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JP2007204769A - 耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板並びにその製造方法 - Google Patents

耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板並びにその製造方法 Download PDF

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JP2007204769A
JP2007204769A JP2006021526A JP2006021526A JP2007204769A JP 2007204769 A JP2007204769 A JP 2007204769A JP 2006021526 A JP2006021526 A JP 2006021526A JP 2006021526 A JP2006021526 A JP 2006021526A JP 2007204769 A JP2007204769 A JP 2007204769A
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compound
acid
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resin
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JP2006021526A
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Kazuhisa Okai
和久 岡井
Takeshi Matsuda
武士 松田
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JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
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Abstract

【課題】皮膜中に六価クロムを含まず、しかも優れた耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性が得られる表面処理鋼板を提供する。
【解決手段】亜鉛系めっき鋼板の表面に、特定の化学構造を有する樹脂化合物と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂と、亜鉛化合物と、ジルコニウム化合物と、リン酸又は/及びリン酸塩と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物とを特定の配合割合で含有する表面処理剤で形成された表面処理皮膜を有し、その上層に固形潤滑剤を含有する有機皮膜を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車、家電、建材用途に最適な表面処理鋼板であって、皮膜中にクロムを全く含まない環境適応型表面処理鋼板及びその製造方法に関するものである。
家電製品用鋼板、建材用鋼板、自動車用鋼板には、従来から主に亜鉛系めっき鋼板表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的でクロム酸、重クロム酸又はその塩類を主要成分とした処理液によるクロメート処理が施された鋼板が幅広く用いられている。このクロメート処理は、耐食性が非常に優れ且つ比較的簡単に行うことができる経済的な処理方法である。
しかしながら、クロメート処理による皮膜は公害規制物質である六価クロムを含有していることから、近年、六価クロムを用いない表面処理鋼板が要望されている。このような背景から、亜鉛系めっき鋼板の白錆の発生を防止するために六価クロムを一切使用しない、クロムフリー処理技術が数多く提案されている。
上述した各分野で表面処理鋼板を使用する場合、成型加工時に使用する潤滑油や付着したごみを除去するためにアルカリ性の洗浄剤を用いることが多いが、最近では、作業工程の簡略化のために加工時の塗油と加工後のアルカリ脱脂を省略可能な鋼板として、潤滑性や耐磨耗性の良好な有機樹脂皮膜を有する鋼板や、ワックスを有機樹脂皮膜中に添加した鋼板についての要望が増加している。このような鋼板に関して、例えば、特許文献1〜6などが提案されている。
特開2001−181860号公報 特開2003−13252号公報 特開2003−105562号公報 特開2002−53979号公報 特開2002−53980号公報 特許3464652号公報
しかしながら、これらの従来技術には以下に述べるような問題点がある。
特許文献1〜3については、防錆を目的とした金属化合物や、腐食因子となる酸素、水、塩類の浸透を遅延させ得るような緻密な皮膜を形成できる樹脂を選定しており、耐食性、耐水性にはそれなりの効果が見られる。しかし、高温高湿下で長期使用された場合に、防錆金属化合物の発色、樹脂の変質による黄変、或いは亜鉛系めっき鋼板の黒変が発生するという問題がある。また、上塗り塗装時や溶接時、或いは使用環境下において高温加熱された場合、防錆金属化合物の発色、樹脂の酸化劣化・分解が原因となって表面処理めっき鋼板が黄変し、酷いときには褐変してしまうこともある。
特許文献4〜5の方法は、二層皮膜の上層に特定の自己補修性発現物質を添加することにより耐食性への寄与効果が見られるが、自己補修性発現物質の粒子が皮膜表面から突出していると粒子が研磨剤のような働きをするため、ワックスの性状を制御しなければ耐疵つき性が不十分となる。
特許文献6は、ポリオレフィンワックスに加えさらに耐磨耗性に優れるウレタン系樹脂を用いることで耐疵付き性への効果は大きいが、ウレタン系樹脂とシリカとポリオレフィンワックスによる防錆効果はほとんどみられず、耐食性が十分とはいえない。また、下層皮膜によって耐食性を得る手法であるが、クロメート皮膜同等の耐食性を得るために必要なリン酸成分が多くなり、皮膜中に残存するリン酸成分が湿潤環境下で吸水することで皮膜が白化してしまうため、耐水性が劣る。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、皮膜中に六価クロムなどの公害規制物質を含有することなく優れた耐食性が得られ、しかも耐疵つき性、耐変色性及び耐水性にも優れた表面処理鋼板を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、特定の化学構造を有する樹脂化合物と、特定のカチオン性官能基を有するウレタン樹脂と、亜鉛化合物と、ジルコニウム化合物と、リン酸又はリン酸塩と、特定の酸化合物を所定の割合で含有する表面処理剤によって表面処理皮膜を形成し、その上層に第2層皮膜として固形潤滑剤を含有した有機皮膜を形成することにより、耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性がともに優れた表面処理鋼板が得られることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1] 亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、下記一般式(I)で表される樹脂化合物(A)と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、亜鉛化合物(C)と、ジルコニウム化合物(D)と、リン酸又は/及びリン酸塩(E)と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(F)とを含有し、且つ樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分換算での配合比[A:B]が7:3〜4:6であり、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して、亜鉛化合物(C)を2〜20質量%、ジルコニウム化合物(D)を2〜20質量%、リン酸又は/及びリン酸塩(E)を5〜30質量%、酸化合物(F)を0.1〜5質量%含有する表面処理剤を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜厚が0.01〜3μmの表面処理皮膜を有し、その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂と固形潤滑剤とを含み、皮膜形成有機樹脂の固形分100質量部に対する固形潤滑剤の含有量が0.1〜15質量部である、皮膜厚が0.01〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板。
Figure 2007204769
式中、ベンゼン環に結合しているY及びYは、それぞれ互いに独立に水素、又は下記一般式(II)、又は(III)により表されるZ基であり、1ベンゼン環当たりのZ基の置換数の平均値は0.2〜1.0である。nは2〜50の整数を表す。
Figure 2007204769
Figure 2007204769
式(II)及び(III)中、R、R、R、R及びRは、それぞれ互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表し、Aは水酸イオン又は酸イオンを表す。
[2] 上記[1]の表面処理鋼板において、有機皮膜に含まれる固形潤滑剤の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tが1.5〜15であることを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板。
[3] 亜鉛系めっき鋼板の表面に、下記一般式(I)で表される樹脂化合物(A)と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、亜鉛化合物(C)と、ジルコニウム化合物(D)と、リン酸又は/及びリン酸塩(E)と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(F)とを含有し、且つ樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分換算での配合比[A:B]が7:3〜4:6であり、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して、亜鉛化合物(C)を2〜20質量%、ジルコニウム化合物(D)を2〜20質量%、リン酸又は/及びリン酸塩(E)を5〜30質量%、酸化合物(F)を0.1〜5質量%含有する表面処理剤を塗布し、到達板温が30〜300℃となる温度で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜3μmの表面処理皮膜を形成し、その上部に、皮膜形成有機樹脂と固形潤滑剤とを含み、皮膜形成有機樹脂の固形分100質量部に対する固形潤滑剤の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物を塗布し、到達板温が50〜300℃となる温度で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
Figure 2007204769
式中、ベンゼン環に結合しているY及びYは、それぞれ互いに独立に水素、又は下記一般式(II)、又は(III)により表されるZ基であり、1ベンゼン環当たりのZ基の置換数の平均値は0.2〜1.0である。nは2〜50の整数を表す。
Figure 2007204769
Figure 2007204769
式(II)及び(III)中、R、R、R、R及びRは、それぞれ互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表し、Aは水酸イオン又は酸イオンを表す。
[4] 上記[3]の製造方法において、有機皮膜に含まれる固形潤滑剤の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tを1.5〜15とし、且つ、前記固形潤滑剤の軟化点を皮膜乾燥温度以上とすることを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
本発明の表面処理鋼板は、皮膜中に六価クロムを含まないにも拘わらず非常に優れた耐食性を示し、しかも耐疵つき性、耐変色性及び耐水性にも優れている。
本発明の表面処理鋼板のベースとなる亜鉛系めっき鋼板としては、例えば、亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni合金めっき鋼板、Zn−Fe合金めっき鋼板(電気めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板)、Zn−Cr合金めっき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−Co合金めっき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Ni合金めっき鋼板、Zn−Cr−Fe合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板(例えば、Zn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板、Zn−11%Al−3%Mg合金めっき鋼板)、Zn−Al合金めっき鋼板(例えば、Zn−5%Al合金めっき鋼板、Zn−55%Al合金めっき鋼板)などを用いることができる。また、これらのめっき鋼板のめっき皮膜中に少量の添加元素または不純物元素としてニッケル、コバルト、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、チタン、クロム、アルミニウム、マグネシウム、鉛、アンチモン、錫、銅などの1種以上を含有しためっき鋼板を用いることもできる。さらに、以上のようなめっき鋼板のめっき皮膜中に、シリカなどの金属酸化物、ポリマーなどの1種以上を分散しためっき鋼板(例えば、Zn−SiO分散めっき鋼板)などを用いることもできる。
また、上記のようなめっきのうち、同種又は異種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板を用いることができる。
また、めっき鋼板としては鋼板面にあらかじめNiなどの薄目付けのめっきを施し、その上に上記のような各種めっきを施したものであってもよい。
めっき方法としては、電解法(水溶液中での電解、非水溶媒中での電解)、溶融法、気相法のうち、実施可能ないずれの方法も採用することができる。
また、めっき皮膜表面に表面処理皮膜を形成した際に皮膜欠陥やムラが生じないようにするため、必要に応じて、予めめっき皮膜表面にアルカリ脱脂、溶剤脱脂、表面調整処理(アルカリ性の表面調整処理、酸性の表面調整処理)等の処理を施しておくことができる。また、表面処理鋼板の使用環境下での黒変(めっき表面の酸化現象の一種)を防止する目的で、必要に応じて、予めめっき皮膜表面に鉄族金属イオン(Niイオン,Coイオン,Feイオンの1種以上)を含む酸性又はアルカリ性水溶液による表面調整処理を施しておくこともできる。また、電気亜鉛めっき鋼板を下地鋼板として用いる場合には、黒変を防止する目的で電気めっき浴に鉄族金属イオン(Niイオン,Coイオン,Feイオンの1種以上)を添加し、めっき皮膜中にこれらの金属を1ppm以上含有させておくことができる。この場合、めっき皮膜中の鉄族金属濃度の上限については特に限定はない。
本発明の表面処理鋼板は、上記亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、特定の樹脂化合物(A)と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、亜鉛化合物(C)と、ジルコニウム化合物(D)と、リン酸又は/及びリン酸塩(E)と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(F)とを含有する表面処理剤(表面処理組成物)を塗布し、乾燥することにより表面処理皮膜を形成し、その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂と固形潤滑剤とを含む有機皮膜を形成したものである。これらの表面処理皮膜および有機皮膜は六価クロムを含まない。
まず、上記表面処理皮膜及びこの皮膜を形成するための表面処理剤について説明する。
上記表面処理剤(表面処理組成物)に含まれる樹脂化合物(A)は耐食性を付与するために配合するもので、その化学構造は下記一般式(I)により表される。
Figure 2007204769
式中、ベンゼン環に結合しているY及びYは、それぞれ互いに独立に水素、又は下記一般式(II)、又は(III)により表されるZ基であり、1ベンゼン環当たりのZ基の置換数の平均値は0.2〜1.0である。nは2〜50の整数を表す。
Figure 2007204769
Figure 2007204769
式(II)及び(III)中、R、R、R、R及びRは、それぞれ互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表し、Aは水酸イオン又は酸イオンを表す。
ここで、上記一般式(I)において、Z基の置換数の平均値とは、全Z基導入数を全ベンゼン環数(即ち2n)で除した数値のことである。この平均値が0.2未満では表面処理剤の保存安定性が不十分となり、一方、1.0を超えると表面処理皮膜の耐水性が低下し、これに伴って白錆抑制効果も低下する。また、nは平均重合度であり、このnが2未満では皮膜のバリア効果が小さくなり、耐食性、耐アルカリ性が不十分となる。一方、nが50を超えると水溶性の低下、増粘などによって処理剤中での安定性が低下し、表面処理剤の保存安定性が不十分となる。
上記一般式(II)および(III)において、アルキル基又はヒドロキシアルキル基の炭素数が10を超えると樹脂化合物(A)を十分に水溶化することができず、処理剤中で不安定となり適用できなくなる。また、R、R、R、R及びRの具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、ヒドロキシイソブチル等を挙げることができる。また、Aの酸イオンの具体例としては、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、フッ素イオン、リン酸イオン等を挙げることができる。
一般式(I)で表される樹脂化合物(A)は、ビスフェノール−ホルマリン縮合物であり、その合成方法に特に制限はないが、例えば、アルカリ触媒存在下、ビスフェノールAにホルマリンとアミンを作用させることにより得ることができる。
表面処理剤(表面処理組成物)に含まれるカチオン性ウレタン樹脂(B)は、カチオン性官能基として第4アンモニウム塩基を有するものであればよく、構成されるモノマー成分であるポリオール、イソシアネート成分及び重合方法に特別な制限はない。カチオン性官能基としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、トリメチルアミノ基、トリエチルアミノ基等が挙げられるが、第4アンモニウム塩基であれば本発明の性能を損なわない限り制限はない。第4アンモニウム塩基にするために対イオンが必要となるが、この対イオンとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、フッ素イオン、リン酸イオン等を挙げることができる。
第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)は、形成される皮膜を緻密化してバリア性を高めることに効果がある。そのため水、塩類等のような腐食因子の浸透を遅延させることが可能となり、耐食性や耐水性が向上する。また、アルカリ液に溶解しにくい皮膜とすることができ、アルカリ液に対する耐久性も高められる。
樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分換算での配合比[A:B]は7:3〜4:6、好ましくは6:4〜5:5とする。この配合比[A:B]において、樹脂化合物(A)が7を超えると耐水性が低下し、4未満では耐食性が低下する。樹脂化合物(A)は白錆の発生を遅延させることに対して有効であるが、水やアルカリ液が浸透しやすい。しかし、カチオン性ウレタン樹脂(B)を配合することで造膜性が向上し、皮膜中への水分等の浸透を抑制することができるため、耐水性を保持できる。したがって、上記配合比の範囲において、耐食性と耐水性のバランスが保たれるのである。
表面処理剤(表面処理組成物)に含まれる亜鉛化合物(C)は、亜鉛系めっきの白錆発生を抑制する効果がある。さらに、高温高湿下でのめっき黒変、皮膜の変色(黒変、黄変)を抑制するとともに、塗装時の高温焼付けや長時間加熱による皮膜変色も抑制する効果もある。この亜鉛化合物(C)としては、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸二水素亜鉛、リン酸カルシウム亜鉛、硫酸亜鉛、フッ化亜鉛、硼酸亜鉛、硼フッ化亜鉛、酸化亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛等の無機化合物、或いはメチオニン、酢酸、酒石酸、クエン酸、2,4-ペンタンジオン、N-n-オクチル-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-N-n-オクチル-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン-3-オン、1-ヒドロキシピリジン-2-チオン、3-ヒドロキシ-4-メチルチアゾール-2(3H)-チオン、C3-C5アルキル-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、3-ヒドロキシ-4-メチルチアゾール-2(3H)-チオン、1-ヒドロキシピリジン-2-チオン等の有機化合物を配位子とする有機金属錯体等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種以上を用いることができる。
亜鉛化合物(C)の配合量は、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%とする。亜鉛化合物(C)の配合量が2質量%未満では耐食性が低下し、一方、20質量%を超えると表面処理剤の保管安定性が低下する。
表面処理剤(表面処理組成物)に含まれるジルコニウム化合物(D)は、亜鉛系めっき鋼板の白錆発生を抑制し、長期に亘って高耐食性を維持できる効果がある。
ジルコニウム化合物(D)はジルコニウムの供給源となるものであればよく、対となるアニオンに特別な制限はない。具体例としては、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、ジルコンフッ化水素酸等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種以上を用いることができる。
ジルコニウム化合物(D)の配合量は、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%とする。ジルコニウム化合物(D)の配合量が2%未満では耐食性が低下し、一方、20質量%を超えると表面処理剤の保管安定性が低下する。
表面処理剤(表面処理組成物)に含まれるリン酸又は/及びリン酸塩(E)は、亜鉛系めっき鋼板表面で亜鉛系めっきと反応し、形成した皮膜が白錆発生を抑制する効果がある。リン酸・リン酸塩(E)としては、リン酸、ピロリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ポリリン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種以上を用いることができる。
リン酸又は/及びリン酸塩(E)の配合量は、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%とする。リン酸又は/及びリン酸塩(E)の配合量が5質量%未満では耐食性が低下し、一方、30質量%を超えると皮膜が吸水しやすくなり、耐食性及び耐水性が低下する。
表面処理剤(表面処理組成物)に含まれる酸化合物(F)としては、フッ酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、蓚酸、クエン酸、こはく酸、りんご酸等の有機酸、これらの無機酸、有機酸の塩等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。上記塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
但し、上記無機酸、有機酸のなかでは、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種を用いることが特に好ましい。
上記酸化合物(F)はエッチング性を有し、亜鉛系めっき鋼板表面で亜鉛系めっきとの反応性を促進する。これにより、形成する皮膜とめっきとの界面を強固にすることで密着性を高め、めっき表面を不活性化する効果がある。
酸化合物(F)の配合量は、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%とする。酸化合物(F)の配合量が0.1質量%未満では耐食性が低下し、一方、5質量%を超えると皮膜が吸水しやすくなり、耐食性及び耐水性が低下する。
以上のような成分(A)〜(F)が添加された(好ましくは、主成分として添加された)表面処理剤により形成された皮膜は、酸化合物(F)によって活性化されためっき金属表面に、リン酸又は/及びリン酸塩(E)が反応してめっき金属と強固な密着性を有する皮膜を形成するが、これに、(1)酸化合物(F)やリン酸又は/及びリン酸塩(E)だけでは皮膜形成が不十分な部分を亜鉛化合物(C)やジルコニウム化合物(D)による難溶性皮膜が覆う、(2)特定の樹脂化合物(A)と第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)が造膜性及び疎水性の高い皮膜で腐食因子の進入を抑制する、という作用が複合化することよって極めて高い耐食性が得られる。
表面処理剤(表面処理組成物)には、以上述べた成分以外に無機充填剤やワックスなどの潤滑剤等を添加することもできる。また、レベリング性を調整するために、界面活性剤や溶剤を含有させてもよい。
次に、上記表面処理皮膜(第1層皮膜)の上部に第2層皮膜として形成される有機皮膜について説明する。
有機皮膜に用いる皮膜形成有機樹脂には特に制限はなく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリル−エチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン樹脂、フッ素樹脂等を用いることができる。特に耐食性の観点からは、OH基及び/又はCOOH基を有する有機高分子樹脂を用いることが好ましい。
前記OH基及び/又はCOOH基を有する有機高分子樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、アルキド樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミン樹脂、ポリフェニレン樹脂類及びこれらの樹脂2種以上の混合物もしくは付加重合物等が挙げられる。
前記ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、単核型若しくは2核型の2価フェノール又は単核型と2核型との混合2価フェノールを、アルカリ触媒の存在下にほぼ等モル量のエピハロヒドリンと重縮合させて得られる重合体である。単核型2価フェノールの代表例としてはレゾルシン、ハイドロキノン、カテコールが挙げられ、2核型フェノールの代表例としてはビスフェノールAが挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック等をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、ビスフェノールAにプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド又はポリアルキレングリコールを付加し、グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ポリエーテル系エポキシ樹脂等を用いることができる。これらエポキシ樹脂は、特に低温での硬化を必要とする場合には、数平均分子量1500以上のものが望ましい。なお、上記エポキシ樹脂は単独又は異なる種類のものを混合して使用することもできる。また、変性エポキシ樹脂とすることも可能であり、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基又はビドロキシル基に各種変性剤を反応させた樹脂が挙げられる。例えば、乾性油脂肪酸中のカルボキシル基を反応させたエポキシエステル樹脂、アクリル酸、メタクリル酸等で変性したエポキシアクリレート樹脂、イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂にイソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂にアルカノールアミンを付加したアミン付加ウレタン変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。
前記ウレタン樹脂としては、例えば、油変性ポリウレタン樹脂、アルキド系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。
前記アクリル樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸及びその共重合体、ポリアクリル酸エステル及びその共重合体、ポリメタクリル酸及びその共重合体、ポリメタクリル酸エステル及びその共重合体、ウレタン−アクリル酸共重合体(又はウレタン変性アクリル樹脂)、スチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられ、さらにこれらの樹脂を他のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等によって変性させた樹脂を用いてもよい。
前記アクリルシリコン樹脂としては、例えば、主剤としてアクリル系共重合体の側鎖又は末端に加水分解性アルコキシシリル基を含み、これに硬化剤を添加したもの等が挙げられる。これらのアクリルシリコン樹脂を用いた場合、優れた耐候性が期待できる。
前記アルキド樹脂としては、例えば、油変性アルキド樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、スチレン化アルキド樹脂、シリコン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、高分子量オイルフリーアルキド樹脂等を挙げることができる。
前記エチレン樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、カルボキシル変性ポリオレフィン樹脂などのエチレン系共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン系アイオノマー等が挙げられ、さらに、これらの樹脂を他のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等によって変性させた樹脂を用いてもよい。
前記フッ素樹脂としては、フルオロオレフィン系共重合体があり、これには例えば、モノマーとしてアルキルビニルエーテル、シンクロアルキルビニルエーテル、カルボン酸変性ビニルエステル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、テトラフルオロプロピルビニルエーテル等と、フッ素モノマー(フルオロオレフィン)とを共重合させた共重合体がある。これらフッ素樹脂を用いた場合には、優れた耐候性と優れた疎水性が期待できる。
また、樹脂の乾燥温度の低温化を狙いとして、樹脂粒子のコア部分とシェル部分とで異なる樹脂種類、又は異なるガラス転移温度の樹脂からなるコア・シェル型水分散性樹脂を用いることも可能である。また、自己架橋性を有する水分散性樹脂を用い、例えば、樹脂粒子にアルコキシシラン基を付与することによって、樹脂の加熱乾燥時にアルコキシシランの加水分解によるシラノール基の生成と樹脂粒子間のシラノール基の脱水縮合反応を利用した粒子間架橋を利用することも可能である。また、有機樹脂をシランカップリング剤を介してシリカと複合化させた有機複合シリケートも好適である。
以上述べた各種の有機樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
さらに、耐食性や加工性の向上を狙いとして、特に熱硬化性樹脂を用いることが望ましいが、この場合、尿素樹脂(ブチル化尿素樹脂等)、メラミン樹脂(ブチル化メラミン樹脂)、ブチル化尿素・メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂、ブロックイソシアネート、オキサゾリン化合物、フェノール樹脂等の硬化剤を配合することができる。
有機皮膜には、耐疵つき性(加工性)を向上させるために固形潤滑剤が添加される。この固形潤滑剤としては、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレン等のポリオレフィンワックス、ラノリン系ワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックスなどを挙げることができる。これらの固形潤滑剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
この固形潤滑剤の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tは、1.5〜15であることが好ましい。この比D/tが15を超えると皮膜の摺動時に固形潤滑剤が皮膜から剥離し易く、一方、1.5未満では固形潤滑剤が有機皮膜表面から十分に突出していないため、耐疵つき性が劣る傾向がある。
固形潤滑剤の配合量は、皮膜形成有機樹脂の固形分100質量部に対して、0.1〜15重量部、好ましくは1〜5質量部とする。配合量が0.1質量部未満では耐疵つき性(加工性)が乏しく、一方、配合量が15質量部を超えると塗料密着性が低下するので好ましくない。
また、固形潤滑剤の軟化点は、塗料組成物を塗布した後の乾燥処理における皮膜乾燥温度以上であることが好ましい。固形潤滑剤の軟化点が皮膜乾燥温度未満では、固形潤滑剤が溶融してしまうため本来の潤滑性が発揮されず、耐疵つき性が低下する。
本発明の表面処理鋼板において、表面処理皮膜(第1層皮膜)の皮膜厚は0.01〜3μm、好ましくは0.1〜2.5μm、さらに好ましくは0.3〜2μmとする。表面処理皮膜の皮膜厚が0.01μm未満では耐食性が不十分であり、一方、3μmを超えると加工性が低下する。また、有機皮膜(第2層皮膜)の皮膜厚は0.01〜5μm、好ましくは0.1〜4μm、さらに好ましくは0.3〜3μmとする。有機皮膜の皮膜厚が0.01μm未満では耐疵つき性が不十分であり、一方、5μmを超えると性能が飽和し、経済的な観点から好ましくない。
次に、本発明の表面処理鋼板の製造方法について説明する。
本発明の表面処理鋼板を製造するには、まず、上述した各成分を含有する表面処理剤(表面処理組成物)を、上述した皮膜厚となるように亜鉛系めっき鋼板表面に塗布し、水洗することなく加熱乾燥することにより、表面処理皮膜を形成する。なお、亜鉛系めっき鋼板の表面は、上記処理剤を塗布する前に必要に応じてアルカリ脱脂処理し、さらに密着性、耐食性を向上させるために表面調整処理等の前処理を施すことができる。
表面処理剤をめっき鋼板表面に塗布する方法としては、所謂塗布法、浸漬法、スプレー法のいずれでもよい。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーター等のいずれの手段を用いてもよい。また、スクイズコーター等による塗布処理、或いは浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
塗布後の加熱乾燥を行うための手段としては、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いることができる。加熱処理は、到達板温で40〜250℃、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは60℃〜150℃の範囲で行うことが適当である。加熱温度が250℃を超えると皮膜の色調が変化してしまうために意匠性の点から好ましくない。さらに、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下する場合がある。
以上のように亜鉛系めっき鋼板の表面に表面処理皮膜(第1層皮膜)を形成した後、その上層に、上述した各成分を含有する有機皮膜形成用の塗料組成物を、上述した皮膜厚となるように塗布し、加熱乾燥することにより有機皮膜を形成する。
塗料組成物を塗布する方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法等の任意の方法を採用できる。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーター等のいずれの方法を用いてもよい。また、スクイズコーター等による塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
塗料組成物の塗布後、通常は水洗することなく加熱乾燥を行うが、塗料組成物の塗布後に水洗工程を実施しても構わない。
加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いることができる。加熱処理は到達板温で50〜350℃、好ましくは80℃〜250℃の範囲で行うことが望ましい。加熱温度が50℃未満では皮膜中に水分が多量に残り、耐食性が不十分となる。また、加熱温度が350℃を超えると非経済的であるばかりでなく、皮膜に欠陥が生じて耐食性が低下するおそれがある。
なお、以上述べた第1層皮膜+第2層皮膜は、めっき鋼板の片面にのみ形成してもよいし、両面に形成してもよい。
表1〜表6に示す樹脂化合物(表1)、カチオン性有機樹脂(表2)、亜鉛化合物(表3)、ジルコニウム化合物(表4)、リン酸・リン酸塩(表5)、酸化合物(表6)を攪拌下で脱イオン水のなかに適宜添加して表面処理皮膜形成用の表面処理剤を得た。また、第2層皮膜(有機皮膜)形成用として、表7に示す皮膜形成有機樹脂と表8に示す固形潤滑剤を適宜配合した塗料組成物を調製した。
素材めっき鋼板としては、表9に示す亜鉛系めっき鋼板を用いた。このめっき鋼板表面をアルカリ脱脂処理し、水洗・乾燥した後、上記表面処理剤を塗布し、所定の到達板温になるように加熱乾燥した。次いで、その上部に上記第2層皮膜形成用の塗料組成物を塗布し、各種温度で乾燥させ、発明例および比較例の表面処理鋼板を得た。なお、第1層皮膜および第2層皮膜の膜厚は、皮膜組成物の固形分(加熱残分)や処理時間等により調整した。
得られた表面処理鋼板の品質性能(耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、耐変色性、耐疵つき性、耐水性、塗料密着性)を評価した結果を、試験条件、皮膜構成とともに表10〜表15に示す。なお、各品質性能の測定及び評価方法は、以下の通りである。
(1)耐食性
試験片に塩水噴霧試験SST(JIS−Z−2371)を施し、360時間経過後の白錆面積率で評価した。評価基準は以下の通りである。
○ :白錆面積率5%未満
○−:白錆面積率5%以上、10%未満
△ :白錆面積率10%以上、25%未満
× :白錆面積率25%以上
(2)アルカリ脱脂後耐食性
アルカリ脱脂剤「CLN−364S」(日本パーカライジング(株)製)を20g/lの濃度で純水に溶解して60℃に加温し、これを試験片に1kgf/cmの圧力で2分間スプレー処理した後、塩水噴霧試験SST(JIS−Z−2371)を施し、240時間経過後の白錆面積率で評価した。評価基準は以下の通りである。
○ :白錆面積率5%未満
○−:白錆面積率5%以上、10%未満
△ :白錆面積率10%以上、25%未満
× :白錆面積率25%以上
(3)耐疵付き性
試験片を「ラビングテスター」(太平理化工業(株)製)を用いて段ボールでラビング後、試験片表面を目視で観察し、下記基準にしたがって評価した。なお、ラビング試験は、段ボールの押し付け荷重:500g、摺動距離:60mm、速度:120mm/s、ラビング回数:1000回で行った。
◎:疵の本数が0本
○:疵の本数が1〜2本
△:疵の本数が3〜10本
×:疵の本数が11本以上
(4)耐変色性
(4-1)加熱試験
試験片を200℃で24時間加熱する前後の目視判定及び色差測定ΔEにより評価を行った。なお、色差測定ΔEは下式で定義される値である。
ΔE={(ΔL)+(Δa)+(Δb)1/2 …(A)
ここで、ΔL、Δa、ΔLは、JIS Z 8729に規定するLab表示系における二つの物体色のCIE1976明度Lの差及び色座標a、bの試験前後の差である。
評価基準は以下の通りである。
○ :目視で色調変化やムラが認められない。ΔE≦1
○−:目視で色調変化が殆どない。1<ΔE≦2
△ :目視で若干の色調変化(黄変)が起こっている。2<ΔE≦3
× :目視で明らかに色調変化(黄変)が起こっている。ΔE>3
(4-2)湿潤試験
試験片を80℃、RH98%の雰囲気下に2週間放置した前後の色差測定ΔE、及び目視判定により評価を行った。(ΔEは上記(A)式と同じである)
評価基準は以下の通りである。
○ :目視で色調変化やムラが認められない。ΔE≦1
○−:目視で色調変化が殆どない。1<ΔE≦2
△ :目視で若干の色調変化(黄変)が起こっている。2<ΔE≦3
× :目視で明らかに色調変化(黄変)が起こっている。ΔE>3
(5)耐水性
試験片に紙を接触させた状態で60℃に加温した純水に30秒浸漬し、取り出し後、濡れた紙が試験片に十分に接触した状態で90秒放置した。その後、紙を取り除き水分を拭き取り、試験片表面を目視で観察し、下記基準にしたがって評価をした。
○:白化なし。
△:斜めから見ると白化が確認できる。
×:明らかな白化が認められる。(斜めから見なくても確認できる)
(6)塗料二次密着性
試験片にメラミン系の焼付塗料(膜厚30μm)を塗装した後、沸水中に2時間浸漬し、直ちに、碁盤目(10×10個、1mm間隔)のカットを入れて接着テープによる貼着・剥離を行い、塗膜の剥離面積率を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:剥離なし
○:剥離面積率5%未満
△:剥離面積率5%以上、20%未満
×:剥離面積率20%以上
表10〜表15によれば、本発明例であるNo.1〜3、6〜9、11〜14、16〜20、23〜25、28〜36、38〜42、46〜56、58、59、64、66、67、69〜71は、いずれも耐食性、耐変色性、耐疵つき性、耐水性および塗料密着性が優れている。
これに対して、表面処理皮膜の組成が本発明条件を満足しないNo.4、5、10、15、21、22、26、27、43〜45、57、60、65の各比較例は、耐食性、耐変色性、耐水性、耐疵つき性、塗料密着性のいずれかが劣っている。
また、No.43、44の比較例のようにカチオン性ウレタン樹脂(B)をカチオン性アクリル樹脂やカチオン性エポキシ樹脂に置き換えても、耐食性、耐変色性、耐水性をすべて満足できるものはない。また、No.45の比較例(特許文献1の実施例15)は耐変色性が劣っている。また、単層皮膜であるNo.61、62の比較例、表面処理皮膜および有機皮膜の皮膜厚が本発明条件を満足しないNo.63、65の比較例、表面処理皮膜および有機皮膜の乾燥温度の低いNo.37、68の比較例は耐食性、耐疵つき性のいずれかが劣っている。
Figure 2007204769
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Figure 2007204769
Figure 2007204769
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Figure 2007204769
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なお、表10〜表15において、*1〜*11は以下の内容を示している。
*1 表1に示す樹脂化合物No.
*2 表2に示すカチオン性有機樹脂No.
*3 表3に示す亜鉛化合物No.
*4 表4に示すジルコニウム化合物No.
*5 表5に示すリン酸・リン酸塩No.
*6 表6に示す酸化合物No.
*7 表9に示すめっき鋼板No.
*8 配合量は質量部(但し、「樹脂化合物(A)」及び「ウレタン樹脂(B)等」については固形分の質量部)
*9 表7に示す有機樹脂No.
*10 表8に示す固形潤滑剤No.
*11 有機樹脂の固形分100質量部に対する固形分の質量部
Figure 2007204769
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Claims (4)

  1. 亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層皮膜として、下記一般式(I)で表される樹脂化合物(A)と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、亜鉛化合物(C)と、ジルコニウム化合物(D)と、リン酸又は/及びリン酸塩(E)と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(F)とを含有し、且つ樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分換算での配合比[A:B]が7:3〜4:6であり、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して、亜鉛化合物(C)を2〜20質量%、ジルコニウム化合物(D)を2〜20質量%、リン酸又は/及びリン酸塩(E)を5〜30質量%、酸化合物(F)を0.1〜5質量%含有する表面処理剤を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜厚が0.01〜3μmの表面処理皮膜を有し、その上部に第2層皮膜として、皮膜形成有機樹脂と固形潤滑剤とを含み、皮膜形成有機樹脂の固形分100質量部に対する固形潤滑剤の含有量が0.1〜15質量部である、皮膜厚が0.01〜5μmの有機皮膜を有することを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板。
    Figure 2007204769
    式中、ベンゼン環に結合しているY及びYは、それぞれ互いに独立に水素、又は下記一般式(II)、又は(III)により表されるZ基であり、1ベンゼン環当たりのZ基の置換数の平均値は0.2〜1.0である。nは2〜50の整数を表す。
    Figure 2007204769
    Figure 2007204769
    式(II)及び(III)中、R、R、R、R及びRは、それぞれ互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表し、Aは水酸イオン又は酸イオンを表す。
  2. 有機皮膜に含まれる固形潤滑剤の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tが1.5〜15であることを特徴とする請求項1に記載の耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板。
  3. 亜鉛系めっき鋼板の表面に、下記一般式(I)で表される樹脂化合物(A)と、第4アンモニウム塩基を有するカチオン性ウレタン樹脂(B)と、亜鉛化合物(C)と、ジルコニウム化合物(D)と、リン酸又は/及びリン酸塩(E)と、フッ酸、酢酸、硝酸、硫酸及びこれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種の酸化合物(F)とを含有し、且つ樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分換算での配合比[A:B]が7:3〜4:6であり、樹脂化合物(A)とカチオン性ウレタン樹脂(B)の固形分の合計量に対して、亜鉛化合物(C)を2〜20質量%、ジルコニウム化合物(D)を2〜20質量%、リン酸又は/及びリン酸塩(E)を5〜30質量%、酸化合物(F)を0.1〜5質量%含有する表面処理剤を塗布し、到達板温が30〜300℃となる温度で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜3μmの表面処理皮膜を形成し、その上部に、皮膜形成有機樹脂と固形潤滑剤とを含み、皮膜形成有機樹脂の固形分100質量部に対する固形潤滑剤の含有量が0.1〜15質量部である塗料組成物を塗布し、到達板温が50〜300℃となる温度で乾燥することにより、皮膜厚が0.01〜5μmの有機皮膜を形成することを特徴とする耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
    Figure 2007204769
    式中、ベンゼン環に結合しているY及びYは、それぞれ互いに独立に水素、又は下記一般式(II)、又は(III)により表されるZ基であり、1ベンゼン環当たりのZ基の置換数の平均値は0.2〜1.0である。nは2〜50の整数を表す。
    Figure 2007204769
    Figure 2007204769
    式(II)及び(III)中、R、R、R、R及びRは、それぞれ互いに独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表し、Aは水酸イオン又は酸イオンを表す。
  4. 有機皮膜に含まれる固形潤滑剤の平均粒径Dと有機皮膜の皮膜厚tの比D/tを1.5〜15とし、且つ、前記固形潤滑剤の軟化点を皮膜乾燥温度以上とすることを特徴とする請求項3に記載の耐食性、耐疵つき性、耐変色性及び耐水性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
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