以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなく、その形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁膜上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁膜とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置および半導体装置の作製方法の一形態を、図1乃至図3を用いて説明する。
<半導体装置の構成>
図1に、半導体装置に含まれるトランジスタの一例として、トップゲート・セルフアライン構造のトランジスタの断面図を示す。
図1(A)に示すトランジスタは、酸化物半導体膜55と、酸化物半導体膜55に接するゲート絶縁膜57と、ゲート絶縁膜57と接し且つ酸化物半導体膜55と重畳するゲート電極59と、を有する。
また、トランジスタに含まれる酸化物半導体膜55は、基板51上の絶縁膜53上に形成される。また、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cに接する水素を含む絶縁膜65が設けられる。
また、水素を含む絶縁膜65に接する絶縁膜67が設けられてもよい。また、水素を含む絶縁膜65および絶縁膜67の開口部において、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cと接する一対の導電膜68、69が、設けられてもよい。また、絶縁膜67、一対の導電膜68、69上に絶縁膜79が、設けられてもよい。
酸化物半導体膜55は、第1の領域55aおよび該第1の領域55aを挟む第2の領域55b、55cを有する。第1の領域55aは、チャネル領域としての機能を有する。第2の領域55b、55cは、ソース領域およびドレイン領域の機能を有する。なお、第2の領域55b、55cは、第1の領域55aと比較して抵抗率が低いため、低抵抗領域ということもできる。
本実施の形態に示すトランジスタは、ゲート絶縁膜57が、側面において、凹部を有することを特徴とする。具体的には、ゲート絶縁膜57は、ゲート電極59と接する領域と比較して、幅が狭い領域を有する。即ち、ゲート絶縁膜57の側面は、ゲート電極59の側面の一部より内側である領域を有する。
また、本実施の形態に示すトランジスタは、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cが、ゲート電極59の一部と重なる領域を有することを特徴とする。
ここで、図1(A)に示すトランジスタに含まれる酸化物半導体膜55近傍の拡大断面図を、図1(B)乃至図1(D)に示す。
図1(B)に示すように、ゲート絶縁膜57の側面の一部は、ゲート電極59の側面より内側に位置する。さらに、ゲート絶縁膜57において、酸化物半導体膜55と接する領域の幅は、ゲート電極59と接する領域と比較して、狭い。また、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cは、ゲート電極59の一部と重なる領域を有する。該領域をオーバーラップ領域Lovということができる。
または、図1(C)に示すように、ゲート絶縁膜57の側面の一部は、ゲート電極59の側面より内側に位置する。さらに、ゲート絶縁膜57において、酸化物半導体膜55と接する領域の幅は、ゲート電極59と接する領域と比較して、広い。この場合、ゲート絶縁膜57において、最も幅の狭い領域から外側にせり出す領域であって、且つ酸化物半導体膜55側の領域の厚さは、薄いことが好ましく、代表的には5nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下であることが好ましい。最も幅の狭い領域から外側にせり出す領域であって、且つ酸化物半導体膜55側の領域の厚さが薄いことで、ゲート絶縁膜57を介してゲート電極59と重なる酸化物半導体膜に、不純物元素を添加することが可能であり、酸化物半導体膜に酸素欠損を形成することができる。このため、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cは、ゲート電極59の一部と重なるオーバーラップ領域Lovを有する。なお、ここでは、酸化物半導体膜に添加されることで、酸化物半導体膜に酸素欠損を形成する元素を、不純物元素と表記して説明する。
または、図1(D)に示すように、ゲート絶縁膜57の側面の一部は、ゲート電極59の側面より内側に位置する。さらに、ゲート絶縁膜57において、酸化物半導体膜55と接する領域の幅は、ゲート電極59と接する領域の幅と、略同一である。この場合、ゲート絶縁膜57において、最も幅の狭い領域から外側にせり出す領域であって、且つ酸化物半導体膜55側の領域の厚さは、薄いことが好ましく、代表的には5nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下であることが好ましい。最も幅の狭い領域から外側にせり出す領域であって、且つ酸化物半導体膜55側の領域の厚さが薄いことで、ゲート絶縁膜57を介してゲート電極59と重なる酸化物半導体膜に、不純物元素を添加することが可能であり、酸化物半導体膜に酸素欠損を形成することができる。また、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cは、ゲート電極59の一部と重なるオーバーラップ領域Lovを有する。
なお、オーバーラップ領域Lovの長さは、チャネル長Lの20%未満、または10%未満、または5%未満、または2%未満であることが好ましい。なお、チャネル長Lは、トランジスタのチャネル長方向における第1の領域55aの長さのことをいう。
酸化物半導体膜55において、第2の領域55b、55cは、不純物元素を含む領域を有する。
また、酸化物半導体膜の原料ガスに不純物元素が含まれる場合、第1の領域55aおよび第2の領域55b、55cは、不純物元素を有する。この場合、第2の領域55b、55cは、第1の領域55aと不純物元素の濃度が異なる領域を有する。代表的には、第2の領域55b、55cは、第1の領域55aと比較して不純物元素の濃度が高い領域を有する。例えば、スパッタリングガスとして希ガスを用いたスパッタリング法により酸化物半導体膜55が形成される場合、酸化物半導体膜55に希ガスが含まれる。一方、酸素欠損を形成するために、第2の領域55b、55cに意図的に希ガスを添加することで、第2の領域55b、55cにおいて、希ガスの濃度が高い領域が形成される。これらの結果、第2の領域55b、55cにおいて、第1の領域55aと比較して希ガスの濃度が高い領域が形成される。なお、第2の領域55b、55cにおいて、第1の領域55aと異なる不純物元素が添加されていてもよい。
不純物元素の代表例としては、希ガス、水素、ホウ素、窒素、フッ素、アルミニウム、およびリンの一以上がある。希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンがある。
不純物元素として、ホウ素、窒素、フッ素、アルミニウム、またはリンが第2の領域55b、55cに含まれる場合、第1の領域55aと比較して、第2の領域55b、55cの方が、不純物元素の濃度が高い。
また、酸化物半導体膜55において、第2の領域55b、55cは、希ガス、ホウ素、窒素、フッ素、アルミニウム、およびリンの一以上と、水素とを含む。さらに、第2の領域55b、55cは、第1の領域55aと水素の濃度が異なる領域を有する。具体的には、第2の領域55b、55cは、第1の領域55aと比較して、水素の濃度が高い領域を有する。これは、酸化物半導体膜55が水素を含む絶縁膜65と接することで直接、もしくはゲート絶縁膜57を介して、水素を含む絶縁膜65に含まれる水素が酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cに拡散するためである。
第2の領域55b、55cの二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度は、8×1019atoms/cm3以上、好ましくは1×1020atoms/cm3以上、より好ましくは5×1020atoms/cm3以上である。なお、第1の領域55aの二次イオン質量分析法により得られる水素濃度は、5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、5×1018atoms/cm3以下、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下である。
第1の領域55aの水素濃度を上記範囲とすることで、第1の領域55aにおけるキャリアである電子の生成を抑制することが可能であり、トランジスタは、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)を有する。
不純物元素の添加により酸素欠損が形成された酸化物半導体膜に水素が含まれると、酸素欠損サイトに水素が入り伝導帯近傍にドナー準位が形成される。この結果、酸化物半導体膜は、導電性が高くなり、導電体化する。導電体化された酸化物半導体膜を酸化物導電体膜ということができる。即ち、酸化物半導体膜55において、第1の領域55aは、酸化物半導体で形成され、第2の領域55b、55cは酸化物導電体で形成されるといえる。酸化物半導体膜55において、第2の領域55b、55cは、第1の領域55aと比較して水素濃度が高く、且つ不純物元素の添加による酸素欠損量が多い。代表的には、第2の領域55b、55cの抵抗率は、1×10−3Ωcm以上1×104Ωcm未満、さらに好ましくは、抵抗率が1×10−3Ωcm以上1×10−1Ωcm未満であることが好ましい。
なお、一般に、酸化物半導体は、エネルギーギャップが大きいため、可視光に対して透光性を有する。一方、酸化物導電体は、伝導帯近傍にドナー準位を有する酸化物半導体である。したがって、該ドナー準位による吸収の影響は小さく、可視光に対して酸化物半導体と同程度の透光性を有する。
図1に示すトランジスタは、ゲート絶縁膜57が、側面において、凹部を有する。即ち、酸化物半導体膜55およびゲート電極59の間に、ゲート絶縁膜57が形成されない領域が形成される。このため、酸素欠損を形成するために酸化物半導体膜55に不純物元素を添加する際に、ゲート絶縁膜の側面の凹部内にも不純物元素が侵入する。さらには、ゲート絶縁膜であって、厚さの薄い領域においては、ゲート絶縁膜を介して、酸化物半導体膜55に不純物元素が添加される。これらの結果、酸化物半導体膜55であって、ゲート電極59の一部と重なる領域に、不純物元素が添加されると共に、酸素欠損が形成される。
また、不純物元素が添加された領域に水素を含む絶縁膜65が接することで直接、もしくはゲート絶縁膜57を介して、水素を含む絶縁膜65に含まれる水素が、不純物元素が添加された領域に拡散する。
これらの結果、酸化物半導体膜55において、ゲート電極59の一部と重なる領域に、酸素欠損及び水素を含む第2の領域55b、55cが形成される。
即ち、本実施の形態は、ゲート絶縁膜57の形状を利用して酸化物半導体膜に選択的に不純物元素を添加すること、及びゲート絶縁膜57の形状を利用して酸化物半導体膜に選択的に水素を拡散させること、により、酸化物半導体膜に酸素欠損及び水素を含む第2の領域55b、55cを選択的に形成する。実施の形態3で後述するが、水素は、酸素欠損において安定であり、酸素欠損から水素は放出されにくい。このため、第2の領域55b、55cに含まれる水素は、チャネル領域である第1の領域55aへ拡散しにくく、トランジスタの電気特性の劣化を低減することができる。
また、酸素欠損に水素が入り伝導帯近傍にドナー準位が形成され、導電性が高くなる。このため、第2の領域55b、55cは、ソース領域およびドレイン領域としての機能を有する。第2の領域55b、55cがゲート電極59の一部と重なる領域は、オーバーラップ領域Lovとなる。本実施の形態に示すトランジスタは、オーバーラップ領域を有するため、チャネル領域とソース領域およびドレイン領域との間に、高抵抗領域が形成されない。この結果、本実施の形態に示すトランジスタは、オン電流が高い。また、トランジスタにおいて、チャネル領域とソース領域およびドレイン領域との間に高抵抗領域を有すると、トランジスタの電気特性の劣化が生じやすいが、本実施の形態に示すトランジスタは、オーバラップ領域を有するため、電気特性の劣化が少なく、信頼性が高い。
また、本実施の形態に示すトランジスタにおいて、第2の領域55b、55cは、不純物元素の添加により酸素欠損が形成されると共に、水素を含む。このため、第2の領域55b、55cにおける抵抗率を低減することが可能であるとともに、トランジスタごとの第2の領域55b、55cの抵抗率のばらつきを低減することが可能である。すなわち、酸化物半導体膜に不純物元素を添加し、酸素欠損を形成することで、第2の領域55b、55cの抵抗率の制御が可能である。
以下に、図1に示す構成の詳細について説明する。
基板51としては、様々な基板を用いることができ、特定のものに限定されることはない。基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板またはシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、または基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、またはソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の合成樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、またはポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、または紙類などがある。特に、半導体基板、単結晶基板、またはSOI基板などを用いてトランジスタを製造することによって、特性、サイズ、または形状などのばらつきが少なく、電流能力が高く、サイズの小さいトランジスタを製造することができる。このようなトランジスタによって回路を構成すると、回路の低消費電力化、または回路の高集積化を図ることができる。
また、基板51として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタを形成してもよい。または、基板51とトランジスタの間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板51より分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタは耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の有機樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
トランジスタが転載される基板の一例としては、上述したトランジスタを形成することが可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィルム基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、またはゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、特性のよいトランジスタの形成、消費電力の小さいトランジスタの形成、壊れにくい装置の製造、耐熱性の付与、軽量化、または薄型化を図ることができる。
絶縁膜53は、酸素を含む絶縁膜または窒素を含む絶縁膜を単層または積層して形成することができる。酸素を含む絶縁膜の代表例としては、酸化物絶縁膜がある。また、窒素を含む絶縁膜の代表例としては、窒化物絶縁膜がある。なお、酸化物半導体膜55との界面特性を向上させるため、絶縁膜53において少なくとも酸化物半導体膜55と接する領域は酸素を含む絶縁膜で形成することが好ましい。また、絶縁膜53として加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いることで、加熱処理により絶縁膜53に含まれる酸素を、酸化物半導体膜55に移動させることが可能であるため好ましい。
絶縁膜53として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn酸化物などを用いればよく、積層または単層で設けることができる。
酸化物半導体膜55は、代表的には、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物、In−M−Zn酸化物(MはAl、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、またはNd)等の金属酸化物膜で形成される。
なお、酸化物半導体膜55がIn−M−Zn酸化物であるとき、InとMの原子数比率は、InおよびMの和を100atomic%としたとき、Inが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。
酸化物半導体膜55は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。
酸化物半導体膜55の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
酸化物半導体膜55がIn−M−Zn酸化物(MはAl、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、またはNd)の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、Inの原子数がMの原子数以上、かつZnの原子数がMの原子数以上であることを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:1.5、In:M:Zn=2:1:2.3、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2等が好ましい。なお、成膜される酸化物半導体膜55の原子数比はそれぞれ、誤差として上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
また、酸化物半導体膜55において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体膜55において酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、酸化物半導体膜55におけるシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。この結果、トランジスタは、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)を有する。
また、酸化物半導体膜55において、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため、酸化物半導体膜55のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。この結果、トランジスタは、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)を有する。
また、酸化物半導体膜55に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化物半導体膜55の第1の領域55aにおいて、窒素はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、二次イオン質量分析法により得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm3以下にすることが好ましい。
酸化物半導体膜55の第1の領域55aの不純物を低減することで、酸化物半導体膜55の第1の領域55aのキャリア密度を低減することができる。このため、酸化物半導体膜55の第1の領域55aは、キャリア密度が1×1017個/cm3以下、好ましくは1×1015個/cm3以下、さらに好ましくは1×1013個/cm3以下、より好ましくは1×1011個/cm3以下であることが好ましい。
酸化物半導体膜55の第1の領域55aとして、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性または実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる場合がある。従って、当該酸化物半導体膜55の第1の領域55aにチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)になりやすい。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10−13A以下という特性を得ることができる。従って、当該酸化物半導体膜55の第1の領域55aにチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合がある。
また、酸化物半導体膜55は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶構造、後述する微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC−OSは最も欠陥準位密度が低い。
なお、酸化物半導体膜55が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC−OSの領域、単結晶構造の領域の二種以上を有する混合膜であってもよい。混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC−OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域を有する単層構造がある。また、混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC−OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域の積層構造を有する場合がある。
ゲート絶縁膜57は、酸素を含む絶縁膜または窒素を含む絶縁膜を、単層または積層して形成することが好ましい。代表的には、酸素を含む絶縁膜として酸化物絶縁膜を用いることが可能であり、窒素を含む絶縁膜として窒化物絶縁膜を用いることが可能である。なお、酸化物半導体膜55との界面特性を向上させるため、ゲート絶縁膜57において少なくとも酸化物半導体膜55と接する領域は酸素を含む絶縁膜で形成することが好ましく、代表的には酸化物絶縁膜で形成することが好ましい。
酸化物絶縁膜として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn酸化物などを用いることができる。また、窒化物絶縁膜として、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
また、ゲート絶縁膜57として、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜を設けることで、酸化物半導体膜55の第1の領域55aからの酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜55の第1の領域55aへの水素、水等の侵入を防ぐことができる。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等を用いて形成することができる。
また、ゲート絶縁膜57として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
ゲート電極59は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、ニッケル、鉄、コバルト、タングステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電極59は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、マンガンを含む銅膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、マンガンを含む銅膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造、マンガンを含む銅膜上に銅膜を積層し、さらにその上にマンガンを含む銅膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた一または複数を組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
また、ゲート電極59は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを含むインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
また、図22に示すように、ゲート電極59は、積層構造であり、ゲート絶縁膜57と接する導電膜59a、および導電膜59aに接する導電膜59bを有してもよい。また、導電膜59aの端部は、導電膜59bの端部より外側に位置する。即ち、導電膜59aが、導電膜59bから迫り出した形状を有してもよい。
水素を含む絶縁膜65は、窒化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。窒化物絶縁膜として、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等を用いて形成することができる。水素を含む絶縁膜65に含まれる水素濃度は、1×1022atoms/cm3以上であると、酸化物半導体膜に水素を拡散させることが可能であるため、好ましい。
一対の導電膜68、69は、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、鉄、コバルト、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、マンガンを含む銅膜の単層構造、チタン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造、マンガンを含む銅膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造、マンガンを含む銅膜上に銅膜を積層し、さらにその上にマンガンを含む銅膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
絶縁膜67、79は、絶縁膜53またはゲート絶縁膜57の材料を適宜用いることができる。
なお、一対の導電膜68、69が銅を含む場合、絶縁膜79は、窒素を含む絶縁膜を用いて形成することで、銅の拡散を防ぐことが可能であり好ましい。窒素を含む絶縁膜の代表例としては、窒化物絶縁膜がある。窒化物絶縁膜は、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等を用いて形成することができる。
<半導体装置の作製方法>
次に、図1に示すトランジスタの作製方法について、図2および図3を用いて説明する。
トランジスタを構成する膜(絶縁膜、酸化物半導体膜、金属酸化物膜、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法を用いて形成することができる。あるいは、塗布法や印刷法で形成することができる。成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法が代表的であるが、熱CVD法でもよい。熱CVD法の例として、MOCVD(有機金属化学堆積:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法やALD(原子層成膜)法を使ってもよい。また、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層することで、各膜の界面における不純物量を低減できるため好ましい。
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行う。このように、熱CVD法は、プラズマを発生させない成膜方法であるため、プラズマダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行う。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブともよぶ。)を切り替えて2種類以上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の原料ガスと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスはキャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入してもよい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の単原子層を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の単原子層が第1の単原子層上に積層されて薄膜が形成される。
このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、微細なトランジスタを作製する場合に適している。
図2(A)に示すように、基板51上に、絶縁膜53および酸化物半導体膜54を形成する。
絶縁膜53は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。また、基板51上に絶縁膜を形成した後、該絶縁膜に酸素を添加して、絶縁膜53を形成することができる。絶縁膜に添加する酸素としては、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子イオン等がある。また、添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等がある。
酸化物半導体膜54の形成方法について以下に説明する。絶縁膜53上にスパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザーアブレーション法、熱CVD法等により酸化物半導体膜を形成する。次に、酸化物半導体膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて酸化物半導体膜の一部をエッチングすることで、図2(A)に示すように、酸化物半導体膜54を形成することができる。この後、マスクを除去する。
また、酸化物半導体膜54として印刷法を用いることで、素子分離された酸化物半導体膜54を直接形成することができる。
スパッタリング法で酸化物半導体膜を形成する場合、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、希ガスおよび酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、希ガスおよび酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。
また、ターゲットは、形成する酸化物半導体膜の組成にあわせて、適宜選択すればよい。
なお、酸化物半導体膜を形成する際に、例えば、スパッタリング法を用いる場合、基板温度を150℃以上750℃以下、好ましくは150℃以上450℃以下、さらに好ましくは200℃以上350℃以下として、酸化物半導体膜を成膜することで、CAAC−OS膜を形成することができる。
また、後述するCAAC−OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
成膜時の不純物混入を抑制することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制できる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下である成膜ガスを用いる。
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体積%とする。
また、酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行い、酸化物半導体膜の脱水素化または脱水化をしてもよい。加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。
加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素を含む不活性ガス雰囲気で行う。または、不活性ガス雰囲気で加熱した後、酸素雰囲気で加熱してもよい。なお、上記不活性雰囲気および酸素雰囲気に水素、水などが含まれないことが好ましい。処理時間は3分以上24時間以下とする。
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱処理時間を短縮することができる。
酸化物半導体膜を加熱しながら成膜することで、さらには酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜において、水素濃度を5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下とすることができる。
ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばInGaZnOX(X>0)膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してInO2層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを同時に導入してGaO層を形成し、更にその後Zn(CH3)2とO3ガスを同時に導入してZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてInGaO2層やInZnO2層、GaInO層、ZnInO層、GaZnO層などの混合化合物層を形成してもよい。なお、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングしたH2Oガスを用いてもよいが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)3ガスにかえて、In(C2H5)3ガスを用いてもよい。また、Ga(CH3)3ガスにかえて、Ga(C2H5)3ガスを用いてもよい。また、Zn(CH3)2ガスにかえてZn(C2H5)2ガスを用いてもよい。
ここでは、スパッタリング法により、厚さ35nmの酸化物半導体膜を形成した後、当該酸化物半導体膜上にマスクを形成し、酸化物半導体膜の一部を選択的にエッチングする。次に、マスクを除去した後、窒素および酸素を含む混合ガス雰囲気で加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜54を形成する。
なお、加熱処理は、350℃より高く650℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下で行うことで、後述するCAAC化率が、60%以上100%未満、好ましくは80%以上100%未満、より好ましくは90%以上100%未満、さらに好ましくは95%以上98%以下である酸化物半導体膜を得ることができる。また、水素、水等の含有量が低減された酸化物半導体膜を得ることが可能である。すなわち、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を形成することができる。
次に、図2(B)に示すように、絶縁膜56を形成した後、ゲート電極59を形成する。
絶縁膜56は、のちの工程によりゲート絶縁膜となる絶縁膜である。絶縁膜56は、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法、熱CVD法等で形成する。
絶縁膜56として酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体および酸化性気体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素等がある。
また、絶縁膜56として酸化ガリウム膜を形成する場合、MOCVD法を用いて形成することができる。
また、絶縁膜56として、MOCVD法やALD法などの熱CVD法を用いて、酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH)などのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン(O3)の2種類のガスを用いる。なお、テトラキスジメチルアミドハフニウムの化学式はHf[N(CH3)2]4である。また、他の材料液としては、テトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムなどがある。
また、絶縁膜56として、MOCVD法やALD法などの熱CVD法を用いて、酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(トリメチルアルミニウムTMAなど)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。なお、トリメチルアルミニウムの化学式はAl(CH3)3である。また、他の材料液としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)などがある。なお、ALD法で形成することで、被覆率が高く、膜厚の薄い絶縁膜56を形成することが可能である。
また、絶縁膜56として、MOCVD法やALD法などの熱CVD法を用いて、酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサクロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
ここでは、絶縁膜56として、プラズマCVD法により酸化窒化シリコン膜を形成する。
ゲート電極59の形成方法を以下に示す。はじめに、スパッタリング法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法、熱CVD法等により導電膜を形成し、導電膜上にリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜の一部をエッチングして、ゲート電極59を形成する。この後、マスクを除去する。
なお、ゲート電極59は、上記形成方法の代わりに、電解メッキ法、印刷法、インクジェット法等で形成してもよい。
また、ALDを利用する成膜装置により導電膜としてタングステン膜を成膜することができる。この場合には、WF6ガスとB2H6ガスを順次繰り返し導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF6ガスとH2ガスを同時に導入してタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代えてSiH4ガスを用いてもよい。
次に、図2(C)に示すように、ゲート電極59をマスクとして絶縁膜56をエッチングして、ゲート絶縁膜57を形成する。絶縁膜56を等方的にエッチングすることで、ゲート電極59と重なる領域の一部をエッチングすることが可能である。即ち、側面の一部がゲート電極59の側面より内側に位置するゲート絶縁膜57を形成することができる。
次に、図2(D)に示すように、ゲート電極59をマスクとして、酸化物半導体膜54に不純物元素62を添加する。この結果、酸化物半導体膜54の露出部に不純物元素が添加される。また、ゲート絶縁膜57において膜厚が薄い領域では、ゲート絶縁膜57を介して、不純物元素が酸化物半導体膜に添加される。不純物元素62の添加によるダメージを受け、酸化物半導体膜54には、欠陥、代表的には酸素欠損が形成される。なお、不純物元素によっては、酸化物半導体膜54に酸素欠損を形成するが、酸化物半導体膜54内には残存せず、放出される不純物元素もあるが、このような現象も含めて、ここでは、酸化物半導体膜に不純物元素を添加する、と表記して説明する。
不純物元素62の添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等がある。プラズマ処理法の場合、添加する不純物元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、プラズマ処理を行うことによって、加速させた不純物元素イオンを酸化物半導体膜54に衝突させ、酸化物半導体膜54に酸素欠損を形成することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置、マイクロ波を用いた高密度プラズマCVD装置等を用いることができる。また、プラズマ処理を行う場合は、平行平板のカソード側に基板を設置し、基板51側にバイアスが印加されるように、RF電力を供給すればよい。該RF電力としては、例えば、電力密度を0.1W/cm2以上2W/cm2以下とすればよい。この結果、酸化物半導体膜54へ不純物元素の添加量を増加させることが可能であり、酸化物半導体膜54により多くの酸素欠損を形成できる。
なお、不純物元素62の原料ガスとして、B2H6、PH3、CH4、N2、NH3、AlH3、AlCl3、SiH4、Si2H6、F2、HF、H2および希ガスの一以上を用いることができる。または、希ガスで希釈されたB2H6、PH3、N2、NH3、AlH3、AlCl3、F2、HFおよびH2の一以上を用いることができる。希ガスで希釈されたB2H6、PH3、N2、NH3、AlH3、AlCl3、F2、HFおよびH2の一以上を用いて酸化物半導体膜54に添加することで、希ガスと、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、リンおよび塩素の一以上とを同時に酸化物半導体膜54に添加することができる。
または、希ガスを酸化物半導体膜54に添加した後、B2H6、PH3、CH4、N2、NH3、AlH3、AlCl3、SiH4、Si2H6、F2、HFおよびH2の一以上を酸化物半導体膜55に添加してもよい。
または、B2H6、PH3、CH4、N2、NH3、AlH3、AlCl3、SiH4、Si2H6、F2、HFおよびH2の一以上を酸化物半導体膜54に添加した後、希ガスを酸化物半導体膜55に添加してもよい。
イオンドーピング法またはイオン注入法を用いる場合、加速電圧、ドーズ量などの注入条件を適宜設定し、または通過させるゲート絶縁膜57の膜厚を適宜制御すればよい。例えば、イオン注入法でアルゴンの添加を行う場合、加速電圧10kV、ドーズ量は1×1013ions/cm2以上1×1016ions/cm2以下とすればよく、例えば、1×1014ions/cm2とすればよい。また、イオン注入法でリンイオンの添加を行う場合、加速電圧30kV、ドーズ量は1×1013ions/cm2以上5×1016ions/cm2以下とすればよく、例えば、1×1015ions/cm2とすればよい。
なお、不純物元素62の代わりに、酸化物半導体膜54に紫外線等を照射して、酸化物半導体膜54に酸素欠損を形成してもよい。または、酸化物半導体膜54にレーザ光を照射して、酸化物半導体膜54に酸素欠損を形成してもよい。
なお、ゲート電極59が露出した状態で不純物元素62を添加すると、ゲート電極59の一部が剥離し、ゲート絶縁膜57の側面に付着してしまう場合がある。この結果、トランジスタのリーク電流が増大してしまう。このため、ゲート電極59の上面をマスクで覆った状態で、酸化物半導体膜54に不純物元素62を添加することで、ゲート電極59の一部がゲート絶縁膜57の側壁に付着することを防ぐことができる。
次に、図3(A)に示すように、酸化物半導体膜54、ゲート絶縁膜57、およびゲート電極59上に水素を含む絶縁膜64を形成する。水素を含む絶縁膜64の形成方法としては、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD)法等がある。なお、水素を含む絶縁膜64の成膜方法として、ALD(原子層成膜)法を用いることで、段差被覆性に優れた水素を含む絶縁膜64を形成することができる。
水素を含む絶縁膜64には水素が含まれている。このため、酸化物半導体膜54において不純物元素が添加された領域と、水素を含む絶縁膜64とが接することで、水素を含む絶縁膜64に含まれる水素が、酸化物半導体膜において不純物元素が添加された領域に移動する。この結果、不純物元素が添加されない第1の領域55aおよび不純物元素および水素を含む第2の領域55b、55cを有する酸化物半導体膜55が形成される。なお、水素を含む絶縁膜64に含まれる水素は、ゲート絶縁膜57であって膜厚の薄い領域を介して酸化物半導体膜55の一部に拡散する。この結果、第2の領域55b、55cの一部は、ゲート絶縁膜57と重なる場合がある。以上の工程により、ゲート電極59の一部と重なる第2の領域55b、55cを形成することができる。
また、第2の領域55b、55cは、不純物元素の添加により生じた酸素欠損、および水素が含まれる。酸素欠損および水素の相互作用により、第2の領域55b、55cは導電性が高くなる。すなわち、第2の領域55b、55cは、低抵抗領域となる。
次に、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは200℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。当該工程により、第2の領域55b、55cの導電性がさらに高まる。
次に、図3(B)に示すように、絶縁膜66を形成してもよい。絶縁膜66を形成することで、のちに形成される一対の導電膜と、ゲート電極59との間における寄生容量を低減することができる。
次に、水素を含む絶縁膜64および絶縁膜66に開口部を形成し、第2の領域55b、55cの一部を露出させた後、一対の導電膜68、69を形成する。次に、絶縁膜67、一対の導電膜68、69上に絶縁膜79を形成する(図3(C)参照。)。
一対の導電膜68、69は、ゲート電極59と同様の形成方法を適宜用いることができる。絶縁膜79は、絶縁膜53、絶縁膜56と同様に形成することができる。
以上の工程により、トランジスタを作製することができる。
本実施の形態に示すトランジスタは、ゲート電極59の一部と、酸化物半導体膜55に含まれる導電性の高い第2の領域55b、55cの一部とが重なるため、オン電流が大きい。また、ゲート電極59と、一対の導電膜68、69が重なる領域がないため、寄生容量を低減することが可能であり、オン電流が大きい。また、本実施の形態に示すトランジスタは、抵抗率の変動量の小さい領域を形成できるため、従来と比べ、オン電流が向上すると共に、トランジスタのばらつきを低減できる。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置および半導体装置の作製方法の一形態を、図4乃至図6を用いて説明する。
<半導体装置の構成>
図4に、半導体装置に含まれるトランジスタの一例として、トップゲート・セルフアライン構造のトランジスタの断面図を示す。本実施の形態に示すトランジスタは、実施の形態1に示すトランジスタと比較して、ゲート絶縁膜が積層構造である点が異なる。
図4(A)に示すトランジスタは、酸化物半導体膜55と、酸化物半導体膜55に接するゲート絶縁膜57と、ゲート絶縁膜57と接し、且つ酸化物半導体膜55と重畳するゲート電極59と、を有する。ゲート絶縁膜57は、第1の絶縁膜57aおよび第2の絶縁膜57bが、酸化物半導体膜55側から順に積層されている。即ち、第1の絶縁膜57aは、酸化物半導体膜55に接する。第2の絶縁膜57bは、第1の絶縁膜57aおよびゲート電極59の間に設けられる。なお、ここでは、図示しないが、第1の絶縁膜57a及び第2の絶縁膜57bの間に、別途絶縁膜を有してもよい。または、第2の絶縁膜57b及びゲート電極59の間に、別途絶縁膜を有してもよい。
第1の絶縁膜57aは、酸化物半導体膜55との界面において欠陥準位を形成しにくい材料を用いて形成することが好ましく、代表的には酸素を含む絶縁膜を用いて形成することが好ましい。酸素を含む絶縁膜の代表例としては、酸化物絶縁膜がある。酸化物絶縁膜は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、Ga−Zn酸化物等を用いて形成することができる。
第2の絶縁膜57bは、エッチングされる際において、等方的にエッチングされる材料を用いて形成する。第2の絶縁膜57bは、代表的には窒素を含む絶縁膜を用いて形成することができる。窒素を含む絶縁膜の代表例としては、窒化物絶縁膜がある。窒化物絶縁膜は、窒化酸化シリコン、または窒化シリコンを用いて形成することができる。
また、トランジスタに含まれる酸化物半導体膜55は、基板51上の絶縁膜53上に形成される。また、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cに接する水素を含む絶縁膜65が設けられる。
また、水素を含む絶縁膜65に接する絶縁膜67が設けられてもよい。また、水素を含む絶縁膜65および絶縁膜67の開口部において、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cと接する一対の導電膜68、69が、設けられてもよい。また、絶縁膜67、一対の導電膜68、69上に絶縁膜79が、設けられてもよい。
本実施の形態に示すトランジスタは、ゲート絶縁膜57が、側面において、凹部を有することを特徴とする。具体的には、第2の絶縁膜57bが、ゲート電極59と比較して、幅が狭い領域を有する。即ち、第2の絶縁膜57bの側面が、ゲート電極59の側面の一部より内側である領域を有する。
第1の絶縁膜57aは、第2の領域55b、55cに不純物元素を添加することが可能な厚さとすることが好ましい。第1の絶縁膜57aの厚さは、代表的には5nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下とすることができる。
第2の絶縁膜57bは、第1の絶縁膜57aと共に、ゲート絶縁膜として機能できる厚さとすることが好ましい。第2の絶縁膜57bの厚さは、5nm以上400nm以下、より好ましくは10nm以上300nm以下、さらに好ましくは50nm以上250nm以下とすることができる。
また、本実施の形態に示すトランジスタは、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cが、ゲート電極59の一部と重なる領域を有することを特徴とする。
ここで、図4(B)乃至図4(D)に、図4(A)に示すトランジスタに含まれる酸化物半導体膜55近傍の拡大断面図を示す。
図4(B)に示すように、第2の絶縁膜57bの側面の一部または全部は、ゲート電極59の側面より内側に位置する。さらに、第1の絶縁膜57aの幅は、ゲート電極59と比較して、狭い。また、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cは、ゲート電極59の一部と重なる領域を有する。該領域をオーバーラップ領域Lovということができる。
または、図4(C)に示すように、第2の絶縁膜57bの側面の一部または全部は、ゲート電極59の側面より内側に位置する。さらに、第1の絶縁膜57aの幅は、ゲート電極59と比較して、広い。また、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cは、ゲート電極59の一部と重なるオーバーラップ領域Lovを有する。
または、図4(D)に示すように、第2の絶縁膜57bの側面の一部または全部は、ゲート電極59の側面より内側に位置する。さらに、第1の絶縁膜57aの幅は、ゲート電極59の幅と略同一である。また、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cは、ゲート電極59の一部と重なるオーバーラップ領域Lovを有する。
なお、オーバーラップ領域Lovの長さは、チャネル長Lの20%未満、または10%未満、または5%未満、または2%未満であることが好ましい。
第1の絶縁膜57aは、酸化物半導体膜55との界面における欠陥準位を形成しにくい材料を用いて形成される。このため、第1の絶縁膜57aが酸化物半導体膜55と接することから、酸化物半導体膜55およびゲート絶縁膜57の界面における欠陥準位密度を低くすることができる。また、第2の絶縁膜57bは、等方的にエッチングすることが可能な材料を用いて形成される。このため、ゲート電極59をマスクとしてエッチングすることで、ゲート電極59より幅の狭い第2の絶縁膜57bを形成することができる。なお、第2の絶縁膜57bは、エッチング工程におけるエッチング速度が酸化物半導体膜と異なってもよい。この場合、酸化物半導体膜が露出した状態において、第2の絶縁膜を選択的に、且つ等方的に、エッチングすることができる。
また、第1の絶縁膜57aは膜厚が薄いため、第1の絶縁膜57aを介して、第2の領域55b、55cに不純物元素を添加することが可能である。さらには、水素を含む絶縁膜65に含まれる水素を第2の領域55b、55cに拡散させることが可能である。この結果、第1の絶縁膜57aの下に第2の領域55b、55cを形成することが可能である。
図4に示すトランジスタは、ゲート絶縁膜57が、側面において、凹部を有する。このため、酸素欠損を形成するために酸化物半導体膜55に不純物元素を添加する際に、ゲート絶縁膜の側面の凹部内にも不純物元素が侵入する。さらには、第1の絶縁膜57aは、膜厚が薄いため、第1の絶縁膜57aを介して、酸化物半導体膜55に不純物元素が添加される。これらの結果、酸化物半導体膜55であって、ゲート電極59の一部と重なる領域に、不純物元素が添加されると共に、酸素欠損が形成される。
また、不純物元素が添加された領域に水素を含む絶縁膜65が接することで直接、もしくは第1の絶縁膜57aを介して、水素を含む絶縁膜65に含まれる水素が、不純物元素が添加された領域に拡散する。
これらの結果、酸化物半導体膜55において、ゲート電極59の一部と重なる領域に、酸素欠損及び水素を含む第2の領域55b、55cが形成される。
即ち、本実施の形態は、ゲート絶縁膜57の形状を利用して酸化物半導体膜に選択的に不純物元素を添加すること、及びゲート絶縁膜57の形状を利用して酸化物半導体膜に選択的に水素を拡散させること、により、酸化物半導体膜に酸素欠損及び水素を含む第2の領域55b、55cを選択的に形成する。実施の形態3で後述するが、水素は、酸素欠損において安定であり、酸素欠損から水素は放出されにくい。このため、第2の領域55bに含まれる水素は、チャネル領域である第1の領域55aへ拡散しにくく、トランジスタの電気特性の劣化を低減することができる。
また、酸素欠損に水素が入り伝導帯近傍にドナー準位が形成され、導電性が高くなる。このため、第2の領域55b、55cは、ソース領域およびドレイン領域としての機能を有する。第2の領域55b、55cがゲート電極59の一部と重なる領域は、オーバーラップ領域Lovとなる。本実施の形態に示すトランジスタは、オーバーラップ領域を有するため、チャネル領域とソース領域およびドレイン領域との間に、高抵抗領域が形成されない。この結果、本実施の形態に示すトランジスタは、オン電流が高い。また、トランジスタにおいて、チャネル領域とソース領域およびドレイン領域との間に高抵抗領域を有すると、トランジスタの電気特性の劣化が生じやすいが、本実施の形態に示すトランジスタは、オーバラップ領域を有するため、電気特性の劣化が少なく、信頼性が高い。
また、本実施の形態に示すトランジスタにおいて、第2の領域55b、55cは、不純物元素の添加により酸素欠損が形成されると共に、水素を含む。このため、第2の領域55b、55cにおける抵抗率を低減することが可能であるとともに、トランジスタごとの第2の領域55b、55cの抵抗率のばらつきを低減することが可能である。すなわち、酸化物半導体膜に不純物元素を添加し、酸素欠損を形成することで、第2の領域55b、55cの抵抗率の制御が可能である。
<半導体装置の作製方法1>
次に、図4に示すトランジスタの作製方法について、図5および図6を用いて説明する。
実施の形態1と同様に、図5(A)に示すように、基板51上に、絶縁膜53および酸化物半導体膜54を形成する。
次に、図5(B)に示すように、第1の絶縁膜56aおよび第2の絶縁膜56bを順に形成する。次に、第2の絶縁膜56b上に、ゲート電極59を形成する。
次に、図5(C)に示すように、ゲート電極59をマスクとして第2の絶縁膜56bをエッチングして、第2の絶縁膜57bを形成する。ここでは、第1の絶縁膜56aと比較して、第2の絶縁膜56bのエッチング速度の速いエッチャントを用いたウエットエッチング法を用いることができる。または、第1の絶縁膜56aと比較して、第2の絶縁膜56bのエッチング速度が速く、且つ等方的にエッチングすることが可能なエッチングガスを用いたドライエッチング法を用いることができる。この結果、側面に凹部を有する第2の絶縁膜57bを形成することができる。
例えば、第2の絶縁膜56bが窒化シリコン膜の場合、NF3、SiF4、CF4、C4F8等のフッ素化合物ガス、またはCF4および酸素の混合ガスを用いたドライエッチング法により、等方的に窒化シリコン膜をエッチングすることが可能であり、側面に凹部を有する第2の絶縁膜57bを形成することができる。
または、第1の絶縁膜56aが酸化シリコン膜であり、第2の絶縁膜56bが窒化シリコン膜の場合、H3PO4を用いたウエットエッチング法により、窒化シリコン膜を選択的にエッチングできる。また、ウエットエッチング法は、等方的にエッチングすることが可能であるため、側面に凹部を有する第2の絶縁膜57bを形成することができる。
次に、図5(D)に示すように、ゲート電極59をマスクとして、第1の絶縁膜56aをエッチングして、第1の絶縁膜57aを形成する。以上の工程により、第1の絶縁膜57aおよび第2の絶縁膜57bが積層されたゲート絶縁膜57を形成すると共に、酸化物半導体膜54の一部を露出させることができる。ここでは、歩留まりを高めるために、酸化物半導体膜54をエッチングせず、第1の絶縁膜56aを選択的にエッチングすることが好ましく、ドライエッチング法を用いることが好ましい。
次に、実施の形態1と同様に、図6(A)に示すように、ゲート電極59をマスクとして、酸化物半導体膜54に不純物元素62を添加する。この結果、酸化物半導体膜54の露出部に不純物元素が添加される。また、第1の絶縁膜57aを介して、酸化物半導体膜に不純物元素が添加される。なお、不純物元素62の添加によるダメージを受け、酸化物半導体膜54には、欠陥、代表的には酸素欠損が形成される。
次に、実施の形態1と同様に、図6(B)に示すように、酸化物半導体膜54、ゲート絶縁膜57、およびゲート電極59上に、水素を含む絶縁膜64を形成する。
水素を含む絶縁膜64には水素が含まれている。このため、酸化物半導体膜54において不純物元素が添加された領域と、水素を含む絶縁膜64とが接することで、水素を含む絶縁膜64に含まれる水素が、酸化物半導体膜において不純物元素が添加された領域に移動する。この結果、不純物元素が添加されない第1の領域55aおよび不純物元素および水素を含む第2の領域55b、55cを有する酸化物半導体膜55が形成される。なお、絶縁膜64に含まれる水素は、第1の絶縁膜57aを介して酸化物半導体膜55の一部に拡散する。この結果、第2の領域55b、55cの一部は、第1の絶縁膜57aと重なる場合がある。以上の工程により、ゲート電極59の一部と重なる第2の領域55b、55cを形成することができる。
次に、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、好ましくは200℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下とする。当該工程により、第2の領域55b、55cの導電性がさらに高まる。
次に、実施の形態1と同様に、絶縁膜66を形成してもよい。絶縁膜66を形成することで、のちに形成される一対の導電膜と、ゲート電極59との間における寄生容量を低減することができる。
次に、実施の形態1と同様に、水素を含む絶縁膜64および絶縁膜66に開口部を形成し、第2の領域55b、55cの一部を露出させた後、一対の導電膜68、69を形成する。次に、絶縁膜67、一対の導電膜68、69上に絶縁膜79を形成する(図6(C)参照)。
以上の工程により、トランジスタを作製することができる。
<半導体装置の作製方法2>
第1の絶縁膜57aおよび第2の絶縁膜57bの形成方法の変形例を説明する。
実施の形態1と同様に、図7(A)に示すように、基板51上に、絶縁膜53、酸化物半導体膜54、第1の絶縁膜56a、第2の絶縁膜56b、およびゲート電極59を形成する。
次に、図7(B)に示すように、ゲート電極59をマスクとして、第1の絶縁膜56aおよび第2の絶縁膜56bをそれぞれエッチングして、第1の絶縁膜57aおよび第2の絶縁膜57cを形成する。
歩留まりを高めるために、酸化物半導体膜54をエッチングせず、第1の絶縁膜56aおよび第2の絶縁膜56bを選択的にエッチングすることが好ましい。このため、ここでは、ドライエッチング法を用いる。
次に、図7(C)に示すように、第2の絶縁膜57cをエッチングして、側面に凹部を有する第2の絶縁膜57bを形成する。ここでは、第2の絶縁膜56bとして窒化シリコン膜を用い、NF3、SiF4、CF4、C4F8等のフッ素化合物ガス、またはCF4および酸素の混合ガスを用いたドライエッチング法により、等方的に窒化シリコン膜をエッチングすることが可能であり、側面に凹部を有する第2の絶縁膜57bを形成することができる。
こののち、実施の形態1または実施の形態2と同様の工程を経て、トランジスタを作製することができる。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cが、酸素欠損及び水素を含むことで、抵抗率が低減することについて説明する。具体的には、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cに形成されるVoHについて説明する。なお、ここでは、酸素欠損Vo中に水素原子Hがある状態をVoHと表記する。
<(1). VoHの形成しやすさおよび安定性>
酸化物半導体膜(以下、IGZOと示す。)が結晶の場合、室温では、Hは、優先的にab面に沿って拡散する。また、450℃の加熱処理の際には、Hは、ab面およびc軸方向それぞれに拡散する。そこで、ここでは、IGZOに酸素欠損Voが存在する場合、Hは酸素欠損Vo中に入りやすいか否かについて説明する。
計算には、図8に示すInGaZnO4結晶モデルを用いた。ここで、VoH中のHがVoから出ていき、酸素と結合する反応経路の活性化障壁(Ea)を、NEB(Nudged Elastic Band)法を用いて計算した。計算条件を表1に示す。
また、InGaZnO4結晶モデルにおいて、酸素が結合する金属元素およびその数の違いから、図8に示すように酸素サイト1乃至酸素サイト4がある。ここでは、酸素欠損Voを形成しやすい酸素サイト1および酸素サイト2について計算を行った。
はじめに、酸素欠損Voを形成しやすい酸素サイト1として、3個のInと1個のZnと結合した酸素サイトについて計算を行った。
初期状態のモデルを図9(A)に示し、最終状態のモデルを図9(B)に示す。また、初期状態および最終状態において、算出した活性化障壁(Ea)を図10に示す。なお、ここでの初期状態とは、酸素欠損Vo中にHがある状態(VoH)であり、最終状態とは、酸素欠損Voと、1個のGaおよび2個のZnと結合した酸素とHとが結合した状態(H−O)を有する構造である。
計算の結果、酸素欠損Vo中のHが他のOと結合するには約1.52eVのエネルギーが必要であるのに対して、Oと結合したHが酸素欠損Vo中に入るには約0.46eVのエネルギーが必要であった。
ここで、計算により得られた活性化障壁(Ea)と式(1)より、反応頻度(Γ)を算出した。なお、式(1)において、kBはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である。
頻度因子ν=1013[1/sec]と仮定して350℃における反応頻度を算出した。図9(A)に示すモデルから図9(B)に示すモデルへHが移動する頻度は5.52×100[1/sec]であった。また、図9(B)に示すモデルから図9(A)に示すモデルへHが移動する頻度は1.82×109[1/sec]であった。このことから、IGZO中を拡散するHは、近くに酸素欠損VoがあるとVoHを形成しやすく、一旦VoHを形成すると酸素欠損Voから放出されにくいと考えられる。
次に、酸素欠損Voを形成しやすい酸素サイト2として、1個のGaと2個のZnと結合した酸素サイトについて計算を行った。
初期状態のモデルを図11(A)に示し、最終状態のモデルを図11(B)に示す。また、初期状態および最終状態において、算出した活性化障壁(Ea)を図12に示す。なお、ここでの初期状態とは、酸素欠損Vo中にHがある状態(VoH)であり、最終状態とは、酸素欠損Voと、1個のGaおよび2個のZnと結合した酸素とHとが結合した状態(H−O)を有する構造である。
計算の結果、酸素欠損Vo中のHが他のOと結合するには約1.75eVのエネルギーが必要であるのに対して、Oと結合したHが酸素欠損Vo中に入るには約0.35eVのエネルギーが必要であった。
また、計算により得られた活性化障壁(Ea)と上記の式(1)より、反応頻度(Γ)を算出した。
頻度因子ν=1013[1/sec]と仮定して350℃における反応頻度を算出した。図11(A)に示すモデルから図11(B)に示すモデルへHが移動する頻度は7.53×10−2[1/sec]であった。また、図11(B)に示すモデルから図11(A)に示すモデルへHが移動する頻度は1.44×1010[1/sec]であった。このことから、一旦VoHを形成すると酸素欠損VoからHは放出されにくいと考えられる。
以上のことから、加熱処理時にIGZO中のHは拡散し易く、酸素欠損Voがある場合は酸素欠損Voの中に入ってVoHとなりやすいことが分かった。
<(2). VoHの遷移レベル>
IGZO中において酸素欠損VoとHが存在する場合、<(1). VoHの形成しやすさおよび安定性>で示した、NEB法を用いた計算より、酸素欠損VoとHはVoHを形成しやすく、さらにVoHは安定であると考えられる。そこで、VoHがキャリアトラップに関与するかを調べるため、VoHの遷移レベルの算出を行った。
計算にはInGaZnO4結晶モデル(112原子)を用いた。図8に示す酸素サイト1および酸素サイト2に対してVoHモデルを作成し、遷移レベルの算出を行った。計算条件を表2に示す。
実験値に近いバンドギャップが出るよう、交換項の混合比を調整したことで、欠陥のないInGaZnO4結晶モデルのバンドギャップは3.08eVとなり、実験値の3.15eVと近い結果となった。
欠陥Dをもつモデルの遷移レベル(ε(q/q’))は、以下の式(2)により算出される。なお、ΔE(Dq)は欠陥Dの電荷qにおける形成エネルギーであり、式(3)より算出される。
式(2)および式(3)において、Etot(Dq)は欠陥Dを含むモデルの電荷qにおける全エネルギー、Etot(bulk)は欠陥のないモデルの全エネルギー、Δniは欠陥に関する原子iの増減数、μiは原子iの化学ポテンシャル、εVBMは欠陥のないモデルにおける価電子帯上端のエネルギー、ΔVqは静電ポテンシャルに関する補正項、EFはフェルミエネルギーである。
算出したVoHの遷移レベルを図13に示す。図13中の数値は伝導帯下端からの深さである。図13より、酸素サイト1に対するVoHの遷移レベルは伝導帯下端の下0.05eVに存在し、酸素サイト2に対するVoHの遷移レベルは伝導帯下端の下0.11eVに存在するため、それぞれのVoHは電子トラップに関与すると考えられる。すなわち、VoHはドナーとして振る舞うことが明らかになった。また、VoHを有するIGZOは抵抗率が低く、導電性を有することが明らかになった。
<(3)抵抗率の温度依存性>
ここで、酸化物導電体で形成される膜(以下、酸化物導電体膜という。)における、抵抗率の温度依存性について、図14を用いて説明する。
ここでは、酸化物導電体膜を有する試料を作製した。酸化物導電体膜としては、酸化物半導体膜が窒化シリコン膜に接することで形成された酸化物導電体膜(OC_SiNx)、ドーピング装置において酸化物半導体膜にアルゴンが添加され、且つ窒化シリコン膜と接することで形成された酸化物導電体膜(OC_Ar dope+SiNx)、およびプラズマ処理装置において酸化物半導体膜がアルゴンプラズマに曝され、且つ窒化シリコン膜と接することで形成された酸化物導電体膜(OC_Ar plasma+SiNx)を作製した。なお、窒化シリコン膜は、水素を含む。
酸化物導電体膜(OC_SiNx)を含む試料の作製方法を以下に示す。ガラス基板上に、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により形成した後、酸素プラズマに曝し、酸素イオンを酸化窒化シリコン膜に添加することで、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン膜を形成した。次に、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン膜上に、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1.2のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により、厚さ100nmのIn−Ga−Zn酸化物膜を形成し、450℃の窒素雰囲気で加熱処理した後、450℃の窒素および酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理した。次に、プラズマCVD法で、厚さ100nmの窒化シリコン膜を形成した。次に、350℃の窒素および酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理した。
酸化物導電体膜(OC_Ar dope+SiNx)を含む試料の作製方法を以下に示す。ガラス基板上に、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により形成した後、酸素プラズマに曝し、酸素イオンを酸化窒化シリコン膜に添加することで、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン膜を形成した。次に、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン膜上に、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1.2のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により、厚さ100nmのIn−Ga−Zn酸化物膜を形成し、450℃の窒素雰囲気で加熱処理した後、450℃の窒素および酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理した。次に、ドーピング装置を用いて、In−Ga−Zn酸化物膜に、加速電圧を10kVとし、ドーズ量が5×1014/cm2のアルゴンを添加して、In−Ga−Zn酸化物膜に酸素欠損を形成した。次に、プラズマCVD法で、厚さ100nmの窒化シリコン膜を形成した。次に、350℃の窒素および酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理した。
酸化物導電体膜(OC_Ar plasma+SiNx)を含む試料の作製方法を以下に示す。ガラス基板上に、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により形成した後、酸素プラズマに曝すことで、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン膜を形成した。次に、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン膜上に、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1.2のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により、厚さ100nmのIn−Ga−Zn酸化物膜を形成し、450℃の窒素雰囲気で加熱処理した後、450℃の窒素および酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理した。次に、プラズマ処理装置において、アルゴンプラズマを発生させ、加速させたアルゴンイオンをIn−Ga−Zn酸化物膜に衝突させることで酸素欠損を形成した。次に、プラズマCVD法で、厚さ100nmの窒化シリコン膜を形成した。次に、350℃の窒素および酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理した。
次に、各試料の抵抗率を測定した結果を図14に示す。ここで、抵抗率の測定は4端子のvan−der−Pauw法で行った。図14において、横軸は測定温度を示し、縦軸は抵抗率を示す。また、酸化物導電体膜(OC_SiNx)の測定結果を四角印で示し、酸化物導電体膜(OC_Ar dope+SiNx)の測定結果を丸印で示し、酸化物導電体膜(OC_Ar plasma+SiNx)の測定結果を三角印で示す。
なお、図示しないが、窒化シリコン膜と接しない酸化物半導体膜は、抵抗率が高く、抵抗率の測定が困難であった。このため、酸化物導電体膜は、酸化物半導体膜より抵抗率が低いことがわかる。
図14からわかるように、酸化物導電体膜(OC_Ar dope+SiNx)および酸化物導電体膜(OC_Ar plasma+SiNx)が、酸素欠損および水素を含む場合、抵抗率の変動が小さい。代表的には、80K以上290K以下において、抵抗率の変動率は、プラスマイナス20%未満である。または、150K以上250K以下において、抵抗率の変動率は、プラスマイナス10%未満である。即ち、酸化物導電体は、縮退半導体であり、伝導帯端とフェルミ準位とが一致または略一致していると推定される。このため、酸化物導電体膜をトランジスタのソース領域およびドレイン領域として用いることで、酸化物導電体膜とソース電極およびドレイン電極として機能する導電膜との接触がオーミック接触となり、酸化物導電体膜とソース電極およびドレイン電極として機能する導電膜との接触抵抗を低減できる。また、酸化物導電体の抵抗率は温度依存性が低いため、酸化物導電体膜とソース電極およびドレイン電極として機能する導電膜との接触抵抗の変動量が少なく、信頼性の高いトランジスタを作製することが可能である。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
実施の形態1乃至実施の形態3に適用可能なゲート電極の構成について、図15を用いて説明する。
本実施の形態では、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cと同様に、導電性を有する酸化物半導体膜を用いてゲート電極60を形成してもよい(図15参照。)。導電性を有する酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜55と同様に透光性を有するため、透光性を有するトランジスタを作製することができる。
なお、導電性を有する酸化物半導体膜は、金属で形成された導電膜と比較すると抵抗率が高いため、基板51として大面積基板を用いる場合、ゲート電極60に接続する導電膜77を絶縁膜67上に設けることが好ましい。
図15に示すトランジスタの作製方法を、図2および図3を用いて説明する。
図2(B)の工程において、ゲート電極59の代わりに酸化物半導体膜を形成する。
次に、図2(C)に示すように、ゲート絶縁膜57を形成した後、酸化物半導体膜54およびゲート絶縁膜57上の酸化物半導体膜に不純物元素62を添加する。
次に、図3(A)に示すように、水素を含む絶縁膜64を形成することで、酸化物半導体膜55に含まれる第2の領域55b、55cと同様に、導電性を有するゲート電極60(図15参照。)を形成することができる。
次に、開口部を有する絶縁膜67を形成した後、一対の導電膜68、69を形成する。次に、開口部を有する絶縁膜79を形成した後、一対の導電膜68、69と同様の方法を用いて、ゲート電極60に接続する導電膜77(図15参照。)を作製する。
以上の工程により、セルフアライン構造のトランジスタを作製することが可能である。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、先に示す実施の形態に適用可能な酸化物半導体膜の構造について、図16を用いて説明する。なお、ここでは、実施の形態1に示すトランジスタを用いて説明するが、適宜先に示す実施の形態に示すトランジスタに本実施の形態を適用することが可能である。
図16(A)に示すトランジスタは、実施の形態1の図1に示すトランジスタと同じ構造であるが、酸化物半導体膜55の構造が異なる。酸化物半導体膜55近傍を囲む領域71の拡大図を図16(B)乃至図16(D)に示す。
図16(B)に示すように、酸化物半導体膜55は、絶縁膜53と接する第1の酸化物半導体膜55_1と、第1の酸化物半導体膜55_1およびゲート絶縁膜57と接する第2の酸化物半導体膜55_2を有する。
または、図16(C)に示すように、酸化物半導体膜55は、絶縁膜53と接する第2の酸化物半導体膜55_2と、第2の酸化物半導体膜55_2およびゲート絶縁膜57と接する第3の酸化物半導体膜55_3を有する。
または、図16(D)に示すように、酸化物半導体膜55は、絶縁膜53と接する第1の酸化物半導体膜55_1と、第1の酸化物半導体膜55_1と接する第2の酸化物半導体膜55_2と、第2の酸化物半導体膜55_2およびゲート絶縁膜57と接する第3の酸化物半導体膜55_3を有する。
第1の酸化物半導体膜55_1、第2の酸化物半導体膜55_2、および第3の酸化物半導体膜55_3がIn−M−Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、Sn、La、Ce、NdまたはHf)の場合、第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3をIn:M:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、第2の酸化物半導体膜55_2をIn:M:Zn=x2:y2:z2[原子数比]とすると、y1/x1がy2/x2よりも大きく、好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも1.5倍以上である。さらに好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも2倍以上大きく、より好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも3倍以上大きい。このとき、第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3において、y1がx1以上であると、当該第2の酸化物半導体膜55_2を用いたトランジスタに安定した電気特性を付与できるため好ましい。一方、y1がx1の3倍以上になると、当該第2の酸化物半導体膜55_2を用いたトランジスタの電界効果移動度が低下してしまうため、y1はx1の3倍未満であると好ましい。
第2の酸化物半導体膜55_2がIn−M−Zn酸化物(Mは、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)の場合、第2の酸化物半導体膜55_2を成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x1:y1:z1とすると、x1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z1/y1を1以上6以下とすることで、第2の酸化物半導体膜55_2としてCAAC−OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:1.5、In:M:Zn=2:1:2.3、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2等がある。
第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3がIn−M−Zn酸化物(Mは、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)の場合、第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3を成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x2:y2:z2とすると、x2/y2<x1/y1であって、z2/y2は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z2/y2を1以上6以下とすることで、第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3としてCAAC−OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:6、In:M:Zn=1:3:8、In:M:Zn=1:4:3、In:M:Zn=1:4:4、In:M:Zn=1:4:5、In:M:Zn=1:4:6、In:M:Zn=1:6:3、In:M:Zn=1:6:4、In:M:Zn=1:6:5、In:M:Zn=1:6:6、In:M:Zn=1:6:7、In:M:Zn=1:6:8、In:M:Zn=1:6:9等がある。
なお、第1の酸化物半導体膜55_1、第2の酸化物半導体膜55_2および第3の酸化物半導体膜55_3の原子数比はそれぞれ、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
なお、原子数比はこれらに限られず、必要とする半導体特性に応じて適切な原子数比のものを用いればよい。
また、第1の酸化物半導体膜55_1または/および第3の酸化物半導体膜55_3として、酸化ガリウムを用いて形成することができる。第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3として、酸化ガリウムを用いることで、トランジスタのリーク電流を低減することが可能である。
また、図16(D)において、第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3は同じ組成でもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3としてIn:Ga:Zn=1:3:2、1:3:4、または1:4:5の原子数比のIn−Ga−Zn酸化物を用いてもよい。
または、図16(D)において、第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3は異なった組成でもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜55_1としてIn:Ga:Zn=1:3:2の原子数比のIn−Ga−Zn酸化物を用い、第3の酸化物半導体膜55_3としてIn:Ga:Zn=1:3:4または1:4:5の原子数比のIn−Ga−Zn酸化物を用いてもよい。
第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3の厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下とする。第2の酸化物半導体膜55_2の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。なお、第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3はそれぞれ第2の酸化物半導体膜55_2より厚さを薄くすることで、トランジスタのしきい値電圧の変動量を低減することが可能である。また、第3の酸化物半導体膜55_3に含まれる酸素が一対の電極68、69に拡散し、一対の電極68、69が酸化するのを防ぐため、第3の酸化物半導体膜55_3の膜厚は薄い方が好ましい。
第1の酸化物半導体膜55_1、第2の酸化物半導体膜55_2、および第3の酸化物半導体膜55_3それぞれの界面は、STEM(Scanning Transmission Electron Microscopy)を用いて観察することができる。
第1の酸化物半導体膜55_1、第2の酸化物半導体膜55_2、および第3の酸化物半導体膜55_3は、実施の形態1に示す酸化物半導体膜55の結晶構造を適宜用いることができる。
第2の酸化物半導体膜55_2と比較して酸素欠損の生じにくい酸化物半導体膜を第2の酸化物半導体膜55_2の上または/および下に接して設けることで、第2の酸化物半導体膜55_2における酸素欠損を低減することができる。また、第2の酸化物半導体膜55_2は、第2の酸化物半導体膜55_2を構成する金属元素の一以上を有する第1の酸化物半導体膜55_1または/および第3の酸化物半導体膜55_3と接するため、第1の酸化物半導体膜55_1と第2の酸化物半導体膜55_2との界面、第2の酸化物半導体膜55_2と第3の酸化物半導体膜55_3との界面における界面準位密度が極めて低い。このため、第2の酸化物半導体膜55_2に含まれる酸素欠損を低減することが可能である。
また、第2の酸化物半導体膜55_2が、構成元素の異なる絶縁膜(例えば、酸化シリコン膜を含むゲート絶縁膜)と接する場合、界面準位が形成され、該界面準位はチャネルを形成することがある。このような場合、しきい値電圧の異なる第2のトランジスタが出現し、トランジスタの見かけ上のしきい値電圧が変動することがある。しかしながら、第2の酸化物半導体膜55_2を構成する金属元素を一種以上含む第1の酸化物半導体膜55_1が第2の酸化物半導体膜55_2と接するため、第1の酸化物半導体膜55_1と第2の酸化物半導体膜55_2の界面に界面準位を形成しにくくなる。よって第1の酸化物半導体膜55_1を設けることにより、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきを低減することができる。
また、ゲート絶縁膜57と第2の酸化物半導体膜55_2との界面にチャネルが形成される場合、該界面で界面散乱が起こり、トランジスタの電界効果移動度が低くなる。しかしながら、第2の酸化物半導体膜55_2を構成する金属元素を一種以上含む第3の酸化物半導体膜55_3が第2の酸化物半導体膜55_2に接して設けられるため、第2の酸化物半導体膜55_2と第3の酸化物半導体膜55_3との界面ではキャリアの散乱が起こりにくく、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
また、第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3は、絶縁膜53およびゲート絶縁膜57の構成元素が第2の酸化物半導体膜55_2へ混入して、不純物による準位が形成されることを抑制するためのバリア膜としても機能する。
例えば、絶縁膜53およびゲート絶縁膜57として、シリコンを含む絶縁膜53およびゲート絶縁膜57中のシリコン、または絶縁膜53およびゲート絶縁膜57中に混入されうる炭素が、第1の酸化物半導体膜55_1または/および第3の酸化物半導体膜55_3の中へ界面から数nm程度まで混入することがある。シリコン、炭素等の不純物が第2の酸化物半導体膜55_2中に入ると不純物準位を形成し、不純物準位がドナーとなり電子を生成することでn型化することがある。
しかしながら、第1の酸化物半導体膜55_1および第3の酸化物半導体膜55_3の膜厚が、数nmよりも厚ければ、混入したシリコン、炭素等の不純物が第2の酸化物半導体膜55_2にまで到達しないため、不純物準位の影響は低減される。
以上のことから、本実施の形態に示すトランジスタは、しきい値電圧などの電気特性のばらつきが低減されたトランジスタである。
<バンド構造>
次に、本実施の形態に示すトランジスタの代表例として、図17(A)に示すトランジスタの任意断面におけるバンド構造について説明する。なお、図17(A)に示す破線で囲まれた領域71aの拡大図を図17(B)に示し、破線で囲まれた領域71bの拡大図を図17(C)に示し、破線で囲まれた領域71cの拡大図を図17(D)に示す。即ち、図17(A)に示すトランジスタは、第1の領域55a、第2の領域55b、55cを有する酸化物半導体膜55を有する。また、図17(B)に示すように、第1の領域55aは、第1の領域55_2aおよび第1の領域55_3aが、絶縁膜53およびゲート絶縁膜57の間に設けられる。また、図17(C)に示すように、第2の領域55bは、第2の領域55_2bおよび第2の領域55_3bが、絶縁膜53および水素を含む絶縁膜65の間に設けられる。また、図17(D)に示すように、第2の領域55cは、第2の領域55_2cおよび第2の領域55_3cが、絶縁膜53および水素を含む絶縁膜65の間に設けられる。
図17(E)に、図17(A)に示すトランジスタのチャネル領域を含むO−P断面におけるバンド構造を示す。なお、第1の領域55_3aは、第1の領域55_2aよりもエネルギーギャップが少し大きいとする。また、絶縁膜53およびゲート絶縁膜57は、第1の領域55_2aおよび第1の領域55_3aよりも十分にエネルギーギャップが大きいとする。また、第1の領域55_2a、第1の領域55_3a、絶縁膜53およびゲート絶縁膜57のフェルミ準位(Efと表記する。)は、それぞれの真性フェルミ準位(Eiと表記する。)の位置とする。また、ゲート電極59の仕事関数は、該フェルミ準位と同じ位置とする。また、伝導帯下端のエネルギーをEcと表記し、価電子帯上端のエネルギーをEvと表記する。
ゲート電圧をトランジスタのしきい値電圧以上としたとき、第1の領域55_2aと第1の領域55_3aとの間の伝導帯下端のエネルギーの差により、電子は第1の領域55_2aを優先的に流れる。即ち、第1の領域55_2aに電子が埋め込まれると推定することができる。
したがって、本発明の一態様に係るトランジスタは、電子の埋め込みによって界面散乱の影響が低減されている。そのため、本発明の一態様に係るトランジスタは、チャネル領域における抵抗が小さい。
次に、図17(F)に、図17(A)に示すトランジスタのソース領域またはドレイン領域を含むQ−R断面におけるバンド構造を示す。なお、第2の領域55_2b、55_2c、第2の領域55_3b、55_3cは、縮退状態とする。また、第2の領域55_2bにおいて、第2の領域55_2bの伝導帯下端のエネルギーは第1の領域55_2aのフェルミ準位と同程度とする。また、第2の領域55_3bにおいて、第2の領域55_3bの伝導帯下端のエネルギーは第1の領域55_3aのフェルミ準位と同程度とする。第2の領域55_2cおよび第2の領域55_3cも同様である。
このとき、導電膜68と、第2の領域55_3bと、はエネルギー障壁が十分小さいため、オーミック接触となる。また、第2の領域55_3bと、第2の領域55_2bと、はオーミック接触となる。同様に、導電膜69と、第2の領域55_3cと、はエネルギー障壁が十分小さいため、オーミック接触となる。また、第2の領域55_3cと、第2の領域55_2cと、はオーミック接触となる。したがって、導電膜68および導電膜69と、第1の領域55_2aおよび第1の領域55_3aと、の間で、電子の授受がスムーズに行われることがわかる。
以上に示したように、本発明の一態様に係るトランジスタは、ソース電極およびドレイン電極と、チャネル領域との間の電子の授受がスムーズに行われるため、チャネル領域における抵抗の小さいトランジスタである。即ち、優れたスイッチング特性を有するトランジスタであることがわかる。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、先に示す実施の形態に適用可能なトランジスタの構造について、図18を用いて説明する。なお、ここでは、実施の形態1に示すトランジスタを用いて説明するが、適宜先に示す実施の形態に示すトランジスタに本実施の形態を適用することが可能である。図18(A)は、トランジスタのチャネル長方向における断面図であり、図18(B)は、トランジスタのチャネル幅方向における断面図である。
本実施の形態に示すトランジスタは、図18に示すように、絶縁膜53を介して酸化物半導体膜55と重なるゲート電極73を有することを特徴とする。
ゲート電極73の電位をゲート電極59と異なる電位とすることで、トランジスタのしきい値電圧を制御することが可能であり、ノーマリーオフのトランジスタを作製することができる。または、図18(B)に示すように、絶縁膜53およびゲート絶縁膜57に設けられる開口部において、ゲート電極59およびゲート電極73が接続されることで、ゲート電極73の電位をゲート電極59と同じ電位とすることが可能であり、トランジスタのオン電流を増大させることが可能である。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したトランジスタにおいて、酸化物半導体膜に適用可能な一態様について説明する。
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
<CAAC−OS膜>
まずは、CAAC−OS膜について説明する。
CAAC−OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
試料面と概略平行な方向から、CAAC−OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
一方、試料面と概略垂直な方向から、CAAC−OS膜の平面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
図19(a)は、CAAC−OS膜の断面の高分解能TEM像である。また、図19(b)は、図19(a)をさらに拡大した断面の高分解能TEM像であり、理解を容易にするために原子配列を強調表示している。
図19(c)は、図19(a)のA−O−A’間において、丸で囲んだ領域(直径約4nm)の局所的なフーリエ変換像である。図19(c)より、各領域においてc軸配向性が確認できる。また、A−O間とO−A’間とでは、c軸の向きが異なるため、異なるグレインであることが示唆される。また、A−O間では、c軸の角度が14.3°、16.6°、26.4°のように少しずつ連続的に変化していることがわかる。同様に、O−A’間では、c軸の角度が−18.3°、−17.6°、−15.9°と少しずつ連続的に変化していることがわかる。
なお、CAAC−OS膜に対し、電子回折を行うと、配向性を示すスポット(輝点)が観測される。例えば、CAAC−OS膜の上面に対し、例えば1nm以上30nm以下の電子線を用いる電子回折(ナノビーム電子回折ともいう。)を行うと、スポットが観測される(図20(A)参照。)。
断面の高分解能TEM像および平面の高分解能TEM像より、CAAC−OS膜の結晶部は配向性を有していることがわかる。
なお、CAAC−OS膜に含まれるほとんどの結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内に収まる大きさの場合も含まれる。ただし、CAAC−OS膜に含まれる複数の結晶部が連結することで、一つの大きな結晶領域を形成する場合がある。例えば、平面の高分解能TEM像において、2500nm2以上、5μm2以上または1000μm2以上となる結晶領域が観察される場合がある。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
一方、CAAC−OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC−OS膜の場合は、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
以上のことから、CAAC−OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面の高分解能TEM観察で確認された層状に配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
なお、結晶部は、CAAC−OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC−OS膜の形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
また、CAAC−OS膜中において、c軸配向した結晶部の分布が均一でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の結晶部が、CAAC−OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりもc軸配向した結晶部の割合が高くなることがある。また、不純物の添加されたCAAC−OS膜は、不純物が添加された領域が変質し、部分的にc軸配向した結晶部の割合の異なる領域が形成されることもある。
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
また、CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
<多結晶酸化物半導体膜>
次に、多結晶酸化物半導体膜について説明する。
多結晶酸化物半導体膜は、高分解能TEM像において結晶粒を確認することができる。多結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶粒は、例えば、高分解能TEM像で、2nm以上300nm以下、3nm以上100nm以下または5nm以上50nm以下の粒径であることが多い。また、多結晶酸化物半導体膜は、高分解能TEM像で、結晶粒界を確認できる場合がある。
多結晶酸化物半導体膜は、複数の結晶粒を有し、当該複数の結晶粒間において結晶の方位が異なっている場合がある。また、多結晶酸化物半導体膜に対し、XRD装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有する多結晶酸化物半導体膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピーク、2θが36°近傍のピーク、またはそのほかのピークが現れる場合がある。
多結晶酸化物半導体膜は、高い結晶性を有するため、高い電子移動度を有する場合がある。従って、多結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を有する。ただし、多結晶酸化物半導体膜は、結晶粒界に不純物が偏析する場合がある。また、多結晶酸化物半導体膜の結晶粒界は欠陥準位となる。多結晶酸化物半導体膜は、結晶粒界がキャリアトラップやキャリア発生源となる場合があるため、多結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、CAAC−OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジスタとなる場合がある。
<微結晶酸化物半導体膜>
次に、微結晶酸化物半導体膜について説明する。
微結晶酸化物半導体膜は、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrystal)を有する酸化物半導体膜を、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc−OS膜は、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
nc−OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。従って、nc−OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない場合がある。例えば、nc−OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD装置を用いて構造解析を行うと、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、nc−OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折(制限視野電子回折ともいう。)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OS膜に対し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc−OS膜に対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc−OS膜に対しナノビーム電子回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある(図20(B)参照。)。
nc−OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そのため、nc−OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OS膜は、CAAC−OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
従って、nc−OS膜は、CAAC−OS膜と比べて、キャリア密度が高くなる場合がある。キャリア密度が高い酸化物半導体膜は、電子移動度が高くなる場合がある。従って、nc−OS膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を有する場合がある。また、nc−OS膜は、CAAC−OS膜と比べて、欠陥準位密度が高いため、キャリアトラップが多くなる場合がある。従って、nc−OS膜を用いたトランジスタは、CAAC−OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジスタとなる。ただし、nc−OS膜は、比較的不純物が多く含まれていても形成することができるため、CAAC−OS膜よりも形成が容易となり、用途によっては好適に用いることができる場合がある。そのため、nc−OS膜を用いたトランジスタを有する半導体装置は、生産性高く作製することができる場合がある。
<非結晶酸化物半導体膜>
次に、非晶質酸化物半導体膜について説明する。
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶部を有さない酸化物半導体膜である。石英のような無定形状態を有する酸化物半導体膜が一例である。
非晶質酸化物半導体膜は、高分解能TEM像において結晶部を確認することができない。
非晶質酸化物半導体膜に対し、XRD装置を用いた構造解析を行うと、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、非晶質酸化物半導体膜に対し、電子回折を行うと、ハローパターンが観測される。また、非晶質酸化物半導体膜に対し、ナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測されず、ハローパターンが観測される。
非晶質酸化物半導体膜は、水素などの不純物を高い濃度で含む酸化物半導体膜である。また、非晶質酸化物半導体膜は、欠陥準位密度の高い酸化物半導体膜である。
不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜は、キャリアトラップやキャリア発生源が多い酸化物半導体膜である。
従って、非晶質酸化物半導体膜は、nc−OS膜と比べて、さらにキャリア密度が高くなる場合がある。そのため、非晶質酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、ノーマリーオンの電気特性になりやすい。従って、ノーマリーオンの電気特性が求められるトランジスタに好適に用いることができる場合がある。非晶質酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が高いため、キャリアトラップが多くなる場合がある。従って、非晶質酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、CAAC−OS膜やnc−OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジスタとなる。
次に、単結晶酸化物半導体膜について説明する。
単結晶酸化物半導体膜は、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損が少ない)酸化物半導体膜である。そのため、キャリア密度を低くすることができる。従って、単結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、ノーマリーオンの電気特性になることが少ない。また、単結晶酸化物半導体膜は、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低いため、キャリアトラップが少なくなる場合がある。従って、単結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。
なお、酸化物半導体膜は、欠陥が少ないと密度が高くなる。また、酸化物半導体膜は、結晶性が高いと密度が高くなる。また、酸化物半導体膜は、水素などの不純物濃度が低いと密度が高くなる。単結晶酸化物半導体膜は、CAAC−OS膜よりも密度が高い。また、CAAC−OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも密度が高い。また、多結晶酸化物半導体膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも密度が高い。また、微結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも密度が高い。
なお、酸化物半導体膜は、nc−OS膜と非晶質酸化物半導体膜との間の物性を示す構造を有する場合がある。そのような構造を有する酸化物半導体膜を、特に非晶質ライク酸化物半導体(amorphous−like OS:amorphous−like Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。
amorphous−like OS膜は、高分解能TEM像において鬆(ボイドともいう。)が観察される場合がある。また、高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる領域と、結晶部を確認することのできない領域と、を有する。amorphous−like OS膜は、TEMによる観察程度の微量な電子照射によって、結晶化が起こり、結晶部の成長が見られる場合がある。一方、良質なnc−OS膜であれば、TEMによる観察程度の微量な電子照射による結晶化はほとんど見られない。
なお、amorphous−like OS膜およびnc−OS膜の結晶部の大きさの計測は、高分解能TEM像を用いて行うことができる。例えば、InGaZnO4の結晶は層状構造を有し、In−O層の間に、Ga−Zn−O層を2層有する。InGaZnO4の結晶の単位格子は、In−O層を3層有し、またGa−Zn−O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有する。よって、これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。そのため、高分解能TEM像における格子縞に着目し、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所においては、それぞれの格子縞がInGaZnO4の結晶のa−b面に対応すると見なした。その格子縞の観察される領域のおける最大長を、amorphous−like OS膜およびnc−OS膜の結晶部の大きさとする。なお、結晶部の大きさは、0.8nm以上のものを選択的に評価する。
図37は、高分解能TEM像により、amorphous−like OS膜およびnc−OS膜の結晶部(20箇所から40箇所)の平均の大きさの変化を調査した例である。図37より、amorphous−like OS膜は、電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。具体的には、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大きさだった結晶部が、累積照射量が4.2×108e−/nm2においては2.6nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、良質なnc−OS膜は、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×108e−/nm2になるまでの範囲で、電子の累積照射量によらず結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。
また、図37に示す、amorphous−like OS膜およびnc−OS膜の結晶部の大きさの変化を線形近似して、電子の累積照射量0e−/nm2まで外挿すると、結晶部の平均の大きさが正の値をとることがわかる。そのため、amorphous−like OS膜およびnc−OS膜の結晶部が、TEMによる観察前から存在していることがわかる。
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
酸化物半導体膜が複数の構造を有する場合、ナノビーム電子回折を用いることで構造解析が可能となる場合がある。
図20(C)に、電子銃室40と、電子銃室40の下の光学系42と、光学系42の下の試料室44と、試料室44の下の光学系46と、光学系46の下の観察室20と、観察室20に設置されたカメラ48と、観察室20の下のフィルム室22と、を有する透過電子回折測定装置を示す。カメラ48は、観察室20内部に向けて設置される。なお、フィルム室22を有さなくても構わない。
また、図20(D)に、図20(C)で示した透過電子回折測定装置内部の構造を示す。透過電子回折測定装置内部では、電子銃室40に設置された電子銃から放出された電子が、光学系42を介して試料室44に配置された物質28に照射される。物質28を通過した電子は、光学系46を介して観察室20内部に設置された蛍光板32に入射する。蛍光板32では、入射した電子の強度に応じたパターンが現れることで透過電子回折パターンを測定することができる。
カメラ48は、蛍光板32を向いて設置されており、蛍光板32に現れたパターンを撮影することが可能である。カメラ48のレンズの中央、および蛍光板32の中央を通る直線と、蛍光板32の上面と、の為す角度は、例えば、15°以上80°以下、30°以上75°以下、または45°以上70°以下とする。該角度が小さいほど、カメラ48で撮影される透過電子回折パターンは歪みが大きくなる。ただし、あらかじめ該角度がわかっていれば、得られた透過電子回折パターンの歪みを補正することも可能である。なお、カメラ48をフィルム室22に設置しても構わない場合がある。例えば、カメラ48をフィルム室22に、電子24の入射方向と対向するように設置してもよい。この場合、蛍光板32の裏面から歪みの少ない透過電子回折パターンを撮影することができる。
試料室44には、試料である物質28を固定するためのホルダが設置されている。ホルダは、物質28を通過する電子を透過するような構造をしている。ホルダは、例えば、物質28をX軸、Y軸、Z軸などに移動させる機能を有していてもよい。ホルダの移動機能は、例えば、1nm以上10nm以下、5nm以上50nm以下、10nm以上100nm以下、50nm以上500nm以下、100nm以上1μm以下などの範囲で移動させる精度を有すればよい。これらの範囲は、物質28の構造によって最適な範囲を設定すればよい。
次に、上述した透過電子回折測定装置を用いて、物質の透過電子回折パターンを測定する方法について説明する。
例えば、図20(D)に示すように物質におけるナノビームである電子24の照射位置を変化させる(スキャンする)ことで、物質の構造が変化していく様子を確認することができる。このとき、物質28がCAAC−OS膜であれば、図20(A)に示したような回折パターンが観測される。または、物質28がnc−OS膜であれば、図20(B)に示したような回折パターンが観測される。
ところで、物質28がCAAC−OS膜であったとしても、部分的にnc−OS膜などと同様の回折パターンが観測される場合がある。したがって、CAAC−OS膜の良否は、一定の範囲におけるCAAC−OS膜の回折パターンが観測される領域の割合(CAAC化率ともいう。)で表すことができる場合がある。例えば、良質なCAAC−OS膜であれば、CAAC化率は、50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上となる。なお、CAAC−OS膜と異なる回折パターンが観測される領域の割合を非CAAC化率と表記する。
一例として、成膜直後(as−sputteredと表記。)、または酸素を含む雰囲気における450℃加熱処理後のCAAC−OS膜を有する各試料の上面に対し、スキャンしながら透過電子回折パターンを取得した。ここでは、5nm/秒の速度で60秒間スキャンしながら回折パターンを観測し、観測された回折パターンを0.5秒ごとに静止画に変換することで、CAAC化率を導出した。なお、電子線としては、プローブ径が1nmのナノビーム電子線を用いた。なお、同様の測定は6試料に対して行った。そしてCAAC化率の算出には、6試料における平均値を用いた。
各試料におけるCAAC化率を図21(A)に示す。成膜直後のCAAC−OS膜のCAAC化率は75.7%(非CAAC化率は24.3%)であった。また、450℃加熱処理後のCAAC−OS膜のCAAC化率は85.3%(非CAAC化率は14.7%)であった。成膜直後と比べて、450℃加熱処理後のCAAC化率が高いことがわかる。即ち、高い温度(例えば400℃以上)における加熱処理によって、非CAAC化率が低くなる(CAAC化率が高くなる)ことがわかる。また、500℃未満の加熱処理においても高いCAAC化率を有するCAAC−OS膜が得られることがわかる。
ここで、CAAC−OS膜と異なる回折パターンのほとんどはnc−OS膜と同様の回折パターンであった。また、測定領域において非晶質酸化物半導体膜は、確認することができなかった。したがって、加熱処理によって、nc−OS膜と同様の構造を有する領域が、隣接する領域の構造の影響を受けて再配列し、CAAC化していることが示唆される。
図21(B)および図21(C)は、成膜直後および450℃加熱処理後のCAAC−OS膜の平面の高分解能TEM像である。図21(B)と図21(C)とを比較することにより、450℃加熱処理後のCAAC−OS膜は、膜質がより均質であることがわかる。即ち、高い温度における加熱処理によって、CAAC−OS膜の膜質が向上することがわかる。
このような測定方法を用いれば、複数の構造を有する酸化物半導体膜の構造解析が可能となる場合がある。
<成膜モデル>
以下では、CAAC−OSおよびnc−OSの成膜モデルについて説明する。
図23(A)は、スパッタリング法によりCAAC−OSが成膜される様子を示した成膜室内の模式図である。
ターゲット5130は、バッキングプレート上に接着されている。ターゲット5130およびバッキングプレート下には、複数のマグネットが配置される。該複数のマグネットによって、ターゲット5130上には磁場が生じている。マグネットの磁場を利用して成膜速度を高めるスパッタリング法は、マグネトロンスパッタリング法と呼ばれる。
ターゲット5130は、多結晶構造を有し、いずれかの結晶粒には劈開面が含まれる。なお、劈開面の詳細については後述する。
基板5120は、ターゲット5130と向かい合うように配置しており、その距離d(ターゲット−基板間距離(T−S間距離)ともいう。)は0.01m以上1m以下、好ましくは0.02m以上0.5m以下とする。成膜室内は、ほとんどが成膜ガス(例えば、酸素、アルゴン、または酸素を50体積%以上の割合で含む混合ガス)で満たされ、0.01Pa以上100Pa以下、好ましくは0.1Pa以上10Pa以下に制御される。ここで、ターゲット5130に一定以上の電圧を印加することで、放電が始まり、プラズマが確認される。なお、ターゲット5130上の磁場によって、高密度プラズマ領域が形成される。高密度プラズマ領域では、成膜ガスがイオン化することで、イオン5101が生じる。イオン5101は、例えば、酸素の陽イオン(O+)やアルゴンの陽イオン(Ar+)などである。
イオン5101は、電界によってターゲット5130側に加速され、やがてターゲット5130と衝突する。このとき、劈開面から平板状またはペレット状のスパッタ粒子であるペレット5100aおよびペレット5100bが剥離し、叩き出される。なお、ペレット5100aおよびペレット5100bは、イオン5101の衝突の衝撃によって、構造に歪みが生じる場合がある。
ペレット5100aは、三角形、例えば正三角形の平面を有する平板状またはペレット状のスパッタ粒子である。また、ペレット5100bは、六角形、例えば正六角形の平面を有する平板状またはペレット状のスパッタ粒子である。なお、ペレット5100aおよびペレット5100bなどの平板状またはペレット状のスパッタ粒子を総称してペレット5100と呼ぶ。ペレット5100の平面の形状は、三角形、六角形に限定されない、例えば、三角形が2個以上6個以下合わさった形状となる場合がある。例えば、三角形(正三角形)が2個合わさった四角形(ひし形)となる場合もある。
ペレット5100は、成膜ガスの種類などに応じて厚さが決定する。理由は後述するが、ペレット5100の厚さは、均一にすることが好ましい。また、スパッタ粒子は厚みのないペレット状である方が、厚みのあるサイコロ状であるよりも好ましい。
ペレット5100は、プラズマを通過する際に電荷を受け取ることで、側面が負または正に帯電する場合がある。ペレット5100は、側面に酸素原子を有し、当該酸素原子が負に帯電する可能性がある。例えば、ペレット5100aが、側面に負に帯電した酸素原子を有する例を図25に示す。このように、側面が同じ極性の電荷を帯びることにより、電荷同士の反発が起こり、平板状の形状を維持することが可能となる。なお、CAAC−OSが、In−Ga−Zn酸化物である場合、インジウム原子と結合した酸素原子が負に帯電する可能性がある。または、インジウム原子、ガリウム原子または亜鉛原子と結合した酸素原子が負に帯電する可能性がある。
図23(A)に示すように、例えば、ペレット5100は、プラズマ中を凧のように飛翔し、ひらひらと基板5120上まで舞い上がっていく。ペレット5100は電荷を帯びているため、ほかのペレット5100が既に堆積している領域が近づくと、斥力が生じる。ここで、基板5120の上面では、基板5120の上面に平行な向きの磁場が生じている。また、基板5120およびターゲット5130間には、電位差が与えられているため、基板5120からターゲット5130に向けて電流が流れている。したがって、ペレット5100は、基板5120の上面において、磁場および電流の作用によって、力(ローレンツ力)を受ける(図26参照。)。このことは、フレミングの左手の法則によって理解できる。なお、ペレット5100に与える力を大きくするためには、基板5120の上面において、基板5120の上面に平行な向きの磁場が10G以上、好ましくは20G以上、さらに好ましくは30G以上、より好ましくは50G以上となる領域を設けるとよい。または、基板5120の上面において、基板5120の上面に平行な向きの磁場が、基板5120の上面に垂直な向きの磁場の1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上となる領域を設けるとよい。
また、基板5120は加熱されており、ペレット5100と基板5120との間で摩擦などの抵抗が小さい状態となっている。その結果、図27(A)に示すように、ペレット5100は、基板5120の上面を滑空するように移動する。ペレット5100の移動は、平板面を基板5120に向けた状態で起こる。その後、図27(B)に示すように、既に堆積しているほかのペレット5100の側面まで到達すると、側面同士が結合する。このとき、ペレット5100の側面にある酸素原子が脱離する。脱離した酸素原子によって、CAAC−OS中の酸素欠損が埋まる場合があるため、欠陥準位密度の低いCAAC−OSとなる。
また、ペレット5100が基板5120上で加熱されることにより、原子が再配列し、イオン5101の衝突で生じた構造の歪みが緩和される。歪みの緩和されたペレット5100は、ほぼ単結晶となる。ペレット5100がほぼ単結晶となることにより、ペレット5100同士が結合した後に加熱されたとしても、ペレット5100自体の伸縮はほとんど起こり得ない。したがって、ペレット5100間の隙間が広がることで結晶粒界などの欠陥を形成し、クレバス化することがない。また、隙間には、伸縮性のある金属原子などが敷き詰められ、向きのずれたペレット5100同士の側面を高速道路のように繋いでいると考えられる。
以上のようなモデルにより、ペレット5100が基板5120上に堆積していくと考えられる。したがって、エピタキシャル成長とは異なり、被形成面が結晶構造を有さない場合においても、CAAC−OSの成膜が可能であることがわかる。例えば、基板5120の上面(被形成面)の構造が非晶質構造であっても、CAAC−OSを成膜することは可能である。
また、CAAC−OSは、平坦面に対してだけでなく、被形成面である基板5120の上面に凹凸がある場合でも、その形状に沿ってペレット5100が配列することがわかる。例えば、基板5120の上面が原子レベルで平坦な場合、ペレット5100はab面と平行な平面である平板面を下に向けて並置するため、厚さが均一で平坦、かつ高い結晶性を有する層が形成される。そして、当該層がn段(nは自然数。)積み重なることで、CAAC−OSを得ることができる(図23(B)参照。)。
一方、基板5120の上面が凹凸を有する場合でも、CAAC−OSは、ペレット5100が凸面に沿って並置した層がn段(nは自然数。)積み重なった構造となる。基板5120が凹凸を有するため、CAAC−OSは、ペレット5100間に隙間が生じやすい場合がある。ただし、ペレット5100間で分子間力が働き、凹凸があってもペレット間の隙間はなるべく小さくなるように配列する。したがって、凹凸があっても高い結晶性を有するCAAC−OSとすることができる(図23(C)参照。)。
したがって、CAAC−OSは、レーザ結晶化が不要であり、大面積のガラス基板などであっても均一な成膜が可能である。
このようなモデルによってCAAC−OSが成膜されるため、スパッタ粒子が厚みのないペレット状である方が好ましい。なお、スパッタ粒子が厚みのあるサイコロ状である場合、基板5120上に向ける面が一定とならず、厚さや結晶の配向を均一にできない場合がある。
以上に示した成膜モデルにより、非晶質構造を有する被形成面上であっても、高い結晶性を有するCAAC−OSを得ることができる。
また、CAAC−OSは、ペレット5100のほかに酸化亜鉛粒子を有する成膜モデルによっても説明することができる。
酸化亜鉛粒子は、ペレット5100よりも質量が小さいため、先に基板5120に到達する。基板5120の上面において、酸化亜鉛粒子は、水平方向に優先的に結晶成長することで薄い酸化亜鉛層を形成する。該酸化亜鉛層は、c軸配向性を有する。なお、該酸化亜鉛層の結晶のc軸は、基板5120の法線ベクトルに平行な方向を向く。該酸化亜鉛層は、CAAC−OSを成長させるためのシード層の役割を果たすため、CAAC−OSの結晶性を高める機能を有する。なお、該酸化亜鉛層は、厚さが0.1nm以上5nm以下、ほとんどが1nm以上3nm以下となる。該酸化亜鉛層は十分薄いため、結晶粒界をほとんど確認することができない。
したがって、結晶性の高いCAAC−OSを成膜するためには、化学量論的組成よりも高い割合で亜鉛を含むターゲットを用いることが好ましい。
同様に、nc−OSは、図24に示す成膜モデルによって理解することができる。なお、図24と図23(A)との違いは、基板5120の加熱の有無のみである。
したがって、基板5120は加熱されておらず、ペレット5100と基板5120との間で摩擦などの抵抗が大きい状態となっている。その結果、ペレット5100は、基板5120の上面を滑空するように移動することができないため、不規則に降り積もっていくことでnc−OSを得ることができる。
<劈開面>
以下では、CAAC−OSの成膜モデルにおいて記載のターゲットの劈開面について説明する。
まずは、ターゲットの劈開面について図28を用いて説明する。図28に、InGaZnO4の結晶の構造を示す。なお、図28(A)は、c軸を上向きとし、b軸に平行な方向からInGaZnO4の結晶を観察した場合の構造を示す。また、図28(B)は、c軸に平行な方向からInGaZnO4の結晶を観察した場合の構造を示す。
InGaZnO4の結晶の各結晶面における劈開に必要なエネルギーを、第一原理計算により算出する。なお、計算には、擬ポテンシャルと、平面波基底を用いた密度汎関数プログラム(CASTEP)を用いる。なお、擬ポテンシャルには、ウルトラソフト型の擬ポテンシャルを用いる。また、汎関数には、GGA PBEを用いる。また、カットオフエネルギーは400eVとする。
初期状態における構造のエネルギーは、セルサイズを含めた構造最適化を行った後に導出する。また、各面で劈開後の構造のエネルギーは、セルサイズを固定した状態で、原子配置の構造最適化を行った後に導出する。
図28に示したInGaZnO4の結晶の構造をもとに、第1の面、第2の面、第3の面、第4の面のいずれかで劈開した構造を作製し、セルサイズを固定した構造最適化計算を行う。ここで、第1の面は、Ga−Zn−O層とIn−O層との間の結晶面であり、(001)面(またはab面)に平行な結晶面である(図28(A)参照。)。第2の面は、Ga−Zn−O層とGa−Zn−O層との間の結晶面であり、(001)面(またはab面)に平行な結晶面である(図28(A)参照。)。第3の面は、(110)面に平行な結晶面である(図28(B)参照。)。第4の面は、(100)面(またはbc面)に平行な結晶面である(図28(B)参照。)。
以上のような条件で、各面で劈開後の構造のエネルギーを算出する。次に、劈開後の構造のエネルギーと初期状態における構造のエネルギーとの差を、劈開面の面積で除すことで、各面における劈開しやすさの尺度である劈開エネルギーを算出する。なお、構造のエネルギーは、構造に含まれる原子と電子に対して、電子の運動エネルギーと、原子間、原子−電子間、および電子間の相互作用と、を考慮したエネルギーである。
計算の結果、第1の面の劈開エネルギーは2.60J/m2、第2の面の劈開エネルギーは0.68J/m2、第3の面の劈開エネルギーは2.18J/m2、第4の面の劈開エネルギーは2.12J/m2であることがわかった(下表参照。)。
この計算により、図28に示したInGaZnO4の結晶の構造において、第2の面における劈開エネルギーが最も低くなる。即ち、Ga−Zn−O層とGa−Zn−O層との間が最も劈開しやすい面(劈開面)であることがわかる。したがって、本明細書において、劈開面と記載する場合、最も劈開しやすい面である第2の面のことを示す。
Ga−Zn−O層とGa−Zn−O層との間である第2の面に劈開面を有するため、図28(A)に示すInGaZnO4の結晶は、二つの第2の面と等価な面で分離することができる。したがって、ターゲットにイオンなどを衝突させる場合、もっとも劈開エネルギーの低い面で劈開したウェハース状のユニット(我々はこれをペレットと呼ぶ。)が最小単位となって飛び出してくると考えられる。その場合、InGaZnO4のペレットは、Ga−Zn−O層、In−O層およびGa−Zn−O層の3層となる。
また、第1の面(Ga−Zn−O層とIn−O層との間の結晶面であり、(001)面(またはab面)に平行な結晶面)よりも、第3の面(110)面に平行な結晶面)、第4の面((100)面(またはbc面)に平行な結晶面)の劈開エネルギーが低いことから、ペレットの平面形状は三角形状または六角形状が多いことが示唆される。
次に、古典分子動力学計算により、ターゲットとしてホモロガス構造を有するInGaZnO4の結晶を仮定し、当該ターゲットをアルゴン(Ar)または酸素(O)によりスパッタした場合の劈開面について評価する。計算に用いたInGaZnO4の結晶(2688原子)の断面構造を図29(A)に、上面構造を図29(B)に示す。なお、図29(A)に示す固定層は、位置が変動しないよう原子の配置を固定した層である。また、図29(A)に示す温度制御層は、常に一定の温度(300K)とした層である。
古典分子動力学計算には、富士通株式会社製Materials Explorer5.0を用いる。なお、初期温度を300K、セルサイズを一定、時間刻み幅を0.01フェムト秒、ステップ数を1000万回とする。計算では、当該条件のもと、原子に300eVのエネルギーを与え、InGaZnO4の結晶のab面に垂直な方向からセルに原子を入射させる。
図30(A)は、図29に示したInGaZnO4の結晶を有するセルにアルゴンが入射してから99.9ピコ秒(psec)後の原子配列を示す。また、図30(B)は、セルに酸素が入射してから99.9ピコ秒後の原子配列を示す。なお、図30では、図29(A)に示した固定層の一部を省略して示す。
図30(A)より、アルゴンがセルに入射してから99.9ピコ秒までに、図28(A)に示した第2の面に対応する劈開面から亀裂が生じる。したがって、InGaZnO4の結晶に、アルゴンが衝突した場合、最上面を第2の面(0番目)とすると、第2の面(2番目)に大きな亀裂が生じることがわかる。
一方、図30(B)より、酸素がセルに入射してから99.9ピコ秒までに、図28(A)に示した第2の面に対応する劈開面から亀裂が生じることがわかる。ただし、酸素が衝突した場合は、InGaZnO4の結晶の第2の面(1番目)において大きな亀裂が生じることがわかる。
したがって、ホモロガス構造を有するInGaZnO4の結晶を含むターゲットの上面から原子(イオン)が衝突すると、InGaZnO4の結晶は第2の面に沿って劈開し、平板状の粒子(ペレット)が剥離することがわかる。また、このとき、ペレットの大きさは、アルゴンを衝突させた場合よりも、酸素を衝突させた場合の方が小さくなることがわかる。
なお、上述の計算から、剥離したペレットは損傷領域を含むことが示唆される。ペレットに含まれる損傷領域は、損傷によって生じた欠陥に酸素を反応させることで修復できる場合がある。
そこで、衝突させる原子の違いによって、ペレットの大きさが異なることについて調査する。
図31(A)に、図29に示したInGaZnO4の結晶を有するセルにアルゴンが入射した後、0ピコ秒から0.3ピコ秒までにおける各原子の軌跡を示す。したがって、図31(A)は、図29から図30(A)の間の期間に対応する。
図31(A)より、アルゴンが第1層(Ga−Zn−O層)のガリウム(Ga)と衝突すると、当該ガリウムが第3層(Ga−Zn−O層)の亜鉛(Zn)と衝突した後、当該亜鉛が第6層(Ga−Zn−O層)の近傍まで到達することがわかる。なお、ガリウムと衝突したアルゴンは、外に弾き飛ばされる。したがって、InGaZnO4の結晶を含むターゲットにアルゴンを衝突させた場合、図29(A)における第2の面(2番目)に亀裂が入ると考えられる。
また、図31(B)に、図29に示したInGaZnO4の結晶を有するセルに酸素が入射した後、0ピコ秒から0.3ピコ秒までにおける各原子の軌跡を示す。したがって、図31(B)は、図29から図30(A)の間の期間に対応する。
一方、図31(B)より、酸素が第1層(Ga−Zn−O層)のガリウム(Ga)と衝突すると、当該ガリウムが第3層(Ga−Zn−O層)の亜鉛(Zn)と衝突した後、当該亜鉛が第5層(In−O層)まで到達しないことがわかる。なお、ガリウムと衝突した酸素は、外に弾き飛ばされる。したがって、InGaZnO4の結晶を含むターゲットに酸素を衝突させた場合、図29(A)における第2の面(1番目)に亀裂が入ると考えられる。
本計算からも、InGaZnO4の結晶は、原子(イオン)が衝突した場合、劈開面から剥離することが示唆される。
また、亀裂の深さの違いを保存則の観点から検討する。エネルギー保存則および運動量保存則は、式(4)および式(5)のように示すことができる。ここで、Eは衝突前のアルゴンまたは酸素の持つエネルギー(300eV)、mAはアルゴンまたは酸素の質量、vAは衝突前のアルゴンまたは酸素の速度、v’Aは衝突後のアルゴンまたは酸素の速度、mGaはガリウムの質量、vGaは衝突前のガリウムの速度、v’Gaは衝突後のガリウムの速度である。
アルゴンまたは酸素の衝突が弾性衝突であると仮定すると、vA、v’A、vGaおよびv’Gaの関係は式(6)のように表すことができる。
式(4)、式(5)および式(6)より、vGaを0とすると、アルゴンまたは酸素が衝突した後のガリウムの速度v’Gaは、式(7)のように表すことができる。
式(7)において、mAにアルゴンの質量または酸素の質量を代入し、それぞれの原子が衝突した後のガリウムの速度を比較する。アルゴンおよび酸素の衝突前に持つエネルギーが同じである場合、アルゴンが衝突した場合の方が、酸素が衝突した場合よりも1.24倍ガリウムの速度が高いことがわかる。したがって、ガリウムの持つエネルギーもアルゴンが衝突した場合の方が、酸素が衝突した場合よりも速度の二乗分だけ高くなる。
アルゴンを衝突させた場合の方が、酸素を衝突させた場合よりも、衝突後のガリウムの速度(エネルギー)が高くなることがわかる。したがって、アルゴンを衝突させた場合の方が、酸素を衝突させた場合よりも深い位置に亀裂が生じたと考えられる。
以上の計算により、ホモロガス構造を有するInGaZnO4の結晶を含むターゲットをスパッタすると、劈開面から剥離し、ペレットが形成されることがわかる。一方、劈開面を有さないターゲットの他の構造の領域をスパッタしてもペレットは形成されず、ペレットよりも微細な原子レベルの大きさのスパッタ粒子が形成される。該スパッタ粒子は、ペレットと比べて小さいため、スパッタリング装置に接続されている真空ポンプを介して排気されると考えられる。したがって、ホモロガス構造を有するInGaZnO4の結晶を含むターゲットをスパッタした場合、様々な大きさ、形状の粒子が基板まで飛翔し、堆積することで成膜されるモデルは考えにくい。スパッタされたペレットが堆積してCAAC−OSを成膜する図23(A)などに記載のモデルが道理に適っている。
このようにして成膜されたCAAC−OSの密度は、単結晶OSと同程度の密度を有する。例えば、InGaZnO4のホモロガス構造を有する単結晶OSの密度は6.36g/cm3であるのに対し、同程度の原子数比であるCAAC−OSの密度は6.3g/cm3程度となる。
図32に、スパッタリング法で成膜したCAAC−OSであるIn−Ga−Zn酸化物(図32(A)参照。)、およびそのターゲット(図32(B)参照。)の断面における原子配列を示す。原子配列の観察には、高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡法(HAADF−STEM:High−Angle Annular Dark Field Scanning Transmission Electron Microscopy)を用いる。なお、HAADF−STEMでは、各原子の像強度は原子番号の二乗に比例する。したがって、原子番号の近いZn(原子番号30)とGa(原子番号31)とは、ほとんど区別できない。HAADF−STEMには、日立走査透過電子顕微鏡HD−2700を用いる。
図32(A)および図32(B)を比較すると、CAAC−OSと、ターゲットは、ともにホモロガス構造を有しており、それぞれの原子の配置が対応していることがわかる。したがって、図23(A)などの成膜モデルに示したように、ターゲットの結晶構造が転写されることでCAAC−OSが成膜されることがわかる。
なお、本実施の形態に示す構成および方法などは、他の実施の形態に示す構成および方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様の入出力装置の構成について、図33および図34を参照しながら説明する。なお、入出力装置はタッチパネルということもできる。
図33は本発明の一態様の入出力装置の構成を説明する投影図である。
図33(A)は本発明の一態様の入出力装置500の投影図であり、図33(B)は入出力装置500が備える検知ユニット10Uの構成を説明する投影図である。
図34は本発明の一態様の入出力装置500の構成を説明する断面図である。
図34(A)は図33に示す本発明の一態様の入出力装置500のZ1−Z2における断面図である。
<入出力装置の構成例>
本実施の形態で説明する入出力装置500は、可視光を透過する窓部14を具備し且つマトリクス状に配設される複数の検知ユニット10U、行方向(図中に矢印Rで示す)に配置される複数の検知ユニット10Uと電気的に接続する走査線G1、列方向(図中に矢印Cで示す)に配置される複数の検知ユニット10Uと電気的に接続する信号線DLならびに、検知ユニット10U、走査線G1および信号線DLを支持する可撓性の第1の基材16を備える可撓性の入力装置100と、窓部14に重なり且つマトリクス状に配設される複数の画素502および画素502を支持する可撓性の第2の基材510を備える表示部501と、を有する(図33(A)乃至図33(C)参照)。
検知ユニット10Uは、窓部14に重なる検知素子Cおよび検知素子Cと電気的に接続される検知回路19を備える(図33(B)参照)。
検知素子Cは、絶縁膜13、絶縁膜13を挟持する第1の電極11および第2の電極12を備える(図34(A)参照)。
検知回路19は、選択信号を供給され且つ検知素子Cの容量の変化に基づいて検知信号DATAを供給する。
走査線G1は、選択信号を供給することができ、信号線DLは、検知信号DATAを供給することができ、検知回路19は、複数の窓部14の間隙に重なるように配置される。
また、本実施の形態で説明する入出力装置500は、検知ユニット10Uおよび検知ユニット10Uの窓部14と重なる画素502の間に、着色膜を備える。
本実施の形態で説明する入出力装置500は、可視光を透過する窓部14を具備する検知ユニット10Uを複数備える可撓性の入力装置100と、窓部14に重なる画素502を複数備える可撓性の表示部501と、を有し、窓部14と画素502の間に着色膜を含んで構成される。
これにより、入出力装置は容量の変化に基づく検知信号およびそれを供給する検知ユニットの位置情報を供給すること、検知ユニットの位置情報と関連付けられた画像情報を表示すること、ならびに曲げることができる。その結果、利便性または信頼性に優れた新規な入出力装置を提供することができる。
また、入出力装置500は、入力装置100が供給する信号を供給されるフレキシブル基板FPC1または/および画像情報を含む信号を表示部501に供給するフレキシブル基板FPC2を備えていてもよい。
また、傷の発生を防いで入出力装置500を保護する保護膜17pまたは/および入出力装置500が反射する外光の強度を弱める反射防止膜567pを備えていてもよい。
また、入出力装置500は、表示部501の操作線に選択信号を供給する走査線駆動回路503g、信号を供給する配線511およびフレキシブル基板FPC2と電気的に接続される端子519を有する。
以下に、入出力装置500を構成する個々の要素について説明する。なお、これらの構成は明確に分離できず、一つの構成が他の構成を兼ねる場合や他の構成の一部を含む場合がある。
例えば、複数の窓部14に重なる位置に着色膜を備える入力装置100は、入力装置100であるとともにカラーフィルタでもある。
また、例えば入力装置100が表示部501に重ねられた入出力装置500は、入力装置100であるとともに表示部501でもある。
<全体の構成>
入出力装置500は、入力装置100と、表示部501と、を備える(図33(A)参照)。
<入力装置100>
入力装置100は複数の検知ユニット10Uおよび検知ユニットを支持する可撓性の基材16を備える。例えば、40行15列のマトリクス状に複数の検知ユニット10Uを可撓性の基材16に配設する。
<窓部14、着色膜および遮光膜BM>
窓部14は可視光を透過する。
窓部14に重なる位置に所定の色の光を透過する着色膜を備える。例えば、青色の光を透過する着色膜CFB、着色膜CFGまたは着色膜CFRを備える(図33(B)参照)。
なお、青色、緑色または/および赤色に加えて、白色の光を透過する着色膜または黄色の光を透過する着色膜などさまざまな色の光を透過する着色膜を備えることができる。
着色膜に金属材料、顔料または染料等を用いることができる。
窓部14を囲むように遮光膜BMを備える。遮光膜BMは窓部14より光を透過しにくい。
カーボンブラック、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等を遮光膜BMに用いることができる。
遮光膜BMと重なる位置に走査線G1、信号線DL、配線VPI、配線RESおよび配線VRESならびに検知回路19を備える。
なお、着色膜および遮光膜BMを覆う透光性のオーバーコート膜を備えることができる。
<検知素子C>
検知素子Cは、第1の電極11、第2の電極12および第1の電極11と第2の電極12の間に絶縁膜13を有する(図34(A)参照)。
第1の電極11は他の領域から分離されるように、例えば島状に形成される。特に、入出力装置500の使用者に第1の電極11が識別されないように、第1の電極11と同一の工程で作製することができる層を第1の電極11に近接して配置する構成が好ましい。より好ましくは、第1の電極11および第1の電極11に近接して配置する層の間隙に配置する窓部14の数をできるだけ少なくするとよい。特に、当該間隙に窓部14を配置しない構成が好ましい。
第1の電極11と重なるように第2の電極12を備え、第1の電極11と第2の電極12の間に絶縁膜13を備える。
例えば、大気中に置かれた検知素子Cの第1の電極11または第2の電極12に、大気と異なる誘電率を有するものが近づくと、検知素子Cの容量が変化する。具体的には、指などのものが検知素子Cに近づくと、検知素子Cの容量が変化する。これにより、近接検知器に用いることができる。
例えば、変形することができる検知素子Cの容量は、変形に伴い変化する。
具体的には、指などのものが検知素子Cに触れることにより、第1の電極11と第2の電極12の間隔が狭くなると、検知素子Cの容量は大きくなる。これにより、接触検知器に用いることができる。
具体的には、検知素子Cを折り曲げることにより、第1の電極11と第2の電極12の間隔が狭くなる。これにより、検知素子Cの容量は大きくなる。これにより、屈曲検知器に用いることができる。
第1の電極11および第2の電極12は、導電性の材料を含む。
例えば、無機導電性材料、有機導電性材料、金属または導電性セラミックスなどを第1の電極11および第2の電極12に用いることができる。
具体的には、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、ニッケル、銀またはマンガンから選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金または上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いることができる。なお、光が透過する厚さとすることが好ましい。
または、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物を用いることができる。
または、グラフェンまたはグラファイトを用いることができる。グラフェンを含む膜は、例えば膜状に形成された酸化グラフェンを含む膜を還元して形成することができる。還元する方法としては、熱を加える方法や還元剤を用いる方法等を挙げることができる。
または、導電性高分子を用いることができる。
<検知回路19>
検知回路19は例えばトランジスタM1乃至トランジスタM3を含む。また、検知回路19は電源電位および信号を供給する配線を含む。例えば、信号線DL、配線VPI、配線CS、走査線G1、配線RES、配線VRESなどを含む。なお、検知回路19の具体的な構成は実施の形態9で詳細に説明する。
なお、検知回路19を窓部14と重ならない領域に配置してもよい。例えば、窓部14と重ならない領域に配線を配置することにより、入力装置100の一方の側から他方の側にあるものを視認し易くできる。
例えば、同一の工程で形成することができるトランジスタをトランジスタM1乃至トランジスタM3に用いることができる。
トランジスタM1は半導体膜を有する。例えば、4族の元素、化合物半導体または酸化物半導体を半導体膜に用いることができる。具体的には、シリコンを含む半導体、ガリウムヒ素を含む半導体またはインジウムを含む酸化物半導体などを適用できる。また、トランジスタM1は、先の実施の形態で説明したトランジスタを適宜用いることができる。
導電性を有する材料を配線に適用できる。
例えば、無機導電性材料、有機導電性材料、金属または導電性セラミックスなどを配線に用いることができる。具体的には、第1の電極11および第2の電極12に用いることができる材料と同一の材料を適用できる。
アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、またはパラジウム等の金属材料や、該金属材料を含む合金材料を走査線G1、信号線DL、配線VPI、配線RESおよび配線VRESに用いることができる。
基材16に形成した膜を加工して、基材16に検知回路19を形成してもよい。
または、他の基材に形成された検知回路19を基材16に転置してもよい。
<基材16>
有機材料、無機材料または有機材料と無機材料の複合材料を可撓性の基材16に用いることができる。
5μm以上2500μm以下、好ましくは5μm以上680μm以下、より好ましくは5μm以上170μm以下、より好ましくは5μm以上45μm以下、より好ましくは8μm以上25μm以下の厚さを有する材料を、基材16に用いることができる。
また、不純物の透過が抑制された材料を基材16に好適に用いることができる。例えば、水蒸気の透過率が10−5g/(m2・day)以下、好ましくは10−6g/(m2・day)以下である材料を好適に用いることができる。
また、線膨張率がおよそ等しい材料を基材16および基材510に好適に用いることができる。例えば、線膨張率が1×10−3/K以下、好ましくは5×10−5/K以下、より好ましくは1×10−5/K以下である材料を好適に用いることができる。
例えば、樹脂、樹脂フィルムまたはプラスチックフィルム等の有機材料を、基材16に用いることができる。
例えば、金属板または厚さ10μm以上50μm以下の薄板状のガラス板等の無機材料を、基材16に用いることができる。
例えば、金属板、薄板状のガラス板または無機材料の膜を、樹脂膜を用いて樹脂フィルム等に貼り合せて形成された複合材料を、基材16に用いることができる。
例えば、繊維状または粒子状の金属、ガラスもしくは無機材料を樹脂または樹脂フィルムに分散した複合材料を、基材16に用いることができる。
例えば、熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂を樹脂膜に用いることができる。
具体的には、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート若しくはアクリル樹脂等の樹脂フィルムまたは樹脂板を用いることができる。
具体的には、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリガラス若しくはクリスタルガラス等を用いることができる。
具体的には、金属酸化物膜、金属窒化物膜若しくは金属酸窒化物膜等を用いることができる。例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、アルミナ膜等を適用できる。
具体的には、開口部が設けられたSUSまたはアルミニウム等を用いることができる。
具体的には、アクリル、ウレタン、エポキシ、またはシロキサン結合を有する樹脂などの樹脂を用いることができる。
例えば、可撓性を有する基材16bと、不純物の拡散を防ぐバリア膜16aと、基材16bおよびバリア膜16aを貼り合わせる樹脂膜16cと、が積層された積層体を基材16に好適に用いることができる(図34(A)参照)。
具体的には、600nmの酸化窒化シリコン膜および厚さ200nmの窒化シリコン膜が積層された積層材料を含む膜を、バリア膜16aに用いることができる。
具体的には、厚さ600nmの酸化窒化シリコン膜、厚さ200nmの窒化シリコン膜、厚さ200nmの酸化窒化シリコン膜、厚さ140nmの窒化酸化シリコン膜および厚さ100nmの酸化窒化シリコン膜がこの順に積層された積層材料を含む膜を、バリア膜16aに用いることができる。
ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート若しくはアクリル樹脂等の樹脂フィルム、樹脂板または積層体等を基材16bに用いることができる。
例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリル、ウレタン、エポキシもしくはシロキサン結合を有する樹脂を含む材料を樹脂膜16cに用いることができる。
<保護基材17、保護膜17p>
可撓性の保護基材17または/および保護膜17pを備えることができる。可撓性の保護基材17または保護膜17pは傷の発生を防いで入力装置100を保護する。
例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート若しくはアクリル樹脂等の樹脂フィルム、樹脂板または積層体等を保護基材17に用いることができる。
例えば、ハードコート層またはセラミックコート層を保護膜17pに用いることができる。具体的には、UV硬化樹脂または酸化アルミニウムを含む層を第2の電極に重なる位置に形成してもよい。
<表示部501>
表示部501は、マトリクス状に配置された複数の画素502を備える(図33(C)参照)。
例えば、画素502は副画素502B、副画素502Gおよび副画素502Rを含み、それぞれの副画素は表示素子と表示素子を駆動する画素回路を備える。
なお、画素502の副画素502Bは着色膜CFBと重なる位置に配置され、副画素502Gは着色膜CFGと重なる位置に配置され、副画素502Rは着色膜CFRと重なる位置に配置される。
本実施の形態では、白色の光を射出する有機エレクトロルミネッセンス素子を表示素子に適用する場合について説明するが、表示素子はこれに限られない。
例えば、副画素毎に射出する光の色が異なるように、発光色が異なる有機エレクトロルミネッセンス素子を副画素毎に適用してもよい。
また、有機エレクトロルミネッセンス素子の他、電気泳動方式やエレクトロウェッティング方式などにより表示を行う表示素子(電子インクともいう)、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉方式のMEMS表示素子、液晶素子など、様々な表示素子を表示素子に用いることができる。
また液晶素子は、透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイなどにも適用できる。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。また、適用する表示素子に好適な構成を様々な画素回路から選択して用いることができる。
また、表示部において、画素に能動素子を有するアクティブマトリクス方式、または、画素に能動素子を有しないパッシブマトリクス方式を用いることが出来る。
アクティブマトリクス方式では、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)として、トランジスタだけでなく、さまざまな能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いることが出来る。例えば、MIM(Metal Insulator Metal)、またはTFD(Thin Film Diode)などを用いることも可能である。これらの素子は、製造工程が少ないため、製造コストの低減、または歩留まりの向上を図ることができる。または、これらの素子は、素子のサイズが小さいため、開口率を向上させることができ、低消費電力化や高輝度化をはかることが出来る。
アクティブマトリクス方式以外のものとして、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いないパッシブマトリクス型を用いることも可能である。能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いないため、製造工程が少ないため、製造コストの低減、または歩留まりの向上を図ることができる。または、能動素子(アクティブ素子、非線形素子)を用いないため、開口率を向上させることができ、低消費電力化、または高輝度化などを図ることが出来る。
<基材510>
可撓性を有する材料を基材510に用いることができる。例えば、基材16に用いることができる材料を基材510に適用することができる。
例えば、可撓性を有する基材510bと、不純物の拡散を防ぐバリア膜510aと、基材510bおよびバリア膜510aを貼り合わせる樹脂膜510cと、が積層された積層体を基材510に好適に用いることができる(図34(A)参照)。
<封止材560>
封止材560は基材16と基材510を貼り合わせる。封止材560は空気より大きい屈折率を備える。また、封止材560側に光を取り出す場合は、封止材560は封止材560と接する層との屈折率段差を低減することができる。
画素回路および発光素子(例えば発光素子550R)は基材510と基材16の間にある。
<画素の構成>
副画素502Rは発光モジュール580Rを備える。
副画素502Rは、発光素子550Rおよび発光素子550Rに電力を供給することができるトランジスタ502tを含む画素回路を備える。また、発光モジュール580Rは発光素子550Rおよび光学素子(例えば着色膜CFR)を備える。
発光素子550Rは、下部電極、上部電極、下部電極と上部電極の間に発光性の有機化合物を含む層を有する。
発光モジュール580Rは、光を取り出す方向に着色膜CFRを有する。着色膜は特定の波長を有する光を透過するものであればよく、例えば赤色、緑色または青色等を呈する光を選択的に透過するものを用いることができる。なお、他の副画素を着色膜が設けられていない窓部に重なるように配置して、着色膜を透過しないで発光素子の発する光を射出させてもよい。
また、封止材560が光を取り出す側に設けられている場合、封止材560は、発光素子550Rと着色膜CFRに接する。
着色膜CFRは発光素子550Rと重なる位置にある。これにより、発光素子550Rが発する光の一部は着色膜CFRを透過して、図中に示す矢印の方向の発光モジュール580Rの外部に射出される。
着色膜(例えば着色膜CFR)を囲むように遮光膜BMがある。
<画素回路の構成>
画素回路に含まれるトランジスタ502tを覆う絶縁膜521を備える。絶縁膜521は画素回路に起因する凹凸を平坦化するための膜として用いることができる。また、不純物の拡散を抑制できる層を含む積層膜を、絶縁膜521に適用することができる。これにより、不純物の拡散によるトランジスタ502t等の信頼性の低下を抑制できる。
絶縁膜521の上に下部電極が配置され、下部電極の端部に重なるように隔壁528が絶縁膜521の上に配設される。
下部電極は、上部電極との間に発光性の有機化合物を含む層を挟持して発光素子(例えば発光素子550R)を構成する。画素回路は発光素子に電力を供給する。
また、隔壁528上に、基材16と基材510の間隔を制御するスペーサを有する。
<走査線駆動回路の構成>
走査線駆動回路503g(1)は、トランジスタ503tおよび容量503cを含む。なお、画素回路と同一の工程で同一基板上に形成することができるトランジスタを駆動回路に用いることができる。
<変換器CONV>
検知ユニット10Uが供給する検知信号DATAを変換してフレキシブル基板FPC1に供給することができるさまざまな回路を、変換器CONVに用いることができる(図33(A)および図34(A)参照)。
例えば、トランジスタM4を変換器CONVに用いることができる。
<他の構成>
表示部501は、反射防止膜567pを画素に重なる位置に備える。反射防止膜567pとして、例えば円偏光板を用いることができる。
表示部501は、信号を供給することができる配線511を備え、端子519が配線511に設けられている。なお、画像信号および同期信号等の信号を供給することができるフレキシブル基板FPC2が端子519に電気的に接続されている。
なお、フレキシブル基板FPC2にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。
表示部501は、走査線、信号線および電源線等の配線を有する。様々な導電膜を配線に用いることができる。
具体的には、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、ニッケル、イットリウム、ジルコニウム、銀またはマンガンから選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金または上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることができる。とくに、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンの中から選択される一以上の元素を含むと好ましい。特に、銅とマンガンの合金がウエットエッチング法を用いた微細加工に好適である。
または、アルミニウム膜上にチタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた一または複数を組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を積層する積層構造を用いることができる。
具体的には、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造等を用いることができる。
また、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透光性を有する導電材料を用いてもよい。
<表示部の変形例>
様々なトランジスタを表示部501に適用できる。
ボトムゲート型のトランジスタを表示部501に適用する場合の構成を図34(A)および図34(B)に図示する。
例えば、酸化物半導体、アモルファスシリコン等を含む半導体膜を図34(A)に図示するトランジスタ502tおよびトランジスタ503tに適用することができる。
トップゲート型のトランジスタを表示部501に適用する場合の構成を、図34(C)に図示する。
例えば、多結晶シリコンまたは単結晶シリコン基板等から転置された単結晶シリコン膜等を含む半導体膜を、図34(C)に図示するトランジスタ502tおよびトランジスタ503tに適用することができる。または、先の実施の形態に示すトランジスタをトランジスタ502tおよびトランジスタ503tに用いることができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様の入出力装置の検知ユニットに用いることができる検知回路の構成および駆動方法について、図35を参照しながら説明する。
図35は本発明の一態様の検知回路19および変換器CONVの構成および駆動方法を説明する図である。
図35(A)は本発明の一態様の検知回路19および変換器CONVの構成を説明する回路図であり、図35(B−1)および図35(B−2)は駆動方法を説明するタイミングチャートである。
本発明の一態様の検知回路19は、ゲートが検知素子Cの第1の電極11と電気的に接続され、第1の電極が例えば接地電位を供給することができる配線VPIと電気的に接続される第1のトランジスタM1を備える(図35(A)参照)。
また、ゲートが選択信号を供給することができる走査線G1と電気的に接続され、第1の電極が第1のトランジスタM1の第2の電極と電気的に接続され、第2の電極が例えば検知信号DATAを供給することができる信号線DLと電気的に接続される第2のトランジスタM2を備える構成であってもよい。
また、ゲートがリセット信号を供給することができる配線RESと電気的に接続され、第1の電極が検知素子Cの第1の電極11と電気的に接続され、第2の電極が例えば接地電位を供給することができる配線VRESと電気的に接続される第3のトランジスタM3を備える構成であってもよい。
検知素子Cの容量は、例えば、第1の電極11または第2の電極12にものが近接すること、もしくは第1の電極11および第2の電極12の間隔が変化することにより変化する。これにより、検知回路19は検知素子Cの容量の変化に基づく検知信号DATAを供給することができる。
なお、検知素子Cの第1の電極11、第1のトランジスタM1のゲートおよび第3のトランジスタの第1の電極が電気的に接続される結節部をノードAという。
配線VRESおよび配線VPIは例えば接地電位を供給することができ、配線VPOおよび配線BRは例えば高電源電位を供給することができる。
また、配線RESはリセット信号を供給することができ、走査線G1は選択信号を供給することができ、配線CSは検知素子の第2の電極12の電位を制御する制御信号を供給することができる。
また、信号線DLは検知信号DATAを供給することができ、端子OUTは検知信号DATAに基づいて変換された信号を供給することができる。
なお、検知信号DATAを変換して端子OUTに供給することができるさまざまな回路を、変換器CONVに用いることができる。例えば、変換器CONVを検知回路19と電気的に接続することにより、ソースフォロワ回路またはカレントミラー回路などが構成されるようにしてもよい。
具体的には、トランジスタM4を用いた変換器CONVを用いて、ソースフォロワ回路を構成できる(図35(A)参照)。なお、第1のトランジスタM1乃至第3のトランジスタM3と同一の工程で作製することができるトランジスタをトランジスタM4に用いてもよい。
また、トランジスタM1乃至トランジスタM3は半導体膜を有する。例えば、4族の元素、化合物半導体または酸化物半導体を半導体膜に用いることができる。具体的には、シリコンを含む半導体、ガリウムヒ素を含む半導体またはインジウムを含む酸化物半導体などを適用できる。また、トランジスタM1乃至トランジスタM3として、先の実施の形態に示すトランジスタを用いることができる。
<検知回路19の駆動方法>
検知回路19の駆動方法について説明する。
<第1のステップ>
第1のステップにおいて、第3のトランジスタを導通状態にした後に非導通状態にするリセット信号をゲートに供給し、検知素子Cの第1の電極の電位を所定の電位にする(図35(B−1)期間T1参照)。
具体的には、リセット信号を配線RESに供給させる。リセット信号が供給された第3のトランジスタは、ノードAの電位を例えば接地電位にする(図35(A)参照)。
<第2のステップ>
第2のステップにおいて、第2のトランジスタM2を導通状態にする選択信号をゲートに供給し、第1のトランジスタの第2の電極を信号線DLに電気的に接続する。
具体的には、走査線G1に選択信号を供給させる。選択信号が供給された第2のトランジスタM2は、第1のトランジスタの第2の電極を信号線DLに電気的に接続する(図35(B−1)期間T2参照)。
<第3のステップ>
第3のステップにおいて、制御信号を検知素子の第2の電極に供給し、制御信号および検知素子Cの容量に基づいて変化する電位を第1のトランジスタM1のゲートに供給する。
具体的には、配線CSに矩形の制御信号を供給させる。矩形の制御信号を第2の電極12に供給された検知素子Cでは、検知素子Cの容量に基づいてノードAの電位が上昇する(図35(B−1)期間T2の後半を参照)。
例えば、検知素子が大気中に置かれている場合、大気より誘電率の高いものが、検知素子Cの第2の電極12に近接して配置された場合、検知素子Cの容量は見かけ上大きくなる。
これにより、矩形の制御信号がもたらすノードAの電位の変化は、大気より誘電率の高いものが近接して配置されていない場合に比べて小さくなる(図35(B−2)実線参照)。
<第4のステップ>
第4のステップにおいて、第1のトランジスタM1のゲートの電位の変化がもたらす信号を信号線DLに供給する。
例えば、第1のトランジスタM1のゲートの電位の変化がもたらす電流の変化を信号線DLに供給する。
変換器CONVは、信号線DLを流れる電流の変化を電圧の変化に変換して供給する。
<第5のステップ>
第5のステップにおいて、第2のトランジスタを非導通状態にする選択信号をゲートに供給する。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態10)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を用いることができる電子機器について、図36を用いて説明を行う。
図36(A)乃至図36(D)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐体600、表示部601、スピーカ603、LEDランプ604、操作キー605(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子606、センサ607(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン608、等を有することができる。
図36(A)はモバイルコンピュータであり、上述したものの他に、スイッチ609、赤外線ポート620、等を有することができる。図36(B)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(たとえば、DVD再生装置)であり、上述したものの他に、第2表示部602、記録媒体読込部621、等を有することができる。図36(C)はテレビ受像器であり、上述したものの他に、チューナ、画像処理部、等を有することができる。図36(D)は持ち運び型テレビ受像器であり、上述したものの他に、信号の送受信が可能な充電器627等を有することができる。
図36(E)乃至図36(G)に、折りたたみ可能な携帯情報端末610を示す。図36(E)に展開した状態の携帯情報端末610を示す。図36(F)に展開した状態または折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末610を示す。図36(G)に折りたたんだ状態の携帯情報端末610を示す。携帯情報端末610は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
表示部612はヒンジ613によって連結された3つの筐体615に支持されている。ヒンジ613を介して2つの筐体615間を屈曲させることにより、携帯情報端末610を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。本発明の一態様を適用して作製された表示装置を表示部612に用いることができる。例えば、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができる表示装置を適用できる。
図36(A)乃至図36(G)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。さらに、複数の表示部を有する電子機器においては、一つの表示部を主として画像情報を表示し、別の一つの表示部を主として文字情報を表示する機能、または、複数の表示部に視差を考慮した画像を表示することで立体的な画像を表示する機能、等を有することができる。さらに、受像部を有する電子機器においては、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を自動または手動で補正する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、図36(A)乃至図36(G)に示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有することを特徴とする。なお、本発明の一態様の半導体装置は、表示部を有さない電子機器にも適用することができる。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
なお、明細書の中の図面や文章において規定されていない内容について、その内容を除くことを規定した発明の一態様を構成することが出来る。または、ある値について、上限値と下限値などで示される数値範囲が記載されている場合、その範囲を任意に狭めることで、または、その範囲の中の一点を除くことで、その範囲を一部除いた発明の一態様を規定することができる。これらにより、例えば、従来技術が本発明の一態様の技術的範囲内に入らないことを規定することができる。
具体例としては、ある回路において、第1乃至第5のトランジスタを用いている回路図が記載されているとする。その場合、その回路が、第6のトランジスタを有していないことを発明として規定することが可能である。または、その回路が、容量素子を有していないことを規定することが可能である。さらに、その回路が、ある特定の接続構造をとっているような第6のトランジスタを有していない、と規定して発明を構成することができる。または、その回路が、ある特定の接続構造をとっている容量素子を有していない、と規定して発明を構成することができる。例えば、ゲートが第3のトランジスタのゲートと接続されている第6のトランジスタを有していない、と発明を規定することが可能である。または、例えば、第1の電極が第3のトランジスタのゲートと接続されている容量素子を有していない、と発明を規定することが可能である。
別の具体例としては、ある値について、例えば、「ある電圧が、3V以上10V以下であることが好適である」と記載されているとする。その場合、例えば、ある電圧が、−2V以上1V以下である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。または、例えば、ある電圧が、13V以上である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。なお、例えば、その電圧が、5V以上8V以下であると発明を規定することも可能である。なお、例えば、その電圧が、概略9Vであると発明を規定することも可能である。なお、例えば、その電圧が、3V以上10V以下であるが、9Vである場合を除くと発明を規定することも可能である。なお、ある値について、「このような範囲であることが好ましい」、「これらを満たすことが好適である」となどと記載されていたとしても、ある値は、それらの記載に限定されない。つまり、「好ましい」、「好適である」などと記載されていたとしても、必ずしも、それらの記載には、限定されない。
別の具体例としては、ある値について、例えば、「ある電圧が、10Vであることが好適である」と記載されているとする。その場合、例えば、ある電圧が、−2V以上1V以下である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。または、例えば、ある電圧が、13V以上である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。
別の具体例としては、ある物質の性質について、例えば、「ある膜は、絶縁膜である」と記載されているとする。その場合、例えば、その絶縁膜が、有機絶縁膜である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。または、例えば、その絶縁膜が、無機絶縁膜である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。または、例えば、その膜が、導電膜である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。または、例えば、その膜が、半導体膜である場合を除く、と発明の一態様を規定することが可能である。
別の具体例としては、ある積層構造について、例えば、「A膜とB膜との間に、ある膜が設けられている」と記載されているとする。その場合、例えば、その膜が、4層以上の積層膜である場合を除く、と発明を規定することが可能である。または、例えば、A膜とその膜との間に、導電膜が設けられている場合を除く、と発明を規定することが可能である。
なお、本明細書等において記載されている発明の一態様は、さまざまな人が実施することが出来る。しかしながら、その実施は、複数の人にまたがって実施される場合がある。例えば、送受信システムの場合において、A社が送信機を製造および販売し、B社が受信機を製造および販売する場合がある。別の例としては、トランジスタおよび発光素子を有する発光装置の場合において、トランジスタが形成された半導体装置は、A社が製造および販売する。そして、B社がその半導体装置を購入して、その半導体装置に発光素子を成膜して、発光装置として完成させる、という場合がある。
このような場合、A社またはB社のいずれに対しても、特許侵害を主張できるような発明の一態様を、構成することが出来る。つまり、A社のみが実施するような発明の一態様を構成することが可能であり、別の発明の一態様として、B社のみが実施するような発明の一態様を構成することが可能である。また、A社またはB社に対して、特許侵害を主張できるような発明の一態様は、明確であり、本明細書等に記載されていると判断する事が出来る。例えば、送受信システムの場合において、送信機のみの場合の記載や、受信機のみの場合の記載が本明細書等になかったとしても、送信機のみで発明の一態様を構成することができ、受信機のみで別の発明の一態様を構成することができ、それらの発明の一態様は、明確であり、本明細書等に記載されていると判断することが出来る。別の例としては、トランジスタおよび発光素子を有する発光装置の場合において、トランジスタが形成された半導体装置のみの場合の記載や、発光素子を有する発光装置のみの場合の記載が本明細書等になかったとしても、トランジスタが形成された半導体装置のみで発明の一態様を構成することができ、発光素子を有する発光装置のみで発明の一態様を構成することができ、それらの発明の一態様は、明確であり、本明細書等に記載されていると判断することが出来る。
なお、本明細書等においては、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有するすべての端子について、その接続先を特定しなくても、当業者であれば、発明の一態様を構成することは可能な場合がある。つまり、接続先を特定しなくても、発明の一態様が明確であると言える。そして、接続先が特定された内容が、本明細書等に記載されている場合、接続先を特定しない発明の一態様が、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。特に、端子の接続先が複数のケース考えられる場合には、その端子の接続先を特定の箇所に限定する必要はない。したがって、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有する一部の端子についてのみ、その接続先を特定することによって、発明の一態様を構成することが可能な場合がある。
なお、本明細書等においては、ある回路について、少なくとも接続先を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。または、ある回路について、少なくとも機能を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。つまり、機能を特定すれば、発明の一態様が明確であると言える。そして、機能が特定された発明の一態様が、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。したがって、ある回路について、機能を特定しなくても、接続先を特定すれば、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。または、ある回路について、接続先を特定しなくても、機能を特定すれば、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。
なお、本明細書等においては、ある一つの実施の形態において述べる図または文章において、その一部分を取り出して、発明の一態様を構成することは可能である。したがって、ある部分を述べる図または文章が記載されている場合、その一部分の図または文章を取り出した内容も、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能であるものとする。そして、その発明の一態様は明確であると言える。そのため、例えば、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、配線、受動素子(容量素子、抵抗素子など)、導電膜、絶縁膜、半導体膜、有機材料、無機材料、部品、装置、動作方法、製造方法などが単数もしくは複数記載された図面または文章において、その一部分を取り出して、発明の一態様を構成することが可能であるものとする。例えば、N個(Nは整数)の回路素子(トランジスタ、容量素子等)を有して構成される回路図から、M個(Mは整数で、M<N)の回路素子(トランジスタ、容量素子等)を抜き出して、発明の一態様を構成することは可能である。別の例としては、N個(Nは整数)の層を有して構成される断面図から、M個(Mは整数で、M<N)の層を抜き出して、発明の一態様を構成することは可能である。さらに別の例としては、N個(Nは整数)の要素を有して構成されるフローチャートから、M個(Mは整数で、M<N)の要素を抜き出して、発明の一態様を構成することは可能である。さらに別の例としては、「Aは、B、C、D、E、または、Fを有する」と記載されている文章から、一部の要素を任意に抜き出して、「Aは、BとEとを有する」、「Aは、EとFとを有する」、「Aは、CとEとFとを有する」、または、「Aは、BとCとDとEとを有する」などの発明の一態様を構成することは可能である。
なお、本明細書等においては、ある一つの実施の形態において述べる図または文章において、少なくとも一つの具体例が記載される場合、その具体例の上位概念を導き出すことは、当業者であれば容易に理解される。したがって、ある一つの実施の形態において述べる図または文章において、少なくとも一つの具体例が記載される場合、その具体例の上位概念も、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。そして、その発明の一態様は、明確であると言える。
なお、本明細書等においては、少なくとも図に記載した内容(図の中の一部でもよい)は、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。したがって、ある内容について、図に記載されていれば、文章を用いて述べていなくても、その内容は、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。同様に、図の一部を取り出した図についても、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。そして、その発明の一態様は明確であると言える。