以下、本発明の吸収体を、これを具備する本発明の吸収性物品と共に、それらの好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2には、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン1(以下、ナプキン1とも言う)が示されている。ナプキン1は、体液を吸収保持する吸収体4と、吸収体4の肌対向面側に配され、着用者の肌と接触し得る液透過性の表面シート2と、吸収体4の非肌対向面側に配された液難透過性の裏面シート3とを具備する。ナプキン1は、図1に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有し、また縦方向Xにおいて、着用者の外陰部などの排泄部に対向する排泄部対向部(排泄ポイント)を含む縦中央域Bと、該排泄部対向部よりも着用者の腹側(前側)に配される前方域Aと、該排泄部対向部よりも着用者の背側(後側)に配される後方域Cとの3つに区分される。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、即ち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。尚、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、即ち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
ナプキン1は、図1に示すように、縦方向Xに長い形状の吸収性本体5と、吸収性本体5における縦中央域Bの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部5W,5Wとを有している。吸収性本体5は、ナプキン1の主体をなす部分であり、前記の表面シート2、裏面シート3及び吸収体4を具備し、縦方向Xにおいて前方域A、縦中央域B及び後方域Cの3つに区分される。
尚、本発明の吸収性物品における縦中央域は、ナプキン1のように吸収性物品がウイング部を有する場合には、該吸収性物品の縦方向(長手方向、図中のX方向)においてウイング部を有する領域を意味し、ナプキン1を例にとれば、一方のウイング部5Wの縦方向Xに沿う付け根と他方のウイング部5Wの縦方向Xに沿う付け根とに挟まれた領域である。また、ウイング部を有しない吸収性物品における縦中央域は、吸収性物品を縦方向に3等分した際の中央に位置する領域を意味する。
ナプキン1においては、吸収体4は、液吸収性の吸収性コア40と、該吸収性コア40の外面を被覆する液透過性のコアラップシート41とを含んで構成されている。吸収性コア40は、吸収性本体5と同様に、図1に示す如き平面視において縦方向Xに長い形状をなしており、吸収性コア40の長手方向は、ナプキン1の縦方向Xに一致し、吸収性コア40の幅方向は、ナプキン1の横方向Yに一致している。吸収性コア40とコアラップシ
ート41との間は、ホットメルト型接着剤等の接着剤により接合されていてもよい。
このように、本発明の吸収体の一実施形態である吸収体4は、ナプキン1の如き吸収性物品に用いられるものであり、ナプキン1の着用者の前後方向に対応する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有し、且つ縦方向Xにおいて前方域A、縦中央域B、後方域Cの3つ領域に区分される。
ナプキン1においては、コアラップシート41は、吸収性コア40の横方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚の連続したシートであり、図2に示すように、吸収性コア40の肌対向面の全域を被覆し、且つ吸収性コア40の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の下方に巻き下げられて、吸収性コア40の非肌対向面の全域を被覆している。尚、本発明においては、コアラップシートはこのような1枚のシートでなくてもよく、例えば、吸収性コア40の肌対向面を被覆する1枚の肌側コアラップシートと、該肌側コアラップシートとは別体で、吸収性コア40の非肌対向面を被覆する1枚の非肌側コアラップシートとの2枚を含んで構成されていてもよい。
図2に示すように、表面シート2は、吸収体4の肌対向面の全域を被覆している。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、さらに吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、後述するサイドシート6と共にサイドフラップ部を形成している。前記サイドフラップ部は、ナプキン1における、吸収体4から横方向Yの外方に延出する部材からなる部分である。裏面シート3とサイドシート6とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていてもよい。表面シート2、裏面シート3としては、生理用ナプキン等の吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。裏面シート3としては、透湿性の樹脂フィルム等を用いることができる。
前記サイドフラップ部は、図1に示すように、縦中央域Bにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体5の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部5W,5Wが延設されている。ウイング部5Wは、図1に示す如き平面視において、下底(上底よりも長い辺)が吸収性本体5の側部側に位置する略台形形状を有しており、その非肌対向面には、該ウイング部5Wをショーツ等の着衣に固定するウイング部粘着部(図示せず)が形成されている。ウイング部5Wは、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられる。前記ウイング部粘着部は、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。また、吸収性本体5の肌対向面即ち表面シート2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシート6,6が吸収性本体5の縦方向Xの略全長に亘って配されている。一対のサイドシート6,6は、それぞれ縦方向Xに延びる図示しない接合線にて、接着剤等の公知の接合手段によって表面シート2等の他の部材に接合されている。
図1及び図2に示すように、吸収体4の表面には、該吸収体4が圧密状態で凹陥した複数の圧密部7が部分的に形成されている。より具体的にはナプキン1においては、吸収体4の肌対向面即ち表面シート2との対向面に、平面視円形状の圧密部7が複数形成されており、その複数の圧密部7は、それぞれ、コアラップシート41における吸収性コア40の肌対向面を被覆する部分(肌側コアラップシート)及び吸収性コア40が、該吸収体4の非肌対向面側に一体的に凹陥した凹陥部である。吸収体4の肌対向面には、凹陥部たる圧密部7と、吸収体4における圧密部7が形成されていない部分である非圧密部8とが混
在しており、圧密部7に対応する凹部と非圧密部8に対応する凸部とからなる凹凸構造が形成されている。一方、吸収体4の非肌対向面即ち裏面シート3との対向面には圧密部7は形成されておらず、吸収体4の非肌対向面は実質的に凹凸構造を有していない平坦面である。
圧密部7は、吸収体4即ち吸収性コア40とこれを被覆するコアラップシート41との複合体に対し、吸収体4の肌対向面即ち肌側コアラップシート41側から押圧するなどして圧搾加工を施すことによって形成されており、その形成方法から「圧搾部」と言うこともできる。圧密部7は、その形成方法に起因して、非圧密部8に比して密度が高い。即ち、吸収体4は、圧密部7に対応する高密度部と、非圧密部8に対応する低密度部とを有する。
また、圧密部7においては、吸収体4の構成繊維、具体的には後述する繊維塊11の構成繊維11F及び吸水性繊維12Fが圧密状態とされているが、繊維塊11同士は融着していない。即ち例えば、繊維塊11の構成繊維11Fである合成繊維が熱可塑性繊維である場合において、圧密部7を形成するための前記圧搾加工が、この熱可塑性繊維たる繊維11Fの溶融を伴う条件でなされた場合、より具体的には例えば、熱を伴うエンボス加工や超音波エンボス等によって圧密部7が形成された場合、圧密部7においては少なくとも繊維塊11同士が熱融着し、複数の繊維塊11が構成繊維11F同士の熱融着によって結合して1つの繊維塊連続体し得るが、ナプキン1の圧密部7においては、このような複数の繊維塊11間での構成繊維11F同士の融着部は存在しない。
尚、圧密部7では、複数の繊維塊11同士は融着していないが、1個の繊維塊11においてその構成繊維11F同士が融着している場合があり得る。即ち、繊維塊11の好ましい形態の1つは、複数の構成繊維11F(熱可塑性繊維)が互いに熱融着した3次元構造を有するものであるところ、1個の該繊維塊11においては構成繊維11F同士が融着している。この好ましい繊維塊11の詳細については後述する。
またナプキン1では、圧密部7において、繊維塊11同士が融着していないことに加えてさらに、繊維塊11及び吸水性繊維12F同士も融着していない。
ナプキン1の主たる特徴部分の1つとして吸収体4、特に吸収体4の主体をなす吸収性コア40が挙げられる。図3には、吸収性コア40の一部(非圧密部8に位置する部分)が示されている。吸収体4、より具体的には吸収性コア40は、図2及び図3に示すように、複数の繊維(合成繊維)11Fが塊状に集積した繊維塊11と、吸水性繊維12Fとを含む。繊維塊11は、繊維11Fが意図的に集積されて一体化された繊維集合体であるのに対し、吸水性繊維12Fは、意図的に一体化されずに個々独立に存在し得る状態で吸収性コア40中に存在している。繊維塊11は主として、吸収性コア40の柔軟性、クッション性、圧縮回復性、保形性などの向上に寄与する。一方、吸水性繊維12Fは主として、吸収性コア40の液吸収性及び保形性などの向上に寄与する。尚、吸収性コア40は、実質的には吸収体4そのものとも言えるものであり、以下の吸収性コア40についての説明は、特に断らない限り、吸収体4の説明として適宜適用される。即ち、本発明には、吸収体がコアラップシートを含まず吸収性コアのみで形成されている場合が包含されるところ、その場合には、吸収体と吸収性コアとは同じ意味である。
本明細書において「繊維塊」とは、複数の繊維がまとまって一体となった繊維集合体のことである。繊維塊の形態としては、例えば一定の大きさを有する合成繊維シートから分割されたシート片が挙げられる。特に、合成繊維シートとして不織布を選択し、該不織布から所定の大きさ及び形状に切り出した不織布片が繊維塊として好ましい。
このように、本発明に係る繊維塊の好ましい一実施形態であるシート片状の繊維塊は、複数の繊維を集積させて該シート片を形作るように構成されたものではなく、該シート片よりも寸法の大きな繊維シート(好ましくは不織布)の切断によって製造されるものである(図6参照)。本発明の吸収体(吸収性コア)が含有する複数の繊維塊は、特許文献3及び4のような従来技術によって製造するものと比較して、より定形性が高い複数のシート片状の繊維塊である。
また、吸収性コア40においては、複数の繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12Fとが互いに交絡している。典型的には、複数の繊維塊11同士、及び繊維塊11と吸水性繊維12Fとは、それぞれ互いに交絡している。吸収性コア40においては、圧搾加工が施されておらず吸収性コア40の本来の姿が維持されている非圧密部8のみならず、圧搾加工が施され、構成繊維11F,12Fが圧密状態とされている圧密部7においても、複数の繊維塊11がそれらの構成繊維11F同士の絡み合いによって結合して1つの繊維塊連続体を形成しており、また、該繊維塊連続体に吸水性繊維12Fが絡み付いて結合している。さらに吸収性コア40では、複数の吸水性繊維12F同士も互いに交絡している。吸収性コア40に含有されている複数の繊維塊11の少なくとも一部は、他の繊維塊11あるいは吸水性繊維12Fと交絡している。吸収性コア40においては、それに含有されている複数の繊維塊11の全部が互いに交絡して1つの繊維塊連続体を形成している場合があり得るし、複数の繊維塊連続体が互いに非結合の状態で混在している場合があり得る。繊維塊11の交絡性、即ち他の繊維塊11あるいは吸水性繊維12Fとの交絡のしやすさは、繊維塊11が有する後述する延出繊維部113の形態(数、大きさ、分布状態など)に因るところが大きく、延出繊維部113の形態を適切に制御することで、繊維塊11の交絡性を高めることができる。
尚、繊維塊11同士等の「交絡」には、下記形態A及びBが包含される。
形態A:繊維塊11同士等が、融着ではなく、繊維塊11の構成繊維11F同士の絡み合いによって結合している形態。
形態B:吸収性コア40の自然状態(外力が加わっていない状態)では、繊維塊11同士等は結合していないが、吸収性コア40に外力が加わった状態では、繊維塊11同士等が構成繊維11F同士の絡み合いによって結合し得る形態。ここでいう、「吸収性コア40に外力が加わった状態」とは、例えば、吸収性コア40が適用された吸収性物品の着用中において、吸収性コア40に変形力が加わった状態である。
本実施形態における吸収性コア40では、形態Aのように、繊維塊11は、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fと、繊維同士の絡み合い即ち「交絡」によって結合している他、形態Bのように、他の繊維塊11又は吸水性繊維12Fと交絡し得る状態でも存在している。斯かる繊維の交絡による結合が、前述した吸収性コア40の作用効果を一層有効に発現するのに重要なポイントの1つとなっている。しかしながら、形態Aの「交絡」を有している方が保形性の点から好ましい。繊維塊11同士の交絡による結合は、接着成分や融着が無く、繊維同士の絡み合いのみによってなされているため、例えば特許文献3に記載の如き「繊維の融着」による結合に比して、交絡している個々の要素(繊維塊11、吸水性繊維12F)の動きの自由度が高く、そのためその個々の要素は、それらからなる集合体としての一体性を維持し得る範囲で移動し得る。このように、吸収性コア40は、それに含有されている複数の繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとが比較的ゆるく結合していることで、外力を受けたときに変形が可能な、緩やかな保形性を有しており、保形性とクッション性及び圧縮回復性等とが高いレベルで両立されている。
繊維塊11は、柔軟性などに優れるものであるから、これを吸収体に含有させることで、その吸収体は潜在的に柔軟性等に優れたものとなる。この点、吸収性コア40は前述したように、それに含有されている複数の繊維塊11同士及び繊維塊11と吸水性繊維12
Fとの間の少なくとも一方が、互いに交絡によって結合し、好ましくは、複数の繊維塊11同士及び繊維塊11と吸水性繊維12Fとの間の双方が、それぞれ互いに交絡によって結合しているため、保形性、柔軟性、クッション性、圧縮回復性などに優れ、例えばナプキン1における吸収性コア40の如くに吸収性物品に組み込まれた場合に、様々な方向から受ける外力(例えば吸収性物品着用者の体圧)に対してしなやかに変形し、該吸収性物品を着用者の身体にフィット性よく密着させ得る。
図4には、非圧密部8の吸収性コア40が外力Fを受けて圧縮された際の変形状態が模式的に示されている。繊維集合体である繊維塊11と非繊維集合体である吸水性繊維12Fとが混在する吸収性コア40においては、両部材11,12Fの剛性差に起因して、両部材11,12Fの境界BL(図4中の点線)で特に屈曲しやすく、境界BLが吸収性コア40の変形の際の屈曲部として機能するところ、その屈曲部たる境界BLは通常、非圧密部8の吸収性コア40の全域にわたって存在しているため、該吸収性コア40は、様々な外力に対して応答性よく柔軟に変形し、また、その外力が解除された場合には、繊維塊11が備える圧縮回復性によって速やかに元の状態に復元し得る。このような吸収性コア40の変形-回復特性は、吸収性コア40が圧縮された場合のみならず、ねじれた場合でも同様に発現し得る。即ち、ナプキン1に組み込まれた吸収性コア40は、ナプキン1の着用時において着用者の両大腿部間に挟まれた状態で配置されるため、その吸収体4は、着用者の歩行動作の際の両大腿部の動きによって、縦方向Xに延びる仮想的な回転軸周りにねじられる場合があるが、そのような場合でも、少なくとも非圧密部8の吸収性コア40は高い変形-回復特性を備えているため、両大腿部からのねじれを促すような外力に対して容易に変形・回復し、従ってヨレにくく、ナプキン1に着用者の身体に対する高いフィット性を付与し得る。
また、吸収性コア40においては前述した通り、その表面(肌対向面)に吸収体4が圧密状態で凹陥した圧密部7が部分的に形成されていることで、圧密部7と非圧密部8とが所定の一方向に交互に配されており、これにより、相対的に密度の高い高密度部たる圧密部7と、相対的に密度の低い低密度部たる非圧密部8とが、吸収性コア40の面方向に併存している。即ち吸収性コア40においては面方向に密度差が生じており、その密度差によって体液が面方向に拡散されやすくなっている。従って、吸収性コア40を具備するナプキン1は、着用者が排泄した体液を速やかに面方向に拡散することができ、そのため、前記排泄部対向部等に体液が残留することに起因する不快な肌のべたつきや濡れ感が生じ難くドライ感に優れており、これにより、繊維塊11の作用効果に起因して吸収性コア40がクッション性等に優れることと相俟って着用感に優れ、また、吸収性コア40が本来的に有する吸収性能を有効に活用することが可能で、液吸収性、体液の漏れ防止性にも優れる。
また、吸収性コア40においては、圧密部7に存在する繊維塊11が、構成繊維11Fを介して吸水性繊維12Fと交絡していることが好ましい。これにより、吸収性コア40と接触してその肌対向面側に引き込まれた経血等の体液が、繊維塊11と吸水性繊維12Fとの交絡部位を介して、該繊維塊11が存在する圧密部7へと運ばれやすくなり、延いては、吸収性コア40の面方向において速やかに液拡散する効果がより一層発現しやすくなり、さらには、吸収性コア40が液吸収時においてもクッション性に優れるようになる。
また、圧密部7においては、複数の繊維塊11同士の融着による結合体が存在しないため、吸収性コア40全体として柔らかく、高いクッション性が得られ易い。特にナプキン1においては、圧密部7において前述したように、繊維塊11同士が融着していないことに加えてさらに、繊維塊11及び吸水性繊維12F同士も融着していないため、吸収性コア40は柔軟性、クッション性に特に優れたものとなる。
圧密部7のパターン(平面視形状及び配置)は任意に設計できる。圧密部7の主たる役割の1つが、吸収体4の面方向への液拡散性の向上であることを考慮すると、圧密部7は、吸収体4における体液と頻繁に接触する部位に配されることが好ましく、斯かる観点から少なくとも、前記排泄部対向部を含む縦中央域Bに部分的に形成されていることが好ましい。
ナプキン1における吸収体4(吸収性コア40)の圧密部7のパターンは、図1に示すように、圧密部7と非圧密部8とが所定の一方向に交互に配されたパターンを含んで構成されている。より具体的には、ナプキン1においては、吸収体4の肌対向面の全域に複数の平面視円形状の圧密部7が千鳥状に配されており、複数の圧密部7が縦方向Xに等間隔に配されていると共に、複数の圧密部7が縦方向X及び横方向Yの両方向に交差する方向に等間隔に配されている。各方向に隣り合う2個の圧密部7,7間には非圧密部8が位置している。
ここで千鳥状とは、複数の圧密部7が一方向に等間隔に配置されてなる列が、該一方向と直交する方向に複数配置され、且つ該一方向と直交する方向において、隣り合う2列同士で互いに複数の圧密部7がずれている配置をいう。さらに詳述すれば、複数の圧密部7が一方向に等間隔に配置されてなる複数の列を、それぞれ、該一方向と直交する方向に投影したときに、特定の列の各圧密部7の投影像の間に(好ましくは中間に)、該特定の列と隣り合う別の列の圧密部7の投影像が配置される場合、複数の圧密部7は千鳥状に配置されていると言える。尚、本発明でいう「千鳥状に配置」には、複数の圧密部7が前記の説明通りに完璧に配置されている形態のみならず、製造上不可避的なずれなど、意図しないわずかな配置のずれが生じている形態も含まれる。
また、ナプキン1における吸収体4の圧密部7のパターンは、体液を面方向において等方的(isotropic)に拡散させる等方的パターンである。即ち、吸収体4の肌対向面には、
複数の圧密部7が縦方向Xに配置されてなる列(圧密部縦列)が横方向Yに複数配置されているところ、その複数の圧密部縦列から横方向Yにおいて互いに隣り合う3列(図1中符号7Lxで示す)を任意に選択し、該3列7Lxのうちの中央列に属する任意の1個の圧密部7に着目した場合、その着目した1個の圧密部7と、該3列7Lxに属する他の圧密部7のうちで該1個の圧密部7に最も近接するものとのピッチ7P1(図1参照)が、互いに同じである。ここでいう「ピッチ」とは、所定間隔を置いて隣り合う2個の圧密部7,7それぞれの平面視における中心を結ぶ直線の長さを意味する。圧密部7がこのような等方的パターンで配されている場合において、例えば縦中央域Bの中央部に位置する前記排泄部対向部にてナプキン1の着用者の体液を最初に受けた場合、その体液は該排泄部対向部から面方向において放射状に略均一に拡散し得る。
前述した、圧密部7及び非圧密部8の存在に起因する作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、ナプキン1の各部の寸法等は以下のように設定することが好ましい。
前記ピッチ7P1(図1参照)、即ち最も近接する2個の圧密部7,7のピッチは、好ましくは2.0mm以上、さらに好ましくは3.5mm以上、そして、好ましくは12mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。ナプキン1においては、縦方向Xにおける圧密部7のピッチ7Pxと、両方向X,Yの双方に交差する方向における圧密部7のピッチ7Pzとが、前記ピッチ7P1であり、7Px=7Pzである。
またナプキン1には、圧密部7のピッチに関して、前記ピッチ7P1(相対的に短いピッチ)の他に、これよりも長いピッチ7P2(図1参照)が存在するところ、この相対的に長いピッチ7P2は、好ましくは3.0mm以上、さらに好ましくは5.0mm以上、そして、好ましくは15mm以下、さらに好ましくは13mm以下である。ナプキン1においては、横方向Yにおける圧密部7のピッチ7Pyが、前記ピッチ7P2である。即ち
ナプキン1においては、縦方向Xにおける圧密部7のピッチ7Px(7P1)が、横方向Yにおける圧密部7のピッチ7Py(7P2)に比して短い。
吸収体4(吸収性コア40)の圧密部7の形成面(ナプキン1においては肌対向面)の全面積に占める、圧密部7の総面積の割合(圧密部占有率)は、好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、そして、好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。
吸収体4の表面における任意の平面視10mm四方の単位領域に存在する圧密部7の数は、好ましくは2個以上、さらに好ましくは5個以上、そして、好ましくは10個以下、さらに好ましくは8個以下である。
圧密部7の平面視における最大差し渡し長さ7R(図1参照)は、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上、そして、好ましくは8mm以下、さらに好ましくは6mm以下である。最大差し渡し長さ7Rは、圧密部7の平面視形状が図1に示す如き円形状の場合は直径である。
尚、圧密部7の平面視形状は特に限定されず、図1に示す如き円形状の他、例えば、楕円形、矩形、三角形、星形、ハート形等とすることができる。また、図1に示す如く散点状に分散配置された複数の圧密部7の平面視形状及び寸法は、互いに均一でなくてもよく、異なっていてもよい。
圧密部7の深さ(吸収体4における凹陥していない肌対向面からの深さ)は、好ましくは0.10mm以上、さらに好ましくは0.25mm以上、そして、好ましくは1.50mm以下、さらに好ましくは1.00mm以下である。
以下、吸収体4についてさらに説明する。尚、以下の吸収体4の説明は、特に断らない限り、非圧密部8の吸収体4、即ち圧搾加工が施されておらず、本来的に有する機能を発現し得る状態の、本来の姿の吸収体4についてのものである。また、以下の吸収体4についての説明は、特に断らない限り、吸収性コア40についても適宜適用される(「吸収体4」の語は「吸収性コア40」に適宜置換できる)。
吸収体4の主たる特徴の1つとして、繊維塊11の外形形状が挙げられる。図5には、繊維塊11の典型的な外形形状が2つ示されている。図5(a)に示す繊維塊11Aは四角柱形状より具体的には直方体形状をなし、図5(b)に示す繊維塊11Bは円盤形状をなしている。繊維塊11A,11Bは、相対向する2つの基本面(base plane)111と、該2つの基本面111を連結する骨格面(body plane)112とを備えている点で共通する。基本面111及び骨格面112はいずれも、この種の繊維を主体とする物品における表面の凹凸度合いを評価する際に適用されるレベルで、実質的に凹凸が無いと認められる部分である。
図5(a)の直方体形状の繊維塊11は、6つの平坦面を有しているところ、その6面のうち、最大面積を有する相対向する2面がそれぞれ基本面111であり、残りの4面がそれぞれ骨格面112である。基本面111と骨格面112とは互いに交差、より具体的には直交している。
図5(b)の円盤形状の繊維塊11Bは、平面視円形状の相対向する2つの平坦面と、両平坦面を連結する湾曲した周面とを有しているところ、該2つの平坦面がそれぞれ基本面111であり、該周面が骨格面112である。
繊維塊11A,11Bは、骨格面112が平面視において四角形形状、より具体的には長方形形状をなしている点でも共通する。
吸収体4に含有される複数の繊維塊11は、それぞれ、図5に示す繊維塊11A,11Bのような、2つの対向する基本面111と両基本面111を連結する骨格面112とを
備えた「定形の繊維集合体」である点で、不定形の繊維集合体である特許文献3及び4記載の不織布片ないし微細ウエブと異なる。換言すれば、吸収体4中の任意の1個の繊維塊11を透視した場合(例えば電子顕微鏡で観察した場合)、その繊維塊11の透視形状はその観察角度によって異なり、1個の繊維塊11につき多数の透視形状が存在するところ、吸収体4中の複数の繊維塊11それぞれは、その多数の透視形状の1つとして、2つの対向する基本面111と両基本面111を連結する骨格面112とを備えた特定透視形状を有する。特許文献3及び4記載の吸収体に含有されている複数の不織布片ないし微細ウエブは、基本面111や骨格面112のような「面」、即ち広がりのある部分を実質的に有しておらず、互いに外形形状が異なっていて「定形」ではない。
このように、吸収体4に含まれている複数の繊維塊11が、基本面111と骨格面112とで画成された「定形の繊維集合体」であると、特許文献3及び4に記載の如き不定形の繊維集合体である場合に比して、吸収体4における繊維塊11の均一分散性が向上するため、繊維塊11の如き繊維集合体を吸収体4に配合することで期待される効果(吸収体の柔軟性、クッション性、圧縮回復性などの向上効果)が安定的に発現するようになる。また特に、図5(a)に示す如き直方体形状の繊維塊11の場合、その外面が2つの基本面111と4つの骨格面112との6つの面からなるため、図5(b)に示す如き3つの外面を持つ円盤形状の繊維塊11に比して、他の繊維塊11あるいは吸水性繊維12Fとの接触機会を比較的多く持つことが可能となり、交絡性が高まって、保形性等の向上にも繋がり得る。
繊維塊11において、2つの基本面111の総面積は、骨格面112の総面積よりも大きいことが好ましい。即ち、図5(a)の直方体形状の繊維塊11Aにおいては、2つの基本面111それぞれの面積の総和は、4つの骨格面112それぞれの面積の総和よりも大きく、また、図5(b)の円盤形状の繊維塊11Bにおいては、2つの基本面111それぞれの面積の総和は、円盤形状の繊維塊11Bの周面を形成する骨格面112の面積よりも大きい。繊維塊11A,11Bのいずれにおいても、基本面111は、繊維塊11A,11Bが有する複数の面のうちで面積が最大の面である。
このような、2つの基本面111と両基本面111に交差する骨格面112とで画成された「定形の繊維集合体」である繊維塊11は、従来技術とは製造方法を異にすることで実現できるものである。好ましい繊維塊11の製造方法は、図6に示すように、原料となる原料繊維シート10bs(繊維塊11と同組成で且つ繊維塊11よりも寸法が大きいシート)を、カッターなどの切断手段を用いて定形に切断するものである。そうして製造された複数の繊維塊11は形状及び寸法が、特許文献3及び4のような従来技術によって製造するものと比較して、より定形的に揃っている。図6は、図5(a)の直方体形状の繊維塊11Aの製造方法を説明した図であり、図6中の点線は切断線を示している。吸収性コア10には、このように繊維シートを定形に切断して得られた、形状及び寸法が均一な複数の繊維塊11が配合されている。前述した通り、原料繊維シート10bsとしては不織布が好ましい。
図5(a)の直方体形状の繊維塊11Aは、図6に示すように原料繊維シート10bsを、第1方向D1と該第1方向D1に交差(より具体的には直交)する第2方向D2とに所定の長さで切断することで製造される。両方向D1,D2は、それぞれ、シート10bsの面方向における所定の一方向であり、シート10bsは該面方向と直交する厚み方向Zに沿って切断される。このように、原料繊維シート10bsをいわゆる賽の目状に切断して得られる複数の直方体形状の繊維塊11Aにおいては通常、その切断面即ちシート10bsの切断時においてカッターなどの切断手段と接触する面が、骨格面112であり、非切断面即ち該切断手段と接触しない面が、基本面111である。基本面111は、シート10bsにおける表裏面(厚み方向Zと直交する面)であり、また前述した通り、繊維
塊11Aが有する複数の面のうちで面積が最大の面である。
尚、以上の繊維塊11Aについての説明は、図5(b)の円盤形状の繊維塊11Bにも基本的に当てはまる。繊維塊11Aとの実質的な違いは、原料繊維シート10bsの切断パターンのみであり、シート10bsを定形に切断して繊維塊11Bを得る際には、繊維塊11Bの平面視形状に合わせて、シート10bsを円形状に切断すればよい。
また、繊維塊11の外形形状は図5に示すものに限定されず、基本面111及び骨格面112はいずれも、図5(a)の各面111,112のように湾曲していない平坦面でもよく、あるいは図5(b)の骨格面112(円盤形状の繊維塊11Bの周面)のように湾曲面でもよい。また、基本面111と骨格面112とは互いに同形状同寸法であってもよく、具体的には例えば、繊維塊11Aの外形形状は立方体形状であってもよい。
前述したように、繊維塊11(11A,11B)が有する2種類の面(基本面111、骨格面112)は、繊維塊11を製造する際のカッターなどの切断手段による原料繊維シート10bsの切断によって形成される切断面(骨格面112)と、シート10bsが本来的に有する面であって該切断手段とは接触しない非切断面(基本面111)とに分類される。そして、この切断面か否かの違いに起因して、切断面である骨格面112は、非切断面である基本面111に比して、繊維端部の単位面積当たりの数が多いという特徴を有する。ここでいう「繊維端部」とは、繊維塊11の構成繊維11Fの長さ方向端部を意味する。通常、非切断面である基本面111にも繊維端部は存在するが、骨格面112は、原料繊維シート10bsの切断によって形成された切断面であることに起因して、その切断によって形成された構成繊維11Fの切断端部からなる繊維端部が、骨格面112の全体に多数存在しており、つまり、繊維端部の単位面積当たりの数が基本面111のそれよりも多くなっている。
繊維塊11の各面(基本面111、骨格面112)に存在する繊維端部は、該繊維塊11が、吸収体4に含まれる他の繊維塊11や吸水性繊維12Fとの間に交絡を形成するのに有用である。また一般に、繊維端部の単位面積当たりの数が多いほど交絡性が向上し得るので、吸収体4の保形性などの諸特性の向上に繋がり得る。そして前述したように、繊維塊11の各面における繊維端部の単位面積当たりの数は均一ではなく、斯かる繊維端部の単位面積当たりの数に関しては「骨格面112>基本面111」なる大小関係が成立することから、繊維塊11を介した他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)との交絡性は該繊維塊11の面によって異なり、骨格面112は基本面111に比して交絡性が高い。即ち、骨格面112を介しての他の繊維との交絡による結合の方が、基本面111を介してのそれよりも結合力が強く、1個の繊維塊11において、基本面111と骨格面112とで他の繊維との結合力に差が生じ得る。
このように、吸収体4においてはそれに含まれている複数の繊維塊11それぞれが、その周辺の他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)に対して、2種類の結合力を持って交絡しており、これにより吸収体4は、適度な柔らかさと強度(保形性)とを兼ね備えたものとなる。そして、このような優れた特性を有する吸収体4を、吸収性物品の吸収体として常法に従って用いた場合には、該吸収性物品の着用者に快適な着用感を提供することができると共に、着用時における着用者の体圧等の外力によって吸収体4が破壊される不都合が効果的に防止される。
特に、図5に示す繊維塊11(11A,11B)は、前述したように、2つの基本面111の総面積が骨格面112の総面積よりも大きい。このため、繊維端部の単位面積当たりの数が相対的に少なく、それ故に他の繊維との交絡性が相対的に低い基本面111の方が、これとは反対の性質を有する骨格面112よりも、総面積が大きいことを意味する。
従って、図5に示す繊維塊11(11A,11B)は、表面全体に繊維端部が均一に存在する繊維塊に比して、周辺の他の繊維(他の繊維塊11、吸水性繊維12F)との交絡が抑制されやすく、また、周辺の他の繊維と交絡するとしても、比較的弱い結合力でもって交絡しやすく、それ故、大きな固まりになり難く、吸収体4に優れた柔軟性を付与し得る。
これに対し、特許文献3及び4記載の不織布片ないし微細ウエブは、前述したように、原料繊維シートをミルカッターのような切断機によって不定形に切断するなどして製造されているため、基本面111や骨格面112のような「面」を持った定形のシート片状の繊維塊とはなっておらず、しかも、その製造時において繊維塊全体に切断処理の外力が加わるため、構成繊維の繊維端部が繊維塊全体にランダムに形成され、該繊維端部による前述した作用効果が十分に発現され難い。
前述した繊維端部による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、基本面111(非切断面)の繊維端部の単位面積当たりの数N1と、骨格面112(切断面)の繊維端部の単位面積当たりの数N2との比率は、N1<N2を前提として、N1/N2として、好ましくは0以上、さらに好ましくは0.05以上、そして、好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.60以下である。より具体的には、N1/N2は0以上0.90以下が好ましく、0.05以上0.60以上がさらに好ましい。
基本面111の繊維端部の単位面積当たりの数N1は、好ましくは0個/mm2以上、さらに好ましくは3個/mm2以上、そして、好ましくは8個/mm2以下、さらに好ましくは6個/mm2以下である。
骨格面112の繊維端部の単位面積当たりの数N2は、好ましくは5個/mm2以上、さらに好ましくは8個/mm2以上、そして、好ましくは50個/mm2以下、さらに好ましくは40個/mm2以下である。
基本面111、骨格面112の繊維端部の単位面積当たりの数は、以下の方法により測定される。
<繊維塊の各面における繊維端部の単位面積当たりの数の測定方法>
測定対象の繊維を含む部材(繊維塊)を紙両面テープ(ニチバン株式会社製ナイスタックNW-15)を用いて、測定片を試料台に貼り付ける。次いで測定片を白金コーティングする。コーティングには日立那珂精器株式会社製イオンスパッタ装置E-1030型(商品名)を用い、スパッタ時間は120秒とする。測定片の切断面を、JEOL(株)製のJCM-6000型の電子顕微鏡を用いて、倍率100倍にて基本面及び骨格面を観察する。この倍率100倍の観察画面においては、測定対象面(基本面又は骨格面)の任意の位置に縦1.2mm、横0.6mmの長方形領域を設定し、且つ該長方形領域の面積が、該観察画面の面積の90%以上を占めるように観察角度などを調整した上で、該長方形領域内に含まれる繊維端部の個数を測定する。但し、倍率100倍の観察画面において、繊維塊の測定対象面が1.2mm×0.6mmよりも小さく、該観察画面全体に占める前記長方形領域の面積の割合が90%未満となる場合には、観察倍率を100倍より大きくした上で、前記と同様に、該測定対象面における前記長方形領域内に含まれる繊維端部の数を測定する。ここで個数測定の対象となる「繊維端部」は、繊維塊の構成繊維の長さ方向端部であり、測定対象面から該構成繊維の長さ方向端部以外の部分(長さ方向中間部)が延出していても、該長さ方向中間部は個数測定の対象としない。そして下記式により、繊維塊の測定対象面(基本面又は骨格面)における繊維端部の単位面積当たりの数を算出する。10個の繊維塊それぞれについて、前記手順に従って、基本面及び骨格面それぞれにおける繊維端部の単位面積当たりの数を測定し、それら複数の測定値の平均値を、当該測定対象面における繊維端部の単位面積当たりの数とする。
繊維塊の測定対象面(基本面又は骨格面)における繊維端部の単位面積当たりの数(個数/mm2)=長方形領域(1.2×0.6mm)に含まれる繊維端部の個数/該長方形
領域の面積(0.72mm2)
繊維塊11の基本面111が、図5(a)に示す繊維塊11Aのように、平面視において長方形形状をなしている場合、吸収体4における繊維塊11の均一分散性の向上の観点から、その長方形形状の短辺111aは、該繊維塊11(11A)を含有している吸収体4の厚みと同等か又はこれに比して短いことが好ましい。短辺111aの長さと吸収体4の厚みとの比率は、前者/後者として、好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.08以上、そして、好ましくは1以下、さらに好ましくは0.5以下である。
吸収体4の厚みは、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは6mm以下である。吸収体4の厚みは以下の方法で測定される。
<吸収体の厚みの測定方法>
測定対象物(吸収体4)を水平な場所にシワや折れ曲がりがないように静置し、5cN/cm2の荷重下での測定対象物の厚みを測定する。具体的には、厚みの測定に、例えば、厚み計 PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いる。このと
き、厚み計の先端部と切り出した測定対象物との間に、測定対象物に対する荷重が5cN/cm2となるように大きさを調整した平面視円形状又は正方形状のプレート(厚さ5mm程度のアクリル板)を配置して、厚みを測定する。厚み測定は、10点測定し、それらの平均値を算出して測定対象物の厚みとする。
繊維塊11(11A,11B)の各部の寸法等は以下のように設定することが好ましい。繊維塊11の各部の寸法は、後述する繊維塊11の外形形状の特定作業の際の電子顕微鏡写真などに基づいて測定することができる。
基本面111が図5(a)に示す如き平面視長方形形状の場合、その短辺111aの長さL1は、好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは6mm以下である。平面視長方形形状の基本面111の長辺111bの長さL2は、好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは2mm以上、そして、好ましくは30mm以下、さらに好ましくは15mm以下である。
尚、基本面111が図5に示すように、繊維塊11が有する複数の面のうちで最大面積を有する面である場合、長辺111bの長さL2は、繊維塊11の最大差し渡し長さに一致し、該最大差し渡し長さは、円盤形状の繊維塊11Bにおける平面視円形状の基本面111の直径に一致する。
短辺111aの長さL1と長辺111bの長さL2との比率は、L1/L2として、好ましくは0.003以上、さらに好ましくは0.025以上、そして、好ましくは1以下、さらに好ましくは0.5以下である。尚、本発明において、基本面111の平面視形状は、図5(a)に示す如き長方形形状に限定されず、正方形形状でもよく、即ち互いに直交する2辺の長さL1,L2の比率は、L1/L2として1でもよい。
繊維塊11の厚みT、即ち2つの対向する基本面111間の長さTは、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは6mm以下である。
また、吸収体4は、該吸収体4のあらゆる面で繊維塊11の存在に起因する作用効果が奏され易くなるように、力学的に等方性であることが好ましい。そのためには、吸収体4の全体に繊維塊11が高密度且つ均一に分布していることが好ましい。斯かる観点から、吸収体4の、互いに直交する2方向の投影視において、任意の10mm四方の単位領域に、複数の繊維塊11の重なり部が存在していることが好ましい。図3及び図4中の符号11Zは、複数の繊維塊11の重なり部を示している。ここでいう、「互いに直交する2方向の投影視」としては、典型的には、吸収体の厚み方向の投影視(即ち吸収体をその肌対向面又は非肌対向面から観察した場合)と、該厚み方向と直交する方向の投影視(即ち吸
収体をその側面から観察した場合)とが挙げられる。
図7(a)には、本発明に係る繊維塊の一実例の電子顕微鏡写真、図7(b)には、繊維塊11をこの電子顕微鏡写真に即して模式的に示した図が示されている。吸収体4に含まれる複数の繊維塊11には、図7に示すように、本体部110と、該本体部110から外方に延出する繊維11Fを含んで構成され且つ該本体部110に比して繊維密度の低い(単位面積当たりの繊維の数が少ない)、延出繊維部113とを有するものが包含され得る。尚、吸収体4には、延出繊維部113を有しない繊維塊11、即ち本体部110のみからなる繊維塊11も包含され得る。延出繊維部113は、前述した、繊維塊11の各面(基本面111、骨格面112)に存在する繊維端部の一種であり、該繊維端部のうち、繊維塊11の各面から外方に延出した繊維端部である。
本体部110は、前述の2つの対向する基本面111と、両基本面111を連結する骨格面112とで画成される部分である。本体部110は、繊維塊11の主体をなし、繊維塊11の定形の外形形状を形作る部分であり、繊維塊11が有する高い柔軟性、クッション性、圧縮回復性などの諸特性は、基本的に本体部110に因るところが大きい。一方、延出繊維部113は主として、吸収体4に含有されている複数の繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとの交絡性の向上に寄与し、吸収体4の保形性の向上に直接的にかかわる他、繊維塊11の吸収体4における均一分散性などにも影響して、本体部110に因る作用効果を間接的に補強し得る。
本体部110は、延出繊維部113に比して繊維密度が高い、即ち単位面積当たりの繊維の数が多い。また通常、本体部110自体の繊維密度は均一である。繊維塊11の全質量に占める、本体部110の割合は、通常少なくとも40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは85質量%以上である。本体部110と延出繊維部113とは、下記の外形形状の特定作業によって区別できる。
吸収体4に含まれている繊維塊11の本体部110の外形形状を特定する作業は、吸収体4における繊維密度の高低差(単位面積当たりの繊維数の多少)や繊維の種類・繊維径の違いなどに着目して、本体部110とそれ以外の部分との「境界」を確認することで行うことができる。本体部110は、その周囲に存在する延出繊維部113よりも繊維密度が高く、また通常、本体部110の構成繊維たる合成繊維は吸水性繊維12F(典型的にはセルロース系繊維)とは質的及び/又は寸法的に異なるため、多数の繊維塊11及び吸水性繊維12Fが混在する吸収体4であっても、前記の点に着目することで前記境界を容易に確認できる。そうして確認された境界が、基本面111又は骨格面112の周縁(辺)であり、斯かる境界確認作業によって、基本面111及び骨格面112が特定され、延いては本体部110が特定される。斯かる境界確認作業は、電子顕微鏡を用い、必要に応じ複数の観察角度にて対象物(吸収体4)を観察することで実施できる。特に、吸収体4に含まれている繊維塊11が、図5に示す繊維塊11A,11Bの如き、「2つの基本面111の総面積が、骨格面112の総面積よりも大きい」ものである場合、とりわけ、基本面111が当該繊維塊11の最大面積を有する面となっているものである場合は、その大きな面積の基本面111を比較的容易に特定できるため、本体部110の外形形状の特定作業をスムーズに行うことができる。
延出繊維部113は、図7に示すように、本体部110の外面を形成する基本面111及び骨格面112のうちの少なくとも1つの面から外方に延出する、本体部110の構成繊維11Fからなる。図7は、繊維塊11を基本面111(繊維塊11の複数の面のうち最大面積を有する面)側から平面視した図であり、該基本面111に交差する骨格面112から繊維11Fが多数延出して延出繊維部113を形成している。
延出繊維部113の形態は特に制限されない。延出繊維部113は、1本の繊維11Fから構成される場合もあり、後述する延出繊維束部113Sのように、複数の繊維11Fから構成される場合もある。また、延出繊維部113は、本体部110から延出する繊維11Fの長さ方向端部を含むが、このような繊維端部に加え、繊維11Fの長さ方向両端部以外の部分(長さ方向中間部)を含み得る場合がある。すなわち、繊維塊11においては、構成繊維11Fの長さ方向の両端部が本体部110に存在し、それ以外の部分即ち長さ方向中間部が本体部110から外方にループ状に延出(突出)する場合があるところ、その場合の延出繊維部113は、斯かる繊維11Fのループ状の突出部を含んで構成される。
延出繊維部113の主たる役割の1つは、前述した通り、吸収体4に含有されている複数の繊維塊11同士、あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとを互いに交絡させることである。一般に、延出繊維部113の本体部110からの延出長さが長くなり、あるいは延出繊維部113の太さが太くなり、あるいは1個の繊維塊11が有する延出繊維部113の数が多くなると、該延出繊維部113を介して交絡している物体同士の繋がりが強くなって交絡が解除されにくくなるため、本発明の所定の効果がより一層安定的に奏されるようになる。
繊維塊11が、図6に示す如く原料繊維シート10bsを定形に切断して得られたものである場合、延出繊維部113は、その切断面である骨格面112に比較的多く存在するのに対し、非切断面である基本面111には全く存在しないか、存在したとしてもその数は骨格面112よりも少数である。このように、延出繊維部113が切断面たる骨格面112に偏在する理由は、延出繊維部113の多くが、原料繊維シートの切断によって発生する「毛羽」であるためである。即ち、原料繊維シート10bsの切断によって形成された骨格面112は、その切断時にカッターなどの切断手段によって全体的に擦られるため、シート10bsの構成繊維11Fからなる毛羽が形成されやすく、いわゆる毛羽立ちし易い。原料繊維シートの種類にもよるが、切断線の間隔を短くしたり、切断速度を遅くするなどすると、延出繊維部113が形成され易く、その長さも調整可能である。一方、非切断面である基本面111は、このような切断手段との摩擦が無いため、毛羽即ち延出繊維部113が形成され難い。
原料繊維シート10bs切断時の切断線の間隔L1a(第1方向の間隔、図6参照)及び間隔L2a(第2方向の間隔、図6参照)は、前述した延出繊維部113の形成促進等の観点、及び繊維塊11が所定の効果を発現する上で必要な寸法を確保する観点などから、好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは30mm以下、さらに好ましくは15mm以下である。
繊維塊11は図7に示すように、延出繊維部113の一種として、本体部110、より具体的には骨格面112から外方へと延びる、複数の繊維11Fを含む延出繊維束部113Sを有している。繊維塊11が有する延出繊維部113のうちの少なくとも1つは、この延出繊維束部113Sであり得る。延出繊維束部113Sは、骨格面112から延出する複数の繊維11Fが寄り集まって構成されたもので、延出繊維部113に比して、骨格面112からの延出長さが長い点で特徴付けられる。延出繊維束部113Sは、基本面111にも存在し得るが、典型的には図7に示すように骨格面112に存在し、基本面111には全く存在しないか、存在したとしてもその数は骨格面112よりも少数である。その理由は、延出繊維部113が切断面である骨格面112に主に存在する理由と同じであり、前述した通りである。
繊維塊11がこのような、長くて太い大型の延出繊維部113とも言うべき延出繊維束
部113Sを有していることで、繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとの交絡がより一層強まり、結果として、繊維塊11の存在に起因する本発明の所定の効果がより一層安定的に奏されるようになる。延出繊維束部113Sは、前述した、毛羽立ちやすい条件での原料繊維シート10bsの切断(図6参照)を実施することで、形成されやすくなる。
延出繊維束部113Sの本体部110からの延出長さ、即ち骨格面112(切断面)からの延出長さは、好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは7mm以下、さらに好ましくは4mm以下である。延出繊維束部113Sの延出長さは、前記の繊維塊11の外形形状の特定作業(境界確認作業)において測定することができる。具体的には例えば、キーエンス製のマイクロスコープ(50倍率)にて、アクリル製の透明なサンプル台の表面に3M(株)製の両面テープを貼り、その上に繊維塊11を載せて固定した上で、前記の外形形状の特定作業に従って、該繊維塊11の外形形状を特定した後、該外形形状から延出した繊維11Fにおける、延出分の長さを測定し、その測定した延出分の長さを、延出繊維束部113Sの延出長さとする。
延出繊維束部113Sは、その複数の構成繊維11Fが互いに熱融着していることが好ましい。斯かる延出繊維束部113Sの熱融着部は通常、該延出繊維束部113Sの他の部分(非熱融着部)に比して、該延出繊維束部113Sの長さ方向と直交する方向の差し渡し長さ(該熱融着部の断面が円形の場合は直径)が長い。延出繊維束部113Sがこのような大径部とも言える熱融着部を有していることにより、延出繊維束部113S自体の強度が高まり、それによって、延出繊維束部113Sを介して交絡している繊維塊11同士あるいは繊維塊11と吸水性繊維12Fとの交絡がより一層強まるようになる。また、延出繊維束部113Sが熱融着部を有していると、該延出繊維束部113Sが乾燥状態の場合のみならず、水分を吸収して湿潤状態となっている場合でも、該延出繊維束部113S自体の強度、保形性などが高まるというメリットがある。そして、斯かるメリットにより、吸収体4を吸収性物品に適用した場合には、吸収体4が乾燥状態にある場合は勿論のこと、着用者が排泄した尿や経血などの体液を吸収して湿潤状態となった場合でも、前述した繊維塊11の存在に起因する作用効果が安定的に奏され得る。このような、熱融着部を有する延出繊維束部113Sは、図6に示す如き繊維塊11の製造工程、即ち繊維塊11の原料繊維シート10bsの切断工程において、原料繊維シート10bsとして、前記「構成繊維同士の熱融着部を有する繊維シート」を使用することで製造可能である。
繊維塊11の構成繊維11Fは合成繊維を含む。繊維11Fとして使用される合成繊維は、非吸水性の合成繊維が好ましい。繊維塊11の構成繊維11Fが非吸水性繊維であることにより、吸収体4が乾燥状態である場合のみならず、水分(尿や経血などの体液)を吸収して湿潤状態にある場合でも、前述した繊維塊11の存在に起因する作用効果(保形性、柔軟性、クッション性、圧縮回復性、ヨレにくさなどの向上効果)が安定的に奏されるようになる。繊維塊11における構成繊維11Fとしての合成繊維の含有量は、繊維塊11の全質量に対して、好ましくは90質量%以上であり、100質量%即ち繊維塊11が合成繊維のみから形成されていることが最も好ましい。特に、構成繊維11Fとしての合成繊維が非吸水性のものである場合に、前述した繊維塊11の存在に起因する作用効果が一層安定的に奏される。
本明細書において、「吸水性」という用語は、例えば、パルプは吸水性と言ったように、当業者にとって容易に理解できるものである。同様に、熱可塑性繊維は非吸水性であることも、容易に理解され得る。一方で、繊維の吸水性の程度は下記方法により測定される水分率の値によって、相対的な吸水性の違いが比較できると共に、より好ましい範囲も規定できる。水分率の値が大きいほど当該繊維の吸水性が高く、従って、吸水性繊維は非吸水性繊維に比して水分率の値が大きい。吸水性繊維としては、斯かる水分率が6%以上の
繊維が好ましく、10%以上の繊維がさらに好ましい。一方で、非吸水性繊維としては、斯かる水分率が6%未満の繊維が好ましく、4%未満の繊維がさらに好ましい。
<水分率の測定方法>
水分率は、JIS P8203の水分率試験方法を準用して算出した。即ち、繊維試料
を温度40℃、相対湿度80%RHの試験室に24時間静置後、その室内にて絶乾処理前の繊維試料の重量W(g)を測定した。その後、温度105±2℃の電気乾燥機(例えば、株式会社いすゞ製作所製)内にて1時間静置し、繊維試料の絶乾処理を行った。絶乾処理後、温度20±2℃、相対温度65±2%の標準状態の試験室にて、旭化成(株)製サランラップ(登録商標)で繊維試料を包括した状態で、Siシリカゲル(例えば、豊田化工(株))をガラスデシゲータ内(例えば、(株)テックジャム製)に入れて、繊維試料が温度20±2℃になるまで静置する。その後、繊維試料の恒量W’(g)を秤量して、次式により繊維試料の水分率を求める。水分率(%)=(W-W’/W’)×100
また同様に、吸収体4が乾燥状態及び湿潤状態のいずれの状態でも保形性、柔軟性、クッション性、圧縮回復性、ヨレにくさなどにおいて優れた効果を発現し得るようにする観点から、繊維塊11は、複数の熱可塑性繊維が互いに熱融着した3次元構造を有することが好ましい。
またこのような、複数の熱融着部が3次元的に分散した繊維塊11を得るために、繊維塊11の構成繊維11Fとして使用される合成繊維は、熱可塑性繊維が好ましい。また前述したように、延出繊維束部113Sは熱融着部を有していることが好ましいところ、繊維塊11の構成繊維11Fが熱可塑性繊維であることで、斯かる延出繊維束部113Sの好ましい形態を得ることも可能となる。
複数の熱融着部が3次元的に分散した繊維塊11を得るためには、その原料繊維シート10bs(図6参照)が同様に構成されていればよく、また、そのような複数の熱融着部が3次元的に分散した原料繊維シート10bsは、前述したように、熱可塑性繊維を主体とするウエブや不織布に、熱風処理などの熱処理を施すことによって製造することができる。
繊維塊11の構成繊維11Fの素材として好適な非吸水性の合成樹脂(熱可塑性樹脂)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、繊維11Fは、1種類の合成樹脂(熱可塑性樹脂)又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維(熱可塑性繊維)で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等があり、特に制限されない。
また、繊維塊11は、下記方法で測定される水との接触角が90度未満、特に70度以下であることが、初期排泄での体液の引き込み性を一層向上させる観点から好ましい。このような繊維としては、上述した非吸水性の合成繊維を、常法に従い親水化剤で処理することによって得られる。親水化剤としては、通常の界面活性剤を使用することができる。
<接触角の測定方法>
測定対象(吸収性コア)から繊維塊の繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を
測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA-Jを用いる。接触角の測定には脱イオン水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC-25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維とのなす角を算出し、接触角とする。測定対象物から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、当該繊維の水との接触角と定義する。測定環境は、室温22±2℃、湿度65±2%RHとする。
吸水性繊維12Fとしては、この種の吸収性物品の吸収体の形成材料として従来使用されている吸水性繊維を用いることができ、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。吸水性繊維の中でもセルロース系の吸水性繊維が特に好ましい。
吸収体4において、繊維塊11と吸水性繊維12Fとの含有質量比は特に限定されず、繊維塊11の構成繊維(合成繊維)11F及び吸水性繊維12Fの種類等に応じて適宜調整すればよい。例えば、繊維塊11の構成繊維11Fが熱可塑性繊維(非吸水性の合成繊維)、吸水性繊維12Fがセルロース系繊維(吸水性繊維)である場合、本発明の所定の効果をより確実に奏させるようにする観点から、繊維塊11と吸水性繊維12Fとの含有質量比は、前者(繊維塊11)/後者(吸水性繊維12F)として、好ましくは20/80~80/20、さらに好ましくは40/60~60/40である。
吸収体4における繊維塊11の含有量は、乾燥状態の吸収体4の全質量に対して、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
吸収体4における吸水性繊維12Fの含有量は、乾燥状態の吸収体4の全質量に対して、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
吸収体4における繊維塊11の坪量は、好ましくは32g/m2以上、さらに好ましくは80g/m2以上、そして、好ましくは640g/m2以下、さらに好ましくは480g/m2以下である。
吸収体4における吸水性繊維12Fの坪量は、好ましくは32g/m2以上、さらに好ましくは80g/m2以上、そして、好ましくは640g/m2以下、さらに好ましくは480g/m2以下である。
吸収体4は、繊維塊11及び吸水性繊維12F以外の他の成分を含有してもよく、他の成分として吸水性ポリマーを例示できる。吸水性ポリマーとしては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでもよい。粒子状の高吸水性ポリマーを用いる場合、その形状は球状、塊状、俵状又は不定形のいずれでもよい。吸水性ポリマーの平均粒子径は、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは100μm以上、そして、好ましくは100
0μm以下、さらに好ましくは800μm以下である。吸水性ポリマーとしては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられる。
吸収体4における吸水性ポリマーの含有量は、乾燥状態の吸収体4の全質量に対して、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
吸収体4における吸水性ポリマーの坪量は、好ましくは10g/m2以上、さらに好ましくは30g/m2以上、そして、好ましくは100g/m2以下、さらに好ましくは70g/m2以下である。
吸収体4は、この種の繊維材料を含む吸収体と同様に製造することができる。繊維塊11は、前述したように図6に示す如く、原料となる原料繊維シート(繊維塊11と同組成で且つ繊維塊11よりも寸法が大きいシート)を、カッターなどの切断手段を用いて、互いに交差(直交)する2方向で切断することで製造可能であり、そうして製造された複数の繊維塊11は、形状及び寸法が均一の「定形の繊維集合体」(例えば、本体部110が直方体形状)である。繊維塊11と吸水性繊維12Fとを含む吸収体4は、例えば、回転ドラムを備えた公知の積繊装置を用いて常法に従って製造することができる。斯かる積繊装置は、典型的には、外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムと、該集積用凹部に吸収性コア40の原材料(繊維塊11、吸水性繊維12F)を搬送する流路を内部に有するダクトとを備え、該回転ドラムをそのドラム周方向に沿って回転軸周りに回転させつつ、該回転ドラムの内部側からの吸引によって該流路に生じた空気流(バキュームエア)に乗って搬送された原材料を、該集積用凹部に積繊させるようになされている。斯かる積繊工程によって集積用凹部内に形成される積繊物は、吸収性コア40である。
吸収体4の坪量は、好ましくは100g/m2以上、さらに好ましくは200g/m2以上、そして、好ましくは800g/m2以下、さらに好ましくは600g/m2以下である。
以下、本発明の他の実施形態について図8~図10を参照して説明する。後述する他の実施形態については、前述したナプキン1と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、ナプキン1についての説明が適宜適用される。
図8に示すナプキン1Aにおいては、吸収性本体5の肌対向面に、表面シート2及び吸収体4が該吸収体4の非肌対向面側に一体的に凹陥した、防漏溝9が形成されている。防漏溝9は、ナプキン1A(吸収性本体5)に対しその肌対向面即ち表面シート2側から圧搾加工を施すことによって形成されており、その形成方法に起因して防漏溝9では、表面シート2、コアラップシート41及び吸収性コア40が、該吸収性コア40の非肌対向面側(裏面シート3側)に向かって一体的に凹陥している。また防漏溝9は、このような形成方法に起因して、非圧密部8における防漏溝9の非形成部に比して密度が高い。
また、防漏溝9を形成するためにナプキン1A(吸収性本体5)に施される前記圧搾加工は、通常、吸収体4に含まれる繊維塊11の構成繊維11F(合成繊維)の溶融を伴う条件でなされ、具体的には、熱を伴うエンボス加工、超音波エンボス等の公知のエンボス加工が挙げられる。斯かる防漏溝9の形成方法に起因して、防漏溝9の底部、即ち空間部である防漏溝9と図1に示す如き平面視において重なる部分では、表面シート2、コアラップシート41及び吸収性コア40が熱融着されて一体化されている。
防漏溝9は、図1に示すように平面視において線状をなし、縦方向Xに延びる左右一対
の縦溝9X,9Xと、横方向Yに延びる前後一対の横溝9Y,9Yを含む。これら複数の縦溝9X及び横溝9Y同士は、それらの長さ方向の端部にて連結しており、防漏溝9全体として1つの閉じた環状をなしている。一対の縦溝9X,9Xは、それぞれ、少なくとも縦中央域Bの縦方向Xの全長にわたって延びる連続線状をなしている。また、一対の横溝9Y,9Yのうちの一方は前方域Aに存在し、他方は後方域Cに存在しており、いずれの横溝9Yも平面視において、縦方向Xの外方に向かって凸のU字状ないし弧状の連続線状をなし、且つそのU字状ないし弧状の頂部がナプキン1Aの横方向Yの中央に位置している。縦中央域Bの中央部、即ち前記排泄部対向部(排泄ポイント)を含む部分は、平面視において閉じた環状をなす防漏溝9のその環の中に位置している。
防漏溝9の作用効果としては、吸収体4の保形性の向上、吸収体4の面方向における液拡散性の向上等が挙げられ、吸収体4の圧密部7の作用効果と類似している。従って、圧密部7に加えてさらに防漏溝9が形成されることで、吸収体4の保形性や面方向における液拡散性等がより一層向上し得る。
ナプキン1Aの少なくとも縦中央域Bにおいては、一対の縦溝9X,9Xよりも横方向Yの内方に、吸収体4の圧密部7が存在している。図8に示す形態では、平面視において閉じた環状をなす防漏溝9のその環の中の全域に圧密部7が存在しており、縦中央域Bのみならず、前方域A及び後方域Cそれぞれにおいても、一対の縦溝9X,9Xの間に圧密部7が存在している。斯かる構成により、表面シート2から吸収性コア40の排泄部対向部へと吸収された体液を速やかに面拡散させる、即ち縦方向X、横方向Y、さらには両方向X,Yの双方に交差する方向それぞれに拡散させることで、湿潤時での排泄部対向領域のクッション性が向上される。
また、ナプキン1Aの少なくとも縦中央域Bにおいては、一対の縦溝9X,9Xよりも横方向Yの外方に、吸収体4の圧密部7が存在している。図8に示す形態では、平面視において閉じた環状をなす防漏溝9のその環の外の全域に圧密部7が存在しており、縦中央域Bのみならず、前方域A及び後方域Cそれぞれにおいても、一対の縦溝9X,9Xよりも横方向Yの外方に圧密部7が存在している。斯かる構成により、一対の縦溝9Xよりも横方向Yの外方に存在する圧密部7にまで体液が到達した場合に、体液を縦方向Xへと拡散させやすく、延いては横漏れの防止や湿潤時でも排泄部対向領域のクッション性が向上される。
また、ナプキン1Aにおいては、図8に示す如き平面視において、圧密部7と防漏溝9とが重なっている。防漏溝9と重なっていない圧密部7においては、前述した通り、吸収体4の構成繊維11F,12F同士は融着しておらず、従って複数の繊維塊11同士の融着による結合体は存在していないが、防漏溝9と重なっている圧密部7においては、該防漏溝9が繊維11F(合成繊維)の溶融を伴う圧搾加工によって形成されているため、吸収体4の構成繊維11F,12F同士が融着され得る。このような繊維の融着部の形成は、吸収体4の柔軟性やクッション性等の低下に繋がり得るものであるが、ナプキン1Aにおいては該融着部は比較的少ないため、これらの特性は実質的には低下しない。防漏溝9の作用効果とその形成に起因する不都合とのバランスの観点から、吸収体4の一面(ナプキン1Aにおいては肌対向面)の全面積に占める、圧密部7と防漏溝9との重複部分の総面積の割合は、後者(該重複部分の総面積)/前者(該全面積)として、好ましくは1%以上、さらに好ましくは3%以上、そして、好ましくは9%以下、さらに好ましくは7%以下である。
図9に示すナプキン1Bにおいては、図9中一点破線で囲まれた平面視楕円形状の排泄部対向領域Eに位置する吸収体4に圧密部7が形成されておらず、排泄部対向領域Eに位置する吸収体4の全域が、吸収体4の構成繊維11F,12Fが圧密状態とされていない
非圧密部8である。排泄部対向領域Eは、ナプキン1Bにおける前記排泄部対向部(排泄ポイント)を含む領域であり、通常は図9に示すように、縦中央域Bの横方向Yの中央部に位置し、縦方向Xの全長が70~100mm、横方向Yの長さ即ち幅が30~50mmである。このように、排泄部対向領域Eに位置する吸収体4に圧密部7が形成されていないと、排泄部対向領域Eは柔軟でクッション性に富むものとなるため、ナプキン1Bの着用感や動作追従性がより一層向上し得る。
図10に示すナプキン1Cは、吸収体4の圧密部7のパターンの点で、図1に示すナプキン1と異なる。即ちナプキン1Cにおける吸収体4の肌対向面には、複数の圧密部7が一方向(縦方向X)に等間隔に配置されてなる列が、該一方向と直交する方向(横方向Y)に複数配置され、且つ該一方向と直交する方向において、隣り合う2列同士で互いに複数の圧密部7が同位置に形成されている。ナプキン1Cにおいても、ナプキン1と同様に、複数の圧密部7が吸収体4の肌対向面の全域に散点状に分散配置されている。
また、ナプキン1Cにおける圧密部7のパターンは、体液を面方向において異方的(anisotropic)に拡散させる異方的パターンである。即ち、図10に示すナプキン1Cにおい
ては、縦方向Xにおける圧密部7のピッチ7Pxが、横方向Yにおける圧密部7のピッチ7Py、及び両方向X,Yの双方に交差する方向における圧密部7のピッチ7Pzそれぞれに比して短い。即ちナプキン1Cにおいては、ピッチ7Pxが前記ピッチ7P1(相対的に短いピッチ)、ピッチ7Py,7Pzがそれぞれ前記ピッチ7P2(相対的に長いピッチ)である。斯かる「ピッチ7Px<ピッチ7Py,7Pz」なる大小関係が成立するナプキン1Cの吸収体4においては、体液は、横方向Yや両方向X,Yの双方に交差する方向よりも縦方向Xに優先的に拡散されるため、吸収体4の吸収性能がより一層有効活用されるようになる。また、横方向Yにおける体液の拡散性が比較的低いため、いわゆる横漏れが効果的に防止され得る。
圧密部7のパターンが、図10に示す如き異方的パターンの場合、圧密部7の各ピッチは以下のように設定することが好ましい。
ピッチ7Pxとピッチ7Pyとの比率は、前者/後者として、好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.38以上、そして、好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.80以下である。
ピッチ7Pxとピッチ7Pzとの比率は、前者/後者として、好ましくは0.17以上、さらに好ましくは0.30以上、そして、好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.80以下である。
縦方向Xにおける圧密部7のピッチ7Pxは、好ましくは2.0mm以上、さらに好ましくは3.0mm以上、そして、好ましくは7.0mm以下、さらに好ましくは5.0mm以下である。
横方向Yにおける圧密部7のピッチ7Pyは、好ましくは3.0mm以上、さらに好ましくは5.0mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは8.0mm以下である。
縦方向X及び横方向Yの双方に交差する方向における圧密部7のピッチ7Pzは、好ましくは4.0mm以上、さらに好ましくは5.0mm以上、そして、好ましくは12mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態においては、吸収体4の肌対向面に凹陥部たる圧密部7が形成されていたが、該肌対向面とは反対側に位置する非肌対向面に圧密部7が形成されていてもよく、吸収体4の両面それぞれに圧密部7が形成されていてもよい。
また、前記実施形態においては、吸収体4が吸収性コア40とこれを被覆するコアラッ
プシート41とを含んで構成されていたが、コアラップシート41は無くてもよい。
また、本発明に係る吸収性コアは、それに含有されている繊維塊(合成繊維集合体)の全部が、繊維塊11の如き定形の繊維集合体でなくてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、斯かる定形の繊維集合体に加えてさらに不定形の繊維集合体がごく少量含まれていてもよい。
本発明の吸収性物品は、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品を広く包含し、前述した生理用ナプキンの他、生理用ショーツ、止着テープを有するいわゆる展開型の使い捨ておむつ、パンツ型の使い捨ておむつ、失禁パッド等が包含される。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1~5〕
図1に示すナプキン1と基本構成が同様の生理用ナプキンを作製した。
表面シートとして、坪量74g/m2のポリエチレン及びポリエチレンテレフタラート樹脂繊維によって構成されるエアスルー不織布を用い、裏面シートとして、37g/m2のポリエチレン樹脂製のフィルムを用いた。吸収体は、繊維塊及び吸水性繊維を吸収性コアの繊維材料として用い、さらに別途用意した坪量16g/m2のパルプ繊維からなるコアラップシートを用いて、公知の積繊装置を用い常法に従って製造した。繊維塊の製造は図6に準じ、原料繊維シートを賽の目状に切断して製造した。吸収性コアの肌対向面及びコアラップシートにおける該肌対向面を被覆する部分(肌側コアラップシート)に対して、繊維の融着を生じない条件で圧搾加工を行って、圧密部を下記パターンA~Cのいずれかで形成した。
繊維塊の原料繊維シートとして、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタラート樹脂からなる非吸水性の熱可塑性繊維を構成繊維とする坪量21g/m2のエアスルー不織布(構成繊維同士の熱融着部を有する繊維シート)を用いた。吸水性繊維として、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を用いた。吸収体に使用した繊維塊(定形の合成繊維集合体)は、図5(a)に示す如き直方体形状の本体部を有し、その基本面111の短辺111aが0.8mm、長辺111bが3.9mmであった。
・パターンA:吸収体の肌対向面の全域に、千鳥状パターン(等方的パターン)で圧密部を形成(図1参照)。圧密部のピッチPx7.0mm、ピッチPy7.0mm、ピッチPz5.0mm、前記圧密部占有率12.8%。
・パターンB:吸収体の肌対向面の排泄部対向領域Eを除く全域に、千鳥状パターン(等方的パターン)で圧密部を形成(図9参照)。圧密部のピッチPx7.0mm、ピッチPy7.0mm、ピッチPz5.0mm、前記圧密部占有率9.9%。
・パターンC:吸収体の肌対向面の全域に、異方的パターンで圧密部を形成(図10参照)。圧密部のピッチPx3.5mm、ピッチPy7.0mm、ピッチPz10.0mm、前記圧密部占有率12.8%。
〔比較例1〕
市販の生理用ナプキン(ユニ・チャーム株式会社製、商品名「Tanom Pew Slim 23cm」)をそのまま比較例1とした。比較例1の生理用ナプキンにおける吸収体は、合成繊維とセルロース系繊維(吸水性繊維)とが混合されたもので、繊維塊を含んでいない。
〔比較例2〕
吸収体を下記のものに変更した以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製し、
比較例2とした。
比較例2で用いた吸収体は、吸収性コアが、繊維塊として不定形の不織布片を含有している。また、比較例2で用いた吸収性コアは、繊維塊として、不定形の不織布片を用い、且つ吸収体に熱風工程を施して、該吸収体に含まれている該不織布片同士を互いに熱融着させた。前記の吸収性コアに施した熱風工程では、不織布片とパルプ繊維との混合集合体(長さ210mm×幅66mm)を温度140℃の電気乾燥機(例えば、株式会社いすゞ製作所製)内にて30分静置し、不織布片同士を熱融着させた。使用した不定形の不織布片は、実施例1~5で使用したエアスルー不織布を、該エアスルー不織布平面あるいは厚み方向に任意の形状及び大きさで引きちぎることによって製造し、その平面視における差し渡し長さは概ね25mm程度であった。
〔性能評価〕
各実施例及び比較例の生理用ナプキンについて、下記方法により、湿潤状態での圧縮仕事量(w-WC)を評価測定した。結果を下記表1に示す。
<圧縮仕事量(WC)の測定方法>
試料の圧縮仕事量(WC)は、カトーテック株式会社製のKES(カワバタ・エバリュエーション・システム)での測定値で表し得ることが一般的に知られている(参考文献:風合い評価の標準化と解析(第2版)、著者 川端季雄、昭和55年7月10日発行)。具体的には、カトーテック株式会社製の自動化圧縮試験装置KES-FB3-AUTO-Aを用いて圧縮仕事量及び圧縮回復率を測定することができる。測定手順は以下の通りである。
生理用ナプキンから、前記排泄部対向部を含む195mm×68mmの平面視四角形形状の領域を切り出して試料とし、乾燥状態の該試料に、底部に直径1cmの注入口が付いた円筒付アクリル板を、該試料の中心が該注入口の中心と重なるように設置し、5.0gの脱繊維馬血(株式会社日本バイオテスト研究所製)を吸収させて湿潤状態とする。この湿潤状態の試料を圧縮試験装置の試験台に取り付ける。次に、その湿潤状態の試料を面積2cm2の円形平面を持つ鋼板間で圧縮する。圧縮速度は0.01cm/sec、圧縮最大荷重は490.2mN/cm2とする。圧縮仕事量(単位:mN・cm/cm2)は下記式で表される。下記式中、Tm、To及びPは、それぞれ490.2mN/cm2(4.9kPa)荷重時の厚み、4.902mN/cm2(49Pa)荷重時の厚み、及び測定時の荷重(mN/cm2)を示す。
こうして算出された圧縮仕事量が、当該試料の湿潤状態での圧縮仕事量(w-WC)である。w-WCの値が大きいほど、クッション性が高いと判断され高評価となる。
表1に示す通り、各実施例の吸収体は、合成繊維を含み且つ2つの基本面と両基本面に交差する骨格面とで画成される本体部を有する、定形の繊維塊を含有することに起因して、このような繊維塊を含まない比較例1及び2に比して、湿潤状態の圧縮仕事量が大きかった。特に、各実施例と比較例2との対比から、湿潤状態でも圧縮仕事量が大きくクッション性に優れる吸収体を得るためには、繊維塊を定形とし且つ繊維塊同士を交絡によって結合させることが有効であることがわかる。