以下、本発明に係る建具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る建具10の縦断面図であり、図2は、図1に示す建具10の横断面図である。
図1及び図2に示すように、建具10は、建物の躯体12の開口部12aに固定される枠体14と、枠体14の内側に開閉可能に支持される障子16とを備える。本実施形態では、枠体14に対して障子16を縦すべり出し可能に組み付けた縦すべり出し窓の建具10を例示する。
枠体14は、上枠14aと、下枠14bと、左右の縦枠14c,14cとを四周枠組みすることで矩形の開口部を形成したものである。本実施形態では枠体14として、室外側に配設される金属枠18と、室内側に配設される樹脂枠20とを組み合わせた構成からなる複合サッシ(アルミ樹脂複合サッシ)を用いている。金属枠18は、アルミニウム等の金属の押出形材である。樹脂枠20は、塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂の押出形材である。
上枠14aは、金属枠18の上枠部18aと樹脂枠20の上枠部20aとを互いに組み付けたものである。下枠14bは、金属枠18の下枠部18bと樹脂枠20の下枠部20bとを互いに組み付けたものである。縦枠14cは、金属枠18の縦枠部18cと樹脂枠20の縦枠部20cとを互いに組み付けたものである。上枠部18a,20a、下枠部18b,20b及び縦枠部18c,20cは、それぞれ固定ねじ21を用いて躯体12に固定される。
上枠14aは、図1に示すように、見込み面に障子16が配置される障子配置部22を有し、障子配置部22よりも室内側となる部分に突出部24が設けられている。上枠14aの障子配置部22の室内側鉛直面には、加熱されると膨張する熱膨張性部材25が設けられている。熱膨張性部材25は、熱により膨張する不燃性又は難燃性の部材であればよく、例えば、熱膨張性の黒鉛である。図1及び図2に示すように、障子配置部22、突出部24及び熱膨張性部材25は、下枠14b及び縦枠14cにも設けられている。
上枠14aの突出部24と下枠14bの突出部24との間には網戸26が配設されている。また、下枠14bの突出部24には、障子16を開閉操作する際に操作するオペレータハンドル27が配設されている。本実施形態では、障子配置部22は金属枠18部分に設け、突出部24は樹脂枠20部分に設けている。
障子16は、内側に配設される面材28と、面材28の四周縁部を囲む框体(枠状部材)30となる上框30a、下框30b及び左右の縦框30c,30cとを框組みして構成したものである。
面材28は、スペーサ32を介して一対のガラス板33,34を互いに間隔を隔てて対面配置した2層の複層ガラスである。本実施形態の場合、室外側に配置されるガラス板33は、網入りの厚板ガラスとし、室内側に配置されるガラス板34は、薄板ガラスとしている。
上框30a、下框30b及び縦框30cは、アルミニウム等の金属の押出形材である。
上框30aは、図1に示すように、見込み面に面材28が配置される面材配置部36を有する。面材配置部36よりも室外側となる部分に保持片38が設けられ、面材配置部36の室内側端部には押縁40を装着するための溝状の嵌合部42が長手方向に延在形成されている。上框30aの面材配置部36には熱膨張性部材25が設けられている。熱膨張性部材25は、保持片38の反対側に突出した部分にも設けられている。図1及び図2に示すように、面材配置部36、保持片38、嵌合部42及び熱膨張性部材25は、下框30b及び縦框30cにも設けられている。
障子16は、框体30の面材配置部36に面材28が装着された後、その室内側の嵌合部42に押縁40を装着することで保持片38と押縁40との間に面材28が保持される。この際、下框30b及び一方の縦框30cの面材配置部36では、セッティングブロック44を介して面材28の端面が支持され、各框30a〜30cの保持片38とガラス板33の縁部の室外側見付け面との間が接着剤45によって接着固定される。
このように構成された障子16が枠体14の障子配置部22に装着されると、上枠14aと上框30aとの間及び下枠14bと下框30bとの間がそれぞれアーム46によって連結される。これにより、障子16はアーム46の支持作用下に開閉可能な状態で枠体14の内側に配設される。
障子16では、押縁40を樹脂枠20と同様に塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂の押出形材で構成している。そのため、火災等の熱を受けて押縁40が軟化し或いは焼失すると框体30から面材28が脱落する懸念がある。そこで、本実施形態に係る建具10では、框体30と押縁40との間に保持された面材28の縁部の室内側見付け面と対面配置されることで框体30からの面材28の落下を防止する脱落防止金具48を設けている。
次に、脱落防止金具48の構成及びその取付構造について順に説明する。
図3は、脱落防止金具48の框体30への取付構造を説明する斜視図であり、図4は、図3に示す脱落防止金具48を別の角度から見た斜視図である。
図3及び図4に示すように、脱落防止金具48は、ステンレスやスチール等の金属板を屈曲変形させると共に両端を切り起こした形状であり、框体30の嵌合部42に装着される。脱落防止金具48は、嵌合部42に装着された状態で押縁40によって覆われるため、通常は建具10の外観上に露出しない(図1及び図2参照)。本実施形態では、上框30a及び左右の縦框30c,30cに脱落防止金具48を設置した構成を例示しているが、脱落防止金具48は下框30bに設置してもよく、その設置箇所は適宜変更可能である。
脱落防止金具48は、プレート部48aと、プレート部48aの基端から屈曲された取付面部48bと、取付面部48bの両端を切り起こして屈曲させることで板ばね状に形成した一対の取付部48c,48cとを有し、断面略L字形状である。
プレート部48aは、面材28を構成するガラス板34の縁部の見付け面と対面配置される比較的面積の大きなプレートである。プレート部48aは、火災時にガラス板34を受け止めて面材28の脱落を阻止する部分である(図7及び図10(A)も参照)。取付面部48bは、框体30の嵌合部42に挿入されると共に、嵌合部42の見付け面に着地することで当該脱落防止金具48の安定した取付状態を維持する部分である(図7及び図10(A)も参照)。各取付部48cは、取付面部48bからプレート部48aに向かって斜めに切り起こされると共に、その先端がプレート部48aに直交する方向に屈曲されている。各取付部48cは、框体30の嵌合部42に挿入されて弾性変形されることにより、弾性力を持って嵌合部42に嵌合する部分である(図7及び図10(A)も参照)。
図5は、脱落防止金具48及び押縁40を框体30(ここでは縦框30c)の嵌合部42に装着する状態を説明する斜視図であり、図6は、図5に示す状態を別の角度から見た斜視図である。図7は、脱落防止金具48を装着した嵌合部42に対して押縁40を装着する状態を説明する斜視図であり、図8は、図7に示す状態から押縁40の装着を完了した状態を示す斜視図である。また、図9は、図5及び図6に示す状態の側面断面図及び平面図であり、図10は、図8に示す状態の側面断面図及び平面図である。図9(B)及び図10(B)では面材28の図示を省略している。
図5及び図7に示すように、脱落防止金具48が設置される縦框30cの嵌合部42は、一対の帯板42a,42b間に形成され、押縁40の取付片40a及び脱落防止金具48の取付部48cを嵌合可能な溝部である。面材28側の帯板42aには、脱落防止金具48のプレート部48aを挿入可能な長さ寸法を有する切欠部42cが形成されている。切欠部42cは、脱落防止金具48が設置される上框30aにも設けられている。
脱落防止金具48及び押縁40を縦框30cに取り付ける場合には、先ず、図5、図6及び図9(A)に示すように、縦框30cの面材配置部36に面材28を装着し、面材28の縁部の室外側見付け面を保持片38で支えた状態とする。
次に、図9(A)中に破線で示す脱落防止金具48のように、脱落防止金具48を室外側に傾けてプレート部48aを切欠部42cに挿入すると共に各取付部48cの先端を切欠部42cから外れた位置で嵌合部42に挿入する(図3、図7、図9(B)も参照)。そして、脱落防止金具48を室内側に傾けてプレート部48aが面材28の見付け面と平行する程度の姿勢まで起こす。これにより、図7、図10(A)及び図10(B)に示すように、脱落防止金具48が嵌合部42に装着される。この装着状態では、プレート部48aが切欠部42cを通過して面材28と平行するように対面し、取付部48cが嵌合部42内で弾性力を持って嵌合している。
続いて、図8、図10(A)及び図10(B)に示すように、嵌合部42に対して押縁40の取付片40aを嵌合させる。これにより、押縁40と保持片38との間に面材28が保持され、さらに押縁40の内側に脱落防止金具48が隠される。なお、図6、図9及び図10に示すように、押縁40の取付片40aには切欠き状の逃げ部40bが設けられている。逃げ部40bは脱落防止金具48を跨ぐことができる寸法である。これにより、嵌合部42に脱落防止金具48が装着されていても、脱落防止金具48と干渉することなく押縁40を嵌合部42に装着することができる。
以上のように、本実施形態に係る建具10によれば、枠状部材である框体30の保持片38と、框体30に設けられた嵌合部42に装着される押縁40との間に面材28を保持する構成において、嵌合部42に装着され、面材28の縁部の見付け面と対面配置されることで框体30からの面材28の落下を防止する落下防止金具48を備える。
このように、建具10では、押縁40の装着用の嵌合部42を兼用して脱落防止金具48を框体30に装着する。これにより、框体30の嵌合部42に脱落防止金具48を装着するだけで建具10に防火構造を付与することができるため、框体30に対して面倒な事前加工や事前の部品取付けが不要となり、建具10の組立作業の負担を軽減することができる。また、脱落防止金具48は一部品で構成されており、框体30に部品を追加する必要もないため、部品点数や部品重量を低減することができ、コストも低減できる。
また、建具10では、面材28のエッジ部分からずれた位置にある押縁40の装着用の嵌合部42を用いて脱落防止金具48を装着するため、ガラス板33,34のエッジクリアランス部分に脱落防止金具48やその装着用の部材等が配置されない。これにより、火災によって面材28が加熱されて伸長した場合に、ガラス板33,34のエッジが脱落防止金具48や前記部材等に干渉しないため、ガラス割れのリスクを低減できる。
なお、図1、図2、図9及び図10に示すように、脱落防止金具48及び押縁40とは反対側(室外側)で面材28の縁部の見付け面を保持する保持片38は、框体30の他の部位よりも肉厚の大きな構造を採用している。このため、保持片38側に脱落防止金具を設けることなく、該保持片38と脱落防止金具48とで火災時の面材28の脱落をより確実に防止することができる。
当該建具10では、嵌合部42は切欠部42cを設け、該切欠部42cに脱落防止金具48のプレート部48aが配設される構成としている。これにより、プレート部48aをガラス板34の見付け面に対して可及的に近接配置できるため、面材28の脱落をより効果的に防止できる。
当該建具10では、押縁40に落下防止金具48との干渉を回避するための逃げ部40bを形成している。これにより、押縁40と落下防止金具48とが互いに干渉することを防止でき、両者を框体30により安定して装着することができる。
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
例えば、上記実施形態では金属枠18と樹脂枠20とで枠体14を構成した複合サッシである建具10を例示したが、枠体14は金属枠18のみ又は樹脂枠20のみで構成される金属サッシ(アルミサッシ)又は樹脂サッシでもよい。
上記実施形態では、縦すべり出し窓の建具10を例示したが、本発明は他の開閉窓、例えば引違い窓やすべり出し窓等、さらには嵌め殺し窓にも利用可能である。なお、嵌め殺し窓の建具の場合には、建物の躯体12の開口部12aに固定される枠状部材である枠体14の内側に框体30を介することなく面材28が直接的に固定される場合もある。そこで、この構成の場合には、枠体14に押縁40の装着用の嵌合部42が設けられることになるため、脱落防止金具48はこの嵌合部42に装着すればよい。