以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態における説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また、本発明の一態様には、RF(Radio Frequency)タグ、半導体表示装置、集積回路を含むあらゆる装置が、その範疇に含まれる。また、表示装置には、液晶表示装置、有機発光素子に代表される発光素子を各画素に備えた発光装置、電子ペーパー、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)など、集積回路を回路に有している表示装置が、その範疇に含まれる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る構成の一例について説明する。
図1(A)に、本発明の一態様にかかる半導体装置10の構成の一例を示す。半導体装置10は、集積回路100、主記憶装置130、補助記憶装置140を有する。また、集積回路100は、レジスタ110、キャッシュメモリ120を有する。なお、キャッシュメモリ120は、集積回路100の外部に設けることもできる。
集積回路100は、複数の素子を有する回路である。集積回路100が有する素子としては、トランジスタ、ダイオード、抵抗、容量素子など様々な素子を用いることができる。また、集積回路100は、これらの素子を同一の基板上に集積させた構成とすることができる。なお、集積回路100はICともいい、また、集積度の高いものはVLSI、ULSIともいう。
レジスタ110は、集積回路100における演算処理の結果や状態の保持等を行う機能を有する。レジスタ110は、例えばフリップフロップなどにより構成される。
キャッシュメモリ120は、主記憶装置130に格納されたデータの一部のコピーを格納する機能を有する。集積回路100において情報処理を行う際、主記憶装置130に格納されたデータの代わりに、キャッシュメモリ120に格納されたデータを用いることができる。
キャッシュメモリ120は、複数の階層に分割された構成とすることができる。図1(B)に、キャッシュメモリ120が3つの階層を有する構成を示す。キャッシュメモリ120は、1次キャッシュ(L1)として機能するキャッシュ121と、2次キャッシュ(L2)として機能するキャッシュ122と、3次キャッシュ(L3)として機能するキャッシュ123と、を有する。なお、キャッシュメモリ120の階層の数はこれに限られない。すなわち、キャッシュメモリ120は、1つの階層のみから構成されていてもよいし、2つの階層、または4つ以上の階層から構成されていてもよい。
主記憶装置130は、集積回路100や入出力装置(図示せず)から入力されたデータを格納する機能を有する。また、格納されたデータを集積回路100や入出力装置に出力する機能を有する。
補助記憶装置140は、主記憶装置130から入力されたデータを格納する機能を有する。また、格納されたデータを主記憶装置130に出力する機能を有する。補助記憶装置140は、不揮発性メモリなどによって構成することができる。
レジスタ110、キャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)、主記憶装置130、補助記憶装置140の各種記憶装置は、それぞれ複数のトランジスタを有する。これらのトランジスタにおいて、チャネル形成領域が形成される半導体の材料は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、酸化物半導体など様々な材料を用いることができる。
本発明の一態様においては、レジスタ110およびキャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)が、チャネル形成領域に酸化物半導体を含むトランジスタ(以下、OSトランジスタともいう)を有する構成とする。図中、OSの符号が付された記憶装置、回路等は、OSトランジスタを有することを意味する。
酸化物半導体は、シリコン等よりもバンドギャップが広く、真性キャリア密度が低い。そのため、OSトランジスタはオフ電流が極めて小さい。このようなOSトランジスタ用いた回路をレジスタ110、キャッシュメモリ120に搭載することにより、電力の供給が停止された期間においても、格納されたデータを長時間保持することが可能となる。
図1(C)に、レジスタ110、キャッシュメモリ120に搭載することが可能な、OSトランジスタを有する回路150の構成の一例を示す。なお、回路150は、図1(B)に示すキャッシュ121乃至123にも搭載することができる。
回路150は、トランジスタ161と容量素子162を有する。トランジスタ161のゲートは端子171と接続され、ソースまたはドレインの一方は端子172と接続され、ソース又はドレインの他方は容量素子162の一方の電極と接続されている。また、容量素子162の他方の電極は、端子173と接続されている。ここでは、トランジスタ161のソースまたはドレインの他方および容量素子162の一方の電極と接続されたノードをノード180とする。なお、図中、OSの符号が付されたトランジスタは、OSトランジスタであることを意味する。回路150は以下のような動作により、データの書き込み、保持、読み出し、書き換えを行うことができる。
まず、端子173の電位を一定の電位に維持した上で、端子171の電位をトランジスタ161が導通状態となる電位にして、トランジスタ161を導通状態とする。これにより、端子172の電位がノード180に供給される(データの書き込み)。
次に、端子171の電位をトランジスタ161が非導通状態となる電位にして、トランジスタ161を非導通状態とする。これにより、ノード180が浮遊状態となり、ノード180の電位が保持される(データの保持)。ここで、トランジスタ161はOSトランジスタであり、非導通状態におけるオフ電流が極めて小さいため、ノード180の電位を長時間にわたって保持することができる。
次に、端子173の電位を一定の電位に維持した上で、端子171の電位をトランジスタ161が導通状態となる電位にして、トランジスタ161を導通状態とする。これにより、ノード180の電位が端子172に供給される。この時、端子172の電位は、ノード180の電位に応じて異なる電位となる。従って、端子172の電位を読み出すことにより、回路150に格納されているデータの読み出しが可能となる。
また、データの書き換えは、上記データの書き込みおよび保持と同様の動作により行うことができる。具体的には、端子171の電位をトランジスタ161が導通状態となる電位にして、トランジスタ161を導通状態とする。これにより、新たに書き換えるデータに対応する端子172の電位がノード180に与えられる。その後、端子171の電位をトランジスタ161が非導通状態となる電位にして、トランジスタ161を非導通状態とすることにより、ノード180が浮遊状態となり、ノード180には書き換えたデータに対応する電位が保持される。
回路150をレジスタ110およびキャッシュメモリ120に搭載することにより、レジスタ110およびキャッシュメモリ120に格納されたデータを長期間にわたって保持することができる。そのため、データの保持期間においてレジスタ110およびキャッシュメモリ120への電力の供給を停止することができ、半導体装置10の消費電力を低減することができる。
ここで、レジスタ110、キャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)は、それぞれ半導体装置10における機能が異なるため、要求される性能も異なる。各記憶装置に要求される性能の差異を、図2を用いて説明する。
図2に、半導体装置10が有する各記憶装置の階層を示す。半導体装置10において、レジスタ110を最上位の階層とし、レジスタ110の下位の階層にキャッシュ121(1次キャッシュ)が設けられ、キャッシュ121の下位の階層にキャッシュ122(2次キャッシュ)が設けられ、キャッシュ122の下位の階層にキャッシュ123(3次キャッシュ)が設けられ、キャッシュ123の下位の階層に主記憶装置130が設けられ、主記憶装置130の下位の階層に補助記憶装置140が設けられている。
図2において、記憶装置は、上位の階層に位置するほど高速動作が要求される。また、下位の階層に位置する記憶装置ほど、大容量および高密度化(或いは、ビット当たりの面積の縮小)が要求される。例えば、レジスタ110は、集積回路100における演算に用いるデータを記憶するため、特に高速な動作が要求される。また、キャッシュ121は、キャッシュメモリ120の中で最上位の階層に位置する1次キャッシュであり、アクセスされる頻度が最も高いため、高速な動作が要求される。一方、キャッシュ122、123は、キャッシュ121ほどの高速動作は要求されないものの、キャッシュ121よりも大容量化、およびビット当たりの面積の縮小が要求される。
従って、レジスタ110、キャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)にOSトランジスタを用いた回路を搭載する場合、当該回路はそれぞれ要求される性能に適した構成を有することが好ましい。
例えば、集積回路100がCPUとして機能する場合において、CPUに含まれるレジスタへの書き込みおよび読み出しに要するクロックサイクル数は、1クロックサイクルである場合がある。また、一次キャッシュへの書き込みおよび読み出しに要するクロックサイクル数は、1乃至5クロックサイクルである場合がある。CPUのクロック周波数を300MHzとすると、1乃至5クロックサイクルは3.3ns乃至16.5nsである。CPUのクロック周波数を5GHzとすると、1乃至5クロックサイクルは0.2ns乃至1nsとなる。また、二次キャッシュの書き込みおよび読み出しに要するクロックサイクル数は、例えば10乃至30クロックサイクルである。CPUのクロック周波数を300MHzとすると、10乃至30クロックサイクルは33ns乃至100nsである。CPUのクロック周波数を5GHzとすると、10乃至30クロックサイクルは2ns乃至6nsとなる。
図3に、半導体装置10のより具体的な構成の一例を示す。図3において、レジスタ110は、チャネル形成領域に酸化物半導体以外の材料を含むトランジスタを有する回路111と、OSトランジスタを有する回路112を有する。なお、以下では、チャネル形成領域に酸化物半導体以外の材料を含むトランジスタとして、チャネル形成領域にシリコンを含むトランジスタ(以下、Siトランジスタともいう)を用いる場合を例にとって説明するが、酸化物半導体以外の材料はシリコンに限られない。すなわち、酸化物半導体以外の材料として、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム等などの様々な材料を用いることができる。なお、図中、Siの符号が付された記憶装置、回路などは、Siトランジスタを有することを意味する。
キャッシュ121は、Siトランジスタを有する回路124と、OSトランジスタを有する回路125を有する。
図2に示すように、レジスタ110およびキャッシュ121は上位の階層に位置し、高速動作が要求される。ここで、Siトランジスタは動作速度が速いため、レジスタ110およびキャッシュ121においては、Siトランジスタを有する回路を記憶回路として用いることが好ましい。そのため、レジスタ110にはSiトランジスタを有する回路111を搭載し、キャッシュ121にはSiトランジスタを有する回路124を搭載する。これにより、レジスタ110およびキャッシュ121の高速動作が可能となる。なお、回路111、124には、Siトランジスタで構成された揮発性メモリなどを用いることができる。回路111、124に用いることができる回路の具体例としては、Siトランジスタで構成されたフリップフロップ、Siトランジスタで構成されたSRAMセル、Siトランジスタで構成されたDRAMセルなどが挙げられる。
一方、SiトランジスタはOSトランジスタと比較してリーク電流が大きいため、レジスタ110およびキャッシュ121への電力の供給を停止すると、回路111、124に格納されたデータは消失する。そのため、レジスタ110およびキャッシュ121が有するトランジスタが全てSiトランジスタである場合、データを保持するためにはレジスタ110およびキャッシュ121に常に電力を供給しておく必要があり、半導体装置10の消費電力が増大する。
そこで、図3(A)に示すように、レジスタ110に、Siトランジスタを有する回路111に加えて、OSトランジスタを有し、且つ、回路111と接続された回路112を設ける。ここで、回路112は、回路111に格納されたデータを保持する機能を有する。そのため、レジスタ110は、回路111に格納されたデータを回路112に退避させ、また、当該退避させたデータを再度回路112に復帰させることができる。なお、回路112は、例えば図1(C)に示す回路150を有する構成とすることができる。以下、回路111に格納されたデータを保持する機能を有する回路112を、バックアップ回路ともいう。
回路112はOSトランジスタを有する回路であるため、電力の供給が停止された期間にも格納されたデータを保持することができる。そのため、レジスタ110への電力の供給が停止される直前に、回路111に格納されたデータを回路112に退避させることにより、レジスタ110への電力の供給が停止した場合であっても回路111に格納されたデータを保持することが可能となる。そして、レジスタ110への電力の供給が再開された後、回路112に格納されたデータを回路111に復帰させることにより、当該データをレジスタ110における処理に用いることができる。
以上のように、レジスタ110は、Siトランジスタを有する回路およびOSトランジスタを有する回路を備えることによって、高速な動作を維持しつつ、電力の供給が停止された期間においても長期間データを保持することができる。
キャッシュ121は、Siトランジスタを有する回路124に加えて、OSトランジスタを有し、且つ、回路124と接続された回路125を有する。回路125は、回路124に格納されたデータを保持する機能を有するバックアップ回路である。よって、キャッシュ121は、回路124に格納されたデータを回路125に退避させ、また、当該退避させたデータを再度回路124に復帰させることができる。なお、回路125は、例えば図1(C)に示す回路150を有する構成とすることができる。
回路125はOSトランジスタを有する回路であるため、電力の供給が停止された期間にも格納されたデータを保持することができる。そのため、キャッシュ121への電力の供給が停止される直前に、回路124に格納されたデータを回路125に退避させることにより、キャッシュ121への電力の供給が停止した場合であっても、回路124に格納されたデータを保持することが可能となる。そして、キャッシュ121への電力の供給が再開された際、回路125に格納されたデータを回路124に復帰させることにより、当該データをキャッシュ121における処理に用いることができる。
以上のように、キャッシュ121は、Siトランジスタを有する回路およびOSトランジスタを有する回路を備えることによって、高速な動作を維持しつつ、電力の供給が停止された期間においても長期間データを保持することができる。
なお、レジスタ110は、回路111が有するSiトランジスタと回路112が有するOSトランジスタを積層した構成とすることができる。また、キャッシュ121は、回路124が有するSiトランジスタと回路125が有するOSトランジスタを積層した構成とすることができる。これにより、レジスタ110、キャッシュ121の面積の増加を抑えつつ、レジスタ110、キャッシュ121にデータの退避および復帰を行う機能を付加することができる。
キャッシュ122は、OSトランジスタを有する回路126を有する。これにより、キャッシュ122への電力の供給が停止した場合であってもデータを保持することが可能となる。なお、回路126は、例えば図1(C)に示す回路150を有する構成とすることができる。
キャッシュ123は、OSトランジスタを有する回路127を有する。これにより、キャッシュ123への電力の供給が停止した場合であってもデータを保持することが可能となる。なお、回路127は、例えば図1(C)に示す回路150を有する構成とすることができる。
ここで、キャッシュ122、123は、図2に示すように、レジスタ110およびキャッシュ121よりも下の階層に位置するため、面積の縮小が要求される。そのため、キャッシュ122、123においては、バックアップ回路を設けない構成とすることが好ましい。すなわち、レジスタ110、キャッシュ121においては、Siトランジスタを有する回路を記憶回路として用い、OSトランジスタを有する回路をバックアップ回路として用いたが、キャッシュ122、123においては、OSトランジスタを記憶回路として用いることが好ましい。これにより、キャッシュ122、123において、Siトランジスタを有する回路を省略して面積を縮小することができ、集積度を上げることができる。
なお、OSトランジスタは微細化により高速な動作が可能となり、OSトランジスタを用いた回路126、127は、書き込み速度および読み出し速度が10ns以下、より好ましくは5ns以下である記憶回路として機能させることができる。そのため、キャッシュ122、123は、2次キャッシュ、3次キャッシュに要求される動作速度を十分に満たすことができる。
具体的には、OSトランジスタのチャネル長は、100nm以下、好ましくは60nm以下、より好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。
図3(B)に、図3(A)に示す半導体装置10の階層の構造を示す。上位の階層に位置し、高速な動作が要求されるレジスタ110およびキャッシュ121は、記憶回路として機能するSiトランジスタを有する回路、およびバックアップ回路として機能するOSトランジスタを有する回路を備える。これにより、高速な動作が可能となり、且つ、電力の供給が停止された期間においても格納されたデータを保持することができる。
一方、下位の階層に位置し、面積の縮小および大容量が要求されるキャッシュ122、123は、記憶回路として機能するOSトランジスタを有する回路を備え、バックアップ回路を有しない構成とする。これにより、大容量および面積の縮小を実現しつつ、電力の供給が停止された期間においても格納されたデータを保持することができる。
このように、階層に適した性能を備え、且つ、電力の供給が停止された期間においても格納されたデータを保持することが可能な記憶装置を実現することができる。
次に、半導体装置10が有する各種記憶装置に用いることができる、具体的な回路の構成の例を示す。
図4(A)に、レジスタ110およびキャッシュメモリ120に用いることができる回路200の構成を示す。回路200は、Siトランジスタを有する回路210と、OSトランジスタを有する回路220を有する。なお、回路210は、図3(A)における回路111、124に対応し、Siトランジスタで構成された揮発性メモリなどによって構成することができる。また、回路220は、図3(A)における回路112、125に対応する。
回路220は、トランジスタ231、容量素子232、配線241、242を有する。トランジスタ231のゲートは配線241と接続され、ソースまたはドレインの一方は回路210と接続され、ソースまたはドレインの他方は容量素子232の一方の電極と接続されている。また、容量素子232の他方の電極は、配線242と接続されている。ここでは、トランジスタ231のソースまたはドレインの他方および容量素子232の一方の電極と接続されたノードをノード250とする。なお、トランジスタ231はOSトランジスタである。回路220は、図1(C)に示す回路150と同様の動作により、データの書き込み、保持、読み出し、書き換えを行うことができる。
ここで、トランジスタ231のソースまたはドレインの一方は、Siを有する回路210と接続されている。そのため、回路200は、Siトランジスタを有する回路210に格納されたデータを回路220に退避させ、また、当該退避させたデータを再度回路210に復帰させる機能を有する。
具体的には、回路210への電力の供給が停止される直前の期間において、配線242の電位を一定の電位に維持した上で、配線241の電位をトランジスタ231が導通状態となる電位にして、トランジスタ231を導通状態とする。これにより、Siを有する回路210に格納されたデータを、トランジスタ231を介してノード250に退避させることができる。その後、配線241の電位をトランジスタ231が非導通状態となる電位にして、トランジスタ231を非導通状態とする。ここで、トランジスタ231はオフ電流が極めて低いため、回路220への電力の供給が停止された期間においても、回路220に退避させたデータを保持することができる。
そして、回路210への電力の供給を再開する際に、配線242の電位を一定の電位に維持した上で、配線241の電位をトランジスタ231が導通状態となる電位にして、トランジスタ231を導通状態とする。これにより、ノード250に退避させたデータを、トランジスタ231を介して回路210に復帰させることができる。そして、復帰させたデータは再度回路210における処理に用いることができる。
このように、回路200は、Siトランジスタを有する回路210において高速な情報処理を行いつつ、回路210への電力の供給が停止された期間においてもデータを保持することができる。
なお、回路200は、回路210が有するSiトランジスタと回路220が有するOSトランジスタを積層した構成とすることができる。例えば、回路210が有するSiトランジスタの上方に絶縁層を設け、当該絶縁層の上方にOSトランジスタであるトランジスタ231、および容量素子232を設けた構成とすることができる。これにより、回路200の面積の増加を抑えつつ、回路200にデータの退避および復帰を行う機能を付加することができる。
なお、図4(B)に示すように、回路200において、トランジスタ233を設けた構成とすることもできる。ここで、トランジスタ233のゲートはノード250と接続され、ソースまたはドレインの一方は配線243と接続され、ソースまたはドレインの他方は配線244を介して回路210と接続されている。なお、配線243には一定の電位が供給される。また、トランジスタ233はSiトランジスタであってもOSトランジスタであってもよく、nチャネル型トランジスタであってもpチャネル型トランジスタであってもよい。
ノード250の電位はトランジスタ233のゲートに供給されるため、回路210から退避させたデータに対応する電位を、トランジスタ233の導通状態に反映させることができる。そして、トランジスタ233の導通状態によって配線244は異なる電位をとる。そのため、回路220に格納されたデータを配線244の電位に反映させ、回路210に復帰させることができる。このような構成とすることにより、ノード250の電位が多少変動していても、回路220に退避させたデータを正確に読み出すことができる。
なお、回路220は、図3(A)における回路126、127に用いることも可能である。
図4(C)に、キャッシュ122、123に用いることができる回路の構成の一例を示す。回路300は、トランジスタ311、312、容量素子313、配線321乃至325を有する。ここで、トランジスタ311はOSトランジスタである。トランジスタ312は、SiトランジスタでもOSトランジスタでもよい。ここでは、トランジスタ312がnチャネル型である場合を示すが、これに限られず、トランジスタ312はnチャネル型トランジスタであってもpチャネル型トランジスタであってもよい。なお、回路300は、図3(A)における回路126、127に対応する。
トランジスタ311のゲートは配線321と接続され、ソースまたはドレインの一方は配線322と接続され、ソースまたはドレインの他方はトランジスタ312のゲート、および容量素子313の一方の電極と接続されている。トランジスタ312のソースまたはドレインの一方は配線324と接続されソースまたはドレインの他方は配線325と接続されている。容量素子313の他方の電極は、配線323と接続されている。ここでは、トランジスタ311のソースまたはドレインの他方、トランジスタ312のゲート、および容量素子313の一方の電極と接続されたノードをノード330とする。なお、配線321は、トランジスタ311の導通状態を制御する信号を伝える機能を有する配線であり、ワード線ともいう。配線322は、回路300に格納するデータに対応する信号を伝える機能を有する配線であり、ビット線ともいう。
トランジスタ311にOSトランジスタを用いることにより、トランジスタ311をオフ状態とした際、ノード330の電位を極めて長時間にわたって保持することができる。
図4(C)に示す回路300の動作について説明する。まず、配線321の電位を、トランジスタ311が導通状態となる電位にして、トランジスタ311を導通状態とする。これにより、配線322の電位がノード330に与えられる。すなわち、トランジスタ312のゲート電極には所定の電荷が与えられる(データの書き込み)。
その後、配線321の電位をトランジスタ311が非導通状態となる電位にして、トランジスタ311を非導通状態とすることにより、ノード330が浮遊状態となり、ノード330の電位が保持される(データの保持)。
次に、配線324の電位を一定の電位に維持した上で、配線323の電位を所定の電位(読み出し電位)とすると、ノード330に保持された電荷量に応じて、配線325は異なる電位となる。一般に、トランジスタ312をnチャネル型とすると、トランジスタ312のゲートの電位がハイレベルである場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ312のゲートの電位がローレベルである場合の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ312を導通状態とするために必要な配線323の電位をいうものとする。したがって、配線323の電位をVth_HとVth_Lの間の電位V0とすることにより、ノード330の電位を判別することができる。例えば、ノード330の電位がハイレベルである場合には、配線323の電位がV0(>Vth_H)となれば、トランジスタ312は導通状態となる。一方、ノード330の電位がローレベルである場合には、配線323の電位がV0(<Vth_L)となっても、トランジスタ312は非導通状態のままとなる。このため、配線325の電位を読み出すことにより、回路300に格納されているデータの読み出しが可能となる。
なお、データの読み出しを行わない場合には、ノード330の電位に関わらずトランジスタ312が非導通状態となるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を配線323に与えればよい。
また、データの書き換えは、上記データの書き込みおよび保持と同様の動作により行うことができる。具体的には、配線321の電位を、トランジスタ311が導通状態となる電位にして、トランジスタ311を導通状態とする。これにより、書き換えるデータに対応する配線322の電位がノード330に与えられる。その後、配線321の電位を、トランジスタ311が非導通状態となる電位にして、トランジスタ311を非導通状態とすることにより、ノード330が浮遊状態となり、ノード330には書き換えたデータに対応する電位が保持される。
トランジスタ312はOSトランジスタであり、オフ電流が極めて小さいため、保持期間においてノード330の電位を長時間にわたって維持することができる。そのため、回路300への電力の供給が停止された期間においてもデータを長期間保持することができる。
また、OSトランジスタは微細化により高速な動作が可能となり、OSトランジスタ311を用いた回路300は、書き込み速度および読み出し速度が10ns以下である記憶回路として機能させることができる。そのため、回路300は2次キャッシュおよび3次キャッシュに要求される動作速度を十分に満たすことができる。
なお、トランジスタ311のソースまたはドレインの一方は、トランジスタ312のゲートと接続されることにより、不揮発性メモリとして用いられるフローティングゲート型トランジスタのフローティングゲートと同様の機能を有する。このため、図4(C)中、トランジスタ311のソースまたはドレインの一方とトランジスタ312のゲートが接続された部位を、フローティングゲート部と呼ぶこともできる。トランジスタ311が非導通状態の場合、当該フローティングゲート部は絶縁体中に埋設されたとみなすことができ、フローティングゲート部には電荷が保持される。トランジスタ311のオフ電流は、Siトランジスタのオフ電流の10万分の1以下であるため、トランジスタ311のリークによってフローティングゲート部に蓄積された電荷が消失する量は極めて小さい。或いは、長期間にわたって、フローティングゲート部に蓄積された電荷の消失を無視することが可能である。その結果、OSトランジスタであるトランジスタ311により、不揮発性の記憶装置、或いは、電源の供給なしにデータを非常に長期間保持することができる記憶装置を実現することが可能である。
また、回路300は、再度のデータの書き込みによって直接的にデータを書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされる消去動作が不要であり、消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができる。つまり、半導体装置の高速動作が実現される。
また、この場合、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて指摘されているゲート絶縁膜(トンネル絶縁膜)の劣化という問題が存在しない。つまり、従来問題とされていた、電子をフローティングゲートに注入する際のゲート絶縁膜の劣化という問題を解消することができる。これは、原理的な書き込み回数の制限が存在しないことを意味するものである。また、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて書き込みや消去の際に必要であった高電圧も不要である。
なお、トランジスタ311とトランジスタ312は積層された構成とすることができる。例えば、トランジスタ312の上方に絶縁層を設け、当該絶縁層の上方にOSトランジスタであるトランジスタ311、および容量素子232を設けた構成とすることができる。これにより、回路300の小面積化が実現できる。
図4(D)に、キャッシュ122、123に用いることができる回路の別の構成の一例を示す。回路400は、トランジスタ411、容量素子412を有する。ここで、トランジスタ411はOSトランジスタである。なお、回路400は、図3(A)における回路126、127に対応する。
トランジスタ411のゲートは配線421と接続され、ソースまたはドレインの一方は配線422と接続され、ソースまたはドレインの他方は容量素子412の一方の電極と接続されている。容量素子412の他方の電極は、配線423と接続されている。ここでは、トランジスタ411のソースまたはドレインの他方および容量素子413の一方の電極と接続されたノードをノード430とする。なお、配線421は、トランジスタ411の導通状態を制御する信号を伝える機能を有する配線であり、ワード線ともいう。配線422は、回路400に格納するデータに対応する信号を伝える機能を有する配線であり、ビット線ともいう。
トランジスタ411にOSトランジスタを用いることにより、トランジスタ411をオフ状態とした際、ノード430の電位を極めて長時間にわたって保持することができる。回路400におけるデータの書き込み、保持、読み出し、書き換えは、図1(C)に示す回路150と同様の動作により行うことができる。
トランジスタ411はOSトランジスタであり、オフ電流が極めて小さいため、保持期間においてノード430の電位を長時間にわたって維持することができる。そのため、所定の周期で再度書き込みを行う動作(リフレッシュ動作)が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることができる。また、回路300への電力の供給が停止された期間においてもデータを長期間保持することができる。
また、OSトランジスタは微細化により高速な動作が可能となり、OSトランジスタ411を用いた回路400は、書き込み速度および読み出し速度が10ns以下である記憶回路として機能させることができる。そのため、回路400は2次キャッシュおよび3次キャッシュに要求される動作速度を十分に満たすことができる。
また、キャッシュ122、123は、例えば、32ビットや64ビットからなるワードが複数集まったブロックを1単位として、1ブロック、あるいは複数ブロックを同時に処理することができる。これにより、レジスタ110、キャッシュ121に比べて動作速度が遅いキャッシュ122、123において、一度に多くの処理を行うことができ、見かけの速度が遅くなりにくくし、或いは、レイテンシが大きくなりにくくすることができる。
図4(C)に示す回路300、図4(D)に示す回路400は動作電力が小さいため、回路300または回路400を複数設けた場合であっても、同時に駆動することが容易である。キャッシュ122、123は、図4(C)に示す回路300、または図4(D)に示す回路400を用いて、例えば、256bit以上2048bit以下の並列読み出しや書き込みを行うことが可能である。
また、このことは、キャッシュ122、123のバス幅を大きくできることも意味する。例えば、キャッシュ122において、64ビットのデータを処理する場合、レジスタ110、キャッシュ121、およびキャッシュ123のそれぞれに専用の入力ポート、出力ポートを設け、2乃至8つの集積回路(マルチコアとも呼ぶ)でデータを共有することも可能である。つまり、384本乃至1536本の入力ポートを設けることが可能である。或いは、384本乃至1536本の出力ポートを設けることが可能である。そのような構成のキャッシュ122、123は、高性能なコアやマルチコアを搭載した半導体装置に適用することができる。
なお、回路300および回路400は、図3(A)における回路112、125に用いることも可能である。
以上のように、本発明の一態様は、レジスタ110およびキャッシュ121乃至123にOSトランジスタを用いることにより、階層が異なる複数の記憶装置それぞれにおいて、長期間にわたるデータの保持が可能となる。
レジスタ110およびキャッシュ121は、上述したように、バックアップ回路を有し、電源電圧の供給を停止する前後で、データの退避および復帰を行うことができる。データの退避、或いは復帰は、例えば、10ns以下で行うことも可能である。一方、キャッシュ122、123は、記憶回路そのものにOSトランジスタを用いるため、データの退避や復帰を必要としない不揮発性メモリ、あるいは電源電圧の供給なしで長期間データを保持できるメモリである。上記のような構成を有するコンピュータシステムを構築することにより、データの保持期間において電力の供給を停止することが可能となる。
また、上記のコンピュータシステムは、特に、データにアクセスしない時間において、効率よく電源電圧の供給を停止、再開を行うことができ、かつ、通常動作において、消費電力を低く抑えることができる。OSトランジスタを用いたバックアップ回路を用いた場合、データの退避および復帰を低い電力でかつ高速に行うことができるため、効率よく電源電圧の供給の停止、再開を行うことができる。データの退避、或いは復帰は、例えば、10ns以下で行うことも可能である。また、データの退避は、MRAMのように大きな電流が必要とされないため、低い電力で行うことができる。例えば、2fFの容量素子に1Vを充電する場合、OSトランジスタのゲート容量を0.3fF、ゲート電圧を3Vとしても、1ビットあたりのエネルギーは4fJと小さい。
また、OSトランジスタを用いた図4(C)や図4((D)に示す記憶回路は、待機状態においてSiトランジスタのオフ電流によるリークパスがないために、SRAMセルのように大きなリーク電流が流れない。また、MRAMのように大きな書き込み電流が流れない。そのため、消費電力を低減することが可能である。
上記のような構成を有するコンピュータシステムを構築することにより、集積回路100全体の電源電圧の供給を停止することができる。もしくは集積回路を構成する一または複数の論理回路において、電源電圧の供給を停止することができる。また、短い時間でも電源停止を行うことができる。よって、消費電力を抑えることができる半導体装置を提供することができる。
例えば、集積回路100において、PMU(power Management Unit)以外の電源電圧の供給を停止してもよい。また、キャッシュ121でキャッシュミスが発生した時に、キャッシュ122、キャッシュ123、および/またはキャッシュコントローラ以外の電源電圧の供給を停止してもよい。或いは、キャッシュ123が共有メモリである場合には、キャッシュ123以外の電源電圧の供給を停止してもよい。
また、レジスタ110、キャッシュ121においては、Siトランジスタを有する回路を記憶回路として用いるため、高速動作が可能である。また、キャッシュ122、123においては、高速な動作が可能なOSトランジスタを有する回路を記憶回路として用いるため、2次キャッシュおよび3次キャッシュに要求される動作速度を十分に満たすことができる。よって、レジスタ110およびキャッシュ121乃至123の高速な動作を確保することができる。
上記のような構成を有するコンピュータシステムを構築することにより、データの保持期間において電力の供給を停止することが可能であり、且つ、優れた動作速度を有する半導体装置の提供が可能となる。例えば、集積回路100において最も高速なクロック周波数を、300MHz以上、10GHz以下とすることが可能である。
なお、レジスタ110、キャッシュ121乃至123が有するOSトランジスタは、同一の工程により形成することができる。また、レジスタ110、キャッシュ121乃至123が有するSiトランジスタは、同一の工程により形成することができる。よって、レジスタ110、キャッシュ121乃至123を同時に作製することができ、集積回路100の製造工程を簡略化することができるため、上記コンピュータシステムを有する半導体装置の歩留りを向上させることができる。
また、レジスタ110、キャッシュ121乃至123が有するSiトランジスタと、レジスタ110、キャッシュ121乃至123が有するOSトランジスタが積層された構成とすることができる。例えば、レジスタ110、キャッシュ121乃至123が有するSiトランジスタの上方に絶縁層を設け、当該絶縁層上方に、レジスタ110、キャッシュ121乃至123が有するOSトランジスタを設ける構成とすることができる。これにより、集積回路100の面積を削減することができ、半導体装置の小面積化および大容量化が可能となる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、OSトランジスタを用いたレジスタ110の具体的な構成の一例について説明する。
<レジスタの構成>
図5に、OSトランジスタを用いたレジスタ110の構成の一例を示す。
レジスタ110は、回路501と、回路502と、スイッチ503と、スイッチ504と、スイッチ505と、論理(値)を反転させる論理素子506と、容量素子507と、を有する。また、回路502は、容量素子508と、トランジスタ509と、トランジスタ510と、を有する。ここで、トランジスタ509にはOSトランジスタを用いる。論理素子506として、例えばインバータやクロックドインバータなどを用いることができる。
回路501は、Siトランジスタを有する回路であり、電力が供給されている期間のみデータを保持することができる回路である。回路501は、例えばフリップフロップを有する構成とすることができる。なお、レジスタ110は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダクタなどのその他の回路素子をさらに有していても良い。
なお、回路501は図4(B)における回路210に対応し、トランジスタ509は図4(B)におけるトランジスタ231に対応し、容量素子508は図4(B)における容量素子232に対応し、トランジスタ510は図4(B)におけるトランジスタ233に対応する。
また、ここではスイッチ503としてnチャネル型トランジスタ513を用い、スイッチ504としてpチャネル型トランジスタ514を用いた例について説明するが、これに限られず、スイッチ503、504はそれぞれnチャネル型トランジスタを用いて構成してもpチャネル型トランジスタを用いて構成してもよい。
ここで、スイッチ503の第1の端子はトランジスタ513のソースまたはドレインの一方に対応し、スイッチ503の第2の端子はトランジスタ513のソースまたはドレインの他方に対応する。また、スイッチ503は、ゲートに入力される制御信号S2によって、第1の端子と第2の端子の間の導通状態(トランジスタ513の導通状態)が制御される。スイッチ504の第1の端子はトランジスタ514のソースまたはドレインの一方に対応し、スイッチ504の第2の端子はトランジスタ514のソースまたはドレインの他方に対応する。また、スイッチ504は、ゲートに入力される制御信号S2によって、第1の端子と第2の端子の間の導通状態(トランジスタ514の導通状態)が選択される。
トランジスタ509のソースまたはドレインの一方、容量素子508の一方の電極、およびトランジスタ510のゲートは、ノードM2と接続されている。トランジスタ510のソースまたはドレインの一方は、電位V1が供給される配線と接続され、ソースまたはドレインの他方は、スイッチ503の第1の端子(トランジスタ513のソースまたはドレインの一方)と接続されている。スイッチ503の第2の端子(トランジスタ513のソースまたはドレインの他方)は、スイッチ504の第1の端子(トランジスタ514のソースまたはドレインの一方)と接続されている。スイッチ504の第2の端子(トランジスタ514のソースまたはドレインの他方)は電位V2が供給される配線と接続されている。スイッチ503の第2の端子(トランジスタ513のソースまたはドレインの他方)と、スイッチ504の第1の端子(トランジスタ514のソースまたはドレインの一方)と、論理素子506の入力端子と、容量素子507の一方の電極は、ノードM1と接続されている。容量素子507の他方の電極は、所定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(接地電位等)または高電源電位が入力される構成とすることができる。容量素子507の他方の電極は、電位V1が供給される電源線と接続されていてもよい。容量素子508の一対の他方の電極は、所定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(接地電位等)または高電源電位が入力される構成とすることができる。容量素子508の他方の電極は、電位V1が供給される電源線と接続されていてもよい。図5では、容量素子507の他方の電極および容量素子508の他方の電極は、電位V1が与えられる配線と接続されている例を示す。
なお、容量素子507、508は、トランジスタの寄生容量等を積極的に利用することによって省略することも可能である。
トランジスタ509のゲートには、制御信号S1が入力される。スイッチ503及びスイッチ504は、制御信号S1とは異なる制御信号S2によって第1の端子と第2の端子の間の導通状態が制御され、一方のスイッチの第1の端子と第2の端子の間が導通状態のとき他方のスイッチの第1の端子と第2の端子の間は非導通状態となる。スイッチ505は、制御信号S1及び制御信号S2とは異なる制御信号S3によって第1の端子と第2の端子の間の導通状態が制御される。
トランジスタ509のソースまたはドレインの他方には、回路501に保持されたデータに対応する信号が入力される。図5では、回路501の出力端子(図5中、OUTと記載)から出力された信号が、トランジスタ509のソースまたはドレインの他方に入力される例を示した。スイッチ503の第2の端子(トランジスタ513のソースまたはドレインの他方)から出力される信号は、論理素子506によってその位相が反転された反転信号となり、制御信号S3によって第1の端子と第2の端子間が導通状態となったスイッチ505を介して回路501に入力される。
なお、図5では、スイッチ503の第2の端子(トランジスタ513のソースまたはドレインの他方)から出力される信号は、論理素子506及びスイッチ505を介して回路501の入力端子(図5中、INと記載)に入力される例を示したが、これに限定されない。スイッチ503の第2の端子(トランジスタ513のソースまたはドレインの他方)から出力される信号が、位相を反転させられることなく、回路501に入力される構成としてもよい。例えば、回路501内に、入力端子から入力された信号の位相を反転させた信号が保持されるノードが存在する場合に、スイッチ503の第2の端子(トランジスタ513のソースまたはドレインの他方)から出力される信号を当該ノードに入力することができる。
図5において、電位V1と電位V2の電位差に相当する電圧が、電源電圧としてレジスタ110に供給されている。回路501には電位V1と電位V2の電位差に相当する電圧が、電源電圧として供給されていてもよい。回路501に電源電圧が供給されない期間では、電位V1と電位V2の電位差を無くすことができる。
なお、スイッチ505は、トランジスタを用いて構成することができる。当該トランジスタはnチャネル型トランジスタであってもよいし、pチャネル型トランジスタであってもよい。また、nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタを組み合わせて用いてもよい。例えば、スイッチ505は、アナログスイッチにより構成することができる。
図5において、トランジスタ509は、酸化物半導体層を挟んで上下にゲートを有するトランジスタとすることもできる。この場合、一方のゲートに制御信号S1を入力し、他方のゲートには、制御信号S4を入力することができる。制御信号S4は、一定の電位の信号であってもよい。一定の電位は、電位V1や電位V2であってもよい。なお、一方のゲートと他方のゲートを接続し、これらに制御信号S1を入力してもよい。トランジスタ509の他方のゲートに入力される信号によって、トランジスタ509のしきい値電圧を制御することができる。これにより、トランジスタ509のオフ電流を更に低減することもできる。
図5において、レジスタ110に用いられるトランジスタのうち、トランジスタ509以外のトランジスタは、酸化物半導体以外の材料を有するトランジスタ、例えばSiトランジスタとすることができる。また、レジスタ110に用いられるトランジスタ全てをOSトランジスタとすることもできる。また、レジスタ110は、トランジスタ509以外にも、OSトランジスタを含んでいてもよく、その場合、OSトランジスタ以外の残りのトランジスタは、Siトランジスタとすることもできる。
図5における回路501は、論理(値)を反転させる第1の論理素子および第2の論理素子を有し、第1の論理素子の入力端子は第2の論理素子の出力端子と接続され、第2の論理素子の入力端子は第1の論理素子の出力端子と接続された構成を用いることができる。第1の論理素子及び第2の論理素子は、それぞれ電源電位が供給されている期間のみ、入力された信号に対応する信号を出力する機能を有する。第1の論理素子および第2の論理素子として、例えばインバータやクロックドインバータなどを用いることができる。
<レジスタの駆動方法>
次に、レジスタ110の駆動方法の一例を、図6のタイミングチャートを参照して説明する。ここでは、回路501におけるデータの保持期間において、回路501への電源電圧の供給を停止することにより消費電力を削減するための動作について説明する。
図6のタイミングチャートにおいて、501は回路501に保持されているデータを示し、S1は制御信号S1の電位を示し、S2は制御信号S2の電位を示し、S3は制御信号S3の電位を示し、V1は電位V1を示し、V2は電位V2を示す。ここで、電位V1と電位V2の電位差Vが0である期間は、電源電圧が供給されていない期間に相当する。また、M1はノードM1の電位を示し、M2はノードM2の電位を示す。
なお、以下に示す駆動方法では、図5に示した構成において、スイッチ503をnチャネル型トランジスタとし、スイッチ504をpチャネル型トランジスタとして、制御信号S2がハイレベルの電位の場合に、スイッチ503の第1の端子と第2の端子の間が導通状態となり、且つスイッチ504の第1の端子と第2の端子の間が非導通状態となり、制御信号S2がローレベルの電位の場合に、スイッチ503の第1の端子と第2の端子の間が非導通状態となり、且つスイッチ504の第1の端子と第2の端子の間が導通状態となる例を示す。また、スイッチ505は、制御信号S3がハイレベルの電位の場合に第1の端子と第2の端子の間が導通状態となり、制御信号S3がローレベルの電位の場合に第1の端子と第2の端子の間が非導通状態となる例を示す。また、トランジスタ509をnチャネル型トランジスタとして、制御信号S1がハイレベルの電位の場合に、トランジスタ509が導通状態となり、制御信号S1がローレベルの電位の場合に、トランジスタ509が非導通状態となる例を示す。しかし、レジスタ110駆動方法はこれに限定されず、各トランジスタの極性、各制御信号の電位は自由に定めることができる。
また、図6においては、電位V1を低電源電位(以下、VSSと表記)とし、電位V2を高電源電位(以下、VDDと表記)とVSSとで切り替える場合の例を示す。VSSは、例えば接地電位とすることができる。なお、本発明の駆動方法はこれに限定されず、電位V2をVSSとし、電位V1をVDDとVSSとで切り替える構成としてもよい。
次に、期間T1乃至T6におけるレジスタ110の動作の一例を説明する。なお、期間T1はレジスタ110が通常動作を行う期間に対応し、期間T2はレジスタ110への電源電圧の供給を停止する直前の期間に対応し、期間T3は、レジスタ110への電源電圧の供給が停止されている期間に対応し、期間T4乃至T6は、再度レジスタ110への電源電圧の供給を行う期間に対応する。
まず、期間T1において、V1をVSSとし、V2をVDDとし、レジスタ110に電源電圧を供給する。レジスタ110へ電源電圧が供給されている間は、回路501がデータ(図6中、dataDと表記)を保持する。この際、制御信号S3をローレベルの電位として、スイッチ505の第1の端子と第2の端子の間を非導通状態とする。
なお、スイッチ503及びスイッチ504の導通状態は限定されない。即ち、制御信号S2はハイレベルの電位であってもローレベルの電位であってもよい(図6中、Aと表記)。また、トランジスタ509の導通状態は限定されない。即ち、制御信号S1はハイレベルの電位であってもローレベルの電位であってもよい(図6中、Aと表記)。また、ノードM1はどのような電位であってもよい(図6中、Aと表記)。また、ノードM2はどのような電位であってもよい(図6中、Aと表記)。
次に、期間T2において、レジスタ110への電源電圧の供給の停止をする前に、制御信号S1をハイレベルの電位として、トランジスタ509をオン状態とする。これにより、回路501に保持されたデータ(dataD)に対応する信号が、トランジスタ509を介してトランジスタ510のゲートに入力される。トランジスタ510のゲートに入力された信号は、容量素子508によって保持される。こうして、ノードM2の電位は、回路501に保持されたデータに対応する電位(図6中、VXと表記)となる。
その後、制御信号S1をローレベルの電位としてトランジスタ509をオフ状態とする。これにより、回路501に保持されたデータに対応する信号が回路502に保持される。また、制御信号S3はローレベルの電位であり、スイッチ505の第1の端子と第2の端子の間は非導通状態が維持される。スイッチ503及びスイッチ504の第1の端子と第2の端子の間の導通状態は限定されない。即ち、制御信号S2はハイレベルの電位であってもローレベルの電位であってもよい(図6中、Aと表記)。また、ノードM1はどのような電位であってもよい(図6中、Aと表記)。
次に、期間T3において、V2をVSSとし、レジスタ110への電源電圧の供給を停止する。レジスタ110への電源電圧の供給が停止すると、回路501に記憶されたデータ(dataD)は保持されない。しかし、レジスタ110への電源電圧の供給が停止した後においても、容量素子508によって回路501に保持されていたデータ(dataD)に対応する電位(VX)がノードM2に保持される。ここで、トランジスタ509としてOSトランジスタを用いているため、トランジスタ509におけるリーク電流が極めて小さく、容量素子508によって保持された電位(ノードM2の電位VX)を長期間保持することができる。これによって、レジスタ110は電源電圧の供給が停止した後も、データ(dataD)を保持することができる。
次に、期間T4において、電位V2をVDDとしてレジスタ110への電源電圧の供給を再開し、制御信号S2をローレベルの電位として、スイッチ504の第1の端子と第2の端子の間を導通状態とし、スイッチ503の第1の端子と第2の端子の間を非導通状態とする。この時、制御信号S1はローレベルの電位であり、トランジスタ509はオフ状態となる。また、制御信号S3はローレベルの電位であり、スイッチ505の第1の端子と第2の端子の間は非導通状態となる。そして、スイッチ503の第2の端子及びスイッチ504の第1の端子に、電位V2、即ちVDDが入力される。そのため、スイッチ503の第2の端子及びスイッチ504の第1の端子の電位(ノードM1の電位)を、一定の電位(例えば、VDD)にする(以下、プリチャージ動作ともいう)ことができる。ノードM1の電位は、容量素子507によって保持される。
次に、期間T5において、制御信号S2をハイレベルの電位とすることによって、スイッチ503の第1の端子と第2の端子の間を導通状態とし、スイッチ504の第1の端子と第2の端子の間を非導通状態とする。この時、制御信号S1はローレベルの電位であり、トランジスタ509はオフ状態となる。また、制御信号S3はローレベルの電位であり、スイッチ505の第1の端子と第2の端子の間は非導通状態となる。そして、容量素子508に保持された信号(ノードM2の電位VX)に応じて、トランジスタ510の導通状態が制御され、スイッチ503の第2の端子及びスイッチ504の第1の端子の電位、即ちノードM1の電位が定まる。トランジスタ510がオン状態の場合、ノードM1には電位V1(例えば、VSS)が供給される。一方、トランジスタ510がオフ状態の場合には、ノードM1の電位は、上記プリチャージ動作によって供給された一定の電位(例えば、VDD)に維持される。よって、トランジスタ510の導通状態に対応して、ノードM1の電位はVDDまたはVSSとなる。例えば、回路501に保持されていた信号が「1」であり、ハイレベルの電位(VDD)に対応する場合、ノードM1の電位は、信号「0」に対応するローレベルの電位(VSS)となる。一方、回路501に保持されていた信号が「0」であり、ローレベルの電位(VSS)に対応する場合、ノードM1の電位は、「1」に対応するハイレベルの電位(VDD)となる。つまり、回路501に記憶されていた信号の反転信号がノードM1に保持されることとなる。図6において、この電位をVXbと表記する。つまり、期間T2において回路501から入力されたデータ(dataD)に対応する信号が、ノードM1の電位(VXb)に変換される(期間T5)。
次に、期間T6において、制御信号S3をハイレベルの電位として、スイッチ505の第1の端子と第2の端子の間を導通状態とする。このとき、制御信号S2はハイレベルの電位のままである。また、制御信号S1はローレベルの電位のままであり、トランジスタ509はオフ状態のままである。すると、スイッチ503の第2の端子及びスイッチ504の第1の端子の電位(ノードM1の電位(VXb))に対応する信号を論理素子506によって反転させ、当該反転した信号を回路501に入力することができる。こうして、回路501は、レジスタ110への電源電圧の供給を停止する前に保持していたデータ(dataD)を再び保持することができる。
また、ノードM1の電位は、期間T4におけるプリチャージ動作によって一定の電位(図6では、VDD)にされた後、期間T5において、データ(dataD)に対応する電位VXbとなる。プリチャージ動作を行っているため、ノードM1の電位が所定の電位VXbに定まるまでの時間を短くすることができる。こうして、電源電圧の供給を再開した後、回路501において元のデータを復帰させるまでの時間を短くすることができる。
このように、レジスタ110は、電源電圧が供給されない期間において、揮発性のメモリである回路501に記憶されていたデータを回路502に設けられた容量素子508によって保持することができる。
また、OSトランジスタはオフ電流が極めて小さい。そのため、OSトランジスタをトランジスタ509として用いることによって、レジスタ110に電源電圧が供給されない間も容量素子508に保持された信号を長期間にわたって保持することができる。これにより、レジスタ110への電源電圧の供給が停止されている間も、レジスタ110に格納されたデータを保持することが可能である。
また、スイッチ503及びスイッチ504を設けることによって、上記プリチャージ動作が可能となり、電源電圧の供給を再開した後において、回路501へのデータの復帰のために必要な時間を短くすることができる。
また、回路502において、容量素子508によって保持された信号はトランジスタ510のゲートに入力される。そのため、レジスタ110への電源電圧の供給が再開された後、容量素子508によって保持された信号を、トランジスタ510の導通状態に反映させることができ、トランジスタの導通状態に対応する信号を回路502から読み出すことができる。そのため、容量素子508に保持された電位が多少変動していても、元の信号を正確に読み出すことが可能である。
図5のレジスタ110を用いることにより、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。そのため、集積回路の全体、もしくは集積回路を構成する一または複数の論理回路において、短い時間でも電源停止を行うことができる。よって、消費電力を抑えることができる半導体装置を提供することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、OSトランジスタを用いたキャッシュ121(1次キャッシュ)の具体的な構成の一例について説明する。
図7(A)に、OSトランジスタを用いたキャッシュ121の構成の一例を示す。キャッシュ121は、回路610、650を有する回路600を有する。
なお、回路610は図4(A)における回路210に対応し、トランジスタ651、652は図4(A)におけるトランジスタ231に対応し、容量素子653、654は図4(A)における容量素子232に対応する。
回路610は、トランジスタ611乃至616を有する。ここでは、トランジスタ611、612、615、616がnチャネル型トランジスタであり、トランジスタ613、614がpチャネル型トランジスタである場合を示すが、これに限られず、トランジスタ611、612はそれぞれnチャネル型トランジスタであってもpチャネル型トランジスタであってもよい。
トランジスタ611のソースまたはドレインの一方は配線621と接続され、ゲートは配線623と接続されている。トランジスタ613のソースまたはドレインの一方は配線625と接続され、ソースまたはドレインの他方はトランジスタ611のソースまたはドレインの他方、トランジスタ615のソースまたはドレインの一方、およびノードM3と接続されている。トランジスタ615のソースまたはドレインの他方は配線627と接続されている。トランジスタ613のゲートとトランジスタ615のゲートは、ノードM4と接続されている。トランジスタ612のソースまたはドレインの一方は配線622と接続され、ゲートは配線624と接続されている。トランジスタ614のソースまたはドレインの一方は配線626と接続され、ソースまたはドレインの他方はトランジスタ612のソースまたはドレインの他方、トランジスタ616のソースまたはドレインの一方、およびノードM4と接続されている。トランジスタ616のソースまたはドレインの他方は配線628と接続されている。トランジスタ614のゲートとトランジスタ616のゲートは、ノードM3と接続されている。
配線621は、回路610に格納するデータに対応する信号を伝える機能を有する配線であり、ビット線ともいう。配線622は、ビット線に供給される信号の反転信号を伝える機能を有する配線であり、反転ビット線ともいう。配線623、624は、回路610を選択するための信号を伝える機能を有する配線であり、ワード線ともいう。配線625乃至628は、所定の電位を伝える機能を有する配線であり、電源線ともいう。ここでは、配線623、624は同一の配線(第1のワード線)であるとする。また、配線625、626には高電源電位(VDD)が供給され、配線627、628には低電源電位(VSS)が供給されるものとする。
このように、回路610は、揮発性メモリであるSRAMセルを構成している。また、回路610のノードM3及びノードM4は、回路650と接続されている。
回路650は、トランジスタ651、652および容量素子653、654を有する。ここで、トランジスタ651、652はOSトランジスタである。
トランジスタ651のソースまたはドレインの一方はノードM4と接続され、ソースまたはドレインの他方は容量素子653の一方の電極と接続されている。容量素子653の他方の電極は、配線662と接続されている。トランジスタ652のソースまたはドレインの一方はノードM3と接続され、ソースまたはドレインの他方は容量素子654の一方の電極と接続されている。容量素子654の他方の電極は、配線663と接続されている。トランジスタ651のゲートおよびトランジスタ652のゲートは、配線661と接続されている。
配線661は、回路650を選択するための信号を伝える機能を有する配線であり、第2のワード線ともいう。配線662、663は、所定の電位を伝える機能を有する配線であり、電源線ともいう。ここでは、配線662、663に低電源電位(VSS)が供給されている場合について説明する。
なお、回路610における第1のワード線(配線623、624)に供給される信号と、回路650における第2のワード線(配線661)に供給される信号は、一方の信号によって他方の信号が決定されるものであってもよいし、各々が独立した信号であってもよい。
回路610においてデータが保持される部分に相当するノードM4は、OSトランジスタであるトランジスタ651を介してノードM5と接続され、回路610においてデータが保持される部分に相当するノードM3は、OSトランジスタであるトランジスタ652を介してノードM6と接続されている。これにより、SRAMセルを構成する回路610に保持されたデータを、ノードM5およびノードM6に退避させ、また、当該退避させたデータを再度回路610に復帰させることができる。
トランジスタ651、652はOSトランジスタであるため、オフ電流を極めて小さくすることができる。これにより、トランジスタ651、652がオフ状態であるとき、トランジスタ651と容量素子653の一方の電極の間に位置するノードM5の電位と、トランジスタ652と容量素子654の一方の電極の間に位置するノードM6の電位を、長期間にわたって保持することができる。そのため、キャッシュ121への電力の供給が停止される直前に、回路610に格納されたデータを回路650のノードM5、M6に退避させることにより、キャッシュ121への電力の供給が停止した場合であっても、回路610に格納されたデータを保持することが可能となる。そして、キャッシュ121への電力の供給が再開された後、回路650に保持されたデータを回路610に復帰させ、当該データをキャッシュ121における処理に用いることができる。
なお、回路610はSRAMセルを構成するため、トランジスタ611乃至616には高速動作が要求される。そのため、トランジスタ611乃至616にはSiトランジスタを用いることが好ましい。ただし、これに限定されず、nチャネル型トランジスタであるトランジスタ611、612、615、616にはOSトランジスタを用いることもできる。
また、キャッシュ121に電力が供給され、回路610がSRAMセルとして動作する場合(回路610の通常動作時)、トランジスタ651、652は非導通状態とすることが好ましい。これにより、回路610の高速な動作の阻害を防止することができる。
なお、図7(A)においては、回路650がトランジスタ651、652、容量素子653、654を有する例を示したが、トランジスタ651および容量素子653を省略した構成、または、トランジスタ652および容量素子654を省略した構成とすることもできる。図7(B)に、トランジスタ652および容量素子654を省略した構成を示す。この場合においても、回路610に格納されたデータをノードM5に退避させ、また、当該データを回路610に復帰させることができる。
また、図7においては回路610として揮発性メモリである6トランジスタ型のSRAMセルを用いた場合を示したが、これに限定されず、回路610として他の揮発性メモリセルを用いてもよい。
以上のように、回路600において、回路610に格納されたデータを回路650に退避させて保持することにより、キャッシュ121への電力の供給が行われない期間においてもデータを保持することができ、また、電力の供給が再開された後、回路650に保持されたデータを回路610に復帰させることができる。そのため、データの保持期間においてキャッシュ121への電力の供給を停止することができ、消費電力を低減することができる。
なお、回路600は、集積回路におけるレジスタファイル、スクラッチパッドメモリ、TLB(Translation Lookaside Buffer)、或いは、分岐予測表(BPB:Branch Prediction Buffer、BPT:Branch Prediction Table、BTB:Branch Target Bufferなどとも呼ぶ)などに適用することもできる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法の一例について説明する。
図8に、SiトランジスタとOSトランジスタとを積層した構造を有する半導体装置の作製方法の一例を示す。
まず、単結晶、多結晶あるいは非晶質のいずれかの半導体基板700に、素子分離用の絶縁物701とN型のウェル702を形成する(図8(A))。
次に、ゲート絶縁膜703とゲート電極704を形成し、また、ウェル702にP型の不純物領域705を設ける。不純物領域705には、シリサイド等のより導電性の高い材料を積層してもよい。また、不純物領域705はエクステンション領域を有してもよい。
次に、層間絶縁層706を形成する。層間絶縁層706は単層でも多層でもよい。また、層間絶縁層706は、層間絶縁層706の上に設けられる層へ酸素を供給する機能と、層間絶縁層706の下に設けられた層から層間絶縁層706の上に設けられる層への水素や水の浸入を遮断する機能と、を有する層であることが好ましい。そして、層間絶縁層706をエッチングし、平坦化する。当該エッチングおよび平坦化は、ゲート電極704が露出した段階で停止する。なお、層間絶縁層706の平坦化は、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理などにより行うことができる。
次に、層間絶縁層706上に酸化物半導体層707を形成する。その後、層間絶縁層706にコンタクトホール708を形成する(図8(B))。
次に、導電性材料を堆積して、コンタクトホール708に導電性材料を埋め込む。このとき、酸化物半導体層707は、導電性材料で覆われる。導電性材料は、単層でも多層でもよい。そして、導電性材料の表面を平坦化する。そして、導電性材料を選択的にエッチングして、配線709を形成する。なお、配線709はコンタクトホール708にコンタクトプラグを有する構造としてもよい。配線709は、単層でも多層でもよい。
次に、配線709を覆うゲート絶縁膜710を形成する。さらに、ゲート絶縁膜710上に導電性材料を堆積し、その表面を平坦化する。導電性材料は、単層でも多層でもよい。また、導電性材料は、導電性材料の上に設けられる層から導電性材料の下に設けられた層への水素や水の浸入を遮断する機能を有することが好ましい。そして、導電性材料を選択的にエッチングし、表面を平坦化して、ゲート配線711を形成する(図8(C))。
次に、層間絶縁層712を堆積し、その表面を平坦化する。そして、層間絶縁層712に、配線709へ到達するコンタクトホールを形成し、このコンタクトホールを導電性材料で埋め、配線713を形成する(図8(D))。配線713は、コンタクトホール部分にコンタクトプラグを有する構造でもよい。配線713は、単層でも多層でもよい。
このようにして、Siトランジスタ720とOSトランジスタ730が積層された構成を有する半導体装置を作製することができる。また、OSトランジスタ730と同一の工程により、容量素子740を形成することができる。容量素子740は、配線709とゲート配線711の間にゲート絶縁膜710を挟んだ構造となる。
なお、図8においては、SiトランジスタとOSトランジスタを1つずつ形成する例を示したが、Siトランジスタ720と同一工程で複数のSiトランジスタを形成し、また、OSトランジスタ730と同一工程で複数のOSトランジスタを形成することができる。そのため、他の実施の形態におけるレジスタ110およびキャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)が有する複数のSiトランジスタを同時に形成し、当該複数のSiトランジスタの上方に、レジスタ110およびキャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)が有する複数のOSトランジスタを同時に形成することができる。これにより、同一の工程でレジスタ110およびキャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)を形成し、且つ、SiトランジスタとOSトランジスタを積層させることができる。よって、半導体装置の歩留りの向上および小面積化を実現することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る別の構成の一例を、図9、10を用いて説明する。
図9(A)に示す半導体装置11は、キャッシュメモリ120の構成が図3(A)に示す半導体装置10と異なる。すなわち、半導体装置10が有するキャッシュメモリ120は、Siトランジスタを有する回路124を記憶回路として用い、OSトランジスタを有する回路125をバックアップ回路として用いているが、図9(A)に示すキャッシュメモリ120においては、OSトランジスタを有する回路190を記憶回路として用い、バックアップ回路を省略した構成としている。なお、回路190は、図1(C)、図4(C)、(D)に示す回路を有する構成とすることができる。
図9(B)に、半導体装置11が有する各種記憶装置の階層を示す。レジスタ110を最上位の階層とし、レジスタ110の下位の階層にキャッシュメモリ120が設けられ、キャッシュメモリ120の下位の階層に主記憶装置130が設けられ、主記憶装置130の下位の階層に補助記憶装置140が設けられている。
ここで、OSトランジスタは微細化により高速な動作が可能となり、OSトランジスタを用いた回路190は、書き込み速度および読み出し速度が10ns以下である記憶回路として機能させることができる。そのため、回路190は1次キャッシュに要求される動作速度を十分に満たすことができる。
なお、キャッシュメモリ120は、図9(C)に示すように、複数の階層に分割することもできる。ここでは、キャッシュメモリ120を3つの階層(キャッシュ121乃至123)に分割した例を示す。キャッシュ121は1次キャッシュに対応し、キャッシュ122は2次キャッシュに対応し、キャッシュ123は3次キャッシュに対応する。そして、キャッシュ121乃至123はそれぞれOSトランジスタを有する回路191乃至193を有し、バックアップ回路を有しない構成とすることができる。
なお、回路190乃至193は、それぞれ図1(C)、図4(C)、(C)に示す回路を有する構成とすることができる。
図10に、半導体装置10、11と構成が異なる半導体装置12の構成を示す。図10(A)は、半導体装置12の構成を示す図であり、図10(B)は半導体装置12の階層を示す図である。半導体装置12は、主記憶装置130がOSトランジスタを有する回路194を有し、回路194においてデータの格納を行う構成としている。
なお、回路194は、図1(C)、図4(C)、(C)に示す回路を有する構成とすることができる。
主記憶装置130は、集積回路100と同一チップ上に形成されていても良い。
ここで、OSトランジスタは微細化により高速な動作が可能となり、OSトランジスタを用いた回路194は、書き込み速度および読み出し速度が10ns以下である記憶回路として機能させることができる。そのため、回路194は主記憶装置に要求される動作速度を十分に満たすことができる。
以上のように、OSトランジスタを用いてキャッシュメモリまたは主記憶装置を構成することにより、高速動作を維持したまま、電力の供給が停止された期間においても長期間のデータの保持が可能なコンピュータシステムを実現することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、半導体装置に用いることができる構成の一例について説明する。
<半導体装置の断面構造の例>
図11に、半導体装置10乃至12に用いることができる、OSトランジスタ730がSiトランジスタ720の上に積層された構造の一例を示す。
なお、図11においては、SiトランジスタとOSトランジスタを1つずつ形成する例を示したが、Siトランジスタ720と同一工程で複数のSiトランジスタを形成し、また、OSトランジスタ730と同一工程で複数のOSトランジスタを形成することができる。そのため、他の実施の形態におけるレジスタ110、キャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)、主記憶装置130が有する複数のSiトランジスタを同時に形成し、当該複数のSiトランジスタの上方に、レジスタ110、キャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)、主記憶装置130が有する複数のOSトランジスタを同時に形成することができる。これにより、同一の工程でレジスタ110、キャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)、主記憶装置130を形成し、且つ、SiトランジスタとOSトランジスタを積層させることができる。よって、半導体装置の歩留りの向上および小面積化を実現することができる。
トランジスタ720は、非晶質、微結晶、多結晶または単結晶である、シリコン又はゲルマニウムなどの半導体膜または半導体基板に、チャネル形成領域を有していても良い。或いは、トランジスタ720は、酸化物半導体膜または酸化物半導体基板に、チャネル形成領域を有していても良い。全てのトランジスタが酸化物半導体膜または酸化物半導体基板に、チャネル形成領域を有している場合、トランジスタ730はトランジスタ720上に積層されていなくとも良く、トランジスタ730とトランジスタ720とは、同一の層に形成されていても良い。
シリコンの薄膜を用いてトランジスタ720を形成する場合、当該薄膜には、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの気相成長法若しくはスパッタリング法で作製された非晶質シリコン、非晶質シリコンにレーザーを照射する等の処理により結晶化させた多結晶シリコン、単結晶シリコンウェハに水素イオン等を注入して表層部を剥離した単結晶シリコンなどを用いることができる。
トランジスタ720が形成される半導体基板801は、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、シリコンゲルマニウム基板等を用いることができる。図11では、単結晶シリコン基板を半導体基板801として用いる場合を例示している。
また、トランジスタ720は、素子分離法により電気的に分離されている。素子分離法として、選択酸化法(LOCOS法:Local Oxidation of Silicon法)、トレンチ分離法(STI法:Shallow Trench Isolation)等を用いることができる。図11では、トレンチ分離法を用いてトランジスタ720を電気的に分離する場合を例示している。具体的に、図11では、半導体基板801にエッチング等によりトレンチを形成した後、酸化珪素などを含む絶縁物を当該トレンチに埋め込むことで形成される素子分離領域810により、トランジスタ720を素子分離させる場合を例示している。
トランジスタ720上には、絶縁膜811が設けられている。絶縁膜811には開口部が形成されている。そして、上記開口部には、トランジスタ720のソースまたはドレインに電気的に接続されている導電膜825及び導電膜826と、トランジスタ720のゲートに電気的に接続されている導電膜827とが、形成されている。
そして、導電膜825は、絶縁膜811上に形成された導電膜834に電気的に接続されており、導電膜826は、絶縁膜811上に形成された導電膜835に電気的に接続されており、導電膜827は、絶縁膜811上に形成された導電膜836に電気的に接続されている。
導電膜834乃至導電膜836上には、絶縁膜812が形成されている。絶縁膜812には開口部が形成されており、上記開口部に、導電膜836に電気的に接続された導電膜837が形成されている。そして、導電膜837は、絶縁膜812上に形成された導電膜851に、電気的に接続されている。
また、導電膜851上には、絶縁膜813が形成されている。絶縁膜813には開口部が形成されており、上記開口部に、導電膜851に電気的に接続された導電膜852が形成されている。そして、導電膜852は、絶縁膜813上に形成された導電膜853に、電気的に接続されている。また、絶縁膜813上には、導電膜844が形成されている。
導電膜853及び導電膜844上には絶縁膜861が形成されている。そして、図11では、絶縁膜861上にトランジスタ730が形成されている。
トランジスタ730は、絶縁膜861上に、酸化物半導体を含む半導体膜901と、半導体膜901上の、ソースまたはドレインとして機能する導電膜921及び導電膜922と、半導体膜901、導電膜921及び導電膜922上のゲート絶縁膜962と、ゲート絶縁膜962上に位置し、導電膜921と導電膜922の間において半導体膜901と重なっているゲート電極931と、を有する。なお、導電膜922は、絶縁膜861に設けられた開口部において、導電膜853に電気的に接続されている。
そして、トランジスタ730では、半導体膜901において、導電膜921に重なる領域と、ゲート電極931に重なる領域との間に、領域910が存在する。また、トランジスタ730では、半導体膜901において、導電膜922に重なる領域と、ゲート電極931に重なる領域との間に、領域911が存在する。領域910及び領域911に、導電膜921、導電膜922、及びゲート電極931をマスクとしてアルゴン、p型の導電型を半導体膜901に付与する不純物、或いは、n型の導電型を半導体膜901に付与する不純物を添加することで、半導体膜901のうちゲート電極931に重なる領域よりも、領域910及び領域911の抵抗率を下げることができる。
そして、トランジスタ730上に、絶縁膜963が設けられている。
なお、図11において、トランジスタ730は、ゲート電極931を半導体膜901の片側において少なくとも有していれば良いが、半導体膜901を間に挟んで存在する一対のゲート電極を有していても良い。
トランジスタ730が、半導体膜901を間に挟んで存在する一対のゲート電極を有している場合、一方のゲート電極には導通状態または非導通状態を制御するための信号が与えられ、他方のゲート電極は、電位が他の配線から与えられている状態であっても良い。この場合、一対のゲート電極に、同じ高さの電位が与えられていても良いし、他方のゲート電極にのみ接地電位などの固定の電位が与えられていても良い。他方のゲート電極に与える電位の高さを制御することで、トランジスタの閾値電圧を制御することができる。
また、図11では、トランジスタ730が、一のゲート電極931に対応した一のチャネル形成領域を有する、シングルゲート構造である場合を例示している。しかし、トランジスタ730は、電気的に接続された複数のゲート電極を有することで、一の活性層にチャネル形成領域を複数有する、マルチゲート構造であっても良い。
<トランジスタについて>
次いで、OSトランジスタの構成例について説明する。
図12に、酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有するトランジスタ90の構成を、一例として示す。図12(A)には、トランジスタ90の上面図を示す。なお、図12(A)では、トランジスタ90のレイアウトを明確にするために、各種の絶縁膜を省略している。また、図12(A)に示した上面図の、一点鎖線A1−A2における断面図を図12(B)に示し、一点鎖線A3−A4における断面図を図12(C)に示す。
図12に示すように、トランジスタ90は、基板97に形成された絶縁膜91上において順に積層された酸化物半導体膜92a及び酸化物半導体膜92bと、酸化物半導体膜92bに電気的に接続され、ソース電極またはドレイン電極としての機能を有する導電膜93及び導電膜94と、酸化物半導体膜92b、導電膜93及び導電膜94上の酸化物半導体膜92cと、ゲート絶縁膜としての機能を有し、なおかつ酸化物半導体膜92c上に位置する絶縁膜95と、ゲート電極としての機能を有し、なおかつ絶縁膜95上において酸化物半導体膜92a乃至酸化物半導体膜92cと重なる導電膜96とを有する。なお、基板97は、ガラス基板や半導体基板などであってもよいし、ガラス基板や半導体基板上に半導体素子が形成された素子基板であってもよい。
また、トランジスタ90の、具体的な構成の別の一例を、図13に示す。図13(A)には、トランジスタ90の上面図を示す。なお、図13(A)では、トランジスタ90のレイアウトを明確にするために、各種の絶縁膜を省略している。また、図13(A)に示した上面図の、破線A1−A2における断面図を図13(B)に示し、破線A3−A4における断面図を図13(C)に示す。
図13に示すように、トランジスタ90は、絶縁膜91上において順に積層された酸化物半導体膜92a乃至酸化物半導体膜92cと、酸化物半導体膜92cに電気的に接続され、ソース電極またはドレイン電極としての機能を有する導電膜93及び導電膜94と、ゲート絶縁膜としての機能を有し、なおかつ酸化物半導体膜92c、導電膜93及び導電膜94上に位置する絶縁膜95と、ゲート電極としての機能を有し、なおかつ絶縁膜95上において酸化物半導体膜92a乃至酸化物半導体膜92cと重なる導電膜96とを有する。
なお、図12及び図13では、積層された酸化物半導体膜92a乃至酸化物半導体膜92cを用いるトランジスタ90の構成を例示している。トランジスタ90が有する酸化物半導体膜は、積層された複数の酸化物半導体膜で構成されているとは限らず、単膜の酸化物半導体膜で構成されていても良い。
酸化物半導体膜92a乃至酸化物半導体膜92cが順に積層されている半導体膜をトランジスタ90が有する場合、酸化物半導体膜92a及び酸化物半導体膜92cは、酸化物半導体膜92bを構成する金属元素の少なくとも1つを、その構成要素に含み、伝導帯下端のエネルギーが酸化物半導体膜92bよりも0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上または0.15eV以上、かつ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下または0.4eV以下、真空準位に近い酸化物膜である。さらに、酸化物半導体膜92bは、少なくともインジウムを含むと、キャリア移動度が高くなるため好ましい。
上記構成の半導体膜をトランジスタ90が有する場合、ゲート電極に電圧を印加することで、半導体膜に電界が加わると、半導体膜のうち、伝導帯下端のエネルギーが小さい酸化物半導体膜92bにチャネル領域が形成される。即ち、酸化物半導体膜92bと絶縁膜95との間に酸化物半導体膜92cが設けられていることによって、絶縁膜95と離隔している酸化物半導体膜92bに、チャネル領域を形成することができる。
また、酸化物半導体膜92cは、酸化物半導体膜92bを構成する金属元素の少なくとも1つをその構成要素に含むため、酸化物半導体膜92bと酸化物半導体膜92cの界面では、界面散乱が起こりにくい。従って、当該界面においてキャリアの動きが阻害されにくいため、トランジスタ90の電界効果移動度が高くなる。
また、酸化物半導体膜92bと酸化物半導体膜92aの界面に界面準位が形成されると、界面近傍の領域にもチャネル領域が形成されるために、トランジスタ90の閾値電圧が変動してしまう。しかし、酸化物半導体膜92aは、酸化物半導体膜92bを構成する金属元素の少なくとも1つをその構成要素に含むため、酸化物半導体膜92bと酸化物半導体膜92aの界面には、界面準位が形成されにくい。よって、上記構成により、トランジスタ90の閾値電圧等の電気的特性のばらつきを、低減することができる。
また、酸化物半導体膜間に不純物が存在することによって、各膜の界面にキャリアの流れを阻害する界面準位が形成されることがないよう、複数の酸化物半導体膜を積層させることが望ましい。積層された酸化物半導体膜の膜間に不純物が存在していると、酸化物半導体膜間における伝導帯下端のエネルギーの連続性が失われ、界面近傍において、キャリアがトラップされるか、あるいは再結合により消滅してしまうからである。膜間における不純物を低減させることで、主成分である一の金属を少なくとも共に有する複数の酸化物半導体膜を、単に積層させるよりも、連続接合(ここでは特に伝導帯下端のエネルギーが各膜の間で連続的に変化するU字型の井戸構造を有している状態)が形成されやすくなる。
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置(スパッタリング装置)を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層することが必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空排気(5×10−7Pa乃至1×10−4Pa程度まで)することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
高純度の真性な酸化物半導体を得るためには、各チャンバー内を高真空排気するのみならず、スパッタリングに用いるガスの高純度化も重要である。上記ガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスの露点を、−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下とし、使用するガスの高純度化を図ることで、酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。具体的に、酸化物半導体膜92bがIn−M−Zn酸化物(Mは、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)の場合、酸化物半導体膜92bを成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x1:y1:z1とすると、x1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z1/y1を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜92bとしてCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=3:1:2等がある。なお、CAAC−OSについての詳細は後述する。
具体的に、酸化物半導体膜92a、酸化物半導体膜92cがIn−M−Zn酸化物(Mは、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)の場合、酸化物半導体膜92a、酸化物半導体膜92cを成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x2:y2:z2とすると、x2/y2<x1/y1であって、z2/y2は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z2/y2を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜92a、酸化物半導体膜92cとしてCAAC−OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:6、In:M:Zn=1:3:8等がある。
なお、酸化物半導体膜92a及び酸化物半導体膜92cの厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下とする。また、酸化物半導体膜92bの厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下であり、さらに好ましくは3nm以上50nm以下である。
3層構造の半導体膜において、酸化物半導体膜92a乃至酸化物半導体膜92cは、非晶質または結晶質の両方の形態を取りうる。ただし、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜92bが結晶質であることにより、トランジスタ90に安定した電気的特性を付与することができるため、酸化物半導体膜92bは結晶質であることが好ましい。
なお、チャネル形成領域とは、トランジスタ90の半導体膜のうち、ゲート電極と重なり、かつソース電極とドレイン電極に挟まれる領域を意味する。また、チャネル領域とは、チャネル形成領域において、電流が主として流れる領域をいう。
例えば、酸化物半導体膜92a及び酸化物半導体膜92cとして、スパッタリング法により形成したIn−Ga−Zn酸化物膜を用いる場合、酸化物半導体膜92a及び酸化物半導体膜92cの成膜には、In−Ga−Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比])であるターゲットを用いることができる。成膜条件は、例えば、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い、圧力0.4Paとし、基板温度を200℃とし、DC電力0.5kWとすればよい。
また、酸化物半導体膜92bをCAAC−OS膜とする場合、酸化物半導体膜92bの成膜には、In−Ga−Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])を含む多結晶ターゲットを含むターゲットを用いることが好ましい。成膜条件は、例えば、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い、圧力を0.4Paとし、基板の温度300℃とし、DC電力0.5kWとすることができる。また、酸化物半導体膜92bをCAAC−OS膜とする場合、酸化物半導体膜92bの成膜には、In−Ga−Zn酸化物(In:Ga:Zn=2:1:3[原子数比])をターゲットに用いてもよい。このようなターゲットを用いて成膜されたCAAC−OS膜は、一定の範囲におけるCAAC−OSの回折パターンが観測される領域の割合(CAAC化率ともいう)を高くすることができるので、当該CAAC−OS膜にチャネル形成領域を有するトランジスタの周波数特性(f特)を高めることができる。
なお、酸化物半導体膜92a乃至92cは、スパッタリング法により形成することができる。
なお、電子供与体(ドナー)となる水分または水素などの不純物が低減され、なおかつ酸素欠損が低減されることにより高純度化された酸化物半導体(purified Oxide Semiconductor)は、キャリア発生源が少ないため、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近くすることができる。そのため、高純度化された酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有するトランジスタは、オフ電流が著しく小さく、信頼性が高い。そして、当該酸化物半導体膜にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、閾値電圧がプラスとなる電気的特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)になりやすい。
具体的に、高純度化された酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有するトランジスタのオフ電流が小さいことは、いろいろな実験により証明できる。例えば、チャネル幅が1×106μmでチャネル長が10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10−13A以下という特性を得ることができる。この場合、トランジスタのチャネル幅で規格化したオフ電流は、100zA/μm以下であることが分かる。また、容量素子とトランジスタとを接続して、容量素子に流入または容量素子から流出する電荷を当該トランジスタで制御する回路を用いて、オフ電流の測定を行った。当該測定では、高純度化された酸化物半導体膜を上記トランジスタのチャネル形成領域に用い、容量素子の単位時間あたりの電荷量の推移から当該トランジスタのオフ電流を測定した。その結果、トランジスタのソース電極とドレイン電極間の電圧が3Vの場合に、数十yA/μmという、さらに小さいオフ電流が得られることが分かった。従って、高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、オフ電流が、結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタに比べて著しく小さい。
なお、半導体膜として酸化物半導体膜を用いる場合、酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気的特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてジルコニウム(Zr)を含むことが好ましい。
酸化物半導体の中でもIn−Ga−Zn酸化物、In−Sn−Zn酸化物などは、炭化シリコン、窒化ガリウム、または酸化ガリウムとは異なり、スパッタリング法や湿式法により電気的特性の優れたトランジスタを作製することが可能であり、量産性に優れるといった利点がある。また、炭化シリコン、窒化ガリウム、または酸化ガリウムとは異なり、上記In−Ga−Zn酸化物は、ガラス基板上に、電気的特性の優れたトランジスタを作製することが可能である。また、基板の大型化にも対応が可能である。
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種または複数種を含んでいてもよい。
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化スズ、酸化亜鉛、In−Zn酸化物、Sn−Zn酸化物、Al−Zn酸化物、Zn−Mg酸化物、Sn−Mg酸化物、In−Mg酸化物、In−Ga酸化物、In−Ga−Zn酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn酸化物、In−Sn−Zn酸化物、Sn−Ga−Zn酸化物、Al−Ga−Zn酸化物、Sn−Al−Zn酸化物、In−Hf−Zn酸化物、In−La−Zn酸化物、In−Pr−Zn酸化物、In−Nd−Zn酸化物、In−Ce−Zn酸化物、In−Sm−Zn酸化物、In−Eu−Zn酸化物、In−Gd−Zn酸化物、In−Tb−Zn酸化物、In−Dy−Zn酸化物、In−Ho−Zn酸化物、In−Er−Zn酸化物、In−Tm−Zn酸化物、In−Yb−Zn酸化物、In−Lu−Zn酸化物、In−Sn−Ga−Zn酸化物、In−Hf−Ga−Zn酸化物、In−Al−Ga−Zn酸化物、In−Sn−Al−Zn酸化物、In−Sn−Hf−Zn酸化物、In−Hf−Al−Zn酸化物を用いることができる。
なお、例えば、In−Ga−Zn酸化物とは、InとGaとZnを含む酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素を含んでいてもよい。In−Ga−Zn酸化物は、無電界時の抵抗が十分に高くオフ電流を十分に小さくすることが可能であり、また、移動度も高い。
例えば、In−Sn−Zn酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。
また、トランジスタ90において、ソース電極及びドレイン電極に用いられる導電性材料によっては、ソース電極及びドレイン電極中の金属が、酸化物半導体膜から酸素を引き抜くことがある。この場合、酸化物半導体膜のうち、ソース電極及びドレイン電極に接する領域に酸素欠損が形成され、酸化物半導体膜中に含まれる水素が該酸素欠損に入ることにより、該領域はn型化する。n型化された領域は、ソース領域またはドレイン領域として機能するため、酸化物半導体膜とソース電極及びドレイン電極との間におけるコンタクト抵抗を下げることができる。よって、n型化された領域が形成されることで、トランジスタ90の移動度及びオン電流を高めることができ、それにより、トランジスタ90を用いた半導体装置の高速動作を実現することができる。
なお、ソース電極及びドレイン電極中の金属による酸素の引き抜きは、ソース電極及びドレイン電極をスパッタリング法などにより形成する際に起こりうるし、ソース電極及びドレイン電極を形成した後に行われる加熱処理によっても起こりうる。また、n型化される領域は、酸素と結合し易い導電性材料をソース電極及びドレイン電極に用いることで、より形成されやすくなる。上記導電性材料としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wなどが挙げられる。
複数の積層された酸化物半導体膜を有する半導体膜をトランジスタ90に用いる場合、n型化される領域は、チャネル領域となる酸化物半導体膜92bにまで達していることが、トランジスタ90の移動度及びオン電流を高め、半導体装置の高速動作を実現する上で好ましい。
絶縁膜91は、加熱により酸素を酸化物半導体膜92a乃至酸化物半導体膜92cに供給する機能を有する絶縁膜であることが望ましい。また、絶縁膜91は、欠陥が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により得られる、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001を持つスピンの密度が1×1018spins/cm3以下であることが好ましい。
絶縁膜91は、加熱により酸素を酸化物半導体膜92a乃至酸化物半導体膜92cに供給する機能を有するため、酸化物であることが望ましく、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルなどを用いることができる。絶縁膜91は、プラズマCVD法またはスパッタリング法等により、形成することができる。
なお、本明細書中において、酸化窒化物は、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化物は、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を指す。
なお、図12及び図13に示すトランジスタ90は、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜92bの端部のうち、導電膜93及び導電膜94とは重ならない端部、言い換えると、導電膜93及び導電膜94が位置する領域とは異なる領域に位置する端部と、導電膜96とが、重なる構成を有する。酸化物半導体膜92bの端部は、当該端部を形成するためのエッチングでプラズマに曝されるときに、エッチングガスから生じた塩素ラジカル、フッ素ラジカル等が、酸化物半導体を構成する金属元素と結合しやすい。よって、酸化物半導体膜の端部では、当該金属元素と結合していた酸素が脱離しやすい状態にあるため、酸素欠損が形成され、n型化しやすい。しかし、図12及び図13に示すトランジスタ90では、導電膜93及び導電膜94とは重ならない酸化物半導体膜92bの端部と、導電膜96とが重なるため、導電膜96の電位を制御することにより、当該端部にかかる電界を制御することができる。よって、酸化物半導体膜92bの端部を介して導電膜93と導電膜94の間に流れる電流を、導電膜96に与える電位によって制御することができる。このようなトランジスタ90の構造を、surrounded channel(s−channel)構造とよぶ。
具体的に、s−channel構造の場合、トランジスタ90がオフとなるような電位を導電膜96に与えたときは、当該端部を介して導電膜93と導電膜94の間に流れるオフ電流を小さく抑えることができる。そのため、トランジスタ90では、大きなオン電流を得るためにチャネル長を短くし、その結果、酸化物半導体膜92bの端部における導電膜93と導電膜94の間の長さが短くなっても、トランジスタ90のオフ電流を小さく抑えることができる。よって、トランジスタ90は、チャネル長を短くすることで、オンのときには大きいオン電流を得ることができ、オフのときにはオフ電流を小さく抑えることができる。
また、具体的に、s−channel構造の場合、トランジスタ90がオンとなるような電位を導電膜96に与えたときは、当該端部を介して導電膜93と導電膜94の間に流れる電流を大きくすることができる。当該電流は、トランジスタ90の電界効果移動度とオン電流の増大に寄与する。そして、酸化物半導体膜92bの端部と、導電膜96とが重なることで、酸化物半導体膜92bにおいてキャリアの流れる領域が、絶縁膜95に近い酸化物半導体膜92bの界面近傍のみでなく、酸化物半導体膜92bの広い範囲においてキャリアが流れるため、トランジスタ90におけるキャリアの移動量が増加する。この結果、トランジスタ90のオン電流が大きくなる共に、電界効果移動度が高くなり、代表的には電界効果移動度が10cm2/V・s以上、さらには20cm2/V・s以上となる。なお、ここでの電界効果移動度は、酸化物半導体膜の物性値としての移動度の近似値ではなく、トランジスタの飽和領域における電流駆動力の指標であり、見かけ上の電界効果移動度である。
<酸化物半導体膜の構造>
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。なお、以下の説明において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC−OS膜、多結晶酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などをいう。
<CAAC−OS膜>
まずは、CAAC−OS膜について説明する。
CAAC−OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
CAAC−OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって観察すると、明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することが難しい。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
CAAC−OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
一方、CAAC−OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
図16(A)は、CAAC−OS膜の断面TEM像である。また、図16(B)は、図16(A)をさらに拡大した断面TEM像であり、理解を容易にするために原子配列を強調表示している。
図16(C)は、図16(A)のA−O−A’間において、丸で囲んだ領域(直径約4nm)の局所的なフーリエ変換像である。図16(C)より、各領域においてc軸配向性が確認できる。また、A−O間とO−A’間とでは、c軸の向きが異なるため、異なるグレインであることが示唆される。また、A−O間では、c軸の角度が14.3°、16.6°、30.9°のように少しずつ連続的に変化していることがわかる。同様に、O−A’間では、c軸の角度が−18.3°、−17.6°、−11.3°と少しずつ連続的に変化していることがわかる。
なお、CAAC−OS膜に対し、電子回折を行うと、配向性を示すスポット(輝点)が観測される。例えば、CAAC−OS膜の上面に対し、例えば1nm以上30nm以下の電子線を用いる電子回折(ナノビーム電子回折ともいう。)を行うと、スポットが観測される(図17(A)参照。)。
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC−OS膜の結晶部は配向性を有していることがわかる。
なお、CAAC−OS膜に含まれるほとんどの結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内に収まる大きさの場合も含まれる。ただし、CAAC−OS膜に含まれる複数の結晶部が連結することで、一つの大きな結晶領域を形成する場合がある。例えば、平面TEM像において、2500nm2以上、5μm2以上または1000μm2以上となる結晶領域が観察される場合がある。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
一方、CAAC−OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC−OS膜の場合は、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
以上のことから、CAAC−OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
なお、結晶部は、CAAC−OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC−OS膜の形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
また、CAAC−OS膜中において、c軸配向した結晶部の分布が均一でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の結晶部が、CAAC−OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりもc軸配向した結晶部の割合が高くなることがある。また、不純物の添加されたCAAC−OS膜は、不純物が添加された領域が変質し、部分的にc軸配向した結晶部の割合の異なる領域が形成されることもある。
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
また、CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
<微結晶酸化物半導体膜>
次に、微結晶酸化物半導体膜について説明する。
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することが困難な場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrystal)を有する酸化物半導体膜を、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc−OS膜は、例えば、TEMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認することが困難な場合がある。
nc−OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。従って、nc−OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない場合がある。例えば、nc−OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD装置を用いて構造解析を行うと、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、nc−OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折(制限視野電子回折ともいう。)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OS膜に対し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc−OS膜に対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc−OS膜に対しナノビーム電子回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある(図17(B)参照。)。
nc−OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そのため、nc−OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OS膜は、CAAC−OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
酸化物半導体膜が複数の構造を有する場合、ナノビーム電子回折を用いることで構造解析が可能となる場合がある。
ところで、CAAC−OS膜であったとしても、部分的にnc−OS膜などと同様の回折パターンが観測される場合がある。したがって、CAAC−OS膜の良否は、一定の範囲におけるCAAC−OS膜の回折パターンが観測される領域の割合(CAAC化率ともいう。)で表すことができる場合がある。例えば、良質なCAAC−OS膜であれば、CAAC化率は、50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上となる。CAAC−OS膜と異なる回折パターンが観測される領域の割合を非CAAC化率と表記する。
一例として、成膜直後(as−sputteredと表記。)、または酸素を含む雰囲気における450℃加熱処理後のCAAC−OS膜を有する各試料の上面に対し、スキャンしながら透過電子回折パターンを取得した。ここでは、5nm/秒の速度で60秒間スキャンしながら回折パターンを観測し、観測された回折パターンを0.5秒ごとに静止画に変換することで、CAAC化率を導出した。なお、電子線としては、プローブ径が1nmのナノビーム電子線を用いた。なお、同様の測定は6試料に対して行った。そしてCAAC化率の算出には、6試料における平均値を用いた。
成膜直後のCAAC−OS膜のCAAC化率は75.7%(非CAAC化率は24.3%)であった。また、450℃加熱処理後のCAAC−OS膜のCAAC化率は85.3%(非CAAC化率は14.7%)であった。成膜直後と比べて、450℃加熱処理後のCAAC化率が高いことがわかる。即ち、高い温度(例えば400℃以上)における加熱処理によって、非CAAC化率が低くなる(CAAC化率が高くなる)ことがわかる。また、500℃未満の加熱処理においても高いCAAC化率を有するCAAC−OS膜が得られることがわかる。
ここで、CAAC−OS膜と異なる回折パターンのほとんどはnc−OS膜と同様の回折パターンであった。また、測定領域において非晶質酸化物半導体膜は、確認することができなかった。したがって、加熱処理によって、nc−OS膜と同様の構造を有する領域が、隣接する領域の構造の影響を受けて再配列し、CAAC化していることが示唆される。
図17(C)は、成膜直後(as−sputtered)のCAAC−OS膜の平面TEM像であり、図17(D)は、450℃加熱処理後のCAAC−OS膜の平面TEM像である。図17(C)と図17(D)とを比較することにより、450℃加熱処理後のCAAC−OS膜は、膜質がより均質であることがわかる。即ち、高い温度における加熱処理によって、CAAC−OS膜の膜質が向上することがわかる。
このような測定方法を用いれば、複数の構造を有する酸化物半導体膜の構造解析が可能となる場合がある。
(実施の形態7)
本実施の形態では、図11とは異なる構造を有する半導体装置の構造の一例について説明する。
図14に、半導体装置の断面構造を、一例として示す。なお、破線A1−A2で示す領域では、トランジスタ720及びトランジスタ730のチャネル長方向における構造を示しており、破線A3−A4で示す領域では、トランジスタ720及びトランジスタ730のチャネル幅方向における構造を示している。ただし、本発明の一態様では、トランジスタ720のチャネル長方向とトランジスタ730のチャネル長方向とが、必ずしも一致していなくともよい。
なお、チャネル長方向とは、ソース(ソース領域またはソース電極)及びドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)間において、キャリアが移動する方向を意味し、チャネル幅方向は、基板と水平な面内において、チャネル長方向に対して垂直の方向を意味する。
また、図14では、酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有するトランジスタ730が、単結晶のシリコン基板にチャネル形成領域を有するトランジスタ720上に形成されている場合を例示している。
なお、Siトランジスタ720と同一工程で複数のSiトランジスタを形成し、また、OSトランジスタ730と同一工程で複数のOSトランジスタを形成することができる。そのため、他の実施の形態におけるレジスタ110、キャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)、主記憶装置130が有する複数のSiトランジスタを同時に形成し、当該複数のSiトランジスタの上方に、レジスタ110、キャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)、主記憶装置130が有する複数のOSトランジスタを同時に形成することができる。これにより、同一の工程でレジスタ110、キャッシュメモリ120(キャッシュ121乃至123)、主記憶装置130を形成し、且つ、SiトランジスタとOSトランジスタを積層させることができる。よって、半導体装置の歩留りの向上および小面積化を実現することができる。
トランジスタ720は、非晶質、微結晶、多結晶または単結晶である、シリコン又はゲルマニウムなどの半導体膜または半導体基板に、チャネル形成領域を有していても良い。或いは、トランジスタ720は、酸化物半導体膜または酸化物半導体基板に、チャネル形成領域を有していても良い。全てのトランジスタが酸化物半導体膜または酸化物半導体基板に、チャネル形成領域を有している場合、トランジスタ730はトランジスタ720上に積層されていなくとも良く、トランジスタ730とトランジスタ720とは、同一の層に形成されていても良い。
シリコンの薄膜を用いてトランジスタ720を形成する場合、当該薄膜には、プラズマCVD法などの気相成長法若しくはスパッタリング法で作製された非晶質シリコン、非晶質シリコンをレーザーの照射などの処理により結晶化させた多結晶シリコン、単結晶シリコンウェハに水素イオン等を注入して表層部を剥離した単結晶シリコンなどを用いることができる。
トランジスタ720が形成される基板1000は、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、シリコンゲルマニウム基板等を用いることができる。図14では、単結晶シリコン基板を基板1000として用いる場合を例示している。
また、トランジスタ720は、素子分離法により電気的に分離されている。素子分離法として、トレンチ分離法(STI法:Shallow Trench Isolation)等を用いることができる。図14では、トレンチ分離法を用いてトランジスタ720を電気的に分離する場合を例示している。具体的に、図14では、エッチング等により基板1000に形成されたトレンチに、酸化珪素などが含まれる絶縁物を埋め込んだ後、当該絶縁物をエッチング等により部分的に除去することで形成される素子分離領域1001により、トランジスタ720を素子分離させる場合を例示している。
また、トレンチ以外の領域に存在する基板1000の凸部には、トランジスタ720の不純物領域1002及び不純物領域1003と、不純物領域1002及び不純物領域1003に挟まれたチャネル形成領域1004とが設けられている。さらに、トランジスタ720は、チャネル形成領域1004を覆う絶縁膜1005と、絶縁膜1005を間に挟んでチャネル形成領域1004と重なるゲート電極1006とを有する。
トランジスタ720では、チャネル形成領域1004における凸部の側部及び上部と、ゲート電極1006とが絶縁膜1005を間に挟んで重なることで、チャネル形成領域1004の側部と上部を含めた広い範囲においてキャリアが流れる。そのため、トランジスタ720の基板上における専有面積を小さく抑えつつ、トランジスタ720におけるキャリアの移動量を増加させることができる。その結果、トランジスタ720は、オン電流が大きくなると共に、電界効果移動度が高められる。特に、チャネル形成領域1004における凸部のチャネル幅方向の長さ(チャネル幅)をW、チャネル形成領域1004における凸部の膜厚をTとすると、チャネル幅Wに対する膜厚Tの比に相当するアスペクト比が高い場合、キャリアが流れる範囲はより広くなるため、トランジスタ720のオン電流をより大きくすることができ、電界効果移動度もより高められる。
なお、バルクの半導体基板を用いたトランジスタ720の場合、アスペクト比は0.5以上であることが望ましく、1以上であることがより望ましい。
トランジスタ720上には、絶縁膜1011が設けられている。絶縁膜1011には開口部が形成されている。そして、上記開口部には、不純物領域1002、不純物領域1003にそれぞれ電気的に接続されている導電膜1012、導電膜1013と、ゲート電極1006に電気的に接続されている導電膜1014とが、形成されている。
そして、導電膜1012は、絶縁膜1011上に形成された導電膜1016に電気的に接続されており、導電膜1013は、絶縁膜1011上に形成された導電膜1017に電気的に接続されており、導電膜1014は、絶縁膜1011上に形成された導電膜1018に電気的に接続されている。
導電膜1016乃至導電膜1018上には、絶縁膜1020が設けられている。そして、絶縁膜1020上には、酸素、水素、水の拡散を防ぐブロッキング効果を有する絶縁膜1021が設けられている。絶縁膜1021は、密度が高くて緻密である程、また未結合手が少なく化学的に安定である程、より高いブロッキング効果を示す。酸素、水素、水の拡散を防ぐブロッキング効果を示す絶縁膜1021として、例えば、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等を用いることができる。水素、水の拡散を防ぐブロッキング効果を示す絶縁膜1021として、例えば、窒化シリコン、窒化酸化シリコン等を用いることができる。
絶縁膜1021上には絶縁膜1022が設けられており、絶縁膜1022上には、トランジスタ730が設けられている。
トランジスタ730は、絶縁膜1022上に、酸化物半導体を含む半導体膜1030と、半導体膜1030に電気的に接続された、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜1032及び導電膜1033と、半導体膜1030を覆っているゲート絶縁膜1031と、ゲート絶縁膜1031を間に挟んで半導体膜1030と重なるゲート電極1034と、を有する。なお、絶縁膜1020乃至絶縁膜1022には開口部が設けられており、導電膜1033は、上記開口部において導電膜1018に接続されている。
なお、図14において、トランジスタ730は、ゲート電極1034を半導体膜1030の片側において少なくとも有していれば良いが、絶縁膜1022を間に挟んで半導体膜1030と重なるゲート電極を、さらに有していても良い。
トランジスタ730が、一対のゲート電極を有している場合、一方のゲート電極には導通状態または非導通状態を制御するための信号が与えられ、他方のゲート電極は、電位が他の配線から与えられている状態であっても良い。この場合、一対のゲート電極に、同じ高さの電位が与えられていても良いし、他方のゲート電極にのみ接地電位などの固定の電位が与えられていても良い。他方のゲート電極に与える電位の高さを制御することで、トランジスタの閾値電圧を制御することができる。
また、図14では、トランジスタ730が、一のゲート電極1034に対応した一のチャネル形成領域を有する、シングルゲート構造である場合を例示している。しかし、トランジスタ730は、電気的に接続された複数のゲート電極を有することで、一の活性層にチャネル形成領域を複数有する、マルチゲート構造であっても良い。
また、図14に示すように、トランジスタ730は、半導体膜1030が、絶縁膜1022上において順に積層された酸化物半導体膜1030a乃至酸化物半導体膜1030cを有する場合を例示している。ただし、本発明の一態様では、トランジスタ730が有する半導体膜1030が、単膜の金属酸化物膜で構成されていても良い。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態8)
他の実施の形態で開示された、導電膜、半導体膜、絶縁膜など様々な膜はスパッタ法やプラズマCVD法により形成することができるが、他の方法、例えば、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成してもよい。熱CVD法の例としてMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法を使っても良い。
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
熱CVD法は、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行ってもよい。
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行ってもよい。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブとも呼ぶ)を切り替えて2種類以上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の原料ガスと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスはキャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入してもよい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の層を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の層が第1の層上に積層されて薄膜が形成される。このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、微細なFETを作製する場合に適している。
MOCVD法やALD法などの熱CVD法は、これまでに記載した実施形態に開示された導電膜、半導体膜、絶縁膜など様々な膜を形成することができ、例えば、In−Ga−Zn−O膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、及びジメチル亜鉛を用いる。なお、トリメチルインジウムの化学式は、In(CH3)3である。また、トリメチルガリウムの化学式は、Ga(CH3)3である。また、ジメチル亜鉛の化学式は、Zn(CH3)2である。また、これらの組み合わせに限定されず、トリメチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(化学式Ga(C2H5)3)を用いることもでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(化学式Zn(C2H5)2)を用いることもできる。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH)などのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン(O3)の2種類のガスを用いる。なお、テトラキスジメチルアミドハフニウムの化学式はHf[N(CH3)2]4である。また、他の材料液としては、テトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムなどがある。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA)など)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。なお、トリメチルアルミニウムの化学式はAl(CH3)3である。また、他の材料液としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)などがある。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサクロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
例えば、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF6ガスとB2H6ガスを順次繰り返し導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF6ガスとH2ガスを同時に導入してタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代えてSiH4ガスを用いてもよい。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn−Ga−Zn−O膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してIn−O層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを同時に導入してGaO層を形成し、更にその後Zn(CH3)2ガスとO3ガスを同時に導入してZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてIn−Ga−O層やIn−Zn−O層、Ga−Zn−O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングして得られたH2Oガスを用いても良いが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)3ガスにかえて、In(C2H5)3ガスを用いても良い。また、Ga(CH3)3ガスにかえて、Ga(C2H5)3ガスを用いても良い。また、Zn(CH3)2ガスを用いても良い。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(実施の形態9)
本発明の一態様に係る半導体装置は、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機、医療機器などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図15に示す。
図15(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体5001、筐体5002、表示部5003、表示部5004、マイクロホン5005、スピーカー5006、操作キー5007、スタイラス5008等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、携帯型ゲーム機の各種集積回路に用いることができる。なお、図15(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部5003と表示部5004とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されない。
図15(B)は携帯情報端末であり、第1筐体5601、第2筐体5602、第1表示部5603、第2表示部5604、接続部5605、操作キー5606等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、携帯情報端末の各種集積回路に用いることができる。第1表示部5603は第1筐体5601に設けられており、第2表示部5604は第2筐体5602に設けられている。そして、第1筐体5601と第2筐体5602とは、接続部5605により接続されており、第1筐体5601と第2筐体5602の間の角度は、接続部5605により変更が可能である。第1表示部5603における映像を、接続部5605における第1筐体5601と第2筐体5602との間の角度に従って、切り替える構成としても良い。また、第1表示部5603及び第2表示部5604の少なくとも一方に、位置入力装置としての機能が付加された表示装置を用いるようにしても良い。なお、位置入力装置としての機能は、表示装置にタッチパネルを設けることで付加することができる。或いは、位置入力装置としての機能は、フォトセンサとも呼ばれる光電変換素子を表示装置の画素部に設けることでも、付加することができる。
図15(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体5401、表示部5402、キーボード5403、ポインティングデバイス5404等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、ノート型パーソナルコンピュータの各種集積回路に用いることができる。
図15(D)は電気冷凍冷蔵庫であり、筐体5301、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、電気冷凍冷蔵庫の各種集積回路に用いることができる。
図15(E)はビデオカメラであり、第1筐体5801、第2筐体5802、表示部5803、操作キー5804、レンズ5805、接続部5806等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、ビデオカメラの各種集積回路に用いることができる。操作キー5804及びレンズ5805は第1筐体5801に設けられており、表示部5803は第2筐体5802に設けられている。そして、第1筐体5801と第2筐体5802とは、接続部5806により接続されており、第1筐体5801と第2筐体5802の間の角度は、接続部5806により変更が可能である。表示部5803における映像を、接続部5806における第1筐体5801と第2筐体5802との間の角度に従って切り替える構成としても良い。
図15(F)は普通自動車であり、車体5101、車輪5102、ダッシュボード5103、ライト5104等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、普通自動車の各種集積回路に用いることができる。
(明細書等の記載について)
本明細書等の記載に関して、以下に説明する。
また、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載する場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とを含むものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも含むものとする。
ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、オンオフが制御される機能を有している。つまり、スイッチは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。または、スイッチは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有している。
XとYとが機能的に接続されている場合の一例としては、XとYとの機能的な接続を可能とする回路(例えば、論理回路(インバータ、NAND回路、NOR回路など)、信号変換回路(DA変換回路、AD変換回路、ガンマ補正回路など)、電位レベル変換回路(電源回路(昇圧回路、降圧回路など)、信号の電位レベルを変えるレベルシフタ回路など)、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路(信号振幅または電流量などを大きく出来る回路、オペアンプ、差動増幅回路、ソースフォロワ回路、バッファ回路など)、信号生成回路、記憶回路、制御回路など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、一例として、XとYとの間に別の回路を挟んでいても、Xから出力された信号がYへ伝達される場合は、XとYとは機能的に接続されているものとする。
なお、XとYとが電気的に接続されている、と明示的に記載する場合は、XとYとが電気的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟んで接続されている場合)と、XとYとが機能的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の回路を挟んで機能的に接続されている場合)と、XとYとが直接接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟まずに接続されている場合)とを含むものとする。つまり、電気的に接続されている、と明示的に記載する場合は、単に、接続されている、とのみ明示的に記載されている場合と同じであるとする。
また、トランジスタのソースとは、活性層として機能する半導体膜の一部であるソース領域、或いは上記半導体膜に接続されたソース電極を意味する。同様に、トランジスタのドレインとは、上記半導体膜の一部であるドレイン領域、或いは上記半導体膜に接続されたドレイン電極を意味する。また、ゲートはゲート電極を意味する。
トランジスタが有するソースとドレインは、トランジスタの導電型及び各端子に与えられる電位の高低によって、その呼び方が入れ替わる。一般的に、nチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる端子がソースと呼ばれ、高い電位が与えられる端子がドレインと呼ばれる。また、pチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる端子がドレインと呼ばれ、高い電位が与えられる端子がソースと呼ばれる。本明細書では、便宜上、ソースとドレインとが固定されているものと仮定して、トランジスタの接続関係を説明する場合があるが、実際には上記電位の関係に従ってソースとドレインの呼び方が入れ替わる。
なお、回路図上は独立している構成要素同士が電気的に接続しているように図示されている場合であっても、1つの構成要素が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。例えば配線の一部が電極としても機能する場合は、一の導電膜が、配線の機能、及び電極の機能の両方の構成要素の機能を併せ持っている。したがって、本明細書における電気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。