以下、本発明を具体化したチャネル選択式通信システムの一実施形態を図1〜図10に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、車両キーに電子キーを使用した電子キーシステム2の一種として、実際のキー操作を伴わずにドアロック施解錠やエンジン始動停止等の車両操作を行うことが可能なキー操作フリーシステム3が搭載されている。キー操作フリーシステム3は、キー固有のIDコード(キーコード)を無線通信で発信可能な携帯機4が車両キーとして使用されている。キー操作フリーシステム3は、車両1からIDコード返信要求としてリクエスト信号Srqを発信させ、このリクエスト信号Srqを携帯機4が受信すると、それに応答する形で携帯機4が自身のIDコードを乗せたID信号Sidを狭域通信により車両1に返信し、携帯機4のIDコードが車両1のIDコードと一致すると、ドアロック施解錠やエンジン始動停止が許可又は実行されるシステムである。なお、携帯機4が通信端末に相当し、リクエスト信号Srqが信号返信要求に相当し、ID信号Sidが第1無線信号(無線信号)を構成する。
キー操作フリーシステム3には、ドアロック施解錠操作の際に実際の車両キー操作を必要としない機能としてスマートエントリーシステム5がある。このスマートエントリーシステム5を以下に説明すると、図3に示すように、車両1には、携帯機4との間で狭域通信を行う際にID照合を行う照合ECU6が設けられている。照合ECU6には、車両1の各ドアに埋設されて車外にLF帯の信号を発信可能な車外LF発信機7と、車内床下等に埋設されて車内にLF帯の信号を発信可能な車内LF発信機8と、車内に設置されてRF帯の信号を受信可能なRF受信機9とが接続されている。これらLF発信機7,8は、リクエスト信号Srqを周囲に発信可能であって、車外LF発信機7が車両周囲にリクエスト信号Srqの通信エリア(車外通信エリア)を形成し、車内LF発信機8が車内全域にリクエスト信号Srqの通信エリア(車内通信エリア)を形成する。なお、照合ECU6及びRF受信機9が信号受信装置を構成する。
照合ECU6には、例えば車外ドアハンドルノブ1aに埋設されたタッチセンサ10が接続されている。タッチセンサ10は、操作者が施錠状態のドアロックを解除する時に車外ドアハンドルノブ1aをタッチする操作を検出する。照合ECU6には、例えば車外ドアハンドルノブ1aに設けられたロックボタン11が接続されている。ロックボタン11は、操作者が解錠状態のドアロックを施錠する時に押し操作される。照合ECU6には、ドアロックの施解錠を制御するドアECU12が車内LAN13を介して接続されている。ドアECU12は、照合ECU6から指令を基にドアロックモータ14を駆動制御することでドアロックを施錠状態又は解錠状態にする。
一方、携帯機4には、車両1との間でキー操作フリーシステム3に準じた無線通信を行う際のコントロールユニットとして通信制御部15が設けられている。通信制御部15には、外部で発信されたLF帯の信号を受信可能なLF受信機16と、通信制御部15の指令に従いRF帯の信号を発信可能なRF発信機17とが接続されている。LF受信機16は、自身のLF受信アンテナ18で受信したLF帯の信号をLF受信回路19で復調するとともに、その復調後の信号を受信データとして通信制御部15に出力する。また、RF発信機17は、通信制御部15から得た通信データをRF発信回路20で変調し、携帯機4が持つ固有のIDコードを乗せたRF帯のID信号SidをRF発信アンテナ21から発信可能である。
車両1が駐車状態(エンジン停止及びドアロック施錠状態)の際、照合ECU6は、車外LF発信機7からLF帯のリクエスト信号Srqを断続的に発信させ、車両周辺に車外通信エリアを形成する。携帯機4がこの車外通信エリアに入り込んでリクエスト信号SrqをLF受信機16で受信すると、携帯機4はリクエスト信号Srqに応答する形で、自身のメモリ22に登録されたIDコードを載せたID信号SidをRF発信機17からRF帯の信号で返信する。照合ECU6は、RF受信機9でID信号Sidを受信してスマート通信が成立すると、自身のメモリ23に登録されたIDコードと携帯機4のIDコードとを照らし合わせてID照合(車外照合)を行う。照合ECU6は、車外照合が成立した事を認識すると、メモリ23に車外照合フラグを一定時間の間において立てて、待機状態のタッチセンサ10をその期間の間において起動させる。ドアECU12は、車外ドアハンドルノブがタッチ操作された事を起動中のタッチセンサ10が検出すると、ドアロックモータ14を一方側に回転させて、施錠状態のドアロックを解錠する。
一方、車両1が停止状態(エンジン停止及びドアロック解錠状態)の際、照合ECU6は、ロックボタン11が押されたことを検出すると、車外LF発信機7からリクエスト信号Srqを発信させる。照合ECU6は、このリクエスト信号Srqを受けて携帯機4が返信してきたID信号Sidにおいて車外照合が成立した事を認識すると、ドアECU12にドアロック施錠要求を出力する。ドアロック施錠要求を受け付けたドアECU12は、ドアロックモータ14を他方側に回転させて、解錠状態のドアロックを施錠する。
また、キー操作フリーシステム3には、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステム24がある。このワンプッシュエンジンスタートシステム24を以下に説明すると、車両1には、エンジン25の点火制御及び燃料噴射制御を行うエンジンECU26と、セレクトレバーの操作を基に自動変速機を制御するシフトECU27と、車載電装品の電源管理を行う電源ECU28とが設けられている。これらECU26〜28は、車内LAN13を通じて照合ECU6等の各種ECUに接続されている。
車両1の運転席には、車両1の電源状態(電源ポジション)を切り換える際の操作系としてエンジンスイッチ29が設けられている。エンジンスイッチ29は、操作箇所であるスイッチ操作部29aを押し込み操作する押圧操作式であって、ハーネスを介して電源ECU28に接続されている。このエンジンスイッチ29は、自身が押圧操作されるとエンジン25を始動状態又は停止状態に切り換えるエンジン始動停止操作機能と、自身が押圧操作された際に車両1の電源状態をオフ状態からACCオン状態やIGオン状態に切り換える電源遷移操作機能とを持っている。
また、電源ECU28には、車両1の速度を検出する車速センサ30と、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ31とが接続されている。電源ECU28は、車速センサ30から取得する車速情報を基に今現在の車両1の速度を認識しつつ、ブレーキセンサ31から取得するペダル踏込量情報を基にブレーキペダルの踏み込み有無を判定可能である。また、電源ECU28には、各種車載アクセサリに繋がるACCリレー32と、エンジンECU26に繋がるIGリレー33と、エンジン25のスタータモータに繋がるスタータリレー34とが接続されている。
照合ECU6は、車外照合が成立してドアロックが解錠された後、例えばカーテシスイッチ35でドアが開けられて運転者が乗車した事を認識すると、車内LF発信機8からリクエスト信号Srqを発信して車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU6は、携帯機4がこの車内通信エリアに入り込んで返信してきたID信号SidをRF受信機9で受信すると、自身に登録されたIDコードと携帯機4のIDコードとを照らし合わせてID照合(車内照合)を行う。照合ECU6は、この車内照合が成立すると、メモリ23に車内照合成立フラグを立てて車内照合成立を認識する。
電源ECU28は、エンジン25が停止している際にブレーキペダルが踏み込み操作された状態でエンジンスイッチ29が押圧操作された事を検出すると、車内照合成立を条件として、停止状態のエンジン25を始動すべく3つのリレー32〜34をオンしつつ、エンジンECU26に起動信号を出力する。電源ECU28は、車内照合成立確認の際にこれが成立していなければ、照合ECU6に車内照合を再実行させ、車内照合成立の有無を今一度確認する。起動信号を受け付けたエンジンECU26は、車内照合結果の確認と、照合ECU6が自身とペアを成すものかを確認するペアリングとを暗号化通信により行う。これら両条件の確認を済ませたエンジンECU26は、点火制御及び燃料噴射制御を開始してエンジン25を始動する。一方、電源ECU28は、エンジン25が稼働中の際にエンジンスイッチ29が押圧操作された事を検出すると、車両1が停止(車速「0」)していることを条件に3つのリレー32〜34を全てオフ状態にして、エンジン25を停止状態にする。
また、電源ECU28は、エンジン25が停止している際にブレーキペダルが踏み込み操作されずにエンジンスイッチ29のみが押圧操作された事を検出すると、車内照合成立を条件としつつ、しかもシフトレバーがPレンジ位置にあれば、エンジンスイッチ29が押される度に、操作一回りの間において電源状態をオフ状態→ACCオン状態→IGオン状態の順に切り換える。例えば、エンジン25が停止している時にエンジンスイッチ29のみが押圧操作されると、車両1の電源状態がオフ状態からACC状態に切り換わり、この状態から更にエンジンスイッチ29のみがもう一度押圧操作されると、車両1の電源状態がIGオン状態となり、この状態からエンジンスイッチ29のみが更にもう一度押圧操作されると、車両1の電源状態がオフ状態に戻る動作をとる。
車両1には、他の電子キーシステム2の一種として、携帯機4に設けた施解錠系ボタンのマニュアル操作により施解錠要求Swkを無線で車両1に飛ばして車両1のドア施解錠操作を行うワイヤレスキーシステム36が搭載されている。このワイヤレスキーシステム36を説明すると、携帯機4には、車両1のドアロックを施錠操作する時に押圧操作するロックボタン37と、車両1のドアロックを解錠操作する時に押圧操作するアンロックボタン38とが設けられている。ロックボタン37及びアンロックボタン38は、押圧操作後にボタンから指を離すと操作前の元の操作開始位置に自動で復帰するモーメンタリ式が採用されている。なお、ロックボタン37及びアンロックボタン38が操作手段を構成し、施解錠要求Swkが第2無線信号(無線信号)に相当する。
これらロックボタン37及びアンロックボタン38は、通信制御部15に電気的に接続され、押圧操作されると例えばオン信号を通信制御部15に出力する。通信制御部15は、ロックボタン37及びアンロックボタン38からの出力信号を逐次監視し、ロックボタン37及びアンロックボタン38の操作有無を判断する。通信制御部15は、ロックボタン37が押圧操作された事を検出すると、RF発信機17から施錠要求SlkをRF帯の信号で発信させ、アンロックボタン38が押圧操作された事を検出するとRF発信機17から解錠要求SulをRF帯の信号で発信させる。施錠要求Sl k及び解錠要求Sulは、携帯機4が持つ固有のIDコードと、具体的な指令内容(施錠又は解錠)が書き込まれた機能コードとを主に持つ無線信号である。
車両1は、RF受信機9で施錠要求Slkを受信すると、この施錠要求Slkに含まれるIDコードを、自身のメモリ23に登録されたIDコードと照らし合わせることによりキー照合を行い、このキー照合が成立しつつドアロックが解錠状態であるならば、施錠要求Slkに含まれる機能コードの指令に沿いドアロックを解錠する。また、照合ECU6は、RF受信機9で解錠要求Sulを受信すると、この解錠要求Sulに含まれるIDコードを、自身のメモリ23に登録されたIDコードと照らし合わせてキー照合を行い、このキー照合が成立しつつドアロックが施錠状態ならば、解錠要求Sulに含まれる機能コードの指令に沿いドアロックを解錠する。
また、電子キーシステム2には、無線通信環境下にノイズが発生することを考慮して、複数のチャネル(周波数帯)の中からその時に通信できるチャネルを選択的に選び出してそのチャネルで無線通信を行うチャネル選択式通信システム39が設けられている。本例のチャネル選択式通信システム39は、図4〜図7に示すように、携帯機4が車両1に向けて発信する無線信号を複数チャネル(本例は2種類)で発信し、複数存在するチャネルの中からその時に受信できるチャネルで無線信号を車両1に受け付けさせることで無線通信を成立させる。なお、携帯機4が車両1に発信する無線信号を多チャネルで発信するのは、この無線通信の周波数帯域にRF帯という高い周波数帯を用いるので、この種の高い周波数はノイズに影響を受け易いからである。
チャネル選択式通信システム39は、電子キーシステム2がキー操作フリーシステム3の場合、リクエスト信号Srqに応答する形でID信号Sidを返信する際、図4及び図5に示すように、このID信号Sidを複数チャネル(多チャネル)で発信することにより、その中で受信できるチャネルのID信号Sidを車両1に受け取らせることでスマート通信を成立させる。また、チャネル選択式通信システム39は、電子キーシステム2がワイヤレスキーシステム36の場合、携帯機4のロックボタン37やアンロックボタン38が操作されて施解錠要求Swkを発信する際、図2,図6及び図7に示すように、この施解錠要求Swkを複数チャネル(多チャネル)で送信することにより、その中で受信できるチャネルの施解錠要求Swkを車両1に受け取らせることでワイヤレス通信を成立させる。
図4及び図5に示すように、照合ECU6は、キー操作フリーシステム3で行う動作として、スマート通信(車外照合、車内照合)の通信エリア内に携帯機4が存在するか否かを確認すべく、車外LF発信機7(車内LF発信機8)からWAKE信号(ウェイクパターン)40をLF帯の信号で断続的に発信させる。例えば、車外照合を行う際は、車外LF発信機7からWAKE信号40を車外周囲に断続的に発信して、車両周囲にWAKE信号40の通信エリアを形成する。また、車内照合を行う際は、車内LF発信機8からWAKE信号40を車内全域に発信して、車内全域にWAKE信号40の通信エリアを形成する。このWAKE信号40は、待機状態にある携帯機4を起動状態とする指令信号であって、所定の一定間隔をおいて車外LF発信機7(車内LF発信機8)から繰り返し発信される。
照合ECU6は、RF受信機9が今現在どのチャネルの無線信号を受け付けているのかを確認する受信準備動作を、WAKE信号40の発信に合わせて、即ちポーリング周期の周期サイクルで繰り返し実行する。本例の照合ECU6は、ポーリングの受信準備動作としてまず最初に、待機中のRF受信機9を起動させるスタートアップ動作を最初に行い、その後、RF受信機9で第1チャネル(以下、CH1と記す)の無線信号を受け付けているか否かの確認としてCH1受信準備動作を行い、これに連続してRF受信機9で第2チャネル(以下、CH2と記す)の無線信号を受け付けているか否かの確認としてCH2受信準備動作を行う。そして、照合ECU6は、このように連続するスタートアップ動作→CH1受信準備動作→CH2受信準備動作の一連の動作を、WAK E信号40の発信に合わせて繰り返し行う。
ポーリングの受信準備動作(スタートアップ動作、CH1受信準備動作、CH2受信準備動作)は、受信有無確認動作中に携帯機4からの返信を受け付けることができるように、LF信号発信から予め決められた一定時間をおいた時刻に開始されるように設定されている。また、スタートアップ動作は、非常に短い時間の処理であり、例えば数msという短い処理時間に設定されている。また、CH1受信準備動作及びCH2受信準備動作は、受信有無確認の動作時間が同じ値に設定され、WAKE発信の後に携帯機4から受け付けるアック信号(図5に示すアック信号41a,42a)のデータに、所定の許容時間を足し合わせた値(例えば十数ms)に設定されている。なお、アック信号41a,42aが無線信号(第1無線信号)を構成する。
ここで、図4に示すように、携帯機4が車両1とスマート通信を行う際に、CH1に影響を及ぼすノイズが発生していない場合を想定する。携帯機4がWAKE信号40の通信エリアに入り込み、WAKE信号40をLF受信機16で受信すると、携帯機4はこのWAKE信号40で待機状態から起動状態に動作状態が切り換わる。携帯機4は、この時に正常に起動状態をとると、その旨を通知すべくRF発信機17から車両1に向けてアック返信を行う。この時、携帯機4は、まずは最初にCH1でCH1アック信号41aを返信する。このCH1アック信号41aは、RF受信機9がCH1受信準備動作(CH1受信有無確認動作)をとっている際にRF受信機9に至る発信タイミングに設定されている。
対CH1ノイズが発生していない場合、この時の照合ECU6は、WAKE信号40を発信した後、続いて行うポーリングのCH1受信準備動作の際にCH1アック信号41aを受け付ける受信動作をとる。なお、照合ECU6は、CH1アック信号41a内のビットを確認することで、アック受信を認識している。照合ECU6は、WAKE信号40を発信した後に正常にアック返信を受け付けると、携帯機4がスマート通信の通信エリア内に存在すると判断する。また、照合ECU6は、WAKE信号40に応答したアック返信を正常に受け付けると、その周期でポーリングを終了し、これ以降は通信が確立した携帯機4との間で、その携帯機4が正規のものであるのかを実際に確認する認証通信動作に移行する。
また、照合ECU6は、WAKE発信の後に携帯機4からアック返信を受け付けると、続いては自身の車両コードとしてビークルID43を、車外LF発信機7(車内LF発信機8)からLF帯の信号で発信させる。携帯機4は、CH1アック信号41aを発信してから所定時間の間にビークルID43を受け付けることができれば、アック返信がCH1で成功したことを認識し、アック返信を他チャネルで再度試みる動作はとらない。携帯機4は、車両1からビークルID43を受け付けると、このビークルID43が正常コードであるか否かを見る確認としてビークルID照合を行い、この時にスマート通信を行っている車両1が正規車両であるのか否かの判定を行う。このように、車両1から携帯機4にビークルID43を発信して携帯機4に車両の種別判定を行わせるのは、携帯機4の周囲に複数車両が存在してこれらから無線信号を受け付ける状況になっても、この中において正規車両のみとスマート通信を行うためである。携帯機4は、このビークルID照合が成立した事を認識すると、その旨を通知すべくRF発信機17から車両1に向けてアック返信を行う。この時の携帯機4は、WAKE信号40を受け付けた時と同様に、まずは最初にCH1アック信号41bを返信する。このCH1アック信号41bは、WAKE信号40を受け付けた時に返信するCH1アック信号41aとビット長及び発信タイミングが同じ値をとるように設定されている。なお、ビークルID43が応答に相当する。
照合ECU6は、ビークルIDを発信した後、所定時間後に認証通信における最初の受信準備動作として対アック受信準備動作を行う。この対アック受信準備動作は、ポーリング時に行うものと同様に、スタートアップ動作とCH1受信準備動作とCH2受信準備動作とからなり、携帯機4からのアック返信を受け付け可能なタイミングに起動時刻が設定されている。また、この時のCH1受信準備動作及びCH2受信準備動作の受信有無確認の動作時間は、ビークルID発信の後に携帯機4から受け付けるアック信号(対CH1がアック信号41b、対CH2がアック信号42b)のデータ長に、所定の許容時間を足し合わせた時間(例えば十数ms)に設定されている。
このとき、照合ECU6は、ビークルID43を発信した後、対アック受信準備動作のCH1受信準備動作の時にCH1アック信号41bを受信する動作をとるが、このようにビークルID43を発信した後に正常にアック返信を受け付けると、携帯機4との間でビークルID照合が成立したと認識し、スマート通信の通信エリア内に存在する携帯機4が自身とペアをなすものであると認識する。なお、照合ECU6は、ビークルID43の発信に対するアック返信(CH1アック信号41b)を受け付けても、念のためにCH2受信準備動作を行い、それが終わると対アック受信準備動作を終了する。
照合ECU6は、ビークルID発信の後にCH1アック信号41bを受信すると、次にチャレンジレスポンス認証用の認証コード44を、車外LF発信機7(車内LF発信機8)からLF帯の信号で発信させる。この認証コード44は、乱数として用いるチャレンジコードと、車両1側に登録された携帯機4のキー番号(数bitデータ)とからなる。この時に、車両1から携帯機4のキー番号を携帯機4に発信して携帯機4側でキー番号の照合を行わせるのは、周囲にマスターキー及びサブキーの両方が存在することも想定され、これらが同時にスマート通信を行ってしまうと混信が生じる可能性もあることから、車両1側からキー番号を送ってその時々のスマート通信の通信対象を指定することで、この種の混信を防止している。
携帯機4は、CH1アック信号41bを発信してから所定時間の間に認証コード44を受け付けることができれば、アック返信がCH1で成功したことを認識し、アック返信を他チャネルで再度試みる動作はとらない。携帯機4は、車両1から認証コード44を受信すると、この時に受け付けたキー番号と自身に登録されたキー番号とを照らし合わせて番号照合を行い、自身がこの時のスマート通信の通信対象であるか否かを判断する。この時、番号照合が成立する携帯機4については、自身に登録されたIDコードを車両1に返信する動作に移行するが、このIDコードの返信に際して、認証コード44に含まれていたチャレンジコードに特別な計算を加えてそれをレスポンスとし、このレスポンスとIDコードと含んだレスポンス返信を、RF発信機17からRF帯の信号で発信する。携帯機4は、このレスポンス返信として、まずは最初にCH1レスポンスコード45aを発信する。レスポンスコード45aは、RF受信機9が対レスポンス受信準備動作(CH1受信準備動作)をとっている際にRF受信機9に至る発信タイミングに設定されている。
照合ECU6は、認証コード44を発信した後の所定時間後に、受信準備動作として対レスポンス受信準備動作を開始する。この対レスポンス受信準備動作は、対CH1のレスポンス受け付けを確認するCH1受信準備動作と、対CH2のレスポンス受け付けを確認するCH2受信準備動作(図5参照)とからなる。この時のCH1受信準備動作及びCH2受信準備動作の受信有無確認の動作時間は、レスポンス(対CH1がCH1レスポンスコード45a、対CH2がCH2レスポンスコード45b)のデータ長に、所定の許容時間を足し合わせた時間(例えば百数十ms)に設定されている。対CH1ノイズが発生していない場合、この時の照合ECU6は、認証コード44を発信した後、CH1受信準備動作の際にCH1レスポンスコード45aを受け付ける動作状態をとる。照合ECU6は、CH1レスポンスコード45aを受信すると、CH1レスポンスコード45aに含まれるIDコードと、車両1に登録されたIDコードとを照らし合わせてID照合を行う。照合ECU6は、チャレンジコードを携帯機4に発信するに際して、自身もこのチャレンジコードに特別な計算を加える処理を行い、スマート通信対象の携帯機4がペアをなすものであればこの計算結果は同じとなるはずであるから、そのペア確認を行うべく、自身が求めたレスポンスと、CH1レスポンスコード45aに含まれるレスポンスとを照らし合わせてレスポンス照合を行う。照合ECU6は、CH1レスポンスコード45aを受け付けた際にID照合及びレスポンス照合の両方が成立すると、スマート照合が成立したと判定する。なお、照合ECU6は、対レスポンス受信準備動作の際、CH1受信準備動作の時にデータ受信を正常に実行できれば、その時点で対レスポンス受信準備動作を止めて待機状態に戻る。
照合ECU6は、スマート照合が成立したことを認識すると、その旨を通知する終了コード(フィニッシュコード)Cfnを、車外LF発信機7(車内LF発信機8)からLF帯の信号で発信させる。携帯機4は、CH1レスポンスコード45aを発信してから所定時間の間に終了コードCfnを受信すると、このコード受信を以てスマート通信が完了したことを認識し、レスポンス返信を他チャネルで再度試みる動作はとらずに、起動状態から元の待機状態に戻る。
続いて、図5に示すように、携帯機4が車両1とスマート通信を行う際に、CH1に影響を及ぼすノイズとして、例えばCH1と同一の周波数であってCH1の無線信号を打ち消してしまうような強度を持つランダムノイズ(アンフォーマットノイズとも言う)46が発生した場合を想定する。携帯機4は、車両1から発信されたWAKE信号40を受信すると、それに応答してまずは最初にCH1アック信号41aを車両1に返信する。しかし、ランダムノイズ46が発生している場合、このCH1アック信号41aはランダムノイズ46に妨害を受けて、車両1まで至ることができない。よって、携帯機4がCH1アック信号41aを発信しても、車両1はこのCH1アック信号41aを受け付けることができず、待機のままの状態をとるので、以降の処理であるビークルID発信に動作が移行しない。
よって、この時の携帯機4は、CH1アック信号41aを返信してから所定時間の間に、ビークルID43を受け付けることができない。このため、携帯機4は、RF信号発信動作の通信環境下に対CH1ノイズが発生していると認識し、他チャネルでの通信成立を試みるべく、今度はCH2アック信号42aを発信する。このCH2アック信号42aは、ランダムノイズ46に妨害を受けないので、車両1まで至る。よって、車両1は、同じポーリング内のCH2受信準備動作の時にCH2アック信号42aを受信するので、このアック返信受け付けを以て、スマート通信の通信エリア内に携帯機4が存在することを認識する。なお、照合ECU6は、対CH1ノイズが発生していない時と同様に、WAKE信号40に応答したアック返信を正常に受け付けると、その周期でポーリングを終了し、携帯機4が正規のものかを実際に見る認証通信に入る。また、このCH2アック信号42aは、RF受信機9がCH2受信準備動作をとっている際にRF受信機9に至る発信タイミングに設定されている。
続いて、照合ECU6は、この時に受け付けたCH2アック信号42aに応答する形で、携帯機4に向けてビークルID43を発信する。携帯機4は、このビークルID43を受信するとビークルID照合を行うが、このビークルID照合が成立したことを認識すると、この時もまずは最初にCH1アック信号41bを車両1に返信する。しかし、ランダムノイズ46が発生している場合は、ランダムノイズ46に妨害を受けてCH1アック信号41bが車両1まで至らない。よって、この時の携帯機4は、CH1アック信号41bを返信してから所定時間の間に、認証コード44を受け付けることができない。このため、携帯機4は、RF信号発信動作の通信環境下に対CH1ノイズが発生していると認識し、他チャネルでの通信成立を試みるべく、今度はCH2アック信号42bを発信する。このCH2アック信号42bは、ランダムノイズ46に妨害を受けないので、車両1まで至る。
ところで、照合ECU6は、対アック受信準備動作を行っている際、CH1受信準備動作の動作時間が確認時間を過ぎると次は動作状態をCH2受信準備動作に切り換えるが、ランダムノイズ46の発生状況下時は対アック受信準備動作のCH2受信準備動作の時にCH2アック信号42bを受信する動作をとる。よって、照合ECU6は、このアック返信受け付けを以て、ビークルID照合が成立したと認識する。なお、照合ECU6は、ビークルID43の発信に対するアック返信(CH2アック信号42b)を受け付けると、それまで行っていた対アック受信準備動作を終了する。
続いて、照合ECU6は、この時に受け付けたCH2アック信号42bに応答する形で、今度は認証コード44を携帯機4に発信する。携帯機4は、この認証コード44を受信するとキー番号照合を行うが、この照合が成立すれば、この認証コード44のレスポンスとして、まずは最初にCH1レスポンスコード45aを車両1に返信する。しかし、ランダムノイズ46が発生している場合は、ランダムノイズ46に妨害を受けてCH1レスポンスコード45aが車両まで至らない。よって、この時の携帯機4は、CH1レスポンスコード45aを発信してから所定時間の間に、終了コードCfnを受け付けることができない。このため、携帯機4は、RF信号発信動作の通信環境下に対CH1ノイズが発生していると認識し、他チャネルでの通信成立を試みるべく、今度はレスポンス返信をCH2で行って、CH2レスポンスコード45bを車両1に発信する。このCH2レスポンスコード45bは、ランダムノイズ46に妨害を受けないので、車両1まで至る。
ところで、照合ECU6は、対レスポンス受信準備動作を行っている際、CH1受信準備動作の動作時間が確認時間を過ぎると次は動作状態をCH2受信準備動作に切り換えるが、ランダムノイズ46の発生状況下時は対レスポンス受信準備動作のCH2受信準備動作の時にCH2レスポンスコード45bを受信する。照合ECU6は、このようにしてCH2レスポンスコード45bを受信すると、これに関して認証を行い、このチャレンジレスポンス認証が成立したことを確認すると、スマート照合が成立したと判定する。照合ECU6は、スマート照合が成立したことを認識すると、その旨を通知する終了コード(フィニッシュコード)Cfnを車両1に送る。よって、スマート通信環境下にランダムノイズ46が発生していても、問題なくスマート通信が成立する。
また、携帯機4は、ワイヤレスキーシステム36で行う動作として、ロックボタン37やアンロックボタン38が操作されると、図6及び図7に示すように、そのボタン操作に応じた指令内容を持つ施解錠要求SwkをRF発信機17からRF帯の信号で車両1に向けて発信する。即ち、通信制御部15は、ロックボタン37が押圧操作された事を検出すると施解錠要求Swkとして施錠要求SlkをRF発信機17から発信させ、アンロックボタン38が押圧操作された事を検出すると施解錠要求Swkとして解錠要求SulをRF発信機17から発信させる。
この施解錠要求Swkは、図2に示すように、データ一括りの単位であるフレーム47が複数(本例は7つ)並んだデータ配列をとっている。これらフレーム47,47…は、全て同じデータ内容(データ列)をとり、これら複数フレーム47,47…のうちの1つでも読み取ることができれば、そのフレーム読み込みを以て施解錠要求Swkの受信動作が成立する。このように、施解錠要求Swkの無線通信に際して複数のフレーム47,47…を発信するのは、無線通信環境下に偶発的なノイズが発生して一時的にフレーム取得ができない状況に陥った場合や、或いはRF受信機9が施解錠要求Swkを受け付けた時にそれがフレーム途中であった場合でも、1つのフレーム47を先頭から正しく受信できるようにするためである。
これら一つひとつのフレーム47,47…は、フレーム47の始まりを通知するフレームスタートビットと、携帯機4が固有のキーコードとして持つIDコードと、ロックボタン37やアンロックボタン38を操作する度にコードが変わるローリングコードと、その時のボタン操作の操作内容を通知する機能コードとからなる。よって、このフレーム47においては、フレームスタートビットを読み取ることでフレーム47の先頭を認識し、続くIDコード及びローリングコードを車両1側のそれと照らし合わせることでキー照合を行い、フレーム47内の機能コードでその時のキー操作が施錠操作及び解除操作のどちらであるのかを判別する。このIDコードやローリングコードは、携帯機4のメモリ22に登録されたデータ群である。
また、携帯機4は、ボタン操作時に施解錠要求Swk(施錠要求Slk、解錠要求Sul)として複数のフレーム47,47…を発信するが、この時にこれらフレーム47を複数(本例はスマート通信に合わせて2種類)のチャネルで発信する。本例においては、まず最初にCH1の周波数でフレーム(以下、CH1フレーム47aと記す)を3つ発信し、これに連続してCH2の周波数でフレーム(以下、CH2フレーム47bと記す)を4つ発信する。
ここで、図6に示すように、携帯機4が車両1とワイヤレス通信を行う際に、CH1に影響を及ぼすノイズが発生していない場合を想定すると、この時の照合ECU6は、ポーリングのCH1受信準備動作の際に、RF受信機9でCH1の無線信号(即ち、CH1フレーム47a)を受信する状態をとる。ところで、この時のRF受信機9はCH1フレーム47aをフレーム途中で受信しつつ、しかも照合ECU6はフレーム47のデータ内容の読み込みに際してこれをフレーム先頭から行う動作をとる。よって、照合ECU6は、このCH1受信準備動作の際にCH1の無線信号を受信してデータ受信動作を開始すると、フレーム47の先頭位置を検索するスタートビット検索を行って、以降に続く次のCH1フレーム47aのフレームスタートビットを検索する。
照合ECU6は、スタートビット検索でフレームスタートビットを正常に読み取ることができれば、この時に取得したフレーム47が正規のものであると認識し、続くデータ内容の読み取りを継続する。そして、照合ECU6は、フレームスタートビットに続くIDコード及びローリングコードを、自身のメモリ23に登録されたIDコード及びローリングコードと照らし合わせることにより、キー照合を行う。照合ECU6は、このキー照合が成立すれば、施解錠要求Swk内においてIDコード及びローリングコードの後に続く機能コードを参照し、その機能コードの指令内容に従ってドアロックモータ14を駆動することによりドアロックの施解錠を行う。
一方、図7に示すように、携帯機4が車両1とワイヤレス通信を行う際に、CH1の無線信号に影響を及ぼし得る対CH1のランダムノイズ46がワイヤレス通信の全期間に亘り発生した場合を想定する。携帯機4が施解錠要求Swkを発信する際、最初はCH1フレーム47aを続けて3つ発信するが、ランダムノイズ46に影響を受けてCH1フレーム47aが打ち消されるので、照合ECU6はポーリングのCH1受信準備動作の際にCH1フレーム47aを受け取れず、ポーリングのCH2受信準備動作の時は携帯機4からCH2フレーム47bが発信されていないので、CH2フレーム47bを受け付ける状態もとらない。
携帯機4はCH1フレーム47aを3つ発信すると、この後はCH2フレーム47bを4つ発信する動作に移るので、照合ECU6は携帯機4がこの信号発信状態をとった時に、次ポーリングのCH2受信準備動作のタイミングでCH2フレーム47bを受け付ける。そして、照合ECU6は、前述したCH1フレーム47aを受信する時と同様に、まずはスタートビット検索を行って次に続くCH2フレーム47bの先頭を検索し、CH2フレーム47bの先頭を見つけると、そのCH2フレーム47bのデータ群を取り込んで施解錠要求Swkを取得する。よって、ワイヤレス通信環境下にCH1に影響を及ぼすランダムノイズ46が発生していても、この時はCH2でフレーム受信を行うので、問題なくワイヤレス通信が成立する。
ところで、携帯機4が車両1とスマート通信(ワイヤレス通信も含む)を行う際にCH1に影響を及ぼすノイズとしては、前述したランダムノイズ46の他に、図8に示すように、例えば無線信号のデータ群を構築するフォーマット自体は同じであるものの具体的なデータ配列(データやコードの種類や割り振り)が異なる無線信号が正規信号に被るフォーマットノイズ48というものもある。このように、無線通信環境下にこのフォーマットノイズ48が発生していると、背景技術でも述べたように、RF受信機9がCH1及びCH2の両方の無線信号を受け付けることができず、スマート通信が成立しない状況が発生する問題があった。
そこで、本例のチャネル選択式通信システム39には、先チャネル(CH1)での無線通信がノイズに影響を受けて通信成立しない場合において次ポーリングでは次チャネル(CH2)での無線通信を優先する次チャネル受信優先機能が設けられている。この次チャネル受信優先機能を以下に説明すると、図3に示すように、照合ECU6のメモリ23には、次チャネル受信優先機能を行う際に実行する次チャネル通信優先プログラムDprが書き込まれている。この次チャネル通信優先プログラムDprは、携帯機4が複数チャネルの無線信号(アック等)を車両1に順発信する場合、先チャネルでのデータ受信動作時にノイズを検出したとすると、次ポーリングでは先チャネルのデータ受信を途中で打ち切って次チャネルでのデータ受信を優先するプログラムである。照合ECU6は、RF受信機9で無線信号を受け付ける度にこの次チャネル通信優先プログラムDprを実行して、スマート通信の通信確立を試みる。
図9に示すように、照合ECU6には、先チャネルでの無線通信時にこの無線通信に影響を及ぼすノイズの有無を判定するノイズ有無判定部49と、ノイズ有無判定部49がノイズ有りと判定したポーリングの次ポーリングにおいてもノイズが未だ継続して発生しているかを監視するノイズ監視部50と、ノイズ監視部50がノイズの継続発生を認識した際に次ポーリングにおいて次チャネルの無線通信を優先する次チャネル優先部51とが設けられている。なお、ノイズ有無判定部49、ノイズ監視部50及び次チャネル優先部51は、照合ECU6がメモリ23内の次チャネル通信優先プログラムDprを実行することにより機能的に生成されるもので、図9ではこれらをブロック図で表現している。なお、ノイズ有無判定部49がノイズ有無判定手段に相当し、ノイズ監視部50がノイズ継続発生有無判定手段に相当し、次チャネル優先部51が優先手段に相当する。
次に、次チャネル受信優先機能の動作を説明する。
図8に示すように、車両1及び携帯機4間の無線通信環境下にCH1フォーマットノイズ48が発生している場合、ポーリングにおいて受信準備動作を行った際は、通常ならばWAKE信号40に応答して携帯機4が返信してきたCH1アック信号41aをCH1受信準備動作の時に受け付ける動作状態をとるはずであるが、CH1アック信号41aよりもフォーマットノイズ48の方が信号強度が強いと、CH1受信準備動作の時に、CH1アック信号41aではなく、フォーマットノイズ48を受信する状態をとってしまう。即ち、フォーマットノイズ48が発生している条件下では、ポーリングのCH1受信準備動作の時にフォーマットノイズ48を受信することを以て、データ受信状態に入ってしまう。
照合ECU6は、データ受信動作の際にはその一処理として受信データ内のデータ先頭を検索するスタートビット検索を行っているので、フォーマットノイズ48のデータ受信動作の際もこのスタートビット検索を同様に行う。ところで、ポーリングで正常データを受け付けて正常なデータ受信動作が行われるのであれば、受信した1つの無線信号を最初から最後まで読み取るのに必要な時間(以下、制限時間Tkaと記す)内に、スタートビット検索が終了するはずである。逆に、データ受信動作を開始してからの処理時間Tkxが制限時間Tkaを超えても未だスタートビット検索が終了しないのであれば、この時にRF受信機9で受け付けた受信データは不正データであるとみなせる。
また、本例のポーリングはスマート通信及びワイヤレス通信の両方において信号受付の有無を確認することから、これら通信において受け付ける全ての無線信号について不正判定ができなければならない。よって、制限時間Tkaはスマート通信及びワイヤレス通信の両方で受け付ける信号のうち、最も長い時間長を持つ無線信号を読み取るのに必要な時間に設定する必要がある。本例の場合、スマート通信時にはアック信号41a,41b,42a,42b及びレスポンスコード45a,45bを受け付け、ワイヤレス通信時にはフレーム47を受け付ける受信動作をとるが、これら無線信号の中で最も長い時間長を持つのはフレーム47であるので、本例の制限時間Tkaはフレーム47の時間長Tw(図6及び図7参照)に設定されている。
ノイズ有無判定部49は、ポーリングのCH1受信準備動作の際にCH1の無線信号を受け付けると、データ受信動作を開始してからの処理時間Tkxを計測し、この処理時間Tkxが制限時間Tka内のうちに、フレームスタートビットが読み取れた否かを見ることにより、CH1に影響を及ぼすCH1狭帯域ノイズの発生有無を判定する。CH1受信準備動作の際にRF受信機9がフォーマットノイズ48を受信した場合、この時の受信データは正規データではないので、データ受信動作の処理時間Tkxが制限時間Tka内の時間をとる間にフレームスタートビットを読み取ることができない。よって、ノイズ有無判定部49は、この処理時間Tkxが制限時間Tkaを超えると、この時はノイズを受け付けていると認識して、処理時間Tkxが制限時間Tkaを超えた時点でCH1のデータ受信動作を強制終了し、その旨をノイズ監視部50に通知する。照合ECU6は、対CH1のデータ受信動作を強制終了した後、確認の意味合いでCH2受信準備動作を行ってCH2フレーム47bの受け付け有無を見る。
照合ECU6は、ポーリングを一定周期間隔で繰り返し実行するので、無線通信環境下にCH1フォーマットノイズ48が発生していると認識した後も、ノイズ有り判定後の次ポーリングで受信準備動作を開始する。この時、無線通信環境下にCH1フォーマットノイズ48が継続して発生しているのであれば、CH1フォーマットノイズ48の発生を検出したポーリングの次ポーリングの時も、CH1受信準備動作の際にはフォーマットノイズ48を受け付けるデータ受信動作を開始する。
ノイズ監視部50は、ノイズ有無判定部49からフォーマットノイズ発生の旨の通知を受け付けると、ノイズ有り判定が行われたポーリングの次のポーリングにおいても未だノイズ発生が継続しているか否かを監視する。ところで、このCH1フォーマットノイズ48は、対CH1のスマート通信やワイヤレス通信の無線信号を打ち消す妨害電波である。よって、図10に示すように、CH1フォーマットノイズ48の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)の値であるRSSI値E1は、携帯機4がスマート通信やワイヤレス通信を行う時に車両1に発信するCH1の無線信号のRSSI値E2に比べて高い値をとるはずである。
よって、ノイズ監視部50は、ノイズ有無判定部49がノイズ有りと判定したポーリングの次ポーリングにおいて、この時のCH1受信準備動作でCH1の無線信号を受信すると、携帯機4がスマート通信やワイヤレス通信を行う時に発信するCH1の無線信号のRSSI値E2を閾値として、受信信号のRSSI値と閾値とを比較することにより、フォーマットノイズ48の継続発生の有無を確認する。ノイズ監視部50は、この時に受信信号のRSSI値が閾値を超える事を確認すると、フォーマットノイズ48の発生が2ポーリングに亘って継続していると認識し、その旨を次チャネル優先部51に通知する。
次チャネル優先部51は、ノイズ監視部50からフォーマットノイズ48の発生継続の旨の通知を受け付けると、次ポーリングで行っているCH1受信準備動作を途中で打ち切り、代わりにCH2受信準備動作を開始することにより、CH2の無線信号のデータ受信を優先する。このCH1受信準備動作の打ち切りタイミング(要は、CH2受信準備動作の開始タイミング)は、その後に携帯機4から発信されるCH2アック信号42aをRF受信機9で受信できるように、そのCH2アック信号42aを受信する時までにCH2受信準備動作が開始されるタイミングに設定されている。本例のCH1受信準備動作の打ち切りタイミングは、通常ポーリング時において確認時間に到達したことによりCH1受信準備動作を終了する時と同じタイミングに設定されている。
本例のCH2受信準備動作の開始タイミングは、RF受信機9でCH2アック信号42aを受け付ける少し前に開始されるタイミングに設定されている。なお、CH2受信準備動作の開始タイミングは、RF受信機9でCH2アック信号42aを受け付ける少し前に限らず、例えば同じタイミングとしてもよい。また、本例のCH1受信準備動作の打ち切り後に行うCH2受信準備動作は、打ち切り直前のCH1受信準備動作でスタートアップ動作が行われているので、CH2受信有無確認動作のみの処理からなり、確認時間(確認時に取る最長時間)が通常ポーリング時と同じ処理時間に設定されている。
これにより、携帯機4がWAKE信号40を受け付けて2チャネルのアック信号41a,42aを続けざまに返信した際、スマート通信環境下にCH1フォーマットノイズ48が発生している場合には、ポーリングにおいてCH1受信準備動作が強制的に打ち切られてCH2受信準備動作が優先して開始されるので、照合ECU6はこのCH2受信準備動作の時にCH2アック信号42aを受け付ける動作をとる。よって、スマート通信環境下にCH1フォーマットノイズ48が発生していても、照合ECU6はWAKE信号発信の際に携帯機4が返信してきたCH2アック信号42bを受信することによりアック返信の受け付けが可能となり、スマート通信の通信エリア内に携帯機4が存在することを認識することが可能となる。
この後、照合ECU6は、携帯機4との間でビークルID照合を行うが、この時は対アック受信準備動作のCH1受信準備動作の時に、CH1フォーマットノイズ48を受信する状態をとる。なお、この対アック受信準備動作のCH1受信準備動作は、動作時間が確認時間を経ても全データを正常に受信できない場合には、その時点で処理が終了するように設定されている。よって、CH1受信準備動作の時にCH1フォーマットノイズ48を受信する状態をとっても、この時は制限時間内に全データを正常に受信できず、動作時間が確認時間を過ぎた時点で処理が終了し、動作状態がCH2受信準備動作に切り換わる。これにより、対アック受信準備動作でCH2アック信号42bを受信する状態をとり、これを以てビークルID照合の成立を認識する。
照合ECU6は、携帯機4でビークルID照合が成立した事を認識すると、続いて携帯機4に認証コード44を発信して携帯機4との間でチャレンジレスポンス認証が成立するか否かを確認するが、この時は対レスポンス受信準備動作のCH1受信準備動作の時に、CH1フォーマットノイズ48を受信する状態をとる。なお、この対レスポンス受信準備動作のCH1受信準備動作も、その動作時間が確認時間を経ても全データを正常に受信できない場合には、その時点で処理が終了するように設定されている。よって、CH1受信準備動作の時にCH1フォーマットノイズ48を受信する状態をとっても、この時は制限時間内に全データを正常に受信できず、動作時間が確認時間を過ぎた時点で動作が終了し、動作状態がCH2受信準備動作に切り換わる。これにより、対レスポンス受信準備動作でCH2レスポンスコード45bを受信する状態をとり、この照合が成立すれば、スマート通信(車外照合、車内照合)が成立したと判定する。
また、本例の携帯機4はロックボタン37やアンロックボタン38を操作することでワイヤレス通信も可能であることから、ポーリングのCH1受信準備動作においてこれを強制的に打ち切った後のCH2受信準備動作の時に施解錠要求Swkを受け付けると、この時も前述した手順に沿ってキー照合を行う。よって、本例のようにCH1フォーマットノイズ48が発生している際にCH1受信準備動作を途中で打ち切ってCH2受信準備動作を優先的に実行するようにした場合、スマート通信のみならず、ワイヤレス通信も滞りなく成立させることが可能となる。
従って、本例においては、ポーリングのCH1受信準備動作で無線通信を受け付けた際に、照合ECU6がCH1フォーマットノイズ48の発生を認識し、次ポーリングにおいても未だCH1フォーマットノイズ48が発生していると判断した場合には、この次ポーリング時においてCH1受信準備動作を強制的に打ち切り、CH2受信準備動作(CH2受信有無確認動作)を優先的に行うようにした。これにより、照合ECU6はスマート通信(ワイヤレス通信)の際に携帯機4が発生する各種信号をCH2受信準備動作のタイミングで受け付けることが可能となるので、スマート通信(ワイヤレス通信)を問題なく成立させることが可能となる。
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)先のポーリングのCH1受信準備動作のデータ受信動作の際に、CH1フォーマットノイズ48が発生していると判定された際、次のポーリングにおいても未だCH1フォーマットノイズ48が継続して発生していると判定された際には、その次ポーリングにおいてCH1受信準備動作を早々に打ち切り、CH2受信準備動作を優先する。これにより、携帯機4がCH2の無線信号を発信するタイミングに、RF受信機9のCH2受信準備動作が間に合うので、照合ECU6(RF受信機9)がCH2受信準備動作でCH2の無線信号を受け付けることになり、照合ECU6及び携帯機4の間の無線通信が成立する。よって、車両1及び携帯機4の無線通信環境下にCH1フォーマットノイズ48が発生していても、車両1及び携帯機4の間の無線通信を滞りなく成立させることができる。
(2)次ポーリングでCH1受信準備動作よりもCH2受信準備動作を優先する優先処理は、CH1フォーマットノイズ48の発生が検出されたポーリングの次のポーリングにおいても未だCH1フォーマットノイズ48が発生している事が条件となっている。このため、先ポーリングの時にはCH1フォーマットノイズ48が発生していたものの、次ポーリングではCH1フォーマットノイズ48が消えてしまっている時までも優先処理を実行してしまう状況が生じ難くなるので、本来ならば不要な優先処理を無駄に行わせてしまう状況を生じ難くすることができる。
(3)各々のポーリング時に行う受信準備動作(CH1受信準備動作、CH2受信準備動作)は、スマート通信に準ずる無線信号と、ワイヤレスキー通信に準ずる無線信号との両方の無線信号の受信有無を確認する受信準備動作である。これにより、車両1及び携帯機4の無線通信環境下にCH1フォーマットノイズ48が発生していたとしても、スマート通信及びワイヤレス通信のどちらでもあっても滞りなく成立させることができる。
(4)CH1フォーマットノイズ48の継続発生有無は、ノイズ有りと判定された後の各々のポーリングにおいて逐次実行されるので、CH1フォーマットノイズ48が継続して発生しているか否かをより一層正確に判定することが可能となる。このため、CH1受信準備動作に対してCH2受信準備動作を優先して行う優先処理を無駄に行ってしまう状況をより一層生じ難くすることができる。
(5)CH1フォーマットノイズ48の発生有無は、この無線通信時に受け付ける無線信号(本例は最も長い時間長をとるフレーム47)を先頭から最後まで読み取るのに必要な時間(制限時間Tka)を閾値とし、CH1受信準備動作で無線信号を受け付けてデータ受信動作を開始してからの処理時間Tkxをこの制限時間Tkaと比較することにより、ノイズ有無判定が行われる。このため、データ受信動作の処理時間Tkxと制限時間Tkaとを比較する時間比較という簡単な処理で、CH1フォーマットノイズ48の発生有無を判定することができる。
(6)CH1フォーマットノイズ48の発生時に次ポーリングでCH1受信準備動作を強制的に打ち切る際の強制終了タイミングは、無線信号を受け付けない時の通常のポーリングにおいてCH1受信準備動作がとり得る確認時間(処理最長時間)に設定されている。これにより、CH2受信準備動作を優先する場合に、CH2受信準備動作の始まりを、通常のポーリングの時のCH2受信準備動作の開始タイミングと同じとすることが可能となる。このため、CH2受信準備動作を優先する際においても、通常時におけるポーリングのCH2受信準備動作のタイミング、即ちCH2の無線信号を受け取るのに最適な受信タイミングで、CH2の無線信号を照合ECU6(RF受信機9)に受け取らせることができる。
なお、実施形態はこれまでの構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ CH1フォーマットノイズ48が発生している際に次ポーリングでCH2受信準備動作を優先する優先処理は、必ずしも次ポーリングにおいても未だCH1フォーマットノイズ48が継続発生している事を条件とすることに限定されない。即ち、先のポーリングでCH1フォーマットノイズ48が発生している事が判定されると、次ポーリング(これ以降のポーリング)ではCH1フォーマットノイズ48の継続発生を確認する事なしに、無条件にCH2受信準備動作を優先してもよい。
・ 先のポーリングでCH1フォーマットノイズ48の有無を判定するノイズ有無判定は、CH1の無線信号のデータ受信動作を開始してからの処理時間Tkxを制限時間Tkaと比較する時間比較の処理に限定されない。例えば、RF受信機9でCH1の無線信号を受信した際のその受信信号強度(RSSI)を見ることにより、その時に受信している無線信号がCH1フォーマットノイズ48であるか否かを判定してもよい。
・ CH1フォーマットノイズ48が発生している際に次ポーリングでCH2受信準備動作を優先する際、CH1受信準備動作を途中で打ち切ってCH2受信準備動作に移行するのではなく、例えばポーリング時にCH2受信準備動作のみを行うようにしてもよい。
・ 携帯機4が車両1に対して無線信号を複数チャネルで発信する際、そのチャネル数は必ずしも2つに限らず、3つ以上であってもよい。
・ 次ポーリングでCH2受信準備動作を優先する際、このポーリングではCH1受信準備動作を途中で打ち切っているが、この時の打ち切りタイミングは、通常ポーリング時にCH1受信準備動作がとり得る確認時間(処理最長時間)に限定されない。即ち、CH1受信準備動作の打ち切りタイミングは、この確認時間の前後をとってもよく、要はCH2の無線信号を受信することができれば、その打ち切り時間は特に限定されない。
・ CH1フォーマットノイズ48の発生下で次ポーリング時にCH1以降の受信準備動作を優先する場合、これは必ずしもCH1の直後に続くCH2の受信準備動作を優先することに限定されない。例えば、携帯機4が発信する無線信号のチャネル数が3つ以上の場合、受信を優先するチャネルはCH1の次に続くCH2を飛ばして、CH3以降のチャネルとしてもよい。
・ 車両1及び携帯機4の間の無線通信は、無線信号のやり取りが複数(本例は3回)往復する通信処理に限定されず、例えば1度のみの往復でもよい。
・ 車両1及び携帯機4の無線通信は、必ずしもスマート通信及びワイヤレス通信の両方の通信が可能である事に限定されず、少なくともスマート通信を行う事ができればよい。
・ キー操作フリーシステム3は、ドアロックの施解錠に際してドアハンドルノブ1aのタッチセンサ10やロックボタン11の操作を必要とする事に限定されない。即ち、携帯機4が車外LF発信機7の車外通信エリアに入り込むとドアロックが自動で解錠され、車外通信エリア内から携帯機4が外に出るとドアロックが自動で施錠されるものでもよい。
・ 電子キーシステム2は、必ずしもキー操作フリーシステム3及びワイヤレスキーシステム36の両方を備える必要はなく、これら両機能のうち少なくとも一方を備えていればよい。また、キー操作フリーシステム3は、必ずしもスマートエントリーシステム5及びワンプッシュエンジンスタートシステム24の両方を備える必要はなく、これら両機能のうち少なくとも一方を備えていればよい。
・ 携帯機4に設けられる操作手段は、必ずしもロックボタン37やアンロックボタン38に限定されず、例えば車両1のスライドドアの開動作を実行する操作ボタンでもよい。
・ チャネル選択式通信システム39は、必ずしも車両1のキーシステムに採用されることに限らず、これ以外の各種機器や装置に用いてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(1)請求項2〜5において、前記ノイズ継続発生有無判定手段は、ノイズ継続発生有無の判定を各々のポーリングごとに行い、前記優先手段は、前記ノイズ継続発生有無判定手段がノイズ継続発生有りと判定した際、該ノイズ継続発生有りの判定を行った時のポーリングにおいて前記次チャネル以降の受信準備動作を優先する。この構成によれば、次ポーリングにおいて次チャネル以降の受信準備動作を優先する処理が無駄に行われてしまう状況をより一層生じ難くすることが可能となる。
(2)請求項1〜5又は前記技術的思想(1)のいずれかにおいて、前記ノイズ有無判定手段は、受信した前記無線信号を先頭から最後まで読み取るのに必要な時間を閾値とし、前記信号受信装置が先の前記受信準備動作で前記無線信号を受け付けてからの受信時間を計測し、当該受信時間が前記閾値を超えるか否かを見ることで前記ノイズの有無を判定する。この構成によれば、時間(無線信号の受信時間)のタイムアップを判定するという簡単な処理でノイズの有無を判定することが可能となる。
(3)請求項1〜5又は前記技術的思想(1),(2)のいずれかにおいて、前記優先時において行う先の受信準備動作の打ち切りタイミングは、通常時のポーリングの際の受信準備動作の確認時間(処理最長時間)に設定されている。この構成によれば、通常時と優先時とでポーリングの処理最長時間が同じとなるので、優先時においても無線信号を好適なタイミングで受け付けることが可能となる。
4…通信端末としての携帯機、6…信号受信装置を構成する照合ECU、9…信号受信装置を構成するRF受信機、37…操作手段を構成するロックボタン、38…操作手段を構成するアンロックボタン、39…チャネル選択式通信システム、41a…第1無線信号(無線信号)を構成するCh1アック信号、42a…第1無線信号(無線信号)を構成するCH2アック信号、43…応答としてのビークルID、49…ノイズ有無判定手段としてのノイズ有無判定部、50…ノイズ継続発生有無判定手段としてのノイズ監視部、51…優先手段としての次チャネル優先部、Srq…信号返信要求としてのリクエスト信号、Sid…第1無線信号(無線信号)を構成するID信号、Swk…第2無線信号(無線信号)としての施解錠要求。