以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
まず、構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置を備えた車両の概略ブロック構成図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る車両10は、駆動源としての内燃機関であるエンジン11と、エンジン11において発生した動力を伝達する出力軸としてのクランクシャフト15と、エンジン11において発生した動力を伝達するとともに車両10の走行状態に応じて変速比を連続的に変化させるベルト式無段変速機(以下、単に「CVT:Continuously Variable Transmission」という)70を備えた変速機20と、変速機20を油圧により制御するための油圧制御装置30と、変速機20によって伝達された動力を伝達するプロペラシャフト25と、プロペラシャフト25によって伝達された動力を伝達するデファレンシャル機構40と、デファレンシャル機構40によって伝達された動力を伝達する駆動軸としてのドライブシャフト43L、43Rと、ドライブシャフト43L、43Rによって伝達された動力を用いて回転することにより車両10を駆動させる駆動輪45L、45Rと、を備えている。
さらに、車両10は、車両10全体を制御するための車両用電子制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)100を備えている。また、車両10には、クランクセンサ81と、シフトセンサ82と、駆動軸回転数センサ83と、アクセル開度センサ84と、その他図示しない各種センサが設けられている。これらセンサは、検出した検出信号を、ECU100に入力するように、ECU100と接続されている。
エンジン11は、ガソリンあるいは軽油等の炭化水素系の燃料と空気との混合気を、図示しないシリンダの燃焼室内で燃焼させることによって動力を出力する公知の動力装置により構成されている。エンジン11は、燃焼室内で混合気の吸気、燃焼および排気を断続的に繰り返すことによりシリンダ内のピストンを往復移動させ、ピストンと動力伝達可能に連結されたクランクシャフト15を回転させることにより、変速機20に動力を伝達するようになっている。なお、エンジン11に用いられる燃料は、エタノール等のアルコールを含むアルコール燃料であってもよい。
油圧制御装置30は、オイルポンプ29(図3参照)によってオイルパン28(図3参照)から汲み上げられたオイルを、ECU100によって制御される複数のソレノイド弁等により回路の切り替えおよび油圧を制御し、変速機20に出力して、変速機20を制御するようになっている。
デファレンシャル機構40は、カーブ等を走行する場合に、駆動輪45Lと駆動輪45Rとの回転数の差を許容するものである。デファレンシャル機構40は、プロペラシャフト25の回転により伝達された動力を、ドライブシャフト43L、43Rを回転させることによって駆動輪45L、45Rに伝達するようになっている。
駆動輪45L、45Rは、ドライブシャフト43L、43Rに取り付けられた金属製などのホイールと、このホイールの外周を覆うように取り付けられた樹脂製などのタイヤとを備えている。また、駆動輪45L、45Rは、ドライブシャフト43L、43Rによって伝達された動力により回転し、タイヤと路面との摩擦作用によって、車両10を駆動させるようになっている。
ECU100は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)と、固定されたデータの記憶を行うROM(Read Only Memory)と、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)と、入力インターフェース回路と、出力インターフェース回路(いずれも図示しない)と、を有している。ECU100は、さらに、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)や、通信手段などを備えていてもよい。このECU100は、車両10の制御を統括するようになっている。
例えば、ROMには、後述する本実施の形態に係る制御用プログラムなどが記憶され、記憶装置として機能するようになっている。CPUは、このROMに記憶された制御プログラムに基づいて演算処理を実行するようになっている。また、RAMは、CPUによる演算結果や、後述する各種センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するようになっている。また、不揮発性のメモリにより構成されたEEPROMやバックアップメモリなどによって、例えば、エンジン11の停止時に保存すべきデータ等を記憶するようになっている。
上記CPU、RAMおよびROMなどは、バスを介して互いに接続されるとともに、入力インターフェースおよび出力インターフェースと接続されている。入力インターフェースには、各種センサが接続されていて、これらセンサが検出した信号が入力されるようになっている。出力インターフェースには、例えば、油圧制御回路150(図3参照)を構成するソレノイド弁などが接続されており、ECU100が各種センサからの検出信号に基づいて、本実施の形態に係る各種制御を実行するようになっている。
さらに、ECU100には、クランクセンサ81と、シフトセンサ82と、駆動軸回転数センサ83と、アクセル開度センサ84と、油圧センサ89と、に接続されている。
クランクセンサ81は、クランクシャフト15の回転数を検出して、検出した検出信号をECU100に入力するようになっている。クランクセンサ81は、クランクシャフト15のクランク位置やクランク角度を検知して、エンジン回転速度の信号を検出できるクランクポジションセンサである。ECU100は、クランクセンサ81によって入力された検出信号が表すクランクシャフト15の回転数を、エンジン回転数Neとして取得する。
シフトセンサ82は、シフトレバー21が複数の切り替え位置のうちいずれの切り替え位置にあるのかを検出し、シフトレバー21の切り替え位置を表す検出信号をECU100に入力するようになっている。このシフトセンサ82は、シフトレバー21が、パーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)、ドライブ(D)、ロー(L)などの各種操作ポジションに選択されたことを検知するシフトポジションセンサである。
駆動軸回転数センサ83は、ドライブシャフト43Lまたは43Rのいずれかの回転数を検出し、ドライブシャフト43Lまたは43Rのいずれかの回転数を表す検出信号をECU100に入力するようになっている。なお、ECU100は、駆動軸回転数センサ83によって入力された上記検出信号に基づいて、車両10の走行速度を算出するようになっている。
アクセル開度センサ84は、運転者の踏み込みにより操作されるアクセルペダル88の近傍に配置され、アクセルペダル88の開度(以下、アクセル開度Accともいう)を検出するようになっている。このアクセル開度センサ84は、アクセルペダル88の踏込み量に対して直線的に出力電圧が得られるリニアタイプのアクセルポジションセンサにより構成されている。アクセル開度センサ84は、エンジン11の出力を決定するようになっており、アクセル開度Accは、運転者の加速要求を表している。
油圧センサ89は、油圧制御装置30の油圧制御回路150(図3参照)において、後述するリニアソレノイド弁141の出力圧を検出するようになっている。また、油圧センサ89は、リニアソレノイド弁141の出力圧を表す検出信号を、ECU100に入力するようになっている。
次に、変速機20の構成について、図2に基づいて説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る変速機20の構成を表す概略ブロック構成図である。
まず、エンジン11において発生した回転動力は、クランクシャフト15を介してトルクコンバータ(流体伝動装置)50に伝達されるようになっている。トルクコンバータ50に伝達された動力は、さらに、前後進切り替え機60、CVT70、減速歯車機構80を介してデファレンシャル機構40に伝達され、左右の駆動輪45L、45Rに分配されるようになっている。すなわち、CVT70および前後進切り替え機60は、エンジン11から左右の駆動輪(例えば、後輪)45L、45Rに至る動力伝達経路に設けられている。
トルクコンバータ50は、クランクシャフト15に連結された、入力回転部材としてのポンプインペラ51pと、タービンシャフト55を介して前後進切り替え機60に連結された、出力回転部材としてのタービンランナ51tとを有している。また、トルクコンバータ50は、一方向クラッチを介して非回転部材に回転可能に支持されたステータ51sを有している。
ポンプインペラ51pと、タービンランナ51tとは対向して設けられており、それぞれ、多数のブレードが備えられていて、ポンプインペラ51pとタービンランナ51tとの間で、流体の運動エネルギーにより動力伝達が行われるようになっている。
ポンプインペラ51pとタービンランナ51tとの間には、燃費向上のため、ポンプインペラ51pおよびタービンランナ51tを一体的に連結して相互に一体回転させることができるようにするロックアップクラッチ(直結クラッチ)52が設けられている。ロックアップクラッチ52は、タービンシャフト55と一体回転するように取り付けられているとともに、タービンシャフト55の軸線方向に移動可能なように構成されている。
前後進切り替え機60は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置によって構成されている。サンギヤ61sは、トルクコンバータ50のタービンシャフト55に連結され、キャリヤ62cは、CVT70の入力軸であるプライマリシャフト71に連結されている。
ここで、前後進切り替え機60は、キャリヤ62cとサンギヤ61sとの間に配設された前進クラッチ64が油圧により係合させられると、サンギヤ61sと、キャリヤ62cと、リングギヤ63rとが一体回転させられてタービンシャフト55がプライマリシャフト71に直結され、前進方向の駆動力が駆動輪45L、45Rに伝達されるようになっている。
また、前後進切り替え機60は、リングギヤ63rとハウジング65との間に配設された後進ブレーキ66が油圧により係合させられるとともに前進クラッチ64が解放されると、タービンシャフト55と一体的に回転するサンギヤ61sの回転方向に対してサンギヤ61sが相対回転しながら公転することによって、キャリヤ62cはタービンシャフト55の回転方向とは反対の方向に回転するようになっている。したがって、キャリヤ62cと連結したプライマリシャフト71はタービンシャフト55に対して逆回転させられるため、後進方向の駆動力が駆動輪45L、45Rに伝達される。このように、前進クラッチ64および後進ブレーキ66は、本発明に係る摩擦係合装置を構成している。
一方、CVT70は、プライマリシャフト71に設けられた有効径が可変のプライマリプーリ72と、CVT70の出力軸であるセカンダリシャフト79に設けられた有効径が可変のセカンダリプーリ77と、プライマリプーリ72およびセカンダリプーリ77のそれぞれに形成されたV溝に巻き掛けられた伝動ベルト75と、を有している。この構成により、CVT70は、動力伝達要素として機能する伝動ベルト75とプライマリプーリ72およびセカンダリプーリ77のV溝の内壁面との間の摩擦力を利用して動力を伝達するようになっている。
具体的には、プライマリプーリ72は、互いに対向して対向面によってV溝を形成する可動シーブ72aと、固定シーブ72bとを有しており、可動シーブ72aと固定シーブ72bにより形成されるV溝に伝動ベルト75が巻き掛けられている。
また、セカンダリプーリ77は、互いに対向して対向面によってV溝を形成する可動シーブ77aと固定シーブ77bとを備えており、可動シーブ77aと固定シーブ77bにより形成されるV溝に伝動ベルト75が巻き掛けられている。
プライマリプーリ72およびセカンダリプーリ77には、それぞれのV溝幅、すなわち伝動ベルト75の巻き掛かり径を変更するために可動シーブ72aに形成された入力側油圧シリンダ(プライマリプーリ側油圧シリンダ)73および可動シーブ77aに形成された出力側油圧シリンダ(セカンダリプーリ油圧シリンダ)78が備えられている。
そして、可動シーブ72aの入力側油圧シリンダ73に供給、あるいは、排出されるオイルの流量が油圧制御装置30(図1参照)によって制御されることにより、プライマリプーリ72およびセカンダリプーリ77のV溝幅が変化して伝動ベルト75の巻き掛かり径(有効径)が変更されるようになっている。このように、プライマリプーリ72およびセカンダリプーリ77の軸方向に印加される推力の制御により、実変速比γ(=プライマリプーリ72のプライマリシャフト71の実際の回転数Nin/セカンダリプーリ77のセカンダリシャフト79の実際の回転数Nout)を連続的、すなわち無段階に変化させることができる。
また、可動シーブ77aの出力側油圧シリンダ78内の油圧は、セカンダリプーリ77の伝動ベルト75に対する挟圧力および伝動ベルト75の張力にそれぞれ対応するものであって、伝動ベルト75が滑りを生じないように、油圧制御装置30(図1参照)により調圧されるようになっている。
ECU100には、タービンシャフト回転数センサ87と、入力軸回転数センサ85と、出力軸回転数センサ86と、が接続されている。
タービンシャフト回転数センサ87は、トルクコンバータ50のタービンランナ51tに連結されたタービンシャフト55の回転数を検出するようになっている。また、タービンシャフト回転数センサ87は、タービンシャフト55の回転数を表す検出信号を、ECU100に入力するようになっている。
入力軸回転数センサ85は、キャリヤ62cに連結されたプライマリプーリ72のプライマリシャフト71の回転数を検出するようになっている。また、入力軸回転数センサ85は、プライマリシャフト71の回転数を表す検出信号を、ECU100に入力するようになっている。
出力軸回転数センサ86は、減速歯車機構80に連結されたセカンダリプーリ77のセカンダリシャフト79の回転数を検出するようになっている。また、出力軸回転数センサ86は、セカンダリシャフト79の回転数を表す検出信号を、ECU100に入力するようになっている。
ここで、ECU100は、入力軸回転数センサ85によって入力された検出信号が示すプライマリシャフト71の回転数Ninと、出力軸回転数センサ86によって入力された検出信号が示すセカンダリシャフト79の回転数Noutと、に基づいて、実変速比γを算出するようになっている。
次に、油圧制御装置30が有する油圧制御回路150の構成について、図3に基づいて説明する。
図3は、本発明の本実施の形態に係る油圧制御回路150の要部を示す概略構成図である。なお、図3に示す油圧制御回路150は、説明の便宜上、CVT70を構成するプライマリプーリ72およびセカンダリプーリ77を作動させる作動油圧と、前後進切り替え機60の摩擦係合要素として前進クラッチ64を作動させる作動油圧を制御するものが開示されているもので、前後進切り替え機60の後進ブレーキ66を作動させる作動油圧や、潤滑用の油圧などを制御する圧力制御弁等は省略されている。
図3に示すように、油圧制御回路150は、作動流体(オイル)が貯留されたオイルパン28と、エンジン11によって駆動されるオイルポンプ29と、ライン圧モジュレータ弁106と、プライマリプーリ圧調圧弁113と、セカンダリプーリ圧調圧弁120と、切り替え弁130と、を含んで構成されている。プライマリプーリ圧調圧弁113と、セカンダリプーリ圧調圧弁120と、切り替え弁130とは、それぞれ、圧力制御弁としての変速ソレノイド弁119、ベルト挟圧ソレノイド弁126、オン/オフソレノイド弁140によって制御されるようになっている。
油路L0に沿ってオイルポンプ29から汲み上げられた油圧は、ライン圧を構成する。ライン圧のうち油路L1を流れる流量を制御するため、制御弁103によって一部を油路102を介してオイルパン28に戻すようになっている。ライン圧は、油路L1を介してライン圧モジュレータ弁106に供給され、調整されている。さらに、オイルポンプ29から汲み上げられたライン圧は、油路L1を介して減圧弁105に供給され、一定圧に減圧された後、油路L2を介して、符号L2a、L2b、L2c、L2dに示すように分岐して、後述する各部に油圧を供給するようになっている。
ライン圧モジュレータ弁106は、油路L1を介して供給されたライン圧を、図2に示したCVT70のプライマリプーリ72およびセカンダリプーリ77と、前後進切り替え機60の前進クラッチ64とに、油路L3を介して供給するために、ライン圧を調整するようになっている。
ライン圧モジュレータ弁106は、ハウジング101を有し、この外面上に、入力ポート107と、出力ポート108とを有している。入力ポート107は、油路L1と流通し、出力ポート108は、油路L3と流通している。これら入力ポート107と出力ポート108は、ハウジング101内で流通するようになっている。
ライン圧モジュレータ弁106の出力ポート108から油路L3に沿って送られた油圧は、油路L4と、油路L5と、油路L6との三つに分岐して、各部に送られるようになっている。具体的には、図3に示す状態では、ライン圧モジュレータ弁106の出力圧は、油路L4に沿って、プライマリプーリ圧調圧弁113の入力ポート114内に送られており、また、油路L5に沿って、セカンダリプーリ圧調圧弁120の入力ポート121内に送られており、また、油路L6に沿って、切り替え弁130の入力ポート133内に送られている。このうち、ライン圧モジュレータ弁106は、ライン圧(油路L3およびL6を流れる油圧)によって前後進切り替え機60の前後進クラッチの係合圧を制御するようになっている。
プライマリプーリ圧調圧弁113は、油路L4を介してライン圧モジュレータ弁106から供給された油圧を、油路L7を介して、下流のプライマリプーリ72に供給するために、調圧するようになっている。すなわち、プライマリプーリ圧調圧弁113は、図2に示したプライマリプーリ72の可動シーブ72aの入力側油圧シリンダ73の油圧室に供給、あるいは、排出される油圧の流量を制御するようになっている。プライマリプーリ圧調圧弁113は、CVT70のプーリ推力を制御するようになっている。なお、入力側油圧シリンダ73の油圧室から排出される油圧は、プライマリプーリ圧調圧弁113に設けられた図示しない排出ポートから排出するようになっている。これは、後述するプライマリプーリ圧調圧弁113も同様である。
プライマリプーリ圧調圧弁113は、ハウジング104を有し、この外面上に、入力ポート114と、出力ポート115と、信号圧ポート118とを有している。また、プライマリプーリ圧調圧弁113は、ハウジング104内に摺動自在に収容され、軸方向に往復移動可能に設けられたスプール弁子117と、このスプール弁子117に所定の向きの付勢力を及ぼす、ばねなどの弾性部材116とを有している。
入力ポート114は、油路L4と流通し、出力ポート115は、油路L7と流通している。入力ポート114は、ハウジング104内を介して出力ポート115と流通するようになっている。また、信号圧ポート118は、油路P1に沿って、変速ソレノイド弁119からの信号圧を導入可能になっている。入力ポート114の開口状態は、スプール弁子117の軸方向移動によって変化するようになっている。スプール弁子117は、弾性部材116の付勢力と、変速ソレノイド弁119からの信号圧と、によって軸方向に移動可能になっている。
プライマリプーリ圧調圧弁113は、例えば、入力ポート114の基本位置が開状態となるノーマリオープン式のパイロット作動弁によって構成されており、変速ソレノイド弁119の出力圧が、油路P1に沿って、信号圧ポート118に送られないオフ状態では、弾性部材116の付勢力によって、スプール弁子117が図3に示す基本位置に保持されるようになっている。この場合、入力ポート114が全開となり、入力ポート114内に流入する油圧は、プライマリプーリ圧調圧弁113の内部を流動して、出力ポート115から流出するようになっている。
一方、変速ソレノイド弁119の出力圧が、油路P1に沿って、信号圧ポート118に送られるオン状態では、弾性部材116の付勢力に抗する油圧がスプール弁子117に加えられ、スプール弁子117は、上記付勢力に抗する方向で軸方向に移動するようになっている。この場合、スプール弁子117の軸方向移動によって、入力ポート114の開口部が漸次塞がれていき、これに応じて、入力ポート114からプライマリプーリ圧調圧弁113の内部を流れる油圧が変化するようになっている。
すなわち、プライマリプーリ圧調圧弁113は、入力ポート114の開口部の大きさが小さくなると、絞りが強くなるように作用するので、出力ポート115から流出する油圧が小さくなる。これに対して、プライマリプーリ圧調圧弁113は、入力ポート114の開口部の大きさが大きくなると、絞りが弱くなるように作用するので、出力ポート115から流出する油圧が大きくなる。
変速ソレノイド弁119は、ECU100によって制御され、プライマリプーリ圧調圧弁113の入力ポート114の開口状態を決定する信号圧を送信するようになっている。この際、ライン圧L0を調整し、減圧した油路L2の一部がL2aで分岐しており、油路L2aに沿って変速ソレノイド弁119に油圧が送られている。
変速ソレノイド弁119は、例えば、デューティソレノイド弁であって、ECU100によって電流が印加されることで、信号圧ポート118に送られる信号圧が制御されるようになっている。変速ソレノイド弁119は、信号圧ポート118に送られる信号圧を単位時間当たりのオン・オフの割合であるデューティ比に応じて調整可能にする構成となっている。そして、変速ソレノイド弁119は、最適な変速比が実現できるよう、プライマリプーリ72への油圧の流量を制御するため、プライマリプーリ圧調圧弁113の出力圧をきめ細かく制御するようになっている。
図3に示した状態では、プライマリプーリ圧調圧弁113の出力ポート115から出力される油圧は、油路L7に沿って、切り替え弁130に向って送られており、この油圧は、さらに切り替え弁130を介して、CVT70のプライマリプーリ72に向って送られるようになっている。
セカンダリプーリ圧調圧弁120は、油路L5を介してライン圧モジュレータ弁106から供給されたライン圧を、油路L8を介して、下流のセカンダリプーリ77に供給するために、調圧するようになっている。すなわち、セカンダリプーリ圧調圧弁120は、図2に示したセカンダリプーリ77の可動シーブ77aの出力側油圧シリンダ78の油圧室に供給、あるいは、排出される油圧の流量を制御するようになっている。
また、セカンダリプーリ圧調圧弁120は、油路L5を介してライン圧モジュレータ弁106から供給されたライン圧を、油路L9を介して、下流のプライマリプーリ72に供給するために、調圧するようになっている。すなわち、セカンダリプーリ圧調圧弁120は、図2に示したプライマリプーリ72の可動シーブ72aの入力側油圧シリンダ73の油圧室に供給、あるいは、排出される油圧の流量を制御するようになっている。
セカンダリプーリ圧調圧弁120は、ハウジング109を有し、この外面上に、入力ポート121と、出力ポート122と、信号圧ポート125とを有している。また、セカンダリプーリ圧調圧弁120は、ハウジング109内に摺動自在に収容され、軸方向に往復移動可能に設けられたスプール弁子124と、このスプール弁子124に所定の向きの付勢力を及ぼす、ばねなどの弾性部材123とを有している。
入力ポート121は、油路L5と流通し、出力ポート122は、油路L8およびL9と流通している。入力ポート121は、ハウジング109内を介して出力ポート122と流通するようになっている。また、信号圧ポート125は、油路P2に沿って、ベルト挟圧ソレノイド弁126からの信号圧を導入可能になっている。入力ポート121の開口状態は、スプール弁子124の軸方向移動によって変化するようになっている。スプール弁子124は、弾性部材123の付勢力と、ベルト挟圧ソレノイド弁126からの信号圧と、によって軸方向に移動可能になっている。
セカンダリプーリ圧調圧弁120は、例えば、入力ポート121の基本位置が開状態となるノーマリオープン式のパイロット作動弁によって構成されており、ベルト挟圧ソレノイド弁126の出力圧が、油路P2に沿って、信号圧ポート125に送られないオフ状態では、弾性部材123の付勢力によって、スプール弁子124が図3に示す基本位置に保持されるようになっている。この場合、入力ポート121が全開となり、入力ポート121内に流入する油圧は、セカンダリプーリ圧調圧弁120の内部を流動して、出力ポート122から流出するようになっている。
一方、ベルト挟圧ソレノイド弁126の出力圧が、油路P2に沿って、信号圧ポート125に送られるオン状態では、弾性部材123の付勢力に抗する油圧がスプール弁子124に加えられ、スプール弁子124は、上記付勢力に抗する方向で軸方向に移動するようになっている。この場合、スプール弁子124の軸方向移動によって、入力ポート121の開口部が漸次塞がれていき、これに応じて、入力ポート121からセカンダリプーリ圧調圧弁120の内部に流れる油圧が変化するようになっている。
すなわち、セカンダリプーリ圧調圧弁120は、入力ポート121の開口部の大きさが小さくなると、絞りが強くなるように作用するので、出力ポート122から流出する油圧が小さくなる。これに対して、セカンダリプーリ圧調圧弁120は、入力ポート121の開口部の大きさが大きくなると、絞りが弱くなるように作用するので、出力ポート122から流出する油圧が大きくなる。
ベルト挟圧ソレノイド弁126は、ECU100によって制御され、セカンダリプーリ圧調圧弁120の入力ポート121の開口状態を決定する信号圧を送信するようになっている。この際、ライン圧L0を調整し、減圧した油路L2の一部がL2bで分岐しており、油路L2bに沿ってベルト挟圧ソレノイド弁126に油圧が送られている。
ベルト挟圧ソレノイド弁126は、例えば、リニアソレノイド弁であって、ECU100によって電流が印加されることで、信号圧ポート125に送られる信号圧が制御されるようになっている。ベルト挟圧ソレノイド弁126は、信号圧ポート125に送られる信号圧を比例制御して無段階に調整可能にする構成となっている。そして、ベルト挟圧ソレノイド弁126は、最適なベルト挟圧力が実現できるよう、セカンダリプーリ77への油圧の流量を制御するため、セカンダリプーリ圧調圧弁120の出力圧をきめ細かく制御するようになっている。
図3に示した状態では、セカンダリプーリ圧調圧弁120の出力ポート122から流出した油圧は、油路L8およびL9に沿って分岐して送られており、一方は、油路L8に沿って、CVT70のセカンダリプーリ77に向って送られ、他方は、油路L9に沿って、切り替え弁130を介して、CVT70のプライマリプーリ72に向って送られるようになっている。
切り替え弁130は、プライマリプーリ圧調圧弁113の出力圧とセカンダリプーリ圧調圧弁120の出力圧とをプライマリプーリ72に送る中継装置として機能し、ライン圧モジュレータ弁106の出力圧とリニアソレノイド弁141の出力圧とを前進クラッチ64に送る中継装置として機能する。切り替え弁130は、後述する第1の制御モードまたは第2の制御モードを選択可能になっており、切り替えに応じて、複数の油路を選択的に開放または遮断することにより、図2に示したプライマリプーリ72と前進クラッチ64のオイルの供給状態を制御するようになっている。
すなわち、切り替え弁130は、油路L7を介してプライマリプーリ圧調圧弁113から供給された油圧と、油路L9を介してセカンダリプーリ圧調圧弁120から供給された油圧とのいずれかを、油路L11を介してプライマリプーリ72に供給するために、第1の制御モードと第2の制御モードの間で切り替え可能になっている。
また、切り替え弁130は、油路L6を介してライン圧モジュレータ弁106から供給された油圧と、油路L10を介してリニアソレノイド弁141から供給された油圧とのいずれかを、油路L12を介して、前進クラッチ64に供給するために、第1の制御モードと第2の制御モードの間で切り替え可能になっている。
切り替え弁130は、ハウジング110を有し、この外面上に、プライマリプーリ圧調圧弁113用の入力ポート131と、セカンダリプーリ圧調圧弁120用の入力ポート135と、ライン圧モジュレータ弁106用の入力ポート133と、リニアソレノイド弁141用の入力ポート136と、プライマリプーリ72用の出力ポート132と、前進クラッチ64用の出力ポート134と、信号圧ポート139とを有している。また、切り替え弁130は、ハウジング110内に摺動自在に収容され、軸方向に往復移動可能に設けられたスプール弁子138と、このスプール弁子138に所定の向きの付勢力を及ぼす、ばねなどの弾性部材137とを有している。
入力ポート131は、油路L7と流通し、入力ポート135は、油路L9と流通し、出力ポート132は、油路L11と流通している。入力ポート131および入力ポート135のいずれかは、ハウジング110内を介して出力ポート132と切り替え可能に流通するようになっている。また、入力ポート133は、油路L6と流通し、入力ポート136は、油路L10と流通し、出力ポート134は、油路L12と流通している。入力ポート133および入力ポート136のいずれかは、ハウジング110内を介して出力ポート134と切り替え可能に流通するようになっている。
また、信号圧ポート139は、油路P3を介して、オン/オフ(ON/OFF)ソレノイド弁140からの信号圧を導入可能になっている。上記入力ポート131、135、133、136の開口状態は、スプール弁子138の軸方向移動によって同時に変化するようになっている。スプール弁子138は、弾性部材137の付勢力と、オン/オフソレノイド弁140からの信号と、によって軸方向に移動可能になっている。
図3に示した本実施の形態では、切り替え弁130の内部に軸方向に移動可能なスプール弁子138を一つ設けるとともに、このスプール弁子138の外周面に沿ってランド部を3つ離間して設けている。そして、スプール弁子138を軸方向に往復移動させることで、この外周面に沿って設けられた3つのランド部によって、切り替え弁130の軸方向に沿って設けられた4つの入力ポート131、133、135、136の開口および閉口の状態をそれぞれ同時に切り替えるようになっている。この際、各入力ポート131、133、135、136から流入する油圧は、切り替え弁130の内部で互いに分断されている。
オン/オフソレノイド弁140は、ECU100によって制御され、切り替え弁130の入力ポート131、133、135、136の開口状態を決定する信号圧を送信するようになっている。この際、ライン圧L0を調整し、減圧した油路L2の一部がL2cで分岐しており、油路L2cに沿ってオン/オフソレノイド弁140に油圧が送られている。
オン/オフソレノイド弁140は、ECU100によって電流が印加されるか否かで、信号圧ポート139に送られる信号圧が2段階に切り替えられるようになっている。そして、オン/オフソレノイド弁140は、オフ状態で第1の制御モードを取り、オン状態で第2の制御モードを取るように切り替える可能になっている。
ここで、図3を参照して、オン/オフソレノイド弁140がオフ状態のときの切り替え弁130の第1の制御モードについて説明する。
切り替え弁130は、例えば、入力ポート131、133の基本位置が開状態となるノーマリオープン式のパイロット作動弁によって構成されており、オン/オフソレノイド弁140の出力圧が、油路P3を介して、信号圧ポート139に送られない(図3の×印参照)オフ状態では、弾性部材137の付勢力によって、スプール弁子138が図3に示す基本位置に保持されるようになっている。
この場合、入力ポート131、133が全開となり、入力ポート131、133内に流入する油圧は(図3の○印参照)、切り替え弁130の内部を流動して、それぞれ、出力ポート132、134から流出するようになっている。この際、入力ポート135、136が全閉となり、入力ポート135、136内に向う油圧は、切り替え弁130の内部を流動しないようになっている(図3の×印参照)。
第1の制御モードでは、プライマリプーリ圧調圧弁113から送られた油圧が、油路L7に沿って入力ポート131から切り替え弁130の内部を流動して、出力ポート132からプライマリプーリ72に向けて送られている。このため、変速ソレノイド弁119によって制御された油圧が、プライマリプーリ72の制御圧として利用されることになる。
また、第1の制御モードでは、ライン圧モジュレータ弁106から送られた油圧が、油路L6に沿って入力ポート133から切り替え弁130の内部を流動して、出力ポート134から前進クラッチ64に向けて送られている。このため、ライン圧を調整した油圧が、前進クラッチ64の制御圧として利用されることになる。
次に、図4を参照して、オン/オフソレノイド弁140をオフ状態からオン状態に変化させたときの切り替え弁130の第2の制御モードについて説明する。
オン/オフソレノイド弁140の出力圧が、油路P3を介して、信号圧ポート139に送られる(図4の○印参照)オン状態では、弾性部材137の付勢力に抗する方向の油圧がスプール弁子138に加えられ、スプール弁子138は、上記付勢力に抗する方向で軸方向に移動するようになっている。
この場合、スプール弁子138の軸方向移動によって、入力ポート131、133の開口部が塞がれていき、入力ポート131、133が全閉となり、入力ポート131、133内に向う油圧は、切り替え弁130の内部を流動しないようになっている(図4の×印参照)。この際、上述した第1の制御モードとは反対に、入力ポート135、136が全開となり、入力ポート135、136内に流入する油圧は(図4の○印参照)、切り替え弁130の内部を流動して、それぞれ、出力ポート132、134から流出するようになっている。
第2の制御モードでは、セカンダリプーリ圧調圧弁120から送られた油圧が、油路L9に沿って入力ポート135から切り替え弁130の内部を流動して、出力ポート132からプライマリプーリ72に向けて送られている。このとき、セカンダリプーリ圧調圧弁120から送られた油圧が、油路L8に沿って、セカンダリプーリ77に向けて送られている。従って、この状態では、セカンダリプーリ77の制御圧として利用される油圧が、プライマリプーリ72の制御圧としても利用されている。この場合、ライン圧によってCVT70のプーリ推力が制御されるようになっている。なお、本発明におけるライン圧は、プライマリプーリ圧調圧弁113に供給されるライン圧(油路L3を流れる油圧)を意味しているが、セカンダリプーリ圧調圧弁120によって調圧された油圧でもよい。この場合、セカンダリプーリ圧調圧弁120は、プライマリプーリ72に一定の変速比を保つことが可能な油圧を確保するよう制御されることが好ましい。
また、第2の制御モードでは、リニアソレノイド弁141から送られた油圧が、油路L10に沿って入力ポート136から切り替え弁130の内部を流動して、出力ポート134から前進クラッチ64に向けて送られている。このため、リニアソレノイド弁141によって制御された油圧が、前進クラッチ64の制御圧として利用されることになる。
リニアソレノイド弁141は、ECU100によって制御され、前進クラッチ64用に細かく制御された油圧を、切り替え弁130を介して送るようになっている。この際、ライン圧L0を調整し、減圧した油路L2の一部がL2dで分岐しており、油路L2dに沿ってリニアソレノイド弁141に油圧が送られている。
リニアソレノイド弁141は、ECU100によって印加される電流値に応じて、油路L10に沿って、入力ポート136に送られる係合圧が比例制御される構成となっている。そして、出力圧を無段階に調整可能にすることで、前進クラッチ64の出力圧をきめ細かく制御するようになっている。
上記のように、オン/オフソレノイド弁140をオフとオンとの間で切り替えることによって、切り替え弁130は、第1の制御モード(図3参照)と第2の制御モード(図4参照)との間で切り替わり、CVT70のプライマリプーリ72の制御圧と前進クラッチ60の前進クラッチ64の制御圧とを同時に切り替えている。
このように、切り替え弁130は、CVT70のプライマリプーリ72の推力を変速ソレノイド弁119から出力される変速制御圧(油路L7を流れる油圧)で、かつ、前後進切り替え機60の摩擦係合要素、例えば、前進クラッチ64の係合圧を変速ソレノイド弁119に供給されるライン圧(油路L3およびL6を流れる油圧)で制御する第1の制御モードと、プライマリプーリ72の推力をライン圧(油路L3、L5およびL9を流れる油圧)で、かつ、前進クラッチ64の係合圧をリニアソレノイド弁141から出力される係合制御圧(油路L10を流れる油圧)で制御する第2の制御モードと、の間で切り替え可能である。なお、本発明に係る切り替え弁は、本実施の形態に係る切り替え弁130に対応するとともに、オン/オフソレノイド弁140を含む。
ここで、油圧制御回路150の切り替え弁130は、主として第1の制御モード(図3参照)を取っており、以下に説明する条件が成立すると、ECU100は、第2の制御モード(図4参照)に切り替えるよう制御する。
まず、ECU100は、CVT70に変速異常が発生したことを条件として、切り替え弁130を切り替えるようオン/オフソレノイド弁140を制御する。
CVT70の変速異常では、CVT70のプライマリプーリ72の制御圧を送る経路が問題となる。図3に示した油圧制御回路150では、ライン圧モジュレータ弁106と、油路L3と、油路L4と、変速ソレノイド弁119によって制御されているプライマリプーリ圧調圧弁113と、油路L7と、切り替え弁130と、油路L11とを含む経路が問題となる。この経路では、油路L7に沿って送られる油圧の異常(変速ソレノイド弁119又はプライマリプーリ圧調圧弁113の故障)と、切り替え弁130の故障と、が特に問題になる。
油路L7に沿って送られる油圧の異常では、変速ソレノイド弁119の故障と、プライマリプーリ圧調圧弁113の故障とが考えられるが、いずれの場合も、油路L7に沿って送られる油圧が影響を受けて、CVT70のプライマリプーリ72の制御圧が所望の制御圧を得ることができず、変速異常が発生することになる。
例えば、油路L7に沿って送られる油圧の異常として、変速ソレノイド弁119の故障が問題となるため、以下、変速ソレノイド弁119の故障について説明する。
まず、変速ソレノイド弁119の故障が生じると、変速ソレノイド弁119は、CVT70のプライマリプーリ72の制御圧を制御しているため、プライマリプーリ72の制御圧が変動し、CVT70の実変速比γと目標変速比γoとが乖離する変速異常が発生することになる。
例えば、変速ソレノイド弁119の故障としては、プランジャのスティック(執着)や異物の噛み込みによるシール不良等の機能故障により、正しく作動しなくなることがある。変速ソレノイド弁119に異常が生じると、プライマリプーリ圧調圧弁113の出力圧が影響を受け、プライマリプーリ72の変速制御を正しく行うことが困難になる。
一方、切り替え弁130の故障が生じると、切り替え弁130の内部には、CVT70のプライマリプーリ72の制御圧が流動しているため、プライマリプーリ72の制御圧が変動し、CVT70の実変速比γと目標変速比γoとが乖離する変速異常が発生することになる。
例えば、切り替え弁130の故障としては、オン/オフソレノイド弁140の信号圧にかかわらず、切り替え弁130の内部で、スプール弁子138がオン状態のままで保持され、オフ状態に移動しなくなるオン固着の状態が起こり得る。この場合、切り替え弁130の内部では、CVT70のプライマリプーリ72の制御圧として、プライマリプーリ圧調圧弁113の出力圧がセカンダリプーリ圧調圧弁120の出力圧に切り替わり、プライマリプーリ72の変速制御を正しく行うことが困難になる。
従って、図3および4に示した油圧制御回路150において、CVTに変速異常が発生する場合には、主に、変速ソレノイド弁119の故障と切り替え弁130の故障とのいずれかがフェール原因として想定することができる。
このような場合、ECU100は、変速異常を検出した後に、オン/オフソレノイド弁140をオフ状態からオン状態に切り替えて、油路L7、切り替え弁130、油路L11に沿って送られる油圧を遮断するよう、切り替え弁130を第1の制御モード(図3参照)から第2の制御モード(図4参照)に切り替える。
切り替え弁130の第2の制御モードでは、図4に示したように、油路L7、切り替え弁130、油路L11に沿って送られる油圧は、CVT70のプライマリプーリ72の制御圧として利用されなくなる。このため、変速ソレノイド弁119によって制御されるプライマリプーリ圧調圧弁113の出力圧に問題があっても、その影響を最小に抑止することができる。また、切り替え弁130が故障し、オン固着になる場合であっても、再度の切り替わりを抑止することができる。
次に、ECU100は、前後進切り替え機60のクラッチ制御圧を細かく調整する条件、例えばシフトレバー21(図1参照)がニュートラルポジションからドライブポジションに切り替えられたことを条件として、切り替え弁130を切り替えるようオン/オフソレノイド弁140を制御する。
図3に示した第1の制御モードでは、油路L6に沿って、ライン圧モジュレータ弁106の出力圧が前後進切り替え機60のクラッチ制御圧として利用されているが、この油圧は、油路L4と油路L5に沿って、プライマリプーリ圧調圧弁113とセカンダリプーリ圧調圧弁120とに送られるもものと同じである。車両の走行状態によっては、この油圧とは異なる油圧を用いて、より細かく前後進切り替え機60のクラッチ制御圧を調整することが望ましい場合がある。
例えば、車両10の運転手のシフトレバー21(図1参照)の操作に基づいて、ニュートラルポジション(N)がドライブポジション(D)にシフト操作された操作ポジションの変化が、シフトポジションセンサ82(図1参照)によって検知された場合には、ECU100は、オン/オフソレノイド弁140をオフ状態からオン状態に所定期間切り替えて、切り替え弁130を第1の制御モード(図3参照)から第2の制御モード(図4参照)に切り替えている。
切り替え弁130の第2の制御モードでは、図4に示したように、油路L6に沿って送られるライン圧は、遮断され、前後進切り替え機60の前進クラッチ64の制御圧として利用されなくなる。そして、図4に示す状態では、リニアソレノイド弁141から送られた制御圧が、油路L10に沿って送られ、切り替え弁130の内部を流動して、前進クラッチ64に向けて送られ、係合圧として利用されている。このため、リニアソレノイド弁141から送られた油圧によって、前進クラッチ64を細かく制御して、車両の走行状態に適した制御を行うことができる。
このように、上述した2つの条件が成立する場合に、ECU100は、切り替え弁130を第1の制御モード(図3参照)と第2の制御モード(図4参照)との間で切り替えるよう制御する。
以下、本発明の実施の形態に係るCVT70の制御装置を構成するECU100の特徴的な構成について説明する。
ECU100は、プライマリプーリ72の推力を変速ソレノイド弁119から出力される変速制御圧(油路L7を流れる油圧)で、かつ、前進クラッチ64の係合圧を変速ソレノイド弁119に供給されるライン圧(油路L3およびL6を流れる油圧)で制御する第1の制御モードと、プライマリプーリ72の推力をライン圧(油路L3、L5およびL9を流れる油圧)で、かつ、前進クラッチ64の係合圧をリニアソレノイド弁141から出力される係合制御圧(油路L10を流れる油圧)で制御する第2の制御モードと、の間で切り替え可能な切り替え弁130を有する油圧制御装置30に対して、第1の制御モードを指示中で変速異常を検出した場合に、リニアソレノイド弁141の油圧を低下させ、前進クラッチ64が滑らなければ変速ソレノイド弁119の異常と判定するようになっている。
また、ECU100は、第1の制御モードを指示中で変速異常を検出した場合に、リニアソレノイド弁141の油圧を低下させ、前進クラッチ64が滑れば切り替え弁130の異常と判定するようになっている。
また、ECU100は、変速ソレノイド弁119が異常と判定された場合に、切り替え弁130を第2の制御モードに切り替えるよう制御するようになっている。
図5は、油圧制御回路150に故障が発生した場合において、ECU100で実行されるフェール箇所の判定処理を示すフローチャートである。以下の処理は、ECUを構成するCPUによって所定の時間間隔で実行されるとともに、CPUによって処理可能なプログラムを実現する。
まず、ECU100は、車両10に変速異常が発生しているか否かの判定を実行する(ステップS1)。変速異常は、目標変速比γoと実変速比γとの比較によって行われる。
目標変速比γoは、例えば、車速やアクセル開度から決定される。例えば、ECU100は、駆動軸回転数センサ83から送られた検出信号に基づいて、車両10の走行速度として車速Vを算出するとともに、アクセル開度センサ84(図1参照)から送られたアクセル開度Accに関する信号を受け取る。そして、ECU100は、これら車速Vおよびアクセル開度Accをパラメータとしたマップを用いてプライマリプーリ72の目標回転速度を設定し、この目標回転速度をセカンダリプーリ77の回転速度で除算することにより、目標変速比γoを算出する。なお、上記マップは、ECU100のROMに予め記憶されている。
実変速比γは、CVT70の入力回転数と出力回転数から決定される。例えば、図2に示したプライマリシャフト71の回転速度を検出する入力軸回転数センサ85からの信号と、セカンダリシャフト79の回転速度を検出する出力軸回転数センサ86からの信号に基づいて、ECU100が実変速比γ(=プライマリシャフト71の実際の回転数Nin/セカンダリシャフト79の実際の回転数Nout)を決定する。
ECU100は、目標変速比γoと実変速比γとの差が予め定められた所定の閾値を超える場合に変速異常と判定する。
ECU100は、ステップS1において、変速異常であると判定しない場合(ステップS1でNO)、リターンに移行する。
一方、ECU100は、ステップS1において、変速異常であると判定した場合(ステップS1でYES)には、リニアソレノイド弁141の出力を最小、すなわち、零になるよう制御し、リニアソレノイド弁141の出力圧が実際に最小になったか否かを油圧センサ89(図1参照)から出力された検出結果に基づいて判定する(ステップS2)。
なお、油圧センサ89に基づいてリニアソレノイド弁141の出力圧が最小になったか否かを判定するようにしたが、ECU100のリニアソレノイド弁141に対する指示に基づいて判定するようにしてもよい。
また、リニアソレノイド弁141の出力を最小にすることは、必ずしも全ての場合において積極的に行われる必要がない。例えば、ECU100は、リニアソレノイド弁141の出力を積極的に最小にしなくとも、リニアソレノイド弁141の出力が最小になるのを待つようにしてもよい。
ECU100は、リニアソレノイド弁141の出力を最小にした後(ステップS2)、前後進切り替え機60の前進クラッチ64にクラッチ滑りがあるか否かの判定を実行する(ステップS3)。
ECU100は、タービンシャフト55の回転数とプライマリプーリ72の回転数との比較によってクラッチ滑りを判定することができる。例えば、図2に示したタービンシャフト55の回転速度を検出するタービンシャフト回転数センサ87からの信号と、プライマリプーリ72と接続されているプライマリシャフト71の回転速度を検出する入力軸回転数センサ85からの信号に基づいて判定する。
ECU100は、タービンシャフト55の回転速度と、プライマリシャフト71の回転速度とが一致しているか、その差が所定の閾値以内であれば、クラッチ滑りが無いと判断する(ステップS4)。一方、ECU100は、タービンシャフト55の回転速度と、プライマリシャフト71の回転速度とが乖離していて、その差が所定の閾値を超えていれば、クラッチ滑りがあると判断する(ステップS5)。
ここで、切り替え弁130が正常に機能していて、図3に示す第1の制御モードにある場合には、油路L6に沿って送られるライン圧が前進クラッチ64のクラッチ圧制御に用いられていて、油路L10に沿って送られるリニアソレノイド弁141の出力はこのクラッチ圧制御に用いられていない。
この状態では、リニアソレノイド弁141の出力を最小にしても、クラッチ圧制御に影響を及ぼさず、クラッチ滑りも生じさせない。よって、リニアソレノイド弁141の出力を最小にした後(ステップS2)、クラッチ滑りが生じなければ(ステップS3でYES)、切り替え弁130に異常はないため、ECU100は、ステップS4において、当該油圧制御回路150のフェール箇所は、変速ソレノイド弁119であると判定する(ステップS4)。
一方、切り替え弁130が正常に機能しておらず、例えば、切り替え弁130がオン固着していて、図4に示す第2の制御モードにある場合には、油路L6に沿って送られるライン圧は前進クラッチ64のクラッチ圧制御に用いられておらず、油路L10に沿って送られるリニアソレノイド弁141の出力がこのクラッチ圧制御に用いられている。
この状態では、リニアソレノイド弁141の出力を最小にした場合、クラッチ圧制御に影響を及ぼして、クラッチ滑りを生じさせる。よって、リニアソレノイド弁141の出力を最小にした後(ステップS2)、クラッチ滑りが生じていれば(ステップS3でNO)、切り替え弁130に異常があるため、ECU100は、ステップS5において、当該油圧制御回路150のフェール箇所は、変速ソレノイド弁119ではなく、オン/オフソレノイド弁140を含む切り替え弁130であると判定する(ステップS5)。
ただし、ECU100は、ステップS1において変速異常を検出して、ステップS2においてリニアソレノイド弁141の出力を最小にして、ステップS3において前進クラッチ64のクラッチ滑りの有無を判定するまでの間、オン/オフソレノイド弁140を制御して、切り替え弁130を切り替えないものとする。
従って、ECU100は、CVT70に変速異常が発生した場合に、クラッチ滑りに着目することで、油圧制御回路150において、変速ソレノイド弁119と切り替え弁130のいずれかが原因であると、具体的にフェール箇所の特定をすることができる。
次に、図6および図7を参照して、図5で説明した方法を実行した場合における、タイムチャートについて説明する。
図6および図7に示したタイミングチャートでは、図2に示したプライマリプーリ72の回転数、すなわちプライマリシャフト71の回転数(実線201)と、セカンダリプーリ77の回転数、すなわちセカンダリシャフト79の回転数(実線202)と、タービンシャフト55の回転数(実線203)と、リニアソレノイド弁141の出力(実線204)との、それぞれの経時変化について示している。
図6において、時間T0で、シフトレバー21(図1参照)が操作され、操作ポジションがドライブポジションになり、アクセルペダル88(図1参照)が踏み込まれると、図2に示したように、エンジン11のトルクが、トルクコンバータ50、前後進切り替え機60、CVT70、減速歯車装置80、デファレンシャル機構40を介して、駆動輪45L、45Rへ伝達され、車両10が発進するようになっている。
この際、図2に示したように、前後進切り替え機60の前進クラッチ64が係合され、かつ、後進ブレーキ66が解放される。そして、タービンシャフト55がプライマリシャフト71に直結され、いずれも同方向に回転して、車両10を前進させる方向で駆動力が発生するようになっている。この際、実線201および203で示すように、プライマリシャフト71の回転数は、タービンシャフト55の回転数と一致するようになっている。
車両10が発進すると、時間T0から時間T1にかけて、実線201および202で示すように、プライマリシャフト71の回転数とセカンダリシャフト79の回転数とがそれぞれ増大する。そして、図2に示したプライマリシャフト71の軸線方向における可動シーブ72aの位置が制御され、プライマリプーリ72の溝幅が変更されると、プライマリプーリ72に対するベルト75の巻掛け半径が変化し、CVT70の変速比が変化するようになっている。
CVT70の変速比を油圧制御する構成の車両10では、車両10に搭載されたECU100が、予め定められた変速条件に従って目標変速比γoを求め、実変速比γが目標変速比γoになるように油圧制御回路150の油圧をフィードバック制御するようになっている。実変速比γと目標変速比γoは、上述のように、車両10の各部に搭載された各種センサからの出力信号に基づいて、ECU100のCPUが算出するようになっている。
時間T1以降において、実線201および202で示すように、プライマリシャフト71の回転数とセカンダリシャフト79の回転数とが収束して、プライマリシャフト71の回転数とセカンダリシャフト79の回転数とによってつくられる実変速比γが求められるとする。この値γが、何らかの理由によって、目標変速比γoと一致せず、ズレが生じていることが、ECU100によって判定されたとする。この場合、ECU100は、目標変速比γoと実変速比γとの差が所定の閾値を超えていれば、変速異常と判定する。
図6では、ECU100は、例えば、時間T1で変速異常が発生し、時間T1から所定時間経過後の時間T2において、変速異常と判定する。
ECU100は、変速異常が発生したことを時間T2において判定した場合には、さらに、油圧制御回路150のどの箇所がフェールしたのかについて具体的に特定する。このため、ECU100は、時間T3において、実線204で示すように、図3および4に示した油圧制御回路150において、リニアソレノイド弁141の出力を最小、すなわち、零に保持する。この際、ECU100は、例えば、時間T3でリニアソレノイド弁141の出力の制御を行う。
そして、ECU100は、時間T4において、前後進切り替え機60の前進クラッチ64に関して、クラッチ滑りが生じているか否かについての判定を実行する。図6の破線の囲みで示しているように、時間T0から時間T3までの間、実線201および203で示すように、プライマリシャフト71の回転数とタービンシャフト55の回転数とが一致していたのに対して、時間T3以降も、これらプライマリシャフト71の回転数とタービンシャフト55の回転数とが一致し続けていることが、時間T4において、ECU100によってモニタされたとする。この場合、プライマリシャフト71の回転数とタービンシャフト55の回転数とが乖離していないことから、前後進切り替え機60の前進クラッチ64において、クラッチ滑りが生じていないことをECU100が判定する。
クラッチ滑りが生じていないということは、すなわち、リニアソレノイド弁141の出力にかかわらず、前進クラッチ64の制御圧として、必要な油圧が確保されていることを意味する。このことは、リニアソレノイド弁141の出力とは別の、他の油路L6(図3参照)によって前進クラッチ64の制御圧が供給されていることを意味する。つまり、油圧制御回路150は図3に示す通常の状態にあり、切り替え弁130は第1の制御モードで正常に機能していることになる。
この場合には、ECU100は、当該油圧制御回路150のフェール箇所は、切り替え弁130ではなく、変速ソレノイド弁119であると判定する。つまり、変速ソレノイド弁119に異常があるため、プライマリプーリ圧調圧弁113の出力圧が変動し、この結果、プライマリプーリ72に送られる制御圧が安定せず、変速異常が発生していることをECU100が判定する。
次に、図7を参照する。この場合においても、図6に示した場合と同様に、時間T0から時間T1にかけて、車両10を前進させる方向で駆動力が発生しており、この際、実線201および203で示すように、プライマリシャフト71の回転数は、タービンシャフト55の回転数と一致するようになっている。また、実線201および202で示すように、プライマリシャフト71の回転数とセカンダリシャフト79の回転数との対比によって、CVT70の実変速比γが決定されるようになっている。そして、時間T2において、ECU100が変速異常を検出して、時間T3において、実線204で示すように、リニアソレノイド弁の油圧を最小に保持したものとする。
図7の破線の囲みで示しているように、時間T0から時間T3までの間、実線201および203で示すように、プライマリシャフト71の回転数とセカンダリシャフト79の回転数とが一致していたのに対して、時間T3以降、プライマリシャフト71の回転数とセカンダリシャフト79の回転数とが一致しなくなったことが、時間T4において、ECU100によってモニタされたとする。この場合、プライマリシャフト71の回転数とタービンシャフト55の回転数とが乖離していることから、前後進切り替え機60の前進クラッチ64において、クラッチ滑りが生じていることがECU100によって判定される。
クラッチ滑りが生じているということは、リニアソレノイド弁141の出力によって、前進クラッチ64の制御圧として、必要な油圧が確保されていることを意味する。このことは、リニアソレノイド弁141の出力とは別の、他の油路L6(図4参照)によって前進クラッチ64の制御圧が供給されていないことを意味する。つまり、油圧制御回路150は図4に示す状態にあり、切り替え弁130が図3に示す第1の制御モードから第2の制御モードに切り替わっていることになる。
この場合、ECU100は、当該油圧制御回路150のフェール箇所は、変速ソレノイド弁119ではなく、切り替え弁130であると判定することが可能になる。つまり、切り替え弁130に異常があるため、この結果、プライマリプーリ72には、セカンダリプーリ77に供給される油圧と同じものが供給されており、正常な変速が行えず、変速異常が発生していることをECU100が判定する。
ここで、ECU100によって行われるフェールセーフについて簡単に説明する。
油圧制御回路150のフェール箇所が変速ソレノイド弁119であることを特定した場合、ECU100は、速やかにオン/オフソレノイド弁140をオフからオンに切り替えて、切り替え弁130を第1の制御モードから第2の制御モードに切り替える。これによって、CVT70のプライマリプーリ72とセカンダリプーリ77とに向けて送られる油圧として同じ油圧が用いられるようにして、変速比を一定にする。
このため、変速ソレノイド弁119の異常によって、プライマリプーリ72に送られる油圧が変動していても、この油圧を遮断して、CVT70に急激なダウンシフトが生じることを抑制する。ECU100は、このように、CVT70の変速比を固定して、フェールセーフ制御を行う。
なお、変速ソレノイド弁119は正常であるが、プライマリプーリ圧調圧弁113に異常が生じているため、この出力圧が変動して、プライマリプーリ72に送られる油圧が変動している場合においても、同一のフェールセーフ制御を行う。
一方、油圧制御回路150のフェール箇所が切り替え弁130であることを特定した場合、ECU100は、切り替え弁130をこの状態のままにして、リニアソレノイド弁141の出力圧に基づいてクラッチを制御し、車両を走行させる。ECU100は、このように、フェールセーフ制御を実行して、運転性を大きく損なわせないようにしながら、退避走行を可能にしている。
ECU100は、フェール箇所を特定した後、その内容について、運転者に視覚または聴覚によって警告を発するようにしてもよい。例えば、ECU100は、車室内において、メーター付近でウォーニングランプなどを点灯させて、変速異常が発生したことを運転者に視覚で伝えるようにしてもよい。または、ECU100は、車室内において、スピーカーから警告音などを鳴らして、変速異常が発生したことを運転者に聴覚で伝えるようにしてもよい。
以上のように、本発明の実施の形態に係るCVT70の制御装置は、第1の制御モードを指示中で変速異常が発生した場合、変速ソレノイド弁119および切り替え弁130(オン/オフソレノイド弁140を含む)の何れか一方の異常と考えられるが、リニアソレノイド弁141の油圧を低下させ、前進クラッチ64が滑らなければ変速ソレノイド弁119の異常と判定することができる。
より詳細には、第1の制御モードの状態においては、プライマリプーリ72の推力を変速ソレノイド弁119から出力された変速制御圧で、かつ、前進クラッチ64の係合圧を変速ソレノイド弁119に供給されるライン圧で制御しているので、当該制御モードの通りに切り替え弁130(オン/オフソレノイド弁140を含む)が作動していれば、リニアソレノイド弁141の油圧を低下させても前進クラッチ64が滑らないこととなる。このため、変速ソレノイド弁119から出力された変速制御圧が所望の油圧を得ることができずに変速異常を検出したことになる。
一方、第1の制御モードの通りに切り替え弁130(オン/オフソレノイド弁140を含む)が作動していなければ、前進クラッチ64の係合圧をリニアソレノイド弁141から出力される係合制御圧で制御することになるので、リニアソレノイド弁141の油圧を低下させると前進クラッチ64が滑ることとなる。また、この切り替え弁130(オン/オフソレノイド弁140を含む)の状態では、プライマリプーリ72の推力を変速ソレノイド弁119に供給されるライン圧で制御することになるので、所望の油圧を得ることができずに変速異常を検出したことになる。
このように、変速異常が発生した場合に、油圧制御装置30のうち変速ソレノイド弁119と、オン/オフソレノイド弁140を含む切り替え弁130と、のうち何れかの異常を特定することができるので、異常箇所に応じたフェールセーフ制御を実行することができる。
本実施の形態は、図面に示したものに限定されず、実施形態に応じて、様々に変更等を行うことができる。例えば、図3および4に示した油圧制御回路150において、プライマリプーリ圧調圧弁113、セカンダリプーリ圧調圧弁120、切り替え弁130をノーマリオープン式のパイロット作動弁として説明したが、これら弁を正常に機能させるように、図示しない他の形態として実現することは可能である。
また、図3および4に示した油圧制御回路150において、ライン圧モジュレータ弁106、プライマリプーリ圧調圧弁113、セカンダリプーリ圧調圧弁120、切り替え弁130は、それぞれ、入力ポート、出力ポート、信号圧ポートなどを備えると説明したが、例えば、ドレインポートやフィードバックポートなど他のポートを適宜備えることは可能である。
また、本発明は、変速機20に利用されるCVT70はベルト式無段変速機に限定されず、チェーン式無段変速機やトロイダル無段変速機についても適用可能である。
本発明の特許請求の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
以上のように、本発明に係る無段変速機の制御装置は、油圧制御装置に異常が生じた場合に故障箇所を特定することができるという効果を奏するものであり、無段変速機の制御装置に有用である。