JP2011089144A - 曲げ性及び延性に優れた成形加工用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プレス成形等の成形加工に供されるアルミニウム合金板材において、その板厚方向における集合組織の制御を考慮することによって、プレス成形時等において惹起される割れの発生を防止すること。
【解決手段】板厚(t)が0.3〜10mmであるアルミニウム合金板において、板表面から0.2×t(mm)までの板厚部位における集合組織の主方位がCube方位であって、且つ該Cube方位の方位密度が20以上(ランダム比)である一方、Cube方位以外の結晶方位の方位密度が10以下(ランダム比)である表層領域を、少なくとも一方の主面側に有すると共に、該表層領域を除く残りの板厚部位における集合組織の全ての結晶方位の方位密度が10以下(ランダム比)であり、更に、圧延方向に対して0°、45°及び90°方向の伸びが全て25%以上であって、且つその最大値と最小値との差が5%以下であるように構成した。
【選択図】 なし
【解決手段】板厚(t)が0.3〜10mmであるアルミニウム合金板において、板表面から0.2×t(mm)までの板厚部位における集合組織の主方位がCube方位であって、且つ該Cube方位の方位密度が20以上(ランダム比)である一方、Cube方位以外の結晶方位の方位密度が10以下(ランダム比)である表層領域を、少なくとも一方の主面側に有すると共に、該表層領域を除く残りの板厚部位における集合組織の全ての結晶方位の方位密度が10以下(ランダム比)であり、更に、圧延方向に対して0°、45°及び90°方向の伸びが全て25%以上であって、且つその最大値と最小値との差が5%以下であるように構成した。
【選択図】 なし
Description
本発明は、優れた曲げ性及び延性を有する成形加工用アルミニウム合金板及びその製造方法に係り、特に、プレス成形性と曲げ加工性とを両立させてなる成形加工用アルミニウム合金板と、それを有利に製造する方法に関するものである。
近年、地球環境負荷低減に伴なう軽量化ニーズの高まりから、様々な製品へのアルミニウム合金板材の適用が進められている。例えば、自動車等の構造部材の分野においては、その軽量化等の社会的要求に応えるべく、板製品、押出製品、鍛造製品等の部品には、鉄鋼材料に代えて、アルミニウム合金材料とすることが検討されているのである。而して、アルミニウム合金板材は、従来の鋼板に比べて、プレス成形性において劣るものであるところから、上記した材料の代替に際しては、プレス成形性の改善が必要となってくるのである。
ところで、アルミニウム合金板材をプレス成形する際には、従来から、プレス成形操作の種類、例えば、深絞成形操作、張出成形操作、曲げ加工成形操作等に応じて、アルミニウム合金板の集合組織等を制御し、その成形性を向上させることが提案されている。例えば、特開2003−268475号公報、特開2004−323952号公報、特開2005−171295号公報等においては、自動車外板用Al−Mg−Si系合金板材の集合組織において、板厚方向のCube方位の方位密度を制御することによって、その曲げ加工性を改善し得ることが明らかにされている。しかしながら、それら提案の技術は、何れも、延性の面内異方性までは考慮しておらず、そのために、延性に大きく左右されるプレス成形性の改善には、充分とは言い難いものであった。
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その課題とするところは、プレス成形等の成形加工に供されるアルミニウム合金板材において、その板厚方向における集合組織の制御を考慮することによって、プレス成形時等において惹起される割れの発生を防止しようとすることにあり、また、そのような優れた特性を有するアルミニウム合金板材を有利に製造し得る方法を提供することにある。
そして、本発明にあっては、かくの如き課題の解決のために、板厚(t)が0.3〜10mmであるアルミニウム合金板にして、板表面から0.2×t(mm)までの板厚部位における集合組織の主方位がCube方位であって、且つ該Cube方位の方位密度が20以上(ランダム比)である一方、Cube方位以外の結晶方位の方位密度が10以下(ランダム比)である表層領域を、少なくとも一方の主面側に有すると共に、該表層領域を除く残りの板厚部位における集合組織の全ての結晶方位の方位密度が10以下(ランダム比)であり、更に、圧延方向に対して0°、45°及び90°方向の伸びが全て25%以上であって、且つその最大値と最小値との差が5%以下であることを特徴とする曲げ性及び延性に優れた成形加工用アルミニウム合金板を、その要旨とするものである。
そして、本発明にあっては、そのような成形加工用アルミニウム合金板を有利に製造するために、(a)550℃以上の均質化処理により、Cube方位の方位密度を高くした第一のアルミニウム合金鋳塊を準備する工程と、(b)450℃以上、550℃未満の均質化処理により、全ての結晶方位の方位密度を抑制した第二のアルミニウム合金鋳塊を準備する工程と、(c)該第二のアルミニウム合金鋳塊の一方の側に又はその両側に、前記第一のアルミニウム合金鋳塊を重ね合わせ、それら第一及び第二のアルミニウム合金鋳塊を相互に接合して、鋳塊接合体を得る工程と、(d)該鋳塊接合体を、300〜500℃の開始温度において熱間圧延する工程と、(e)かかる熱間圧延の後、55〜90%の圧下率で冷間圧延する工程と、(f)該冷間圧延の後、200〜350℃の温度で中間焼鈍して、中間焼鈍品を得る工程と、(g)該中間焼鈍品を、3〜30%の圧下率で最終冷間圧延する工程とを含むことを特徴とする方法が、有利に採用されることとなる。
なお、かかる本発明に従う製造方法において、望ましくは、前記最終冷間圧延の後、450℃以上の温度での溶体化処理と、120℃以下の温度まで5℃/秒以上の冷却速度で冷却を行なう焼入れ処理とが、更に施されることとなる。
このように、本発明においては、アルミニウム合金板材の集合組織、即ち、Cube方位及びCube方位以外の結晶方位の方位密度を、板厚方向において制御することによって、プレス成形時に生じる割れを効果的に防止し得ることとなったのである。なお、本発明において、板厚方向の結晶方位密度を規制しているのは、プレス成形(例えば、深絞成形、張出成形、曲げ加工等)時における割れが結晶方位に大きく影響し、結晶方位の制御によって、それらの不具合を改善することが可能となるからである。
ここで、Cube方位は、結晶方位によるすべりの効果により、曲げ加工時に剪断帯が形成され難くなるために、曲げ加工性は改善出来るものの、一方では、延性の面内異方性が大きくなるために、延性の低い方向で割れが発生し易くなるのである。また、ランダム方位は、結晶方位の配向性がないために、延性の面内異方性は小さくなるものの、曲げ加工時に剪断帯が形成され易く、曲げ加工性が劣化するようになる。
このため、本発明においては、そのような結晶方位による特性の差異を補うべく、曲げ割れの発生する板厚表層部ではCube方位密度を高くする一方、板厚中心部では、ランダム方位として、面内異方性を軽減するようにすることにより、曲げ加工性及び延性を両立させた成形加工用アルミニウム合金板を有利に得ることが可能となったのである。
ここにおいて、本発明に従うアルミニウム合金板材は、プレス加工品等の成形品に適した、板厚(t)が0.3〜10mmであるものである。なお、この板厚が0.3mmよりも薄いアルミニウム合金板材では、薄肉化による強度低下が大きく、プレス成形品等には適するものではないからであり、また、板厚が10mmを超えるアルミニウム合金板材では、板厚が厚いために、曲げ加工を伴なったプレス成形には適さなくなるからである。
ところで、多結晶材料であるアルミニウム合金板材は、幾つかの特定方位に結晶粒が配向した組織、即ち集合組織を持つことが多く、また、その特定方位としては、Cube方位、CR方位、Goss方位、Brass方位、S方位、Copper方位、RW方位、PP方位等があることが知られている。そして、結晶方位が均一に分散して集積がないときに、集合組織はランダムであると称されているのである。
また、上記の集合組織のでき方は、同じ結晶系の場合でも加工法によって異なるものとなる。そして、圧延による板材の集合組織の場合には、圧延面と圧延方向で表されており、圧延面は面を表すミラー指数(hkl)で表現され、また、圧延方向は、方向を表すミラー指数[uvw]で表現されることとなる(但し、h,k,l,u,v,wは、それぞれ、整数である)。そして、hu+kv+lw=0の条件を満たすように、h,k,l及びu,v,wの順番を入れ替えて得られる24通りの等価な方位群を取りまとめて、{h,k,l}<u,v,w>と表し、方位の一般的表示とされているのである。
従って、かかる表現方法に基づいて、上記の各方位を表すと、以下のように示されることとなる。
Cube方位:{001}<100>、
CR方位:{001}<520>、
Goss方位:{011}<100>、
Brass方位:{011}<211>、
S方位:{123}<634>、
Copper方位:{112}<111>、
RW方位:{001}<110>、
PP方位:{011}<122>。
Cube方位:{001}<100>、
CR方位:{001}<520>、
Goss方位:{011}<100>、
Brass方位:{011}<211>、
S方位:{123}<634>、
Copper方位:{112}<111>、
RW方位:{001}<110>、
PP方位:{011}<122>。
また、上記の集合組織の方位密度とは、ランダムな方位に対する各方位の強度を比率で示したものである。本発明では、それらの方位から±10°以内の方位のずれは同一の方位であると定義する。但し、Copper方位及びS方位に関しては、±9°以内の方位のずれは同一の方位であると定義するものとする。
なお、上記の方位密度の分布は、例えば、X線回折法を用いて、結晶粒方位分布関数(ODF)を求めることにより、測定することが出来る。そこでは、偶数項の展開次数を22次、奇数項の展開次数を19次として、計算されることとなる。また、方位密度は、特定方位の方位密度とランダムな方位を示す試料の方位密度との比で示し、ランダム比として表記することとする。ここで、ランダム強度:Irは、検体試料強度:Icから、下式(1)に従って、算出することが出来る。
[ここで、α、βは測定角度、Δsはステップ角度である。]
本発明においては、上述の如きアルミニウム合金板材の結晶方位において、曲げ割れの発生する板厚表層部ではCube方位密度を高くする一方、板厚中心部では、ランダム方位として、面内異方性を軽減するようにしたものであって、そこでは、アルミニウム合金板材の板表面から0.2×t(mm)までの板厚部位における集合組織の主方位がCube方位であって、且つ該Cube方位の方位密度が20以上(ランダム比)であるように構成する一方、Cube方位以外の結晶方位の方位密度が10以下(ランダム比)である表層領域(A)を有するように構成すると共に、かかる表層領域(A)を除く、残りの板厚部位における集合組織の全ての結晶組織の方位密度が10以下(ランダム比)であるように構成したのであり、これによって、曲げ加工性及び延性を両立させた成形加工用アルミニウム合金板を実現したのである。
なお、かかる本発明に従う表層領域(A)は、アルミニウム合金板材が二つの主面を有しているところから、少なくとも、その一方の主面側に存在するように構成されることとなる。この一方の主面側に、上記した構成の表層領域(A)を形成せしめた場合にあっても、この表層領域(A)の側に曲げ加工や絞り加工の引張応力がかかるように、プレス加工等の成形加工を施せば、本発明に従う作用・効果は、充分に発揮され得るのである。勿論、アルミニウム合金板材の両方の主面側の板厚表層部を、それぞれ、前記した構成の表層領域(A)とすることにより、プレス加工等の施されるアルミニウム合金板材の面を選択する必要もなくなる利点を享受することが出来る。
なお、アルミニウム合金板材の前記表層領域(A)における集合組織の主方位であるCube方位の方位密度が20未満(ランダム比)となったり、或いは、その他の方位がランダム比で10を超えるようになると、Cube方位の特性が得られず、曲げ性が劣化する問題を生じる。
また、かかる表層領域(A)が板表面から0.2×t(mm)よりも広がると、延性の面内異方性が大きくなり、プレス加工性が劣化する問題を惹起するようになる。そして、そのような表層領域(A)は、望ましくは、板表面から0.05×t(mm)以上の厚さにおいて存在していることが望ましく、かかる表層領域(A)の厚さが、0.05×t(mm)よりも薄くなると、曲げ性の改善効果を充分に発揮し難くなるのである。
そして、本発明に従うアルミニウム合金板材は、上記した表層領域(A)を除く残りの板厚部位における集合組織の全ての結晶組織の方位密度が10以下(ランダム比)であるように、ランダム方位として構成されて、面内異方性の軽減が図られているのであるが、そのような集合組織における何れかの結晶組織の方位密度が10(ランダム比)を超えるようになると、延性の面内異方性が大きくなって、プレス加工性が低下するようになる。
しかも、上記の如く、板厚方向の結晶方位密度が規制されてなる、本発明に従うアルミニウム合金板材にあっては、その圧延方向に対する0°、45°及び90°方向の伸びが全て25%以上であると共に、その最大値と最小値の差が5%以下となるように構成されており、これに反して、それら各方向の延びの何れかが25%よりも低くなったり、その最大値と最小値の差が5%を超えるようになると、延性の面内異方性が大きくなって、プレス加工性が低下する問題を惹起するようになる。
ところで、かくの如き本発明に従うアルミニウム合金板材は、当業者の知識に基づいて、板材の少なくとも一方の側の表面層の集合組織(結晶方位)を制御するようにして、目的とする板厚のアルミニウム合金板材を製造することにより、容易に製造することが可能であるが、特に、本発明にあっては、所定のアルミニウム合金鋳塊に対して、異なる均質化処理を施し、結晶方位及び方位密度の制御された2種の鋳塊を準備した後、それら2種の鋳塊を重ね合わせて接合し、そしてその得られた鋳塊接合体に対して、所定の熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍(軟化処理)、及び最終冷間圧延を施して、目的とする板厚のアルミニウム合金板材を製造する手法が、有利に採用されることとなる。
なお、そのような製造手法において、アルミニウム合金鋳塊としては、従来から、プレス成形等の成形加工に用いられている合金組成のアルミニウム合金鋳塊が、そのまま用いられ得、そして、そのような鋳塊は、公知の鋳造方法により鋳造され得るものであるが、有利には、半連続鋳造法であるDC鋳造法(Direct Chill Casting Process)を用いて製造されることとなる。
また、そのようなアルミニウム合金鋳塊に対して施される、異なる均質化処理のうちの一つは、550℃以上の均質化処理であり、これによって、Cube方位の方位密度を高くした第一のアルミニウム合金鋳塊が製造される一方、他の一つの均質化処理として、450℃以上、550℃未満、好ましくは、470〜540℃の温度での均質化処理を採用して、Cube方位を含む全ての結晶方位の方位密度を抑制した第二のアルミニウム合金鋳塊が、準備されることとなる。なお、それら二つの均質化処理において、それぞれ規定される温度範囲を外れた均質化処理温度が採用される場合にあっては、それぞれの均質化処理において、目的とする適性な集合組織を得ることが困難となるのである。また、それら二つの均質化処理の処理時間としては、何れも、3時間以上とすることが望ましく、その上限は、経済的な見地から適宜に決定されるものであるが、一般に、24時間以下となるように選定される。
そして、かかるCube方位の方位密度を高くした鋳塊(第一)と、全ての結晶方位の方位密度を抑制した鋳塊(第二)を用いて、前者の鋳塊(第一)が、本発明に従うアルミニウム合金板材の表層領域(A)を与えるように、後者の鋳塊(第二)の一方の側に前者の鋳塊(第一)を重ね合わせ、或いは、後者の鋳塊(第二)の両側に前者の鋳塊(第一)を重ね合わせて、それら鋳塊を溶接等によって相互に接合することにより、鋳塊接合体が形成される。なお、それら鋳塊(第一、第二)の大きさ(厚さ)は、それぞれ、最終板厚に応じて選定されるところであって、Cube方位の方位密度を高くした鋳塊が、最終板厚(t)において、板表面から0.2×t(mm)までの領域を与えるように、鋳塊の大きさが制御される。
さらに、かくして得られた鋳塊接合体は、加熱されて、熱間圧延されることとなるが、そのような熱間圧延は、300〜500℃の温度で開始され、終了せしめられる。このような熱間圧延によって、一般に、1.5mm〜10mm程度の厚さの熱間圧延材が得られることとなる。なお、かかる熱間圧延の開始温度が300℃未満の場合には、熱間圧延後の冷却過程で充分な再結晶組織が得られず、その後の工程で適性な集合組織を得ることが出来なくなるのであり、また、開始温度が500℃を超える場合にあっては、熱間圧延中に再結晶組織が粗大化して、その後の工程で適性な集合組織を得ることが出来なくなるという問題を惹起する。
次いで、かかる熱間圧延後の冷間圧延は、55〜90%の圧下率において行なわれる。このような冷間圧延によって、Cube方位の方位密度を高め、且つCube方位以外の方位の方位密度を効果的に抑制することが出来るところから、本発明においては必要な工程とされている。なお、この冷間圧延において、圧下率が55%未満となったり、90%を超えるようになったりすると、板厚方向において、適性な集合組織を得ることが出来なくなるのである。
また、かかる冷間圧延の後、中間焼鈍(軟化処理)が実施されることとなる。この中間焼鈍処理は、Cube方位の方位密度を高め、且つCube方位以外の各々の方位の方位密度を抑制するために必要な工程であって、本発明では、200〜350℃の温度で実施される。そのような温度範囲を外れる場合には、適性な集合組織を得ることが出来なくなるからである。なお、そのような中間焼鈍は、一般に、5秒〜5分間程度の保持時間において、実施されることとなる。
そして、かくして得られた中間焼鈍品には、最終冷間圧延が実施され、以て、目的とする、板厚が0.3〜10mmのアルミニウム合金板材が、製造されることとなる。この中間焼鈍後の冷間圧延は、Cube方位の方位密度を高め、且つCube方位以外の方位の方位密度を抑制するために必要な工程であって、3〜30%の圧下率で行なわれることとなる。この圧下率が、かかる範囲から外れる場合には、適性な集合組織を得ることが出来なくなるのである。
また、上記のようにして得られたアルミニウム合金板材には、更に、必要に応じて、溶体化処理と焼入れ処理が施されることとなる。そこで、溶体化処理としては、450℃以上の温度で実施されることが好ましく、また、焼入れ処理においては、120℃以下の温度まで、5℃/秒以上の冷却速度で冷却を行なうことが望ましい。このような溶体化処理と焼入れ処理を実施することにより、再結晶粒の粒径が100μm以下であり、且つ粒界析出を抑制することが出来るため、曲げ性及び延性の劣化を防止することが出来るという利点を享受することが出来る。
なお、上記した均質化処理から最終冷間圧延までの各種条件や、その後の溶体化処理及び焼入れ処理の条件は、特に、AA乃至JIS規格に規定される6000系アルミニウム合金を材質とする場合において、有利に採用され得るものであるが、他の合金系を採用する場合においても、そのままで、或いは当業者の知識に基づき適宜に変更を加えて、採用可能である。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等、限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
先ず、重量比率で、Si:1.0%、Fe:0.1%、Mn:0.1%、Mg:0.6%、Ti:0.1%、Al+不可避的不純物:残部なる組成の合金鋳塊を、DC鋳造法と称される半連続鋳造方法により造塊し、その得られた鋳塊を、均質化処理条件A:550℃×6時間又は均質化処理条件B:500℃×6時間にて均質化処理した後、室温まで冷却することで、それら均質化処理条件A及びBにそれぞれ対応する、2種の鋳塊A及び鋳塊Bを得た。
次いで、上記鋳塊A,Bを、それぞれ、板厚方向のクラッド材となるように重ね合わせて溶接した後、それら鋳塊A,Bにそれぞれ対応した、A部とB部の領域となるように面削して、厚さが50mmの鋳塊接合体を作製した。そして、その得られた鋳塊接合体を450℃まで再加熱した後、熱間圧延して、板厚が20.0mmの熱間圧延板材を得た。なお、この熱間圧延の終了温度は、250℃とした。その後、最終板材の集合組織が変化するように、得られた熱間圧延板材に対して、150〜450℃の各種温度下において、1分間の中間焼鈍を施して、各種の中間焼鈍材を作製し、その得られた中間焼鈍材を、それぞれ、所定の板厚まで冷間圧延を施すことにより、各種のアルミニウム合金板材試料1〜8を得た。
その後、かかる板材試料1〜8に対して、それぞれ、500℃で5分間の溶体化処理を行ない、そして、30℃/秒の冷却速度で室温まで焼入れした。更に、その焼入れの後、20℃で7日間放置し、その得られた板材試料1〜8について、それぞれ、表層領域(A)の方位密度と、それ以外の板厚部位である板中心側の方位密度、伸びの評価及び曲げ評価を、以下の如くして行ない、その結果を、下記表1に示した。
<結晶方位分布関数>
結晶方位分布関数(ODF)は、X線回折装置(株式会社リガク製、RINT2000)で測定した極点図から、3次元方位解析によりODFを求めることで、各結晶方位の方位密度を求めた。測定面は、板面とし、表層領域(A)の方位密度に関しては表層領域(A)の厚みの1/2部、板中心側の方位密度に関しては表層領域(A)を除く残りの板厚部位の厚みの1/2部で測定した。研磨により測定面を現出したが、研磨後のマクロエッチングにより、研磨により導入された加工組織を除去した。ODFは、Bunge の提唱した級数展開法により、偶数項の展開次数を22次、奇数項の展開次数を19次として計算した。なお、方位密度は、特定方位の方位密度とランダム方位を有する試料の方位密度との比で示し、ランダム比と表記した。また、ランダム強度:Irは、検体試料強度:Icから、先の数式(1)により算出した。
結晶方位分布関数(ODF)は、X線回折装置(株式会社リガク製、RINT2000)で測定した極点図から、3次元方位解析によりODFを求めることで、各結晶方位の方位密度を求めた。測定面は、板面とし、表層領域(A)の方位密度に関しては表層領域(A)の厚みの1/2部、板中心側の方位密度に関しては表層領域(A)を除く残りの板厚部位の厚みの1/2部で測定した。研磨により測定面を現出したが、研磨後のマクロエッチングにより、研磨により導入された加工組織を除去した。ODFは、Bunge の提唱した級数展開法により、偶数項の展開次数を22次、奇数項の展開次数を19次として計算した。なお、方位密度は、特定方位の方位密度とランダム方位を有する試料の方位密度との比で示し、ランダム比と表記した。また、ランダム強度:Irは、検体試料強度:Icから、先の数式(1)により算出した。
<引張試験>
それぞれの板材試料から、その圧延方向に対して、0°、45°及び90°の3方向に位置するJIS5号引張試験片を、それぞれ採取し、そして、それぞれの方向について、JISZ2201に準拠した引張試験を行なった。クロスヘッド速度は5mm/minで、試験片が破断するまで一定の速度で行なった。各方向についての延性は、破断時の伸び(突合せ法)で評価した。
それぞれの板材試料から、その圧延方向に対して、0°、45°及び90°の3方向に位置するJIS5号引張試験片を、それぞれ採取し、そして、それぞれの方向について、JISZ2201に準拠した引張試験を行なった。クロスヘッド速度は5mm/minで、試験片が破断するまで一定の速度で行なった。各方向についての延性は、破断時の伸び(突合せ法)で評価した。
<曲げ評価>
各板材試料から、その圧延方向に対して、0°、45°、90°の3方向に位置する、JISZ2204に示されるJIS3号試験片(幅30mm×長さ200mm)を、それぞれ採取し、引張方向に15%の予歪みを付与した後、JISZ2248に従う押曲げ法に基づいて、内側曲げ半径0.5×tの180°曲げ試験を行なった。そして、目視により曲げ割れ発生の有無を確認し、曲げ評価をした。ここでは、割れなしの場合を○印、割れ発生の場合を×印として、示した。
各板材試料から、その圧延方向に対して、0°、45°、90°の3方向に位置する、JISZ2204に示されるJIS3号試験片(幅30mm×長さ200mm)を、それぞれ採取し、引張方向に15%の予歪みを付与した後、JISZ2248に従う押曲げ法に基づいて、内側曲げ半径0.5×tの180°曲げ試験を行なった。そして、目視により曲げ割れ発生の有無を確認し、曲げ評価をした。ここでは、割れなしの場合を○印、割れ発生の場合を×印として、示した。
かかる表1の結果から明らかなように、本発明の対象とする板材試料1〜4は、何れも、良好な曲げ加工性及び延性を示した。これに対して、表層側におけるCube方位密度が低い板材試料5では、一定のCube方位の特性が得られず、良好な曲げ加工性が得られなかった。更に、Cube方位以外の方位密度が高い板材試料6では、Cube方位以外の方位の影響を受けて、良好な曲げ加工性が得られなかった。
また、板中心側の部位の集合組織において、主方位であるCube方位の方位密度が高かった板材試料7は、Cube方位の特性により、良好な曲げ加工性が得られたが、面内異方性が強く、0°方向と90°方向において、良好な延性が得られなかった。更に、表層領域(A)の領域が大きくなった板材試料8では、表層領域(A)における集合組織の影響が大きくなり、面内異方性が強く、0°方向と90°方向において、良好な延性が得られなかった。
Claims (3)
- 板厚(t)が0.3〜10mmであるアルミニウム合金板にして、板表面から0.2×t(mm)までの板厚部位における集合組織の主方位がCube方位であって、且つ該Cube方位の方位密度が20以上(ランダム比)である一方、Cube方位以外の結晶方位の方位密度が10以下(ランダム比)である表層領域を、少なくとも一方の主面側に有すると共に、該表層領域を除く残りの板厚部位における集合組織の全ての結晶方位の方位密度が10以下(ランダム比)であり、更に、圧延方向に対して0°、45°及び90°方向の伸びが全て25%以上であって、且つその最大値と最小値との差が5%以下であることを特徴とする曲げ性及び延性に優れた成形加工用アルミニウム合金板。
- 請求項1に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造する方法にして、
550℃以上の均質化処理により、Cube方位の方位密度を高くした第一のアルミニウム合金鋳塊を準備する工程と、
450℃以上、550℃未満の均質化処理により、全ての結晶方位の方位密度を抑制した第二のアルミニウム合金鋳塊を準備する工程と、
該第二のアルミニウム合金鋳塊の一方の側に又はその両側に、前記第一のアルミニウム合金鋳塊を重ね合わせ、それら第一及び第二のアルミニウム合金鋳塊を相互に接合して、鋳塊接合体を得る工程と、
該鋳塊接合体を、300〜500℃の開始温度において熱間圧延する工程と、
かかる熱間圧延の後、55〜90%の圧下率で冷間圧延する工程と、
該冷間圧延の後、200〜350℃の温度で中間焼鈍して、中間焼鈍品を得る工程と、
該中間焼鈍品を、3〜30%の圧下率で最終冷間圧延する工程と、
を含むことを特徴とする曲げ性及び延性に優れた成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。 - 前記最終冷間圧延の後、450℃以上の温度での溶体化処理と、120℃以下の温度まで5℃/秒以上の冷却速度で冷却を行なう焼入れ処理とを、更に施すことを特徴とする請求項2に記載の曲げ性及び延性に優れた成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
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JP2009241146A JP2011089144A (ja) | 2009-10-20 | 2009-10-20 | 曲げ性及び延性に優れた成形加工用アルミニウム合金板及びその製造方法 |
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