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JP2014161520A - インプラントおよびその製造方法 - Google Patents

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太郎 岡田
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Abstract

【課題】骨組織等に埋入される表面を粗面化した高生体親和性のインプラントの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のインプラントの製造方法は、チタン(Ti)を含む金属からなるチタン系基材の被処理面へ少なくともショットブラスト加工を行い被処理面を微細な凹凸状の下地面とする下地加工工程と、このチタン系基材を陽極(アノード)として電解液中に浸漬された下地面へ通電することにより下地面から金属を溶出させて被処理面を多数の気孔が分布した多孔質面とする溶出工程と、を備えることを特徴とする。この際、溶出工程は、電解液に食塩水を用いる工程であると好ましい。また溶出工程は、電流密度が0.25〜0.55A/cmである通電を行う工程であると好ましい。
【選択図】図2C

Description

本発明は、骨組織に埋入等される表面を粗面化した高生体親和性のインプラントおよびその製造方法に関する。
損耗した人工骨や人工関節などの代替として、種種のインプラントを生体組織(特に骨組織)内に埋入(特に埋植)することが行われている。正常な骨組織内にチタン合金等からなるインプラントを埋植させる場合、一定期間(例えば3カ月)程度で骨組織とインプラントが一体的に結合すること、つまり生着することが必要となる。具体的には、移植手術をしてから一定期間が経過した際に、骨組織がインプラントと癒着し、インプラントが骨組織に対してぐらつかず、抜け等に対して十分な抵抗力(結合強度)が得られることが必要となる。
このような結合強度を高めるために、骨組織へ埋植されるインプラントの表面は粗面化されることが多い。これに関連する記載が例えば、下記の特許文献にある。
特許3047373号公報 特開平9−327472号公報
特許文献1は、表面に2μm以下の大きさのミクロ粗孔を形成することを推奨しており、その形成方法としてフッ酸等の強い腐食性酸によるエッチングを挙げている。特許文献2も特有な微細構造をした表面を形成することを推奨しており、その方法としてマスキング、レーザー照射、エッチング等を組み合わせる方法を挙げている。もっとも、このような方法は、廃液処理、生産工程、生産設備等の観点から手軽に行うことができない。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、簡易な方法でありながら、生体親和性に優れる所望の粗面を埋入する表面に形成できるインプラントの製造方法と、その製造方法により得られた高生体親和性のインプラントを提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、ショットブラスト加工した加工面に対して電解処理を行うことにより、高結合強度の粗面を簡易に形成し得ることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《インプラントの製造方法》
(1)本発明は、チタン(Ti)を含む金属からなるチタン系基材の被処理面へ少なくともショットブラスト加工を行い該被処理面を微細な凹凸状の下地面とする下地加工工程と、該チタン系基材を陽極(アノード)として電解液中に浸漬された該下地面へ通電することにより該下地面から前記金属を溶出させて該被処理面を多数の気孔が分布した多孔質面とする溶出工程と、を備えることを特徴とするインプラントの製造方法である。
(2)本発明に係る下地加工工程は一般的に多用されているショットブラスト加工により行うことができ、また溶出工程も電気分解と同様な装置・設備、工程等により行うことができる。従って本発明の製造方法は実施が容易である。
また本発明に係る下地加工工程では、投射材(メディア)、投射速度、投射時間等を変更することによりショットブラスト加工条件を容易に調整でき、ひいては下地面の表面状態を幅広く制御できる。また、溶出工程でも、電解液の濃度や種類、印加電圧等を変更することにより処理条件(適宜「電解条件」という。)を容易に調整できる。従って、下地加工工程で形成された下地面の表面状態を踏まえて、その電解条件を適切に設定すれば、所望する表面状態の多孔質面を均一的に形成できる。このように本発明の製造方法によれば、単に各工程の実施が容易であるのみならず、それら各工程を経て得られる多孔質面の表面状態の制御も容易であり、マスキングパターンを要すること無く所望する状態に粗面化した多孔質面を有するインプラントを効率的に低コストで製造することができる。
(3)本発明の製造方法により優れた多孔質面が形成されるメカニズムは、現状では次のように考えられる。図1Aに示すように、下地加工工程によりチタン系基材の表面(下地面)は、ミクロ的に観ると、元の素材表面を一部残しつつ、塑性変形や切削等により微小な凹部が形成(または導入)された状態となっている。この下地面を陽極側にして電解処理を行うと、図1Bに示すように、その凹部が起点となり、その部分で容易に酸化還元反応が生じるようになる。こうしてチタン系基材中の構成元素がイオン化して電解液中に溶出する。例えば、チタン合金基材の構成元素であるチタンなら、Ti→Ti4+ + 4e の反応を生じて、Ti4+ が電解液中に溶出し、eは陰極側の電極へ移動する。なおTi4+として溶出する際に、例えば、電解液中の塩化物イオンと反応して一時的にTiClという中間生成物に変化するが、これは非常に反応性が高く、直ぐにHOと反応してゲル状物質であるTi(OH)xに変化して、全て電解処理槽の底に沈殿する。このような反応が繰り返されることにより、下地面の表面に形成された微細な凹部周辺に、ほぼ円状の気孔が形成、発達する。こうして下地面は多孔質面へ変化すると考えられる。
なお、下地面の微細な凹部が多孔質面の気孔の起点となるのは、ショットブラスト加工等によりその凹部に結晶欠陥等の表面欠陥が生じたためと考えられる。通常なら、チタン合金基材は、強固な酸化皮膜(TiO)からなる不動態皮膜により被覆されており、食塩水中等でも腐食しない。しかし、このような耐食性に優れるチタン系基材でも、ショットブラスト加工による下地処理を行うと、食塩水等を電解液として比較的低い電圧を印加する程度で、その表面からTi等が容易に溶出するようになった。こうして本発明の製造方法によれば、上述したような高生体親和性を発揮する多孔質面が簡易に得られるようになったと考えられる。
《インプラント》
本発明はインプラントの製造方法としてのみならず、その製造方法により得られたインプラント自体としても把握できる。この本発明のインプラントは、多孔質面の形態が適切に制御されることにより、骨組織に埋入等されると、短期間で生体組織と癒着し、十分な結合強度ひいては高生着率を発揮する。
《その他》
特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
下地加工工程後に形成される下地面の表面状態を示す模式図である。 溶出工程により多孔質面が形成される過程を説明する説明図である。 電解処理前の被処理面(鏡面)の表面状態と、その電解処理後の表面状態を示す光学顕微鏡写真である。 電解処理前の被処理面(切削面)の表面状態と、その電解処理後の表面状態を示す光学顕微鏡写真である。 電解処理前の被処理面(ショット面)の表面状態と、その電解処理後の表面状態を示す光学顕微鏡写真である。 下地面の表面粗さが多孔質面の表面状態に及ぼす影響を示す光学顕微鏡写真である。 NaCl濃度を2.0%としたときに電流密度(印加電圧)が多孔質面の表面状態に及ぼす影響を示す光学顕微鏡写真である。 NaCl濃度を3.5%としたときに電流密度(印加電圧)が多孔質面の表面状態に及ぼす影響を示す光学顕微鏡写真である。 NaCl濃度を5.0%としたときに電流密度(印加電圧)が多孔質面の表面状態に及ぼす影響を示す光学顕微鏡写真である。 種種のNaCl濃度に対して、印加電圧と電流密度の関係を示すグラフである。 種種のNaCl濃度に対して、電流密度の時間変化を示すグラフである。 印加電圧を12VとしたときにNaCl濃度が多孔質面の表面状態に及ぼす影響を示す光学顕微鏡写真である。
本明細書で説明する内容は、本発明の製造方法のみならず、それにより得られたインプラントにも該当し得る。製造方法に関する構成要素は、プロダクトバイプロセスクレームとして理解すれば物に関する構成要素ともなり得る。そして上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《チタン系基材》
本発明に係るチタン系基材は、Tiを含む金属である限り具体的な組成を問わず、本発明の作用効果が得られる限りTiが主成分でなくてもよい。もっとも、インプラント用のチタン系基材は、通常、純チタンまたはチタン合金Tiからなる。チタン合金は、Al:5〜7質量%Al、V:3〜5質量%、Ti:残部などのα+β型チタン合金の他、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)等を比較的多く含む低ヤング率なβ型チタン合金でもよい。また、Tiが主成分でない場合として、本発明に係るチタン合金基材はTiを含むニオブ合金(Nbが主成分)などでもよい。なお、チタン合金基材は、溶製材でも焼結材でもよい。
《下地加工工程》
下地加工工程は、チタン系基材の被処理面へ少なくともショットブラスト加工を行い、被処理面の表面を微細な凹凸状の下地面とする工程である。ショットブラストの加工条件は適宜選択される。例えば、投射材は砂、金属粒、ビーズ等でもよい。また投射方法は遠心式(機械式)、エアー式等いずれでもよい。その他、投射速度、投射時間、投射角、投射密度等も適宜調整され得る。
ショットブラスト加工の程度は、一般的には、アークハイト、カバレージ、表面粗さ、残留応力等により評価されるが、本発明では加工後の下地面の表面粗さが特に重要である。表面粗さの相違により、後工程である溶出工程における溶出形態が異なり、ひいては多孔質面の表面状態が異なる。もっとも、多孔質面の表面状態は、チタン合金基材の組成や溶出工程の処理条件等の影響も受けるため、好ましい下地面の表面粗さを一概に特定することは困難である。敢えていうと、例えば、算術平均粗さRa(JIS)が1.2μm以下さらには1μm以下であるか、最大高さRzmax(JIS)が12μm以下さらには10μm以下であると好ましい。
またショットブラスト加工の前工程は特に問わない。もっともインプラントは一般的に高精度が要求されるため、チタン合金基材(素材)に対して機械加工がなされる。従って多孔質面を形成する被処理面も機械加工(特に切削加工)されたものであることが多い。そこで下地加工工程は、切削加工をした被処理面へショットブラスト加工を行う工程であってもよい。このような切削加工が予めなされていると、被処理面に表面欠陥が導入され易く、その部分が溶出突起となって、良好な多孔質面が形成され易い。なお、切削加工は、チタン合金基材(インプラント)の形状や所望する形成面の状態により適宜選択され、例えば、旋盤加工、フライス加工、エンドミル加工、形削加工、平削加工等がある。
《溶出工程》
溶出工程は、チタン系基材を陽極(アノード)として、電解液中に浸漬された下地面へ通電することにより、その下地面からTi等の金属を溶出させて多数の気孔が分布した多孔質面を形成する工程である。
一般的な電気分解は不溶性電極を用いて電解液中の化合物を分解するが、本発明に係る溶出工程では陽極電極としたチタン合金基材の一部(下地面)を溶解させている。この点で本発明に係る溶出工程は、一般的な電気分解工程とは異なる。もっとも、本発明に係る溶出工程は、通常の電気分解を行う方法(工程)、装置や設備等により行えるので、本明細書では溶出工程に係る処理を適宜、電気分解または電解処理という。
溶出工程に係る重要なパラメータとして、電解液の種類、濃度、印加電圧、電流密度などが考えられる。もっとも、チタン合金基材の表面に形成される気孔の大きさや深さ等は、その表面から溶出するTi等の溶出量に関わり、この溶出量はファラデーの電気分解の法則から通電量に依る。そして通常、被処理面に均一的に分布した多孔質面が形成されることが好ましい。これらのことから、電流密度とその処理時間を、溶出工程における重要な指標とすると好適である。
本発明者の研究によれば、均一的な多孔質面を形成し易い範囲の電流密度は0.25〜0.55A/cmさらには0.35〜0.5A/cmであると好ましい。電流密度が過小では、多孔質面が効率的に形成されず、電流密度が過大では発熱等が過大となり、また多孔質面を構成する気孔の形状が歪み、均質的な多孔質面の形成が困難となる。
電流密度が上記の範囲内にある場合、溶出工程の処理時間は5〜30分間さらには10〜20分間程度とすると好ましい。処理時間が過小では多孔質面の形成が不十分であり、処理時間が過大では、多孔質面を構成する気孔が連なり、均質的な多孔質面の形成が困難となる。
溶出工程で用いる電解液には塩化物イオンの存在が必要であるが、上述した電流密度が得られる限り、溶質の種類は問わない。もっとも食塩水(NaCl水溶液)が、生体用インプラントの製造に用いる電解液として好適であり、低コストで廃液処理も容易である。なお、電解液に食塩水を用いる場合、その濃度(NaCl濃度)を0.5〜10%、1〜5%、1.5〜4%さらには2.0〜3.5%とし、印加電圧を10〜20V、11〜18Vさらには12〜15Vとすると好ましい。また、塩化マグネシムや塩化カリウムその他の塩化物塩水溶液でも同様の処理が可能である。
《用途》
本発明のインプラントは、その種類を問わない。本発明のインプラントは、医療用、整形用、歯科用等の各種分野の各種製品に利用され、例えば、骨補強材、骨固定材、人工関節、骨折治療材、脊椎治療材、歯科治療材として用いられる。本発明のインプラントは、特に、骨組織内に埋入される人工骨用インプラントまたは人工関節用インプラントであると好ましい。
《供試材の製造》
(1)チタン系基材
市販されているチタン合金(Ti−6質量%Al−4質量%V)からなり、外径が大小異なる2種の丸棒(チタン系基材)を用意した。
(2)切削加工
各丸棒の外周を旋盤で切削して、φ16mm×100mmとφ8mm×150mmの2種類からなる丸棒を多数用意した。なお、特に断らない限り、φ8mmの丸棒を以降の供試材とした。また、各切削面の表面粗さはRa=1.5〜2.0μm、Rzmax=12.0〜16.0μmであった。
(3)ショットブラスト加工(下地加工工程)
切削加工後の丸棒の切削面(被処理面)へショットブラスト加工を施した。この加工は、50r.p.m.で回転する丸棒へ、#300ガラスビーズを圧縮空気により投射して行った(エアーブラスト加工)。ブラスト装置の投射先端部は首振り機構を有しており、供試材全体にブラスト加工が行き届くように加工した。なお、投射時間を0〜30minの間で変更することにより、ショット面(下地面)の表面粗さを調整した。
(4)電解処理(溶出工程)
上述したような切削加工およびショットブラスト加工が施された被処理面(下地面)を食塩水(NaClの水溶液)に浸漬した状態で、各供試材へ直流電圧を印加した。この際、浴槽中の食塩水(電解液)は15Lとした。また、陽極(アノード)とした供試材から約100mm離した4方向にステンレス(SUS304)製250×250mmの陰極(カソード)を配置した。食塩水の濃度(質量%)と印加電圧を調整して、被処理面を流れる電流密度(A/cm)を種々変更した。なお、電流密度は、測定された回路を流れる電流量を、食塩水に浸漬した被処理面の面積で除して求めた。ちなみに、φ8mmの供試材は食塩水中に50mm、φ16mmの供試材は食塩水中に20mm浸漬された状態とした。また、食塩水の温度はいずれも20℃とした。
《評価》
(1)被処理面の表面状態
電解処理前の被処理面の表面状態が、電解処理後の表面(多孔質面の形態)に与える影響について調査した。その結果を図2A〜2Cに示した。図2Aは鏡面(Ra=0.12μm、Rzmax=0.95μm)に電解処理を行ってできた表面を示す光学顕微鏡写真であり、図2Bは切削加工したままの面(切削面)に電解処理を行ってできた表面を示す光学顕微鏡写真であり、図2Cは切削面にショットブラスト加工した面(ショット面)に電解処理を行ってできた表面を示す光学顕微鏡写真である。なお、いずれの場合も、電解処理条件は食塩水の濃度(NaCl濃度):3.5質量%(以下、単に「%」と表す。)、印加電圧:10V(電流密度:0.25A/cm)、処理時間:10minとした。
図2A〜図2Cから、電解処理前の被処理面の表面状態が、電解処理後に形成される多孔質面の形態に大きく影響することがわかる。すなわち、図2Aに示すように、鏡面に電解処理を行うと、大きく歪んだ気孔を有する多孔質面が形成されることがわかった。また図2Bに示すように、切削面に電解処理を行うと、切削方向(旋削傷の方向)に伸びた気孔を有する表面が形成されることがわかった。これらに対して図2Cに示すように、ショット面に電解処理を行うと、小さな円状の気孔がほぼ均等に分布した表面が形成されることがわかった。これらのことから、各方向に安定した癒着性または生体親和性を発揮し得る多孔質面の形成には、ショット面に対して電解処理を行うが有効であることがわかった。
さらに、電解処理前のショット面(下地面)の表面粗さが、電解処理後に形成される多孔質面の形態に与える影響について調査した。その結果を図3に示した。図3の左端に示した光学顕微鏡写真は切削面(ショットの投射時間:0min)に電解処理を行った表面を示し、その右隣から右端に至る光学顕微鏡写真は、ショットの投射時間を順次2min、4minまたは30minとしたショット面に電解処理を行った場合である。なお、電解処理条件はいずれの場合も、NaCl濃度:2.0%、印加電圧:17.5V(電流密度:0.45A/cm)、処理時間:5minとした。
図3から、電解処理前の被処理面の表面粗さも多孔質面の形態に影響するが、ショット面に電解処理を行う限り、ほぼ均一的な多孔質面が形成されることもわかった。そして、電解処理を施すショット面の表面粗さは、Ra=1.20μm以下さらにはRa=1.0μm以下であるか、かつRzmax=12μm以下さらにはRzmax=10μm以下であると好ましいこともわかった。
(2)電解処理条件
φ16mmの供試材を用いて、ショットの投射時間を5minとしたショット面へ、印加電圧とNaCl濃度を種々変更した電解処理を行った。得られた電解処理後の表面を示す光学顕微鏡写真を図4A〜4Cに示した。なお、電解処理時間はいずれの場合も5minとした。
印加電圧とNaCl濃度が変化することにより、電解処理後に得られる多孔質面の形態も種々変化している。しかし、電流密度を指標としてみると、電流密度が0.25〜0.5A/cmさらには0.35〜0.5A/cmであるとき、電解処理後の表面は円状の気孔がほぼ均一的に分布した良好な多孔質面となることがわかる。
(3)NaCl濃度と電流密度
φ16mmの供試材を用いて、ショットの投射時間を5minとしたショット面へ、NaCl濃度を種々変更した電解処理を行った。電解処理時間:20min、印加電圧:0Vから20Vへ1V/minで上昇、という条件で電解処理を行い、得られたNaCl濃度別の印加電圧と電流密度の関係を図5Aに、次に電解処理時間:15min、印加電圧:12V一定、という条件で電解処理を行い、得られたNaCl濃度別の一定電圧下での処理時間と電流密度の関係を図5Bに示した。また、そのとき得られた多孔質面の光学顕微鏡写真を図6に示した。
図5Aおよび図5Bから、電解処理に際して、NaCl濃度を2%以上とすることにより、印加電圧が11V以上となる領域で電流密度を直線的に制御できると共に電解処理開始から短時間内に電流密度が安定することがわかる。そして図6から、そのNaCl濃度を2%以上とすることにより、円状の気孔がほぼ均一的に分布した良好な多孔質面が電解処理後に得られることがわかった。但し、NaCl濃度が4%になると、反応および発熱が激しくなり、多孔質面の形態制御が困難になることもわかった。従って電流密度でいえば、0.25〜0.55A/cmさらには0.35〜0.5A/cm程度に調整することにより、良好な多孔質面が得られ易いこともわかった。
《生体試験》
(1)試験片と埋植
前述したチタン合金からなるφ4mm×15mmの試験片(インプラント)を2種用意した。一方は、従来からインプラント製品に採用されている表面処理で、旋盤加工ののちに表面に凹凸を作ることを目的として#36ガラスビーズでショットブラスト加工された試験片(以下、これを「従来片」という。)である。この投射時間は5minとした。こうして得られた試験片の表面粗さはRa=5.0〜6.0μm、Rzmax=40〜60μmであった。なお、この試験片には電解処理は行わない。
他方の試験片(以下、これを「電解処理片」という。)は、旋盤加工ののちに#300ガラスビーズでショットブラスト加工し、さらに前述した電解処理を施したものである。電解処理も前述したように行ったが、NaCl濃度:2.0%、印加電圧:12.5V、電流密度:0.35A/cm、処理時間:20minとした。こうして得られた試験片の表面粗さはRa=50〜70μm、Rzmax=200〜250μmであった。
これら2種の試験片をそれぞれ10本用意し、各試験片をウサギの大腿骨の体躯より遠位の骨端部へ埋植した。
埋植した各試験片のうち、未処理片5本と処理片5本は、埋植してから4週間経過した時点で、各うさぎの骨から引き抜いた。その際、引張強度試験機(EZTest、株式会社島津製作所)を用いて測定した。
また、埋植した残りの試験片(未処理片5本と処理片5本)についても、埋植してから12週間経過した時点で、骨からの引抜き試験を同様に行った。こうして得られた結果(各試験片の引抜力から求めた平均値と標準偏差)を表1に示した。
(2)評価
表1から明らかなように、両者とも埋植期間の増加と共に結合強度が増加しているものの、処理片は未処理片よりも、骨組織に対する十分な結合強度を早期に発揮し得ることが明らかとなった。具体的にいうと、処理片の4週間後の結合強度は、未処理片の12週間後の結合強度よりも大きくなっている。また、12週間後の結合強度に対する4週間後の結合強度の比率を観ると、処理片では約90%に到達しているのに対して、未処理片では約60%に留まっている。
一般的に生体組織に埋入したインプラントが安定した状態(生着)となるために要する期間(生着期間)は3月程度といわれる。しかし、上述したような本発明のインプラントを用いれば、その生着期間を約1/3程度にまで大幅に短縮することが可能となる。従って本発明のインプラントによれば、インプラントの埋入に伴う治療期間の短縮、リハビリ開始時期の早期化、早期回復等を図ることができ、患者の負担を大幅に軽減することが可能となる。そして本発明の製造方法によれば、そのようなインプラントを低コストで簡易に製造することができる。

Claims (6)

  1. チタン(Ti)を含む金属からなるチタン系基材の被処理面へ少なくともショットブラスト加工を行い該被処理面を微細な凹凸状の下地面とする下地加工工程と、
    該チタン系基材を陽極(アノード)として電解液中に浸漬された該下地面へ通電することにより該下地面から前記金属を溶出させて該被処理面を多数の窪みが分布した多孔質面とする溶出工程と、
    を備えることを特徴とするインプラントの製造方法。
  2. 前記溶出工程は、電流密度が0.2〜0.8A/cm である通電を行う工程である請求項1に記載のインプラントの製造方法。
  3. 前記溶出工程は、前記電解液に食塩水を用いる工程である請求項1または2に記載のインプラントの製造方法。
  4. 前記下地加工工程は、切削加工をした前記被処理面へ前記ショットブラスト加工を行う工程である請求項1〜3のいずれかに記載のインプラントの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られたことを特徴とするインプラント。
  6. 生体内に埋入される骨補強材、骨固定材、人工関節、骨折治療材、脊椎治療材または歯科治療材である請求項5に記載のインプラント。
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