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JP2004521619A - 有機生成物の合成のための方法及び材料 - Google Patents

有機生成物の合成のための方法及び材料 Download PDF

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JP2004521619A
JP2004521619A JP2002545176A JP2002545176A JP2004521619A JP 2004521619 A JP2004521619 A JP 2004521619A JP 2002545176 A JP2002545176 A JP 2002545176A JP 2002545176 A JP2002545176 A JP 2002545176A JP 2004521619 A JP2004521619 A JP 2004521619A
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nucleic acid
cells
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cell
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JP2002545176A
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ヴィニート ラジガルヒア、
メーヤ ペンッティラ、
ローラ ルオホネン、
マーヤ イルメン、
カリ コイブランタ、
Original Assignee
カージル ダウ ポリマーズ エルエルシー
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Abstract

本発明は乳酸塩を生成するための異種性乳酸塩デヒドロゲナーゼ遺伝子をコードする組換え発現ベクターを含んでなる組換え酵母細胞である生体触媒を提供する。

Description

【技術分野】
【0001】
本出願は2000年11月22日出願の米国仮出願番号60/252541に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の背景)
1.技術分野
本発明は有機生成物の生成に関与する方法及び材料に関する。
【0003】
2.背景の情報
有機生成物例えば乳酸は多くの重要な工業用の用途を有している。例えば、有機酸を用いてプラスチック材料及びその他の生成物を合成できる。有機生成物に対する必要性の増加に対応するために、より効率的で費用効率のよい生成方法が開発されつつある。かかる方法の1つは細菌の使用に関与するものである。具体的には、特定の細菌は特定の発酵条件下で多量の特定の有機生成物を生成できる。しかしながら工場としての生きた細菌の使用は、有機生成物が成長培地中に蓄積するので、細菌が成長できないことにより制限される。かかる制限を回避するために、生成物合成の間に種々の生成物精製技術が用いられている。加えて、細菌以外の微生物の使用が試みられている。実際に、酸抵抗性であることが知られているサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cervisiae)が乳酸を生成する試みで遺伝子修飾されている。具体的には、細胞にウシ乳酸塩デヒドロゲナーゼcDNAを提供し、内因性ピルビン酸塩デカルボキシラーゼ遺伝子(PDC1、PDC5、及びPDC6)を破壊することによりサッカロミセス・セレビジエ細胞を修飾した。これらの修飾されたサッカロミセス・セレビジエ細胞はいくらか乳酸を生成するが、細胞成長は抑制され、細胞成長及び乳酸生成の双方が改良に必要であるという結論に至った。
【0004】
(発明の要約)
本発明は概して有機生成物を生成するための方法及び材料に関する。具体的には、本発明は酵母細胞、酵母細胞を培養するための方法、酵母細胞を作製するための方法、核酸構築物、及び種々の有機生成物を生成するための方法及び材料を提供する。本発明は特定の微生物(例えば細菌及び菌類微生物)を特定の条件下で成長し、成長及び生成物の生成に種々の炭素源を利用し、並びに販売目的で望ましい有機生成物を生成する能力を有するように遺伝的に操作できるという発見に基づいている。例えば、本発明で提供される酵母細胞は低pH及び高温で培養したときに成長でき、有機生成物を生成できる。例えば低pH及び高温条件下で急速に成長し、効率的に有機生成物を生成する能力を有することは特に有利である。具体的には、微生物が低pHに耐える能力により、大規模容量での生成過程では困難で経費がかかり得る中性のpH環境を維持する必要性が回避される。加えて、低pHブロスから望ましい有機生成物を収集するのに必要な方法及び材料は、より中性のpHを有するブロスからの同一有機生成物を収集するのに必要な方法及び材料よりもさらに現実的で効率がよい。例えば、特定の有機酸生成物を生成物のpK値以下でpHを急低下させたときに溶液から沈殿させることができ、これにより収集が非常に簡単になる。さらに、微生物が高温に耐える能力により成長及び生成相で低温を維持する必要性が回避される。明らかに、大規模容量での生成過程で大量のバルクタンクの温度を下げる必要性を低減させることにより、方法全体がより効率的でよりあまり経費がかからなくなる。さらに、微生物の低pH及び高温に耐える能力により、大規模容量での生成過程で別の耐性の低い微生物による夾雑を防御するための便利な方法が提供される。
【0005】
販売目的で望ましい有機生成物を生成する能力に関する重大な実施形態は、望ましい有機生成物が生成される特異的生産性であることに注目することが重要である。例えば本明細書に記載する方法及び材料を用いて特異的高生産性を提供することにより、微生物は培養条件、例えば低pH及び高温に暴露された場合、細胞維持に必要なエネルギーを作ることが可能になる。この必要なエネルギーを、呼吸経路を介するエネルギー作製に依存するよりむしろ、実質的に嫌気的条件下で発酵経路を介して作製することができる。本質的に全ての提供される炭素源を用いて望ましい有機生成物を生成できるので、発酵経路を介してエネルギーを得ることは、呼吸経路に必要でない有機生成物を生成する場合にとりわけ有利である。
【0006】
本発明はまた、特定の遺伝子操作された微生物による炭素供給源の利用を調節し、バイオマスまたは望ましい有機生成物のいずれかの生成に優勢的に志向させることができるという発見に基づいている。概して、本発明は2つの型の培養過程に関係している。一方の培養方法には、微生物及び望まれる結果に依存して、バイオマス生成を促進する特定の培養条件下で微生物を培養することが含まれるが、他方は、これもまた微生物及び望まれる結果に依存して望ましい有機生成物の生成を促進する異なる培養条件のセットに関係する。明らかに、大規模容量の生成過程で炭素供給源の利用を操作する能力を有することにより、そうでない場合に可能であるよりもさらに高い柔軟性及びさらに多くの調節を伴う製造が提供される。
【0007】
加えて、本発明は、全てでなければほとんどの炭素供給源がバイオマスまたは望ましい有機生成物のいずれかの生成に利用されるように、特定の微生物を遺伝子操作することができるという発見に基づいている。具体的には、本発明は、炭素供給源の利用をバイオマスまたは望ましい有機生成物の生成からそれる生合成経路が不活性化されるように修飾された酵母細胞を提供する。かかる生合成経路の不活性化により、効率的に成長し、望ましい生成物を生成できる微生物が提供される。
【0008】
概して、本発明は細胞内で酵素活性を有するポリペプチドをコードする外来性の核酸分子を含有する酵母細胞を特徴とする。核酸を細胞のゲノムに組み込むことができる。ある実施形態では、酵素活性により細胞から分泌される有機生成物の形成が導かれる。細胞はさらにクラブトリー陰性表現型を有し、有機生成物を生成する。細胞は例えばクルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、ハンゼヌラ(Hansenula)、カンジダ(Candida)、トリコスポロン(Trichosporon)またはヤマダザイマ(Yamadazyma)属からのものでよい。有機生成物は例えば発酵生成物、ピルビン酸塩誘導生成物、有機酸、またはカルボン酸塩、例えば乳酸塩でよい。1つの実施形態では、ポリペプチドは乳酸塩デヒドロゲナーゼ活性を有してよい。例えば外来性核酸は細菌性乳酸塩デヒドロゲナーゼかまたは菌類乳酸塩デヒドロゲナーゼ、例えばK.ラクチス(K.lactis)菌類乳酸塩デヒドロゲナーゼをコードできる。
【0009】
別の実施形態では、細胞は4つの外来性核酸分子を含有し、4つの外来性核酸分子の各々は異なるポリペプチドをコードする。例えば4つの外来性核酸分子のうちの第1の核酸分子は乳酸塩デヒドロゲナーゼ活性を有する第1のポリペプチドをコードでき、第2核酸分子はCoAトランスフェラーゼ活性を有する第2のポリペプチドをコードでき、第3の核酸分子はラクチルCoAデヒドラターゼ活性を有する第3のポリペプチドをコードでき、及び第4の核酸分子はアクリリルCoAヒドラターゼ活性を有する第4のポリペプチドをコードできる。かかる細胞はカルボン酸塩生成物としてアクリレートを生成できる。また別に、4つの外来性核酸のうちの第1の核酸分子は2−デヒドロ−3−デオキシ−D−ペンタノエートアルドラーゼ活性を有する第1のポリペプチドをコードでき、第2の核酸分子はキシロネートデヒドラターゼ活性を有する第2のポリペプチドをコードでき、第3の核酸分子はキシロノラクトナーゼ活性を有する第3のポリペプチドをコードでき、及び第4の核酸分子はD−キシロースデヒドロゲナーゼ活性を有する第4のポリペプチドをコードできる。かかる細胞は有機生成物として炭水化物、例えばD−キシロースを生成できる。
【0010】
さらに別の実施形態では、細胞は6個の外来性核酸分子を含有し、6個の外来性核酸分子の各々は異なるポリペプチドをコードする。例えば、6個の外来性核酸分子のうちの第1の核酸分子は2,5−ジオキシ吉草酸塩デヒドロゲナーゼ活性を有する第1のポリペプチドをコードでき、第2の核酸分子は5−デヒドロ−4−デオキシ−D−グルカル酸塩デヒドロゲナーゼ活性を有する第2のポリペプチドをコードでき、第3の核酸分子はグルカル酸塩デヒドラターゼ活性を有する第3のポリペプチドをコードでき、第4の核酸分子はアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する第4のポリペプチドをコードでき、第5の核酸分子はグルクロノラクトンリダクターゼ活性を有する第5のポリペプチドをコードでき、及び第6の核酸分子はL−グロノラクトンオキシダーゼ活性を有する第6のポリペプチドをコードできる。かかる細胞は有機生成物としてビタミン、例えばL−アスコルビン酸塩を生成できる。
【0011】
有機生成物は3つ以上の炭素原子を含有でき、例えばアミノ酸でよい。
【0012】
別の実施形態では、細胞はペントース炭素、例えばリボース、アラビノース、キシロース及びリキソースを異化できる。
【0013】
別の実施形態では、細胞はピルビン酸塩デカルボキシラーゼ活性が低減されているか、またはアルコールデヒドロゲナーゼ活性が低減されている。例えば細胞は全てのピルビン酸塩デカルボキシラーゼ活性を欠如できる。ピルビン酸塩デカルボキシラーゼ活性の低減は、通常ピルビン酸塩デカルボキシラーゼをコードする核酸配列を有している遺伝子座が破壊されることによる。また別に、細胞は外来性核酸配列に対応するアンチセンス分子、例えばリボザイムを含有でき、ここでアンチセンス分子はピルビン酸塩デカルボキシラーゼ活性を低減させる。細胞はまたキラープラスミドとして機能する別の外来性核酸分子をもコードできる。
【0014】
別の実施形態では、外来性核酸分子によりコードされるポリペプチドの酵素活性によりNADH消費様式での有機生成物の形成が導かれる。
【0015】
別の実施形態では、細胞を有機生成物の生成に最適な条件下で培養した場合に消費されるグルコース100gあたり少なくとも約60gの有機生成物を細胞が生成する。
【0016】
別の態様では、本発明は、細胞によるペントース炭素の異化を促進するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有する細胞、例えば酵母細胞を特徴とする。ポリペプチドは例えばキシロースリダクターゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ、またはキシルロキナーゼでよく、ペントース炭素は例えばリボース、アラビノース、キシロース、及びリキソースでよい。細胞はさらにヘキソース炭素を異化でき、望む場合、ヘキソース炭素及びペントース炭素を同時に異化できる。ヘキソース炭素は例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース(iodose)、フルクトース、ガラクトース、及びタロースでよい。
【0017】
別の態様では、本発明は細胞の細胞質におけるアセチルCoAの蓄積を促進するポリペプチドをコードする外来性核酸を含有する酵母細胞を特徴とする。
【0018】
ポリペプチドはクエン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドでよいか、またはミトコンドリア膜を通るアセチルCoA透過性を促進するミトコンドリア膜ポリペプチドでよい。細胞はピルビン酸塩デカルボキシラーゼ活性が低減されているか、またはアルコールデヒドロゲナーゼ活性が低減されていてよい。また別に、酵母細胞はエタノール生成を欠如でき、エタノール及び酢酸塩を欠如する培養条件下で、エタノール生成を欠如する匹敵する酵母細胞で観察される成長速度よりも早い成長速度を有する。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、細胞がクラブトリー陰性表現型を有していて、ミトコンドリアポリペプチドの活性が低減されている酵母細胞を特徴とする。かかる細胞は例えばクルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、ハンゼヌラ(Hansenula)、カンジダ(Candida)、トリコスポロン(Trichosporon)またはヤマダザイマ(Yamadazyma)属からのものでよい。細胞は完全に活性を欠如できる。細胞は破壊された遺伝子座を含有でき、ここで遺伝子座は通常ミトコンドリアポリペプチドをコードする核酸配列を含む。ミトコンドリアポリペプチドはクレブスサイクル酵素でよい。さらに細胞はクレブスサイクル生成物を蓄積できる。細胞が有機生成物を生成するように有機生成物を形成させる酵素活性を細胞内で有するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を細胞が含むことができる。有機生成物は例えばクエン酸塩、アルファ・ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、及びオキザロ酢酸塩でよい。ポリペプチドは乳酸塩または酢酸塩の異化に関与するポリペプチドでよい。
【0020】
別の態様では、本発明は有機生成物を生成する方法を特徴とする。方法は、細胞がクラブトリー陰性表現型を有し、酵母細胞が、細胞内で酵素活性が有機生成物の形成に至る酵素活性を有するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含む、酵母細胞を提供し、有機生成物が生成されるような培養培地で酵母細胞を培養することからなる。酵母細胞はクルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、ハンゼヌラ(Hansenula)、カンジダ(Candida)、トリコスポロン(Trichosporon)またはヤマダザイマ(Yamadazyma)属からのものでよい。有機生成物は発酵生成物、ピルビン酸塩誘導生成物、3個以上の炭素原子を含有する有機生成物、カルボン酸塩、炭水化物、アミノ酸、ビタミン、または脂質生成物でよい。有機生成物はさらに乳酸塩、グリセロール、アクリレート、キシロース、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、イソクエン酸塩、アルファ・ケトグルタル酸塩、サクシニルCoA、コハク酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、及びオキザロ酢酸塩でよい。ある実施形態では、有機生成物は細胞により分泌される。方法によりピルビン酸塩デカルボキシラーゼ活性が低減されているか、またはアルコールデヒドロゲナーゼが低減されている細胞に至る。酵素活性はNADH−消費様式での有機生成物の形成を導くことができる。
【0021】
これらの方法により作られた細胞は、培養工程が有機生成物の生成に最適である場合に消費されるグルコース100gあたり少なくとも約60gの有機生成物を生成できる。培養培地は液体でよく、細胞性呼吸のインヒビター、例えばアンチマイシンA、シアン化合物、またはアジドを含むことができる。培養工程は好気性成長条件下で細胞を成長させ、続いて該細胞を細胞性呼吸のインヒビターと接触させることを含むことができる。
【0022】
また別の実施形態では、培養工程は細胞を嫌気性培養条件下で培養することを含む。さらにまた別の実施形態では、培養工程は細胞を好気性成長条件下で成長させ、続いて細胞を嫌気性培養条件下でインキュベートすることを含む。培養工程はまた約35℃以上の温度で細胞を培養することをも含むことができる。
【0023】
1つの実施形態では、培養培地は約3.0未満の有機的pH値及び/または約3.0未満の無機的pH値を有する。別の実施形態では、培地はペントース炭素例えばリボース、アラビノース、キシロース、またはリキソースを含有する。培地はまた、例えば約2.0から約6.5の間のpH値を有するトウモロコシ繊維加水分解物を含んでよい。
【0024】
別の態様では、本発明はa)細胞によるペントース炭素の異化を促進するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有する酵母細胞を提供することであって、ここで細胞は該有機生成物の形成を導く酵素活性を含有する;及びb)有機生成物が生成されるような培養培地で細胞を培養することを含む、有機生成物を生成するための方法を特徴とする。
【0025】
さらに別の態様では、本発明はa)細胞の細胞質におけるアセチルCoAの蓄積を促進するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有する酵母細胞を提供することであって、ここで細胞は有機生成物の形成を導く酵素活性を含有する;及びb)有機生成物が生成されるような培養培地で細胞を培養することを含む、有機生成物を生成するための方法を特徴とする。
【0026】
別の態様では、本発明はa)ミトコンドリア酵素活性が低減されている酵母細胞を提供することであって、ここで活性の低減により有機生成物の蓄積が導かれる;及びb)該有機生成物が生成されるような培養培地で該細胞を培養することを含む、有機生成物を生成するための方法を特徴とする。
【0027】
別の態様では、本発明は、約3.0未満の有機的pH値及び/または約3.0未満の無機的pH値を有する培養培地で酵母細胞を培養することを含む、クラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞を培養する方法を特徴とする。培養工程は細胞を約35℃以上の温度で培養することを含んでよい。培養培地は細胞性呼吸のインヒビターを含んでよい。培養培地はまたペントース炭素を含んでよい。別の実施形態では、培養培地はトウモロコシ繊維加水分解物を含んでよい。
【0028】
別の態様では、本発明は、酵母細胞をトウモロコシ繊維加水分解物を含む培養培地と共に培養することを含む、クラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞を培養する方法を特徴とする。
【0029】
別の態様では、本発明は、約35℃以上の温度の培養培地で、約3.0未満の無機的pH値を有する培養培地で細胞を培養することを含む、クラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞を培養する方法を特徴とする。
【0030】
別の態様では、本発明は、約35℃以上の温度の培養培地で、ペントース炭素を含有する培養培地で細胞を培養することを含む、クラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞を培養する方法を特徴とする。
【0031】
別の態様では、本発明は、約35℃以上の温度の培養培地で、トウモロコシ繊維加水分解物を含有する培養培地で細胞を培養することが含む、クラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞を培養する方法を特徴とする。
【0032】
別の態様では、本発明は組換え配列及び選択された配列を含む核酸構築物を特徴とし、ここで組換え配列はクラブトリー陰性表現型を有する細胞のゲノム配列に対応し、ゲノム配列は細胞により発現される酵素をコードし、及び選択された配列は細胞内で有機生成物の形成を導く酵素をコードする。選択された配列が組換え配列により各々の末端でフランキングされているように、選択された配列が組換え配列内にあってよい。
【0033】
別の態様では、本発明はクラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞を提供すること、最終生成物を選択すること、最終生成物を生成するためにどの外来性酵素または複数の酵素を細胞に添加する必要があるかを同定すること、該細胞内で該最終生成物の生成を可能にするために該細胞において活性が低減されているべき外来性酵素または複数の酵素を同定すること、同定された外来性酵素または複数の酵素を提供された酵母細胞に添加すること、及び培養条件下で細胞が最終生成物を生成するように、提供された酵母細胞において同定された外来性酵素または複数の酵素の活性を低減させることを含む組換え酵母細胞を作製する方法を特徴とする。
【0034】
別の態様では、本発明は約2.0及び約6.5の間のpH値を有するトウモロコシ繊維加水分解物を特徴とする。加水分解物はグルコース、キシロース、及びアラビノースを含んでよい。加水分解物は約40g/lのグルコース、約40g/lのキシロース、及び約20g/lのアラビノースを含んでよい。また別に、加水分解物は約38.7g/lのグルコース、約39.1g/lのキシロース、約20.7g/lのアラビノース及び約1.6g/lのフルフラールを含んでよい。
【0035】
別の態様では、本発明はa)微生物の酵素活性が低減されている;酵素活性はピルビン酸塩デカルボキシラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、またはアセチルCoAシンターゼ活性でよい;微生物がエタノール及び酢酸塩の不在下では、該酵素活性が低減されていない対応する微生物で観察される成長速度の少なくとも約30%である成長速度を呈する培養条件下で微生物を培養すること;及びb)有機生成物の生成を促進させるために培養条件を変化させることを含む、有機生成物を生成するための方法を特徴とする。
【0036】
別の態様では、本発明はa)細胞性呼吸を促進する培養条件下で微生物を培養することであって、ここで微生物は酵素活性が低減されている;酵素活性がピルビン酸塩デカルボキシラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、またはアセチルCoAシンターゼ活性でよく、微生物はエタノール及び酢酸塩の不在下では、そのような酵素活性が低減されていない対応する微生物で観察される成長速度の少なくとも約30%である成長速度を呈する;及びb)培養条件を変化させて細胞性呼吸を低減させ、それにより有機生成物の生成を促進させることを含む、有機生成物を生成するための方法を特徴とする。
【0037】
特記しない場合、本明細書で用いる全ての技術的及び科学的用語は本発明が属する技術の通常の技術者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書にて記載するものと類似または等価である方法及び材料を本発明の実施または試験において使用できるが、適当な方法及び材料を以下に記載する。本明細書において記載した全ての出版物、特許出願、特許及びその他の参考文献はその全てを出展明示により本明細書の一部とする。矛盾する場合、定義を含めて本明細書を調整する。加えて材料、方法及び実施例は説明のためだけのものであり、限定することは意図しない。本発明の別の特徴及び利点は以下の詳細な記載から、及び請求の範囲から明らかになろう。
【0038】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は有機生成物の生成に関する方法及び材料を提供する。具体的には本発明は酵母細胞、酵母細胞を培養する方法、酵母細胞を作製する方法、核酸構築物、並びに種々の有機生成物を生成するための方法及び材料を提供する。
【0039】
本明細書で提供される酵母細胞を用いて有機生成物を生成することができる。かかる有機生成物を広範な適用において用いることができる。例えば本明細書に記載する酵母細胞により生成された有機生成物を食品の保存剤もしくは添加物、医薬品または化粧用生成物として用いることができ、これを用いてプラスチック及びその他の生成物を作製することができる。
【0040】
本発明の目的では、有機生成物は炭素原子を含有するいずれかの化合物である。
【0041】
例えば、カルボン酸塩(例えば乳酸塩、アクリル酸塩、クエン酸塩、イソクエン酸塩、アルファ・ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、オキザロ酢酸塩)、炭水化物(例えばD−キシロース)、アルジトール(例えばキシリトール、アラビトール、リビトール)、アミノ酸(例えばグリシン、トリプトファン、グルタミン酸塩)、脂質、エステル、ビタミン(例えばL−アスコルビン酸塩)、ポリオール(例えばグリセロール、1,3−プロパンジオール、エリスリトール)アルデヒド、アルケン、アルキン、及びラクトンは有機生成物である。このように、有機生成物は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の炭素原子を含有できる。加えて有機生成物は約1000未満(例えば約900、800、700、600、500、400、300、200、または100未満)の分子量を有してよい。例えばD−キシロース(C10)は分子量150の有機生成物である。さらに有機生成物は発酵生成物でよい。本明細書で用いる「発酵生成物」なる用語は発酵方法により生成されるいずれかの有機化合物を意味する。
【0042】
一般に、発酵方法は有機化合物、例えば炭水化物の化合物、例えばエチルアルコールへの嫌気的酵素変換を含み、アデノシン三リン酸(ATP)の形態でのエネルギーになる。従って発酵は、酸素分子よりもむしろ有機生成物が電子受容体として用いられる点で細胞性呼吸とは異なる。発酵生成物の実例には、非限定例としては酢酸塩、エタノール、酪酸塩及び乳酸塩などがある。
【0043】
有機生成物はピルビン酸塩誘導生成物でもよい。本明細書で用いる「ピルビン酸塩誘導生成物」なる用語は、たかだか15までの酵素的工程でピルビン酸塩から合成されるいずれかの化合物を意味する。酵素的工程は酵素活性を有するポリペプチドにより触媒されるいずれかの化学反応または一連の反応である。本明細書で用いる「酵素活性を有するポリペプチド」なる用語は反応もしくは複数の反応の完了時にそれ自体は破壊されないか、または変化しないで別の物質の化学反応を触媒するいずれかのポリペプチドを意味する。典型的には、酵素性ポリペプチドは1つまたはそれ以上の物質からの1つまたはそれ以上の生成物の形成を触媒する。かかるポリペプチドは、非限定例としては、酵素、例えばアコニターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、ケトグルタル酸塩デヒドロゲナーゼ、コハク酸塩チオキナーゼ、コハク酸塩デヒドロゲナーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸塩デヒドロゲナーゼ、クエン酸塩シンターゼ、2,5−ジオキシ吉草酸塩デヒドロゲナーゼ、5−デヒドロ−4−デオキシ−D−グルカル酸塩デヒドロゲナーゼ、グルカル酸塩デヒドラターゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、グルクロノラクトンリダクターゼ、L−グルクロノラクトンオキシダーゼ、2−デヒドロ−3−デオキシ−D−ペンタノエートアルドラーゼ、キシロネートデヒドラターゼ、キシロノラクトナーゼ、D−キシロースデヒドロゲナーゼ、乳酸塩デヒドロゲナーゼ、CoA−トランスフェラーゼ、ラクチル−CoAデヒドラターゼ、またはアクリリル−CoAヒドラターゼなどのいずれかの型の酵素活性を有することができる。
【0044】
特定の酵素活性を有するポリペプチドが天然発生または非天然発生のいずれかであるポリペプチドでよいことに注目することは重要である。天然発生ポリペプチドは野性型及び多型性ポリペプチドなどの天然に見出されるようなアミノ酸配列を有するいずれかのポリペプチドである。かかる天然発生ポリペプチドを非限定例としては哺乳動物、菌類、及び細菌種などのいずれかの種から入手することができる。非天然発生ポリペプチドは天然には見出されないアミノ酸配列を有するいずれかのポリペプチドである。従って、非天然発生ポリペプチドは天然発生ポリペプチドの変異体かまたは操作されたポリペプチドでよい。例えばクエン酸塩シンターゼ活性を有する非天然発生ポリペプチドはクエン酸塩シンターゼ活性を有する天然発生ポリペプチドの変異体でよく、少なくともいくつかのクエン酸塩シンターゼ活性を有している。ポリペプチドは例えば配列付加、欠失、及び/または置換により変異されていてよい。
【0045】
有機生成物が15以上の酵素的工程を必要とするピルビン酸塩から合成される場合、生成物はピルビン酸塩誘導生成物ではない。ピルビン酸塩誘導生成物の実例には、非限定例としてはクエン酸塩、アルファ・ケトグルタル酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、オキザロ酢酸塩、2−デヒドロ−3−デオキシ−D−キシロン酸塩、D−キシロン酸塩、D−キシロノラクトン、D−キシロース、アクリル酸塩、酢酸塩、エタノール、酪酸塩、及び乳酸塩などがある。
【0046】
本発明の目的では、「遊離酸」または「塩」の形態でよいカルボン酸塩生成物は塩形態命名法を用いて称される。例えば乳酸は乳酸塩と称される。従ってこの場合、「乳酸塩」なる用語には乳酸及び乳酸塩が含まれることは理解されよう。
【0047】
本明細書で用いる「核酸」なる用語はRNA並びにcDNA、ゲノムDNA、及び合成(化学的に合成された)DNAなどのDNAの双方を包含する。核酸は二本鎖または一本鎖でよい。一本鎖の場合、核酸はセンス鎖またはアンチセンス鎖でよい。加えて核酸は環状または直線状でよい。核酸分子及び特定の細胞に関して本明細書で用いる「外来性」または「異種性」なる用語は天然に見出されるその特定の細胞に由来しないいずれかの核酸分子を意味する。従って全ての非天然発生核酸分子は、一度細胞に導入されると、細胞に対して外来性であると考えられる。核酸分子が全体として天然に存在しない場合、非天然発生核酸分子が天然に見出される核酸配列または核酸配列のフラグメントを含有できることに注目することが重要である。例えば、発現ベクター内にゲノムDNA配列を含有する核酸分子は非天然発生核酸分子であると考えられ、従って核酸分子は全体としては(ゲノムDNAプラスベクターDNA)天然には存在しないので、一度細胞に導入されると、細胞に対してローブ外来性であると考えられる。従って全体としては天然には存在しないいずれかのベクター、自律性複製プラスミド、またはウイルス(例えばレトロウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)は非天然発生核酸分子であると考えられる。従って、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処置により生成されたゲノムDNAフラグメント及びcDNAのフラグメントは天然には見出されない別個の分子として存在するので、非天然発生核酸分子であると考えられる。従ってまた、天然には見出されない並びでプロモーター配列及びポリペプチドコード化配列(例えばcDNAまたはゲノムDNA)を含有するいずれかの核酸分子は非天然発生核酸分子であると考えられる。
【0048】
「内在性」なる用語は外来性ではないゲノム材料を意味する。一般に内在性ゲノム材料は生物、組織または細胞内で発達し、組換え技術により挿入または修飾されない。内在性ゲノム材料はその範囲内に天然発生変種を含む。
【0049】
天然発生である核酸分子が特定の細胞に対して外来性でよいことに注目することもまた重要である。例えばヒトXから単離された染色体全体は、一度染色体がヒトYの細胞に導入されると、ヒトYの細胞に関して外来性の核酸分子であると考えられる。
【0050】
本明細書で用いる「遺伝的に修飾された」なる用語はそのゲノムが例えばゲノム材料の付加、置換または欠失により修飾されている生物を意味する。ゲノム材料の付加または欠失の方法は公知であり、非限定例としてはランダム変異誘発、挿入、欠失及び置換などの点変異、ノックアウト技術、並びに安定及び一過性双方の形質転換体などの組換え技術を用いる生物の核酸配列での形質転換などがある。酵母細胞は天然にまたは遺伝的修飾のためのいずれかによりデンプンを異化することもでき、例えば菌類基盤のセルラーゼの付加によりセルロース誘導体を異化するように遺伝的に修飾することさえできる。
【0051】
1.クラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞
本発明はクラブトリー陰性表現型を有する種々の遺伝子操作された酵母細胞を提供する。かかる組換え酵母細胞を用いて有機生成物を生成できる。例えば、本発明はクラブトリー陰性表現型を有し、有機生成物の形成を導く酵素活性を有するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有する酵母細胞を提供する。かかる酵母細胞が有機生成物を生成する場合は、酵母細胞は本発明の範囲内である。生成された有機生成物は酵母細胞から分泌でき、有機生成物を回収するための細胞膜を破壊する必要性は排除されていることは注目される。典型的には本発明の酵母細胞は、生成物の生成に最適な条件下で培養した場合に消費されるグルコース100gあたり有機生成物の収量が少なくとも約40g(例えば少なくとも約45、50、55、65、70、75、80、85、90、または95g)である有機生成物を生成する。特定の酵母細胞に関して有機生成物生成の収量を決定する場合、いずれかの方法を用いることができる。例えばKiersら、Yeast 14(5):459−469(1998)を参照。コードされるポリペプチドの酵素活性がNADH消費様式で有機生成物の形成を導くことができることもまた注目される。換言すれば、有機化合物の生成はエネルギー源としてNADHを要求し得る。
【0052】
「NAD」なる用語は特定の酸化・還元反応で電子及び水素キャリヤとして作用するコファクターを意味し、一方「NADH」なる用語はNADの還元体を意味する。合成にNADHを要求する有機生成物の実例には、非限定例としては乳酸塩、エタノール、酢酸塩、及びアクリル酸塩などがある。典型的には本発明の範囲内にある酵母細胞はヘキソース炭素例えばグルコースを異化することもできる。しかしながら、かかる酵母細胞はまたペントース炭素(例えばリボース、アラビノース、キシロース、及びリキソース)を異化することもできる。換言すれば、本発明の範囲内にある酵母細胞は天然にペントース炭素を利用できるか、またはペントース炭素を利用するように操作できる。例えば酵母細胞に、キシロースを異化できるように、キシロースリダクターゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ及び/またはキシルロキナーゼをコードする外来性核酸分子を提供することができる。酵母細胞はまた天然にまたは遺伝子修飾のためにデンプンを異化することもでき、例えば菌類基盤のセルラーゼを付加することによりセルロース誘導体を異化するように遺伝子修飾することさえできる。クラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞はクラブトリー効果を呈さないいずれかの酵母細胞である。
【0053】
「クラブトリー陰性」なる用語は天然発生生物及び遺伝子修飾された生物の双方にあてはまる。簡単には、クラブトリー効果は好気的条件下で培養した場合の、高グルコース濃度(例えば50g/l グルコース)の存在のための微生物による酸素消費の阻止として定義される。換言すれば、クラブトリー陽性表現型を有する酵母細胞はグルコースの存在のための酸素利用性に関係なく発酵を続けるが、一方クラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞は酸素消費のグルコース媒介阻止を呈さない。典型的にはクラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞の実例には、非限定例としては以下の属からの酵母細胞などがある:クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、ハンゼヌラ(Hansenula)、カンジダ(Candida)、トリコスポロン(Trichosporon)またはヤマダザイマ(Yamadazyma)。
【0054】
本明細書に記載するように、本発明は幅広い種類の異なる有機生成物を生成できる多くの異なる型の組換え酵母細胞を提供する。例えば、酵母細胞は乳酸塩を生成するように、乳酸塩デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外来性核酸分子含有できる。かかるポリペプチドの実例には、非限定例としてはウシ乳酸塩デヒドロゲナーゼ、細菌性乳酸塩デヒドロゲナーゼ、及び菌類乳酸塩デヒドロゲナーゼ(例えばL.ラクチス(L.lactis)またはK.サーモトレランス(K.thermotolerans)菌類乳酸塩デヒドロゲナーゼ)などがある。また、酵素活性、例えば乳酸塩デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドは天然発生または非天然発生でよい。本明細書で記載する酵母細胞は特定の外来性核酸分子の単一のコピーまたは複数のコピー(例えば約5、10、20、35、50、75、100または150コピー)を含有できることに注目することが重要である。例えば、酵母細胞は約50コピーの外来性核酸分子Xを含有できる。本明細書で記載する酵母細胞は1つ以上の特定の外来性核酸分子を含有できることに注目することも重要である。例えば酵母細胞は約50コピーの外来性核酸分子X及び約75コピーの外来性核酸分子Yを含有することができる。これらの場合、各々の異なる核酸分子はその独自の酵素活性を有する異なるポリペプチドをコードできる。例えば、酵母細胞はアクリル酸塩が生成されるように4つの異なる外来性核酸分子を含有することができる。この実例では、かかる酵母細胞は乳酸塩デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする第1の外来性核酸分子、CoA−トランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする第2の外来性核酸分子、ラクチル−CoA−デヒドラターセ活性を有するポリペプチドをコードする第3の外来性核酸分子、及びアクリリル−CoA−ヒドラターセ活性を有するポリペプチドをコードする第4の外来性核酸分子を含有できる。
【0055】
別の実例では、酵母細胞はD−キシロースが生成されるように4つの異なる外来性核酸分子を含有することができる。とりわけ、かかる酵母細胞は2−デヒドロ−3−デオキシ−D−ペンタノエートアルドラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする第1の外来性核酸分子、キシロン酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードする第2の外来性核酸分子、キシロノラクトナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする第3の外来性核酸分子、及びD−キシロースデヒロドゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする第4の外来性核酸分子を含有できる。さらに別の実例では、酵母細胞はビタミン、L−アスコルビン酸塩が生成されるように6つの異なる外来性核酸分子を含有することができる。とりわけ、かかる酵母細胞は2,5−ジオキシ吉草酸デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする第1の外来性核酸分子、5−デヒドロ−4−デオキシ−D−グルカル酸塩デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする第2の外来性核酸分子、グルカル酸デヒドラターゼ活性を有するポリペプチドをコードする第3の外来性核酸分子、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする第4の外来性核酸分子、グルクロノラクトンリダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードする第5の外来性核酸分子、及びグルクロノラクトンオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする第6の外来性核酸分子を含有できる。
【0056】
望ましい有機生成物が光学的に純粋であるような(例えば約90、95、99%純粋)酵素性ポリペプチドを用いることができることに注目することが重要である。例えば、(L)−乳酸塩デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドを用いて(L)−乳酸塩を生成できる。
【0057】
本発明の範囲内である酵母細胞はまた酵素活性、例えば、ピルビン酸塩デカルボキシラーゼ及び/またはアルコールデヒドロゲナーゼ活性が低減されていてもよい。本明細書で細胞及び特定の酵素活性に関して用いる「低減された」なる用語は同一種の匹敵する酵母細胞において測定される酵素活性よりも低レベルの酵素活性を意味する。従って、全てではないがたいていの匹敵する酵母細胞は少なくともいくつかのピルビン酸塩デカルボキシラーゼ活性を有しているので、ピルビン酸塩デカルボキシラーゼ活性を欠如した酵母細胞はピルビン酸塩デカルボキシラーゼ活性が低減されていると考えられる。このように酵素活性が低減されているのは酵素濃度の低下、酵素の特異活性の低下、またはその組み合わせの結果であり得る。多くの異なる方法を用いて酵素活性が低減されている酵母細胞を作製することができる。例えば、酵母細胞を操作して、一般的な変異誘発またはノックアウト技術を用いて酵素コード化遺伝子座を破壊させることができる。Methods in Yeast Genetics(1997年版)Adam、Gottschling、Kaiser及びStems、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(1998)を参照。また別にアンチセンス技術を用いて酵素活性を低減させることができる。例えば酵母細胞を操作して酵素が作製されるのを防御するアンチセンス分子をコードするcDNAを含有させることができる。本明細書で用いる「アンチセンス分子」なる用語は内因性ポリペプチドのコーディング鎖に対応する配列を含有するいずれかの核酸分子を包含する。アンチセンス分子はフランキング配列(例えば制御配列)を有することもできる。従ってアンチセンス分子はリボザイムまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドでよい。分子がRNAを切断する場合、リボザイムは、非限定例としてはヘアピン、ハンマーヘッド、またはアクスヘッド(axhead structures)構造などのいずれかの一般構造を有してよい。
【0058】
酵素活性が低減されている酵母細胞をいずれかの方法を用いて同定することができる。例えばピルビン酸塩デカルボキシラーゼが低減されている酵母細胞を一般的な方法を用いて容易に同定できる。Ulhrich、Methods in Enzymology 18:109−115(1970)参照。
【0059】
2.クラブトリー陽性またはクラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞
本発明はまたクラブトリー陰性表現型を有する必要のない種々の遺伝子操作された酵母細胞、すなわちクラブトリー陽性または陰性のいずれかでよい酵母細胞をも提供する。かかる組換え酵母細胞を用いて有機生成物を生成することができる。例えば、本発明は細胞によるペントース炭素(例えばリボース、アラビノース、キシロース及びリキソース)の異化を促進するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有する酵母細胞を提供する。とりわけ、酵母細胞は、キシロースがより効率的な様式で代謝されるように、キシロースリダクターゼ、キシリトールデヒドロゲナーゼ、及び/またはキシルロキナーゼをコードする外来性核酸分子を有することができる。加えて、ペントース炭素を異化できる酵母細胞は連続的または同時のいずれかでヘキソース炭素(例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース(iodose)、ガラクトース、及びタロース)を異化することもできる。例えばキシロース及びグルコースが同時に異化されるように酵母細胞を操作することができる。ペントース炭素を異化する能力が増強されている酵母細胞を用いてペントース炭素供給源から有機生成物を生成できる酵母細胞を操作することができることが注目される。ペントース炭素供給源例えばキシロースは、一般にヘキソース炭素供給源例えばグルコースほど高価でないので、この特徴は特に有利である。異化できるその他の炭素供給源には、非限定例としてはメリビオース、スクロース、フルクトース、ラフィノース、スタキオース、デンプン(例えばトウモロコシデンプン及び小麦デンプン)、及び加水分解物(例えばトウモロコシ繊維加水分解物及びその他のセルロース誘導体加水分解物)などがある。
【0060】
加えて、本発明は細胞の細胞質におけるアセチルCo−Aの蓄積を促進するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有する酵母細胞を提供する。例えば、酵母細胞はクエン酸塩リアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を有することができる。また別に、酵母細胞はミトコンドリア膜を通るアセチルCo−A透過性を促進するミトコンドリア膜ポリペプチドをコードする外来性核酸分子を有することができる。エタノールを生成する能力を欠如する多くの酵母細胞がエタノール及び酢酸塩の不在下で成長できないことは注目される。典型的には、ピルビン酸塩デカルボキシラーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼのいずれかの活性がなんらかの様式で欠如している場合、酵母細胞はエタノールを生成する能力を欠如する。例えばピルビン酸塩デカルボキシラーゼ活性を欠如するクラブトリー陽性酵母(例えばサッカロミセス(Sacchaomyces))はエタノール及び酢酸塩の不在下はであまり成長しない。
【0061】
従って、ピルビン酸塩のその他の有機生成物(例えば乳酸塩及びアクリル酸塩)への利用に再志向させるためにエタノール生成を低減させる様式でかかるクラブトリー陽性酵母を操作することにより、エタノール及び酢酸塩の不在の場合、特にグルコースが存在するときにクラブトリー陰性酵母が細胞性呼吸を制限するので、特徴的な低成長に至る。本明細書に記載するように、細胞質酢酸塩濃度及びアセチル−CoAシンターゼ活性に依存する様式以外のなんらかの様式で細胞質アセチル−CoAの蓄積を促進できる酵母細胞は、エタノールを生成できない場合でさえもエタノール及び酢酸塩の不在下で成長できる。エタノールの生成する能力を欠如しているが、エタノール及び酢酸塩の不在下で成長する能力を有する酵母細胞はエタノール以外の有機生成物を生成するためにピルビン酸塩の利用を再志向できることは注目される。
【0062】
酵母のいずれかの型は細胞の細胞質におけるアセチル−CoAの蓄積を促進するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有できる。例えば、クラブトリー陰性またはクラブトリー陽性表現型を有する酵母細胞は、細胞の細胞質におけるアセチル−CoAの蓄積を促進するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有できる。典型的には、酵母細胞を(1)細胞がピルビン酸塩デカルボキシラーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼ活性を欠如するように外来性核酸分子を含有する細胞を操作すること、(2)滴定量の呼吸インヒビター(例えばアンチマイシンA、シアン化合物またはアジド)の存在下で培養している間に細胞の成長特性を決定すること、及び(3)これらの成長特性を、外来性核酸分子を含有せず、しかもピルビン酸塩デカルボキシラーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼ活性を欠如するように操作された匹敵する酵母細胞で観察される成長特性と比較することにより同定できる。かかる比較により外来性の核酸分子の存在のためにより好ましい成長特性を有すると決定された酵母細胞は、細胞の細胞質におけるアセチル−CoAの蓄積を促進するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有すると考えられる。
【0063】
細胞の細胞質におけるアセチル−CoAの蓄積を促進するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有する酵母細胞はまた、酵素活性、例えばピルビン酸塩デカルボキシラーゼ及び/またはアルコールデヒドロゲナーゼ活性が低減されていてよい。例えば酵母細胞はエタノールを生成する能力を欠如していてよい。典型的には、かかる酵母細胞はエタノール及び酢酸塩を欠如する培養条件下で外来性核酸分子を含有せず、しかも類似の培養条件下(すなわちエタノール及び酢酸塩を欠如する培養条件)で培養された匹敵する酵母細胞(すなわちエタノールを生成する能力を欠如する酵母細胞)で観察される成長速度よりも早い(すなわち約5、10、20、35、50、75、100、150、200%またはそれ以上)成長速度を有する。
【0064】
本発明はまたポリペプチドの活性が低減されている酵母細胞をも提供する。かかる酵母細胞はクラブトリー陰性またはクラブトリー陽性表現型を有してよい。例えば、本発明の範囲内である酵母細胞は原形質膜ポリペプチド(例えば原形質膜トランスポーター)、細胞質ポリペプチド(例えばピルビン酸塩デカルボキシラーゼ)、及び/またはミトコンドリアポリペプチド(例えばピルビン酸塩デヒドロゲナーゼ)の活性が低減されていてよい。
【0065】
「原形質膜トランスポーター」なる用語は原形質膜を通る有機生成物の移動を促進するポリペプチドを意味する。かかるポリペプチドの実例には、非限定例としてはカルボン酸トランスポーター、例えばS.セレビジエ(S.cerevisiae)のJEN1(ジェンバンク受け入れ番号U24155)などがある。「ミトコンドリアポリペプチド」なる用語は、非限定例としてはピルビン酸塩デヒドロゲナーゼなどのミトコンドリア内で機能するいずれかのポリペプチド、乳酸塩またはアセチル−CoAの異化に参与するポリペプチド(例えばチトクロームb2ポリペプチド)、及びクレブスサイクル酵素を意味する。クレブスサイクル酵素にはアコニターゼ、イソクエン酸塩デヒドロゲナーゼ、ケトグルタル酸塩デヒドロゲナーゼ、コハク酸塩チオキナーゼ、コハク酸塩デヒドロゲナーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸塩デヒドロゲナーゼ、及びクエン酸塩シンターゼなどがある。本明細書で記載するように、酵素活性が低減されている酵母細胞には特定の酵素活性を完全に欠如している酵母細胞などがある。酵母細胞及びポリペプチド活性に関して本明細書で用いる「低減された」なる用語は、類似の条件下で同一種の匹敵する酵母細胞で測定された活性レベルよりも低い活性レベルを意味する。従って、匹敵する細胞が少なくともいくつかの輸送活性を有する場合、特定の輸送活性を欠如する酵母細胞は、輸送活性が低減されていると考えられる。かかる低減されたポリペプチド活性はポリペプチド濃度の低下、ポリペプチドの特異活性の低下、またはその組み合わせの結果であり得る。種々の方法のいずれかを用いてポリペプチド活性が低減されている酵母細胞を作製することができる。例えば、ミトコンドリアポリペプチドをコードする核酸配列を有する遺伝子座を、例えば一般的な変異誘発またはノックアウト技術により不活性化することができる。
【0066】
ミトコンドリア酵素の活性が低減されている酵母細胞はクレブスサイクル生成物(例えばクエン酸塩、イソクエン酸塩、アルファ・ケトグルタル酸塩、サクシニル−CoA、コハク酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、及びオキザロ酢酸塩)を蓄積できるということが注目される。例えば、フマラーゼ活性が低減されている酵母細胞はフマル酸塩を蓄積できる。加えて、酵母細胞は細胞が有機生成物を生成するように、有機生成物の形成を導く酵素活性を有するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有できる。
【0067】
いくつかのクレブスサイクル生成物はミトコンドリア膜を透過できないことに注目することが重要である(例えば、アルファ・ケトグルタル酸塩及びサクシニル−CoA)。従って、特定のクレブスサイクル酵素の活性の低減により、結果的にミトコンドリア内腔で特定のクレブスサイクル生成物の蓄積に至る。これらの場合、クレブスサイクル酵素の活性が低減されている酵母細胞を、各々が異なる酵素活性を有するポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の異なる外来性核酸分子を有し、望ましいクレブスサイクル生成物が細胞質内に蓄積されるように操作できる。例えばケトグルタル酸デヒドロゲナーゼの活性の低減により、結果的にアルファ・ケトグルタル酸塩の蓄積に至り、今度はイソクエン酸塩の蓄積に至る。アルファ・ケトグルタル酸塩はミトコンドリア膜を透過できず、一方イソクエン酸塩はミトコンドリア膜を透過できる。従って、イソクエン酸塩を細胞の細胞質内に蓄積できる。しかしながら、イソクエン酸塩デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外来性核酸分子をも含有し、細胞質内に機能的なポリペプチドを発現する酵母細胞は細胞質アルファ・ケトグルタル酸塩を生成できる。従って外来性核酸分子が細胞質内で機能的である同一である(または異なる)クレブスサイクル酵素をコードする場合、特定のクレブスサイクル酵素の活性の低減により、結果的に細胞質内での種々のクレブスサイクル生成物(またはクレブスサイクル生成物に由来する生成物)の生成を導くことができる。
【0068】
さらに本発明はバイオマスまたは望ましい有機生成物いずれかの生成から炭素供給源の利用をそらす酵素の活性を低減させた酵母細胞を提供する。例えばグリセロールまたは特定の経路内の酵素を破壊することができ、バイオマスまたは望ましい有機生成物の生成のために培養培地中の炭素供給源が優先的に利用される。グリセロール経路の実例には、非限定例としてはジヒドロキシアセトンリン酸塩リダクターゼなどがある。特定の経路酵素の実例には、非限定例としてはアルファ・アセト乳酸塩シンターゼ及びアルファ・アセト乳酸塩デカルボキシラーゼなどがある。またいずれかの方法を用いて酵素の活性を低減されることができる。
【0069】
さらに、本発明で提供されるいずれかの酵母細胞はキラープラスミドとして機能する外来性核酸分子を含有することができる。本明細書で用いる「キラープラスミド」なる用語は、別の種の酵母を殺す能力を有するある種の酵母を提供する核酸分子を意味する。例えばキラープラスミドを含有するクルイベロミセス(Kluyveromyces)属の酵母細胞はサッカロミセス(Sacchaomyces)属の酵母の成長を防御できる。従って、キラープラスミドを有する酵母細胞を用いて大規模容量の生成過程で生じる夾雑の問題を防ぐことができる。加えて、いずれかの型のキラープラスミドを酵母細胞に与えることができる。例えばK.テチス(K.thetis)から単離されたキラープラスミドをK.マルキシアヌス(K.marxianus)酵母細胞に与えることができる。キラープラスミドを含有する酵母細胞を一般的な方法を用いて容易に同定できる。例えばGungeら、J.Bacteriol.145:382−390(1981);Gunge及びKitada、Eur.J.Epidermiol.4:409−414(1988);及びWesolowski−Louvelら、Nonconventional yeasts in Biotechnology;Kluyveromyces lactis、Klaus Wolf編、スプリンガー・フェアラーグ、ベルリン、138−201頁(1996)参照。
【0070】
同様に、本発明で提供されるいずれかの酵母細胞は、酵母細胞が低pH環境に対してさらに耐性になるように修飾されたATPアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有することができる。例えば、細胞外プロトン濃度が高い場合に低い細胞質プロトン濃度を効果的に維持するATPアーゼを酵母細胞に与えることができる。かかるポリペプチドをMorsommeら(EMBOJ.15:5513−5526(1996))に記載されるように操作できる。
【0071】
本明細書で記載される組換え酵母細胞のいずれかが望ましい遺伝子操作のいずれかの組み合わせを含有できることに注目することが重要である。例えば、クラブトリー陽性表現型を有する酵母細胞は、クエン酸塩リアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外来性核酸分子及び有機生成物の形成を導く酵素活性を有するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有できる。
【0072】
3.適当な生物
種々の生物が本発明による使用に適している。クラブトリー陰性及びクラブトリー陽性酵母微生物、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)種例えばS.セレビジエ(S.cerevisiae)及びS.ウバルム(S.uvarum)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)例えばK.ラクチス(K.lactis)及びK.マルキシアヌス(K.marxianus)、ピキア(Pichia)、ハンゼヌラ(Hansenula)例えばH.ポリモルファ(H.polymorpHa)、カンジダ(Candida)、トリコスポロン(Trichosporon)、ヤマダザイマ(Yamadazyma)例えばY.スティプチック(Y.styptic)、またはトルラスポラ・プレトリエンシス(Torulaspora pretoriensis)などの広範な微生物種からの生物を乳酸生成のための宿主として提供することもできる。例えば天然に乳酸を生成する生物、例えばリゾパス・オリゼ(Rhizopus oryzae)を酸耐性、収率改善、及び光学的に純粋な乳酸のために遺伝的に修飾することができる。アスペルギルス(Aspergillus)種もまた種々の有機酸、例えばクエン酸を生成し、低pHに耐性があることが知られている。乳酸を生成するためにアスペルギルス(Aspergillus)種を遺伝的に修飾する方法を利用できる。さらに菌類例えばリゾパス(Rhizopus)及びアスペルギルス(Aspergillus)種は、炭素供給源として使用するためにデンプン及びその他の炭水化物を単量体炭水化物に分解することができる酵素を生成する。
【0073】
原核生物、例えば大腸菌(Escherichia coli)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、及びバシラス(Bacillus)種は乳酸生成のために遺伝的に修飾されているか、または修飾され得る。バシラス・コアグランス(Bacillus coagulans)として同定されている微生物もまた天然に乳酸を生成し、低pH乳酸生成を改善するためにさらに遺伝的に修飾され得る。加えて、アーキア(Archea)ファミリーからの高極限性生物は極端な低pH及び高温に耐えることができる。このファミリーから選択された種の遺伝的修飾により乳酸生成株を提供できる。
【0074】
4.遺伝的実施形態
酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子をいずれかの方法を用いて同定及び入手することができる。例えば標準的な核酸シークエンシング技術及び遺伝子コードに基づいて核酸配列をアミノ酸配列に翻訳するソフトウェアを用いて特定の核酸が公知の酵素性ポリペプチドといずれかの配列相同性を有するかどうかを決定することができる。配列アラインメントソフトウェア、例えばMEGALIGN(登録商標)(DNASTAR、マディソン、ウィスコンシン州、1997)を用いて種々の配列と比較することができる。加えて、公知の酵素性ポリペプチドをコードする核酸分子を一般的な分子クローニング技術(例えば位置指定変異誘発)を用いて変異させることができる。可能な変異には、非限定例としては欠失、挿入及び塩基置換、並びに欠失、挿入及び塩基置換の組み合わせなどがある。さらに核酸及びアミノ酸データベース(例えばジェンバンク(登録商標))を用いて酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を同定することができる。簡単には、酵素活性を有するポリペプチドになんらかの相同性を有するいずれかのアミノ酸配列をクエリー(query)として用いてジェンバンク(登録商標)を検索することができる。次いで同定されたポリペプチドを分析してこれらが酵素活性を呈するかどうかを決定することができる。
【0075】
PCRなどの一般的な分子クローニングまたは化学的核酸合成手順及び技術を用いて酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を同定し、入手することができる。PCRとは目標の核酸を米国特許第4683195号に記載される方法に類似の方法で増幅する手順または技術、並びにそこに記載されたそれに続く修飾の手順を意味する。一般に、目的の領域の末端からのまたはそれを越えて配列情報を用いて、増幅される可能性のある鋳型の反対の鎖に同一または類似するオリゴヌクレオチドプライマーを設計する。PCRを用いてRNAまたはDNAから核酸配列を増幅することができる。例えば、PCR増幅により全細胞性RNA、全ゲノムDNA、及びcDNAから、並びにバクテリオファージ配列、プラスミド配列、ウイルス配列等から核酸配列を単離することができる。RNAを鋳型の供給源として用いる場合、逆転写酵素を用いて相補的DNA鎖を合成することができる。
【0076】
さらに核酸ハイブリダイゼーション技術を用いて酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を同定及び入手することができる。簡単には、公知の酵素性ポリペプチドをコードするいずれかの核酸分子またはそのフラグメントをプローブとして用いて中程度から高度なストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションにより類似の核酸分子を同定することができる。次いでかかる類似の核酸分子を単離、シークエンシング、及び分析してコードされたポリペプチドが酵素活性を有するかどうかを決定することができる。サザンまたはノーザン分析によりハイブリダイゼーションを行い、プローブにハイブリダイズするDNAまたはRNA配列を各々同定することができる。プローブを放射性同位元素、例えば32P、酵素、ジゴキシゲニンで、またはビオチン化により標識することができる。技術分野で公知の標準的な技術、例えばSambrookら、Molecular Cloning(1989)、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、プレインビュー、ニューヨーク州のセクション7.39−7.52に記載された技術を用いて、分析すべきDNAまたはRNAを電気泳動によりアガロースまたはポリアクリルアミドゲルで分離し、ニトロセルロース膜、ナイロンまたはその他の適当な膜に写し、プローブでハイブリダイズすることができる。典型的には、プローブは少なくとも約20ヌクレオチドの長さである。例えば、哺乳動物クエン酸塩リアーゼをコードする20ヌクレオチド配列に相当するプローブを用いてクエン酸リアーゼ活性を有する菌類ポリペプチドをコードする核酸分子を同定することができる。加えて、20ヌクレオチドよりも長いかまたは短いプローブを用いることができる。
【0077】
いずれかの方法を用いて外来性核酸分子を細胞に導入することができる。実際に、核酸を酵母細胞に導入するための多くの方法が技術分野の技術者に公知である。例えば、形質転換、エレクトロポレーション、抱合、及びプロトプラストの融合が核酸を酵母細胞に導入するための一般的な方法である。例えばItoら、J.Bacterol.153:163−168(1983);Durrensら、Curr.Genet.18:7−12(1990);及びBecker及びGuarente、Methods in Enzymology 194:182−187(1991)を参照。
【0078】
本発明の酵母細胞内に含まれる外来性核酸分子がいずれかの形態でその細胞内で保持され得るということに注目することが重要である。例えば、外来性核酸分子を細胞のゲノムに組み込むか、またはエピソーム状態で維持することができる。換言すると、本発明の細胞は安定したまたは一過性の形質転換体でよい。加えて、本明細書に記載する酵母細胞は前記した特定の外来性核酸分子の単一のコピーまたは複数のコピー(例えば約5、10、20、35、50、75、100または150コピー)を含有できる。外来性核酸分子からのアミノ酸配列を発現する方法は技術分野の技術者に公知である。かかる方法には、非限定例としては制御エレメントがポリペプチドをコードする核酸配列の発現を促進するように核酸を構築することなどがある。典型的には制御エレメントは転写のレベルで別のDNA配列の発現を制御するDNA配列である。従って、制御エレメントには、非限定例としてはプロモーター、エンハンサー等がある。さらに酵母細胞において外来性核酸分子からのポリペプチドを発現する方法は技術分野の技術者に公知である。例えばクルイベロミセス(Kluyveromyces)内で外来性ポリペプチドを発現できる核酸構築物は公知である。例えば米国特許第4859596号及び第4943529号を参照。
【0079】
本明細書で記載した、本発明の範囲内である酵母細胞は、例えば有機生成物の形成を導く酵素活性を有するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を含有する。外来性核酸分子を含有する細胞を同定する方法は技術分野の技術者に公知である。かかる方法には、非限定例としてはPCR及び核酸ハイブリダイゼーション技術、例えばノーザン及びサザン分析などがある。免疫組織化学的及び生化学的技術を用いて特定の核酸分子によりコードされる、コードされた酵素性ポリペプチドの発現を検出することにより細胞がその特定の核酸を含有するかどうかを決定できる場合もある。例えばコードされた酵素に特異性を有する抗体を用いて特定の酵母細胞がそのコードされた酵素を含有するかどうかを決定することができる。さらに、生化学的技術を用いて酵素性ポリペプチドの発現の結果として生成された有機生成物を検出することにより、細胞が酵素性ポリペプチドをコードする特定の核酸分子を含有するかどうかを決定することができる。
【0080】
例えば乳酸塩デヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする外来性核酸分子を、通常かかるポリペプチドを発現しない酵母細胞へ導入した後の乳酸塩の検出により、酵母細胞が導入された外来性核酸分子を含有するのみならず、その導入された外来性核酸分子からコードされた酵素性ポリペプチドを発現することを示すことができる。特異的酵素活性または特定の有機生成物の存在を検出する方法は技術分野の技術者に公知である。例えば乳酸塩の存在を他の場合に記載されるように決定することができる。Witteら、J.Basic Microbiol.29:707−716(1989)参照。
【0081】
本発明はまた組換え配列及び選択された配列を含有する核酸構築物をも提供する。本明細書で用いる「組換え配列」なる用語は、細胞内で見出されるゲノム配列に対応するいずれかの核酸配列を意味する。本明細書で記載する組換え配列を用いてノックアウト生物の作製の間に組換え事象を志向することができる。換言すると、組換え配列を用いて特定の酵素をコードする核酸配列を含有する遺伝子座を特異的に破壊することができる。
【0082】
本明細書で用いる「選択された配列」なる用語にはいずれかの核酸配列が含まれる。典型的には選択された配列は、細胞内で有機生成物の形成を導く酵素活性を有するポリペプチドをコードする。従って、本発明の核酸構築物を用いて、単一工程で内因性酵素活性をノックアウトし、外来性酵素活性を付加することができる。たいていの場合、選択された配列は組換え配列により各々の末端でフランキングされるように組換え配列内にある。
【0083】
5.有機生成物及び培養方法
本発明は、本発明で提供されるいずれかの酵母細胞またはその他の微生物細胞を用いて有機生成物を生成する方法を提供する。かかる方法には、酵母細胞を提供すること、及び有機生成物(例えばグリセロール、アクリレート、キシロース、アスコルビン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、イソクエン酸塩、アルファ・ケトグルタル酸塩、サクシニル−CoA、コハク酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、及びオキザロ酢酸塩)が生成されるように、培養培地で提供された酵母細胞を培養することが含まれる。一般的には培養培地及び/または培養条件を2つのカテゴリーに分類することができる:細胞性呼吸及び/またはバイオマスの生成を促進するもの、並びに細胞性呼吸を低下させるもの。典型的には、細胞性呼吸を促進する培養培地及び/または培養条件を、急速な成長が必要であるか、または生成すべき有機生成物を細胞性呼吸なしには生成できない状況で用いる。かかる有機生成物は、非限定例としてはクレブスサイクル生成物などでよい。一方、細胞性呼吸を低下させる培養培地及び培養条件を、急速な成長が必要でないかもしくは望ましくない、または生成されるべき有機生成物を細胞性呼吸なしに生成できる状況で用いる。かかる有機生成物には、非限定例としては乳酸塩、アクリル酸塩、及びキシロースなどがある。
【0084】
本明細書で用いる「細胞性呼吸を促進する」または「バイオマス生成を促進する」なる表現は、培養条件に関する場合、培養培地中で炭素供給源が酸化的呼吸によるかまたはバイオマスを生成するために優先的に代謝されるように、細胞培養条件が維持されることを意味する。本明細書で用いる「バイオマス」なる用語は生物の乾燥重量を意味する。本明細書で用いる「バイオマスを生成するために優先的に代謝される」なる表現は、消費される炭素供給源(炭水化物の形態で)のグラムあたり少なくとも約0.3gのバイオマスが生成される(例えば、少なくとも約0.4、0.45、0.5または0.5gのバイオマス)ことを意味する。一般に、炭素供給源のグラムあたり約0.3から約0.6gのバイオマスが生成される。培養物中のバイオマスの量(細胞乾燥重量)を決定する方法は公知であり、例えばPostmaら、「サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cervisiae)のグルコース制限ケモスタット培養におけるクラブトリー効果の酵素分析」Appl.Environ.Microbiol.53:468−477(1989);及びKliersら、「クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)CBS 2359のバッチ及びケモスタット培養におけるアルコール性発酵の制御」Yeast 14:459−469(1998)に記載される方法などがある。消費される炭素供給源の量の決定方法は公知であり、例えばHPLC法などがある。
【0085】
炭素供給源利用の効率は炭素供給源及び生物に依存し得ることに注目することが重要である。従って、炭水化物以外の炭素供給源を含む複合成長培地を用いることができるが、炭素供給源のグラムあたり生成されるバイオマスの量は消費される炭素供給源のグラムあたり生成されるバイオマスの量のみを意味する。
【0086】
一般に細胞性呼吸のインヒビターを含有する培養培地(例えばアンチマイシンA、シアン化合物、及びアジド)は細胞性呼吸を低下させることができるが、一方かかるインヒビターの不在により細胞性呼吸を促進させることができる。同様に、嫌気的培養条件は細胞性呼吸を低下させることができるが、一方好気的培養条件は細胞性呼吸を促進させることができる。好気的条件は酸素が導入されるかまたは天然に発生し、呼吸経路の基質として提供されるいずれかの条件である。一般に、「好気的」なる用語は培養培地が少なくとも0.1VVM(空気容量/液体容量/分)(例えば0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、1.5または2.0VVM以上)の空気流のもとで維持されている培養条件を意味する。
【0087】
空気以外の気体を用いる場合、次いで名目VVMが気体の酸素含量に基づいて等価である空気に調整する。また別に、「好気的」を大気圧下、空気で飽和された条件で存在する量に相対して少なくとも2%の酸素含量(例えば少なくとも5、10、20、30、40、50、60、75または80%)が溶解した培養培地として定義することができる。嫌気的条件は酸素が故意にまたは天然に、本質的に呼吸経路に利用できないようにされているいずれかの条件であり、例えばエタノールの生成の低減に至る。一般に、培養培地が約2.0%未満(例えば約1.5、1.0、または0.5%未満かまたは約0%に等しい)の溶解酸素(DO)含量を有する条件は嫌気的条件であると考えられる。同様に、約0.1未満(約0.05未満かまたは約0%に等しい)のVVM(空気容量/液体容量/分)を有する条件は嫌気的条件であると考えられる。典型的には、VVMに関して本明細書で用いる「空気」なる用語は大気中に存在するような空気を意味する。細胞呼吸に影響し得るその他の培養条件には、非限定例としてはpH、温度、及び特定の炭素供給源の存在(例えばグルコース)などがある。1つの種の酵母内で細胞呼吸を促進するいくつかの培養培地及び/または培養条件は別の種内の細胞性呼吸を低下させ得ることに注目することは重要である。例えば、培養培地内のグルコースの存在はクラブトリー陽性表現型を有する酵母細胞における細胞性呼吸を低下させるが、クラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞における細胞性呼吸にはほとんどまたは全く影響しない。
【0088】
商業生産中の培養条件の指示された操作は、本明細書に記載する望ましい有機生成物の最適レベルの達成における重要な工程であり得る。典型的には、本発明の範囲内である酵母細胞を、細胞呼吸を促進させる培養条件下で成長させて、有意な細胞密度にする。例えば酵母細胞を培養容器内に入れて、豊富なグルコース及び酸素を供給する。典型的には、細胞呼吸を促進する条件下で本発明で提供される微生物の倍化時間は約10時間未満(例えば約8、5または3時間未満)である。一度細胞が有意な密度に到達すると、培養条件を、細胞呼吸を必要としない有機生成物が生成されるように細胞呼吸を低下させる条件に切り替えることができる。例えば、酵母細胞を培養容器に移して豊富なグルコースを供給するが、酸素を供給しないでよい。この場合、これらが好気的から嫌気的に切り替わるように培養条件を直接操作することにより、最適レベルの望ましい有機生成物が生成される。また別に、細胞性呼吸を必要とする有機生成物が生成されるように、細胞性呼吸が促進される条件下で細胞を単独で培養することができる場合もある。生成容器内の細胞マスは典型的には約2g/l以上(例えば約4、6、または8g/l以上)であることは注目される。
【0089】
培養中の温度を約35℃以上(例えば36、37、38、39、40、41、42、43,44または45℃以上)にできる。加えて、培養培地は液体でよい。培養培地は典型的には炭素供給源を含有する。一般に、炭素供給源は原材料を含有する炭水化物を含む。典型的には栄養培地は窒素供給源をも含有する。好ましくは、窒素供給源は有機及び無機窒素化合物の組み合わせを含む。1つの操作様式では、バイオマス生成及び望ましい生成物の生成の双方に十分な、必要とされる栄養の全て及び炭水化物の全てを含む培養培地で大きな発酵容器を満たすのが望ましい。例えば好気的条件を提供することにより、バイオマス生成が最初に促進されるような条件下で容器を操作し、次いで代替の操作様式で望ましい生成物の生成のために嫌気的条件に切替えることができ、例えば約100g/lのバイオマスを生成するために高レベルの栄養及び十分な炭水化物を含む小さい容器をバイオマス生成に用いる。次いでこの容器を、水中で少ない栄養、例えば炭素供給源としてグルコースのみ、または別の炭水化物炭素供給源を含有する第2の培養培地を含有する大きな容器に移すことができる。バイオマス成長は栄養レベルの低下及び嫌気的条件のために低下する。
【0090】
好ましい実施形態では、望ましい生成物の収集を簡単にするために栄養培地を必要な材料のみに保つ。好気的成長を用いることにより使用される培地を、嫌気的条件下での成長が必要とされた場合に必要とされるものよりも簡単にできる。本明細書で記載する多くの酵母を好気的条件下で、糖、無機窒素供給源、微量のミネラル及び数種のビタミンのみからなる培地上で成長させることができる。発酵またはその他の過程の結果として培養培地に有機生成物が添加される前は、培養培地は約一般に5.0から7.0の間のpHを有する。しかしながら、有機生成物例えば有機酸は微生物により培養培地に分泌されるので、培養培地のpHは低下する傾向がある。本明細書で用いる「有機的pH」とは培地に存在する有機化合物、例えばカルボン酸塩、例えば乳酸に起因する培養20培地のpHを意味する。本明細書で用いる「無機的pH」とは無機化合物、例えばHCl及びHSOに起因するpHを意味する。培養培地は約3.0未満(例えば約2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、または1.5未満)の有機的pH値を有し得るか、または約3.0未満(例えば約2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、または1.5未満)の無機的pH値を有し得る。培養過程中にいずれかの炭素供給源を用いることができる。例えばペントース炭素(例えばリボース、アラビノース、キシロース、及びリキソース)を含有する培地を用いることができる。加えて、トウモロコシ繊維加水分解物を含有する培地を用いることができる。トウモロコシ繊維加水分解物は2.0から6.5の間のpH値を有し得る。典型的にはトウモロコシ繊維加水分解物はグルコース、キシロース及びアラビノースを含有する。例えばトウモロコシ繊維加水分解物は約40g/lのグルコース、約40g/lのキシロース及び約20g/lのアラビノースを含有できる。大規模容量の生成方法では、以下の方法を用いることができる。
【0091】
第1は、例えばヘキソース及び/またはペントース炭素を伴う適当な培養培地を含有する大きなタンク(例えば50、100、200、またはそれ以上のガロンタンク)を特定の微生物と共にインキュベートする。接種後、炭素供給源を優先的に用いてバイオマスを生成するように培養条件を操作できる。例えば、培養培地を操作して、約7.0のpH値、約35℃の温度、及びタンク全体で好気的環境を作る溶解酸素含量を有するようにする。このバイオマス生成相の間に望ましい有機生成物を生成できることは注目される。一度十分なバイオマスに到達すると、微生物を含有するブロスを第2のタンクに移すことができる。この第2のタンクはいずれの大きさでもよい。例えば第2のタンクは第1のタンクよりも大きい、小さい、または同じ大きさでよい。典型的には、第1のタンクからのブロスにさらなる培養培地を添加できるように、第2のタンクは第1のタンクよりも大きい。加えて、この第2のタンク内の培養培地は第1のタンクで用いたものと同一かまたは異なっていてよい。例えば、第1のタンクはキシロース及びアラビノースを含有できるが、一方第2のタンクはグルコースを含む培地を含有する。
【0092】
一度移すと、炭素供給源が優先的に用いられて有機生成物を生成するように第2のタンク内の培養条件を操作でき、ここで「有機生成物」にはとりわけ、ピルビン酸塩誘導体生成物及び二酸化炭素(CO)などがあるが、バイオマス(すなわち細胞乾燥重量)は含まない。本明細書で用いる「「選択された有機生成物」または「選択されたピルビン酸塩誘導生成物」を優先的に生成する」なる表現は、培養条件に関する場合、典型的には発酵方法(必要ではないが)により培養培地内の炭素供給源が代謝され、消費される炭素供給源のグラムあたり少なくとも0.5gの有機生成物を形成することを意味する(例えば少なくとも0.6、0.75または0.8gの有機生成物)。生成された有機生成物及び/または消費された炭素供給源の量を決定する方法は公知であり、例えばHPLCなどがある。
【0093】
前記したように、炭素供給源利用の効率は基質及び生物に依存して変化し得る。従って、炭水化物以外の炭素供給源(例えばアミノ酸)を含む複合成長培地を使用することができるが、炭素供給源のグラムあたりの生成された有機生成物またはピルビン酸塩生成物の量は、消費された炭素供給源のグラムあたりの生成された有機生成物またはピルビン酸塩生成物の量のみを意味する。好ましくはこの段階で炭素供給源グラムあたりたかだか0.3gのバイオマスしか生成されない(例えばたかだか0.2、0.1または0.5gのバイオマス)。
【0094】
例えば培養培地を操作して、タンク全体で嫌気的環境を作る溶解酸素含量にするか、または細胞呼吸のインヒビターを含めることができる。加えて、特定のpH値(例えば酸性、中性または塩基性pH値10)を維持するように培養培地を操作することができる。また別に、培養物のpHを、いずれかの特定のpH値を維持せずに定期的に調整することができる。典型的には、有機酸を生成する場合、培養培地のpH値は少なくとも約1.5以上(例えば少なくとも約2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、または7.0)を維持する。さらに、微生物は提供された炭素供給源を異化するので、タンク内の温度は上昇する。従って培養培地を特定の温度が維持されるように操作できる。また別に、培養培地の温度をいずれかの特定の温度を維持しないで定期的に調整することができる。典型的には、熱感受性微生物を用いる場合、約35℃未満の温度(例えば約34、33、32、31または30℃)が維持されるが、一方熱非感受性微生物を用いる場合、約45℃未満の温度(例えば約44、43、42、41または40、39、38、37、36または35℃)が維持される。この有機生成物生成相ではバイオマスが生成され得ることが注目される。加えて、第2のタンク内の培養条件を、生成物生成を促進する条件からバイオマス生成を促進する条件に1回またはそれ以上切替えることができ、逆も同様である。例えば第2のタンク内の培養条件を、好気的条件が定期的に存在するように溶解酸素の短いパルスを伴って大部分の時間を嫌気的にすることができる。
【0095】
別の方法では嫌気的条件を修飾して、例えば末端電子受容体の付加により培養された微生物の代謝エネルギーを高めることができる。本明細書で用いる「代謝エネルギー」なる用語はエネルギー供給源(例えば炭素供給源)から生物により誘導されるエネルギー(ATPに関して)を意味する。ある条件下で生物による炭素供給源の代謝から得られる代謝エネルギーの量は、異なる条件下で同一の炭素供給源から得られるエネルギーの量よりも多い。
【0096】
生存細胞は高度に秩序だっており、生存し成長するためにそれ自体の中に秩序を作らなければならない。生物内で秩序を維持するために、数千の異なる化学反応がいかなる瞬間にも生じている。例えば生合成反応、例えばDNA、RNA及びタンパク質重合化反応及び代謝生成物の形成に細胞はエネルギーを必要とする。細胞はまた細胞に基質を運ぶため、細胞内の代謝を保つため、適切な膨圧及び内部pHを維持するため、並びに運動性のためのエネルギーをも必要とする。エネルギーを作るまたは破壊することができないので、細胞は秩序を維持するために環境からのエネルギーの投入を必要とする。一般にエネルギーは電磁放射または化学エネルギーの形態で環境から供給される。環境から得られたエネルギーは1つまたは2つの一般的な生化学的メカニズム:基質レベルのリン酸化及び電子伝達により用いられる細胞に利用される。一般に、嫌気的条件下では、ATP(エネルギーに関する「細胞電流」)は基質レベルのリン酸化により生成される。基質レベルのリン酸化では、化学結合からエネルギーが放出され、主にATPの形態で蓄えられる。基質レベル形成の実例は、解糖によるグルコースのピルビン酸塩への変換である:
グルコース=2ピルビン酸塩+2ATP+2H
次いでピルビン酸塩を乳酸に変換できる:
ピルビン酸塩+2H=乳酸塩
前記の変換により生成された正味エネルギーは2ATPに等価である。
【0097】
ピルビン酸塩はトリカルボン酸(TCA)サイクルにさらに処理され、さらなるエネルギー及び水素原子を生じる:
ピルビン酸塩−−−3HO=3CO+ATP+5H
グルコース呼吸作用のための正味反応:
グルコース+6HO=6CO−−−4ATP+12H
従って、基質レベルのリン酸化によりグルコースのCOへの完全な呼吸作用が4ATP及び24水素原子に等価の正味エネルギーを提供する。「電子伝達」では、「電子伝達系」の構成メンバーである化合物の酸化・還元ポテンシャルは、各メンバーが先行のメンバーの還元体により還元され得るように釣り合っている。従って、還元力は電子としてキャリヤ分子の連鎖を経て末端電子受容体、例えば酸素(O)、硝酸塩(NO)及びフマル酸塩まで流れ得る。末端電子受容体、例えば酸素、硝酸塩及びフマル酸塩の培養培地への添加により微生物の代謝エネルギーを増強させることができる(例えば同一量の消費された炭素供給源に関してATP生成の増加)。
【0098】
酸素は最も好ましい末端電子受容体である。例えば酸素を末端電子受容体として用いる場合、水素は電子伝達系を経て処理され、さらに水素原子あたり1.5ATP及び酸素原子あたり3ATPを細胞に提供することができる。一般に、代謝エネルギーの量は、消費されたグルコースの量に対する消費された酸素の量の比率を測定することにより決定できる。表1は、生成中に酸素を加えた場合のエネルギー収量の予測される最大及び最小改善を、TCAサイクルへの(及び結果的に呼吸への)ピルビン酸塩の損失のために低下する生成物収量の関数として表す。P/O比を3と仮定して最大改善%を算出し、一方P/O比を0.5と仮定して最低改善%を算出した。表2は消費グルコースのモルあたりの予測される最大消費酸素量を示す。酸素の添加により、呼吸に利用(従って酸素利用)できる炭素の少量を残して炭素を生合成に取っておく最小成長を促進できる。
【表1】
Figure 2004521619
【表2】
Figure 2004521619
従って、細胞培養における微生物の代謝エネルギーを改善するために、末端電子受容体として酸素を細胞培養に添加することができる。グルコースからの乳酸の最大モル収量はグルコースモルのあたり乳酸塩2モルであり、グルコースからのATPのモル収量はグルコースのモルあたりATP2モルであるが、末端電子受容体としての酸素の添加によりピルビン酸塩のいくつかをクエン酸(TCA)サイクルに向けさせて、そこでCO及びエネルギーに変換させることができる。このように、末端電子受容体の供給により微生物の「代謝エネルギーが高められる」。
【0099】
ピルビン酸塩のTCAサイクルへの誘導により、生成される別のピルビン酸誘導生成物(例えば乳酸)の量が低減する傾向がある。例えば収量の10%低減により結果的に微生物の代謝エネルギーが2.6倍発生し、収量の20%低減により結果的に微生物の代謝エネルギーが4.2から5倍発生し、及び収量の50%低減により結果的に微生物の代謝エネルギーが9倍発生し得る。
【0100】
方法の後期段階で、高レベルの乳酸が存在する場合、細胞が機能を維持するためにより多くの代謝エネルギーを必要とし得ると予測される。
【0101】
従って、嫌気的培養培地中の微生物を溶解酸素の短いパルスに暴露するのが望ましい。好ましくは、溶解酸素の短いパルスにより、培養培地の溶解酸素濃度がたかだか0.5%、好ましくは約0.1から0.5%の間になる。また別に、別の末端電子受容体、例えば硝酸塩またはフマル酸塩の添加により嫌気的発酵中の微生物の成長速度及び細胞維持を増強させることができる。微生物の代謝エネルギーを高めるのにちょうど十分であるが、望ましいレベルの生産性を維持するレベルで酸素を添加する。過剰の収量損失を避けるために注意を払わなければならない。この技術を用いて残余糖を消費し、それによりさらに収集過程を単純化するのを助けることもできる。
【0102】
6.有機生成物精製方法
一度生成すると、いずれかの方法を用いて望ましい生成物を単離することができる。例えば、一般的な分離技術を用いてブロスからバイオマスを除去することができ、一般的な単離手順(例えば抽出、蒸留、及びイオン交換手順)を用いて微生物不含ブロスから有機生成物を得ることができる。米国特許第4275234号;米国特許第5510526号;米国特許第5831122号;米国特許第5641406号;及び国際特許出願第WO93/00440号を参照。加えて、望ましい生成物を、それが生成されている間に単離することができるか、または生成物生成相が終止した後にブロスから単離することができる。第2タンク内の培養条件を、単離方法が改善されるように操作することができることに注目することが重要である。例えば、第2タンク内のpH及び温度を、望ましい有機生成物が溶液から沈殿するか、より単離しやすい形態であるように操作することができる。とりわけ、ブロスのpHが有機酸のpKa未満である場合、有機酸のpH値は溶液から沈殿できる。例えば、グルタミン酸を生成している間の培養条件はpHが2.19未満であるようにでき、これはグルタミン酸のpKa値である。このようにpH、温度及びブロスの含量を操作することにより有機生成物の単離を促進することができる。加えて、特定の遺伝的に操作された酵母を選択でき、及び/または特定の培養条件を、いずれかのブロス中の副産物が望ましい有機生成物の収集に干渉しないように操作することができる。
【0103】
本明細書に記載した方法及び材料を、非限定例としては一般に「連続発酵」及び「バッチ発酵」法と称される方法などのいずれかの型の培養方法に適合させ、及び使用することができる。加えて、1つの生成方法中に用いられる微生物を収集し、及び次の生成方法において再利用することができる。例えば、微生物を複数回再利用し、望ましい有機生成物を生成することができる。さらに、いずれかの炭素供給源を使用することができる。例えば、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イオドース(iodose)、ガラクトース、タロース、メリビオース、スクロース、フルクトース、ラフィノース、スタキオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、デンプン例えばトウモロコシデンプン及び小麦デンプン、並びに加水分解物例えばトウモロコシ繊維加水分解物、及びその他のセルロース誘導体加水分解物を炭素供給源としてバイオマスまたは望ましい有機生成物の生成に使用することができる。さらに、いずれかの培地を用いることができる。例えば標準的な培養培地(例えば酵母最小培地及びYP培地(10g/l 酵母抽出物、20g/l プロトンブロス))及び例えばコーンスティープ水及びコーンスティープ液のごとき培地を用いることができる。
【0104】
本発明の著明な利点は好ましい微生物が特に好気的条件下で成長する場合に最小培地を利用できるという点である。嫌気的生成は典型的にはさらなる栄養を必要としないので、種々の分離技術のいずれかを用いて比較的きれいな発酵ブロスから最終生成物を単離することができる。液体・液体抽出は発酵ブロスから有機酸を分離するための公知の技術であり、結果的にかなり精製される。本発明ではより簡単で安価で、エネルギー消費の少ない系もまた有用であると考えられる。
【0105】
1つの実施形態では、本発明は、臨界細胞密度に到達した後、代謝経路で「切替え」を誘導し、そのとき望ましい有機生成物の特異的生産性が劇的に増加するのが望ましいトレイン型方法でクラブトリー陰性表現型を有する遺伝的に修飾された酵母を使用する。代謝経路切替えを誘導するための典型的な方法はバイオマスを高度に好気的な容器から実質的に嫌気的な容器に移動させ、酸素枯渇を引き起こすことによる。成長相及び生成相の間に一般的な炭水化物(例えばグルコースまたはキシロース)を炭素供給源として使用することに注目される。クラブトリー陰性表現型を有する遺伝的に修飾された酵母細胞の使用がこの実施形態の成功に非常に重要であり得る。加えて、望ましい有機生成物の特異的生産性が成功に非常に重要であり得る。本明細書で用いる「特異的生産性」なる用語は生成された生成物の量を意味し、時間あたりのバイオマス(乾燥重量)のグラムあたりの生成された有機生成物のグラム数、すなわちg/(g*時間)として表される。典型的には、有機生成物、例えば乳酸塩及びアクリル酸塩の特異的生産性は約0.1g/(g*時間)以上であり、例えば約0.2g/(g*時間)以上または約0.5g/(g*時間)以上である。本明細書で記載するような高度に特異的な生産性を提供することにより、細胞維持に必要とされるエネルギーを、通気に依存するよりむしろ、実質的に嫌気的条件下での発酵生成経路を介して得て、呼吸経路を経て高量のエネルギーを作ることができる。
【0106】
実施的に嫌気的容器を約0.1VVM未満の速度で通気することに注目される。特定の生成状況下では、通気を用いない。加えて、この実施形態での収率(すなわち有機生成物のg/消費される炭素供給源のg)は典型的には約70重量%以上であり、炭素供給源、例えばエタノール及び酢酸塩の添加なしに生成される。細胞の維持に必要なエネルギーを作るのに必要とされる特異的生産性を達成するために、望ましい生成物を生成するために必要な酵素を提供するのに加えて、グルコースからピルビン酸塩への経路を増強する必要がある場合もある。
【0107】
別の実施形態では、高度に好気的な成長容器にのみ殺菌能力を備えるようにトレイン型の方法を設計することができる。嫌気的生成容器は典型的には約35℃以上の温度(例えば約36、37、38、39、40、41、42、43、44、または45℃以上)で操作する。野生型酵母は、特に細胞維持のためのエネルギーを作ることができる発酵経路が増強されないので、生成物生成中のpHの急低下のような温度で生存し、遺伝的に修飾された酵母に匹敵する野生型酵母はわずかであり、加えて酵母を本明細書で前記した、別の種の酵母の生存を妨げることができる「キラープラスミド」を含有するように操作できる。本発明はまた酵母細胞を培養するための種々の方法をも提供する。例えば、約3.0未満の有機的pH値を有するか、またはトウモロコシ繊維加水分解物を含有する培養培地でクラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞を培養することができる。酵母細胞を培養するための別の方法には、非限定例としては約35℃以上の温度で約3.0未満の無機的pH値を有するか、またはペントース炭素もしくはトウモロコシ繊維加水分解物を含有する培養培地でクラブトリー陰性表現型を有する酵母細胞を培養することなどがある。
【0108】
さらに本発明は有機生成物を作製するための方法を提供する。この方法には培養条件下で微生物を成長させること、及び有機生成物の生成を促進するために培養条件を変化させることが含まれる。この方法では、微生物はピルビン酸塩デカルボキシラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、及び/またはアセチル−CoAシンターゼ活性が低減されており、エタノール及び酢酸塩の不在下で、ピルビン酸塩デカルボキシラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、及び/またはアセチル−CoAシンターゼ活性が低減されていない対応する微生物で観察される成長率の少なくとも約30%(例えば約35、40、50、75、100、150、200%またはそれ以上)である成長率を呈する。典型的には、細胞性呼吸を促進する培養条件を、急速な成長を必要とするか、または生成すべき有機生成物を細胞性呼吸なしに生成することができない状況下で用い、一方、細胞性呼吸を低下させる培養条件を、急速な成長を必要としないか、または生成すべき有機生成物を細胞性呼吸なしに生成することができる状況下で用いる。
【0109】
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、請求の範囲で記載される発明の範囲を限定するものではない。
【0110】
実施例
(実施例1)
組換えプラスミドpHES/pSEH
Cheinら(Proc.Natl.Acad.Sci.88:9578−9582(1991))に記載されるプラスミドpGAD424 0.5μgを制限酵素HindIIIで消化した。消化した混合物を0.8% アガロースゲル上でTBEバッファーを用いてゲル電気泳動により分離した。次いでSambrookら(前出)に記載されるようにゲルから5.0kbpフラグメントを精製した。複数の制限酵素認識部位を有する92bpの合成オリゴマーの相補対を消化した。第1のものはfwd HESオリゴと称し、以下の配列を有する:
【化1】
Figure 2004521619
第2のものはcampHesオリゴと称し、以下の配列を有する:
【化2】
Figure 2004521619
2つの相補性オリゴマー500ナノモルを10分間沸騰し、徐々に室温まで冷却することにより互いにアニーリングさせた。二本鎖92bp DNAをHindIIIで消化し、HindIIIで消化した5.9kbp gGAD424にライゲートした。ライゲーション混合物を用いてSambrookら(前出)に記載されるようにエレクトロポレーションにより大腸菌(E.coli)DH10B(エレクトロマックスセル、ライグ・テクノロジーズ、ロックビル、メリーランド州)を形質転換した。組換え大腸菌をルリア・ベルターニ・ブロスプレートにプレートし、100μg/mlの抗生物質アンピシリンを用いてプラスミドを含有する細胞を選択した。アンピシリン抵抗性大腸菌クローンからのプラスミドDNAをスクリーニングし、2つのプラスミド、pHES及びpSEHを得た(図1及び2)。2つのプラスミドはベクターのアルコールデヒドロゲナーゼ−ADHIプロモーターに関して合成オリゴマーの配向が異なる。
【0111】
(実施例2)
ラクトバシラス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)及びペディオコッカス・アシディラクチシ(Pediococcus acidilactici)からの乳酸塩デヒドロゲナーゼをコードする核酸のPCR増幅
ピュアジーン(登録商標)ゲノムDNA単離キット(ゲントラ・システムズ、ミネアポリス、ミネソタ州)を用いてラクトバシラス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)(ATCC 10797)及びペディオコッカス・アシディラクチシ(Pediococcus acidilactici)(ATCC 25741)の一晩培養物からゲノムDNAを単離した。L.ヘルベチカス(lh−ldhオリゴ)及びP.アシディラクチシ(pa−ldhオリゴ)ゲノムDNAから乳酸塩デヒドロゲナーゼコード化核酸を単離するためにPCRプライマーを設計した。これらのプライマーはジェンバンクデータベースで利用可能な乳酸塩デヒドロゲナーゼの遺伝子配列に基づいて設計され、以下の配列を有する:
【化3】
Figure 2004521619
Sci−edソフトウェア(ダルハム、ノースキャロライナ州)から入手されるプライマー・デザイナー・ソフトウェアを用いてプライマーを最適化した。ゲノムDNA 1マイクロモルをプライマー 100ナノモルと共に用いた。Pfu DNAポリメラーゼ(ニューイングランド・バイオラブズ)を用いて、Sambrookら(前出)に記載されるように乳酸塩デヒドロゲナーゼ(LDH)核酸をPCR増幅した。
【0112】
類似の実験計画を用いて、微生物例えばバシラス(Bacillus)種、例えばバシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)(ATCC 6458)もしくはリゾパス・オリザエ(Rhizopus oryzae)(ATCC 76275)もしくはいずれかの別の乳酸塩生成生物(微生物、例えば菌類及び細菌並びに多細胞生物、例えば哺乳類)から、または乳酸塩生成生物の組織からのゲノムDNAからL−乳酸塩デヒドロゲナーゼコード化核酸を単離する。ピュアジーン(登録商標)ゲノムDNA単離キット(ゲントラ・システムズ、ミネアポリス、ミネソタ州)を用いて生物の成長培地からゲノムDNAを単離する。ジェンバンクから入手可能なこれらの種のLDH遺伝子配列に基づいて乳酸塩デヒドロゲナーゼコード化核酸を単離するために適当なPCRプライマーを設計する。一般に、ゲノムDNA 1マイクロモルを適当なプライマー 100ナノモルと共に用いる。Pfu DNAポリメラーゼ(ニューイングランド・バイオラブズ)またはいずれかのその他の適当なDNAポリメラーゼを用いて、例えばSambrookら(前出)に記載されるように、PCR技術を用いて各々のゲノムDNAから乳酸塩デヒドロゲナーゼ(LDH)核酸を増幅する。
【0113】
また別に、以下の方法のいずれかを用いてクルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)(ATCC 52709)、トリコデナ・レスシ(Trichodenna reesci)(ATCC 13631)、トルラスポラ・プレトリエンシス(Torulaspora pretoriensis)(ATCC 36245)またはいずれかその他の乳酸塩デヒドロゲナーゼ生成生物から乳酸塩デヒドロゲナーゼコード化核酸を単離する。
【0114】
1)標準的な技術(Sambrookら(前出))を用いてこれらの生物の1つのゲノムcDNAライブラリーを標準的な大腸菌発現ベクター、例えばpUC19にクローン化する。大腸菌(ldh pfi)変異株NZNI 11(Bunchら、「大腸菌の発酵性乳酸塩デヒドロゲナーゼをコードするldhA遺伝子」Microbiology 143:187−195(1997))をこのライブラリーで形質転換し、カザアミノ酸を補充したM9培地中嫌気的条件下で細胞を成長させる。これらの条件下で成長するいずれかの大腸菌は乳酸塩デヒドロゲナーゼをコードするか、またはldhもしくはpflの復帰変異体である。(L)−LDH及び(D)−LDHを区別できる乳酸特異的軟寒天重層(LASSO)の比色アッセイを用いて陽性のもの(嫌気的成長条件下で形成するコロニー)をLDH活性に関してスクリーニングする(Witteら、Basic Microbiol.29:707−716(1989))。l−乳酸塩デヒドロゲナーゼの発現が予測されるクローンからのプラスミドDNAを次いで単離し、シークエンシングする。
【0115】
2)K.サーモトレランス(K.thermotolerans)(ATCC 52709)、T.レスシ(T.reesci)(ATCC 13631)及びトルラスポラ・プレトリエンシス(Torulaspora pretoriensis)(ATCC 36245)は全て嫌気的条件下で培養された場合にL−乳酸を生成する真核細胞である(Wineら、(Basic Microbiol.29:707−716(1989)))。従って本発明によれば、これらの株の少なくとも1つは嫌気的条件下で成長して乳酸塩デヒドロゲナーゼ酵素活性を誘導する。次いで標準的な方法を用いて細胞不含の抽出物が得られ、公知のタンパク質精製試験計画に供し、乳酸塩デヒドロゲナーゼ酵素を単離する。乳酸塩デヒドロゲナーゼを精製する方法は公知である(Kellyら「細菌性乳酸塩デヒドロゲナーゼのアフィニティクロマトグラフィー」Biochem.J.171:543−547(1978))。タンパク質を精製した後、部分的に切断し、シークエンシングしてアミノ酸配列を決定する。次いでこのアミノ酸配列を用いてゲノムDNAから乳酸塩デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を単離するために縮重プライマーを設計する。
【0116】
真核細胞LDH、例えばK.サーモトレランス(K.thermotolerans)またはトリコデナ・レスシ(Trichodenna reesci)またはトルラスポラ・プレトリエンシス(Torulaspora pretoriensis)から単離されたものは酵母K.マルキシアヌス(K.marxianus)において、細菌供給源、例えばバシラス(Bacillus)またはラクトバシラス(Lactobacillus)からのLDHと比較してよりよく機能できる(15の転写効率、翻訳効率及び/またはタンパク質活性に関して)。
【0117】
3)ジェンバンクから公知の入手可能な真核細胞乳酸塩デヒドロゲナーゼ遺伝子配列を用いて、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)(ATCC 52709)、T.レスシ(T.reesci)(ATCC 13631)またはトルラスポラ・プレトリエンシス(Torulaspora pretoriensis)(ATCC 36245)のゲノムDNAから乳酸塩デヒドロゲナーゼの遺伝子を単離するために縮重プライマーを設計する。LDH遺伝子配列内の保存されたNAD+結合部位及びピルビン酸塩結合部位を用いて縮重プライマーを設計する。ゲノムDNA 1マイクロモルをプライマー 100ナノモルと共に用いる。Pfu DNAポリメラーゼ(ニューイングランド・バイオラブズ)またはいずれかのその他の適当なDNAポリメラーゼを用いて、公知のPCR法、例えばSambrookら(前出)に記載される方法によりL−乳酸塩デヒドロゲナーゼ(LDH)核酸のフラグメントを増幅する。
【0118】
(実施例3)
L.ヘルベチカス(L.helveticus)及びP.アシディラクチシ(P.acidilactici)LDH遺伝子のpCRIIベクターへのクローニング
インビトローゲン(カールスバッド、カリフォルニア州)から入手したTAクローニングキットを用いてPCR増幅したLDH DNA生成物をpCPIIベクター(図3及び4)にライゲートした。次いでSambrookら(前出)に記載された方法を用いて、ライゲーション混合物を用いて大腸菌DH10Bを形質転換した。キットで供給されたpCRIIベクターにより製造者の指示書によるPCR生成の迅速なクローニングが可能になった。L.ヘルベチカス(L.helveticus)及びP.アシディラクチシ(P.acidilactici)からのLDH遺伝子を有するpCRIIベクターを図4に表す。
【0119】
(実施例4)
pHESベクターにL.ヘルベチカス(L.helveticus)及びP.アシディラクチシ(P.acidilactici)LDH遺伝子を有する組換えプラスミドpLh ldh−HES/pPa ldh−HES
L.ヘルベチカス(L.helveticus)及びP.アシディラクチシ(P.acidilactici)からのLDH遺伝子を含有するpCRIIベクターを適当な制限エンドヌクレアーゼで消化した。pHESベクターを同一の制限エンドヌクレアーゼで同様に消化した。次いでSambrookら(前出)に記載されるように、T4 DNAリガーゼを用いてpCRIIベクターからのLDHを含有する1kbpのインサートを6.0kbp pHESベクターにライゲートした。ライゲーション混合物を用いて大腸菌DH10B(エレクトロマックス・セルズ、ライフ・テクノロジーズ、ロックビル、メリーランド州)を形質転換し、アンピシリン抵抗性に関して組換えクローンを選択した。組換えクローンから単離されたDNAを分析してpLh ldh−HES及びpPa ldh−HESベクターを確認した(図5)。これらのベクターは酵母アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター(ADH1)の調節下、pHESベクターのL.ヘルベチカス(L.helveticus)及びP.アシディラクチシ(P.acidilactici)からのLDHをコードする遺伝子を含有する。
【0120】
(実施例5)
サッカロミセスPDC1遺伝子プロモーターを用いる発現のためのバシラス(Bacillus)種、リゾパス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)またはトルラスポラ・プレトリエンシス(Torulaspora pretoriensis)LDH遺伝子のクローニング
リゾパス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)またはトルラスポラ・プレトリエンシス(Torulaspora pretoriensis)で見出された乳酸塩デヒドロゲナーゼプロモーターを用いてK.マルキシアヌス(K.marxianus)においてクローニングされた乳酸塩デヒドロゲナーゼ遺伝子の発現を調節することができるが、サッカロミセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)からのPDC1プロモーターを用いて単離された乳酸塩デヒドロゲナーゼ遺伝子の発現を調節することができる。サッカロミセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)解糖プロモーターを用いてクルイベロミセス(Kluyveromyces)株において遺伝子を発現することに成功している。(Gellissen及びHollenberg、「遺伝子発現研究における酵母の適用:サッカロミセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpHa)及びクルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)の比較−−概説」Gene 190:87−97(1997))
従って、ジェンバンクで利用可能なサッカロミセス・セレビジアゲノム配列を用いて適当なオリゴマープライマーを設計することによりサッカロミセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)からPDC1プロモーターが得られる。PDC1遺伝子配列及びPDC1遺伝子を取り囲む1kbの領域をPCR技術により増幅する。得られた4kbのDNAフラグメントは、PDCI遺伝子発現を調節するプロモーター及びターミネーターの双方を含有する。複数の制限酵素部位は、種々のLDA遺伝子をPDCIプロモーター及びターミネーターの調節下に挿入できるように、PDCI遺伝子発現を調節するプロモーター及びターミネーターの間に含まれる。適当なベクター、例えばサッカロミセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)または大腸菌(E.coli)シャトルベクターに基づくpUC 19に4kbのフラグメントを挿入する。次いでLDH遺伝子を、乳酸塩デヒドロゲナーゼ遺伝子発現がPDC1プロモーター及びターミネーターにより調節されるように、プロモーター及びターミネーターの調節下の複数のクローニング部位の1つでベクターに導入する。(図14)。
【0121】
また別に、別のサッカロミセス(Saccharomyces)解糖プロモーター、例えばサッカロミセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)グリセロアルデヒド−3リン酸塩デヒドロゲナーゼまたはホスホグリセレートキナーゼ遺伝子の発現を調節するものを同様に用いて、K.マルキシアヌス(K.marxianus)にクローニングされたLDH遺伝子を発現することができる。
【0122】
(実施例6)
ピルビン酸塩デカルボキシラーゼの遺伝子分解のための相同性DNAの直線性フラグメントの増幅
K.マルキシアヌス(K.marxianus)からのピルビン酸塩デカルボキシラーゼ(PDC)の5’末端に同一な51bp及びpHESベクターからのADH1プロモーターの5’末端に同一な30bpを含有するように82bpオリゴマープライマー(5’kmPDC1Ko)を設計した。5’KmPDC1Koは以下のとおりである:
【化4】
Figure 2004521619
酵母(K.マルキシアヌス(K.marxianus)またはY.スチピチス(Y.stipitis)またはH.ポリモルファ(H.polymorpHa))からのPDC遺伝子の配列は提示されたジェンバンク配列から得られた。同様に、逆79bpオリゴマー(3’kmPDClKo)をPDC遺伝子の3’末端と同一である54bp及びADHIターミネーターの3’末端に同一である22bpを含有するように設計した。3’kmPDClKoの配列は以下のとおりである:
【化5】
Figure 2004521619
フラグメントがADH1プロモーター及びターミネーターと共に全乳酸塩デヒドロゲナーゼ遺伝子を含有する、pLh−ldh−HES及びpPa−ldh−HESプラスミドからの直線状DNAフラグメントを増幅するためにプライマーを設計した(図6)。PCR増幅された生成物はまたK.マルキシアヌス(K.marxianus)PDC1、ヤマダザイマ・スチピチス(Yamadazyma stipitis)PDC1及びODC2、並びにハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpHa)PDCI及びPDC2からの配列に相同であった末端をも含有する。Pfu DNAポリメラーゼ(ニューイングランド・バイオラブズ、メリーランド)を用いて増幅反応を実施した。pLh−ldh−HESまたは5pPa−ldh−HES 100ngをポリメラーゼ5単位及びオリゴマー100ナノモルと共に反応で用いた。Sambrookら(前出)に記載されたプロトコルに従って反応を実施した。図6は記載された相同性を有する直線状の最終生成物を表す。
【0123】
また別の構築物を調製してK.マルキシアヌス(K.marxianus)のpdc陰性株を得る可能性を改善した。これらの構築物を調製するために、K.マルキシアヌス(K.marxianus)1.7kb PDC1遺伝子を取り囲む5.5kbpフラグメントをPCRおよびゲノムウォーキング技術(クロンテック)を用いて単離した(図6b)。次いで標準的な方法を用いて5.5kbpフラグメントをpCRII TAクローニングベクター(インビトローゲン)にクローニングした。PDCIの1.7kbpコーディング領域のほぼ中央のおよそ370bpの部分を制限消化によりK.マルキシアヌス(K.marxianus)5.5kbpフラグメントから除去した(Sambrookら(前出))。除去されたフラグメントは以下の配列を有する:
【化6】
Figure 2004521619
次いで標準的な技術(Sambrookら、参照)を用いてカナマイシン抵抗性遺伝子及びそのプロモーターをpPIC9Kベクター(インビトローゲン)から単離し、前記で同定されたフラグメントが除去された5.5kbpの部位にクローニングした。pPIC9Kベクター(インビトローゲン)カナマイシン抵抗性遺伝子及びそのプロモーターを挿入し、挿入された領域の配列は以下のとおりであった:
【化7】
Figure 2004521619
Figure 2004521619
得られた構築物は図6cで示されるおよそ5kbpのpdc領域に取り囲まれたG418抵抗性遺伝子を含有する。図6dに示すpCRIIベクター中にK.マルキシアヌス(K.marxianus)PDC1の2.3kbpに取り囲まれた内部G418遺伝子を含有する類似のDNA構築物を作製した。
【0124】
(実施例7)
内因性PDCコーディング配列を破壊し、同時にLDHコーディング配列を挿入するための直線状DNAフラグメントの使用
実施例5で記載したPCRにより生じた直線状DNAフラグメントを用いてK.マルキシアヌス(K.marxianus)、ヤマダザイマ・スチピチス(Yamadazyma stipitis)またはハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpHa)を形質転換する。Wesolowski−Louvelら(Nonconventional Yeasts in Biotechnology:Kluyveromyces lactis、Klaur Wolf編、スプリンガー・フェアラーグ、ベルリン、138−201頁(1996))に記載されているようなプロトコルを形質転換に用いる。簡単には一晩培養物5mlを遠沈し、エレクトロポレーションバッファー(10nM トリスHCl、270mM スクロース、1nM MgCl、pH7.5)で洗浄する。次いで洗浄した細胞をインキュベーションバッファー(5g/l 酵母抽出物、10g/l ペプトンブロス、10g/l グルコース、25nM DTT、20nM HEPES、pH8.0)中30℃で30分間インキュベートする。この期間の終わりに細胞を再度洗浄し、インキュベーションバッファー400μlに再懸濁する。DNA(200ng)をこれらの細胞に加え、バイオ・ラッド・ジーン・パルサーを用いて1800ボルト、1000Cl及び0.4cmキュベット中25μFで細胞をパルス化する。
【0125】
細胞を標準のYPD(10μg/l 酵母抽出物、20g/l ペプトンブロス、20g/l グルコース、15% 寒天プレート)にプレートし、コロニーを72時間以上再生させる。コロニーを有する各プレートを新鮮YPDプレートにレプリカ培養し、48時間インキュベートする。次いでコロニーを6.5% 軟寒天(300mM トリスHCl中0.5% 寒天、187mM グルタミン酸塩、pH8.3)に積層する。染色混合物(1% 寒天 3.2ml、120mM トリス 1.6ml、75mM グルタミン酸塩、pH8.3、2mg/ml メト硫酸フェナジン0.4ml、グルタミン酸塩ピルビン酸塩トランスアミナーゼ 7単位、及びL−(+)−ブタ筋肉乳酸塩デヒドロゲナーゼ)を積層したプレートに添加する。
【0126】
高L(+)を有する酵母株は10から120分以内に青色輪を形成する。この方法はSubdenら(Canadian J.Microbiol.28:883−886(1982))に示唆、Witteら(J.Basic Microbial.29:707−716(1989))に修飾された方法に類似している。コロニーを選択し、コロニーから単離されたDNAをPCR分析により試験し、シークエンシングして破壊されたピルビン酸塩デカルボキシラーゼ遺伝子を検出する。
【0127】
別の実施形態では、前記の実施例6で記載し、図6c及び6dで表されたコロニーを2つの制限酵素で消化し(Sambrookら(前出)参照)、配列中央に挿入されたカナマイシン抵抗性遺伝子を含む相同性PDC領域を含有するおよそ3μgのDNAフラグメントを生じる。公知の技術、例えばエレクトロポレーションを用いてK.マルキシアヌス(K.marxianus)をフラグメントで形質転換し、K.マルキシアヌスのpdcを破壊する。
【0128】
一般に、以下のようにエレクトロポレーションを実施する:a)YPAD中20mlの容量で一晩(〜15時間)微生物の培養物を成長させる;b)培養物から500μlをマイクロフュージチューブに移し、@4L 4mmで回転させ、上澄を捨てる;c)冷EB(EB=エレクトロポレーションバッファー:10mM トリスHCl、pH7.5;270mM スクロース;1mM MgCl)1mlでペレットを洗浄する;d)IB(IB=インキュベーションバッファー:YPD;25mM DTT;20mM HEPES、pH8.0)1mlに再懸濁する;e)@800rpm、30℃で30分間エッペンドルフ・サーモミキサーで振盪する;f)遠沈(spin douwn)し、EBで1回洗浄し、EB 400μlに再懸濁する;g)3μg DNAフラグメントを添加し(水中10mM トリスHCl、pH8.5)、氷上30mmインキュベートする;h)0.4cm エレクトロポレーションキュベットに移す。バイオラッド・ジーン・パルスター設定:1000V、1000Cl、50TF。パルス後は時間一定:〜20ミリ秒;i)3mlモルトン・クロシュア・チューブに移し、振盪せずに30℃で1時間インキュベートする。液体YPAD培地(YPAD:酵母抽出物 10g;ペプトン 20g;グルコース 20g;ヘミ硫酸アデニン 100mg、容量=1l、pH調整なし)400μlを添加し、@800rpm、30℃で1時間エッペンドルフ・サーモミキサーで振盪する。液体YPAD 400μlを加え、4−6時間回収する;j)マイクロフュージチューブ4K、4mmで遠沈し、上澄を捨て、1M ソルビトール 400μlに再懸濁する;k)200μg/ml G418選択プレートにプレートする;及び30℃で3から5日間インキュベートする。
【0129】
最初にコロニーを300μg/ml G418への第2のパッチングによりスクリーニングする。標準的なゲノム調製(Sambrook)により第2の酵母パッチよりゲノムDNAを単離する。次いでこれらを1)適当なプライマー及び条件(Sambrook)を用いてカナマイシンフラグメントの存在に関して、及び2)適当なプライマー及び条件を用いて破壊されたpdc領域の不在に関してPCRによりスクリーニングする。
【0130】
次いで選択マーカーに関して陽性のコロニー及びpdc破壊領域に関して陰性のコロニーを成長させ、HPLCにより生理学に関して分析した。これらの株からのゲノムDNAをさらにサザンハイブリダイゼーション分析により分析した。
【0131】
(実施例8)
細胞の成長特性
1.低pH/高温度
K.マルキシアヌス(K.marxianus)の一晩培養物をKiersら(Yeast 14(5):459−469(1998))による酵母最小培地50mlに接種した。グルコース(100g/l)を炭素供給源として使用した。一晩培養物を40℃に維持し、これもまた40℃に維持した培地に接種した。接種物の添加により培地のpHが5.5から2.5に変化した。実験中、pHは2.5のままであった。YSI膜によりグルコース濃度を測定し、分光光度計により光学密度(OD)を測定した。
【0132】
グルコースは72時間で利用され、これは期間中代謝活性が低pH及び高温培養条件で生じていることを示している(図7)。加えて、バイオマスは48から72時間の間わずかに低減され、これは細胞異化が細胞同化に勝っていることを示している(図7)。
【0133】
2.ペントース炭素供給源
K.マルキシアヌス(K.marxianus)の一晩培養物をKiersら(Yeast 14(5):459−469(1998))による酵母最小培地が入った3つの50mlフラスコに接種した。3つのフラスコの各々には異なる炭素供給源が入っていた。第1のフラスコには10% グルコース、第2のフラスコには10% D−キシロース、及び第3のフラスコには10% L−アラビノースが入っていた。フラスコを30℃でインキュベートし、定期的にODを測定した。
【0134】
40時間後、グルコースまたはキシロースで培養した酵母に関するバイオマス収量は類似していたが、アラビノースで培養した酵母に関するバイオマス収量は低かった(図8)。グルコースで培養した酵母の成長のキシロースまたはアラビノースで培養したものとの比較により、成長における最初の遅延時間が示された。アラビノースで培養された酵母は数時間の遅延時間を呈し、一方キシロースで培養された酵母の遅延時間はさらにより顕著であった(図8)。この遅延の存在は、酵母細胞にはキシロース及びアラビノース炭素供給源に適合する時間が必要であることを示している。恐らく、この時間は正常には発現されないポリペプチドの合成を誘起するのに必要である。
【0135】
3.低PHでのトウモロコシ繊維加水分解物
K.マルキシアヌス(K.marxianus)の一晩培養物をKiersら(Yeast 14(5):459−469(1998))による酵母最小培地が入ったフラスコに接種した。各々のフラスコには炭素供給源として30% トウモロコシ繊維加水分解物が入っている。簡単には、トウモロコシ繊維を145℃で25分間1.2% 硫酸と反応させることによりトウモロコシ繊維加水分解物を作製した。反応中に、ヘミセルロースが単量体生成物アラビノース、キシロース、及びグルコースに分解された。反応中の高温のために、アラビノース及びキシロースがいくらかフルフラールに分解されたが、グルコースはいくらかヒドロキシメチルフルフラールに分解された。加水分解物のHPLC分析により、38.7g/l グルコース、39.1g/l キシロース、20.7g/l アラビノース、及び1.6g/l フルフラールの存在が示された。加えて、加水分解物は1.51のpHを有した。酵母を培養する前にトウモロコシ繊維加水分解物のpHを3.0に調整した。培養実験中、OD測定を定期的に行った。
【0136】
酵母細胞は、トウモロコシ繊維加水分解物と共に培養した場合、バイオマスを生成することができる(図9)。
【0137】
4.種々のpH条件
K.マルキシアヌス(K.marxianus)の一晩培養物を酵母YPD培地(10g/l 酵母抽出物、20g/l ペプトンブロス、20g/l グルコース)50mlが入った4つのフラスコに接種した。各々のフラスコのpHは異なっており、これをHClを用いて調整した。培養実験中、温度は30℃を維持し、定期的にODを測定した。各フラスコで成長が観察された(図10)。
【0138】
5.種々pH条件/乳酸
K.マルキシアヌス(K.marxianus)の一晩培養物を酵母YPD培地(10g/l 酵母抽出物、20g/l ペプトンブロス、20g/l グルコース)50ml及び40g/l 乳酸が入った4つのフラスコに接種した。乳酸の添加によりpHが2.8になった。従って、3つのフラスコ内のpHをNaOHを用いて指示されたpHに調整した。培養実験中、温度は30℃を維持し、定期的にODを測定した。各フラスコで成長が観察された(図11)。
【0139】
(実施例9)
アクリリル−CoAを生成できる組換え細胞
炭素供給源としてアクリル酸塩を利用できない生物(例えば大腸菌(E.coli))をクロストリジウム・プロピオニクム(Clostridium propionicum)ゲノムDNAライブラリーで形質転換する。C.プロピオニクム(C.propionicum)ゲノムライブラリーを、pHESプラスミドを用いて作製し、それによりC.プロピオニクムゲノムの10kbpフラグメントを発現する。形質転換された大腸菌(E.coli)を、唯一の炭素供給源としてアクリル酸を含む選択培地にプレートする。アクリル酸塩を同化する能力を有するこれらの細胞のみが成長する。アクリル酸塩は通常その酵素媒介変換により乳酸塩に同化される。今度は乳酸塩がピルビン酸塩に変換され、クレブスサイクルを経て細胞に利用され得る。
【0140】
一度形質転換された大腸菌(E.coli)が選択されると、ゲノムライブラリーからDNAプラスミド単離され、挿入されたフラグメントがシークエンシングされる。一度シークエンシングされると、フラグメントがオープン・リーディング・フレームに関して走査され、乳酸塩及びアクリル酸塩間の変換に関与する酵素のコーディング配列を決定する(例えばラクトイル−CoAデヒドロゲナーゼ及びCoAトランスフェラーゼ)。
【0141】
これらの酵素のコーディング配列を含有する単離されたクローンを実施例6に記載する、乳酸塩デヒドロゲナーゼを含有し、ピルビン酸塩デカルボキシラーゼを欠く酵母細胞に導入する。導入された核酸を含有する組換え酵母細胞の選択はG418(300g/l)を用いて行う。一度単離すると、組換え酵母細胞をグルコースで好気的に成長させ、次いで嫌気的条件に切替える。次いでブロスを収集し、Dannerらにより記載されるような標準的なHPLC法を用いてアクリル酸塩に対して検定する(「アクリル酸のバイオマスからのバイオテクノロジーによる生成」Applied Biochemistry and Biotechnology 70−72巻(1998))。
【0142】
(実施例10)
アスコルビン酸塩を生成できる組換え細胞
以下のポリペプチドが発現されるように発現ベクターを操作する:2,5−ジオキシ吉草酸塩デヒドロゲナーゼ、5−デヒドロ−4−デオキシ−D−グルカル酸塩デヒドラターゼ、グルカル酸塩デヒドラターゼ、アルデヒドデヒドラターゼ、グルクロノラクトンリダクターゼ、及びL−グルオノラクトンオキシダーゼ。これらのポリペプチドをコードする核酸配列を種々微生物から単離する。一度操作すると、エレクトロポレーションにより発現ベクターを酵母細胞に形質転換する。一度形質転換すると、酵母細胞を分析して、これらがL−アスコルビン酸塩を生成するかどうかを決定する。
【0143】
(実施例11)
D−キシロースを生成できる組換え細胞
以下のポリペプチドが発現されるように発現ベクターを操作する:2−デヒドロ−3−デオキシ−D−ペンタン酸塩アルドラーゼ、キシロン酸塩デヒドラターゼ、キシロノタクトナーゼ(xylonotactonase)、及びD−キシロースデヒドロゲナーゼ。これらのポリペプチドをコードする核酸配列をシュードモナス(Pseudomonas)種から単離する。一度操作すると、エレクトロポレーションにより発現ベクターを酵母細胞に形質転換する。一度形質転換すると、酵母細胞を分析して、これらがD−キシロースまたはその他のペントース炭素化合物を生成するかどうかを決定する。
【0144】
(実施例12)
クエン酸塩を生成できる組換え細胞
S.セレビジエ・アコニターゼ(ACO1、ジェンバンク受け入れ番号M33 13t)核酸配列に基づいてPCRプライマーを設計する。これらのプライマーを用いてクルイベロミセス(Kluyberomyces)、ヤマダザイマ(Yamadazyma)またはハンゼヌラ(Hansenula)種からアコニターゼコード化配列をクローン化する。一度シークエンシングすると、実施例5に記載するように直線状構築物が作製され、これを用いて酵母細胞内のアコニターゼコード化核酸を破壊する。使用する選択マーカーは実施例5に記載する乳酸塩生成の代わりに抗生物質G418である。抗生物質G418に対して抵抗性を提供する核酸はネオマイシン/カナマイシン遺伝子である。この遺伝子はpPIC9Kベクター(インビトローゲン)から得られ、pHESベクターに挿入される。酵母細胞を前記したACO1に相同である末端を有するように操作したPCR生成直線状フラグメントで形質転換する。直線状フラグメントはG418抵抗性遺伝子をコードするように設計する。アコニターゼコード化配列の位置に直線状フラグメントが組み込まれている細胞のみが抗生物質に抵抗する。PCRを用いてこれらの細胞を適当な組み込みに関して分析する。この方法により得られた酵母細胞は部分的に機能的なTCAサイクルを有し、従ってクエン酸塩を過剰生成する。
【0145】
クエン酸塩はミトコンドリア膜を通ってブロスへ輸送される。加えて、これらの酵母細胞には酵素、例えばATPクエン酸塩リアーゼをコードする外来性核酸分子が供給され、細胞が蓄積されたクエン酸塩のオキサロ酢酸塩への変換を触媒できるようになる(実施例13参照)。
【0146】
(実施例13)
サイトゾルにクエン酸塩リアーゼを発現できる組換え細胞
クラブトリー陽性酵母細胞を、ATPクエン酸塩リアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含有するpHESプラスミドで形質転換する。この核酸を大腸菌(E.coli)、クレブシエラ・ニューモニア(Krebsiella pneumoniae)(ジェンバンク受け入れ番号X79817)またはその他の公開されている供給源から単離する。一度形質転換されると、酵母細胞を分析して、これらが糖を利用して大量の脂質蓄積物を生成できるかどうかを決定する。加えて、酵母細胞を分析して、これらがHoldsworthら(J.Gen.Microbiol.134:2907−2915(1998))に記載されるようなATPクエン酸塩リアーゼ活性を呈するかどうかを決定する。ATPクエン酸塩リアーゼ活性を有する酵母細胞は、好気的条件下で、アルデヒドデヒドロゲナーゼを介するアルデヒドの酢酸塩への分解以外の経路によりサイトゾル酢酸塩を提供できる。加えて、かかる酵母がピルビン酸塩デカルボキシラーゼまたはアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を欠く場合、これらはクレブスサイクルを介する生合成のために酢酸塩を提供できるはずである。
【0147】
(実施例14)
炭素供給源として乳酸塩を利用できる組換え細胞
S.セレビジエ JENIポリペプチドに類似するカルボン酸トランスポーターの活性が低下するように酵母細胞を操作する。かかる酵母細胞は乳酸塩を輸送する能力が低下し、従って乳酸塩の利用効率が低くなる。酵母細胞内のカルボン酸トランスポーターの活性は、このポリペプチドのコーディング配列を含有する遺伝子座を破壊することにより低下する。第1にJEN1に関する利用可能な配列(ジェンバンク受け入れ番号 U24 155)に基づいて設計された縮重プライマーを用いて宿主からJEN1ポリペプチドの相同体を単離する。一度核酸が宿主細胞から単離されると、それをシークエンシングする。このポリペプチドに関するコーディング配列の破壊を実施例11に記載する手順を用いて行う。JEN1配列及び全G418抵抗生遺伝子に対する相同性領域をコードする直線状フラグメントを作製する。この直線状フラグメントをJEN1ゲノム配列に組み込み、活性の崩壊を引き起こす。カルボン酸トランスポーター活性を欠く細胞を、カルボン酸の輸送不能、従って乳酸塩で培養した場合の成長不能により同定する。
【0148】
加えてS.セレビジエ(S.cerevisiae) チトクロームb2ポリペプチドの機能的等価物の活性が低減されるように細胞を修飾する。チトクロームb2ポリペプチドによりS.セレビジエ(S.cerevisiae)細胞はミトコンドリア内で乳酸塩を代謝できるようになる。第1にサッカロミセス(Saccharomyces)チトクロームb2配列(ジェンバンク受け入れ番号Z46729)から重複プライマーを設計する。一度単離すると、クローンをシークエンシングする。チトクロームb2の酵母宿主相同体の破壊はMethods in Yeast Genetics(Alisonら編、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(1997))に記載される方法を用いて行う。この組換え酵母細胞は炭素供給源として乳酸塩を利用できない。
【0149】
(実施例15)
乳酸塩の大規模容量生成
複数の変種のPDC活性が低減されているK.マルキシアヌス(K.marxianus)細胞を生成し、単離する。LDH活性を有するポリペプチドをコードする異なるコピー数の外来性核酸分子を含有するように各々の変種を操作する。LDHポリペプチドは複数の異なる供給源に由来する。かかる変種細胞は40℃で乳酸に関して異なる特異的生産性を有し得る。
【0150】
各々の変種を1.5VVMの空気流及び溶解酸素含量30%を伴う好気的条件下で容器中で成長させ、乾燥ベースで約60g/lの細胞密度に至る。一度密度が十分になると、空気流を止め、容器内の条件を嫌気的条件に切替える。基剤は加えない。
【0151】
嫌気相で最高の特異的生産性を有する変種が、より低い特異的生産性を有する変種よりも乳酸をより早く生成するのみならず、低pHでより高濃度に到達できることが見出される。
【0152】
生成相でのグルコースでの生成収量は90%を超過することができる。特定の変種を選択し、空気流を完全に止めるよりむしろ0.1VVMに低下させる以外は同一の培養方法に供する。かかる条件下では、容器内の最終pHを低くし、乳酸塩濃度を空気流がない条件よりも高くすることができる。グルコースでの生成収量を低下させるが、約90%に保つことができる。0.5VVMの空気流で試験を繰り返す場合、グルコースでの生成収量は80%未満にまで低減され得る。
【0153】
(実施例16)
一連のバッチ発酵を用いる乳酸塩の大規模容量生成
PDC活性を欠き、LDH活性を有するK.マルキシアヌス(K.marxianus)の培養物を一連のバッチ発酵の接種物として用いる。各々の発酵を漸増的に大きな容器で実施し、その各々を使用の直前に滅菌する。加えて、各容器に1.5VYMの空気流を提供し、十分攪拌して溶解酸素含量が10%以上を維持するようにする。最終容器は6000lの容量を有する。また容器は45℃の温度を維持し、遺伝的に修飾されたK.マルキシアヌス(K.marxianus)細胞の生存性を野生型酵母及びその他の微生物以上に高める。各々の容器を最適な成長のために標準的な培養培地で充填する。
【0154】
乾燥ベースで細胞100g/lの細胞密度の最終容器の内容物を、300000lの容量を有する、蒸気にあてたばかりの生成容器に移す。場合によっては前記の生成方法の濾過から得られたさらなる細胞を加えてもよい。生成容器中の細胞密度は乾燥ベースで細胞6g/lである。グルコースを80g/lのレベルまで加える。容器内の条件を42℃の温度で25時間、嫌気的である。特異的生産性は、生産性が低下し始める方法の終末近くまでは乳酸塩0.5g/(バイオマスg*時間)以上である。一度生産性が低下し始めると、細胞を除去し、再使用のために取っておく。乳酸塩の最終濃度は、pH2.8で75g/lにできる。バイオマスを除去した後、溶液を蒸発により乳酸塩50%濃度まで濃縮する。遊離酸(全乳酸塩の約86%)を有機物への液体抽出により抽出し、高温で水に逆抽出する。乳酸塩を含有するラフィネートを浄化し、成長容器のバッファーに再利用するか、または例えば硫酸で酸性にし、精製する。
【0155】
(実施例17)
クラブトリー陰性(K.マルキシアヌス(K.marxianus))及びクラブトリー陽性(S.ウバルム(S.uvarum))生物の好気的生成の比較
クラブトリー陰性(K.マルキシアヌス(K.marxianus))及びクラブトリー陽性(S.ウバルム(S.uvarum))生物を各々好気的及び嫌気的バッチ発酵で成長させた。バッチ培養は作業容量1.5lの実験用発酵槽中30℃で実施した。2モル/L 水酸化カリウム(KOH)の自動添加によりpHを5.0±0.1を維持した。発酵槽に空気(好気的培養)または窒素ガス(嫌気的培養)を流速0.8L/分で流入させ、800rpmで攪拌した。溶解酸素濃度を酸素電極(インゴールド、34 100 3002型)で継続的にモニター観察し、好気的培養では溶解酸素濃度は60%以上を維持した。サンプル10mlを適当な間隔で回収し、乾燥重量及び代謝物濃度を測定した。トゥイーン80及びエルゴステロールを嫌気的培養物に加え、脂肪酸合成に必要な化合物を供給した。
【0156】
指数関数的成長の間、酵母培養物の乾燥重量及びOD660、並びに上澄のグルコース及びエタノール濃度を適当な間隔で測定した。特異的エタノール生成速度(qエタノールミリモル/g時間)を線形回帰分析を用いて以下の等式により算出した:
エタノール=(dE/dC)*μmax
ここでdE/dt(培養物中のエタノール濃度の増加率;ミリモル/18時間)及びはdC/dt(バイオマス濃度の増加率;g/l*時間)を、エタノール濃度及びバイオマス濃度対時間、μmax(h−1)のプロットの微分を用いて算出した。グルコースでの最高特異的成長速度をC対時間のプロットの指数部分から推測した。特異的グルコース消費速度(qグルコースミリモル/g*時間)を算出するために、dEをdG(時間あたりのグルコース消費量)で置き換えた。
【0157】
好気的バッチ培養では、クルイベロミセス(Kluyberomyces)及びサッカロミセス(Saccharomyces)株は各々グルコースで0.4時間−1及び0.28時間−1の最大特異的成長速度を呈した。サッカロミセス(Saccharomyces)培養の高グルコース濃度及び得られた高特異的成長速度は高速の好気的アルコール性発酵に至る(表3、図1)。グルコース消費の特異的速度は、活発なアルコール性発酵のためにクルイベロミセス(Kluyberomyces)株に比較してサッカロミセス(Saccharomyces)株で約2倍高かった。エネルギーの観点から、アルコール発酵は細胞がATPを生成するためには効率があまりよくない。グルコースで生じるバイオマスはクルイベロミセス(Kluyberomyces)で0.38g/g、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)で0.14g/gであった。グルコースで生じるエタノールは、クラブトリー陰性表現型クルイベロミセス(Kluyberomyces)株ではゼロであり、クラブトリー陽性表現型であるサッカロミセス(Saccharomyces)培養物では1.83ミリモル/ミリモルであった。
【表3】
Figure 2004521619
嫌気的バッチ培養では、ブロス株に関する特異的成長速度及びバイオマス収量は好気的条件下で見出されるものに比較して非常に低かった(表3、図1及び2)。クルイベロミセス(Kluyberomyces)及びサッカロミセス(Saccharomyces)株ではバイオマス収量が各々0.07及び0.09g/gであった。双方の株は嫌気的条件下でのアルコール性発酵の特異的速度に関して等しく良好であった。これはCO生成データを用いて確認された。
【0158】
一般にこの実施例はバイオマスの好気的生成が嫌気的よりもより速く、好気的条件下でのバイオマスの収量はクラブトリー陰性生物ではより高いことを示している(なぜならクラブトリー陽性生物ではいくらかアルコール性発酵が起こり、グルコースを消耗する)。この実施例はまた嫌気的条件下でクラブトリー陽性及び陰性生物の双方が同じ速度で発酵生成物(この場合、エタノール)を生成物することをも示している。従って、好気的成長段階により高いバイオマス収量が提供され、続く嫌気的発酵段階が代謝エネルギーを(成長よりむしろ)生成物形成に向ける。全体では、生成が成長から切り離されている方法により、より大きな方法順応性が提供され、方法全体の収量よりもよりよく調節される。
【0159】
(実施例18)
天然にL−乳酸を作製する宿主株における乳酸塩の生成の改善;ピルビン酸デカルボキシラーゼの遺伝子破壊のための相同性DNAの直線状フラグメントの増幅
酵母クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)は天然にL−乳酸を生成する(Kurtzman及びFell、「酵母、分類研究」240−241頁;Elsevier Science B.V.;アムステルダム、オランダ)。K.サーモトレランス(K.thermotolerans)はL−乳酸生成を可能にする天然発生乳酸塩デヒドロゲナーゼ(ldh)遺伝子を有する。嫌気的条件下で生成された乳酸の量は利用されるグルコースのおよそ4%g/gであり、一方残りのグルコースは本質的にエタノールに変換される(グルコース消費の42.5g/g% )、グリセロール(グルコース消費の3g/g%)及び酢酸塩(グルコース消費の0.3g/g%)。
【表4】
Figure 2004521619
K.マルキシアヌス(K.marxianus)及びK.ラクチス(K.lactis)karanoPDC1遺伝子配列を比較することにより誘導された配列から構築されたコンセンサスプライマーを用いてPDC1の600bp領域をK.マルキシアヌス(K.marxianus)から単離した。次いでPDC1フラグメントをシークエンシング(サンガー)し、これを用いて、PCR及びゲノムウォーキング技術(クロンテック)を使用して、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)pdcl(図6e)を取り囲む7.4kbpフラグメントを単離する。次いで7.5kbpフラグメントをpCRII TAクローニングベクター(インビトローゲン)にクローン化した。PDCIのコーディング領域の中央近くのおよそ730bpの部分をK.サーモトレランス(K.thermotolerans)7.5kbpフラグメントから除去した。制限消化(Sambrook)により除去されたK.サーモトレランス(K.thermotolerans)pdclの部分は以下の配列を含有した:
【化8】
Figure 2004521619
そのプロモーターを含むカナマイシン抵抗性をコードする遺伝子をpPTC9Kベクター(インビトローゲン)から制限消化(Sambrook)により単離し、7.5kbpの部位にクローン化し、そこから730bpフラグメントを除去した。pPTC9K(インビトローゲン)からのカナマイシン抵抗性遺伝子の配列及びそのプロモーター以下のとおりであった:
【化9】
Figure 2004521619
Figure 2004521619
得られた構築物は図6fに示すようにおよそ6.8kbpのPDC領域で取り囲まれたカナマイシン抵抗性遺伝子(G418)を含む。図6fで表される構築物を2つの制限酵素で消化して(Sambrook)、相同性PDC領域及び配列中央に挿入されたカナマイシン抵抗性遺伝子を含有するおよそ3μgのDNAフラグメントを生成する。
【0160】
公知の形質転換技術、例えばエレクトロポレーションを用いてK.サーモトレランス(K.thermotolerans)をフラグメントで形質転換し、K.サーモトレランスのPDCを破壊する。エレクトロポレーションの方法は以下のとおりである:a)YPAD中20mlの容量で培養物を一晩(から15時間)成長させる;b)培養物500μlをマイクロフュージチューブに移し、@4K、4mmで回転させ、上澄を捨てる;c)冷EB(EB エレクトロポレーションバッファー:10mM トリスHCl、pH7.5;270mM スクロース;1mM MgCl)1mlで洗浄する;d)IB(IB=インキュベーションバッファー:YPD;25mM DTT;20mM HEPES、pH8.0)1mlに再懸濁する;e)@800rpm、30℃で30分間エッペンドルフ・サーモミキサーで振盪する;f)遠沈(spin down)し、EBで1回洗浄し、EB 400μlに再懸濁する;g)3μg DNAフラグメントを添加し(水中10mM トリスHCl、pH8.5)、氷上30mmインキュベートする;h)0.4cm エレクトロポレーションキュベットに移す。バイオラッド・ジーン・パルスター設定:1000V、1000A、50TF。パルス後は時間一定:〜20ミリ秒;i)3mlモルトン・クロシュア・チューブに移し、振盪せずに30℃で1時間インキュベートする;j)液体YPAD培地(YPAD:酵母抽出物 10g;ペプトン 20g;グルコース 20g;ヘミ硫酸アデニン 100mg、容量=1l、pH調整なし)400μlを添加し、800rpm、30℃で1時間エッペンドルフ・サーモミキサーで振盪する;k)液体YPAD 400μlを加え、4−6時間回収する;l)マイクロフュージチューブ@4K、4mmで遠沈し、上澄を捨て、1M ソルビトール 400μlに再懸濁し、100μg/ml G418選択プレートにプレートする;及びm)30℃で3から5日間インキュベートする。
【0161】
最初にコロニーを200μg/ml 0418を含有する培養皿への第2のパッチングによりスクリーニングする。標準的なゲノム調製(Sambrook)により第2の酵母パッチよりゲノムDNAを単離する。次いで単離したゲノムを1)適当なプライマー及び条件(Sambrook)を用いてカナマイシンフラグメントの存在に関して、及び2)適当なプライマー及び条件を用いて破壊されたpdc領域の不在に関してPCRによりスクリーニングする。次いで選択マーカーに関して陽性のコロニー及びPDC破壊領域に関して陰性のコロニーを別の研究のために成長させ、例えばこれらの株からのゲノムDNAをさらにサザンハイブリダイゼーション分析により分析する。
【0162】
(実施例19)
酵母、菌類及び細菌LDH遺伝子のクローニング
2種の酵母、クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)及びトルラスポラ・プレトリエンシス(Torulaspora pretoriensis)からLDHコード化遺伝子を単離した。これらの種は乳酸を生成することが解っている(Witteら、J.Basic Microbiol.29:707−716(1989))。全ての慣用される手順を特記する以外はSambrookら、前出で示される手順に従って実施した。
【0163】
クルイベロミセス・サーモトレランス LDH
K.サーモトレランス(K.thermotolerans)をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC 受け入れ番号#52709)から入手し、標準的な条件下で成長させた。インビトローゲン「イージーDNA」キットを用いて製造者のプロトコルに従ってこれらの細胞からゲノムDNAを精製した。リゾパス・オリザエ(Rhizopus oryzae)、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)、ドロソフィラ・メラノガスター(DrosopHila melanogaster)、アルビドプシス・タリアナ(Aribidopsis thaliana)及びラクトバシラス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)からのL−LDHコード化遺伝子のアラインメントにおいて同定された保存領域を逆翻訳することにより縮重増幅プライマーを設計した。2つの縮重オリゴヌクレオチドを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅に成功した。これらのオリゴヌクレオチドは:
【化10】
Figure 2004521619
であった。パーキン・エルマーバッファーII(1.5mM MgCl2)及びアンプリタック・ゴールド・ポリメラーゼを用いてPCR増幅反応を実施した。各々の反応物はK.サーモトレランス(K.thermotolerans)ゲノムDNAを6ng/μlの濃度で、4dNTPの各々を0.2mMの濃度で、及びEJP4及びEJP5プライマーの各々を1μMで含有した。以下のサイクリング条件従って反応を実施した:最初のインキュベーションは95℃で10分、続いて95℃で30秒、52℃で40秒、72℃で40秒からなる35サイクル。116塩基対(bp)のわずかな生成フラグメントを慣用される手段を用いて精製し、本明細書に開示した同一条件及び増幅条件を用いて再増幅し、クローン化し、シークエンシングした。
【0164】
得られた配列を、公知のL−LDHコード化遺伝子に優れた相同性を呈するポリペプチドに翻訳できる2つの非縮重プライマーEJP8及びEJP9をこの配列に基づいて設計した:
【化11】
Figure 2004521619
DNAの部分Sau3A消化により生じたランダムフラグメントをプラスミドYep9T(ref)のBamH1部位に挿入することにより、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)DNAを用いてゲノムDNAライブラリーを構築した。プライマーEJP8及びEJP9をベクターアームのプライマーと組み合わせて用いるPCRにより完全なK.サーモトレランス(K.thermotolerans)LDHコード化遺伝子を単離した。これらのベクターは:
【化12】
Figure 2004521619
であった。
【0165】
これらの増幅反応では、伸長時間を2分まで延長し、アニーリング温度を58℃まで高めた以外は上述した条件であった。増幅生成物をクローン化し、シークエンシングして公知の配列に対する相同性に基づいてK.サーモトレランス(K.thermotolerans)LDHコード化遺伝子の残りを含有することが示された。
【0166】
最後に、プライマーEJP12及びEJP13:
【化13】
Figure 2004521619
を用いるPCR増幅反応において高適合性ポリメラーゼ(Pfu)を用いて全長遺伝子を直接K.サーモトレランス(K.thermotolerans)ゲノムDNAから再単離した。これらの増幅反応を前記したように実施した。この別個に生成されたPCR産物のコーディング配列はアンプリタック・ゴールド生成配列に完全に一致した。K.サーモトレランス(K.thermotolerans)LDHコード化遺伝子のコーディング領域の核酸配列を配列番号:20として以下に提示する。
【0167】
完全なコーディング配列の翻訳により、とりわけスキゾサッカロミセス・ポムベ(Schizosaccharomyces pomb)(49.5%)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)(45.1%)、ラクトバシラス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)(36.8%)、ウシ(35.3%)、及びリゾパス・オリエ(Rhizopus oryae)(32.6%)からのL−LDHコード化遺伝子に対する著明な配列同一性が示された。
【化14】
Figure 2004521619
Figure 2004521619
【化15】
Figure 2004521619
Figure 2004521619
Figure 2004521619
トルラスポラ・プレトリエンシスLDH
T.プレトリエンシス(T.pretoriensis)のL−LDHコード化遺伝子をK.サーモトレランス(K.thermotolerans)遺伝子に類似の様式で単離した。実験計画は再度、縮重プライマーを用いるT.プレトリエンシス(T.pretoriensis)ゲノムDNAのPCR増幅を用いて遺伝子のセグメントを単離し、PCR基盤の染色体ウォーキングにより残りの遺伝子を単離することであった。T.プレトリエンシス(T.pretoriensis)はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC 受け入れ番号_____)から入手した。インビトローゲン「イージーDNA」キットを用いて製造者のプロトコルに従って、ゲノムDNAをこれらの細胞から精製した。前記した保存配列に基づいて縮重プライマーを設計した。2つの縮重オリゴヌクレオチドを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅に成功した:
【化16】
Figure 2004521619
熱サイクリングパラメーター及び反応条件は、T.プレトリエンシス(T.pretoriensis)ゲノムDNAを20ng/μlの濃度で使用した以外は前記したとおりであった。強力な生成物である508bpのDNAフラグメントをクローン化し、シークエンシングした。得られた169個のアミノ酸翻訳生成物は公知のL−LDHコード化遺伝子に対して優れた相同性を呈した。
【0168】
遺伝子の残りは公知の配列から双方向の「ウォーキング」により単離した。これはゲノム・ウォーカー・キット(クロンテック#K1807−1)及びアドバンテージ・ゲノミック・ポリメラーゼ・ミックス(クロンテック#8418−1)を用いて製造者の指示書に従って達成した。キットにより提供されるアダプタープライマーに加えて、4つの、遺伝子特異的な入れ子状態のプライマーを使用した。遺伝子特異的プライマーは:
【化17】
Figure 2004521619
であった。生成物をクローン化し、シークエンシングし、公知の配列に対する相同性に基づいて、T.プレトリエンシス(T.pretoriensis)からのLDHコード化遺伝子の残りを含有することが見出された。完全なコーディング配列の翻訳により、とりわけスキゾサッカロミセス・ポムベ(Schizosaccharomyces pomb)(48.8%)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)(42%)、ラクトバシラス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)(38.2%)、ウシ(34.9%)、及びリゾパス・オリエ(Rhizopus oryae)(32.2%)からのL−LDHコード化遺伝子に対する著明な配列同一性が示された。T.プレトリエンシス(T.pretoriensis)LDHコード化遺伝子を配列番号:28として以下に提示し、そこでコード化されるLDHタンパク質の予測されるアミノ酸配列を配列番号:29として同定する。
【化18】
Figure 2004521619
【化19】
Figure 2004521619
Figure 2004521619
B.メガテリウム(B.megaterium)LDH
LDH遺伝子をコードするB.メガテリウム(B.megaterium)DNAを以下のように単離した。B.メガテリウム(B.megaterium)はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC 受け入れ番号#6458)から入手し、標準的な条件下で成長させた。インビトローゲン「イージーDNA」キットを用いて製造者のプロトコルに従ってこれらの細胞からゲノムDNAを精製した。B.メガテリウム(B.megaterium)からのL−LDHに関するジェンバンクで入手可能な配列(ジェンバンク受け入れ番号#M22305)に基づいてプライマーを設計した。パーキン・エルマーバッファーII(1.5mM MgCl)及びアンプリタック・ゴールド・ポリメラーゼを用いてPCR増幅反応を実施した。各々の反応物はB.メガテリウム(B.megaterium)ゲノムDNAを6ng/μlの濃度で、4dNTPの各々を0.2mMの濃度で、及び2つの増幅プライマーBM1270及びBM179の各々を1μMの濃度で含有し、ここでこれらのプライマーは配列:
【化20】
Figure 2004521619
を有する。以下の熱サイクリング条件に従って反応を実施した:最初のインキュベーションは95℃で10分、続いて95℃で30秒、50℃で60秒、72℃で60秒からなる35サイクル。1100塩基対(bp)の強い生成フラグメントを慣用される手段を用いてゲル精製し、クローン化し、シークエンシングした。得られた配列は、公知のL−LDHコード化遺伝子に優れた相同性を呈するポリペプチドに翻訳できた。
【0169】
本明細書で開示されるB.メガテリウム(B.megaterium)LDHコード化配列(配列番号:32)のコーディング配列は、双方共にサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)に由来するホスホグリセリン酸塩キナーゼ遺伝子からのプロモーター及びGAL10遺伝子からの転写ターミネーターに機能的に連結された。この構築物を作製する場合に、以下のオリゴヌクレオチドを調製し、これを用いて配列番号:29として同定される配列を有するインサートを含有するプラスミドからコーディング配列を増幅する。2つのオリゴヌクレオチドプライマー、Bmeg5’及びBmeg3’をこの配列に基づいて設計し、遺伝子のコーディング配列の末端で制限部位を導入した:
【化21】
Figure 2004521619
dNTP及び前記したプライマー濃縮物を用いて、製造者により供給されたバッファー中Pfuターボポリメラーゼ(ストラッタジーン)を用いてこの増幅反応を実施した。最初に反応混合物を95℃で3分間インキュベートし、次いで95℃で30秒、50℃で30秒、72℃で60秒の20サイクルにより、続いて72℃で9分間の最終インキュベーションにより熱サイクリングを行った。生成物を制限酵素XbaI及びBamHIで消化し、次いでプラスミドpNC101(NREL)のXbaI及びBamHI部位にライゲートした。このライゲーションの結果、PGKプロモーター及びGAL10ターミネーターがB.メガテリウム(B.megaterium)LDHコーディング配列に機能的に連結されるようになった(すなわち酵母細胞において転写的に活性である)。一度B.メガテリウム(B.megaterium)LDHがこれらの転写調節配列に機能的に連結されると、NotI−NotIフラグメントが切除され、クルイベロミセス種(プラスミドpNC003、NREL)で複製できるベクターに再クローン化された。得られたプラスミドはK.ラクチス(K.lactis)プラスミドpKD1からのSpHI部位の間にLDH含有NotI−NotIフラグメント及び4756bp配列を含有した。
【0170】
これらのプラスミドを図17に示す。
【0171】
リゾパス・オリゼ(Rhizopus oryzae)LDH
L−LDHを以下のようにリゾパス・オリゼ(Rhizopus oryzae)から単離した。リゾパス・オリゼ(Rhizopus oryzae)細胞はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC 受け入れ番号#9363)から入手し、標準的な条件下で成長させた。インビトローゲン「イージーDNA」キットを用いて製造者のプロトコルに従ってこれらの細胞からゲノムDNAを精製した。R.オリゼ(R.oryzae)からのL−LDHに関するジェンバンクで入手可能な配列(ジェンバンク受け入れ番号#AF226154)に基づいてプライマーを設計した。パーキン・エルマーバッファーII(1.5mM MgCl)及びアンプリタック・ゴールド・ポリメラーゼを用いてPCR増幅反応を実施した。各々の反応物はR.オリゼ(R.oryzae)ゲノムDNAを6ng/μlの濃度で、4dNTPの各々を0.2mMの濃度で、及び増幅プライマーRal−5’及びRal−3’の各々を1μMの濃度で含有した。増幅プライマーは配列:
【化22】
Figure 2004521619
を有した。以下のサイクリング条件に従って反応を実施した:最初のインキュベーションは95℃で10分、続いて95℃で30秒、41℃で30秒、72℃で60秒からなる35サイクル。1100塩基対(bp)の強い生成フラグメントを慣用される手段を用いてゲル精製し、TAベクター(インビトローゲン、カールスバッド、カリフォルニア州)にクローン化し、シークエンシングした。得られた配列は、ジェンバンクの公知のリゾパス・オリゼ(Rhizopus oryzae)L−LDHコード化遺伝子配列(受け入れ番号#AF226154)に優れた相同性を呈するポリペプチドに翻訳できた。
【0172】
本明細書で開示されるR.オリゼ(R.oryzae)LDHコード化配列のコーディング配列は、双方共にS.セレビジエ(S.cerevisiae)に由来するホスホグリセリン酸塩キナーゼ遺伝子からのプロモーター及びGAL10遺伝子からの転写ターミネーターに機能的に連結された。この構築物を作製する場合に、以下のオリゴヌクレオチドを調製し、これを用いてリゾパス(Ryzopus)LDHインサートを含有するプラスミドからコーディング配列を増幅した。2つのオリゴヌクレオチドプライマー、Rapgk5及びPapgk3’をこの配列に基づいて設計し、遺伝子のコーディング配列の末端で制限部位を導入した。
【化23】
Figure 2004521619
dNTP及び前記したプライマー濃縮物を用いて、製造者により供給されたバッファー中Pfuターボポリメラーゼ(ストラッタジーン)を用いてこの増幅反応を実施した。最初に反応混合物を95℃で3分間インキュベートし、次いで95℃で30秒、53℃で30秒、72℃で60秒の20サイクルにより、続いて72℃で9分間の最終インキュベーションにより熱サイクリングを行った。生成物を制限酵素XbaIで消化し、次いでプラスミドpNC101(NREL)のXbaI部位にライゲートした。
【0173】
このライゲーションの結果、PGKプロモーター及びGAL10ターミネーターがR.オリゼ(R.oryzae)LDHコーディング配列に機能的に連結されるようになった。一度R.オリゼ(R.oryzae)LDHがこれらの転写調節配列に機能的に連結されると、NotI−NotIフラグメントが切除され、クルイベロミセス種(プラスミドpNC003、NREL)で複製できるベクターに再クローン化された。得られたプラスミドはK.ラクチス(K.lactis)プラスミドpKD1からのSpHI部位の間にLDH含有NotI−NotIフラグメント及び4756bp配列を含有した。
【0174】
K.サーモトレランス(K.thermotolerans)、R.オリゼ(R.oryzae)またはB.メガテリウム(B.megaterium)から単離されたLDH遺伝子をコードするG418抵抗性マーカーベクター
インビトローゲン(カールスバッド、カリフォルニア州)から入手したG418抗生物質選択マーカーを修飾し、双方共にS.セレビジエ(S.cerevisiae)に由来するピルビン酸塩デカルボキシラーゼ遺伝子からのプロモーター及びGAL10遺伝子からの転写ターミネーターに機能的に連結された。この構築物を作製する場合に、以下のオリゴヌクレオチドを調製し、これを用いてG418抵抗性遺伝子インサートを含有するプラスミドからコーディング配列を増幅した。2つのオリゴヌクレオチドプライマー、G5’及びG3’をこの配列に基づいて設計し、遺伝子のコーディング配列の末端で制限部位を導入した。
【化24】
Figure 2004521619
これらのオリゴヌクレオチドを用いてpPIC9Kベクター(インビトローゲン、カールスバッド、カリフォルニア州)からG418遺伝子を増幅した。dNTP及び前記したプライマー濃縮物を用いて、製造者により供給されたバッファー中Pfuターボポリメラーゼ(ストラッタジーン)を用いてこの増幅反応を実施した。最初に反応混合物を95℃で3分間インキュベートし、次いで95℃で30秒、50℃で30秒、72℃で60秒の20サイクルにより、続いて72℃で9分間の最終インキュベーションにより熱サイクリングを行った。生成物を制限酵素XbaI及びBamHIで消化し、次いでプラスミドpNC101(NREL)のXbaI部位及びBamHIにライゲートした。
【0175】
B.メガテリウム(B.megaterium)からのLDH遺伝子は、双方共に酵母S.セレビジエ(S.cerevisiae)に由来するホスホグリセリン酸塩キナーゼ遺伝子からのプロモーター及びGAL10遺伝子からの転写ターミネーターに機能的に連結され、G418遺伝子のGal10ターミネーターの3’末端のSpHI部位にこのベクターを導入した。これは本質的にG418選択マーカー遺伝子及びB.メガテリウム(B.megaterium)LDH遺伝子に結合してプラスミドpCA5が得られる。プラスミドpCA5を制限消化して、G418選択マーカー遺伝子及びB.メガテリウム(B.megaterium)LDH遺伝子からなる4キロ塩基対(kbp)フラグメントを切除した。本明細書にて論じた化学的及びエレクトロポレーション方法を用いて、この4kbpフラグメントを用いてK.マルキシアヌス(K.marxianus)を形質転換した。
【0176】
(実施例20)
新規LDHでの酵母の形質転換
本明細書で開示したK.サーモトレランス(K.thermotolerans)LDHコード化遺伝子(配列番号:20)のコーディング配列は、双方共に酵母サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)に由来するホスホグリセリン酸塩キナーゼ遺伝子からのプロモーター及びGAL10遺伝子からの転写ターミネーターに機能的に連結された。この構築物を作製する場合に、以下のオリゴヌクレオチドを調製し、これを用いてインサート:
【化25】
Figure 2004521619
を含有するプラスミドからコーディング配列を増幅した。dNTP及び前記したプライマー濃縮物を用いて、製造者により供給されたバッファー中Pfuターボポリメラーゼ(ストラッタジーン)を用いてこの増幅反応を実施した。最初に反応混合物を95℃で3分間インキュベートし、次いで95℃で30秒、60℃で40秒、72℃で60秒の20サイクルにより、続いて72℃で9分間の最終インキュベーションにより熱サイクリングを行った。生成物を制限酵素XbaI及びEcoRIで消化し、次いでプラスミドpNC101(NREL)のXbaI部位及びEcoRIにライゲートした。このライゲーションの結果、PGKプロモーター及びGAL10ターミネーターがK.サーモトレランス(K.thermotolerans)LDHコーディング配列に機能的に連結されるようになった(すなわち酵母細胞において転写的に活性である)。プロモーター、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)LDHコーディング配列及びターミネーターを含有するこのプラスミドのNotI−NotIフラグメントが本明細書にて開示され、配列番号:43として同定された。
【化26】
Figure 2004521619
Figure 2004521619
Figure 2004521619
一度K.サーモトレランス(K.thermotolerans)LDHが機能的にこれらの転写調節配列に連結されると、NotI−NotIフラグメントが切除され、クルイベロミセス種(プラスミドpNC003、インビトローゲン、カールスバッド、カリフォルニア州)で複製できるベクターに再クローン化された。得られたプラスミドはK.ラクチス(K.lactis)プラスミドpKD1からのSpHI部位の間にLDH含有NotI−NotIフラグメント(配列番号:43)及び4756bp配列を含有した(Chenら、Nucleic Acids Res.14:4471−4481(1986))。加えて、pNC003は酵母TEFプロモーターの調節下でゼオシン抵抗性遺伝子を担持する(Hwangら、EMBO J.12:2337−2348(1993))。双方の配向のNotI−NotIフラグメントが得られ、pNC102及びpNC103と称した。
【0177】
これらのプラスミドを実質的に以下に記載するようにK.マルキシアヌス(K.marxianus)及びK.ラクチス(K.lactis)に導入した。化学的形質転換法によりプラスミドpNC102及びpNC103を酵母細胞に導入した。LDHコード化遺伝子を含有しないプラスミドpNC003を対照として酵母細胞に導入した。形質転換体を、200μg/ml ゼオシンを含有するYPDプレートで選択し、30℃で2日後まで成長させた。K.マルキシアヌス(K.marxianus)形質転換培養物に関しては、pNC003の1つ及びpNC103の1つの形質転換体のみが得られた。K.ラクチス(K.lactis)形質転換培養物に関しては、各々のプラスミドの複数の形質転換体が得られた。
【0178】
次いで形質転換体をL−乳酸を生成する能力に関して分析した。20g/l グルコース及び300μg/l ゼオシンを含有するYPDブロスの培養物(2ml)をコロニーから形質転換プレートに直接接種した。培養物を振盪せずに30℃で52時間インキュベートした。その期間の終わりには、遠心により細胞を除去し、YSIを用いてグルコース及びL−乳酸に関して培養上澄を検定した。これらのアッセイの結果を以下の表5に示す。K.サーモトレランス(K.thermotolerans)LDHプラスミドを含有するK.マルキシアヌス(K.marxianus)及びK.ラクチス(K.lactis)細胞の双方は著明なレベルまでL−乳酸を生成することができ、一方空のベクターを含有する対照細胞は検出可能なL−乳酸を生成しない。従って、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)LDHは明らかに酵母の別の種で炭素を乳酸生成に向けるように機能することができる。
【表5】
Figure 2004521619
(実施例21)
クルイベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)におけるD−キシロースからの乳酸生成
グルコース以外の糖を用いて乳酸を生成できることを示すために、250ml バッフルド・シェーク・フラスコ中クルイベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)1に由来するK.マルキシアヌスの遺伝子操作された株(ATCC受け入れ番号52486)によるキシロースの乳酸への発酵を行った。さらに具体的には、この実施例で用いた3つの株は以下の通りである:(i)NC39:プラスミドpNC3にゼオシン選択マーカー及び以下に記載するホスホグリセリン酸塩キナーゼプロモーターの調節下にバシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)乳酸塩デヒドロゲナーゼ(LDH)を含有する多コピープラスミドpNC7を担持するK.マルキシアヌス(K.marxianus)1;(ii)NC103:プラスミドpNC003にゼオシン選択マーカー及び前記したようにホスホグリセリン酸塩プロモーターの調節下にクルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)LDHを含有する多コピープラスミドpNC103を担持するK.マルキシアヌス(K.marxianus)1;及び(iii)NC102:pKD1ベクターにゼオシンマーカーを含有する多コピープラスミドpNC102を担持するK.マルキシアヌス(K.marxianus)1。後者の株を対照として使用した。培地中のゼオシンの存在によりプラスミドの損失が最低になった。
【0179】
単一のコロニーを300μg/ml ゼオシンを補充した合成完全培地3mlを含有する10mlチューブに移すことにより接種物を調製した。全実験で用いた培地は(リットルあたり):酵母窒素ベース(YNB;アミノ酸及び硫酸アンモニウム不含)6.7g、尿素3g及びゼオシン0.3gを含有した。炭素及びエネルギー供給源としてD−グルコースまたはD−キシロースを添加した。最初のpHを水酸化カリウムで5.0に調整した。回転式振盪培養機で250rpm及び30℃で一晩成長させ、次いで前記したYNB培地100mlを含有する250mlバッフルド・シェーク・フラスコに移した。細胞を再度pH5.0及び30℃で一晩成長させ、続いて15(重量/容量)% グリセロール中−80℃で貯蔵した。これらの貯蔵培養物を以下で記載する実験の接種物として使用した。
【0180】
NC39及びNC103でのグルコース上での乳酸生成
NC102、NC103及びNC39株の培養物を前記したYNB培地中2(重量/容量)% グルコース上で、250rpm及び30℃で静止期まで成長させた。この後、細胞をペレット化し、最初のOD600が20で2(重量/容量)% グルコースを補充したYNB培地に移した。細胞を100rpm及び30℃でインキュベートし、培養物への酸素供給を低減させた。培養物から液体サンプルを時間間隔で取り、(OD600を用いて)成長、代謝物及びpHを測定した。ウォーターズ410屈折率検出器に接続したアミネックスHPX−87Hカラム(可動相として10mM HSOを用いて55℃で流速0.5ml/分で操作)を用いるHPLCにより代謝物分析を実施した。pHが3.5以下に低下した場合、滅菌CaCO 2gを添加し、pHを約5.5まで上昇させた。
【0181】
細胞を新鮮培地に移した24時間後に実験した全ての株のグルコースを十分に枯渇させた。NC39及びNC103株では、各々6.4g/l(収率32%)及び3.8g/l(収率19%)の乳酸が生成された。対照株NC102では乳酸生成を検出できなかった。NC39及びNC103株はまた各々2.3及び2.9g/lのエタノールを生成し;対照株NC102は5.8g/lのエタノールを生成した。その他の典型的な発酵生成物(ピルビン酸塩、コハク酸、グリセロール及び酢酸塩)は全培養物で>1.0g/lで検出できなかった。
【0182】
これらの結果により、異種性LDH(B.メガテリウム(B.megaterium)またはK.サーモトレランス(K.thermotolerans)のいずれかに由来)を発現するクルイベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)(クラブトリー陰性酵母株)を用いてグルコースから乳酸を生成できることが確立された。
【0183】
NC39及びNC103からのキシロース上での乳酸生成
培養培地中のグルコースがD−キシロースと置き換えたこと以外は実質的に前記した培養及び発酵条件を用いて、炭素供給源としてキシロースを用いる乳酸生成が示された。NC39株では72時間の発酵の後、キシロース20gから最大4.8gの乳酸が生成された(すなわち収率0.23g/g)。NC103株または対照株NC102では乳酸は生成されなかった。加えて、その他の発酵生成物(ピルビン酸塩、コハク酸、グリセロール及びエタノール)は全培養物で>1.0g/lで検出できなかった。
【0184】
これらの結果により、異種性LDH(B.メガテリウム(B.megaterium)またはK.サーモトレランス(K.thermotolerans)のいずれかに由来)を発現するクルイベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)(クラブトリー陰性酵母株)を用いて、グルコースでの場合よりもゆっくりした速度ではあったが、キシロースから乳酸を生成できることが確立された。
【0185】
これらの結果もまた図15に示す。
【0186】
(実施例22)
酵母におけるペントース糖からのL−乳酸生成
カンジダ種を、ペントース糖を用いて乳酸を生成するように遺伝子操作した。ベクター及びその他の構築物を図16に示す。
【0187】
C.ソノレンシス(C.sonorensis)のゼオシン抵抗生成ベクター
S.セルビジエ(S.cervisaie)TFF1プロモーターの調節下でゼオシン抵抗生成マーカーを含有するプラスミドpTEF1/Zeo(インビトローゲン)をC.ソノレンシス(C.sonorensis)rDNAフラグメントを付加することにより修飾し、相同体組換えの標的を提供した。C.ソノレンシス(C.sonorensis)26rDNA(ジェンバンク受け入れ番号U70185)に対応する以下のオリゴヌクレオチドプライマー:
【化27】
Figure 2004521619
を用いてC.ソノレンシス(C.sonorensis)ゲノムDNAを増幅して26S rDNA遺伝子のPCR増幅フラグメントを提供した。得られたPCR生成物フラグメントを制限酵素SpeI及びXbaIで消化し、XbaIで消化したpTEF/Zesoプラスミドにライゲートした。得られたプラスミドpM203を図16に示す。
【0188】
pM203に含まれるTEF1プロモーターは別のカンジダ種、C.アルビカンス(C.albicans)PGK1プロモーターからの遺伝子のプロモーターにより置換された。入手可能なC.アルビカンス(C.albicans)PGK1配列(ジェンバンク受け入れ番号U25180)に基づいて設計された配列以下のオリゴヌクレオチドプライマー:
【化28】
Figure 2004521619
を用い、C.アルビカンスゲノムDNAを鋳型として用いて、C.アルビカンス PGK1プロモーターオープン・リーディグ・フレームの上流の領域から700bpのフラグメントを増幅した。制限部位XbaI及びSpeI(前記の下線部)をプライマーに加えてフラグメントのクローン化を促進した。増幅後、フラグメントを単離し、制限酵素XhoI及びNcoIで消化し、次いでXhoI及びNcoIで消化したプラスミドpMI203にライゲートした。得られたプラスミド、pMI205を図16に示す。
【0189】
C.ソノレンシス(C.sonorensis)遺伝子の単離
C.ソノレンシス(C.sonorensis)に関する適当な遺伝的手段を開発するために、この種からゲノムライブラリーを構築した。関連する酵母からの遺伝子の公知のアミノ酸及び核酸配列に基づくライブラリーから目的の遺伝子を単離した。構成的に強く発現される遺伝子、例えばPGK1及びTDH1のプロモーター及びターミネーターを単離し、これを用いて相同遺伝子を発現させた。対応する酵素が乳酸生成と競合する反応を行うので、PDC遺伝子を単離した。従って、乳酸生成に用いられる株からPDC遺伝子を欠失させるのが望ましい。
【0190】
イージーDNAキット(インビトローゲン)を用いてYPDで一晩成長させた細胞からC.ソノレンシス(C.sonorensis)のゲノムDNA(ATCC受け入れ番号32109)を単離した。DNAを部分的にSau3Aで消化させ、スクロースグラジエント遠心により大きさで分画化し(Sambrookら、Molecular Cloning、第2版、コールド。スプリング・ハーバー・ラボラトリー、ニューヨーク(1989))、約22kbのDNAフラグメントを、BamHI消化し、ホスファターゼ処理したラムダDASH(商標)ベクターアーム(ストラッタジーン)にライゲートし、ギガパックIIゴールド・パッケージング・エクストラクト(ストラッタジーン)を用いてライゲーション混合物をラムダ粒子にパッケージングした。ラムダ粒子を用いて大腸菌(E.coli)MRA P2を感染させた。
【0191】
ダイナザイム・EXTポリメラーゼ(フィンザイムズ、エスポー、フィンランド)を用いてPCR増幅によりライブラリーからのC.ソノレンシス(C.sonorensis)遺伝子の単離に用いるプローブを調製し、鋳型としてのS.セレビジエ(S.cerevisiae)、C.アルビカンス(C.albicans)またはC.ソノレンシス(C.sonorensis)の配列特異的プライマー及びゲノムDNAは以下のとおりである:
・S.セレビジエ(S.cerevisiae)TDH1遺伝子に対応するオリゴヌクレオチド
【化29】
Figure 2004521619
を用いて、ゲノム S.セレビジエ DNAからTDH遺伝子のフラグメントを増幅した。
【0192】
・C.アルビカンス(C.albicans)PGK1遺伝子に対応するオリゴヌクレオチド
【化30】
Figure 2004521619
を用いてゲノム C.アルビカンスからPGK1遺伝子のフラグメントを増幅した。
【0193】
・C.ソノレンシス(C.sonorensis)26S rRNAに対応するオリゴヌクレオチド
【化31】
Figure 2004521619
を用いてC.ソノレンシス ゲノムDNAから26S rDNAのフラグメントを増幅した。
【0194】
・オリゴヌクレオチド
【化32】
Figure 2004521619
を、S.セレビジエ(S.cerevisiae)PDC1及びピキア・スチピチス(Pichia stipitis)PDC1及びPDC2並びにカンジダ・アルビカンスPDC1及びPDC3の不完全配列間で保存されているピルビン酸塩デカルボキシラーゼアミノ酸配列
【化33】
Figure 2004521619
の部分に基づいて設計した。
【0195】
・菌類アルコールデヒドロゲナーゼ配列に見出される保存領域に基づいてオリゴヌクレオチド
【化34】
Figure 2004521619
を設計した。これらのプライマーを用いてC.ソノレンシス(C.sonorensis)ゲノムDNAから(複数の)ADH遺伝子のフラグメントを増幅した。これらのプライマーを用いるPCR反応からADH1、ADH2及びADH3と称する異なるヌクレオチド配列の3つのフラグメントを生成した。
【0196】
前記したように生成したPCRフラグメントでライブラリーをスクリーニングし、ランダム・プライムド・ラベリング・キット(ベーリンガー・マンハイム)を用いて生成物を32P α−dCTPで標識した。50% ホルムアミド、5x デンハート、5x SSPE、0.1% SDS、100μg/ml ニシン精子DNA、1μg/ml ポリA DNAを含有する溶液中42℃で一晩インキュベートすることにより、放射活性プローブでのハイブリダイゼーションを実施した。TDH1、PGK1及びPDC1プローブに関しては、2x SSC溶液中室温で5分間のハイブリダイゼーションの後フィルターを洗浄し、これを繰り返した後に、1x SSC−0.1% SDSの溶液中68℃で30分間の洗浄を2回行った。rDNA及びPDC2プローブに関するハイブリダイゼーション後洗浄を、2x SSC中室温で5分間を2回、続いて0.1x SSC−0.1% SDS中68℃で30分間を2回行った。
【0197】
製造者の指示書に従って陽性のプラークを単離し、精製した(ストラッタジーン)。慣用される方法(Sambrookら。前出)を用いてバクテリオファージを精製し、DNAseI処置を排除し、PEG6000を用いて溶解された宿主細胞から放出されたファージ粒子を沈殿させることにより修飾し、このファージ粒子を次いでSMバッファーに溶解し、クロロホルムで抽出し、コントロンTST41.14ローターで25000rpmで2時間遠心することによりペレット化し、再度SMバッファーに溶解した。プロテイナーゼKでファージ粒子を消化し、続いてフェノール抽出し、エタノール沈殿することによりラムダDNAを単離した。
【0198】
C.ソノレンシス(C.sonorensis)ゲノムDNAインサートを配列特異的プライマーを用いて部分的にシークエンシングした。ヌクレオチド配列及びそこから推定されるアミノ酸配列を配列データベースと比較し、公知遺伝子またはタンパク質に対する相同性により、ファージインサートによりコードされる遺伝子全体または部分を同定した。得られた配列は、単離する各々のクローンに関して用いられるプローブに依存して、菌類rDNA、ホスホグリセリン酸キナーゼ、グリセロアルデヒド−3−リン酸塩デヒドロゲナーゼ、またはピルビン酸塩デカルボキシラーゼに対して著明な類似性を有した。C.ソノレンシス(C.sonorensis)PGK1、PDC1及びTDH1のオープン・リーディグ・フレームコード化配列の出発点及び終点をそれにより同定した。
【0199】
C.ソノレンシス(C.sonorensis)形質転換体を選択するためのMEL5遺伝子選択の使用
C.ソノレンシス(C.sonorensis)形質転換体の陽性選択を開き発するために、S.セレビジエ(S.cerevisiae)MEL5遺伝子(Naumovら、MGG 224:119−128(1990);Turakainenら、Yeast 10:1559−1568(1994);ジェンバンク受け入れ番号Z37511)をプラスミドpMEL5−39から2160bp EcoRI−SpeIフラグメントとして得て、EcoRI及びSpeIカットで消化したpVluescriptII KS(−)(ストラッタジーン)にライゲートした。MEL5遺伝子のEcoRI部位はイニシエーターATGの510bp上流に位置し、SpeI部位はMEL5の停止コドンの250bp下流に位置する。得られたプラスミドをpMI233で消化し、図16に示す。
【0200】
前記で単離したPGK1ラムダクローンからのDNAを鋳型として用いて、C.ソノレンシス(C.sonorensis)の1500bpのPGK1プロモーターをプライマー:
【化35】
Figure 2004521619
で増幅した。3’プライマー(配列番号:61)がオープン・リーディグ・フレームのすぐ上流のPGK1プロモーターに存在するヌクレオチド及びMEL5オープン・リーディグ・フレームの5’末端に対応するヌクレオチドに対応するので、それがC.ソノレンシス(C.sonorensis)PGK1プロモーター及びS.セレビジエ(S.cerevisiae)MEL5間で融合体を作ることができる。得られた増幅フラグメントを制限酵素SpHI及びXhoIで消化し、SpHI及びXhoIで消化したプラスミドpMI233にライゲートした。得られたプラスミドの構築物は、MEL5オープン・リーディグ・フレームの上流で、これに機能的に連結されたC.ソノレンシス(C.sonorensis)PGK1プロモーターを含有し、図16にてpMI234として同定される。
【0201】
類似の様式で、前記で単離したTDH1ラムダクローンからのDNAを鋳型として用いて、650bpのC.ソノレンシス(C.sonorensis)TDH1プロモーターをプライマー
【化36】
Figure 2004521619
で増幅した。3’プライマー(配列番号:63)がオープン・リーディグ・フレームのすぐ上流のTDH1プロモーターに存在するヌクレオチド及びMEL5オープン・リーディグ・フレームの5’末端に対応するヌクレオチドに対応するので、それがC.ソノレンシス(C.sonorensis)TDH1プロモーター及びS.セレビジエ(S.cerevisiae)MEL5間で融合体を作ることができる。得られた増幅フラグメントを制限酵素SpHI及びXhoIで消化し、SpHI及びXhoIで消化したプラスミドpMI233にライゲートした。得られたプラスミドの構築物は図16にてpMI238として同定され、MEL5オープン・リーディグ・フレームの上流で、これに機能的に連結されたC.ソノレンシス(C.sonorensis)TDH1プロモーターを含有する。
【0202】
MEL5発現カセットをSpeI及びXhoIでの制限酵素消化によりベクター配列から放出させ、直線状DNA 1μgをBackerら(Yeast 15:1609−1618(1999))の方法に従ってエレクトロポレーションによりC.ソノレンシス(C.sonorensis)に形質転換した。YPD 50ml中で一晩成長させた後、遠心により収穫し、0.1M LiAc/10mM DTT/10mM トリスHClの溶液中に再懸濁した後、室温で1時間インキュベートした。遠心により細胞を収集し、冷水及び1M ソルビトールで洗浄し、1M 冷ソルビトールに再懸濁した。DNA(1から3μg)を細胞懸濁液 40μlに加え、混合物を0.2cm エレクトロポレーションキュベットにピペッティングした。エレクトロポレーションに関して1.5kV、25F、200Ωの設定でバイオ・ラッド・ジーン・パルサーを使用した。電気パルスの後、1M 冷ソリビトール 1mlを細胞に添加した。次いで細胞を振盪せずに30℃で1時間インキュベートした;また別に、YPD 2mlを加え、30℃で2から3時間インキュベーションを続けた。細胞を適当な寒天プレート上にプレートして再生させた。
【0203】
さらにまた別に、細胞をGietzら(Nucleic Acids Res.20:1425(1992))のプロトコルに従って形質転換した。形質転換体をα−ガラクトシダーゼ、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−α−D−ガラクトピアノシド(X−gal;ICNバイオケミカルズ)を40μg/mlの濃度で補充したYPD寒天プレート(10g/l 酵母抽出物、20g/l ペプトン、20g/l グルコース及び2%寒天からなる)上で成長させた。プレートを30℃で1から3日間インキュベートし、次いで4℃に移した。X−galの存在下、機能的MEL5発現カセットで形質転換された酵母コロニーは青色になるが、一方形質転換されなかったコロニーは白色であった。これらの実験で得られた形質転換頻度は2から20形質転換体/DNAμgであった。青色コロニーは、これらを新鮮インディケーター培地上で再度画線培養することにより精製した。
【0204】
形質転換体はまた単独の炭素供給源としてメリビオース上で成長する能力をも獲得した。これは培地に分泌されたMEL5コード化α−ガラクトシダーゼによりメリビオースがグルコース及びガラクトースに加水分解されたことを示している。
【0205】
X−gal含有培地上で形質転換体をスクリーニングするための類似の実験計画は、単独の炭素供給源としてメリビオースを含有する培地上でこれらを選択することである。形質転換の後、0.67% 酵母窒素ベース(ディフコ)及び2% メリビオースを含有する寒天培地上に細胞を広げ、プレートを30℃で5から10日間インキュベートする。これらの条件下で形質転換されなかった細胞は可視的なコロニーにまで成長できないが、一方MEL5形質転換体はコロニーを形成する。
【0206】
L.ヘルベチカス(L.helveticus)LDH発現カセット及びC.ソノレンシス(C.sonorensis)のMEL5マーカーを含有するベクター
プラスミドpMI205を用いて選択マーカーとしてMEL5遺伝子及びC.ソノレンシス(C.sonorensis)で乳酸の生成を可能にするためのLDH遺伝子を含有するプラスミドを生成した。得られたプラスミドでは、pMI205におけるゼオシン抵抗性遺伝子がL.ヘルベチカス(L.helveticus)LDH遺伝子と置換された。
【0207】
LDH遺伝子及びCYC1ターミネーターを含有するpVR1の1329bpのNcoI−BamHIフラグメントを、C.アルビカンス(C.albicans)PGK1プロモーターの調節下でL.ヘルベチカス(L.helveticus)LDH遺伝子を担持するpMI205の3413bpのNcoI−BamHIフラグメントにライゲートした;得られたプラスミドをpMI214と称し、図16に示す。第2工程では、C.アルビカンス(C.albicans)PGK1プロモーターをC.ソノレンシス(C.sonorensis)PGK1プロモーターと置換した。プライマー:
【化37】
Figure 2004521619
を用いて前記した単離されたラムダクローンから増幅することによりC.ソノレンシス(C.sonorensis)PGK1プロモーターを単離し、PCR産物をXhoI及びNcoIで消化し、XhoI及びNcoIで消化したpMI214にライゲートした。このプラスミドをpMI277と称し、図16に示す。
【0208】
pMI227の3377bpのAvrII−NheIフラグメントをSpeI消化したpMI234とライゲートすることにより、pMI227からのLDH発現カセット及びpMI234からのMEL5マーカーカセットを同一のベクターに組み合わせた。得られたプラスミドをpMI246と称し、図16に示す。
【0209】
pMI227の3377bpのAvrII−NheIフラグメントをSpeI消化したpMI238とライゲートすることにより、MI227からのLDH発現カセット及びpMI238からのMEL5マーカーカセットを同一のベクターに組み合わせた。得られたプラスミドをpMI247と称し、図16に示す。
【0210】
乳酸生成のためのC.ソノレンシス(C.sonorensis)の形質転換
別の酵母種のために技術分野で開発された形質転換法を用いてLDHコード化ベクターをC.ソノレンシス(C.sonorensis)細胞に導入した。形質転換の前に、rDNA配列内で切断し、従ってrDNA位置への組み込みを標的化する酵素であるBstBIでの制限酵素消化により、pMI246及びpMI247を直線化した。また別に、形質転換プラスミドをApaI及びBamHIで消化し、続いてアガロースゲルから精製し、それによりベクター配列からマーカー及びLDHカセットを放出し、ゲノムでのランダムな組み込みを促進した。
【0211】
リチウム酢酸塩法(Gietzら、Nucleic Acids Res.20:1425(1992))によるか、または前記したエレクトロポレーションによりC.ソノレンシス(C.sonorensis)をpMI246及びpMI247で形質転換し、形質転換体をスクリーニングし、X−galを補充したYPDプレート上で形成された青色コロニーに基づいて精製した。
【0212】
アルファ・ガラクトシダーゼ生成コロニーを乳酸の生成に関して試験した。形質転換をYPD液体培地中30℃で一晩成長させ、培養培地のアリコートを取り、L−乳酸測定キット(ベーリンガー・マンハイム)を用いて乳酸の存在を酵素的に分析した。宿主株よりも少なくとも10倍以上の乳酸が培地上澄中で検出された。
【0213】
C.ソノレンシス(C.sonorensis)のBstBI切断pMI246での形質転換に由来する形質転換体を246−1から246−9と称した。C.ソノレンシス(C.sonorensis)のBstBI切断pMI247での形質転換に由来する形質転換体を247−1から247−4と称した。C.ソノレンシス(C.sonorensis)のApaI−BamHI切断pMI246での形質転換に由来する形質転換体を246−10から246−15と称した。C.ソノレンシス(C.sonorensis)のApaI−BamHI切断pMI247での形質転換に由来する形質転換体を247−5から247−10と称した。
【0214】
ゲノムに組み込まれたL.ヘルベチカス(L.helveticus)LDH遺伝子を宿すC.ソノレンシス(C.sonorensis)による富化培地中でのL−乳酸の生成
C.ソノレンシス(C.sonorensis)細胞及び前記で開示した形質転換体(246−1、246−2、246−3、247−2、247−3及び247−4)をYPD培地中で培養した。前培養物をYPD培地中OD600が11から17になるまで成長させ、次いで培養実験のためにYPD50mlにOD600が0.5になるまで再懸濁した。培養の始めに酵母細胞を250ml エルレンマイヤー・フラスコ中250rpmで振盪しながら培養した。4時間の培養の後、酵母細胞を100ml エルレンマイヤー・フラスコに移し、さらにグルコース(最終濃度20g/lに相当する)を添加し、40rpmで振盪しながら培養を続けた。培養中にサンプルを取り、OD600を測定し、遠心により細胞を収穫し、成長培地をHPLCにより乳酸及びグルコースに関して分析した(L−乳酸UV法及びベーリンガー・マンハイムのグルコース/GOD−過ヨウ素酸塩法を用いる)。
【0215】
24時間の培養の後、形質転換体はグルコースより2.4から3.3g/lの乳酸(収率11から63%と等価)を生成したが、一方対照株は0.005g/lの乳酸を生成した(収率0.1%)。
【0216】
この実施例により、C.ソノレンシス(C.sonorensis)細胞のLDHの過剰発現がグルコース含有培地上でのL−乳酸生成を増強させることが示された。
【0217】
ゲノムに組み込まれたL.ヘルベチカス(L.helveticus)LDH遺伝子を宿すC.ソノレンシス(C.sonorensis)による最小グルコース培地中でのL−乳酸の生成
C.ソノレンシス(C.sonorensis)細胞及び前記で開示した形質転換体(246−1、246−3、247−2)をYD培地(2% グルコースを補充したアミノ酸不含酵母窒素ベース)中で培養した。前培養物をYD培地中OD600が10から13になるまで成長させ、遠心により細胞を収集し、YD培地で1回洗浄し、次いで培養実験のためにYD50mlにOD600が0.4になるまで再懸濁した。酵母を100ml エルレンマイヤー・フラスコ中40rpmで振盪しながら培養した(微好気的条件)。培養中にサンプルを取り、OD600を測定し、遠心により細胞を収穫し、成長培地をHPLCにより乳酸及びグルコースに関して分析した。ウォーターズ510HPLCポンプ、ウォーターズ717+自動サンプラー並びに屈折率検出器(ウォーターズ410示差屈折率検出器)及びUV検出器(ウォーターズ2487デュアルλUV検出器)を伴うウォーターシステム・インターフェース・モジュール・液体クロマトグラフィー複合機でHPLC分析を実施した。使用するアミネックスHPX−87Hイオン排除カラム(300mm×7.8mm、バイオ・ラッド)を35℃で水中5mM HSOで平衡にし、水中5mM HSOで流速0.6ml/分でサンプルを溶出した。データ収集及び対照をウォーターズ・ミレニウム・ソフトウェアで行った。
【0218】
70時間の培養の後、形質転換体はグルコースより2.2から2.5g/lの乳酸(収率10から13%と等価)を生成したが、一方対照株は検出可能な乳酸を生成しなかった。
【0219】
この実施例により、相同性LDH遺伝子を過剰発現するC.ソノレンシス(C.sonorensis)細胞はグルコースから乳酸を生成できることが示された。
【0220】
ゲノムに組み込まれたL.ヘルベチカス(L.helveticus)LDH遺伝子を宿すC.ソノレンシス(C.sonorensis)による最小グルコース培地中嫌気的条件下でのL−乳酸の生成
C.ソノレンシス(C.sonorensis)細胞及び前記で開示した形質転換体(246−1)を嫌気的振盪フラスコ中YD培地(2% グルコースを補充したアミノ酸不含酵母窒素ベース)で培養した。前培養物をYD培地中OD600が22から24になるまで成長させ、遠心により細胞を収集し、YD培地で1回洗浄し、次いで培養実験のためにYD100mlにOD600が0.75になるまで再懸濁した。ウォーターロックを装着した100ml エルレンマイヤー・フラスコ中酵母を40rpmで振盪しながら培養した(嫌気的条件)。培養中にサンプルを取り、OD600を測定し、遠心により細胞を収穫し、成長培地をHPLCにより乳酸及びグルコースに関して分析した。ウォーターズ510HPLCポンプ、ウォーターズ717+自動サンプラー並びに屈折率検出器(ウォーターズ410示差屈折率検出器)及びUV検出器(ウォーターズ2487デュアルλUV検出器)を伴うウォーターシステム・インターフェース・モジュール・液体クロマトグラフィー複合機でHPLC分析を実施した。使用するアミネックスHPX−87Hイオン排除カラム(300mm×7.8mm、バイオ・ラッド)を35℃で水中5mM HSOで平衡にし、水中5mM HSOで流速0.6ml/分でサンプルを溶出した。データ収集及び対照をウォーターズ・ミレニウム・ソフトウェアで行った。
【0221】
160時間の培養の後、246−1株はグルコースから1.1g/Lの乳酸(収率16%と等価)を生成したが、一方対照株は0.03g/lの乳酸を生成した(収率0.1%)。
【0222】
この実施例により、相同性LDH遺伝子を過剰発現するC.ソノレンシス(C.sonorensis)細胞は嫌気的条件下でグルコースから乳酸を生成できることが示された。
【0223】
ゲノムに組み込まれたL.ヘルベチカス(L.helveticus)LDH遺伝子を宿すC.ソノレンシス(C.sonorensis)による最小キシロース培地中でのL−乳酸の生成
C.ソノレンシス(C.sonorensis)細胞及び前記した形質転換体(246−1、246−3、247−2)をYX培地(2% キシロースを補充したアミノ酸不含酵母窒素ベース)中で培養した。前培養物をYPD培地中OD600が10から13になるまで成長させ、その後遠心により細胞を収集し、YX培地で1回洗浄し、培養実験のためにYX培地50mlにOD600が0.75になるまで再懸濁した。酵母培養物を100ml エルレンマイヤー・フラスコ中40rpmで振盪しながら培養した。培養中にサンプルを取り、OD600を測定し、遠心により細胞を収穫し、成長培地をHPLCにより乳酸及びキシロースに関して分析した。ウォーターズ510HPLCポンプ、ウォーターズ717+自動サンプラー並びに屈折率検出器(ウォーターズ410示差屈折率検出器)及びUV検出器(ウォーターズ2487デュアルλUV検出器)を伴うウォーターシステム・インターフェース・モジュール・液体クロマトグラフィー複合機でHPLC分析を実施した。使用するアミネックスHPX−87Hイオン排除カラム(300mm×7.8mm、バイオ・ラッド)を35℃で水中5mM HSOで平衡にし、水中5mM HSOで流速0.6ml/分でサンプルを溶出した。データ収集及び対照をウォーターズ・ミレニウム・ソフトウェアで行った。
【0224】
70時間の培養の後、形質転換体はキシロースから0.1g/lの乳酸(収率9から17%と等価)を生成したが、一方対照株は0.003g/lの乳酸を生成した(収率0.2%)。
【0225】
この実施例により、相同性乳酸塩デヒドロゲナーゼコード化遺伝子を過剰発現するC.ソノレンシス(C.sonorensis)はキシロースから乳酸を生成できることが示された。
【0226】
ゲノムに組み込まれたL.ヘルベチカス(L.helveticus)LDH遺伝子を宿すC.ソノレンシス(C.sonorensis)による最小キシロース培地中でのL−乳酸の生成
C.ソノレンシス(C.sonorensis)細胞及び前記した形質転換体(246−1、246−3、247−2)をYX培地(2% キシロースを補充したアミノ酸不含酵母窒素ベース)中で培養した。前培養物をYPD培地中OD600が12から18になるまで成長させ、その後遠心により細胞を収集し、YX培地で1回洗浄し、培養実験のためにYX培地50mlにOD600が2.0になるまで再懸濁した。酵母培養物を100ml エルレンマイヤー・フラスコ中40rpmで振盪しながら培養した(微好気的条件)。培養中にサンプルを取り、OD600を測定し、遠心により細胞を収穫し、成長培地をHPLCにより乳酸及びキシロースに関して分析した。ウォーターズ510HPLCポンプ、ウォーターズ717+自動サンプラー並びに屈折率検出器(ウォーターズ410示差屈折率検出器)及びUV検出器(ウォーターズ2487デュアルλUV検出器)を伴うウォーターシステム・インターフェース・モジュール・液体クロマトグラフィー複合機でHPLC分析を実施した。使用するアミネックスHPX−87Hイオン排除カラム(300mm×7.8mm、バイオ・ラッド)を35℃で水中5mM HSOで平衡にし、水中5mM HSOで流速0.6ml/分でサンプルを溶出した。データ収集及び対照をウォーターズ・ミレニウム・ソフトウェアで行った。ベーリンガー・マンハイムのL−乳酸UV法によりL−乳酸を分析した。
【0227】
165時間の培養の後、形質転換体はキシロースから0.2g/Lの乳酸(収率5から6%と等価)を生成したが、一方対照株は検出可能な乳酸を生成しなかった。
【0228】
この実施例により、相同性乳酸塩デヒドロゲナーゼコード化遺伝子を過剰発現するC.ソノレンシス(C.sonorensis)はキシロースから乳酸を生成できることが示された。
【0229】
ゲノムに組み込まれたL.ヘルベチカス(L.helveticus)LDH遺伝子を宿すC.ソノレンシス(C.sonorensis)による最小アラビノース培地中でのL−乳酸の生成
C.ソノレンシス(C.sonorensis)細胞及び前記した形質転換体(246−1、246−3、247−2)をYA培地(2% L−アラビノースを補充したアミノ酸不含酵母窒素ベース)中で培養した。前培養物をYPD培地中OD600が12から18になるまで成長させ、その後遠心により細胞を収集し、YA培地で1回洗浄し、培養実験のためにYA培地50mlにOD600が2.0になるまで再懸濁した。酵母培養物を100ml エルレンマイヤー・フラスコ中40rpmで振盪しながら培養した(微好気的条件)。培養中にサンプルを取り、OD600を測定し、遠心により細胞を収穫し、成長培地をHPLCにより乳酸及びアラビノースに関して分析した。ウォーターズ510HPLCポンプ、ウォーターズ717+自動サンプラー並びに屈折率検出器(ウォーターズ410示差屈折率検出器)及びUV検出器(ウォーターズ2487デュアルλUV検出器)を伴うウォーターシステム・インターフェース・モジュール・液体クロマトグラフィー複合機でHPLC分析を実施した。使用するアミネックスHPX−87Hイオン排除カラム(300mm×7.8mm、バイオ・ラッド)を35℃で水中5mM HSOで平衡にし、水中5mM HSOで流速0.6ml/分でサンプルを溶出した。データ収集及び対照をウォーターズ・ミレニウム・ソフトウェアで行った。
【0230】
165時間の培養の後、形質転換体はアラビノースより0.04から0.05g/lの乳酸(収率2から3%と等価)を生成したが、一方対照株は0.007g/lの乳酸(収率0.5%)を生成した。
【0231】
この実施例により、相同性乳酸塩デヒドロゲナーゼコード化遺伝子を過剰発現するC.ソノレンシス(C.sonorensis)はアラビノースから乳酸を生成できることが示された。
【0232】
ゲノムに組み込まれたL.ヘルベチカス(L.helveticus)LDH遺伝子を宿すC.ソノレンシス(C.sonorensis)による最小メリビオース培地中でのL−乳酸の生成
C.ソノレンシス(C.sonorensis)細胞及び前記した形質転換体(246−1、246−10、247−2、247−5)をYM培地(2% L−メリビオースを補充したアミノ酸不含酵母窒素ベース)中で培養した。前培養物をYPD培地中OD600が18から25になるまで成長させ、その後遠心により細胞を収集し、YM培地で1回洗浄し、培養実験のためにYM培地50mlにOD600が1.5になるまで再懸濁した。酵母を100ml エルレンマイヤー・フラスコ中40rpmで振盪しながら培養した(微好気的条件)。培養中にサンプルを取り、OD600を測定し、遠心により細胞を収穫し、成長培地をHPLCにより乳酸に関して分析した(ベーリンガー・マンハイムのL−乳酸UV法による)。
【0233】
165時間の培養の後、形質転換体は0.8から2.6g/lの乳酸を生成した。
【0234】
この実施例により、相同性乳酸塩デヒドロゲナーゼコード化遺伝子を過剰発現するC.ソノレンシス(C.sonorensis)細胞はメリビオースから乳酸を生成できることが示された。
【0235】
その他の実施形態
本発明をその詳細な説明と組み合わせて記載してきたが、前記の説明は説明を目的とするものであって、添付の請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。その他の態様、利点及び修飾は以下の請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1】図1はpHESプラスミドを表す図である。
【図2】図2はpSEHプラスミドを表す図である。
【図3】図3はLh−LDHまたはPa−LDHのいずれかを含有するpCRIIプラスミドの作製を表す図である。
【図4】図4はLDH/pCRIIプラスミドを表す図である。
【図5】図5はLh−LDHまたはPa−LDHを含有するpHESプラスミドの作製を表す図である。
【図6】図6aはピルビン酸塩デカルボキシラーゼ(PDC)ノックアウトフラグメントの作製を表す図である。図6bはK.マルキシアヌス(K.marxianus)1.7kbp PDC1を取り囲む5.5kbpフラグメントを表す図である。図6cは5.5kbp PDC相同性領域の400bpの欠失及びカナマイシン抵抗性のための遺伝子の挿入を表す図である。図6dはカナマイシン抵抗性遺伝子及びそれを囲むPDC1の2.3kbpを含有する4kb領域を表す図である。図6eは7.5kbp K.サーモトレランス(K.thermotolerans)PDC1及びそれを囲む領域を表す図である。図6fは1.7kbp PDC1遺伝子からの750bpの欠失及びカナマイシン抵抗性遺伝子の挿入を表す図である。
【図7】図7は低pH(pH2.5)及び高温(40℃)条件下で培養されたクルイベロミセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)の成長(光学密度:OD)対時間(時)をプロットしたグラフである。
【図8】図8は30℃でグルコース、キシロースまたはアラビノースと共に培養したK.マルキシアヌスの成長(OD)対時間(時)をプロットしたグラフである。
【図9】図9は30℃でトウモロコシ加水分解物と共に培養したK.マルキシアヌスの成長(OD)対時間(時)をプロットしたグラフである。
【図10】図10は30℃で指示されたpHで培養したK.マルキシアヌス(K.marxianus)の成長(OD)対時間(時)をプロットしたグラフである。
【図11】図11は30℃で指示されたpHで、乳酸40gの存在下で培養したK.マルキシアヌスの成長(OD)対時間(時)をプロットしたグラフである。
【図12】図12は好気的条件下2%グルコースを伴う無機質培地で培養したときのS.ウバルム及びK.マルキシアヌスの(A)バイオマス生成;(B)グルコース消費;及び(C)エタノール生成をプロットした3つのグラフを示す。
【図13】図13は嫌気的条件下2% グルコースを伴う無機培地で培養したときのS.ウバルム及びK.マルキシアヌスの(A)バイオマス生成;(B)グルコース消費;及び(C)エタノール生成をプロットした3つのグラフを示す。
【図14】図14はPDCIプロモーターベクターのプラスミドマップである。
【図15】図15は

Claims (23)

  1. 配列番号:22で同定されるアミノ酸配列を有する酵母乳酸塩脱水素タンパク質をコードする単離された核酸。
  2. 配列番号:30で同定されるアミノ酸配列を有する酵母乳酸塩脱水素タンパク質をコードする単離された核酸。
  3. 高ストリンジェント条件下で配列番号:21で同定される核酸プローブにハイブリダイズする酵母乳酸塩脱水素タンパク質をコードする請求項1に記載の単離された核酸。
  4. 高ストリンジェント条件下で洗浄した後ハイブリダイゼーションが検出される請求項3に記載の単離された核酸。
  5. 高ストリンジェント条件下で配列番号:29により同定される核酸プローブにハイブリダイズする酵母乳酸塩脱水素タンパク質をコードする請求項2に記載の単離された核酸。
  6. 高ストリンジェント条件下で洗浄した後ハイブリダイゼーションが検出される請求項5に記載の単離された核酸。
  7. 請求項1または2に記載の酵母乳酸塩脱水素タンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する核酸であって、酵母細胞で発現される核酸を含んでなる組換え発現構築物。
  8. さらに酵母乳酸塩脱水素タンパク質をコードする核酸に機能的に連結された酵母プロモーターを含んでなる請求項7に記載の組換え発現構築物。
  9. さらに酵母乳酸塩脱水素タンパク質をコードする核酸に機能的に連結された酵母転写ターミネーターエレメントを含んでなる請求項7に記載の組換え発現構築物。
  10. さらに2−ミクロンサークルプラスミドに由来する酵母複製エレメントを含んでなる請求項7に記載の組換え発現構築物。
  11. 形質転換された細胞が酵母乳酸塩脱水素タンパク質を発現する、請求項7に記載の組換え発現構築物で形質転換された酵母細胞。
  12. 酵母細胞がサッカロミセス(Saccharomyces)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、カンジダ(Candida)、トリコスポロン(Trichosporon)、ヤマダザイマ(Yamadazyma)、トルラスポラ(Torulaspora)またはピキア(Pichia)属の酵母である請求項11に記載の酵母細胞。
  13. 酵母細胞がクラブトリー陰性表現型を発現する請求項11に記載の酵母細胞。
  14. 酵母細胞がC.ソロネンシス(C.soronensis)及びK.マルキシアヌス(K.marxianus)からなる群から選択される酵母種である請求項11に記載の酵母細胞。
  15. 酵母細胞が低減された量の、ピルビン酸塩デカルボキシラーゼ、アルコールデヒドロゲネート及びアセチルCoAシンターゼからなる群から選択される解糖酵素を生成する請求項11に記載の酵母細胞。
  16. 酵母により少なくとも50%の糖が乳酸に変換される条件下で糖を含有する栄養培地中請求項11に記載の酵母細胞培養物を発酵する工程からなる乳酸を生成するための方法。
  17. 酵母細胞が約35℃から約55℃の温度で成長する請求項16の方法。
  18. 栄養培地が約5.0未満のpHを有する請求項16の方法。
  19. 実質的に嫌気的な条件下で酵母を成長させる請求項16の方法。
  20. 酵母細胞がクラブトリー陰性酵母細胞である請求項16の方法。
  21. 酵母細胞がK.マルキシアヌスまたはC.ソノレンシスである請求項20の方法。
  22. 酵母細胞が低減された量の、ピルビン酸塩デカルボキシラーゼ、アルコールデヒドロゲネート及びアセチルCoAシンターゼからなる群から選択される解糖酵素を生成する請求項16の方法。
  23. 糖がグルコース、キシロース、リボース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、マルトースまたはリキソースである請求項16の方法。
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