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JP2015127447A - 耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材およびその判定方法 - Google Patents

耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材およびその判定方法 Download PDF

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JP2015127447A JP2013273146A JP2013273146A JP2015127447A JP 2015127447 A JP2015127447 A JP 2015127447A JP 2013273146 A JP2013273146 A JP 2013273146A JP 2013273146 A JP2013273146 A JP 2013273146A JP 2015127447 A JP2015127447 A JP 2015127447A
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Abstract

【課題】耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材の提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.02〜0.4%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.10%以下、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成と、面積率で50%を超えるフェライトと残部硬質相を有し、降伏点:315MPa以上、試験温度0℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーvEが31J以上の高靭性な高強度鋼材。疲労き裂伝ぱ時のき裂先端塑性域寸法γp *(={(KImax×10/(2πσ )}×(1−2ν)(μm))と有効組織単位MUeff(=(AR)α×(Dα+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α})の比が10以下で耐疲労き裂伝ぱ特性が向上する。
【選択図】図5

Description

本発明は、船舶、海洋構造物、橋梁、建設機械、建築物、タンクなど各種溶接構造物用として好適な鋼材に係り、とくに、繰返し荷重を受ける部材用として好適な、耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材およびその判定方法に関する。ここでいう「鋼材」とは、厚鋼板、形鋼、鋼管、冷延鋼板、熱延鋼板を含むものとする。
近年、船舶、海洋構造物、橋梁、建設機械、建築物、タンクなど各種の溶接構造物においては、設計の合理化や鋼材重量の低減、薄肉化や溶接の省力化などを目的として、高強度鋼材が適用される事例が多くなってきている。このため、それら高強度鋼材には、優れた延性、靭性を有していることに加えて、さらに構造安全性を確保するため、優れた耐疲労特性を有していることが要求される。
溶接構造物においては、溶接止端部から疲労き裂が発生し、鋼材中を伝ぱして構造物が破壊(疲労破壊)するケースが多い。これは、溶接止端部がその形状から応力集中部となりやすいことに加えて、溶接後に引張の残留応力が生じることなどに起因するとされている。
このため、溶接止端部からのき裂発生を抑制する手段として、付加溶接を施すなどして形状を改善し応力集中を低減させる技術や、ショットピーニングなどで圧縮の残留応力を導入する技術などが広く知られている。
しかし、このような技術を、多数存在する溶接止端部に工業的規模で施すことは、多大の労力と時間とを必要とし、生産性の観点やコスト面からも現実的とは言いがたい。そこで、仮に、疲労き裂が発生したとしても、その後の鋼材中でのき裂伝ぱ速度を低減させることができれば、溶接構造物の疲労寿命を延長することができるため、鋼材自身の耐疲労き裂伝ぱ特性を向上させることが強く要望されている。
このような要望に対して、例えば、非特許文献1には、低炭素鋼における疲労き裂の成長(疲労き裂伝ぱ)に及ぼすミクロ組織の影響についての研究が記載されている。非特許文献1に記載された研究では、軟質相(ビッカース硬さ:149HV)を硬質相(ビッカース硬さ:546HV、分率:39.2%)で網目状に取り囲んだ組織とすることにより、軟質相(ビッカース硬度:148)中に硬質相(ビッカース硬さ:565HV、分率:36.4%、平均サイズ:149μm)を均一分散させた組織よりも、疲労き裂伝播速度が大きく低減するとしている。しかしながら、非特許文献1に記載された鋼板組織は、5段階もの複雑な熱処理を施されて得られたものであり、非特許文献1に記載された複雑な熱処理を通常の鋼板製造に適用するには、生産性の観点から非常に難しいという問題がある。さらに、非特許文献1に記載された組織を有する鋼板では延性が低下しており、このような鋼板を構造物へ適用することについては問題を残していた。
また、特許文献1には、疲労亀裂進展抑制効果を有する鋼板が記載されている。特許文献1に記載された技術では、特定な組成を有するとともに、硬質部の素地とこの素地に分散した軟質部とからな複合組織を有し、かつ硬質部と軟質部との硬度差をビッカース硬さで150HV以上としている。これにより、亀裂先端の転位の移動が、硬質部と軟質部の界面で阻止され、鋼板の亀裂進展抑制特性が向上するとしている。しかし、特許文献1には、延性、靭性等の機械的特性について言及されておらず、特許文献1に記載された技術で製造された鋼板が、構造物用鋼板として十分な特性を具備しているかどうかについては不明のままである。
また、特許文献2には、耐疲労き裂伝播特性に優れた厚鋼材とその製造方法が記載されている。特許文献2に記載された厚鋼材は、質量%で、C:0.04〜0.3%、Si:0.01〜2%、Mn:0.1〜3%、Al:0.001〜0.1%、N:0.001〜0.01%を含む組成で、軟質相と該軟質相を網目状に囲む硬質第二相からなる二相組織を有し、軟質相と硬質第二相とが、次の条件
(1)軟質相がフェライト、焼戻しべーナイト、焼戻しマルテンサイトの1種または2種以上から構成され、かつ平均ビッカース硬さが150以下であること。
(2)硬質第二相がベイナイト、マルテンサイト、焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイトの1種または2種以上から構成され、かつ平均ビッカース硬さが250以上であること。
(3)硬質第二相の粒界占有率(硬質第二相が占めている粒界長さの総和/総粒界長さ)が0.5以上であること。
を全て満足する耐疲労き裂伝播特性に優れた厚鋼材である。特許文献2に記載された技術で製造された厚鋼材を溶接構造部材に用いれば、母材における疲労き裂進展速度をいずれのき裂進展方向においても顕著に抑制できるとしている。しかし、特許文献2に記載された技術では、バンド組織の抑制のため、高温で長時間の拡散焼鈍を必要としており、工程が複雑となり、生産性が低下するという問題を残していた。
また、特許文献3には、疲労強度に優れた厚鋼板が記載されている。特許文献3に記載された厚鋼板は、質量%で、C:0.04〜0.3%、Si:0.01〜2%、Mn:0.1〜3%、Al:0.001〜0.1%、N:0.001〜0.01%を含む組成と、少なくともフェライトと硬質第二相とを含む組織を有し、かつ、表面に平行な断面組織において、(a)硬質第二相の分率:20〜80%、(b)硬質第二相の平均ビッカース硬さ:250〜800、(c)硬質第二相の平均円相当径:10〜200μm、(d)硬質第二相間の最大間隔:500μm以下、を全て満足し、硬質第二相の組織がベイナイト、マルテンサイトのいずれか又は両者の混合組織である厚鋼板である。特許文献3に記載された技術によれば、特殊なあるいは高価な合金元素の多量含有や、複雑な工程を経ることなく、また引張強さや鋼板板厚に大きな制限を受けずに、母材の耐疲労き裂伝播特性を向上させることができるとしている。なお、特許文献3に記載された技術では、厚鋼板の板厚方向での疲労亀裂進展を抑制する特性を向上させることができるが、特許文献3には、厚鋼板の幅方向、長手方向における疲労亀裂進展抑制特性についてまでの言及はなく、厚鋼板の幅方向、長手方向における疲労亀裂進展抑制特性の低下が懸念されるという問題がある。
また、特許文献4には、耐疲労亀裂進展性に優れた鋼板が記載されている。特許文献4に記載された鋼板は、C:0.030〜0.30%、Si:0.50%以下、Mn:0.8〜2.0%、Al:0.01〜0.10%、N:0.010%以下を含む組成を有し、板厚1/4位置において、アスペクト比が2以上で、γ粒内方向に成長した針状フェライトを面積分率で1〜60%含み、長径が5〜100μmの範囲にある針状フェライトの個数割合が80%以上である組織を有する鋼板である。特許文献4に記載された技術では、1面積%以上の針状フェライトを存在させることにより、優れた耐疲労亀裂進展性を有する鋼板になるとしている。しかし、特許文献4では、延性、靭性等の特性について言及されておらず、特許文献4に記載された技術で製造された鋼板が、構造物用鋼板として、耐疲労亀裂進展性以外に必要な特性をバランスよく具備しているかどうかは不明のままである。
特許文献5には、耐疲労き裂進展性に優れた鋼板が記載されている。特許文献5に記載された鋼板は、C:0.01〜0.1%、Si:0.03〜0.6%、Mn:0.3〜2%、sol.Al:0.001〜0.1%、N:0.0005〜0.008%を含む組成と、面積率で60〜85%のベイナイトと、合計で0〜5%のマルテンサイトとパーライトと、残部がフェライトである組織を有する鋼板である。特許文献5に記載された技術では、疲労き裂がベイナイトと遭遇すると、その境界でき裂が停留したり、ベイナイトを避けるように屈曲したりしながら進展するため、疲労き裂進展速度が小さくなり、耐疲労き裂進展特性が向上するとしている。しかし、特許文献5には、耐疲労き裂進展特性、靭性についての記載はあるが、構造物用鋼板として重要な、延性、溶接性等についての記載はなく、特許文献5に記載された技術で製造された鋼板が、構造物用鋼板として必要な特性をバランスよく具備しているかどうかについては不明のままである。
また、特許文献6には、母材靭性と疲労亀裂進展特性に優れた厚鋼板が記載されている。特許文献6に記載された厚鋼板は、質量%で、C:0.030〜0.300%、Si:0.50%以下、Mn:0.80〜2.00%、Al:0.01〜0.10%、N:0.0100%以下を含む組成と、再結晶フェライトからなる軟質部と、マルテンサイトとベイナイトの1種以上からなる硬質部とで主に構成された複相組織とを有し、硬質部の面積分率が15〜85%、平均円相当径が10μm以上、平均硬さがHv200〜700で、かつ硬質部と軟質部の平均硬さの差がHv100以上であり、さらに再結晶フェライト粒の平均円相当径が20μm以下、マルテンサイトとベイナイトの平均ラス長さが5μm以下である厚鋼板である。特許文献6に記載された技術では、十分微細化したフェライトと、加工γから変態したラス長さの短い低温変態相とを組み合わせた複相組織にすることにより、疲労亀裂進展特性と靭性の両特性を両立させることができるとしている。しかし、特許文献6には、疲労亀裂進展速度、靭性以外の実構造物用鋼板として必要な、延性、溶接性等の特性をバランスよく具備しているかどうかについては不明のままである。
また、特許文献7には、疲労亀裂進展抑制特性に優れた厚鋼板が記載されている。特許文献7に記載された厚鋼板は、重量%で、C:0.04〜0.25%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.4〜2%、sol.Al:0.005〜0.1%、N:0.001〜0.005%、Ti:0〜0.03%、B:0〜0.0025%、Cu:0〜1%、Ni:0〜0.5%、Cr:0〜1%、Mo:0〜0.5%、Nb:0〜0.06%、V:0〜0.1%を含む組成を有し、フェライト相及び1種以上の硬質相からなる混合組織で、フェライト相と各々の硬質相と硬度差がビッカース硬さで150以上、1種以上の硬質相からなる硬質相の集合体はフェライト相のなかで塊状であり、その平均径が6〜50μmである組織を有する厚鋼板である。特許文献7に記載された技術によれば、疲労亀裂が伝播しフェライトと硬質相の界面近傍に到達すると、亀裂先端での塑性変形が抑制されて疲労亀裂の停留が起こり、中程度のΔKの範囲においても、疲労亀裂進展抑制効果に優れるため、溶接部から疲労亀裂が発生した場合でも、従来に比べて疲れ寿命の延長が十分に期待できるとしている。
また、特許文献8には、疲労き裂伝播特性に優れた厚鋼板が記載されている。特許文献8に記載された厚鋼板は、質量%で、C:0.03〜0.2%、Si:0.01〜1.6%、Mn:0.5〜2%、Al:0.001〜0.1%、N:0.001〜0.008%を含む組成と、ビッカース硬さが150以上のフェライトを母相とし、ビッカース硬さが400〜900、面積率が5〜30%、アスペクト比が3以上の偏平なマルテンサイトを第二相とした層状組織で、フェライトとマルテンサイトの板厚方向の平均層間隔が3〜50μmである疲労き裂伝播特性に優れた厚鋼板である。特許文献8に記載された技術によれば、このような組織の厚鋼板を使用して溶接継手を形成すれば、溶接継手寿命を従来の2倍以上に向上させることができ、溶接構造物の疲労破壊に対する信頼性を向上させることができるとしている。
また、特許文献9には、疲労亀裂進展抑制効果を有する鋼板が記載されている。特許文献9に記載された鋼板は、質量%で、C:0.03〜0.30%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.3〜2.0%、sol.Al:0.001〜0.1%を含む組成を有し、硬質部Aと軟質部Bとからなり、硬質部が組織全体に占める割合(%)fA、軟質部が組織全体に占める割合(%)fBと、硬質部のビッカース硬さでの平均硬さHA、軟質部のビッカース硬さでの平均硬さHBとが、fA・HA−fB・HB≧−3500を満足する組織を有する鋼板である。特許文献9に記載された技術によれば、中程度のΔKの範囲においても、良好な疲労亀裂進展抑制効果を有する鋼板が得られ、溶接部から疲労亀裂が発生した場合でも、従来に比べて疲れ寿命を延長することができるとしている。
また、特許文献10には、疲労き裂伝播遅延鋼材が、また、特許文献11には、疲労き裂進展抑制に優れる鋼材が記載されている。特許文献10、11に記載された鋼材は、質量%で、C:0.02〜0.20%、Si:0.01〜0.45%、Mn:0.5〜2.0%を含み、さらにCu:0.01〜3.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜1.0%の一種または二種以上を含む組成と、硬質相と軟質相から構成される組織とを有し、硬質相の組織分率に関連するパラメータVpと、硬質相と軟質相のビッカース硬さ差ΔHvとの積が50以上となる鋼材である。特許文献10、11に記載された技術では、疲労き裂は、き裂前方に硬質相が存在すると、塑性域の拘束などを介して、疲労き裂が硬質相を避けて進展するようになり、き裂の屈曲や分岐が生じるとし、疲労き裂進展速度の低下は、硬質相に遭遇する頻度や、硬質相に遭遇した際に局所的に伝播速度が低下する度合が相乗的に関与しているもの考えられるとしている。
特許2962134号公報 特許3785392号公報 特許3860763号公報 特許4976749号公報 特許4466196号公報 特許4721956号公報 特開平10−60575号公報 特開2005−320619号公報 特開2002−121640号公報 特開2008−255468号公報 特開2008−255469号公報
H.SUZUKI and A.J.McEVILY : Met. Trans. A, vol.10A(1979), p.475−481
しかしながら、特許文献7には、疲労亀裂進展速度以外の特性についての言及はなく、特許文献7に記載された厚鋼板が、優れた疲労亀裂進展抑制特性とともに、実構造物用鋼板として必要な、強度、延性、靭性、溶接性等の特性をバランスよく具備しているかどうかについては不明のままである。
また、特許文献8に記載された技術によれば、厚鋼板の板厚方向の疲労き裂進展を抑制することができるが、厚鋼板の圧延方向あるいは幅方向の疲労き裂進展までも抑制できるかどうかは不明のままである。また、特許文献8に記載された技術では、硬さ:400HV以上の偏平なマルテンサイトを得るために、仕上圧延温度を低温とし、累積圧下率を高く限定し、しかも急速な加速冷却を施すとしており、製造負荷が大きく、生産性が低下するという問題があった。
また、特許文献9に記載された技術では、良好な疲労亀裂進展抑制効果を有する鋼板とするために、軟質相と硬質相との硬さの差を大きくすることを指向している。また、特許文献10、特許文献11に記載された技術では、疲労き裂進展速度が低下するように、硬質相(あるいは軟質相)を面積率で50%近くとなる組織としてVpを大きくし、さらに、軟質相のビッカース硬さと硬質相のビッカース硬さとの差ΔHvを大きくしてVp×ΔHvを大きくし、鋼材の疲労き裂進展速度を低下させている。
しかし、特許文献9〜11に記載された技術で製造された、上記したような組織を有する鋼材は、降伏強さや降伏比が極端に低くなる恐れがあり、橋梁などのように、基本的に弾性設計を行う構造物の部材への適用は不向きであるという問題がある。
本発明は、このような従来技術の問題を有利に解決し、高強度で、延性、靱性、溶接性に優れるとともに、耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材およびその判定方法を提供することを目的とする。なお、ここでいう「高強度」とは、降伏点YS(または0.2%耐力)が315MPa以上である高降伏点を有する場合をいうものとする。また、ここでいう「耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた」とは、具体的に、疲労き裂伝ぱ速度da/dNが、少なくとも、ΔKI=15MPa√mで1.75×10-8(m/cycle)以下、ΔKI=20MPa√mで4.26×10-8(m/cycle)以下、好ましくはΔKI=25MPa√mで8.50×10-8(m/cycle)以下、となる場合をいう。
また、ここでいう「高靭性」とは、供用期間中に疲労を受ける溶接構造物用鋼材の代表として要求される、日本海事協会「鋼船規則(NK船級)のKA32」の規定に準拠して行ったシャルピー衝撃試験における試験温度:0℃での吸収エネルギーvEが31J以上である場合をいうものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、まず、強度、延性、靱性、溶接性と、耐疲労き裂伝ぱ特性とをバランスよく向上させるためのマトリクス組織について、検討した。その結果、降伏点YS:315MPa以上の強度を有する鋼材では、延性、靱性等と耐疲労き裂伝ぱ特性とをバランスよく兼備させるためには、マトリクス組織をフェライト相を主体とする組織とすることが好ましいとの知見を得た。
そして、フェライト相を主体とする組織を有する鋼材の耐疲労き裂伝ぱ特性に及ぼす各種要因について鋭意研究した。その結果、繰返し応力負荷により発生した疲労き裂先端の塑性域寸法に着目し、疲労き裂先端の塑性域寸法と組織の有効組織単位との関係が、疲労き裂伝ぱ速度に大きく影響するという知見を得た。
まず、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
特定組成の鋼素材に、条件を種々変化させた処理を施して、フェライト単相で、粒径や形態が種々変化した組織を有する鋼板(板厚:25mm)を製造した。得られた鋼板から、図6に示す3種の方向、位置の組合せで、CT試験片および三点曲げ試験片を採取した。CT試験片(T−L)は、負荷方向が鋼板幅方向(T方向)、き裂伝ぱ方向が鋼板圧延方向(L方向)となるように採取した試験片であり、CT試験片(L−T)は、負荷方向が鋼板圧延方向(L方向)、き裂伝ぱ方向が鋼板幅方向(T方向)となるように採取した試験片である。また、三点曲げ試験片(L−Z)は、負荷方向が板厚方向(Z方向)、き裂伝ぱ方向が板厚方向(Z方向)となるように採取した試験片である。なお、試験片厚さは全厚とした。
採取した試験片を用いて、疲労き裂伝ぱ試験を実施した。なお、試験片サイズ、応力拡大係数の算出方法、疲労き裂伝ぱ試験方法等は、CT試験片を用いる場合にはASTM E647の規定に準拠して、また、三点曲げ試験片を用いる場合には、BS 7448 Part1の規定を参照して、それぞれ決定した。なお、疲労き裂伝ぱ試験は、大気中(室温)で、応力比R=0.1、周波数:20Hzで行った。
得られた結果から、モードIの応力拡大係数範囲ΔKI=15MPa√mの時の疲労き裂伝ぱ速度da/dNを求めるとともに、試験片厚さ中央部でΔKI=15MPa√m近辺での500μm区間内における疲労き裂伝ぱ経路を断面観察(図2におけるx−y平面)して疲労き裂の屈曲回数を測定した。得られた結果から、ΔKI=15MPa√mでの疲労き裂伝ぱ速度da/dNとき裂の屈曲回数との関係を求めた。なお、同時に、き裂屈曲時の屈曲長さとき裂進展方向に対する屈曲角度も求めた。得られた結果を図1に示す。
図1から、疲労き裂の屈曲回数が増加すればするほど、疲労き裂伝ぱ速度が低下することがわかる。このことから、本発明者らは、耐疲労き裂伝ぱ特性を向上させるには、疲労き裂の屈曲回数が増加するような組織とする必要があることに思い至った。
そこで、ΔK=15MPa√mにおける疲労き裂伝ぱ速度da/dNが、目標値である1.75×10−8m/cycle以下の、9.57×10−9m/cycleである鋼材について、観察した疲労き裂の屈曲挙動から、き裂屈曲時の屈曲長さrと、き裂進展方向に対する屈曲角度θとの関係を○印で、図3に示す。なお、屈曲長さr、屈曲角度θは、図2に示すモードI(開口型)の変形様式でのき裂先端を原点とするr−θ−zの円柱座標系で求め、図3ではr−θ座標系で示している。なお、図2には、モードI(開口型)の変形様式について用いる、き裂先端を原点とするx−y−z直交座標系、r−θ−zの円柱座標系を示す。
図3には、使用した鋼材の平均フェライト粒径を、き裂伝ぱ方向とそれと直角な方向(図2のx方向、y方向)で求め、これを長辺と短辺とし楕円近似して、疲労き裂先端に配置した場合に、r−θ座標系で結晶粒界が示す軌跡を実線で示している。
つぎに、疲労き裂伝ぱ速度に及ぼす、疲労き裂先端での塑性域寸法と組織との関係に着目し、まず、平面歪みでのvon Misesの降伏条件に基づいたき裂先端での塑性域寸法γ(θ)を求めた。γp(θ)は、図2の円柱座標系において、き裂先端から弾塑性境界までの距離を表し、次(6)式
γ(θ)={(KImax×10/4πσ }×{(3/2)sinθ+(1−2ν)(1+cosθ)}‥(6)
で定義される。なお、θは角度(°)、KImaxは対象とするモードIの最大応力拡大係数、σは鋼材の降伏応力(MPa)、νはポアソン比である。ここで、KImaxは、応力比Rと応力拡大係数範囲ΔKとの関係で、次式
KImax=ΔK/(1−R)
を満足する。本発明では、KImaxは5〜35(MPa√m)の範囲内の値とする。
得られたき裂先端から弾塑性境界までの距離γ(θ)、すなわち弾塑性境界を、図3中に破線で示す。
図3から、疲労き裂の屈曲は、概ね実線の範囲内、すなわち結晶粒内で生じており、しかもき裂進展方向(θ:0°)近傍に集中する傾向にあることがわかる。また、き裂進展方向(θ:0°)近傍では、き裂先端での塑性域寸法(破線)と、結晶粒界の軌跡(実線)とが近接している。このことから、本発明者らは、き裂先端での塑性域寸法と結晶粒の大きさ(組織単位ともいう)とが、疲労き裂の屈曲を介して、疲労き裂伝ぱ速度に密接に関連していると考えた。なお、ΔK=15MPa√mにおける疲労き裂伝ぱ速度が、目標値である1.75×10−8(m/cycle)を超える鋼材では、き裂の屈曲頻度が少なく、しかも屈曲は結晶粒以外の位置でも多発していた。さらに、き裂先端での塑性域寸法と結晶粒界の軌跡は大きくかけ離れていた。しかも、き裂先端での塑性域と結晶粒界の軌跡は、近接しておらず大きく離れていた。
そこで、本発明者らは、得られた鋼板について実施した疲労き裂伝ぱ試験での、き裂進展方向(θ=0°)でのき裂先端における塑性域寸法を(6)式を用いて算出し、γ*とした。すなわち、γ*は、次(1)式
γ*={(KImax×10/(2πσ )}×(1−2ν)‥‥(1)
で定義される。
一方、得られた各鋼板について、実施した疲労き裂伝ぱ試験の3種のき裂進展方向(θ=0°)における結晶粒(フェライト粒)の平均値(組織単位)を測定し、(Dαと定義した。
得られたγ*と得られた(Dαとの比、γ*/(Dαを算出し、疲労き裂伝ぱ速度に及ぼすγ*/(Dαの影響を求め、図4に示す。なお、図4には、ΔKI=15MPa√m以外に、ΔKI=20MPa√m、ΔKI=25MPa√mの場合についても示した。γp *は、当然ながらKImaxのレベルに応じて変化している。
図4から、応力拡大係数のレベルによらず疲労き裂伝ぱ速度は、とくにγp */(Dαが10以下の領域では、γp */(Dαで一義的に整理可能であり、γp */(Dαが小さくなるにしたがい、疲労き裂伝ぱ速度は明らかに低下するという知見を得た。しかし、γp */(Dαが10を超える領域では、γp */(Dαが増加しても疲労き裂伝ぱ速度の増加は少なく、曲線の傾きは小さく、むしろほぼ水平となり、そして、データのばらつきも大きくなる。すなわち、γp */(Dαが10を超える領域では、γp */(Dαの疲労き裂伝ぱ速度への影響は小さいといえる。これは、き裂先端の塑性域に対し、結晶粒単位が小さくなり、結晶粒単位がき裂の屈曲を起す要因になり難いことを意味する。このような領域ではき裂の進展は、き裂先端の応力場のみによって支配されていると考えられる。
上記した知見は、フェライト単相組織を有する鋼板について得られたものである。実構造物に適用する鋼材は、使用目的に応じてパーライト、ベイナイト、マルテンサイトのような硬質相を導入した組織として、所望の高強度、高延性、高靱性、さらに優れた溶接性等をバランスよく保持した鋼材としている。
そこで、まず、面積率で50%以上のフェライト相を主相とし、第二相として、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトのような硬質相を含む、複合組織を有する鋼材について、疲労き裂伝ぱ挙動を調査した。その結果、疲労き裂は、フェライトからパーライト、ベイナイト、マルテンサイト、あるいはベイナイトからマルテンサイトのように、より硬質な組織へ伝ぱする際には、き裂の屈曲や分岐が生じ、疲労き裂伝ぱ速度が低減することを見出した。さらに、より詳細な観察を行った結果、パーライトでは塊状や層状の境界でもき裂の屈曲が生じていること、ベイナイト、マルテンサイトではパケット境界、ブロック境界などでき裂の屈曲が生じていることを知見した。
このような知見から、本発明者らは、複合組織においても、フェライト単相組織におけるフェライト結晶粒と同様に、各相にそれぞれき裂の屈曲を生じさせる有効な組織単位があると考えた。そして、本発明者らは、この組織単位を、フェライトでは(Dα、パーライトでは(D、ベイナイトでは(D、マルテンサイトでは(D、とそれぞれ定義した。そして、複合組織全体では、各相のき裂の屈曲への寄与を重み付けできれば、混合則が成り立ち、複合組織における有効組織単位MUeffが新たに定義できることに思い至った。
そして、各相のき裂屈曲への寄与は、各相の組織単位と、各相の面積割合(AR)α、(AR)、(AR)、(AR)に応じて、決定されると考え、各相の組織単位と各相の面積割合の積をその指標として用いることにした。さらにその積に、主相に対する各相の硬さ比を乗じることで、き裂の屈曲への各相の寄与を、主相を基準として重み付けできることを見出した。なお、ここでいう「主相」とは、面積率で50%以上を超える相をいうものとする。
すなわち、フェライト相を主相とし、フェライト相より硬質のパーライト相、マルテンサイト相、ベイナイト相を第二相とする複合組織における有効組織単位MUeffは、次式
MUeff=(AR)α×(Dα+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}‥‥(2)
ここで、(AR)α、(AR)、(AR)、(AR):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の面積割合(0〜1)、
(Dα、(D、(D、(D:フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相のき裂進展方向における組織単位(μm)、
(Hv)α、(Hv)、(Hv)、(Hv):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の平均ビッカース硬さ
で表せることになる。なお、上記した(2)式は、フェライト単相組織である鋼材の場合には、第1項のみとなり、図4に示す結果とも整合する。
さらに、フェライト相を主相とし、残部第二相が硬質相からなる複合組織鋼材について、フェライト単相組織の場合と同様に疲労き裂伝ぱ試験を実施し、疲労き裂伝ぱ速度を求めた。得られた疲労き裂伝ぱ速度とγp */MUeffとの関係を算出し、図5に示す。なお、図5中には、フェライト単相組織の場合(○、△、□印)も併記した。図5から、フェライト相を主相とする複合組織においても、フェライト単相同様に、疲労き裂伝ぱ速度は、γp */MUeffで整理でき、そして、γp */MUeffが10以下の領域では、比較的狭いバンド内に整理でき、しかもγp */MUeffが小さくなるほど疲労き裂伝ぱ速度が明確に低下するという知見を得た。すなわち、フェライト相を主相とする複合組織を有する鋼材においても、γp */MUeffが10以下となるような領域では、γp */MUeffが小さくなるほど疲労き裂伝ぱ速度が低下し耐疲労き裂伝ぱ特性が向上するという知見を得た。このことから、使用条件下でγp */MUeffが10以下となるような鋼材は、疲労き裂伝ぱ速度が低下した耐疲労き裂伝ぱ特性が優れた鋼材であるといえることになり、γp */MUeffが10以下という基準が、優れた耐疲労き裂伝ぱ特性を有する鋼材の判定基準として利用可能であることにも思い至った。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎの通りである。
(1)質量%で、C:0.02〜0.4%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.10%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成と、板厚1/4位置において、面積率で50%を超えるフェライトを主相とし、該主相と残部硬質相とからなる組織とを有し、降伏点:315MPa以上の高強度とシャルピー衝撃試験における試験温度:0℃での吸収エネルギーvEが31J以上の高靭性とを有し、次(1)式
γ*={(KImax×10/(2πσ )}×(1−2ν) ‥‥(1)
ここで、KImax:モードIの最大応力拡大係数で、5〜35の範囲内の値(MPa√m)、σ:降伏応力(MPa)、ν:ポアソン比
で定義されるき裂先端塑性域寸法γp *(μm)と、次(2)式
MUeff=(AR)α×(Dα+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}‥‥(2)
ここで、(AR)α、(AR)、(AR)、(AR):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の面積割合(0〜1)、
(Dα、(D、(D、(D:フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相のき裂進展方向における組織単位(μm)、
(Hv)α、(Hv)、(Hv)、(Hv):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の平均ビッカース硬さ
で定義されるき裂進展方向における有効組織単位MUeff(μm)とが、次(3)〜(5)式
γ*/MUeff ≦ 10 ‥‥(3)
γ* ≦ 250 ‥‥(4)
MUeff ≦ 150 ‥‥(5)
を満足することを特徴とする耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:3.0%以下、Ni:10%以下、Cr:3.0%以下、Mo:2.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度鋼材。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする高強度鋼材。
(4)フェライトが面積率で50%を超え、残部が硬質相からなる組織を有し、降伏点:315MPa以上の高強度を有する高強度鋼材を対象とし、該対象とする高強度鋼材について、組織観察、ビッカース硬さ測定を行って、想定する疲労き裂進展方向における組織を構成する各相の面積割合(AR)、各相の組織単位(DP)、各相の平均ビッカース硬さ(HV)を求め、次(1)式
γ*={(KImax×10/(2πσ )}×(1−2ν) ‥‥(1)
ここで、KImax:モードIの最大応力拡大係数で、5〜35の範囲内の値(MPa√m)、σ:降伏応力(MPa)、ν:ポアソン比(=0.3)
で定義されるき裂先端塑性域寸法γp *(μm)、次(2)式
MUeff=(AR)α×(Dα+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}‥‥(2)
ここで、(AR)α、(AR)、(AR)、(AR):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の面積割合(0〜1)、
(Dα、(D、(D、(D:フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相のき裂進展方向における組織単位(μm)、
(Hv)α、(Hv)P、(Hv)、(Hv):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の平均ビッカース硬さ
で定義されるき裂進展方向における有効組織単位MUeff(μm)を算出して、次(3)〜(5)式
γ*/MUeff ≦ 10 ‥‥(3)
γ* ≦ 250 ‥‥(4)
MUeff ≦ 150 ‥‥(5)
を満足する場合を耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材と判定することを特徴とする耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材の判定方法。
(5)(4)において、前記鋼材が、質量%で、C:0.02〜0.4%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.10%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする高強度鋼材の判定方法。
(6)(5)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:3.0%以下、Ni:10%以下、Cr:3.0%以下、Mo:2.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度鋼材の判定方法。
(7)(5)または(6)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする高強度鋼材の判定方法。
本発明によれば、降伏点:315MPa以上という高い降伏強さを有する高強度鋼材の耐疲労き裂伝ぱ特性を判定でき、強度、延性、靱性、溶接性とをバランスよく兼備し、耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材を提供でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明になる高強度鋼材を、船舶、橋梁、建築物に代表されるような溶接構造物の主要部材に適用すれば、溶接構造物の疲労破壊の安全裕度を拡大できるという効果もある。
フェライト単相組織鋼板における疲労き裂伝ぱ速度と疲労き裂の屈曲回数との関係を示すグラフである。 モードI型き裂開口と座標系の関係を模式的に示す説明図である。 フェライト単相組織鋼板における疲労き裂の屈曲角度θと屈曲き裂長さとの関係を示すグラフである。 フェライト単相組織鋼板の疲労き裂伝ぱ速度とγ*/(Dαとの関係を示すグラフである。 複合組織鋼板の疲労き裂伝ぱ速度とγ*/MUeffとの関係を示すグラフである。 疲労き裂伝ぱ試験片の採取要領を模式的に示す説明図である。
本発明鋼材は、C:0.02〜0.4%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.10%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有する。
まず、本発明鋼材の組成限定理由について説明する。なお、以下、とくに断わらない限り、質量%は単に%で記す。
C:0.02〜0.4%
Cは、強度を増加させる元素であり、ベイナイト相やマルテンサイト相を主体とする組織を有する鋼材で、所望の高強度を確保するためには、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.4%を超える含有は、溶接性を阻害する。このため、Cは、0.02〜0.4%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.35%である。
Si:0.01〜1.0%
Siは、脱酸剤として有効に作用するとともに、強度を増加させ高強度化に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超えて含有すると、溶接性、靭性が低下する。このため、Siは0.01〜1.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.05〜0.8%である。
Mn:0.5〜3.0%
Mnは、焼入れ性の向上を介して強度増加に寄与するとともに、靭性向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.5%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超えて多量に含有すると、溶接性の低下を招く。このため、Mnは0.5〜3.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.5〜2.5%である。
P:0.05%以下
Pは、鋼の靭性を劣化させる元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、0.05%までは許容できる。このようなことから、Pは0.05%以下の限定とした。なお、好ましくは0.03%以下である。
S:0.05%以下
Sは、鋼中では硫化物系介在物として存在し、鋼の延性、靭性を低下させる。このため、Sはできるだけ低減することが望ましいが、0.05%までは許容できる。このようなことから、Sは0.05%以下に限定した。なお、好ましくは0.03%以下である。
Sol.Al:0.10%以下
Sol.Alは、脱酸剤として作用する元素であり、また、結晶粒の微細化にも寄与する。このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましいが、0.10%を超えて多量に含有すると、酸化物系介在物が増加し靭性、延性が低下する。このため、Sol.Alは0.10%に限定した。なお。好ましくは0.08%以下である。
上記した成分が基本の成分であるが、本発明では、上記した基本の組成に加えてさらに、強度、靭性、溶接性、さらには耐候性、耐熱性等の調整を目的として、Cu:3.0%以下、Ni:10%以下、Cr:3.0%以下、Mo:2.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、およびまたは、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種を、必要に応じて選択して含有できる。
Cu:3.0%以下、Ni:10%以下、Cr:3.0%以下、Mo:2.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti、Bは、いずれも強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有できる。
Cuは、固溶して強度増加に寄与するとともに、耐候性向上にも寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、3.0%を超える多量の含有は、溶接性を低下させるとともに、熱間加工性を低下させ、疵が発生しやすくなる。このため、含有する場合には、Cuは3.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは2.5%以下である。
Niは、靭性を向上させるとともに、強度増加にも寄与する元素である。また、Niは、耐候性向上や、Cuを添加した場合に生ずる熱間脆性の改善に有効に寄与する。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、10%を超えて含有すると、溶接性が低下するとともに、材料コストの高騰を招く。このようなことから、含有する場合には、Niは10%以下に限定することが好ましい。
Crは、強度増加に寄与するとともに、耐候性や耐熱性の向上にも寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、3.0%を超えて多量に含有すると、溶接性、靭性が低下する。このため、含有する場合には、Crは3.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは2.5%以下である。
Moは、強度の増加に寄与するとともに、耐熱性の向上にも寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、2.0%を超えて含有すると、溶接性、靭性の低下を招く。このため、含有する場合には、Moは2.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは1.5%以下である。
Nbは、熱間圧延時のオーステナイト粒の再結晶を抑制し組織の細粒化を介して、また、固溶強化や析出強化を介して、強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが望ましい。一方、0.1%を超えて含有すると、靭性の低下を招く。このため、含有する場合には、Nbは0.1%以下に限定することが好ましい。このため、含有する場合にはNbは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.07%以下である。
Vは、Nbと同様に、析出強化により強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.001%以上含有することが望ましい。一方、0.1%を超えて多量に含有すると、靭性、溶接性の低下を招く。このため、含有する場合には、Vは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.07%以下である。
Tiは、Nbと同様に析出強化を介して強度増加に寄与するとともに、溶接部靭性の改善にも寄与する。このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが望ましい。一方、0.1%を超えて多量に含有すると、材料コストの高騰を招く。このようなことから、含有する場合には、Tiは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.07%以下である。
Bは、焼入れ性向上を介して強度増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには0.0005%以上含有することが望ましい。一方、0.005%を超えて多量に含有すると、溶接性が低下する。このため、含有する場合には、Bは0.005%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.003%以下である。
Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種
Ca、REMはいずれも、介在物の形態制御を介して鋼材の延性、靱性向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種を含有できる。
Caは、介在物の形態制御を介して鋼材の延性、靱性向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが望ましいが、0.010%を超える多量の含有は、靱性の低下を招く。このため、含有する場合には、Caは0.010%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.005%以下である。
REMは、Caと同様に、介在物の形態制御を介して鋼材の延性、靱性向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.001%以上含有することが望ましいが、0.010%を超える多量の含有は、靱性の低下を招く。このため、含有する場合には、REMは0.010%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.005%以下である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、N:0.01%以下、O:0.01%以下が許容できる。
本発明鋼材は、上記した組成を有し、平均的な組織形態となる板厚1/4位置において、面積率で50%を超えるフェライトを主相とし、該主相と残部硬質相とからなる組織を有する。本発明では、耐疲労き裂伝ぱ特性と、強度、延性、靱性、さらには溶接性との両立を図るために、主相としてフェライトを選定した。なお、ここでいう主相とは、面積率で50%を超える分率を有する相をいうものとする。フェライト相の組織分率の上限はとくに限定する必要はないが、所望の降伏強さ:315MPa以上を確保するためには、95%以下とすることが好ましい。また、主相以外の残部は硬質相とする。硬質相としては、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトが例示できる。本発明鋼材では、硬質相として、それらのうちの少なくとも1種を含むものとする。このような鋼材であれば、溶接構造物用として必要なvEが31J以上の靭性も確保できる。
そして、本発明鋼材は、上記した組成と上記した組織を有し、かつ降伏強さ:315MPa以上の高強度とvE:31J以上の高靭性とを有し、次(1)式
γ*={(KImax×10/(2πσ )}×(1−2ν) ‥‥(1)
ここで、KImax:モードIの最大応力拡大係数で、5〜35の範囲内の値(MPa√m)、σ:降伏応力(MPa)、ν:ポアソン比
で定義されるき裂先端塑性域寸法γp *(μm)と、次(2)式
MUeff=(AR)α×(Dα+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}‥‥(2)
ここで、(AR)α、(AR)、(AR)、(AR):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の面積割合(0〜1)、
(Dα、(D、(D、(D:フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相のき裂進展方向における組織単位(μm)、
(Hv)α、(Hv)、(Hv)、(Hv):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の平均ビッカース硬さ
で定義されるき裂進展方向における有効組織単位MUeff(μm)とが、次(3)〜(5)式
γ*/MUeff ≦ 10 ‥‥(3)
γ* ≦ 250 ‥‥(4)
MUeff ≦ 150 ‥‥(5)
を満足する。
γ*/MUeffが10以下となる領域では、疲労き裂伝ぱ速度を低減することが可能となり、γ*/MUeffが低下するとともに優れた耐疲労き裂伝ぱ特性を有する鋼材となる。γ*/MUeffが10以下となる領域では、有効組織単位MUeffとき裂先端塑性域寸法γ*とが比較的近い値を示し、き裂の屈曲が組織の方位や異相境界に依存して頻繁に生じるため、疲労き裂伝ぱ速度が急激に低下する。このため、(3)式を満足する鋼材は、耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材であるといえる。一方、γ*/MUeffが10を超えて大きくなる場合には、γ*/MUeffと疲労き裂伝ぱ速度との相関がなくなり、MUeffが低下しても鋼材の耐疲労き裂伝ぱ特性の向上が難しくなる。このようなことから、γ*/MUeffを10以下に限定した。
したがって、上記した(3)式を満足する鋼材は、耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材であるといえる。そこで、本発明では、上記した(3)式を、耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材の判定のための基本の式とし、(3)式を満足するか否かで、鋼材の耐疲労き裂伝ぱ特性を判定することにした。
つぎに、き裂先端塑性域寸法γ*について説明する。
γ*は、き裂進展方向でのき裂先端における塑性域寸法であり、次(1)式
γ*={(KImax×10/(2πσ )}×(1−2ν) ‥‥(1)
で定義される。ここで、「KImax」は、モードIの最大応力拡大係数であり、5〜35MPa√mの範囲の値とする。「モードI」は、図2に示したようにき裂が開口する変形様式であり、疲労き裂進展に対して支配的なモードである。
なお、KImaxは、次式
KImax=ΔKI/(1-R)
で計算できる。ここで、ΔKIはモードI応力拡大係数範囲(MPa√m)、Rは応力比である。
疲労き裂伝ぱ速度は、一般に、応力拡大係数との関係で3つの領域(領域A〜C)に分けられる。領域Aでは、き裂の進展が認められなくなる下限界へと至る領域であり、領域Bは、き裂が安定的に伝ぱし、き裂伝ぱ速度(対数)と応力拡大係数(対数)の関係で線形的な関係が認められる領域であり、領域Cは、応力拡大係数の増加に伴い疲労き裂伝ぱ速度が急激に増加し不安定破壊へと至る領域である。本発明では、領域Bにおける疲労き裂伝ぱ速度を低減することを目的としている。この領域Bは、通常、最大応力拡大係数KImaxが、5〜35MPa√mの範囲に相当し、このため、鋼材の使用状態に応じてKImaxを、5〜35MPa√mの範囲の値で設定するものとする。KImaxが5MPa√m未満では疲労き裂が停留し、35MPa√mを超えると不安定破壊が生じる。なお、好ましくは10〜30MPa√mの範囲である。また、ここでσは降伏強さまたは0.2%耐力で、疲労き裂の開口方向で測定することが好ましいが、それが困難である場合には、引張試験片が採取できる方向としてもよい。また、νは鋼材のポアソン比で、通常0.3である。
なお、本発明鋼材では、γ*は、次(4)式
γ* ≦ 250 ‥‥(4)
を満足する範囲に限定した。γ*が250(μm)を超えて大きくなると、(1)式よりσ:315MPa以上とKImax:5〜35MPa√mの組合せの範疇を超える領域に近くなり、所望の疲労き裂伝ぱ特性の確保が困難となる。また、(3)式を満足する最大のMUeffも大きくなり、強度や靭性との両立が難しくなる。そこで、γ*の上限を250(μm)に限定した。
次に、有効組織単位MUeffについて説明する。
本発明でいう「有効組織単位MUeff」は、疲労き裂の屈曲に寄与する組織単位をいう。具体的には、疲労き裂伝ぱ経路と構成組織を参照しながら決定される屈曲を開始する頻度がもっとも高い組織単位をいう。
複合組織を有する鋼材において、疲労き裂の屈曲、すなわち疲労き裂伝ぱ速度の低下は、各相の組織単位の大きさ(D)と、各相の面積割合(AR)に応じて決定されると考え、各相の組織単位(D)と各相の面積割合(AR)の積(AR)×(D)をその指標とした。そして、その積に、主相に対する各相の硬さ比{(Hv)/(Hv)α}を乗じることにより、主相を基準とした各相の組織単位の重み付けができる。これにより、混合則に従って、主相と、主相より硬質の各相を第二相とし、それらの総和をとり、複合組織の有効組織単位MUeffとした。
主相をフェライト、主相以外の第二相をフェライトより硬質な、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトとする複合組織の有効組織単位MUeffは、次(2)式
MUeff=(AR)α×(Dα+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}‥‥(2)
で定義する。
ここで、(AR)α、(AR)、(AR)、(AR)は、フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の面積割合(0〜1)であり、(各相の面積分率(%))/100で算出される。なお、面積割合は、板厚1/4位置で図2に示したx−y平面において、組織観察を行って、例えば市販の画像解析ソフトを用いて演算し、算出することができる。
(Dα、(D、(D、(Dは、フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相のき裂進展方向における組織単位(μm)である。
ここでいう「き裂進展方向における組織単位」とは、き裂進展方向に測定した、き裂の屈曲と密接な関連のある組織単位である。
き裂の屈曲と密接な関係がある組織単位は、組織の特定をも含めて光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡SEM、透過電子顕微鏡TEM、後方散乱電子回折法(EBSD)等を用いた組織観察から組織単位を決定することができる。なお、必要に応じて、疲労き裂伝ぱ経路の観察により、き裂屈曲長さや屈曲頻度等と組織単位との関係を統計解析して組織単位を決定することが好ましい。
具体的には、フェライト(α)の組織単位(Dαは、疲労き裂の屈曲のほとんどがフェライト結晶粒界と関連していたことから、簡便には、き裂進展方向のフェライト粒径の平均値とする。また、パーライト(P)では、疲労き裂の屈曲と密接な関係があるのは、パーライトコロニーサイズ、塊状パーライトの大きさ、層状のパーライト厚さであるが、本発明では、塊状パーライトであればその大きさ、層状パーライトの場合にはその厚さを疲労き裂進展方向に測定し、その平均値を、パーライト(P)の組織単位(Dとした。また、ベイナイト(B)では、き裂の屈曲と密接な関係があるのは、パケットサイズ,ブロックサイズ,旧オーステナイト粒径であるが、疲労き裂の屈曲のほとんどが、パケットと関連しており、本発明では、簡便には、き裂進展方向のパケットサイズを測定し、その平均値をベイナイトの組織単位(Dとした。また、マルテンサイト(M)では、き裂の屈曲と密接な関係があるのは、パケットサイズ,ブロックサイズ,旧オーステナイト粒径であるが、疲労き裂の屈曲のほとんどが、パケットと関連しており、本発明では、簡便に、き裂進展方向のパケットサイズを測定し、その平均値をマルテンサイトの組織単位(Dとした。
組織単位の測定方法は、例えば、JIS G 0551(2013)に規定される切断法を用いて統計解析する方法が好ましい。
なお、使用条件が不明の場合には、KImax:5〜35MPa√mの範囲内で任意のKImaxを定め、想定されるき裂進展方向と直角をなす方向(図2のy方向)で引張試験を行い、σを求め、(1)式を用いてき裂先端塑性域寸法γ*を算出し、さらに主相および第二相について想定されるき裂進展方向の組織単位、面積割合、および平均硬さを測定し、(2)式を用いてMUeffを算出することが好ましい。
なお、本発明の範囲であれば、組織はフェライトを主相とし、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトが複合した組織を呈するが、本発明の組織限定範囲をはずれ、ベイニティックフェライト、アシキュラーフェライト、グラニュラーベイナイト等の中間的組織が生じる場合も、組織観察、疲労き裂の経路観察を介して、疲労き裂の屈曲に寄与する各相の組織単位を決定し、各相の面積割合と各相の硬さ測定により、本発明におけると同様に有効組織単位MUeffを決定すればよい。
なお、有効結晶粒単位MUeffは、150(μm)以下に限定した。MUeffが150を超えて大きくなると、所望の降伏強さ(315MPa)以上を確保できなくなる。また、MUeffが150を超えると靭性が低下し、溶接構造用として適用できなくなる。このため、MUeffは次(5)式
MUeff ≦ 150 ‥‥(5)
を満足するように限定した。なお、好ましくは120(μm)以下である。
また、(Hv)α、(Hv)、(Hv)、(Hv)は、フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の平均ビッカース硬さ、である。
なお、硬さ測定は、板厚1/4位置にて図2に示したx−y平面において、少なくとも各相5点以上ビッカース硬度計を用いて実施し、その平均値を各相の硬さ(Hv)とする。また、硬さ測定は、粒界や相境界では安定した値を得難いため、粒界間、相境界間の距離が圧痕の4倍以上となるように試験荷重を調整して行うことが好ましい。
本発明では、上記した(1)式で求めたγ*、上記した(2)式で求めたMUeffを用いて、(3)式で疲労き裂伝ぱ特性を判定する。
本発明鋼材は、上記した組成、上記した組織を有し、降伏点YS:315MPa以上、vE:31J以上で、き裂先端塑性域寸法γ*と有効結晶粒単位MUeffとの関係で、(3)〜(5)式を満足する耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材である。
次に、本発明鋼材の好ましい製造方法について説明する。
まず、上記した組成を有する溶鋼を、転炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法を用いて鋼素材とする。鋼素材の製造方法はとくに限定されないことはいうまでもない。
得られた鋼素材を、950〜1300℃の温度範囲の温度に加熱した後、900℃以上の温度域での累積圧下率が50%以上で、仕上圧延終了温度を(Ar3変態点−150℃)以上とする熱間圧延を施し、該熱間圧延終了後、5℃/s以上の冷却速度で650℃以下まで冷却する加速冷却を施し、所定形状の鋼材とすることが好ましい。なお、加速冷却を施した後、さらに、Ac1変態点未満の温度で焼戻処理を施してもよい。なお、温度は、鋼材表面温度、冷却速度は鋼材厚さ方向での平均冷却速度とする。
なお、熱間圧延をAr3変態点以上、すなわちオーステナイト域圧延とし、加速冷却の前または途中に、冷却速度:5℃/s未満の冷却を5s以上継続する緩冷却を施しても良い。すなわち、得られた鋼素材を、950〜1300℃の温度範囲の温度に加熱した後、900℃以上の温度域での累積圧下率が50%以上で、仕上圧延終了温度をAr3変態点以上とする熱間圧延を施し、該熱間圧延終了後、Ar3変態点から600℃の温度範囲で、5℃/s未満の冷却速度が5s以上継続する緩冷却を含み、5℃/s以上の冷却速度で600℃以下まで冷却する加速冷却を施し、所定形状の鋼材としてもよい。なお、加速冷却を施した後、Ac1変態点未満の温度で焼戻処理を施してもよい。なお、温度は、鋼材表面温度、冷却速度は鋼材厚さ方向での平均冷却速度とする。
また、熱間圧延後、空冷した鋼材に、二相温度域に再加熱したのち、加速冷却を施す熱処理を施しても良い。すなわち、得られた鋼素材を、加熱し熱間圧延を施して室温まで空冷し、所定形状の鋼材としたのち、Ac1変態点以上Ac3変態点未満の温度に再加熱した後、5℃/s以上の冷却速度で600℃以下まで冷却する熱処理を施してもよい。なお、さらに、Ac1変態点未満の温度で焼戻処理を施してもよい。なお、温度は、鋼材表面温度、冷却速度は鋼材厚さ方向での平均冷却速度とする。
なお、Ar3変態点は、例えば、次式
Ar3(℃)=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo
(ここで、C、Mn、Cu、Cr、Ni、Mo:各元素の含有量(質量%))
を用いて算出できる。
また、Ac1変態点は、例えば、次式
Ac1(℃)=723−14Mn+22Si−14.4Ni+23.3Cr
(ここで、Mn、Si、Cr、Ni:各元素の含有量(質量%))
を用いて算出できる。
また、Ac3変態点は、例えば、次式
Ac3(℃)=854−180C+44Si−14Mn−17.8Ni−1.7Cr
(ここで、C、Si、Mn、Ni、Cr:各元素の含有量(質量%))
を用いて算出できる。
また、本発明によれば、対象とする高強度鋼材のなかから、耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材を判定することができる。ここで、対象とする高強度鋼材としては、上記した組成、上記したフェライトが面積率で50%を超え、残部が硬質相からなる組織を有し、降伏強さ315MPa以上である高強度鋼材とする。
対象とする鋼材について、き裂が開口する方向(図2におけるy方向)における降伏強さσ、組織の種類とその分率、各相のき裂進展方向における組織単位、各相の平均ビッカース硬さを測定する。そして、得られた値を用いて、(1)、(2)式を用いてき裂先端塑性域寸法γ*と有効組織単位MUeffを算出し、(3)〜(5)式
γ*/MUeff ≦ 10 ‥‥(3)
γ* ≦ 250 ‥‥(4)
MUeff ≦ 150 ‥‥(5)
を満足するか否かを判定する。(3)〜(5)式を満足する場合を、耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材と評価し、一方、(3)〜(5)式を満足できない場合を、耐疲労き裂伝ぱ特性に劣る鋼材と評価することで、鋼材を判定する。上記したように、γ*/MUeffが10以下である鋼材は、疲労き裂伝ぱ速度が低下し、優れた耐疲労き裂伝ぱ特性を有する高強度鋼材である。このような方法によれば、優れた耐疲労き裂伝ぱ特性を有する高強度鋼材を容易に判定することが可能で、溶接構造物の疲労に対する予寿命評価精度が高くなるという利点がある。
表1に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法で鋳片(鋼素材)とした。
Figure 2015127447
(実施例1)
得られた鋼素材(A,B,D,E,G,H,I,K,M,N,S,T,U)に、製法Aとして、表2に示す条件で加熱、熱間圧延、圧延後加速冷却し、板厚12〜100mmの鋼板とした。なお、一部の鋼板には熱処理(焼戻処理)を施した。
Figure 2015127447
得られた鋼板から、試験片を採取し、疲労き裂伝ぱ試験、組織観察、引張試験、衝撃試験、硬さ試験、溶接性試験を実施した。試験方法は、次の通りとした。
(1)疲労き裂伝ぱ試験
得られた鋼板から、図6に示す3種の方向からCT試験片、三点曲げ試験片を採取した。試験片T−Lは、負荷方向が幅方向Tでき裂伝ぱ方向が圧延方向LとなるCT試験片であり、試験片L−Tは、負荷方向が圧延方向Lでき裂伝ぱ方向が幅方向TとなるCT試験片である。試験片T−L、試験片L−Tでは、鋼板板厚25mm以下の場合には試験片厚さは鋼板全厚とし、鋼板板厚25mm超〜50mm以下の場合には、鋼板片面を研削して25mm厚とした片面減厚試験片とした。また、鋼板板厚50mm超の場合には、鋼板両面を研削して板厚1/4位置が中心となる25mm厚の両面減厚試験片とした。
なお、試験片L−Zは、負荷方向が板厚方向Zでき裂伝ぱ方向が板厚方向Zとなる三点曲げ試験片である。試験片L−Zでは、鋼板板厚25mm以下の場合には試験片厚さは鋼板全厚とし、鋼板板厚25mm超〜50mm以下の場合には、鋼板片面を研削してZ方向厚さを25mm厚とした片面減厚試験片とした。また、鋼板板厚50mm超の場合には、鋼板両面を研削して板厚1/4位置が中心となるZ方向厚さが25mm厚の両面減厚試験片とした。
なお、CT試験片を用いた試験では、ASTM E647の規定に準拠して、試験片サイズ、疲労き裂伝ぱ試験方法、応力拡大係数の算出などを行った。三点曲げ試験片を用いた試験では、BS 7448 Part1の規定を参照して、試験片サイズ、負荷様式を決定した。三点曲げ試験片を用いた試験では、試験片の両面で切欠き前方の領域に0.1mmピッチのクラックゲージを貼付して、試験中のき裂長さを求めた。
なお、応力拡大係数Kの算出は、Srawlyの式
K=(3SP/2WB)√(πa)F(ζ) ……(7)
(ここで、S:スパン(=4W)、P:荷重、W:き裂伝ぱ方向の試験片厚さ、B:幅方向Tの試験片厚さ(=W/2)、a:切欠きを含むき裂長さ)
を用いた。なお、F(ζ)は、a/W=ζとした時の形状係数で、次(8)式
F(ζ)={1.99−ζ(1−ζ)(2.15−3.93ζ+2.7ζ)}/{√π(1+2ζ)(1−ζ)3/2}‥‥(8)
を用いて計算した。
全ての疲労き裂伝ぱ試験は、室温大気中で、応力比R:0.1、周波数:20Hzの条件のもと、応力拡大範囲ΔK:10MPa√mで開始して荷重一定のΔK漸増の条件で実施し、疲労き裂伝ぱ速度da/dNとΔKとの関係を求めた。
なお、耐疲労き裂伝ぱ特性の評価は、材料学会編「金属材料疲労き裂進展抵抗データ集」Vol.1 P55に記載のNK船級 KA鋼についての応力拡大係数範囲と疲労き裂伝ぱ速度の関係のデータバンド上限を基準値とし、同じ応力拡大係数範囲で疲労き裂伝ぱ速度が基準値の1/2以下となる場合を耐疲労き裂伝ぱ特性に優れる鋼板とした。疲労き裂伝ぱ速度がこの基準値の1/2以下とは具体的には、疲労き裂伝ぱ速度da/dNが、ΔKI=15MPa√mで1.75×10-8(m/cycle)以下、ΔKI=20MPa√mで4.26×10-8(m/cycle)以下、ΔKI=25MPa√mで8.50×10-8(m/cycle)以下、となる場合をいう。耐疲労き裂伝ぱ特性に優れる鋼板とは、疲労き裂伝ぱ速度が、少なくともΔKI=15MPa√mと20MPa√mの2水準で上記した水準を満足していることとした。
(2)組織観察
鋼板の板厚1/4位置から、組織観察用試験片を採取し、観察面を研磨し、2%ナイタール腐食液で腐食し、組織を現出し、光学顕微鏡(倍率:100〜400倍)または走査型電子顕微鏡(倍率:100〜1000倍)を用いて、組織を観察し、少なくとも各5視野で撮像した。なお、組織観察では、必要に応じて透過電子顕微鏡、EBSDも用いた。なお、観察面は具体的には、試験片T−L、試験片L−Tでは、鋼板の板厚1/4位置に相当する位置で鋼板の板面に平行な面であり、試験片L−Zでは、圧延方向断面とした。なお、観察面はいずれもき裂との関係において図2に示すx−y平面とした。
撮影された組織写真を用いて、組織の同定と、市販の画像解析ソフトを利用して各相の面積割合を測定した。また、JIS G 0551(2013)の規定を参照しながら切断法で、各視野でき裂進展方向における各相についての組織単位(D)を求め、それらの平均値を各相の(D)とした。なお、別途、実施したき裂の屈曲挙動から組織単位を決定した。具体的には、フェライト相ではフェライト粒を、パーライトでは、塊状であればそのサイズを、伸張した層状であれば、層状パーライトの厚さを、ベイナイト相では、パケットのサイズを、マルテンサイト相ではパケットのサイズを、それぞれの組織単位(D)とした。
(3)引張試験
得られた鋼板から、日本海事協会 鋼船規則を参考に、引張方向が圧延方向Lまたは圧延方向に直交する方向Tとなるように引張試験片を採取し、JIS Z 02241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(上降伏点または0.2%耐力YS、引張強さTS、伸びEl)を求めた。なお、引張試験片は板厚40mm以下の鋼板では全厚で採取したU1号試験片を、板厚40mm超えの鋼板では板厚/4位置から採取したU14A号試験片を、それぞれ用いた。
(4)衝撃試験
得られた鋼板から、日本海事協会 鋼船規則を参考に、試験片長さ方向が圧延方向Lでき裂進展方向が圧延方向に直交する方向Tとなるように、または、試験片長さ方向が圧延方向に直交する方向Tでき裂進展方向が圧延方向Lとなるように、衝撃試験片を採取し、JIS Z 02242の規定に準拠して試験温度:0℃でシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギーvE(J)を求め、靭性を評価した。なお、試験片本数は各3本とし、それらの平均吸収エネルギー値を求めた。衝撃試験片は、板厚20mm未満では、板厚1/2位置を中心とし、板厚20mm以上では板厚1/4位置を中心としてU4号シャルピー2mmV切欠き試験片を採取した。
(5)硬さ試験
(1)で用いた組織観察試験片を硬さ測定試験片として、各相について、粒界間や相境界間の距離が圧痕の4倍以上となるように荷重を調整して、ビッカース硬さHvを測定した。硬さ測定は、各相につき5点以上測定し、それらの平均値を各相の硬さ(Hv)とした。なお、厚さ測定面は組織観察面と同じとした。
(6)溶接性試験
得られた鋼板から、JIS Z 3158の規定に準拠して、y形溶接割れ試験片を採取し、予熱温度を25℃とし、気温:20℃、湿度:60%の溶接雰囲気中で、MAG溶接(入熱14kJ/cm)するy形溶接割れ試験を実施し、割れの発生の有無を調査した。割れが生じなかった場合を○、それ以外の場合を×として評価した。
得られた結果のうち、引張特性、靭性、溶接性の結果を表3に示す。なお、表3には代表的な組織を示す板厚1/4位置z面での組織観察結果を併記した。
Figure 2015127447
また、複合組織における有効組織単位MUeffは、組織観察結果とビッカース硬さ測定結果を用いて、(2)式により算出した。なお、ベイナイト相やマルテンサイト相が面積割合で0.5を超える(面積%で50%超える)場合には、フェライト相が主相である場合と同様に複合則を用いた次式により算出した。
MUeff=(AR)×(D+(AR)α×(Dα×{(Hv)α/(Hv)}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)}‥‥(9)
MUeff=(AR)×(D+(AR)α×(Dα×{(Hv)α/(Hv)}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)}‥‥(10)
得られたMUeffの結果を、組織観察結果とビッカース硬さ測定結果とともに表4に示す。
Figure 2015127447
Figure 2015127447
また、実施した疲労き裂伝ぱ試験の条件から、(1)式を用いて、き裂先端塑性域寸法γp *を算出した。ここで、KImaxは、応力拡大係数範囲ΔKIと応力比Rから、KImax=ΔKI/(1-R)で算出できる。降伏応力σYは、引張試験で得られた値を用いた。CT試験片T−Lの場合には、幅方向(圧延方向に直交する方向)Tの降伏強さYSを、CT試験片L−Tと三点曲げ試験片L−Zでは、圧延方向Lの降伏強さYSを用いた。
γp *、γp */MUeffとの算出結果と疲労き裂伝ぱ速度の測定結果を表5に示す。
Figure 2015127447
Figure 2015127447
本発明例はいずれも、面積率で50%を超えるフェライトを主相とし、該主相と残部硬質相とからなる組織を有し、降伏点:315MPa以上の高強度と、吸収エネルギーvE:31J以上の高靭性とを有し、さらにy形溶接割れ試験でも溶接割れの発生もなく溶接性にも優れ、かつMUeffが150(μm)以下で、少なくともΔKI=15MPa√m、ΔKI=20MPa√mでγ*が250(μm)以下で、γ*/MUeffが10以下を満足し、疲労き裂伝ぱ速度da/dNが、少なくともΔKI=15MPa√mで目標値である1.75×10-8(m/cycle)以下、ΔKI=20MPa√mで目標値である4.26×10-8(m/cycle)以下と低減しており、耐疲労き裂伝ぱ特性が向上した高強度鋼材となっている。
一方、本発明範囲を外れる比較例は、強度、靭性、溶接性のいずれかが低下しているか、あるいはγ*/MUeffが10を超えて、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。
鋼板No.A11(比較例)は、C等が本発明範囲を高く外れ、靭性、溶接性が低下するとともに、組織がベイナイト単相となり本発明範囲から外れ、かつΔKI=20MPa√mの場合にγ*/MUeffが10を超えて耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.A12(比較例)は、P、Sが本発明範囲を高く外れ、延性、靭性が低下している。また、鋼板No.A13(比較例)は、C、Mnが本発明範囲を低く外れ、強度(降伏点YSまたは0.2%耐力YS)が目標値を確保できていないため、ΔKI=15MPa√mでγ*が250μmを超え、ΔKI=20MPa√mの場合にγ*/MUeffが10を超え、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.A14(比較例)は、加熱温度が高く、組織が粗大化してMUeffが150μmを超え、そのため降伏強さが目標値を確保できず、また靭性が低下している。また、鋼板No.A15(比較例)は、加熱温度が低くかつ900℃以上の累積圧下率が低いため、オーステナイト粒が粗大化し焼入れ性が向上して組織がベイナイト単相となり、かつMUeffが150μmを超え、そのため靭性が低下し、さらにΔKI=20MPa√mの場合にγ*/MUeffが10を超え、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.A16(比較例)は、圧延仕上温度が低く、加速冷却がフェライト、パーライトの生成完了後であったため、加速冷却によるフェライトの微細化、第二相強化が得られず、降伏強さが目標値を確保できていない。このため、ΔKI=15MPa√mの場合にγ*/MUeffが10を超え、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.A17(比較例)は、熱間圧延後の冷却速度が遅く、加速冷却によるフェライトの微細化、第二相強化が得られず、降伏強さが目標値を確保できていない。このため、ΔKI=20MPa√mの場合にγ*/MUeffが10を超え、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.A18(比較例)は、圧延後の冷却停止温度が高く、加速冷却によるっフェライトの微細化、第二相強化が得られず、降伏強さが目標値を確保できていない。このため、ΔKI=20MPa√mの場合にγ*/MUeffが10を超え、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.A19(比較例)は、焼戻温度が高く、MAが、多量に生成したため、靭性が低下している。
(実施例2)
得られた鋼素材(鋼No.A,B,E,G,I,N,O,P,Q,R)に、製法Bとして、表6に示す条件で加熱、熱間圧延、圧延後冷却し、板厚12〜100mmの鋼板とした。なお、圧延後冷却は、第1段加速冷却と緩冷却と第2段加速冷却からなる3段冷却、緩冷却と加速冷却からなる2段冷却、あるいは加速冷却のみ、緩冷却のみの1段冷却とした。一部の鋼板には熱処理(焼戻処理)を施した。
Figure 2015127447
得られた鋼板から、試験片を採取し、疲労き裂伝ぱ試験、組織観察、引張試験、衝撃試験、硬さ試験、溶接性試験を実施した。試験方法は、実施例1と同様にした。
得られた結果のうち、引張特性、靭性、溶接性の結果を表7に示す。
Figure 2015127447
また、得られたMUeff結果を、組織観察結果とビッカース硬さ測定結果とともに表8に示す。
Figure 2015127447
Figure 2015127447
また、γp *、γp */MUeffとの算出結果と疲労き裂伝ぱ速度の測定結果を表9に示す。
Figure 2015127447
Figure 2015127447
本発明例はいずれも、面積率で50%を超えるフェライトを主相とし、該主相と残部硬質相とからなる組織を有し、降伏点:315MPa以上の高強度と、吸収エネルギーvE:31J以上の高靭性とを有し、さらにy形溶接割れ試験でも溶接割れの発生もなく溶接性にも優れ、かつMUeffが150(μm)以下で、少なくともΔKI=15MPa√m、ΔKI=20MPa√mでγ*が250(μm)以下で、γ*/MUeffが10以下を満足し、疲労き裂伝ぱ速度da/dNが、少なくともΔKI=15MPa√mで目標値である1.75×10-8(m/cycle)以下、ΔKI=20MPa√mで目標値である4.26×10-8(m/cycle)以下と低減しており、耐疲労き裂伝ぱ特性が向上した高強度鋼材となっている。製造方法を代えても、本発明例はいずれも、耐疲労き裂伝ぱ特性が向上した高強度鋼材となっている。
一方、本発明範囲を外れる比較例は、強度、靭性、溶接性のいずれかが低下しているか、あるいはγ*/MUeffが10を超えて、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。
鋼板No.B30(比較例)は、鋼素材の加熱温度が高く、オーステナイト粒の微細化が図れず、熱間圧延、加速冷却を適正に行ってもフェライト相が粗大化し、降伏点YSが315MPa未満と所望の高強度を確保できていない。また、ΔKI=20MPa√m以上でγ*が250μmを超え、γ*/MUeffが10を超えて、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。加えて、靭性も低下している。また、鋼板No.B31(比較例)は、鋼素材の加熱温度が低く、また、900℃以上の累積圧下率が低く、オーステナイト粒の細粒化が図れず、得られるフェライト相が粗大化し、降伏点YSが315MPa未満と所望の高強度を確保できていない。また、靭性も低下している。また、ΔKI=20MPa√m以上で、γ*/MUeffが10を超えて、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.B32(比較例)は、熱間圧延の仕上温度が低く、加速冷却がフェライト生成、パーライト析出完了後となるため、加速冷却によるフェライトの微細化や、第二相強化が得られず、降伏点YSが315MPa未満と所望の高強度を確保できていない。また、ΔKI=20MPa√m以上で、γ*/MUeff が10を超えて、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。
また、鋼板No.B33(比較例)は、熱間圧延後の冷却に、冷却速度:5℃/s未満の緩冷却を実施せず、加速冷却のみとしたため、組織がベイナイト単相となり、ΔKI=20MPa√m以上で、γ*/MUeffが10を超えて、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.B34(比較例)は、熱間圧延後に加速冷却を行わなかったので、フェライトの微細化、第二相強化が得られず、降伏点YSが315MPa未満と所望の高強度を確保できていない。また、ΔKI=20MPa√m以上で、γ*/MUeffが10を超えて、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.B35(比較例)は、焼戻温度が高温であるため、MAが多量に生成し、靭性が低下している。
(実施例3)
得られた鋼素材(鋼No.C,F,I,J,P)に、製法Cとして、表10に示す条件で加熱、熱間圧延、圧延後冷却し、板厚12〜100mmの鋼板としたのち、表10に示す条件で再加熱し、ついで種々の冷却速度で冷却する熱処理を行った。なお、一部の鋼板には熱処理(焼戻処理)を施した。
Figure 2015127447
得られた鋼板から、試験片を採取し、疲労き裂伝ぱ試験、組織観察、引張試験、衝撃試験、硬さ試験、溶接性試験を実施した。試験方法は、実施例1と同様にした。
得られた結果のうち、引張特性、靭性、溶接性の結果を表11に示す。
Figure 2015127447
また、得られたMUeff結果を、組織観察結果とビッカース硬さ測定結果とともに表12に示す。
Figure 2015127447
また、γp *、γp */MUeffとの算出結果と疲労き裂伝ぱ速度の測定結果を表13に示す。
Figure 2015127447
本発明例はいずれも、面積率で50%を超えるフェライトを主相とし、該主相と残部硬質相とからなる組織を有し、降伏点:315MPa以上の高強度と、吸収エネルギーvE:31J以上の高靭性とを有し、さらにy形溶接割れ試験でも溶接割れの発生もなく溶接性にも優れ、かつMUeffが150(μm)以下で、少なくともΔKI=15MPa√m、ΔKI=20MPa√mでγ*が250(μm)以下で、γ*/MUeffが10以下を満足し、疲労き裂伝ぱ速度da/dNが、少なくともΔKI=15MPa√mで目標値である1.75×10-8(m/cycle)以下、ΔKI=20MPa√mで目標値である4.26×10-8(m/cycle)以下と低減しており、耐疲労き裂伝ぱ特性が向上した高強度鋼材となっている。製造方法を代えても、本発明例はいずれも、耐疲労き裂伝ぱ特性が向上した高強度鋼材となっている。
一方、本発明範囲を外れる比較例は、強度、靭性、溶接性のいずれかが低下しているか、あるいはγ*/MUeffが10を超えて、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。
鋼板No.C41(比較例)は、熱間圧延終了後水冷したため、フェライト相を主相とする組織が得られず、ΔKI=15MPa√m以上で、γ*/MUeffが10を超えて、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.C42(比較例)は、再加熱温度がAc3変態点を超えて高温であったため、マルテンサイト単相組織となり、ΔKI=15MPa√m以上で、γ*/MUeffが10を超えて、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.C43(比較例)は、再加熱後の冷却が遅いため、フェライトの微細化、第二相強化が得られず、降伏点YSが315MPa未満と所望の高強度が得られず、ΔKI=15MPa√m以上で、γ*/MUeffが10を超えて、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.C44(比較例)は、再加熱後の冷却における冷却停止温度が高く、降伏点YSが315MPa未満と所望の高強度が得られず、ΔKI=20MPa√m以上で、γ*/MUeffが10を超えて、耐疲労き裂伝ぱ特性が低下している。また、鋼板No.C45(比較例)は、焼戻温度が高温であるため、MAが多量に生成し、靭性が低下している。
(実施例4)
表14に示す組成を有し、常用の熱間圧延、圧延後冷却、熱処理等を施され、表15に示す組織と強度とを有する鋼板(板厚:12〜100mm)について、耐疲労き裂伝ぱ特性を判定した。
対象とする鋼板の板厚1/4位置において、実施例1と同様に、組織観察、ビッカース硬さ測定を行って、組織を構成する各相の面積割合(AR)、各相の疲労き裂進展方向における結晶粒単位(DP)、各相の平均ビッカース硬さ(HV)を求めた。得られた結果を表16に示す。なお、疲労き裂伝ぱ試験は、板厚方向にき裂が進展する図6に示す三点曲げ試験片L−Zのみを用いて行った。そのため、組織観察、硬さ測定は圧延方向断面(図2に示すx−y平面)のみとした。
Figure 2015127447
Figure 2015127447
Figure 2015127447
得られた組織観察結果とビッカース硬さ測定結果を用いて、(2)式により有効組織単位MUeffを算出した。また、(1)式で定義されるき裂先端塑性域寸法γp *(μm)を算出した。得られた結果を表17に示す。なお、(1)式を用いて、γp *を算出するにあたっては、KImaxは、ΔKI=15MPa√m、ΔKI=20MPa√m、ΔKI=25MPa√mを、Rは0.1を使用して算出した。
Figure 2015127447
少なくともΔKI=15MPa√mおよびΔKI=20MPa√mの場合に、γ*/MUeffが10以下であれば、耐疲労き裂伝ぱ特性が優れる鋼板と判定した。それ以外は耐疲労き裂伝ぱ特性が劣ると判定した。
この判定は、別途、疲労き裂伝ぱ試験を行い整合性を確認している。疲労き裂伝ぱ試験は、対象鋼板から、図6に示すように三点曲げ試験片L−Zを採取した。疲労き裂伝播試験の試験方法は実施例1と同様とした。なお、鋼板板厚25mm以下の場合には試験片厚さは鋼板全厚とし、鋼板板厚25mm超〜50mm以下の場合には、鋼板片面を研削してZ方向厚さを25mm厚とした片面減厚試験片とした。また、鋼板板厚50mm超の場合には、鋼板両面を研削して板厚1/4位置が中心となるZ方向厚さが25mm厚の両面減厚試験片とした。得られた疲労き裂伝ぱ速度を表17に併記した。
耐疲労き裂伝ぱ特性が優れると判定した鋼板は、いずれも、疲労き裂伝ぱ速度da/dNが、少なくともΔKI=15MPa√mで目標値である1.75×10-8(m/cycle)以下、ΔKI=20MPa√mで目標値である4.26×10-8(m/cycle)以下と低減している。一方、耐疲労き裂伝ぱ特性が劣ると判定した鋼板は、疲労き裂伝ぱ速度da/dNが、上記した目標値を超えて大きくなっていた。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎの通りである。
(1)質量%で、C:0.02〜0.4%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.10%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成と、板厚1/4位置において、面積率で50%を超えるフェライトを主相とし、該主相と残部硬質相とからなる組織とを有し、降伏点:315MPa以上の高強度とシャルピー衝撃試験における試験温度:0℃での吸収エネルギーvEが31J以上の高靭性とを有し、次(1)式
γ*={(KImax×10/(2πσ )}×(1−2ν) ‥‥(1)
ここで、KImax:モードIの最大応力拡大係数で、5〜35の範囲内の値(MPa√m)、σ:降伏応力(MPa)、ν:ポアソン比
で定義されるき裂先端塑性域寸法γp *(μm)と、次(2)式
MUeff=(AR)α×(Dα+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}‥‥(2)
ここで、(AR)α、(AR)、(AR)、(AR):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の面積割合(0〜1)、
(Dα、(D、(D、(D:フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相のき裂進展方向における組織単位(μm)、
(Hv)α、(Hv)、(Hv)、(Hv):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の平均ビッカース硬さ
で定義されるき裂進展方向における有効組織単位MUeff(μm)とが、次(3)〜(5)式
γ*/MUeff ≦ 10 ‥‥(3)
γ* ≦ 250 ‥‥(4)
MUeff ≦ 150 ‥‥(5)
を満足することを特徴とする耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:3.0%以下、Ni:10%以下、Cr:3.0%以下、Mo:2.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度鋼材。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする高強度鋼材。
(4)フェライトが面積率で50%を超え、残部が硬質相からなる組織を有し、降伏点:315MPa以上の高強度を有する高強度鋼材を対象とし、該対象とする高強度鋼材について、組織観察、ビッカース硬さ測定を行って、想定する疲労き裂進展方向における組織を構成する各相の面積割合(AR)、各相の組織単位(DP)、各相の平均ビッカース硬さ(HV)を求め、次(1)式
γ *={(K Imax ×10 /(2πσ )}×(1−2ν) ‥‥(1)
ここで、K Imax :モードIの最大応力拡大係数で、5〜35の範囲内の値(MPa√m)、σ :降伏応力(MPa)、ν:ポアソン比(=0.3)
で定義されるき裂先端塑性域寸法γ p * (μm)、次(2)式
MU eff =(AR) α ×(D α +(AR) ×(D ×{(Hv) /(Hv) α }+(AR) ×(D ×{(Hv) /(Hv) α }+(AR) ×(D ×{(Hv) /(Hv) α }‥‥(2)
ここで、(AR) α 、(AR) 、(AR) 、(AR) :フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の面積割合(0〜1)、
(D α 、(D 、(D 、(D :フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相のき裂進展方向における組織単位(μm)、
(Hv) α 、(Hv) P 、(Hv) 、(Hv) :フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の平均ビッカース硬さ
で定義されるき裂進展方向における有効組織単位MU eff (μm)を算出して、γ p * /MU eff で整理し、耐疲労き裂伝ぱ特性を判定することを特徴とする耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材の判定方法。
)フェライトが面積率で50%を超え、残部が硬質相からなる組織を有し、降伏点:315MPa以上の高強度を有する高強度鋼材を対象とし、該対象とする高強度鋼材について、組織観察、ビッカース硬さ測定を行って、想定する疲労き裂進展方向における組織を構成する各相の面積割合(AR)、各相の組織単位(DP)、各相の平均ビッカース硬さ(HV)を求め、次(1)式
γ*={(KImax×10/(2πσ )}×(1−2ν) ‥‥(1)
ここで、KImax:モードIの最大応力拡大係数で、5〜35の範囲内の値(MPa√m)、σ:降伏応力(MPa)、ν:ポアソン比(=0.3)
で定義されるき裂先端塑性域寸法γp *(μm)、次(2)式
MUeff=(AR)α×(Dα+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}‥‥(2)
ここで、(AR)α、(AR)、(AR)、(AR):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の面積割合(0〜1)、
(Dα、(D、(D、(D:フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相のき裂進展方向における組織単位(μm)、
(Hv)α、(Hv)P、(Hv)、(Hv):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の平均ビッカース硬さ
で定義されるき裂進展方向における有効組織単位MUeff(μm)を算出して、次(3)〜(5)式
γ*/MUeff ≦ 10 ‥‥(3)
γ* ≦ 250 ‥‥(4)
MUeff ≦ 150 ‥‥(5)
を満足する場合を耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材と判定することを特徴とする耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材の判定方法。
)(4)または(5)において、前記鋼材が、質量%で、C:0.02〜0.4%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Sol.Al:0.10%以下を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする高強度鋼材の判定方法。
)()において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:3.0%以下、Ni:10%以下、Cr:3.0%以下、Mo:2.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする高強度鋼材の判定方法。
(8)()または()において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする高強度鋼材の判定方法。
C:0.02〜0.4%
Cは、強度を増加させる元素であり、所望の高強度を確保するためには、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.4%を超える含有は、溶接性を阻害する。このため、Cは、0.02〜0.4%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.35%である。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C :0.02〜0.4%、 Si:0.01〜1.0%、
    Mn:0.5〜3.0%、 P :0.05%以下、
    S :0.05%以下、 Sol.Al:0.10%以下
    を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成と、
    板厚1/4位置において、面積率で50%を超えるフェライトを主相とし、該主相と残部硬質相とからなる組織とを有し、降伏点:315MPa以上の高強度と、シャルピー衝撃試験における試験温度:0℃での吸収エネルギーが31J以上の高靭性とを有し、
    下記(1)式で定義されるき裂先端塑性域寸法γp *(μm)と、下記(2)式で定義されるき裂進展方向における有効組織単位MUeff(μm)とが、下記(3)〜(5)式を満足することを特徴とする耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材。

    γ*={(KImax×10/(2πσ )}×(1−2ν) ‥‥(1)
    ここで、KImax:モードIの最大応力拡大係数で、5〜35の範囲内の値(MPa√m)、σ:降伏応力(MPa)、ν:ポアソン比
    MUeff=(AR)α×(Dα+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}‥‥(2)
    ここで、(AR)α、(AR)、(AR)、(AR):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の面積割合(0〜1)、
    (Dα、(D、(D、(D:フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相のき裂進展方向における組織単位(μm)、
    (Hv)α、(Hv)、(Hv)、(Hv):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の平均ビッカース硬さ
    γ*/MUeff ≦ 10 ‥‥(3)
    γ* ≦ 250 ‥‥(4)
    MUeff ≦ 150 ‥‥(5)
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:3.0%以下、Ni:10%以下、Cr:3.0%以下、Mo:2.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼材。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼材。
  4. フェライトが面積率で50%を超え、残部が硬質相からなる組織を有し、降伏点:315MPa以上の高強度を有する高強度鋼材を対象とし、
    該対象とする高強度鋼材について、組織観察、ビッカース硬さ測定を行って、想定する疲労き裂進展方向における組織を構成する各相の面積割合(AR)、各相の組織単位(DP)、各相の平均ビッカース硬さ(HV)を求め、下記(1)式で定義されるき裂先端塑性域寸法γp *(μm)、下記(2)式で定義されるき裂進展方向における有効組織単位MUeff(μm)を算出して、下記(3)〜(5)式を満足する場合を耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた鋼材と判定することを特徴とする耐疲労き裂伝ぱ特性に優れた高強度鋼材の判定方法。

    γ*={(KImax×10/(2πσ )}×(1−2ν) ‥‥(1)
    ここで、KImax:モードIの最大応力拡大係数で、5〜35の範囲内の値(MPa√m)、σ:降伏応力(MPa)、ν:ポアソン比(=0.3)
    MUeff=(AR)α×(Dα+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}+(AR)×(D×{(Hv)/(Hv)α}‥‥(2)
    ここで、(AR)α、(AR)、(AR)、(AR):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の面積割合(0〜1)、
    (Dα、(DP、(D、(D:フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相のき裂進展方向における組織単位(μm)、
    (Hv)α、(Hv)P、(Hv)、(Hv):フェライト(α)、パーライト(P)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、各相の平均ビッカース硬さ
    γ*/MUeff ≦ 10 ‥‥(3)
    γ* ≦ 250 ‥‥(4)
    MUeff ≦ 150 ‥‥(5)
  5. 前記鋼材が、質量%で、
    C :0.02〜0.4%、 Si:0.01〜1.0%、
    Mn:0.5〜3.0%、 P :0.05%以下、
    S :0.05%以下、 Sol.Al:0.10%以下
    を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項4に記載の高強度鋼材の判定方法。
  6. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:3.0%以下、Ni:10%以下、Cr:3.0%以下、Mo:2.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載の高強度鋼材の判定方法。
  7. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項5または6に記載の高強度鋼材の判定方法。
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