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JP2005183061A - プロトン伝導性高分子膜の製造方法、およびプロトン伝導性高分子膜 - Google Patents

プロトン伝導性高分子膜の製造方法、およびプロトン伝導性高分子膜 Download PDF

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JP2005183061A JP2003419084A JP2003419084A JP2005183061A JP 2005183061 A JP2005183061 A JP 2005183061A JP 2003419084 A JP2003419084 A JP 2003419084A JP 2003419084 A JP2003419084 A JP 2003419084A JP 2005183061 A JP2005183061 A JP 2005183061A
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Fumiyasu Sezaki
文康 瀬崎
Hidetoshi Kuromatsu
秀寿 黒松
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Abstract

【課題】 固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の高分子電解質膜として有用な優れた特性のプロトン伝導性高分子膜及びその安定的かつ安価な製造方法を提供することである。
【解決手段】 高分子フィルムを膨潤用有機溶媒中で膨潤させた後に、スルホン化剤を含む反応用有機溶媒中に浸漬させる製造方法とすることで、同じスルホン化条件で比較すると、膨潤後の高分子フィルムを用いたスルホン化高分子膜の方が膜厚方向のプロトン伝導度が大きくなり、更に、より少ないスルホン化剤量で、また、より短い反応時間で、従来と同等のプロトン伝導度を有するプロトン伝導性高分子膜となる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、固体高分子形燃料電池の高分子電解質膜として有用なプロトン伝導性高分子膜及びその製造方法に関する。
プロトン伝導性高分子膜は、固体高分子形燃料電池、湿度センサー、ガスサンサー、エレクトロクロミック表示素子などの電気化学素子の主要な構成材料として有用である。これらの電気化学素子のなかでも、固体高分子形燃料電池は、新エネルギー技術の柱の一つとして広範囲での実用化が期待されている。高分子化合物からなるプロトン伝導性高分子膜を電解質膜として使用する固体高分子形高分子型燃料電池(PEFCまたはPEMFC)は、低温における作動、小型軽量化が可能などの特徴から、自動車などの移動体、家庭用コージェネレーションシステム、および民生用小型携帯機器などへの適用が検討されている。とくに、PEFCを搭載した燃料電池自動車は、エネルギー効率が高く、炭酸ガス排出量が少ないなどの特徴を有し、究極のエコロジーカーとして社会的な関心が高まってきている。さらに、メタノールを燃料とする直接メタノ‐ル形燃料電池(DMFC)は、単純な構造と燃料供給やメンテナンスの容易さ、さらには高エネルギー密度などの特徴を有し、リチウムイオン二次電池代替として、携帯電話やノート型パソコンなどの民生用小型携帯機器への応用が期待されている。
プロトン伝導性高分子膜としては、1950年代に開発された、スチレン系の陽イオン交換膜がある。しかし、このスチレン系の陽イオン交換膜は、燃料電池動作環境下における安定性に乏しく、充分な寿命を有する燃料電池を製造するにはいたっていない。
実用的な安定性を有するプロトン伝導性膜として、ナフィオン(Nafion,デュポン社の登録商標。以下同様)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸膜が開発され、PEFCをはじめとする多くの電気化学素子への応用が適用されている。パーフルオロカーボンスルホン酸膜は、高いプロトン伝導度を有し、耐酸性、耐酸化性などの化学的安定性に優れている。しかし、製造プロセスが複雑高価である。さらに、民生用携帯機器に搭載される燃料電池の燃料として有望視されているメタノールなどの透過量、いわゆるクロスオーバーが大きく、透過したメタノールがカソードで燃焼する現象、すなわち化学ショート反応が起こるという欠点がある。化学ショート反応が起こると、カソード電位が低下しセル特性が低下するだけでなく、燃料効率も低下してしまう。また、ナフィオンのような含フッ素化合物のプロトン伝導性高分子膜は合成時および廃棄時の環境への負荷が大きく、基本的に環境問題に対処するための技術である燃料電池の構成材料として必ずしもふさわしいものではない。
このようなことから、製造が容易で、より安価なプロトン伝導性高分子膜として、芳香族系高分子化合物のスルホン化物などからなる非パーフルオロカーボンスルホン酸型プロトン伝導性高分子膜が種々提案されている。その代表的なものとして、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(たとえば、特許文献1を参照のこと)、スルホン化ポリエーテルスルホン(たとえば、特許文献2を参照のこと)、スルホン化ポリスルホン(たとえば、特許文献3を参照のこと)、スルホン化ポリイミド(たとえば、特許文献4を参照のこと)などの耐熱芳香族高分子のスルホン化物などが提案されている。また、安価で、機械的、化学的に安定とされるSEBS(スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレン)のスルホン化体からなるプロトン伝導性高分子膜(特許文献5を参照のこと)が提案されている。これらのスルホン化炭化水素系高分子膜は製造が容易であり、かつ低コスト化が可能であるとされている。
しかし、高いプロトン伝導度が要求されるPEFCの電解質膜として使用するには、プロトン伝導度が不充分であった。また、それを改善するために、スルホン酸基などのプロトン伝導性置換基の導入量を増やすと、引っ張りや伸び等の機械的特性が低下したり、水溶性になり、膜の吸水率が上昇して著しく膨潤したりしてハンドリング性が著しく損なわれる結果となっていた。また、小型携帯機器用燃料電池の燃料として有望なメタノールに対しても、プロトン伝導度とメタノール透過性がトレードオフの関係にあることから、高いプロトン伝導度を得るために、スルホン酸基などのプロトン伝導性置換基の導入量を増やすと、メタノールクロスオーバーが大きくなり、化学ショート反応が起こる。化学ショート反応が起こると、カソード電位が低下しセル特性が低下するだけでなく、燃料効率も低下してしまい、その使用が制限される恐れがある。
炭化水素系高分子化合物からなる高分子電解質膜は、上述のような特性上の問題点に加え、製造プロセス上の問題点も多かった。
特許文献6には、スルホン化ポリフェニレンサルファイドなどのスルホン化芳香族系高分子膜の製造方法が開示されている。このスルホン化芳香族高分子膜の製造方法において、スルホン化剤としてクロロスルホン酸、溶媒としてジクロロメタンを使用することが記載されている。
該製造方法において、スルホン化剤を含む有機溶媒中に高分子フィルムを浸漬させているが、高分子フィルム中へのスルホン酸基の導入反応速度は、高分子フィルム内部へのスルホン化剤の溶解速度および拡散速度が律速になると考えられるため、スルホン化高分子膜の厚み方向にスルホン酸基導入量の分布が生じてしまう。即ち、高分子フィルムの内部ほどスルホン酸基の導入量が少なく、その結果、スルホン化高分子膜の厚み方向のプロトン伝導度が小さくなってしまうという問題点があった。また、内部まで均一にスルホン酸基が導入されたプロトン伝導性高分子膜を得ようとすると、スルホン化剤量が多く必要であったり、反応時間を長くする必要がある等、製造効率が悪いという問題点があった。
特開平6−93114号公報 特開平10―45913号公報 特開平9−245818号公報 特表2000−510511号公報 特表平10−503788号公報 国際公開第02/062896号パンフレット
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の高分子電解質膜として有用なプロトン伝導性高分子膜及びその製造方法であって、優れた特性を有するプロトン伝導性高分子膜及びそれを安定的かつ安価に製造する方法を提供することを目的とする。
すなわち本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法は、高分子フィルムを膨潤用有機溶媒中で膨潤させた後に、スルホン化剤を含む反応用有機溶媒中に浸漬させることに関する。膨潤させた後に、スルホン化剤を含む反応用有機溶媒中に浸漬させる製造方法とすることで、同じスルホン化条件で比較すると、膨潤後の高分子フィルムを用いたスルホン化高分子膜の方が膜厚方向のプロトン伝導度が大きくなり、更に、より少ないスルホン化剤量で、また、より短い反応時間で、従来と同等のプロトン伝導度を有するプロトン伝導性高分子膜となる。
上記膨潤を50℃以上200℃以下の温度の膨潤用有機溶媒中で実施すると、高分子フィルムを効率良く膨潤できる点から好ましい。また、膨潤用有機溶媒および/または反応用有機溶媒がハロゲン含有化合物であると、さらに効率良く膨潤できる点から好ましく、特に、膨潤用有機溶媒および/または反応用有機溶媒が、その分子構造中に炭素原子を3個以上、かつハロゲン原子を1個以上含む化合物であることが好ましい。
本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造に用いる高分子フィルムとしては、炭化水素系高分子フィルムであることが好ましく、特に、下記(A)群から選択される少なくとも一種以上からなる炭化水素系高分子を混合してなる炭化水素系高分子からなることが好ましい。
(A)群:ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリアリールエーテルスルホン(PAS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルホキシド(PPSO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドスルホン(PPS/SO2)、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、シアン酸エステル樹脂。さらに、前記炭化水素系高分子フィルムが、ポリフェニレンサルファイド(PPS)からなることが、優れた特性を有するプロトン伝導性高分子膜が得られることから好ましい。
本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法に用いるスルホン化剤としては、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、濃硫酸から選択される少なくとも一種以上から構成されることが好ましい。
また、本発明のプロトン伝導性高分子膜は、固体高分子形燃料電池用プロトン伝導性膜として、特に好ましくは直接メタノール型燃料電池用プロトン伝導性膜として用いられる。
本発明によれば、同じスルホン化条件(同一スルホン化剤量・濃度、同一反応温度、反応時間)で比較すると、膨潤後の高分子フィルムを用いたスルホン化高分子膜の方が厚み方向のプロトン伝導度が大きくなる。更に、より少ないスルホン化剤量で、または、より短い反応時間で、従来と同等以上のプロトン伝導度を有するプロトン伝導性高分子膜を得ることができる。
本発明のプロトン伝導性高分子膜の製造方法は、膨潤用有機溶媒で膨潤させた後に、スルホン化剤を含む反応用有機溶媒中に高分子フィルムを浸漬させることを特徴とするプロトン伝導性高分子膜の製造方法である。
本発明において高分子フィルムが膨潤するとは、高分子フィルム内部に膨潤用有機溶媒が含有されていることを意味し、高分子フィルムを膨潤用有機溶媒に浸す前後の重量変化、即ち「膨潤用有機溶媒に浸した後の高分子フィルムの重量」を「膨潤用有機溶媒に浸す前の高分子フィルムの重量」で除した値が1より大きいことである。
該高分子フィルムの重量変化は1より大きく2以下である。好ましくは、1.01より大きく1.5以下である。該重量変化が1以下だと、高分子フィルムの内部に膨潤用有機溶媒が含有されておらず、膨潤されていないことになり、本発明における効果を発現させることができない。該重量変化が2より大きくなると、膨潤した高分子フィルムを用いて製造されるプロトン伝導性高分子膜の強度が低下してしまい、実用に供することができない。
また、高分子フィルムを膨潤させる雰囲気温度は、室温以上である。より多く、より短時間で有機溶媒を高分子フィルム中へ導入しやすいことから、雰囲気温度は50℃〜200℃であることが好ましい。より好ましくは60℃〜150℃である。雰囲気温度が200℃を超えると、高分子フィルムに皺が入ったり、歪みにより変形してしまうなど、外観を損ねてしまう。雰囲気温度が室温以下の場合は、雰囲気温度を室温以下に保つために冷房を入れる必要があったり、冷却用の装置を導入する必要があること、また、雰囲気温度が室温以下になると、高分子フィルム中への有機溶媒の拡散速度が低下すると考えられ、膨潤に長時間要するなど、経済性に劣る。
本発明に使用可能な膨潤用有機溶媒および(2)は、実施的にスルホン化剤と反応しないものであって、高分子フィルムを劣化させないものであれば使用可能である。例えば、n−ヘキサンなどの炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、ジブロモメタン、ジヨードメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、1,2−ジヨードエタン、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、1−ヨードプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、1−ヨードブタン、2−ヨードブタン、1−ヨード−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−ヨードペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、1−ヨードヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、ヨードシクロヘキサンなどが例示できる。
高分子フィルムの膨潤させ易さから膨潤用有機溶媒には、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒や1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、ジブロモメタン、ジヨードメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、1,2−ジヨードエタン、などが好ましい。特に、使用する溶媒の扱いやすさ、得られるプロトン伝導性高分子膜の特性を考慮すると、反応用有機溶媒としては、その分子構造式中に3個以上の炭素原子及び、少なくとも1個以上の塩素原子を含む有機溶媒であることが好ましく、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサンおよびブロモシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。更に工業的な入手のし易さから1−クロロプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−クロロヘキサン、クロロシクロヘキサンから選択される少なくとも1種であることが好ましい。前記溶媒のなかでも、工業的入手の容易さや得られるプロトン伝導性高分子膜の特性などの点から、1−クロロブタンが好ましい。
本発明においてスルホン酸基とは、下記式(1)で表わされるスルホン酸基や下記一般式(2)で表わされるスルホン酸基を含む置換基をいう。
−SO3H (1)
−R−SO3H (2)
[式中、Rはアルキレン、ハロゲン化アルキレン、アリーレン、ハロゲン化アリーレンからなる群から選択される少なくとも1種の結合単位からなる2価の有機基、またはエーテル結合を含んでいてもよい]
本発明のプロトン伝導性高分子化合物は、メタノール遮断性などを考慮すると、炭化水素系高分子からなることが好ましい。炭化水素系高分子化合物としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルスルホン、ポリ(アリルフェニルエーテル)、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(ジフェニルフォスファゼン)、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリビニルアルコール、ポリ(フェニルグリシジルエーテル)、ポリ(フェニルメチルシロキサン)、ポリ(フェニルメチルフォスファゼン)、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルホキシド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリスチレン、スチレン−(エチレン−ブチレン)スチレン共重合体、スチレン−(ポリイソブチレン)−スチレン共重合体、ポリ1,4−ビフェニレンエーテルエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、シアン酸エステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリルなどが例示できる。
中でも、スルホン酸基および/またはスルホン酸基を含む置換基の導入のし易さ、得られた膜のプロトン伝導度、機械的特性、化学的安定性などの特性を考慮した場合、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルホキシド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、シアン酸エステル樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
さらに、本発明においては、スルホン酸基および/またはスルホン酸基を含む置換基の導入の容易さ、得られた膜のプロトン伝導度、機械的特性、化学的安定性、水素、メタノールなどの燃料遮断性、酸素、空気などの酸化剤遮断性などの特性を考慮した場合、炭化水素系高分子化合物が、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶性芳香族高分子化合物であることが好ましい。さらに、高いプロトン伝導度、優れた機械的特性、高いメタノール遮断性を有することから、ポリフェニレンサルファイドであることがより好ましい。
本発明のポリフェニレンサルファイドは、具体的には、下記式(3)で表される繰り返し構造単位からなる。
−[Ar−S]n− (3)
[式中、Arは下記式(4)〜(6)で表される2価の芳香族単位、nは1以上の整数]
Figure 2005183061
また前記ポリフェニレンサルファイドのArの一部に、必要に応じて以下の(A)〜(C)の構造単位を含有してもよい。
(A)芳香族単位の水素原子の一部がアルキル基、フェニル基、アルコキシル基、ニトロ基およびハロゲン基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されたもの。
(B)3官能フェニルスルフィド単位。
(C)架橋または分岐単位。
本発明のプロトン伝導性高分子膜の厚みは、用途に応じて任意の厚みが選択可能である。膜の内部抵抗を低減することを考慮した場合、実用的な機械的強度を有する範囲で、固体高分子形燃料電池の電解質膜に使用する場合には、燃料および酸化剤の遮断性を有する範囲で、それぞれ薄いほどよい。電解質膜としての特性は、イオン交換容量やプロトン伝導度が同等であれば、厚みが薄くなるほど、膜としての抵抗値が低くなる。したがって、膜の厚みは、好ましくは5〜200μmであり、より好ましくは20〜150μmである。この厚みが、5μmより薄い場合は、使用時にピンホールの発生や膜割れが生じやすくなる傾向がある。また、固体高分子形燃料電池の電解質膜として使用した場合に、燃料や酸化剤の遮断性が不充分となり、性能低下の要因となる傾向がある。さらに直接メタノール形燃料電池の電解質膜として使用した場合には、メタノール遮断性が不充分となり、メタノール透過による性能低下の要因となる傾向がある。一方、200μmを超える場合は、プロトン伝導性高分子膜の抵抗が大きくなり、性能低下の要因となる傾向がある。
スルホン化剤としては、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄−トリエチルフォスフェート、濃硫酸、トリメチルシリルクロロサルフェートなどの公知のスルホン化剤を使用することができる。工業的入手の容易さやスルホン酸基の導入の容易さや得られるプロトン伝導性高分子膜の特性を考慮すると、これらのスルホン化剤の使用が好ましい。とくに本発明においては、スルホン酸基の導入の容易さや得られた膜の特性、工業的入手の容易さなどから、クロロスルホン酸を使用するのがより好ましい。
また、反応系を適正化することによって、フリーデル−クラフツ反応にしたがって、塩化アルミニウムなどの触媒存在下で、プロパンサルトンや1,4−ブタンサルトンなどの環状含硫黄化合物と炭化水素系高分子化合物中の芳香族単位を接触させて、スルホプロピル基やスルホブチル基などのスルホン酸基を含む置換基を導入する方法なども使用することができる。
スルホン化剤の使用量としては、炭化水素系高分子化合物中の芳香族単位に対して、0.5〜30当量、さらには0.5〜15当量であるのが好ましい。スルホン化剤の使用量が、0.5当量よりも少ない場合には、スルホン酸基の導入量が少なくなり、得られるプロトン伝導高分子膜の特性が不充分となる傾向がある。一方、30当量を超える場合には、高分子フィルムが化学的に劣化し、得られるプロトン伝導性高分子膜の機械的強度が低下し、ハンドリングが困難になるなど、スルホン酸基の導入量が多くなりすぎて、メタノール遮断性が低下するなど、かえってプロトン伝導性高分子膜の実用的な特性が損なわれる傾向がある。
溶媒中のスルホン化剤の濃度は、スルホン酸基の目標とする導入量や反応条件(温度・時間)を勘案して適宜設定すればよい。具体的には、0.1〜10重量%であることが好ましく、より好ましい範囲は、0.2〜5重量%である。0.1重量%より低いとスルホン化剤と高分子化合物中の芳香族単位とが接触しにくくなり、所望のスルホン酸基が導入できなかったり、導入するのに時間がかかりすぎたりする傾向がある。一方、10重量%をこえるとスルホン酸基の導入が不均一になったり、得られたプロトン伝導性高分子膜の機械的特性が損なわれる傾向がある。
また、接触させる際の反応温度、反応時間についてはとくに限定はないが、0〜100℃、より好ましくは10〜30℃、0.1時間以上、より好ましくは2〜100時間の範囲で設定するのが良い。反応温度が、0℃より低い場合は、冷却設備等が必要になるとともに、反応に必要以上の時間がかかる傾向があるので好ましくなく、また、100℃をこえると反応が過度に進行したり、副反応を生じたりして、膜の特性を低下させる傾向があるので好ましくない。また、反応時間が、0.1時間より短い場合は、スルホン化剤と高分子化合物中の芳香族単位との接触が不充分となり、所望のスルホン酸基が導入しにくくなる傾向があり、反応時間が100時間をこえる場合は、生産性が著しく低下する傾向を示すとともに、膜特性の大きな向上は期待できなくなる傾向がある。実際には、使用するスルホン化剤や溶媒などの反応系、目標とする生産量などを考慮して、所望の特性を有するプロトン伝導性高分子膜を効率的に製造することができるように設定すればよい。
本発明のスルホン化高分子膜の製造方法は、連続的に実施してもよい。すなわち、被処理物である高分子化合物からなるフィルムを膨潤用溶媒に浸漬して膨潤させた後に、スルホン化剤との反応槽に供給し、さらに必要に応じて、洗浄工程や乾燥工程を連続的に実施しても良い。この方法によって、スルホン化高分子膜の生産性が一段と向上する。
また、高分子フィルムを反応槽内でスルホン化剤と接触させることによって、フィルム(膜)形状のままスルホン酸基を導入することができる。したがって、従来の均一反応系でスルホン化高分子を合成した後、膜形状に加工する方法と比較して、反応物の回収・精製・乾燥などの工程、溶媒へのスルホン化高分子の溶解や支持体への塗布、溶媒除去などの工程が省略できるため好ましい。さらに、フィルムを連続供給するため、その生産性は著しく向上する。
また、反応槽に浸漬したフィルムに付着および/または包含されたスルホン化剤を除去・洗浄することを連続的に実施することにより、スルホン化剤による周辺機器の腐食の防止やフィルムのハンドリング性が改善する。除去・洗浄の条件は、使用するスルホン化剤や高分子化合物の種類を考慮して適宜設定すればよいが、水洗により、残存したスルホン化剤を不活性化したり、アルカリを使用して中和処理してもよい。
さらに、得られたスルホン化高分子膜を連続して乾燥することによって、スルホン化高分子膜を実際に使用可能な形態で回収することができる。乾燥条件は、使用する高分子フィルムの種類や得られるスルホン化高分子膜の特性を考慮して適宜設定すればよい。スルホン酸基が強い親水性を示すため、洗浄過程において、含水して著しく膨潤している恐れがある。そのため、乾燥時に収縮し、皺や脹れなどの凹凸が生じる恐れがある。したがって、乾燥時にはスルホン化高分子膜の面方向に適度なテンションをかけて乾燥することが好ましい。また、急激な乾燥を抑制するため、湿度の調節下で徐々に乾燥してもよい。
使用するスルホン化剤やスルホン化の反応条件によっては、例えば、高分子化合物として、ポリフェニレンサルファイドを使用した場合、高分子フィルム中のスルフィド単位(−S−)がスルホキシド単位(−SO−)やスルホン単位(−SO2−)に酸化されたり、また、スルホキシド単位(−SO−)がスルホン単位(−SO2−)に酸化されたり、また、フェニレン単位の水素が−Clなどの置換基で置換される副反応が生じる可能性がある。しかし、得られたスルホン化高分子膜の特性を著しく低下させるものでなけば、前記副反応の結果生じた構造単位が含まれていても構わない。
前記方法で製造したスルホン化高分子膜の特性をさらに向上させるために、電子線、γ線、イオンビーム等の放射線を照射させることが好ましい。
つぎに、本発明のスルホン化高分子膜を使用した固体高分子形燃料電池(直接メタノール形燃料電池)について、一例として、図面を引用して説明する。
図1は、本発明のスルホン化高分子膜を使用した固体高分子形燃料電池(直接メタノール形燃料電池)の要部断面図である。
これは、スルホン化高分子膜1と、1の膜に接触する触媒担持ガス拡散電極2、セパレーター4に形成された燃料ガスまたは液体、並びに、酸化剤を送り込む流路3、の構成よりなるものである。
スルホン化高分子膜1に、触媒担持ガス拡散電極2を接合する方法は、従来検討されている、パーフルオロカーボンスルホン酸膜からなるスルホン化高分子膜や高分子化合物からなるスルホン化高分子膜(例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリサルホン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリフェニレンサルファイドなど)で行われる公知の方法が適用可能である。
具体的には、市販のガス拡散電極(米国E−TEK社製、など)を用いる方法が例示できるが、これに限定されるものではない。
実際の方法としては、パーフルオロカーボンスルホン酸高分子のアルコール溶液(アルドリッチ社製ナフィオン溶液など)や本発明のスルホン化高分子膜を構成するスルホン化高分子化合物、あるいは、公知のスルホン化高分子化合物(例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリサルホン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリフェニレンサルファイドなど)の有機溶媒溶液などをバインダーとして、本発明のスルホン化高分子膜1の両面に、触媒担持ガス拡散電極2の触媒層側の面を合わせ、ホットプレス機やロールプレス機などのプレス機を使用して、一般的には120〜250℃程度のプレス温度で接合できる。また必要に応じて、バインダーを使用しなくても構わない。さらに、下記に示すような材料を使用して触媒担持ガス拡散電極2を調製し、スルホン化高分子膜1に接合させて使用しても構わない。
ここで、触媒担持ガス拡散電極2を調製するのに使用する材料としては、触媒として燃料の酸化反応および酸素の還元反応を促進する、白金、ルテニウムなどの金属あるいはそれらの合金、触媒の担体・導電材として、微粒子の炭素材料(例えば、カーボンナノホーン、フラーレン、活性炭、カーボンナノチューブなど)などの導電性物質など、結着剤として、撥水性を有する含フッ素樹脂など、必要に応じて、上記材料の支持体として、カーボンクロスやカーボンペーパーなど、更に、含浸・被覆材として、パーフルオロカーボンスルホン酸高分子が例示できるが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記のような方法で得られたスルホン化高分子膜1と、触媒担持ガス拡散電極2の接合体を、燃料ガスまたは液体、並びに、酸化剤を送り込む流路3が形成された一対のグラファイト製などのガスセパレーター4などの間に挿入することにより、本発明のスルホン化高分子膜からなる固体高分子形燃料電池(直接メタノール形燃料電池)が得られる。これに燃料ガスまたは液体として、水素を主たる成分とするガスや、メタノールを主たる成分とするガスまたは液体を、酸化剤として、酸素を含むガス(酸素あるいは空気)を、それぞれ別個の流路3より、触媒担持ガス拡散電極2に供給することにより、該固体高分子形燃料電池は作動する。このとき燃料としてメタノールを使用する場合には、直接メタノール形燃料電池となる。
本発明の固体高分子形燃料電池を単独で、あるいは複数積層して、スタックを形成し、使用することや、それらを組み込んだ燃料電池システムとすることもできる。
さらに、本発明のスルホン化高分子膜を使用した直接メタノール形燃料電池について、一例として、図面を引用して説明する。
図2は、本発明のスルホン化高分子膜からなる直接メタノール形燃料電池の要部断面図である。これは、スルホン化高分子膜6と、膜6の両側には触媒担持電極7が接合され、膜−電極接合体が構成される。この膜−電極接合体は、燃料(メタノールあるいはメタノール水溶液)充填部9や供給部9を有する燃料(メタノールあるいはメタノール水溶液)タンク8の両側に必要数が平面状に配置される。さらにその外側には、酸化剤流路11が形成された支持体10が配置され、これらに狭持されることによって、直接メタノール形燃料電池のセル、スタックが構成される。
前記の例以外にも、本発明のスルホン化高分子膜は、特開2001−313046号公報、特開2001−313047号公報、特開2001−93551号公報、特開2001−93558号公報、特開2001−93561号公報、特開2001−102069号公報、特開2001−102070号公報、特開2001−283888号公報、特開2000−268835号公報、特開2000−268836号公報、特開2001−283892号公報などで公知になっている直接メタノール形燃料電池の電解質膜として、使用可能である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
(実施例1)
炭化水素系高分子化合物として、ポリフェニレンサルファイドを使用した。ポリフェニレンサルファイド(大日本インキ工業株式会社製、商品名:DIC−PPS FZ−2200−A5)をスクリュー温度290℃、Tダイ温度320℃の押出機で溶融押出し、厚み50μmのフィルムを得た。こうして得られたポリフェニレンサルファイドフィルムを150℃に設定した熱風オーブン内に30分間放置し、再結晶化させた。
膨潤用有機溶媒および反応用有機溶媒として、1−クロロブタンを使用した。
膨潤処理は次のようにして行った。1−クロロブタンで満たされた900mL容量のマヨネーズ瓶の中に、前記ポリフェニレンサルファイドフィルムを2.09g秤量して入れた後、該マヨネーズ瓶を100℃の熱風オーブン中に4時間放置し、室温まで冷却後、ポリフェニレンサルファイドフィルムを取り出した。膨潤処理後のポリフェニレンサルファイドの重量を測定したところ、8重量%大きくなっていた。
1−クロロブタン671g、クロロスルホン酸11.26gを秤量し、クロロスルホン酸溶液を調製した。該膨潤処理したポリフェニレンサルファイドフィルムをクロロスルホン酸溶液に浸漬し、室温で20時間放置した(クロロスルホン酸は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して5当量)。室温で20時間放置後に、ポリフェニレンサルファイドフィルムを回収し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。
洗浄後のポリフェニレンサルファイドフィルムを23℃に調温した恒温恒湿器内で、相対湿度98%、80%、60%および50%の湿度調節下で、それぞれ30分間放置してフィルムを乾燥し、プロトン伝導性高分子膜として、スルホン酸基が導入されたポリフェニレンサルファイド膜(以下、スルホン化ポリフェニレンサルファイド膜)(80mm×80mm、厚み:105μm)を得た。
このプロトン伝導性高分子膜の各種特性を下記方法で測定した。
(イオン交換容量の測定方法)
プロトン伝導性高分子膜(約10mm×40mm、厚み:任意)を塩化ナトリウム飽和水溶液に浸漬し、ウォーターバス中で60℃、3時間反応させる。室温まで冷却した後、サンプルをイオン交換水で充分に洗浄し、フェノールフタレイン溶液を指示薬として、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、イオン交換容量を算出した。
(厚み方向プロトン伝導度)
スルホン化ポリフェニレンサルファイド膜を直径16mmの円形状に切出し、純水中に3時間以上放置した後に、取り出して余分な水分を濾紙で拭き取ってから測定に供した。試験体の表裏面に白金電極を取り付け、これらを2極密閉系の金属製のセルに設置した後、室温下で電圧0.5Vの条件で、交流インピーダンス法(周波数:42Hz〜5MHz)により、膜抵抗を測定し、膜厚プロトン伝導度を算出した。
(メタノール遮断性)
ビードレックス社製膜透過実験装置を使用して、イオン交換水と所定濃度のメタノール水溶液をプロトン伝導性高分子膜で隔離し、所定時間経過後にイオン交換水側に透過したメタノール量をガスクロマトグラフで定量した。これからメタノール透過速度を算出後、メタノール透過係数を求めた。メタノール透過係数は、以下の式にしたがって算出した。メタノール水溶液には64重量%メタノール濃度のものを使用した。
メタノール透過係数(μmol/(cm・日))
=メタノール透過量(μmol)×膜厚(cm)/(膜面積(cm2)×透過時間(日))
メタノール透過係数の小さいほど、メタノール遮断性に優れることになる。
この膜の特性評価の結果を表1に示す。
Figure 2005183061
(実施例2)
炭化水素系高分子化合物として、ポリフェニレンサルファイドを使用した。ポリフェニレンサルファイドフィルムに東レ(株)製ポリフェニレンサルファイドフィルム(商品名:トレリナ(登録商標)、膜厚:50μm)を使用した。
膨潤用有機溶媒として塩化メチレンを使用した。膨潤処理は次のようにして行った。塩化メチレンで満たされた900mL容量のマヨネーズ瓶野中に、ポリフェニレンサルファイドフィルムを2.09g秤量して入れ、室温で2時間放置した後、ポリフェニレンサルファイドフィルムを取り出した。膨潤処理後のポリフェニレンサルファイドの重量を測定したところ、10重量%大きくなっていた。
反応用有機溶媒として1−クロロブタンを使用した。1−クロロブタン671g、クロロスルホン酸4.50gを秤量し、クロロスルホン酸溶液を調製した。該膨潤処理したポリフェニレンサルファイドフィルムをクロロスルホン酸溶液に浸漬し、室温で20時間放置した(クロロスルホン酸は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して2当量)。この後に、ポリフェニレンサルファイドフィルムを回収し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。
洗浄後のポリフェニレンサルファイドフィルムの乾燥は実施例1と同様にして行った。
この膜の特性評価の結果を表1に示す。
(実施例3)
クロロスルホン酸溶液に浸漬し、室温で4時間放置した以外は、実施例2と同様に実施した。
この膜の特性評価の結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様にして、膨潤処理前のポリフェニレンサルファイドフィルムを得た。反応用有機溶媒として1−クロロブタンを使用した。
1−クロロブタン671g、クロロスルホン酸11.26gを秤量し、クロロスルホン酸溶液を調製した。前記ポリフェニレンサルファイドフィルムをクロロスルホン酸溶液に浸漬し、室温で20時間放置した(クロロスルホン酸は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して5当量)。室温で20時間放置後に、ポリフェニレンサルファイドフィルムを回収し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。
洗浄後のポリフェニレンサルファイドフィルムの乾燥は実施例1と同様にして行った。
この膜の特性評価の結果を表1に示す。
(比較例2)
ポリフェニレンサルファイドフィルムに東レ(株)製ポリフェニレンサルファイドフィルム(商品名:トレリナ、膜厚:50μm)を使用した。
塩化メチレン671g、クロロスルホン酸4.50gを秤量し、クロロスルホン酸溶液を調製した。ポリフェニレンサルファイドフィルム2.09gをクロロスルホン酸溶液に浸漬し、室温で20時間放置した(クロロスルホン酸は、ポリフェニレンサルファイドの芳香族単位に対して2当量)。この後に、ポリフェニレンサルファイドフィルムを回収し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。洗浄後のポリフェニレンサルファイドフィルムの乾燥は実施例1と同様にして行った。
この膜の特性評価の結果を表1に示す。
(比較例3)
プロトン伝導性膜として膜厚130μmのナフィオン(登録商標)(グレード名:Nafion115,デュポン社)を用い、膜厚プロトン伝導度、メタノール透過係数を測定した。この膜の特性評価の結果を表1に示す。
表1のプロトン伝導度における実施例1〜3と比較例1〜3との比較から、本発明の製造方法により得られるスルホン化膜は、従来のプロトン伝導性膜と、同等以上のプロトン伝導性を有し、固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池用膜のプロトン伝導性膜として有用であることが明らかとなった。
さらに、表1のメタノール透過係数における実施例1〜3と比較例1〜3との比較から、本発明のプロトン伝導性高分子膜は、従来のプロトン伝導性高分子膜と、同等以上のメタノール遮断係数を有し、直接メタノール形燃料電池用のプロトン伝導性高分子膜として有用であることがわかった。
さらに、実施例1と比較例1との比較において、スルホン化剤の使用量および反応時間が同一でも、厚み方向のプロトン伝導度が3〜4桁も大きくなっている。またおよび実施例3と比較例2との比較において、膨潤させることによって反応時間を大幅に短縮できることがわかる。本発明は生産性および経済性の点からも非常に優れている。すなわち、本発明の製造方法によれば、反応時間を大幅に短縮でき、かつ同等の反応条件であれば、より高いプロトン伝導度を有するプロトン伝導性高分子膜を得ることができる。
本発明の固体高分子形燃料電池(直接メタノール形燃料電池)の要部断面図である。 本発明の直接メタノール形燃料電池の要部断面図である。
符号の説明
1 プロトン伝導性高分子膜
2 触媒担持ガス拡散電極
3 流路
4 セパレーター
5 ガスケット
6 プロトン伝導性高分子膜
7 触媒担持ガス拡散電極
8 燃料タンク
9 燃料充填部
10 支持体
11 酸化剤流路ここから符号の説明を記載

Claims (10)

  1. 高分子フィルムを膨潤用有機溶媒中で膨潤させた後に、スルホン化剤を含む反応用有機溶媒中に浸漬させることを特徴とするプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
  2. 上記膨潤を50℃以上200℃以下の温度の膨潤用有機溶媒中で実施することを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
  3. 膨潤用有機溶媒および/または反応用有機溶媒がハロゲン含有化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
  4. 膨潤用有機溶媒および/または反応用有機溶媒が、その分子構造中に炭素原子を3個以上、かつハロゲン原子を1個以上含む化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
  5. 前記高分子フィルムが炭化水素系高分子フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
  6. 前記炭化水素系高分子フィルムが、下記(A)群から選択される少なくとも一種以上からなる炭化水素系高分子を混合してなる炭化水素系高分子からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
    (A)群:ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリアリールエーテルスルホン(PAS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルホキシド(PPSO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドスルホン(PPS/SO2)、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、シアン酸エステル樹脂。
  7. 前記炭化水素系高分子フィルムが、ポリフェニレンサルファイド(PPS)からなることを特徴とする請求項6に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
  8. 前記スルホン化剤が、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、濃硫酸から選択される少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性高分子膜の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載した製造方法で製造されたプロトン伝導性高分子膜であって、固体高分子形燃料電池用プロトン伝導性膜として用いられるプロトン伝導性高分子膜。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載した製造方法で製造されたプロトン伝導性高分子膜であって、直接メタノール型燃料電池用プロトン伝導性膜として用いられるプロトン伝導性高分子膜。
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