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JP2017142347A - 収縮応力の小さい偏光フィルム及びその製造方法 - Google Patents

収縮応力の小さい偏光フィルム及びその製造方法 Download PDF

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JP2017142347A JP2016023178A JP2016023178A JP2017142347A JP 2017142347 A JP2017142347 A JP 2017142347A JP 2016023178 A JP2016023178 A JP 2016023178A JP 2016023178 A JP2016023178 A JP 2016023178A JP 2017142347 A JP2017142347 A JP 2017142347A
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達也 大園
Tatsuya Ozono
達也 大園
辻 嘉久
Yoshihisa Tsuji
嘉久 辻
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Abstract

【課題】優れた偏光性能を有し、しかも収縮応力の低い偏光フィルムを提供する。【解決手段】ヨウ素系二色性色素を含むポリビニルアルコールフィルムからなる偏光フィルムにおいて、透過率43.5%のときの偏光度を99.990%以上とし、かつ、収縮応力を45N/mm2以下とする。このとき、ポリビニルアルコールの重合度が2500〜3500であることが好ましく、偏光フィルムの厚みが1〜30μmであることも好ましい。このような偏光フィルムは、ポリビニルアルコールフィルムに対し、少なくとも膨潤工程、染色工程、第1架橋延伸工程、第2架橋延伸工程をこの順番に施す際に、特定の製造条件を適用することによって製造できる。【選択図】図2

Description

本発明は、ヨウ素系二色性色素を含むポリビニルアルコールフィルムからなる収縮応力の小さい偏光フィルム及びその製造方法に関する。
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光の偏光状態を変化させる液晶と共に液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。多くの偏光板は偏光フィルムの表面に三酢酸セルロース(TAC)フィルムなどの保護膜が貼り合わされた構造を有している。偏光フィルムとしてはポリビニルアルコールフィルム(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記することがある)を一軸延伸してなるマトリックス(一軸延伸して配向させた延伸フィルム)にヨウ素系色素(I やI 等)が吸着しているものが主流となっている。このような偏光フィルムは、二色性色素を予め含有させたPVAフィルムを一軸延伸したり、PVAフィルムの一軸延伸と同時に二色性色素を吸着させたり、PVAフィルムを一軸延伸した後に二色性色素を吸着させたりするなどして製造される。
LCDは、電卓および腕時計などの小型機器、ノートパソコン、液晶モニター、液晶カラープロジェクター、液晶テレビ、車載用ナビゲーションシステム、携帯電話、屋内外で用いられる計測機器などの広範な用途において用いられている。近年のディスプレイの高性能化に対応して、優れた光学性能を有する偏光フィルムが求められている。
優れた光学性能を有する偏光フィルムを得るために、さまざまな製造方法が提案されている。特許文献1〜4には、PVAフィルムを水に浸漬して膨潤処理し、ヨウ素系二色性色素で染色し、その後ホウ酸水溶液中で架橋させるとともに延伸処理する、偏光フィルムの製造方法において、条件の異なる複数の槽で膨潤処理することによって、優れた偏光特性、均一な光学特性、優れた外観などを有する偏光フィルムが得られることが記載されている。これらの特許文献には、ホウ酸水溶液中で架橋させるとともに延伸処理する工程について、さまざまな手法が記載されている。特許文献1の実施例には、50℃のホウ酸水溶液に浸漬して1.5倍に延伸する方法が記載されている。特許文献2の実施例には、55℃のホウ酸水溶液に浸漬して2.5倍に延伸する方法が記載されている。特許文献3の実施例には、40℃のホウ酸水溶液に浸漬してから、55℃のホウ酸水溶液中で延伸する方法が記載されている。また、特許文献4の実施例には、30℃のホウ酸水溶液中で1.33倍に延伸してから60℃のホウ酸水溶液中で1.5倍に延伸する方法が記載されている。
また、特許文献5には、高温条件に晒された時のTD方向(長手方向と直行する方向)の収縮率を低減することのできる偏光フィルムの製造方法が記載されている。具体的には、PVAフィルムを水に浸漬して膨潤処理し、ヨウ素系二色性色素で染色し、その後、ホウ酸水溶液中で架橋させるとともに延伸処理する方法において、膨潤処理する際に総延伸倍率の50%以上の倍率で延伸することによって、TD方向の収縮率を低減できるとされている。特許文献5の実施例には、56.5℃のホウ酸水溶液に浸漬する工程が記載されているが、当該水溶液中では延伸は施されていない。また、MD方向(フィルムの長手方向)の収縮率については測定されていない。
近年、LCDは、ノートパソコンや携帯電話などのモバイル用途に用いられることが多くなっている。このようなモバイル用途のLCDは、多様な環境下で用いられるので、高温においても寸法安定性に優れた偏光フィルムが要求される。そのためには、高温下における収縮応力の小さい偏光フィルムであることが望ましい。しかしながら、上記特許文献1〜5に記載されたような方法では、優れた偏光性能と小さい収縮応力を十分に両立することのできる偏光フィルムを得ることはできなかった。これは、偏光性能を高くしようとすれば収縮応力が大きくなるし、収縮応力を小さくしようとすれば偏光性能が低下することに由来するものである。したがって、偏光性能が高く、しかも収縮応力が小さい偏光フィルムを製造することは、解決することが困難な課題であった。
特開2006−65309号公報 特開2014−197050号公報 特開2006−267153号公報 特開2013−140324号公報 特開2012−3173号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、優れた偏光性能を有し、しかも収縮応力の低い偏光フィルム及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題は、ヨウ素系二色性色素を含むポリビニルアルコールフィルムからなる偏光フィルムであって、
透過率43.5%のときの偏光度が99.990%以上であり、かつ
収縮応力が45N/mm以下である偏光フィルムを提供することによって解決される。
また上記課題は、ヨウ素系二色性色素を含むポリビニルアルコールフィルムからなる偏光フィルムであって、
透過率が42〜45%であり、
偏光度が99.990%以上であり、かつ
収縮応力が45N/mm以下である偏光フィルムを提供することによっても解決される。
上記偏光フィルムにおいて、当該偏光フィルムに含まれるポリビニルアルコールの重合度が2500〜3500であることが好ましい。また、前記偏光フィルムの厚みが1〜30μmであることも好ましい。
また上記課題は、ポリビニルアルコールフィルムに対し、少なくとも膨潤工程、染色工程、第1架橋延伸工程、第2架橋延伸工程をこの順番に施す偏光フィルムの製造方法であって、
前記ポリビニルアルコールフィルムの厚みが5〜100μmであり、
前記ポリビニルアルコールフィルムに含まれるポリビニルアルコールの平均重合度が2500〜3500であり、
前記膨潤工程において、10〜50℃の水に浸漬して前記ポリビニルアルコールフィルムを膨潤させ、
前記染色工程において、ヨウ素及びヨウ化カリウムを合計で0.5〜3質量%含む10〜50℃の水溶液に浸漬して、ヨウ素系二色性色素を前記ポリビニルアルコールフィルムに含浸させるとともに、総延伸倍率が2〜3倍になるように一軸延伸し、
前記第1架橋延伸工程において、1〜5質量%のホウ酸を含む40〜55℃の水溶液中で、該工程中の延伸倍率が1.1〜1.3倍かつ総延伸倍率が2.5〜3.5倍になるように一軸延伸し、
引き続き前記第2架橋延伸工程において、1〜5質量%のホウ酸を含む60〜70℃の水溶液中で、該工程中の延伸倍率が1.8〜3.0倍かつ総延伸倍率が6〜8倍になるように一軸延伸することを特徴とする、上記偏光フィルムの製造方法を提供することによっても解決される。
このとき、前記第2架橋延伸工程において、最大延伸応力が15N/mm以下であることが好ましい。
本発明の偏光フィルムは、優れた偏光性能を有し、かつ収縮応力が低い。そのため、高性能液晶ディスプレイ、特に高温下で使用されることのある液晶ディスプレイに好適に用いることができる。また、本発明の製造方法によれば、そのような偏光フィルムを製造することができる。
偏光フィルム製造装置の模式図である。 実施例1及び比較例1〜4、7及び8で得られた偏光フィルムの透過率43.5%のときにおける偏光度を収縮応力に対してプロットしたグラフである。
本発明の偏光フィルムは、ヨウ素系二色性色素を含むポリビニルアルコールフィルムからなる偏光フィルムであって;透過率43.5%のときの偏光度が99.990%以上であり;かつ、収縮応力が45N/mm以下である偏光フィルムである。
また、本発明の偏光フィルムは、ヨウ素系二色性色素を含むポリビニルアルコールフィルムからなる偏光フィルムであって;透過率が42〜45%であり;偏光度が99.990%以上であり;かつ、収縮応力が45N/mm以下である偏光フィルムである。
これまで、ヨウ素系二色性色素を含むポリビニルアルコールフィルムからなる偏光フィルムの偏光性能を向上させようとすると、収縮応力が大きくなることが避けられなかった。本発明の偏光フィルムはこの点を解決したものであり、優れた偏光性能を有しながらも、収縮応力が小さいことを特徴とする。
このような偏光フィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、本発明者は、新しい製造方法を採用することによって、初めてこのような性能を有する偏光フィルムを製造することに成功した。具体的には、このような偏光フィルムは、ポリビニルアルコールフィルム(PVAフィルム)に対し、少なくとも膨潤工程、染色工程、第1架橋延伸工程、第2架橋延伸工程をこの順番に施す際に、特定の製造条件を適用することによって製造できる。以下、本発明の偏光フィルムの好適な製造方法について詳しく説明する。
本発明の偏光フィルムの製造に用いられるPVAフィルムに含まれるPVAは、ビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより得られるものを使用することができる。当該ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニル等が例示され、これらの中でも、PVAの製造の容易性、入手容易性、コスト等の点から、酢酸ビニルが好ましい。
ポリビニルエステルは、単量体として、1種または2種以上のビニルエステルのみを用いて得られたものであってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、1種または2種以上のビニルエステルと、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
ビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;不飽和スルホン酸などを挙げることができる。上記のポリビニルエステルは、前記した他の単量体の1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。
ポリビニルエステルに占める、他の単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。
特に、当該他の単量体が、(メタ)アクリル酸、不飽和スルホン酸などのように、得られるPVAの水溶性を促進する可能性のある単量体である場合には、偏光フィルムの製造過程においてPVAが溶解するのを防止するために、ポリビニルエステルにおけるこれらの単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましい。
本発明で用いられるPVAは、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、1種または2種以上のグラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。当該グラフト共重合可能な単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸またはその誘導体;不飽和スルホン酸またはその誘導体;炭素数2〜30のα−オレフィンなどが挙げられる。PVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位(グラフト変性部分における構造単位)の割合は、PVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましい。
PVAは、その水酸基の一部が架橋されていてもよいし架橋されていなくてもよい。また上記のPVAは、その水酸基の一部がアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物などと反応してアセタール構造を形成していてもよいし、これらの化合物と反応せずアセタール構造を形成していなくてもよい。
PVAの平均重合度は2500〜3500であることが好ましい。当該平均重合度は、2600以上であることがより好ましく、3300以下であることもより好ましい。平均重合度が2500以上であることにより、第2架橋延伸工程において高温で延伸しても優れた偏光性能を有する偏光フィルムを容易に得ることができる。一方、平均重合度が3500を超える場合には、得られる偏光フィルムの収縮応力を小さくすることが困難になる場合がある。ここで、PVAの平均重合度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定される平均重合度のことをいう。なお、偏光フィルム中のPVAは、ホウ酸による架橋構造を含んでいるが、ホウ酸エステルを加水分解して外せば、PVAの平均重合度自体に実質的な変化はない。
PVAのけん化度は、偏光フィルムの偏光性能などの観点から、98モル%以上であることが好ましく、98.5モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましい。けん化度が98モル%未満であると、偏光フィルムの製造過程でPVAが溶出しやすくなり、溶出したPVAがフィルムに付着して偏光フィルムの偏光性能を低下させる場合がある。なお、本明細書におけるPVAのけん化度とは、PVAが有する、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して当該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。けん化度はJIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
本発明で用いられるPVAフィルムにおけるPVAの含有率は、所望する偏光フィルムの製造のしやすさなどから、50〜99質量%の範囲内であることが好ましい。当該含有率は、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることが特に好ましい。また、98質量%以下であることがより好ましく、96質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以下であることが特に好ましい。
PVAフィルムは、それを延伸する際の延伸性向上の観点から可塑剤を含むことが好ましい。当該可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールなどを挙げることができ、PVAフィルムはこれらの可塑剤の1種または2種以上を含むことができる。これらの中でも、延伸性の向上効果の観点からグリセリンが好ましい。
PVAフィルムにおける可塑剤の含有量は、それに含まれるPVA100質量部に対して、1〜20質量部の範囲内であることが好ましい。当該含有量が1質量部以上であることにより、PVAフィルムの延伸性をより向上させることができる。一方、当該含有量が20質量部以下であることにより、PVAフィルムが柔軟になり過ぎて取り扱い性が低下するのを防止することができる。PVAフィルムにおける可塑剤の含有量はPVA100質量部に対して2質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることがさらに好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。また、可塑剤の含有量は、15質量部以下であることがより好ましく、12質量部以下であることがさらに好ましい。なお、偏光フィルムの製造条件などにもよるが、PVAフィルムに含まれる可塑剤は偏光フィルムを製造する際に溶出することがあるため、その全量が偏光フィルムに残存するとは限らない。
PVAフィルムは、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤、界面活性剤などの成分をさらに含んでいてもよい。
上記製造方法において使用されるPVAフィルムの厚みは、5〜100μmである。厚みが100μm以下であることにより、薄型の偏光フィルムが容易に得られる。PVAフィルムの厚みは、60μm以下であることが好ましい。一方、厚みが5μm未満である場合、偏光フィルムの製造が困難になるほか、染色ムラが生じやすくなる。PVAフィルムの厚みは、7μm以上であることが好ましい。ここでいう厚みは、多層フィルムの場合にはPVA層の厚みのことをいう。
PVAフィルムは、単層フィルムであってもよいし、PVA層と基材樹脂層を有する多層フィルムを用いてもよい。単層フィルムの場合には、ハンドリング性を確保するために、フィルムの厚みが20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。一方、多層フィルムの場合には、PVA層の厚みを20μm以下にすることもできるし、15μm以下にすることもできる。多層フィルムにおける基材樹脂層の厚みは、通常20〜500μmである。
PVAフィルムとして、PVA層と基材樹脂層を有する多層フィルムを用いる場合、基材樹脂は、PVAとともに延伸処理ができるものでなければならない。ポリエステルやポリオレフィン樹脂などを用いることができる。なかでも、非晶ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートや、それにイソフタル酸や1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの共重合成分を共重合した非晶ポリエステル樹脂が好適に用いられる。PVA溶液を基材樹脂フィルムに塗布することによって多層フィルムを製造することが好ましい。このとき、PVA層と基材樹脂層の間の接着性を改善するために、基材樹脂フィルムの表面を改質したり、両層間に接着剤層を形成したりしてもよい。
PVAフィルムの形状は特に制限されないが、偏光フィルムを製造する際に連続して供給できることから長尺のPVAフィルムであることが好ましい。長尺のPVAフィルムの長さ(長尺方向の長さ)は特に制限されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜設定することができ、例えば、5〜20,000mの範囲内とすることができる。
PVAフィルムの幅は特に制限されず、製造される偏光フィルムの用途などに応じて適宜設定することができる。近年、液晶テレビや液晶モニターの大画面化が進行しているので、PVAフィルムの幅を0.5m以上、より好ましくは1.0m以上にしておくと、これらの用途に好適である。一方、PVAフィルムの幅があまりに広すぎると実用化されている装置で偏光フィルムを製造する場合に均一に延伸することが困難になる傾向があることから、PVAフィルムの幅は7m以下であることが好ましい。
以上説明したPVAフィルムを原材料として用いて、本発明の偏光フィルムが製造される。具体的には、少なくとも膨潤工程、染色工程、第1架橋延伸工程、第2架橋延伸工程をこの順番に施して偏光フィルムが製造されることが好ましい。前記第2架橋延伸工程の後に、更に洗浄工程や乾燥工程を施すことも好ましい。以下、各工程について詳細に説明する。
上記偏光フィルムの製造方法では、まずPVAフィルムを膨潤工程に供する。膨潤工程では、10〜50℃の水に浸漬してPVAフィルムを膨潤させる。水の温度は、20℃以上であることが好ましく、40℃以下であることが好ましい。このような温度範囲内の水に浸漬することで、PVAフィルムを効率良く均一に膨潤させることができる。PVAフィルムを水に浸漬する時間は、0.1〜5分間の範囲内であることが好ましく、0.5〜3分間の範囲内であることがより好ましい。このような浸漬時間とすることで、PVAフィルムを効率良く均一に膨潤させることができる。なお、PVAフィルムが浸漬される水は純水に限定されず、各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水溶性有機溶媒との混合物であってもよい。膨潤工程において、PVAフィルムに対し一軸延伸を施すことが好ましい。その場合の延伸倍率は特に限定されないが、1.2〜2.8倍であることが好ましい。当該延伸板率は、1.5倍以上であることがより好ましく、2.5倍以下であることもより好ましい。
上記偏光フィルムの製造方法では、前記膨潤工程の後に染色工程に供される。染色工程では、ヨウ素及びヨウ化カリウムを合計で0.5〜3質量%含む10〜50℃の水溶液に浸漬して、ヨウ素系二色性色素をPVAフィルムに含浸させるとともに、総延伸倍率が2〜3倍になるように一軸延伸する。これにより、PVAフィルムをヨウ素系二色性色素で染色するとともに、フィルム中のPVAの分子鎖を配向させ、ヨウ素系二色性色素も配向させる。
染色は、ヨウ素系色素を含む染色浴にPVAフィルムを浸漬することにより行われる。染色浴は、ヨウ素(I)およびヨウ化カリウム(KI)を水と混合することにより調製される。ヨウ素およびヨウ化カリウムを水と混合することで、I やI などのヨウ素系色素を発生させることができる。染色浴におけるヨウ素及びヨウ化カリウムの合計含有量はそれらの合計で0.5〜3質量%である。ヨウ素及びヨウ化カリウムの合計含有量は、0.8質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以下であることも好ましい。このような濃度範囲で染色することによって、効率よく均一に染色することが可能である。ヨウ素に対するヨウ化カリウムの質量比(KI/I)は、10〜200であることが好ましく、15〜150であることがより好ましい。染色浴には、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物を含んでいてもよいが、その含有量は、通常ホウ酸換算で5質量%未満であり、好適には1質量%以下である。
染色浴の温度は10〜50℃である。当該温度は、15℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。また当該温度は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。このような温度範囲内で染色することでPVAフィルムを効率良く均一に染色することができる。また、PVAフィルムを染色浴に浸漬する時間としては、0.1〜10分間の範囲内であることが好ましく、0.2〜5分間の範囲内であることがより好ましい。このような時間の範囲とすることでPVAフィルムを斑なく染色することができる。
染色工程において、PVAフィルムを染色するとともに一軸延伸して、総延伸倍率が2〜3倍になるようにする。このような総延伸倍率を有するPVAフィルムに対して、引き続き2段階の架橋延伸工程を施すことにより、優れた偏光性能を有し、しかも収縮応力の低い偏光フィルムを得ることができる。膨潤工程及び染色工程を含むこれまでの工程を経た総延伸倍率が2〜3倍になるようにすればよい。染色工程における延伸倍率は、1倍を超えていればよく、1.05倍以上であることがより好ましい。
上記偏光フィルムの製造方法では、前記染色工程の後に第1架橋延伸工程及び第2架橋延伸工程に供される。条件の異なる2段階の架橋延伸工程を施すことによって、得られる偏光フィルムの結晶状況及び配向状態を制御することができ、優れた偏光性能を有し、しかも収縮応力の低い偏光フィルムを得ることができる。以下、これら2つの架橋延伸工程について説明する。
第1架橋延伸工程では、1〜5質量%のホウ酸を含む40〜55℃の水溶液中で、該工程中の延伸倍率が1.1〜1.3倍かつ総延伸倍率が2.5〜3.5倍になるように一軸延伸する。PVAフィルムが浸漬されるホウ酸水溶液は1〜5質量%のホウ酸を含む。ホウ酸の濃度は1.5質量%以上であることが好ましく、4質量%以下であることも好ましい。このような濃度とすることによってホウ酸による分子間架橋反応を適切な速度で進行させることができる。なお、ホウ酸は、水溶液中でホウ酸又はホウ酸イオンになり得るものであればよく、ホウ酸、ホウ酸塩のいずれを用いることもできるが、好適にはホウ酸である。ホウ酸塩を用いる場合の濃度は、ホウ酸(HBO)の質量換算で計算される。ホウ酸水溶液は、ヨウ化カリウムを含有していてもよく、その場合の濃度は0.01〜10質量%の範囲内であることが好ましい。ヨウ化カリウムを含有することによって、得られる偏光フィルムの偏光性能を調整することができる。第1架橋延伸工程でヨウ化カリウムを含んでいてもよいし、後述する第2架橋延伸工程でヨウ化カリウムを含んでいてもよいし、両工程で含んでいてもよい。
第1架橋延伸工程におけるホウ酸水溶液の温度は40〜55℃である。当該温度は、42℃以上であることが好ましく、53℃以下であることも好ましい。当該温度が低すぎる場合には、ホウ酸による架橋反応の進行が不十分となり、得られる偏光フィルムの偏光特性が低下する。一方、当該温度が高すぎる場合には、フィルムからPVAが溶出するおそれがある。そして、このような温度条件下において、延伸倍率が1.1〜1.3倍かつ総延伸倍率が2.5〜3.5倍になるように一軸延伸する。総延伸倍率は、2.6倍以上であることが好ましく、3.4倍以下であることも好ましい。このように、第1架橋延伸工程では、少しだけ一軸延伸して適度に配向させながらホウ酸架橋反応を進行させる。これによって、引き続く第2架橋延伸工程において高温のホウ酸水溶液に浸漬された場合にも、フィルムからPVAがホウ酸水溶液中に溶出したりフィルムの強度が大きく低下したりすることがなく、さらに高倍率に延伸することができる。
引き続き、第2架橋延伸工程では、1〜5質量%のホウ酸を含む60〜70℃の水溶液中で、該工程中の延伸倍率が1.8〜3.0倍かつ総延伸倍率が6〜8倍になるように一軸延伸する。用いられるホウ酸水溶液の組成は、第1架橋延伸工程で用いられる範囲のものと同様のものを用いることができる。
第2架橋延伸工程において、ホウ酸水溶液の温度は60〜70℃である。当該温度は、62℃以上であることが好ましく、68℃以下であることも好ましい。温度が低すぎると収縮応力が大きくなってしまう。一方、温度が高すぎるとフィルムからPVAがホウ酸水溶液中に溶出したり、偏光度が低下したりする。そして、前記温度範囲において、1.8〜3.0倍かつ総延伸倍率が6〜8倍になるように一軸延伸する。第2架橋延伸工程中における延伸倍率は、2倍以上であることが好ましく、2.8倍以下であることも好ましい。また総延伸倍率は6.2倍以上であることが好ましく、7.8倍以下であることも好ましい。すなわち、高温のホウ酸水溶液中において、比較的高倍率に延伸しながらホウ酸架橋反応を進行させ、その結果乾燥工程において配向したPVAの結晶化ならびに固定化を促す。これによって、偏光性能が高く、しかも収縮応力が小さい偏光フィルムを製造することができる。
第2架橋延伸工程における最大延伸応力が15N/mm以下であることが好ましい。ここで、最大延伸応力とは、第2架橋延伸工程において、隣接するロール間にかかる引張力を原料のPVAフィルムの断面積で割った値である。3本以上のロールを用いるときには、その中の最大の引張力を採用する。最大延伸応力を小さくすることによって、収縮応力の小さい偏光フィルムを得ることができる。最大延伸応力はより好適には10N/mm以下である。また通常、最大延伸応力は1N/mm以上である。
前記第1及び第2架橋延伸工程において、PVAフィルムを一軸延伸する場合には、水浴内に互いに平行な複数のロールを備える延伸装置を使用して、各ロール間の周速を変えることにより行うことができる。
前記第2架橋延伸工程の後に、洗浄工程に供することが好ましい。洗浄工程では、フィルム表面の不要な薬品類や異物を除去したり、最終的に得られる偏光フィルムの光学的性能を調節したりする。洗浄工程は、PVAフィルムを洗浄浴に浸漬させたり、PVAフィルムに洗浄液を散布したりすることによって行うことができる。洗浄液としては水を使用することができるが、これらにヨウ化カリウムを含有させてもよい。ヨウ化カリウムを含有させる場合には偏光膜の色調を調整することができる。ヨウ化カリウムの含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましい。洗浄液の温度は通常10〜40℃であり、好適には15〜30℃である。洗浄浴は1槽だけでなく複数槽用いても構わない。また、複数槽用いる場合の各槽中の洗浄液の組成は目的に応じてそれぞれ調整することができる。
前記洗浄工程に引き続き、乾燥工程に供することが好ましい。乾燥工程における温度は特に制限されないが、30〜150℃であることが好ましく、50〜130℃であることがより好ましい。上記範囲内の温度で乾燥することで寸法安定性に優れる偏光フィルムが得られやすい。
以上説明したような方法によって好適に製造される本発明の偏光フィルムは、ヨウ素系二色性色素を含むポリビニルアルコールフィルムからなる偏光フィルムであって;透過率43.5%のときの偏光度が99.990%以上であり;かつ、収縮応力が45N/mm以下である偏光フィルムである。
また、本発明の偏光フィルムの他の態様は、ヨウ素系二色性色素を含むポリビニルアルコールフィルムからなる偏光フィルムであって;透過率が42〜45%であり;偏光度が99.990%以上であり;かつ、収縮応力が45N/mm以下である偏光フィルムである。
本発明の偏光フィルムの厚みは、1〜30μmであることが好ましい。厚みが1μm未満である場合には高速度で生産することが困難な場合があり、より好適には3μm以上である。一方、厚みが30μmを超える場合には、延伸加工時の延伸張力が高くなり装置が破損する場合があり、より好適には25μm以下である。ここでいう厚みは、多層フィルムの場合にはPVA層の厚みのことをいう。
本発明の偏光フィルムがPVAの単層フィルムである場合には、ハンドリング性を確保するために、偏光フィルムの厚みが5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましい。一方、多層フィルムからなる偏光フィルムの場合には、PVA層の厚みを5μm以下にすることもできるし、3μm以下にすることもできる。多層フィルムにおける基材樹脂層の厚みは、通常10〜250μmである。
本発明の偏光フィルムの透過率は42〜45%であることが好ましい。透過率が42%未満である場合、液晶ディスプレイの明るさが低下する。透過率はより好適には42.5%以上である。一方、透過率が45%を超える偏光フィルムでは、高い偏光度の偏光フィルムを得ることが困難であり、透過率はより好適には44.5%以下である。また、本発明の偏光フィルムの偏光度は99.990%以上であることが好ましい。偏光度が99.990%以上であることによって、液晶ディスプレイの画質が優れたものになる。偏光度は、より好適には99.991%以上であり、さらに好適には99.992%以上である。
また本発明の偏光フィルムは、「単体透過率が43.5%のときの偏光度」が99.990%以上であることが好ましい。この値は、偏光フィルムの単体透過率(T)が43.5%でない場合に、43.5%であると仮定した場合の偏光度を算出したものである。単体透過率が43.5%のときの偏光度が99.991%以上であることがより好ましく、99.992%以上であることがさらに好ましい。
「単体透過率が43.5%のときの偏光度」の算出方法は以下のとおりである。まず、表面反射を排除した透過率(T’)と単体透過率(T)の関係は式(1)で示される。このとき、PVAの屈折率は1.5であるとし、表面での反射率は4%であるとした。透過率(T’)と偏光度(V)と二色性比(R)との関係は式(2)で示され、式(2)を変形したのが式(3)である。ここで、二色性比(R)は、単体透過率(T)が大きく変動しない範囲、例えば42〜45%の範囲では染料濃度によってほとんど変動しないので、定数として取扱うことができる。したがって、単体透過率(T)および偏光度(V)を計測した上で、それらの値を用いて式(1)及び(2)を解くことで偏光膜の二色性比(R)を定数として算出することができる。そのRを代入した式(3)と式(1)から、T=43.5(%)のときの偏光度(V)を求めることができる。
T’=T/(1−0.04) (1)
R={−ln[T’(1−V)]}/{−ln[T’(1+V)]} (2)
T’=[1−V]1/(R−1)/[1+V]R/(R−1) (3)
本発明の偏光フィルムの収縮応力は45N/mm以下である。収縮応力が小さいことによって、高温下で使用した場合にも寸法安定性に優れたものとなる。収縮応力は、より好適には40N/mm以下である。ここで収縮応力は、試料となる偏光フィルムを固定し、80℃で4時間維持したときの張力を試料の断面積で割った値のことをいう。
本発明の偏光フィルムの最大の特徴は、上述のように優れた偏光性能を有しながらも、収縮応力が小さいことである。これまで、偏光性能を高くしようとすれば収縮応力が大きくなるし、収縮応力を小さくしようとすれば偏光性能が低下することが避けられなかったが、今回、偏光性能が高く、しかも収縮応力が小さい偏光フィルムを初めて製造することができた。
本発明の偏光フィルムは、通常、その両面または片面に保護膜を貼り合わせて偏光板にして使用される。保護膜としては、光学的に透明でかつ機械的強度を有するものが挙げられ、具体的には例えば、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルムなどを使用することができる。また、貼り合わせのための接着剤としては、PVA系接着剤やウレタン系接着剤、もしくは紫外線硬化型接着剤などを挙げることができる。
こうして得られた偏光板は、高性能の液晶ディスプレイ(LCD)に用いることができる。明るく、偏光特性が良好であり、しかも高温条件下で使用しても寸法安定性に優れた偏光板を提供することができる。したがって、各種の高性能LCD、特にモバイル用途のLCD用の偏光板として好適に用いることができる。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において採用された、分析方法及び評価方法は以下に示す方法にしたがって行った。
[偏光フィルムの光学特性]
以下の実施例及び比較例で得られた偏光フィルムの幅方向の中央部から、偏光フィルムの長手方向に3cm、その垂直方向に1.5cmの長方形のサンプルを採取し、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製「V7100」)を用いて、JIS Z 8722(物体色の測定方法)に準拠し、視感度補正を行った上で、単体透過率(T)および偏光度(V)を計測した。
こうして得られたTおよびVの値から以下の式(1)及び(2)を解くことで偏光膜の二色性比(R)を算出し、そのRを代入した式(3)と式(1)を計算することでT=43.5%のときの偏光度を求めた。ここで、PVAの屈折率は1.5であるとし、表面での反射率は4%であるとした。また、二色性比(R)は、単体透過率が大きく変動しない範囲、例えば42〜45%の範囲では染料濃度によって変動しない定数として取扱うことができる。
T’=T/(1−0.04) (1)
R={−ln[T’(1−V)]}/{−ln[T’(1+V)]} (2)
T’=[1−V]1/(R−1)/[1+V]R/(R−1) (3)
[偏光フィルムの収縮応力]
収縮応力は島津製作所製の恒温槽付きオートグラフAG−Xとビデオ式伸び計TR ViewX120Sを用いて測定した。測定には20℃/20%RHで18時間調湿した偏光フィルムを使用した。オートグラフAG−Xの恒温槽を20℃にした後、偏光フィルム(長さ方向15cm、幅方向1.5cm)をチャック(チャック間隔5cm)に取り付け、引張り開始と同時に、80℃へ恒温槽の昇温を開始した。偏光フィルムを1mm/minの速さで引張り、張力が2Nに到達した時点で引張りを停止し、その状態で4時間後までの張力を測定した。このとき、熱膨張によってチャック間の距離が変わるため、チャックに標線シールを貼り、ビデオ式伸び計TR ViewX120Sを用いてチャックに貼り付けた標線シールが動いた分だけチャック間の距離を修正できるようにして測定を行った。なお、4時間後の張力の測定値から初期張力2Nを差し引いた値を偏光フィルムの収縮力とし、その値をサンプル断面積で除した値を収縮応力(N/mm)と定義した。
[第2架橋延伸工程における最大延伸応力]
第2架橋延伸工程における最大延伸応力は、第2架橋延伸工程において隣接するロール間にかかる延伸張力を、その間に設置したテンションロールによって計測し、原料のPVAフィルムの断面積で割った値である。3本以上のロールを用いるときには、その中の最大の引張力を採用する。
[実施例1]
PVA(酢酸ビニル重合体のけん化物、重合度3000、けん化度99.9モル%)100質量部、可塑剤としてグリセリン10質量部、界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム:0.1質量部および水からなる製膜原液を用いてキャスト製膜することにより、厚み45μmのPVAフィルムのロールを得た。このPVAフィルムに対して、膨潤工程、染色工程、第1架橋延伸工程、第2架橋延伸工程、洗浄工程および乾燥工程を、順次行うことにより偏光フィルムを製造した。偏光フィルム製造装置の模式図を図1に示す。
具体的には以下のようにして偏光フィルムを製造した。まず、膨潤工程において、上記のPVAフィルムを、温度30℃の水中に1分間浸漬している間に元の長さの2倍に長さ方向(MD)に一軸延伸(1段目延伸)した。引き続き染色工程において、ヨウ素を0.06質量%およびヨウ化カリウムを1.4質量%含む温度30℃の水溶液に1分間浸漬している間に元の長さの2.4倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(2段目延伸)した。引き続き第1架橋延伸工程において、ホウ酸を2.6質量%の濃度で含有する温度50℃の水溶液に2分間浸漬している間に元の長さの3倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(3段目延伸)した。引き続き第2架橋延伸工程において、ホウ酸を2.8質量%およびヨウ化カリウムを5質量%の濃度で含有する温度65℃の水溶液中に浸漬している間に元の長さの7倍まで長さ方向(MD)に一軸延伸(4段目延伸)した。第2架橋延伸工程における最大延伸応力は5.5N/mmであった。引き続き洗浄工程において、ホウ酸を1.5質量%およびヨウ化カリウムを5質量%の濃度で含有する温度22℃の水溶液中に10秒間浸漬することによりフィルムを洗浄した。引き続き乾燥工程において、80℃の乾燥機で90秒間乾燥することにより、厚み13.9μmの偏光フィルムを製造した。
得られた偏光フィルムを用いて、上記した方法により、単体透過率、偏光度、単体透過率43.5%のときの偏光度および収縮応力を測定した。単体透過率は43.73%であり、偏光度は99.982%であり、単体透過率43.5%のときの偏光度は99.993%であり、収縮応力は34.5N/mmであった。これらの評価結果を表1に示した。
[比較例1〜8]
PVAフィルムの厚さと重合度、第1架橋延伸工程におけるホウ酸水溶液の温度、第1架橋延伸工程後の総延伸倍率、第2架橋延伸工程におけるホウ酸水溶液の温度、第2架橋延伸工程後の総延伸倍率を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを製造した。第2架橋延伸工程における最大延伸応力の値を表1に示す。
得られた偏光フィルムを用いて実施例1と同様に、単体透過率、偏光度、単体透過率43.5%のときの偏光度、及び収縮応力を測定した。これらの評価結果を表1にまとめて示した。また、実施例1及び比較例1〜4、7及び8で得られた偏光フィルムの透過率43.5%のときの偏光度を収縮応力に対してプロットしたグラフを図2に示す。図2によれば、以下のことがわかる。すなわち比較例1〜8では、単体透過率43.5%のときの偏光度を高くしようとすると収縮応力が大きくなってしまう。これに対し実施例1では、比較例1〜8とは顕著に異なり、単体透過率43.5%のときの偏光度を高くしても、収縮応力を小さくすることができた。なお、比較例5及び6は、単体透過率43.5%のときの偏光度が99.950%未満であり、グラフの表示範囲から下に外れている。
1 偏光フィルム製造装置の模式図
2 PVAフィルムロール
3 膨潤工程
4 染色工程
5 第1架橋延伸工程
6 第2架橋延伸工程
7 洗浄工程
8 乾燥工程
9 偏光フィルムロール

Claims (6)

  1. ヨウ素系二色性色素を含むポリビニルアルコールフィルムからなる偏光フィルムであって、
    透過率43.5%のときの偏光度が99.990%以上であり、かつ
    収縮応力が45N/mm以下である偏光フィルム。
  2. ヨウ素系二色性色素を含むポリビニルアルコールフィルムからなる偏光フィルムであって、
    透過率が42〜45%であり、
    偏光度が99.990%以上であり、かつ
    収縮応力が45N/mm以下である偏光フィルム。
  3. 前記偏光フィルムに含まれるポリビニルアルコールの重合度が2500〜3500である、請求項1又は2に記載の偏光フィルム。
  4. 前記偏光フィルムの厚みが1〜30μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の偏光フィルム。
  5. ポリビニルアルコールフィルムに対し、少なくとも膨潤工程、染色工程、第1架橋延伸工程、第2架橋延伸工程をこの順番に施す偏光フィルムの製造方法であって、
    前記ポリビニルアルコールフィルムの厚みが5〜100μmであり、
    前記ポリビニルアルコールフィルムに含まれるポリビニルアルコールの平均重合度が2500〜3500であり、
    前記膨潤工程において、10〜50℃の水に浸漬して前記ポリビニルアルコールフィルムを膨潤させ、
    前記染色工程において、ヨウ素及びヨウ化カリウムを合計で0.5〜3質量%含む10〜50℃の水溶液に浸漬して、ヨウ素系二色性色素を前記ポリビニルアルコールフィルムに含浸させるとともに、総延伸倍率が2〜3倍になるように一軸延伸し、
    前記第1架橋延伸工程において、1〜5質量%のホウ酸を含む40〜55℃の水溶液中で、該工程中の延伸倍率が1.1〜1.3倍かつ総延伸倍率が2.5〜3.5倍になるように一軸延伸し、
    引き続き前記第2架橋延伸工程において、1〜5質量%のホウ酸を含む60〜70℃の水溶液中で、該工程中の延伸倍率が1.8〜3.0倍かつ総延伸倍率が6〜8倍になるように一軸延伸することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
  6. 前記第2架橋延伸工程において、最大延伸応力が15N/mm以下である請求項5に記載の偏光フィルムの製造方法。

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