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JP2025004836A - 電子写真部材、定着装置及び電子写真画像形成装置 - Google Patents

電子写真部材、定着装置及び電子写真画像形成装置 Download PDF

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弘祐 田中
Kosuke Tanaka
龍之介 川原
Ryunosuke Kawahara
明志 浅香
Akishi Asaka
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Abstract

Figure 2025004836000001
【課題】用紙に対する表面層の耐摩耗性を向上させながら紙への追従性も高く、高い画像光沢度で良好な画質が得られる電子写真部材。
【解決手段】少なくとも、基層、弾性層及び表面層をこの順に有する電子写真部材であって、該表面層は、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を含み、該表面層からサンプリングした試料を測定試料として、示差走査熱量計を用いて昇温速度及び降温速度をいずれも20℃/分として2度の測定を行ったときの吸熱曲線において、2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度が、304℃以下であり、1度目の昇温過程における吸熱量が、21J/g以上であり、該表面層の外表面における球晶の面積平均径をD3としたとき、D3が40μm以下である。
【選択図】図3

Description

本開示は、電子写真画像形成装置の定着装置などに用いられる電子写真部材、並びに該電子写真部材を備える定着装置及び電子写真画像形成装置に関する。
プリンタ、コピー機、ファクシミリ等の電子写真画像形成装置の定着装置に用いられる定着部材などの電子写真部材として、フィルム形状やローラ形状のものがある。定着部材は、例えば、耐熱樹脂製又は金属製のフィルム形状又はローラ形状の基材上に、必要に応じて、耐熱ゴム等からなる弾性層や表面層が形成されたものが知られている。例えば、表面層には離型性を有するフッ素樹脂などが用いられる。
弾性層は、定着装置において定着ニップを確保するため、また定着部材の表面が紙の凹凸に追従し得るために定着部材に柔軟性を付与する層として機能する。また、表面層は、トナーに対して優れた離型性を有するフッ素樹脂としてテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が好ましく用いられる。近年、ランニングコストの低減や省エネルギーの観点から定着部材の長寿命化が求められている。特に、定着部材の表面層は用紙端部による摩耗が発生しやすく、定着部材の寿命に大きな影響を与える。
特許文献1には、芯金にPFAを被覆したあと、PFAの融点以上に加熱し、その後徐冷することでPFAの結晶化度を高め、耐摩耗性を向上する技術が提案されている。
また、特許文献2には、球晶の大きさの小さいフッ素樹脂を表面層として用いることで高い表面平滑性を得ることが提案されている。
特開2007-093650号公報 特開2000-010430号公報
特許文献1のように、表面層であるPFAの融点以上に定着部材を加熱し、その後徐冷することでPFAの結晶化度を高め、用紙に対する耐摩耗性を向上することができる。しかし、本発明者らの検討によると、PFAを徐冷すると球晶核の発生頻度に対して結晶成長速度が大きくなるため、大きな球晶が表面層の表面に形成される場合がある。すると球晶形状に沿って凹凸が大きくなり、定着部材の表面平滑性が低下する。このため、表面層の表面の凹凸が画像表面に転写され、画像光沢度が低下するという課題がある。
そこで、特許文献2のように球晶の大きさの小さいフッ素樹脂である、例えば451HP-J(商品名:三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製)を表面層として用いることにより、高い表面平滑性を有する定着部材を得ることができる。しかし、451HP-Jのような融点が高いPFAを用いると、分子の剛直性が高いために表面層の柔軟性が低下する。このため、弾性層によって定着部材に柔軟性を付与したとしても、紙の凹凸に対する追従性が不足し、画質が損なわれる場合がある。したがって、用紙に対する耐摩耗性、画像光沢度及び紙の凹凸に対する追従性のすべてを満足するには課題を有していることを本発明者らは認識した。
本開示の少なくとも一つの態様は、高品位な電子写真画像の安定的な形成に資する電子写真部材の提供に向けたものである。また、本開示の少なくとも一つの態様は、高品位な電子写真画像の安定的な形成に資する定着装置の提供に向けたものである。さらに、本開示の少なくとも一つの態様は、高品位な電子写真画像を安定的に形成することができる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
本開示の少なくとも一つの態様によれば、少なくとも、基層、弾性層及び表面層をこの順に有する電子写真部材であって、
該表面層は、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を含み、
該表面層からサンプリングした試料を測定試料として、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度及び降温速度をいずれも20℃/分として2度の測定を行ったときの吸熱曲線において、
2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度が、304℃以下であり、
1度目の昇温過程における吸熱量が、21J/g以上であり、
該表面層の外表面における球晶の面積平均径をD3としたとき、D3が40μm以下である、電子写真部材が提供される。
本開示の少なくとも一つの態様によれば、電子写真画像形成装置における定着装置であって、
該定着装置は、定着部材と、該定着部材に対向して配置された加圧部材と、を具備し、
該定着部材及び該加圧部材の少なくとも一方が、上記電子写真部材である、定着装置が提供される。
本開示の少なくとも一つの態様によれば、高品位な電子写真画像の安定的な形成に資する電子写真部材を得ることができる。また、本開示の少なくとも一つの態様によれば、高品位な電子写真画像の安定的な形成に資する定着装置を得ることができる。さらに、本開示の少なくとも一つの態様によれば、高品位な電子写真画像を安定的に形成することができる電子写真画像形成装置を得ることができる。
本開示の少なくとも一つの態様によれば、用紙に対する表面層の耐摩耗性を向上させながら紙への追従性も高く、高い画像光沢度で良好な画質が得られる電子写真部材を提供することができる。また、本開示の少なくとも一つの態様によれば、用紙に対する表面層の耐摩耗性を向上させながら紙への追従性も高く、高い画像光沢度で良好な画質が得られる定着装置及び該定着装置を備えた電子写真画像形成装置を提供することができる。
本開示の一態様に係る電子写真画像形成装置の模式図である 本開示の一態様に係る定着装置の模式図である 本開示の一態様に係る定着フィルムの模式図である
本明細書中、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限および上限を含む数値範囲を意味する。また、数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。以下、本開示の実施態様について詳細に説明する。なお、本開示の技術的範囲は以下の説明に限定されるものではない。
本開示の少なくとも一つの態様に係る電子写真部材は、少なくとも、基層、弾性層及び表面層をこの順に有し、
該表面層は、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を含み、
該表面層からサンプリングした試料を測定試料として、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度及び降温速度をいずれも20℃/分として2度の測定を行ったときの吸熱曲線において、
2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度が、304℃以下であり、
1度目の昇温過程における吸熱量が、21J/g以上であり、
該表面層の外表面における球晶の面積平均径をD3としたとき、D3が40μm以下である。
<電子写真部材>
本開示の少なくとも一つの態様である電子写真部材は、例えば定着部材である。例えば、電子写真部材は定着ベルトである。また、電子写真部材は、エンドレス形状を有する電子写真ベルトであってもよい。電子写真部材は、少なくとも、基層、弾性層及び表面層をこの順に有する。すなわち、電子写真部材は基層と、該基層上の弾性層と、該弾性層上の表面層とを有する。基層、弾性層及び表面層の各層の間、並びに基層の内周面側及び表面層の外周面側には、必要に応じて他の層が設けられていてもよい。
定着部材41は図2,図3に示すとおり、例えば定着フィルム41である。定着部材41は、基層41bと、弾性層41cと、表面層41aとを有する。表面層41aは、例えばトナーなどに対し離型性を有する離型層となりうる。表面層41aは、電子写真部材の外表面を形成しうる。なお、表面層41aは、弾性層41cの表面に不図示の接着層で接着されていてもよい。また、基層41bの内周面側には不図示の内面摺動層を備えていてもよい。
以下に各層について具体的に説明する。
<基層>
基層41bの材質としては、電子写真部材で公知のものを使用すればよく、特に制限されない。例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス(SUS)、ニッケルのような金属及び合金、並びに、ポリイミドのような耐熱性樹脂が用いられる。好ましくはステンレスである。基層41bの厚さとしては、特に限定されるものではないが、例えば、強度、柔軟性、熱容量の観点から、20μm以上100μm以下とすることが好ましく、20μm以上50μm以下とすることがより好ましい。
基層41bの外表面には、弾性層41cとの接着性を付与するために表面処理を施してもよい。表面処理には、ブラスト処理、ラップ処理、研磨のような物理的処理、酸化処理、カップリング剤処理、プライマー処理のような化学的処理を、一つ又は複数種類組み合わせて用いることが可能である。
基層41bの表面に、シリコーンゴムを含む弾性層41cを設ける場合には、基層41bと弾性層41cとの接着性を向上させるために、基層41bの表面に対してプライマー処理を施すことが好ましい。プライマー処理に用いるプライマーとしては、例えば、有機溶剤中に、シランカップリング剤、シリコーンポリマー、水素化メチルシロキサン、アルコキシシラン、反応促進触媒、ベンガラのような着色剤が、適宜配合分散された塗料が挙げられる。
プライマーは、基層41bの材質、弾性層41cの種類又は架橋反応の形態によって適宜選択可能である。特に、弾性層41cが不飽和脂肪族基を多く含む場合には、不飽和脂
肪族基との反応により接着性を付与するために、ヒドロシリル基を含有するプライマーが好適に用いられる。弾性層41cがヒドロシリル基を多く含む場合には、不飽和脂肪族基を含有するプライマーが好適に用いられる。
プライマーとしてはそのほかにも、アルコキシ基を含有するものも挙げられる。プライマーは市販品を用いることができる。また、プライマー処理は、このプライマーを基層41bの外表面(弾性層41cとの接着面)に塗布し、乾燥又は焼成させる工程を含む。
<内面摺動層>
基層41bの内周面側には内面摺動層を備えていてもよい。内面摺動層としては、ポリイミド樹脂のような高耐久性、高耐熱性を併せ持つ樹脂が適している。内面摺動層は摺擦されて徐々に摩耗していくことから、使用耐久を通じて摺動層として働くことが十分可能な厚みを設けることが好ましい。一方でヒータからの熱供給を妨げない厚みが好ましい。そのため、厚みは5~20μmが好ましく、10~15μmがより好ましい。内面摺動層は、公知の塗布法などを用いて形成すればよい。
<弾性層>
弾性層41cには、電子写真部材で公知のものを使用すればよく、特に制限されない。弾性層41cは、耐熱性に優れるシリコーンゴムを含有することが好ましい。また、シリコーンゴムの原料としては、付加硬化型の液状シリコーンゴムが好ましく用いられる。弾性層41cは、例えば、基層41bの外表面に付加硬化型の液状シリコーンゴムを塗工し、加熱硬化することで形成しうる。塗工方法は特に制限されず、公知の方法を用いればよい。
弾性層41cの厚さは、定着部材の表面硬度、及び、形成する定着ニップ部の幅を考慮して、適宜設計可能であり、100μm以上500μm以下が好ましく、200μm以上400μm以下がさらに好ましい。
シリコーンゴムとしては、例えば、後述する付加硬化型の液状シリコーンゴム混合物の硬化物を用いることができる。弾性層41cは液状シリコーンゴム混合物を公知の方法で塗布・加熱することにより、形成しうる。
液状シリコーンゴム混合物は、通常、下記成分(a)~(d)を含む:
成分(a):不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン;
成分(b):ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン;
成分(c):触媒;
成分(d):熱伝導性フィラー
以下、各成分について説明する。
成分(a)
不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンは、ビニル基などの不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンであり、例えば、下記式(1)及び(2)に示すものが挙げられる。不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンは、直鎖型であることが好ましい。
Figure 2025004836000002
式(1)中、mは0以上の整数を示し、nは3以上の整数を示す。また、構造式(1)中、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基を表し、ただし、Rのうちの少なくとも1つはメチル基を表し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を表す。
Figure 2025004836000003
式(2)中、nは正の整数を示し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基を表し、ただし、Rのうちの少なくとも1つはメチル基を表し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を表す。
式(1)及び(2)において、R及びRが表すことのできる、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基としては、例えば、以下の基を挙げることができる。
・非置換炭化水素基
アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)。
アリール基(例えば、フェニル基)。
・置換炭化水素基
置換アルキル基(例えば、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-シアノプロピル基、3-メトキシプロピル基)。
式(1)及び(2)で示されるオルガノポリシロキサンは、鎖構造を形成するケイ素原子に、直接結合したメチル基を少なくとも1つ有する。しかしながら、合成や取扱いが容易であることから、R及びRそれぞれの50%以上がメチル基であることが好ましく、すべてのR及びRがメチル基であることがより好ましい。
また、式(1)及び(2)中の、R及びRが表すことのできる不飽和脂肪族基としては、例えば、以下の基を挙げることができる。すなわち、不飽和脂肪族基としては、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基等を挙げることができる。これらの基の中でも、合成や取扱いが容易かつ安価で、架橋反応も容易に行われることから、R及びRはいずれもビニル基であることが好ましい。
成分(a)としては、成形性の観点から、粘度は1000mm/s以上50000mm/s以下であることが好ましい。1000mm/sより低いと弾性層20cに必要
な硬度に調整するのが難しくなり、50000mm/sより高いと混合物の粘度が高くなりすぎて塗工が難しくなる。粘度(動粘度)は、JIS Z 8803:2011に基づき、毛管粘度計や回転粘度計等を用いて測定することができる。
成分(a)の配合量は、弾性層20cの形成に用いる液状シリコーンゴム混合物を基準として、耐久性の観点から55体積%以上、伝熱性の観点から65体積%以下とすることが好ましい。
成分(b)
ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサンは、触媒の作用により、成分(a)の不飽和脂肪族基と反応し、硬化シリコーンゴムを形成する架橋剤として機能する。
成分(b)としては、Si-H結合を有するオルガノポリシロキサンであれば、いずれのものも用いることができる。特に、成分(a)の不飽和脂肪族基との反応性の観点から、1分子中における、ケイ素原子に結合した水素原子の数が平均3個以上のものが好適に用いられる。
成分(b)の具体例としては、例えば、下記式(3)に示す直鎖状のオルガノポリシロキサン及び下記式(4)に示す環状オルガノポリシロキサンを挙げることができる。
Figure 2025004836000004
式(3)中、mは0以上の整数を示し、nは3以上の整数を示し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基を表す。
Figure 2025004836000005
式(4)中、mは0以上の整数を示し、nは3以上の整数を示し、Rは、各々独立して、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基を表す。
式(3)及び(4)中のR及びRが表すことのできる不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換又は置換炭化水素基としては、例えば、上述した構造式(1)中のRと同様の基を挙げることができる。これらの中でも、合成や取扱いが容易で、優れた耐熱性が容易に得られることから、R及びRそれぞれの50%以上がメチル基であることが好ましく、すべてのR及びRがメチル基であることがより好ましい。
成分(c)
シリコーンゴムの形成に用いる触媒としては、例えば、硬化反応を促進するためのヒドロシリル化触媒を挙げることができる。ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金化合物やロジウム化合物などの公知の物質を用いることができる。触媒の配合量は適宜設定することができ、特に限定されない。
成分(d)
弾性層41cはフィラーを含んでいてもよい。フィラーは、熱伝導性、耐熱性及び弾性率を制御するために添加するものである。熱伝導性フィラーとしては、金属、金属化合物、炭素繊維を挙げることができる。高熱伝導性フィラーが更に好ましく、その具体例としては、以下の材料が挙げられる。
金属ケイ素(Si)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(Si)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al)、酸化鉄(Fe)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化チタン(TiO)、シリカ(SiO)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、カーボンブラック(C)、カーボンナノチューブ(C)、気相成長法炭素繊維、PAN系(ポリアクリロニトリル)炭素繊維、ピッチ系炭素繊維。
<接着剤層>
弾性層41cと表面層41aとの間には、これらを接着するための接着剤層を設けてもよい。接着剤層の材料は特に制限されず、公知のものを使用しうる。接着剤層は、シリコーンゴム接着剤を含むことが好ましい。接着剤層の厚みは、特に制限されないが、好ましくは1~20μmであり、より好ましくは3~10μmである。
<表面層>
表面層41aは、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を含む。表面層41aは、PFAからなることが好ましい。表面層41aからサンプリングした試料を測定試料として、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度及び降温速度をいずれも20℃/分として2度の測定を行う。このときの吸熱曲線において、2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度が304℃以下であり、1度目の昇温過程における吸熱量が21J/g以上である。
そして、面層の外表面における球晶の面積平均径をD3としたとき、D3が40μm以下である。このような表面層を有する電子写真部材によって、用紙に対する耐摩耗性、画像光沢度及び紙の凹凸に対する追従性のすべてを満足しうる理由について、表面層の各構成の説明と共に以下説明する。
PFAはパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)とテトラフルオロエチレン(TFE)の共重合体である。PFAを含む表面層41aの形成手段としては、弾性層41cの表面にPFAを主成分とする分散液(水系分散塗料)又は粉体塗料を塗装し、これを融点以上に加熱して成膜する方法が挙げられる。または、別途押出成形にて製造されたPFAチューブを弾性層41cの表面に被覆する等といった方法も挙げられる。表面層41aは、例えばPFAチューブである。
DSC測定での2度目の昇温過程における吸熱ピークは、PFAの結晶融解による吸熱ピークであり、PFAの融点を意味する。PFAの融点は分子鎖の剛直性と相関があり、分子鎖の剛直性が高いほど融点の高いPFAとなる。PAVEとTFEの比率を調整することにより、PFAの分子鎖の剛直性を制御することができる。例えばPAVEとしてパーフルオロプロピルビニルエーテルを用い、PAVEとTFEとの共重合比率(モル比)(PAVE/TFE)を後述の好ましい範囲とすることにより融点を304℃以下に制御しやすい。融点を制御する観点から、例えば共重合比率(モル比)(PAVE/TFE)は2.0/98.0に近づけることがより好ましい。
2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度(融点)が304℃を超える場合には、分子鎖の剛直性が高いために表面層としての柔軟性が低く、紙の凹凸への追従性が損なわれる。2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度が304℃以下であることにより、柔軟性が良好となり紙の凹凸に追従することができ、トナー溶融ムラの抑制された定着画像を得ることができると考えられる。
PFAとしては、特に制限されず、公知のものを使用しうる。パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合比率(モル比)(PAVE/TFE)は、1.5/98.5~4.5/95.5が好ましく、1.5/98.5~4.0/96.0がより好ましい。PFAは市販のものを用いてもよい。具体的には、AP-230(商品名、ダイキン工業社製)や、末端基が完全フッ素化されたPFAであるAP-231SH(商品名、ダイキン工業社製)などが挙げられる。
PFAであることは、例えば、FT-IRのATRスペクトルにおいて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に特徴的なピークの存在を確認すると共に、PTFEには出現しない、994cm-1付近の小さなピークの存在を確認することにより、確認することができる。
まず、PTFEに特徴的なピークとしては、1200cm-1(CF逆対称伸縮)、1150cm-1(CF対称伸縮)、640cm-1(CF面外変角(ワギング))、555cm-1(CF面内変角(はさみ))、505cm-1(CF面内変角(ロッキング))がある。また、PFAに特徴的な、994cm-1付近のピークの位置は、パーフルオロアルキルビニルエーテル部分の炭素鎖の長さによって変化する。パーフルオロプロポキシ基の場合は、994cm-1に出現し、パーフルオロエトキシ基の場合は、1090cm-1に出現し、また、パーフルオロメトキシ基の場合は、881cm-1に出現する。
また、DSC測定での1度目の昇温過程における吸熱量は、PFAの結晶融解による吸熱量である。吸熱量の値をPFAの完全結晶融解熱(92.9J/g)で除することにより、PFAの結晶化度を算出することができる。吸熱量が21J/g以上であることにより、表面層中のPFAは結晶化度を有し、その結果として、用紙に対する耐摩耗性が良好となる。
また、1度目の昇温過程における吸熱量は27J/g以下であることが好ましい。吸熱量が27J/g以下であると紙の凹凸への追従性がより良好となる。1度目の昇温過程における吸熱量は、21~27J/gであることが好ましく、22~27J/gであることがより好ましく、25~27J/gであることがさらに好ましい。
なお、本開示におけるDSCによる測定に関して、特に言及がない場合は、日本産業規格(JIS)K7121-2012に準拠するものとする。
吸熱量を21J/g以上とする方法としては、定着部材の製造工程において、表面層41aを形成後にPFAの融点以上の温度に加熱したのち、冷却速度を制御することによりPFAの結晶化を促進する方法が挙げられる。
具体的な方法としては特に限定されないが、以下のような表面層の加熱処理の方法を用いることが可能である。
表面層を形成した後、電子写真部材全域を加熱するため、例えば330℃以上まで加熱可能な直立型かつ円筒状の加熱筒を用いる。加熱筒の内部には例えば熱電対を取り付けたバンドヒーターを設置し、定着部材の加熱温度を制御する。加熱温度はPFAの融解温度以上350℃以下が好ましい。加熱の時間は、表面層の温度が所望の温度に十分到達しう
る温度であればよく、例えば、1~20分、1~10分、2~5分などが挙げられる。
加熱完了後、加熱筒の冷却速度を制御することにより、定着部材の冷却速度を制御する。例えば加熱筒の外周にエアの給気ノズルを設け、エアの流量を調整することで冷却速度を制御することができる。PFAの結晶化温度域での冷却速度が遅いほど、PFAの結晶化を促進することができ、吸熱量が21J/g以上となるように冷却速度を調整することが好ましい。冷却速度の制御は、表面層の温度がPFAの結晶化温度域を下回るまで行うことが好ましい。冷却速度は吸熱量21J/g以上に制御しうる範囲であればよく、特に制限されないが、好ましくは5~60℃/分であり、より好ましくは10~30℃/分である。
また、2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度が297℃以上であると、PFA分子の剛直性が適度に高くなり、冷却速度の制御により1度目の昇温過程における吸熱量を21J/g以上に高めやすくなる。このことから、2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度は297℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。
2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度は、297~304℃であることが好ましく、300~304℃であることがより好ましく、300~302℃であることがさらに好ましい。
表面層41aの外表面における球晶の面積平均径をD3としたとき、D3は40μm以下である。D3が40μm以下であることにより、表面平滑性が良好となり、画像光沢度の高い定着画像を得ることができる。D3が小さいほど表面平滑性が良好となる。一方で球晶のラメラ構造の間隙に存在するPFAの非晶部を減少させ、結晶化度の低下を抑制し耐摩耗性をより向上させる観点から、D3は5μm以上であることが好ましい。表面層の外表面とは、電子写真部材の外表面を形成する面を指す。
D3は、5~40μmであることが好ましく、10~35μmであることがより好ましく、20~34μmであることがさらに好ましい。D3の値は、PFAの結晶成長速度に対し、球晶核の発生頻度を高くすることによって小さくすることができると考えられ、例えば、球晶の核剤となる物質を表面層41aの内面側すなわち弾性層と対向する面の近傍に存在させる方法が挙げられる。これにより、内面側において球晶核の発生頻度が高くなる。
そして、溶融させたPFAが冷却される過程で、PFAは、球晶核を起点として球晶が成長し、ほかの球晶と接したところで結晶成長が止まる。そのため、球晶核の発生頻度が高いと表面層の内面側において形成される球晶径が小さくなる。表面層41aにおいては、内面側において形成される球晶径が小さいほど、外表面における球晶径が小さくなる。これは、まず内面側において球晶が形成した後、その表面上に分子が付着し外表面に向かって結晶化が進むためであると考えられる。したがって、内面側において球晶核の発生頻度が高いと、D3は小さくなりやすく、D3を40μm以下としやすくなる。
核剤となる物質を表面層の内面側に存在させるためには、例えば、表面層41aの作製にPFAチューブを用い、その内面に照射条件を制御したエキシマレーザー光を照射する方法が挙げられる。エキシマレーザー処理においては、PFAチューブ内表面のフッ素原子が脱離し、炭化や酸素との反応によるカルボニル基の生成などの反応が起きる。その結果、内表面における元素比率が変化する。これにより発生する炭素分が核剤となるため、この方法により核剤を内面側に存在させることができる。
以上のとおり、PFAを含む表面層について、2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度を304℃以下とし、1度目の昇温過程における吸熱量を21J/g以上とし、D3を
40μm以下とすることで、用紙に対する耐摩耗性、画像光沢度及び紙の凹凸に対する追従性のすべてを満足することができる。
本開示において、表面層の弾性層と対向する側の面における炭素元素比率をC原子%、フッ素元素比率をF原子%、酸素元素比率をO原子%としたとき、
C-F/2-O≧30
を満足することが好ましい。
上記範囲であることにより、表面層の弾性層と対向する側の面が炭素分に富んだ状態となり、表面平滑性をより良好にすることができる。これは、この炭素分が球晶の核剤となっており、表面層の内面側において球晶核の発生頻度が高くなるため、前述の理由によりD3が小さくなり、表面平滑性がより良好になると考えられる。
C-F/2-Oは、30~50であることが好ましく、32~40であることがより好ましい。
また、表面層41aの厚みは30μm以下であることが好ましい。厚みが30μm以下であると、表面層の内面側における核剤のD3への影響がより大きくなり、表面平滑性をより良好にすることができる。表面層の厚みは、より好ましくは10~30μmであり、さらに好ましくは15~30μmである。
上記範囲とするための具体的な方法としては以下の方法を用いることが可能である。ここでは表面層41aの作製にPFAチューブを用いた例を挙げるが、本開示に係る表面層が、PFAチューブを用いて形成されたものに限定されるものでもない。
PFAチューブは、例えば、溶融させたPFAを円筒状のダイから押し出すことによって作製することができる。このようなPFAチューブは、押し出される過程で急冷され結晶化が急速に進行するため、押し出し方向に結晶が配向し、また結晶化度が低い状態となっている。PFAチューブを弾性層41cの表面に被覆し表面層41aとしたのち、表面層の加熱処理を行うことにより、結晶化度を高めることができ、また表面層の表面に球晶が形成される。結晶化度を高めることで1度目の昇温過程における吸熱量を前述の範囲に制御しやすくなる。
PFAチューブの内面は、予め、ナトリウム処理やエキシマレーザー処理、アンモニア処理等を施すことで、弾性層41c又は必要に応じて設けられる接着層に対する濡れ性及び接着性を向上させることができる。エキシマレーザー処理を用いてPFAチューブの内面を処理することが好ましい。
エキシマレーザー処理としては、紫外光を吸収する化合物をPFAチューブ内面に付着させたのち、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光などの紫外線レーザー光を照射することが好ましい。紫外光を吸収する化合物としては公知のものを用いることができる。例えば、安息香酸ナトリウムなど紫外光を吸収する化合物と公知のフッ素系界面活性剤を混合した水溶液を作製し、PFAチューブ内面に塗布して自然乾燥させる。
エキシマレーザー処理においては、PFAチューブ内表面のフッ素原子が脱離し、炭化や酸素との反応によるカルボニル基の生成などの反応が起きる。その結果、表面層の弾性層と対向する側の面における元素比率が変化し、C-F/2-Oを上述の範囲に制御しやすくなる。
本開示では、エキシマレーザー光の照射条件を制御し、PFAチューブ内表面の炭化を進行させることにより、表面層の弾性層と対向する側の表面における元素比率を前述の範
囲とすることが好ましい。エキシマレーザー光の照射条件としては、通常であれば濡れ性及び接着性向上の観点から選択され、1ショットあたりの照射量又はショット数を調整する。本開示では、通常必要であるよりもショット数を多くすることにより、PFAチューブ内表面の炭化を十分に進行させることが好ましい。例えば、エキシマレーザー光の照射量は、好ましくは100~600mJ/cm/パルス、より好ましくは200~400mJ/cm/パルスである。ショット数は好ましくは3~10であり、より好ましくは6~8である。
また、表面層41aの外表面における球晶の個数平均径をD1としたとき、D3/D1が1.5以下であることが好ましい。D3/D1の値は1に近いほど球晶の円相当径の分布が狭く、均一であることを示す。D3/D1が1.5以下であることにより、表面平滑性がより良好となり、より画像光沢度の高い定着画像を得ることができる。
D3/D1の値は、前述の表面層の加熱処理において、PFAの結晶化温度域での冷却速度を遅くすることによって小さくすることができる。D3/D1は、例えば1.0~1.5であることが好ましい。また、D1は、4~35μmであることが好ましく、10~35μmであることがより好ましい。
また、表面層41aの外表面の算術平均粗さRaが0.20μm以下であることが好ましい。Raが0.20μm以下であることにより、表面平滑性がより良好となり、画像光沢度の高い定着画像を得ることができる。面積平均径D3を40μm以下とすることにより、Raを0.20μm以下としやすくなる。Raは、より好ましくは0.05~0.20μmであり、さらに好ましくは0.10~0.18μmである。
PFAチューブを弾性層の表面に被覆する手段は特に制限されず、公知の手段を採用しうる。例えば、フッ素樹脂チューブを外側から拡張し、被覆する方法(拡張被覆法)を用いることができる。PFAチューブを外側から真空拡張し被覆する真空拡張被覆法などを用いることができる。
<電子写真画像形成装置>
図1は、本実施形態の電子写真画像形成装置(以下、「画像形成装置」ともいう)の一例であるカラー電子写真プリンタの断面図であり、記録材の搬送方向に沿った断面図である。本実施形態では、カラー電子写真プリンタを単に「プリンタ」という。
図1に示すプリンタ1は、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の各色の画像形成部10を備えている。感光ドラム(感光体)11は、帯電器12によってあらかじめ帯電される。その後、感光ドラム11は、レーザスキャナ13によって露光され、静電潜像を形成される。静電潜像は、現像器14によってトナー像になる。感光ドラム11のトナー像は、一次転写ブレード17によって、像担持体である例えば中間転写ベルト31に順次転写される。転写後、感光ドラム11に残ったトナーは、クリーナ15によって除去される。この結果、感光ドラム11の表面は、清浄になり、次の画像形成に備える。
一方、記録材Pは、給紙カセット20、又はマルチ給紙トレイ25から、矢印3の方向に1枚ずつ送り出されてレジストローラ対23に送り込まれる。レジストローラ対23は、記録材Pを一旦受け止めて、記録材が斜行している場合、真っ直ぐに直す。そして、レジストローラ対23は、中間転写ベルト31上のトナー像と同期を取って、記録材Pを中間転写ベルト31と二次転写ローラ35との間に送り込む。中間転写ベルト上のカラーのトナー像は、転写体である例えば二次転写ローラ35によって記録材Pに転写される。その後、記録材Pのトナー像は、記録材Pが定着装置40によって、加熱加圧されることで
記録材に定着される。
電子写真画像形成装置は、定着装置40を備える。次に、電子写真画像形成装置における定着装置について説明する。定着装置は、定着部材と、該定着部材に対向して配置された加圧部材と、を具備する。図2は、定着装置40の概略構成図であり、フィルム加熱方式の加熱装置(テンションレスタイプ)の例である。本実施例ではこのような加熱装置を用いたが、ローラ対方式やフィルム方式の加熱装置でも実施可能である。
43は加熱体としてのセラミックヒーター(以下、ヒータと記す)である。ヒータ43は図面に垂直方向を長手とする細長薄板状のセラミック基板と、この基板面に具備させた通電発熱抵抗体層を基本構成とする。ヒータ43は、発熱抵抗体層に対する通電により全体に急峻な立ち上がり特性で昇温する、低熱容量のヒータである。また、記録材の長手幅サイズに応じて、通電領域を切り替える構成となっている。
本開示の少なくとも一つの態様に係る電子写真部材は、例えば定着部材として用いることができる。定着フィルム41は熱を伝達する加熱部材としての円筒状(エンドレス)の耐熱性の定着部材であり、上記のヒータ43を含む支持部材(ヒーターホルダ)にルーズに外嵌させてある。定着フィルム41の構造は図3に示すとおりであり、少なくとも、表面層41a、弾性層41c、及び基層41bを含む3層複合構造を有した定着フィルムである。
加圧ローラ44は加圧部材としての耐熱性弾性加圧ローラであり、芯金と、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴム、あるいはシリコーンゴムの発泡体からなる弾性層とを有する。芯金の両端部は回転自由に軸受け支持させて配設されている。なお、本開示の少なくとも一つの態様に係る電子写真部材は、例えば加圧部材として用いることもできる。すなわち、定着部材及び加圧部材の少なくとも一方が上記電子写真部材であることが好ましい。例えば、加圧部材は、定着フィルム41と同様の構成とすることもでき、加圧部材は、表面層41a、弾性層41c、及び基層41bを含む3層複合構造を有することができる。
この加圧ローラ44の上側に上記の定着フィルム41・ヒータ43を、加圧ローラ44に並行に配置し、不図示の押付部材で押圧させる。このようにすることで、定着フィルム41を介してヒータ43の下面と加圧ローラ44の上面とを弾性層の弾性に抗して圧接させて加熱部としての所定幅の定着ニップ部を形成できる。
加圧ローラ44は不図示の駆動手段により矢印で示す反時計回り方向に所定の回転周速度にて回転駆動される。この加圧ローラ44の回転駆動による加圧ローラ44と定着フィルム41との、定着ニップ部における圧接摩擦力により円筒状の定着フィルム41に回転力が作用する。そして該定着フィルム41がヒータ43の下向き面に密着して摺動しながら矢印で示す時計回り方向に従動回転状態になる。支持部材(ヒーターホルダ)46は円筒状定着フィルム41の回転ガイド部材でもある。
加圧ローラ44が回転駆動され、それに伴って円筒状の定着フィルム41が従動回転状態になり、またヒータ43に通電がなされて該ヒータが迅速に昇温して所定の温度に立ち上がり温度調節された状態となる。かかる状態において、定着ニップ部の定着フィルム41と加圧ローラ44との間に未定着トナー像Tを担持した記録材Pが導入される。そして、定着ニップ部において記録材Pのトナー像担持側面が定着フィルム41の外面に密着して定着フィルム41と一緒に定着ニップ部に挟持搬送されていく。この挟持搬送過程においてヒータ43で加熱された定着フィルム41の熱により記録材Pが加熱され、記録材P上の未定着トナー像Tが記録材P上に加熱・加圧されて溶融定着される。定着ニップ部T
を通過した記録材Pは定着フィルム41の面から曲率分離して排出搬送されていく。
45は接触式温度計(サーミスタ)であり、ヒータ43によって加熱された定着フィルム41の温度を計測し、その検出結果を不図示の温度制御手段に渡す構成となっている。46はヒーターホルダであり、高温に発熱したヒータ43を保持する部材である。
本開示における各物性の測定方法の例を以下に示す。
<吸熱ピーク温度と吸熱量の測定方法>
まず、電子写真部材から表面層を単離する。具体的には、弾性層ごと基層から表面層を剥がし、表面層と接着されている弾性層を溶剤により溶かすことで表面層のみを単離することができる。単離した表面層からDSCの測定用パンに収まるように2mm×2mm程度に切り出す。
吸熱ピーク温度と吸熱量は、示差走査熱量分析装置(商品名:Q2000、TA Instruments社製)を用いて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、表面層4mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れる。リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。測定は、測定範囲25℃以上400℃以下の間で、昇温速度20℃/minで行う。1度目は、400℃まで昇温させ5分間保持し、続いて降温速度20℃/minで25℃まで降温する。その後、2度目の測定を1度目と同様に行う。
1度目の昇温過程で、吸熱ピークを含む温度―吸熱量曲線とベースラインとで囲われた面積を吸熱量とする。また、2度目の昇温過程で、温度25℃~400℃の範囲における温度―吸熱量曲線の最大吸熱ピークになる温度を吸熱ピーク温度とする。
<球晶の面積平均径D3と個数平均径D1の測定方法>
まず、上記吸熱ピーク温度と吸熱量の測定と同様にして、電子写真部材から表面層を単離する。そして単離した表面層の外表面を顕微鏡(商品名:ECLIPSE LV100NDA、株式会社ニコン製)で観察し、球晶の観察画像を得る。観察の際の条件は、透過照明に切り替え、アナライザーと透過照明用ポラライザーを直交させてクロスニコルに調整し、20倍の対物レンズを使用する。透過型偏光顕微鏡を用いることにより、球晶の構造を確認できる観察画像を得ることができる。
次に、得られた球晶の観察画像から、200個の球晶の輪郭を手動で抽出する。抽出の条件は個々の球晶にマルテーゼクロスと呼ばれる十字の影が現れることから、観察画像におけるそれぞれのマルテーゼクロスの境界線を球晶の輪郭として抽出する。それぞれの球晶の面積を画像解析ソフト「ImageJ」を用いて算出する。200個の球晶の面積と、それぞれの面積から算出した円相当径から、球晶の面積平均径D3と個数平均径D1をそれぞれ算出する。
<表面層の外表面の算術平均粗さRaの測定方法>
表面層の外表面の算術平均粗さRaは、接触式粗さ計(商品名:SE-3500、小坂製作所製)を用いて測定する。測定における各種条件は下記の通りである。
規格:日本産業規格(JIS)B0601:2001/ISO4287-1997(粗さ)
カットオフ波長:0.8mm
評価長さ:4.0mm
走査速度:1.0mm/s
測定倍率:5000倍
<表面層の弾性層と対向する側の面における炭素元素比率、フッ素元素比率、酸素元素比率の測定方法>
まず、上述した吸熱ピーク温度と吸熱量の測定と同様にして、電子写真部材から表面層を単離する。そして単離した表面層の、弾性層と対向していた側の面に存在する炭素元素比率C原子%、フッ素元素比率F原子%、酸素元素比率O原子%は、ESCA(X線光電子分光分析)により測定する。
ESCAの測定における各種条件は下記の通りである。
使用装置:ULVAC-PHI社製 Quantum2000
X線光電子分光装置測定条件: X線源 Al Kα
X線:100μm 25W 15kV
PassEnergy:
C 58.70eV
F 93.90eV
O 58.70eV
測定された各元素のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いて表面元素比率(原子%)を算出する。元素比率(原子%)の基準は、炭素、フッ素及び酸素の合計を100原子%としたときの値である。
<表面層の厚みの測定方法>
まず、上記吸熱ピーク温度と吸熱量の測定と同様にして、電子写真部材から表面層を単離する。そして単離した表面層の厚みを、マイクロメータを用いて測定する。マイクロメータとしては、例えば、高精度デジマチックマイクロメータ「MDH-25MB」(商品名)株式会社ミツトヨ製)などが挙げられる。
以下、本開示を実施例と比較例を用いて更に詳細に説明するが、本開示の態様はこれらに限定されない。
本実施例における各物性の測定方法を以下に示す。
<吸熱ピーク温度と吸熱量の測定方法>
まず、電子写真部材から表面層を単離した。具体的には、弾性層ごと基層から表面層を剥がし、表面層と接着されている弾性層をシリコーン溶解剤(eソルブ21RS(株)カネコ化学製)中に浸し、超音波洗浄装置(商品名:ブランソニック(型式2510J-DTH);日本エマソン株式会社製)の水槽内に入れ、60分超音波を印加し、弾性層を溶解させた。単離した表面層からDSCの測定用パンに収まるように2mm×2mm程度に切り出した。
吸熱ピーク温度と吸熱量は、示差走査熱量分析装置(商品名:Q2000、TA Instruments社製)を用いて測定した。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いた。具体的には、表面層4mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れた。リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いた。測定は、測定範囲25℃以上400℃以下の間で、昇温速度20℃/minで行った。1度目は、400℃まで昇温させ5分間保持し、続いて降温速度20℃/minで25℃まで降温した。その後、2度目の測定を1度目と同様に行った。
1度目の昇温過程で、吸熱ピークを含む温度―吸熱量曲線とベースラインとで囲われた面積を吸熱量とした。また、2度目の昇温過程で、温度25℃~400℃の範囲における温度―吸熱量曲線の最大吸熱ピークになる温度を吸熱ピーク温度とした。
<球晶の面積平均径D3と個数平均径D1の測定方法>
まず、上記吸熱ピーク温度と吸熱量の測定と同様にして、電子写真部材から表面層を単離した。そして単離した表面層の外表面を顕微鏡(商品名:ECLIPSE LV100NDA、株式会社ニコン製)で観察し、球晶の観察画像を得た。観察の際の条件は、透過
照明に切り替え、アナライザーと透過照明用ポラライザーを直交させてクロスニコルに調整し、20倍の対物レンズを使用した。
次に、得られた球晶の観察画像から、200個の球晶の輪郭を手動で抽出した。抽出の条件は個々の球晶にマルテーゼクロスと呼ばれる十字の影が現れることから、観察画像におけるそれぞれのマルテーゼクロスの境界線を球晶の輪郭として抽出した。それぞれの球晶の面積を画像解析ソフト「ImageJ」を用いて算出した。200個の球晶の面積と、それぞれの面積から算出した円相当径から、球晶の面積平均径D3と個数平均径D1をそれぞれ算出した。
<表面層の外表面の算術平均粗さRaの測定方法>
表面層の外表面の算術平均粗さRaは、接触式粗さ計(商品名:SE-3500、小坂製作所製)を用いて測定した。測定における各種条件は下記の通りである。
規格:日本産業規格(JIS)B0601:2001/ISO4287-1997(粗さ)
カットオフ波長:0.8mm
評価長さ:4.0mm
走査速度:1.0mm/s
測定倍率:5000倍
<表面層の弾性層と対向する側の面における炭素元素比率、フッ素元素比率、酸素元素比率の測定方法>
まず、上述した吸熱ピーク温度と吸熱量の測定と同様にして、電子写真部材から表面層を単離した。そして単離した表面層の、弾性層と対向していた側の面に存在する炭素元素比率C原子%、フッ素元素比率F原子%、酸素元素比率O原子%は、ESCA(X線光電子分光分析)により測定した。
ESCAの測定における各種条件は下記の通りである。
使用装置:ULVAC-PHI社製 Quantum2000
X線光電子分光装置測定条件: X線源 Al Kα
X線:100μm 25W 15kV
PassEnergy:
C 58.70eV
F 93.90eV
O 58.70eV
測定された各元素のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いて表面元素比率(原子%)を算出した。元素比率(原子%)の基準は、炭素、フッ素及び酸素の合計を100原子%としたときの値である。
<表面層の厚みの測定方法>
まず、上記吸熱ピーク温度と吸熱量の測定と同様にして、電子写真部材から表面層を単離した。そして単離した表面層の厚みを、マイクロメータ(商品名:高精度デジマチックマイクロメータ MDH-25MB、株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した。
<実施例1>
本実施例では、図3に示されるような定着フィルムを作製した。
(PFAチューブの内面処理)
ネオフロンPFA:AP-231SH(ダイキン工業株式会社製)を原材料として押し出し成型することにより得られた、厚み20μmのPFAチューブを用いた。安息香酸ナトリウムを5質量%、サーフロンS-113(AGCセイミケミカル株式会社製)を1質量%となるよう調製した水溶液をPFAチューブの内側の表面全域に塗布し、自然乾燥し
た。その後、300mJ/cm/パルスのKrFエキシマレーザー光を6ショット照射し、内面処理済みのPFAチューブを得た。
(基層)
内径が24mmで、厚みが30μmのSUSを基層として用いた。
(内面摺動層の形成)
まず、芳香族テトラカルボン酸二無水物あるいはその誘導体と、芳香族ジアミンとの略等モル量を非プロトン系の極性有機溶媒中で反応させてポリイミド前駆体溶液を得た。得られたポリイミド前駆体溶液を、リングコート法により基層の内周面に塗布し、電気炉にて溶媒を乾燥後、260~400℃で1時間程度加熱して内面摺動層を形成した。内面摺動層の厚みは12μmとした。
(プライマー層及び弾性層の形成)
内面摺動層を形成した基層に対し、以下の手順でプライマー層及び弾性層を形成した。
基層上にヒドロシリル系のシリコーンプライマー(DY39-051 A/B;ダウ・東レ社製)を塗工し、200℃にて5分間加熱硬化した。そのプライマー層上に下記成分(a)~(d)を混合した液状付加硬化型シリコーンゴム混合物を厚さ250μmにて塗工し、200℃にて30分間加熱硬化して、厚み250μmのシリコーンゴム弾性層を形成した。
(シリコーンゴム混合物)
成分(a):不飽和脂肪族基を有する直鎖型オルガノポリシロキサン
成分(b):ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン
成分(c):触媒
成分(d):熱伝導性フィラー
まず、成分(a)として分子鎖両末端にのみ不飽和脂肪族基であるビニル基を有し、その他不飽和脂肪族基を含まない非置換炭化水素基としてメチル基を有するシリコーンポリマーを100質量部準備した。このシリコーンポリマー(商品名:DMS-V35、Gelest社製、粘度5000mm/s)を以降「Vi」と称する。
次いで、このViに成分(d)として、アルミナ(商品名:アミナビーズCB―P10、昭和電工株式会社製)を370質量部添加し、自公転ミキサー(シンキー社製、ARV-5000)にセットし、600rpmで2分攪拌混合して混合物1を得た。
次いで、硬化遅延剤である1-エチニル-1-シクロヘキサノール(東京化成工業株式会社製)0.2質量部を同重量のトルエンに溶解したものを、混合物1中に添加して混合物2を得た。
次いで、成分(c)としてヒドロシリル化触媒(白金触媒:1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、および2-プロパノールの混合物)0.1質量部を、混合物2中に添加して混合物3を得た。
さらに、成分(b)としてシロキサン骨格が直鎖状で、ケイ素に結合した活性水素基を側鎖にのみ有するシリコーンポリマー(商品名:HMS-301、Gelest社製、粘度30mm/s、以降「SiH」と称する)を、1.1質量部計量した。これを、混合物3に添加し、十分に混合することで、液状付加硬化型シリコーンゴム混合物を得た。
(接着剤層の塗布)
弾性層を形成した後、弾性層上に、リングコート法を用いて接着剤(SE1819CV
A/B;ダウ・東レ社製)を7μmの厚みで塗布した。
(表面層の形成)
接着剤を塗布した後、表面層として上述した内面処理済みのPFAチューブを、外側から真空拡張し被覆する方法(真空拡張被覆法)により接着剤上に被覆した。
具体的には、接着剤が塗布された弾性層形成後のワークの外径よりも大きな内径を有する外筒の内面にPFAチューブを真空状態で吸着させて拡径し、ワークをその中に挿入した後、真空を解除することで接着剤上に被覆した。PFAチューブと弾性層との間の余分な接着剤と空気をOリング等で扱き落とした後、電気炉等の加熱手段にて接着剤を硬化・接着させた。具体的には、電気炉を用い200℃で2分加熱した。その後、両端部を所望の長さ(336.5mm)に切断した。
(表面層の加熱処理)
両端部を所望の長さに切断した後、内径がφ42mmの加熱筒に挿入し、加熱筒内部のバンドヒーターによって全域を加熱処理した。加熱温度は330℃とし、表面層の実体温度がPFAの融解温度以上となるように加熱処理した。
加熱時間は表面層の実体温度が所望の加熱処理温度に十分到達可能な時間として、加熱筒に定着フィルムを投入後3分間とした。投入して3分経過後、加熱筒を20℃/分の速度で200℃まで冷却したのちに加熱筒から常温雰囲気下へ取り出し、定着フィルムを得た。
作製した定着フィルムの吸熱ピーク温度と吸熱量、D3、D1、Ra、C-F/2-Oの値を求めた。これらの結果を表1に示す。
<紙の凹凸への追従性(溶融ムラ)の評価>
紙上に形成されたトナー像を定着させたあとの、トナーの溶融状態を観察することで定着部材の紙凹凸への追従性の指標とすることができる。
耐摩耗性の評価と同様のフィルム加熱方式の定着装置40を用いて、温度10℃相対湿度50%の環境下、溶融ムラ評価画像を10枚連続して定着した。紙は、A4サイズの再生紙(商品名:リサイクルペーパー GF-R100;キヤノン株式会社製、厚さ92μm、坪量66g/m、古紙配合率70%、ベック平滑度23秒(日本産業規格(JIS) P8119:1998に準拠した方法で計測))を用いた。溶融ムラ評価画像は、シアントナーとマゼンタトナーを100%濃度で形成した10mm×10mmのパッチ画像を、紙面中央部付近に配置した画像である。
溶融ムラの目安は、以下の通りである。2色が形成された画像部で十分に熱と圧力が加わることでトナーが溶融し混色する。特に紙凹凸の凹部において、熱が加わっていても圧力が加わっていない場合には、トナーの粒界が定着後に残存するため、十分に混色しない状態で溶融ムラが生じる。定着部材が凹凸に十分追従できない場合には、凸部は圧力が加わり混色するものの、凹部においては混色が不十分となる。そのため凹凸への追従性の判定は画像形成域の溶融状態を観察することで確認した。
溶融ムラ評価画像を10枚連続して印刷した後、10枚目のサンプルを抜き取り、画像形成部を光学顕微鏡で観察し溶融ムラを評価した。評価基準は以下のとおりである。下記の評価基準で評価がA~Cであれば、本開示の効果が得られているものと判断した。
(評価基準)
A:紙繊維の凹部においてもトナー粒界が全く見えず、凹部凸部共に混色している状態。B:紙繊維の凹部においてもトナー粒界がほぼ見えず、凹部凸部共に混色している状態。C:紙繊維の凹部において一部トナー粒界が観察されるものの、凹部凸部共におおむね混色している状態。
D:紙繊維の凸部のみが混色され、凹部ではトナー粒界が多く観察される状態。
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の評価は、作製した定着フィルムを組み込んでなる図2に記載のフィルム加熱方式の定着装置40を用いて行った。加圧力を一端側が156.8N、総加圧力が313.6N(32kgf)となるようにした状態で、加圧ローラ表面の移動スピード(周速)が320mm/secになるように回転駆動させ、定着フィルムの通紙部表面温度が170℃に制御された状態で同一サイズの紙(A4横,GF-C068)を70枚/分で連続通紙した。下記の評価基準で評価がA~Cであれば、本開示の効果が得られているものと判断した。
(評価基準)
A:50万枚通紙しても表面層の削れがほとんど見られない
B:20万枚通紙しても表面層の削れがほとんど見られないが、50万枚通紙すると用紙端部による表面層の軽微な削れが見られる
C:20万枚通紙すると用紙端部による表面層の軽微な削れが見られ、50万枚通紙すると用紙端部による表面層の明確な削れが見られる
D:20万枚通紙すると用紙端部による表面層の明確な削れが見られる
<画像光沢度の評価>
画像光沢度の評価は、耐摩耗性の評価と同様のフィルム加熱方式の定着装置40を用いて行った。温度23℃相対湿度50%の環境下、定着フィルムの通紙部表面温度が160℃に制御された状態で黒ベタ画像を定着した。紙は、A4サイズの紙(商品名:GFC-081(81.0g/m);キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。出力された画像の60°グロスを光沢計(日本電色工業製ハンディ型光沢計PG-1M)にて測定し、その平均値を下記の基準にて評価した。
60°グロスとは、60°の入射角で測定した光沢度である。60°の入射角の場合、光沢度は屈折率が可視波長範囲全域にわたって1.567であるガラス表面層における光の鏡面反射率(10%)を100とした値である。下記の評価基準で評価がA~Cであれば、本開示の効果が得られているものと判断した。
(評価基準)
A:グロスが10以上
B:グロスが8以上10未満
C:グロスが6以上8未満
D:グロスが6未満
<実施例2>
PFAチューブの原材料をネオフロンPFA:AP-230(ダイキン工業株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
<実施例3>
表面層の加熱処理において、加熱筒の冷却速度を50℃/分の速度に変更した以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
<実施例4>
表面層の加熱処理において、加熱筒の冷却速度を60℃/分の速度に変更した以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
<実施例5>
PFAチューブの内面処理において、KrFエキシマレーザー光のショット数を5ショットに変更した以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
<実施例6>
PFAチューブの原材料をネオフロンPFA:AP-230(ダイキン工業株式会社製)に変更し、表面層の加熱処理において、加熱筒の冷却速度を8℃/分の速度に変更した以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
<実施例7>
PFAチューブの厚みを30μmに変更した以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
<実施例8>
PFAチューブの厚みを40μmに変更した以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
<実施例9>
PFAチューブの内面処理において、KrFエキシマレーザー光のショット数を10ショットに変更した以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
<比較例1>
PFAチューブの原材料を451HP-J(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製)に変更し、PFAチューブの内面処理において、KrFエキシマレーザー光のショット数を2ショットに変更した。また、表面層の加熱処理において、加熱筒に定着フィルムを投入して3分経過後、加熱筒を冷却することなく加熱筒から常温雰囲気下へ取り出して自然冷却し、定着フィルムを得た。
上記以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
<比較例2>
PFAチューブの原材料をP-66P(AGC株式会社製)に変更し、PFAチューブの内面処理において、KrFエキシマレーザー光のショット数を2ショットに変更した。また、表面層の加熱処理において、加熱筒に定着フィルムを投入して3分経過後、加熱筒を冷却することなく加熱筒から常温雰囲気下へ取り出して自然冷却した。
上記以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
<比較例3>
PFAチューブの原材料を959HP Plus(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製)に変更し、PFAチューブの内面処理において、KrFエキシマレーザー光のショット数を2ショットに変更した以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
<比較例4>
PFAチューブの内面処理において、KrFエキシマレーザー光のショット数を2ショットに変更した。また、表面層の加熱処理において、加熱筒に定着フィルムを投入して3分経過後、加熱筒を冷却することなく加熱筒から常温雰囲気下へ取り出して自然冷却した。
上記以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
<比較例5>
PFAチューブの内面処理において、KrFエキシマレーザー光のショット数を2ショットに変更した以外は実施例1と同様にして、定着フィルムを得た。
実施例2~9、比較例1~5において、作製した定着フィルムの吸熱ピーク温度と吸熱量、D3、D1、Ra、C-F/2-Oの値を求めた。また、実施例1と同様の評価方法に基づいて耐摩耗性の評価、溶融ムラの評価、及び画像光沢度の評価を行った。これらの
結果を表1に示す。
Figure 2025004836000006

表中、吸熱ピーク温度は、DSCによる2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度を示し、吸熱量は1度目の昇温過程における吸熱量を示す。
本開示は以下の構成に関する。
(構成1)
少なくとも、基層、弾性層及び表面層をこの順に有する電子写真部材であって、
該表面層は、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を含み、
該表面層からサンプリングした試料を測定試料として、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度及び降温速度をいずれも20℃/分として2度の測定を行ったときの吸熱曲線において、
2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度が、304℃以下であり、
1度目の昇温過程における吸熱量が、21J/g以上であり、
該表面層の外表面における球晶の面積平均径をD3としたとき、D3が40μm以下である、ことを特徴とする電子写真部材。
(構成2)
前記表面層の外表面の算術平均粗さRaが、0.20μm以下である、構成1に記載の電子写真部材。
(構成3)
前記表面層の外表面における前記球晶の個数平均径をD1としたとき、D3/D1が1.5以下である、構成1又は2に記載の電子写真部材。
(構成4)
前記D3が5μm以上である、構成1~3のいずれかに記載の電子写真部材。
(構成5)
前記1度目の昇温過程における前記吸熱量が27J/g以下である、構成1~4のいずれかに記載の電子写真部材。
(構成6)
前記2度目の昇温過程における前記吸熱ピーク温度が297℃以上である、構成1~5のいずれかに記載の電子写真部材。
(構成7)
前記2度目の昇温過程における前記吸熱ピーク温度が300℃以上である、構成1~6
のいずれかに記載の電子写真部材。
(構成8)
前記表面層の前記弾性層と対向する側の面における炭素元素比率をC原子%、フッ素元素比率をF原子%、酸素元素比率をO原子%としたとき、
C-F/2-O≧30
を満足する、構成1~7のいずれかに記載の電子写真部材。
(構成9)
前記表面層の厚みが30μm以下である、構成1~8のいずれかに記載の電子写真部材。
(構成10)
前記表面層の厚みが0~30μmである構成1~9のいずれかに記載の電子写真部材。(構成11)
前記電子写真部材が、エンドレス形状を有する電子写真ベルトである、構成1~10のいずれかに記載の電子写真部材。
(構成12)
前記電子写真部材が、定着ベルトである構成11に記載の電子写真部材。
(構成13)
電子写真画像形成装置における定着装置であって、
該定着装置は、定着部材と、該定着部材に対向して配置された加圧部材と、を具備し、
該定着部材及び該加圧部材の少なくとも一方が、構成1~12のいずれか一項に記載の電子写真部材である、ことを特徴とする定着装置。
(構成14)
定着装置を備える電子写真画像形成装置であって、
該定着装置は、定着部材と、該定着部材に対向して配置された加圧部材と、を具備し、
該定着部材及び該加圧部材の少なくとも一方が、構成1~12のいずれか一項に記載の電子写真部材である、ことを特徴とする電子写真画像形成装置。
10:画像形成部、11:感光ドラム、12:帯電器、13:レーザスキャナ、14:現像器、15:クリーナ、17:一次転写ブレード、20:給紙カセット、25:マルチ給紙トレイ、23:レジストローラ対、31:中間転写ベルト、35:二次転写ローラ、
40:定着器、41:定着フィルム、41a:表面層、41b:基層、41c:弾性層、43:加熱体、44:加圧ローラ、45:接触式サーミスタ、46:ヒーターホルダ、P:記録材、T:トナー

Claims (14)

  1. 少なくとも、基層、弾性層及び表面層をこの順に有する電子写真部材であって、
    該表面層は、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を含み、
    該表面層からサンプリングした試料を測定試料として、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度及び降温速度をいずれも20℃/分として2度の測定を行ったときの吸熱曲線において、
    2度目の昇温過程における吸熱ピーク温度が、304℃以下であり、
    1度目の昇温過程における吸熱量が、21J/g以上であり、
    該表面層の外表面における球晶の面積平均径をD3としたとき、D3が40μm以下である、ことを特徴とする電子写真部材。
  2. 前記表面層の外表面の算術平均粗さRaが、0.20μm以下である、請求項1に記載の電子写真部材。
  3. 前記表面層の外表面における前記球晶の個数平均径をD1としたとき、D3/D1が1.5以下である、請求項1に記載の電子写真部材。
  4. 前記D3が5μm以上である、請求項1に記載の電子写真部材。
  5. 前記1度目の昇温過程における前記吸熱量が27J/g以下である、請求項1に記載の電子写真部材。
  6. 前記2度目の昇温過程における前記吸熱ピーク温度が297℃以上である、請求項1に記載の電子写真部材。
  7. 前記2度目の昇温過程における前記吸熱ピーク温度が300℃以上である、請求項1に記載の電子写真部材。
  8. 前記表面層の前記弾性層と対向する側の面における炭素元素比率をC原子%、フッ素元素比率をF原子%、酸素元素比率をO原子%としたとき、
    C-F/2-O≧30
    を満足する、請求項1に記載の電子写真部材。
  9. 前記表面層の厚みが30μm以下である、請求項1に記載の電子写真部材。
  10. 前記表面層の厚みが10~30μmである請求項1に記載の電子写真部材。
  11. 前記電子写真部材が、エンドレス形状を有する電子写真ベルトである、請求項1に記載の電子写真部材。
  12. 前記電子写真部材が、定着ベルトである請求項11に記載の電子写真部材。
  13. 電子写真画像形成装置における定着装置であって、
    該定着装置は、定着部材と、該定着部材に対向して配置された加圧部材と、を具備し、
    該定着部材及び該加圧部材の少なくとも一方が、請求項1~12のいずれか一項に記載の電子写真部材である、ことを特徴とする定着装置。
  14. 定着装置を備える電子写真画像形成装置であって、
    該定着装置は、定着部材と、該定着部材に対向して配置された加圧部材と、を具備し、
    該定着部材及び該加圧部材の少なくとも一方が、請求項1~12のいずれか一項に記載の電子写真部材である、ことを特徴とする電子写真画像形成装置。

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