以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
本発明の記録媒体の構成は、具体的には、以下のとおりである。図1に示したように、基板1上に、金属反射層2をまず形成し、その後第1の透明電極3、エレクトロクロミック材料層4、固体電解質材料層5、第2の透明電極7の順で製膜したものを、光学的、あるいは熱的に必要が有ればスペーサー層6を挟んで繰り返し2組以上積層する。記録層を挟む電極間に電圧を印加すると記録用あるいは読み出し用レーザ光の吸収率及び反射率が増大するようにするのが好ましい。これにより任意の層だけ光吸収し、他の層はほとんど光吸収が無いようにできる。これにより、他の層の干渉が無いので1層当たりの膜厚を従来の1/100程度に薄くでき、複数の層を絞込みレンズの焦点深度内に配置することもできて、従来の複数層ディスクより多層・大容量化できる。もちろん、1〜2層以外は焦点深度内に入らないように、焦点位置を動かして記録・再生してもよい。その場合、多層積層するとアドレス情報を表わすピットや溝が変形する場合があるので、場合によってはレーザビームを複数にして1つのビームは基板のすぐ上の反射層に焦点を合わせ、このビームとディスク面内方向の位置関係がほぼ固定された他のビームの焦点位置が記録又は再生する層上に来るようにするのがよい。さらに多層の媒体の場合は、ピットや溝を転写した層を再度設けることにより、移動した焦点位置でアドレスが読めるようにしておく必要が有る。エレクトロクロミック材料層の反射率が高い場合は金属反射層は省略しても良い。最後にもう1枚の同様な基板と張り合わせる。
エレクトロクロミック材料としては、例えば酸化タングステン、チオフェン系有機分子の重合体(ポリチオフェンやその誘導体)が挙げられる。さらにエレクトロクロミック材料としては、産業図書(株)平成3年6月28日初版発行の「エレクトロクロミックディスプレイ」に述べられている各種材料など、現時点で論文発表されている多くのエレクトロクロミック材料が使用可能である。記録感度が高いことにより、高線速度記録の場合でも、また、記録媒体上の複数の場所(複数の層を含む)に同時に光照射を行う手段として、アレイレーザや面発光レーザを用いた場合でもパワー不足とならずに高い転送速度を実現できる。記録媒体の複数の電極対に対し、少なくとも2対同時又はパルス的に交互あるいは順次電圧を印加しても良い。これは、低い維持電圧又は間歇的な維持電圧を印加しておかないと色が変化する材料を用いた場合や、アレイレーザの各ビームの焦点位置を各層に位置づけて複数層同時記録・再生する場合や、一部のビームをフォーカス合わせやトラッキングの基準に用いる場合に必要となる。
そして記録層を複数有する記録媒体を用い、多くの電極対間に電圧を印加するが、記録又は消去、又は読出し時に、それらを行う層の両側の電極間だけに他の電極間とは異なった電圧を印加するようにする。異なった電圧とは、極性が逆の電圧の場合も含む。
また、本発明においてエレクトロクロミック材料層とは、電圧印加(電流が流れる)によって直接発色する(吸収又は反射スペクトルが変化する)材料の層という定義である。現在エレクトロクロミック材料と呼ばれていないものでも良い。ただし、膜厚50nmの層とした時、記録・再生の少なくとも一方、できれば両方の光の波長に対し、所定の電圧印加時に光吸収が10%以下、より好ましくは5%以下にできるものが良い。そのほかに、電圧印加(電流が流れる)によって発光する領域とその光を受けて発色又は消色する領域を有する層も含むものとしても良い。
図10に、本発明による記録媒体の他の構成例を示す。この記録媒体は、基板上に、反射層、透明電極、導電性有機材料層、固体電解質層、透明電極の順で製膜したものの反射層以外を繰り返し2組以上積層したものである。
ディスク内周部には各層の透明電極、あるいは透明電極から延長した電極の端部が同心円状になるように形成する。図13に示したように放射状になるようにしても良い。放射状の場合は透明電極の面抵抗による電圧の不均一を避けるために、1つの透明電極層に2つ以上の放射状電極を設けるのが好ましい。
図2に示したように、少なくとも一方の上記基板14の一部に、基板を貫通する複数の金属ピン16が設けられているようにするのが好ましい。金属ピンは同心円電極15に接続されている。また、金属ピンの反対側は製膜基板11上の複数の透明電極12に、導電性材料13によって接続されている。金属ピンは文字通りのピン状でなくても良く、中心がディスク中心と一致する円弧状や円環状などの帯状金属でもよい。また、基板を貫通することは必須ではなく、ディスクの中心穴近傍を迂回してもよい。
上記同心円状の電極又は透明電極の同心円状引き出し部のそれぞれが連続ではなく、それぞれの円の上に複数の電極が配列されたものであるようにしてもよい。上記透明電極の端部(同心円状の部分)が導電率向上及び補強のために金属又は炭素の微粒子を含む材料を塗布したものとしてもよい。
図3は、本発明の一実施例の多層ディスク記録再生装置の構造を示す図である。この多層ディスク記録再生装置は、記録媒体に凹凸の形で予め情報が与えられているか、光などのエネルギーを記録媒体に与えることによって情報を記録する情報記録装置である。図19は、記録媒体に凹凸の形で予め情報が与えられている多層記録媒体の例を示す図である。本装置は、ディスク受け(ディスク載置部)24,24′に載置されたディスクの下方に有る、記録再生装置の静止部から回転軸31への電圧伝達機構から出て、回転軸を回転軸先端に向かう導線21、回転軸の先端の、ディスクの電極数に対応したピン状又は同心円状又は同心円筒状又は同心円錐台筒状の電極25、及びボールベアリング28、アーム27を経てドライブ装置に固定され、ディスクを回転させる時ディスクを押えて回転軸と一緒に回転するディスク押え23、ディスク押えに設けられた、回転軸頂部のピン状、又は同心円状、又は同心円筒状、又は同心円錐台筒状の電極に対応した同心円状、ピン状、又は同心円筒状又は同心円錐台筒状の電極22、及びディスク内周部の同心円状電極に対応したバネ内蔵の金属ピン電極19を有する。ただし回転軸頂部及びディスク押えの互いに接触する電極の少なくとも一方はピン状でなく同心円状又は同心円のそれぞれの円をさらに円弧に分割した形状であり、ディスクがドライブ装置に挿入されると、上記ディスク押えをディスクの方に移動させ、上記ディスク内周部の同心円状電極と回転軸頂部に接触するように制御する手段を有する。図3ではディスク押え付近の電極を多数書くとわかりにくくなるので3個だけを書いてある。なお、30はボールベアリングとディスク押えとの接続部分である。
上記同心円状又は同心円筒状又は同心円錐台状の電極も、それぞれが連続ではなく、複数の電極がそれぞれの円の上に配列されたものとしてもよい。上記電極が楔状の金属片を打ち込んだものとしてもよい。上記透明電極の内周への引き出し部が透明電極上に金属又は炭素の微粒子を含む材料を塗布したものとしてもよい。
図4は、本発明による多層ディスク記録再生装置の他の例を示す構造図である。本装置は、記録媒体に凹凸の形で予め情報が与えられているか、光などのエネルギーを記録媒体に与えることによって情報を記録する情報記録装置であり、ディスク受け(ディスク載置部)48,48′に配置されたバネ内蔵ピン電極41から回転軸先端に向かう導線40、上記導線を回転軸の先端の、ディスクの電極数に対応した積層円筒状電極49又は円錐台筒状の電極に接続する手段、ディスクの電極数に対応した回転する積層同心円筒状又は円錐筒状の電極に装置側の複数の電極47を接触させる手段、及びディスクを回転させる時ディスクを押えて回転軸と一緒に回転するディスク押え部44を有する。ピン電極はピン(細い円柱又は円筒)状でなくてもよく、例えば円弧を成す帯状の電極であっても良い。図4においてはディスク受け付近の電極を多数書くとわかりにくくなるので3個だけを書いてある。上記の装置側の複数の電極はそれぞれが幅が狭く長く、全体が一枚の長いベルト状になっていて回転する電極との接触部分が摩耗したら接触位置を変えられるようになっている。
上記同心円状又は同心円筒状又は同心円錐台状の電極のそれぞれが連続ではなく、複数の電極がそれぞれの円の上に配列されたものとしても良い。
図6は、本発明の1実施例の多層ディスク記録再生装置の構造を示す図である。本装置は、記録媒体に凹凸の形で予め情報が与えられているか、光などのエネルギーを記録媒体に与えることによって情報を記録する情報記録装置であり、ボールベアリングなどの回転保持機構62を経てバネ性を持ったアーム68によってドライブ装置に固定され、ディスクを回転させる時ディスクを押えて回転軸と一緒に回転するディスク押え手段63、上記ディスク押え手段は上記ボールベアリングなどの回転保持機構又はそれとは別のスリップリング状電圧伝達機構57,67(67はベルト状ブラシ群)を通してドライブ装置の静止部分に電気的に接続されており、上記ディスク押え手段に設けられたディスクの同心円状電極に対応して配置されたバネ内蔵ピン電極59、上記ボールベアリングなどの回転保持機構又はスリップリングの各部分と、対応する電極を電気的に接続する手段(導線)58、ディスクがドライブ装置に挿入されると、上記ディスク押えをディスクの方に移動させ、上記ディスクの同心円状電極に接触するように制御する手段を有す。ディスクの同心円状電極のそれぞれは、さらに円周方向に複数の円弧に分離されていても良い。図6ではディスク押え付近の電極を多数書くとわかりにくくなるので3個だけを書いてある。図12は、スリップリングの側面図である。
上記同心円状の電極のそれぞれを分割した複数の電極が楔状の金属片を打ち込んだものとしてもよい。
上記の記録媒体(ディスク)が2枚のディスクを張り合わせたものであり、少なくとも一方の基板に複数の金属ピンが貫通していて基板上に形成した複数の電極に接続されていても良い。また、1方のディスクの内径が他方のディスクの内径より小さく、その内径差の部分に内径が小さい方のディスクの同心円状電極が露出しているようにしても良い。ただし、この場合は、導電性材料の塗布又は貼り付けによる基板上の電極の補強をするのが望ましい。
記録媒体に凹凸の形で予め情報が与えられているか、光などのエネルギーを記録媒体に与えることによって情報を記録する記録媒体が少なくともエレクトロクロミック材料層を透明又は半透明の2つの電極間に有するものを2組以上積層したものであり、記録媒体は静止しており、記録媒体側の電極と電源とが絶縁物カバーの内部に複数の金属接点を内蔵するコネクターによって接続されている情報記録装置としても良い。
<実施例1>
(構成、製法)
エレクトロクロミック材料層ではポリチオフェン系材料を用いた。ポリチオフェン系材料の層は、具体的にはH.C.Starck社の商品名Bytron Pを約80vol% 含み、残部の主成分がt-ブチルアルコールで、他に少量の界面活性剤NS210,ポリビニルアルコール、3−GPTMS(3-glycidoxypropyltrimethylsilane)を含む液を塗布、加熱乾燥した層である。この上に固体電解質材料を積層する。固体電解質材料は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)とリチウムトリフレート(lithium trifluorosulfonate)を主成分とし、propylene carbonate, ethylene carbonate, acetonitrile, cyclohexanon及び、日立化成のUV硬化樹脂H−9を少量含むものを塗布し、UV光照射、加熱乾燥したものである。塗布によって形成するので、基板のランド部では膜厚が薄くなり、グルーブ部では厚くなる。エレクトロクロミック材料層は上下の電極間に電圧をかけることによって発色する。なお、光源に波長405nm付近の青色レーザを用いた場合には、ポリアニリン系材料(誘導体)を用いた。
この媒体は次のようにして製作された。まず、直径12cm、厚さ0.6mmで表面にトラックピッチが0.615μmで深さ約70nmのランド・グルーブ記録用のトラッキング用の溝(幅0.615μm)を有し、トラック1周を複数のセクターに分割して各セクターの始まりにピット列によってアドレス、同期信号などを表したヘッダー部を持ち、溝のウォブルによってクロックが表現されたポリカーボネート基板を用いた。DVD−RAMの基板とほぼ同様な基板である。湖の基板を用いたのは必ずしも最適であるというわけではなく、層間のクロストークが有った場合でも影響が出にくいフォーマットの基板とするのがさらに好ましい。例えば、サンプルサーボフォーマット基板である。図17は、グルーブの概略平面図である。
図1に示したように、上記ポリカーボネート基板1上に、Ag94Pd4Cu2半透明反射層2を膜厚20nm、ITO透明電極3を100nm、エレクトロクロミック材料層4を100nm、固体電解質層5を100nm、WO3保護層6を50nm、ITO透明電極7を100nm、あとは同様に繰り返してエレクトロクロミック材料層、固体電解質層、WO3 保護層、ITO透明電極、エレクトロクロミック材料層、固体電解質層、WO3保護層、ITO透明電極、エレクトロクロミック材料層、固体電解質層、WO3 保護層、ITO透明電極の順にITO透明電極で両側を挟まれた記録層を5層積層した。製膜時に透明電極、次の透明電極との間の各層、透明電極、と順次内周マスクを大きくしてゆき、ディスク内周部に各透明電極が同心円状に露出するようにした。透明電極上の各層とその上の透明電極は同じマスク形状で形成してもよい。さらにこの上に内周部に内径(直径)15mm、外径41mmの、表から裏へ電極が貫通した基板、外周部に内径約41mm外径120mm厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を貼り付けた。光はこの張り合せ基板側から入射させた。この内周部の基板と外周部の基板は一体化して1枚のポリカーボネート基板としてもよい。
ITO透明電極はスパッタリング、WO3保護層は真空蒸着で形成した。真空蒸着としたのは、その下の層が有機材料から成る場合、スパッタリング時のイオン衝撃から保護するためと、酸素を有機材料層に奪われて高抵抗層ができるのを防止するためである。イオン衝撃を受けると特性劣化が速くなった。WO3層の膜厚は薄い(30nm程度)方が光透過率の点では好ましい。ITO透明電極は電子ビーム蒸着、レーザ蒸着(ターゲットに大出力のレーザ光を照射して蒸発・製膜する方法で、PLD法とも呼ばれる)で形成することもでき、その場合は保護層としてのWO3層を50nm未満に薄くしたり省略することもできる。ただし、蒸着法によるITO膜は、透過率、導電率の面ではスパッタITO膜より少し低目となる。保護の目的では、真空蒸着、又は塗布で形成できる既知の透明導電性無機材料がWO3の代わりに使用できる。
WO3保護層は保護層としてでなく、オートフォーカス及び/又はトラッキング及び/又は再生用の光反射層としても用いることができる。この層も電圧印加によって着色し、反射率が高くなりやすいためである。光反射層として用いる場合はすべての記録層に付加せず、一層おき、2層おきなど、複数層おきに設けても良い。グルーブなどの凹凸を転写した層に付けるのが望ましい。このような場合、サーボ信号は光反射層にフォーカスしたレーザビームから、再生信号は同じ、又は別の層にフォーカスしたビームから得る。これらビームは同一の、単一の1ビームであってもよい。
上記透明電極から透明電極の周期は約0.4μmであった。この周期は、0.1μm以上の範囲が隣接層への熱拡散による記録状態の変化防止の面で必要であった。15μm以下の範囲がレンズの基板への衝突障害、収差などの光学的な問題が起きないのに必要であった。より好ましい範囲は0.2μm以上、2μm以下であった。0.4μm以下であれば、レーザ素子間隔を広げず、1チップアレーレーザをそのまま用いても光学的な問題が生じない。また、アレイレーザに素子ごとにほぼディスクの層周期に対応した段差を設け、レーザ素子を完全にディスクに正対(平行)させることもできる。
各層への電圧印加は層ごとに別の電源から行うこともできるが、次のようにすると電源数を少なく、かつ、低消費電力化できた。すなわち、図5に示したように、電圧印加は1台の電源から各層に順次間歇的パルス状マイナス電圧(固体電解質側がマイナス)を印加することによって行う。記録再生する層を選択する場合は、この順序どおり、あるいはこの順序を乱してでも記録再生に必要な時間幅だけプラス電圧を印加し、記録又は再生が終ったら次の層から、あるいは次にマイナス電圧をかけるはずだった層から順次間歇的マイナス電圧印加に戻す。電圧を除去した時の自然着色の速度は遅いので、間歇的マイナス電圧印加でも平均して高い透過率を保つことができる。図16は、本発明の多層ディスクの単一電源から各層への順次間歇電圧印加の他の方法を示す図である。記録層に、電圧を除去した時、5秒以下で急速に消色する材料あるいは層構成を用いた場合は、上記の間歇的マイナス電圧印加は必要ない。
各記録層は固体電解質層の上にもう一層加えた3層構成でも良く、3層構成の場合、例えば酸化発色型第1発色層であるIrOx又はNiOx(xは1未満の正の数)の層150nm,固体電解質層であるTa2O5の層300nm,還元発色型第2発色層であるWO3の層200nmの3層とする。また、2層の場合、例えばCr2O3より成るOHイオン貯蔵層200nm、IrOxより成る発色材料層200nmの2層である。なお、光入射側から最も遠い透明電極の代わりにW−Tiなどの金属電極を用いてもよい。エレクトロクロミック材料層を塗布によって形成する場合、積層によって少しずつグルーブが埋まり、記録層の両側の電極間距離はランド部の方がグルーブ部より近い。電解質層とは、水素、リチウム、ナトリウム、マグネシウムなどのプラスイオンを内部に安定に保持し、移動させられる層のことである。
エレクトロクロミック材料層に用いる材料としては、チオフェン系有機物のオリゴマーやポリマーなどの有機材料が好ましい。特に、導電性有機材料が好ましい。なお、例えばBaytronP(ポリエチレンジオキシチオフェン)のようなチオフェンの重合体の場合、レーザの波長は660nmとした。チオフェンの重合体は塗布又は真空蒸着又は電解重合によって形成する。電解重合では、モノマーとしてはチオフェン誘導体であるポリ(3−メチルチオフェン)を用い、支持電解質としてLiBF4、溶媒としてベンゾニトリルを用いる。一方、ポリアニリンを用いれば青色(波長400nm付近)レーザで大きな再生信号が得られる。
本実施例の記録層の層構成は、アクリル系紫外線硬化樹脂にLiトリフレート(正式名Liトリフロロメタンスルフォネート,Li trifluorometanesulfonate:CF3SO3Li)と可塑剤を混合した材料の固体電解質層、及びPEDT/PSSの層、すなわちpoly(3,4 etylenedioxythiophene)とpoly(stylene sulfonate) との混合材料よりなる電子活性導電性ポリマー発色材料層の2層である。
層構成の他の例は、Helmut W. Heuer氏らの、Advanced Functional Materials vol.12, No.2 pp89-94 (Feb. 2002) 記載の、electrochromic Window Based on conducting Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)-Poly(styrene sulfonate)の論文に着色制御窓ガラス材料として述べられている材料と層構成のうち、(CeO2)67(TiO2)33より成るイオン貯蔵兼暗電流ブロック層、Liトリフレート(正式名Liトリフロロメタンスルフォネート,Li trifluoromethansulfonate:CF3SO3Li)の電解質層、及びPEDT/PSSの層、すなわちpoly(3,4 etylenedioxythiophene)とpoly(stylene sulfonate) との混合材料よりなる電子活性導電性ポリマー発色材料層の3層である。チオフェン系ポリマーの層を形成する前に、チオフェン系ポリマーの端部にシアノ基(−NC)、チオール基(−SH)、S−アセチル基(−SAc)のいずれかを付ける処理を行えばさらに好ましい。チオフェン系ポリマーの長手方向がなるべく膜厚方向に向いて、膜厚方向の電流が流れやすいようにするためである。有機電解質層としてはポリエチレンオキサイド−チオシアン酸カリウム系も好ましい。
上記PEDT/PSS層の代わりに、Fei Wang 氏他著のMicromolecules vol.33 pp2083-2091(2000)のElectrochromic Linear and StarBranched poly(3,4-ethylenedioxychiophene-didodecyloxybenzene) Polymers の論文に記載されているエレクトロクロミック発色するポリチオフェン系ポリマー材料であるStar-branched poly(3,4-ethylenedioxychiophene-didodecyloxybenzene)(略称SPEB)を用いると、発色・消色が速く、良好な特性が得られる。電解質には上記電解質を用いる。
固体電解質層とエレクトロクロミック材料層との間に透明な酸化物などより成る誘電体あるいは半導体の層を設けると、Liイオンのバリア層の役割を果たし、Liイオンがエレクトロクロミック層に捕えられて固体電解質層側に戻って来ないなどの、着色・消色繰返し劣化要因を抑制することができる。例えば酸化クロムの厚さ10〜50nm程度の層を用いるのが良い。
電解質層と電子活性導電性ポリマー発色材料層は、チオフェン系ポリマー層を電界重合によって形成し、例えばLiトリフレートのようなドーパントを膜中に取り込んでしまうことにより、一層化することもできる。ドーパント濃度に膜厚方向の差を付けるのがよい。
これまで述べた有機材料層を用いる場合のメリットは、導電性が有り、導電率は温度上昇とともに高くなり、また、光導電性も持たせることができるのでフォトキャリアを電界によって加速し、温度上昇により着色を促進したり記録感度を高めることができること、WO3のように発色消色に膜中への水分の出入りを必要としないことである。着色は分子中に電子が取り込まれることにより正電荷によるポーラロンが消滅して励起状態とのエネルギー差が可視光のエネルギーに相当するようになることによって起こる。この電子移動を助けるためにLiイオン、水素イオン(プロトン)などのイオンが移動する。モノマー、又は数分子が結合しただけの低分子量のものを高速真空蒸着し、基板上でオリゴマーやポリマーにするのも好ましい。基板上でオリゴマーやポリマーにするには、真空蒸着中に青色又は近紫外光を照射して分子を励起状態にする。チオフェン系ポリマー(略してポリチオフェン)のほか、Lu−ジフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、ヘプチルビオロゲン、タングステン蓚酸錯体,スチリル系化合物である 3,3ジメチル-2-(P-ジメチルアミノスチリル)インドリノ[2,1−b]オキサゾリン(IRPDM)(光源波長5145nm)や3,3ジメチル-2-(P-ジメチルアミノシンナミリデンビニル)インドリノ[2,1−b]オキサゾリン、青色レーザ記録再生用としてポリアニリンとポリ(2−アクリルアミド−メタン−2−プロパンスルフォン酸(略称PANPS))との積層膜(D. DeLongchamp and P. T. HammondによるAdvanced Materials Vol.13, No. 19, 1455(2001)の論文に記載)なども使用可能である。さらに、光導電効果をもたせるために、TCNQ(7,7,8,8-Tetracyanoquinodimethane)の層を形成してもよい。これら有機物を用いる場合も、ディスクの他の部分は上記実施例と同様とした。
WO3に代わる無機物のエレクトロクロミック材料としては鉄のシアン化物であるプルシャンブルー(KxFeII yFeIII z(CN)6、MoO3,Nb2O5,V2O5,TiO2,NiOOH,CoOOH,Rh2O3,IrOx(xは1未満の正の数)、ZrNCl,InN,SnNx(xは1未満の正の数)、MnOx(xは2未満の正の数),WO3−MoO3複合(混合)薄膜なども使用可能である。これらの材料は保護層のWO3の代わりに用いることもできる。
エレクトロクロミック材料層に無機材料を用いた場合、固体電解質材料には既に述べたような有機材料と、以下に述べる無機材料の両方を用いることができるが、無機材料とすると、すべての層を一貫してスパッタリング、真空蒸着、電子ビーム蒸着などの乾式(真空)プロセスで統一できるというメリットが有る。スパッタリングが製膜の再現性が高く、特に好ましい。例えば、透明又は半透明電極の間に下記の積層膜のうちのいずれかを挟んだ構造とする。WO3−Ta2O5−IrOx,WO3−Cr2O3、WO3−MgF2、WO3−RbAg4I5、WO3−SiO,WO3−ZrO2,WO3−LiClO4,WO3−LiF,WO3−Na3Zr2Si2PO12(NASICON)、WO3−NaYSi4O12などである。これらは、株式会社サイエンスフォーラム、谷口よし雄編集「有機エレクトロニクス材料、現状・基盤技術・研究戦略」昭和61年8月30日第1版第1刷の85-86頁に記載の材料であり、Ta2O5を用いたものは産業図書株式会社、馬場宣良他編「エレクトロクロミックディスプレイ」平成3年の168-186頁に記載のものである。これらのWO3の1部又は全部をMO3など、上記の他の無機エレクトロクロミック材料で置き換えても良い。
これら、すべて無機物から成る積層膜を用いるのは、電圧伝達経路が本発明の構成以外の、電圧による層選択方式多層光ディスク装置に対しても有効である。
エレクトロクロミック材料では、電流によってLiなどの金属や水素などの陽イオンが所定の場所から動いてしまったり光スポット内の基底状態にある電子のほとんどが励起されてしまうと、自動的に光吸収が減ったり電流が流れにくくなるので、ディスク全体に大きな電流が流れたり、光スポット照射部分で過大な電流が流れて記録マークが大きくなりすぎるのが防止できる。すなわち現象としては、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加しながら光を照射すると、照射した場所付近の電流が増大し、光照射が終ってからも電圧を印加し続けた場合、一定時間後に電流が低下し、記録層(エレクトロクロミック層など)の状態変化が観測される。光照射中に自動的に電流が低下する場合も有る。
エレクトロクロミック材料は、電圧によって吸収又は反射スペクトルが変化するものであれば、現在エレクトロクロミック材料と呼ばれていないものでも良い。例えば、結晶で起きるフランツケルディッシュ効果のような効果を用いても良い。単結晶でも小型のディスクや記録媒体は作ることができる。ただし、吸収の少ない方の状態では光吸収が10%以下、より好ましくは5%以下のものを使うのが好ましい。
エレクトロクロミック材料の代わりにエレクトロルミネッセント(EL)材料とフォトクロミック材料の混合材料を用いても良い。EL材料が発する光によって、フォトクロミック材料の色が変化し、記録あるいは読出し光の波長に対して光吸収が生じるようにする。EL材料としてはZnOなどの無機材料や有機材料を用いることができるが、有機材料については、例えば豊田中央研究所R&DレビューのVol.33, No.2(1998年6月)の3-22頁の解説に述べられている有機EL材料のうち、ジアリルエテン、フルギドなどのフォトクロミック材料を変色させるのに発光波長が適合するものを当該フォトクロミック材料と組み合わせて用いる。これら有機材料の層の場合は、真空蒸着、気相成長、塗布などの方法で形成する。塗布の場合は溶媒で十分に希釈して、グルーブ部分とグルーブ間の部分で膜厚差が大きくなり過ぎないようにした。有機EL材料は電子又はホール輸送層材料と発光層材料と、効率を向上させたい場合はドーピング材料からなり、ホール輸送層材料としては、トリフェルアミンを星形分子にしたスターバーストアミン(m−MTDATA)膜厚60nm、発光層材料としてはベンゾオキサゾールZn錯体(Zn(BOX)2)膜厚40nmを用いて青色発光する。この発光した光は透明又は半透明電極で遮断され、他の層まで達しないようにするのが好ましい。
フォトクロミック材料としてはフルギド、ジアリールエテンなどが使用できる。フルギドの場合、青色光照射によって波長500nm付近に吸収が生じるので、波長514.5nmのKrレーザで記録可能である。
上記積層膜の上に紫外線硬化樹脂によるオーバーコート層を形成し、同様なもう1枚のディスクと張り合わせた。
波長660nmのレーザ光を照射しながら、図13に示すように記録又は読出しをしたい記録層の両側の透明電極に電圧を印加すると、その層だけが着色し、レーザ光を吸収、反射するようになるので、選択的に情報の記録や読出しができる。図14は、所望の記録層に電圧を印加するためのスイッチング回路のブロック図である。電圧印加は必ず1つの記録層だけに限定する必要は無く、アレイレーザで複数記録層に同時に記録する場合は、複数対の電極間に電圧を印加する。レーザ光源に、例えば4素子のアレイレーザを用いて同時記録した場合、データ転送速度を4倍近く高速化することができた。アレイレーザで複数記録層に同時に記録する場合は、複数対の電極間に同時又は順次間歇的に着色方向の電圧を印加する。また、記録しない記録層の電極間の電圧を0にしないで有限の値にしておけば、電極間容量や着色する材料の応答速度により、着色に時間がかかるのを防ぐことができた。
各層の透明電極から透明電極までの厚さを絞込みレンズの焦点深度程度の厚さにし、光吸収係数が奥の層ほど大きくなるように発色させると焦点位置を深さ方向に振って高密度記録するのに好都合である。また、各層の膜厚をもう少し薄くすると、ボリュームホログラム記録などに有利である。各層の光吸収係数をほぼ同じにして膜厚は薄くし、高パワー照射では奥の層まで、低パワー照射では入射側に近い層だけが記録されるようにして多値記録してもよい。
消色させる場合は逆電圧を印加した。記録時と再生時の各層の光吸収係数の分布を変えられるのも本発明の特徴である。記録時には、単層で測定した時の吸収率が光入射側から20%、30%、40%、50%と奥ほど大きくなるように各層のエレクトロクロミック材料濃度や各層への発色電圧印加時間を変え、再生時にはどの層も20%で均一とすると、Ag−Pd−Cu反射層で反射して来た光には各層の情報が均一に含まれるので好都合である。
全積層をいくつかにグループ化し、例えば本実施例の場合では4層を2層ずつのグループにして同一グループのエレクトロクロミック層は同時に発色、消色させるようにすれば、発色、消色に要する時間を短くすることができる。同一グループ内では上記のように光入射側から遠い層の方の光吸収率が高くなるように電圧や、エレクトロクロミック材料のアクリル系ポリマーなどでの希釈程度を調整すると、より良好な記録特性が得られる。
発色・消色に要する時間が記録・再生速度の制約要因にならないようにする他の方法として、光入射側から見て奥の層から順次発色させ、消色は手前の層から順次消色させるのが有効である。このようにすれば、1つの層の発色中に隣接する層に電圧をかけ始めて発色を準備することができ、スピードアップできる。また、透明電極の面抵抗によって着色、消色はディスクの引き出し電極側(本実施例では内周側)から順次起きるのでこれを利用するか、ディスクの半径方向を複数のゾーンに分けてゾーン毎に透明電極を分割し、例えば連続動画を記録する場合、記録の進行に大体合わせて着色や消色を行えば待ち時間を短縮できる。この場合は各ゾーンの透明電極間に絶縁層が必要になる。
記録はレーザ光、及び/又は電流の作用によって、膜のエレクトロクロミック作用を失わせ、電圧を印加しても発色しない、あるいは記録前と異なる吸収スペクトルを持つようにして行う。逆に発色が強まることにより記録されても良いが、電圧を0にするか逆電圧をかけた時は記録していない部分と光学的に同じ状態になって、記録が見えないようにする必要が有る。
エレクトロクロミック層又は固体電解質層が結晶−非晶質間、あるいは結晶−結晶間で相変化するようにして記録すると、書き換え可能性が期待できる。相によって着色又は消色速度が1桁以上違うようにできれば、電圧印加後どちらかの相にある領域だけ着色した状態で読み出すようにすれば、読み出し可能である。WO3などの無機材料の場合、非晶質状態の方がプラスイオンが動きやすく、速度が速い。
別の方法として、熱又は電流による物理的変化(相変化など)、又は化学変化(例えばLiイオンとの反応)によって屈折率、消衰係数のうちの少なくとも一方が変化する有機、あるいは無機材料の層を別の層として積層し、この層の変化によって記録を行ってもよい。例えば、相変化記録膜として、In50Se45Tl5の組成のものを用いると波長780nmあるいは660nmの光、特に波長780nmの光に対して透過率が高いので好ましい。記録時にはエレクトロクロミック材料層の光吸収によって間接的に加熱される。エレクトロクロミック材料層は材料によって大小が有るものの光導電性を持つので、フォトキャリアの電流による加熱効果も生じる。相変化記録層を設けた場合は、加熱により、相変化記録層は結晶化、あるいは非晶質化の相変化を起こす。相変化記録層は屈折率が高いので界面での反射を防ぐために透明電極層の膜厚を反射防止効果を持つように選ぶのが良い。相変化による屈折率変化がエレクトロクロミック層の着色時に特に反射率差として見えやすいように光学設計しておくことにより、多層の記録膜のそれぞれをほぼ独立に読み出すことができる。
また、さらに別の方法として、熱又は電流と磁場によって磁化の方向が変化する磁性材料をエレクトロクロミック材料又は固体電解質材料に隣接して記録層として形成してもよい。例えば、ガーネット等の透明光磁気材料が考えられ、温度が上がるとカー回転角の差が大きくなる設計をする。
透明電極から透明電極までの光学的膜厚が読み出し光の波長に対してほぼ1波長又はその整数倍分になるようにすると、どの記録層も光学的に等価となるので好ましい。
(透明電極の他の例)
透明電極の材料としては、(In2O3)x(SnO2)1−xの組成で、xが5%から99%の範囲の材料、抵抗値の面でより好ましくは、xが90%から98%の範囲の材料、これにモル%で50%以下のSiO2を添加したもの、SnO2にモル%で2から5%のSb2O3などの他の酸化物を添加したもの、などの既知の透明電極材料が使用可能である。
さらに、記録層間の透明電極を2層に分けてその間の断熱層を設け、断熱層も有機材料とすれば上記と同じ理由で光学的に好ましい。断熱層は導電性が有っても良いが、無い方がより好ましく、アクリル系オリゴマー、ポリマー、金属フタロシアニンの真空蒸着膜など、多くの材料が使用可能である。ZnS−SiO2などの無機材料を用いてもよい。この他、電流や予熱レ−ザービームによる昇温で吸収端が変化する導電性有機材料層を用いてもよい。
シート抵抗が大きいことがあまり問題とならない小型の記録媒体では、透明電極もポリアセチレン、ポリチオフェンなどの導電性ポリマーで形成することが可能である。その場合、無機物透明電極に比べてエレクトロクロミック層との屈折率差が小さく、界面で反射した光の干渉などの悪影響を避けることができる点で好ましい。下地層として疎水性表面処理剤、シランカップリング剤、又は平均0.5〜3nmの膜厚の薄い銅族元素(Cu,Ag,Au)層を設けても良い。
(基板の他の例)
本実施例では、表面に直接、トラッキング用の溝を有するポリカーボネート基板77を用いているが、トラッキング用の溝を有する基板とは、基板表面全面又は一部に、記録・再生波長をλとしたとき、λ/15n(nは基板材料の屈折率)以上の深さの溝を持つ基板である。溝は一周で連続的に形成されていても、途中分割されていてもよい。溝深さが約λ/12nの時、トラッキングとノイズのバランスの面で好ましいことがわかった。また、その溝幅は場所により異なっていてもよい。溝部とランド部の両方に記録・再生が行えるフォーマットを有する基板でも、どちらか一方に記録を行うフォーマットの基板でも、間歇的にトラッキング用サーボマークを設けたサンプルサーボフォーマットの基板でもよい。グルーブのみに記録するタイプでは、トラックピッチが波長/絞込みレンズのNAの0.7倍付近、グルーブ幅がその1/2付近のものが好ましい。
厚さ20〜40μmのスペーサー層を多層記録層の数層毎(例えば5層おきで、ビーム数、又はビーム数−予備照射ビーム数に一致させるのが特に好ましい。)に挟んでもよい。スペーサー層にはニッケルスタンパーからトラッキング用のグルーブ、ピットのうちの少なくとも一方を含む凹凸パターンを転写してトラッキング信号やアドレス、クロック、同期信号などの検出に用いるのが良い。スペーサー層に転写したパターンの上にエレクトロクロミック材料か固体電解質材料を薄く塗布して、層の厚さが凹部で厚く、凸部で薄くなるようにして、エレクトロクロミック材料層と固体電解質材料層の両方を塗布して透明電極層で挟まれた構造とした時、正電圧を印加すると凹部が強く着色するようにしてアドレス信号などを検出できるようにするのも好ましい。この場合、スペーサー層を2層以上用いる場合は、光学系に球面収差を補償する素子を設けた方が良い。
記録・再生光を張り合わせ基板側から入射させる場合、張り合わせ基板を0.1mm程度に薄くして、絞込みレンズのNAを0.85と大きくしても良い。そうすればトラックピッチは約3/4程度にできる。
なお、光導電体層を別途設ける場合は、記録層と光導電体層との間には相互拡散・反応を抑制するため、導電体層(金属層や透明電極層)を極めて薄く設ければ、繰返し書換え時に信頼性が増す。ただし、光導電体層で発生したフォトキャリアが突き抜けるように、1nm以上10nm以下の平均膜厚にする必要がある。縞状や網目状の不連続膜であっても良い。例えば記録層と光導電体層との間に厚さ5nmのAlあるいはW80Ti20の電極層を設ける。真空蒸着によるAl層を記録層形成後で透明電極のスパッタリング形成の前に付けると、有機材料をイオン衝撃から保護する効果も得られる。
記録領域の透明電極は、ディスク全体が一電極でも複数の扇形透明電極に分離するか、半径方向に同心円状に分離するか、その両方を行ってもよい。電圧をこれらの電極間に面内方向にかけて着色させてもよい。分離した方が電極間容量が小さくなるので、電圧の立上り、立下りが早くなって好ましい。発色、消色に要する時間と電流が実用的な範囲であるために電極間容量は0.1F以下が特に望ましいが、素子の特性が良好であるためには、0.01F以上となる構造とするのが良い。対となる透明電極のうち一方の透明電極は複数に分離せず、一方を分離してもよい。また、上下の両電極を分離してもよい。この場合、上下の電極の切れ目の位置は一致していても良いが、一致していなくてもよい。各層の透明電極は、形成時に内周マスクを少しずつ大きくして行って、各電極が同心円状に内周部に露出するようにした。
各透明電極は基板から遠いほど少しずつ内径が大きくなっていて、例えば一番基板に近い透明電極は一番内側にリング状に露出しており、この部分から電圧を印加できるようになっている。その上の透明電極は、それより少し大きい直径でリング状に露出している。
この露出部分にはその半径方向の幅より少し狭い幅(例えば90%)でリング状の金属部分を設けて導電率や機械的強度を増強すれば、製造コストはやや上昇するが、性能面で特に好ましい。別の方法として、反射層兼電極と上記透明電極には、それぞれの最内周部に放射状の引出し電極を設け、この引出し電極はディスク最内周部まで達しており、記録再生装置のディスク回転軸上のそれぞれ別の電極に接続するため、ディスク中心穴の端面の複数の電極に接続してもよい。この引き出し電極と、そのすぐ外側の半径方向に幅1〜5mmの円周上の透明電極に、金属層を重ねて形成して面抵抗を下げるのも好ましい。ディスクを置いた時、回転軸上のディスク受け部分の各電極がディスク側の引出し電極、又はそれに接続した電極に接触する。中心穴の端面の電極と接触させる場合は、接続すべき電極同士を対応させるため、凸部と凹部の組合せなどによる、ディスク回転方向の位置合わせが必要である。同心円状透明電極から張り合わせ基板貫通電極を経て張り合わせ基板の表面に設けた同心円状金属電極に接続し、それに接続させる方法は、位置合わせが必要無い点で好ましい。しかし放射状透明電極の場合でも、放射状電極の位置と、張り合わせ基板の基板貫通電極との位置を合わせて張り合わせ、張り合わせ基板の表面側(張り合わせ後外界に面する側)の電極は同心円状とすれば、ディスクをドライブ装置にセットする時は位置合わせが必要無くなる。
図2に示したように、張り合わせ基板の内周部はプリント基板のように金属ピン(細い金属円筒、又は金属線)が貫通していて、両面に透明電極の数に対応した同心円の金属層が形成されており、金属ピンが表面と裏面の対応する電極を接続している。記録層を有する基板に貼り付ける側は、通常のプリント基板では表面の金属配線にハンダメッキされているが、この場合は導電性粘着テープ層又はInなどの低融点金属、又は合金の層を形成しておく、導電性粘着テープはベースフィルム、粘着剤の少なくとも一方に金属粉、炭素粉、金属メッシュなどの導電性材料を混合したものである。In、あるいは低融点合金は撮像管のフェースプレートの圧着に使われていたように低融点で柔らかいので、記録層を有する基板に押し付けると変形して透明電極に接着する。100度付近まで昇温して圧着すればさらに柔らかくなり、圧着が容易になる。このようなディスク構造にすると、確実に、均一に、再現性、信頼性高く電気的接続を行うことができる。ディスク内周に引き出した透明電極の同心円状部分や張り合わせ基板の表面の同心円状電極のそれぞれは必ずしも円(円環)状でなくてもよく、円周方向にも複数に分割してもよい。この場合、ディスクを回転軸にどのように取り付けても所定の電圧がかかるように、記録層を挟む対の透明電極に対応する2つの電極は図22に示したように内外方向に位置が揃うように配置した。
このディスクは、DVD−RAMなどの従来の光ディスクドライブ装置と同様なドライブ装置に装着される。ただし、ディスクへの電圧伝達機構だけが追加される。本実施例では電圧伝達機構はボールベアリング又はスリップリングとした。スリップリングとは、回転軸側のリング状金属と静止側のブラシと呼ばれる短冊状金属の組合せである。ボールベアリングには導電性のグリースを用いた。電圧伝達機構はディスク回転モータのディスク側、あるいはディスク回転モータの外側(周囲)、あるいはディスク回転モータのディスクとは反対側に設ける。
図3に示したように、ディスク回転軸31の内部又は表面には上記電圧伝達機構から回転軸先端に向かう導線21が有り、上記導線は回転軸の先端手前でディスクの内径より内側を通って回転軸の先端の、ディスクの電極数に対応した電極25に接続されている。この電極は図では回転軸の先端の回転軸の中心線に直交する平面か円筒状、又は円錐筒状の回転軸の先端の側面に設けられていて、ピン状であるか、同心円状、同心円筒状、あるいは同心円錐台筒状であっても良い。ドライブ装置側にはボールベアリングを経てバネによってドライブ装置に固定され、ディスクを回転させる時ディスクを押えて回転軸と一緒に回転するディスク押え23があり、ディスク押えは小円板とその外側のリングとからなる。小円板とリングとは120度ずつの3ヶ所で別のバネ材によって接続されている。小円板には回転軸頂部のピン電極又は同心電極に対応した同心電極又はピン電極が有り、リングにはディスク内周部の基板表面の同心円状電極に対応したピン電極が形成されている。小円板とリングは一体としても良い。一体としない場合は、対応する電極同士上記の120度ずつの3ヶ所のバネのいずれかを通る導線で接続されている。
ディスク回転軸の各電線には複数のブラシとリングとの組合せ(通称スリップリング)の電圧伝達機構により記録装置の回路基板より給電した。ブラシ(単なる短冊状金属板あるいはその多数の集合体でもよい)とリング部分の回転軸直径(リングの外径)は3mmとした。各リングからは回転軸内をディスク受け部分に向かって各リングからの配線が上がっていく。ディスク回転モータの回転軸表面付近を通って、5層までの多層ディスクに対応できるように6本の分離した電線が上記ディスク受けの電極に接続されている。ディスクがドライブ装置に挿入されると、ディスク載置部24に載置されたディスクに対してディスク押えが上から下りてくる機構になっており、まずリング部分がディスク内周部を押さえつけ、この時、対応する電極同士が接触する。次に上記120度ずつの3ヶ所のバネで少し持ち上がっている小円板が回転軸頂部に押し付けられ、対応する電極同士が接触する。これによってディスク押えを介してドライブ内の静止電極とディスク上の各電極が接続される。小円板にも中心部に穴が有ってリング状になっていてもよい。
ブラシとリングの場合、その部分の回転軸をできるだけ細くし、直径5mm以下、より好ましくは3mm以下として、線速度を小さくすれば、磨耗を抑制することができ、長寿命化できる。直径は、0.5mm以上5mm以下が好ましく、1mm以上3mm以下が特に好ましい。細過ぎると機械的強度が不足し、ブラシの磨耗もかえって速くなる。太過ぎると、磨耗のために寿命が1年未満となる。この場合、その部分に回転方向以外の力がかからないよう、その部分の上下(横置きの場合は左右)を軸受けで支える構造とするのも好ましい。ブラシは、1電極ごとに独立としても良いが、ここでは6本をまとめて1枚のバネ板状とした。このようにまとめる方法では、50電極程度の多数電極になっても相互干渉無く安定に動作できる。
ブラシとリングとの組合せの代わりにボールベアリングを用いてもよい。ただし小型化は難しくなる。ボールベアリングにはカーボン又はAu、あるいはAgなどの金属の微粉を混合して導電性としたグリースを充填して導電性を向上させた。ブラシとリング(スリップリング)の場合、記録及び/又は再生装置の通常の稼動状態でディスク回転軸が回転している間常に摺動していたのでは磨耗により、磨耗粉が多量に出たり、寿命がもたない。従って、消色・着色が必要な場合だけ摺動させて、それ以外ではリングとブラシを離しておくようにするのが良い。電圧0でも多少着色しているので、読み出し時、あるいは記録時の少なくとも一部の時間ではリングとブラシを離しておくこともできる。ディスクをドライブ装置に入れる時、ブラシ又はブラシ群(例えばポリエチレンテレフタレートなどの絶縁性のベースシート又はテープ上に複数の長い短冊状(細いテープ状)金属を所定の間隔で並べたもの)は長手方向がディスクの移動方向にほぼ平行で少し離れた状態にしておき、ディスクが所定の位置に固定され、記録・再生が必要になったとき、ブラシ群とリング群との少なくとも一方を相手の方に動かして接触させるようにするのが良い。消色・着色が必要な場合だけブラシ群とリング群を接触させるのも同様にして行う。ノート型パソコン用CD−ROM装置のようにモータや光ヘッドを含むディスク駆動部分が引出し状になっていて引き出せる場合、引出しを押し込むとブラシ群をリングが押すようになって接触しても良い。
このようにブラシ群とリング群がついたり離れたりするとき、各ブラシと対応する各リングの位置がきちんと合うように、端部の1本又は2本のリングを位置検出用に用いるのが好ましい。ここでは図18のブロック図に示すように、ブラシとリングとの間の静電容量を検出してサーボをかける方式を用いたが、他の既知の検出方法でも良い。位置ずれを検出したらブラシをディスク面に直角方向に動かすサーボをかけて相対位置を修正する。
また、ブラシ群は時間の経過とともに少しずつ繰り出す又は引き込むようにして、リングとの接触位置を変える制御機構を設けると長寿命化できる。図7に示したようにブラシ群73がテープ状(あるいはベルト状)になっており、テープレコーダーのテープのように一方の軸71から他方の軸72に極めてゆっくり、又は間歇的に巻き取ってテープレコーダーの磁気ヘッドに相当する位置にあるリング70との接触位置を変えて行くと、さらに長寿命化できる。74は円筒状に積層したリングにテープ状ブラシ群を押し付けるためのローラー(キャプスタン)である。このようにブラシ側のリングとの接触位置を変える場合は、リングを磨耗しにくい金属、例えばタングステンあるいは既知の耐摩耗性金属から形成し、ブラシを柔らかい、あるいは磨耗しやすい金属あるいは半導体、例えば銀、銅、あるいはアルミニウムなどの材料から形成するのが望ましい。また、テープのベース素材表面に粘着性を持たせ、磨耗粉が付着するようにすると記録・再生装置内に磨耗粉が広がるのを抑制できる。テープを、ベース素材を用いず、細長い電極と細長い絶縁材を交互に接着し積層したものとしてもよい。一方の巻取り軸72には別のスリップリングが有り、ブラシ群75を経て電圧が供給される。ブラシ群75は巻き取り軸でなくキャプスタン74の一方に接触させてもよい。この場合テープは上記の積層型のように両面に電極が露出したものとし、キャプスタンに積層円筒状電極を設ける。接触するキャプスタンは回転軸での摩耗粉の悪影響を避けるため、テープ送りの後方に位置するキャプスタンを利用する方がよい。各ブラシ(長い短冊状電極)には電線76が接続され、パルス電源から電圧が印加される。ブラシ、リングの少なくとも一方は極めて微小な孔を持ち潤滑材を含浸させられるとさらに好ましい。
このようなブラシ・リングの組合わせは他の電圧印加光ディスクを用いる場合や、図3の構成で回転モータに関しディスクと反対側の位置に電圧伝達機構を設ける場合、モータとディスク受けとの間に設ける場合、他の構成の記録・再生装置、例えばブラシ・リングの組合わせ−回転軸−ディスク受け部分−ディスクへと電圧を伝達する装置に用いる場合にも長寿命化効果が有る。すなわち、上記電圧伝達機構はディスク回転モータのディスク側に有っても、反対側に有っても良い。図21に示したような反対側の場合はモータ下部にスペースが必要である。
上記のうち記録媒体部分の要点をまとめると、記録媒体は、光照射によって情報を記録する情報の記録媒体であって、基板上に、少なくとも電圧印加によって光吸収又は反射スペクトルが変化する材料の層(単一又は複数の層)を透明又は半透明電極で挟んだ単位構造を2層以上積層し、ディスク内周部にこれら透明電極、あるいは透明電極から延長した電極の端部が同心円状又は放射状になるように形成されており、さらにその上に別の基板が貼られていることが特徴である。少なくとも一方の上記基板の一部に、基板を貫通又は基板の中心穴付近を迂回して反対側の表面に達する複数の金属ピンを設け、当該基板の表面側に同心円状の電極を設けるのが良い。上記同心円状の電極のそれぞれが連続ではなく、複数の電極がそれぞれの円の上に配列されたものとしても良い。これら複数の電極を同電位とせず、それぞれ記録領域の別の透明電極に対応させてもよい。上記電極が張り合わせる相手側基板の電極やドライブ装置側の電極と接触する部分には金属又は炭素の微粒子を含む材料を塗布又は貼り付けて補強するのがさらに良い。
本実施例の第1の変形例として、図4に示したように、記録媒体に凹凸の形で予め情報が与えられているか、光などのエネルギーを記録媒体に与えることによって情報を記録する情報記録装置であって、ディスク受けの同心円上に配置されたバネ内蔵ピン電極41から回転軸先端に向かう導線40、上記導線を回転軸の先端の、ディスクの電極数に対応した同心円状又は同心円筒状又は円錐台筒状の電極49に接続する手段、ディスクの電極数に対応した回転する同心円筒状又は同心円錐台筒状の電極に装置側の複数の電極47を接触させる手段、ディスクを回転させる時ディスクを押えて回転軸と一緒に回転するディスク押え手段44からなる情報記録装置としても良い。着色制御方法、記録方法などは上の例と同様である。この場合、電圧はドライブ静止部分−ディスク押え近傍−ディスク下面へと伝達される。
ディスク受けの内部を通って、5層までの多層ディスクに対応できるように6本の分離した電線(うち3本だけを描いてある)40が上記ディスク受けの電極に接続されている。各電線が、上記の同心円の各円周上に位置するピン電極に接続されている。ディスク回転軸の各電線には複数のブラシとリングとの組合せ(通称スリップリング)の電圧伝達機構により記録装置の回路基板より給電した。ブラシ(短冊状金属板あるいはその多数の集合体)とリング部分の回転軸直径(リングの外径)は3mmとした。各リングからは回転軸内をディスク受け部分に向かって各リングからの配線が下がっていく。ブラシとリングの詳細については上記と同様で、ブラシを巻取り方式としても良い。上記ディスクの同心円状の電極のそれぞれが連続ではなく、複数の電極がそれぞれの円の上に配列されたものとしても良い。上記電極が楔状の金属片を打ち込んだものとしても良い。上記電極が金属又は炭素の微粒子を含む材料を塗布又は貼り付けしたものとしても良い。
また、本実施例の変形例として、図11に示すように、回転軸を駆動するモータの下部に、複数のブラシとリングとの組合せの電圧伝達機構を設けて、記録装置の回路基板より給電するようにしてもよい。
ディスク受け部分の構造の例は、図8に示したように、ディスク受け80に設けた同心円81上に位置するバネを内蔵する複数のピン電極、ディスク受けの各ピン電極のうち同心円状に有る4本からの導線をそれぞれまとめて回転軸先端83に向かう導線を有するものとする。1つの同心円上のピン電極は4本以下、例えば1本でもよい。
また、さらに、本実施例の別の変形として図6に示したように下記のようにしても良い。記録媒体に凹凸の形で予め情報が与えられているか、光などのエネルギーを記録媒体に与えることによって情報を記録する情報記録装置であって、ボールベアリングなどの回転保持機構62を経てバネ68、によってドライブ装置に固定され、ディスクを回転させる時ディスクを押えて回転軸と一緒に回転するディスク押え手段63、上記ディスク押え手段は上記ボールベアリングなどの回転保持機構を通してドライブ装置の静止部分に電気的に接続されており、上記ディスク押え手段に設けられたディスクの同心円状電極65に対応した同心円上のバネ内蔵ピン電極59、上記ボールベアリングなどの回転保持機構の各部分と対応する同心円状電極を電気的に接続する手段(導線)58、ディスクがドライブ装置に挿入されると、上記ディスク押えをディスクの方に移動させ、上記ディスクの同心円状電極に接触するように制御する手段を有する情報記録装置である。着色制御方法、記録方法などは上の実施例と同様である。上記同心円状の電極のそれぞれが連続ではなく、複数の電極がそれぞれの円の上に配列されたものとしても良い。上記電極が楔状の金属片を打ち込んだものとしても良い。上記電極が金属又は炭素の微粒子を含む材料を塗布したものとしても良い。
この場合、電圧はドライブ装置静止部−ディスク押え−ディスク上面(すなわちディスク回転モータとは反対側の面)へと伝達される。従って製膜する基板はモータ側、すなわちディスク受け側となり、通常、光ヘッドはディスクに対してディスク回転モータと同じ側に配置されるので、この場合は接着層を通してではなく、直接基板越しに記録・再生することになる。全層をスパッタリングや真空蒸着で形成し、溝形状が上方の層まで受け継がれる場合は、この方が接着剤の厚さムラの影響を受けにくく、望ましい。
有機材料の場合は、塗布すると基板の凹凸パターンが埋まるのでディスク押え側の基板に製膜し、基板を貫通した金属ピンを相手側の基板の透明電極、あるいはその延長電極に接触させるのではなく、貫通した金属ピンの付近まで透明電極、あるいはその延長電極を付けて導電性ペーストなどでディスク上の電極とピン電極をつなぐ必要がある。
図22のような同心円をさらに円弧に分割した電極配置の場合は、ディスク載置部又はディスク押さえ部のどの電極がディスク上のどの層の電極に対応するように取り付けられたかを透明電極の引き出し長さによる抵抗値や静電容量やフォーカス誤差信号の違いによりドライブ装置側で検出するのが望ましい。
ブラシ群とリング群は図6の位置の他、回転軸内に入り込んだ図20の位置にしてもよい。この場合、リング群の円筒はアームに固定して静止させ、ブラシ群が回転軸とともに回転する。電圧はドライブ装置静止部−ディスク押さえの一部のリング群−ブラシ群−ディスク下面へ伝達される。図11及び図21に示したモータ下部に電圧伝達機構が来る場合でも図20のように静止側にリング群、回転側にブラシ群を設ける構成は可能である。
ディスク内周部は単板構造としても良く、この場合は、ディスク上の透明電極層、あるいはそれを補強したものに直接ディスク押え、あるいはディスク受けの電極を接触させる。Blu-rayディスクのように、厚さ1.0mmから1.2mmの厚い基板を用いる場合は、内周部分に厚さ0.1mm程度のカバー層が無くても強度的にも問題無い。0.1mmのカバー層はもう一方の基板と見なすこともできる。
ドライブ装置の静止部分から回転部分への電気的接続は上記のような接触する方法以外に、発光ダイオード又はレーザと受光素子との組合せ、コイルの組合せでも良い。ただし、電流が十分に供給できない場合は、複数組を配置する必要があり、ドライブ装置内で一定の体積を占める。
本発明では、基板の凹部で溝となっている部分をグルーブと呼ぶ。グルーブとグルーブの間をランドと呼ぶ。光が基板を通して膜に入射する場合は、入射側から見てグルーブは凸に見える。このため、光を基板と反対の側から入射させる方式でも、同様に入射側から見て凸となっている側がグルーブと呼ばれる場合も有る。この部分は、基板だけに注目したときは凸部であってグルーブとグルーブの間のランド部分であるから、この呼び方は本発明の定義とは逆ということになる。ランドとグルーブの一方だけに記録する、いわゆるイングルーブ記録の場合、光入射が基板側からの場合も基板と反対側からの場合も光入射側から見て凸部に記録した方が記録特性が良い場合が多いが、大きな差ではないので光入射側から見て凹部に記録しても良い。
記録・再生レーザ光は、張り合わせ基板側から入射させるのを標準とした。基板表面に金属反射層を設けず、最上部にグルーブ等の凹凸の転写層を設け、必要が有れば金属反射層を設けて、基板側からレーザ光を入射させても良い。
本実施例はすべてディスクについて述べたが、回転しない静止記録媒体であっても良い。その場合、レーザ光の方の位置を変える。同心円階段状の電極露出は、直線的階段状の露出となる。
静止記録媒体を用いる装置として、記録媒体に凹凸の形で予め情報が与えられているか、光などのエネルギーを記録媒体に与えることによって情報を記録する情報記録装置であって、上記記録媒体が少なくともエレクトロクロミック材料層を透明又は半透明の2つの電極間に有するものを2組以上積層したものであり、記録媒体は静止しており、記録媒体側の電極と電源とが絶縁物カバーの内部に複数の金属接点を内蔵するコネクターによって接続されていることを特徴とする情報記録装置としても良い。
(記録・消去・再生)
上記記録媒体に対して、情報の記録再生を行った。以下に、本情報記録再生の動作を説明する。まず、記録再生を行う際のモータ制御方法としては、記録再生を行うゾーン毎にディスクの回転数を変化させるZCLV(Zoned Constant Linear Ve1ocity)方式を採用したものについて述べる。この後詳細を述べるマルチレーザビームを用いる場合の予熱、予備照射の効果が一様であるためには、ZCLV方式が最適であった。記録は、元のディジタル信号を8−16変調し、さらに1つの記録マークを長いマークほど多くのパルスより成るマルチパルス記録波形にして記録した。
(マルチビーム記録)
本実施例では、マルチビームを集光した各光スポットが、それぞれ別の層上に焦点位置を有するようにレーザの設置角を含めて光軸を傾けるか、あるいは実効的レーザ光出射位置に差を付ける。これによって各記録媒体上では通常の記録を行えばよい。マルチビームの光源は個別レーザでもアレイレーザでも良いが、特に4ビーム以上ではアレイレーザが好ましい。いずれか1ビームをグルーブやピットの形状が整った層に焦点合わせして基準ビームとし、それから各ビームの相対位置を決めるのが望ましい。
4ビーム同時記録で従来の相変化追記型4層記録媒体の場合、層間クロストークを防ぐために層間隔が大きいので、光軸を大きく傾ける必要が有り、収差によって集光しにくい、レンズがディスクにぶつかる、という問題が生じる。例えばビーム間隔が100μmのレーザアレイの場合、層間隔が20μmだと傾き角は1/5となる。また、層間隔を決める各スペーサー層の厚さを100nm以下の精度で均一にするのも極めて難しく、フォーカスズレの原因となる。各チップの出射面に層間隔に対応する段差を付けることはいずれの場合にもディスク面とレーザビームを直角にするのに有効であるが、段差を大きく高精度で作るのは困難である。また、各層の光吸収のために記録感度が低く、パワー不足で記録速度が遅くなる可能性がある。
しかし、電圧層選択方式多層記録媒体の場合は、相変化記録媒体の上記の問題点を解決できる。まず、層間隔は0.1μm(100nm)以下であれば、照射ビーム間隔10μm程度に対して、傾斜角は十分小さい。但し、ここでは層周期を約300nmとした。
本実施例では通常の1チップアレーレーザを用いるが、アレイレーザの各レーザチップを切り離し、シリコン基板上でチップ間の間隔を離して接着するのも好ましい。光スポット間隔(照射ビーム間隔)は、コリメーターレンズ(NA0.1程度)と絞込み(集光)レンズとのNA比によって、ビーム間隔の約1/8程度になるので、レーザ素子間隔を広くした方がディスク上でのスポット間隔を広げ、ビームの入射傾きを小さくし、下記のメカニズムによる予備加熱着色の時間を稼ぐことができる。しかし、間隔を広げ過ぎると1つのレンズで集光する場合、両端のビームに収差が出るなどの問題点が生じる。1つのレンズに入るビーム数を5とすると、両端のビームの収差を十分小さく抑えるために、NA0.85では出射ビーム間隔50μm以下であるのが特に好ましい。NA0.6付近では70μm以下が特に好ましい。ビーム間隔を詰めることによって斜め入射の影響で収差が出るようであれば、レーザの出射部に階段状のガラスあるいは石英を置いて光路差をつけるようにするのがよい。本発明の場合、1層分の厚さの訳100倍で約40μmの段差となり、高精度機械加工しやすい。
電圧層選択方式多層記録媒体は、光吸収が少なくても記録できるのでビーム本数に対応する層を着色させて記録しても良いが、さらに高速記録する場合は、図9に示したように次のようにして制御する。図9において、91はエレクトロクロミック材料層、92は透明電極、93,94は基板である。まず一番先行してディスクに当たる第1ビームに対応する1番奥の層を電圧印加により薄い着色状態にしてオートフォーカス、トラッキングは可能で、レーザ光を照射しても記録状態は変化しないようにしておく。記録状態が変化しないようにするのが難しい場合は記録を行わないダミー層としても良い。この場合一番先行するビームはパワー変調せず、連続的加熱専用とする。この層から数えてビーム本数までの層は完全焦点位置ではないが光パワー密度が高い範囲内に存在するので、前もって通常の着色時より高めの電圧のパルス電圧印加を行うか、一番奥の層とほぼ同時又は僅かに遅れて低い電圧印加を開始し、少し着色させておき、先行ビームの照射により予備照射される。記録媒体は予備照射により着色が加速され、急速に光吸収が増加するので、第2ビームにより奥から2番目の層が照射されるときには十分な吸収量となる。記録トラックはらせん状であるから、第2ビームは第1ビームが照射されてからディスクの数回転後にディスク上の同じ場所に当たるように配置すれば、予備照射後十分着色するまでにms単位の時間を要する記録媒体であっても、十分着色した状態で第2ビームが照射される。3回転待てば0.1秒程度(正確にはrpsで表した1秒間の回転数の逆数×3)の待ち時間になるので、電圧印加だけで1秒で着色する材料であれば予備照射による1桁の着色加速で十分着色させられる。すなわち、外周方向をプラス方向として先行ビームの光スポット位置に対して次のビームの光スポット位置がプラスマイナス ビーム数×3トラック以内であれば効果が大きいことになる。
多数回転待ち過ぎる場合は、予備照射の効果がなくなるし、ビームスポット間隔が広くなり過ぎ、ウエハ当たりのレーザ個数が減ってレーザ価格が高くなってしまう。しかし100μmピッチのレーザアレイの場合スポット間隔20μmまでの可能性は有り、例えばトラックピッチを約0.6μmとすれば33トラック離れ、すなわち33回転待ちまでは可能性が有ることになる。第3、第4ビームについても同様である。このようにして目標の層だけ十分に着色した状態で記録・再生を行う。記録は高パワーレーザ照射した場所だけ熱によって着色機能が失われることによって行われた。
予備照射の効果以外に、透明電極の面抵抗による内周から外周への着色や消色の遅れを利用することもできる。この場合は着色や消色のフロントが直径120mmのディスクの最内周から最外周に動くのに1秒程度の時間がかかるので、例えば回転速度が30rpsの場合1回転の間に1mm程度着色や消色のフロントが進むことになる。ある半径上の点で上記の最大スポット間隔20μmで隣接する層間で着色と透明の差を付けるには、1/50秒間隔で着色電圧をかけ始めれば良いことになる。ビーム数より層数が多い場合は、他の層に記録・再生するにはビーム本数分層をジャンプして同様に記録を行う。
予備加熱及び/又は予備照射により着色が加速されるメカニズムについて、もう少し詳しく述べる。そのためには、まず着色のメカニズムから述べる必要が有る。各記録層は基本的に2層又は3層から構成され、図15に示すように、主要な役割を果たしているのは固体電解質層とエレクトロクロミック材料層である。固体電解質層は、最初は電解液であったのを固体化したものであり、その動作は液体電解質で考えると考えやすい。
エレクトロクロミック層内ではポリエチレンジオキシチオフェン分子は相対的に高分子量のポリスチレンスルフォン酸(PSS)分子のところどころについた状態であり、電解液内のLiがイオン化してプラスに帯電するのに対応して、ポリスチレンスルフォン酸分子はポリエチレンジオキシチオフェン分子から電子を奪ってマイナスに帯電する。ポリエチレンジオキシチオフェン中には正電荷が生じ、ポーラロン、バイポーラロンが形成される。ポーラロン、バイポーラロンが形成された分子は可視域の光吸収がほとんど無くなる。電解液側の電極をプラス、エレクトロクロミック層側の電極をマイナスにして電圧を印加すると、電解液中のLiイオンはエレクトロクロミック層側に動いて層の表面に集まる。一部のLiイオンはエレクトロクロミック層内に入り込む。エレクトロクロミック層側の電極からは電子が注入されるので、エレクトロクロミック材料層内の電子濃度は高まり、電子がポリチオフェンジオキシチオフェン分子の正電荷と結合する。これによって着色が起こる。PSSに捕えられていた電子は、一部がLiイオンに引かれて電解液方向に出て行く。
この着色過程において光が照射されてフォトキャリアが生成され、かつエレクトロクロミック層の温度が上がると、ホッピング電導の導電率が上昇する。そうすると電子注入は大幅に高速化し、フォトキャリアとして電子も生成するので、着色が大幅に促進される。この現象を利用したのが先行ビームによる予備照射である。ホッピング伝導、又は半導体的伝導であることや、光伝導性が有ることが知られている材料であれば、本実施例で述べた材料以外でも同様な効果が得られる。無機エレクトロクロミック材料の多くは半導体的で、光導電性も有る。
温度上昇、フォトキャリアに起因する導電率上昇による色変化速度の向上が不十分な場合でも、別の予備照射効果として、温度上昇による吸収端の変化を利用することもできる。両方の効果を利用しても良い。通常、温度が上昇すると有機高分子は分子の平面性が保たれず、時間平均的に3次元的な変形が生じて、光吸収端が動く場合が多い。この効果によっても、予熱効果によって着色、又は消色が高速化する。温度上昇による吸収端の変化は、可視域では透過率が上昇する方向に動く場合の方が多い。基底状態に存在する確率が下がったり、ポリマー分子の平坦性が失われて吸収が減少したり、電子を放出することによって吸収が減少する分子が、逆の場合より多いことによる。温度が上がっている間透過率が上昇する効果が他の効果より大きい場合は、予備照射ビームを一番光入射側に配置し、続くビームを順々に奥の層に焦点合わせするようにするのが良い。このような配置では記録によって記録マークの部分の透過率が上昇して奥の層に透過する平均光量が増加する効果も利用することができる。以上述べた各種過程はLiイオンの動きに比べて桁違いに速いので、着色・又は消色を大幅に高速化することができる。予熱以外に、光化学又は物理効果による着色の高速化を利用しても良い。
逆に加熱により消色が速くなる方が顕著な特性の記録媒体を用いる場合には、第1ビームを一番手前の層に焦点合わせし、1つ奥の層を消色し始めさせる。消色が始まっても第2ビームが当たるときにはまだ色が濃いので記録・再生が容易であるが、第3ビームが当たる時には2つ奥の層の記録・再生の障害にならないように消色している。例えば吸収飽和により吸収が減衰する現象を利用することができる。
上記の予熱効果を得るために、アレイレーザは、ほぼ平行な複数のレーザビームを、ほぼ同一直線上に並んだ複数の発生源(レーザ)から生成するが、レーザ素子を分離し、間隔を広げたものでも、シリコン単結晶へき開面を利用するなどの方法で直線状に配置するのが良い。
第1の層に第1のレーザビームからの第1の光スポットを照射し、第1の層に第1の光スポットを照射した後に、前記第1の層に隣接した光入射側の第2の層に第2の光スポットを照射されるように光スポットを位置決めして情報を記録又は再生する。複数のレーザビームから多層記録媒体の各層に形成される光スポットは、隣接するビームが基板の半径方向の同一トラック上、又はプラスマイナスビーム数×3トラック以内にあるように位置決め又は制御すると、予備照射効果が得られたが、それ以上の位置ズレが有ると、予備照射効果は他の層の影響無く記録・再生するのに不十分であった。プラスマイナス1トラック以内であれば、ほぼ最内周トラック又は最外周トラックから同時に書き始めることができるというメリットが有る。
このように、多数のレーザビームスポットをディスクの円周方向に、同一トラック又は近接したトラック上に並べることは、アドレス確認の容易さ、いずれのビームも最外周や最内周のトラックから外れることが無い点でも好ましい。上記複数のレーザビームのうち、両端に近い少なくとも2つのレーザビームでトラッキングエラー信号又はトラックアドレス信号を検出する手段を設けることにより、位置ズレを検出する必要が有る。
上記多層記録媒体は、予熱用光スポットを照射する層で記録状態の破壊が起きないように、所定の周期で情報を記録しないが電圧印加により着色し反射率上昇が可能な予熱・予備照射ビームのフォーカス・トラッキング専用層を有するのが好ましい。
本記録装置に搭載された光ヘッドには、情報記録用のレーザビームとして光波長660nmの半導体レーザアレイが使用されている。また、このレーザ光をレンズNA0.65の対物レンズにより上記光ディスクの記録層上に絞り込み、レーザビームを照射することにより情報の記録を行う。アレイレーザでなく2個以上の個別レーザのビームを所定の位置に導いてもよい。
このような先行ビームによる着色・消色の促進は並列高速記録再生の場合に限らず、層選択後短時間で記録又は読み出し開始が必要な場合に有効である。先行ビームと記録・再生ビームとの2ビームによる、あるいは1ビームでディスク1〜3回転で先行照射し、次の1回転で記録又は読み出しすることが考えられる。続いて電圧を反転させて1回DC光を照射すると消色も促進できる。
本実施例の記録媒体では、記録マークとそれ以外の部分とで約2:1の光反射率のコントラスト比が得られた。コントラスト比がこれ以下になると、再生信号のノイズによる揺らぎが上限値の9%を越えてしまい、実用的な再生信号品質の範囲を外れる。透明電極にSiO2を含有させて(SiO2)40(In2O3)55(SnO2)5とすると、屈折率が低下して光学的に有利になり、コントラスト比は2.5:1以上にできた。
エレクトロクロミック材料層あるいは別途設けたカルコゲナイド材料層の非晶質化によって記録する場合は、消去は、印加電圧を下げ、レーザ光を連続照射することによって非晶質領域を結晶化させて行う。消去もパルスレーザ照射を行い、どの記録パルスよりも広いパルスを繰り返して消去しても良い。
記録された情報の再生も上記光ヘッドを用いて行う。再生すべき層を記録時と同様に予備加熱により着色させ、レーザビームを記録されたマーク上に照射し、マークとマーク以外の部分からの反射光を検出することにより、再生信号を得る。
多数ビームの場合、各ビームの焦点位置が必ず別々の層の上にある必要は無く、例えば2ビームずつ同じ層上に記録・再生しても良い。本実施例の多数ビームを用いる方法は本発明の装置構造以外の電圧層選択方式光ディスク装置に対しても有効である。
複数ビームの場合、各ビームの再生信号は必要が有れば多重化手段(合成手段)により、時系列的な1つの信号に復元される。複数の読み出しビームの各ビームを時系列的に高速パルス照射すれば、この時系列化が容易になる。この再生信号の振幅をプリアンプ回路により増大させ、8−16復調器では16ビット毎に8ビットの情報に変換する。以上の動作により、記録されたマークの再生が完了する。以上の条件でマークエッジ記録を行った場合、最短マークである3Tマークのマーク長は約0.4μmとなる。記録信号には、情報信号の始端部、終端部に4Tマークと4Tスペースの繰り返しのダミーデータが含まれている。始端部にはVFOも含まれている。信号変調方式として8−16変調以外を用いることももちろん可能である。