[go: up one dir, main page]

JP2012092431A - ボトル缶用アルミニウム合金冷延板 - Google Patents

ボトル缶用アルミニウム合金冷延板 Download PDF

Info

Publication number
JP2012092431A
JP2012092431A JP2011192510A JP2011192510A JP2012092431A JP 2012092431 A JP2012092431 A JP 2012092431A JP 2011192510 A JP2011192510 A JP 2011192510A JP 2011192510 A JP2011192510 A JP 2011192510A JP 2012092431 A JP2012092431 A JP 2012092431A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
phase
hot
rolling
rolled sheet
plate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2011192510A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasuhiro Ariga
康博 有賀
Katsushi Matsumoto
克史 松本
Atsuto Tsuruta
淳人 鶴田
Ryoji Shoda
良治 正田
Yushi Inoue
祐志 井上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2011192510A priority Critical patent/JP2012092431A/ja
Publication of JP2012092431A publication Critical patent/JP2012092431A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C21/00Alloys based on aluminium
    • C22C21/06Alloys based on aluminium with magnesium as the next major constituent
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C21/00Alloys based on aluminium
    • C22C21/06Alloys based on aluminium with magnesium as the next major constituent
    • C22C21/08Alloys based on aluminium with magnesium as the next major constituent with silicon
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22FCHANGING THE PHYSICAL STRUCTURE OF NON-FERROUS METALS AND NON-FERROUS ALLOYS
    • C22F1/00Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working
    • C22F1/04Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working of aluminium or alloys based thereon
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22FCHANGING THE PHYSICAL STRUCTURE OF NON-FERROUS METALS AND NON-FERROUS ALLOYS
    • C22F1/00Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working
    • C22F1/04Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working of aluminium or alloys based thereon
    • C22F1/047Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working of aluminium or alloys based thereon of alloys with magnesium as the next major constituent

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Thermal Sciences (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Metal Rolling (AREA)
  • Continuous Casting (AREA)

Abstract

【課題】ボトル缶の素材であるアルミニウム合金冷延板の製造コストを低減させ、なおかつ耳率の板幅方向のばらつきを抑制する。
【解決手段】特定の組成からなるボトル缶用アルミニウム合金冷延板であって、板組織中のα相として代表される重心直径が1μm未満の分散粒子を少なくするとともに、Al(Fe、Mn)系金属間化合物であるβ相と、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物であるα相との存在割合を、X線回折ピークの最大高さHβとX線回折ピークの最大高さHαとの比Hβ/Hαで0.50以上とし、熱延板の板幅方向の再結晶率を均一化して、板幅方向の耳率のばらつきを小さくする。
【選択図】図1

Description

本発明はボトル缶用アルミニウム合金冷延板(ボトル缶用素材板)に関するものである。なお、本発明で言うアルミニウム冷延合金板とは、熱間圧延−冷間圧延を通じて圧延された圧延板(冷間圧延板)であって、冷間圧延上がりの板あるいは更に熱処理を施されて調質された板のことを言う。また、以下、アルミニウム合金をAl合金とも言う。
アルミニウム系飲料缶としては、缶胴体と缶蓋(缶エンド)とをシーミング加工することによって得られる2ピースアルミニウム缶が多用されている。前記缶胴体は、アルミニウム系冷間圧延板をDI加工(深絞り加工及びしごき加工)し、所定のサイズにトリミングを施した後、脱脂・洗浄処理を行い、さらに塗装および印刷を行って焼付け(ベーキング)を行い、缶胴縁部をネッキング加工及びフランジ加工することによって製造されている。
前記缶胴体用の冷間圧延板としては、従来からAl−Mg−Mn系合金であるJIS3004合金、3104合金等の硬質板が広く用いられている。このJIS3004合金、3104合金は、しごき加工性に優れており、強度を高めるために高圧延率で冷間圧延を施した場合でも比較的良好な成形性を示すことから、DI缶胴材として好適であるとされている。
前記飲料缶の中でも、ネジ付きの口部を有するボトル缶では、アルミニウム合金板に、下地処理(クロメート等)を行なった後に樹脂被覆(樹脂塗布又はフィルムラミネート)を行ない、続いて、この樹脂被覆がある状態で、円形のブランクに打抜き、カップ状に成形する。このように、ボトル缶(後述する3ピース・タイプ)の場合は、前記DI缶の製造工程とは若干異なり、アルミニウム合金板の両面に熱可塑性樹脂被膜層(樹脂塗布又はフィルムラミネート)を形成した上で成形する。
このカップ状への成形後、ボトル缶は、絞りしごき加工、トップドーム成形、トリミング、印刷及び塗装、ネジ・カール成形、ネックフランジ成形の各工程を経て製造される。前記絞りしごき加工では、前記カップ状の成形品に対し、再絞り加工とストレッチ加工又はしごき加工(DI加工)を行って、胴部を小径化し、薄肉化された有底円筒状の缶を成形する。その後、この有底円筒状の缶の底部側を複数回絞り加工することにより、肩部と未開口の口部を成形する。この缶胴部への前記印刷・塗装は、洗浄及び前記トリミング等の後に実施され、次いで、口部を開口して、前記カール部及びネジ部を形成する(ネジ・カール成形)。更に、ネジ部の反対側の部分に対し、ネックイン加工とフランジ加工を施し、シーマーにより、別途成形した底蓋を巻き締めすることによりボトル缶を得る(特許文献1参照)。
近年では、ボトル缶やDI缶のいずれについても、缶の側壁厚が110μm程度で、軽量化のための更なる薄肉化が求められている。このような薄肉化を達成するためには、缶の座屈強度の低下をきたさないように、材料の高強度化を図ることが重要である。さらには、しごき加工時における耳率が低いことも強く求められている。しごき加工時の耳率を低くすれば、しごき加工時の歩留まりを高めることができ、さらには缶胴の耳切れに起因する缶胴破断を防止することができる。
一般に、缶胴体の製造にあたっては、缶のブランクは、素材(元板)となるアルミニウム合金板の板幅方向における異なる複数の位置(部分)から、それぞれ採取されることになる。一方、素材となるアルミニウム合金板の製造工程においては、常に板幅方向に均一な特性を有する板が得られるとは限らず、通常は板幅方向に特性のばらつきが生じてしまうことが多い。したがって、素材板の耳率が平均的に低くても、耳率の大きさは、板幅方向の各位置でばらついてしまうことがあり、このような耳率のばらつきが生じれば、安定して歩留まりの高い缶胴体を得ることが困難となってしまう。
耳率自体を低くする技術は従来から種々提案されている。その多くは、均質化熱処理(以下、均質化処理、均熱処理とも言う)、熱間粗圧延−熱間仕上圧延からなる工程において、均質化熱処理を比較的高温として、熱間圧延後を終了した熱延板の再結晶を板幅方向に均一に進行させ、板幅方向における再結晶状態が均一な板を得ることで共通している。
例えば、特許文献2には、従来の熱間圧延条件では、熱間圧延において、立方体方位が優先した集合組織を十分に生じさせて、缶胴用アルミニウム合金板の耳率を低下させる技術が提案されている。このため、特許文献2では、530〜630℃の高温で均質化熱処理を施し、特に熱間仕上げ圧延条件を詳細に規定している。
特許文献3には、耳が圧延材の結晶学的異方性に起因して生じるものであり、その高低は熱延終了後に進行する再結晶により形成される立方体方位の結晶粒の集合組織成分(主に0°−90°耳)と、冷間圧延により形成される圧延集合組織成分(45°耳)とのバランスによって決まることが記載されている。この特許文献3では、缶径の縮小に伴うより厳しい耳率の低減を実現するために、熱間圧延条件に加え、上工程である均熱処理条件も重要であるとして、560〜620℃の比較的高温で均熱処理を施した缶胴用アルミニウム合金冷延板の製造方法が提案されている。
また、耳率自体を低くしても、冷延板の耳率の板幅方向のばらつきを抑制しなければ、安定して耳率が良好な材料とは限らない。このため、耳率のばらつきの抑制に関しても、従来から提案がなされている。
例えば、特許文献4では、鋳塊に対して540〜610℃の高温で均質化熱処理を施す。均質化熱処理の温度が540℃未満では、析出物の分布が密となって熱間圧延上がりの状態で再結晶しにくい組織となってしまうからである。また、熱間粗圧延の終了温度を430℃以上として、その後の熱間仕上圧延工程が開始されるまでの間の、比較的温度が高く再結晶が進行しやすい板幅中央部と、比較的温度が低く再結晶が起きにくい板幅端部との、板幅方向での再結晶の進行にばらつきを抑制している。また、熱間仕上圧延では、熱間圧延上がりで再結晶状態とし、その後の冷間圧延中途での中間焼鈍時において適度な立方体方位を発達させて耳率自体を低下させるために、その終了温度を330〜360℃の範囲内としている。
特許文献5では、アルミニウム合金熱間圧延板の板断面において板表面から板厚中心に至る領域のCube方位の結晶粒の面積率の差を小さくして、板幅方向に安定して耳率が良好な材料を得ることが提案されている。このため、均熱処理温度は600〜620℃程度の高温で均質化処理を施し、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物相と、熱間圧延工程でCube方位の結晶粒の核を提供する無析出帯(PFZ)とを均一に分布させている。また、同文献では、上記均熱処理(第1均熱処理)後に一旦冷却して、熱間粗圧延開始温度と同等あるいはやや高い温度に再加熱して数時間程度保持する第2均質化熱処理を施す、2回均熱と呼ばれる2回の均質化熱処理を施すことを推奨している。
特許文献6では、熱間圧延板のMnの平均固溶量を0.12〜0.38%の範囲、Cuの平均固溶量を0.01〜0.3%の範囲などに制御して、中間焼鈍することなく冷間圧延板を製造しても、この冷間圧延板をDI成形したときの耳率を小さくすることが提案されている。同文献では、MnやCuの平均固溶量が大きくなれば、再結晶時にCube方位(立方体方位)が発達し易くなって、熱間圧延板の平均耳率が小さくなる傾向があることを知見したものである。従来の熱間圧延後に中間焼鈍を行う方法では、内部組織のばらつきを前記中間焼鈍によって一旦キャンセルすることにより、耳率の安定化を図っていたのに対して、同文献によれば、中間焼鈍を行わなくても平均耳率を安定化させることができる。ただ、同文献でも、均質化熱処理温度はやはり550〜650℃程度の比較的高温としている。また、この均質化熱処理を、2回均熱など、複数の段階に分けて行っている。
特許文献7では、やはり、550〜650℃程度の高温で均質化処理を施し、一旦冷却してから再加熱してから熱間粗圧延を行う、前記2回均熱を施し、熱間圧延板のMn平均固溶量及び結晶粒径を所定の範囲に制御し、熱間圧延板の耳率を安定して−3〜−6%にし、これを、その後、中間焼鈍することなく冷間圧延することによって、得られる冷間圧延板の耳率を安定して0〜2%にすることが提案されている。
この他、ボトル缶ではなく、DI缶ではあるが、特許文献8のように、均質化処理温度を600〜640℃の高温として、鋳造時に生成したAl6(Mn、Fe)相晶出物であるβ相をα相(Al−Mn−Fe−Si系化合物)に変態させ、このα相の面積率を50%以上と大きくすることも提案されている。特許文献8では、このα相をDI缶へのしごき成形時の焼き付きを防止するために用いている。
特開2001−162344号公報 特開平9−268355号公報 特開平10−310837号公報 特開2008−156710号公報 特開2004−244701号公報 特許4205458号公報 特開2003−342657号公報 特開2000−248326号公報
ボトル缶の中には、アルミ板を成形した後に内外面塗装を行う2ピース・ボトル缶(缶胴を一体成形し、これにキャップを備えた“2ピース・タイプ”)と、素材に予めフィルムラミネートを施したのち缶胴成形する3ピース・ボトル缶(缶胴、底蓋、キャップから構成される“3ピース・タイプ”)があり、本発明は後者に適用する技術である。この3ピースタイプでは、前記カップ状に成形された缶胴体の上部に、更に、飲み口部を成形する前記しごき加工時に、前段のカップ状の缶胴体成形時に残留した、缶胴体底部周縁部のフランジを残す形で成形している。そして、この飲み口部の成形後(前記しごき加工後)に、このフランジはトリミングにて除去される。
前記3ピースタイプのボトル缶では、耳率自体を低く、そして耳率の板幅方向のばらつきを抑制できれば、トリミングにて除去されるフランジの量(トリミング量)を減らせることとなって、特に材料の歩留りを向上できることとなる。また、これだけでなく、ボトル缶について、最近では、軽量化のための前記缶の板厚の薄肉化のレベルにおいて、耳率の板幅方向のばらつきを抑制するような特性の向上だけでなく、素材板の製造コストを低減させることも必要となっている。言い換えると、耳率の板幅方向のばらつき抑制のために従来から採用していた製造条件を見直してでも、缶素材冷延板の製造コストを低減させて、なおかつ耳率の板幅方向のばらつきを抑制する、という難しい課題がある。
このような、製造コスト低減と耳率の向上という要求課題に対して、前記従来技術では応えることができない。前記従来技術では、前記した通り、熱間圧延板を中間焼鈍することなく冷間圧延することも提案されてはいる。しかし、例えば、前記均質化熱処理は前記高温のままであり、また、前記均質化熱処理を2回行うなど、缶素材冷延板の耳率低減や耳率の板幅方向のばらつきを抑制した上での製造コストの本格的な低減には何らつながっていない。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、ボトル缶の素材であるアルミニウム合金冷延板の製造コストを低減させ、なおかつ耳率の板幅方向のばらつきを抑制することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明のボトル缶用アルミニウム合金冷延板の要旨は、質量%で、Mn:0.3〜1.2%、Mg:1.0〜3.0%、Fe:0.3〜0.7%、Si:0.1〜0.5%を含有し、前記FeとMnとの質量組成比Fe/Mnが0.45〜1.5の範囲であり、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有する冷延板組織において、20000倍の倍率の透過型電子顕微鏡にて測定が可能な重心直径が1μm未満の分散粒子の平均個数密度が3個/mm2 未満であり、かつ、Al(Fe、Mn)系金属間化合物であるβ相と、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物であるα相とを含み、X線回折分析装置によって測定される、前記β相の回折ピークとみなせる2θ=20.5〜21.5°の範囲内にあるX線回折ピークの最大高さHβと、前記α相の回折ピークとみなせる2θ=25.5〜26.5°の範囲内にあるX線回折ピークの最大高さHαとの比、Hβ/Hαが0.50以上であることを特徴とする板幅方向の耳率のばらつきが小さいボトル缶用アルミニウム合金冷延板。
因みに、本発明で制御するのは、後述する通り、熱延される(均熱後の)鋳塊組織の分散粒子(α相、β相)であるが、本発明でこれらを規定しているのは冷延板の状態においてである。これらの分散粒子は、製造条件にも勿論よるが、本発明の製造条件範囲とすれば、熱延や冷延を経ても、均熱後の鋳塊組織の状態がそのまま維持されて、熱延板や冷延板でも殆ど変化しない。このため、本発明では、これら熱延される(均熱後の)鋳塊組織を、分析が難しい鋳塊や熱延板などの中間製品ではなく、分析が容易な最終のボトル缶素材である冷延板において(冷延板として)規定している。
本発明では、耳率の板幅方向のばらつきを抑制するために、熱延板組織の板幅方向の均一な再結晶を保証する点は、従来と同様である。但し、従来とは全く逆に、前記均熱処理温度をできるだけ低い温度として、熱延される(均熱後の)鋳塊組織の、再結晶を促進する粗大な分散粒子を一定量存在させる点が特徴的である。
耳率の板幅方向のばらつきの要因は、缶素材板の熱間圧延(熱延)終了後の再結晶の進行状況のばらつきである。この熱延工程では、導入されるひずみ量が比較的高い、缶素材板(熱延板)の板幅方向の端部側で再結晶が進行してしまうのに対し、導入されるひずみ量が低い、缶素材板(熱延板)の板幅方向の中央部側の、特に板厚中心部では、再結晶が起きにくくなる。この現象は、その後の冷間圧延後まで影響を及ぼし、最終板(成形缶)の耳として、大きなばらつきを示す結果になる。
これに対して、本発明では、最終板の耳率の板幅方向のばらつきを低減するために、前記均質化熱処理(均熱処理)後で熱延前の鋳塊の分散粒子状態を制御する。そして、再結晶を促進する、比較的粗大なAl(Fe、Mn)系金属間化合物であるβ相の存在割合を多くするとともに、再結晶を阻害する、比較的微細なAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物であるα相の存在割合を少なくする。このようなβ相とα相との存在割合のバランス制御によって、β相を増して、前記した缶素材板(熱延板)の板幅方向の中央部側の、特に板厚中心部の再結晶を促進させ、熱延板の板幅方向の再結晶率を均一化し、ひいては最終板耳率の板幅方向のばらつきを低減する。同時に、微細なα相は規制するが、比較的粗大なα相の方は過度に少なくしすぎないようにする。
このために、本発明では、前記均熱処理温度は550℃未満のできるだけ低い温度としたり、熱間圧延(特に粗圧延)条件を調整するなど、特に熱延板の製造工程を工夫して、再結晶を促進する前記β相の存在割合を多くするとともに、再結晶を阻害する前記微細なα相の存在割合を少なくするように制御する。
これに対して、前記した従来技術では、総じて、520℃以上の比較的高温の均熱処理を行ったり、2回の均熱処理を行ったりしているために、鋳造時に生成したβ相は固溶され、また、固溶Fe量や固溶Mn量も増して、前記熱延板の再結晶が進みにくい組織となっている。例えば、特許文献4では、再結晶させやすい組織を指向して、析出物の分布が密となる再結晶しにくい組織を防止しようとしているにもかかわらず、鋳塊に対して540〜610℃の高温で均質化熱処理を施している。また、特許文献8でも、均質化処理温度を600〜640℃の高温として、鋳造時に生成したβ相をα相に積極的に変態させ、このα相を多く存在させるとともに、やはり固溶Fe量や固溶Mn量も増した、再結晶しにくい組織にしている。
したがって、このような従来の製造方法では、前記均質化熱処理を1回のみで行うなどの工程省略を行い、かつ均熱温度も低くして、素材板の製造コストを低減した上で、缶素材板の耳率自体や耳率の板幅方向のばらつきを抑制することができない。この結果、ボトル缶の中でも3ピースタイプの缶の、缶胴体成形時に残留する缶胴体底部周縁部のフランジの量(トリミング量)を減らせない。
これに対して、本発明では、前記均質化熱処理を1回のみで行うなどの工程省略を行い、しかも均熱温度も低くして、素材板の製造コストを低減した上で、缶素材板の耳率自体や耳率の板幅方向のばらつきを抑制できる。この結果、ボトル缶の中でも3ピースタイプの缶胴体成形時のトリミング量を減らすことができる。
本発明冷延板のX線回折分析装置により測定されたX線回折線の回折ピークの分布を示す説明図である。
(Al合金冷延板組成)
先ず、本発明に係るアルミニウム合金冷延板(鋳塊)の化学成分組成(単位:質量%)について、各元素の限定理由を含めて、以下に説明する。
本発明におけるアルミニウム合金組成は、本発明ボトル缶用の冷間圧延板素材として、前記した缶への成形性や強度などの必要特性を満たし、かつ、前記本発明の規定する組織を化学成分組成の点から満たす必要がある。このため、質量%で、Mn:0.3〜1.2%、Mg:1.0〜3.0%、Fe:0.3〜0.7%、Si:0.1〜0.5%を含有し、前記FeとMnとの質量組成比Fe/Mnが0.45〜1.5の範囲であり、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成とする。
上記組成に加えて、更に、Cu:0.05〜0.5%、Cr:0.001〜0.3%、Zn:0.05〜0.5%から選択された一種または二種以上か、および/または、0.005〜0.2%のTiを単独で、又は0.0001〜0.05%のBと併せて含有しても良い。以下に各元素の規定の意義につき順に説明する。
Mn:0.3〜1.2%
Mnは強度の向上に寄与し、さらには成形性の向上にも寄与する有効な元素である。特に本発明の缶胴材(冷間圧延板)では、DI成形時にしごき加工が行われるため、Mnは極めて重要となる。Mnは、粗大なβ相などの種々のMn系金属間化合物を形成し、その粗大な化合物が熱延板の再結晶促進に寄与する。また、製品板の高強度化にも有効である。Mnの含有量が少な過ぎると、上記効果が発揮されない。このため、Mnの含有量は0.3%以上、好ましくは0.4%以上とする。一方、Mnが過剰になると、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物(α相)の生成量が増加して、熱延板での再結晶が困難になる。また、MnとAlとの初晶巨大金属化合物が晶出しやすくなり、成形性も低下する。それゆえ、Mn含有量の上限は1.2%、好ましくは1.1%、さらに好ましくは1.0%とする。
Mg:1.0〜3.0%、
Mgは単独で固溶強化によって強度を向上できる点で有効である。このためのMgの含有量は1.0%以上、好ましくは1.2%以上である。また、Mg含有量が少ないと、MgSi化合物の生成量が減少してSiが過剰に残るため、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物(α相)の生成量が増加する。一方、Mgが過剰になると、加工硬化が生じやすくなるため、成形性が著しく低下する。したがって、Mg量の上限は3.0%、好ましくは2.5%である。
Fe:0.3〜0.7%、
Feは結晶粒を微細化させる作用があり、さらには粗大なβ相の形成量を増加させて、熱延板の再結晶促進に寄与する。また、Feは、Mnの晶出や析出を促進し、アルミニウム基地中のMn平均固溶量やMn系金属間化合物の分散状態を制御する点でも有用である。このため、Feの含有量は0.3%以上、好ましくは0.4%以上とする。一方、Fe含有量が過剰になると、直径15μmを超えるサイズの巨大な初晶金属間化合物が発生しやすくなり、成形性が低下する。したがって、Fe含有量の上限は0.7%、好ましくは0.6%である。
ここで、直径1μm未満の微細な粒子(α相)の数密度を小さくし、再結晶の核生成サイトとなる、粗大なβ相の量を増加させるために、FeとMnとの質量組成比(Fe/Mn)を0.45〜1.5、好ましくは0.6〜1.4とする。この比が0.45、より厳しくは0.6より小さい場合は、Mnに対するFeの含有量が少なすぎ、β相の生成量が少なくなって、直径1μm未満の粒子(α相)の数密度が高くなる。一方、この比が1.5、より厳しくは1.4を超えると、α相の生成量が少なくなりすぎて、しごき加工性が低下する。
Si:0.1〜0.5%
Siは、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物(α相)を形成し、それが適正に分布している程、成形性が向上する。このため、Siの含有量は0.1%以上、好ましくは0.2%以上とする。一方、Siが過剰になると、熱延板の再結晶が抑制されて、耳率のばらつきが大きくなる。このため、Si含有量の上限は0.5%、好ましくは0.4%とする。
Cu:0.05〜0.5%
Cuは、固溶強化によって強度を増加させる。このため、Cuを選択的に含有させる場合の下限量は0.05%以上、好ましくは0.1%以上とする。一方、Cuが過剰になると、高強度は容易に得られるものの、硬くなりすぎるために、成形性が低下し、さらには耐食性も劣化する。このため、Cu含有の上限量は0.5%、好ましくは0.4%とする。
Cuの他に、同効の強度向上元素としては、Cr、Znなどが挙げられる。この点、Cuに加えて、更に、Cr、Znの一種または二種を選択的に含有させることができる。
Cr:0.001〜0.3%。
Crも強度向上に効果的な元素である。Crの量は、例えば、0.001%以上、好ましくは0.002%以上である。一方Crが過剰になると、巨大晶出物が生成して成形性が低下する。Cr量の上限は、例えば、0.3%程度、好ましくは0.25%程度である。
Zn:0.05〜0.5%。
Znも強度向上に効果的な元素である。Znの量は0.05%以上、好ましくは0.06%以上である。一方Znが過剰になると耐食性が低下する。Zn量の上限は0.5%程度、好ましくは0.45%程度である。
Ti:0.005〜0.2%。
Tiは結晶粒微細化元素である。この効果を発揮させたい時には選択的に含有させる。その際のTiの含有量は0.005%以上、好ましくは0.01%以上とする。なお、Tiが過剰になると、巨大なAl−Ti系金属間化合物が晶出して成形性を阻害する。したがって、Ti含有量の上限は0.2%、好ましくは0.1%とする。
Tiは単独で含有させてもよいが、微量のBと共に含有してもよい。Bと併用すると、結晶粒の微細化効果がさらに向上する。このために選択的含有させる際のBの含有量は、0.0001%以上、好ましくは0.0005%以上とする。一方、Bが過剰になると、Ti−B系の粗大粒子が生成して成形性を低下させる。したがって、B含有量の上限は0.05%、好ましくは0.01%とする。
以上記載した元素以外は不可避的不純物であり、上記した板特性を阻害しないために、その含有量は基本的に少ない方が良いが、アルミニウム合金の溶製工程における不純物低減のための精錬コストとの兼ね合いもある。したがって、上記板特性を阻害しない範囲で、JIS規格などで記載された、3000系アルミニウム合金の各元素の上限値程度までの含有は許容される。
(冷延板組織)
次ぎに、本発明冷延板組織について、以下に説明する。本発明では、前記成分組成に加えて、熱延板組織の板幅方向の均一な再結晶を保証するために、熱延される(均熱後の)鋳塊の前記主要元素(Mn、Fe、Cu)の組成や、組織の再結晶を促進する粗大な分散粒子であるβ相の量を、規制するα相との関係で保証する。但し、本発明で制御するのは、熱延される(均熱後の)鋳塊の前記組織であるが、前記した通り、本発明ではこれらを冷延板の状態において規定する。
ここで、改めて説明すると、本発明で規定するAl(Fe、Mn)からなる金属間化合物であるβ相は、鋳造時に生成する粗大な晶出物で、熱延時には、第2相分散粒子として、再結晶の核生成サイトとなり、熱延板組織の再結晶を促進する。一方、Al−Fe−Mn−Siからなる金属間化合物であるα相は、均熱中に、前記β相から変態するもの(粗大)と、新たに核生成して析出するもの(微細)の2種がある。
前記した従来技術のように、均熱条件が高温・長時間であるほど、β相からα相への前記変態が進行しやすく、均熱後に存在するα相は、これに由来するものが多くなる。ただ、本発明の最適製造条件における均熱温度が低い(550℃未満)ため、本発明における均熱後(冷延板)の組織中のα相は、均熱中に、このβ相から変態したものは少なく、その多くが均熱中に新たに核生成して析出した微細なものであると推考される。また、β相は粗大な晶出物であり、重心直径が1μm未満の微細なものは無い。したがって、これらを合わせると、本発明における冷延板組織を、透過型電子顕微鏡観察した場合に観察される重心直径が1μm未満の粒子は、ほとんど、均熱中に新たに核生成して析出したα相であると考えられる。
分散粒子:
本発明では、先ず、熱延板の再結晶を阻害する作用が大きい、重心直径が1μm未満の微細な分散粒子を規制するために、この平均個数密度を3個/mm2 未満と規定する。これら重心直径が1μm未満の微細な分散粒子は、その大部分が上記した通りの均熱中や、熱延中に、新たに核生成して析出したα相であり、この規定は、代表している微細なα相を実質的に規定しているものである。これによって、再結晶を阻害する、特に微細なα相自体を少なくし、缶素材板(熱延板)の板幅方向の中央部側の、特に板厚中心部の再結晶を促進させ、熱延板の板幅方向の再結晶率を均一化し、ひいては最終板耳率の板幅方向のばらつきを低減する。この平均個数密度が3個/mm2以上であれば、特に微細なα相が多くなって、熱延板の再結晶が阻害され、最終板耳率の板幅方向のばらつきを低減できない。
なお、本発明では、重心直径(大きさ)が1μm未満の微細な分散粒子を規定しているが、このような重心直径の上限規定だけでは、透過型電子顕微鏡(以下、TEMとも記載する)でも観察や測定が不能な微細分散粒子も範囲として含む可能性もある。このため、本発明ではTEMの倍率も規定して、この倍率にて測定が可能なものと更に規定して、測定が可能な微細分散粒子のみを含むように明瞭化している。この20000倍の倍率のTEMにて、再現性良く客観的に測定が可能な、分散粒子の下限の重心直径(大きさ)はおよそ30nmである。また、本発明で規定している、好ましい均熱や熱延の温度域では、原子の拡散速度が大きく、分散粒子の成長速度が大きいため、30nm以下の微細な粒子が、熱延での再結晶時に分散している可能性は極めて低い。したがって、本発明では、実際には、この30nm以上で、前記1μm未満の範囲の微細な分散粒子を測定および規定している。
更に、本発明では、敢えて分散粒子の平均個数密度を、通常、TEM観察で用いられる、薄膜試料の体積を勘案したmmあたりではなく、mmあたりで規定する 。この理由は、TEMの観察試料が厚さ100μm程度の薄膜であるのに対して、TEM像で観察される、本発明が対象とする分散粒子(析出物)は、この薄膜全体に3次元的に分散している粒子であることによる。このため、薄膜の厚さ方向に重なった状態で複数の粒子が分散していても、TEM像ではひとつの粒子にしか見えない(観察されない)ため、3次元的に正確な粒子個数をカウントすることは原理上不可能となる。また、観察視野内にわたって、薄膜の厚さが完全に同一であるとも限らない。そこで本発明では、便宜上、1mmあたりの分散粒子の個数を計算し、分散粒子の個数密度と規定する。
ここで、重心直径とは、不定形の分散粒子の最大の長さを円の直径とみなした際の、円相当径(円相当直径)であり、たとえば、特開2009-191293号、特開2009-215643号、特開2009-228111号、特開2009-242904号、特開2008-266684号、特開2007-126706号、特開2006-104561号、特開2005-240113号など、アルミニウム合金分野での分散粒子などの大きさの規定として汎用されている。
分散粒子の個数密度の測定:
重心直径が1μm未満の分散粒子の平均個数密度の測定は、冷延板組織の透過型電子顕微鏡観察にて行なう。より具体的には、板厚中央部、圧延面上面の試験材を鏡面研磨し、研磨面の組織を、20000倍の透過型電子顕微鏡により10視野の組織を観察し、1μm2 当たりの平均個数密度を測定した。この際、8μm×8μmの範囲で観察される粒子の個数を測定し、計算により1μm2あたりの粒子の個数を計算した。また、数密度には膜厚の影響が大きいため、TEM観察時の膜厚は100nmで一定とし、膜厚誤差は±20nmを許容範囲とした。
X線回折ピーク高さ:
本発明においては、次に、熱延板の再結晶促進のためのβ相の量を多くするが、これを保障するために、上記した、均熱中に新たに核生成などして析出する微細なα相を規制するだけではなく、更に、均熱中にβ相から変態などして生成するα相も、β相との関係で規制する。すなわち、これらβ相とα相との存在割合のバランスを制御して、β相を増して、β相の量を保障する。これによって、前記した缶素材板(熱延板)の板幅方向の中央部側の、特に板厚中心部の再結晶を促進させ、熱延板の板幅方向の再結晶率を均一化し、ひいては最終板耳率の板幅方向のばらつきを低減する。と同時に、均熱中に新たに核生成などして析出する微細なα相は規制するが、均熱中にβ相から変態などして生成する、比較的粗大なα相の方は、過度に少なくしすぎないようにする。ちなみに、このβ相から変態生成するα相はβ相と同じように粗大であるので、前記規制の対象とした、重心直径が1μm未満の、均熱中に新たに核生成して析出するα相(分散粒子)には含まれない。
α相が減少すると通常のDI缶においては潤滑性が低下し、しごき加工性が低下する。しかし、ボトル缶の場合は、前記した通り、前記DI缶の製造工程とは若干異なり、アルミニウム合金板(冷延板)の両面に熱可塑性樹脂被膜層(樹脂塗布又はフィルムラミネート)を形成した上で成形する。このため、この熱可塑性樹脂被膜層が成形時の潤滑剤の役割を果たすことによって、缶への成形性が大きく向上している。
このプレコート樹脂による潤滑効果に加えて、本発明では、前記したように、比較的粗大なα相の方は過度に少なくしすぎないようにして、素材板の缶成形性の低下を最小限に抑制している。すなわち、本発明のβ相とα相との存在割合の規定は、単にβ相の側だけを規定、あるいはα相の側だけを規制するのではなく、過度のα相の減少を抑えて、β相とα相との存在割合のバランスを制御して、缶成形性の低下を抑え、熱可塑性樹脂被膜層のプレコーティングを用いた場合の缶の成形性を保障しているものである。
これらβ相とα相との存在割合(バランス制御)の規定に、本発明では、X線回折分析装置により測定された回折ピーク強度を用いる。X線回折分析は、測定されるX線回折ピークの位置や高さで、金属マトリックス(組織)中の第2相粒子としての化合物(金属間化合物など)の種類や量の特定(定性化や定量化)が可能である。したがって、本発明における第2相粒子としてのβ相とα相との識別(区別)と定量化=存在割合の規定に最適である。
図1に、本発明冷延板のX線回折分析装置により測定されたX線回折線の回折ピークの分布を示す(後述する実施例表1、2の発明例7のもの)。この図1に示す回折ピークの位置(横軸位置)と、その図1の縦軸の回折ピークの高さH=強度(単位:CPS)より、アルミニウム合金組織中の第2相粒子としての、β相とα相との存在割合の同定を行うことができる。
この図1において、回折ピーク分布は、横軸の測定範囲2θ=10°〜100°の範囲で示され、この回折ピーク分布の下方(縦軸の0の位置の下方)に、上から順に晶出物やAlの各々の回折ピークが、その横軸の各位置ごとに各々細い棒線(棒グラフ)で示されている。ここで、この棒グラフは、上から順に、右側に晶出物と記載された、α相「(α-Al12(Fe、Mn)Siと記載」、β相「Al(Fe、Mn)と記載」、MgSi「金属間化合物:MgSiと記載」であり、一番下が、右端に母材成分と記載されたAlである。
この図1において、2θ=45°以降の大きな強度ピークは全て母材成分(母相)のAlであることが、回折ピーク分布とAlの棒グラフとの比較対照から分かる。また、α相とβ相とは、これらの各回折ピーク分布と各棒グラフとの比較対照から、互いのピークが殆どの横軸位置で重なり合っていることが分かる。
このような事実関係の中で、互いに重なり合わず、α相とβ相のいずれかにのみ存在するとともに、判別可能な(高さが再現性良く測定可能な)比較的大きな回折ピークを、これらの各回折ピーク分布と各棒グラフとの比較対照から探す。その結果、β相では、図1の左側から辿った場合の、矢印で示す最初の棒線である、2θ=20.5〜21.5°の範囲内における(21°付近にある)最大高さのX線回折ピークであることが分かる。また、α相では、図1の左側から辿った場合の、矢印で示す2番目の棒線である、2θ=25.5〜26.5°の範囲内における(26°付近にある)最大高さのX線回折ピークであることが分かる。すなわち、これら以外の位置にあるX線回折ピークは、α相とβ相とで互いに重なり合うか、例え重なり合わずとも小さく(低く)、再現性良く高さが測定できないことも分かる。したがって、上記した横軸位置(範囲内)にあって特定される各X線回折ピーク(その範囲で最大高さのX線回折ピーク)が、β相とα相との存在量を各々規定している、それぞれ固有の回折ピークであると見なすことができる。
X線回折ピーク高さ比Hβ/Hα
このため、本発明では、これら、β相の回折ピークとみなせる2θ=20.5〜21.5°の範囲内にあるX線回折ピークの最大高さHβと、前記α相の回折ピークとみなせる2θ=25.5〜26.5°の範囲内にあるX線回折ピークの最大高さHαとを用い、これらの比、Hβ/Hαでβ相とα相との存在割合を規定する。そして、これによって、β相の存在量を保障し、熱延板の均一な再結晶を保障する。
本発明では、このX線回折ピーク高さ比Hβ/Hαの下限を0.50以上とする。この比が0.50未満の場合は、β相が少なくなりすぎ、β相による再結晶促進効果に対して、α相による再結晶抑制効果が大きすぎることとなる。このため、耳率の板幅方向のばらつきを抑制するための、熱延板組織の板幅方向の均一な再結晶が保証できなくなる。ちなみに、α相が多くなりすぎる(β相が少なくなりすぎる)のは、均熱条件だけでなく、後述する通り、熱間粗圧延開始までの時間や熱間粗圧延における定常速度などの製造条件にもよる。
一方、本発明においても、量的な割合はβ相に比して少ないものの、α相が一定量必然的に存在する。前記特許文献8などにも開示される通り、一般的に、α相の分散によってしごき加工性が向上する。このため、α相の量が少なすぎると、本発明においても、熱可塑性樹脂被膜層を予めコーティングしていても、缶成形での潤滑が不足して、ゴーリングと称される擦り疵や焼付きなどの外観不良が発生する可能性がある。したがって、このような問題が生じるまでの缶成形性の低下が無いよう、ある程度のα相の存在を許容するために、このX線回折ピーク高さ比Hβ/Hαの上限は1.8以下、更に1.6以下とすることが好ましい。また、このα相の存在の許容によって、β相による缶成形性の低下も、最小限に抑えることができる利点もある。ただ、このX線回折ピーク高さ比Hβ/Hαがこれら好ましい上限値を超えるなど、α相が多くなりすぎると、缶成形性は向上する一方で、本発明の主目的である耳率自体は低下する。本発明のX線回折ピーク高さ比Hβ/Hαによる規定、すなわち、本発明のβ相とα相との存在割合の規定は、単にβ相の側だけを規定するのではなく、過度のα相の減少を抑えて、β相とα相との存在割合のバランスを制御して、缶成形性を保障する意義もある。
因みに、アルミニウム合金分野において、このようなX線回折によるX線回折ピーク高さや高さ比で、アルミニウム合金組織中の第2相粒子としてのα相やβ相を同定や規定するやり方は、例えば特開2010-116594号公報などで公知である。同特許文献では、過剰Si型などのAl−Mg−Si系のAA乃至JIS 6000系 のアルミニウム合金板ではあるが、この6000系アルミニウム合金板に存在するα相晶出物の割合を多くして、存在する晶出物全体を微細化および球状化させ、自動車パネルへの厳しい条件での曲げ加工性(ヘム加工性)を向上させている。
X線回折ピーク測定方法:
X線回折ピーク高さ、HβやHαの測定に用いるX線回折装置は、例えば、理学電気製X線回折装置(型式:RAD−RU300)を用い、Coターゲットを使用し、管電圧40kV、管電流200mA 、走査速度1°/min、サンプリング幅0.02°、測定範囲(2θ)10°〜100°の条件で行う。そして、β相の回折ピークとみなせる2θ=20.5〜21.5°の範囲内にある(21°付近にある)最大のX線回折ピーク高さHβ、α相の回折ピークとみなせる2θ=25.5〜26.5°の範囲内にある(26°付近の)最大のX線回折ピーク高さHαを求める。これらの各最大のピーク高さは、X線回折プロファイルからバックグラウンドを差し引いて各々求めた。
製造方法:
本発明における、ボトル缶の素材であるアルミニウム合金冷延板の製造方法は、従来の均熱、熱延、冷延の製造工程を大きく変えることなく製造が可能で、しかも、製造コストを低減させて、なおかつ耳率の板幅方向のばらつきを抑制することができる。
但し、本発明規定の組織とし、最終板耳率のばらつきを小さくするためには、均熱条件と熱間圧延条件を下記の条件とする必要がある。すなわち、前記した組成のアルミニウム合金鋳塊を、450℃以上、550℃未満の温度にて1回のみの均質化熱処理を行ったのちに、迅速に熱間粗圧延を開始し、かつ熱間粗圧延を迅速に終了させる。
均熱条件:
製造コスト低減のためにも、均熱処理は1回のみとし、均熱温度は450℃以上、550℃未満の、好ましくは460℃以上530℃未満の、比較的低温の範囲とする。前記した通り、本発明では、最終板の耳率の板幅方向のばらつきを低減するために、前記均質化熱処理(均熱処理)後で熱延前の鋳塊のβ相の存在態を制御して、特に、このβ相をα化変態させずに、比較的粗大なままで保持する。このため、前記均熱処理の温度は550℃未満のできるだけ低い温度として、晶出物β相をあまり固溶させず、β相のα化変態も抑制し、また、固溶Fe量および固溶Mn量も低下させ、前記熱延板の再結晶の核生成サイトとなる直径2〜15μmの比較的粗大な分散粒子であるβ相の量を積極的に増加させる。
これによって、前記した缶素材板(熱延板)の板幅方向の中央部側の、特に板厚中心部の再結晶を促進させ、熱延板の板幅方向の再結晶率を均一化し、ひいては最終板耳率の板幅方向のばらつきを低減する。但し、450℃未満と、あまり均熱温度が低すぎると、鋳塊の均質化や熱延もできない。
前記従来技術では、この反対に、前記した通り520℃以上の比較的高温の均熱処理を行うために、均熱温度が高すぎ、晶出物が固溶、あるいはβ相がα化変態して、本発明が規定する、熱延板の再結晶を促進する比較的粗大な分散粒子が不足する。また、固溶Fe量および固溶Mn量も増して、前記熱延板の再結晶が進みにくい組織となっている。更に、2回の均熱処理を好ましい態様としているために、製造コストが低減できない。
なお、均熱時間(均質化時間)は、鋳塊を均質化できれば短い程望ましく、例えば12時間以下、好ましくは6時間以下とするのが望ましい。
熱延条件:
熱間圧延は、圧延する板厚に応じて、前記均熱処理後の鋳塊(スラブ)の粗圧延工程と、この粗圧延後の板厚が約40mm以下の板を、約4mm以下の板厚まで圧延する仕上げ圧延工程とから構成される。これら粗圧延工程や仕上げ圧延工程では、リバース式あるいはタンデム式などの圧延機が適宜用いられ、各々複数のパスからなる圧延が施される。
熱間粗圧延:
本発明では、前記均熱処理終了後に一旦冷却して再加熱するような2回あるいは2段の均熱処理は行わず、1回のみの均熱処理とするために、前記した均熱温度、450℃以上、550℃未満の温度範囲で、熱間粗圧延を開始する。この粗圧延開始温度が450℃よりも低すぎると、熱延板の再結晶が抑制される。一方、粗圧延開始温度の上限は均熱処理温度(上限550℃)で決まる。仮に、550℃以上の温度から熱延を開始すると、熱延中に板とワークロールの焼付きが生じて板の表面不良が起こりやすくなる。
この熱間粗圧延は、均熱処理終了後速やかに(時間的な遅滞なく直ちに)に行う。速やかに熱間粗圧延を行うことによって、均熱処理終了後から熱間粗圧延開始までの直径1μm未満の粒子(α相)の生成を抑制できる。この点の目安として、前記均熱処理が終了したアルミニウム合金板は、15分以内、好ましくは10分以内に熱間粗圧延を開始する。
また、この熱間粗圧延において、リバース圧延機であれば数回から数十回の、すべてのパスの定常速度のうちで、最低の定常速度を50m/分以上とする。ここでいう定常速度とは、1パス当たりで圧延速度(ライン速度)が最高でかつ一定となる速度である。熱間粗圧延における全パスでの比較で最低となる定常速度(パス中最低定常速度)が50m/分未満の速度では、圧延時間が長くなって、α相の生成量が多くなり、熱延板の再結晶が抑制される。
熱間粗圧延の終了温度は400℃以上とすることが好ましい。熱延を、粗圧延と仕上げ圧延とに分けて、かつ連続して実施するに際し、熱間粗圧延の終了温度が低くなり過ぎると、次工程の熱間仕上圧延で圧延温度が低くなって、エッジ割れが生じやすくなる。また、熱間粗圧延の終了温度が低くなり過ぎると、仕上圧延後に再結晶するために必要となる自己熱が不足しやすくなるため、熱延板の再結晶がすすまなくなり、板幅方向の再結晶の均一性が損なわれる。
熱間仕上圧延:
熱間粗圧延が終了したアルミニウム合金板は、連続的など、速やかに(時間的な遅滞なく直ちに)熱間仕上圧延する。速やかに熱間仕上圧延することによって、熱間粗圧延で蓄積された歪みが回復してしまうのを防止でき、その後に得られる冷間圧延板の強度を高めることができる。この点の目安として、前記熱間粗圧延が終了したアルミニウム合金板は、5分以内、好ましくは3分以内に熱間仕上圧延することが好ましい。
熱間仕上圧延の終了温度は300〜360℃とすることが好ましい。熱間仕上圧延工程は、板を所定の寸法に仕上げる工程であり、圧延終了後の組織は自己発熱によって再結晶組織になるため、その終了温度は再結晶組織に影響を与える。熱間仕上圧延の終了温度を300℃以上とすることで、続く冷間圧延条件と併せて、最終板組織を板幅方向に均一な再結晶組織としやすい。熱間仕上圧延の終了温度が300℃未満では、上記本発明組織になりにくい。一方、360℃を越えると、粗大なMgSi化合物などが析出して、成形性を阻害する。さらに、結晶粒が粗大化して板表面の肌荒れが生じる。従って、熱間仕上圧延の終了温度の下限は300℃以上、好ましくは310℃以上とする。また、上限は360℃以下、好ましくは、350℃以下とする。
熱間仕上圧延機としては、スタンド数が3以上のタンデム式熱間圧延機を使用することが好ましい。スタンド数を3以上とすることによって、1スタンドあたりの圧延率を小さくでき、熱延板の表面性状を保ちつつ歪みを蓄積することができる。このため、冷間圧延板及びそのDI成形体の強度をさらに高めることができる。熱間 (仕上げ) 圧延終了後の合金板の板厚は、1.8〜3mm程度とするのが望ましい。板厚を1.8mm以上とすることによって、熱間圧延板の表面性状(焼付き、肌荒れなど)や板厚プロフィールの悪化を防止できる。一方、板厚が3mm以下とすることによって、冷間圧延板(通常、板厚:0.28〜0.35mm程度)を製造する際の圧延率が高くなりすぎるのを防止でき、DI成形後の耳率を抑制できる。
冷間圧延:
冷間圧延工程では、中間焼鈍することなく、複数のパス数による謂わば直通で圧延し、合計の圧延率を77〜90%にするのが望ましい。冷間圧延後の板厚は、ボトル缶への成形上、0.28〜0.35mm程度とする。なお、冷間圧延工程では、圧延スタンドが2段以上直列に配置された、タンデム圧延機を使用することが望ましい。このようなタンデム圧延機を使用することにより、圧延スタンドが1段で、繰り返しパス(通板)を行なって所定板厚まで冷延するシングルの圧延機と比して、同じ合計冷延率でも、パス(通板)回数が少なくて済み、1回の通板における圧延率を高くすることができる。
調質処理:
冷間圧延後は、必要に応じて、再結晶温度よりも低い温度での仕上焼鈍(最終焼鈍)などの調質処理を行ってもよい。但し、前記したタンデム圧延機による冷延では、より低温で、かつ連続的に回復を生じさせ、サブグレインを生成することができるために、このような仕上焼鈍も基本的には不要である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
アルミ地金の他に缶材スクラップなども溶解原料として用いて、下記表1に示す成分組成の3000系Al合金の溶湯を溶解し、DC鋳造法にて板厚600mm、幅2100mmの鋳塊を製造した。なお、表1において「−」で示す元素含有量は検出限界以下であることを示す。
これら成分組成の鋳塊を、表2に示す条件に従って、均熱処理、熱間圧延を行なった。均熱処理(1回のみ)は、表2に示す各処理温度で各例とも共通して4時間保持した。この均熱処理後に、熱間粗圧延として、スタンド数が1個のリバース熱間粗圧延機、熱間仕上圧延機として、スタンド数が4個のタンデム式熱間圧延機を使用して、熱間圧延を行なった。その際、表2に示すように、熱間粗圧延の開始温度、均熱処理終了から熱間粗圧延開始までの時間、熱間粗圧延の全パス中の最低定常時間(全パス中の最低の定常時間)、熱間粗圧延終了温度(概ね熱間仕上圧延開始温度)などを種々変えた。そして、熱間仕上圧延後の板厚を共通して2.5mmとした、アルミニウム合金熱間圧延板を製造した。
ここで、前記熱間粗圧延においては、板厚に応じて圧下率を変え、鋳塊の厚さが前記当初の板厚600mmから100mm以上までの板厚が厚い領域では、比較的軽圧下とするため、各例とも共通して、1パス当たりで最大となる圧下率を、好ましい25%未満の20%とし、15パス、粗圧延した。更に、鋳塊の厚さが100mm未満の粗圧延領域では、1パス当たりの最大の圧下率を表2に示す通り種々変えて、パス数は各例とも共通して4パスにて行った。
得られた熱間圧延板を、中間焼鈍することなく、ロールスタンドが2段のタンデム圧延機により1回のみの通板で冷間圧延(直通圧延)し、共通して、最終板厚0.3mmのボトル缶胴用板材(冷間圧延板)を製造した。
冷延後のボトル缶胴用冷延板(コイル)から試験片を採取し、試験片の機械的な特性および試験片の組織として、各々前記した測定方法で、重心直径が1μm未満の分散粒子の平均個数密度(個/mm2)、β相の回折ピークとみなせる2θ=20.5〜21.5°の範囲内にあるX線回折ピークの最大高さHβと、α相の回折ピークとみなせる2θ=25.5〜26.5°の範囲内にあるX線回折ピークの最大高さHαとの比Hβ/Hαを測定した。更に、試験片の耳率を測定、評価した。これらの結果も2に示す。
(機械的特性)
機械的特性(引張強さ、0.2%耐力)測定の引張試験はJIS Z 2201にしたがって行うとともに、試験片形状はJIS 5 号試験片で行い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。また、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
(耳率)
耳率は、このボトル缶胴用冷延板の幅方向の中央部と(いずれかの)端部の二箇所からブランクを採取し、潤滑油[D.A.Stuart社製、ナルコ147]を塗布した上で、エリクセン試験機によって、40%深絞り試験、カップ状に成形して調査した。試験条件は、ブランクの直径=66.7mm、ポンチの直径=40mm、ダイス側肩部のRを2.0mm、ポンチの肩R=3.0mm、しわ押さえ圧=400kgfで行なった。このように得られたカップの開口周縁部の8方向(圧延方向を0°として、0°方向、45°方向、90°方向、135°方向、180°方向、225°方向、270°方向、及び315°方向)に生じる山谷の形状を測定し、平均耳率を算出した。
本発明においては、平均耳率が0%〜+3.5%の範囲を許容範囲とした。この平均耳率の算出方法は、ボトル缶胴用板材をDI成形することによって得られる前記カップの展開図に基づく、前記従来技術にも開示される、公知の方法で行った。すなわち、前記カップの展開図の圧延方向を0°として、0°、90°、180°、及び270°方向に生じる耳の高さ(T1,T2,T3,T4;マイナス耳と称する)を測定し、45°、135°、225°、及び315°方向に生じる耳の高さ(Y1,Y2,Y3,Y4;プラス耳と称する)を測定する。なお各高さY1〜Y4,T1〜T4は、カップの底部からの高さである。そして各測定値から、次式に基づいて平均耳率を算出する。
平均耳率(%)=[{(Y1+Y2+Y3+Y4)−(T1+T2+T3+T4)}/{1/2×(Y1+Y2+Y3+Y4+T1+T2+T3+T4)}]×100
表2の発明例1〜12は、本発明成分組成(表1の合金略号1〜10)を有し、かつ、冷延板組織が、20000倍の倍率のTEMにて測定が可能な重心直径が1μm未満の分散粒子の平均個数密度が3個/mm2 未満であり、かつ、β相とα相とのX線回折ピークの最大高さHαとの比Hβ/Hαが0.50以上である。この結果、発明例1〜10は、表2から明らかなように、1回のみのしかも低温の均熱処理で、中間焼鈍なしという、安価なコストの製造方法でも、平均耳率自体が低く、板幅方向の耳率のばらつきが小さい。
これに対して、表2の比較例13〜17、21は、発明例と同じ好ましい製造条件で製造されている。しかし、アルミニウム合金組成(表1の合金略号11〜16)が本発明成分組成から外れるため、本発明の規定を外れる組織となっている。この結果、1回のみの、しかも低温の均熱処理、中間焼鈍なしという、安価なコストの製造方法では、平均耳率自体が高く、板幅方向の耳率のばらつきも大きくなっている。
比較例13は、表1の合金略号11のように、Si量が多すぎるため、重心直径が1μm未満の分散粒子の平均個数密度が多すぎ、かつ、β相とα相とのX線回折ピークの最大高さHαとの比Hβ/Hαも低すぎる。
比較例14は、表1の合金略号12のように、Fe量が少なすぎ、FeとMnとの質量組成比(Fe/Mn)も低すぎる。このため、β相とα相とのX線回折ピークの最大高さHαとの比Hβ/Hαも低すぎる。
比較例15は、表1の合金略号13のように、Fe量、Mn量が多すぎる。このため、重心直径が1μm未満の分散粒子の平均個数密度が多すぎ、かつ、β相とα相とのX線回折ピークの最大高さHαとの比Hβ/Hαも低すぎる。
比較例16は、表1の合金略号14のように、個々のFe量、Mn量は範囲内であるが、FeとMnとの質量組成比(Fe/Mn)が低すぎる。このため、重心直径が1μm未満の分散粒子の平均個数密度が多すぎ、かつ、β相とα相とのX線回折ピークの最大高さHαとの比Hβ/Hαも低すぎる。
比較例17は、表1の合金略号15のように、Mg量が少なすぎる。このため、重心直径が1μm未満の分散粒子の平均個数密度が多すぎ、かつ、β相とα相とのX線回折ピークの最大高さHαとの比Hβ/Hαも低すぎる。
比較例22は、表1の合金略号16のように、FeとMnとの質量組成比(Fe/Mn)のみが低すぎて本発明成分組成から外れている。それでもやはり、Mnに対するFeの含有量が少なすぎ、前記した通り、β相の生成量が少なくなって、重心直径が1μm未満の粒子(α相)の数密度が高くなる。この結果、表2の通り、重心直径が1μm未満の分散粒子の平均個数密度が多すぎ、かつ、β相とα相とのX線回折ピークの最大高さHαとの比Hβ/Hαが低すぎる。
また、比較例18〜21は、本発明成分組成(表1の合金略号2)ではあるものの、1回のみの均熱温度、熱間粗圧延の終了温度などの条件が、前記好ましい条件から外れるために、本発明の規定を外れる組織となっている。この結果、1回のみの、しかも低温の均熱処理、中間焼鈍なしという、安価なコストの製造方法では、平均耳率自体が高く、板幅方向の耳率のばらつきも大きくなっている。
比較例18は均熱温度が低すぎ、熱延割れが生じたため、表2に斜線を引いた通り、熱延の途中で中断した。
比較例19は熱間仕上圧延の終了温度が高すぎ、肌荒れによる表面不良が生じたため、表2に斜線を引いた通り、熱延後の冷延を実施しなかった。
比較例20は熱間粗圧延の終了温度と熱間仕上圧延の終了温度が低すぎ、重心直径が1μm未満の分散粒子の平均個数密度が多すぎ、かつ、β相とα相とのX線回折ピークの最大高さHαとの比Hβ/Hαが低すぎる。
比較例21は均熱温度が高すぎ、熱延で焼付きによる表面不良が生じたため、表2に斜線を引いた通り、熱延後の冷延を実施しなかった。
以上の結果から、本発明の各規定要件と好ましい製造条件との臨界的な意義が分かる。
Figure 2012092431
Figure 2012092431
以上説明したように、本発明によれば、ボトル缶の素材であるアルミニウム合金冷延板の製造コストを低減させ、なおかつ耳率の板幅方向のばらつきを抑制することが可能である。また、前記3ピースタイプのボトル缶では、耳率自体を低く、そして耳率の板幅方向のばらつきを抑制できれば、特にトリミングにて除去される前記フランジの量(トリミング量)を減らせることとなって、材料の歩留りを向上できる。したがって、本発明は、ボトル缶の中でも、3ピースタイプの缶用途に好適である。

Claims (3)

  1. 質量%で、Mn:0.3〜1.2%、Mg:1.0〜3.0%、Fe:0.3〜0.7%、Si:0.1〜0.5%を含有し、前記FeとMnとの質量組成比Fe/Mnが0.45〜1.5の範囲であり、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有する冷延板組織において、20000倍の倍率の透過型電子顕微鏡にて測定が可能な重心直径が1μm未満の分散粒子の平均個数密度が3個/mm2 未満であり、かつ、Al(Fe、Mn)系金属間化合物であるβ相と、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物であるα相とを含み、X線回折分析装置によって測定される、前記β相の回折ピークとみなせる2θ=20.5〜21.5°の範囲内にあるX線回折ピークの最大高さHβと、前記α相の回折ピークとみなせる2θ=25.5〜26.5°の範囲内にあるX線回折ピークの最大高さHαとの比、Hβ/Hαが0.50以上であることを特徴とするボトル缶用アルミニウム合金冷延板。
  2. 前記アルミニウム合金冷延板が、更に、Cu:0.05〜0.5%、Cr:0.001〜0.3%、Zn:0.05〜0.5%から選択された一種または二種以上を含有する請求項1に記載のボトル缶用アルミニウム合金冷延板。
  3. 前記アルミニウム合金冷延板が、更に、0.005〜0.2%のTiを単独で、又は0.0001〜0.05%のBと併せて含有する請求項1または2に記載のボトル缶用アルミニウム合金冷延板。
JP2011192510A 2010-09-30 2011-09-05 ボトル缶用アルミニウム合金冷延板 Pending JP2012092431A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011192510A JP2012092431A (ja) 2010-09-30 2011-09-05 ボトル缶用アルミニウム合金冷延板

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010221623 2010-09-30
JP2010221623 2010-09-30
JP2011192510A JP2012092431A (ja) 2010-09-30 2011-09-05 ボトル缶用アルミニウム合金冷延板

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2012092431A true JP2012092431A (ja) 2012-05-17

Family

ID=45893021

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011192510A Pending JP2012092431A (ja) 2010-09-30 2011-09-05 ボトル缶用アルミニウム合金冷延板

Country Status (5)

Country Link
JP (1) JP2012092431A (ja)
KR (1) KR20130051488A (ja)
CN (1) CN103140593B (ja)
AU (1) AU2011309067B2 (ja)
WO (1) WO2012043582A1 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011202273A (ja) * 2010-03-02 2011-10-13 Kobe Steel Ltd ボトル缶用アルミニウム合金冷延板
WO2014156907A1 (ja) * 2013-03-29 2014-10-02 株式会社神戸製鋼所 包装容器用アルミニウム合金板およびその製造方法
CN105903778A (zh) * 2016-04-27 2016-08-31 海安县华达铝型材有限公司 一种铝合金带材的生产方法
JP2016180141A (ja) * 2015-03-23 2016-10-13 株式会社神戸製鋼所 製缶後の光沢性に優れた絞りしごき缶用アルミニウム合金板および絞りしごき缶用樹脂被覆アルミニウム合金板
JP2022047475A (ja) * 2020-09-11 2022-03-24 中▲ロ▼材料応用研究院有限公司 アルミニウム箔、その製造方法及び用途

Families Citing this family (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6054658B2 (ja) * 2012-07-06 2016-12-27 株式会社Uacj 缶ボディ用アルミニウム合金板及びその製造方法
CN106029923B (zh) * 2014-02-18 2017-11-24 株式会社神户制钢所 罐盖用铝合金板
CN104561668A (zh) * 2014-12-22 2015-04-29 河南明泰铝业股份有限公司 酒盖料用铝合金薄板及其生产方法
JP6898254B2 (ja) * 2015-12-25 2021-07-07 株式会社Uacj 缶ボディ用アルミニウム合金板及びその製造方法
CN106222494A (zh) * 2016-09-07 2016-12-14 山东南山铝业股份有限公司 一种表面平整的铝合金板带及其制备方法
CN106756671B (zh) * 2016-11-28 2018-05-01 广西南南铝加工有限公司 罐体用铝合金卷材制备方法
JP6405014B1 (ja) * 2017-09-20 2018-10-17 株式会社Uacj ボトル缶胴用アルミニウム合金板及びその製造方法
CN108642344B (zh) * 2018-05-30 2020-03-31 乳源东阳光优艾希杰精箔有限公司 一种气雾剂瓶盖用铝合金的制备方法
CN109371266B (zh) * 2018-12-05 2020-08-18 中南大学 一种高强耐蚀可焊Al-Mg-Si系合金挤压材的生产方法
CN111910111A (zh) * 2020-08-13 2020-11-10 中铝瑞闽股份有限公司 一种减薄拉深罐身用铝镁锰铜合金板材的制备方法
CN117070808B (zh) * 2023-10-17 2024-01-02 魏桥(苏州)轻量化研究院有限公司 一种适于钎焊的铸造铝合金及其制备方法和应用
JP2025093222A (ja) * 2023-12-11 2025-06-23 株式会社レゾナック 冷間加工向けアルミニウム合金素材、熱間加工向けアルミニウム合金素材

Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0617181A (ja) * 1991-06-27 1994-01-25 Sky Alum Co Ltd 高強度で引裂き荷重が低く成形性に優れたアルミニウム合金硬質板およびその製造法
JPH07197173A (ja) * 1993-12-29 1995-08-01 Kobe Steel Ltd 成形加工用アルミニウム合金硬質板及びその製造方法
JPH0860283A (ja) * 1994-08-15 1996-03-05 Sky Alum Co Ltd Di缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法
JPH08134610A (ja) * 1994-11-15 1996-05-28 Furukawa Electric Co Ltd:The 成形加工用Al合金板の製造方法
JPH09279281A (ja) * 1996-04-12 1997-10-28 Furukawa Electric Co Ltd:The 耐蝕性に優れた缶蓋材用Al合金焼付塗装板とその製造方法
JP2005076041A (ja) * 2003-08-28 2005-03-24 Furukawa Sky Kk 缶胴用アルミニウム合金硬質板の製造方法
JP2006077278A (ja) * 2004-09-08 2006-03-23 Furukawa Sky Kk ボトル型缶用のアルミニウム合金板
JP2006152359A (ja) * 2004-11-29 2006-06-15 Furukawa Sky Kk ボトル缶用アルミニウム合金板およびその製造方法
WO2007052416A1 (ja) * 2005-11-02 2007-05-10 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho ネック部成形性に優れたボトル缶用アルミニウム合金冷延板およびそのアルミニウム合金冷延板の製造方法
JP2007270281A (ja) * 2006-03-31 2007-10-18 Furukawa Sky Kk ボトル型飲料缶用アルミニウム合金板およびその製造方法
JP2011132592A (ja) * 2009-12-25 2011-07-07 Sumitomo Light Metal Ind Ltd リングプル型キャップ用アルミニウム合金板及びその製造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4019082B2 (ja) * 2005-03-25 2007-12-05 株式会社神戸製鋼所 高温特性に優れたボトル缶用アルミニウム合金板
JP5568031B2 (ja) * 2010-03-02 2014-08-06 株式会社神戸製鋼所 ボトル缶用アルミニウム合金冷延板

Patent Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0617181A (ja) * 1991-06-27 1994-01-25 Sky Alum Co Ltd 高強度で引裂き荷重が低く成形性に優れたアルミニウム合金硬質板およびその製造法
JPH07197173A (ja) * 1993-12-29 1995-08-01 Kobe Steel Ltd 成形加工用アルミニウム合金硬質板及びその製造方法
JPH0860283A (ja) * 1994-08-15 1996-03-05 Sky Alum Co Ltd Di缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法
JPH08134610A (ja) * 1994-11-15 1996-05-28 Furukawa Electric Co Ltd:The 成形加工用Al合金板の製造方法
JPH09279281A (ja) * 1996-04-12 1997-10-28 Furukawa Electric Co Ltd:The 耐蝕性に優れた缶蓋材用Al合金焼付塗装板とその製造方法
JP2005076041A (ja) * 2003-08-28 2005-03-24 Furukawa Sky Kk 缶胴用アルミニウム合金硬質板の製造方法
JP2006077278A (ja) * 2004-09-08 2006-03-23 Furukawa Sky Kk ボトル型缶用のアルミニウム合金板
JP2006152359A (ja) * 2004-11-29 2006-06-15 Furukawa Sky Kk ボトル缶用アルミニウム合金板およびその製造方法
WO2007052416A1 (ja) * 2005-11-02 2007-05-10 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho ネック部成形性に優れたボトル缶用アルミニウム合金冷延板およびそのアルミニウム合金冷延板の製造方法
JP2007270281A (ja) * 2006-03-31 2007-10-18 Furukawa Sky Kk ボトル型飲料缶用アルミニウム合金板およびその製造方法
JP2011132592A (ja) * 2009-12-25 2011-07-07 Sumitomo Light Metal Ind Ltd リングプル型キャップ用アルミニウム合金板及びその製造方法

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011202273A (ja) * 2010-03-02 2011-10-13 Kobe Steel Ltd ボトル缶用アルミニウム合金冷延板
WO2014156907A1 (ja) * 2013-03-29 2014-10-02 株式会社神戸製鋼所 包装容器用アルミニウム合金板およびその製造方法
JP2014198879A (ja) * 2013-03-29 2014-10-23 株式会社神戸製鋼所 包装容器用アルミニウム合金板およびその製造方法
KR20150119444A (ko) * 2013-03-29 2015-10-23 가부시키가이샤 고베 세이코쇼 포장 용기용 알루미늄 합금판 및 그의 제조 방법
CN105051227A (zh) * 2013-03-29 2015-11-11 株式会社神户制钢所 包装容器用铝合金板及其制造方法
KR101723324B1 (ko) 2013-03-29 2017-04-04 가부시키가이샤 고베 세이코쇼 포장 용기용 알루미늄 합금판 및 그의 제조 방법
JP2016180141A (ja) * 2015-03-23 2016-10-13 株式会社神戸製鋼所 製缶後の光沢性に優れた絞りしごき缶用アルミニウム合金板および絞りしごき缶用樹脂被覆アルミニウム合金板
CN105903778A (zh) * 2016-04-27 2016-08-31 海安县华达铝型材有限公司 一种铝合金带材的生产方法
JP2022047475A (ja) * 2020-09-11 2022-03-24 中▲ロ▼材料応用研究院有限公司 アルミニウム箔、その製造方法及び用途
JP7280304B2 (ja) 2020-09-11 2023-05-23 中▲ロ▼材料応用研究院有限公司 アルミニウム箔、その製造方法及び用途

Also Published As

Publication number Publication date
AU2011309067A1 (en) 2013-05-02
WO2012043582A1 (ja) 2012-04-05
AU2011309067B2 (en) 2015-08-20
CN103140593B (zh) 2015-10-14
CN103140593A (zh) 2013-06-05
KR20130051488A (ko) 2013-05-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2012092431A (ja) ボトル缶用アルミニウム合金冷延板
JP4019082B2 (ja) 高温特性に優れたボトル缶用アルミニウム合金板
JP3913260B1 (ja) ネック部成形性に優れたボトル缶用アルミニウム合金冷延板
US9574258B2 (en) Aluminum-alloy sheet and method for producing the same
US9546411B2 (en) Aluminum-alloy sheet and method for producing the same
JP5568031B2 (ja) ボトル缶用アルミニウム合金冷延板
US20090053099A1 (en) Aluminum alloy sheet with excellent high-temperature property for bottle can
JP4939091B2 (ja) 曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板の製造方法
JP6405014B1 (ja) ボトル缶胴用アルミニウム合金板及びその製造方法
JP4328242B2 (ja) リジングマーク特性に優れたアルミニウム合金板
JP4019083B2 (ja) 高温特性に優れたボトル缶用アルミニウム合金冷延板
JP6912886B2 (ja) 飲料缶胴用アルミニウム合金板及びその製造方法
JP2004244701A (ja) 缶胴用アルミニウム合金冷間圧延板およびその素材として用いられるアルミニウム合金熱間圧延板
JP3838504B2 (ja) パネル成形用アルミニウム合金板およびその製造方法
JP4791072B2 (ja) 飲料缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法
JP2006037148A (ja) 缶胴用アルミニウム合金硬質板およびその製造方法
JP3871462B2 (ja) 缶胴用アルミニウム合金板の製造方法
JP3871473B2 (ja) 缶胴用アルミニウム合金板の製造方法
JP3644819B2 (ja) 缶胴用アルミニウム合金板の製造方法
JP4694770B2 (ja) 曲げ加工性に優れたアルミニウム合金板
JPH11256290A (ja) 缶胴用アルミニウム合金板の製造方法
JP4019084B2 (ja) 高温特性に優れたボトル缶用アルミニウム合金冷延板
JP4750392B2 (ja) ボトル型缶用のアルミニウム合金板
JP2006283113A (ja) 飲料缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法
JP4771726B2 (ja) 飲料缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130902

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A132

Effective date: 20140930

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20141127

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20150421