JP2524440B2 - 食物保存用容器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、食物保存用容器に関す
るものであり、特に、食物を入れて施蓋し、電子レンジ
等の加熱装置により加熱後、常温域に取出し、自然冷却
することにより、逆止弁により真空状態を維持できる食
物保存用容器に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、食物の保存用容器としては、単に
ゴムパッキング付きの密閉蓋を有するガラス瓶か、また
は蒸気加熱後通孔を鑞づけ封入する缶詰の類しかなく、
前者は長期の保存には不適当で、また後者は設備が大規
模で一般の家庭用には適さなかった。このため、一般家
庭で簡単に使用できる食物保存用容器の開発が望まれて
いた。

【０００３】従来のこの種の食物保存用容器に関する技
術として、実公昭２７−８７９５号公報に掲載の技術を
挙げることができる。これは、真空食品貯蔵容器に関す
るものであり、上面に真空調節弁を組付けた蓋を器体の
上部開口部の鍔縁上にパッキングを介して載置し、該蓋
を器体の上部に締付環体を螺合することにより締付けて
使用するものである。したがって、この真空食品貯蔵容
器には各種の多数の部品が用いられており、極めて複雑
な構造となっている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、近年、一般家
庭への電子レンジ等の簡易な加熱装置の普及に伴ない、
食品の調理、加熱等に．用できるとともに、その食品を
そのまま長期間保存できる簡易な食物保存用容器が求め
られるようになってきた。

【０００５】一方、実開昭５６−１１３６６７号公報に
は、容器、その蓋、その空気孔、ツマミ、リング状パッ
キング、合成樹脂フィルム等により、加熱殺菌した食品
を密閉して長く保存できるようにした密閉食品保存容器
に関する技術が開示されている。しかし、この技術は食
品からガス等が発生すると、ガス圧で蓋を持上げたり、
或いは急激にガスが発生すると、ガス圧に絶えられず爆
発が発生する危険性があった。また、シール性は合成樹
脂フィルムと容器との密着性によって得られるものであ
るから、合成樹脂フィルムに高級なものが必要となり高
価となる。

【０００６】また、実開昭５８−１２６９７０号公報に
は、円形または多角形のものに適宜大きさの空気孔を設
け、かつ、その周囲に凸部を設けると共に、前記空気孔
面上に弁を設けて容器内の食品を保存または食品、汁、
水分等が漏れないように真空にできる食品用の弁付蓋に
関する技術が開示されている。しかし、この技術は前記
空気孔面上の弁の位置からポンプによって排気を行うも
のであり、仮蓋のように一時的に密閉する場合であれば
よいが、食品の振動によって生じるガス或いは食品から
発生するガス、温度上昇による内部圧力の上昇、冷蔵庫
に入れたときに自然に蓋が解放される可能性が大であ
り、安定性が問題となる。

【０００７】そこで、本発明は、家庭において調理され
た惣菜や料理等の食品を、電子レンジ等の簡単な装置と
簡単な操作により長期間保存でき、かつ、電子レンジで
繰返し再使用でき、安定な食物保存用容器の提供を課題
とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明にかかる食物保存
用容器は、陶器、磁器、耐熱ガラスまたは耐熱合成樹脂
等の耐熱性の誘電体からなる容器本体の開口部に着脱自
在に施蓋可能な陶器、磁器、耐熱ガラスまたは耐熱合成
樹脂等の耐熱性の誘電体からなる蓋体に、所定の弾性を
有し基部と先端部が薄肉厚の舌片部とで略コ字状の断面
をなす耐熱性の二重パッキングを装着し、施蓋時に前記
蓋体の突出部と容器本体の内周面との間に形成される環
状の溝内に前記舌片部により環状の密閉部が形成される
とともに、前記蓋体のフランジ部に位置する二重パッキ
ングの基部が容器本体の開口部上面に密着するものであ
る。

【０００９】

【作用】本発明の食物保存用容器においては、耐熱性の
誘電体からなる容器本体の開口部に着脱自在に施蓋がで
きる耐熱性の誘電体からなる蓋体に、所定の弾性を有し
略コ字状の断面をなす耐熱性の二重パッキングを装着
し、この二重パッキングの舌片部により施蓋時に蓋体と
容器本体との間に形成される環状の溝内に環状の密閉部
が形成されるとともに、二重パッキングの基部が容器本
体の開口部上面に密着するものであるから、電子レンジ
等の加熱装置を使用することができ、容器本体内に食物
等を入れ蓋体を施蓋した状態では、二重パッキングが容
器本体の表面に密着しており、この施蓋状態のままで加
熱すると容器内が加圧され、容器内外の圧力差により二
重パッキングの舌片部の一部が上方に押し上り、その間
隙から容器内の加熱された空気や水蒸気等が密閉部に流
れ、続いて二重パッキングの基部と容器本体の開口部上
面との間から外部に放出される。加熱が終わると、基部
及び舌片部は吸引力により容器本体の表面に密着し、冷
却が進むと容器内の圧力は次第に負圧になり、この負圧
状態は長期に亘り保持され密封が維持される。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の実施例について説明をする。

【００１１】図１は本発明の一実施例である食物保存用
容器の施蓋状態を示す断面図、図２は本発明の一実施例
である食物保存用容器の開蓋状態を示す断面図である。

【００１２】図において、１は本実施例の食物保存用容
器であり、２は陶器、磁器、耐熱ガラスまたは耐熱合成
樹脂等からなる耐熱性の容器本体である。３は容器本体
２の開口部を着脱自在に施蓋できる陶器、磁器、耐熱ガ
ラスまたは耐熱合成樹脂等からなる耐熱性の蓋体、４は
容器本体２と蓋体３との間に介装した耐熱ゴムまたは耐
熱合成樹脂からなる所定の弾性を有する耐熱性の二重パ
ッキングであり、この二重パッキング４は断面略Ｌ字状
の基部４ａと基部４ａに延設された舌片部４ｂとで略コ
字状の断面をなしており、舌片部４ｂの先端部４ｃは基
部４ａ側よりも肉厚が薄くなっている。また、この二重
パッキング４の基部４ａが蓋体３の突出部３ａの外周面
３ｂ及びフランジ部３ｃに沿って装着されている。５は
容器本体２内に蓋体３の突出部３ａを挿入して施蓋した
ときに、蓋体３の突出部３ａの外周面３ｂと容器本体２
の内周面２ａとの間に形成される環状の溝、６は施蓋時
に前記蓋体３と容器本体２との間の環状の溝５内に二重
パッキング４の舌片部４ｂによって形成される環状の密
閉部である。なお、施蓋時には蓋体３のフランジ部３ｃ
に位置する二重パッキング４の基部４ａは容器本体２の
開口部上面２ｂに密着する。

【００１３】即ち、本実施例の食物保存用容器は、容器
本体２を蓋体３で施蓋したとき、蓋体３の下面の突出部
３ａの外周面３ｂと容器本体２の内周面２ａとにより形
成される環状の溝５内で断面が略コ字状の二重パッキン
グ４の舌片部４ｂにより密閉部６が一挙に形成される耐
熱ゴムまたは耐熱合成樹脂等による前記二重パッキング
４を蓋体３のフランジ部３ｃの下面に介装したものであ
る。しかも、容器本体２、蓋体３、及び二重パッキング
４がいずれも耐熱性の素材で形成されているので、この
食物保存用容器１に食物Ｆを入れて家庭用の電子レンジ
等の加熱装置を用いて手軽に加熱することができる。

【００１４】次に、この食物保存用容器による食品の加
熱及び加熱した食品をそのまま保存する動作について説
明する。

【００１５】まず、図１に示すように、容器本体２内に
食物Ｆを入れて蓋体３を施蓋すると、容器本体２の上縁
が断面略コ字形状の二重パッキング４の舌片部４ｂを下
方から押し上げ、舌片部４ｂの先端部４ｃは容器本体２
の内周面２ａに接触しながら下降する。二重パッキング
４が容器本体２の内周面２ａの上縁と蓋体３の舌面外周
部との間に圧着されると、二重パッキング４と容器本体
２の内周面２ａとの間に密閉部６が形成され、密閉が確
実になる。また、完全に施蓋をすると、蓋体３のフラン
ジ部３ｃ下面の二重パッキング４の基部４ａが容器本体
２の開口部上面２ｂに密着する。

【００１６】この施蓋状態のまま電子レンジ等の加熱装
置で加熱すると、容器内の圧力が増大し、容器内外の圧
力差により、二重パッキング４の舌片部４ｂの先端部４
ｃが上方に押し上り、その間隙から容器内の加熱された
空気や水蒸気等が密閉部６に流れ、続いて二重パッキン
グ４の基部４ａと容器本体２の開口部上面２ｂとの間か
ら外部に放出される。なお、蒸気等の放出後、直ちに舌
片部４ｂの先端部４ｃは元にもどり、容器本体２の内周
面２ａに密着するとともに、基部４ａも容器本体２の開
口部上面２ｂに密着する。特に、本実施例では舌片部４
ｂの先端部４ｃが上方に巻き上って密閉部６が形成され
ているので、この舌片部４ｂが逆止弁として機能し、容
器内の蒸気等は比較的円滑に放出できるが外気の流入は
抑制される。このため、容器内の加熱された空気や水蒸
気等の外部への放出は極めて短時間の略瞬間的な放出と
なるとともに、蒸気等の放出後、容器内の圧力は一旦低
下するものの加熱により再び上昇し、再度蒸気等が放出
されるので、これが順次繰り返され、結果として、間欠
的な放出となる。

【００１７】加熱が終わり、加熱装置から食物保存用容
器１を取出すと、容器本体２の内部は負圧に変わるの
で、二重パッキング４の基部４ａ及び舌片部４ｂは強く
吸引され容器本体２の表面に密着し、容器内は密閉状態
となる。容器本体２内の食物Ｆが冷却するに従って容器
本体２内の負圧は次第に強まり、この負圧状態は保持さ
れ、長時間の密封が維持される。

【００１８】このように、本実施例の食物保存用容器１
は、陶器、磁器、耐熱ガラスまたは耐熱合成樹脂等の耐
熱性の誘電体からなる容器本体２と、前記容器本体２の
開口部に着脱自在に施蓋可能な陶器、磁器、耐熱ガラス
または耐熱合成樹脂等の耐熱性の誘電体からなり、その
周囲をフランジ部３ｃとし、その内側を外周面３ｂとす
る蓋体３と、前記蓋体３に装着される環状の基部４ａか
ら延出し先端部４ｃが薄肉厚の環状の舌片部４ｂとで略
コ字状の断面をなし、施蓋時に前記蓋体３の突出部３ａ
と容器本体２の内周面２ａとの間に形成される環状の溝
５内に前記舌片部４ｂにより環状の密閉部６が形成され
るとともに、前記蓋体３のフランジ部３ｃに位置する基
部４ａと容器本体２の開口部上面２ｂとが密着する所定
の弾性を有する耐熱性の二重パッキング４とを備えてい
る。

【００１９】したがって、容器本体２、蓋体３、及び二
重パッキング４が耐熱性の素材で形成されているので、
この食物保存用容器１に食物Ｆを入れて家庭用の電子レ
ンジ等の加熱装置を用いて手軽に加熱することができ
る。そして、容器本体２内に食物Ｆ等を入れ蓋体３を施
蓋した状態では、二重パッキング４の基部４ａ及び舌片
部４ｂが容器本体２の表面に密着しており、この施蓋状
態のままで加熱すると容器内が加圧され、容器内外の圧
力差により舌片部４ｂの先端部４ｃが上方に押し上が
り、その間隙から容器内の加熱された空気や水蒸気等が
密閉部６に流れ、続いて二重パッキング４の基部４ａと
容器本体２の開口部上面２ｂとの間から外部に放出され
る。こうして、加熱により容器内の空気や水蒸気等は略
瞬間的で且つ間欠的に外部へ放出される。加熱が終わる
と、二重パッキング４の基部４ａ及び舌片部４ｂは吸引
力により容器本体２の表面に密着し、冷却が進むと容器
内の圧力は次第に負圧になり、この負圧状態は長期に亘
り保持され密封が維持される。この結果、家庭において
調理された惣菜や料理等の食品を、簡単な装置と簡単な
操作により長期間保存できる食物保存用容器となる。ま
た、蓋体３を取れば、容器本体２をそのまま食卓上に並
べ食物容器として使用することもできる。

【００２０】特に、本実施例では、容器本体２と蓋体３
との間に断面略コ字形状の二重パッキング４が介装し、
容器本体２と蓋体３との隙間が基部４ａと舌片部４ｂで
二重に密封されるとともに、舌片部４ｂにより環状の密
閉部６が形成されるので、気密性が極めて高い。また、
容器本体２と蓋体３と二重パッキング４とで食物保存用
容器１が構成されているので、各種の多数の部品を要す
ることなく、少ない部品により極めて簡素な構造となっ
ている。その上、容器本体２内に食物Ｆを入れて施蓋
し、これを電子レンジ等の加熱装置で加熱するだけで、
食品の調理、加熱等が簡単にできるとともに、その状態
のまま冷却するだけで、その食品を長期間保存すること
ができる。

【００２１】ところで、上記実施例では、下面中央全体
に突出部３ａを有し、周囲にフランジ部３ｃを有する形
状の蓋体３について説明したが、蓋体３の形状は必ずし
も上記形状に限定されるものではなく、例えば、蓋体３
の下面に環状のフランジを形成し、そのフランジの外周
面を利用しても、本実施例と同様の機能を持たせること
ができる。このような形状を採用すれば、食物保存用容
器１全体の軽量化が促進できるとともに材料費を低減で
きる。また、上記実施例では、食物保存用容器１を加熱
する加熱装置として電子レンジを使用する場合について
説明したが、容器本体２を直接コンロ等により加熱して
もよく、このような場合は容器本体２及び蓋体３を誘電
体で作る必要はない。

【００２２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の食物保存
用容器は、耐熱性の誘電体からなる容器本体と、前記容
器本体の開口部に着脱自在な耐熱性の誘電体からなり、
その周囲をフランジ部とし、その内側に突出した前記容
器本体の開口部に着脱される外周面を有する蓋体と、略
コ字状の断面をなす所定の弾性を有する耐熱性の二重パ
ッキングとを備え、容器本体の開口部に着脱自在に施蓋
ができる蓋体に二重パッキングを装着し、この二重パッ
キングの舌片部により施蓋時に蓋体と容器本体との間に
形成される環状の溝内に環状の密閉部が形成されるとと
もに、二重パッキングの基部が容器本体の開口部上面に
密着することにより、電子レンジ等の加熱装置を使用す
ることができ、容器本体内に食物等を入れ蓋体を施蓋し
た状態では、二重パッキングが容器本体の表面に密着し
ており、この施蓋状態のままで加熱すると容器内が加圧
され、容器内外の圧力差により二重パッキングの舌片部
の一部が上方に押し上り、その間隙から容器内の加熱さ
れた空気や水蒸気等が密閉部に流れ、続いて二重パッキ
ングの基部と容器本体の開口部上面との間から外部に放
出され、加熱が終わると、基部及び舌片部は吸引力によ
り容器本体の表面に密着し、冷却が進むと容器内の圧力
は次第に負圧になり、この負圧状態は長期に亘り保持さ
れ密封が維持されるので、家庭において調理された惣菜
や料理等の食品を、簡単な装置と簡単な操作により長期
間保存できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 図１は本発明の一実施例である食物保存用容
器の施蓋状態を示す断面図である。

【図２】 図２は本発明の一実施例である食物保存用容
器の開蓋状態を示す断面図である。

【符号の説明】

１ 食物保存用容器 ２ 容器本体 ２ａ 内周面 ２ｂ 開口部上面 ３ 蓋体 ３ａ 突出部 ３ｂ 外周面 ３ｃ フランジ部 ４ 二重パッキング ４ａ 基部 ４ｂ 舌片部 ４ｃ 先端部 ５ 溝 ６ 密閉部 Ｆ 食物

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 耐熱性の誘電体からなり、開口部を有す
   る容器本体と、 前記容器本体の開口部に着脱自在な耐熱性の誘電体から
   なり、その周囲をフランジ部とし、その内側に突出した
   前記容器本体の開口部に着脱される外周面を有する蓋体
   と、 前記蓋体に装着される環状の基部と先端部が薄肉厚の環
   状の舌片部とで略コ字状の断面をなし、施蓋時に前記蓋
   体の外周面と容器本体の内周面との間に形成される環状
   の溝内に前記舌片部により環状の密閉部が形成されると
   ともに、前記蓋体のフランジ部に位置する基部と容器本
   体の開口部上面とが密着する所定の弾性を有する耐熱性
   の二重パッキングとを具備することを特徴とする食物保
   存用容器。