(相互参照)
同時係属の英国特許出願第1214651.0号および第1202879.1号の開示内容は、ここに参考に一体のものとして統合される。米国特許第7,349,776号および国際特許出願第PCT/EP2013/053385号の開示内容は、ここに参考に一体のものとして統合される。英国特許出願第1111288.5号、第1211910.3号、および第1202427.9号の開示内容は、ここに参考に一体のものとして統合される。
(技術分野)
本発明は、車両の速度を制御するためのシステムに関する。とりわけ本発明は、これに限定するものではないが、多様な異質の極端な地形および状況で走行可能な陸上車両、特にオフロード車両の速度を制御するためのシステムに関する。
既知の車両速度制御システムにおいて、一般にはクルーズ制御システム(クルーズコントロールシステム)と呼ばれているが、ドライバの運転体感を改善するために、車両速度をドライバが一旦設定して、さらに介入しなければ、車両速度は一定に維持される。クルーズ制御速度(またはクルーズ設定速度)は、典型的には、車両が所望の速度に達すると車両ドライバがボタンを押下することにより設定可能である。クルーズ制御が設定されているときに、漸次的に速度を増減させるために、+ボタンまたは−ボタンが設けられている。
ドライバが維持すべき車両速度を選択すると、ドライバがブレーキまたはマニュアルトランスミッションを備えた車両ではクラッチを操作しなければ、車両の速度が維持される。クルーズ制御システムは、ドライブシャフト速度センサまたは車輪速度センサから速度信号を受信する。ブレーキペダルまたはクラッチペダルが踏み込まれると、クルーズ制御システムは非動作状態となり、ドライバはシステムからの反発を受けることなく、車両速度を変更することができる。クルーズ制御システムが動作状態にあるとき、ドライバがアクセルペダルを踏み込むと、車両速度は増大するが、ドライバがアクセルペダルから足を離すと、車両は事前設定されたクルーズ速度に戻る。
こうしたシステムは、通常、特定の速度以上(典型的には約15マイル/時〜約20マイル/時)であるときのみ動作可能であり、車両が安定した交通状況、特に、高速道路または自動車用道路で走行している環境において理想的なものである。しかし交通渋滞した状況では、車両速度は大きく変化し、クルーズ制御システムは、とりわけ最低速度条件を超えないため動作できない場合、有効なものではない。たとえば駐車時等の低速時の衝突の可能性を低減するために、最低速度条件がクルーズ制御システムに適用されることが多い。したがって、こうしたシステムは、特定の運転状況(低速走行時等)においては有効ではなく、クルーズ制御システムを適用することが好ましいとドライバが考えない状況においては、自動的に非動作状態に設定される。
より洗練されたクルーズ制御システムは、エンジン制御システム内に一体化され、レーダ方式システムを用いて、前方にある車両までの距離を考慮した適応型機能を有する。たとえば車両は、ドライバ入力を要することなく、前方にある車両の速度および距離を検知し、後続車両の安全な速度と距離を自動的に維持するような前方監視レーダシステムを備える。先行車両が減速した場合、またはレーダ検知システムが別の物体を検知した場合、こうしたシステムは、エンジンシステムまたはブレーキシステムに信号を送信し、それに応じて車両を減速させ、後続車両の安全な距離を維持する。
既知のシステムは、車両の車輪スリップ事象を検出し、トラクション制御システム(TCS:牽引力制御システム)またはスタビリティ制御システム(SCS)の介入を必要とする場合も同様に、速度制御を解除する。すなわち、これらのシステムは、こうしたスリップ事象が比較的に頻繁に生じるオフロード状況で走行しているとき、車両の推進を維持する上であまり適当ではない。
いくつかの車両は、ハイウェイ以外の路面上を走行するのに適しており、凹凸のある地形上で車両の推進を維持するために、低速クルーズ制御を実行することが好ましい。ハイウェイ以外の状況において、クルーズ制御により、ドライバ、特に未熟なドライバが操舵ハンドル操作等の運転作業に集中させることができる。
こうした背景技術に鑑み、本発明は考案された。本発明に係る実施形態は、上記課題に対処する装置、方法、または車両を提供する。本発明に係る他の目的および利点は、以下の明細書、クレーム、および図面から明らかとなる。
1つまたはそれ以上の車両サブシステムを制御するための動力車両用の制御システムを提供することが知られている。米国特許第7,349,776号には、エンジン制御システム、トランスミッションコントローラ、ステアリング(操舵ハンドル)コントローラ、ブレーキコントローラ、およびサスペンションコントローラを含む複数のサブシステムコントローラを備えた車両制御システムが開示されている。こうしたサブシステムコントローラはそれぞれ、複数のサブシステム機能モードまたはサブシステム構成モードで動作可能である。サブシステムコントローラは車両モードコントローラに接続され、車両モードコントローラは、車両のための数多くの運転モードを提供するために、サブシステムコントローラが要求機能モードを実行するように車両モードコントローラを制御する。各運転モードは、特定の1つの運転条件または一連の運転条件に対応し、それぞれの運転モードで、各サブシステムコントローラは、こうした条件に最も適した機能モードに設定される。こうした条件は、車両が走行する地形タイプ、たとえば草/砂利/雪モード、泥/轍モード、岩徐行モード、砂モード、および「特別プログラムオフ(SPO)」モードに関連付けられる。車両モードコントローラは、地形応答(TR、登録商標)システムもしくは地形応答コントローラと呼ばれることがある。また運転モードは、地形モード、地形応答モード、または制御モードと呼ばれることがある。
英国特許出願第1214651.0号明細書
英国特許出願第1202879.1号明細書
米国特許第7,349,776号明細書
国際特許出願第PCT/EP2013/053385号パンフレット
英国特許出願第1111288.5号明細書
英国特許出願第1211910.3号明細書
英国特許出願第1202427.9号明細書
保護を求める本発明に係る第1の態様によれば、車両の速度制御システムが提供され、この速度制御システムは、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えて、目標速度値(v_target)に基づいて車両を走行させる手段と、
1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御する手段と、
車両に適用された少なくとも1つの地形モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報を受信する手段とを備え、
車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に適用された少なくとも1つの地形モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するように構成される。
理解されるように、いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを自動的に加えることにより、車両速度の変化率を制御する前記手段は、必要に応じて、たとえば現時点の車両速度を維持したいが、車両速度を維持する上で反対向きの外力が作用する場合、または車両を加速することが要求されている場合、正のトルクを加え、たとえば重力等の車両を加速させる外力が存在する中で現時点の車両速度を維持し、または車両を減速することが要求されている場合、負のトルクを加えるように構成される。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御する前記手段は、必要に応じて、1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを実質的に同時に加えるように構成してもよい。
以下の明細書から理解されるように、オフロード走行に適した車両は、これに適用され得る数多くの地形応答モードを有し、各地形応答モードは、特定の地形タイプに適した車両構成または制御手法に対応する。地形タイプは、砂モード、泥/轍モード、氷モード、草/砂利/雪モード、浸水モード、および「特別プログラムオフ(SPO)」モードとも呼ばれる通常モードを含んでもよい。
以下の明細書から理解されるように、地形応答モードは、ヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)を介してドライバにより設定することができ、走行中の地形タイプまたは走行しようとしている地形タイプをドライバがHMIおよびモードセレクタを用いて入力することができる。択一的には、車両は複数の車両パラメータセンサを有し、任意的には環境センサを有し、コントローラは、これらのセンサからの信号を分析して、車両走行中の地形タイプを特定するように構成され、現在の地形タイプ上の走行のために車両を自動的に適用するものである。
本発明に係る実施形態は、車両に掛かる抵抗力が比較的に大きい地形上を走行している車両の1つまたはそれ以上の車輪に加えるトルクと、車両に掛かる抵抗力が比較的に小さい地形上を走行している車両の車輪に加えるトルクとを互いに異なる手法で制御するように速度制御システムが構成される点において、利点を有する。その結果、いくつかの実施形態では、抵抗力が比較的に大きい地形上で車両が十分な推進力を与えないというリスクを低減することができる。さらに、車両性能および操作特性が車両に掛かる抵抗力の大きさに影響されるので、車両安定性を改善することができる。抵抗力の大きさまたは選択された地形モードを参酌することにより、車両速度の変化率を制御するとき、車両をより快適にかつ予想可能に運転することができる。
理解されるように、比較的に小さい抵抗力に比して、比較的に大きい抵抗力が車両に掛かる場合、特に、坂道上の困難な走行を試みている場合、比較的に大きい加速度(加速レート)が必要とされることがある。たとえば、車両が比較的に平坦で水平な路面ではあるが、砂等の比較的に大きい抵抗力が車両に掛かる路面上を走行している場合、および車両が砂丘の側面等の勾配を登り始めた場合、パワートレイントルクを増大させなければ、車両の減速度(減速レート)は比較的に大きくなる。こうした状況において、車両が砂丘を登り始めるとき、車両速度は目標速度より小さくなり始め、車両が砂丘上で十分に推進できないことを回避するために、比較的に大きな加速度を車両に与えるようにパワートレインを制御する。こうした状況は、車両車輪が比較的に大きくスリップする泥だらけの丘を上っていく場合も同様に生じる。
同様に、いくつかの状況において、車両が砂丘の頂上に到達して、砂丘を下り始めたとき、目標速度をオーバーシュートまたはオーバーラン(超過)することを防止するために、1つまたはそれ以上の車輪に負のトルクを付加する必要が生じる。しかし、砂等の抵抗力が比較的に大きい路面を走行しており、特に、勾配を下っているときにブレーキを掛けると、車両推進を突然に停止させ、車両安定性を損なう場合がある。少なくとも地形が砂である場合、負のトルクが車輪に加わったとき、1つまたはそれ以上の車輪が地形路面の中に沈み込んで、車両が立ち往生することがある。したがって、乾いたアスファルト等の異なる路面上を走行するときに加えられる制動トルクに比して、勾配を下るときに車両を減速させるためには、所与の時間、1つまたはそれ以上の車輪に加わる制動トルクを小さくするように構成してもよい。いくつかの実施形態では、実質的制動トルクを掛けない。むしろ地形に起因して車両に掛かる抵抗力を用いて減速させる。
保護を求める本発明に係る態様によれば、車両の速度制御システムが提供され、この速度制御システムは、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを自動的に加えて、目標速度値(v_target)に基づいて車両を走行させる手段と、
車両に掛かる抵抗力の大きさおよび/または車両に適用された地形モード関する情報を受信する手段と、
車両の最大加速度および車両の最大加速度変化率のうちから選択された少なくとも一方を、前記情報に基づいて自動的に調整する手段とを備える。
任意的には、目標速度値に基づいて車両を自動的に走行させる手段は、目標速度値に基づいて車両を自動的に走行させるように構成された電子コントローラを含む。
前記情報に基づいて目標速度値を自動的に調整する前記手段は、目標速度値を自動的に調整する信号を出力するように構成された電子コントローラを含む。
理解されるように、コントローラは、複数のコンピュータデバイス、および電子制御ユニット等を有する。すなわち添付クレームの範疇に含まれる本発明に係る実施形態は、本発明により要求される機能が複数のコントローラ間で通信する制御システムを有する。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、車両の速度制御システムが提供され、この速度制御システムは、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えて、目標速度値(v_target)に基づいて車両を走行させる手段と、
1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御する手段と、
車両に適用された1つまたはそれ以上の地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報を受信する手段とを備え、
車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に適用された少なくとも1つの地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するように構成される。
理解されるように、1つまたはそれ以上の地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報は、地形応答モードおよび抵抗力大きさのうちの一方または両方を示す情報またはデータである。
択一的には、実際の車両速度(v_actual)が目標速度値(v_target)より小さい場合、車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に掛かる抵抗力が大きいほど、目標速度値(v_target)に向かってより大きい加速度で車両を加速させるように構成される。
さらに択一的には、実際の車両速度(v_actual)が目標速度値(v_target)より大きい場合、車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に掛かる抵抗力が大きいほど、目標速度値(v_target)に向かってより小さい加速度で車両を加速させるように構成される。
第1の速度が目標速度値(v_actual)より小さい場合、制御システムは、速度/時間の推移に関連して記憶されたデータに基づいて、第1の速度から目標速度値(v_target)まで車両を加速させるように構成され、車両を加速する際に依拠される速度/時間の推移は、車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて特定される。
第2の速度が目標速度値(v_actual)より大きい場合、制御システムは、速度/時間の推移に関連して記憶されたデータに基づいて、第2の速度から目標速度値(v_target)まで車両を減速させるように構成され、車両を加速する際に依拠される速度/時間の推移は、車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて特定される。
任意的には、制御システムは、車両に中間の瞬間的な目標速度(i-v_target)を達成させて、車両速度(i-v_target)を反復的に要求されたレートで目標速度値(v_actual)に向かって変化させようとすることにより、反復的に目標速度に向かう車両速度の変化率(v_actual)を制御するように構成される。
任意的には、制御システムは、車両速度の変化率が所定の急激な変化値(ジャーク値)を超えないように車両速度の変化率を制御するように構成される。
任意的には、所定の急激な変化値は、車両に掛かる抵抗力の大きさに依存して設定される。
任意的には、車両が減速中の所定の急激な変化値は、抵抗力の大きさが小さいほど大きく、抵抗力の大きさが大きいほど小さい。
制御システムは、車両が加速中の所定の急激な変化値は、抵抗力の大きさが大きいほど大きく、抵抗力の大きさが小さいほど小さくなるように構成される。
任意的には、車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報は、選択された車両の運転モードを少なくとも部分的に参照して求められる。
車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報は、選択された車両の運転モードを示すデータである。
任意的には、運転モードは複数の運転モードのうちの1つであり、複数の車両サブシステムのそれぞれは、複数のサブシステム構成モードのうちの1つの構成モードで動作し、サブシステム構成モードは、選択された運転モードに基づいて特定される。
任意的には、サブシステムは、パワートレインサブシステム、ブレーキサブシステム、およびサスペンションサブシステムのうちの少なくとも1つを含む。
さらに任意的には、車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報は、抵抗力パラメータ値を少なくとも部分的に参照して求め、抵抗力パラメータ値は、1つまたはそれ以上の車両動作パラメータを参照して特定される。
任意的には、1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御する前記手段は、パワートレインコントローラおよびブレーキコントローラと通信するように構成された電子コントローラを有する。
任意的には、電子コントローラは、車両が目標速度値(v_target)に従って走行するように、車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを自動的に加える手段を有する。
任意的には、電子コントローラは、車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報を受信する手段を有する。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、別の態様による速度制御システムを備えた車両が提供される。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、車両を制御する方法が提供され、この方法は、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを自動的に加えて、目標速度値(v_target)に基づいて車両を走行させるステップと、
1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御するステップと、
車両に適用された少なくとも1つの地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報を受信するステップと、
車両に適用された1つまたはそれ以上の地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するステップとを有する。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、車両の速度制御システムが提供され、この速度制御システムは、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えて、目標速度値に基づいて車両を走行させる手段と、
1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御する手段と、
車両に適用された少なくとも1つの地形応答モードおよび走行路面から車両に加わる抵抗力の大きさに関する情報を受信する手段とを備え、
車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に適用された少なくとも1つの地形応答モードおよび走行路面から車両に加わる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するように構成される。
速度制御システムは、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えて、目標速度値に基づいて車両を走行させる手段と、
1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御する手段と、
車両に適用された少なくとも1つの地形モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報を受信する手段とを備え、
車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に適用された少なくとも1つの地形モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するように構成される。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、別の態様による方法を実現するように車両を制御するコンピュータ可読媒体を担持する担持媒体が提供される。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、別の態様による方法を実現するようにプロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラム製品が提供される。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、別の態様によるコンピュータプログラム製品が記録されたコンピュータ可読媒体が提供される。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、クレーム19に記載の方法または別の態様によるコンピュータプログラム製品を実現するように構成されたプロセッサが提供される。
本願の範疇において、上記段落、クレーム、および/または以下の明細書および図面に記載された、さまざまな態様、実施形態、実施例、および択一例、特に個々の特徴物は、独立してまたは組み合わせて採用することができる。たとえば1つの実施形態に関連して説明された特徴物は、その特徴物が矛盾するものでなければ、すべての実施形態に適用することができる。
添付図面を参照しながら、単なる具体例を用いて、本発明について以下説明する。
本発明に係る実施形態による車両の概略的な平面図である。
図1に示す車両の側面図である。
本発明に係る実施形態による、クルーズ制御システムおよび低速推進制御システムを含む車両速度制御システムの相当レベルの概略的なブロック図である。
図3に示す車両速度制御システムのさらなる特徴を示す概略的なブロック図である。
本発明に係る実施形態による車両の操舵ハンドル、ブレーキペダル、アクセルペダルを示す。
車両速度の増大が要求された場合において、異なる地形モードのための目標設定速度の時間的推移を概略的に示すグラフである。
車両速度の低減が要求された場合において、異なる地形モードのための目標設定速度の時間的推移を概略的に示すグラフである。
機能ブロック等のブロックには、1つまたはそれ以上の入力信号に呼応した出力信号で特定される機能または操作を実行するソフトウェアコードが含まれるものと理解されたい。ソフトウェアコードは、メインコンピュータプログラムで読み出されるソフトウェアルーチンもしくはソフトウェア機能の形態を有するもの、またはソフトウェアコードのフローの一部を構成する独立したソフトウェアルーチンもしくはソフトウェア機能の形態を有するものであってもよい。ブロックを参照すると、本発明に係る実施形態による処理方法を簡便に説明することができる。
図1は、本発明に係る実施形態による車両100を示す。車両100は、オートマッチックトランスミッション(自動トランスミッション)124を含むドライブライン130に接続されたエンジンを有するパワートレイン129を備える。理解されるように、本発明に係る実施形態は、同様に、マニュアルトランスミッション、無段階トランスミッション、または他の任意の適当なトランスミッションでの利用に適している。
図1の実施形態において、トランスミッション124は、トランスミッションモード・セレクタダイヤル124Sを用いて、パーキングモード、バックモード(後退モード)、ニュートラルモード、ドライブモード、もしくはスポーツモード等の複数のトランスミッション動作モードのうちの1つの操作モードに設定することができる。セレクタダイヤル124Sは、パワートレインコントローラ11に信号を出力し、その出力信号に呼応するようにパワートレインコントローラは、選択されたトランスミッションモードに従って、トランスミッション124を動作させる。
ドライブライン130は、前輪ディファレンシャル137および一対のドライブシャフト118を介して、車両の一対の前輪111,112を駆動するように構成されている。同様に、ドライブライン130は、補助ドライブライン部131を備え、補助ドライブライン部は、補助ドライブシャフトまたはプロペラシャフト132、後輪ディファレンシャル135および一対の後輪ドライブシャフト139を介して、一対の後輪114,115を駆動するように構成されている。
本発明に係る実施形態は、一対の前輪もしくは一対の後輪のみを駆動するように構成されたトランスミッションを有する車両(すなわち前輪駆動車両もしくは後輪駆動車両)、または2輪駆動/4輪駆動を選択できる車両に用いられるのに適している。図1の実施形態では、トランスミッション124は、動力伝達ユニット(PTU)131Pを介して、補助ドライブライン部131に着脱可能に接続可能であり、補助ドライブライン部は2輪駆動モードまたは4輪駆動モードでの動作を可能にするものである。理解されるように、本発明に係る実施形態は、たとえば3輪車両もしくは4輪車両の2つの車輪のみを駆動する車両または4輪以上の車輪を駆動する車両等、4輪以上の車輪を有する車両または2輪のみを駆動する車両に適する。
車両エンジン121の制御システムは、中央コントローラ10(車両制御ユニット(VCU)10という。)、パワートレインコントローラ11、ブレーキコントローラ13(アンチロックブレーキシステム(ABS)コントローラ)、およびステアリングコントローラ170Cを有する。ABSコントローラ13、ブレーキシステム22(図3)の一部を構成する。車両制御ユニット(VCU)10は、車両に搭載されたさまざまなサブシステム(図示せず)との間で、数多くの信号を通信(入出力)する。車両制御ユニット10は、図3に示す低速推進(LSP)制御システム12、スタビリティ制御システム(SCS)14、クルーズ制御システム16、およびヒルディセント制御(HDC)システム12HDを有する。スタビリティ制御システム14は、牽引力の損失を検出して調整することにより車両100の安全性を向上させるものである。牽引力または操舵制御機能の低減が検出されると、スタビリティ制御システム(SCS)14は、車両の1つまたはそれ以上の車輪にブレーキトルクを加えて、ドライバが走行させようしている方向に車両を操舵することを支援するために、ブレーキコントローラ13に自動的に指令するように動作可能である。図示された実施形態では、スタビリティ制御システム(SCS)14は、車両制御ユニット(VCU)10により実現される。いくつかの択一的な実施形態では、スタビリティ制御システム(SCS)14は、ABSコントローラ13により実現されてもよい。
図3には詳細には図示されていないが、車両制御ユニット(VCU)10は、トラクション制御(TC:牽引力制御)機能ブロックを有する。この牽引力制御(TC)機能ブロックは、車両制御ユニット(VCU)10のコンピュータデバイスにより実行されるソフトウェアコードとして実現される。ABSコントローラ13およびTC機能ブロックは、車輪スリップ事象が生じた場合のTCアクティビティ(動作)、ABSアクティビティ、個々の車輪に対するブレーキ介入動作、およびエンジン121に対する車両制御ユニット(VCU)10からのエンジントルク要求を示す信号を出力する。上述の各動作事象は、車輪スリップ事象が生じたことを示す。いくつかの実施形態では、ABSコントローラ13は、TC機能ブロックを実現する。ロールスタビリティ制御システム等の他の車両サブシステムも同様に有用である。
上述のように、車両100は、車両が25km/hを超える速度で走行しているときに選択された速度で車両速度を自動的に維持するように動作可能なクルーズ制御システム16を有する。クルーズ制御システム16は、クルーズ制御HMI(クルーズ制御ヒューマン・マシン・インターフェイス)18を有し、これを用いてドライバは、既知の手法によりクルーズ制御システム16に目標車両速度を入力することができる。本発明に係る1つの実施形態では、クルーズ制御システム16の入力制御部は、操舵ハンドル171に実装されている(図5)。クルーズ制御システム16は、クルーズ制御システム選択ボタン176を押下することによりスイッチオンする(スイッチを入れて作動させる)ことができる。クルーズ制御システム16を作動させ、「設定速度」制御部173を押下すると、現時点での車両速度がクルーズ制御設定速度パラメータの現在値に設定される。「+」ボタン174を押下すると、クルーズ設定速度(cruise_set-speed)の値を増大させ、「−」ボタン175を押下すると、クルーズ設定速度を低減させることができる。再開ボタン173Rを用いて、ドライバがクルーズ制御システム16を解除した後、クルーズ制御システム16がクルーズ設定速度の現在値で速度制御を再開させるようにクルーズ制御システム16を制御することができる。
理解されるように、本発明に係るクルーズ制御システム16を備えた既知のハイウェイ用クルーズ制御システムは、ブレーキペダルまたは、マニュアルトランスミッションを備えた車両の場合にはクラッチペダルをドライバが踏み込んだとき、クルーズ制御システム16による車両速度の制御は中断され、車両100は、マニュアル動作モードに戻り、車両速度を維持するためにはドライバによるアクセルペダルまたはブレーキペダルの入力を必要とする。さらに、牽引力の損失に起因して、車輪のスリップ事象が検出されると、クルーズ制御システム16による車両速度の制御は中断される。その後にドライバが再開ボタン173Rを押下すると、クルーズ制御システム16による速度制御が再開される。
クルーズ制御システム16は、車両速度をモニタ(監視)し、目標車両速度からの逸脱が自動的に調整されるため、車両速度を実質的に一定の値(典型的には25km/hを超える速度)に維持する。換言すると、クルーズ制御システム16は、25km/h未満の速度では機能しない。クルーズ制御HMI18は、その視覚的ディスプレイを介して、クルーズ制御システム16の状態についてドライバに警告を与えるように構成されている。本実施形態では、クルーズ制御システム16は、クルーズ設定速度(cruise_set-speed)の値を25〜150km/hの範囲で設定できるように構成されている。
低速推進(LSP)制御システム12は、速度に依存した制御システムをドライバに提供し、ドライバは極めて遅い目標速度を選択することができ、その速度でドライバによるペダル入力を必要とすることなく、車両を推進させることができる。25km/h以上の速度でのみ動作するハイウェイ用クルーズ制御システムは、低速の速度制御機能(すなわち低速推進(LSP)制御機能)を有しない。
本実施形態では、低速推進(LSP)制御システム12は、操舵ハンドル171上に実装されたヒルディセント制御(HDC)システムの選択ボタン177を所定時間より短い時間(他の値も有用であるが、本実施形態では所定期間は3秒間)押下した後、「+設定」ボタン174を押下することにより起動することができる。いくつかの実施形態では、LSP制御システム専用の選択ボタンを操舵ハンドル171上に実装し、これを用いて低速推進(LSP)制御システム12を起動する。このシステムは、車両100の1つまたはそれ以上の車輪に対して、パワートレイン制御、トラクション制御、およびブレーキ制御を選択的に実行するように動作可能である。
低速推進(LSP)制御システム12は、これに対するドライバ設定速度の所望の設定速度パラメータを、ドライバがLSP制御HMI20(図1および図3)を介して入力できるように構成されており、LSP制御HMIは、特定の入力ボタン173〜175を、クルーズ制御システム16およびヒルディセント制御(HDC)システム12HDと共用する。車両速度がLSP制御システム12の許容動作範囲(他の範囲も同様に有用であるが、2km/h〜30km/h)内に入り、LSP制御システム12による制御において車両速度に対する他の制約がなければ、LSP制御システム12は、LSP設定速度(cruise_set-speed)の値に基づいて車両速度を制御する。クルーズ制御システム16とは異なり、LSP制御システム12は、牽引力事象の発生とは無関係に動作するように構成される。すなわちLSP制御システム12は、車輪スリップを検出しても速度制御を中断しない。むしろLSP制御システム12は、車輪スリップが検出されたとき、車両の挙動を積極的に調整するものである。
LSP制御HMI20は、ドライバが容易にアクセスできるように、車室(車両キャビン)内に設けられている。車両100のドライバは、LSP制御HMI20を介して、クルーズ制御システム16と同様の「+」/「−」ボタンを用いて、ドライバ所望の車両の走行速度(以下、「目標速度」という。)の指示をLSP制御システム12に入力することができる。LSP制御HMI20は、視覚的ディスプレイを有し、その視覚的ディスプレイ上で、LSP制御システム12の状態に関する情報およびガイダンスをドライバに提供することができる。
LSP制御HMI20は、ドライバがブレーキペダル163を用いてブレーキ力を加えた程度を示す入力信号をブレーキシステム22のABSコントローラ13から受信する。同様に、LSP制御システム12は、ドライバがアクセルペダル161を踏み込んだ程度を示す入力信号をアクセルペダル161から受信し、トランスミッションすなわちギアボックス124からの入力信号を受信する。後者の入力信号は、たとえばギアボックス124の出力シャフトの速度を示す信号、トルクコンバータのスリップの大きさ、および要求されたギア速度比であってもよい。LSP制御システム12に対する他の入力信号は、クルーズ制御システム16の状態(オン/オフ)を示すクルーズ制御HMI18からの入力信号、およびLSP制御HMI20からの入力信号を含んでもよい。
ヒルディセント制御(HDC)システム12HDは、動作状態にあるとき、ドライバにより設定可能なHDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)の設定速度に相当する値に車両速度を制限するために、ブレーキシステム22を制御する。HDC設定速度(HDC_set-speed)は、HDC目標速度と呼んでもよい。HDCシステム12HDが動作状態にあるとき、ドライバがアクセルペダル161を踏み込むことにより、HDCシステム12HDを解除(無効化)させない場合、HDCシステム12HDは、車両速度がHDC設定速度を超えないように、ブレーキシステム22(図3)を制御する。本実施形態では、HDCシステム12HDは、正の駆動トルクを加えるように動作しない。むしろHDCシステム12HDは、ブレーキシステム22を介して、負のブレーキトルクを負荷するようにのみ動作可能である。
ヒルディセント制御(HDC)システム12HDは、そのヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)20HDを用いて、HDC設定速度を設定することを含め、ドライバによるHDCシステム12の制御を可能にするものである。HDCシステム選択ボタン177を所定時間以上(上述のように本実施形態では3秒間)押下することにより、HDCシステムを起動することができる。
上記説明したように、HDCシステム12HDは、クルーズ制御システム16および低速推進(LSP)制御システム12と同一の制御部を用いて、HDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)の値を設定し、調整することができるように動作可能である。すなわち、本実施形態では、HDCシステム12HDが車両速度を制御するとき、HDCシステムの設定速度を増減させ、クルーズ制御システム16およびLSP制御システム12の設定速度と同様に、同一の制御ボタン173,173R,174,175を用いて、現時点の車両速度をHDC目標速度に設定することができる。HDCシステム12HDは、HDC設定速度(HDC_set-speed)の値を2〜30km/hの範囲で設定するように動作可能である。
車両100が50km/h以下の速度で走行しているとき、HDCシステム12HDが選択され、他の速度制御システムが動作していない場合、HDCシステム12HDは、HDC設定速度(HDC_set-speed)の値を参照テーブルから選択した値に設定する。参照テーブルで出力される値は、現在選択されているトランスミッションギアの同一性(アイデンティ)、現在選択されているPTUギア比(Hi/Lo)、および現在選択されている動作モードに依存して決定される。ドライバがアクセルペダル161を踏み込むことによりHDCシステム12HDを解除(無効化)させない場合、HDCシステム12HDは、パワートレイン12および/またはブレーキシステム22を用いて(図4の信号42を介して)、HDCシステムの設定速度まで車両100を減速させる。理解されるように、HDCシステム12HDは、パワートレイン129を制御して、たとえばエンジン・オーバーラン・ブレーキにより、1つまたはそれ以上の車輪に負のトルクを負荷してもよいが、車輪に正のトルクを与えることはない。
実際の車両速度(v_actual)が設定速度値(HDC_set-speed)を超えたとき、HDCシステム12HDは、最大許容可能レートを超えない減速レート(減速度)で、設定速度値まで車両100を減速させるように構成されている。このレートは、本実施形態では、1.25m/s2に設定されるが、他の値も同様に有用である。その後、ドライバが「設定速度」ボタン173を押下すると、HDCシステム12HDは、現時点の速度が30km/h以下であるならば、設定速度値(HDC_set-speed)を現時点の速度に設定する。
(HDCシステム12HDおよびLSP制御システム12がスイッチオフされているとき、HDC選択ボタン177を所定時間以上押下することにより)HDCシステム12HDが選択され、車両100が50km/hを超える速度で走行しているとき、HDCシステム12HDは、その選択要求を無視(拒否)し、ドライバにその選択要求が無視されたことを通知する。
理解されるように、車両制御ユニット(VCU)10は、上述したタイプの既知の地形応答システム(TR、登録商標)を実現するように構成され、車両制御ユニット10は、1つまたはそれ以上の車両システムまたはパワートレインコントローラ11等の車両サブシステムの設定値を、選択された運転モードに依存して制御する。運転モードは、運転モードセレクタ141S(図1)を用いてドライバにより選択される。運転モードとは、地形モード、地形応答モード、または制御モードを意味することがある。
図1の実施形態では、走行面と自動車の車輪との間の表面摩擦係数が比較的に大きい、比較的硬く滑らかな路面上を走行するのに適した「ハイウェイ」運転モード、砂地形上を走行するのに適した「砂」モード、(走行面と自動車の車輪との間の表面摩擦係数が比較的に小さく)比較的に滑りやすい草、砂利または雪の上を走行するのに適した「草/砂利/雪(GGS)」運転モード、岩肌の多い表面の上をゆっくり走行するのに適した「岩徐行(RC)」運転モード、および泥または轍のある地形を走行するのに適した「泥/轍(MR)」運転モードを含む4つの運転モードが提供される。追加的または択一的な他の運転モードが提供されてもよい。いくつかの実施形態では、運転モードセレクタ141Sは、ドライバが「自動運転モード選択状態」を選択することを可能にし、車両制御ユニット(VCU)10は、詳細後述するように、最も適当な運転モードを自動的に選択することができる。いくつかの実施形態では、ハイウェイ運転モードは、標準的な運転モード、すなわち規定の運転モードに相当するものであるので、「特別プログラムオフ(SPO)」と呼ばれ、ハイウェイ運転モードでは、表面摩擦係数が比較的に小さいこと、または凹凸の大きい路面であること等の特別なファクタを考慮する必要がない。
いくつかの実施形態では、本実施形態を含め、LSP制御システム12は、所与の瞬間において、アクティブ状態(動作状態)、スタンバイ状態、およびオフ状態(非動作状態)のうちのいずれか1つの状態にある。LSP制御システム12は、アクティブ状態にあるとき、パワートレインのトルクとブレーキシステムのトルクを制御することにより、車両速度を能動的に(積極的に)制御する。LSP制御システム12は、スタンバイ状態にあるとき、ドライバが再開ボタン173Rまたは「設定」ボタン173を押下するまで、車両速度を制御しない。LSP制御システム12は、オフ状態にあるとき、入力制御信号に対して応答しない。
本実施形態において、LSP制御システム12は、中間モードまたは中間状態を実行するように動作可能であり、中間モードは、アクティブモードに類似するが、パワートレイン129が車両100の1つまたはそれ以上の車輪に正の駆動トルクを加えるように指令しない状態である。すなわちブレーキシステム22および/またはパワートレイン129を用いて、ブレーキトルク(制動トルク)のみが負荷される。本実施形態において、HDC制御システム12HDにより車両速度を制御させることにより、中間モードは実行され、このとき設定速度値(HDC_set-speed)は、LSP設定速度値(LSP_set-speed)に実質的に等しくなるように設定される。他の構成も同様に有用である。
LSP制御システム12がアクティブ状態にあるとき、ドライバは「+」および「−」ボタン174,175を用いて車両設定速度を増減させることができる。さらにドライバは、アクセルペダル161またはブレーキペダル163を軽く踏み込むことにより、車両設定速度を増減させることができる。いくつかの実施形態では、LSP制御システム12がアクティブ状態にあるとき、「+」および「−」ボタン174,175をオフ状態にし、アクセルペダル161およびブレーキペダル163のみを用いて、LSP設定速度の値を調整することができる。この後者の特徴によれば、たとえば「+」および「−」ボタン174,175を偶発的に押下したことにより、設定速度を意図せず変更することを回避することができる。ボタンの偶発的な押下は、たとえば険しい(困難な)地形上を運転していて、比較的に大きな操舵角で頻繁に操舵する必要がある場合に起こり得る。他の構成も同様に有用である。
理解されるように、本実施形態において、LSP制御システム12は、2km/h〜30km/hの範囲の設定速度値に従って車両を走行させるように動作可能であり、クルーズ制御システムは、25km/h〜150km/hの範囲の設定速度値に従って車両を走行させるように動作可能である。ただし他の値も同様に有用である。車両速度が30km/hより大きく、実質的に50km/h以下であるときにLSP制御システム12が選択された場合、LSP制御システム12は中間モードを実行する。中間モードにおいて、30km/hを超える速度で走行中、ドライバがアクセルペダル161から足を離したとき、LSP制御システム12は、ブレーキシステム22を用いて、パラメータの値(LSP_set-speed)に相当する速度値まで車両100を徐々に減速させる。車両速度が30km/h以下となったとき、LSP制御システム12は、アクティブ状態となり、LSP設定速度値(LSP_set-speed)に従って車両を制御するために、パワートレイン129を介して正の駆動トルクを加えるとともに、パワートレイン129(エンジンブレーキ)およびブレーキシステム22を介して制動トルクを加える。LSP制御システム12が選択され、LSP設定速度値が設定されていない場合、LSP制御システム12は、スタンバイモードを実行し、「+設定」ボタン174が押下されるとアクティブ状態に移行する。いくつかの実施形態では、車両速度が30km/hより大きく、実質的に50km/h以下であるときにLSP制御システム12が選択された場合、LSP制御システム12は、ドライバがアクセルペダル161を踏み込むか、LSP制御システム12をスイッチオフさせることにより、LSP制御システム12を中断(解除)するまで、ブレーキシステム22を用いて、車両を30km/hまで減速させ、30km/hを超えないようにする。
理解されるように、LSP制御システム12がアクティブモード(動作モード)にあるとき、クルーズ制御システム16の動作は禁止される。すなわちLSP制御システム12およびクルーズ制御システム16は、互いに独立して動作し、常時、車両が走行している速度に依存して、一方のみを動作させることができる。
本実施形態では、上述のように、クルーズ制御HMI18およびLSP制御HMI20は、同一のハードウェアを用いて構成され、選択速度は同一のハードウェアを用いて入力される。
図4は、LSP制御システム12がアクティブモードにあるとき、車両速度を制御する手法を示す。LSP制御システム12は、アクティブモードにあるとき、パワートレイン129により加えられる正のLSPパワートレイントルク(LSP_PT_TQ)の大きさを決定し、正のLSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)の値をパワートレインコントローラ11に送信することにより、その正の駆動トルクを出力する。LSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)は、TC機能ブロックを介してパワートレインコントローラ11に送信してもよく、TC機能ブロックは、走行中の車輪に生じたスリップの大きさに基づいてLSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)を調整してもよい。すなわちTC機能ブロックは、過剰なスリップが生じた場合、パワートレインコントローラ11に出力されるLSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)を低減してもよい。
LSP制御システム12がアクティブモードにあるとき、ブレーキシステム22により負荷されるLSP制動トルク(LSP_BRK_TQ)の大きさは、ヒルディセント制御(HDC)システム12HDがアクティブモードにある場合、LSP制御システム12に「従属」するHDCシステム12HDにより決定される。HDCシステム12HDは、ゼロでないLSP制動トルク(LSP_BRK_TQ)のトルク値をABSコントローラ13に送信することにより、その制動トルクを出力する。理解されるように、ドライバがブレーキペダルとアクセルペダルの両方を踏み込む「2−ペダリング」を自動制御において、LSP制御システム12は、HDCシステム12HDにゼロでないLSP制動トルク(LSP_BRK_TQ)を出力させ、正の(または負の)LSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)を加えるように指令する。
図4に示すように、LSP制御システム12は、HDCシステム選択ボタンが現時点で押下されたか否かを示す「HDCボタン信号(HDC_button)」、プラス設定信号ボタン174が現時点で押下されたか否かを示す「プラス設定信号(Set_plus)」、および再開ボタン173Rが現時点で押下されたか否かを示す「再開ボタン信号(Resume_button)」を含む信号を受信する入力機能ブロック12aを有する。
図4の実施形態において、HDC選択ボタン177が3秒未満の間押下され、LSP制御システムがアクティブ状態でなく、HDC選択ボタン177を離した後「+設定」ボタンが3秒以内押下された場合、LSP制御システム12は、アクティブ状態となり、必要とされる正のパワートレイントルクの付加を指令するように構成される。他の時間も同様に有用である。
LSP制御システム12の入力機能ブロック12aは、HDCシステム12HDの対応する入力機能ブロック12HDaと通信するように構成されている。LSP制御システム12がアクティブモードに移行すると、LSP制御システムの入力機能ブロック12aは、LSP制御システム12がアクティブ状態にあることを示すLSPアクティブ信号(LSP_active)をHDCシステム12HDに送信する。LSP制御システム12がアクティブ状態にあるとき、HDCシステム12HDは、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値をHDC設定速度(HDC_set-speed)の値に設定し、LSP制御システム12に対する従属モードで動作するように構成される。すなわちHDCシステム12HDは、LSP制御システム12によりブレーキトルクを負荷するように指令を受けたとき、ABSコントローラ13による制動トルクの負荷を指令するように動作可能である。
LSP制御システム12およびHDCシステム12HDのいずれもアクティブ状態になく、HDC選択ボタン177が3秒以上押下されたとき、HDCシステム12HDはアクティブ状態になる。こうした状況では、HDCシステム12HDは、LSP制御システム12に従属せず、LSP制御システム12は非動作状態のままである。
LSP制御システム12およびHDCシステム12HDのいずれか一方がアクティブ状態にあり、HDC選択ボタンが3秒未満の時間押下されたとき、アクティブ状態にあるシステム12,12HDが非アクティブ状態になる。
上述のように、HDC設定速度(HDC_set-speed)は、LSP制御システムがアクティブ状態にあるとき、LSP設定速度(LSP_set-speed)と等しく設定されるが、HDCシステム12HDは、車両速度がHDC設定速度(HDC_set-speed)を超えないように制動トルクを負荷するように動作可能であるが、正のパワートレイントルクを与えるように動作可能ではない。
HDCシステム入力機能ブロック12HDaは、LSP制御システム12の目標速度推移プロファイル機能ブロック12b、およびHDCシステム12HDの目標速度推移プロファイル機能ブロック12HDbにLSP設定速度(LSP_set-speed)の値を出力するように構成されている。車両が実質的に静止した状態で、LSP制御システム12が起動された場合、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値は、LSP制御システム12が車両100を駆動する際の最低値に設定される。本実施形態では、この速度は実質的に2km/hである。2km/h以外の他の速度も同様に有用である。
車両100が走行しているときに、LSP制御システム12を起動した場合、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値を、車両制御ユニット(VCU)10が特定したその瞬間の車両速度(v_actual)に設定してもよい。
また機能ブロック12bは、車両100が現時点で動作している運転モード(すなわち地形モード)を示すTRモード信号、および車両制御ユニット(VCU)10が特定した車両100の路面上の瞬間車両速度を示す信号(v_actual)を入力信号として受信する。
機能ブロック12bは、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)を特定するように構成され、LSP目標設定速度値およびLSP目標設定加速度値は、それぞれ車両100の要求された走行速度および現在の速度に対して要求された加速度である。機能ブロック12bは、LSP設定速度(LSP_set-speed)、TRモード、および瞬間車両速度(v_actual)の値を入力信号として受信する。各パラメータの値を参照テーブルに入力して、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)を求める。LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)のパラメータ値は、比例積分(PI)制御モジュール12cに入力され、パワートレインコントローラ11に出力されるLSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)を求める。機能ブロック12bは、そのメモリ内に記憶された目標速度推移プロファイルに従って、目標速度がLSP設定速度(LSP_set-speed)に徐々に接近して等しくなるように、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)を制御する。
PI制御モジュール12cは、パワートレイン129により出力される現時点でのトルク値(PT_trq)、車両100の現時点での実際の加速度に相当するパラメータ値(A_actual)、および車両100が走行している坂道の勾配に相当するパラメータ値(「スロープ」、”slope”)を入力信号として受信する。理解されるように、パラメータ値(A_actual)は、車両100が加速しているか、減速しているかに依存して正または負の値となる。パラメータ値(slope)パラメータ値は、比例的なフィードバックゲイン値および積分フィードバックゲイン値を調整するために用いられるが、車両100が坂道を上っているか、下っているかに依存して正または負の値となる。
理解されるように、本実施形態では、車両が坂道を上っている場合、パワートレイントルクの増大が要求されるときのLSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)の増大レートが、車両が平坦な路面を走行しているときの増大レートより大きくなるように、フィードバックゲイン値は調整される。車両が坂道を上っていて、パワートレイントルクの低減が要求される場合、LSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)が低減するレートは、車両が平坦な路面を走行しているときの低減レートより小さい。これは、ブレーキシステム22による制動トルクが負荷されなくても、重力が車両速度を低減するように作用し、車両100が平坦な路面上を走行していた場合に比してより大きいレートで車両速度が低減するためである。
すなわち機能ブロック12bは、車両100が走行路面によって必要とされる牽引力の大きさを参酌するが、機能ブロック12cは、車両100が走行している地形の勾配を参酌するものである。理解されるように、車両が砂モードであること、すなわち比較的に大きな牽引力を要する地形上を走行していることをTRモード信号が示すとき、実際の車両速度(v_actual)がLSP設定速度(LSP_set-speed)を下回るので、LSP制御システム12は、パワートレイントルク値が比較的に迅速に増大するように構成される。
LSP制御システム12は、要求された正のパワートレイントルクを与える。理解されるように、LSP制御システム12がアクティブ状態であるとき、たとえば車両100を減速させ、もしくは加速度を小さくするために、車両100の1つまたはそれ以上の車輪に制動トルクを負荷する必要がある場合、ブレーキシステム22を介してブレーキトルクを与えるように、HDCシステム12HDがブレーキコントローラ13に指令する。
図6は、機能ブロック12bが記憶する速度プロファイルを示し、これは、LSP目標設定速度(LSP_target-speed)より小さい実際速度(v_actual)からLSP目標設定速度まで車両を加速するために必要な場合に用いられる。プロットP1は、車両100が砂モード(TRモード=砂モード)であるときに用いられる速度プロファイルであり、プロットP2は、車両がSPOモードであるときに用いられる速度プロファイルである。プロットP1の最大勾配S1は、プロットP2の最大勾配S2より大きい。これは、砂等の牽引力が比較的に大きい路面上を走行する場合、車両が坂道を上っているとき、車両速度が比較的に迅速に低下するためであり、車両が坂道を上り始めたとき、地形による車両100に掛かる比較的に大きい抵抗力に起因して、車両速度がゼロとなるまで小さくならないようにすることは重要であるためである。
加速レート(加速度)の急激な変化(ジャーク:急な動き)に起因した乗客の不快感を回避または少なくとも抑制するため、LSP制御システム12は、車両100の加速度の変化率(LSP_A_T)が所定の最大値を超えないように、これを制限する。加速度の変化率(LSP_A_T)は、TRモードに基づいて設定され、車両が砂の上を走行するときに掛かる抵抗力は、乾燥したアスファルトのハイウェイ路面の上を走行するときに掛かる抵抗力より大きいので、TRモードが砂モードである場合の加速度変化率は、TRモードがSPOモードである場合の加速度変化率よりも大きい。さらに加速度変化率(LSP_A_T)は、TRモードの値に基づいて決定された、安定状態の加速度が得られるように制御される。車両が立ち往生して、地形上を十分に推進することができないリスクを低減するために、低抵抗のアスファルト路面に比較して、砂等の高抵抗の路面に対する安定状態の加速度はより大きくなる。
HDC制御システム12HDを参照すると、このシステム12HDは、LSP制御システム12の機能ブロック12bと同様の機能ブロック12HDbを有し、機能ブロック12HDbは、TRモード信号(TR_mode)、現時点の実際速度信号(v_actual)、および現時点の実際加速度信号(A_actual)を受信する。機能ブロック12HDbは、TRモード信号(TR_mode)、実際速度信号(v_actual)、および実際加速度信号(A_actual)に基づき、参照テーブルに参照して、パラメータ(HDC_V_T)およびパラメータ(HDC_A_T)の現時点の値を決定し、これらのパラメータ値をPI制御モジュール12HDcに出力するように構成されている。パラメータ(HDC_V_T)の値は、車両100の要求された現在の目標速度に対応し、パラメータ(HDC_A_T)の値は、車両100の現在の目標減速度に対応する。機能ブロック12HDbは、そのメモリ内に記憶された目標速度推移プロファイルに従って、目標速度がHDC設定速度(HDC_set-speed)に徐々に接近して等しくなるように、値(HDCVxTgt Traj)および値(HDC_A_T)を制御する。
値(HDC_A_T)は、車両の加速度の最大許容可能な変化率(最大ジャーク値という。)を超えないように制御され、乾燥したアスファルトに比較して砂等の高抵抗の路面上を走行する場合、すなわち抵抗力の増大に起因して車輪に加わる駆動トルクが小さくなる場合、車両がより迅速に減速するため、TRモードが砂モードである場合の値(HDC_A_T)の最大許容される値は、TRモードがSPOモードである場合の値(HDC_A_T)の最大許容される値より小さい。さらに値(HDC_A_T)は、TRモードの値に基づいて決定された、安定状態の減速度が得られるように制御される。車輪により移動した砂が車輪の前に蓄積し、車両の安定性を低減する急激な減速度が生じるリスクを低減するため、低抵抗のアスファルト路面に比較して、砂等の高抵抗の路面に対する安定状態の減速度はより小さくなるように構成されている。
値(HDC_A_T)および値(HDC_V_T)は、比例積分(PI)制御モジュール12HDcに入力され、PI制御モジュールは、ABSコントローラ13に出力されるHDC制動トルク(HDC_BRK_TQ)の値を生成する。
PI制御モジュール12HDcは、入力値として、ブレーキシステム22により出力される現時点でのブレーキトルク(BRK_trq)に相当する値とともに、現時点の実際加速度値(A_actual)および坂道の勾配値(slope)を受信する。理解されるように、実際加速度値(A_actual)は、車両100が加速しているか、または減速しているかに依存して、正または負の値となる。走行路面の勾配に基づいて、勾配値(slope)を用いて、PI制御モジュール12HDc比例的なフィードバックゲインの値および積分フィードバックゲインの値を調整する。
図7は、HDC制御システム12HDのメモリ内に記憶された3つの目標速度推移プロファイル(減速プロファイルともいう。)に基づく時間の関数として、意図したHDC目標設定速度値(HDC_V_T)を示すグラフである。プロファイルP1は、車両制御ユニット(VCU)10が特別プログラムオフ(SPO)すなわちハイウェイ運転モード(オンロード走行用の運転モード)で動作しているとき、HDC制御システム12HDが選択したものである。このモードにおいて、TRモードはSPOモードである。
プロファイルP2は、車両制御ユニット(VCU)10がGGS運転モードで動作しているとき、HDC制御システム12HDが選択したものである。このモードにおいて、TRモードはGGSモードである。
プロファイルP3は、車両制御ユニット(VCU)10が「砂」運転モードで動作しているとき、HDC制御システム12HDが選択したものである。このモードにおいて、TRモードは砂モードである。
図示されているように、TRモードがSPOモードであるときの目標速度推移プロファイルの最大勾配S1は、TRモードがGGSモードであるときの目標速度推移プロファイルの最大勾配S2より急峻であり、最大勾配S2は、TRモードが砂モードであるときの目標速度推移プロファイルの最大勾配S3より急峻である。勾配S1とS2の差異は、少なくとも部分的には、車両車輪と湿った草の路面との間の表面摩擦係数が、車両車輪と乾燥したアスファルトの路面との間の表面摩擦係数より小さいものと予想されるためである。すなわちHDC制御システム12HDは、1つまたはそれ以上の車輪が過剰にスリップするリスクを低減するために、SPOモードと比較して、GGSモードで走行する場合、最大許容可能な減速レートを低減するように構成されている。さらに、減速度の最大許容可能な変化率も同様に制限される。プロファイルP3の減速度の最大許容可能な変化率は、GGSモードと比較すると砂モードでより小さく、車両がSPOモードで走行する場合に許容される値より小さい。理解されるように、砂モードで走行する車両が受ける抵抗力がより大きいために、走行路面に埋もれそうな1つまたはそれ以上の車両車輪に掛けるブレーキトルクを最小のものとすることができる。これは、少なくとも部分的には減速時の車両前方部が最も低くなるためである。車輪が走行路面に埋まってしまうと、大きな減速度が生じ、最終的には車両が立ち往生することになり、地形上を推進する機能が著しく損なわれる。したがって、車両速度をLSP設定速度値(LSP_set-speed)に近づけるように減速させる必要があり、これをHDC制御システム12HDが許容する車両の最大許容可能な減速レート(減速度)を低減することにより、HDC制御システム12HDは、車両速度を減速させるために、過剰なブレーキトルク(もし、あれば)を掛けることを実質的に防止することができる。理解されるように、(砂等の)比較的に抵抗力の大きな路面を走行しているとき、所望の減速度を得るために、正のパワートレイントルク129を加えることは十分ではなく、所望の減速レートを実現するために、走行路面の勾配に依存するが、ブレーキシステム22を用いてブレーキトルクを負荷するのではなく、正のパワートレイントルクの大きさを低減するだけで十分であることがある。すなわち許容可能な減速レートを実現するために、ブレーキシステム22によるブレーキトルクを負荷する必要がなく、エンジン・オーバーラン・ブレーキトルクと組み合わせて、砂路面から負荷される比較的に大きい抵抗力により、十分に車両を減速可能であることができる。ブレーキシステム22を用いて、または過剰にエンジンブレーキを用いて、ブレーキトルクを掛けることを防止することにより、1つまたはそれ以上の車輪の前方にある走行路面の変形に起因して、車両の急激な減速を実質的に防止することができる。
また機能ブロック12HDcは、パラメータ値(slope)を受信する。機能ブロック12HDcは、PI制御モジュール12cが走行路面の勾配に基づいて採用した比例積分フィードバックゲイン定数の値を調整するものである。理解されるように、フィードバックゲインは、平坦な路面を走行している場合に比して、下り坂を走行している場合に調整(増大)される。同様に、平坦な路面を走行しているときの値は、上り坂を走行しているときの値より大きい。これは、少なくとも部分的には、車両100が上り坂を走行しているとき、重力が車両の減速を支援し、車両100が下り坂を走行しているとき、重力が車両の減速に対抗することを支援するように作用するためである
理解されるように、いくつかの実施形態では、パワートレイン129は、発電機として動作可能な1つまたはそれ以上の電機マシンを有し、1つまたはそれ以上の電機マシンを用いて1つまたはそれ以上の車輪に負のトルクを負荷してもよい。いくつかの状況では、車両100が走行している速度に少なくとも部分的に依存して、エンジンブレーキを介して、負のトルクを負荷してもよい。推進モータとして動作可能な1つまたはそれ以上の電機マシンを有する場合、ドライバクタはLSP制御システム12が正のトルクを要求したとき、1つまたはそれ以上の電機マシンを用いて正のトルクを加えてもよい。
パワートレインコントローラ11およびABSコントローラ13は、車両車輪111〜115に加わる正味のトルクを制御する。必要とされる正または負のトルクを車輪に加えるために、車両制御ユニット(VCU)10は、パワートレイン129が正または負のトルクを車両車輪に加えるように指令し、および/またはブレーキシステム22がブレーキ力(制動力)を車両車輪に負荷するように指令し、パワートレインおよびブレーキシステムからのトルクの一方または両方を用いて、要求された車両速度を達成および維持するために必要なトルク変化を実現することができる。いくつかの実施形態では、車両速度を要求された速度に維持するために、たとえばトルクベクタリングにより、車両車輪に独立的にトルクを加える。択一的には、いくつかの実施形態では、たとえばトルクベクタリングができないようなドライブラインを有する車両において、要求された速度に維持するために、車両車輪に全体的にトルクを加えてもよい。いくつかの実施形態では、パワートレインコントローラ11は、後輪駆動ユニット、前輪駆動ユニット、ディファレンシャル、または他の任意の適当な構成部品等のドライブライン構成部品を制御することにより、1つまたはそれ以上の車輪に加わるトルクの大きさを制御するようにトルクベクタリングを実行できるものであってもよい。たとえばドライブライン130の1つまたはそれ以上の構成部品は、1つまたはそれ以上車輪に加わるトルクの大きさを調整できるように動作可能な1つまたはそれ以上クラッチを含んでもよい。
パワートレイン129は、1つまたはそれ以上の推進モータおよび/または発電機等の1つまたはそれ以上の電機マシンを含む場合、パワートレインコントローラ11は、1つまたはそれ以上の電機マシンを用いてトルクベクタリングを実行するために、1つまたはそれ以上の車輪に加わるトルクを調整するように動作可能である。
いくつかの実施形態では、LSP制御システム12は、車輪スリップ事象が起こったことを示す信号(wheel_slip、図3および図4では参照符号48で示す。)を受信する。この信号48は、車両のハイウェイ用クルーズ制御システム16に供給され、この場合、ハイウェイ用クルーズ制御システム16の動作を無効化モード(解除モード)または禁止モードを起動し、ハイウェイ用クルーズ制御システム16による車両速度の自動制御が中断または中止される。しかしながら、LSP制御システム12は、車輪スリップ事象を示す車輪スリップ事象信号48を受信しても、LSP制御を中断または中止することはない。むしろLSP制御システム12は、ドライバの作業負荷を軽減するために、車両スリップを監視し、継続的に制御するように構成されている。車輪スリップが生じている間、LSP制御システム12は、測定された車両速度をLSP設定速度値(LSP_set-speed)と比較し続け、車両速度を選択された速度に維持するために、(パワートレイン129およびブレーキシステム22を用いて)車両車輪に加わるトルクを自動的に制御し続ける。したがって、理解されるように、LSP制御システム12は、クルーズ制御システム16とは異なるように構成され、クルーズ制御システムでは、車輪スリップが起きると、クルーズ制御機能が無効化(解除)され、車両のマニュアル操作を再開する必要があり、または再開ボタン173Rまたは設定速度ボタン173を押下することにより、クルーズ制御システム16により速度制御を再開する必要がある。
本発明に係る別の実施形態(図示せず)では、車輪スリップ信号48は、複数の車輪の速度の比較により得られるだけでなく、路面に対する車両速度を示すセンサデータを用いてさらに精緻化される。路面に対する速度は、全地球測位(GPS)データを用いて、または車両100と走行中の路面との間の相対的な移動を特定するように構成された車両搭載レーダ/レーザ式システムを用いて決定することができる。いくつかの実施形態では、路面に対する速度を決定するためにカメラシステムを採用してもよい。
LSP制御プロセスの任意の段階において、ドライバは、アクセルペダル161および/またはブレーキペダル163を踏み込むことにより、LSP制御機能を無効化(解除)して、車両速度を正または負の方向に調整することができる。しかしながら、信号48により車輪スリップ事象が確認された場合、LSP制御システム12は、アクティブ状態(動作状態)を維持し、LSP制御システム12による車両速度の制御は、中止されない。図4に示すように、これは、車輪スリップ事象信号48をLSP制御システム12に出力することにより実現され、その後、車輪スリップ事象は、LSP制御システム12により制御される。本実施形態では、スタビリティ制御システム(SCS)14が車輪スリップ事象信号48を生成し、LSP制御システム12およびクルーズ制御システム16に出力する。いくつかの実施形態では、ABSコントローラ13が車輪スリップ事象信号48を生成する。他の構成も同様に有用である。
車両車輪のいずれか1つで牽引力損失が生じると、車輪スリップ事象が検出される。車両がたとえば雪、氷、泥、または砂の上を走行するとき、および/または急勾配もしくはキャンバの上を走行するとき、車輪およびタイヤは、牽引力を損失する傾向がより大きくなる。同様に、車両100は、通常のオンロード状況下にあるハイウェイ上を走行する場合に比して、地形がより不均一またはより滑りやすい別の環境において、牽引力を損失する傾向がより大きくなる。したがって本発明に係る実施形態は、車両100がオフロード環境で走行している場合、または車両スリップが頻繁に生じるような状況下で走行している場合に特に有利であることが確認された。こうした状況でのマニュアル操作は、ドライバにとって困難なものであり、しばしばストレスのかかる体験であり、不快なドライビングを強いるものである。
車両100は、車両の動きおよび状況に関連するさまざまな異なるパラメータを示す追加的なセンサ(図示せず)を有する。これらは、LSP制御システム12もしくはHDCシステム12HDに固有の慣性システムであってもよいし、あるいは車両本体の動きを示し、LSP制御システム12もしくはHDCシステム12HDに有用な入力信号を出力するジャイロおよび/または加速度計等のセンサからのデータを供給する乗員拘束システムもしくは任意の他のサブシステムの一部であってもよい。センサからの出力信号を用いて、車両100が走行している地形状況の性状を示す複数の運転状況指標(地形指標ともいう。)を計算することができる。
車両100に搭載されたセンサは、これに限定するものではないが、上記説明したような、車両制御ユニット(VCU)10に連続的なセンサ出力信号を供給するセンサ、周辺温度センサ、大気圧センサ、タイヤ圧センサ、ホイールアーティキュレーションセンサ、車両のヨー/ロール/ピッチの角度ならびに角速度を検出するジャイロセンサ、車両速度センサ、縦方向加速度センサ、エンジントルクセンサ(エンジントルク推定部)、操舵角センサ、操舵角速度センサ、勾配センサ(勾配推定部)、安定性制御システム(SCS)14の一部である横方向加速度センサ、ブレーキペダル位置センサ、ブレーキペダル圧力センサ、アクセルペダル位置センサ、縦方向/横方向/垂直方向モーションセンサ、および車両浸水走行支援システム(図示せず)の一部を構成する水検知センサが含まれる。他の実施形態では、上述のセンサから選択されたセンサのみが用いられる。
車両制御ユニット(VCU)10は、ステアリングコントローラ170Cからの信号を受信する。ステアリングコントローラ170Cは、電動パワーアシストステアリングユニット(ePASユニット)170Cの形態を有する。ステアリングコントローラ170Cは、車両100の操舵可能な道路車輪に加わる操舵力を示す信号を車両制御ユニット(VCU)10に出力する。この力は、ドライバが操舵ハンドルに加える力と、ePASユニット170Cにより生成される操舵力とを組み合わせたものに相当する。
車両制御ユニット(VCU)10は、さまざまなセンサ入力信号を評価して、車両のサブシステムに対して、数多くの異なる制御モード(駆動モード)のそれぞれが適当である確度(確からしさ)を決定し、各制御モードは、車両が走行している特定の地形タイプ(たとえば泥/轍、砂、草/砂利/雪)に対応する。
ドライバが自動駆動モード選択条件で車両の駆動モードを選択したとき、車両制御ユニット(VCU)10は、最も適した制御モードを選択し、選択した駆動モードに従って複数のサブシステムを自動的に制御するように構成されている。本発明のこの態様は、同時係属する英国特許出願第1111288.5号、第1211910.3号、および第1202427.9号に記載され、これらの開示内容は、ここに参考に一体のものとして統合される。
上述のように、(選択した駆動モードを参照して特定される)車両走行中の地形の性状を用いて、LSP制御システム12が車両速度の適当な増減を決定してもよい。たとえばドライバが車両走行中の地形の性状に適当でないLSP設定速度値(LSP_set-speed)を選択した場合、車両車輪の速度を低減することにより、自動的に車両速度を低減するように動作可能である。いくつかのケースでは、とりわけ起伏または凹凸の大きい路面では、たとえばドライバ設定速度が特定の地形タイプに対して実現不可能であるか、適当でない場合がある。LSP制御システム12がドライバ設定速度(LSP_set-speed)とは異なる設定速度を選択した場合、択一的な速度が適用されたことを示唆するために、LSP制御HMI20を介して、速度制限をドライバに視覚的に示す。
LSP制御システム12は、車両走行中の地形に基づいて、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値を決定する。すなわちLSP制御システム12は、地形に基づいて車両10を制御する最大速度を制限するように動作可能である。本発明の実施形態は、ドライバの介入を減らしつつ、ハイウェイ以外の状況で車両走行させるときの車両安定性を改善することができる。すなわちLSP制御システム12がLSP設定速度(LSP_set-speed)の最大許容可能値を決定して、これに応じて車両100の速度を制限するため、現在走行中の地形が許容する場合、ドライバ設定速度(user_set-speed)の値を低減させ、現在走行中の地形が許容する場合、ドライバ設定速度(user_set-speed)の値を増大させるように、ドライバが介入する必要がない。本実施形態において、ハイウェイ用クルーズ制御システムとは異なり、LSP制御システム12がアクティブ状態にある場合、LSP制御システムだけがLSP設定速度(LSP_set-speed)の値を計算するように動作可能である。
本実施形態において、LSP制御システム12は、車両に付随する数多くのパラメータに基づいて、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値を決定するように構成されている。LSP制御システム12は、車両目標速度の6つの値のうち最も小さい速度で車両を走行させる。すなわちLSP制御システム12は、車両目標速度の6つの値のうち最も小さい値にLSP設定速度(LSP_set-speed)を設定する。車両目標速度の値は、(a)ドライバ設定速度(user_set-speed)、(b)車両のピッチ加速度、ロール加速度、および上下加速度により設定される乗員興奮パラメータ(Psng_Excit)の値に基づいて計算された最大の車両速度(Psng_Excit_v)、(c)操舵角と車両速度に基づいて設定される最大の操舵角速度(steering_angle_v)、(d)路面側方勾配の値に基づいて設定される最大の側方勾配速度(sideslope_v)、(e)路面勾配の値に基づいて設定される最大の勾配速度(grad__v)、および(f)車両サスペンションアーティキュレーション(またはサスペンションワープとも呼ばれる)に基づいて設定される最大のワープ速度(speed warp_v)である。任意ではあるが、入力値は、車両が浸水走行しているか否かに依存して設定される最大車両速度を含んでもよい。いくつかの実施形態では、この最大車両速度は、車両が浸水している深さと液体に少なくとも部分的に依存して設定してもよい。他のパラメータも同様に有用である。他の速度値も同様に有用である。
乗員興奮パラメータ(Psng_Excit)の計算については、同時係属の英国特許出願第1314728.5号に記載されており、その内容は、ここに一体に参考として統合される。LSP制御システム12は、数多くの車両パラメータに相当する入力信号を受信するように構成されている。これらのパラメータは、(a)現時点の表面摩擦係数の車両基準値(これは、過剰なスリップを誘発する、車輪に加わるトルクの大きさ等の1つまたはそれ以上のパラメータに基づいて計算された値である。)、(b)現在選択されている車両運転モードに対応する予想される表面摩擦係数の値(これは、各運転モードに対して予め設定された値である。)、(c)操舵可能な道路車輪角または操舵ハンドル位置に対応する現時点の操舵角の値、(d)(加速度計の出力信号を参照して決定された)現時点の車両のヨーレート、(e)(同様に加速度計の出力信号を参照して決定された)現時点の横方向加速度の測定値、(f)(車両サスペンションアーティキュレーションを参照して決定された)現時点の路面凹凸の測定値、(g)(全地球測位システム(GPS)の出力信号を参照して決定された)現時点の車両位置、および(h)カメラシステムを用いて収集した情報である。上記列挙したものは、単なる具体例を示したものに過ぎず、これらに限定する意図はなく、追加的または択一的な他の入力信号も有用である。いくつかの実施形態では、上記(a)〜(h)の必ずしもすべての入力信号が受信されるわけではない。
カメラシステムを用いて得られた情報は、たとえば車両がオフロードレーンまたはオフロードトラック(路側帯、車道外側線)から逸脱しそうである判断された場合の警告を含んでもよい。いくつかの実施形態では、車両100の1つまたはそれ以上のサブシステム(任意的にはLSP制御システム12)は、乗員興奮パラメータ(Psng_Excit)の値に影響を与え得る車両前方の地形を検出するように構成してもよい。すなわちLSP制御システム12は、車両走行経路上の地形に関する1つまたはそれ以上の画像の分析に基づいて、車両前方にある地形により、乗員興奮に対して悪いまたは良い影響を与える事を予想することができる。すなわちLSP制御システム12は、乗員興奮パラメータ(Psng_Excit)の値を変更するか、あるいは車両が現時点の推進速度を維持したならば、乗員興奮パラメータ(Psng_Excit)の値の変化を予想して車両速度を調整してもよい。これは、上記説明した車両パラメータを参照した地形の評価とは対照的である。
理解されるように、車両が地形上を走行しているとき、ドライバ設定速度(user_set-speed)の値が、それ以外の5つの設定速度、すなわち操舵角速度(steering_angle_v)、側方勾配速度(sideslope_v)、勾配速度(grad__v)、ワープ速度(speed warp_v)、および乗員興奮車両速度(Psng_Excit_v)より小さいとき、LSP制御機能は、ドライバ設定速度(user_set-speed)の値と実質的に同じであるLSP設定速度(LSP_set-speed)の値に従って車両を駆動し続ける。過剰な車輪スリップ事象がなく、任意的には1つまたはそれ以上の他の条件が合致しない場合、車両10は、ドライバ設定速度(user_set-speed)に実質的に等しい速度で走行し続ける。ドライバは、上記説明した手法でドライバ設定速度値を増減させることができる。ただし、ドライバ設定速度値が他のパラメータ速度以下となれば、LSP制御システム12は、車両速度をさらなる増大を許容しない。たとえば地形が変化したことに起因して、その他のより小さいパラメータ速度値がドライバ設定速度値より小さくなった場合、LSP制御システム12は、LSP設定速度値をその他のより小さいパラメータ速度に設定することにより、その他のより小さいパラメータ速度まで車両速度を低減するように制御する。
いくつかの実施形態では、最大設定速度パラメータ(max_set_speed)が、最小化機能ブロック209に入力される6つのパラメータの中で、より小さい値と等しくなるように設定される。最大設定速度値(max_set_speed)は、LSP設定速度値(LSP_set-speed)として出力される。したがって最大設定速度値は、LSP制御システム12が車両速度を制御している間は常に、車両速度の上限に設定される。
その後(ドライバ設定速度値が最大設定速度値より大きい場合)、最大設定速度値(max_set_speed)が増大すると、LSP制御システム12は、車両速度がドライバ設定速度値(user_set-speed)まで、またはこれに向かって増大することを許容する。
本実施形態では、LSP制御システム12は、ドライバ設定速度値(user_set-speed)より小さい速度に従って車両を走行させ、後により大きくなることが許容された速度に従って車両を走行させ、いくつかの実施形態では、適当な視覚的たまは聴覚的な示唆を車両ドライバに与える。いくつかの実施形態では、LSP制御システム12は、より大きい速度が許容された場合、車両速度がより大きい速度に自動的に増大されるように動作可能である。
1つの実施形態では、LSP制御システム12は、車両100が勾配の頂上に到達した時点を検出するように動作可能であり、水平姿勢をとり始める。この状況は、クレスティング(頂上到達)と呼ばれる。車両100が頂上到達したと、LSP制御システム12が判断したとき、LSP設定速度値(LSP_set-speed)の値を一時的に小さくしてもよい(いくつかの実施形態では、最大設定速度値(max_set_speed)を小さくしてもよい)。この特徴は、(必要ならば)坂道および/またはボンネットすなわちフード等の車両の前方部分により見えなかった車両100の前方にある地形にドライバが慣れるための時間をドライバに与えることができるような速度に車両を減速させる点で、有利である。これは、車両100を運転するドライバの楽しさ、および車両の安定性を増大させるものである。理解されるように、いくつかの実施形態では、さらに大きい(すなわち最大の)頂上到達速度値(cresting_v)を6つの設定速度パラメータと比較して、7つの設定速度パラメータのうちのより小さい速度をLSP設定速度値(LSP_set-speed)に設定する。頂上到達速度値(cresting_v)は、頂上到達が検出されたときの現在状況に適した値に設定してもよい。たとえば車両ピッチ姿勢が、所定の値(たとえば15度を超える値)を超えるピッチアップ姿勢から、所定範囲の距離において、(たとえば)5度以上のピッチアップ姿勢を経過して、水平ピッチ姿勢に移動したとき、頂上到達が検出される。1秒間に平均3度のピッチ低下が、たとえば2〜4秒の所定期間継続すると、頂上到達の検出を起動するのに十分である。
いくつかの実施形態では、LSP制御システム12は、路面の勾配が所定値より大きい値から所定値より小さくなったとき、たとえば、所定距離または所定時間走行している間に、10度の勾配より大きい値から10度未満の勾配になったとき、頂上到達があったと判断してもよい。不必要に車両が減速することによりドライバに不便を与え得る頂上到達の誤検出の可能性を低減するために、2つまたはそれ以上のテストを組み合わせて、頂上到達の検出の確認を実行してもよい。理解されるように、勾配変化レート(勾配変化率)があまりにも小さい場合、車両が頂上到達していたとしても、いくつかの実施形態では、LSP制御システム12が頂上到達を検出しない場合がある。こうした状況では、ドライバは車両が推進中の車両前方の地形を確認するのに十分な時間を有するので、車両を減速させる必要ではない。いくつかの実施形態では、車両制御ユニット(VCU)10は、車両ピッチ姿勢に基づいて走行路面の勾配を判断するように構成してもよい。頂上到達によるピッチ姿勢の変化と路面凹凸によるピッチ姿勢の変化を特定するために、車両ピッチ姿勢に対応する信号を時間平均し、および/またはローパスフィルタにかけてもよい。
頂上到達が検出されて、車両が適当に減速されると、いくつかの実施形態では、所定の走行時間または走行距離において減速を実行してもよい。この走行時間または走行距離が経過すると、LSP制御システム12は、再び、頂上到達状況のモニタリングを再開してもよい。
LSP制御システム12は、車両姿勢が十分に水平であり、所定の走行時間または走行距離において水平であることを検出した場合、頂上到達速度値(cresting_v)(いくつかの実施形態では、最大設定速度値(max_set_speed))を自動的に増大させてもよい。
1つの実施形態では、LSP制御システム12は、車両姿勢の変化率が所定値より小さくなったとき、頂上到達状況を示すものであることを検出するように動作可能である。LSP制御システム12は、所定の時間が経過し、または所定の距離を走行したとき、頂上到達速度値(cresting_v)の増大を開始させてもよい。択一的には、LSP制御システム12は、頂上到達が検出されていない場合、頂上到達速度値(cresting_v)を無視するように構成してもよい。頂上到達速度値(cresting_v)が増大する(または無視される)前の遅延時間の特徴は、たとえば車両が起伏の大きい地形上を走行しており、頂上に到達した後、車両が坂道を下っていく場合、特に有用であり得る。LSP制御システム12は、車両安定性およびドライバ信頼性を改善するために、車両100が下り坂にあることが確認されるまで、抑制された頂上到達速度値(cresting_v)を維持してもよい。
いくつかの実施形態では、LSP制御システム12は、車両ピッチが下向き(ピッチダウン姿勢)であった後に増大したことを検出することにより、勾配の底に到達したことを検出するように構成してもよい。LSP制御システム12は、車両100が底に到達したことを検出したとき、勾配の変化に慣れる時間をドライバに与えるために、頂上到達速度値(cresting_v)を一時的に小さくするように構成してもよい。この特徴は、車両100が勾配の底に到達したとき、車両の下側部分と地形(路面)との間の接触に起因して車両が損傷を受けるリスクを低減するという利点を有する。他の構成も同様に有用である。
本発明に係る実施形態は、速度制御システムが動作している状態で車両が走行しているとき、最大許容可能な設定速度に自動的に低減することにより、車両安定性を改善する点で有用である。こうしてドライバの負荷が軽減され、ドライバの疲れが抑制される。同様に、車両安定性も改善される。
本実施形態において、LSP制御システム12は、図4を参照して上記説明したLSP設定速度と実質的に等しい実際の車両速度値(v_actual)(車両基準速度)を維持するために、閉ループフィードバック装置を実現するものである。閉ループフィードバック装置は、選択されたTRモードおよび車両100が走行している走行路面の勾配に依拠するように構成されている。
上述のとおり、車両制御ユニット(VCU)10は、頂上到達が検出されたとき、頂上到達速度値(cresting_v)を小さくするように構成されている。LSP設定速度(LSP_set-speed)を小さくするのに十分な程度で、頂上到達速度値(cresting_v)が小さくなった場合、LSP制御システム12は、車両速度値(v_actual)がLSP設定速度(LSP_set-speed)に向かって小さくなるように、パワートレイン129およびブレーキシステム22を制御する。こうした状況において、目標速度推移プロファイル機能ブロック12bは、頂上到達速度値(cresting_v)と実質的に等しい値まで車両速度値(v_actual)を低減するために、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)を反復的に求める。図4を参照して上記説明したように、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)は、PI制御モジュール12cに出力される。PI制御モジュールは、比例積分制御手法等を用いて、LSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)、およびパラメータ値(slope)に基づいて決定される比例ゲイン定数ならびに積分ゲインの値を特定する。すなわち、車両が頂上到達し、パラメータ値(slope)が変化したとき、比例ゲイン定数および積分ゲインの値が機能ブロック12bによって修正される。これらの値は、「勾配(slope)」が上り勾配から下り勾配に移行したとき、より大きくなるように構成され、「勾配(slope)」の値が下り坂方向でいっそう急峻なものとなるので、LSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)がより迅速に低減することになる。
同様に、車両が頂上到達した後、坂道を下り始めたとき、車両が所定距離または所定時間走行すると、頂上到達速度値(cresting_v)は、増大し始める。その後、LSP制御システム12は、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値に実質的に等しい速度まで車両を加速させるが、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値は、上述のとおり、ドライバ設定速度値(user_set-speed)、操舵角速度(steering_angle_v)、側方勾配速度(sideslope_v)、勾配速度(grad__v)、ワープ速度(speed warp_v)、および乗員興奮車両速度(Psng_Excit_v)のうちのより小さいものに設定される。目標速度推移プロファイル機能ブロック12bは、図4を参照して上記説明したように、選択されたTRモード、車両速度値(v_actual)、およびLSP設定速度(LSP_set-speed)に基づいて、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)を選択する。
理解されるように、車両100が小丘の頂上に到達し、小丘を下り始めたとき、選択されたTRモードに基づいて、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)の調整は、車両100が小丘の頂上に到達し、小丘を下り始めたとき、車両速度値(v_actual)がLSP設定速度(LSP_set-speed)を超えることを許容して、LSP制御システム12に従属するHDCシステム12HDがLSP設定速度(LSP_set-speed)に実質的に等しい速度に車両速度値(v_actual)を維持するために負荷するように指令されたブレーキトルクの大きさ(もしあれば)を小さくすることができるといった効果を有するように構成される。すなわち、LSP制御システム12または(LSP制御システム12に従属した)HDCシステム12HDが現時点のLSP目標設定速度値(LSP_V_T)またはHDC目標設定速度値(HDC_V_T)を実現または維持しようとする、現時点のLSP目標設定速度値(LSP_V_T)またはHDC目標設定速度値(HDC_V_T)がLSP設定速度(LSP_set-speed)(およびLSP設定速度に等しいHDC設定速度(HDC_set-speed))を超えることを許容する。現時点のLSP目標設定速度値(LSP_V_T)またはHDC目標設定速度値(HDC_V_T)がLSP設定速度(LSP_set-speed)(およびHDC設定速度(HDC_set-speed))を超えることが許容される大きさは、TRモードが砂モードである場合、それ以外のモードである場合より大きい。いくつかの実施形態では、TRモードが実質的に砂モードである場合に限り、小丘の頂上に到達した後、小丘を下り始めたとき、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)またはHDC目標設定速度値(HDC_V_T)は、LSP設定速度(LSP_set-speed)を超えることができる。
理解されるように、砂の上を下り走行するとき、車両100の車輪に負のトルクを負荷することは好ましいことではない。上述のように、これは、車輪が砂の中を掘り返す傾向があり、この効果は、車両減速時、前方を下方にして荷重が前のめりになった状況によって助長されるためである。これは、ブレーキシステム22により負のトルクが負荷されるレートを緩和することにより実現され、本実施形態では、PI制御モジュール12HDcの比例積分フィードバックゲイン値を低減することにより実現される。
いくつかの実施形態では、車両制御ユニット(VCU)10は、LSP制御システム12が、正のパワートレイントルクを加えるのではなく、惰性走行させることにより、実際の車両速度値(v_actual)をLSP設定速度(LSP_set-speed)に実質的に等しくなるまで増大させることができるように構成される。これを実現するために、本実施形態では、「勾配(slope)」の値が下り坂を示すとき、PI制御モジュール12HDcの比例積分フィードバックゲイン値は、比較的に小さい値に設定される。いくつかの実施形態では、
「勾配(slope)」の値が下り坂方向でいっそう急峻な値を示すので、実際の比例積分フィードバックゲイン値は、漸進的に増大するように構成されている。いくつかの実施形態では、実際の比例積分フィードバックゲイン値は、車両が下り坂方向でLSP設定速度(LSP_set-speed)に向かって加速するとき、正のトルクが実質的に加わらないような実質的に小さい値に設定される。
理解されるように、いくつかの実施形態では、TRモード信号を目標速度推移プロファイル機能ブロック12b、12HDbに供給することに代えて、またはこれに加えて、外力(drag_external)に起因する実際の抵抗力の大きさを示すパラメータを供給してもよい。目標速度推移プロファイル機能ブロック12b、12HDbは、抵抗力の大きさに加えて、またはこれに代えてTRモードに基づいて、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)、LSP目標設定加速度値(LSP_A_T)、HDC目標設定速度値(HDC_V_T)、およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)を特定するように構成してもよい。理解されるように、砂の上を走行することは、外力(drag_external)が比較的に大きい地形上を走行することに対応する。車両に加わる外力抵抗力を測定する手段は、広く知られている。
いくつかの状況において、車両100は、LSP設定速度(LSP_set-speed)より小さい速度で坂道を下り、LSP制御システム12は、車両100をLSP設定速度(LSP_set-speed)まで加速するために正のパワートレイン駆動トルクを与える必要がある。こうした状況において、いくつかの実施形態では、機能ブロック12b,12cは、実際の車両速度値(v_actual)がLSP設定速度(LSP_set-speed)に達する前に、LSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)をゼロのパワートレイン駆動トルクに実質的に相当する値に設定するように構成される。これは、実際の車両速度値(v_actual)により、LSP設定速度(LSP_set-speed)の過剰なオーバーシュート(超過速度)を防止するためであり、「勾配(slope)」および外力(drag_external)に基づいて実行される。この手法により、車両100は、1つまたはそれ以上の車輪にブレーキトルクを与える必要なく、坂道を下方へ走行することができる。ブレーキトルクを負荷すると、急激で不必要に大きい減速度で減速させ、車両安定性が損なわれる。理解されるように、LSP制御システム12は、大きな抵抗力が生じる地形に起因する車両100に掛かる抵抗力を用いて、車両が坂道を下るときの超過速度を制限することができる。超過速度が生じた場合、HDCシステム12HDは(HDC目標設定速度値(HDC_V_T)およびHDC設定加速度値(HDC_A_T)を適当に制御することにより)、より緩慢な手法でブレーキトルクを負荷するように構成される。
他の構成も同様に有用である。
これまで、測定された抵抗力に基づいて、砂の上を走行する車両に掛かる抵抗力を参照して説明してきたが、ゲインは、車両に掛かる抵抗力を検出する代わりに、選択された地形モードに基づいて設定可能であり、車両が「砂モード」にあることを特定し、これを特定することによりゲインを変更できることは明らかである。
本願に記載されたシステムおよび方法は、たとえば泥、雪、または湿った草の上を走行するときのように、異なる抵抗力を与えるさまざまな地形タイプに適用可能であることも同様に理解される。地形モードを特定することにより、ゲインを適当な値に設定することができる。理解されるように、測定された車両パラメータに基づいて地形モードを自動的に設定する場合、複数の車両パラメータのうちの1つとして車両に掛かる抵抗力を、制御システムへの入力信号として用いてもよい。ただし車両がドライバ選択による地形モードで走行しているとき、抵抗力を利用できない場合があり、その場合、ゲインは、ドライバ選択による地形応答モードに基づいて選択することができる。
本発明の実施形態は、砂等の抵抗力の大きい地形上で急激な過剰ブレーキを防止できるという利点を有する。本発明の実施形態によれば、特に、砂等の抵抗力が大きく、凹凸の大きい路面を走行するとき、車両安定性を大幅に改善することができる。
理解されるように、上記実施形態は単なる具体例として説明したものであり、本発明を限定することを意図したものではなく、本発明の範囲は添付クレームにより特定される。
以下の番号付けされた段落を参照することにより、本発明に係る実施形態を理解することができる。
段落1:
車両のための速度制御システムであって、
車両に適用された少なくとも1つの地形モードを示す信号および車両に掛かる抵抗力の大きさを示す信号を受信するための電気入力部を有する電子プロセッサと、
内部に指令を記憶した電子プロセッサに電気的に接続された電子メモリデバイスとを備え、
電子プロセッサは、電子メモリデバイスにアクセスして、記憶された指令を実行して、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを自動的に加えて、目標速度値に基づいて車両を走行させ、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えるように指令することにより、車両に適用された少なくとも1つの地形モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するように動作可能である、速度制御システム。
段落2:
電子プロセッサは、実際の車両速度が目標速度値より小さい場合、車両に掛かる抵抗力がより大きいほど、より大きい変化率で目標速度値に向かって車両を加速させる、段落1に記載の速度制御システム。
段落3:
電子プロセッサは、実際の車両速度が目標速度値より大きい場合、車両に掛かる抵抗力がより大きいほど、より小さな変化率で目標速度値に向かって車両を減速させる、段落1に記載の速度制御システム。
段落4:
第1の速度が目標速度値より小さい場合、速度/時間の推移に関連して記憶されたデータに基づいて、第1の速度から目標速度値まで車両を加速させるように構成され、
車両を加速する際に依拠される速度/時間の推移は、車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて特定される、段落2に記載の速度制御システム。
段落5:
第2の速度が目標速度値より大きい場合、速度/時間の推移に関連して記憶されたデータに基づいて、第2の速度から目標速度値まで車両を減速させるように構成され、
車両を減速する際に依拠される速度/時間の推移は、車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて特定される、段落3に記載の速度制御システム。
段落6:
車両に中間の瞬間的な目標速度を達成させて、車両速度を反復的に要求されたレートで目標速度に向かって変化させようとすることにより、反復的に目標速度に向かう車両速度の変化率を制御するように構成された、段落1に記載の速度制御システム。
段落7:
車両速度の変化率が所定の急激な変化値(ジャーク値)を超えないように車両速度の変化率を制御するように動作可能である、段落1に記載の速度制御システム。
段落8:
所定の急激な変化値は、車両に掛かる抵抗力の大きさに依存して設定される、段落7に記載の速度制御システム。
段落9:
車両が減速中の所定の急激な変化値は、抵抗力の大きさが小さいほど大きく、抵抗力の大きさが大きいほど小さい、段落8に記載の速度制御システム。
段落10:
車両が加速中の所定の急激な変化値は、抵抗力の大きさが大きいほど大きく、抵抗力の大きさが小さいほど小さい、段落8に記載の速度制御システム。
段落11:
車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報は、選択された車両の運転モードを少なくとも部分的に参照して求められる、段落1に記載の速度制御システム。
段落12:
運転モードは複数の運転モードのうちの1つであり、複数の車両サブシステムのそれぞれは、複数のサブシステム構成モードのうちの1つの構成モードで動作し、サブシステム構成モードは、選択された運転モードに基づいて特定される、段落11に記載の速度制御システム。
段落13:
サブシステムは、パワートレインサブシステム、ブレーキサブシステム、およびサスペンションサブシステムのうちの少なくとも1つを含む、段落12に記載の速度制御システム。
段落14:
車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報は、抵抗力パラメータ値を少なくとも部分的に参照して求め、抵抗力パラメータ値は、1つまたはそれ以上の車両動作パラメータを参照して特定される、段落1に記載の速度制御システム。
段落15:
電子プロセッサは、1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御するために、パワートレインコントローラおよびブレーキコントローラと通信するように構成された電子コントローラを有する、段落1に記載の速度制御システム。
段落16:
段落1に記載の速度制御システムを備えた車両。
段落17:
車両を制御する方法であって、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを自動的に加えて、目標速度値に基づいて車両を走行させるステップと、
1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御するステップと、
車両に適用された少なくとも1つの地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報を受信するステップと、
車両に適用された1つまたはそれ以上の地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するステップとを有する、方法。
段落18:
段落17に記載の方法を実現するように車両を制御するコンピュータ可読媒体を担持する担持媒体。
段落19:
段落17に記載の方法を実現するようにプロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラム製品。
段落20:
段落19に記載のコンピュータプログラム製品が記録されたコンピュータ可読媒体。
段落21:
段落17に記載の方法または段落19に記載のコンピュータプログラム製品を実現するように構成されたプロセッサ。
本願の明細書およびクレーム全体を通じて、「備える(comprise)」および「含む(contain)」の用語、ならびに「備える(comprising, comprises)」等の変形した用語は、「限定せずに有する(including but not limited to)」を意味し、他の分子、添加剤、部品、整数、またはステップを除外することを意図するものではない。
本願の明細書およびクレーム全体を通じて、文脈上必須でなければ、単数名詞は複数名詞を含むものとする。特に、不定冠詞を用いた場合、本願明細書は、文脈上必須でなければ、単数名詞だけでなく複数名詞をも含むものと理解されたい。
本発明に係る特別の態様、実施形態、または実施例に関する特徴物、整数、特性、化合物、化学的な部分またはグループは、矛盾するものでなければ、本願に記載された任意の他の態様、実施形態、または実施例に適用可能である理解されたい。
10…車両制御ユニット(VCU)、11…パワートレインコントローラ、12…低速推進(LSP)制御システム、12HD…ヒルディセント制御(HDC)システム、13…ブレーキコントローラ、14…スタビリティ制御システム(SCS)、16…クルーズ制御システム、18…クルーズ制御HMI(クルーズ制御ヒューマン・マシン・インターフェイス)、20…低速推進制御HMI(LSP制御HMI)、22…ブレーキシステム、28…コンパレータ、40…評価ユニット、100…車両、100C…シャーシ、111,112…前輪、114,115…後輪、118…ドライブシャフト、121…エンジン、124…オートマッチックトランスミッション(自動トランスミッション)、124S…トランスミッションモード・セレクタダイヤル、129…パワートレイン、130…ドライブライン、131…補助ドライブライン部、131P…動力伝達ユニット(PTU)、132…補助ドライブシャフトまたはプロペラシャフト、135…後輪ディファレンシャル、137…前輪ディファレンシャル、138…前輪ドライブシャフト、139…後輪ドライブシャフト、161…アクセルペダル、163…ブレーキペダル、170C…ステアリングコントローラ(ePASユニット)、171…操舵ハンドル、172…LSP制御システム選択ボタン、173…設定速度制御部、173R…再開ボタン、174…「+」ボタン、175…「−」ボタン、176…クルーズ制御システム選択ボタン。
(相互参照)
同時係属の英国特許出願公開第2499461号の開示内容は、ここに参考に一体のものとして統合される。米国特許第7,349,776号および国際特許出願第PCT/EP2013/053385号の開示内容は、ここに参考に一体のものとして統合される。英国特許出願公開第2492748号、第2492655号、および第2499252号の開示内容は、ここに参考に一体のものとして統合される。
(技術分野)
本発明は、車両の速度を制御するためのシステムに関する。とりわけ本発明は、これに限定するものではないが、多様な異質の極端な地形および状況で走行可能な陸上車両、特にオフロード車両の速度を制御するためのシステムに関する。
既知の車両速度制御システムにおいて、一般にはクルーズ制御システム(クルーズコントロールシステム)と呼ばれているが、ドライバの運転体感を改善するために、車両速度をドライバが一旦設定して、さらに介入しなければ、車両速度は一定に維持される。クルーズ制御速度(またはクルーズ設定速度)は、典型的には、車両が所望の速度に達すると車両ドライバがボタンを押下することにより設定可能である。クルーズ制御が設定されているときに、漸次的に速度を増減させるために、+ボタンまたは−ボタンが設けられている。
ドライバが維持すべき車両速度を選択すると、ドライバがブレーキまたはマニュアルトランスミッションを備えた車両ではクラッチを操作しなければ、車両の速度が維持される。クルーズ制御システムは、ドライブシャフト速度センサまたは車輪速度センサから速度信号を受信する。ブレーキペダルまたはクラッチペダルが踏み込まれると、クルーズ制御システムは非動作状態となり、ドライバはシステムからの反発を受けることなく、車両速度を変更することができる。クルーズ制御システムが動作状態にあるとき、ドライバがアクセルペダルを踏み込むと、車両速度は増大するが、ドライバがアクセルペダルから足を離すと、車両は事前設定されたクルーズ速度に戻る。
こうしたシステムは、通常、特定の速度以上(典型的には約15マイル/時〜約20マイル/時)であるときのみ動作可能であり、車両が安定した交通状況、特に、高速道路または自動車用道路で走行している環境において理想的なものである。しかし交通渋滞した状況では、車両速度は大きく変化し、クルーズ制御システムは、とりわけ最低速度条件を超えないため動作できない場合、有効なものではない。たとえば駐車時等の低速時の衝突の可能性を低減するために、最低速度条件がクルーズ制御システムに適用されることが多い。したがって、こうしたシステムは、特定の運転状況(低速走行時等)においては有効ではなく、クルーズ制御システムを適用することが好ましいとドライバが考えない状況においては、自動的に非動作状態に設定される。
より洗練されたクルーズ制御システムは、エンジン制御システム内に一体化され、レーダ方式システムを用いて、前方にある車両までの距離を考慮した適応型機能を有する。たとえば車両は、ドライバ入力を要することなく、前方にある車両の速度および距離を検知し、後続車両の安全な速度と距離を自動的に維持するような前方監視レーダシステムを備える。先行車両が減速した場合、またはレーダ検知システムが別の物体を検知した場合、こうしたシステムは、エンジンシステムまたはブレーキシステムに信号を送信し、それに応じて車両を減速させ、後続車両の安全な距離を維持する。
既知のシステムは、車両の車輪スリップ事象を検出し、トラクション制御システム(TCS:牽引力制御システム)またはスタビリティ制御システム(SCS)の介入を必要とする場合も同様に、速度制御を解除する。すなわち、これらのシステムは、こうしたスリップ事象が比較的に頻繁に生じるオフロード状況で走行しているとき、車両の推進を維持する上であまり適当ではない。
いくつかの車両は、ハイウェイ以外の路面上を走行するのに適しており、凹凸のある地形上で車両の推進を維持するために、低速クルーズ制御を実行することが好ましい。ハイウェイ以外の状況において、クルーズ制御により、ドライバ、特に未熟なドライバが操舵ハンドル操作等の運転作業に集中させることができる。
こうした背景技術に鑑み、本発明は考案された。本発明に係る実施形態は、上記課題に対処する装置、方法、または車両を提供する。本発明に係る他の目的および利点は、以下の明細書、クレーム、および図面から明らかとなる。
1つまたはそれ以上の車両サブシステムを制御するための動力車両用の制御システムを提供することが知られている。米国特許第7,349,776号には、エンジン制御システム、トランスミッションコントローラ、ステアリング(操舵ハンドル)コントローラ、ブレーキコントローラ、およびサスペンションコントローラを含む複数のサブシステムコントローラを備えた車両制御システムが開示されている。こうしたサブシステムコントローラはそれぞれ、複数のサブシステム機能モードまたはサブシステム構成モードで動作可能である。サブシステムコントローラは車両モードコントローラに接続され、車両モードコントローラは、車両のための数多くの運転モードを提供するために、サブシステムコントローラが要求機能モードを実行するように車両モードコントローラを制御する。各運転モードは、特定の1つの運転条件または一連の運転条件に対応し、それぞれの運転モードで、各サブシステムコントローラは、こうした条件に最も適した機能モードに設定される。こうした条件は、車両が走行する地形タイプ、たとえば草/砂利/雪モード、泥/轍モード、岩徐行モード、砂モード、および「特別プログラムオフ(SPO)」モードに関連付けられる。車両モードコントローラは、地形応答(TR、登録商標)システムもしくは地形応答コントローラと呼ばれることがある。また運転モードは、地形モード、地形応答モード、または制御モードと呼ばれることがある。
英国特許出願公開第2499461号明細書
米国特許第7,349,776号明細書
国際特許出願第PCT/EP2013/053385号パンフレット
英国特許出願公開第2492748号明細書
英国特許出願公開第2492655号明細書
英国特許出願公開第2499252号明細書
保護を求める本発明に係る第1の態様によれば、車両の速度制御システムが提供され、この速度制御システムは、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えて、目標速度値(v_target)に基づいて車両を走行させる手段と、
1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御する手段と、
車両に適用された少なくとも1つの地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報を受信する手段とを備え、
車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に適用された少なくとも1つの地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するように構成される。
車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に適用された地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するように構成してもよい。
車両に適用された地形応答モードは、車両の測定されたパラメータを参照して自動的に特定されるように構成される。
車両に適用された地形応答モードは、地形応答モードセレクタを介して特定されるように構成される。
理解されるように、いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを自動的に加えることにより、車両速度の変化率を制御する前記手段は、必要に応じて、たとえば現時点の車両速度を維持したいが、車両速度を維持する上で反対向きの外力が作用する場合、または車両を加速することが要求されている場合、正のトルクを加え、たとえば重力等の車両を加速させる外力が存在する中で現時点の車両速度を維持し、または車両を減速することが要求されている場合、負のトルクを加えるように構成される。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御する前記手段は、必要に応じて、1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを実質的に同時に加えるように構成してもよい。
以下の明細書から理解されるように、オフロード走行に適した車両は、これに適用され得る数多くの地形応答モードを有し、各地形応答モードは、特定の地形タイプに適した車両構成または制御手法に対応する。地形タイプは、砂モード、泥/轍モード、氷モード、草/砂利/雪モード、浸水モード、および「特別プログラムオフ(SPO)」モードとも呼ばれる通常モードを含んでもよい。
以下の明細書から理解されるように、地形応答モードは、ヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)または地形応答モードセレクタを介してドライバにより設定することができ、走行中の地形タイプまたは走行しようとしている地形タイプをドライバがHMIおよびモードセレクタを用いて入力することができる。択一的には、車両は複数の車両パラメータセンサを有し、任意的には環境センサを有し、コントローラは、これらのセンサからの信号を分析して、車両走行中の地形タイプを特定するように構成され、現在の地形タイプ上の走行のために車両を自動的に適用するものである。
本発明に係る実施形態は、車両に掛かる抵抗力が比較的に大きい地形上を走行している車両の1つまたはそれ以上の車輪に加えるトルクと、車両に掛かる抵抗力が比較的に小さい地形上を走行している車両の車輪に加えるトルクとを互いに異なる手法で制御するように速度制御システムが構成される点において、利点を有する。その結果、いくつかの実施形態では、抵抗力が比較的に大きい地形上で車両が十分な推進力を与えないというリスクを低減することができる。さらに、車両性能および操作特性が車両に掛かる抵抗力の大きさに影響されるので、車両安定性を改善することができる。抵抗力の大きさまたは選択された地形モードを参酌することにより、車両速度の変化率を制御するとき、車両をより快適にかつ予想可能に運転することができる。
理解されるように、比較的に小さい抵抗力に比して、比較的に大きい抵抗力が車両に掛かる場合、特に、坂道上の困難な走行を試みている場合、比較的に大きい加速度(加速レート)が必要とされることがある。たとえば、車両が比較的に平坦で水平な路面ではあるが、砂等の比較的に大きい抵抗力が車両に掛かる路面上を走行している場合、および車両が砂丘の側面等の勾配を登り始めた場合、パワートレイントルクを増大させなければ、車両の減速度(減速レート)は比較的に大きくなる。こうした状況において、車両が砂丘を登り始めるとき、車両速度は目標速度より小さくなり始め、車両が砂丘上で十分に推進できないことを回避するために、比較的に大きな加速度を車両に与えるようにパワートレインを制御する。こうした状況は、車両車輪が比較的に大きくスリップする泥だらけの丘を上っていく場合も同様に生じる。
同様に、いくつかの状況において、車両が砂丘の頂上に到達して、砂丘を下り始めたとき、目標速度をオーバーシュートまたはオーバーラン(超過)することを防止するために、1つまたはそれ以上の車輪に負のトルクを付加する必要が生じる。しかし、砂等の抵抗力が比較的に大きい路面を走行しており、特に、勾配を下っているときにブレーキを掛けると、車両推進を突然に停止させ、車両安定性を損なう場合がある。少なくとも地形が砂である場合、負のトルクが車輪に加わったとき、1つまたはそれ以上の車輪が地形路面の中に沈み込んで、車両が立ち往生することがある。したがって、乾いたアスファルト等の異なる路面上を走行するときに加えられる制動トルクに比して、勾配を下るときに車両を減速させるためには、所与の時間、1つまたはそれ以上の車輪に加わる制動トルクを小さくするように構成してもよい。いくつかの実施形態では、実質的制動トルクを掛けない。むしろ地形に起因して車両に掛かる抵抗力を用いて減速させる。
保護を求める本発明に係る態様によれば、車両の速度制御システムが提供され、この速度制御システムは、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを自動的に加えて、目標速度値(v_target)に基づいて車両を走行させる手段と、
車両に掛かる抵抗力の大きさおよび/または車両に適用された地形モード関する情報を受信する手段と、
車両の最大加速度および車両の最大加速度変化率のうちから選択された少なくとも一方を、前記情報に基づいて自動的に調整する手段とを備える。
任意的には、目標速度値に基づいて車両を自動的に走行させる手段は、目標速度値に基づいて車両を自動的に走行させるように構成された電子コントローラを含む。
前記情報に基づいて目標速度値を自動的に調整する前記手段は、目標速度値を自動的に調整する信号を出力するように構成された電子コントローラを含む。
理解されるように、コントローラは、複数のコンピュータデバイス、および電子制御ユニット等を有する。すなわち添付クレームの範疇に含まれる本発明に係る実施形態は、本発明により要求される機能が複数のコントローラ間で通信する制御システムを有する。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、車両の速度制御システムが提供され、この速度制御システムは、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えて、目標速度値(v_target)に基づいて車両を走行させる手段と、
1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御する手段と、
車両に適用された1つまたはそれ以上の地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報を受信する手段とを備え、
車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に適用された少なくとも1つの地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するように構成される。
理解されるように、1つまたはそれ以上の地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報は、地形応答モードおよび抵抗力大きさのうちの一方または両方を示す情報またはデータである。
択一的には、実際の車両速度(v_actual)が目標速度値(v_target)より小さい場合、車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に掛かる抵抗力が大きいほど、目標速度値(v_target)に向かってより大きい加速度で車両を加速させるように構成される。
さらに択一的には、実際の車両速度(v_actual)が目標速度値(v_target)より大きい場合、車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に掛かる抵抗力が大きいほど、目標速度値(v_target)に向かってより小さい加速度で車両を加速させるように構成される。
第1の速度が目標速度値(v_actual)より小さい場合、制御システムは、速度/時間の推移に関連して記憶されたデータに基づいて、第1の速度から目標速度値(v_target)まで車両を加速させるように構成され、車両を加速する際に依拠される速度/時間の推移は、車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて特定される。
第2の速度が目標速度値(v_actual)より大きい場合、制御システムは、速度/時間の推移に関連して記憶されたデータに基づいて、第2の速度から目標速度値(v_target)まで車両を減速させるように構成され、車両を加速する際に依拠される速度/時間の推移は、車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて特定される。
任意的には、制御システムは、車両に中間の瞬間的な目標速度(i-v_target)を達成させて、車両速度(i-v_target)を反復的に要求されたレートで目標速度値(v_actual)に向かって変化させようとすることにより、反復的に目標速度に向かう車両速度の変化率(v_actual)を制御するように構成される。
任意的には、制御システムは、車両速度の変化率が所定の急激な変化値(ジャーク値)を超えないように車両速度の変化率を制御するように構成される。
任意的には、所定の急激な変化値は、車両に掛かる抵抗力の大きさに依存して設定される。
任意的には、車両が減速中の所定の急激な変化値は、抵抗力の大きさが小さいほど大きく、抵抗力の大きさが大きいほど小さい。
制御システムは、車両が加速中の所定の急激な変化値は、抵抗力の大きさが大きいほど大きく、抵抗力の大きさが小さいほど小さくなるように構成される。
任意的には、車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報は、選択された車両の運転モードを少なくとも部分的に参照して求められる。
車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報は、選択された車両の運転モードを示すデータである。
任意的には、運転モードは複数の運転モードのうちの1つであり、複数の車両サブシステムのそれぞれは、複数のサブシステム構成モードのうちの1つの構成モードで動作し、サブシステム構成モードは、選択された運転モードに基づいて特定される。
任意的には、サブシステムは、パワートレインサブシステム、ブレーキサブシステム、およびサスペンションサブシステムのうちの少なくとも1つを含む。
さらに任意的には、車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報は、抵抗力パラメータ値を少なくとも部分的に参照して求め、抵抗力パラメータ値は、1つまたはそれ以上の車両動作パラメータを参照して特定される。
任意的には、1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御する前記手段は、パワートレインコントローラおよびブレーキコントローラと通信するように構成された電子コントローラを有する。
任意的には、電子コントローラは、車両が目標速度値(v_target)に従って走行するように、車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを自動的に加える手段を有する。
任意的には、電子コントローラは、車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報を受信する手段を有する。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、別の態様による速度制御システムを備えた車両が提供される。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、車両を制御する方法が提供され、この方法は、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを自動的に加えて、目標速度値(v_target)に基づいて車両を走行させるステップと、
1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御するステップと、
車両に適用された少なくとも1つの地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報を受信するステップと、
車両に適用された1つまたはそれ以上の地形応答モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するステップとを有する。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、車両の速度制御システムが提供され、この速度制御システムは、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えて、目標速度値に基づいて車両を走行させる手段と、
1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御する手段と、
車両に適用された少なくとも1つの地形応答モードおよび走行路面から車両に加わる抵抗力の大きさに関する情報を受信する手段とを備え、
車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に適用された少なくとも1つの地形応答モードおよび走行路面から車両に加わる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するように構成される。
速度制御システムは、
車両の1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えて、目標速度値に基づいて車両を走行させる手段と、
1つまたはそれ以上の車輪に正および負のトルクを加えることにより、車両速度の変化率を制御する手段と、
車両に適用された少なくとも1つの地形モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに関する情報を受信する手段とを備え、
車両速度の変化率を制御する前記手段は、車両に適用された少なくとも1つの地形モードおよび車両に掛かる抵抗力の大きさに少なくとも部分的に基づいて車両速度の変化率を制御するように構成される。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、別の態様による方法を実現するように車両を制御するコンピュータ可読媒体を担持する担持媒体が提供される。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、別の態様による方法を実現するようにプロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラム製品が提供される。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、別の態様によるコンピュータプログラム製品が記録されたコンピュータ可読媒体が提供される。
保護を求める本発明に係る1つの態様によれば、クレーム19に記載の方法または別の態様によるコンピュータプログラム製品を実現するように構成されたプロセッサが提供される。
本願の範疇において、上記段落、クレーム、および/または以下の明細書および図面に記載された、さまざまな態様、実施形態、実施例、および択一例、特に個々の特徴物は、独立してまたは組み合わせて採用することができる。たとえば1つの実施形態に関連して説明された特徴物は、その特徴物が矛盾するものでなければ、すべての実施形態に適用することができる。
添付図面を参照しながら、単なる具体例を用いて、本発明について以下説明する。
本発明に係る実施形態による車両の概略的な平面図である。
図1に示す車両の側面図である。
本発明に係る実施形態による、クルーズ制御システムおよび低速推進制御システムを含む車両速度制御システムの相当レベルの概略的なブロック図である。
図3に示す車両速度制御システムのさらなる特徴を示す概略的なブロック図である。
本発明に係る実施形態による車両の操舵ハンドル、ブレーキペダル、アクセルペダルを示す。
車両速度の増大が要求された場合において、異なる地形モードのための目標設定速度の時間的推移を概略的に示すグラフである。
車両速度の低減が要求された場合において、異なる地形モードのための目標設定速度の時間的推移を概略的に示すグラフである。
機能ブロック等のブロックには、1つまたはそれ以上の入力信号に呼応した出力信号で特定される機能または操作を実行するソフトウェアコードが含まれるものと理解されたい。ソフトウェアコードは、メインコンピュータプログラムで読み出されるソフトウェアルーチンもしくはソフトウェア機能の形態を有するもの、またはソフトウェアコードのフローの一部を構成する独立したソフトウェアルーチンもしくはソフトウェア機能の形態を有するものであってもよい。ブロックを参照すると、本発明に係る実施形態による処理方法を簡便に説明することができる。
図1は、本発明に係る実施形態による車両100を示す。車両100は、オートマッチックトランスミッション(自動トランスミッション)124を含むドライブライン130に接続されたエンジンを有するパワートレイン129を備える。理解されるように、本発明に係る実施形態は、同様に、マニュアルトランスミッション、無段階トランスミッション、または他の任意の適当なトランスミッションでの利用に適している。
図1の実施形態において、トランスミッション124は、トランスミッションモード・セレクタダイヤル124Sを用いて、パーキングモード、バックモード(後退モード)、ニュートラルモード、ドライブモード、もしくはスポーツモード等の複数のトランスミッション動作モードのうちの1つの操作モードに設定することができる。セレクタダイヤル124Sは、パワートレインコントローラ11に信号を出力し、その出力信号に呼応するようにパワートレインコントローラは、選択されたトランスミッションモードに従って、トランスミッション124を動作させる。
ドライブライン130は、前輪ディファレンシャル137および一対のドライブシャフト118を介して、車両の一対の前輪111,112を駆動するように構成されている。同様に、ドライブライン130は、補助ドライブライン部131を備え、補助ドライブライン部は、補助ドライブシャフトまたはプロペラシャフト132、後輪ディファレンシャル135および一対の後輪ドライブシャフト139を介して、一対の後輪114,115を駆動するように構成されている。
本発明に係る実施形態は、一対の前輪もしくは一対の後輪のみを駆動するように構成されたトランスミッションを有する車両(すなわち前輪駆動車両もしくは後輪駆動車両)、または2輪駆動/4輪駆動を選択できる車両に用いられるのに適している。図1の実施形態では、トランスミッション124は、動力伝達ユニット(PTU)131Pを介して、補助ドライブライン部131に着脱可能に接続可能であり、補助ドライブライン部は2輪駆動モードまたは4輪駆動モードでの動作を可能にするものである。理解されるように、本発明に係る実施形態は、たとえば3輪車両もしくは4輪車両の2つの車輪のみを駆動する車両または4輪以上の車輪を駆動する車両等、4輪以上の車輪を有する車両または2輪のみを駆動する車両に適する。
車両エンジン121の制御システムは、中央コントローラ10(車両制御ユニット(VCU)10という。)、パワートレインコントローラ11、ブレーキコントローラ13(アンチロックブレーキシステム(ABS)コントローラ)、およびステアリングコントローラ170Cを有する。ABSコントローラ13、ブレーキシステム22(図3)の一部を構成する。車両制御ユニット(VCU)10は、車両に搭載されたさまざまなサブシステム(図示せず)との間で、数多くの信号を通信(入出力)する。車両制御ユニット10は、図3に示す低速推進(LSP)制御システム12、スタビリティ制御システム(SCS)14、クルーズ制御システム16、およびヒルディセント制御(HDC)システム12HDを有する。スタビリティ制御システム14は、牽引力の損失を検出して調整することにより車両100の安全性を向上させるものである。牽引力または操舵制御機能の低減が検出されると、スタビリティ制御システム(SCS)14は、車両の1つまたはそれ以上の車輪にブレーキトルクを加えて、ドライバが走行させようしている方向に車両を操舵することを支援するために、ブレーキコントローラ13に自動的に指令するように動作可能である。図示された実施形態では、スタビリティ制御システム(SCS)14は、車両制御ユニット(VCU)10により実現される。いくつかの択一的な実施形態では、スタビリティ制御システム(SCS)14は、ABSコントローラ13により実現されてもよい。
図3には詳細には図示されていないが、車両制御ユニット(VCU)10は、トラクション制御(TC:牽引力制御)機能ブロックを有する。この牽引力制御(TC)機能ブロックは、車両制御ユニット(VCU)10のコンピュータデバイスにより実行されるソフトウェアコードとして実現される。ABSコントローラ13およびTC機能ブロックは、車輪スリップ事象が生じた場合のTCアクティビティ(動作)、ABSアクティビティ、個々の車輪に対するブレーキ介入動作、およびエンジン121に対する車両制御ユニット(VCU)10からのエンジントルク要求を示す信号を出力する。上述の各動作事象は、車輪スリップ事象が生じたことを示す。いくつかの実施形態では、ABSコントローラ13は、TC機能ブロックを実現する。ロールスタビリティ制御システム等の他の車両サブシステムも同様に有用である。
上述のように、車両100は、車両が25km/hを超える速度で走行しているときに選択された速度で車両速度を自動的に維持するように動作可能なクルーズ制御システム16を有する。クルーズ制御システム16は、クルーズ制御HMI(クルーズ制御ヒューマン・マシン・インターフェイス)18を有し、これを用いてドライバは、既知の手法によりクルーズ制御システム16に目標車両速度を入力することができる。本発明に係る1つの実施形態では、クルーズ制御システム16の入力制御部は、操舵ハンドル171に実装されている(図5)。クルーズ制御システム16は、クルーズ制御システム選択ボタン176を押下することによりスイッチオンする(スイッチを入れて作動させる)ことができる。クルーズ制御システム16を作動させ、「設定速度」制御部173を押下すると、現時点での車両速度がクルーズ制御設定速度パラメータの現在値に設定される。「+」ボタン174を押下すると、クルーズ設定速度(cruise_set-speed)の値を増大させ、「−」ボタン175を押下すると、クルーズ設定速度を低減させることができる。再開ボタン173Rを用いて、ドライバがクルーズ制御システム16を解除した後、クルーズ制御システム16がクルーズ設定速度の現在値で速度制御を再開させるようにクルーズ制御システム16を制御することができる。
理解されるように、本発明に係るクルーズ制御システム16を備えた既知のハイウェイ用クルーズ制御システムは、ブレーキペダルまたは、マニュアルトランスミッションを備えた車両の場合にはクラッチペダルをドライバが踏み込んだとき、クルーズ制御システム16による車両速度の制御は中断され、車両100は、マニュアル動作モードに戻り、車両速度を維持するためにはドライバによるアクセルペダルまたはブレーキペダルの入力を必要とする。さらに、牽引力の損失に起因して、車輪のスリップ事象が検出されると、クルーズ制御システム16による車両速度の制御は中断される。その後にドライバが再開ボタン173Rを押下すると、クルーズ制御システム16による速度制御が再開される。
クルーズ制御システム16は、車両速度をモニタ(監視)し、目標車両速度からの逸脱が自動的に調整されるため、車両速度を実質的に一定の値(典型的には25km/hを超える速度)に維持する。換言すると、クルーズ制御システム16は、25km/h未満の速度では機能しない。クルーズ制御HMI18は、その視覚的ディスプレイを介して、クルーズ制御システム16の状態についてドライバに警告を与えるように構成されている。本実施形態では、クルーズ制御システム16は、クルーズ設定速度(cruise_set-speed)の値を25〜150km/hの範囲で設定できるように構成されている。
低速推進(LSP)制御システム12は、速度に依存した制御システムをドライバに提供し、ドライバは極めて遅い目標速度を選択することができ、その速度でドライバによるペダル入力を必要とすることなく、車両を推進させることができる。25km/h以上の速度でのみ動作するハイウェイ用クルーズ制御システムは、低速の速度制御機能(すなわち低速推進(LSP)制御機能)を有しない。
本実施形態では、低速推進(LSP)制御システム12は、操舵ハンドル171上に実装されたヒルディセント制御(HDC)システムの選択ボタン177を所定時間より短い時間(他の値も有用であるが、本実施形態では所定期間は3秒間)押下した後、「+設定」ボタン174を押下することにより起動することができる。いくつかの実施形態では、LSP制御システム専用の選択ボタンを操舵ハンドル171上に実装し、これを用いて低速推進(LSP)制御システム12を起動する。このシステムは、車両100の1つまたはそれ以上の車輪に対して、パワートレイン制御、トラクション制御、およびブレーキ制御を選択的に実行するように動作可能である。
低速推進(LSP)制御システム12は、これに対するドライバ設定速度の所望の設定速度パラメータを、ドライバがLSP制御HMI20(図1および図3)を介して入力できるように構成されており、LSP制御HMIは、特定の入力ボタン173〜175を、クルーズ制御システム16およびヒルディセント制御(HDC)システム12HDと共用する。車両速度がLSP制御システム12の許容動作範囲(他の範囲も同様に有用であるが、2km/h〜30km/h)内に入り、LSP制御システム12による制御において車両速度に対する他の制約がなければ、LSP制御システム12は、LSP設定速度(cruise_set-speed)の値に基づいて車両速度を制御する。クルーズ制御システム16とは異なり、LSP制御システム12は、牽引力事象の発生とは無関係に動作するように構成される。すなわちLSP制御システム12は、車輪スリップを検出しても速度制御を中断しない。むしろLSP制御システム12は、車輪スリップが検出されたとき、車両の挙動を積極的に調整するものである。
LSP制御HMI20は、ドライバが容易にアクセスできるように、車室(車両キャビン)内に設けられている。車両100のドライバは、LSP制御HMI20を介して、クルーズ制御システム16と同様の「+」/「−」ボタンを用いて、ドライバ所望の車両の走行速度(以下、「目標速度」という。)の指示をLSP制御システム12に入力することができる。LSP制御HMI20は、視覚的ディスプレイを有し、その視覚的ディスプレイ上で、LSP制御システム12の状態に関する情報およびガイダンスをドライバに提供することができる。
LSP制御HMI20は、ドライバがブレーキペダル163を用いてブレーキ力を加えた程度を示す入力信号をブレーキシステム22のABSコントローラ13から受信する。同様に、LSP制御システム12は、ドライバがアクセルペダル161を踏み込んだ程度を示す入力信号をアクセルペダル161から受信し、トランスミッションすなわちギアボックス124からの入力信号を受信する。後者の入力信号は、たとえばギアボックス124の出力シャフトの速度を示す信号、トルクコンバータのスリップの大きさ、および要求されたギア速度比であってもよい。LSP制御システム12に対する他の入力信号は、クルーズ制御システム16の状態(オン/オフ)を示すクルーズ制御HMI18からの入力信号、およびLSP制御HMI20からの入力信号を含んでもよい。
ヒルディセント制御(HDC)システム12HDは、動作状態にあるとき、ドライバにより設定可能なHDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)の設定速度に相当する値に車両速度を制限するために、ブレーキシステム22を制御する。HDC設定速度(HDC_set-speed)は、HDC目標速度と呼んでもよい。HDCシステム12HDが動作状態にあるとき、ドライバがアクセルペダル161を踏み込むことにより、HDCシステム12HDを解除(無効化)させない場合、HDCシステム12HDは、車両速度がHDC設定速度を超えないように、ブレーキシステム22(図3)を制御する。本実施形態では、HDCシステム12HDは、正の駆動トルクを加えるように動作しない。むしろHDCシステム12HDは、ブレーキシステム22を介して、負のブレーキトルクを負荷するようにのみ動作可能である。
ヒルディセント制御(HDC)システム12HDは、そのヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)20HDを用いて、HDC設定速度を設定することを含め、ドライバによるHDCシステム12の制御を可能にするものである。HDCシステム選択ボタン177を所定時間以上(上述のように本実施形態では3秒間)押下することにより、HDCシステムを起動することができる。
上記説明したように、HDCシステム12HDは、クルーズ制御システム16および低速推進(LSP)制御システム12と同一の制御部を用いて、HDC設定速度パラメータ(HDC_set-speed)の値を設定し、調整することができるように動作可能である。すなわち、本実施形態では、HDCシステム12HDが車両速度を制御するとき、HDCシステムの設定速度を増減させ、クルーズ制御システム16およびLSP制御システム12の設定速度と同様に、同一の制御ボタン173,173R,174,175を用いて、現時点の車両速度をHDC目標速度に設定することができる。HDCシステム12HDは、HDC設定速度(HDC_set-speed)の値を2〜30km/hの範囲で設定するように動作可能である。
車両100が50km/h以下の速度で走行しているとき、HDCシステム12HDが選択され、他の速度制御システムが動作していない場合、HDCシステム12HDは、HDC設定速度(HDC_set-speed)の値を参照テーブルから選択した値に設定する。参照テーブルで出力される値は、現在選択されているトランスミッションギアの同一性(アイデンティ)、現在選択されているPTUギア比(Hi/Lo)、および現在選択されている動作モードに依存して決定される。ドライバがアクセルペダル161を踏み込むことによりHDCシステム12HDを解除(無効化)させない場合、HDCシステム12HDは、パワートレイン12および/またはブレーキシステム22を用いて(図4の信号42を介して)、HDCシステムの設定速度まで車両100を減速させる。理解されるように、HDCシステム12HDは、パワートレイン129を制御して、たとえばエンジン・オーバーラン・ブレーキにより、1つまたはそれ以上の車輪に負のトルクを負荷してもよいが、車輪に正のトルクを与えることはない。
実際の車両速度(v_actual)が設定速度値(HDC_set-speed)を超えたとき、HDCシステム12HDは、最大許容可能レートを超えない減速レート(減速度)で、設定速度値まで車両100を減速させるように構成されている。このレートは、本実施形態では、1.25m/s2に設定されるが、他の値も同様に有用である。その後、ドライバが「設定速度」ボタン173を押下すると、HDCシステム12HDは、現時点の速度が30km/h以下であるならば、設定速度値(HDC_set-speed)を現時点の速度に設定する。
(HDCシステム12HDおよびLSP制御システム12がスイッチオフされているとき、HDC選択ボタン177を所定時間以上押下することにより)HDCシステム12HDが選択され、車両100が50km/hを超える速度で走行しているとき、HDCシステム12HDは、その選択要求を無視(拒否)し、ドライバにその選択要求が無視されたことを通知する。
理解されるように、車両制御ユニット(VCU)10は、上述したタイプの既知の地形応答システム(TR、登録商標)を実現するように構成され、車両制御ユニット10は、1つまたはそれ以上の車両システムまたはパワートレインコントローラ11等の車両サブシステムの設定値を、選択された運転モードに依存して制御する。運転モードは、運転モードセレクタ141S(図1)を用いてドライバにより選択される。運転モードとは、地形モード、地形応答モード、または制御モードを意味することがある。
図1の実施形態では、走行面と自動車の車輪との間の表面摩擦係数が比較的に大きい、比較的硬く滑らかな路面上を走行するのに適した「ハイウェイ」運転モード、砂地形上を走行するのに適した「砂」モード、(走行面と自動車の車輪との間の表面摩擦係数が比較的に小さく)比較的に滑りやすい草、砂利または雪の上を走行するのに適した「草/砂利/雪(GGS)」運転モード、岩肌の多い表面の上をゆっくり走行するのに適した「岩徐行(RC)」運転モード、および泥または轍のある地形を走行するのに適した「泥/轍(MR)」運転モードを含む4つの運転モードが提供される。追加的または択一的な他の運転モードが提供されてもよい。いくつかの実施形態では、運転モードセレクタ141Sは、ドライバが「自動運転モード選択状態」を選択することを可能にし、車両制御ユニット(VCU)10は、詳細後述するように、最も適当な運転モードを自動的に選択することができる。いくつかの実施形態では、ハイウェイ運転モードは、標準的な運転モード、すなわち規定の運転モードに相当するものであるので、「特別プログラムオフ(SPO)」と呼ばれ、ハイウェイ運転モードでは、表面摩擦係数が比較的に小さいこと、または凹凸の大きい路面であること等の特別なファクタを考慮する必要がない。
いくつかの実施形態では、本実施形態を含め、LSP制御システム12は、所与の瞬間において、アクティブ状態(動作状態)、スタンバイ状態、およびオフ状態(非動作状態)のうちのいずれか1つの状態にある。LSP制御システム12は、アクティブ状態にあるとき、パワートレインのトルクとブレーキシステムのトルクを制御することにより、車両速度を能動的に(積極的に)制御する。LSP制御システム12は、スタンバイ状態にあるとき、ドライバが再開ボタン173Rまたは「設定」ボタン173を押下するまで、車両速度を制御しない。LSP制御システム12は、オフ状態にあるとき、入力制御信号に対して応答しない。
本実施形態において、LSP制御システム12は、中間モードまたは中間状態を実行するように動作可能であり、中間モードは、アクティブモードに類似するが、パワートレイン129が車両100の1つまたはそれ以上の車輪に正の駆動トルクを加えるように指令しない状態である。すなわちブレーキシステム22および/またはパワートレイン129を用いて、ブレーキトルク(制動トルク)のみが負荷される。本実施形態において、HDC制御システム12HDにより車両速度を制御させることにより、中間モードは実行され、このとき設定速度値(HDC_set-speed)は、LSP設定速度値(LSP_set-speed)に実質的に等しくなるように設定される。他の構成も同様に有用である。
LSP制御システム12がアクティブ状態にあるとき、ドライバは「+」および「−」ボタン174,175を用いて車両設定速度を増減させることができる。さらにドライバは、アクセルペダル161またはブレーキペダル163を軽く踏み込むことにより、車両設定速度を増減させることができる。いくつかの実施形態では、LSP制御システム12がアクティブ状態にあるとき、「+」および「−」ボタン174,175をオフ状態にし、アクセルペダル161およびブレーキペダル163のみを用いて、LSP設定速度の値を調整することができる。この後者の特徴によれば、たとえば「+」および「−」ボタン174,175を偶発的に押下したことにより、設定速度を意図せず変更することを回避することができる。ボタンの偶発的な押下は、たとえば険しい(困難な)地形上を運転していて、比較的に大きな操舵角で頻繁に操舵する必要がある場合に起こり得る。他の構成も同様に有用である。
理解されるように、本実施形態において、LSP制御システム12は、2km/h〜30km/hの範囲の設定速度値に従って車両を走行させるように動作可能であり、クルーズ制御システムは、25km/h〜150km/hの範囲の設定速度値に従って車両を走行させるように動作可能である。ただし他の値も同様に有用である。車両速度が30km/hより大きく、実質的に50km/h以下であるときにLSP制御システム12が選択された場合、LSP制御システム12は中間モードを実行する。中間モードにおいて、30km/hを超える速度で走行中、ドライバがアクセルペダル161から足を離したとき、LSP制御システム12は、ブレーキシステム22を用いて、パラメータの値(LSP_set-speed)に相当する速度値まで車両100を徐々に減速させる。車両速度が30km/h以下となったとき、LSP制御システム12は、アクティブ状態となり、LSP設定速度値(LSP_set-speed)に従って車両を制御するために、パワートレイン129を介して正の駆動トルクを加えるとともに、パワートレイン129(エンジンブレーキ)およびブレーキシステム22を介して制動トルクを加える。LSP制御システム12が選択され、LSP設定速度値が設定されていない場合、LSP制御システム12は、スタンバイモードを実行し、「+設定」ボタン174が押下されるとアクティブ状態に移行する。いくつかの実施形態では、車両速度が30km/hより大きく、実質的に50km/h以下であるときにLSP制御システム12が選択された場合、LSP制御システム12は、ドライバがアクセルペダル161を踏み込むか、LSP制御システム12をスイッチオフさせることにより、LSP制御システム12を中断(解除)するまで、ブレーキシステム22を用いて、車両を30km/hまで減速させ、30km/hを超えないようにする。
理解されるように、LSP制御システム12がアクティブモード(動作モード)にあるとき、クルーズ制御システム16の動作は禁止される。すなわちLSP制御システム12およびクルーズ制御システム16は、互いに独立して動作し、常時、車両が走行している速度に依存して、一方のみを動作させることができる。
本実施形態では、上述のように、クルーズ制御HMI18およびLSP制御HMI20は、同一のハードウェアを用いて構成され、選択速度は同一のハードウェアを用いて入力される。
図4は、LSP制御システム12がアクティブモードにあるとき、車両速度を制御する手法を示す。LSP制御システム12は、アクティブモードにあるとき、パワートレイン129により加えられる正のLSPパワートレイントルク(LSP_PT_TQ)の大きさを決定し、正のLSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)の値をパワートレインコントローラ11に送信することにより、その正の駆動トルクを出力する。LSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)は、TC機能ブロックを介してパワートレインコントローラ11に送信してもよく、TC機能ブロックは、走行中の車輪に生じたスリップの大きさに基づいてLSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)を調整してもよい。すなわちTC機能ブロックは、過剰なスリップが生じた場合、パワートレインコントローラ11に出力されるLSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)を低減してもよい。
LSP制御システム12がアクティブモードにあるとき、ブレーキシステム22により負荷されるLSP制動トルク(LSP_BRK_TQ)の大きさは、ヒルディセント制御(HDC)システム12HDがアクティブモードにある場合、LSP制御システム12に「従属」するHDCシステム12HDにより決定される。HDCシステム12HDは、ゼロでないLSP制動トルク(LSP_BRK_TQ)のトルク値をABSコントローラ13に送信することにより、その制動トルクを出力する。理解されるように、ドライバがブレーキペダルとアクセルペダルの両方を踏み込む「2−ペダリング」を自動制御において、LSP制御システム12は、HDCシステム12HDにゼロでないLSP制動トルク(LSP_BRK_TQ)を出力させ、正の(または負の)LSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)を加えるように指令する。
図4に示すように、LSP制御システム12は、HDCシステム選択ボタンが現時点で押下されたか否かを示す「HDCボタン信号(HDC_button)」、プラス設定信号ボタン174が現時点で押下されたか否かを示す「プラス設定信号(Set_plus)」、および再開ボタン173Rが現時点で押下されたか否かを示す「再開ボタン信号(Resume_button)」を含む信号を受信する入力機能ブロック12aを有する。
図4の実施形態において、HDC選択ボタン177が3秒未満の間押下され、LSP制御システムがアクティブ状態でなく、HDC選択ボタン177を離した後「+設定」ボタンが3秒以内押下された場合、LSP制御システム12は、アクティブ状態となり、必要とされる正のパワートレイントルクの付加を指令するように構成される。他の時間も同様に有用である。
LSP制御システム12の入力機能ブロック12aは、HDCシステム12HDの対応する入力機能ブロック12HDaと通信するように構成されている。LSP制御システム12がアクティブモードに移行すると、LSP制御システムの入力機能ブロック12aは、LSP制御システム12がアクティブ状態にあることを示すLSPアクティブ信号(LSP_active)をHDCシステム12HDに送信する。LSP制御システム12がアクティブ状態にあるとき、HDCシステム12HDは、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値をHDC設定速度(HDC_set-speed)の値に設定し、LSP制御システム12に対する従属モードで動作するように構成される。すなわちHDCシステム12HDは、LSP制御システム12によりブレーキトルクを負荷するように指令を受けたとき、ABSコントローラ13による制動トルクの負荷を指令するように動作可能である。
LSP制御システム12およびHDCシステム12HDのいずれもアクティブ状態になく、HDC選択ボタン177が3秒以上押下されたとき、HDCシステム12HDはアクティブ状態になる。こうした状況では、HDCシステム12HDは、LSP制御システム12に従属せず、LSP制御システム12は非動作状態のままである。
LSP制御システム12およびHDCシステム12HDのいずれか一方がアクティブ状態にあり、HDC選択ボタンが3秒未満の時間押下されたとき、アクティブ状態にあるシステム12,12HDが非アクティブ状態になる。
上述のように、HDC設定速度(HDC_set-speed)は、LSP制御システムがアクティブ状態にあるとき、LSP設定速度(LSP_set-speed)と等しく設定されるが、HDCシステム12HDは、車両速度がHDC設定速度(HDC_set-speed)を超えないように制動トルクを負荷するように動作可能であるが、正のパワートレイントルクを与えるように動作可能ではない。
HDCシステム入力機能ブロック12HDaは、LSP制御システム12の目標速度推移プロファイル機能ブロック12b、およびHDCシステム12HDの目標速度推移プロファイル機能ブロック12HDbにLSP設定速度(LSP_set-speed)の値を出力するように構成されている。車両が実質的に静止した状態で、LSP制御システム12が起動された場合、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値は、LSP制御システム12が車両100を駆動する際の最低値に設定される。本実施形態では、この速度は実質的に2km/hである。2km/h以外の他の速度も同様に有用である。
車両100が走行しているときに、LSP制御システム12を起動した場合、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値を、車両制御ユニット(VCU)10が特定したその瞬間の車両速度(v_actual)に設定してもよい。
また機能ブロック12bは、車両100が現時点で動作している運転モード(すなわち地形モード)を示すTRモード信号、および車両制御ユニット(VCU)10が特定した車両100の路面上の瞬間車両速度を示す信号(v_actual)を入力信号として受信する。
機能ブロック12bは、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)を特定するように構成され、LSP目標設定速度値およびLSP目標設定加速度値は、それぞれ車両100の要求された走行速度および現在の速度に対して要求された加速度である。機能ブロック12bは、LSP設定速度(LSP_set-speed)、TRモード、および瞬間車両速度(v_actual)の値を入力信号として受信する。各パラメータの値を参照テーブルに入力して、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)を求める。LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)のパラメータ値は、比例積分(PI)制御モジュール12cに入力され、パワートレインコントローラ11に出力されるLSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)を求める。機能ブロック12bは、そのメモリ内に記憶された目標速度推移プロファイルに従って、目標速度がLSP設定速度(LSP_set-speed)に徐々に接近して等しくなるように、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)を制御する。
PI制御モジュール12cは、パワートレイン129により出力される現時点でのトルク値(PT_trq)、車両100の現時点での実際の加速度に相当するパラメータ値(A_actual)、および車両100が走行している坂道の勾配に相当するパラメータ値(「スロープ」、”slope”)を入力信号として受信する。理解されるように、パラメータ値(A_actual)は、車両100が加速しているか、減速しているかに依存して正または負の値となる。パラメータ値(slope)パラメータ値は、比例的なフィードバックゲイン値および積分フィードバックゲイン値を調整するために用いられるが、車両100が坂道を上っているか、下っているかに依存して正または負の値となる。
理解されるように、本実施形態では、車両が坂道を上っている場合、パワートレイントルクの増大が要求されるときのLSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)の増大レートが、車両が平坦な路面を走行しているときの増大レートより大きくなるように、フィードバックゲイン値は調整される。車両が坂道を上っていて、パワートレイントルクの低減が要求される場合、LSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)が低減するレートは、車両が平坦な路面を走行しているときの低減レートより小さい。これは、ブレーキシステム22による制動トルクが負荷されなくても、重力が車両速度を低減するように作用し、車両100が平坦な路面上を走行していた場合に比してより大きいレートで車両速度が低減するためである。
すなわち機能ブロック12bは、車両100が走行路面によって必要とされる牽引力の大きさを参酌するが、機能ブロック12cは、車両100が走行している地形の勾配を参酌するものである。理解されるように、車両が砂モードであること、すなわち比較的に大きな牽引力を要する地形上を走行していることをTRモード信号が示すとき、実際の車両速度(v_actual)がLSP設定速度(LSP_set-speed)を下回るので、LSP制御システム12は、パワートレイントルク値が比較的に迅速に増大するように構成される。
LSP制御システム12は、要求された正のパワートレイントルクを与える。理解されるように、LSP制御システム12がアクティブ状態であるとき、たとえば車両100を減速させ、もしくは加速度を小さくするために、車両100の1つまたはそれ以上の車輪に制動トルクを負荷する必要がある場合、ブレーキシステム22を介してブレーキトルクを与えるように、HDCシステム12HDがブレーキコントローラ13に指令する。
図6は、機能ブロック12bが記憶する速度プロファイルを示し、これは、LSP目標設定速度(LSP_target-speed)より小さい実際速度(v_actual)からLSP目標設定速度まで車両を加速するために必要な場合に用いられる。プロットP1は、車両100が砂モード(TRモード=砂モード)であるときに用いられる速度プロファイルであり、プロットP2は、車両がSPOモードであるときに用いられる速度プロファイルである。プロットP1の最大勾配S1は、プロットP2の最大勾配S2より大きい。これは、砂等の牽引力が比較的に大きい路面上を走行する場合、車両が坂道を上っているとき、車両速度が比較的に迅速に低下するためであり、車両が坂道を上り始めたとき、地形による車両100に掛かる比較的に大きい抵抗力に起因して、車両速度がゼロとなるまで小さくならないようにすることは重要であるためである。
加速レート(加速度)の急激な変化(ジャーク:急な動き)に起因した乗客の不快感を回避または少なくとも抑制するため、LSP制御システム12は、車両100の加速度の変化率(LSP_A_T)が所定の最大値を超えないように、これを制限する。加速度の変化率(LSP_A_T)は、TRモードに基づいて設定され、車両が砂の上を走行するときに掛かる抵抗力は、乾燥したアスファルトのハイウェイ路面の上を走行するときに掛かる抵抗力より大きいので、TRモードが砂モードである場合の加速度変化率は、TRモードがSPOモードである場合の加速度変化率よりも大きい。さらに加速度変化率(LSP_A_T)は、TRモードの値に基づいて決定された、安定状態の加速度が得られるように制御される。車両が立ち往生して、地形上を十分に推進することができないリスクを低減するために、低抵抗のアスファルト路面に比較して、砂等の高抵抗の路面に対する安定状態の加速度はより大きくなる。
HDC制御システム12HDを参照すると、このシステム12HDは、LSP制御システム12の機能ブロック12bと同様の機能ブロック12HDbを有し、機能ブロック12HDbは、TRモード信号(TR_mode)、現時点の実際速度信号(v_actual)、および現時点の実際加速度信号(A_actual)を受信する。機能ブロック12HDbは、TRモード信号(TR_mode)、実際速度信号(v_actual)、および実際加速度信号(A_actual)に基づき、参照テーブルに参照して、パラメータ(HDC_V_T)およびパラメータ(HDC_A_T)の現時点の値を決定し、これらのパラメータ値をPI制御モジュール12HDcに出力するように構成されている。パラメータ(HDC_V_T)の値は、車両100の要求された現在の目標速度に対応し、パラメータ(HDC_A_T)の値は、車両100の現在の目標減速度に対応する。機能ブロック12HDbは、そのメモリ内に記憶された目標速度推移プロファイルに従って、目標速度がHDC設定速度(HDC_set-speed)に徐々に接近して等しくなるように、値(HDCVxTgt Traj)および値(HDC_A_T)を制御する。
値(HDC_A_T)は、車両の加速度の最大許容可能な変化率(最大ジャーク値という。)を超えないように制御され、乾燥したアスファルトに比較して砂等の高抵抗の路面上を走行する場合、すなわち抵抗力の増大に起因して車輪に加わる駆動トルクが小さくなる場合、車両がより迅速に減速するため、TRモードが砂モードである場合の値(HDC_A_T)の最大許容される値は、TRモードがSPOモードである場合の値(HDC_A_T)の最大許容される値より小さい。さらに値(HDC_A_T)は、TRモードの値に基づいて決定された、安定状態の減速度が得られるように制御される。車輪により移動した砂が車輪の前に蓄積し、車両の安定性を低減する急激な減速度が生じるリスクを低減するため、低抵抗のアスファルト路面に比較して、砂等の高抵抗の路面に対する安定状態の減速度はより小さくなるように構成されている。
値(HDC_A_T)および値(HDC_V_T)は、比例積分(PI)制御モジュール12HDcに入力され、PI制御モジュールは、ABSコントローラ13に出力されるHDC制動トルク(HDC_BRK_TQ)の値を生成する。
PI制御モジュール12HDcは、入力値として、ブレーキシステム22により出力される現時点でのブレーキトルク(BRK_trq)に相当する値とともに、現時点の実際加速度値(A_actual)および坂道の勾配値(slope)を受信する。理解されるように、実際加速度値(A_actual)は、車両100が加速しているか、または減速しているかに依存して、正または負の値となる。走行路面の勾配に基づいて、勾配値(slope)を用いて、PI制御モジュール12HDc比例的なフィードバックゲインの値および積分フィードバックゲインの値を調整する。
図7は、HDC制御システム12HDのメモリ内に記憶された3つの目標速度推移プロファイル(減速プロファイルともいう。)に基づく時間の関数として、意図したHDC目標設定速度値(HDC_V_T)を示すグラフである。プロファイルP1は、車両制御ユニット(VCU)10が特別プログラムオフ(SPO)すなわちハイウェイ運転モード(オンロード走行用の運転モード)で動作しているとき、HDC制御システム12HDが選択したものである。このモードにおいて、TRモードはSPOモードである。
プロファイルP2は、車両制御ユニット(VCU)10がGGS運転モードで動作しているとき、HDC制御システム12HDが選択したものである。このモードにおいて、TRモードはGGSモードである。
プロファイルP3は、車両制御ユニット(VCU)10が「砂」運転モードで動作しているとき、HDC制御システム12HDが選択したものである。このモードにおいて、TRモードは砂モードである。
図示されているように、TRモードがSPOモードであるときの目標速度推移プロファイルの最大勾配S1は、TRモードがGGSモードであるときの目標速度推移プロファイルの最大勾配S2より急峻であり、最大勾配S2は、TRモードが砂モードであるときの目標速度推移プロファイルの最大勾配S3より急峻である。勾配S1とS2の差異は、少なくとも部分的には、車両車輪と湿った草の路面との間の表面摩擦係数が、車両車輪と乾燥したアスファルトの路面との間の表面摩擦係数より小さいものと予想されるためである。すなわちHDC制御システム12HDは、1つまたはそれ以上の車輪が過剰にスリップするリスクを低減するために、SPOモードと比較して、GGSモードで走行する場合、最大許容可能な減速レートを低減するように構成されている。さらに、減速度の最大許容可能な変化率も同様に制限される。プロファイルP3の減速度の最大許容可能な変化率は、GGSモードと比較すると砂モードでより小さく、車両がSPOモードで走行する場合に許容される値より小さい。理解されるように、砂モードで走行する車両が受ける抵抗力がより大きいために、走行路面に埋もれそうな1つまたはそれ以上の車両車輪に掛けるブレーキトルクを最小のものとすることができる。これは、少なくとも部分的には減速時の車両前方部が最も低くなるためである。車輪が走行路面に埋まってしまうと、大きな減速度が生じ、最終的には車両が立ち往生することになり、地形上を推進する機能が著しく損なわれる。したがって、車両速度をLSP設定速度値(LSP_set-speed)に近づけるように減速させる必要があり、これをHDC制御システム12HDが許容する車両の最大許容可能な減速レート(減速度)を低減することにより、HDC制御システム12HDは、車両速度を減速させるために、過剰なブレーキトルク(もし、あれば)を掛けることを実質的に防止することができる。理解されるように、(砂等の)比較的に抵抗力の大きな路面を走行しているとき、所望の減速度を得るために、正のパワートレイントルク129を加えることは十分ではなく、所望の減速レートを実現するために、走行路面の勾配に依存するが、ブレーキシステム22を用いてブレーキトルクを負荷するのではなく、正のパワートレイントルクの大きさを低減するだけで十分であることがある。すなわち許容可能な減速レートを実現するために、ブレーキシステム22によるブレーキトルクを負荷する必要がなく、エンジン・オーバーラン・ブレーキトルクと組み合わせて、砂路面から負荷される比較的に大きい抵抗力により、十分に車両を減速可能であることができる。ブレーキシステム22を用いて、または過剰にエンジンブレーキを用いて、ブレーキトルクを掛けることを防止することにより、1つまたはそれ以上の車輪の前方にある走行路面の変形に起因して、車両の急激な減速を実質的に防止することができる。
また機能ブロック12HDcは、パラメータ値(slope)を受信する。機能ブロック12HDcは、PI制御モジュール12cが走行路面の勾配に基づいて採用した比例積分フィードバックゲイン定数の値を調整するものである。理解されるように、フィードバックゲインは、平坦な路面を走行している場合に比して、下り坂を走行している場合に調整(増大)される。同様に、平坦な路面を走行しているときの値は、上り坂を走行しているときの値より大きい。これは、少なくとも部分的には、車両100が上り坂を走行しているとき、重力が車両の減速を支援し、車両100が下り坂を走行しているとき、重力が車両の減速に対抗することを支援するように作用するためである
理解されるように、いくつかの実施形態では、パワートレイン129は、発電機として動作可能な1つまたはそれ以上の電機マシンを有し、1つまたはそれ以上の電機マシンを用いて1つまたはそれ以上の車輪に負のトルクを負荷してもよい。いくつかの状況では、車両100が走行している速度に少なくとも部分的に依存して、エンジンブレーキを介して、負のトルクを負荷してもよい。推進モータとして動作可能な1つまたはそれ以上の電機マシンを有する場合、ドライバクタはLSP制御システム12が正のトルクを要求したとき、1つまたはそれ以上の電機マシンを用いて正のトルクを加えてもよい。
パワートレインコントローラ11およびABSコントローラ13は、車両車輪111〜115に加わる正味のトルクを制御する。必要とされる正または負のトルクを車輪に加えるために、車両制御ユニット(VCU)10は、パワートレイン129が正または負のトルクを車両車輪に加えるように指令し、および/またはブレーキシステム22がブレーキ力(制動力)を車両車輪に負荷するように指令し、パワートレインおよびブレーキシステムからのトルクの一方または両方を用いて、要求された車両速度を達成および維持するために必要なトルク変化を実現することができる。いくつかの実施形態では、車両速度を要求された速度に維持するために、たとえばトルクベクタリングにより、車両車輪に独立的にトルクを加える。択一的には、いくつかの実施形態では、たとえばトルクベクタリングができないようなドライブラインを有する車両において、要求された速度に維持するために、車両車輪に全体的にトルクを加えてもよい。いくつかの実施形態では、パワートレインコントローラ11は、後輪駆動ユニット、前輪駆動ユニット、ディファレンシャル、または他の任意の適当な構成部品等のドライブライン構成部品を制御することにより、1つまたはそれ以上の車輪に加わるトルクの大きさを制御するようにトルクベクタリングを実行できるものであってもよい。たとえばドライブライン130の1つまたはそれ以上の構成部品は、1つまたはそれ以上車輪に加わるトルクの大きさを調整できるように動作可能な1つまたはそれ以上クラッチを含んでもよい。
パワートレイン129は、1つまたはそれ以上の推進モータおよび/または発電機等の1つまたはそれ以上の電機マシンを含む場合、パワートレインコントローラ11は、1つまたはそれ以上の電機マシンを用いてトルクベクタリングを実行するために、1つまたはそれ以上の車輪に加わるトルクを調整するように動作可能である。
いくつかの実施形態では、LSP制御システム12は、車輪スリップ事象が起こったことを示す信号(wheel_slip、図3および図4では参照符号48で示す。)を受信する。この信号48は、車両のハイウェイ用クルーズ制御システム16に供給され、この場合、ハイウェイ用クルーズ制御システム16の動作を無効化モード(解除モード)または禁止モードを起動し、ハイウェイ用クルーズ制御システム16による車両速度の自動制御が中断または中止される。しかしながら、LSP制御システム12は、車輪スリップ事象を示す車輪スリップ事象信号48を受信しても、LSP制御を中断または中止することはない。むしろLSP制御システム12は、ドライバの作業負荷を軽減するために、車両スリップを監視し、継続的に制御するように構成されている。車輪スリップが生じている間、LSP制御システム12は、測定された車両速度をLSP設定速度値(LSP_set-speed)と比較し続け、車両速度を選択された速度に維持するために、(パワートレイン129およびブレーキシステム22を用いて)車両車輪に加わるトルクを自動的に制御し続ける。したがって、理解されるように、LSP制御システム12は、クルーズ制御システム16とは異なるように構成され、クルーズ制御システムでは、車輪スリップが起きると、クルーズ制御機能が無効化(解除)され、車両のマニュアル操作を再開する必要があり、または再開ボタン173Rまたは設定速度ボタン173を押下することにより、クルーズ制御システム16により速度制御を再開する必要がある。
本発明に係る別の実施形態(図示せず)では、車輪スリップ信号48は、複数の車輪の速度の比較により得られるだけでなく、路面に対する車両速度を示すセンサデータを用いてさらに精緻化される。路面に対する速度は、全地球測位(GPS)データを用いて、または車両100と走行中の路面との間の相対的な移動を特定するように構成された車両搭載レーダ/レーザ式システムを用いて決定することができる。いくつかの実施形態では、路面に対する速度を決定するためにカメラシステムを採用してもよい。
LSP制御プロセスの任意の段階において、ドライバは、アクセルペダル161および/またはブレーキペダル163を踏み込むことにより、LSP制御機能を無効化(解除)して、車両速度を正または負の方向に調整することができる。しかしながら、信号48により車輪スリップ事象が確認された場合、LSP制御システム12は、アクティブ状態(動作状態)を維持し、LSP制御システム12による車両速度の制御は、中止されない。図4に示すように、これは、車輪スリップ事象信号48をLSP制御システム12に出力することにより実現され、その後、車輪スリップ事象は、LSP制御システム12により制御される。本実施形態では、スタビリティ制御システム(SCS)14が車輪スリップ事象信号48を生成し、LSP制御システム12およびクルーズ制御システム16に出力する。いくつかの実施形態では、ABSコントローラ13が車輪スリップ事象信号48を生成する。他の構成も同様に有用である。
車両車輪のいずれか1つで牽引力損失が生じると、車輪スリップ事象が検出される。車両がたとえば雪、氷、泥、または砂の上を走行するとき、および/または急勾配もしくはキャンバの上を走行するとき、車輪およびタイヤは、牽引力を損失する傾向がより大きくなる。同様に、車両100は、通常のオンロード状況下にあるハイウェイ上を走行する場合に比して、地形がより不均一またはより滑りやすい別の環境において、牽引力を損失する傾向がより大きくなる。したがって本発明に係る実施形態は、車両100がオフロード環境で走行している場合、または車両スリップが頻繁に生じるような状況下で走行している場合に特に有利であることが確認された。こうした状況でのマニュアル操作は、ドライバにとって困難なものであり、しばしばストレスのかかる体験であり、不快なドライビングを強いるものである。
車両100は、車両の動きおよび状況に関連するさまざまな異なるパラメータを示す追加的なセンサ(図示せず)を有する。これらは、LSP制御システム12もしくはHDCシステム12HDに固有の慣性システムであってもよいし、あるいは車両本体の動きを示し、LSP制御システム12もしくはHDCシステム12HDに有用な入力信号を出力するジャイロおよび/または加速度計等のセンサからのデータを供給する乗員拘束システムもしくは任意の他のサブシステムの一部であってもよい。センサからの出力信号を用いて、車両100が走行している地形状況の性状を示す複数の運転状況指標(地形指標ともいう。)を計算することができる。
車両100に搭載されたセンサは、これに限定するものではないが、上記説明したような、車両制御ユニット(VCU)10に連続的なセンサ出力信号を供給するセンサ、周辺温度センサ、大気圧センサ、タイヤ圧センサ、ホイールアーティキュレーションセンサ、車両のヨー/ロール/ピッチの角度ならびに角速度を検出するジャイロセンサ、車両速度センサ、縦方向加速度センサ、エンジントルクセンサ(エンジントルク推定部)、操舵角センサ、操舵角速度センサ、勾配センサ(勾配推定部)、安定性制御システム(SCS)14の一部である横方向加速度センサ、ブレーキペダル位置センサ、ブレーキペダル圧力センサ、アクセルペダル位置センサ、縦方向/横方向/垂直方向モーションセンサ、および車両浸水走行支援システム(図示せず)の一部を構成する水検知センサが含まれる。他の実施形態では、上述のセンサから選択されたセンサのみが用いられる。
車両制御ユニット(VCU)10は、ステアリングコントローラ170Cからの信号を受信する。ステアリングコントローラ170Cは、電動パワーアシストステアリングユニット(ePASユニット)170Cの形態を有する。ステアリングコントローラ170Cは、車両100の操舵可能な道路車輪に加わる操舵力を示す信号を車両制御ユニット(VCU)10に出力する。この力は、ドライバが操舵ハンドルに加える力と、ePASユニット170Cにより生成される操舵力とを組み合わせたものに相当する。
車両制御ユニット(VCU)10は、さまざまなセンサ入力信号を評価して、車両のサブシステムに対して、数多くの異なる制御モード(駆動モード)のそれぞれが適当である確度(確からしさ)を決定し、各制御モードは、車両が走行している特定の地形タイプ(たとえば泥/轍、砂、草/砂利/雪)に対応する。
ドライバが自動駆動モード選択条件で車両の駆動モードを選択したとき、車両制御ユニット(VCU)10は、最も適した制御モードを選択し、選択した駆動モードに従って複数のサブシステムを自動的に制御するように構成されている。本発明のこの態様は、同時係属する英国特許出願公開第2492748号、第2492655号、および第2499252号に記載され、これらの開示内容は、ここに参考に一体のものとして統合される。
上述のように、(選択した駆動モードを参照して特定される)車両走行中の地形の性状を用いて、LSP制御システム12が車両速度の適当な増減を決定してもよい。たとえばドライバが車両走行中の地形の性状に適当でないLSP設定速度値(LSP_set-speed)を選択した場合、車両車輪の速度を低減することにより、自動的に車両速度を低減するように動作可能である。いくつかのケースでは、とりわけ起伏または凹凸の大きい路面では、たとえばドライバ設定速度が特定の地形タイプに対して実現不可能であるか、適当でない場合がある。LSP制御システム12がドライバ設定速度(LSP_set-speed)とは異なる設定速度を選択した場合、択一的な速度が適用されたことを示唆するために、LSP制御HMI20を介して、速度制限をドライバに視覚的に示す。
LSP制御システム12は、車両走行中の地形に基づいて、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値を決定する。すなわちLSP制御システム12は、地形に基づいて車両10を制御する最大速度を制限するように動作可能である。本発明の実施形態は、ドライバの介入を減らしつつ、ハイウェイ以外の状況で車両走行させるときの車両安定性を改善することができる。すなわちLSP制御システム12がLSP設定速度(LSP_set-speed)の最大許容可能値を決定して、これに応じて車両100の速度を制限するため、現在走行中の地形が許容する場合、ドライバ設定速度(user_set-speed)の値を低減させ、現在走行中の地形が許容する場合、ドライバ設定速度(user_set-speed)の値を増大させるように、ドライバが介入する必要がない。本実施形態において、ハイウェイ用クルーズ制御システムとは異なり、LSP制御システム12がアクティブ状態にある場合、LSP制御システムだけがLSP設定速度(LSP_set-speed)の値を計算するように動作可能である。
本実施形態において、LSP制御システム12は、車両に付随する数多くのパラメータに基づいて、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値を決定するように構成されている。LSP制御システム12は、車両目標速度の6つの値のうち最も小さい速度で車両を走行させる。すなわちLSP制御システム12は、車両目標速度の6つの値のうち最も小さい値にLSP設定速度(LSP_set-speed)を設定する。車両目標速度の値は、(a)ドライバ設定速度(user_set-speed)、(b)車両のピッチ加速度、ロール加速度、および上下加速度により設定される乗員興奮パラメータ(Psng_Excit)の値に基づいて計算された最大の車両速度(Psng_Excit_v)、(c)操舵角と車両速度に基づいて設定される最大の操舵角速度(steering_angle_v)、(d)路面側方勾配の値に基づいて設定される最大の側方勾配速度(sideslope_v)、(e)路面勾配の値に基づいて設定される最大の勾配速度(grad__v)、および(f)車両サスペンションアーティキュレーション(またはサスペンションワープとも呼ばれる)に基づいて設定される最大のワープ速度(speed warp_v)である。任意ではあるが、入力値は、車両が浸水走行しているか否かに依存して設定される最大車両速度を含んでもよい。いくつかの実施形態では、この最大車両速度は、車両が浸水している深さと液体に少なくとも部分的に依存して設定してもよい。他のパラメータも同様に有用である。他の速度値も同様に有用である。
乗員興奮パラメータ(Psng_Excit)の計算については、同時係属の英国特許出願第1314728.5号に記載されており、その内容は、ここに一体に参考として統合される。LSP制御システム12は、数多くの車両パラメータに相当する入力信号を受信するように構成されている。これらのパラメータは、(a)現時点の表面摩擦係数の車両基準値(これは、過剰なスリップを誘発する、車輪に加わるトルクの大きさ等の1つまたはそれ以上のパラメータに基づいて計算された値である。)、(b)現在選択されている車両運転モードに対応する予想される表面摩擦係数の値(これは、各運転モードに対して予め設定された値である。)、(c)操舵可能な道路車輪角または操舵ハンドル位置に対応する現時点の操舵角の値、(d)(加速度計の出力信号を参照して決定された)現時点の車両のヨーレート、(e)(同様に加速度計の出力信号を参照して決定された)現時点の横方向加速度の測定値、(f)(車両サスペンションアーティキュレーションを参照して決定された)現時点の路面凹凸の測定値、(g)(全地球測位システム(GPS)の出力信号を参照して決定された)現時点の車両位置、および(h)カメラシステムを用いて収集した情報である。上記列挙したものは、単なる具体例を示したものに過ぎず、これらに限定する意図はなく、追加的または択一的な他の入力信号も有用である。いくつかの実施形態では、上記(a)〜(h)の必ずしもすべての入力信号が受信されるわけではない。
カメラシステムを用いて得られた情報は、たとえば車両がオフロードレーンまたはオフロードトラック(路側帯、車道外側線)から逸脱しそうである判断された場合の警告を含んでもよい。いくつかの実施形態では、車両100の1つまたはそれ以上のサブシステム(任意的にはLSP制御システム12)は、乗員興奮パラメータ(Psng_Excit)の値に影響を与え得る車両前方の地形を検出するように構成してもよい。すなわちLSP制御システム12は、車両走行経路上の地形に関する1つまたはそれ以上の画像の分析に基づいて、車両前方にある地形により、乗員興奮に対して悪いまたは良い影響を与える事を予想することができる。すなわちLSP制御システム12は、乗員興奮パラメータ(Psng_Excit)の値を変更するか、あるいは車両が現時点の推進速度を維持したならば、乗員興奮パラメータ(Psng_Excit)の値の変化を予想して車両速度を調整してもよい。これは、上記説明した車両パラメータを参照した地形の評価とは対照的である。
理解されるように、車両が地形上を走行しているとき、ドライバ設定速度(user_set-speed)の値が、それ以外の5つの設定速度、すなわち操舵角速度(steering_angle_v)、側方勾配速度(sideslope_v)、勾配速度(grad__v)、ワープ速度(speed warp_v)、および乗員興奮車両速度(Psng_Excit_v)より小さいとき、LSP制御機能は、ドライバ設定速度(user_set-speed)の値と実質的に同じであるLSP設定速度(LSP_set-speed)の値に従って車両を駆動し続ける。過剰な車輪スリップ事象がなく、任意的には1つまたはそれ以上の他の条件が合致しない場合、車両10は、ドライバ設定速度(user_set-speed)に実質的に等しい速度で走行し続ける。ドライバは、上記説明した手法でドライバ設定速度値を増減させることができる。ただし、ドライバ設定速度値が他のパラメータ速度以下となれば、LSP制御システム12は、車両速度をさらなる増大を許容しない。たとえば地形が変化したことに起因して、その他のより小さいパラメータ速度値がドライバ設定速度値より小さくなった場合、LSP制御システム12は、LSP設定速度値をその他のより小さいパラメータ速度に設定することにより、その他のより小さいパラメータ速度まで車両速度を低減するように制御する。
いくつかの実施形態では、最大設定速度パラメータ(max_set_speed)が、最小化機能ブロック209に入力される6つのパラメータの中で、より小さい値と等しくなるように設定される。最大設定速度値(max_set_speed)は、LSP設定速度値(LSP_set-speed)として出力される。したがって最大設定速度値は、LSP制御システム12が車両速度を制御している間は常に、車両速度の上限に設定される。
その後(ドライバ設定速度値が最大設定速度値より大きい場合)、最大設定速度値(max_set_speed)が増大すると、LSP制御システム12は、車両速度がドライバ設定速度値(user_set-speed)まで、またはこれに向かって増大することを許容する。
本実施形態では、LSP制御システム12は、ドライバ設定速度値(user_set-speed)より小さい速度に従って車両を走行させ、後により大きくなることが許容された速度に従って車両を走行させ、いくつかの実施形態では、適当な視覚的たまは聴覚的な示唆を車両ドライバに与える。いくつかの実施形態では、LSP制御システム12は、より大きい速度が許容された場合、車両速度がより大きい速度に自動的に増大されるように動作可能である。
1つの実施形態では、LSP制御システム12は、車両100が勾配の頂上に到達した時点を検出するように動作可能であり、水平姿勢をとり始める。この状況は、クレスティング(頂上到達)と呼ばれる。車両100が頂上到達したと、LSP制御システム12が判断したとき、LSP設定速度値(LSP_set-speed)の値を一時的に小さくしてもよい(いくつかの実施形態では、最大設定速度値(max_set_speed)を小さくしてもよい)。この特徴は、(必要ならば)坂道および/またはボンネットすなわちフード等の車両の前方部分により見えなかった車両100の前方にある地形にドライバが慣れるための時間をドライバに与えることができるような速度に車両を減速させる点で、有利である。これは、車両100を運転するドライバの楽しさ、および車両の安定性を増大させるものである。理解されるように、いくつかの実施形態では、さらに大きい(すなわち最大の)頂上到達速度値(cresting_v)を6つの設定速度パラメータと比較して、7つの設定速度パラメータのうちのより小さい速度をLSP設定速度値(LSP_set-speed)に設定する。頂上到達速度値(cresting_v)は、頂上到達が検出されたときの現在状況に適した値に設定してもよい。たとえば車両ピッチ姿勢が、所定の値(たとえば15度を超える値)を超えるピッチアップ姿勢から、所定範囲の距離において、(たとえば)5度以上のピッチアップ姿勢を経過して、水平ピッチ姿勢に移動したとき、頂上到達が検出される。1秒間に平均3度のピッチ低下が、たとえば2〜4秒の所定期間継続すると、頂上到達の検出を起動するのに十分である。
いくつかの実施形態では、LSP制御システム12は、路面の勾配が所定値より大きい値から所定値より小さくなったとき、たとえば、所定距離または所定時間走行している間に、10度の勾配より大きい値から10度未満の勾配になったとき、頂上到達があったと判断してもよい。不必要に車両が減速することによりドライバに不便を与え得る頂上到達の誤検出の可能性を低減するために、2つまたはそれ以上のテストを組み合わせて、頂上到達の検出の確認を実行してもよい。理解されるように、勾配変化レート(勾配変化率)があまりにも小さい場合、車両が頂上到達していたとしても、いくつかの実施形態では、LSP制御システム12が頂上到達を検出しない場合がある。こうした状況では、ドライバは車両が推進中の車両前方の地形を確認するのに十分な時間を有するので、車両を減速させる必要ではない。いくつかの実施形態では、車両制御ユニット(VCU)10は、車両ピッチ姿勢に基づいて走行路面の勾配を判断するように構成してもよい。頂上到達によるピッチ姿勢の変化と路面凹凸によるピッチ姿勢の変化を特定するために、車両ピッチ姿勢に対応する信号を時間平均し、および/またはローパスフィルタにかけてもよい。
頂上到達が検出されて、車両が適当に減速されると、いくつかの実施形態では、所定の走行時間または走行距離において減速を実行してもよい。この走行時間または走行距離が経過すると、LSP制御システム12は、再び、頂上到達状況のモニタリングを再開してもよい。
LSP制御システム12は、車両姿勢が十分に水平であり、所定の走行時間または走行距離において水平であることを検出した場合、頂上到達速度値(cresting_v)(いくつかの実施形態では、最大設定速度値(max_set_speed))を自動的に増大させてもよい。
1つの実施形態では、LSP制御システム12は、車両姿勢の変化率が所定値より小さくなったとき、頂上到達状況を示すものであることを検出するように動作可能である。LSP制御システム12は、所定の時間が経過し、または所定の距離を走行したとき、頂上到達速度値(cresting_v)の増大を開始させてもよい。択一的には、LSP制御システム12は、頂上到達が検出されていない場合、頂上到達速度値(cresting_v)を無視するように構成してもよい。頂上到達速度値(cresting_v)が増大する(または無視される)前の遅延時間の特徴は、たとえば車両が起伏の大きい地形上を走行しており、頂上に到達した後、車両が坂道を下っていく場合、特に有用であり得る。LSP制御システム12は、車両安定性およびドライバ信頼性を改善するために、車両100が下り坂にあることが確認されるまで、抑制された頂上到達速度値(cresting_v)を維持してもよい。
いくつかの実施形態では、LSP制御システム12は、車両ピッチが下向き(ピッチダウン姿勢)であった後に増大したことを検出することにより、勾配の底に到達したことを検出するように構成してもよい。LSP制御システム12は、車両100が底に到達したことを検出したとき、勾配の変化に慣れる時間をドライバに与えるために、頂上到達速度値(cresting_v)を一時的に小さくするように構成してもよい。この特徴は、車両100が勾配の底に到達したとき、車両の下側部分と地形(路面)との間の接触に起因して車両が損傷を受けるリスクを低減するという利点を有する。他の構成も同様に有用である。
本発明に係る実施形態は、速度制御システムが動作している状態で車両が走行しているとき、最大許容可能な設定速度に自動的に低減することにより、車両安定性を改善する点で有用である。こうしてドライバの負荷が軽減され、ドライバの疲れが抑制される。同様に、車両安定性も改善される。
本実施形態において、LSP制御システム12は、図4を参照して上記説明したLSP設定速度と実質的に等しい実際の車両速度値(v_actual)(車両基準速度)を維持するために、閉ループフィードバック装置を実現するものである。閉ループフィードバック装置は、選択されたTRモードおよび車両100が走行している走行路面の勾配に依拠するように構成されている。
上述のとおり、車両制御ユニット(VCU)10は、頂上到達が検出されたとき、頂上到達速度値(cresting_v)を小さくするように構成されている。LSP設定速度(LSP_set-speed)を小さくするのに十分な程度で、頂上到達速度値(cresting_v)が小さくなった場合、LSP制御システム12は、車両速度値(v_actual)がLSP設定速度(LSP_set-speed)に向かって小さくなるように、パワートレイン129およびブレーキシステム22を制御する。こうした状況において、目標速度推移プロファイル機能ブロック12bは、頂上到達速度値(cresting_v)と実質的に等しい値まで車両速度値(v_actual)を低減するために、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)を反復的に求める。図4を参照して上記説明したように、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)は、PI制御モジュール12cに出力される。PI制御モジュールは、比例積分制御手法等を用いて、LSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)、およびパラメータ値(slope)に基づいて決定される比例ゲイン定数ならびに積分ゲインの値を特定する。すなわち、車両が頂上到達し、パラメータ値(slope)が変化したとき、比例ゲイン定数および積分ゲインの値が機能ブロック12bによって修正される。これらの値は、「勾配(slope)」が上り勾配から下り勾配に移行したとき、より大きくなるように構成され、「勾配(slope)」の値が下り坂方向でいっそう急峻なものとなるので、LSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)がより迅速に低減することになる。
同様に、車両が頂上到達した後、坂道を下り始めたとき、車両が所定距離または所定時間走行すると、頂上到達速度値(cresting_v)は、増大し始める。その後、LSP制御システム12は、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値に実質的に等しい速度まで車両を加速させるが、LSP設定速度(LSP_set-speed)の値は、上述のとおり、ドライバ設定速度値(user_set-speed)、操舵角速度(steering_angle_v)、側方勾配速度(sideslope_v)、勾配速度(grad__v)、ワープ速度(speed warp_v)、および乗員興奮車両速度(Psng_Excit_v)のうちのより小さいものに設定される。目標速度推移プロファイル機能ブロック12bは、図4を参照して上記説明したように、選択されたTRモード、車両速度値(v_actual)、およびLSP設定速度(LSP_set-speed)に基づいて、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)を選択する。
理解されるように、車両100が小丘の頂上に到達し、小丘を下り始めたとき、選択されたTRモードに基づいて、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)の調整は、車両100が小丘の頂上に到達し、小丘を下り始めたとき、車両速度値(v_actual)がLSP設定速度(LSP_set-speed)を超えることを許容して、LSP制御システム12に従属するHDCシステム12HDがLSP設定速度(LSP_set-speed)に実質的に等しい速度に車両速度値(v_actual)を維持するために負荷するように指令されたブレーキトルクの大きさ(もしあれば)を小さくすることができるといった効果を有するように構成される。すなわち、LSP制御システム12または(LSP制御システム12に従属した)HDCシステム12HDが現時点のLSP目標設定速度値(LSP_V_T)またはHDC目標設定速度値(HDC_V_T)を実現または維持しようとする、現時点のLSP目標設定速度値(LSP_V_T)またはHDC目標設定速度値(HDC_V_T)がLSP設定速度(LSP_set-speed)(およびLSP設定速度に等しいHDC設定速度(HDC_set-speed))を超えることを許容する。現時点のLSP目標設定速度値(LSP_V_T)またはHDC目標設定速度値(HDC_V_T)がLSP設定速度(LSP_set-speed)(およびHDC設定速度(HDC_set-speed))を超えることが許容される大きさは、TRモードが砂モードである場合、それ以外のモードである場合より大きい。いくつかの実施形態では、TRモードが実質的に砂モードである場合に限り、小丘の頂上に到達した後、小丘を下り始めたとき、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)またはHDC目標設定速度値(HDC_V_T)は、LSP設定速度(LSP_set-speed)を超えることができる。
理解されるように、砂の上を下り走行するとき、車両100の車輪に負のトルクを負荷することは好ましいことではない。上述のように、これは、車輪が砂の中を掘り返す傾向があり、この効果は、車両減速時、前方を下方にして荷重が前のめりになった状況によって助長されるためである。これは、ブレーキシステム22により負のトルクが負荷されるレートを緩和することにより実現され、本実施形態では、PI制御モジュール12HDcの比例積分フィードバックゲイン値を低減することにより実現される。
いくつかの実施形態では、車両制御ユニット(VCU)10は、LSP制御システム12が、正のパワートレイントルクを加えるのではなく、惰性走行させることにより、実際の車両速度値(v_actual)をLSP設定速度(LSP_set-speed)に実質的に等しくなるまで増大させることができるように構成される。これを実現するために、本実施形態では、「勾配(slope)」の値が下り坂を示すとき、PI制御モジュール12HDcの比例積分フィードバックゲイン値は、比較的に小さい値に設定される。いくつかの実施形態では、
「勾配(slope)」の値が下り坂方向でいっそう急峻な値を示すので、実際の比例積分フィードバックゲイン値は、漸進的に増大するように構成されている。いくつかの実施形態では、実際の比例積分フィードバックゲイン値は、車両が下り坂方向でLSP設定速度(LSP_set-speed)に向かって加速するとき、正のトルクが実質的に加わらないような実質的に小さい値に設定される。
理解されるように、いくつかの実施形態では、TRモード信号を目標速度推移プロファイル機能ブロック12b、12HDbに供給することに代えて、またはこれに加えて、外力(drag_external)に起因する実際の抵抗力の大きさを示すパラメータを供給してもよい。目標速度推移プロファイル機能ブロック12b、12HDbは、抵抗力の大きさに加えて、またはこれに代えてTRモードに基づいて、LSP目標設定速度値(LSP_V_T)、LSP目標設定加速度値(LSP_A_T)、HDC目標設定速度値(HDC_V_T)、およびLSP目標設定加速度値(LSP_A_T)を特定するように構成してもよい。理解されるように、砂の上を走行することは、外力(drag_external)が比較的に大きい地形上を走行することに対応する。車両に加わる外力抵抗力を測定する手段は、広く知られている。
いくつかの状況において、車両100は、LSP設定速度(LSP_set-speed)より小さい速度で坂道を下り、LSP制御システム12は、車両100をLSP設定速度(LSP_set-speed)まで加速するために正のパワートレイン駆動トルクを与える必要がある。こうした状況において、いくつかの実施形態では、機能ブロック12b,12cは、実際の車両速度値(v_actual)がLSP設定速度(LSP_set-speed)に達する前に、LSPパワートレイントルク値(LSP_PT_TQ)をゼロのパワートレイン駆動トルクに実質的に相当する値に設定するように構成される。これは、実際の車両速度値(v_actual)により、LSP設定速度(LSP_set-speed)の過剰なオーバーシュート(超過速度)を防止するためであり、「勾配(slope)」および外力(drag_external)に基づいて実行される。この手法により、車両100は、1つまたはそれ以上の車輪にブレーキトルクを与える必要なく、坂道を下方へ走行することができる。ブレーキトルクを負荷すると、急激で不必要に大きい減速度で減速させ、車両安定性が損なわれる。理解されるように、LSP制御システム12は、大きな抵抗力が生じる地形に起因する車両100に掛かる抵抗力を用いて、車両が坂道を下るときの超過速度を制限することができる。超過速度が生じた場合、HDCシステム12HDは(HDC目標設定速度値(HDC_V_T)およびHDC設定加速度値(HDC_A_T)を適当に制御することにより)、より緩慢な手法でブレーキトルクを負荷するように構成される。
他の構成も同様に有用である。
これまで、測定された抵抗力に基づいて、砂の上を走行する車両に掛かる抵抗力を参照して説明してきたが、ゲインは、車両に掛かる抵抗力を検出する代わりに、選択された地形モードに基づいて設定可能であり、車両が「砂モード」にあることを特定し、これを特定することによりゲインを変更できることは明らかである。
本願に記載されたシステムおよび方法は、たとえば泥、雪、または湿った草の上を走行するときのように、異なる抵抗力を与えるさまざまな地形タイプに適用可能であることも同様に理解される。地形モードを特定することにより、ゲインを適当な値に設定することができる。理解されるように、測定された車両パラメータに基づいて地形モードを自動的に設定する場合、複数の車両パラメータのうちの1つとして車両に掛かる抵抗力を、制御システムへの入力信号として用いてもよい。ただし車両がドライバ選択による地形モードで走行しているとき、抵抗力を利用できない場合があり、その場合、ゲインは、ドライバ選択による地形応答モードに基づいて選択することができる。
本発明の実施形態は、砂等の抵抗力の大きい地形上で急激な過剰ブレーキを防止できるという利点を有する。本発明の実施形態によれば、特に、砂等の抵抗力が大きく、凹凸の大きい路面を走行するとき、車両安定性を大幅に改善することができる。
理解されるように、上記実施形態は単なる具体例として説明したものであり、本発明を限定することを意図したものではなく、本発明の範囲は添付クレームにより特定される。
本願の明細書およびクレーム全体を通じて、「備える(comprise)」および「含む(contain)」の用語、ならびに「備える(comprising, comprises)」等の変形した用語は、「限定せずに有する(including but not limited to)」を意味し、他の分子、添加剤、部品、整数、またはステップを除外することを意図するものではない。
本願の明細書およびクレーム全体を通じて、文脈上必須でなければ、単数名詞は複数名詞を含むものとする。特に、不定冠詞を用いた場合、本願明細書は、文脈上必須でなければ、単数名詞だけでなく複数名詞をも含むものと理解されたい。
本発明に係る特別の態様、実施形態、または実施例に関する特徴物、整数、特性、化合物、化学的な部分またはグループは、矛盾するものでなければ、本願に記載された任意の他の態様、実施形態、または実施例に適用可能である理解されたい。
10…車両制御ユニット(VCU)、11…パワートレインコントローラ、12…低速推進(LSP)制御システム、12HD…ヒルディセント制御(HDC)システム、13…ブレーキコントローラ、14…スタビリティ制御システム(SCS)、16…クルーズ制御システム、18…クルーズ制御HMI(クルーズ制御ヒューマン・マシン・インターフェイス)、20…低速推進制御HMI(LSP制御HMI)、22…ブレーキシステム、28…コンパレータ、40…評価ユニット、100…車両、100C…シャーシ、111,112…前輪、114,115…後輪、118…ドライブシャフト、121…エンジン、124…オートマッチックトランスミッション(自動トランスミッション)、124S…トランスミッションモード・セレクタダイヤル、129…パワートレイン、130…ドライブライン、131…補助ドライブライン部、131P…動力伝達ユニット(PTU)、132…補助ドライブシャフトまたはプロペラシャフト、135…後輪ディファレンシャル、137…前輪ディファレンシャル、138…前輪ドライブシャフト、139…後輪ドライブシャフト、161…アクセルペダル、163…ブレーキペダル、170C…ステアリングコントローラ(ePASユニット)、171…操舵ハンドル、172…LSP制御システム選択ボタン、173…設定速度制御部、173R…再開ボタン、174…「+」ボタン、175…「−」ボタン、176…クルーズ制御システム選択ボタン。