以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るウインカ構造を適用した自動二輪車(車両)1の左側面図である。
自動二輪車1の車体フレーム2は、エンジン14を車幅方向左右から挟んで支持する2本のメインフレーム2aを有する。メインフレーム2aの前端は、フロントフォーク11を操舵可能に軸支するヘッドパイプ8に固定されている。左右一対のフロントフォーク11の下端には前輪WFが回転自在に軸支されており、フロントフォーク11の上端には操向ハンドル6が固定されている。前輪WFの上部を覆うフロントフェンダ10は、フロントフォーク11に取り付けられている。
車体フレーム2の下方には、4サイクル多気筒の内燃機関であるエンジン14が吊り下げられている。シリンダヘッド5の後部には、吸気管およびエアクリーナボックス4が連結され、シリンダヘッド5の前部には、マフラ20に連なる排気管13が連結されている。排気管13の前方には、エンジン14の冷却水を放熱するラジエータ12が配設されている。
車体フレーム2の後方下部に設けられるピボット16には、後輪WRを回転自在に軸支するスイングアーム18が揺動自在に軸支される。エンジン14の駆動力は、その出力軸に固定されたドライブスプロケット15から無端状のドライブチェーン19を介して後輪WRに伝達される。
車体フレーム2の上方後部には、左右一対のサブフレーム22が取り付けられており、サブフレーム22の上部には、シート23およびシートカウル21が固定されている。マフラ20の下方には、左右一対の後側ウインカ装置24が配設されている。シート23の前方には、エアクリーナボックス4を覆う形状の燃料タンク3が配設されている。
防風装置としてのカウリング9は、操向ハンドル6の前方からエンジン14の側方下方にかけての範囲を覆っている。カウリング9の上部には、無色透明または有色透明のウインドスクリーン7が取り付けられている。車体前方を覆うカウリング9は、主にカウルステー30によって車体フレーム2に固定されている。カウルステー30は、ヘッドパイプ8の前部に固定されると共に、左右一対のバックミラー70も支持している。バックミラー70の支持部は、自動二輪車1の進路変更を報知する点滅光を前方に照射する前側のウインカ装置71を兼用した構成とされる。
図2は、車体前部構造を分解した状態を示す斜視図である。また、図3はカウルステー30の斜視図であり、図4はカウルステー30を上側部材31および下側部材32に分解した状態を示す斜視図である。
カウルステー30は、車体フレーム2のヘッドパイプ8に固定されている。ヘッドパイプ8には、フロントフォーク11を操舵可能に軸支するステアリングステム(不図示)の両側に、車体前方のカウルステー30の前部開口33から導入した空気をヘッドパイプ8後方のエアクリーナボックス4に直線的に導くためのスリットが設けられている。ヘッドパイプ8の前面からメインフレーム2aにかかる範囲には、2つの貫通孔の周囲を囲んで略正方形のヘッドパイプ開口8bを形成する立設壁8aが設けられている。カウルステー30は、その後端に形成される箱状の後部開口33bを立設壁8aに被せて締結部材で固定することで車体フレーム2に固定される。
中空構造を有するカウルステー30は、車体前方から取り入れた空気をエアクリーナボックス4に誘導するダクトとして機能し、車体前端部には横長の前部開口33が形成されている。カウルステー30は、アルミ等の金属からなる上側部材31とABS等の樹脂からなる下側部材32とを、ボルト等の締結部材で固定することで構成されている。前部開口33には、LED(発光ダイオード)を光源とする左右一対のヘッドライトユニット(ヘッドライト)25が配設される。ヘッドライトユニット25は、締結孔25aを通る締結部材を用いて、前部開口33を構成する上側部材31の下面に固定される。
上側部材31には、バックミラー70およびカウリング9を支持するために車幅方向外側に延出する第1側方延出部34L,34Rと、カウリング9を支持するために車幅方向外側に延出する第2側方延出部35L,35Rとが設けられている。第1側方延出部34L,34Rの端部には、カウリング9の取り付け部9aを間に挟んでバックミラー70が固定される。第1側方延出部34L,34Rの後方には、箱状のメータ装置26が固定される。メータ装置26には、3カ所の取り付け部26aが設けられる。
外装部品のアッパー部分を構成するカウリング(アッパーカウル)9は、上側取り付け孔9bおよび下側取り付け孔9cが設けられた分割部9eによってロアー部分(不図示)と結合される。カウルステー30の第2側方延出部35L,35Rは、分割部9eの上側取り付け孔9bによってカウリング9を支持する。第2側方延出部35L,35Rの端部には、ボルト等の締結部材が螺合する取り付け用孔35bが形成されたボス35aが設けられる。カウリング9の前方下部に形成される横長の導入口9dは、カウルステー30の前部開口33に係合する。
図3を参照して、上側部材31および下側部材32は、分割線30aで結合することにより、入口が横長で出口が略長方形となる中空構造の導風ダクトを構成する。上側部材31および下側部材32は、上側部材31に形成される左右一対の挿通孔47に係合するボルト等の締結部材(不図示)で結合される。
カウルステー30の後側の開口は、上側部材31に形成された上側係合部36Uと下側部材32に形成された下側係合部36Lとによって形成されており、固定孔46を通って車幅方向に指向するボルト等の締結部材(不図示)で車体フレーム2に固定される。
上側部材31の天板部39には、左右一対の上方延出部40が設けられている。上方延出部40は、前側上方延出部40aおよび後側上方延出部40bによって三角形状のアーチを構成している。上方延出部40の上端部には、カウルステー30の平面視で略X形状をなして左右の上方延出部40を連結する連結部42が設けられている。
上方延出部40の上端部かつ連結部42が連結される位置の反対側には、車幅方向外側に延びる第1側方延出部34L,34Rが連結されている。第1側方延出部34L,34Rの基部の後端には、メータ装置26を支持するための取り付けボス43が左右一対で設けられ、左右の後側上方延出部40bの間には、3つ目の取り付けボス43aが設けられている。
第1側方延出部34L,34Rは、棒状の斜材44を残して肉抜き孔45を設けたトラス状の構造を有し、強度を保ちながら大幅な軽量化が図られている。上側部材31は、その天板部39から第1側方延出部34L,34R、第2側方延出部35L,35Rまでがアルミ鋳造の一体部品として形成されている。
第1側方延出部34L,34Rの車幅方向外側の端部には、それぞれ、ウインカ支持部52が形成されている。ウインカ支持部52には、バックミラー70を固定するための2つの締結用孔51と、バックミラー70の支持部でもあるウインカ装置71に電力を供給するウインカハーネスの通し孔50とが形成されている。
上側部材31の天板部39の前端部を構成する上側ダクト半体38U、および、下側部材32の前端部を構成する下側ダクト半体38Lは、それぞれ薄板状に形成されて軽量化が図られている。下側部材32は、その全体が合成樹脂で形成されており、バックミラー70やカウリング9を支持する第1側方延出部34L,34R、第2側方延出部35L,35Rの強度を保ちながら、カウルステー30の大幅な軽量化を可能としている。下側部材32を合成樹脂で形成することは、カウルステー30を支持するヘッドパイプ8から遠い部分の軽量化となり、結合部分に作用する曲げモーメントを低減して立設壁8aの負担も低減される。
下側部材32は、平滑な合わせ面60によって上側部材31と当接し、内側に形成されたボス61の取り付け用孔62を用いて締結部材(不図示)によって上側部材31と締結される。カウルステー30は、上側部材31と下側部材32とを結合することで筒状をなし、さらにヘッドパイプ8に取り付けることで有底箱状をなして高い構造強度を得ている。これにより、上側部材31および下側部材32の薄肉化を可能としている。カウルステー30の内部空間の形状は、前後方向略中央の絞り部37において入口より面積の小さな略長方形に変形される。この形状により、吸気口の面積と比べヘッドパイプ8のヘッドパイプ開口8bの開口面積が小さくなり、吸気に用いられる走行風の流速を大きくし、効率よく吸気を行うことが可能となる。
図4はカウルステー30の右側面図である。また、図5は車体前部構造を示す正面図である。前側上方延出部40aおよび後側上方延出部40bからなる上方延出部40は、カウルステー30の正面視において、天板部39から車幅方向外側に傾斜して立設している。X字状の連結部42は、上方延出部40の上端を連結して強度を増すと共に、意匠性のあるデザインとしても機能する。連結部42の下方には、天板部39から立設してメータ装置26の取り付けボス43aを下側から支持する下側支持部41が設けられている。
カウリング9の上側取り付け孔9bに連結される第2側方延出部35L,35Rは、段差付きの丸棒状とされる。これに対し、第1側方延出部34L,34Rは三角形の平板に肉抜きを施した構成とされ、連結部42から連なるトラス構造をなして強度が高められる。これにより、カウルステー30のコンパクト化が可能になると共に、トラスによる意匠性のあるデザインとしている。また、第2側方延出部35L,35Rがほぼ車幅方向に延出するのに対し、第1側方延出部34L,34Rは外側に向かって高くなるように傾斜しており、メータ装置26の前方で視認されないように構成されている。
カウルステー30の前端には、薄板状の上側ダクト半体38Uおよび下側ダクト半体38Lを組み合わせることで、正面視で横長の前部開口33が形成される。カウルステー30の後部開口33bは、上側部材31に形成された上側係合部36Uと下側部材32に形成された下側係合部36Lとによって略長方形に形成される。
左右一対のヘッドライトユニット25は、前部開口33を形成する上側ダクト半体38Uの両端に沿うように互いに離間して配設されている。前部開口33は、ヘッドパイプ8を超えてメインフレーム2aにおよぶ横長形状とされ、ヘッドライトユニット25は、前部開口33から導入される空気によって積極的に冷却される。
バックミラー70は、板状の鏡体75を支持するミラーハウジング73と該ミラーハウジング73を支持する棒状のウインカ装置71とを有する。ミラーハウジング73およびウインカ装置71は合成樹脂等で形成することができる。ウインカ装置71には、横長形状のウインカレンズ面72が溶着されている。バックミラー70を第1側方延出部34L,34Rに取り付けると、第1側方延出部34L,34Rからウインカ装置71までが直線をなすように構成されている。メータ装置26は、3つの取り付けボス43,43,43aを用いて固定されると、左右の上方延出部40の幅内に収まるように構成されている。
図6は、左側のバックミラー70の正面図である。また、図7は同平面図であり、図8は同左側面図である。左右のバックミラー70の構造は同一であり、以下では、左側のみを用いて説明する。
バックミラー70は、板状の鏡体75を支持して正面視で略平行四辺形をなすミラーハウジング73と、これを支持する棒状のウインカ装置71とを有する。ミラーハウジング73およびウインカ装置71は合成樹脂等で形成されている。多角形断面を有するウインカ装置71には、車幅方向に細長い形状のウインカレンズ面72が設けられており、バックミラー70を車体に取り付けるためのステーとウインカ装置71とを兼用する構造により、部品点数の低減および軽量化が図られる。ウインカレンズ面72は、透明橙色の合成樹脂等によって形成されている。
ウインカ装置71の先端は、ミラーハウジング73の車幅方向中央より外側の位置まで延出しており、ウインカ装置71の一部が、ミラーハウジング73に形成された凹部73aに入り込んでいる。これは、ミラーハウジング73の底部に大きめの凹部73aを形成すると共に、ウインカ装置71の先端より車幅方向内側の位置にハウジング支持部74を設けたことで実現される。ミラーハウジング73の車幅方向の中心位置を示す中心線Oは、ウインカレンズ面72の車幅方向外側の端部より内側に位置する。この配置により、ミラーハウジング73とウインカ装置72とのオーバーラップを大きくすることができる。
バックミラー70の正面視において、ウインカ装置71はミラーハウジング73の下部とオーバーラップしている。さらに、左側面視においてもウインカ装置71の先端上部が凹部73aに入り込んで両者がオーバーラップしている。この構造によれば、図10に示すように、ミラーハウジング73の車体前方下方に稜線73bを伴って斜め下方に突出する庇部分73dによって、ウインカレンズ面72に対する前方上方からの光を遮ることが可能となる。また、庇部分73dとウインカレンズ面72との間から導入された走行風Wをウインカ装置71と凹部73aとの間を通して後方に排出し、ウインカ装置71の後部に設けられたヒートシンク83を強制的に冷却することが可能となる。
図9,10は、バックミラー70の前方上方から照射光Lが当たった際に庇部分73dによって影となる部分を示す説明図である。図11の正面図および図12の側面図が示すように、庇部分73dが車体前方下方に突出していることにより、その後方下方に位置するウインカレンズ面72への照射光Lが遮られて影Sができる(図示点描部分)。これにより、太陽光や対向車のヘッドライトによる照射光Lが当たっても、影となる部分ではウインカ装置71の点滅状態を良好に確認することができる。
図11は、図8のXI−XI線断面図である。また、図12は図7のXII−XII線断面図である。なお、図11において、第1側方延出部35Lとウインカ装置71の結合部分は、説明のため略水平方向に切断した状態を示している。左側のバックミラー70は、左側の第1側方延出部34Lの端部に2本の締結ボルト78によって固定される。詳しくは、ウインカ装置71と第1側方延出部34Lとの間にカウリング9の取り付け部9aを挟み、締結用孔51を通された締結ボルト78で共締めされる。
第1側方延出部34Lの通し孔50を通されたウインカ用ハーネス91の端部には、ウインカ用の複数のLED光源82を実装した基板81が接続されている。LED光源82は、車体前方を照射するように指向しており、ウインカレンズ面72によって所定の方向に照射光を指向させるように構成されている。
図12に示すように、ウインカレンズ面72は走行風を上下に分ける楔形をなしており、庇部分73dとウインカレンズ面72との間から導入された走行風Wが、ウインカ装置71と凹部73aとの間を通ってヒートシンク83を冷却しながら後方に排出されるように構成されている。これにより、ヒートシンク83が積極的に冷却できるため、ウインカ装置71を小型化しつつLED光源82の発光量を増大させることができる。
ウインカ装置71のハウジング支持部74は、ミラーハウジング73に形成される半球部79と係合し、半球部79の上方からボールジョイント76を係合して止めピン77で固定することで、ミラーハウジング73を角度調整可能に支持する。角度調整機構は、止めピンにスプリングを介してボールジョイントを付勢する構成を適用する等の種々の変形が可能である。なお、ウインカ装置71側に半球部79を設けると共に、ミラーハウジング73側にハウジング支持部74を設ける構成とすることもできる。
前記したように、ミラーハウジング73を角度調整可能に支持するためのハウジング支持部74は、ウインカ装置71の先端よりやや内側に位置している。従来のウインカ装置では、通常、ウインカ装置の末端にハウジング支持部が設けられ、ウインカ装置とミラーハウジングとを積極的にオーバーラップさせることは検討されていなかった。
これに対し、本実施形態では、ハウジング支持部74をウインカ装置71の先端より内側かつ上部に設けることで、ウインカ装置71とミラーハウジング73とのオーバーラップ量を増やし、ウインカレンズ面72が庇部分73dによる影に覆われる範囲を大きくしている。また、ウインカ装置71とミラーハウジング73が車幅方向でオーバーラップするため、車両の車幅方向寸法も低減しやすくなる。
ウインカ装置71のハウジング支持部74と係合する半球部79は、ミラーハウジング73に形成された凹部73aの天井面に設けられている。従来のミラーハウジングでは、通常、このような半球部をミラーハウジングの垂直壁面に設けていたため、ミラーハウジングはウインカ装置の後部に配置されることとなり、ウインカ装置の上部に配置することは難しかった。
これに対し、本実施形態では、ミラーハウジング73の下部に凹部73aを設けることで凹部73aの天井面に半球部79を形成することが可能となり、ミラーハウジング73を下方から支持することで、自動二輪車1が交差点を右折または左折をするために車体を傾けた際でも庇部分73dによる遮光機能が発揮されやすいレイアウトが実現されている。また、凹部73aの天井面に半球部79を形成し、ハウジング支持部74を上向きに配設することで、重量物であるミラーハウジング73を下から支えることとなり、結合部分の負担が少なくなって角度調整機能の摩耗を抑えることができる。
また、ミラーハウジング73が、平面視においてウインカ装置71と少なくとも一部が重なり、かつウインカ装置71の上方を覆うことによって、ウインカ装置71に外方からの照射光が当たらない場合であっても、ウインカ装置71が強調されるデザインとなり、視認性が向上するという効果を奏することができる。
なお、自動二輪車の形態、ウインカ装置の形状や構造、ミラーハウジングや凹部の形状、LED素子の配置や個数、ウインカレンズの形状等は、上記実施形態に限られず種々の変更が可能である。本発明に係るウインカ構造は、自動二輪車に限られず、三輪車や四輪車等の各種車両に適用することが可能である。
ウインカ装置71の先端は、ミラーハウジング73の車幅方向中央より外側の位置まで延出しており、ウインカ装置71の一部が、ミラーハウジング73に形成された凹部73aに入り込んでいる。これは、ミラーハウジング73の底部に大きめの凹部73aを形成すると共に、ウインカ装置71の先端より車幅方向内側の位置にハウジング支持部74を設けたことで実現される。ミラーハウジング73の車幅方向の中心位置を示す中心線Oは、ウインカレンズ面72の車幅方向外側の端部より内側に位置する。この配置により、ミラーハウジング73とウインカ装置71とのオーバーラップを大きくすることができる。