がアンカー部84として作用する。
【0056】
連結要素80は、裏面14から離れた先端の自由端に、裏面14との結合基端よりも大きな横断方向寸法を有したアンカー部84を備えることにより、図16の連結要素70と同様に、基部16を水平方向へ撓曲する際の応力を基部16とアンカー部74とに分散して加えることができ、その結果、基部16の水平方向への撓曲を容易にすることができる。しかしながら連結要素80では、アンカー部84すなわち脚部82の最大横断方向寸法qが、基部16と両薄肉延長部26とを合わせた横断方向寸法w1よりも小さいので、連結要素70に比べると基部16の水平方向への撓曲を容易にする作用は劣る。
【0057】
連結要素80においては、脚部82の自由端近傍に脚部82を横断方向へ貫通する複数の貫通孔86を長手方向へ所定間隔を開けて設けることができる。このような構成によれば、インサート成形時に、成形主体が貫通孔86に侵入した状態で固化するので、ファスナー部材を成形主体に連結する連結力をさらに高めることができる。特に貫通孔86は、成形主体を侵入させることにより、基部16をその第2縁24を起点として長手方向へ成形主体から捲り上げるように働く分離力に抗して、脚部82を成形主体に強固に掛止するように作用する。なお貫通孔86の寸法は、脚部82の機械的強度を著しくは低下させない範囲で決定することが望ましい。
【0058】
例として、基部16を水平方向へ100mm以上の曲率半径で撓曲させることを想定した場合の、上記各変形実施態様における好適な寸法を以下に列記する。基部16の厚みt1=0.5mm〜3mm。基部16と両薄肉延長部26とを合わせた横断方向寸法w1=4mm〜20mm。基部16と連結要素70(80)とを合わせた高さp=4mm〜20mm。脚部72(82)の最大横断方向寸法q=0.5mm〜5mm。アンカー部74の厚みs=0.5mm〜3mm。アンカー部74の横断方向寸法y=2.5mm〜20mm。スリット76の最大長手方向寸法x=0.5mm〜5mm。スリット76により分割されたアンカー部74の最大長手方向寸法z=5mm〜50mm。スリット76の個数(長手方向10cm当り)=1個〜20個。なお、同様の寸法範囲で、前述したように薄肉延長部26の自由端26aを波状又は鋸歯状に形成した場合には、基部16を水平方向へ50mm以上の曲率半径で撓曲できる。
【0059】
本発明に係るファスナー部材は、帯状であるので、上記説明にて検討した通り、成形主体にインサート成形した後に基部をその第2縁を起点として長手方向へ成形主体から捲り上げるように働く分離力に抗して基部を成形主体に強固に掛止できることが所望される。このような機能を付与するために、例えば図1、図16及び図17に示す各実施形態において、図18に示すように、基部16のみを第2縁24の近傍で長手方向へ延長することができる。この場合、成形主体の型46の成形面42から所定高さの位置に支持凹部44を設けるとともに、支持凹部44を画成する横断側壁52(図6)を省略して棚壁54を支持凹部44の外側に連通させ、図示のように基部16の長手延長部16aを棚壁54で支持しつつ支持凹部44の外側に延長させた状態で、ファスナー部材を型46に配置する(図18(a))。この状態でインサート成形を行えば、図18(b)に示すように、基部16の長手延長部16aが成形主体62に埋め込まれるので、基部16をその第2縁24を起点として長手方向へ成形主体62から捲り上げるように働く分離力に抗して、基部16が成形主体62に強固に掛止される。
【0060】
また、本発明に係るファスナー部材は、上記各実施例に記載したようなファスナー部材(便宜的に単体ファスナー部材と称する)を2本又はそれ以上の本数だけ長手方向へ結合してなるものを含む。このような結合形ファスナー部材は、複数の単体ファスナー部材同士を、基部の横断方向寸法より小さな横断方向寸法を有した撓曲自在な結合要素(ジョイント)により結合して、好ましくは一体的に成形される。したがって結合形ファスナー部材は、複数の単体ファスナー部材を成形主体上の比較的近接した複数箇所に取付ける際に、各単体ファスナー部材の位置決めを容易にし、作業性を向上させる効果を奏する。
【0061】
好ましくは結合要素は、基部と同じ材料から基部に同一厚みに一体成形され、基部同士を相互に結合する。このような構成の結合要素は、基部よりも小さな横断方向寸法を付与することにより、基部よりも容易に撓曲可能となる。また結合要素として、針金等の可撓性金属材料からなる線材又は細帯材を使用し、インサート成形法により各単体ファスナー部材に一体的に組込むこともできる。さらに結合要素は、結合形ファスナー部材を成形主体にインサート成形する際に、成形主体に埋め込まれる形状でもよいが、結合要素自体にも前述した連結要素を設けて、その連結要素により結合要素が成形主体に固定的に連結される構成が好ましい。成形主体上での各単体ファスナー部材の相対配置は任意であるが、作業性を考慮した場合、結合要素の長手方向寸法は好ましくは5mm〜100mmの範囲で設定される。
【0062】
本発明に係るファスナー部材は、様々な材料から形成することができる。特に、基部の薄肉延長部の弾性変形により基部に適当な付勢力を及ぼすために、薄肉延長部の曲げ弾性率が好ましくは9800N/cm2 〜245000N/cm2 、特に好ましくは49000N/cm2 〜196000N/cm2 の範囲にあることが要求される。このような曲げ弾性率を達成するために、ファスナー部材の好適な材料として、ポリアミド(6−ナイロン(商標)、6,6−ナイロン(商標)等)、ポリプロピレン、ポリエチレン、アイオノマー、ポリアセタール、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリアリレートが挙げられる。このうち特に好適な材料は、6−ナイロン(商標)、6,6−ナイロン(商標)、ポリプロピレンである。
【0063】
またこのような樹脂材料に、カーボンブラック、グラスファイバー、酸化チタン、酸化鉄等の充填材を添加して、曲げ弾性率を好適な範囲に制御することもできる。特に好適な充填材はカーボンブラックである。この場合、カーボンブラックの含有量は、好ましくは100重量部の樹脂に対して0.01〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部の範囲である。カーボンブラックの含有量がこの範囲より少ないと弾性率の制御が困難になる傾向があり、この範囲より多いとカーボンブラックによる潤滑効果が顕著になり、ファスナー部材を成形主体に連結する連結強度が低下する傾向がある。
【0064】
なお、前述した自動車用座席100への適用においては、クッション部材102は例えば、ポリプロピレングリコール等のポリオールと、トリレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと、アミン水溶液等の発泡剤、硬化促進剤等との混合物からなる発泡性樹脂材料から成形される。この混合物は、通常、使用直前に攪拌、混合してから型に注入し、注入後、25℃〜180℃の温度で発泡─硬化操作を行い、硬化させる。他方、カバー部材104に設けた対応係合要素108のループ高さは、例えば1mm〜10mm、好ましくは3mm〜4mmである。
【0065】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、型内にインサートとして配置したときのファスナー部材の基部の反りや撓みを確実に修正できるので、係合要素の係合機能を低下させたり、被着体の触感や外観を損なったりすることなく、成形主体の所定位置にファスナー部材を強固に固定することが可能となる。さらに本発明によれば、そのようなインサート成形用ファスナー部材を成形主体に容易に固定的に連結することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるファスナー部材の部分拡大斜視図である。
【図2】図1のファスナー部材の正面図である。
【図3】図1のファスナー部材の平面図である。
【図4】図3の線IV−IVに沿った横断方向断面図である。
【図5】図1のファスナー部材を型内にインサートとして配置した状態を示す横断方向断面図である。
【図6】図1のファスナー部材を型内にインサートとして配置した状態を示す長手方向断面図である。
【図7】図6の型に樹脂原液を注入した状態を示す横断方向断面図である。
【図8】インサート成形工程によりファスナー部材を表面に固定した成形主体の横断方向断面図である。
【図9】本発明に係るファスナー部材を適用可能な自動車用座席の斜視図である。
【図10】図9の線X−Xに沿った部分拡大断面図である。
【図11】本発明に係るファスナー部材に係合する被着体の対応係合要素を示す図で、(a)局部ループ部材を使用した場合の被着体裏面の部分拡大斜視図、及び(b)全面ループ部材を使用した場合の被着体の部分拡大斜視図、である。
【図12】被着体の対応係合要素に係合したファスナー部材を示す拡大断面図である。
【図13】薄肉延長部の変形実施形態を示す平面図である。
【図14】図12のファスナー部材の係合要素を示す部分拡大断面図である。
【図15】(a)〜(c)は、図1のファスナー部材の連結要素の変形例を示す部分拡大底面図である。
【図16】連結要素の変形実施形態を示す図で、(a)ファスナー部材の部分拡大斜視図、及び(b)線 XVI−XVI に沿った断面図、である。
【図17】連結要素の他の変形実施形態を示す図で、(a)ファスナー部材の部分拡大斜視図、及び(b)線XVII−XVIIに沿った断面図、である。
【図18】基部の変形実施形態を示す図で、(a)成形主体の型に配置したファスナー部材の長手方向断面図、及び(b)成形主体にインサート成形されたファスナー部材の長手方向断面図、である。
【符号の説明】
10…ファスナー部材
16…基部
18…係合要素
20、70、80…連結要素
22…第1縁
24…第2縁
26…薄肉延長部
34…長手部分
36…横断部分
44…支持凹部
46…型
50…長手側壁
54…棚壁
62…成形主体
72、82…脚部
74、84…アンカー部
102…クッション部材
104…カバー部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、主要面及び主要面の反対側の裏面を有する基部と、基部の主要面に設けられる複数の係合要素とを備えた対面係合式のファスナー部材に関し、特に、基部の裏面に設けられる連結要素をさらに備え、インサート成形工程により、成形主体に埋め込まれる連結要素を介して、成形主体の表面に係合要素を露出させた状態で成形主体に固定的に連結されるインサート成形用ファスナー部材に関する。本発明はさらに、そのようなインサート成形用ファスナー部材を成形主体に固定的に連結する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用座席、事務用又は家庭用の椅子、マットレス等の、種々の備品、家具類において、発泡性樹脂材料の成形体からなるクッション部材の表面に、布帛や皮革等からなるカバー部材を被着したものが知られている。この種の備品、家具類では、使用中にカバー部材が弛んだりずれたりしないように、カバー部材をクッション部材に強固に固着する必要がある。
【0003】
従来、例えば自動車用の座席においては、カバー部材をクッション部材に固着するために、ホグリングと称する環状金具や、平板状の基部の主要面に複数の係合要素を配設した対面係合式のファスナー部材(いわゆる面ファスナー)を使用していた。ホグリングは、1つ1つは固着強度に優れる利点を有するが、カバー部材の全体をクッション部材に実質的に密着させて外観を向上させるためには、多数のホグリングを使用しなければならず、固着作業が極めて煩雑でしかも熟練を要するという課題を有していた。
【0004】
これに対し、対面係合式のファスナー部材を用いる場合は、ファスナー部材をクッション部材の表面の所定位置に固定的に設置するとともに、ファスナー部材の係合要素群と係合可能な対応係合要素をカバー部材の裏面に形成し、クッション部材にカバー部材を被せた後に両係合要素を相互に押し付けて係合させることにより、比較的容易にカバー部材をクッション部材に固着することができる。この場合、ファスナー部材の形状や配置、並びに係合要素の形状や配置を工夫することにより、充分な固着強度及び密着性が得られる。
【0005】
このような目的で使用されるファスナー部材は、全体が樹脂材料から一体成形されるものや、布帛製又は樹脂製の基部に多数の樹脂製モノフィラメントを植設してなるものがあるが、いずれの場合もクッション部材へ基部を強固に固定する目的で、一般に基部の裏面に、クッション部材に埋込式に連結可能な連結要素を備える。そしてこのファスナー部材を、クッション部材の成形型内にインサートとして配置してクッション部材を成形することにより、クッション部材の表面に係合要素が露出した状態で、連結要素を介してクッション部材に固定的に連結することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成を有するファスナー部材は、座席等の備品の触感や外観を損なわないように、カバー部材の固着強度及び密着性を低下させない範囲で可及的に小形であることが所望される。特に自動車用座席では、着席者による荷重が座席上で頻繁に移動するので充分な固着強度が要求され、しかも疲労を軽減するために異物感を排除した高水準の安楽性を提供することが望まれるので、クッション部材の表面に設けた溝部やカバー部材の縫目に沿って配置可能な細長い帯形状を有したファスナー部材が有効に利用されている。
【0007】
他方、一般に対面係合式のファスナー部材は、係合要素や連結要素の基部からの突出長さに比べて基部の厚みが小さいので、基部に反りや撓みを生じ易い傾向がある。特に全体が樹脂材料から一体成形される構造の場合、押出成形工程や射出成形工程を経て製造されたファスナー部材は、基部の主要面側と裏面側とで、注入される樹脂量の差や係合要素と連結要素との形状及び配置の違い等により生じる収縮率の差異に起因して、成形後に基部の何れかの面を凸とする反りが生じる傾向がある。このような反りは、特にファスナー部材が細長い帯形状を有する場合、及び押出成形工程により成形された場合に、顕著に発生することが判っている。
【0008】
ところで、対面係合式のファスナー部材を前述したようなインサート成形工程によりクッション部材に固定する際には、クッション部材の型の成形空間内にファスナー部材の支持凹部を設け、この凹部に基部裏面の連結要素を成形空間に露出させてファスナー部材を配置する。このとき、ファスナー部材の係合要素群を凹部に挿入し、かつ基部周縁を凹部壁面に密接させて基部主要面側への発泡性樹脂原液の浸入を防止している。この状態で成形空間に発泡性樹脂原液を注入し、クッション部材を成形すると、ファスナー部材が連結要素を介してクッション部材に固定的に連結される。
【0009】
したがって、基部に反りを有したファスナー部材を、インサート成形工程によりクッション部材に固定しようとすると、ファスナー部材支持凹部に配置したファスナー部材の基部周縁と凹部壁面との間に隙間が形成され、成形空間に注入された樹脂原液がそのような隙間から基部主要面側へ浸入する危惧が生じる。基部主要面側へ浸入した樹脂原液は、係合要素群に絡まりつつ固化して、ファスナー部材の係合機能を低下させる。また、ファスナー部材が基部に反りを有したままでクッション部材に固定されると、ファスナー部材の係合要素群とカバー部材の対応係合要素との正確な相互係合が困難になってカバー部材の固着強度が劣化したり、カバー部材の固着部位にて触感や外観が損なわれたりする傾向がある。
【0010】
したがって本発明の目的は、インサート成形工程により成形主体に固定されるファスナー部材において、型内に配置したときの基部の反りや撓みを修正して、係合要素の係合機能を低下させたり、被着体の触感や外観を損なったりすることなく、成形主体の所定位置に強固に固定できるインサート成形用ファスナー部材を提供することにある。さらに本発明は、そのようなインサート成形用ファスナー部材を成形主体に容易に固定的に連結する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、主要面及び主要面の反対側の裏面を有する略平坦な帯形状の基部と、基部の主要面に設けられる複数の係合要素と、基部の裏面に設けられる連結要素とを具備し、インサート成形工程により、成形主体に埋め込まれる連結要素を介して、成形主体の表面に係合要素を露出させた状態で成形主体に固定的に連結されるインサート成形用ファスナー部材において、基部は、長手方向へ延びる一対の第1縁と第1縁より短く横断方向へ延びる一対の第2縁とを備え、それら第1縁には、基部より小さな厚みを有した弾性変形可能な薄肉延長部が、第1縁の略全長に亙って横断方向へそれぞれ延設されることを特徴とするインサート成形用ファスナー部材を提供する。
【0012】
さらに本発明は、上記インサート成形用ファスナー部材において、基部の一対の第2縁に、基部より小さな厚みを有した弾性変形可能な薄肉延長部が、第2縁の略全長に亙って長手方向へそれぞれ延設されてなるファスナー部材を提供する。
【0013】
さらに本発明は、上記インサート成形用ファスナー部材において、連結要素が、基部の長手方向に延びる長手部分と横断方向に延びる横断部分とを交互に備えて長手方向へ蛇行状に連続して裏面に突設される突条からなるファスナー部材を提供する。
【0014】
さらに本発明は、上記インサート成形用ファスナー部材において、突条の少なくとも一部分が、裏面との結合基端から先端の自由端へ向かって徐々に拡幅する形状を有するファスナー部材を提供する。
【0015】
さらに本発明は、上記インサート成形用ファスナー部材において、連結要素が、基部の長手方向へ直線状に連続して裏面に突設される突条からなり、この突条が、裏面から離れた自由端に、裏面との結合基端よりも大きな横断方向寸法を有したアンカー部を備えるファスナー部材を提供する。
【0016】
さらに本発明は、上記インサート成形用ファスナー部材を成形主体の表面に係合要素を露出させた状態で固定的に連結する方法であって、
a)ファスナー部材の基部を受容支持する第1部分と複数の係合要素を収容する第2部分とを備え、第1部分が、成形空間を画成する成形面の所定位置に開口する蟻溝形状を有し、蟻溝を画成する一対の対向傾斜側壁の間の最大間隔がファスナー部材の基部と薄肉延長部との合計横断方向寸法よりも小さく、第2部分が蟻溝の底部に凹設されて第2部分の開口を囲繞する略平坦な環状棚壁が第1部分に形成されてなるファスナー部材支持凹部を備えた成形主体の型を用意し、
b)ファスナー部材の複数の係合要素を支持凹部の第2部分に挿入するとともに、基部の薄肉延長部の各々の自由端を支持凹部の一対の傾斜側壁にそれぞれ当接してそれら薄肉延長部を弾性変形させつつ基部を第1部分に収容し、
c)薄肉延長部の弾性復元力によりファスナー部材の基部を支持凹部内で第2部分に向けて付勢し、それにより基部の主要面の周縁領域を支持凹部の棚壁に密接させて基部の撓曲を修正し、
d)型の成形空間に樹脂原液を注入して、支持凹部の第1部分に配置されたファスナー部材の連結要素を樹脂原液に没入させ、その状態で樹脂原液を固化させて成形主体を成形し、
e)成形主体及び成形主体に連結されたファスナー部材から型を脱離する、
各ステップを有した方法を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明をその好適な実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明の一実施形態によるインサート成形用のファスナー部材10を示す。ファスナー部材10は、樹脂材料の一体成形品からなる対面係合式のファスナー部材であり、略平坦でかつ相互に平行な主要面12及び裏面14を有する帯形状の基部16と、基部16の主要面12に所定の離間配置で立設される複数の係合要素18と、基部16の裏面14に突設される連結要素20とを備える。
【0018】
帯形状の基部16は、長手方向へ直線状にかつ相互に平行に延びる一対の第1縁22と、横断方向へ直線状にかつ相互に平行に第1縁22より短く延びる一対の第2縁24(1つの第2縁24のみ図示)とを備える。基部16の一対の第1縁22からは、基部16より小さな厚みを有した薄肉延長部26が、第1縁22の略全長に沿って横断方向へそれぞれ延設される。薄肉延長部26は、基部16の主要面12と同一面上に延長され、したがって基部16の裏面14側で第1縁22に段部28が形成される。
【0019】
薄肉延長部26は、ファスナー部材10の成形工程において、基部16の成形と同時に基部16と同一の樹脂材料から一体成形される。したがって、基部16より小さな厚みを有した薄肉延長部26は、基部16よりも容易に弾性変形可能となっている。この弾性変形は主に、基部16と薄肉延長部26との結合部位を支点とした薄肉延長部26の撓曲ないし揺動として生じる。なお薄肉延長部26の自由端26aは、基部16の第1縁22に対し略平行に直線状に延びる。
【0020】
複数の係合要素18は、ファスナー部材10の成形工程において、基部16の成形と同時に基部16と同一の樹脂材料から一体成形される。各係合要素18は、基部16の主要面12から略直立状に突出する脚部30と、脚部30の先端近傍にて側方へ突設される複数の係合片32とを備える。したがってファスナー部材10では、複数の係合要素18が先端の係合片32にて相手部材の対応係合要素に係合する。
【0021】
図3に示すように、複数の係合要素18は、基部16上で長手方向へ延びる略平行な2列に沿って、かつ各列間で各係合要素18の位置を長手方向への配置間隔の半分だけ相互にずらして、いわゆる千鳥状に整列配置される。このような配置は、帯形状のファスナー部材10において、可及的に少ない樹脂量で相手部材に対する充分な固着強度を確保でき、しかもファスナー部材10を成形する際の型抜きを容易にする点で有利である。
【0022】
連結要素20は、ファスナー部材10の成形工程において、基部16の成形と同時に基部16と同一の樹脂材料から一体成形される。図3に破線で示すように、連結要素20は、基部16の長手方向に延びる長手部分34と、基部16の横断方向に延びる横断部分36とを交互に備え、所定断面形状を有する突条として基部16の長手方向へ蛇行状に連続して形成される。図示実施形態では、長手部分34は基部16の第1縁22に略平行に配置され、横断部分36は基部16の第2縁24に対し僅かに傾斜して配置される。連結要素20は、後述するインサート成形工程により成形主体に埋め込まれ、それによりファスナー部材10を、成形主体の表面に複数の係合要素18を露出させた状態で成形主体に強固に固定的に連結する。
【0023】
基部16の裏面14に蛇行突条として形成される連結要素20は、成形主体に埋め込まれたときに、連結要素20と成形主体との接触面積を基部16の長手方向及び横断方向の両方向に同等かつ充分に確保することを可能にする。その結果、成形主体に連結されたファスナー部材10は、基部16をその第1縁22又は第2縁24を起点(すなわちきっかけ)として横断方向又は長手方向へ成形主体から捲り上げるように働く分離作用に抗して、連結要素20による強固な連結力のもとに成形主体の所定位置に保持される。
【0024】
連結要素20は、その連結力を向上させるために、少なくとも長手部分34及び横断部分36の一部分が、基部裏面14との結合基端から他端の自由端へ向かって徐々に拡幅する形状(図1及び図2参照)を有することが好ましい。このような形状によれば、連結要素20は成形主体内に楔状に埋め込まれるので、外力に抗してファスナー部材10を成形主体の所定位置にさらに強固に保持する。
【0025】
さらに、蛇行形状を有する連結要素20は、長手部分34と横断部分36とにおいて基部16の厚みを局部的に増大することにより、基部16の捩じれに対する剛性を高める作用も果たす。なお、連結要素20による連結力及び基部補強作用を充分に発揮させるためには、長手部分34及び横断部分36を基部16の裏面14の長手方向全長及び横断方向全長に亙って配置することが有利である。
【0026】
上記のような連結力及び基部補強作用を一層向上させるために、連結要素20はさらに、横断方向へ延びる第2横断部分38を選択的に備えることができる。第2横断部分38は、長手方向へ隣接する2つの横断部分36の間で、1つの長手部分34に略直角に交差して配置される。第2横断部分38は、例えば図1及び図2に示すように、角柱状脚部38aと脚部先端から膨出する円柱状頭部38bとを有することができる。
【0027】
上記構成を有するファスナー部材10は、樹脂材料から成形主体を成形する際に成形主体の型内にインサートとして配置され、それにより成形主体に強固に固定的に連結される。このインサート成形工程を、図5〜図8を参照して以下に説明する。
【0028】
まず準備ステップとして、成形空間40を画成する成形面42の所定位置に、ファスナー部材10を支持する支持凹部44を設けた成形主体の型46を用意する。支持凹部44は、ファスナー部材10の基部16の長手方向寸法dに略等しい長手方向寸法D1と、基部16と両薄肉延長部26とを合わせた横断方向寸法w1(図4)より小さい横断方向寸法W1とを有した略矩形の開口48を備える。また支持凹部44は、開口48から徐々に相互間隔を拡げて延びる略平坦な一対の長手傾斜側壁50、開口48から相互に平行に延びる略平坦な一対の横断側壁52、及びそれら側壁50、52に交差して同一面上で略矩形環状に延びる略平坦な棚壁54によって画成される第1部分44aと、棚壁54に交差する周壁56を有して第1部分44aからさらに凹設される第2部分44bとを備える。したがって図5に示すように、支持凹部44の第1部分44aは、横断方向断面において開口48から徐々に拡幅した蟻溝形状を有する。
【0029】
支持凹部44の第2部分44bは、ファスナー部材10の基部16の長手方向寸法dより小さい長手方向寸法D2と、基部16の横断方向寸法w2(図4)より小さい横断方向寸法W2とを有した略矩形の開口58を、棚壁54に隣接して備える。ファスナー部材10は、複数の係合要素18を支持凹部44の第2部分44bに挿入し、かつ基部16及び連結要素20を第1部分44aに収容して、基部裏面14を成形空間40に露出させた状態で型46内の所定位置に配置される。なお、第2部分44bは、ファスナー部材10の係合要素18が周壁56との摩擦や熱伝達等により損傷を受けないように、収容した複数の係合要素18に接触しないだけの広さを有することが望ましい。
【0030】
支持凹部44の一対の長手傾斜側壁50の間の最大間隔W3(すなわち長手側壁50と棚壁54との交差部において測った間隔)は、ファスナー部材10の基部16と両薄肉延長部26とを合わせた横断方向寸法w1に略等しいか僅かに小さく設定される。したがって、ファスナー部材10を支持凹部44内に配置すると、ファスナー部材10の両薄肉延長部26が弾性的に撓曲して、各薄肉延長部26の自由端26aが支持凹部44の各長手傾斜側壁50に密接支持される。このとき、両長手側壁50が開口48から凹部内奥へ向かって相互間隔を徐々に拡げるように傾斜しているので、ファスナー部材10の各薄肉延長部26は、棚壁54に向かって凸状に撓曲し、かつそれ自体の弾性復元力の反力として、各長手側壁50から棚壁54に接近する方向への力を受ける。この力により、ファスナー部材10の基部16は、支持凹部44の内奥すなわち第2部分44bへ向かって付勢される。
【0031】
支持凹部44の第2部分44bの開口58は、上記したようにファスナー部材10の基部16の主要面12よりも一回り小さい。したがって、両薄肉延長部26の弾性的撓曲によりファスナー部材10が第2部分44bへ向かって付勢されると、基部16の主要面12の第1縁22近傍の小幅領域12a(図5)及び第2縁24近傍の小幅領域12b(図6)が、支持凹部44の棚壁54に当接される。このようにして、支持凹部44の各長手側壁50から受ける付勢力により、基部16の主要面12がその周縁近傍の各領域12a、12bにて平坦な棚壁54に押し付けられるので、ファスナー部材10の成形時に生じていた基部16の反りや撓みが修正され、基部16の主要面12の周縁近傍領域12a、12bと棚壁54とが密接する。その状態で、ファスナー部材10が支持凹部44内に固定的に支持される。
【0032】
このようにしてファスナー部材10を支持凹部44内に支持した後、型46の成形空間40に例えば発泡性の樹脂原液60を注入する。このときファスナー部材10は、上記したように各薄肉延長部26の弾性復元力により支持凹部44内で固定的に保持されているので、第1部分44aに流入する樹脂原液60の流動圧力を受けても移動を生じない。しかも、各薄肉延長部26の自由端26aと各長手側壁50との密接、及び基部主要面12の周縁近傍領域12a、12bと棚壁54との密接により、樹脂原液60が支持凹部44の第2部分44bに浸入することは確実に防止される。その結果、樹脂片の混在によるファスナー部材10の係合要素18の係合機能の低下が回避される。
【0033】
樹脂原液60が固化して成形主体62が成形されると、ファスナー部材10は連結要素20を介して成形主体62に強固に固定される。その後、成形主体62から型46を脱離すると、基部16を平坦状に保持したファスナー部材10を、その係合要素18が露出した状態で表面の所定位置に固定した成形主体62が得られる。特に樹脂原液60が発泡性樹脂原液からなる場合、図8に示すようにファスナー部材10の基部16の各薄肉延長部26はそれ自体の弾性復元力により基部主要面12に平行な原形に復帰し、ファスナー部材10の基部16の平坦性が一層向上する。基部16を平坦状に保持したこのようなファスナー部材10は、成形主体62に被着される被着体(図示せず)の対応係合要素にファスナー部材10の複数の係合要素18を正確に係合させることを可能にするので、被着体の固着強度を向上させることができる。しかもこのとき、成形主体62への被着体の固着部位にて、被着体の触感や外観を些かも損なうことがない。
【0034】
なお、型46の支持凹部44において各長手側壁50と棚壁54との成す角度αは、例えば80°以上90°未満、好ましくは85°〜88°の範囲で設定される。この角度αが上記範囲より小さいと、成形主体62から型46を脱離する際にファスナー部材10との連結部位で成形主体62が損傷したり、長手側壁50にファスナー部材10が衝突してファスナー部材10が成形主体62から分離したりする傾向がある。他方、角度αが90°以上では、ファスナー部材10の基部16に支持凹部44の第2部分44bへ向けて及ぼす弾性的付勢力が得られなくなる。
【0035】
また、支持凹部44の第2部分44bの開口58は、ファスナー部材10の基部16の横断方向寸法w2に略等しいか僅かに大きい横断方向寸法W2を有していてもよい。この場合、ファスナー部材10の各薄肉延長部26の弾性的付勢作用により、各薄肉延長部26の基部16との結合基端近傍領域が支持凹部44の棚壁54に密接されることになるが、それによっても基部16の反りや撓みを修正することは可能である。さらに、支持凹部44の第1部分44aの長手方向寸法D1は、図6に示すようにファスナー部材10の基部16の長手方向寸法dより僅かに大きく設定することができる。それにより、各薄肉延長部26を弾性変形させつつファスナー部材10を支持凹部44内に挿入する作業が容易になる。
【0036】
上記構成を有するファスナー部材10は、例えば図9に示す自動車用座席100において、発泡性樹脂材料の成形体からなるクッション部材102の表面に、布帛や皮革等からなるカバー部材104を被着する際の、カバー部材104の固着手段として特に好適に使用される。この場合、ファスナー部材10は、前述したインサート成形工程により、クッション部材102の成形時にクッション部材102の表面の所定位置に固定的に連結される。なお、自動車用座席100へのこのような適用では、着席者に異物感を与えないように、図10に示すようにクッション部材102の所定位置に設けられる溝106内にファスナー部材10を配置することが望ましい。そのためには、図5に示す型46において、支持凹部44を設けるために成形面42から所定高さに突設した突部64の突出高さを、さらに増加させればよい。しかしながら、ファスナー部材10の適用によっては、このような突部を介さずに支持凹部44を型46の成形面42に直接に凹設することもできる。
【0037】
上記した自動車用座席100への適用において、カバー部材104の裏面(クッション部材102との接触面)には、ファスナー部材10の複数の係合要素18と係合する対応係合要素108が設けられる。対応係合要素108は、例えば図11(a)に示すように、カバー部材104の裏面の所定位置に縫着されたループ材110からなる。或いは図11(b)に示すように、カバー部材104の裏面の全体にループ材112を被着することもできる。いずれの場合も、図示のようにカバー部材104を部分的に撓曲縫合してリブ部分114を形成し、このリブ部分114に配置されるループ材110、112を、ファスナー部材10の基部16上で2列に並ぶ係合要素18群の各列間に挿入すれば、各係合要素18の係合片32が容易にループ材110、112に係合し、強固な固着力が得られるので有利である(図12参照)。
【0038】
このように、自動車用座席100へ適用した場合は、クッション部材102に連結されたファスナー部材10の基部16が平坦状に保持されているので、カバー部材104の対応係合要素108にファスナー部材10の複数の係合要素18を正確に係合させることが可能になり、カバー部材104がクッション部材102に強固に固着される。しかも、クッション部材102へのカバー部材104の固着部位にて、カバー部材104の触感や外観を些かも損なうことがないので、着席者に高水準の安楽性を提供するとともに高品質感を与えることができる。
【0039】
本発明に係るインサート成形用ファスナー部材は、様々な形状及び寸法を有することができる。
例えば上記実施形態において、ファスナー部材10の基部16は、被着体の固着強度や成形主体への密着性を低下させない範囲で、被着体の触感や外観を損なわないように可及的に小形であることが望ましく、したがって横断方向寸法より大きな長手方向寸法を有する細長い帯形状とされる。基部16の長手方向寸法dは、例えば50mm〜500mmである。また基部16の横断方向寸法w2は、例えば3mm〜30mm、好ましくは4mm〜10mmである。これらの寸法d、w2が上記範囲より小さいと、被着体を強固に固着することが困難となり、上記範囲より大きいと、基部16の反りや撓みが修正困難なほど顕著になる傾向がある。さらに、基部16の厚みt1(主要面12と裏面14との間の距離)は、例えば0.5mm〜5mm、好ましくは1mm〜3mmである。厚みt1が上記範囲より小さいと、基部16の反りや撓みが修正困難なほど顕著になり、上記範囲より大きいと、被着体の触感や外観を損なう傾向がある。
【0040】
基部16の薄肉延長部26は、基部16の反りや撓みを全体に亙って確実に修正するために、基部16の第1縁22の略全長に沿って設けられることが有利である。薄肉延長部26の横断方向寸法eは、例えば1mm〜10mm、好ましくは1.2mm〜3mmである。横断方向寸法eが上記範囲より小さいと、薄肉延長部26の弾性変形が困難となって基部16の反りの修正機能が低下し、上記範囲より大きいと、基部16への弾性的付勢力が低下したり、支持凹部44内への配置が困難となったりする傾向がある。薄肉延長部26の厚みt2は、例えば0.2mm〜3mm、好ましくは0.3mm〜1mmである。厚みt2が上記範囲より小さいと、基部16への弾性的付勢力が低下し、また支持凹部44内への配置時に損傷し、上記範囲より大きいと、薄肉延長部26の弾性変形が困難となって基部16の反りの修正機能が低下する傾向がある。
【0041】
基部16の薄肉延長部26は、インサート成形工程において型46の支持凹部44への基部16の挿入配置を容易にするために、図13に示すように、長手方向へ鋸歯状に延びる自由端26aを備えることができる。あるいは薄肉延長部26は、正弦波状又は矩形波状の自由端26aを備えてもよい。このような構成によれば、薄肉延長部26の自由端26aと支持凹部44の長手傾斜側壁50との接触長さが、図1の実施形態の場合に比べて減少するので、支持凹部44に基部16を挿入するに要する力が低減される。この作用効果は、基部16の長手方向寸法が増加するほど有利なものとなり、作業者の労力負担を軽減する。なおこの場合、基部16への弾性的付勢力の低下による基部16の反りの修正機能の劣化が生じない範囲で、薄肉延長部26の形状を決定することが望まれる。
【0042】
さらに基部16は、横断方向へ延びる一対の第2縁24にも、基部16より小さな厚みを有した弾性変形可能な薄肉延長部(図示せず)を設けることができる。この薄肉延長部は、第2縁24の略全長に亙って第2縁24から長手方向へ延設されることにより、第1縁22の薄肉延長部26と同様に、インサート成形工程において型46の支持凹部44へ基部16を挿入する際に弾性変形し、基部16の反りを修正して基部主要面12の周縁近傍領域を棚壁54に密着させる作用を促進する。
【0043】
係合要素18は、図1に示す矢尻状頭部を有する突子形状の他に、半球状、球状、錐体状又は笠状の頭部を有する茸形や、フック形、ループ形、傘形、椰子の木形、等の多様な突子形状を有することができる。或いは係合要素として、舌(tongue)と溝(groove)との組合せ構造や、米国特許第 4,875,259号に開示されるような錐体又は円錐台状の噛合可能な先細り支柱群を適用することもできる。例えば図1及び図14に示す矢尻状頭部を有する係合要素18では、基部主要面12からの突出高さh1は、例えば1mm〜8mm、好ましくは3mm〜6mmである。高さh1が上記範囲より小さいと、係合要素18の係合機能が低下し、上記範囲より大きいと、被着体の触感や外観を損なう傾向がある。また、係合要素18の対向係合片32の先端間距離rは、例えば0.5mm〜2mm、脚部30の太さsは、例えば0.5mm〜2mm、脚部30の長さh2は、例えば1mm〜5mmである。さらに、基部主要面12上での係合要素18の立設密度は、例えば10本/cm2 〜100本/cm2 、好ましくは25本/cm2 〜60本/cm2 である。
【0044】
複数の係合要素18は、図3に示すような基部16上で長手方向に沿った2列に並ぶ千鳥状配置に限らず、各列間で横断方向へ重畳する並列配置とすることもできる。また、千鳥状配置及び並列配置のいずれも、長手方向に沿った3列以上の配置とすることができる。このように、複数の係合要素の配置を適宜選択すれば、本発明に係るインサート成形用ファスナー部材と相手部材とを対面状態で1つだけ又は複数の相対回転位置に配置した状態での、両部材の相互係合を可能にすることもできる。ところで、ファスナー部材10は、その成形時に生じる基部16の反りや撓みを可及的に低減するために、射出成形工程によって製造することが望まれるが、その場合、2列以上の並列配置では、成形型の脱離が困難となる。そのような場合には、米国特許第5,242,646号に開示される脚部型のような破壊的に脱離可能な型を使用した射出成形工程によって、基部、係合要素、及び連結要素を、樹脂材料から一体的に形成する方法が有利である。
【0045】
なお、本発明に係るファスナー部材は、このように基部と係合要素とが同一の樹脂材料から一体成形されるもの(「スーパーデュアルロック」(3M社の商標名)として知られている)だけでなく、例えばプラスチック製の基部と基部に植設される複数の樹脂製モノフィラメントからなる係合要素とを備えたもの(「デュアルロック」(3M社の商標名)として知られている)にも適用できる。また係合要素として、フックアンドループ式ファスナー(「スコッチメイト」(3M社の商標名)として知られている)に用いられるフック又はループを採用することもできる。
【0046】
連結要素20は、基部16を横断方向又は長手方向へ成形主体から捲り上げるように働く分離作用に抵抗するとともに、基部16の捩じれに対する剛性を高めるために、長手部分34と横断部分36とを備えることが好ましい。この場合、連結要素20は、図3に示す蛇行突条の形状に限らず、例えば図15(a)の長手部分34と横断部分36とのみからなる蛇行突条20a、図15(b)の長手部分34に溝を有する分離形蛇行突条20b、図15(c)の分離形T字突条20c、等の形状を採用できる。これらいずれの形状も、ファスナー部材10の成形時の型の脱離を容易にするとともに、インサート成形時の成形主体の樹脂原液を、空気を基部横断方向へ追い出しつつ連結要素20の表面の隅々まで容易に行き渡らせるので、ファスナー部材10と成形主体との連結強度を向上させることができる。
【0047】
連結要素20の基部裏面14からの突出高さcは、例えば1mm〜20mmである。また、ファスナー部材10と成形主体との連結強度を向上させる図1の楔形状の連結要素20において、基部裏面14と連結要素20の傾斜側面との成す角度は、例えば5°〜30°である。さらに、ファスナー部材10と成形主体との連結強度を一層向上させるために、連結要素20に加えて、例えば係合要素18と同様の突子形状を有する2次連結要素(図示せず)を選択的に追加することもできる。基部16に対して垂直方向へ働く引抜き力に対する連結強度は、例えば5kg以上であり、基部16に対して第1縁22から捲り上げるように作用する剥離力に対する連結強度は、例えば2kg以上である(いずれも基部16の寸法がd=50cm、w2=8mmの場合)。
【0048】
ところで、前述したように、図1のファスナー部材10における連結要素20は、蛇行状に延びる長手部分34と横断部分36とを備えることにより、基部16の捩じれに対する剛性を高める作用を果たす。それと共に、蛇行形状の連結要素20は、主要面12に平行な方向(以下、水平方向と称する)への基部16の撓曲に対し、高い剛性を発揮することが判っている。したがってファスナー部材10は、成形主体に直線状に連結される用途には適しているが、水平方向へ基部16を撓曲した状態で成形主体に連結することが要求される場合には、適用が困難である。このような適用としては、例えば着席者の体形に沿う立体形状を有するバケットシート形式の自動車用座席において、クッション形状に合わせて立体縫製されたカバー部材の曲線状に延びる縫目に沿ってファスナー部材を配置する場合が挙げられる。図16〜図18は、このような場合にファスナー部材の適用を可能にする連結要素の幾つかの変形実施形態を示す。
【0049】
図16に示す変形実施形態による連結要素70は、基部16と同一の樹脂材料から一体成形され、基部16の長手方向へ直線状に連続して裏面14に突設される突条からなる。この突条は、基端で裏面14の横断方向略中央に結合される薄板状の脚部72を備える。脚部72は、全体に略均一な厚み(横断方向寸法)を有し、裏面14の長手方向へ延びる中心線に沿って略直立状に配置される。さらに、裏面14から離れた側の脚部72の自由端には、脚部72の横断方向両側に、基部16に略平行に延びる薄板状のアンカー部74が形成される。アンカー部74は、全体に略均一な厚みを有し、基部16と両薄肉延長部26とを合わせた横断方向寸法w1に略等しい横断方向寸法を有する。
【0050】
このような構成を有する連結要素70は、材料強度的に平衡した基部16とアンカー部74とが脚部72により所定間隔を開けて結合されているので、基部16を水平方向へ撓曲する際に、応力が基部16とアンカー部74とに略均等に分散して加わる。しかも脚部72は、それ自体、基部16の水平方向への撓曲を妨げない。その結果、基部16は、捩じれたり波状に撓んだりすることなく、水平方向へ容易に撓曲できるようになる。したがって連結要素70を備えたファスナー部材は、例えばバケットシート形式の自動車用座席において、クッション部材の曲線状に延びる溝に容易にインサート成形でき、しかも立体縫製カバー部材の曲線状縫目の対応係合要素に強固に係合してカバー部材をクッション部材に密着させ、機能性及び意匠性を向上させることができる。また、成形主体の形状に関わらず、人体(例えば着席者)に触れないか又は触れる頻度の少ない位置にファスナー部材を撓曲して設置できるので、使用時の被着体(例えばカバー部材)の触感を損なわずに、充分なファスナー機能を発揮できる。なお連結要素70は、インサート成形工程により成形主体に埋め込まれたときに、アンカー部74が成形主体に楔状に食い込んで強固な連結力を発揮することは言うまでもない。
【0051】
連結要素70は、基部16と両薄肉延長部26とを合わせた横断方向寸法w1、基部16と連結要素70とを合わせた高さp、及びアンカー部74の横断方向寸法yが互いに略等しいときに、特に基部16の水平方向への撓曲を容易にする。この場合、撓曲半径に関して内側に脚部72をずらして配置する(すなわち図16(b)のH状断面をコ状断面に修正する)と、さらに撓曲が容易になる。しかしながらそのような構成では、インサート成形時に作業者が脚部72の位置を確認しつつ型内に配置しなければならない煩雑さが生じる。また、水平方向へS状に蛇行撓曲させることも考慮すれば、やはり図示のように裏面14の横断方向略中央に脚部72を配置することが好ましい。
【0052】
連結要素70においては、図16(a)に示すように、アンカー部74に長手方向へ所定間隔を開けて複数のスリット76を設けることができる。このような構成によれば、インサート成形時に、成形主体がアンカー部74のスリット76に侵入した状態で固化するので、ファスナー部材を成形主体に連結する連結力をさらに高めることができる。特にスリット76は、成形主体を侵入させることにより、基部16をその第2縁24を起点として長手方向へ成形主体から捲り上げるように働く分離力に抗して、アンカー部74を成形主体に強固に掛止するように作用する。このような観点では、基部16を長手方向へ捲り上げる起点となり得る第2縁24に隣接して、少なくとも1つのスリット76を設ければよい。
【0053】
スリット76はさらに、主要面12を凹面にすべく基部16を主要面12に直交する方向(以下、垂直方向と称する)へ撓曲することを容易にする作用も果たす。この作用により、連結要素70を備えたファスナー部材は、特に車両用座席のクッション部材の表面の多様な三次元曲面部分に設置でき、カバー部材の固着部位を所望位置に設定できるので、座席デザインの自由度が広がる利点がある。なおこのような観点では、スリット76の個数を増やし、また脚部72にもスリット76を連続して形成することが有利である。しかしながらその場合、基部16を水平方向へ撓曲する際の応力の平衡/分散効果が薄れ、水平方向への撓曲が困難になる傾向がある。したがって、要求される撓曲方向に対応して、スリット76の形状及び個数を選択することが望ましい。
【0054】
スリット76の長手方向寸法xは、水平方向への撓曲を容易にする観点では可及的に小さいことが望ましいが、xが小さすぎると成形主体を侵入させることが困難となり、基部16を長手方向へ成形主体から捲り上げるように働く分離作用に対する抵抗力が低下する危惧が生じる。したがってスリット76は、図示のようにxが脚部72に隣接する部位で可及的に小さく、アンカー部74の先端に向かって徐々に拡大されるような形状を有することが好ましい。
【0055】
図17に示す変形実施形態による連結要素80は、基部16と同一の樹脂材料から一体成形され、基部16の長手方向へ直線状に連続して裏面14に突設される突条からなる。この突条は、基端で裏面14の横断方向略中央に結合される薄板状の脚部82を備える。脚部82は、裏面14との結合基端から先端の自由端に向かって徐々に拡大される厚み(横断方向寸法)を有し、自由端の最大横断方向寸法を有する領域がアンカー部84として作用する。
【0056】
連結要素80は、裏面14から離れた先端の自由端に、裏面14との結合基端よりも大きな横断方向寸法を有したアンカー部84を備えることにより、図16の連結要素70と同様に、基部16を水平方向へ撓曲する際の応力を基部16とアンカー部74とに分散して加えることができ、その結果、基部16の水平方向への撓曲を容易にすることができる。しかしながら連結要素80では、アンカー部84すなわち脚部82の最大横断方向寸法qが、基部16と両薄肉延長部26とを合わせた横断方向寸法w1よりも小さいので、連結要素70に比べると基部16の水平方向への撓曲を容易にする作用は劣る。
【0057】
連結要素80においては、脚部82の自由端近傍に脚部82を横断方向へ貫通する複数の貫通孔86を長手方向へ所定間隔を開けて設けることができる。このような構成によれば、インサート成形時に、成形主体が貫通孔86に侵入した状態で固化するので、ファスナー部材を成形主体に連結する連結力をさらに高めることができる。特に貫通孔86は、成形主体を侵入させることにより、基部16をその第2縁24を起点として長手方向へ成形主体から捲り上げるように働く分離力に抗して、脚部82を成形主体に強固に掛止するように作用する。なお貫通孔86の寸法は、脚部82の機械的強度を著しくは低下させない範囲で決定することが望ましい。
【0058】
例として、基部16を水平方向へ100mm以上の曲率半径で撓曲させることを想定した場合の、上記各変形実施態様における好適な寸法を以下に列記する。基部16の厚みt1=0.5mm〜3mm。基部16と両薄肉延長部26とを合わせた横断方向寸法w1=4mm〜20mm。基部16と連結要素70(80)とを合わせた高さp=4mm〜20mm。脚部72(82)の最大横断方向寸法q=0.5mm〜5mm。アンカー部74の厚みs=0.5mm〜3mm。アンカー部74の横断方向寸法y=2.5mm〜20mm。スリット76の最大長手方向寸法x=0.5mm〜5mm。スリット76により分割されたアンカー部74の最大長手方向寸法z=5mm〜50mm。スリット76の個数(長手方向10cm当り)=1個〜20個。なお、同様の寸法範囲で、前述したように薄肉延長部26の自由端26aを波状又は鋸歯状に形成した場合には、基部16を水平方向へ50mm以上の曲率半径で撓曲できる。
【0059】
本発明に係るファスナー部材は、帯状であるので、上記説明にて検討した通り、成形主体にインサート成形した後に基部をその第2縁を起点として長手方向へ成形主体から捲り上げるように働く分離力に抗して基部を成形主体に強固に掛止できることが所望される。このような機能を付与するために、例えば図1、図16及び図17に示す各実施形態において、図18に示すように、基部16のみを第2縁24の近傍で長手方向へ延長することができる。この場合、成形主体の型46の成形面42から所定高さの位置に支持凹部44を設けるとともに、支持凹部44を画成する横断側壁52(図6)を省略して棚壁54を支持凹部44の外側に連通させ、図示のように基部16の長手延長部16aを棚壁54で支持しつつ支持凹部44の外側に延長させた状態で、ファスナー部材を型46に配置する(図18(a))。この状態でインサート成形を行えば、図18(b)に示すように、基部16の長手延長部16aが成形主体62に埋め込まれるので、基部16をその第2縁24を起点として長手方向へ成形主体62から捲り上げるように働く分離力に抗して、基部16が成形主体62に強固に掛止される。
【0060】
また、本発明に係るファスナー部材は、上記各実施例に記載したようなファスナー部材(便宜的に単体ファスナー部材と称する)を2本又はそれ以上の本数だけ長手方向へ結合してなるものを含む。このような結合形ファスナー部材は、複数の単体ファスナー部材同士を、基部の横断方向寸法より小さな横断方向寸法を有した撓曲自在な結合要素(ジョイント)により結合して、好ましくは一体的に成形される。したがって結合形ファスナー部材は、複数の単体ファスナー部材を成形主体上の比較的近接した複数箇所に取付ける際に、各単体ファスナー部材の位置決めを容易にし、作業性を向上させる効果を奏する。
【0061】
好ましくは結合要素は、基部と同じ材料から基部に同一厚みに一体成形され、基部同士を相互に結合する。このような構成の結合要素は、基部よりも小さな横断方向寸法を付与することにより、基部よりも容易に撓曲可能となる。また結合要素として、針金等の可撓性金属材料からなる線材又は細帯材を使用し、インサート成形法により各単体ファスナー部材に一体的に組込むこともできる。さらに結合要素は、結合形ファスナー部材を成形主体にインサート成形する際に、成形主体に埋め込まれる形状でもよいが、結合要素自体にも前述した連結要素を設けて、その連結要素により結合要素が成形主体に固定的に連結される構成が好ましい。成形主体上での各単体ファスナー部材の相対配置は任意であるが、作業性を考慮した場合、結合要素の長手方向寸法は好ましくは5mm〜100mmの範囲で設定される。
【0062】
本発明に係るファスナー部材は、様々な材料から形成することができる。特に、基部の薄肉延長部の弾性変形により基部に適当な付勢力を及ぼすために、薄肉延長部の曲げ弾性率が好ましくは9800N/cm2 〜245000N/cm2 、特に好ましくは49000N/cm2 〜196000N/cm2 の範囲にあることが要求される。このような曲げ弾性率を達成するために、ファスナー部材の好適な材料として、ポリアミド(6−ナイロン(商標)、6,6−ナイロン(商標)等)、ポリプロピレン、ポリエチレン、アイオノマー、ポリアセタール、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリアリレートが挙げられる。このうち特に好適な材料は、6−ナイロン(商標)、6,6−ナイロン(商標)、ポリプロピレンである。
【0063】
またこのような樹脂材料に、カーボンブラック、グラスファイバー、酸化チタン、酸化鉄等の充填材を添加して、曲げ弾性率を好適な範囲に制御することもできる。特に好適な充填材はカーボンブラックである。この場合、カーボンブラックの含有量は、好ましくは100重量部の樹脂に対して0.01〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部の範囲である。カーボンブラックの含有量がこの範囲より少ないと弾性率の制御が困難になる傾向があり、この範囲より多いとカーボンブラックによる潤滑効果が顕著になり、ファスナー部材を成形主体に連結する連結強度が低下する傾向がある。
【0064】
なお、前述した自動車用座席100への適用においては、クッション部材102は例えば、ポリプロピレングリコール等のポリオールと、トリレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと、アミン水溶液等の発泡剤、硬化促進剤等との混合物からなる発泡性樹脂材料から成形される。この混合物は、通常、使用直前に攪拌、混合してから型に注入し、注入後、25℃〜180℃の温度で発泡─硬化操作を行い、硬化させる。他方、カバー部材104に設けた対応係合要素108のループ高さは、例えば1mm〜10mm、好ましくは3mm〜4mmである。
【0065】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、型内にインサートとして配置したときのファスナー部材の基部の反りや撓みを確実に修正できるので、係合要素の係合機能を低下させたり、被着体の触感や外観を損なったりすることなく、成形主体の所定位置にファスナー部材を強固に固定することが可能となる。さらに本発明によれば、そのようなインサート成形用ファスナー部材を成形主体に容易に固定的に連結することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるファスナー部材の部分拡大斜視図である。
【図2】図1のファスナー部材の正面図である。
【図3】図1のファスナー部材の平面図である。
【図4】図3の線IV−IVに沿った横断方向断面図である。
【図5】図1のファスナー部材を型内にインサートとして配置した状態を示す横断方向断面図である。
【図6】図1のファスナー部材を型内にインサートとして配置した状態を示す長手方向断面図である。
【図7】図6の型に樹脂原液を注入した状態を示す横断方向断面図である。
【図8】インサート成形工程によりファスナー部材を表面に固定した成形主体の横断方向断面図である。
【図9】本発明に係るファスナー部材を適用可能な自動車用座席の斜視図である。
【図10】図9の線X−Xに沿った部分拡大断面図である。
【図11】本発明に係るファスナー部材に係合する被着体の対応係合要素を示す図で、(a)局部ループ部材を使用した場合の被着体裏面の部分拡大斜視図、及び(b)全面ループ部材を使用した場合の被着体の部分拡大斜視図、である。
【図12】被着体の対応係合要素に係合したファスナー部材を示す拡大断面図である。
【図13】薄肉延長部の変形実施形態を示す平面図である。
【図14】図12のファスナー部材の係合要素を示す部分拡大断面図である。
【図15】(a)〜(c)は、図1のファスナー部材の連結要素の変形例を示す部分拡大底面図である。
【図16】連結要素の変形実施形態を示す図で、(a)ファスナー部材の部分拡大斜視図、及び(b)線 XVI−XVI に沿った断面図、である。
【図17】連結要素の他の変形実施形態を示す図で、(a)ファスナー部材の部分拡大斜視図、及び(b)線XVII−XVIIに沿った断面図、である。
【図18】基部の変形実施形態を示す図で、(a)成形主体の型に配置したファスナー部材の長手方向断面図、及び(b)成形主体にインサート成形されたファスナー部材の長手方向断面図、である。
【符号の説明】
10…ファスナー部材
16…基部
18…係合要素
20、70、80…連結要素
22…第1縁
24…第2縁
26…薄肉延長部
34…長手部分
36…横断部分
44…支持凹部
46…型
50…長手側壁
54…棚壁
62…成形主体
72、82…脚部
74、84…アンカー部
102…クッション部材
104…カバー部材
Claims (6)
- 主要面及び該主要面の反対側の裏面を有する略平坦な帯形状の基部と、該基部の該主要面に設けられる複数の係合要素と、該基部の該裏面に設けられる連結要素とを具備し、インサート成形工程により、成形主体に埋め込まれる該連結要素を介して、該成形主体の表面に該係合要素を露出させた状態で該成形主体に固定的に連結されるインサート成形用ファスナー部材において、
前記基部は、長手方向へ延びる一対の第1縁と該第1縁より短く横断方向へ延びる一対の第2縁とを備え、それら第1縁には、該基部より小さな厚みを有した弾性変形可能な薄肉延長部が、該第1縁の略全長に亙って前記横断方向へそれぞれ延設されることを特徴とするインサート成形用ファスナー部材。 - 前記基部の前記一対の第2縁に、該基部より小さな厚みを有した弾性変形可能な薄肉延長部が、該第2縁の略全長に亙って前記長手方向へそれぞれ延設される請求項1に記載のインサート成形用ファスナー部材。
- 前記連結要素が、前記基部の前記長手方向に延びる長手部分と前記横断方向に延びる横断部分とを交互に備えて該長手方向へ蛇行状に連続して前記裏面に突設される突条からなる請求項1又は2に記載のインサート成形用ファスナー部材。
- 前記突条の少なくとも一部分が、前記裏面との結合基端から先端の自由端へ向かって徐々に拡幅する形状を有する請求項3に記載のインサート成形用ファスナー部材。
- 前記連結要素が、前記基部の前記長手方向へ直線状に連続して前記裏面に突設される突条からなり、該突条が、該裏面から離れた自由端に、該裏面との結合基端よりも大きな横断方向寸法を有したアンカー部を備える請求項1又は2に記載のインサート成形用ファスナー部材。
- 請求項1に記載のインサート成形用ファスナー部材を成形主体の表面に前記係合要素を露出させた状態で固定的に連結する方法であって、
a)前記ファスナー部材の前記基部を受容支持する第1部分と前記複数の係合要素を収容する第2部分とを備え、該第1部分が、成形空間を画成する成形面の所定位置に開口する蟻溝形状を有し、該蟻溝を画成する一対の対向傾斜側壁の間の最大間隔が前記ファスナー部材の前記基部と前記薄肉延長部との合計横断方向寸法よりも小さく、該第2部分が該蟻溝の底部に凹設されて該第2部分の開口を囲繞する略平坦な環状棚壁が該第1部分に形成されてなるファスナー部材支持凹部を備えた成形主体の型を用意し、
b)前記ファスナー部材の前記複数の係合要素を前記支持凹部の前記第2部分に挿入するとともに、前記基部の前記薄肉延長部の各々の自由端を前記支持凹部の前記一対の傾斜側壁にそれぞれ当接してそれら薄肉延長部を弾性変形させつつ該基部を前記第1部分に収容し、
c)前記薄肉延長部の弾性復元力により前記ファスナー部材の前記基部を前記支持凹部内で前記第2部分に向けて付勢し、それにより該基部の前記主要面の周縁領域を該支持凹部の前記棚壁に密接させて該基部の撓曲を修正し、
d)前記型の前記成形空間に樹脂原液を注入して、前記支持凹部の前記第1部分に配置された前記ファスナー部材の前記連結要素を該樹脂原液に没入させ、その状態で該樹脂原液を固化させて成形主体を成形し、
e)前記成形主体及び該成形主体に連結された前記ファスナー部材から前記型を脱離する、
各ステップを有したことを特徴とする方法。
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