JP3867202B2 - 耐白錆性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
耐白錆性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、家電、建材用途等に使用される亜鉛系めっき鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
亜鉛系めっき鋼板の耐白錆性を向上させる保護皮膜形成方法として、クロメート処理が、従来より広く用いられている。しかし、最近では、環境負荷物質低減の動きを受けて、クロメート処理に代わってCr6+を使用しない耐白錆性皮膜が提案されている。このCr6+を使用しない耐白錆性皮膜の形成方法の一つとして、電解処理による皮膜形成方法があり、この方法はスプレー処理、浸せき処理等の反応により皮膜形成させる方法と比較し付着量の制御が容易であるなどの利点を有している。電解処理による皮膜形成方法としては、例えば、下記の技術が挙げられる。
【0003】
1)特開昭52−47537号公報には、重リン酸マグネシウムを含む水溶液中で亜鉛めっきを陰極として電解処理する技術が開示されている。
【0004】
2)特開平1−219193号公報にはMgを含有する縮重合リン酸化合物を含む水溶液中で電解処理した後、さらにめっき鋼板表面に上層としてクリヤーコートを施す技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭52−47537号公報及び特開平1−219193号公報に開示の技術は、いずれもMgを含有する水溶液中で電解処理によりMgを含む皮膜を亜鉛系めっき鋼板表面上に形成させる技術であるが、重リン酸マグネシウムからなる水溶液を使用するため、Mgの析出効率が非常に低い。そのため、 Mg析出が十分でなく、耐白錆性レベルの低い皮膜しか得られない。これらの技術においてMgの析出効率が低い理由は明らかではないが、リン酸イオンの存在により水溶液のpHが3付近と低く、陰極電解処理の際、皮膜が析出するものの、pHの低い水溶液中では同時に皮膜が溶解し易くなるためであると考えられる。
【0006】
本発明の目的は、このような事情に鑑みなされたものであり、耐白錆性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、耐白錆性に優れた亜鉛系めっき鋼板を得るために、鋭意研究を重ねた結果、下記ような事実を知見した。
【0008】
▲1▼クロム以外に亜鉛系めっき鋼板の耐白錆性を向上させる皮膜成分として、各種の金属カチオンについて検討した結果、Mgが有効である。
【0009】
▲2▼Mgに着目してさらに耐白錆性を高める検討を行ったところ、皮膜の被覆量、さらには電解処理条件、電解処理液濃度等を規定することにより、Mgの析出効率を高めることが可能となり、その結果優れた耐白錆性を示す電解皮膜が形成される。
【0010】
▲3▼電解浴成分に、さらに、皮膜形成成分として、例えば、下記金属カチオン、オキシ酸アニオン、酸化物ゾルからなる群の中から選ばれる1種または2種以上の成分をさらに適量添加すると耐白錆性に優れた皮膜形成に有効である。
(a)Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Nd、Ti、V、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlのうちから選ばれる金属カチオン、
(b)Ti、V、Mo、W、B、AlおよびSiのうちから選ばれる1種以上の元素を含むオキシ酸アニオン、
(c)Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Nd、Ti、V、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、B、AlおよびSiのうちから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物ゾル。
【0011】
▲4▼電解浴成分として、硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、過マンガン酸イオン、臭素酸イオン、バナジン酸イオンおよびモリブデン酸イオンのうちから選ばれる1種または2種以上を含有すると皮膜欠陥部をさらに緻密化させ、耐白錆性に優れた皮膜形成に有効である。
【0012】
▲5▼また、電解終了後に直ちに水洗を行わず、電解処理後の鋼板を引き続き電解液と1秒以上接触させることにより、耐白錆性に優れた皮膜形成を得ることができる。これは、電解時のガス発生により皮膜の緻密性が低下しても、電解液とめっき鋼板が接触することにより、皮膜の欠損部で露出した亜鉛系めっき皮膜が電解液と反応し、皮膜欠損部の亜鉛が酸化されるともに、該部分に皮膜形成成分が沈殿するためである。
【0013】
▲6▼電解処理による無機系皮膜形成後、さらに有機系及び/または無機系の被覆層を形成させることにより、薄膜でも優れた耐白錆性を有する皮膜が得られる。
【0014】
本発明はかかる知見に基づきなされたもので、以下のような構成を有する。
[1]亜鉛系めっき鋼板を、Mgの硫酸塩、ハロゲン化物、カルボン酸塩、過塩素酸塩および炭酸塩のうちから選ばれる1種または2種以上をMg換算で合計で0.01〜3モル/L含有し、さらに、下記金属カチオン、オキシ酸アニオン、酸化物ゾルからなる群の中から選ばれる1種または2種以上の成分を、各々の金属換算で0.001〜3モル/L含有する水溶液中で、電流密度:1.0〜20A/dm2以下で電解処理することにより、亜鉛系めっき鋼板の表面にMg換算で5〜3000mg/m2のMgの酸化物及び/または水酸化物を含む皮膜を形成することを特徴とする耐白錆性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法(第1発明)。
(a)Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Nd、Ti、V、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlのうちから選ばれる金属カチオン、
(b)Ti、V、Mo、W、B、AlおよびSiのうちから選ばれる1種以上の元素を含むオキシ酸アニオン、
(c)Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Nd、Ti、V、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、B、AlおよびSiのうちから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物ゾル。
【0017】
[2]電解処理を行った後に、引き続き電解浴と亜鉛系めっき鋼板を1秒以上接触させることを特徴とする前記[1]に記載の耐白錆性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法(第4発明)。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の詳細をその限定理由と併せて説明する。
まず、本発明において対象となる亜鉛系めっき鋼板としては、めっき皮膜組成中の少なくとも一部にZnを含むものであれば特に制限はなく、例えば、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni、Zn−Co、Zn−Co−Mo、Zn−Crなどの合金電気めっき鋼板、Zn−SiO2分散電気めっき鋼板、溶融亜鉛−アルミ合金めっき鋼板(5%Al、55%Alを含む)、溶融亜鉛−アルミ−マグネシウム合金めっき鋼板、溶融亜鉛−マグネシウム合金めっき鋼板などが挙げられる。
【0020】
次に、本発明において行われる電解について説明する。
本発明において、電解浴成分として、水溶液中に、Mgの硫酸塩、ハロゲン化物、カルボン酸塩、過塩素酸塩および炭酸塩のうちから選ばれる1種または2種以上を、Mg換算で合計で0.01〜3モル/L、好ましくは、0.05〜0.5モル/L含有するものとする。前記成分を含む電解浴を用いて亜鉛系めっき鋼板を電解すると、Mgの酸化物および/または水酸化物の皮膜が形成されるが、0.01モル/L未満では、耐白錆性に優れた皮膜を得ることができない。また、3モル/Lを超えると、濃度を高めても析出皮膜量が増えないため不経済である。
【0021】
また、Mgの供給源となる、硫酸塩、ハロゲン化物、カルボン酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩の水和数などは特に限定しない。硫酸塩は取り扱いも容易であるため、硫酸塩をベースにカルボン酸塩などを混合させる系が電解処理に使用される水溶液として好適である。カルボン酸塩としては酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、クエン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0022】
さらに皮膜の耐水性を高め、湿潤環境等でも耐白錆性を充分に発揮するために、電解処理に使用される水溶液中に、さらに、下記金属カチオン、オキシ酸アニオン、酸化物ゾルからなる群の中から選ばれる1種または2種以上の成分を、各々の金属換算で0.001〜3モル/L含有することが好ましい。その理由は明らかでないが、これら成分とMgが複合した複合水酸化物及び/または酸化物を形成することにより、より難溶性となるためであると推定される。
(a)Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Nd、Ti、V、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlのうちから選ばれる金属カチオン、
(b)Ti、V、Mo、W、B、AlおよびSiのうちから選ばれる1種以上の元素を含むオキシ酸アニオン、
(c)Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Nd、Ti、V、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、B、AlおよびSiのうちから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物ゾル。
【0023】
上記含有量は0.001モル/L未満ではその効果が十分でなく、また、3モル/Lを超えると液の安定性が低下するため好ましくない。さらに好ましくは、0.01〜0.5モル/Lである。
【0024】
また、前記金属カチオン、前記オキシ酸アニオン、前記酸化物ゾルの供給方法として、具体的には、以下の方法が挙げられる。
【0025】
(1)金属カチオンの供給方法としては、Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Nd、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Alの硫酸塩、塩化物、カルボン酸塩、リン酸塩、炭酸塩を水溶液に溶解すればよい。
(2)オキシ酸アニオンの供給方法としては、モリブデン酸塩、マンガンさん塩、過マンガン酸塩、バナジン酸塩、タングステン酸塩、ホウ酸塩、を溶解する方法が挙げられる。
(3)酸化物ゾルとしては、チタニアゾル、アルミナゾル、シリカゾル、マグネシアゾル、酸化セリウムゾル、酸化鉄ゾルなどが挙げられ、これらを直接水溶液に添加する方法が挙げられる。
【0026】
本発明において、さらに耐白錆性に優れた皮膜を得るために、電解浴成分として水溶液中に、硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、過マンガン酸イオン、臭素酸イオン、バナジン酸イオンおよびモリブデン酸イオンのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で0.001〜3モル/L含有することが好ましい。0.001モル/L未満ではその効果が十分でない。また、3モル/Lを超えると、液の安定性が低下する。さらに好ましくは、0.01〜2モル/L、さらにより好ましくは0.01〜1モル/Lである。
【0027】
上記硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、過マンガン酸イオン、臭素酸イオン、バナジン酸イオン、モリブデン酸イオンは、Mgの硫酸塩、ハロゲン化物、カルボン酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、あるいはまたCa、Sr、Ba、Y、La、Ce、Nd、Ti、V、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlのうちから選ばれる金属カチオン、Ti、V、Mo、W、B、AlおよびSiのうちから選ばれる元素を含むオキシ酸アニオン、もしくはCa、Sr、Ba、Y、La、Ce、Nd、Ti、V、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、B、AlおよびSiのうちから選ばれる元素を含む酸化物ゾルと混合して電解処理時の電解浴として用いることができる。
【0028】
これらを共存させることで、耐白錆性がさらに改善される。これらを共存させる場合は、Mg単独の場合に比べて、耐水性が向上するだけでなく、皮膜の緻密性が改善されるものと推定される。これらを共存させることにより皮膜の緻密性が向上される機構は明らかでないが、還元時における水素イオンの消費によるpH上昇効果、皮膜に共析することによる効果などが考えられる。
【0029】
硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、過マンガン酸イオン、臭素酸イオン、バナジン酸イオン、モリブデン酸イオンの供給方法は特に限定されない。これらのイオンを含む水可溶性のアルカリ金属塩などの金属塩、アンモニウム塩などを添加すればよい。塩素酸イオン、過塩素酸イオンは、Mgの供給源として用いたMgのハロゲン化物、過塩素酸塩の中の一部から生成したものであってもよい。また、過マンガン酸イオン、臭素酸イオン、バナジン酸イオンは、各々Mn、Br、Vのオキシ酸アニオン添加のために使用した化合物の中の一部から生成したものであってもよい。
【0030】
電解浴には上記以外に、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの電気伝導度を高める成分や、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどのpH緩衝剤、さらなる皮膜緻密化の目的で水溶性または水分散性の有機樹脂を添加しても構わない。
【0031】
本発明では、上記以外の成分を排除するものではないが、本発明は上記成分を含有することで必要且つ十分である。従って、本発明では、処理液中には、例えば、リン酸、第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩、ピロリン酸、ピロリン酸塩、トリポリリン酸、トリポリリン酸塩などの縮重合リン酸塩、亜リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸、次亜リン酸塩などのPの酸素酸の添加も不要である。
【0032】
本発明において実施される電解処理条件については特に制限されるものではないが、亜鉛系めっき鋼板を陰極とし、定電流で電解処理を行う方法が、亜鉛の溶出を伴わず、有効に皮膜形成できる点で望ましい。
【0033】
本発明においては、電解処理の電流密度は1.0〜20A/dm2とすることが必要である。陰極電解によりMgの酸化物及び/または水酸化物を含む皮膜を形成する際、水素ガス発生が副反応として生じる。電流密度が1.0A/dm2未満ではMgの析出が十分でなく耐白錆性に有効な皮膜が得られない。また、電流密度が20A/dm2超えでは水素ガスが激しく発生し、皮膜の緻密性が大きく低下するため、耐白錆性が低下する。より好ましい範囲は、1.0〜10A/dm2である。
【0034】
電解浴のpHは、水溶液中の成分が安定に分散し得るpHであれば特に限定しない。液の安定性上、pHは1〜9、好ましくは3〜8、さらに好ましくは4〜8が望ましい。
【0035】
電解時間については特に限定はしない。電解用セルが複数あり、通電が多段階になるパターンを用いる場合は通電時間の合計は30秒以下が好ましい。通電時間が30秒を超えると、生産効率上問題となるばかりでなく、皮膜が厚くなり、剥離し易いなどの問題が生じ易くなるためである。好適な通電時間としては、0.1〜5秒である。
電解浴の温度は特に限定されないが、40〜60℃が望ましい。
【0036】
電解方法は特に限定しない。アノードが平行に配置されたセル中をストリップが通過する通常の電解用セルを使用することができる。この場合、縦型セル、横形セルのいずれでも適用可能である。陰極となる亜鉛系めっき鋼板の対極については特に限定しない。Pb合金系、酸化イリジウム被覆電極などの不溶性アノード、電解浴成分を補給し得る自溶性アノードのいずれも適用可能である。
【0037】
また、薄膜でも優れた耐白錆性を有する皮膜を得るために、電解直後に水洗を行わずに電解浴と亜鉛系めっき鋼板を1秒以上接触させることが好ましい(以下、この時間を液接触時間という。)。これは、電解直後の鋼板表面に、電解浴を付着させることで、電解処理による無機系皮膜の欠陥部で露出した亜鉛系めっき皮膜と電解浴が反応し、亜鉛系めっき皮膜が酸化され、さらに反応により皮膜が形成されることにより、欠陥部が補修されるものと考えられる。ここで、液接触時間は、電解終了直後から水洗開始までの時間として定義する。
【0038】
液接触時間が1秒未満の場合は、欠陥部の補修効果が十分でない。一方、液接触時間の上限については特に限定されないが、30秒を超えると、局部的に皮膜がエッチングされたり、電解浴が局部的に乾燥したりして、不均一な処理外観となるため好ましくない。
【0039】
なお、電解浴が接触されている状態とは、電極を配した電解用セルで、鋼板が電極部分を通過し電解を施された後、引き続き電解用セルの電解浴に浸漬されている状態や、鋼板が電解用セルを出た後、電解浴が水洗されるまでの間で乾燥せずに鋼板に付着している状態のいずれも含まれる。また、スプレーなどで電解浴を鋼板に接触させても良い。液接触時の雰囲気については特に限定されず、埃などの付着が無い前提で大気開放の状態で行うことができる。
【0040】
電解浴との接触後、次いで、水洗が行われる。水洗方法については特に限定しない。通常のスプレー水洗が好適である。水洗温度についても特に限定されないが、好ましくは、常温〜80℃である。
【0041】
水洗後、乾燥が行われる。乾燥方法については特に限定しない。高周波誘導加熱による乾燥、熱風による乾燥、赤外線による乾燥のいずれも可能である。
【0042】
以上のようにして電解浴中で電解処理することにより、亜鉛系めっき鋼板の表面にMgの酸化物及び/または水酸化物を含む皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板を得る。得られる皮膜はMgを含む酸化物及び/または水酸化物を含有する皮膜であり、この場合の皮膜は結晶質あるいは非晶質のいずれでも構わないが、特に非晶質の場合に優れた緻密性を有する皮膜となる。
【0043】
Mgの複合酸化物および/または水酸化物を含む皮膜には、さらに皮膜形成成分として、水溶液に添加されるCa、Sr、Ba、Y、La、Ce、Nd、Ti、V、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、B、AlおよびSiのうちから選ばれる1種または2種以上を含む水酸化物又は酸化物が分散して存在するか、あるいは、前記各成分の水酸化物成分の一部が脱水し、部分的に酸素を介した結合体を形成した状態でも良い。
【0044】
良好な耐白錆性を得るために、上記皮膜はMg換算で5〜3000mg/m2の範囲内にあることが必要であり、さらに好ましい範囲は、10〜500mg/m2である。上記皮膜が5mg/m2未満の場合は耐白錆性が不十分であり、3000mg/m2を超える場合は、皮膜が剥離し易くなる、導電性が低下するなどの問題が生じる。
【0045】
本発明では、耐白錆性の観点から、亜鉛系めっき鋼板の表面上に電解処理により前記酸化物及び/または水酸化物を含む皮膜を形成した後、該皮膜の上層に厚さ0.05〜3μmの有機系および/または無機系の被覆層を形成することが好ましい。0.05μm未満の場合には、被覆層の効果が発現されない。また、3μmを超えると、耐白錆性は良好であるが導電性が悪くなり、溶接性が低下する。
【0046】
以下に上層被覆層について説明する。
上層被覆層としては、無機系、有機系のいずれでも良い。また、上層被覆層は単一層でも良いが、例えば無機被覆層を浸漬、スプレー処理により形成した後に、さらにその上層に有機被覆層を形成させるなどの複層皮膜を形成することも可能である。
【0047】
有機皮膜の基体樹脂としては、以下の(1)〜(7)を例示できる。基体樹脂には、OH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂を用いることにより、高い造膜性を得ることができるため好ましい。
【0048】
有機皮膜の基体樹脂としては、OH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂を用いることが好ましい。
【0049】
OH基および/またはCOOH基を有する有機高分子樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル系樹脂、エチレン樹脂、アルキド樹脂、アクリルシリコン樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミン樹脂、ポリフェニレン樹脂類及びこれらの樹脂の2種以上の混合物若しくは付加重合物等が挙げられる。
【0050】
(1)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック等をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、ビスフェノールAにプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドまたはポリアルキレングリコールを付加し、グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、ポリエーテル系エポキシ樹脂等を用いることができる。
これらエポキシ樹脂は、特に低温での硬化を必要とする場合には、数平均分子量1500以上のものが望ましい。なお、上記エポキシ樹脂は単独または異なる種類のものを混合して使用することもできる。
【0051】
変性エポキシ樹脂としては、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基またはビドロキシル基に各種変性剤を反応させた樹脂が挙げられる。例えば乾性油脂肪酸中のカルボキシル基を反応させたエポキシエステル樹脂、アクリル酸、メタクリル酸等で変性したエポキシアクリレート樹脂、イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂にイソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂にアルカノールアミンを付加したアミン付加ウレタン変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0052】
上記ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、単核型若しくは2核型の2価フェノールまたは単核型と2核型との混合2価フェノールを、アルカリ触媒の存在下にほぼ等モル量のエピハロヒドリンと重縮合させて得られる重合体である。単核型2価フェノールの代表例としてはレゾルシン、ハイドロキノン、カテコールが挙げられ、2核型フェノールの代表例としてはビスフェノールAが挙げられ、これらは単独で使用しても或いは2種以上を併用してもよい。
【0053】
(2)ウレタン樹脂
ウレタン樹脂としては、例えば、油変性ポリウレタン樹脂、アルキド系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0054】
(3)アルキド樹脂
アルキド樹脂としは、例えば、油変性アルキド樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、スチレン化アルキド樹脂、シリコン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、オイルフリーアルキド樹脂、高分子量オイルフリーアルキド樹脂等を挙げることができる。
【0055】
(4)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸及びその共重合体、ポリアクリル酸エステル及びその共重合体、ポリメタクリル酸エステル及びその共重合体、ポリメタクリル酸エステル及びその共重合体、ウレタン−アクリル酸共重合体(またはウレタン変性アクリル樹脂)、スチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられ、さらにこれらの樹脂を他のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等によって変性させた樹脂を用いてもよい。
【0056】
(5)エチレン樹脂(ポリオレフィン樹脂)
エチレン樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、カルボキシル変性ポリオレフィン樹脂などのエチレン系共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン系アイオノマー等が挙げられ、さらに、これらの樹脂を他のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等によって変性させた樹脂を用いてもよい。
【0057】
(6)アクリルシリコン樹脂
アクリルシリコン樹脂としては、例えば、主剤としてアクリル系共重合体の側鎖又は末端に加水分解性アルコキシシリル基を含み、これに硬化剤を添加したもの等が挙げられる。これらのアクリルシリコン樹脂を用いた場合、優れた耐候性が期待できる。
【0058】
(7)フッ素樹脂
フッ素樹脂としては、フルオロオレフィン系共重合体があり、これには例えば、モノマーとしてアルキルビニルエーテル、シンクロアルキルビニルエーテル、カルボン酸変性ビニルエステル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、テトラフルオロプロピルビニルエーテル等と、フッ素モノマー(フルオロオレフィン)とを共重合させた共重合体がある。これらフッ素樹脂を用いた場合には、優れた耐候性と優れた疎水性が期待できる。
【0059】
また、樹脂の乾燥温度の低温化を狙いとして、樹脂のコア部分とシェル部分とで異なる樹脂種類、または異なるガラス転移温度の樹脂からなるコア・シェル型水分散性樹脂を用いることができる。
【0060】
また、自己架橋性を有する水分散性樹脂を用い、例えば、樹脂にアルコキシシラン基を付与することによって、樹脂の加熱乾燥時にアルコキシシランの加水分解によるシラノール基の生成と樹脂間のシラノール基の脱水縮合反応を利用した樹脂間架橋を利用することができる。
【0061】
また、有機皮膜に使用する樹脂としては、有機樹脂をシランカップリング剤を介してシリカと複合化させた有機複合シリケートも好適である。
【0062】
本発明では有機皮膜の耐白錆性や加工性の向上を狙いとして、特に熱硬化性樹脂を用いることが望ましい。この場合、尿素樹脂(ブチル化尿素樹脂等)、メラミン樹脂(ブチル化メラミン樹脂)、ブチル化尿素・メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂、ブロックイソシアネート、オキサゾリン化合物、フェノール樹脂等の硬化剤を配合することができる。
【0063】
以上述べた有機樹脂の中で、耐白錆性、耐食性、加工性、塗装性を考慮すると、エポキシ樹脂、エチレン系樹脂が好ましく、特に、酸素などの腐食因子に対して優れた遮断性を有する熱硬化性のエポキシ樹脂や変性エポキシ樹脂が特に好適である。これらの熱硬化性樹脂としては、熱硬化性エポキシ樹脂、熱硬化性変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有モノマーと共重合したアクリル系共重合体樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂、及びこれらの樹脂の付加物もしくは縮合物などが挙げられ、これらのエポキシ基含有樹脂の1種を単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0064】
本発明では、有機皮膜中に防錆添加剤としてイオン交換シリカおよび/または微粒子シリカを配合することができる。
【0065】
イオン交換シリカはカルシウムやマグネシウムなどの金属イオンを多孔質シリカゲル粉末の表面に固定したもので、腐食環境下で金属イオンが放出されて沈殿膜を形成する。また、このイオン交換シリカの中でも、Caイオン交換シリカが最も好ましい。
【0066】
Caイオン交換シリカとしては任意のものを用いることができるが、平均粒子径が6μm以下、望ましくは4μm以下のものが好ましく、例えば、平均粒子径が2〜4μmのものを用いることができる。Caイオン交換シリカの平均粒子径が6μmを超えると耐食性が低下するとともに、塗料組成物中での分散安定性が低下する。
【0067】
Caイオン交換シリカ中のCa濃度は1wt%以上、望ましくは2〜8wt%であることが好ましい。Ca濃度が1wt%未満ではCa放出による防錆効果が十分に得られない。
【0068】
なお、Caイオン交換シリカの表面積、pH、吸油量については特に限定されない。
【0069】
以上のようなCaイオン交換シリカとしては、商品名でW.R.Grace&Co.製のSHIELDEX C303(平均粒子径2.5〜3.5μm、Ca濃度3wt%)、SHIELDEX AC3(平均粒子径2.3〜3.1μm、Ca濃度6wt%)、SHIELDEX AC5(平均粒子径3.8〜5.2μm、Ca濃度6wt%)、富士シリシア化学(株)製の SHIELDEX(平均粒子径3μm、Ca濃度6〜8wt%)、SHIELDEX SY710(平均粒子径2.2〜2.5μm、Ca濃度6.6〜7.5wt%)などを用いることができる。
【0070】
有機皮膜中にイオン交換シリカを添加した場合の防食機構は先に述べた通りであり、特に本発明では特定の有機高分子樹脂とイオン交換シリカとを複合化することにより、特定の有機高分子樹脂皮膜によるバリヤー作用と、イオン交換シリカによるカソード反応部での腐食抑制効果とが複合化し、極めて優れた防食効果が発揮される。
【0071】
有機皮膜中にイオン交換シリカを添加する場合、その配合量は、基体樹脂100重量部(固形分)に対して、1〜100重量部(固形分)、好ましくは5〜80重量部(固形分)、さらに好ましくは10〜50重量部(固形分)とすることが適当である。イオン交換シリカの配合量が1重量部未満では、耐アルカリ脱脂後の耐食性向上効果が小さい。一方、配合量が100重量部を超えると、耐食性が低下するので好ましくない。
【0072】
微粒子シリカはコロイダルシリカ、ヒュームドシリカのいずれでもよい。コロイダルシリカとしては、水系皮膜形成樹脂をベースとする場合には、例えば、商品名で日産化学工業(株)製のスノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスC、スノーテックスS、触媒化成工業(株)製のカタロイドS、カタロイドSI−350、カタロイドSI−40、カタロイドSA、カタロイドSN、旭電化工業(株)製のアデライトAT−20〜50、アデライトAT−20N、アデライトAT−300、アデライトAT−300S、アデライトAT20Qなどを用いることができる。
【0073】
また、溶剤系皮膜形成樹脂をベースとする場合には、例えば、商品名で日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾルMA−ST−M、オルガノシリカゾルIPA−ST、オルガノシリカゾルEG−ST、オルガノシリカゾルE−ST−ZL、オルガノシリカゾルNPC−ST、オルガノシリカゾルDMAC−ST、オルガノシリカゾルDMAC−ST−ZL、オルガノシリカゾルXBA−ST、オルガノシリカゾルMIBK−ST、触媒化成工業(株)製のOSCAL−1132、OSCAL−1232、OSCAL−1332、OSCAL−1432、OSCAL−1532、OSCAL−1632、OSCAL−1722などを用いることができる。
【0074】
特に、溶剤系皮膜形成樹脂をベースとする場合に用いるシリカゾル(有機溶剤分散型シリカゾル)は、分散性に優れ、ヒュームドシリカよりも耐食性に優れている。
【0075】
また、ヒュームドシリカとしては、例えば、商品名で日本アエロジル(株)製のAEROSIL R971、AEROSIL R812、AEROSIL R811、AEROSIL R974、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL 130、AEROSIL 200、AEROSIL 300、AEROSIL 300CFなどを用いることができる。
【0076】
微粒子シリカは、腐食環境下において緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成されることによって、腐食の促進を抑制することができると考えられている。
【0077】
耐食性の観点からは、微粒子シリカは粒子径が5〜50nm、望ましくは5〜20nm、さらに好ましくは5〜15nmのものを用いるのが好ましい。
【0078】
有機皮膜中に微粒子シリカを添加する場合、その配合量は、基体樹脂100重量部(固形分)に対して、1〜100重量部(固形分)、好ましくは5〜80重量部(固形分)さらに好ましくは10〜30重量部(固形分)とすることが適当である。微粒子シリカの配合量が1重量部未満では、耐アルカリ脱脂後の耐食性向上効果が小さい。一方、配合量が100重量部を超えると、耐食性や加工性が低下するので好ましくない。
【0079】
また、本発明では有機皮膜中にイオン交換シリカと微粒子シリカを複合添加することにより、特に優れた耐食性が得られる。すなわち、イオン交換シリカと微粒子シリカとを複合添加することにより、両者の複合的な防錆機構によって特に優れた防食効果が得られる。
【0080】
有機皮膜中にイオン交換シリカと微粒子シリカを複合添加する場合、その配合量は、基体樹脂100重量部(固形分)に対して、イオン交換シリカおよび微粒子シリカの合計の配合量で1〜100重量部(固形分)、好ましくは、5〜80重量部(固形分)であって、且つイオン交換シリカと微粒子シリカの配合量(固形分)の重量比イオン交換シリカ/微粒子シリカを99/1〜1/99、好ましくは95/5〜40/60、さらに好ましくは90/10〜60/40とすることが適当である。
【0081】
イオン交換シリカおよび微粒子シリカの合計の配合量が1重量部未満では、耐アルカリ脱脂後の耐食性向上効果が小さい。一方、合計の配合量が100重量部を超えると塗装性や加工性が低下するので好ましくない。
【0082】
また、イオン交換シリカと微粒子シリカの重量比イオン交換シリカ/微粒子シリカが1/99未満では耐食性が劣り、一方、重量比イオン交換シリカ/微粒子シリカが99/1を超えるとイオン交換シリカと微粒子シリカの複合添加による効果が十分に得られなくなる。
【0083】
また、有機皮膜中には上記の防錆添加剤に加えて、腐食添加剤としてポリリン酸塩(例えば、ポリリン酸アルミ:商品名でテイカ(株)製のテイカK−WHITE82、テイカK−WHITE105、テイカK−WHITE G105、テイカK−WHITECa650)、リン酸塩(例えば、リン酸亜鉛、リン酸二水素アルミニウム、亜リン酸亜鉛など)、モリブデン酸塩、リンモリブデン酸塩(例えば、リンモリブデン酸アルミニウムなど)、有機リン酸及びその塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩及びこれらの金属塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)、有機インヒビター(例えば、ヒドラジン誘導体、チオール化合物等)等を添加できる。
【0084】
有機皮膜中には、さらに必要に応じて、皮膜の加工性を向上させる目的で固形潤滑剤を配合することができる。
【0085】
本発明に適用できる固形潤滑剤としては、例えば、以下のようなものが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
(1)ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス:例えば、ポリエチレンワックス、合成パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、塩素化炭化水素など
(2)フッ素樹脂微粒子:例えば、ポリフルオロエチレン樹脂(ポリ4フッ化エチレン樹脂等)、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂など、また、この他にも、脂肪酸アミド系化合物(例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミドなど)、金属石けん類(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ラウリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウムなど)、金属硫化物(例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなど)、グラファイト、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、ポリアルキレングリコール、アルカリ金属硫酸塩などの1種または2種以上を用いてもよい。
【0086】
以上の固形潤滑剤の中でも、特に、ポリエチレンワックス、フッ素樹脂微粒子が好適である。
【0087】
ポリエチレンワックスとしては、例えば、商品名でヘキスト社製のセリダスト9615A、セリダスト 3715、セリダスト 3620、セリダスト 3910、三洋化成(株)製のサンワックス 131−P、サンワックス 161−P、三井石油化学(株)製のケミパール W−100、ケミパール W−200、ケミパール W−500、ケミパール W−800、ケミパール W−950などを用いることができる。
【0088】
また、フッ素樹脂微粒子としては、テトラフルオロエチレン微粒子が最も好ましく、例えば、商品名でダイキン工業(株)製のルブロン L−2、ルブロン L−5、三井・デュポン(株)製のMP1100、MP1200、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンディスパージョン AD1、フルオンディスパージョン AD2、フルオン L141J、フルオン L150J、フルオン L155Jなどが好適である。
【0089】
また、これらのなかで、ポリオレフィンワックスとテトラフルオロエチレン微粒子の併用により特に優れた潤滑効果が期待できる。
【0090】
無機皮膜としては、リチウムシリケート、水ガラス等水系の処理液、あるいはシリコーン樹脂等の溶剤系の処理液などを塗布し、乾燥もしくは焼き付けして得られるシリケート皮膜や、アルミナゾル、アルミン酸ソーダ、水酸化アルミニウムゾルなどの水溶液を塗布し、乾燥もしくは焼き付けして得られる酸化アルミニウム系の皮膜、リン酸塩水溶液を塗布し、乾燥または焼き付けして得られるリン酸系皮膜などが挙げられる。
【0091】
本発明では、電解処理、水洗、乾燥のプロセス、さらに好ましくは上層被覆のプロセスにより皮膜形成が行われる。
【0092】
電解処理により形成された皮膜上層に、被覆層を形成する方法については特に限定しない。塗布方式、浸漬方式、スプレー方式のいずれでもよく、塗布方式ではロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの塗布手法を用いてもよい。また、スクイズコーター等による塗布処理、浸漬処理、スプレー処理の後にエアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
【0093】
上層被覆層の付与は電解処理による皮膜の形成、好ましくは電解浴と亜鉛系めっき鋼板との接触、水洗、乾燥の工程に引き続き行われるが、必要に応じて、水洗に引き続き連続して処理が行われてもよい。
【0094】
また、上層被覆処理液の温度については特に限定しない。常温〜60℃が適当である。常温以下では冷却などのための設備が必要のため不経済であり、一方60℃を超えると水分や溶剤成分が蒸発するため液管理が困難となる。
【0095】
上記上層被覆付与の後、通常水洗することなく加熱乾燥を行うが、処理後に水洗を行うことも可能である。樹脂皮膜の乾燥方法は特に限定されるものではなく、高周波誘導加熱による乾燥、熱風による乾燥、赤外線による乾燥のいずれも可能である。この場合の加熱乾燥温度は、到達板温で50〜300℃、好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは80〜160℃である。
【0096】
【実施例】
以下本発明の実施例を述べる。
表1に示す各種亜鉛系めっき鋼板をアルカリ脱脂処理のち水洗乾燥し、これら鋼板に対し、表2に示す各種電解浴(浴温50℃)で亜鉛系めっき鋼板上に電解皮膜を形成した。次いで、水洗、熱風乾燥を行った。
また、上記で得られた処理鋼板の一部については、さらに引き続き有機系樹脂層、もしくは無機系被覆層を形成した。上層被覆層は、ロールコーターを用い、表3の皮膜組成物と添加成分もしくは表4の皮膜組成物からなる処理液を塗布し、加熱乾燥させることにより得た。皮膜の膜厚は処理組成物の固形分、及びロール圧下力、回転速度等により調整した。
【0097】
ここで、電解浴は、表2に示す薬品をイオン交換水に溶解させ、適宜pHを調整することにより得た。電解浴のpHは、50℃の状態の値であり、硫酸塩の場合には硫酸の様に、基本的にアニオンを同一にした酸を用いた。また、pHをあげる場合には希釈した水酸化ナトリウムを用いて適宜調整した。
【0098】
また、上層樹脂皮膜を得るための樹脂組成物として、表3に記載の皮膜組成物を使用する場合、表3に示す皮膜組成物にそれぞれ微粒子シリカを樹脂組成物の固形分100重量部に対し10重量部となるように配合し、塗料用分散機(サンドグラインダー)を用いて必要時間分散させ塗料組成物とした物を使用した。微粒子シリカは日本アエロジル(株)製のアエロジル300を用いた。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
上記により得られた皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板について耐白錆性、導電性を評価した。ここで、耐白錆性の評価は、塩水噴霧試験(JIS Z2371)により行い、18時間後の白錆発生面積率で評価し、◎:白錆発生なし、○:10%未満発生、△:10%〜50%未満、×:50%以上とした。また、導電性の評価は、層間絶縁抵抗値(JIS C2550)を測定し、◎:1Ωcm2/枚未満、○:1Ωcm2/枚〜5Ωcm2/枚未満、×:5Ωcm2/枚以上とした。
【0104】
また、皮膜中Mg量は、電解皮膜と亜鉛系めっき皮膜をそのまま酸に溶解し、溶解液中のMg量をICP法を用いて求め、あらかじめブランクとして電解皮膜を施さない亜鉛系めっき皮膜を同じく酸に溶解しMgを測定した値を除して求めた。
【0105】
得られた結果を表5〜表7に製造条件と併せて示す。
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
【表7】
【0109】
表5〜表7より、本発明例では、性能上問題になるほどの白錆が発生することなく、導電性の評価も良好である。
【0110】
一方、比較例では耐白錆性もしくは導電性のいずれか一つ以上が劣っていることがわかる。
【0111】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、耐白錆性にすぐれた亜鉛系めっき鋼板を得ることができる。本発明により得られる亜鉛系めっき鋼板は、白錆抑制に有効である皮膜を電解により形成させることにより耐白錆性及び導電性に優れており、自動車、家電、建材用途等の材料として最適である。
Claims (2)
- 亜鉛系めっき鋼板を、Mgの硫酸塩、ハロゲン化物、カルボン酸塩、過塩素酸塩および炭酸塩のうちから選ばれる1種または2種以上をMg換算で合計で0.01〜3モル/L含有し、さらに、下記金属カチオン、オキシ酸アニオン、酸化物ゾルからなる群の中から選ばれる1種または2種以上の成分を、各々の金属換算で0.001〜3モル/L含有する水溶液中で、電流密度:1.0〜20A/dm2以下で電解処理することにより、亜鉛系めっき鋼板の表面にMg換算で5〜3000mg/m2のMgの酸化物及び/または水酸化物を含む皮膜を形成することを特徴とする耐白錆性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
(a)Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Nd、Ti、V、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlのうちから選ばれる金属カチオン、
(b)Ti、V、Mo、W、B、AlおよびSiのうちから選ばれる1種以上の元素を含むオキシ酸アニオン、
(c)Ca、Sr、Ba、Y、La、Ce、Nd、Ti、V、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、B、AlおよびSiのうちから選ばれる1種以上の元素を含む酸化物ゾル。 - 電解処理を行った後に、引き続き電解浴と亜鉛系めっき鋼板を1秒以上接触させることを特徴とする請求項1に記載の耐白錆性に優れた亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
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