以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
図1〜図4には、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1が示されている。ナプキン1は、図1に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側(前側)から股間部を介して背側(後側)に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有し、また、着用時に着用者の膣口等の排泄部と対向する排泄部対向部を含む排泄部対向域Mと、該排泄部対向域Mよりも縦方向Xの前側に配される前方域Fと、該排泄部対向域Mよりも縦方向Xの後側に配される後方域Rとを有する。前記排泄部対向部は、排泄部対向域Mの横方向Yの中央部に位置する。
本実施形態のナプキン1は、いわゆる夜用ナプキンであり、主に夜間(着用者の就寝時)に着用される。一般に、夜用ナプキンは、主に着用者の活動時に着用されるいわゆる昼用ナプキンよりも長時間にわたって着用されるため、その長い着用時間に排泄される多量の経血等の排泄物を吸収保持し得る能力が要求される。斯かる要求に対応するため、ナプキン1は、一般的な昼用ナプキン(後方域にフラップ部を有さない生理用ナプキン)に比べて面積が大きいことが好ましく、具体的には、縦方向Xの全長が、好ましくは27cm以上、より好ましくは30cm以上である。
ナプキン1は、図1に示すように、縦方向Xに長い形状の吸収性本体5と、後方域Rに位置し、吸収性本体5の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出する部材を含んで構成される一対の後方フラップ部52,52とを具備する。本実施形態の吸収性本体5は更に、排泄部対向域Mに位置し、吸収性本体5の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出する部材を含んで構成される一対の前方フラップ部51,51を具備する。前方フラップ部51は、この種の生理用ナプキンにおいてウイング部などと呼ばれる部位である。
吸収性本体5は、ナプキン1の主体をなす部分であり、少なくとも吸収体4と、吸収体4の肌対向面側に配され、着用者の肌と接触し得る液透過性の表面シート2とを具備する。本実施形態の吸収性本体5は更に、図2等に示すように、吸収体4の非肌対向面側に配された防漏性の裏面シート3を具備する。吸収性本体5は、縦方向Xにおいて前方域F、排泄部対向域M及び後方域Rの3つに区分される。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
本実施形態のナプキン1は、図1に示すように、ナプキン1を縦方向Xに折り畳んだときに形成された1本の中央折り畳み線CFLを境にして、縦方向Xの前方の第1領域と、後方の第2領域とに区分されるところ、該第1領域は排泄部対向域Mと前方域Fとからなり、該第2領域は後方域Rからなる。つまり、中央折り畳み線CFLは排泄部対向域Mと後方域Rとの境界である。中央折り畳み線CFLは、表面シート2を内側にして(裏面シート3を外側にして)、ナプキン1を縦方向Xに折り畳むことによって形成されており、横方向Yに延びる直線状をなしている。中央折り畳み線CFLは、ナプキン1の縦方向Xの中央部に形成されていればよく、具体的には、ナプキン1の縦方向Xの中央を基準として、その基準から縦方向Xの前方側及び後方側それぞれにナプキン1の縦方向Xの全長の10%以内の領域である。
また、本実施形態のナプキン1では、図1に示すように、前方域Fに前方折り畳み線FFLが1本形成されているとともに、後方域Rに後方折り畳み線RFLが1本形成されている。これらの折り畳み線FFL,RFLも、中央折り畳み線CFLと同様に、表面シート2を内側にしてナプキン1を縦方向Xに折り畳むことによって形成されており、横方向Yに延びる直線状をなしている。前方折り畳み線FFLは通常、ナプキン1の縦方向Xの前端から縦方向Xの後方側にナプキン1の縦方向Xの全長の10〜30%離間した位置に形成される。後方折り畳み線RFLは通常、ナプキン1の縦方向Xの後端から縦方向Xの前方側にナプキン1の縦方向Xの全長の10〜30%離間した位置に形成される。
このように、本実施形態のナプキン1は、縦方向Xの前側から順に、前方折り畳み線FFL、中央折り畳み線CFL、後方折り畳み線RFLの合計3本の折り畳み線を有し、これらの折り畳み線は、ナプキン1が縦方向Xに折り畳まれて個包装される際に使用される。つまりナプキン1の個包装形態は、3本の折り畳み線による四つ折り形態である。
本発明の吸収性物品における排泄部対向域Mは、本実施形態のナプキン1のように、吸収性物品が前方フラップ部(いわゆるウイング部)を有する場合には、中央折り畳み線CFLと前方フラップ部51の縦方向Xの前側の付け根とで区分される領域である。つまり排泄部対向域Mは、前方フラップ部51の縦方向Xの前側の付け根を通って横方向Yに延びる仮想直線を縦方向Xの前端とし、中央折り畳み線CFLを縦方向Xの後端とする、1つの連続した領域である。なお、一対の前方フラップ部51,51のうちの一方と他方とで、縦方向Xの前側の付け根の位置が異なる場合は、中央折り畳み線CFLから相対的に遠い方の該付け根、すなわち、ナプキン1の縦方向Xの前端(ナプキン1の前方域F側の縦方向端)に相対的に近い方の該付け根を、排泄部対向域Mと周辺部との境界に用いる。本実施形態のナプキン1では、図1に示すように、一対の前方フラップ部51,51は、ナプキン1を横方向Yに二分して縦方向Xに延びる縦中心線CLを基準として左右対称に形成されており、したがって、一方の前方フラップ部51の縦方向Xの前側の付け根と他方の前方フラップ部51のそれとは、縦方向Xにおいて同位置に存在する。
また、吸収性物品が前方フラップ部51を有しない場合、該吸収性物品の排泄部対向域Mは、該吸収性物品が個装形態に折り畳まれた際に生じる、該吸収性物品を横方向に横断する2本の折り畳み線について、該吸収性物品の縦方向の前端から数えて第1折り畳み線と第2折り畳み線とに囲まれた領域を意味する。これを図1に即して説明すると、前方折り畳み線FFLが前記第1折り畳み線に相当し、中央折り畳み線CFLが前記第2折り畳み線に相当する。つまり、仮に、図1に示すナプキン1が一対の前方フラップ部51,51を有さない場合、その排泄部対向域Mは、前方折り畳み線FFLを縦方向Xの前端とし、中央折り畳み線CFLを縦方向Xの後端とする、1つの連続した領域である。
図2〜図4に示すように、表面シート2は、吸収体4の肌対向面の全域を被覆し、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆している。裏面シート3は、表面シート2よりも更に横方向Yの外方に延出し、後述するサイドシート60とともにサイドフラップ部53を形成している。サイドフラップ部53は、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁4S,4Sから横方向Yの外方に延出する部材(本実施形態では表面シート2、裏面シート3及びサイドシート60)を含んで構成される部分であり、前述の前方フラップ部51及び後方フラップ部52を含む。吸収体4の周縁から外方に延出する複数の部材どうしは、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3と吸収体4との間はそれぞれ接着剤によって接合されていてもよい。
表面シート2、裏面シート3としては、この種の吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく用いることができる。表面シート2としては、例えば、液透過性を有する単層又は多層構造の不織布を用いることができ、該不織布として、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布を例示できる。表面シート2を構成する不織布には、界面活性剤等の親水化剤を用いた親水化処理が施されていてもよい。裏面シート3としては、防漏性を有するシート、すなわち、液不透過性(液を全く通さない性質)又は液難透過性(液不透過性とまでは言えないものの、液を通し難い性質)を有するシートを用いることができ、例えば、透湿性の樹脂フィルムを用いることができる。
一対の前方フラップ部51,51は、それぞれ、排泄部対向域Mのサイドフラップ部53を構成する部材(本実施形態では裏面シート3及びサイドシート60)が周辺部よりも横方向Yの外方に延出して形成されている。本実施形態の前方フラップ部51は、図1に示す如き平面視において、下底(上底に比して長い辺)が吸収性本体5側に位置する略台形形状を有し、排泄部対向域Mの縦方向Xの略全長にわたって存在している。前方フラップ部51の非肌対向面には、前方フラップ部51をショーツ等の着衣に固定する前方フラップ部固定材54が設けられている。なお、前方フラップ部51は、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられるため、前方フラップ部固定材54の形成面である前方フラップ部51の非肌対向面は、その使用時には着用者の肌側に向けられ、肌対向面となる。前方フラップ部固定材54は、粘着剤が塗布されて形成されており、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シートによって被覆されている。
一対の後方フラップ部52,52は、それぞれ、後方域Rのサイドフラップ部53を構成する部材(本実施形態では裏面シート3及びサイドシート60)が周辺部よりも横方向Yの外方に延出して形成されている。本実施形態の後方フラップ部52は、図1に示す如き平面視において、縦方向Xの前側(排泄部対向域M寄りの部分)は、縦方向Xの前側から後側に向かうに従って横方向Yの長さ(幅)が漸次増加し、縦方向Xの後端側は、縦方向Xの前側から後側に向かうに従って幅が漸次減少し、該前側と該後側とに挟まれた縦方向中間部は、幅が一定である。また、本実施形態の後方フラップ部52は、排泄部対向域Mの縦方向Xの略全長にわたって存在し、前方フラップ部51と同様に縦中心線CLを基準として左右対称に形成されている。後方フラップ部52の非肌対向面には、後方フラップ部52をショーツ等の着衣に固定する後方フラップ部固定材55が設けられている。後方フラップ部52は、これを着衣に固定する際に折り返されず、その非肌対向面が広げられた状態すなわち吸収性本体5の側方に延ばされた状態で、後方フラップ部固定材55を介して、着衣の肌対向面すなわち内面に固定される。後方フラップ部固定材55は、粘着剤が塗布されて形成されており、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シートによって被覆されている。
図1〜図4に示すように、吸収性本体5の縦方向Xに沿う両側部には、一対の防漏カフ6,6が配されている。一対の防漏カフ6,6は、それぞれ、防漏カフ形成用シートを含んで構成され、且つ該防漏カフ形成用シートが他の部材に固定された基端部61と、該防漏カフ形成用シートが基端部61を起点として着用者側に起立する起立部62とを有している。本実施形態では、前述のサイドシート60が前記防漏カフ形成用シートである。
サイドシート60(防漏カフ形成用シート)は、図1に示すように、吸収性本体5の縦方向Xの略全長にわたって、吸収性本体5の縦方向Xに沿う側部に沿って配されており、吸収性本体5の肌対向面すなわち表面シート2の肌対向面が、サイドシート60によって被覆されている。これにより一対の防漏カフ6,6は、それぞれ、前方域Fから後方域Rにわたって縦方向Xに連続的に配されている。サイドシート60としては液不透過性シートが好ましく、例えば、裏面シート3として使用可能なものを用いることができる。
基端部61は、ナプキン1の着用時に起立部62が着用者の肌側に向かって起立する際の起立基端となる部分であり、より具体的には、サイドシート60(防漏カフ形成用シート)の「他の部材」との固定部における、起立部62と横方向Yにおいて隣接する部分であり、換言すれば、該固定部における横方向Yの最内方に位置する部分である。また、前記「他の部材」は、ナプキン1の構成部材のうちでサイドシート60以外のものであり、典型的には、サイドシート60の非肌対向面側に該サイドシート60と接触可能に配された部材であり、本実施形態では図2〜図4に示すように、表面シート2である。
基端部61は、前述したとおり、サイドシート60(防漏カフ形成用シート)と他の部材との固定部であり、典型的には、ホットメルト等の接着剤、熱融着等の公知の接合手段によって形成されている。本実施形態の基端部61は、図1に示すように、平面視直線状をなし、サイドシート60の縦方向Xの略全長にわたって縦方向Xに延在し、また、図2〜図4に示すように、表面シート2の縦方向Xに沿う側縁2Sの近傍に位置している。
起立部62は、サイドシート60(防漏カフ形成用シート)における他の部材との非固定部であり、少なくとも基端部61から横方向Yの内側へ延びる内側延出部620を含んで構成されている。本実施形態の起立部62は、図2及び図3に示すように、内側延出部620と、折り返し部621を介して横方向Yの外側へ延びる外側延出部622とを含んで構成されている。起立部62においては、折り返し部621が縦中心線CL(図1参照)に最も近く、横方向Yの最内方に位置している。外側延出部622における折り返し部621側とは反対側の端(縦方向Xに沿う側縁)は、自由端となっている。ナプキン1の着用時においては、外側延出部622が着用者の肌から相対的に近い位置に配され、内側延出部620が着用者の肌から相対的に遠い位置に配される。
起立部62の外側延出部622は、縦方向Xに伸縮性を有している。本実施形態では図2及び図3に示すように、外側延出部622を構成するサイドシート60(防漏カフ形成用シート)に、縦方向Xに伸縮性を有する弾性部材63が配されており、斯かる構成により、外側延出部622に縦方向Xの伸縮性が付与されている。更に説明すると、本実施形態では、後述する起立阻害部64及び端部固定部65を含む、防漏カフ6の全体が、サイドシート60(防漏カフ形成用シート)が横方向Yに二つ折りされて二層構造となった部分を含んで構成され、その二つ折りの折り目から折り返し部621にわたる部分が外側延出部622である。そして、起立部62の外側延出部622における二層構造を構成するサイドシート60,60間に、弾性部材63が伸長状態で固定されている。サイドシート60の前記折り目が位置する部分は、起立部62の自由端となっている。二つ折りされたサイドシート60の先端部は、基端部61にて表面シート2に接合されている。
本実施形態の弾性部材63は糸状をなし、その長手方向を縦方向Xに一致させて、サイドシート60における起立部62の外側延出部622を構成する部分に伸長状態で固定されている。弾性部材63は糸状が好ましいが、これよりも幅広の帯状でもよい。また、本実施形態では、各防漏カフ6に弾性部材63が3本配されているが、各防漏カフ6における弾性部材63の数は特に制限されず、1本でも複数本でもよい。また、起立部62の外側延出部622が縦方向Xに伸縮性を有していることを前提として、外側延出部622に弾性部材63が配されていなくてもよく、その場合は例えば、サイドシート60における外側延出部622を構成する部分自体が、縦方向Xに伸縮性を有していればよい。
起立部62は、縦方向Xに離間した一対の起立阻害部64,64に挟まれた部分である。本実施形態では、図1に示すように、起立阻害部64は縦方向Xに所定間隔を置いて一対存在し、より具体的には、前方域F及び後方域Rの一対の防漏カフ6,6それぞれに起立阻害部64が存在している。
図4には、後方部Rの起立阻害部64が示されている。起立阻害部64は、起立部62が他の部材に固定された部分であり、文字どおり起立部62の起立が阻害されている。本実施形態の起立阻害部64は、図4に示すように、起立部62を構成する内側延出部620と外側延出部622とが固定されて形成されている。より具体的には、内側延出部620と外側延出部622とが互いに接合されているとともに、内側延出部620が基端部61よりも横方向Yの内方位置にて表面シート2に固定されており、両延出部620,622が表面シート2に一体的に固定されている。両延出部620,622どうしの固定手段、及び内側延出部620と表面シート2との固定手段は、何れも特に制限されず、例えば、ホットメルト等の接着剤、熱融着等の公知の固定手段を用いることができる。なお、前方域Fの起立阻害部64も、後方域Rの起立阻害部64と同様に構成されている。
ナプキン1の着用時には、防漏カフ6の起立部62(一対の起立阻害部64,64に挟まれた部分)が、弾性部材63の収縮力により、図2及び図3に示すように、基端部61を起立基端とし、外側延出部622を自由端側として起立し、これによりナプキン1の肌対向面に排泄された経血等の排泄液の横漏れが効果的に防止される。また、起立部62が起立した状態では、弾性部材63の収縮力により、ナプキン1の縦方向Xの中央部が非肌対向面側(裏面シート3側)に凸となるように、ナプキン1の全体が湾曲して舟形形状に変形し、これによりナプキン1が着用者の身体形状にフィットしやすくなる。
ナプキン1では、図1に示すように、防漏カフ6における起立阻害部64よりも縦方向Xの外方に位置する部分は、端部固定部65にて他の部材に固定されている。本実施形態では、前記「他の部材」は表面シート2及び裏面シート3である。また、本実施形態の端部固定部65は、図1に示すように、平面視において波線状ないしジグザグ線状をなし、少なくとも防漏カフ6の外側延出部622及びその近傍、より具体的には、サイドシート60(防漏カフ形成用シート)における基端部61から外側延出部622にわたる部分が他の部材に固定されて形成されている。端部固定部65は、ホットメルト等の接着剤、熱融着等の公知の固定手段によって形成されており、接着剤の塗布部又は熱融着された部分を有しており、その形成方法に起因して、周辺の端部固定部65の非形成部に比して硬く高剛性である。なお、端部固定部65の平面視形状は、図1に示す如き線状に限定されず任意に設定可能であり、例えば、防漏カフ6における、起立阻害部64よりも縦方向Xの外方で且つ基端部61よりも横方向Yの内方に位置する部分の全体が、端部固定部65であってもよい。
本実施形態の吸収体4は、図2〜図4に示すように、液吸収性を有し、経血等の体液を吸収保持する吸収性コア40と、該吸収性コア40の外面を被覆する液透過性のコアラップシート41とを含んで構成されている。吸収性コア40は、吸収性本体5と同様に、図1に示す如き平面視において縦方向Xに長い形状をなしており、吸収性コア40の長手方向は、ナプキン1の縦方向Xに一致し、吸収性コア40の幅方向は、ナプキン1の横方向Yに一致している。吸収体4(吸収性コア40)は、図1に示すように、ナプキン1(吸収性本体5)の縦方向Xの略全長にわたっており、前方域Fから排泄部対向域Mを介して後方域Rにわたって延在している。吸収性コア40とコアラップシート41との間は、ホットメルト型接着剤等の接着剤により接合されていてもよい。
コアラップシート41は、1)1枚のシートのみから構成されてもよく、2)複数枚のシートを含んで構成されていてもよい。前記1)のコアラップシート41は、例えば、吸収性コア40の横方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚の連続したシートであり、吸収性コア40の肌対向面の全域を被覆し、且つ吸収性コア40の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の下方に巻き下げられて、吸収性コア40の非肌対向面の全域を被覆する。前記2)のコアラップシート41は、例えば、吸収性コア40の肌対向面を被覆する1枚の肌側コアラップシートと、該肌側コアラップシートとは別体で、吸収性コア40の非肌対向面を被覆する1枚の非肌側コアラップシートとの2枚を含んで構成される。
吸収性コア40は、コア形成材料を主体として構成され、典型的には、コア形成材料のみから構成される。コア形成材料には少なくとも、吸水性繊維12Fと、繊維11Fを含む繊維塊11とが含まれる。繊維塊11の構成繊維11Fは、典型的には合成繊維である。図2に示す吸収性コア40は、繊維塊11及び吸水性繊維12Fに加えて更に、粒子状の吸水性ポリマー13を含有する。
吸収性コア40は、実質的に吸収体4そのものとも言えるものであり、以下の吸収性コア40についての説明は、特に断らない限り、本発明に係る吸収体の説明として適宜適用される。本発明に係る吸収体には、コアラップシートを含まず吸収性コアのみで構成された形態が包含されるところ、斯かる形態の吸収体では、吸収体と吸収性コアとは同じ意味である。
吸収性コア40を構成する材料(コア形成材料)には少なくとも、図2〜図4に示すように、吸水性繊維12Fと、繊維11Fを含む繊維塊11とが含まれる。本実施形態の吸収性コア40では、コア形成材料として更に、吸水性ポリマー13が含まれる。繊維塊11の構成繊維11Fは、吸水性繊維12Fに比べて吸水性の低い繊維(弱吸水性の繊維)である。
本明細書において「繊維塊」とは、複数の繊維がまとまって一体となった繊維集合体のことである。本発明で用いる繊維塊はその製造方法を問わず、例えば、一定の大きさを有する合成繊維シートをカッター等により切断して得られたシート片の如き、定形の繊維集合体でもよく、あるいは、前記の特許文献に不織布片の如き、合成繊維を主体とする不織布を細片状に粉砕し、あるいはむしり取ったり引きちぎり取ったりして製造された不定形の繊維集合体でもよい。本発明では、吸収性コアは、i)繊維塊として定形の繊維集合体のみを含む形態でもよく、ii)繊維塊として不定形の繊維集合体のみを含む形態でもよく、あるいはiii)繊維塊として定形の繊維集合体と不定形の繊維集合体とが混ざった形態でもよいが、好ましくは前記i)の形態が用いられる。不定形の繊維集合体は、構成繊維がランダムに配向しているために、表面のあちこちから繊維が突出するなどして表面が荒れているため、該繊維集合体同士がそれらの全面に亘って絡み合い、その結果、各繊維集合体の動きの自由度が制限されて柔軟性が低下するおそれがある。本実施形態の繊維塊11は、後述するように定形の繊維集合体である。
繊維塊11は、前述したとおり、複数の繊維11Fが塊状に集積されて一体化された繊維集合体であり、その形態を保持した状態で吸収性コア40中に複数存在する。そして繊維塊11は、その繊維集合体の形態に起因して、主として、吸収性コア40の柔軟性、クッション性、圧縮回復性、保形性の向上に寄与する。
吸水性繊維12Fは、吸収性コア40中に複数存在しており、それら複数の吸水性繊維12Fは互いに交絡し得るものの、繊維塊11の構成繊維11Fのように集積されておらず、個々独立に存在することが好ましい。吸水性繊維12Fは主として、吸収性コア40の液吸収性の向上に寄与し、また、吸収性コア40の保形性の向上にも寄与する。
吸水性繊維12Fとしては、この種の吸収性物品の吸収体の形成材料として従来使用されている吸水性繊維を用いることができる。吸水性の繊維としては、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。吸水性繊維12Fの主たる役割が吸収体4の液吸収性の向上である点に鑑みれば、吸水性繊維12Fとしては、セルロース系繊維が好ましい。
吸水性ポリマー13は、吸水性ポリマーの小片として吸収性コア40中に複数存在し、主として、吸収性コア40内の液吸収性の向上に寄与する。吸水性ポリマー13の小片の形状は特に制限されず、例えば、球状、塊状、俵状、繊維状、不定形状であり得る。吸水性ポリマー13の平均粒子径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以上、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下である。吸水性ポリマー13としては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられ、具体的には、アクアリックCA、アクアリックCAW(ともに(株)日本触媒社製)等のアクリル酸重合体部分ナトリウム塩が挙げられる。
吸収性コア40においては、複数の繊維塊11と吸水性繊維12Fとが単に混在しているだけでなく、繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとが交絡している。すなわち吸収性コア40においては、複数の繊維塊11が吸収性コア40中の構成繊維(繊維11F,12F)との絡み合いによって結合して1つの繊維塊連続体を形成している。また、複数の繊維塊11同士が交絡していると共に、繊維塊11と吸水性繊維12Fとが交絡して結合していてもよい。更に通常は、複数の吸水性繊維12F同士も互いに交絡している。吸収性コア40に含有されている複数の繊維塊11の少なくとも一部は、他の繊維塊11あるいは吸水性繊維12Fと交絡している。吸収性コア40においては、それに含有されている複数の繊維塊11の全部が互いに交絡して1つの繊維塊連続体を形成している場合があり得るし、複数の繊維塊連続体が互いに非結合の状態で混在している場合があり得る。
吸収性コア40においては、吸収性コア40の柔軟性などを高め得る繊維塊11が含有されていることに加え、繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとの間も互いに交絡によって結合しているため、吸収性コア40は外力への即応性が一層優れ、柔軟性、クッション性、圧縮回復性に優れる。吸収性コア40は、ナプキン1の着用時に様々な方向から受ける外力(例えばナプキン1の着用者の体圧)に対してしなやかに変形し、ナプキン1を着用者の身体にフィット性よく密着させ得る。このような吸収性コア40の優れた変形−回復特性は、吸収性コア40が圧縮された場合のみならず、ねじれた場合でも同様に発現し得る。すなわち、ナプキン1に組み込まれた吸収性コア40は、ナプキン1の着用時において着用者の両大腿部間に挟まれた状態で配置されるため、着用者の歩行動作の際の両大腿部の動きによって、縦方向Xに延びる仮想的な回転軸周りにねじられる場合があるが、そのような場合でも、吸収性コア40は高い変形−回復特性を備えているため、両大腿部からのねじれを促すような外力に対して容易に変形・回復し、したがってヨレにくく、ナプキン1に着用者の身体に対する高いフィット性を付与し得る。
吸収性コア40では、繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとが交絡しているところ、ここでいう、繊維塊11同士等の「交絡」には、下記形態A及びBが包含される。
形態A:繊維塊11同士等が、融着ではなく、繊維塊11の構成繊維11F同士の絡み合いによって結合している形態。
形態B:吸収性コア40の自然状態(外力が加わっていない状態)では、繊維塊11同士等は結合していないが、吸収性コア40に外力が加わった状態では、繊維塊11同士等が構成繊維11F同士の絡み合いによって結合し得る形態。ここでいう、「吸収性コア40に外力が加わった状態」とは、例えば、吸収性コア40が適用された吸収性物品(本実施形態ではナプキン1)の着用中において、吸収性コア40に変形力が加わった状態である。
このように、吸収性コア40においては、形態Aのように、繊維塊11は、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fと、繊維同士の絡み合いすなわち「交絡」によって結合している他、形態Bのように、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fと交絡し得る状態でも存在している。斯かる繊維の交絡による結合が、前述した吸収性コア40の作用効果を一層有効に発現するのに重要なポイントの1つとなっている。特に、吸収性コア40は、形態Aの「交絡」を有している方が保形性の点から好ましい。繊維の交絡による結合は、接着成分や融着が無く、繊維同士の絡み合いのみによってなされているため、繊維の融着による結合に比して、交絡している個々の要素(繊維塊11、吸水性繊維12F)の動きの自由度が高く、そのためその個々の要素は、それらからなる集合体としての一体性を維持し得る範囲で移動し得る。このように、吸収性コア40は、それに含有されている複数の繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとが比較的ゆるく結合していることで、外力を受けたときに変形が可能な、緩やかな保形性を有しており、保形性とクッション性及び圧縮回復性等とが高いレベルで両立されている。そして、斯かる高品質の吸収性コア40を具備するナプキン1は、着用者の身体にフィット性良く密着し、着用感に優れる。
吸収性コア40における繊維塊11を介した結合体の全てが「交絡」である必要はなく、吸収性コア40の一部に交絡以外の他の結合体、例えば接着剤による接合などが含まれていてもよい。ただし、例えば、吸収性コア40あるいはこれを含む吸収体4にエンボス加工等の圧搾加工を施す等して、吸収性コア40の肌対向面45及び/又は非肌対向面46に、防漏溝などとも呼ばれる凹陥部(例えば後述する凹陥部7)を形成した場合、吸収性コア40における該凹陥部と平面視で重なる部分では、繊維塊11あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとが融着し得るが、吸収性コア40における該部分以外の部分(圧搾加工が施されていない部分)では、繊維塊11同士の結合及び繊維塊11と吸水性繊維12Fとの結合のうちの少なくとも一方、好ましくは双方が、「繊維の交絡」のみでなされていることが望ましい。
前述した吸収性コア40の作用効果をより一層確実に発現させる観点から、形態Aである「交絡によって結合している繊維塊11」と形態Bである「交絡し得る状態の繊維塊11」との合計数は、吸収性コア40中の繊維塊11の全数に対して、好ましくは半数以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。
同様の観点から、形態Aの「交絡」を有する繊維塊11の数は、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fとの結合部を有する繊維塊11の全数の70%以上、特に80%以上あることが好ましい。
ナプキン1は、吸収性コア40が繊維塊11を含有する点に加え、吸収性コア40における繊維塊11の配置の点でも特徴付けられる。すなわち、繊維塊11は吸収性コア40の全体に均一に分布しておらず、吸収性コア40(吸収体4)の面方向(厚み方向と直交する方向)において、「繊維塊11及び吸水性繊維12Fの合計含有質量に対する該繊維塊11の含有質量の比率」(以下、「繊維塊占有率」ともいう。)が部分的に異なっている。
繊維塊占有率は、吸収性コア40の所定の測定対象部位について、該測定対象部位に存する繊維塊11及び吸水性繊維12Fそれぞれの含有量を質量で測定し、そうして測定された繊維塊11の含有質量を、吸水性繊維12F及び繊維塊11それぞれの含有質量の合計値で除して100分率で表したものである。すなわち、繊維塊占有率(質量%)={繊維塊11の含有質量/(吸水性繊維12Fの含有質量+繊維塊11の含有質量)}×100である。
図1に示すように、吸収性コア40(吸収体4)は、一対の後方フラップ部52,52に挟まれた領域(以下、「後方フラップ部存在領域」ともいう。)に、吸収性コア40における繊維塊占有率が最小の部分(以下、「繊維塊占有率最小部」ともいう。)に比べて繊維塊占有率が高い、後側繊維塊高含有部42を有する。換言すれば、一対の後方フラップ部52,52と縦方向Xにおいて重なる範囲内に後側繊維塊高含有部42が存在する。後側繊維塊高含有部42は、吸収性コア40の平面視における一部の領域であり、該一部の厚み方向の全体が後側繊維塊高含有部42である。
前記後方フラップ部存在領域は、後方フラップ部52の縦方向Xの前側の付け根と後側の付け根とで区分される領域である。つまり前記後方フラップ部存在領域は、後方フラップ部52の縦方向Xの前側の付け根を通って横方向Yに延びる仮想直線を縦方向Xの前端とし、該後方フラップ部52の縦方向Xの後側の付け根を通って横方向Yに延びる仮想直線を縦方向Xの後端とする、1つの連続した領域である。なお、一対の後方フラップ部52,52のうちの一方と他方とで、縦方向Xの前側又は後側の付け根の位置が異なる場合は、ナプキン1の縦方向Xの前端(ナプキン1の前方域F側の縦方向端)に最も近い付け根と、ナプキン1の縦方向Xの後端(ナプキン1の後方域R側の縦方向端)に最も近い付け根とで区分される領域を、前記後方フラップ部存在領域とする。本実施形態のナプキン1では、前述したとおり、一対の後方フラップ部52,52は縦中心線CLを基準として左右対称に形成されており、したがって、一方の後方フラップ部52と他方の後方フラップ部52とで、縦方向Xの前側の付け根の位置、後側の付け根の位置はそれぞれ同じである。また、本実施形態のナプキン1では、後方域Rの全体が前記後方フラップ部存在領域である。また、前記繊維塊占有率最小部は、吸収性コア40(吸収体4)の面方向全体で繊維塊占有率が最小の部分であり、前記後方フラップ部存在領域に存在するとは限らず、また、吸収性コア40の複数箇所に散在し得る。
本実施形態では、後側繊維塊高含有部42は、図1に示すように、縦方向Xについては、前記後方フラップ部存在領域の一部、具体的には縦方向Xの中央部に存在し、横方向Yについては、吸収性コア40の横方向Yの全長(全幅)にわたって存在している。また本実施形態では、吸収性コア40における後側繊維塊高含有部42及び後述する前側繊維塊高含有部43以外の他の部分は、全て前記繊維塊占有率最小部である。
ナプキン1の前記後方フラップ部存在領域(一対の後方フラップ部52,52に挟まれた領域)に、柔軟性やクッション性等に優れる繊維塊11を比較的多く含有する後側繊維塊高含有部42が存在することにより、ナプキン1を着用者の股間部に装着する場合において、該後方フラップ部存在領域を含む後方域Rを着用者の臀部に当てて臀部の外形形状に沿って湾曲させたときに、後側繊維塊高含有部42が臀部の溝(臀裂)に沿うように柔軟に変形するため、着用者の臀部に対するフィット性が向上するとともに、後方域Rでの漏れが効果的に防止される。
前述の後側繊維塊高含有部42による作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、後側繊維塊高含有部42の繊維塊占有率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上であり、100質量%、すなわち後側繊維塊高含有部42は、繊維塊11を含有する代わりに吸水性繊維12Fを全く含有しなくてもよい。
前記繊維塊占有率最小部の繊維塊占有率は、後側繊維塊高含有部42及び後述する前側繊維塊高含有部43の繊維塊占有率よりも小さいことを前提として、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。前記繊維塊占有率最小部は、繊維塊占有率が0質量%、すなわち繊維塊11を全く含有しない場合があり得る。本実施形態では、吸収性コア40における後側繊維塊高含有部42及び後述する前側繊維塊高含有部43以外の他の部分は、全て前記繊維塊占有率最小部であり、且つ該繊維塊占有率最小部は繊維塊11を実質的に含有しておらず、該繊維塊占有率最小部は吸水性繊維12Fを主体として構成されている(図4参照)。
同様の観点から、後側繊維塊高含有部42の縦方向Xの長さL42(図1参照)は、前記後方フラップ部存在領域の縦方向Xの長さの20%以上50%以下が好ましく、25%以上45%以下がより好ましい。また、後側繊維塊高含有部42の横方向Yの長さ(幅)W42(図1参照)は、吸収性コア30の横方向Yの長さに対して、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上であり、100%、すなわち図1に示すように、後側繊維塊高含有部42が吸収性コア40の全幅にわたっていてもよい。
なお、後述する、図5に示すような、後側繊維塊高含有部42が複数存在する場合には、少なくとも、着用者の臀部に当接する位置、すなわち、後方フラップ部52の縦方向Xの長さを三等分した際の、後方側2つの領域に存在する後側繊維塊高含有部42の長さが、前記後方フラップ部存在領域の縦方向Xの長さとの関係において前述した範囲であればよい。図5に示す形態では、前記後方フラップ部存在領域に2個の後側繊維塊高含有部42が縦方向Xに間欠配置され、その2個のうちの排泄部対向域M寄りの1個の後側繊維塊高含有部42が前側繊維塊高含有部43と連接しているところ、前側繊維塊高含有部43と連接していない他の1個の後側繊維塊高含有部42の縦方向Xの長さが前述した範囲であればよい。
後側繊維塊高含有部42の縦方向Xの位置は、前記後方フラップ部存在領域内であれば特に限定されないが、該後方フラップ部存在領域を縦方向Xに二等分して前側と後側とに分けた場合に、後側繊維塊高含有部42の少なくとも一部が該後側に存在することが好ましい。これにより、前述の後側繊維塊高含有部42による作用効果がより一層確実に奏され得る。図1に示すナプキン1は斯かる構成を有している。
同様の観点から、後側繊維塊高含有部42の少なくとも一部が、後方フラップ部固定材55と縦方向Xにおいて重なることが好ましい。図1に示すナプキン1は斯かる構成を有している。
後側繊維塊高含有部42において、繊維塊11はどのように分布していてもよく、後側繊維塊高含有部42の全体に均一に分布してもよく、後側繊維塊高含有部42の厚み方向の一部に偏在してもよい。後者の具体例として、繊維塊11が後側繊維塊高含有部42(吸収性コア40)の肌対向面45側又は非肌対向面46側に偏在する形態を例示できる。なお、本明細書において、「肌対向面側」は、当該領域(例えば、前方域F、排泄部対向域M、後方域R、後側繊維塊高含有部42)の吸収性コア40を厚み方向に二等分した場合の肌対向面45寄りの部位であり、「非肌対向面側」は、斯かる場合の非肌対向面46寄りの部位である。
後側繊維塊高含有部42において、その非肌対向面46側は肌対向面45側に比べて繊維塊占有率が高いことが好ましい。本実施形態では斯かる大小関係「非肌対向面46側の繊維塊占有率>肌対向面45側の繊維塊占有率」が成立しており、図3に示すように、後側繊維塊高含有部42において繊維塊11が非肌対向面46側に偏在し、繊維塊11以外の他のコア形成材料(本実施形態では吸水性繊維12F及び吸水性ポリマー13)が肌対向面45側に偏在している。
後側繊維塊高含有部42で前記大小関係が成立することにより、柔軟性やクッション性の向上効果などの、主に繊維塊11による作用効果が増強され、後側繊維塊高含有部42が前記後方フラップ部存在領域に存在することによる作用効果と相俟って、着用者の臀部に対するフィット性及び防漏性が一層向上し得る。またこの場合、後側繊維塊高含有部42の肌対向面45側は、非肌対向面46側に比べて、吸水性繊維12Fの単位面積当たりの質量(坪量)が大きくなり得るところ、後側繊維塊高含有部42においてナプキン1の着用者が排泄した体液を最初に受ける部位である、肌対向面45側に、吸水性に優れる吸水性繊維12Fが比較的多量に含有されていることにより、この部位の液引き込み力(毛管力)及び液吸収性が向上し、結果として防漏性が向上する。したがって、後側繊維塊高含有部42において、「非肌対向面46側の繊維塊占有率>肌対向面45側の繊維塊占有率」という大小関係が成立することにより、ナプキン1が、着用者の臀部に対するフィット性が良好で防漏性に優れるものとなる可能性が一層向上し得る。
後側繊維塊高含有部42の非肌対向面46側の繊維塊占有率は、厚み方向の反対側に位置する肌対向面45側のそれよりも高いことを前提として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。すなわち後側繊維塊高含有部42の非肌対向面46側は、繊維塊11を含有する代わりに吸水性繊維12Fを全く含有しなくてもよい。
後側繊維塊高含有部42の肌対向面45側の繊維塊占有率は、厚み方向の反対側に位置する非肌対向面46側のそれよりも低いことを前提として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、0質量%でもよい。すなわち後側繊維塊高含有部42の非肌対向面46側は、吸水性繊維12Fを含有する代わりに繊維塊11を全く含有しなくてもよい。
後側繊維塊高含有部42の非肌対向面46側の繊維塊11の坪量は、肌対向面45側のそれよりも大きいことを前提として、好ましくは32g/m2以上、より好ましくは80g/m2以上、そして、好ましくは640g/m2以下、より好ましくは480g/m2以下である。
後側繊維塊高含有部42の肌対向面45側の繊維塊11の坪量は、非肌対向面46側のそれよりも小さいことを前提として、好ましくは320g/m2以下、より好ましくは240g/m2以下であり、0g/m2であってもよい。
後側繊維塊高含有部42において、前記の「非肌対向面46側の繊維塊占有率>肌対向面45側の繊維塊占有率」なる大小関係が成立する場合、1)肌対向面45側及び非肌対向面46側それぞれにおいて、繊維塊占有率は厚み方向に変化せずに一定でもよく、あるいは、2)肌対向面45側から非肌対向面46側に向かうに従って繊維塊占有率が漸次増加してもよい。前記2)の形態では、後側繊維塊高含有部42(吸収性コア40)の厚み方向において、肌対向面45及びその近傍では、繊維塊11は存在しないか又は縦中央域Mの吸収性コア40において最低の繊維塊占有率で存在し、非肌対向面46及びその近傍では、繊維塊11は後側繊維塊高含有部42において最高の繊維塊占有率で存在する。
前記1)の形態に特有の利点として、後側繊維塊高含有部42の肌対向面45側と非肌対向面46側とで、各々独立した機能に設計し易い点が挙げられる。また、前記2)の形態に特有の利点として、繊維塊11と吸水性繊維12Fとの混合比率が後側繊維塊高含有部42の厚み方向で緩やかに変化するため、後側繊維塊高含有部42に外力が加わった場合でも繊維塊11を介在する交絡状態が厚み方向に亘って維持され易く、使用中において後側繊維塊高含有部42の柔軟性やクッション性等が良好に維持され易い点が挙げられる。
なお、前記繊維塊占有率最小部(吸収性コア40における繊維塊占有率が最小の部分)については、該繊維塊占有率最小部に繊維塊11が存在する場合にその分布は特に限定されず、該繊維塊占有率最小部の全体に均一に分布してもよく、該繊維塊占有率最小部の厚み方向の一部に偏在してもよく、後者の場合には前記1)又は2)の形態があり得る。
本実施形態のナプキン1においては、図1〜図4に示すように、後側繊維塊高含有部42と縦方向Xにおいて重なる位置に、表面シート2及び吸収体4(前記肌側コアラップシート及び吸収性コア40)が吸収体4の非肌対向面(吸収性コア40の非肌対向面46側)側に一体的に凹陥した凹陥部7が存在している。凹陥部7は、縦方向Xに延在するもの(外側縦凹陥部7X1、内側縦凹陥部7X2)と、横方向Yに延在するもの(外側横凹陥部7Y1、内側横凹陥部7Y2)とを含む。凹陥部7は、吸収体4(吸収性コア40)を貫通しておらず、表面シート2の肌対向面に開口を有するとともに、該開口とは反対側に底部を有する。ナプキン1の肌対向面に形成された凹陥部7は、経血等の体液の面方向の移動を阻害する機能を有する。以下では、外側縦凹陥部7X1などの各種凹陥部を総合して「凹陥部7」ともいう。
前記の「凹陥部7が後側繊維塊高含有部42と縦方向Xにおいて重なる位置に存在」には、平面視で凹陥部7と後側繊維塊高含有部42とが平面視で重なる形態と、両者が重ならない形態とが包含される。典型的には前者であり、本実施形態でも前者が採用されている。後者の形態の具体例として、後側繊維塊高含有部42が前記後方フラップ部存在領域(一対の後方フラップ部52,52に挟まれた領域)の横方向Yの中央部に存在し、且つ縦方向Xに延在する一対の凹陥部7(外側縦凹陥部7X1)が、該後側繊維塊高含有部42の横方向Yの両外方に存在する形態を例示できる。
また、前記の「凹陥部7が延在」には、A)凹陥部7が縦方向X(横方向Y)に連続線状に延びている形態と、B)複数の凹陥部7が縦方向X(横方向Y)に間欠配置され、それら複数の凹陥部7が全体として縦方向X(横方向Y)に延在しているように見える形態とが包含される。後者の場合、縦方向X(横方向Y)において最も近接する2個の凹陥部7の縦方向X(横方向Y)における離間距離は、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは5mm以下である。
外側縦凹陥部7X1は、少なくとも後側繊維塊高含有部42と縦方向Xにおいて重なる位置において、縦方向Xに延在し且つ横方向Yに所定間隔を置いて一対存在している。より具体的には、一対の外側縦凹陥部7X1,7X1は、それぞれ図1に示すように、後側繊維塊高含有部42と平面視において重なり、且つ後方域Rの縦方向Xの全長にわたって延在し、更に排泄部対向域M及び前方域Fに延出しており、全体として連続線状をなしている。
外側横凹陥部7Y1は、横方向Yに延在し且つ縦方向Xに所定間隔を置いて一対存在している。より具体的には、一対の外側横凹陥部7Y1,7Y1は、それぞれ図1に示すように、その一対のうちの一方が前方域Fに位置し、他方が後方域Rに位置しており、何れも平面視において縦方向Xの外方に向かって凸のU字状ないし弧状をなし、且つそのU字状ないし弧状の頂部がナプキン1の横方向Yの中央に位置している。
外側縦凹陥部7X1と外側横凹陥部7Y1とは、それらの長さ方向の端部にて連結しており、外側凹陥部全体として平面視において閉じた環状、より具体的には略長楕円形状をなしている。排泄部対向域Mにおける、一対の外側縦凹陥部7X1,7X1で囲まれた領域は、排泄部対向域Mの中央部に位置し、前記排泄部対向部を含む。
内側縦凹陥部7X2(外側縦凹陥部7X1とは別の縦方向Xに延在する凹陥部7)は、少なくとも後側繊維塊高含有部42と縦方向Xにおいて重なる位置における、一対の外側縦凹陥部7X1,7X1に挟まれた領域において、縦方向Xに延在し且つ横方向Yに所定間隔を置いて一対存在している。より具体的には、一対の内側縦凹陥部7X2,7X2は、それぞれ図1に示すように、一対の外側縦凹陥部7X1,7X1に挟まれた領域内の後側繊維塊高含有部42と平面視において重なり、且つ後側繊維塊高含有部42から縦方向Xの前側に延出し、後方域Rと排泄部対向域Mとの境界(中央折り畳み線CFL)又はその近傍まで延在しており、全体として連続線状をなしている。
内側横凹陥部7Y2は、図1に示すように、一対の外側縦凹陥部7X1,7X1に挟まれた領域内の後側繊維塊高含有部42に位置し、平面視においてナプキン1の縦方向Xの後端に向かって凸のU字状ないし弧状をなし、且つそのU字状ないし弧状の頂部がナプキン1の横方向Yの中央に位置している。
内側縦凹陥部7X2と内側横凹陥部7Y2とは、それらの長さ方向の端部にて連結しており、内側凹陥部全体として平面視においてナプキン1の縦方向Xの後端に向かって凸のU字状ないし弧状をなし、且つそのU字状ないし弧状の頂部がナプキン1の横方向Yの中央に位置している。
凹陥部7は、ナプキン1より具体的には吸収性本体5に対し、その肌対向面側(表面シート2側)から圧搾加工を施すことによって形成されており、その形成方法から「圧搾部」と言うことができる。圧搾部である凹陥部7は、吸収体4における凹陥部7の周囲に比して密度が高い。すなわち、吸収性本体5は、凹陥部7に対応する高密度部と、凹陥部7が形成されていない低密度部とを有し、これにより面方向に密度差が生じている。
凹陥部7を形成するための圧搾加工は、吸収体4(吸収性コア40)に含まれるコア形成材料の溶融、特に繊維塊11の構成繊維11Fとして好ましく用いられる熱可塑性繊維の溶融を伴う方法を利用してもよいし、コア形成材料の溶融を伴わない方法を利用してもよい。コア形成材料の溶融を伴う圧搾加工として、具体的には、熱を伴うエンボス加工、超音波エンボス等の公知のエンボス加工が挙げられる。コア形成材料の溶融を伴う圧搾加工によって形成された凹陥部7の底部、すなわち空間部である凹陥部7と平面視で重なる部分では、表面シート2、コアラップシート41(肌側コアラップシート)及び吸収性コア40が熱融着されて一体化し得る。
後側繊維塊高含有部42は、繊維塊11を相対的に多く含有することで、吸収性コア40の他の部位(前記繊維塊占有率最小部)に比して、保形性、柔軟性、クッション性等の特性が向上しているところ、後側繊維塊高含有部42と縦方向Xにおいて重なる位置に、縦方向Xに延在する一対の凹陥部7(外側縦凹陥部7X1)が存在することにより、斯かる特性が一層向上し得る。このような後側繊維塊高含有部42は、外力を受けても型崩れし難く、外力に対して即応性良く変形し、また、その外力が解除されれば速やかに復元し得る。特に凹陥部7(外側縦凹陥部7X1)が、繊維塊11の構成繊維11Fの溶融を伴う圧搾加工によって形成されたものであると、該凹陥部7と平面視で重なる位置に存在する繊維塊11がその周囲の他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fと融着し得るため、保形性等がより一層向上し得る。
また、ナプキン1においては、相対的に密度の高い凹陥部7と相対的に密度の低い前記低密度部とが面方向に併存していることに起因して、面方向に密度差が生じており、その密度差によって体液が面方向に拡散されやすくなされている。すなわちナプキン1は、着用者が排泄した体液を速やかに面方向に拡散することができ、そのため、吸収性コア40が本来的に有する吸収性能を有効に活用して、高い液防漏性を発現し得る。特にナプキン1は、図1に示すように、凹陥部7が後側繊維塊高含有部42のみならず、前方域Fから後方域Rにわたって存在しているため、ナプキン1全体の保形性や面方向の液拡散性等が高められている。
前述の後側繊維塊高含有部42による作用効果(着用者の臀部に対するフィット性及び防漏性の向上等)をより一層確実に奏させるようにする観点から、後側繊維塊高含有部42と縦方向Xにおいて重なる位置における、一対の外側縦凹陥部7X1,7X1に挟まれた領域(以下、「第1の横方向内方領域」ともいう。)は、該領域の横方向Yの外方(すなわち凹陥部7X1及びその横方向Yの外方。以下、「第1の横方向外方領域」ともいう。)に比べて、繊維塊占有率が大きいことが好ましい。前記第1の横方向外方領域と前記第1の横方向内方領域との繊維塊占有率の比率は、前者(第1の横方向外方領域)/後者(第1の横方向内方領域)として、好ましくは0.2以上1.0未満、より好ましくは0.3以上0.8以下である。なお、前記の大小関係「第1の横方向内方領域の繊維塊占有率>第1の横方向外方領域の繊維塊占有率」は、前記第1の横方向内方領域における、一対の内側縦凹陥部7X2(外側縦凹陥部7X1とは別の縦方向Xに延在する凹陥部7)と縦方向Xにおいて重ならない位置に適用される。
また、同様の観点、及び、後側繊維塊高含有部42と縦方向Xにおいて重なる位置に縦方向Xに延在する一対の凹陥部7(外側縦凹陥部7X1)が存在することによる作用効果(保形性等の向上効果)をより一層確実に奏させるようにする観点から、後側繊維塊高含有部42と縦方向Xにおいて重なる位置における、一対の内側縦凹陥部7X2(外側縦凹陥部7X1とは別の縦方向Xに延在する凹陥部7)に挟まれた領域(以下、「第2の横方向内方領域」ともいう。)は、該領域の横方向Yの外方(すなわち凹陥部7X2及びその横方向Yの外方。以下、「第2の横方向外方領域」ともいう。)に比べて、繊維塊占有率が大きいことが好ましい。前記第2の横方向外方領域と前記第2の横方向内方領域との繊維塊占有率の比率は、前者(第2の横方向外方領域)/後者(第2の横方向内方領域)として、好ましくは0.2以上1.0未満、より好ましくは0.3以上0.8以下である。
凹陥部7の幅(凹陥部の長さ方向と直交する方向の長さ)は特に制限されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。また、凹陥部7の深さは、その長さ方向の全長にわたって一定でもよく、部分的に異なっていてもよい。また、凹陥部7のパターン(平面視形状及び配置)は特に限定されず、例えば、平面視連続線状の凹陥部7が一方向に延在するパターンでもよく、あるいは図1に示す如くに、複数の平面視所定形状の凹陥部7が一方向に間欠配置されたパターンでもよく、後者の場合、各凹陥部7の平面視形状は、例えば円形、楕円形、矩形、三角形、星形、ハート形等であり得る。
本実施形態の吸収性コア40(吸収体4)は、図1及び図2に示すように、排泄部対向域Mに、前記繊維塊占有率最小部(吸収性コア40における繊維塊占有率が最小の部分)に比べて繊維塊占有率が高い、前側繊維塊高含有部43を有する。前側繊維塊高含有部43は、吸収性コア40の平面視における一部の領域であり、該一部の厚み方向の全体が前側繊維塊高含有部43である。本実施形態では、前側繊維塊高含有部43は、図1に示すように、縦方向Xについては、排泄部対向域Mの縦方向Xの略全長にわたって存在し、横方向Yについては、吸収性コア40の横方向Yの全長(全幅)にわたって存在している。
排泄部対向域Mは通常、ナプキン1の着用時において着用者の両大腿部間に挟まれるため、着用者の歩行動作の際の両大腿部の動きによって、縦方向Xに延びる仮想的な回転軸周りにねじられやすく、ヨレが生じやすい。このような外力を受けやすい排泄部対向域Mに、保形性や柔軟性やクッション性等に優れる繊維塊11を比較的多く含有する前側繊維塊高含有部43が存在することにより、ナプキン1の着用時に吸収体4がヨレる不都合が効果的に防止され、フィット性やクッション性等が一層向上し、延いては防漏性が向上し得る。
前述の前側繊維塊高含有部43による作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、前側繊維塊高含有部43の繊維塊占有率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上であり、100質量%、すなわち前側繊維塊高含有部43は、繊維塊11を含有する代わりに吸水性繊維12Fを全く含有しなくてもよい。また、後側繊維塊高含有部42と前側繊維塊高含有部43とで、繊維塊占有率が同じでもよく、異なっていてもよい。
前側繊維塊高含有部43において、繊維塊11はどのように分布していてもよく、前側繊維塊高含有部43の全体に均一に分布してもよく、前側繊維塊高含有部43の厚み方向の一部に偏在してもよいが、前側繊維塊高含有部43の非肌対向面46側は、その反対側に位置する肌対向面45側に比べて、繊維塊占有率が高いことが好ましい。以上の点は、後側繊維塊高含有部42と同じである。本実施形態では斯かる大小関係「非肌対向面46側の繊維塊占有率>肌対向面45側の繊維塊占有率」が成立しており、図2に示すように、前側繊維塊高含有部43において繊維塊11が非肌対向面46側に偏在し、繊維塊11以外の他のコア形成材料(本実施形態では吸水性繊維12F及び吸水性ポリマー13)が肌対向面45側に偏在している。
前側繊維塊高含有部43で前記大小関係が成立することにより、柔軟性やクッション性の向上効果などの、主に繊維塊11による作用効果が増強され、着用者の膣口等の排泄部に対するフィット性及び防漏性が一層向上し得る。そのメカニズムは基本的に後側繊維塊高含有部42におけるものと同じであり、特に断らない限り、前述の後側繊維塊高含有部42についての説明が適宜適用される。
また、前側繊維塊高含有部43における、縦方向Xに延在する一対の凹陥部7(外側縦凹陥部7X1)に挟まれた領域は、該凹陥部7に比して密度の低い低密度部であるところ、該低密度部には、複数の繊維塊11がその本来の外形形状をほぼ維持した状態で存在していることに起因して、複数の繊維塊11同士間に形成された空間部が多数存在し、それらの多数の空間部が、該低密度部が有する優れたクッション性の発現に寄与しているとともに、体液の一時ストック部としても機能し得る。本実施形態のナプキン1は、このような体液の一時ストック部として機能し得る前記低密度部を、排泄された体液が集中しがちな部位である排泄部対向域Mに有しているため、優れた液吸収能を有し、高い液防漏性を発現し得るとともに、その高い液引き込み性により、表面シート2の肌対向面での液残りを低減し、不快な濡れ感やべたつき感を抑制し得る。また、繊維塊11の構成繊維11Fは、吸水性繊維12Fに比べて吸水性の低い繊維(弱吸水性の繊維)であり、好ましくは熱可塑性繊維であることから、前側繊維塊高含有部43の前記低密度部は、体液吸収前の乾燥状態はもとより、体液吸収後の湿潤状態であっても、繊維塊11に起因する作用効果を十分に発現し得る。
前側繊維塊高含有部43の非肌対向面46側の繊維塊占有率は、厚み方向の反対側に位置する肌対向面45側のそれよりも高いことを前提として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。すなわち前側繊維塊高含有部43の非肌対向面46側は、繊維塊11を含有する代わりに吸水性繊維12Fを全く含有しなくてもよい。
前側繊維塊高含有部43の肌対向面45側の繊維塊占有率は、厚み方向の反対側に位置する非肌対向面46側のそれよりも低いことを前提として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、0質量%でもよい。すなわち前側繊維塊高含有部43の肌対向面45側は、吸水性繊維12Fを含有する代わりに繊維塊11を全く含有しなくてもよい。
前側繊維塊高含有部43の非肌対向面46側の繊維塊11の坪量は、肌対向面45側のそれよりも大きいことを前提として、好ましくは32g/m2以上、より好ましくは80g/m2以上、そして、好ましくは640g/m2以下、より好ましくは480g/m2以下である。
前側繊維塊高含有部43の肌対向面45側の繊維塊11の坪量は、非肌対向面46側のそれよりも小さいことを前提として、好ましくは320g/m2以下、より好ましくは240g/m2以下であり、0g/m2であってもよい。
前側繊維塊高含有部43は、少なくとも排泄部対向域Mに存在すればよく、前方域Fに存在してもよい。図5に示す吸収体4Aでは、前側繊維塊高含有部43が後側繊維塊高含有部42と連接している。排泄部対向域Mと後方域Rとの境界及びその近傍は、ナプキン1の着用者が就寝姿勢を取った場合に特に荷重かかりやすい部位であるところ、そのような部位に、クッション性等に優れる後側繊維塊高含有部42と前側繊維塊高含有部43とが該境界を縦方向Xに跨ぐように連続して存在することにより、該部位のクッション性等が向上し得る。更に、図5に示す吸収体4Aでは、前側繊維塊高含有部43と連接する後側繊維塊高含有部42から縦方向Xに離間した位置に、別の後側繊維塊高含有部42を有している。このため、寝位において、着用者臀部でのクッション性が良好になるので、就寝時に快適な着用感が得られる。また、前方域Fから拡散した体液(経血)が後方の後側繊維塊高含有部42によって堰き止められるので、就寝時に背側から体液(経血)が漏れ出ることを抑止できる。
なお、図5に示す吸収体4Aのように、前側繊維塊高含有部43と後側繊維塊高含有部42とが連接している場合には、前方域F及び後方域Rの少なくとも一方における縦方向Xの縁部に近い部分が前記繊維塊占有率最小部であることが好ましい。
本実施形態の吸収性コア40は、図1及び図2に示すように、排泄部対向域Mに、周囲に比べて厚みが大きく且つ使用者の肌側に突出した肉厚部47を有する。より具体的には肉厚部47は、前側繊維塊高含有部43における、縦方向Xに延在する一対の凹陥部7(外側縦凹陥部7X1)に挟まれた領域に存在している。肉厚部47は、繊維塊11及び吸水性繊維12Fをはじめとするコア形成材料を周辺部よりも多く含有しており、吸収性コア40においては、肉厚部47とその周辺部とで坪量差が生じている。排泄部対向域Mに肉厚部47が存在することにより、ナプキン1における平面視で肉厚部47と重なる部分、典型的には排泄部対向域Mの横方向Yの中央部が、膣口等の着用者の排泄部に密着しやすくなるため、ナプキン1の着用感及び液吸収性が一層向上し得る。また、前側繊維塊高含有部43に肉厚部47が存在し、且つ該前側繊維塊高含有部43において、図2に示すように繊維塊11が非肌対向面46側に偏在している、すなわち前記の「非肌対向面46側の繊維塊占有率>肌対向面45側の繊維塊占有率」なる大小関係が成立していると、繊維塊11による作用効果が増強され、フィット性や防漏性等がより一層向上し得る。
肉厚部47は、少なくとも排泄部対向域Mの吸収性コア40に存在すればよい。本実施形態のナプキン1では、図2に示すように、排泄部対向域Mにおいて吸収性コア40の横方向Yの中央部のみに存在し、横方向Yの両側部には存在していないが、排泄部対向域Mの吸収性コア40の横方向Yの横方向Yの全長(全幅)にわたって存在してもよい。また、肉厚部47は排泄部対向域M以外の部位に存在してもよく、例えば、肉厚部47が排泄部対向域Mから前方域F及び/又は後方域Rにわたって延在してもよい。典型的には、肉厚部47は、少なくとも排泄部対向域Mの吸収性コア40の横方向Yの中央部に存在する。
本実施形態では、前述したとおり図1〜図4に示す如くに、吸収性本体5の縦方向Xに沿う両側部に一対のサイドシート(防漏カフ形成用シート)60,60が配され、各サイドシート60は、該サイドシート60が他の部材に固定された基端部61を起点として着用者側に起立する、起立部62を、縦方向Xの一部、具体的には一対の起立阻害部64,64に挟まれた部分に有しているところ、吸収性コア40(吸収体4)における起立部62と平面視で重なる部分に繊維塊11が存在することが好ましい。ここでいう、「起立部62と平面視で重なる」とは、ナプキン1を図1に示す如くに展開且つ伸長状態とした場合に、起立部62と平面視で重なることを意味する。前記「展開且つ伸長状態」とは、ナプキン1を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態をいう。吸収性コア40における起立部62と平面視で重なる部分は、起立部62(弾性部材63)の張力の影響により特にヨレやすい部分であるところ、該部分に保形性等に優れる繊維塊11が存在することで、ナプキン1の着用時における吸収体4のヨレが効果的に防止される。
吸収性コア40における吸水性ポリマー13の含有量は、乾燥状態の吸収性コア40の全質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。なお、ここでいう「乾燥状態の吸収性コア」とは、体液を吸収する前の吸収性コアを意味する。
吸収性コア40における吸水性繊維12Fの坪量は、好ましくは32g/m2以上、より好ましくは80g/m2以上、そして、好ましくは640g/m2以下、より好ましくは480g/m2以下である。
吸収性コア40における吸水性ポリマー13の坪量は、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上、そして、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは100g/m2以下である。
なお、吸収性コア40における繊維塊11の坪量については前述したとおりである。
吸収体4(吸収性コア40)は、回転ドラムを備えた公知の積繊装置を用いて常法に従って製造することができる。吸収性コア40は前述したとおり、少なくとも面方向において繊維塊11の分布(繊維塊占有率)が部分的に異なっており、また、厚み方向においても繊維塊11の分布(繊維塊占有率)が異なり得るところ、どのような形態でも公知の積繊装置を用いて常法に従って製造することができる。例えば、図2及び図3に示す如くに、繊維塊11が厚み方向において偏在する形態は、公知の積繊装置を用いた吸収体の製造方法において、繊維塊11や吸水性繊維12Fの回転ドラム上での積繊順序などを適宜調整することで製造可能である。
吸収体4(吸収性コア40)の製造に使用可能な積繊装置は、典型的には、外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムと、該集積用凹部にコア形成材料(繊維塊11、吸水性繊維12F、吸水性ポリマー13)を搬送する流路を内部に有するダクトとを備え、該回転ドラムをそのドラム周方向に沿って回転軸周りに回転させつつ、該回転ドラムの内部側からの吸引によって該流路に生じた空気流に乗って搬送されたコア形成材料を、該集積用凹部に積繊させるようになされている。斯かる積繊工程によって集積用凹部内に形成される積繊物は、吸収性コア40である。
公知の積繊装置を用いて、図2及び図3に示す吸収体4の如き、繊維塊11が厚み方向で偏在している吸収体を製造する方法としては、例えば、以下の2つの方法が挙げられる。
1)2台の積繊装置を用い、一方の積繊装置で製造した積繊体と、他方の積繊装置で製造した積繊体とを重ねて一体化する方法(以下、「第1の製造方法」ともいう。)。
2)1台の積繊装置を用い、繊維塊の集積用凹部への供給タイミングと吸水性繊維のそれとを異ならせる方法(以下、「第2の製造方法」ともいう。)。
前記第1の製造方法では、まず、コア形成材料として吸水性繊維12Fと、必要に応じて吸水性ポリマー13とを用い、該コア形成材料を第1の積繊装置の集積用凹部に集積して吸水性繊維積繊体を製造する。またこれとは別に、コア形成材料として繊維塊11を用い、該コア形成材料を第2の積繊装置の集積用凹部に集積して繊維塊積繊体を製造する。次いで、前記吸水性繊維積繊体と前記繊維塊積繊体とを重ねて積層体を得、該積層体を厚み方向に加圧することで一体化する。これとは別の一体化方法として、公知のバキュームコンベアの如き吸引手段を用い、該吸引手段の吸引面上に前記吸水性繊維積繊体を置き、該吸引面の吸引力が作用している状態で、該吸水性繊維積繊体上に前記繊維塊積繊体を重ねて一体化する。いずれの一体化方法であっても、吸水性繊維積繊体と繊維塊積繊体との界面では吸水性繊維と繊維塊とに交絡が生じる。こうして、図2及び図3に示す吸収体4の如き、繊維塊11(吸水性繊維12F)が厚み方向で偏在している吸収体を得る。
前記第2の製造方法では、積繊装置として、集積用凹部の吸引力が部分的に異なるものを使用し、具体的には例えば、集積用凹部が、低吸引凹部と、該低吸引凹部よりも吸引力が高い高吸引凹部とを有するものを使用する。前記低吸引凹部と前記高吸引凹部とは、積繊装置が有する回転ドラムの回転方向(周方向)に連接されている。そして、斯かる構成の積繊装置を稼働させ、回転ドラムを周方向に回転させて集積用凹部を一方向に搬送させつつ、該回転ドラムの内部側からの吸引によって該回転ドラムの外部から該集積用凹部に向かう空気流を生じさせ、該空気流によってコア形成材料を該集積用凹部に供給し集積する(集積工程)。前記集積工程においては、まず、繊維塊11を集積用凹部に供給し集積させる。このとき、繊維塊11は前記高吸引凹部に集中的に集積され、該高吸引凹部に繊維塊積繊体が形成される。次いで、斯かる繊維塊11の集積後又は集積途中に、吸水性繊維12Fと、必要に応じ吸水性ポリマー13とを集積用凹部に供給し集積させる。このとき、吸水性繊維12F(吸水性ポリマー13)は、集積用凹部における前記低吸引凹部に集積されるとともに、前記高吸引凹部に集積された繊維塊11上にも集積され、つまり集積用凹部の全域に吸水性繊維積繊体が形成される。なお、繊維塊11は通気性を有しているので、前記高吸引凹部に繊維塊11が集積された状態でも、その集積された繊維塊上に吸水性繊維12Fを吸引し得る吸引力が作用しており、前記高吸引凹部に集積された繊維塊11上に吸水性繊維12F(吸水性ポリマー13)を重ねて集積することができる。こうして前記高吸引凹部に、前記繊維塊積繊体と前記吸水性繊維積繊体との積層体が形成され、両積繊体の界面では、繊維塊11と吸水性繊維12Fとに交絡が生じる。こうして、図2及び図3に示す吸収体4Bないし4Eの如き、繊維塊11(吸水性繊維12F)が厚み方向で偏在している吸収体を得る。
以下、繊維塊11について更に説明する。本発明で使用する繊維塊11としては、種々のものを使用できるが、例えば、特願2017−228430に記載の繊維塊を好ましいものとして使用できる。図6に示す、好ましい形態である繊維塊11Aは四角柱形状をなしており、より具体的には直方体形状をなしている。繊維塊11Aは、相対向する2つの基本面(base plane)111と、該2つの基本面111を連結する骨格面(body plane)112とを備えている。基本面111及び骨格面112は何れも、この種の繊維を主体とする物品における表面の凹凸度合いを評価する際に適用されるレベルで、実質的に凹凸が無いと認められる部分である。なお、本明細書における繊維塊11についての説明は、特に断らない限り、繊維塊11Aなどの、本発明に係る繊維塊の実施形態にも適用される。
繊維塊11では、骨格面112は、基本面111に比して、繊維端部の単位面積当たりの数が多いことが好ましい。このような繊維塊11は、原料繊維シート(繊維塊11と同組成で且つ繊維塊11よりも寸法が大きいシート)をカッター等の切断手段によって切断して得られる。こうして得られた繊維塊11の骨格面112は、原料繊維シートの切断によって形成された切断面であることに起因して、その切断によって形成された構成繊維11Fの切断端部からなる繊維端部が、骨格面112の全体に多数存在している。つまり、原料繊維シートの切断によって製造された繊維塊11においては、その切断によって形成された切断面である骨格面112の方が、繊維塊11の製造時の非切断面である基本面111に比べて、繊維端部の単位面積当たりの数が多い。
繊維塊11の各面(基本面111、骨格面112)に存在する繊維端部は、該繊維塊11が、吸収性コア40に含まれる他の繊維塊11や吸水性繊維12Fとの間に交絡を形成するのに有用である。また一般に、繊維端部の単位面積当たりの数が多いほど交絡性が向上し得るので、吸収性コア40の保形性などの諸特性の向上に繋がり得る。そして、繊維塊11の各面における繊維端部の単位面積当たりの数は均一ではなく、斯かる繊維端部の単位面積当たりの数に関しては「骨格面112>基本面111」なる大小関係が成立することから、繊維塊11を介した他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)との交絡性は該繊維塊11の面によって異なり、骨格面112は基本面111に比して交絡性が高い。すなわち、骨格面112を介しての他の繊維との交絡による結合の方が、基本面111を介してのそれよりも結合力が強く、1個の繊維塊11において、基本面111と骨格面112とで他の繊維との結合力に差が生じ得る。一般に、斯かる結合力が強いほど、その結合されている繊維の動きの自由度が制限され、吸収性コア40全体として強度(保形性)が向上する反面、柔らかさが低下する傾向がある。
このように、吸収性コア40においてはそれに含まれている複数の繊維塊11それぞれが、その周辺の他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)に対して、2種類の結合力を持って交絡しており、これにより吸収性コア40は、適度な柔らかさと強度(保形性)とを兼ね備えたものとなる。そして、このような優れた特性を有する吸収性コア40を、吸収性物品の吸収体として常法に従って用いた場合には、該吸収性物品の着用者に快適な着用感を提供することができるとともに、着用時における着用者の体圧等の外力によって吸収性コア40が破壊される不都合が効果的に防止される。
原料繊維シートをミルカッターのような切断機によって不定形に切断するなどして製造された不織布片(繊維塊)では、基本面111や骨格面112のような「面」を持った定形のシート片状の繊維塊とはなっておらず、しかも、その製造時において繊維塊全体に切断処理の外力が加わるため、構成繊維の繊維端部が繊維塊全体にランダムに形成される。そのようにして製造された繊維塊と比較して、前述した本実施形態の繊維塊11、例えば図6に示す繊維塊11Aは、構成繊維の繊維端部による作用効果が十分に発現され易い。
前述した繊維端部による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、基本面111(繊維塊11製造時の非切断面)の繊維端部の単位面積当たりの数N1と、骨格面112(繊維塊11製造時の切断面)の繊維端部の単位面積当たりの数N2との比率は、N1<N2を前提として、N1/N2として、好ましくは0以上、より好ましくは0.05以上、そして、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.60以下である。より具体的には、N1/N2は0以上0.90以下が好ましく、0.05以上0.60以上がより好ましい。
基本面111の繊維端部の単位面積当たりの数N1は、好ましくは0個/mm2以上、より好ましくは3個/mm2以上、そして、好ましくは8個/mm2以下、より好ましくは6個/mm2以下である。
骨格面112の繊維端部の単位面積当たりの数N2は、好ましくは5個/mm2以上、より好ましくは8個/mm2以上、そして、好ましくは50個/mm2以下、より好ましくは40個/mm2以下である。
基本面111、骨格面112の繊維端部の単位面積当たりの数は、以下の方法により測定される。
<繊維塊の各面における繊維端部の単位面積当たりの数の測定方法>
測定対象の繊維を含む部材(繊維塊)を紙両面テープ(ニチバン株式会社製ナイスタックNW−15)を用いて、測定片を試料台に貼り付ける。次いで測定片を白金コーティングする。コーティングには日立那珂精器株式会社製イオンスパッタ装置E−1030型(商品名)を用い、スパッタ時間は120秒とする。測定片の切断面を、JEOL(株)製のJCM−6000型の電子顕微鏡を用いて、倍率100倍にて基本面及び骨格面を観察する。この倍率100倍の観察画面においては、測定対象面(基本面又は骨格面)の任意の位置に縦1.2mm、横0.6mmの長方形領域を設定し、且つ該長方形領域の面積が、該観察画面の面積の90%以上を占めるように観察角度などを調整した上で、該長方形領域内に含まれる繊維端部の個数を測定する。但し、倍率100倍の観察画面において、繊維塊の測定対象面が1.2mm×0.6mmよりも小さく、該観察画面全体に占める前記長方形領域の面積の割合が90%未満となる場合には、観察倍率を100倍より大きくした上で、前記と同様に、該測定対象面における前記長方形領域内に含まれる繊維端部の数を測定する。ここで個数測定の対象となる「繊維端部」は、繊維塊の構成繊維の長さ方向端部であり、測定対象面から該構成繊維の長さ方向端部以外の部分(長さ方向中間部)が延出していても、該長さ方向中間部は個数測定の対象としない。そして下記式により、繊維塊の測定対象面(基本面又は骨格面)における繊維端部の単位面積当たりの数を算出する。10個の繊維塊それぞれについて、前記手順に従って、基本面及び骨格面それぞれにおける繊維端部の単位面積当たりの数を測定し、それら複数の測定値の平均値を、当該測定対象面における繊維端部の単位面積当たりの数とする。
繊維塊の測定対象面(基本面又は骨格面)における繊維端部の単位面積当たりの数(個数/mm2)=長方形領域(1.2×0.6mm)に含まれる繊維端部の個数/該長方形領域の面積(0.72mm2)
繊維塊11の基本面111が、図6に示す繊維塊11Aのように、平面視において四角形形状をなしている場合、吸収性コア40における繊維塊11の均一分散性の向上の観点から、その四角形形状の一辺(短辺)111aは、該繊維塊11を含有している吸収体4の厚みと同等か又はこれに比して短いことが好ましい。一辺(短辺)111aの長さと吸収体4の厚みとの比率は、前者/後者として、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.08以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下である。
吸収体4(吸収性コア40)の厚みは、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下である。
繊維塊11の各部の寸法等は以下のように設定することが好ましい。繊維塊11の各部の寸法は、後述する繊維塊11の外形形状の特定作業の際の電子顕微鏡写真などに基づいて測定することができる。
基本面111が図6に示す如き平面視四角形形状の場合、その一辺(短辺)111aの長さL1は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは6mm以下、更に好ましくは5mm以下である。
繊維塊11が平面視長方形形状の場合には、基本面111の他の一辺(長辺)111bの長さL2は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは2mm以上、そして、好ましくは30mm以下、より好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
なお、基本面111が図6に示すように、繊維塊11が有する複数の面のうちで最大面積を有する面である場合、他の一辺(長辺)111bの長さL2は、繊維塊11の最大差し渡し長さに一致する。この最大差し渡し長さは、例えば繊維塊11が円盤形状の場合、具体的には、平面視円形状の相対向する2つの平坦面と、両平坦面を連結する湾曲した周面とを有し、該2つの平坦面がそれぞれ基本面111、該周面が骨格面112である場合には、その平面視円形状の基本面111の直径に一致する。
一辺(短辺)111aの長さL1と他の一辺(長辺)111bの長さL2との比率は、L1/L2として、好ましくは0.003以上、より好ましくは0.025以上、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下である。なお、本発明において、基本面111の平面視形状は、図6に示す如き長方形形状に限定されず、正方形形状でもよく、すなわち互いに直交する2辺の長さL1,L2の比率は、L1/L2として1でもよい。
繊維塊11の厚みT、すなわち2つの対向する基本面111間の長さTは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは6mm以下である。
繊維塊11のサイズは特に制限されず、吸収性コア40のクッション性、通液性などを考慮して適宜設定し得る。繊維塊11が有する複数の面のうちで面積が最大の面である、基本面111の面積は、繊維塊11のサイズの指標となり得る。繊維塊11の基本面111の面積は、好ましくは1mm2以上、より好ましくは5mm2以上、そして、好ましくは100mm2以下、より好ましくは50mm2以下である。
図7(a)には、繊維塊11の一実施形態の電子顕微鏡写真、図7(b)には、繊維塊11をこの電子顕微鏡写真に即して模式的に示した図が示されている。繊維塊11は図7に示すように、本体部110と、該本体部110から外方に延出する繊維11Fを含んで構成され且つ該本体部110に比して繊維密度の低い(単位面積当たりの繊維の数が少ない)、延出繊維部113とを有するものが包含され得る。なお、吸収性コア40には、延出繊維部113を有しない繊維塊11、すなわち本体部110のみからなる繊維塊11も包含され得る。延出繊維部113は、前述した、繊維塊11の各面(基本面111、骨格面112)に存在する繊維端部の一種を含みうるものであり、それは、該繊維端部のうち、繊維塊11の各面から外方に延出した繊維端部である。
延出繊維部113は主として、吸収性コア40に含有されている複数の繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとの交絡性の向上に寄与し、吸収性コア40の保形性の向上に直接的にかかわる他、繊維塊11の吸収性コア40における均一分散性などにも影響して、本体部110に因る作用効果を間接的に補強し得る。
繊維塊11は図7(b)に示すように、延出繊維部113の一種として、本体部110、より具体的には骨格面112から外方へ延びる複数の繊維11Fを含む延出繊維束部113Sを有する。繊維塊11が有する延出繊維部113のうちの少なくとも1つは、この延出繊維束部113Sであり得る。延出繊維束部113Sは、骨格面112から延出する複数の繊維11Fが寄り集まって構成されたもので、延出繊維部113に比して、本体部110の骨格面112からの延出長さが長い点で特徴付けられる。延出繊維束部113Sは、基本面111にも存在し得るが、典型的には図7(b)に示すように骨格面112に存在し、基本面111には全く存在しないか、存在したとしてもその数は骨格面112よりも少数である。その理由は、延出繊維部113が、原料繊維シートの切断面である骨格面112に主に存在する理由と同じであり、前述したとおりである。繊維塊11がこのような、長くて太い大型の延出繊維部113とも言うべき延出繊維束部113Sを有していることで、繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとの交絡がより一層強まり、結果として、繊維塊11の存在に起因する本発明の所定の効果がより一層安定的に奏されるようになる。また、延出繊維束部113Sが熱融着部を有していると、延出繊維束部113S自体の強度が向上することに起因して、延出繊維束部113Sを介して交絡している繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとの交絡がより一層強まるため、好ましい。
繊維塊11の構成繊維11Fは、吸水性繊維12Fに比べて吸水性の低い繊維(弱吸水性の繊維)を含む。ここでいう、「弱吸水性の繊維」には、吸水性を有しない「非吸水性繊維」と、吸水性は有するが吸水性繊維12Fに比べて低い吸水性を有する「弱吸水性繊維」とが包含される。
繊維の吸水性は、下記方法により測定される水分率を指標とすることができる。水分率の値が大きいほど、吸水性が高いと評価される。吸水性繊維12Fの水分率は、好ましくは6%以上、より好ましくは10%以上である。一方、繊維塊11の構成繊維11Fとして用いられ得る前記弱吸水性繊維の水分率は、好ましくは6%未満、より好ましくは4%未満である。
<水分率の測定方法>
水分率は、JIS P8203の水分率試験方法を準用して算出した。すなわち、繊維試料を温度40℃、相対湿度80%RHの試験室に24時間静置後、その室内にて絶乾処理前の繊維試料の重量W(g)を測定した。その後、温度105±2℃の電気乾燥機(例えば、株式会社いすゞ製作所製)内にて1時間静置し、繊維試料の絶乾処理を行った。絶乾処理後、温度20±2℃、相対温度65±2%の標準状態の試験室にて、旭化成(株)製サランラップ(登録商標)で繊維試料を包括した状態で、Siシリカゲル(例えば、豊田化工(株))をガラスデシゲータ内(例えば、(株)テックジャム製)に入れて、繊維試料が温度20±2℃になるまで静置する。その後、繊維試料の恒量W’(g)を秤量して、次式により繊維試料の水分率を求める。水分率(%)=(W−W’/W’)×100
繊維塊11の構成繊維11Fには、弱吸水性の繊維以外の繊維、すなわち吸水性繊維12Fが含まれていてもよいが、弱吸水性の繊維を主体とすることが好ましい。繊維塊11における弱吸水性の繊維の含有量は、繊維塊11の全質量に対して、好ましくは90質量%以上であり、100質量%すなわち構成繊維11Fの全部が弱吸水性の繊維であることが最も好ましい。繊維塊11が弱吸水性の繊維を主体として構成されていることにより、吸収性コア40が乾燥状態である場合のみならず、水分(尿や経血などの体液)を吸収して湿潤状態にある場合でも、前述した繊維塊11の存在に起因する作用効果(柔軟性、クッション性、圧縮回復性、保形性などの向上効果)が安定的に奏されるようになる。
繊維塊11の構成繊維11Fの素材としては合成樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂が特に好ましい。すなわち、前記「弱吸水性の繊維」としては、合成樹脂を主体とする合成繊維が好ましく、熱可塑性樹脂を主体とする熱可塑性繊維が特に好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。繊維11Fは、1種類の合成樹脂(熱可塑性樹脂)又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維(熱可塑性繊維)で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等があり、特に制限されない。
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
前記実施形態では、防漏カフ6の起立部62は、内側延出部620と外側延出部622とを含んで構成されていたが、起立部62の構成はこれに限定されず、例えば外側延出部622は無くてもよい。
本発明の吸収性物品は、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品を広く包含し、前述した生理用ナプキンの他、生理用ショーツ、止着テープを有するいわゆる展開型の使い捨ておむつ、パンツ型の使い捨ておむつ、失禁パッド等が包含される。