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JP2004282515A - 弾性表面波素子 - Google Patents

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JP2004282515A
JP2004282515A JP2003072659A JP2003072659A JP2004282515A JP 2004282515 A JP2004282515 A JP 2004282515A JP 2003072659 A JP2003072659 A JP 2003072659A JP 2003072659 A JP2003072659 A JP 2003072659A JP 2004282515 A JP2004282515 A JP 2004282515A
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Abstract

【目的】高い電気機械結合係数K が得られ,かつ遅延時間温度係数TCDを零にすることができる弾性表面波素子を提供する。
【構成】カット角が0°〜22°および90°〜 180°の範囲内にあるランガサイト結晶基板10のカット面上に,少なくとも一つの,実効的に高密度な弾性表面波電極11を,85°〜95°の伝搬方法のラブ波型SH波を発生する配置で設け,弾性表面波電極11の規格化膜厚を0.3 以下とする。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【技術分野】
この発明は弾性表面波,とくにラブ波型SH波(以下,単にラブ波という)を利用した素子に関する。
【0002】
【従来技術】
ラブ波は,水晶上の特定の伝搬方向にのみ存在し,基板上に金属膜や誘電体膜を装荷することによって,横波成分のみをもつバルク波のエネルギーを基板表面付近に集中させた表面波として古くより知られている。水晶と金(Au)やタンタル(Ta)などの高密度金属膜と組合せることにより,良好な集中度が得られ高結合化が実現でき,STカット水晶上のレイリー波を用いた場合の3倍程度の電気機械結合係数K (0.34%)が得られることが知られており,これを利用した超小型の共振子型フィルタが実用化されている[非特許文献1]。
【0003】
一方,ランガサイト基板は,水晶の数倍の電気機械結合係数を持ち,水晶と同等の優れた温度特性を有する比較的新しい結晶である。ランガサイトも水晶と同じ結晶系に属しているため,特定の伝搬方向に横波成分のみをもつバルク波が存在し,その遅延時間温度係数が零となるカット角が報告されている[非特許文献2]。しかし,電気機械結合係数が非常に小さいという問題点があった。
【0004】
【非特許文献1】
M.Kadota,et.al:“Very Small−Sized Resonator Filter Using Shear Horizontal Wave on Quartz”,Jpn.J.Appl.Phys.,40,5B(2001)pp.3718−3721.
【非特許文献2】
V.P.Pkessky,et al:“Surface Transverse Waves on Langasite”Proc.of IEEE Ultrasonics Symp.,(1998)pp.139−142.
【0005】
【発明の開示】
この発明は,ランガサイト結晶基板を用いた新しい弾性表面波素子を提供するものである。
【0006】
この発明はまた,ランガサイト・ファミリー結晶基板を用いて,遅延時間温度係数が零またはその近傍であるという温度特性をもつ弾性表面波素子を実現することを目的とするものである。
【0007】
この発明はさらに,ランガサイト・ファミリー結晶基板を用いて,比較的高い電気機械結合係数を持つ弾性表面波素子を実現することを目的とするものである。
【0008】
さらにこの発明は,ランガサイト・ファミリー結晶基板を用いて,遅延時間温度係数が零またはその近傍にあるという安定した温度特性を持ち,かつ比較的高い電気機械結合係数を持つ弾性表面波素子を実現するものである。
【0009】
遅延時間温度係数TCDに着目してこれを重要視し,これをほとんど零(またはその近傍にすることのできる)この発明による弾性表面波素子は,オイラー角表示で(0°,θ,ψ)で表されるランガサイト・ファミリー結晶基板の,θが0°〜22°および90°〜 180°の範囲内にあるカット面上に,少なくとも一つの,実効的に高密度な弾性表面波電極が,ψが85°〜95°の伝搬方向でラブ波型SH波を発生する配置で設けられているものである。
【0010】
ランガサイト・ファミリー結晶基板には,ランガサイト(LaGaSiO14:LGS)結晶基板,ランガテイト(LaGa5.5Ta0.514 :LGT)結晶基板,およびランガナイト(LaGa5.5Nb0.514 :LGN)結晶基板が含まれる。
【0011】
実効的に高密度な弾性表面波電極とは,高密度導電体,特に,Au(金),Ag(銀),Cu(銅),Pt(白金),Cr(クロム),Ta(タンタル),W(タングステン)等の重金属で形成された弾性表面波電極,およびAl(アルミニウム)等の軽金属(低密度導電体)で形成された弾性表面波電極の上に,Ta(五酸化タンタル),ZnO(酸化亜鉛),Al(サファイア),TiO(ルチル),Nb(五酸化ニオブ),Bi12GeO20(BGO),Bi (三酸化ビスマス)などの高密度(重い)誘電体膜を装荷したものが含まれる。これらはいずれも質量付加効果を生じさせるもので,このような弾性表面波電極を用いると,ラブ波(ラブ波型SH波:SH=Shear Horizontal)が発生する。ラブ波は,原理的には伝搬減衰が零であること,SH成分しかもたないので基板表面の汚れなどによる波の乱れが少ないこと,他のモードは励振されないオイラー角(0°,θ,90°(実質的に85°〜95°でよい))で存在するのでスプリアス成分が無い(または小さい)こと,パワーフロー角が零であること,SH成分しかもないのでグレーティングによって大きな反射係数が得られるため,共振器などのディバイスを実現しやすいことなどの利点をもつ。
【0012】
弾性表面波電極は,くし歯状電極,すだれ状電極,IDT(Inter Degital Transducer)等の名称で呼ばれる電極である(以下では,IDTの略称を用いる)。
【0013】
弾性表面波電極の規格化薄膜とは,弾性表面波電極の膜厚hを弾性表面波の波長λで除したものをさす。ここで弾性表面波電極の膜厚は,弾性表面波電極が上記の高密度導電体により形成されている場合にはその膜厚を,低密度導電体による弾性表面波電極上に高密度誘電体膜が形成されている場合には高密度誘電体膜の膜厚をさす。
【0014】
オイラー角について,図1および図2を参照して説明しておく。これらの図において,X,Y,Zは結晶軸,x,x,xは座標軸で,カット面はx軸に垂直な面,ラブ波の伝搬方向は基本的にはx軸になる。
【0015】
オイラー角表示(φ,θ,ψ)のうちφは,「X−Y面内でZ軸の周りにX軸からY軸方向へφ回転させた軸」を定義するものである(図1(A) 参照)。この操作によってx 軸はX軸と異なる軸となる(図1(B) 参照)。θは「x 軸の周りにθ回転させた軸」を定義するものである。この操作によってx 軸はZ軸と異なる軸となる(図2(A) 参照)。このx 軸に垂直な面が「カット面」である。さらに,ψは「x 軸の周りにθ回転させた軸」を定義するものである(図2(A) ,(B) 参照)。この操作によって回転したx 軸が伝搬方向となる。したがって,φ,θで定義される面がカット角となるが,オイラー角表示(0°,θ,ψ)の場合には,θをカット角と呼んでも問題はない。
【0016】
オイラー角表示(0°,0°〜22°と90°〜 180°,85°〜95°)の0°は上記の最初の操作を行わない場合に相当する(φ=0)。「オイラー角表示で(0°,θ,ψ)で表されるランガサイト・ファミリー結晶基板の,θが0°〜22°および90°〜 180°の範囲内にあるカット面」という表現は,「ランガサイト・ファミリー結晶基板のX軸の周りにZ軸から−Y軸方向へ0°〜22°および90°〜 180°の範囲内のある角度で回転させた軸に垂直な面をもつカット面」といい換えることができる。また,「ψが85°〜95°の伝搬方向」は,「結晶のX軸から85°〜95°の伝搬方向」といい換えることができる。
【0017】
θが0°〜22°および90°〜 180°の範囲内にあるランガサイト・ファミリー結晶基板のカット面上に,実効的に高密度な弾性表面波電極を形成し,この弾性表面波電極を高周波数(波長λに対応する周波数)の電気信号により励振すると,ラブ波が発生し,かつそのラブ波の遅延時間温度係数TCD(Temperature Coefficient of Delay)が零の値を示す弾性表面波電極の膜厚(規格化膜厚)が存在する。
【0018】
発生したラブ波の伝搬方向が基本的にはX軸(結晶軸の一つ)方向に90°(垂直)の方向となるように,弾性表面波電極が配置される。伝搬方向がX軸方向に90°の方向ではラブ波の伝搬減衰が原理的に零になる。しかしながら,ψ=85°〜95°の範囲であれば実用的である。この範囲(90°を除く)ではリーキー表面波も存在するがその悪影響(スプリアス)は小さいからである。
【0019】
上記の範囲をオイラー角表示で表現すると,(0°,0°〜22°と90°〜 180°,85°〜95°)と表わすことができるが,この範囲に遅延時間温度係数TCDが零またはほとんど零となる弾性表面波電極の膜厚(規格化膜厚)が存在する。この範囲ではまた,電気機械結合係数(K )もかなり大きな値を示す。そして,このことが常温で実現するので,この発明による弾性表面波素子の実用的価値は高い。
【0020】
一実施態様においては,基板におけるラブ波の伝搬経路上に高密度導電体膜(上述の重金属による装荷膜)または上述の高密度誘電体による装荷膜を形成する。これにより,伝搬経路において伝搬減衰が小さくなるとともに,弾性表面波電極部分と伝搬経路における音響インピーダンスがほぼ一致するので,これらの境界においてバルク波の発生が抑圧され,挿入損失が小さくなる。
【0021】
電気機械結合係数(K )に着目しこれを重要視する態様では,カット角ごとに電気機械結合係数(K )が最大となる規格化膜厚が存在し,電気機械結合係数(K )の最大値は大きいものでは1%に達する。Auなどの高密度導電体(重金属)で形成された弾性表面波電極の場合には,規格化膜厚が0.04未満であれば電気機械結合係数(K )の最大値は1%前後であり,規格化膜厚が 0.1以下(0.04以上)の場合には電気機械結合係数(K )の最大値は 0.6%前後またはそれ以上,規格化膜厚が 0.2以下( 0.1以上)の場合には電気機械結合係数(K )の最大値は 0.3%前後またはそれ以上である,そのようなカット角が存在する。低密度導電体による弾性表面波電極上に高密度誘電体膜が形成されたものの場合には,規格化膜厚が0.2〜0.1の範囲においては電気機械結合係数(K )の最大値は 0.4%前後,規格化膜厚が 0.1〜0.05の範囲においては電気機械結合係数(K )の最大値は 0.6%前後である,そのようなカット角が存在する。まとめていうと,規格化膜厚が 0.2%以下であれば, 0.3%以上の電気機械結合係数(K )が得られるカット角が存在する。
【0022】
電気機械結合係数(K )に着目し,この結合係数を最大にしうるこの発明による弾性表面波素子は,ランガサイト・ファミリー結晶基板のカット面上に,少なくとも一つの,実効的に高密度な弾性表面波電極が設けられ,上記弾性表面波電極の規格化膜厚が0.2 以下(または,電気機械結合係数の最大値の半分が得られる規格化膜厚は 0.3以下)のものである。
【0023】
遅延時間温度係数TCDが零またはその近傍にすることのできる(そのような膜厚の弾性表面波電極をもつ)上記のψの範囲(0°〜22°および90°〜 180°の範囲)において,電気機械結合係数(K )がほぼ 0.3%以上の値をもつ規格化膜厚が存在するので,この発明による最も好ましい形態の弾性表面波素子は,オイラー角表示で(0°,θ,ψ)で表されるランガサイト・ファミリー結晶基板の,θが0°〜22°および90°〜 180°の範囲内にあるカット面上に,少なくとも一つの,実効的に高密度な弾性表面波電極が,ψが85°〜95°の伝搬方向でラブ波型SH波を発生する配置で設けられ,上記弾性表面波電極の規格化膜厚が0.2 以下(0.15%以上の電気機械結合係数を得る場合には規格化膜厚は 0.3以下である)であると特徴づけることができる。
【0024】
この発明はさらに,ランガサイト結晶基板のカット面に,少なくとも一つの,実効的に高密度な弾性表面波電極が設けられている弾性表面波素子も提供している。
【0025】
この発明による弾性表面波素子には,具体的には,後に応用例で示すように,各種共振器,各種フィルタが含まれ,共振器を利用して発振器を構成することができる。
【0026】
【実施例】
図3はフィルタとして用いることが可能な形態の弾性表面波素子の一例を示すものである。
【0027】
ランガサイト結晶基板(以下,LGS基板と略称する)上に,間隔Lを離して2つの弾性表面波電極(インターディジタルトランスデューサ)(以下,IDTと略称する)11が形成されている。IDT11は,たとえば金(Au)を用いて電子ビーム蒸着法やスパッタリングにより形成される(これをAu電極と略記する)。
【0028】
図4は弾性表面波素子の他の例を示すものである。LGS基板10上に間隔L離して2つのIDT11が形成され,これらのIDT11およびそれらの間(ラブ波の伝搬経路)の全体にわたって誘電体膜12が形成されている。IDT11はたとえばアルミニウム(Al)により形成され,誘電体膜12は五酸化タンタル(Ta)を高周波(RF)スパッタリングにより装荷することにより形成される(これをTa/Al電極と略記する)。
【0029】
図3および図4に示す弾性表面波素子は,後述する理論計算値の算出のモデルであるとともに,測定値を得るために用いたサンプルである。図3,図4に示す弾性表面波素子を略称するときには,これらをそれぞれ単にAu/LGS(またはAu装荷),Ta/Al/LGSと表記する。
【0030】
IDT11の構造を具体的に示すと,図5を参照して,ラブ波の波長をλ=20μmとして,交叉幅D= 100λ,対数30のダブルIDTである。1対のIDTの間隔Lは50λ〜 300λ程度である。ダブルIDTは2本ずつのくし歯状電極が1組をなすものであり,電極によるラブ波の反射を打ち消すことができるという特徴をもつ。
【0031】
図6は,オイラー角の表記とカット角,ラブ波の伝搬方位(方向)および電極配置との関係を示すものである。X,Y,Zは結晶軸である。オイラー角表示については図1および図2を参照して説明した通りである。以下の説明では,一般的に,オイラー角(0°,θ,90°)という表記法を用いる。
【0032】
θはカット角である。YZ平面内において,LGS基板10のカット面(IDT11が形成されている面)の方向(カット面に垂直な方向)とZ軸とのなす角である。θ=0の場合にZカットと呼ばれる。
【0033】
90°(ψ)はIDT11から発生するラブ波(弾性表面波)の伝搬方位(方向)がX軸に対して90°であることを示している。この伝搬方位はIDT11の配置(電極配置)を表わす。後述するように,伝搬方位は厳密に90°である必要はなく,±5°程度の範囲で変動しても実用的には支障は殆どない。
【0034】
図7は,オイラー角(0°,θ,90°)のAu/LGS(これを,以下,単にAu/LGS(0°,θ,90°)と表記する)上のラブ波のカット角θに対する遅延時間温度係数TCDの変化(計算結果)を,規格化膜厚h/λをパラメータとして示すものである。以下の記述では,遅延時間温度係数TCDを,温度係数TCDまたは単にTCDと略記する。また,規格化膜厚を,単に,膜厚h/λまたは単にh/λと略記する。
【0035】
図7のグラフから,カット角θが0°〜22°および90°〜 180°の範囲において,TCDを0にする膜厚h/λが存在することが分る(h/λ=0を除く)。その膜厚h/λの範囲はh/λ=0.04未満である。
【0036】
図8は,Au/LGS(0°,θ,90°)上のラブ波のカット角θに対する電気機械結合係数K (以下の記述では,電気機械結合係数K を,結合係数K または単にK と略記する)の変化(計算結果)を,h/λをパラメータとして示すものである。この図から,カット角が0〜22°,90°〜 180°の範囲において(h/λは0.01〜0.08の範囲)K がかなり高い値を示すことが分る。
【0037】
図9はオイラー角(0°,θ,90°)のTa/Al/LGS(これを,以下,単にTa/Al/LGS(0°,θ,90°)と略記する)上のラブ波のカット角θに対するK の変化(計算結果)を,h/λをパラメータとして示すものである。この図からも,カット角が0°〜22°,90°〜 180°の範囲において(hTa/λ=0.02〜0.2 の範囲)K がかなり高い値を示すことが分る(ここでアルミニウム電極の規格化膜厚はhAl/λ=0.02であり,Taの規格化膜厚をhTa/λで表している)。
【0038】
図10および図11は,Au/LGS(0°,θ,90°)上のラブ波の規格化膜厚h/λに対する電気機械結合係数K とTCDの計算結果を,カット角θをパラメータとして(θが−20°〜20°の範囲)それぞれ示すものである。
【0039】
これらの図から,TCD=0と約1%のK が同時に得られるAu膜厚h/λが存在することが分る。たとえば,θ=0°(Zカット)において,K が最大値(1.06%)を示す膜厚h/λとTCDが0を示す膜厚h/λが一致している(h/λ=0.028)。
【0040】
TCDが0を示す膜厚が存在することは,図14のグラフからも分る。このグラフは,Au/LGS(0°,20°,90°)において,温度変化に対するラブ波の周波数変化Δf/fの計算値と測定値(実験値)とを示すものである。1対のIDT間の伝搬経路上にAu膜(h/λ=0.014 )を装荷した場合(Au装荷)と装荷しない場合(自由表面)とを示している。TCDは20℃におけるΔf/fの傾きによって表わされる(その符号の正負は逆となる。また正確には15℃と25℃の間のΔf/f)。図10のグラフからAu装荷のTCDは小さな正の値を示し,自由表面のTCDは小さな負の値を示している。したがって,これらの間に,鎖線で示すように(図11のθ=20°のグラフに相当),TCDが0となるAuの膜厚が存在することになる。
【0041】
図12および図13はLGS上のラブ波のh/λに対するK の変化の計算値と測定値を示すものである。図12はLGS(0°,20°,90°)の場合,図13はLGS(0°,140°,90°)の場合であり,いずれにおいてもAu電極と,Ta /Al電極について示されている。
【0042】
図12において,Au電極,Ta/Al電極のいずれにおいてもかなり高いK が得られることが分る。たとえばAu電極において,H/λ=0.01において,0.73%のK の測定値が得られている。図12はh/λ=0.1 までの範囲しか示されていないが,図13はh/λ=0.3 までの範囲を示している。図13において,Au電極の方がTa/Al電極よりも高いK を示す。K が低い方のTa/Al電極の場合についてみると,その測定値のピークはh/λ=0.1 付近でK=0.3(%)である。このピークの半分(K =0.15%)以上のK が得られるh/λの範囲は0.3 程度である。
【0043】
以上のことから,比較的高い結合係数K のが得られる膜厚の範囲はh/λ=0.3 以下であるといえる。したがって,オイラー角が(0°,0°〜22°と90°〜 180°,90°)で,膜厚h/λが0.3 以下において,K が最大となり,TCD=0となる膜厚が存在するといえる。
【0044】
別の観点からもう少し詳細に検討すると,Au電極の場合,図8と図12,図13をあわせて検討すると,h/λが0.01〜0.04の範囲でK はその最大値が0.8〜1.0%程度である。これはまた,TCDが0を示す範囲である。h/λが0.04〜0.1 の範囲でK の最大値は 0.6%以上,h/λが0.2〜0.1の範囲でK の最大値は 0.3%以上である(そのようなカット角が存在する)。現在使用されている水晶の場合に,K が 0.1%でも実用化されていることを考えると,h/λが 0.2%以下(K が 0.3%以上)であれば,充分に実用化が可能である。この範囲はTCDが0またはその近傍の範囲とほぼ一致する。Au電極のみならず,他の重金属でも上記のことはあてはまる。
【0045】
Ta/Al電極についてみると,図9を参照して,hTa/λが0.1〜0.2の範囲でK の最大値は 0.4%前後,hTa/λが0.05〜0.1 の範囲においてK の最大値は 0.6%前後である(図12も参照)(このようなカット角θが存在する)。そして,これらのカット角も上記TCDが0またはその近傍である範囲に存在する。以上のことは,他の誘電体装荷電極の場合にもいえる。
【0046】
伝搬方位が90°の場合にはラブ波のみが存在する。伝搬方位が90°から少しずれると,リーキー波が現れる。リーキー波の存在によりラブ波が伝搬減衰を持つようになる。図15は,リーキー波の存在を伝搬方位について示すものである。縦軸はリーキー波の結合係数であり,この結合係数が0.01%程度までなら実用上はリーキー波がスプリアスの原因にならないと考えると,ラブ波の伝搬方位は85°〜95°の範囲で許容されるということができる。
【0047】
以上をTCD=0の範囲についてまとめると,オイラー角(0°,0°〜22°と90°〜 180°,85°〜95°)が実用上好ましい範囲といえる。以上のことは,LGSのみならず,LGT,LGNにも同様にあてはまる。
【0048】
図16から図20は弾性表面波素子の応用例を示すものである。
【0049】
図16はトランスバーサルフィルタを示す。LGS基板10のカット面上に2つのIDT11が間隔を置いて形成され,これらのIDT11の間のラブ波伝搬経路となる領域上にIDT11とはわずかに離して装荷膜13が形成されている。IDT11はAuなどの高密度金属により形成するか,またはAlなどにより形成されたIDT上にこれを覆うようにTaなどの誘電体膜を装荷することにより実現される。装荷膜13は高密度金属膜または誘電体膜により実現される。LGS基板に代えてLGT,LGNを用いることもできる。これらの基板およびIDTに関する上記の事項は以下に示す他の応用例にもあてはまる。
【0050】
図17は1端子対型共振器の例を示すものである。LGS基板10のカット面上にIDT11が形成され,その両側の位置(ラブ波の伝搬経路上にあたる)にIDT11とわずかに離してグレーティング14が形成されている。グレーティング14もIDTと同じようにAuなどの高密度金属により形成するか,またはAlなどにより形成されたグレーティング上にこれを覆うようにTaなどの誘電体膜を形成することにより実現される。
【0051】
ラブ波は他の表面波モードと比較して,グレーティングに入射した際,反射係数の大きな表面波であり,結合係数が大きくなるほど反射係数も増大するため,この発明による弾性表面波素子は共振器などのグレーティングの反射波を利用した表面波ディバイスの実現に有利である,大きな反射係数が得られるためディバイスの小型化を実現できる。
【0052】
図18は2つのIDTを持つ2端子対型共振器の例を示す。
【0053】
図19は,図18に示す2端子対型共振器において,2つのIDT間に増幅器を接続した帰還形発振器の例を示す。
【0054】
図20は上記の共振器を利用した共振器形ラダーフィルタの例を示すものである。直列に接続された共振器16Aの共振周波数と並列に接続された共振器16Bの反共振周波数を一致させる。これらの共振器16A,16Bは1端子対形共振器である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A),(B)はオイラー角表示を説明するものである。
【図2】(A),(B)はオイラー角表示を説明するものである。
【図3】弾性表面波素子のモデル例を示す斜視図である。
【図4】弾性表面波素子の他のモデル例を示す斜視図である。
【図5】IDTの構成の一部を詳細に示す平面図である。
【図6】オイラー角とカット角,伝搬方位および電極配置との関係を説明するためのものである。
【図7】Au/LGS上のラブ波のカット角に対するTCDの変化を示すグラフである。
【図8】Au/LGS上のラブ波のカット角に対するK の変化を示すグラフである。
【図9】Ta/Al/LGS上のラブ波のカット角に対するK の変化を示すグラフである。
【図10】Au/LGS上のラブ波の規格化膜厚に対するK の変化を示すグラフである。
【図11】Au/LGS上のラブ波の規格化膜厚に対するTCDの変化を示すグラフである。
【図12】LGS(0°,20°,90°)上のラブ波の規格化膜厚に対するK の変化を示すグラフである。
【図13】LGS(0°, 140°,90°)上のラブ波の規格化膜厚に対するK の変化を示すグラフである。
【図14】Au/LGS上のラブ波の温度に対する周波数変化Δf/fの変化を示すグラフである。
【図15】リーキー波の伝搬方位に対する結合係数の変化を示すグラフである。
【図16】トランスバーサル形フィルタの構成例を示す平面図である。
【図17】1端子対形共振器の構成例を示す平面図である。
【図18】2端子対形共振器の構成例を示す平面図である。
【図19】2端子対形共振器を用いた帰還形発振器の構成例を示す。
【図20】共振器形ラダーフィルタの構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
10 LGS基板
11 IDT
12 誘電体膜
13 装荷膜
14 グレーティング

Claims (5)

  1. オイラー角表示で(0°,θ,ψ)で表されるランガサイト・ファミリー結晶基板の,θが0°〜22°および90°〜 180°の範囲内にあるカット面上に,少なくとも一つの,実効的に高密度な弾性表面波電極が,ψが85°〜95°の伝搬方向でラブ波型SH波を発生する配置で設けられている,弾性表面波素子。
  2. オイラー角表示で(0°,θ,ψ)で表されるランガサイト・ファミリー結晶基板の,θが0°〜22°および90°〜 180°の範囲内にあるカット面上に,少なくとも一つの,実効的に高密度な弾性表面波電極が,ψが85°〜95°の伝搬方向でラブ波型SH波を発生する配置で設けられ,上記弾性表面波電極の規格化膜厚が0.2 以下である,弾性表面波素子。
  3. 上記基板上のラブ波型SH波の伝搬経路に,質量付加効果をもつ薄膜が形成されている,請求項1または2に記載の弾性表面波素子。
  4. ランガサイト・ファミリー結晶基板のカット面上に,少なくとも一つの,実効的に高密度な弾性表面波電極が設けられ,上記弾性表面波電極の規格化膜厚が0.2 以下である,弾性表面波素子。
  5. ランガサイト結晶基板のカット面に,少なくとも一つの,実効的に高密度な弾性表面波電極が設けられている,弾性表面波素子。
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