本発明は、MVA(Multidomain Vertical Alignment)方式の液晶表示パネルに関し、特に液晶表示パネルの表面を押圧した時に生じる液晶の配向の乱れを改善した、表示画質の良好なMVA方式の液晶表示パネルに関する。
近年、情報通信機器のみならず一般の電気機器においても液晶表示装置の適用が急速に普及している。液晶表示パネルは、自ら発光しないために、バックライトと組み合わされた透過型の液晶表示パネルが多く使用されている。しかしながら、バックライトの消費電力が大きいために、特に携帯型のものについては消費電力を減少させるためにバックライトを必要としない反射型の液晶表示パネルが用いられているが、この反射型液晶表示パネルは、外光を光源として用いるために、暗い室内などでは見え難くなってしまう。そこで、近年に至り特に透過型と反射型の性質を併せ持つ半透過型の液晶表示装置の開発が進められてきている。
この半透過型の液晶表示装置に使用される液晶表示パネルは、一つの画素領域内に画素電極を備えた透過部と画素電極及び反射板の両方を備えた反射部を有しており、暗い場所においてはバックライトを点灯して透過部を利用して画像を表示し、明るい場所においてはバックライトを点灯することなく反射部において外光を利用して画像を表示しているので、常時バックライトを点灯する必要がなくなり、消費電力を大幅に低減させることができるという利点を有している。
ところで、携帯電話等に代表されるモバイル機器における小型の表示部として使用されている液晶表示パネルにおいては、従来はその使用者が限定されていること等から広視野角の要求はさほど高くはなかったが、最近、モバイル機器においてもますます高機能化が進展することに伴い、広視野角の要求が急激に高まってきている。このようなモバイル機器に対する広視野角化の要求に基づき、最近では、従来モバイル機器に多用されていたTN方式の液晶表示パネルに換えてVA方式ないしはMVA方式の半透過型液晶表示パネルの開発も進められてきている(下記特許文献1、2参照)。
ここで、下記特許文献2に開示されているMVA方式の半透過型液晶表示パネルについて図7〜図9を用いて説明する。なお、図7AはMVA方式の半透過型液晶表示パネル50Aの概略的な構造を示す斜視図であり、図7Bは液晶層に電界を印加したときの液晶の傾斜状態を示す概略図であり、図8は図7AのIIX−IIX断面図であり、また、図9は別のMVA方式の半透過型液晶表示パネル50Bの概略的な構造を示す斜視図である。
この半透過型液晶表示パネル50Aにおいては、反射部51と透過部52との間には傾斜面又は段差53が設けられており、反射部51と透過部52とは段差53を介して連続している。半透過型液晶表示パネル50Aにおける第一基板54の画素電極55には、画素電極55が形成されていない領域としての第一開口領域56Aが形成されている。この第一開口領域56Aが第一の配向規制手段を構成し、段差53を挟んで反射部51及び透過部52にまたがって形成されている。この結果、反射部51における画素電極55aと透過部52における画素電極55bとは画素電極55の長さ方向に延びる一個の接続領域57Aを介して相互に接続されている。
第二基板58の共通電極59には、反射部51における画素電極55a及び透過部52における画素電極55bに対向して、それぞれ第二開口領域60a、60bが形成されている。この第二開口領域60a、60bが第二の配向規制手段を構成する。第二開口領域60a、60bは十字型のスリットとして構成されており、鉛直方向において、第二開口領域60aの中心が画素電極55aの中心と一致するように、更に、第二開口領域60bの中心が画素電極55bの中心と一致するように配置されている。
なお、下記特許文献2には、図9に示す如く、図7に示した半透過型液晶表示パネル50Aの第一開口領域56Aに換えて、スリット56Bを透過部の画素電極55bの反射部51近傍の中央部に設け、このスリット52Bの両側に設けられた画素電極55の長さ方向に延びる2つの接続領域57Bによって反射部51における画素電極55aと透過部52における画素電極55bとを相互に接続した半透過型液晶表示パネル50Bも開示されている。
このMVA方式の半透過型液晶表示パネル50A及び50Bは、画素電極55と共通電極59間に電界が印加されない状態においては、液晶層の液晶分子は長軸が画素電極55及び共通電極59の表面に対して垂直をなすように配向されているため、光が透過しない状態となるが、画素電極55と共通電極59間に電界を印加した場合は、例えば図7B及び図8に示すように、段差53における第一開口領域56Aないし56B上においては液晶分子61は共通電極59側におけるライン57Aないし57Bの方向に傾斜し、反射部51及び透過部52上においては共通電極59における反射部51に対応する領域の中心又は透過部52に対応する領域の中心に傾斜するため、光が透過するようになる。このように、半透過型液晶表示パネル50A及び50Bによれば、液晶分子の配向方向が定まっているために、視覚特性の悪化や応答速度の劣化を低減することができるというものである。
上述のMVA方式の半透過型液晶表示パネル50A及び50Bは、第一基板54側の反射部51と透過部52との間に段差53を設けて、周知のように反射部51におけるセルギャップd1と透過部におけるセルギャップd2との関係がd1=(d2)/2(図8参照)となるようにして、反射部51における表示画質と透過部52における表示画質が同じになるように調整されているが、このようなセルギャップ調整のための構成を第二基板側に設けたMVA方式の半透過型液晶表示パネルも知られている。
このセルギャップ調整のための構成であるトップコート層を第二基板側に設けた従来例に係るMVA方式の半透過型液晶表示パネルの一例を図10〜図11を用いて説明する。なお、図10はセルギャップ調整のためのトップコート層を第二基板側に設けた従来の半透過型液晶表示パネル70のカラーフィルタ層を透視して表した1画素分の平面図であり、また、図11は図10のXI−XI断面図である。
この半透過型液晶表示パネル70においては、第一基板の透明な絶縁性を有するガラス基板11上には複数の走査線12及び信号線13がそれぞれ直接ないしゲート絶縁膜14を介してマトリクス状に形成されている。ここで、走査線12と信号線13とで囲まれた領域が1画素に相当し、スイッチング素子となる薄膜トランジスタTFTがそれぞれの画素毎に形成されており、各画素のTFT等の表面はパッシベーション膜23で被覆されている。
そして、走査線12、信号線13、ゲート絶縁膜14、パッシベーション膜23等を覆うようにして、反射部15においては表面に微細な凹凸部が形成され、透過部16においては表面が平坦に形成された有機絶縁膜からなる層間膜17が積層されている。なお、図10及び図11においては反射部15の凹凸部は省略してある。そして層間膜17にはTFTのドレイン電極Dに対応する位置にコンタクトホール20が設けられ、それぞれの画素において、層間膜17の表面には反射部15に例えばアルミニウム金属からなる反射部材18が設けられ、この反射部材18の表面及び透過部16の層間膜17の表面には例えばITO(Indium Tin Oxide)ないしIZO(Indium Zinc Oxide)からなる透明な画素電極19が形成されている。
そして、反射部15側においては、層間膜17の反射部材18が存在する位置の下側に補助容量線21が配置され、また、平面視で、反射部材18及び画素電極19は隣接する画素の反射板及び画素電極とは接しないで、かつ走査線12及び信号線13とは光漏れを防止するために若干重なるようにして形成されており、同じく透過部16側における画素電極19は隣接する画素の画素電極とは接しないでかつ走査線12及び信号線13と若干重なるように形成されている。
また、この半透過型液晶表示パネル70においては、画素電極19の反射部15と透過部16の境界領域で液晶分子の配向を規制するために信号線13側からスリット33が設けられて、画素電極19は実質的に反射部15の画素電極19aと透過部16の画素電極19bに区画されており、反射部15の画素電極19aと透過部16の画素電極19bとは幅の狭い接続領域34を介して電気的に接続されている。そして、画素電極19の表面には全ての画素を覆うように垂直配向膜(図示せず)が積層されている。
また、第二基板の透明な絶縁性を有するガラス基板25の表示領域上に、それぞれの画素に対応して形成される赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のうち何れか一色からなるストライプ状のカラーフィルタ層26が設けられている。また、反射部15と透過部16とで同じ厚さのカラーフィルタ層26を使用するため、反射部15のカラーフィルタ層26の一部分に所定の厚さのトップコート層27が設けられている。このトップコート層27は、反射部15全体にわたって設けられており、その厚さは反射部15における液晶29の層の厚さ、いわゆるセルギャップd1が透過部16のセルギャップd2の半分となるように、すなわちd1=(d2)/2となるようにされている。
加えて、透過部16に位置するカラーフィルタ層26の表面の一部及び反射部15に位置するトップコート層27の表面の一部にそれぞれ液晶の配向を規制するために突起状の配向規制部材31及び32が設けられている。このうち、透過部における突起状の配向規制部材31は画素電極の長さ方向に延びた十字状の形状を備えており、反射部における突起状の配向規制部材32は逆Y字状の形状を備えている。更に、カラーフィルタ層26、トップコート層27及び突起状の配向規制部材31、32の表面には共通電極及び垂直配向膜(いずれも図示せず)が順次積層されている。
そして、前記第一基板及び第二基板を互いに対向させ、両基板の周囲にシール材を設けることにより両基板を貼り合せ、両基板間に負の誘電異方性を有する液晶29を充填することによりMVA方式の半透過型液晶表示パネル70となる。なお、第一基板の下方には、図示しない周知の光源、導光板、拡散シート等を有するバックライト装置が配置されている。
これらのMVA方式の半透過型液晶表示パネル50A、50B、70においては、画素電極と共通電極間に電界が印加されない状態においては、液晶層の液晶分子は長軸が画素電極及び共通電極の表面に対して垂直をなすように配向されているため、光が透過しない状態となり、しかも、画素電極と共通電極間に電界が印加されたときには光が透過するため、透過部における光漏れはあまり表示画質に影響しなくなり、更には画素電極のスリット及び突起の存在により、液晶分子はスリットないし突起に向かうように傾斜するため、視野角が非常に広くなるという特性を備えている。
なお、ここで述べた効果は、第1基板側に反射部を有し、反射部の画素電極と透過部の画素電極とが幅の狭い接続領域によって結合されているMVA方式の半透過型液晶表示パネルの場合の効果であるが、第1基板側に反射部を有せず、画素電極が複数のサブドット領域に分割されてそれぞれのサブドット領域が幅の狭い接続領域によって結合されているMVA方式の透過型液晶表示装置においても同様の効果を奏する。
特開2003−167253号公報(特許請求の範囲、段落[0050]〜[0057]、図1)
特開2004−069767号公報(特許請求の範囲、段落[0044]〜[0053]、図1、図3)
本発明者等の実験によると、上述のような第1基板側の画素電極が複数のサブドット領域に分割されてそれぞれのサブドット領域が幅の狭い接続領域によって結合されているMVA方式半透過型液晶表示パネル及びMVA方式の透過型液晶表示装置においては、液晶表示パネルの表面を押圧すると、液晶の配向の乱れが生じ、表示画質の低下が見られることが分かった。すなわち、液晶表示パネルの表面が押圧されると、液晶表示パネルの透明基板(例えばガラス基板)の厚さは約0.7mm程度と薄いために変形するが、この変形により第二基板側の配向規制手段も変形し、液晶の配向規制状態が変化するため、前述の幅の狭い接続領域を基点として大きなディスクリネーションが発生し、これが表示画質の低下として認められることになる。
このような液晶表示パネルの表面を押圧したことによる大きなディスクリネーションの発生は、第1基板側の画素電極が複数のサブドット領域に分割されてそれぞれのサブドット領域が幅の狭い接続領域によって結合されている場合においては、第二基板側の配向規制手段がスリットであっても、突起であっても同様に生じる。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、第1基板側の画素電極が複数のサブドット領域に分割されてそれぞれのサブドット領域が幅の狭い接続領域によって結合されているMVA方式の液晶表示パネルにおいて、液晶表示パネルの表面が押圧された時に接続領域において生じる液晶の配向の乱れを改善した、表示画質の良好なMVA方式の液晶表示パネルを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の液晶表示パネルは、
層間膜上に複数の画素電極が形成された第一基板と、共通電極が形成された第二基板とを備え、前記複数の画素電極のそれぞれが前記画素電極に設けられたスリットによって複数のサブドット領域に区画されているとともに、前記複数のサブドット領域の間に接続領域が形成された液晶表示パネルにおいて、
前記接続領域は前記複数のサブドット領域の少なくとも一方の側端部間に設けられており、かつ、
前記複数のサブドット領域のうち少なくとも一つのサブドット領域は前記接続領域が設けられる側の角に面取り部が形成され、
前記第二基板の前記複数のサブドット領域に対応するそれぞれの位置に配向規制手段が設けられていることを特徴とする。
なお、本発明の液晶表示パネルにおける接続部が設けられている「複数のサブドット領域の少なくとも一方の側端部間」とは、一般に一つのサブ画素は走査線及び信号線に囲まれた実質的に矩形状の形状をしており、一つのサブ画素の長さ方向に沿って信号線が、同じく幅方向に沿って走査線が配置されているが、少なくとも一方の信号線側に沿って接続部が設けられ、この接続部によって画素電極の反射部と透過部とが接続されている状態を示す。この際、両方の信号線側に沿って接続部を設けてもよい。
また、この接続部は画素電極に所定形状のスリットを形成することにより形成される。更に、このスリットの形状は、一般に細長い矩形状のものが使用されるが、それに限らず、透過部の画素電極の形状を多角形状とするため、細長い矩形状の端部に突起を有する形状としてもよい。
また、本発明の液晶表示パネルは、上記液晶表示パネルにおいて、前記配向規制手段は、前記画素電極に設けられたスリットに直交する方向に延びるバー状の形状を備えた突起又は共通電極に設けられたスリットであることを特徴とする。
また、本発明の液晶表示パネルは、上記液晶表示パネルにおいて、前記配向規制手段は、前記画素電極に設けられたスリットに直交する方向に延びる十字状の形状を備えた突起又は共通電極に設けられたスリットであることを特徴とする。
また、本発明の液晶表示パネルは、上記液晶表示パネルにおいて、前記配向規制手段は、前記画素電極に設けられたスリットに直交する方向のそれぞれの十字状部分の先端に設けられた前記十字状部分よりも太さが細い突出部を備えた突起又は共通電極に設けられたスリットであることを特徴とする。
また、本発明の液晶表示パネルは、上記液晶表示パネルにおいて、前記複数のサブドット領域のうち少なくとも一つのサブドット領域には外光を反射する反射部材を備えていることを特徴とする。
本発明は上記のような構成を備えることにより以下に述べるような優れた効果を奏する。すなわち、本発明によれば、画素電極の複数に区画されたサブドット領域間を接続する接続領域がこれらの複数のサブドット領域の少なくとも一方の側端部間に設けられているとともに、これらの複数のサブドットのうち少なくとも一つのサブドット領域は前記接続領域が設けられる側の角に面取り部が形成されているため、従来例のような接続領域がこれらの複数のサブドット領域の中央部に設けられたものと比すると、液晶表示パネルの表面が押圧された際の接続領域を基点とする液晶の配向の乱れに起因するディスクリネーションが生じ難くなっているとともに、たとえ押圧が強くてディスクリネーションが生じることがあっても、このディスクリネーションは従来例のものに比すると小さいため、表示画質の低下が小さい液晶表示パネルが得られる。
なお、接続領域は、複数のサブドット領域の少なくとも一方の側端部間に備えていれば一応上記のような効果を奏するが、両方の側端部に設けると、この接続領域による液晶の配向がより良好に保たれるようになるため、更にディスクリネーションが発生し難くなり、より表示画質が良好な液晶表示パネルが得られる。この接続領域は、導電性の向上及び製造時の断線防止の目的からして幅が太い方がよい。
また、本発明によれば、第二基板側に設ける配向規制手段は、その形状が平面視で円状ないしは楕円状の突起であっても、更にはプラス状のスリットであっても上述のような効果を生じるが、この配向規制手段の形状が画素電極に設けられたスリットに直交する方向に延びるバー状の形状を備えているものであると、従来例のような接続領域が複数のサブドット領域の中央部に設けられたものと比すると、特にディスクリネーション抑制効果が大きく表れる。
また、本発明によれば、第二基板側に設ける配向規制手段は、その形状が画素電極に設けられたスリットに直交する方向に延びる十字状の形状を設けたものとしたため、透過部の液晶の配向が等方的となり、広視野角の液晶表示パネルが得られる。
また、本発明によれば、第二基板側に設ける配向規制手段は、その形状が画素電極に設けられたスリットに直交する方向に延びる十字状の形状のそれぞれ先端部分に設けられた前記十字状部分よりも太さが細い突出部を設けたものとしたため、この突出部においても液晶が更に規制され、より透過部の液晶の配向が等方的となり、より広視野角の液晶表示パネルが得られる。
また、本発明によれば、複数のサブドット領域のうち少なくとも一つのサブドット領域には外光を反射する反射部材を備えているため、上記発明の効果を奏することができる半透過型液晶表示パネルが得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例、比較例及び図面を用いてより具体的に説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのMVA方式の半透過型液晶表示パネルを例示するものであって、本発明をこの実施例に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなくMVA方式の透過型液晶表示装置等にも均しく適用し得るものである。なお、各実施例及び比較例においては、図10及び図11に示した従来例の半透過型液晶表示パネル70の構成と同一の構成部分には同一の参照符号を付して対応させて説明する。
[比較例]
最初に、従来技術の問題点を確認するための比較例について図5及び図6を用いて説明する。図5は比較例に係る半透過型液晶表示パネル10Cのカラーフィルタを透視して表した1サブ画素分の平面図であり、図6は比較例の半透過型液晶表示パネルの押圧後の発光状態を示す数サブ画素分の平面図である。なお、比較例に係る半透過型液晶表示パネル10Cは、図10及び図11に示した従来例の半透過型液晶表示パネル70と透過部の画素電極の構造及び反射部に対応する位置の突起状の配向規制手段の形状が異なるのみで、他の構成は実質的に同一であるので、相違点のみを具体的に説明することとし、その他の構成についての詳細な説明は省略する。
この比較例に係る半透過型液晶表示パネル10Cにおいては、透過部16の画素電極19bは、四隅に面取り部40及び41Cが設けられているとともに、走査線12側の面取り部40の位置において、前記走査線12に沿って信号線13の一部と重複する位置まで延びる遮蔽電極42が設けられている。この遮蔽電極42は、走査線に印加される高電圧の走査信号によって走査線の近傍に位置する液晶が影響を受けるのを防止し、この部分からの光漏れを防止するために設けられているものである。また、透過部16の画素電極19bの四隅に面取り部40及び41Cを設けたのは、突起状の配向規制部材31の存在による液晶の配向状態を突起状の配向規制部材31を中心として可能な限り等方状態となるようにするためである。
また、この比較例に係る半透過型液晶表示パネル10Cにおいては、反射部15に対応する第二基板側の共通電極(図示せず)に平面視で円形となる突起状配向規制部材32が設けられており、しかも、この円形の突起状の配向規制部材32に対向する位置の反射部15の画素電極19aには、コンタクトホール20が設けられている。このようにコンタクトホール20と円形の突起状の配向規制部材32とが平面視で重複するように配置したのは、コンタクトホール20と突起状の配向規制部材32との配置関係によってこの部分のセルギャップの変動を小さくして、表示画質が良好となるようにするためである。また、反射部15及び透過部16に設けられている突起状の配向規制部材31及び32には、この部分からの光漏れを防止してコントラストを良好にするために、平面視で突起状の配向規制部材31及び32よりも僅かに大きいブラックマスクが設けられているが、図示省略した。
そして、この比較例に係る半透過型液晶表示パネル10Cにおいては、上述の従来例の半透過型液晶表示パネル70と同様に、画素電極19の反射部15と透過部16の境界領域に、液晶の配向を規制するために、信号線13側から透過部の画素電極19bの面取り部41Cに連なるようにスリット33Cが設けられ、画素電極19は実質的に反射部15の画素電極19aと透過部16の画素電極19bに区画されており、反射部15の画素電極19aと透過部16の画素電極19bとは幅の狭い接続領域34Cを介して電気的に接続されている。この比較例に係る半透過型液晶表示パネル10Cにおいては、反射部15の画素電極19aと透過部16の画素電極19bとがそれぞれ画素電極19のサブドット領域を形成する。
この比較例の半透過型液晶表示パネル10Cを駆動し、図示しないバックライトを点灯して透過部16を発光させ、半透過型液晶表示パネル10Cの表示面を押圧した際の数画素分の発光状態は図6に示したとおりであった。図6によると、矢印で示した3箇所に、十字の横方向の突起の一方の先端部分に対応する箇所に存在していたディクリネーションが接続領域34C側に拡大しているとともに、新たに十字の縦方向の突起の一方の先端部分から接続領域34C側に向かう大きなディスクリネーションが発生していることが認められた。
実施例1の半透過型液晶表示パネル10Aを図1及び図2を用いて説明する。図1は実施例1に係る半透過型液晶表示パネル10Aのカラーフィルタを透視して表した1サブ画素分の平面図であり、図2は実施例1の半透過型液晶表示パネル10Aの押圧後の発光状態を示す数サブ画素分の平面図である。なお、実施例1に係る半透過型液晶表示パネル10Aは、比較例の半透過型液晶表示パネル10Cとは透過部の画素電極と反射部の画素電極との境界部分の構成が相違するのみで、その他の構成は実質的に同一であるので、以下では相違点のみを具体的に説明することとし、その他の構成についての詳細な説明は省略する。
この実施例1に係る半透過型液晶表示パネル10Aにおいては、画素電極19の反射部15と透過部16の境界領域に、液晶の配向を規制するために、透過部の画素電極19bに面取り部41Aとスリット33Aが設けられているが、スリット33Aは、透過部の画素電極19bに面取り部41Aとは独立して、画素電極19の長さ方向に沿って両側に配置されている信号線13の中間部に設けられている。従って、実施例1に係る半透過型液晶表示パネル10Aにおいては、反射部15の画素電極19aと透過部16の画素電極19bとはスリット33Aの両側に位置して信号線13に沿って延びている細長い2本の接続領域34Aによって電気的に接続されている。この実施例1に係る半透過型液晶表示パネル10Aにおいても、反射部15の画素電極19aと透過部16の画素電極19bとがそれぞれ画素電極19のサブドット領域を形成する。
この実施例1の半透過型液晶表示パネル10Aを駆動し、図示しないバックライトを点灯して透過部16を発光させ、半透過型液晶表示パネル10Aの表示面を押圧した際の数画素分の発光状態は図2に示したとおりであった。図2によると、矢印で示した1箇所に、十字の横方向の突起の一方の先端部分に対応する箇所に存在していたディスクリネーションが接続領域34A側に拡大しているとともに、十字の縦方向の突起の一方の先端部分から接続領域34Aの一方側に向かう新たなディスクリネーションが発生していることが認められた。
実施例1に係る図2に示した結果と比較例に係る図6に示した結果を対比すると明らかなように、押圧時の十字の横方向の突起の一方の先端部分に対応する箇所に存在していたディスクリネーション部分の面積は、実施例1に係る図2の方が比較例に係る図6のものより小さく、しかも、新たに発生したディスクリネーションは、比較例に係る図6では1サブ画素の中央部に大きく現れているのに対し、実施例1による図2では1サブ画素の中央部から接続領域34Aの一方側に向かうように表れており、しかもその大きさは比較例のものよりも小さくなっていることが分かる。また、押圧時のディスクリネーションの発生密度は、図2及び図6を比較すれば明らかなように、実施例1のものが比較例のものよりも小さくなっている。
従って、比較例の半透過型液晶表示パネル10Cに表れるディクリネーションは、その大きさが実施例1のものよりも大きく、しかも、1サブ画素の中央部に現れているために非常に目につくが、実施例1の半透過型液晶表示パネル10Aに表れるディクリネーションは、その大きさ及び発生密度が比較例のものよりも小さく、しかも、1サブ画素の中央部から接続領域34Aの一方側に向かうように表れるため、比較例のものに比するとあまり目につかず、表示画質としては実施例1のものの方が優れている。
実施例2の半透過型液晶表示パネル10Bを図3及び図4を用いて説明する。図3は実施例2に係る半透過型液晶表示パネル10Bのカラーフィルタを透視して表した1サブ画素分の平面図であり、図4は実施例2の半透過型液晶表示パネルの押圧後の発光状態を示す数サブ画素分の平面図である。なお、実施例2に係る半透過型液晶表示パネル10Bは、実施例1の半透過型液晶表示パネル10Aとは透過部に対応する位置の突起状の配向規制手段の形状が相違するのみで、その他の構成は実質的に同一であるので、以下では相違点のみを具体的に説明することとし、その他の構成についての詳細な説明は省略する。
実施例1に係る半透過型液晶表示パネル10Aでは、透過部16に対応する位置の突起状の配向規制部材31の形状として画素電極19の長さ方向に延びた十字状の形状をしているものを用いたが、実施例2に係る半透過型液晶表示パネル10Bにおいては、同じ十字状の形状をしているものではあるが、更にスリット33Aに直交する方向のそれぞれの十字状部分の先端に前記十字状部分よりも太さが細い突出部31Bを備えたものを使用した。そして、実施例2に係る半透過型液晶表示パネル10Bにおいては、反射部15の画素電極19aと透過部16の画素電極19bとはスリット33Bの両側に位置して信号線13に沿って延びている細長い2本の接続領域34Bによって電気的に接続されている。この実施例2に係る半透過型液晶表示パネル10Bにおいても、反射部15の画素電極19aと透過部16の画素電極19bとがそれぞれ画素電極19のサブドット領域を形成する。
この実施例2の半透過型液晶表示パネル10Bを駆動し、図示しないバックライトを点灯して透過部16を発光させ、半透過型液晶表示パネル10Bの表示面を押圧した際の数画素分の発光状態は図4に示したとおりであった。図4によると、矢印で示した1箇所に、十字の横方向の突起の一方の先端部分に対応する箇所に存在していたディスクリネーションが接続領域34B側に拡大しているとともに、十字の縦方向の突起の一方の先端部分から接続領域34Bの一方側に向かう新たなディスクリネーションが発生していることが認められた。
実施例2に係る図4に示した結果と比較例に係る図6に示した結果を対比すると明らかなように、十字の横方向の突起の一方の先端部分に対応する箇所に存在していたディスクリネーション部分の面積は、実施例2に係る図4の方が比較例に係る図6のものより小さく、しかも、新たに発生したディスクリネーションは、比較例に係る図6では1サブ画素の中央部に大きく現れているのに対し、実施例2による図4では1サブ画素の中央部から接続領域34Bの一方側に向かうように表れており、しかもその面積は比較例のものよりも小さくなっていることが分かる。また、押圧時のディスクリネーションの発生密度は、図4及び図6を比較すれば明らかなように、実施例2のものが比較例のものよりも小さくなっている。
従って、比較例の半透過型液晶表示パネル10Cに表れるディクリネーションは、その大きさが実施例2のものよりも大きく、しかも、1サブ画素の中央部に現れているために非常に目につくが、実施例2の半透過型液晶表示パネル10Bに表れるディクリネーションは、その大きさ及び発生密度が比較例のものよりも小さく、しかも、1サブ画素の中央部から接続領域34Bの一方側に向かうように表れるため、比較例のものに比するとあまり目につかず、表示画質としては実施例2のものの方が優れている。
以上のように、本発明の半透過型液晶表示パネルによれば、パネルの表示面を押圧した際に完全にディクリネーションの生成を防止することができるわけではないが、従来例のMVA方式の半透過型液晶表示パネルと比すると生成するディクリネーションの大きさが小さいばかりか発生密度が小さく、しかもディスクリネーションの生成する位置が目立たない位置となるため、従来例のものよりもパネルの表示面を押圧した際の表示の質の低下が小さくなる。
なお、実施例1及び2としては、スリット33Aないし33Bを画素電極19の長さ方向に沿って両側に配置されている信号線13の中間部に設け、反射部15の画素電極19aと透過部16の画素電極19bとはスリット33Aないし33Bの両側に位置して信号線13に沿って延びている細長い2本の接続領域34Aないし34Bによって電気的に接続するようにしたものを用いたが、この接続領域34Aないし34Bは電気抵抗低減及び製造時の断線防止の目的からある程度の幅を持たせた方がよい。また、この接続領域34Aないし34Bは、信号線13に沿う位置にあれば、必ずしも両側に設ける必要はなく、片側のみに設けてもよい。
更に、実施例1及び2においては、MVA方式の半透過型液晶表示パネルについて実験を行った例を示したが、上述のようなディスクリネーションの生成原因は、複数のサブドット間を接続する接続領域の配向規制が弱いことに起因するものであるから、画素電極がスリットによって複数のサブドット領域に区画されているとともにこの複数のサブドット領域の間に接続領域が形成されたMVA方式の液晶表示パネルであれば、半透過型のものだけでなく透過型のものにおいても同様に生じる現象であり、また、第二基板の複数のサブドット領域に対応するそれぞれの位置に設ける配向規制手段として突起の場合だけでなく共通電極に設けられたスリットの場合においても同様に生じる現象である。したがって、特に半透過型液晶表示パネルの場合においては、透過部の画素電極が複数のサブドット領域に分けられている場合においても、本発明の構成を採用することにより同様の効果を奏する。
実施例1に係る半透過型液晶表示パネル10Aのカラーフィルタを透視して表した1サブ画素分の平面図である。
実施例1の半透過型液晶表示パネルの押圧後の発光状態を示す数サブ画素分の平面図である。
実施例2に係る半透過型液晶表示パネル10Bのカラーフィルタを透視して表した1サブ画素分の平面図である。
実施例2の半透過型液晶表示パネルの押圧後の発光状態を示す数サブ画素分の平面図である。
比較例に係る半透過型液晶表示パネル10Cのカラーフィルタを透視して表した1サブ画素分の平面図である。
比較例の半透過型液晶表示パネルの押圧後の発光状態を示す数サブ画素分の平面図である。
図7AはMVA方式の半透過型液晶表示パネル50Aの概略的な構造を示す斜視図であり、図7Bは液晶層に電界を印加したときの液晶の傾斜状態を示す概略図である。
図7AのIIX−IIX断面図である。
別の従来例のMVA方式の半透過型液晶表示パネル50Bの概略的な構造を示す斜視図である。
セルギャップ調整のためのトップコート層を第二基板側に設けた従来の半透過型液晶表示パネル70のカラーフィルタ層を透視して表した1画素分の平面図である。
図10のXI−XI断面図である。
符号の説明
10A、10B、10C、50A、50B、70 半透過型液晶表示パネル
12 走査線
13 信号線
15 反射部
16 透過部
18 反射部材
19、19a、19b 画素電極
20 コンタクトホール
21 補助容量線
31、31A、32 突起状の配向規制部材
33、33A〜33C スリット
34、34A〜34C 接続領域
40、41A〜41C 面取り部
42 遮蔽電極