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JP2012067193A - ガスバリア性フィルムの洗浄方法、ガスバリア性包装体及び有機電子デバイス - Google Patents

ガスバリア性フィルムの洗浄方法、ガスバリア性包装体及び有機電子デバイス Download PDF

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JP2012067193A JP2010213257A JP2010213257A JP2012067193A JP 2012067193 A JP2012067193 A JP 2012067193A JP 2010213257 A JP2010213257 A JP 2010213257A JP 2010213257 A JP2010213257 A JP 2010213257A JP 2012067193 A JP2012067193 A JP 2012067193A
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layer
barrier film
film
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Konica Minolta Inc
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Abstract

【課題】本発明の目的は、表面に残存する異物が極めて少なく、かつガスバリア性フィルム表面にダメージを与えないガスバリア性フィルムの洗浄方法及びその方法により製造されたガスバリア性フィルムを用いた、極めてクリーンで耐久性の高い包装材料及び有機光電変換素子や有機EL素子のような有機電子デバイスを提供することにある。
【解決手段】ガスバリア性フィルムのウエット洗浄工程の前に、少なくとも1回の紫外線を用いたドライ洗浄工程を有することを特徴とするガスバリア性フィルムの洗浄方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、主に電子デバイス、医用包装材料等のパッケージ、または有機光電変換素子(有機太陽電池)や有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)、液晶等のプラスチック基板といったディスプレイ材料に用いられるガスバリア性フィルムの洗浄方法、及びこの方法を用いて製造したガスバリア性フィルムを有する有機光電変換素子、有機EL素子等の有機電子デバイスに関する。
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。
また、包装用途以外にも液晶表示素子、有機光電変換素子(太陽電池)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)基板等で使用されている。
このような分野での包装材料としてアルミ箔等が広く用いられているが、使用後の廃棄処理が問題となっているほか、基本的には不透明であり、外から内容物を確認することができないという課題を抱えており、さらに、太陽電池用材料、有機EL素子では透明性が求められており、適用することができない。
特に、液晶表示素子、有機EL素子、有機光電変換素子等への応用が進んでいる透明基板には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、ロール・トゥ・ロールでの生産が可能であること、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基板が採用され始めている。
さらに、最近では、従来の真空プロセスが必要な蒸着法ではなく、簡便な塗布プロセスでガスバリア性層の成膜を可能にし、大気圧下の連続生産を行う方法として、ポリシラザン等の珪素化合物の塗布液を基板上に塗布した膜に転化処理を施すことで、転化したシリカ膜からなるガスバリア性層を形成する方法もいくつか知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、有機EL素子や有機光電変換素子は、nmオーダーの有機薄膜を精密に積層していく必要があり、前記のようなガス透過性が非常に小さいガスバリア性フィルムでも有機薄膜素子を形成する表面に、所謂パーティクル(ゴミ等の異物)が残っていると、その部分が欠陥となり、有機EL素子ではダークスポットと呼ばれる非発光部(DSと呼ぶ)ができたり、有機光電変換素子においては発電できない部分が存在することとなり、単位面積当たりの発電効率を低下することになる。そのため、有機層を形成する前に基板洗浄を行うことが必須となっている。通常は溶剤や水に浸漬しながら超音波をかける、ウエットの超音波洗浄(単にウエット洗浄とも言う)を行い、基材を真空乾燥させた後、プラズマやUV等を用いる、所謂ドライ洗浄を行う。
しかし、有機薄膜材料は水や酸素に非常に弱く、基板洗浄に基板内部に取り込まれた溶剤や水分が、真空乾燥だけでは取り除けずに、素子作製後に有機薄膜材料に影響を与えるため、ウエット洗浄を行わずに粘着剤による異物除去を含むドライ洗浄のみで基板洗浄を行う洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
しかし、従来の洗浄方法でも完全に異物を取り除くことはできず、さらにウエット洗浄を無くし、ドライ洗浄だけでは残存溶剤や水の影響は抑制できるものの、除去しきれない異物が多くなることが分かった。さらには、例えばプラズマ洗浄の条件を強くして残存異物を減らそうとすると、ガスバリア性フィルム表面にダメージを与えることになり、ガスバリア性自身を劣化させてしまうことも判明した。すなわち、ガスバリア性フィルムのガスバリア性能を維持したまま、異物による故障は減らせていないのが現状である。さらに、我々が検討した結果、理由は明らかではないが、特許文献4にある塗布型のガスバリア性フィルムの表面は、従来のウエット洗浄を行う方法でも異物が除去し難い傾向にあることが分り、プラズマ洗浄によるダメージも受けやすいことが分かってきた。
特開2008−159824号公報 特開2009−255040号公報 特開2007−087852号公報 特開2009−081124号公報
本発明の目的は、表面に残存する異物が極めて少なく、かつガスバリア性フィルム表面にダメージを与えないガスバリア性フィルムの洗浄方法、及びその方法により製造されたガスバリア性フィルムを用いた、極めてクリーンで耐久性の高い包装材料及び有機光電変換素子や有機EL素子のような有機電子デバイスを提供することにある。
本発明の目的は、下記の構成により達成された。
1.ガスバリア性フィルムのウエット洗浄工程の前に、少なくとも1回の紫外線を用いたドライ洗浄工程を有することを特徴とするガスバリア性フィルムの洗浄方法。
2.前記ウエット洗浄工程後に、少なくとも1回の紫外線を用いたドライ洗浄工程を有することを特徴とする前記1に記載のガスバリア性フィルムの洗浄方法。
3.前記紫外線はその波長が200nm以下であることを特徴とする前記1または2に記載のガスバリア性フィルムの洗浄方法。
4.前記ガスバリア性フィルムが、樹脂基材上の少なくとも片方の面に、ポリシラザン骨格を含むケイ素化合物層を形成した後、波長200nm以下の真空紫外線を照射することにより酸化ケイ素を含むガスバリア性層を形成したガスバリア性フィルムであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの洗浄方法。
5.前記1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの洗浄方法で洗浄されたガスバリア性フィルムを用いることを特徴とするガスバリア性包装体。
6.前記1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの洗浄方法で洗浄されたガスバリア性フィルムを用いることを特徴とする有機電子デバイス。
7.前記有機電子デバイスが有機光電変換素子であることを特徴とする前記6に記載の有機電子デバイス。
8.前記有機電子デバイスが有機エレクトロルミネッセンス素子あることを特徴とする前記6に記載の有機電子デバイス。
本発明により、表面に残存する異物が極めて少なく、かつガスバリア性フィルム表面にダメージを与えないガスバリア性フィルムの洗浄方法、及びその方法により製造されたガスバリア性フィルムを用いた、極めてクリーンで耐久性の高い包装材料及び有機光電変換素子や有機EL素子のような有機電子デバイスを提供することができた。
本発明のガスバリア性フィルムの洗浄方法を示すフロー図である。 本発明の有機電子デバイスの概略断面図の一例である。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
(ガスバリア性フィルムの洗浄)
本発明のガスバリア性フィルムの洗浄方法は、図1に示すように、少なくとも1回の紫外線によるドライ洗浄を施した後にウエット洗浄を行うことを特徴とする。ウエット洗浄前のドライ洗浄は、異物を除去する洗浄の目的もあるが、もう一方でウエット洗浄の効率を上げ、かつ洗浄品質を揃えるためにガスバリア性フィルム表面の表面エネルギーを高くかつ製造ロットによる表面エネルギーのバラつきを減らす目的が含まれている。
ガスバリア性フィルムを製造後、デバイス化工程に入るまでの時間は様々である。通常、デバイス化工程に入るまでの間は温湿度、クリーン度は制御されるものの大気下で保管されるため、有機薄膜素子を形成する表面の表面エネルギーは時間とともに変化する。その結果、ウエット洗浄の効率にばらつきが生じ、製造ロットごとに異物の除去効率がばらついてしまうことが、デバイス品質のばらつき原因になることが分かった。
また、後述するようにガスバリア性層にも様々な製造方法があり、発生する異物の種類も異なる。例えばプラズマCVD法で作られたガスバリア性層表面は、CVD原料がプラズマ反応場で凝集した粒のような異物が発生することがあり、ポリシラザン骨格を有する前駆体を紫外線で改質する方法で製造した場合は、ポリシラザン原料の低分子成分等が異物原因となることがあり、大きさや付着力の強さも異なっていると思われる。
本発明者が鋭意検討した結果、紫外線によるドライ洗浄を行った後にウエット洗浄を行うことで、前述のように大きさや付着力が異なると思われる異物を、ガスバリア性フィルムの製造時期に左右されずに洗浄できることが分かった。
また、従来のようにウエット洗浄工程後に乾燥工程を経て、その後さらに少なくとも1回の紫外線によるドライ洗浄を、本発明と組み合わせることで、ウエット洗浄中に再付着した異物も洗浄が可能となりより好ましい。
(紫外線によるドライ洗浄)
本発明の紫外線によるドライ洗浄で用いる紫外線ランプは、有機物汚れを含む異物を効率的に分解し、かつガスバリア性フィルム表面にダメージを与えず表面エネルギーを効率的に上げるという観点から、波長200nm以下の発光波長を含むランプが好ましい。具体的には低圧水銀ランプ(185nm)、Xeエキシマランプ(172nm)、Arエキシマランプ(126nm)等が挙げられる。中でも、処理時間の短縮、発光効率、ランプ寿命の観点からXeエキシマランプを用いることが好ましい。
さらに、ウエット洗浄工程及び乾燥工程の後の紫外線ドライ洗浄工程にもエキシマランプを用いることが好ましい。水や水蒸気はエキシマランプが発光する真空紫外線を良く吸収することが知られており、異物を効率的に除去できるばかりでなく、乾燥後にガスバリア性フィルムに残存した微量の水分を同時に除去することが可能となる。
紫外線を照射する時の雰囲気は、目的の洗浄が達成できれば特に制限するところではないが、一般的には目的に応じた効果を得るため酸素濃度を調整する。紫外線により酸素が励起され、酸素濃度と紫外線波長、照度によって決まる量の酸素活性種やオゾンが生成し、これらが有機異物の分解を促進すると言われている。低圧水銀ランプを用いる場合は大気下(酸素濃度21%)で行うことが好ましいが、XeエキシマやArエキシマの等の真空紫外線を用いる場合は、酸素の吸収が大きく、酸素活性種やオゾンは高濃度で生成可能な反面、真空紫外光がガスバリア性フィルム表面まで届かなくなってしまう。本発明においては好ましくは0.01〜5%、さらに好ましくは0.1〜3%の酸素濃度で照射する。雰囲気中の酸素以外のガスは不活性ガスを用いることが好ましく、コストや放電電圧の高さの観点から窒素ガスを用いることが好ましく、乾燥窒素ガスを用いることがより好ましい。なお、改質時の温度は特に制限される所ではないが、樹脂基材の耐熱性に合わせて、なるべく高くした方が、処理効率が向上する。
(ウエット洗浄工程)
本発明におけるウエット洗浄は、公知の方法を用いることができる。超純水やアルカリ性の水溶液、パーティクルフリーの有機溶剤を適宜使用可能である。具体的な洗浄方法としては、前記の溶液への浸漬、浸漬中に搖動、浸漬中に超音波をかける超音波洗浄、前記溶液の流れの中へサンプル浸漬する方法等、公知の方法が挙げられる。
(乾燥工程)
本発明では、減圧処理及び/または加熱処理により乾燥を行うことが好ましく、減圧処理及び加熱処理の両方により乾燥を行うことがより好ましい。減圧処理及び/または加熱処理を行うことにより、ウエット洗浄工程後のガスバリア性フィルムに含まれる水分や有機溶剤を取り除き、これらによる有機薄膜デバイスの初期劣化を低減・防止することができる。
乾燥は、150℃以下で行うことが好ましく、100℃以下で行うことがより好ましい。このような手段を採用することにより、ガスバリア性フィルムの水分や有機溶剤を取り除き、かつ熱によるフィルムへの影響を少なくできる。
より具体的には、減圧処理とは、一定の真空度の環境下にガスバリア性フィルムを曝すことをいい、真空度が0.1Pa以下の条件で行うことが好ましく、真空度が0.01Pa以下の条件で行うことがより好ましい。このような手段を採用することにより、ガスバリア性フィルムからより多くの水分や有機溶剤を取り除くことができる。減圧と加熱を併用することでさらに多くの水分や有機溶剤を取り除くことが可能となる。
さらに、前述したように乾燥工程後のエキシマランプにより真空紫外線を照射することにより、ガスバリア性フィルムに残存した極微量の水分や有機溶剤を取り除くことが可能である。
〈ガスバリア性フィルム〉
本発明のガスバリア性フィルムは、有機樹脂成分を含有する樹脂基材の表面に少なくとも1層のガスバリア性層を形成することで得られる機能性フィルムである。
本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア性としては、JIS K 7129B法に従って測定した水蒸気透過率(水蒸気透過度:25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、10−3g/(m・24h)以下であることが好ましく、さらに好ましくは10−4g/(m・24h)以下であり、特に好ましくは10−5g/(m・24h)以下である。また、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過率(酸素透過度)が0.01cm/(m・24h・0.1MPa)以下であることが好ましく、より好ましくは0.001m/(m・24h・0.1MPa)以下である。
(ガスバリア性層及びガスバリア性フィルム)
本発明のガスバリア性フィルムは、少なくとも樹脂基材上の片方の面に、少なくとも1層のガスバリア性層を形成する。高いガスバリア性、特に水蒸気遮断性、酸素遮断性を両立するには、ガスバリア性層が無機材料からなることが好ましい。ガスバリア性層は複数層あってもよく、特に高いガスバリア性を実現するには複数層あることが好ましい。層数に関しては特に制限はないが、典型的には1〜20層が好ましく、2〜10層がさらに好ましい。また、外力等で破壊しやすい無機ガスバリア性層を保持するため、ガスバリア性層とガスバリア性層の間や最上層に中間層や保護層として有機成分を含む層を設置してもよい。なお、ガスバリア性層は樹脂基材の片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
ガスバリア性層として用いられる、実質的もしくは完全に無機物からなる無機層はガスバリア性を有すれば特に制限はない。無機物としては、典型的には、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、亜鉛、スズの酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、水素化物等が挙げられる。これらは純物質でもよいし、複数組成からなる混合物や傾斜材料層でもよい。これらのうち、アルミニウムの酸化物、窒化物もしくは酸窒化物、または珪素の酸化物、窒化物もしくは酸窒化物が好ましい。ガスバリア性フィルムを構成する各無機層の厚みに関しては特に限定されないが、典型的には1層あたり5〜500nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは1層当たり10〜200nmである。また、本発明で用いるガスバリア性フィルムの厚さは、5〜500μmであることが好ましく、25〜250μmであることがより好ましい。
(無機層の形成)
無機層の形成方法としては、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、ゾル−ゲル法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等が挙げられ、具体的には特許登録第3400324号公報、特開2002−322561号公報、同2002−361774号公報、同2008−56967号公報、特表2009−503157号公報記載の形成方法を採用することができる。特に本発明においては、真空系の複雑な装置を必要とせず、連続生産性に優れる大気圧プラズマCVD法、ゾル−ゲル法に含まれる、ケイ素化合物、特に好ましくはポリシラザン骨格を有する化合物からなる前駆体塗膜を形成し、紫外線、特に波長200nm以下の真空紫外光を照射してポリシラザン骨格を有する化合物からなる前駆体塗膜を改質することで酸化ケイ素及または酸窒化ケイ素からなるガスバリ性層を形成する方法が好ましい。
原理的には無機層の膜厚は厚いほどガスバリア性能が高くなるが、一方で脆弱になり割れやすくなること、成膜時の内部応力が蓄積され構造欠陥が増えることが知られている。その結果、単純に1層の膜厚を厚くすることだけではガスバリア性能の向上は限界がある。すなわち、1層当たりの膜厚を割れや構造欠陥が生じない程度まで薄くして、トータル膜厚を稼ぐために、複数層積層することが一般的に行われている。
本発明においては無機層1層の膜厚は10〜300nmが好ましく、30〜100nmがさらに好ましい。無機層を積層する場合、蒸着やCVD法では、前述したように蒸発原料が凝集して基板に付着する異物が多いため、表面平滑性を高く保つことが難しい欠点がある。しかし、ポリシラザン骨格を含む前駆体塗膜を形成後、該前駆体塗膜に真空紫外線で改質してバリ性層を形成する方法では、層ごとにレベリング効果や下層に形成してしまったピンホール等の欠陥を補修する効果も得ることができるため、表面平滑性に優れたガスバリア性フィルムが製造可能である。さらにポリシラザン骨格を含む前駆体塗膜を形成後、前駆体塗膜に真空紫外線で改質してガスバリア性層を形成する方法は、複雑な真空装置の必要がなく連続生産性にも優れるため、本発明においては最も好ましい様態である。
なお、無機層の膜厚は透過型電子顕微鏡による断面観察により、樹脂基材やその他の部材との画像濃度の違いとして検出することが可能であるため、この画像から計測する。また、層内の元素分布は、Arスパッタにより膜面から深さ方向へガスバリア性膜を削りながらX線光電子分光法(XPS)により深さ方向の組成比プロファイルのデータから算出が可能である。
次に、本発明内において、好ましい様態である大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法によるガスバリア性フィルムの製造方法及びポリシラザン骨格を有する前駆体塗膜に波長200nm以下の真空紫外線を照射して改質して製造するガスバリア性フィルムについて簡単に説明する。
(プラズマCVD法及び大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法)
プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法により得られる無機化合物、例えばケイ素化合物を有する層は、原材料(原料ともいう)である有機金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力等の条件を選ぶことで、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属硫化物等のケイ素化合物を有する層を、またこれらの混合物(金属酸窒化物、金属窒化炭化物等)も作り分けることができるため好ましい。
例えば、ケイ素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、ケイ素酸化物が生成する。また、亜鉛化合物を原料化合物として用い、分解ガスに二硫化炭素を用いれば、硫化亜鉛が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
このような無機物の原料としては、典型または遷移金属元素を有していれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。また、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール,エタノール,n−ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。なお、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガス等が挙げられる。
金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物を得ることができる。
これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。
このような放電ガスとしては、窒素ガス及び/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
本発明に係るケイ素化合物を有する層においては、含有する無機化合物が、SiOxCy(x=1.5〜2.0、y=0〜0.5)または、SiOx、SiNyまたはSiOxNy(x=1〜2、y=0.1〜1)であることが好ましく、光線透過性及び後述する大気圧プラズマCVD適性の観点から、SiOxであることが好ましい。
本発明に係るケイ素化合物を有する層が含有する無機化合物は、例えば、上記有機ケイ素化合物に、さらに酸素ガスや窒素ガスを所定割合で組み合わせて、酸素原子とN原子の少なくともいずれかと、Si原子とを含む膜を得ることができる。
以上のように、上記のような原料ガスを放電ガスと共に使用することにより様々な無機薄膜を形成することができる。
プラズマ放電処理装置においては、ガス供給手段から、前記金属を含む原料ガス、分解ガスを適宜選択して、またこれらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合してプラズマ放電発生装置にガスを送りこむことで前記の層を得ることができる。
本発明に適用できる大気圧プラズマ放電処理装置としては、例えば、特開2004−68143号公報、同2003−49272号公報、国際特許第02/48428号パンフレット等に記載されている大気圧プラズマ放電処理装置を挙げることができる。
(ポリシラザン骨格の前駆体塗膜に真空紫外線を照射して改質する製造方法)
(真空紫外光照射時の樹脂基材温度)
真空紫外光を照射する際の樹脂基材温度は、室温から150℃以下の温度で加温することが好ましい。さらに好ましくは樹脂基材が熱変形し難い、樹脂基材のTg(ガラス転移温度)以下の温度で行うことが好ましい。ただし、バックロールやテンタークリップ等で機械的に樹脂基材の変形を抑制できる状態であれば、Tg以上の温度にすることも可能である。また、改質処理時の熱による樹脂基材変形及び変動のガスバリア性層成膜への影響を極力抑制するために、樹脂基材をあらかじめ処理時の温度まで昇温しておき、熱的な平衡状態にしておくことも改質処理時の樹脂基材の熱変動を抑制することも有効である。
150℃よりも高い温度にすることも可能であるが、汎用の樹脂基材を用いることができる温度範囲としては150℃以下の温度が好ましい。
(ガスバリア性層への触媒添加)
ガスバリア性層の形成反応を促進するため、また低改質部を低減するために、アミン系の触媒等既知の触媒をガスバリア性層前駆体に添加することが好ましい。ただし、触媒はそれ自身がガスバリア欠陥にもなり得るため、ガスバリア性層前駆体材料に対して0.1〜5質量%の範囲での添加が好ましく、より好ましくは0.3〜3質量%、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%の添加量である。この範囲より低いと触媒を添加する効果が殆どなく、この範囲より多く添加すると、触媒が欠陥として作用し始め、改質条件を強くしてもガスバリア性能が上がらなくなってくる。
(ガスバリア性層の積層)
本発明の方法で成膜したガスバリア性層を複数層、積層することも、高いガスバリア性能を実現するためには好ましい。積層する方法は、ポリシラザン骨格を有する前駆体層を本発明の範囲内で改質することにより得られるガスバリア性層へ、さらにポリシラザン骨格を有する前駆体層を、本発明の範囲内で塗設、改質処理を順次繰り返すことで任意の層数が積層可能である。このように積層することにより、ガスバリア性層のトータル膜厚を厚くしながらクラックが入りにくいガスバリア性層を形成できるだけでなく、層ごとにレベリング効果や下層に形成してしまったピンホール等の欠陥を補修する効果も得ることができる。これは塗布型特有の効果であり、蒸着系成膜では難しかった、無機層を直接積層しながらも下層の欠陥をキャンセルできることを意味する。
(ポリシラザン含有液の塗布膜)
ポリシラザン化合物の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
本発明で用いられる「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。下記の一般式(I)で表される部分構造を有する化合物である。
Figure 2012067193
式中、R、R、及びRのそれぞれは、独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基等を表す。
本発明では、得られるガスバリア膜としての緻密性の観点からは、R、R及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地基板との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体または固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記一般式(I)で表される部分構造を有するポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
ポリシラザンを含有する液体を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは好ましくない。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度、等目的にあわせて選択し、複数の溶剤を混合してもよい。
ポリシラザン含有塗布液中のポリシラザン濃度は目的とするシリカ膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度である。
有機ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。アルキル基、特に最も分子量の少ないメチル基を有することにより下地基板との接着性が改善され、かつ硬くてもろいシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。
酸化珪素化合物への転化を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。中でも、触媒を含有しないパーヒドロポリシラザンからなる、NN120、NN110を用いることが、さらに緻密でガスバリア性の高いガスバリア性層を形成する上で最も好ましい。
また、塗布された膜は溶媒が除去された均一な乾燥膜を得る上で、アニールする態様が好ましい。アニール温度は、好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは70〜160℃である。アニール時間は、好ましくは5秒〜24時間程度、さらに好ましくは10秒〜2時間程度である。
このように、次工程に続く転化処理前に、前述した範囲でアニールを行うことにより、均一な塗布膜を安定に得ることができる。
なお、アニールは、一定温度で行ってもよく、段階的に温度を変化させてもよく、連続的に温度を変化(昇温及び/または降温)させてもよい。アニールの際には、反応を安定化するために湿度を調節することが好ましく、通常20〜90%RH、より好ましくは30〜80%RHである。
〈改質処理〉
ポリシラザンの酸化処理としては、水蒸気酸化及び/または加熱処理(乾燥処理を含む)、紫外線照射による処理等が知られている。
本発明で好ましく用いられるのは紫外線照射処理である。酸素の存在下(材料内に含まれる水や吸着酸素も酸素源として考える)で紫外光を照射することで活性酸素やオゾンが発生し、酸化反応をより進行させることができる。
この活性酸素やオゾンは非常に反応性が高く、例えば、ケイ素化合物としてポリシラザンを選択した場合、ケイ素酸化物の前駆体であるポリシラザン塗布膜は、シラノールを経由することなく直接酸化されることで、より高密度で欠陥の少ないケイ素酸化物膜が形成される。さらに反応性オゾンの不足分を光照射部とは異なる部分で、放電法等の公知の方法により酸素からオゾンを生成し、紫外線照射部に導入してもよい。
このときに照射する紫外線の波長は特に限定されるところではないが、紫外光の波長は100〜450nmが好ましく、150〜200nm程度の真空紫外光を照射することがより好ましい。
光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、Xeエキシマランプ、メタルハライドランプ、エキシマレーザー等を用いることができる。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10〜5000mJ/cmが好ましく、100〜2000mJ/cmがより好ましい。また、紫外線照射の際の照度は1mW/cm〜10W/cmが好ましい。ポリシラザン塗布膜に酸化性ガス雰囲気下で紫外線を照射することにより、ポリシラザンが高密度のケイ素酸化物膜、すなわち高密度シリカ膜に転化するが、該シリカ膜の膜厚や密度は紫外線の強度、照射時間、波長(光のエネルギー密度)により制御が可能であり、所望の膜構造を得るためにランプの種類を使い分ける等、適宜選択することが可能である。また、連続的に照射するだけでなく複数回の照射を行ってもよく、複数回の照射が短時間ないわゆるパルス照射で有ってもよい。
その中でもよりフォトンエネルギーが大きい200nm以下の波長成分を有する真空紫外光照射によって処理することが好ましい。エネルギーが小さいとポリシラザンの効果が不十分となりガスバリア性が低くなるためである。
〈200nm以下の波長成分を有する真空紫外光照射による処理〉
本発明において、好ましい方法として、真空紫外光照射による改質処理が挙げられる。真空紫外光照射による処理は、化合物内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で、膜の形成を行う方法である。
真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
エキシマ発光とは、Xe、Kr、Ar、Ne等の希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には
e+Xe→e+Xe
Xe+2Xe→Xe +Xe
Xe →Xe+hν(172nm)
となり、励起されたエキシマ分子であるXe が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。加えて発光効率が他の希ガスよりも高いことや大面積へ照射するためのランプを石英ガラスで作製できることから、Xeエキシマランプを好ましく使用することができる。
エネルギーの観点だけからだとArエキシマ光(波長126nm)が最も高く、高いポリシラザン層の改質効果が期待される。しかし、Arエキシマ光は石英ガラスでの吸収が無視できないほど大きくなるため、二酸化珪素ガラスではなく炭酸カルシウムガラスを用いる必要がある。しかし、炭酸カルシウムガラスは非常に割れやすく大面積を照射するランプとしては製造が困難であるのが実情である。
Xeエキシマランプは波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン膜の改質を実現できる。したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて、高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板等への照射を可能としている。
〈高照射強度処理と最大照射強度〉
照射強度が高ければ、光子とポリシラザン内の化学結合が衝突する確率が増え、改質反応を短時間化することができる。また、内部まで侵入する光子の数も増加するため改質膜厚も増加及び/または膜質の良化(高密度化)が可能である。但し、照射時間を長くしすぎると平面性の劣化やガスバリア性フィルムの他の材料にダメージを与える場合がある。一般的には、照射強度と照射時間の積で表される積算光量で反応進行具合を考えるが、酸化珪素の様に組成は同一でも、様々な構造形態をとること材料においては、照射強度の絶対値が重要になる場合もある。
従って、本発明では真空紫外光照射工程において、少なくとも1回は100〜200mW/cmの最大照射強度を与える改質処理を行うことが好ましい。100mW/cm以上とすることにより、急激な改質効率が劣化することなく、処理に時間を短期間とでき、200mW/cm以下とすることにより、ガスバリア性能の効率よく持たせることができ(200mW/cmを超えて照射してもガスバリア性の上昇は鈍化する)、基板へのダメージばかりでなく、ランプやランプユニットのその他の部材へのダメージも抑えることができ、ランプ自体の寿命も長期化できる。
〈真空紫外光照射時の酸素濃度〉
真空紫外光照射時の酸素濃度は10〜50000ppm(5%)とすることが好ましい。より好ましくは、1000〜10000ppm(1%)である。前記の濃度範囲より酸素濃度が高いと、酸素過多のガスバリア膜となり、ガスバリア性が劣化する。また前記範囲より低い酸素濃度の場合、大気との置換時間が長くなり生産性を落とすのと同時に、ロール・トゥ・ロールのような連続生産を行う場合はウエッブ搬送によって真空紫外光照射庫内に巻き込む空気量(酸素を含む)が多くなり、多大な流量のガスを流さないと酸素濃度を調整できなくなってくる。
本発明者の検討によると、ポリシラザン含有塗膜中には、塗布時に酸素及び微量の水分が混入し、さらには塗膜以外の支持体にも吸着酸素や吸着水があり、照射庫内に敢えて酸素を導入しなくとも改質反応に要する酸素を供給する酸素源は十分にあることが分かった。むしろ、酸素ガスが多く(5〜10%レベル)含まれる雰囲気で真空紫外光を照射した場合、改質後のガスバリア膜が酸素過多の構造となり、ガスバリア性が劣化する。また、前述したように172nmの真空紫外光が酸素により吸収され膜面に到達する172nmの光量が減少してしまい、光による処理の効率を低下することになる。すなわち、真空紫外光照射時には、できるだけ酸素濃度の低い状態で、真空紫外光が効率良く塗膜まで到達する状態で改質処理することが好ましい。
真空紫外光照射時に、これら酸素以外のガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
(樹脂基材)
樹脂基材は、ガスバリア性層を保持することができる有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂基材、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、さらには前記プラスチックを2層以上積層して成る樹脂基材等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等が好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性、無機層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いることができる。基板の厚みは5〜500μm程度が好ましく、さらに好ましくは25〜250μmである。本発明のガスバリア性フィルムは発光素子として使用する場合も鑑みて、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上であることが好ましい。また、熱収縮率も低いことが好ましい。
さらに、本発明に係る樹脂基材は透明であることが好ましい。基板が透明であり、基板上に形成する層も透明であることにより、透明なガスバリア性フィルムとすることが可能となるため、太陽電池や有機EL素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
また、上記に挙げたプラスチック等を用いた樹脂基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に用いられる樹脂基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となるプラスチックを押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基板を製造することができる。また、未延伸の基板を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、基板の流れ(縦軸)方向、または基板の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基板を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基板の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、本発明に係る樹脂基材においては、コロナ処理を施してもよい。
(有機層)
本発明では、ガスバリア性フィルムの曲げに対する応力を緩和する目的のほかに、突起等が存在する樹脂基材の粗面を平坦化し、あるいは、樹脂基材に存在する突起により透明無機化合物層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために、有機層を少なくとも樹脂基材と無機化合物層の間に設けてもよい。このような有機層は、例えば感光性樹脂を含有する組成物を塗布乾燥後、硬化させて形成されることが好ましい態様である。
有機層を構成する成分の基本骨格は、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄等からなるものであり、珪素やチタン、アルミニウム、ジルコニウム等の無機原子を基本骨格にした場合は上述のような効果が得られにくい。
有機層の感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
感光性樹脂の組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ−アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
有機層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法により形成することが好ましい。
有機層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、有機層の積層位置に関係なく、いずれの有機層においても、製膜性向上及び膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
感光性樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いて有機層を形成する際に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
有機層の平滑性は、JIS B 0601で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、30nm以下であることが好ましい。この範囲よりも大きい場合には、無機化合物を塗布した後の、凹凸を平滑化することが難しくなる場合がある。
本発明における有機層の厚みとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、有機層を有するフィルムとしての平滑性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなる。
(応力緩和層としての有機層)
本発明において、有機層は基板とガスバリア性層との間に、ガスバリ性アフィルムにかかる応力を緩和するための層として設けてもよい。特に、樹脂基材等の上に、前述した本発明の塗布型ガスバリア性層を形成する場合、無機酸化物等の前駆体であるポリシラザン等の塗布膜が、二酸化珪素膜及び酸化窒化珪素膜に転化する際、高密度化し、膜の収縮が起こるため、応力が集中することで、ガスバリア性層にクラックが発生する等の問題が生じる場合がある。
そこで、例えば、樹脂基材とガスバリア性層の中間に位置するような硬度、密度あるいは弾性率等の物性値を有する応力緩和層を設けると、クラック発生等を抑制する効果があると考えている。
具体的には、後述する本発明のガスバリア性層を形成するためのケイ素化合物として挙げた材料等から該応力緩和層を形成することが可能である。例えば、密度等を上層のガスバリア性層より低くなるように応力緩和層を設計する場合、ガスバリア性層と同じ材料を用いても、転化反応の進行度を転化方法や転化条件の選択、あるいは設けるガスバリア性層の膜厚等を適宜選択することによって制御することが可能である。また、得られる膜密度自体を応力緩和層に用いる材料の選択によって制御することも可能である。
具体的な材料としては、例えば、オルガノポリシラザンやパーヒドロポリシラザン、アルコキシシラン、あるいは、それらの混合物等を用いることが好ましい。
特に、メチルヒドロポリシラザン等のオルガノポリシラザンとパーヒドロポリシラザンの混合物を該応力緩和層として用い、ガスバリア性層にパーヒドロポリシラザンを用いた場合、硬度、密度あるいは弾性率等の物性値に勾配を持たせることでガスバリア性フィルムの曲げに対する応力を緩和する機能を持たせることができ、また、応力緩和層とガスバリア性層の密着性を向上させることができる点で大変好ましい。
オルガノポリシラザンとパーヒドロポリシラザンの混合比率は、望みの物性値に制御する目的で適宜選択すればよく、特に制限はない。例えば、オルガノポリシラザンの比率が高くなると、密度は低く設定でき、また、パーヒドロポリシラザンの比率が高くなると、密度は高く設定できる。
また、応力緩和層、ガスバリア性層は交互に複数層積層してもよく、熱、湿度、経時で、クラックや層界面での局所的な密着不良等が発生しないような材料構成、あるいは層構成を選択することが好ましい。
(有機層への添加剤)
好ましい態様の一つは、前述の感光性樹脂中に表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むものである。
ここで光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基等を挙げることができる。また感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。
また、感光性樹脂としては、このような反応性シリカ粒子や重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物に適宜汎用の希釈溶剤を混合することによって固形分を調整したものを用いることができる。
ここで反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001〜0.1μmの平均粒子径であることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、後述する平均粒子径1〜10μmの無機粒子からなるマット剤と組合せて用いることによって、本発明の効果である防眩性と解像性とをバランス良く満たす光学特性と、ハードコート性とを兼ね備えた平滑層を形成し易くなる。
なお、このような効果をより得易くする観点からは、さらに平均粒子径として0.001〜0.01μmのものを用いることがより好ましい。
有機層のガスバリア性層との密着性が向上させ、また、基板を湾曲させたり、加熱処理を行った場合にクラックの発生を防止し、ガスバリア性フィルムの透明性や屈折率等の光学的物性を良好に保持する観点から、平滑層中には、上述のような無機粒子を質量比として20〜60%の範囲で含有することが好ましい。
本発明では、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロルシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられる。
重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
本発明に用いられる平滑層の厚みとしては、基板の平滑性を向上し、さらに、基板の光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を基板の一方の面にのみ設けた場合におけるフィルムのカールを防止する観点から、1〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは2〜7μmの範囲である。
(ブリードアウト防止層)
ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、フィルム基板中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、平滑層を有する基板の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
その他の添加剤として、マット剤を含有してもよい。マット剤としては、平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種または2種以上を併せて使用することができる。
ここで無機粒子からなるマット剤は、ブリードアウト防止層の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
またブリードアウト防止層には、ハードコート剤及びマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を支持体フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。
なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
ブリードアウト防止層の厚みとしては、基板の耐熱性を向上させ、さらに、基板の光学特性のバランスを調整し易くなると共に、ブリードアウト防止層を基板の一方の面にのみ設けた場合における基板のカールを防止する観点から、1〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは2〜7μmの範囲である。
〈ガスバリア性フィルムの用途〉
本発明のガスバリア性フィルムは、種々の封止用材料、フィルムとして用いることができる。
本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア性フィルム表面の平滑性(異物が少ないこと)とガスバリア性能が高度にバランスしていることが要求される有機薄膜デバイス(有機光電変換素子、有機EL素子等)や非常にクリーン度が高いことを求められる医用品用包装材料、電子部品用包装材料に特に有用に用いることができる。本発明のガスバリア性フィルムは透明であるため、このガスバリア性フィルムを支持体として用いて有機光電変換素子に用いた場合、この側から太陽光の受光を行うように構成でき、EL素子に用いた場合、素子からの発光を妨げないため発光効率を劣化させない。
(有機電子デバイスの構成)
本発明の有機電子デバイスの基本的構成の例を図2に示す。
有機電子デバイス1は、樹脂基材6の上に第二電極5を有し第二電極5の上に有機機能層4を有し、有機機能層4の上に第一電極3を有し、第一電極3の上に本発明のガスバリア性フィルム2を有する。
有機機能層4としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層等特に限定なく挙げることができるが、本発明は、機能層が薄膜でかつ電流駆動系のデバイスである有機発光層、有機光電変換層を含む層である場合において、特に有効である。
即ち、本発明のガスバリア性フィルムは、電子デバイスの中でも最もガスバリア性が必要である有機EL素子、または、有機光電変換素子に適用することが好ましい。
(封止)
本発明のガスバリア性フィルムを、有機電子デバイスとして適用する場合について説明する。
まず、例えば、有機EL素子の場合、陽極層/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極層等、各種の有機化合物からなる機能層を作製する。得られた有機EL素子の断裁方法として、特に限定するところではないが、紫外線レーザー(例えば、波長266nm)、赤外線レーザー、炭酸ガスレーザー等の高エネルギーレーザーによるアブレーション加工で行うことが好ましい。ガスバリア性フィルムは割れやすい無機の薄膜を有しているため、通常のカッターで断裁すると断細部で亀裂が発生することがある。素子の断裁だけでなく、ガスバリア性フィルム単体での断裁も同様である。さらには無機層表面に有機成分を含む保護層を設置することでも断裁時のヒビ割れを抑制することが可能である。
次に、得られた有機EL素子の全体もしくは上部を封止する。
封止部材としては、本発明のガスバリア性フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等のプラスチック、及びこれらの複合物、ガラス等が挙げられ、必要に応じて、特に樹脂フィルムの場合には、樹脂基材と同様、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素等のガスバリア性層を積層したものを用いることができる。ガスバリア性層は、封止部材成形前に封止部材の両面もしくは片面にスパッタリング、蒸着等により形成することもできるし、封止後に封止部材の両面もしくは片面に同様な方法で形成してもよい。これについても、酸素透過度が1×10−3cm/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下のものであることが好ましい。
〈包装形態〉
本発明のガスバリア性フィルムは、連続生産しロール形態に巻き取ることができる(いわゆるロール・トゥ・ロール生産)。その際、ガスバリア性層を形成した面に保護シートを貼合して巻き取ることが好ましい。特に有機薄膜デバイスの封止材として用いる場合、表面に付着したゴミ(パーティクル)が原因で欠陥となる場合が多く、クリーン度の高い場所で保護シートを貼合してゴミの付着を防止することは非常に有効である。併せて、巻取り時に入るガスバリア性層表面への傷の防止に有効である。
保護シートとしては、特に限定するものではないが、膜厚100μm以下程度の樹脂基材に弱粘着性の接着層を付与した構成の一般的な「保護シート」、「剥離シート」を用いることができる。
〈測定方法〉
(各層の膜厚)
透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により、画像の濃淡及び電子線ダメージの度合いから各層の膜厚を測定した。
(膜厚方向の断面のTEM画像)
断面TEM観察
観察試料を以下のFIB加工装置により薄片作成後、TEM観察を行う。このとき試料に電子線を照射し続けると電子線ダメージを受ける部分とそうでない部分にコントラスト差が現れるため、その領域を測定することで算出できる。改質処理側で密度が高い領域は電子線ダメージを受けにくいが、そうでない部分は電子線ダメージを受け変質が確認される。
(FIB加工)
装置:SII製SMI2050
加工イオン:(Ga 30kV)
試料厚み:100〜200nm
(TEM観察)
装置:日本電子製JEM2000FX(加速電圧:200kV)
電子線照射時間:5秒から60秒
〈各層の窒素原子数と酸素原子数の比N/O〉
Arによるスパッタで膜面から深さ方向に削りながら、X線光電子分光法(XPS)により、膜厚方向の組成分布を知ることができる。このデータと前述の断層TEM画像から算出した膜厚と照合し、XPSのデータから窒素原子数と酸素原子数の比率を算出した。
なお、1ユニットは1回の塗布で前駆体層が形成されるため、組成変化部分で組成勾配をもちながら、明確な界面を示さずに変化する。このような場合は、層A、層B、層C各層内で1nm毎にN/Oを算出し、全てを平均した値をその層のN/O比とした。
(スパッタ条件)
イオン種:Arイオン
加速電圧:1kV
(X線光電子分光測定条件)
装置:VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200R
X線アノード材:Mg
出力:600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)
〈水蒸気透過率(WVTR)の測定〉
前述のJIS K 7129B法に従って水蒸気透過率を測定には種々の方法が提案されている。例えば、カップ法、乾湿センサー法(Lassy法)、赤外線センサー法(mocon法)が代表として上げられるが、ガスバリア性が向上するに伴って、これらの方法では測定限界に達してしまう場合があり、以下に示す方法も提案されている。水蒸気透過率の測定方法は特に限定するところではないが、本発明においてはCa法による評価を行った。
〈本発明評価に用いたCa法〉
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
水蒸気バリア性評価用セルの作製
ガスバリアフィルム試料のガスバリア性層面に、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリアフィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。また、屈曲前後のガスバリア性の変化を確認するために、上記屈曲の処理を行わなかったガスバリアフィルムについても同様に、水蒸気バリア性評価用セルを作製した。
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
なお、ガスバリア性フィルム面から以外の水蒸気の透過が無いことを確認するために、比較試料としてガスバリア性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
実施例
〈ガスバリア性フィルム1の作製〉
(樹脂基材)
樹脂基材として、両面に易接着加工された125μmの厚さのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンO3)の基板を、150℃で30分アニール加熱処理したものを用いた。
(有機層の形成)
上記樹脂基材上に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の(平均)膜厚が6μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cmで硬化を行い、有機層(平滑化層)を形成した。このときの最大断面高さRt(p)は16nmであった。
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さである。
(ガスバリア性層の形成)
〈ガスバリア性層1−CVDガスバリア性層(AGP)〉
上記有機層を設けた樹脂基材フィルムの上に、ケイ素化合物を有する層を以下に示す条件で、平滑化層とケイ素化合物層を交互に3層ずつ形成し、ガスバリア性フィルム1を作製した。
ケイ素化合物層の膜厚は30nmである。また層形成時の樹脂基材保持温度は120℃とした。ロール電極型放電処理装置を用い、ロール電極に対向する棒状電極を複数個フィルムの搬送方向に対し平行に設置し、各電極部に原料及び電力を投入し以下のように薄膜を形成した。
ここで誘電体は対向する電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。また、被覆後の電極間隙は1mmに設定した。また誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。電源は、応用電機製高周波電源(100kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
〈ケイ素化合物を有する層〉
放電ガス:Nガス
反応ガス1:酸素ガスを全ガスに対し8%
反応ガス2:TEOSを全ガスに対し0.1%
低周波側電源電力:100kHzを2W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを10W/cmで変化
〈ガスバリア性フィルム2の作製〉
ガスバリア性フィルム1の作製において、ガスバリア性層1を下記ガスバリア性層2に代えた以外は同様にしてガスバリア性フィルム2を作製した。
〈ガスバリア性層2−PHPS改質ガスバリア性層(エキシマ)〉
前記、平滑化層(有機層)を設けた基板表面に、ケイ素化合物含有液としてパーヒドロポリシラザンを所望膜厚となるように濃度調整したジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカNN120−20、無触媒タイプ、希釈液:脱水ジブチエーテル)とアクアミカNAX120−20を触媒濃度がパーヒドロポリシラザンに対し1質量%となるように混合した溶液を用い、スピンコート(5000rpm、60秒)にて塗布後、80℃にて10分間乾燥し、ケイ素化合物を含有する前駆体膜を形成した。
その後、MDエキシマ社製のステージ可動型キセノンエキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200を用いて、照射庫内の雰囲気の酸素濃度を窒素と酸素を用いて0.1%に制御しながら、ステージの移動速度を10mm/秒の速さで試料を往復搬送させて、波長172nmの真空紫外線を照射した。ピーク照度及び積算光量は、同条件で搬送しながら172nmに感度を持つ照度計H9535−172(浜松フォトニクス社製)を用いて測定した。
パーヒドロポリシラザン溶液の塗布から真空紫外線照射の工程を3回繰り返し、ガスバリア性層を3層有するガスバリア性フィルム2を作製した。
(条件)
エキシマ光強度:120mW/cm(172nm)
1層あたりの積算光量:4400mJ/cm
試料と光源の距離:3mm
ステージ加熱温度:100℃
これらガスバリア性フィルムの水蒸気透過率を、前述のCa法で評価したところ、いずれも7×10−5(g/(m・24hr))であった。
(ガスバリア性フィルムの洗浄)
表1に記載のように、洗浄方法を変えたガスバリア性フィルムを作製した。なお、本実施例内の第1ドライ洗浄、ウエット洗浄、乾燥、第2ドライ洗浄は以下の条件で、ガスバリア性フィルムに洗浄処理を施したことを意味する。ただし、各工程での条件は、本発明はこれに限定されるものではない。
〈第1ドライ洗浄〉
低圧水銀ランプ(波長185nm)を用いる場合
照射強度:10mW/cm
照射時間:3分
照射雰囲気:大気(酸素濃度21%)
試料表面とランプ管面距離:2cm
Xeエキシマランプ(172nm)を用いる場合
照射強度:60mW/cm
照射時間:10秒
照射雰囲気:窒素及び酸素(酸素濃度1%)
試料表面とランプ管面距離:3mm
〈ウエット洗浄〉
以下の超純水及びアルカリ洗剤水での洗浄工程を指す。
超純水による流水洗浄:1分
超純水による超音波洗浄:4分
超純水による流水洗浄:1分
アルカリ洗剤(セミコクリン10倍希釈液)による超音波洗浄:4分
超純水による流水洗浄:1分
超純水による超音波洗浄:4分
超純水による流水洗浄:1分
窒素ガスによるブロー乾燥
〈乾燥〉
真空オーブンを用いて0.1Pa以下の減圧環境下、100℃で6時間乾燥した。
〈第2ドライ洗浄〉
第1ドライ洗浄と同様の条件。
〈粘着シート及び酸素プラズマによるドライ洗浄〉
特開2009−081124号公報の実施例に記載の方法で行った。
〈有機EL素子の作製〉
表1のように洗浄を行ったガスバリア性フィルムの無機層の上に、厚さ150nmのITO(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、第1電極層を形成した。なお、パターンは発光面積が50mm平方になるようなパターンとした。
〈正孔輸送層の形成〉
第1電極層が形成されたガスバリア性フィルムの第1電極層の上に、以下に示す正孔輸送層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し正孔輸送層を形成した。正孔輸送層形成用塗布液は乾燥後の厚みが50nmになるように塗布した。
正孔輸送層形成用塗布液を塗布する前に、ガスバリア性フィルムの洗浄表面改質処理を、波長184.9nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm、距離10mmで実施した。帯電除去処理は、微弱X線による除電器を使用し行った。
(塗布条件)
塗布工程は大気中、25℃相対湿度50%の環境で行った。
(正孔輸送層形成用塗布液の準備)
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)を純水で65%、メタノール5%で希釈した溶液を正孔輸送層形成用塗布液として準備した。
(乾燥及び加熱処理条件)
正孔輸送層形成用塗布液を塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度100℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理装置を用い温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、正孔輸送層を形成した。
〈発光層の形成〉
引き続き、正孔輸送層迄を形成したガスバリア性フィルムの正孔輸送層の上に、以下に示す白色発光層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し発光層を形成した。白色発光層形成用塗布液は乾燥後の厚みが40nmになるように塗布した。
(白色発光層形成用塗布液)
ホスト材のH−Aを1.0gと、ドーパント材D−Aを100mg、ドーパント材D−Bを0.2mg、ドーパント材D−Cを0.2mg、100gのトルエンに溶解し白色発光層形成用塗布液として準備した。
Figure 2012067193
(塗布条件)
塗布工程を窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。
(乾燥及び加熱処理条件)
白色発光層形成用塗布液を塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、温度130℃で加熱処理を行い、発光層を形成した。
〈電子輸送層の形成〉
引き続き、発光層迄を形成したのち、以下に示す電子輸送層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し電子輸送層を形成した。電子輸送層形成用塗布液は乾燥後の厚みが30nmになるように塗布した。
(塗布条件)
塗布工程は窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、電子輸送層形成用塗布液の塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。
(電子輸送層形成用塗布液)
電子輸送層はE−Aを2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール中に溶解し0.5質量%溶液とし電子輸送層形成用塗布液とした。
Figure 2012067193
(乾燥及び加熱処理条件)
電子輸送層形成用塗布液を塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理部で200℃で加熱処理を行い、電子輸送層を形成した。
(電子注入層の形成)
引き続き、形成された電子輸送層の上に電子注入層を形成した。まず、基板を減圧チャンバーに投入し、5×10−4Paまで減圧した。あらかじめ、真空チャンバーにタンタル製蒸着ボートに用意しておいたフッ化セシウムを加熱し、厚さ3nmの電子注入層を形成した。
(第2電極の形成)
引き続き、形成された電子注入層の上に第1電極の上に取り出し電極になる部分を除き、形成された電子注入層の上に5×10−4Paの真空下にて第2電極形成材料としてアルミニウムを使用し、取り出し電極を有するように蒸着法にて、発光面積が50mm平方になるようにマスクパターン成膜し、厚さ100nmの第2電極を積層した。
(裁断)
第2電極まで形成したガスバリア性フィルムを、再び窒素雰囲気に移動し、規定の大きさに裁断し、有機EL素子を作製した。
(電極リード接続)
作製した有機EL素子に、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製異方性導電フィルムDP3232S9を用いて、フレキシブルプリント基板(ベースフィルム:ポリイミド12.5μm、圧延銅箔18μm、カバーレイ:ポリイミド12.5μm、表面処理NiAuメッキ)を接続した。
圧着条件:温度170℃(別途熱伝対を用いて測定したACF温度140℃)、圧力2MPa、10秒で圧着を行った。
(封止)
電極リード(フレキシブルプリント基板)を接続した有機EL素子を、市販のロールラミネート装置を用いて封止部材を接着し、有機EL素子を製作した。
なお、封止部材として、30μm厚のアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)をドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いラミネートした(接着剤層の厚み1.5μm)ものを用いた。
アルミニウム面に熱硬化性接着剤を、ディスペンサを使用してアルミ箔の接着面(つや面)に沿って厚み20μmで均一に塗布した。
熱硬化接着剤としては以下のエポキシ系接着剤を用いた。
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
ジシアンジアミド(DICY)
エポキシアダクト系硬化促進剤
しかる後、封止基板を、取り出し電極及び電極リードの接合部を覆うようにして密着・配置して、圧着ロールを用いて圧着条件、圧着ロール温度120℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minで密着封止した。
(有機EL素子の故障(黒点)評価)
有機EL素子試料に1mA/cmの電流を印加し発光させる。作製直後と300時間連続発光(60℃、90%RH)させた後の発光状態を、100倍のマイクロスコープ(株式会社モリテックス製MS−804、レンズMP−ZE25−200)でパネルの一部分を拡大し、撮影を行った。撮影画像を2mm四方に切り抜き、目視で観察を行い、黒点の状況を調べ、発光面積に対する黒点の面積をそれぞれ評価しランク付けを行った。
(評価ランク)
◎:0%〜1%未満
○:1%〜2%未満
△:2%〜4%未満
×:4%以上
評価の結果を表1に示す。
Figure 2012067193
表1に記載のように、本発明の洗浄方法を用いると初期の黒点発生が少なく、また連続発光させた後でも黒点の発生が少ないことが分かる。また、ポリシラザン骨格を有する前駆体塗膜を真空紫外光で改質して製造するガスバリア性フィルムに対してはその効果が顕著であることが分かる。
1 有機電子デバイス
2 ガスバリア性フィルム
3 第一電極
4 有機機能層
5 第二電極
6 樹脂基材

Claims (8)

  1. ガスバリア性フィルムのウエット洗浄工程の前に、少なくとも1回の紫外線を用いたドライ洗浄工程を有することを特徴とするガスバリア性フィルムの洗浄方法。
  2. 前記ウエット洗浄工程後に、少なくとも1回の紫外線を用いたドライ洗浄工程を有することを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルムの洗浄方法。
  3. 前記紫外線はその波長が200nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムの洗浄方法。
  4. 前記ガスバリア性フィルムが、樹脂基材上の少なくとも片方の面に、ポリシラザン骨格を含むケイ素化合物層を形成した後、波長200nm以下の真空紫外線を照射することにより酸化ケイ素を含むガスバリア性層を形成したガスバリア性フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの洗浄方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの洗浄方法で洗浄されたガスバリア性フィルムを用いることを特徴とするガスバリア性包装体。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの洗浄方法で洗浄されたガスバリア性フィルムを用いることを特徴とする有機電子デバイス。
  7. 前記有機電子デバイスが有機光電変換素子であることを特徴とする請求項6に記載の有機電子デバイス。
  8. 前記有機電子デバイスが有機エレクトロルミネッセンス素子あることを特徴とする請求項6に記載の有機電子デバイス。
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