JP2004277458A - 1液型エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた1液型エポキシ樹脂系接着剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】保存安定性が良好で、かつ、保存温度+20℃での硬化性が良好な1液型エポキシ樹脂組成物を提供する。また、該1液型エポキシ樹脂組成物を用いた1液型のエポキシ樹脂接着剤を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)潜在性硬化剤および(C)結晶性アルコールの微細化物が配合されていることを特徴とする1液型エポキシ樹脂組成物、前記組成物にさらに(D)ホウ酸エステルおよび(または)(E)フィラーを含有する1液型エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた接着剤。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)潜在性硬化剤および(C)結晶性アルコールの微細化物が配合されていることを特徴とする1液型エポキシ樹脂組成物、前記組成物にさらに(D)ホウ酸エステルおよび(または)(E)フィラーを含有する1液型エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた接着剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1液型エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた1液型エポキシ樹脂系接着剤に関する。さらに詳しくは、結晶性アルコールの微細化物を使用することにより、保存安定性を損わさずに、従来よりも保存時の温度に近い低い温度で硬化させることができる1液型エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた1液型エポキシ樹脂系接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
1液型エポキシ樹脂組成物は、2液型エポキシ樹脂組成物の場合のように混合してから使用する必要がなく、使用しやすい。それゆえ、電気・電子部品の接着・接合、封止など、さまざまな用途に用いられている。
【0003】
前記1液型エポキシ樹脂組成物には、保存安定性をよくするために、使用する硬化剤として潜在性硬化剤が使用されているが、この場合、一般に、保存温度を低くして保存安定性をよくするとともに、硬化温度を保存温度+40℃程度の温度に設定することにより硬化性をよくして、保存安定性と硬化性の両立をはかっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記1液型エポキシ樹脂組成物の保存安定性をよくするために保存温度を低くすることは、保存コストが増大することを意味し、また、硬化性をよくするために硬化温度を保存温度+40℃程度の温度まで昇温することは、硬化コストが増大することを意味する。
【0005】
本発明は、前記硬化剤として潜在性硬化剤を使用した1液型エポキシ樹脂組成物の保存コストおよび硬化コストが増大するという問題を解消するためになされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(A)エポキシ樹脂、
(B)潜在性硬化剤および
(C)結晶性アルコールの微細化物が配合されていることを特徴とする1液型エポキシ樹脂組成物(請求項1)、
(A)エポキシ樹脂、
(B)潜在性硬化剤、
(C)結晶性アルコールの微細化物、および
(D)ホウ酸エステルが配合されていることを特徴とする1液型エポキシ樹脂組成物(請求項2)、
さらに、(E)フィラーを含有する請求項1または2記載の1液型エポキシ樹脂組成物(請求項3)、および
請求項1、2または3記載の1液型エポキシ樹脂組成物からなる1液型エポキシ樹脂系接着剤(請求項4)
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、基材樹脂であるエポキシ樹脂(A)、保存安定性のよい1液型エポキシ樹脂組成物にするために必須の硬化剤である潜在性硬化剤(B)、および1液型エポキシ樹脂組成物の保存安定性を維持しながら、潜在性硬化剤を使用した場合の、保存温度+20℃での硬化性を改善するために使用される結晶性アルコールの微細化物(C)を配合した組成物である。
【0008】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物が、前記エポキシ樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)および結晶性アルコールの微細化物(C)を配合した組成物であるため、1液型エポキシ樹脂組成物であるにもかかわらず、良好な保存安定性を維持しながら、保存温度+20℃での硬化性を改善することができる。
【0009】
前記エポキシ樹脂(A)としては、一般にエポキシ樹脂として使用されている液状ものであればとくに限定なく使用することができるが、低粘度なものほど本発明の1液型エポキシ樹脂組成物の作業性を向上させることができる点から好ましい。また、固状〜ペースト状のものであっても本発明の1液型エポキシ樹脂組成物としたときに固状〜ペースト状にならない場合には用いることができる。さらに、接着剤として用いる場合には、脂肪族系のものより芳香族系のものの方が、反応性が高く、硬化物の耐熱性が高い点から好ましく、逆に、芳香族系のものより脂肪族系のものの方が、低粘度にすることができる点から好ましい。
【0010】
エポキシ樹脂(A)の具体例としては、たとえばビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテルなど)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジグリシジルエーテルなど)、ナフタレン型エポキシ樹脂(ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテルなど)、脂環式エポキシ樹脂(ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテルなど)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(フタル酸ジグリシジルエステルなど)、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、モノ−tert−ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテルなど)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂およびそれらの変性物などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうちでは、ナフタレン型エポキシ樹脂(ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂)が、耐湿性、接着性の点から好ましい。また、ベンゼン環を1個有する一核体芳香族ジエポキシ化合物類や脂環式ジエポキシ化合物類、とくにカテコールジグリシジルエーテルやレゾルシンジグリシジルエーテルが、粘度が低く、低粘度を要する用途に使用するのに適している。さらに、硬化による接着・接合の強度などの点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、とくに低粘度であることから、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0011】
前記組成物をさらに低粘度化するために、(A)成分の一部を1官能エポキシ化合物(A−1)(以下、(A−1)成分ともいう)におきかえてもよい。
【0012】
1官能エポキシ化合物(A−1)としては、たとえばp−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのベンゼン環を1個有する一核体芳香族モノエポキシ化合物類があげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうちでは、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテルが好ましい。
【0013】
(A)成分の一部を(A−1)成分におきかえて得られる混合物(以下、(A)/(A−1)混合物ともいう)を用いる場合には、組成物の性能を低下させることのないように(A)/(A−1)混合物中、(A−1)成分が30%以下であるのが好ましい。また、(A−1)成分を用いることによる粘度低下の効果が明確に得られる点から、5%以上であるのが好ましい。
【0014】
前記潜在性硬化剤(B)としては、従来から使用されている各種のもの、たとえば脂肪族アミン類、イミダゾール類、ウレア化合物などのアダクト化により固形化したものを微粉状にしたもの、具体的にはアミキュアMY−24、アミキュアPN−23(以上、味の素(株)製)、アデカハードナーEH−4070S、アデカハードナーEH−4338S(以上、旭電化工業(株)製)、フジキュアFXE−1000、フジキュアFXR−1080(以上、富士化成工業(株)製)、サンマイドLH−210(三和化学工業(株)製)などを使用することができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうちでは、アデカハードナーEH−4338S、フジキュアFXR−1080、サンマイドLH−210などが、1液性エポキシ樹脂組成物としては低温である60℃における硬化が可能であるなどの点から好ましい。さらに、サンマイドLH−210が、低温硬化での均一硬化性、接着性などの特性をバランスよく有する点から好ましい。
【0015】
前記結晶性アルコールの微細化物(C)は、エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)からなる1液型エポキシ樹脂組成物の保存温度での安定性を良好にし、潜在性硬化剤を使用した場合の、保存温度+20℃、たとえば60℃程度の低温での硬化性を改善するために使用される成分である。
【0016】
前記結晶性アルコールにおける結晶性というのは、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物の成分として加えられた場合にも保存温度では結晶として存在し、硬化温度では溶解し、樹脂組成物の液状成分と均一化することを意味する。硬化温度以下ではずっと結晶であってよい。
【0017】
また、前記微細化物というのは、結晶性アルコールの最大粒子径が200〜1μm、さらには50〜1μm程度になるまで微粉砕したもののことである。
【0018】
前記結晶性アルコールの微細化物(C)が前記のごとき特性を有するため、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物が保存温度で存在する場合には、エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)からなる1液型エポキシ樹脂組成物と、結晶性アルコールの微細化物(C)とは、実質的に異なった相として存在することになり、エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)からなる1液型エポキシ樹脂組成物の保存安定性は、結晶性アルコールの微細化物(C)を含まない場合と実質的に同じとなる。一方、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物が硬化温度以上に加熱されると、エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)からなる1液型エポキシ樹脂組成物中に微分散している結晶性アルコールの微細化物(C)が融解し、エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)からなる1液型エポキシ樹脂組成物とほぼ均質に混合し、(A)成分〜(C)成分からなる均一相の1液型エポキシ樹脂組成物となる。この状態になると、融解した結晶性アルコールは、樹脂と硬化剤との相溶化剤および触媒として作用するため、組成物の硬化性が促進され、エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)からなる1液型エポキシ樹脂組成物の保存温度+20℃での硬化性が改善される。
【0019】
前記結晶性アルコールの具体例としては、たとえば1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖、トリメチロールプロパンなどがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、1,4−シクロヘキサンジオールが40℃以下で樹脂に溶解せず(室温保存に適し)、60℃以上で溶解する点から好ましい。
【0020】
なお、前記結晶性アルコールの融点およびエポキシ樹脂に分散した状態での融解開始温度(結晶性アルコール50%を含むエポキシ樹脂(エピコート807)分散物を示差走査熱量計DSC110型(セイコー電子工業(株)製)を用い、5℃/分の昇温速度で測定)は、表1のとおりである。
【0021】
【表1】
【0022】
前記エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)の使用割合としては、エポキシ樹脂(A)100重量部(以下、部という)に対して、潜在性硬化剤(B)1〜30部、さらには15〜20部であるのが、硬化性と経済性のバランスの点から好ましい。
【0023】
また、エポキシ樹脂(A)および微細化物として存在する結晶性アルコール(C)の使用割合は、エポキシ樹脂(A)100部に対して、結晶性アルコール(C)の添加量0.5〜10部、さらには1〜3部であるのが、均一硬化性と貯蔵安定性のバランスの点から好ましい。
【0024】
前記のごとき本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、たとえばエポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)を混合、均一にしたのち、結晶性アルコールの微細化物(C)を加えて均一に分散させるのが、触媒成分である結晶性アルコールに長時間剪断力をかけることによる貯蔵安定性の低下を防ぐ点から好ましい。
【0025】
前記エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)を混合、均一に混合する場合の温度としては、5〜35℃、さらには15〜25℃であるのが好ましく、そののち、結晶性アルコールの微細化物(C)を加えて均一に分散させる場合の温度としては、結晶性アルコールの融解開始温度−25〜−55℃、さらには融解開始温度−35〜−45℃であるのが好ましい。
【0026】
前記(A)成分〜(C)成分からなる本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、(A)成分および(B)成分からなる1液型エポキシ樹脂組成物の有する保存安定性が良好であるという特徴を有し、かつ、(A)成分および(B)成分からなる1液型エポキシ樹脂組成物の場合の保存安定性+20℃での硬化性がよくないという欠点が改善された組成物であるが、さらに、保存安定性を良好にするためのホウ酸エステル(D)、剥離接着性を良好にするためのフィラー(E)、保存安定性を良好に保ちながら高温での硬化性をさらに促進するための潜在性硬化促進剤、カップリング剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、応力吸収剤などの1種以上を加えてもよい。
【0027】
前記ホウ酸エステル(D)としては、ホウ酸エステルを構成するアルコール成分の分子量が大きいものが、脱離したアルコールの揮発による発泡が少ない点から好ましい。
【0028】
前記ホウ酸エステル(D)の具体例としては、たとえばホウ酸トリベンジルエステル、トリス−o−フェニレンビスボレート、ビス−ジメチルトリメチレンピロボレート、キュアダクトL−07N(四国化成工業(株)製、商品名)などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、キュアダクトL−07Nが、既にエポキシ樹脂に溶解・混合されていて取扱いが便利な点から好ましい。
【0029】
前記ホウ酸エステル(D)を使用する場合の使用量としては、(B)成分100部に対して0.1〜10部、さらには1〜5部であるのが、潜在性硬化剤が本来有する硬化性能を損わせずに貯蔵安定性のみを向上させることができる点から好ましい。
【0030】
前記ホウ酸エステル(D)を使用した場合の組成物の製造は、(A)成分および(B)成分とともに(D)成分を配合、均一にしたのち、好ましくは10〜30℃程度で(C)成分を加えて均質に混合することにより行なえばよい。
【0031】
前記フィラー(E)としては、従来から使用されている各種のもの、たとえばアスペクト比が大きいものが、靭性付与、剥離接着性向上の点から好ましい。
【0032】
前記フィラー(E)の具体例としては、たとえば溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、チタニア、水酸化アルミニウム、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウオラストナイト、クレーなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、タルク、ウオラストナイトが、剥離接着性付与効果がとくに大きい点から好ましい。また、フィラー(E)として、銀、銅、ニッケル粒子、カーボンブラック、グラファイト粒子、カーボンナノチューブなども使用することができ、これらを使用する場合には、導電性付与、帯電防止効果の付与などの点から好ましい。
【0033】
前記フィラー(E)を使用する場合の使用量としては、(A)成分および(B)成分の合計量100部に対して、5〜400部、さらには10〜100部であるのが、作業性を維持しつつ、フィラー充填の効果を発現する点から好ましい。
【0034】
前記フィラー(E)を使用した場合の組成物の製造は、(A)成分および(B)成分とともに(E)成分を配合、均一にしたのち、好ましくは10〜30℃程度で(C)成分を加えて均質に混合することにより行なえばよい。
【0035】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物には、その他の添加剤として、シランカップリング剤、沈降防止剤、レベリング剤、顔料、消泡剤などを任意に添加することができる。これらの添加剤は、従来から一般に使用されている量使用すればよい。
【0036】
このようにして得られる本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、保存安定性に優れ、エポキシ系1液性接着剤としては極めて低温である保存温度+20℃においても硬化可能で、接着性を発現する特徴を有するものであり、主に電気・電子部品の接着用途に使用される。とくに、耐熱性の低い部品や素材が既に組み込まれたデバイスの接着、高い硬化温度からの冷却過程で生じる熱歪による寸法変化や反り、内部応力が問題となる精密部品の接着などに好適に使用することができる。
【0037】
【実施例】
つぎに、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
まず、実施例および比較例で使用する原材料および評価方法について説明する。
【0039】
[原材料]
(1)エポキシ樹脂
エピコート807:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製
AER250:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、旭化成エポキシ(株)製
EPOTUF AD1046:オレオレジン変性エポキシ樹脂、ライヒ ホールド ケミカルズ社(REICH HOLD CHEMICALS,INC.)製
(2)潜在性硬化剤
アデカハードナーEH−4338S:旭電化工業(株)製
サンマイドLH210:三和化学工業(株)製
(3)結晶性アルコール
1,4−シクロヘキサンジオール:東京化成工業(株)製、最大粒子径約6μm(樹脂とロール練りする工程で微粉化されたときの最大粒子径、グラインドメーター双溝(太佑機材(株)製)にて測定)
(4)液状アルコール
コニオンRG−30:ポリオキシエチレングリセリルエーテル型非イオン界面活性剤、新日本理化(株)製
(5)カップリング剤
A187:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、日本ユニカー(株)製
(6)フィラー
RY200:シリコーン処理したフュームド シリカ(fumed silica)、日本アエロジル(株)製
Talc MS:タルク、日本タルク(株)製
(7)ホウ酸エステル
キュアダクトL−07N:ホウ酸エステル化合物5%含有エポキシ樹脂、四国化成工業(株)製
【0040】
[評価方法]
(保存安定性)
回転粘度計(フィラー非含有系はE型粘度計、フィラー含有系はSSA型粘度計)にて初期粘度および40℃/1週間保存後の粘度をそれぞれ測定し、後者を前者で除した値を増粘倍数とした。
【0041】
(ゲルタイム)
安田精機(株)製のゲルタイマーを用いて60℃でのゲルタイムを測定した。ゲルタイムが短いほど硬化性が高い。
【0042】
(ガラス転移温度(Tg))
10mmφのアルミニウム製カップ中で約1gの試料を60℃で5時間加熱して硬化させたのち、示差走査熱量計DSC110型(セイコー電子工業(株)製)にてガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0043】
(表面硬化性)
10mmφのアルミニウム製カップ中で約1gの試料を60℃で5時間加熱して硬化させたのち、指触試験を行なった。表面にベタツキが残らないで硬化したものを「良好」とした。
【0044】
(引張剪断接着強さ)
150×25×1.5mmのアルミニウム試験片にラップ(重なり)が10mmとなるように樹脂組成物を塗布して貼り合わせ、クリップで圧締して60℃で5時間加熱して硬化させた。そののち、万能試験機インストロンを用いて引張剪断接着強さを測定した。
【0045】
実施例1
エピコート807 100gに、アデカハードナーEH−4338S 20g、アエロジルRY200 1gを加え、縦型ミキサーで20℃、30分減圧攪拌した。そののち、A−187 1gを加え、さらに20℃、30分減圧攪拌した。最後に微細化した1,4−シクロヘキサンジオール1gを添加し、20℃、30分減圧攪拌し、1液型エポキシ樹脂組成物を得た。
【0046】
得られた組成物を用いて、保存安定性、ゲルタイムを測定した。また、得られた組成物を60℃で5時間硬化させた硬化物のガラス転移温度(Tg)、表面硬化性、引張剪断接着強さを測定した。結果を表2に示す。
【0047】
実施例2
AER250 90gに、サンマイドLH−210 20g、キュアダクトL−07N 10g、アエロジルRY200 1gを加え、縦型ミキサーで20℃、30分減圧攪拌した。そののち、A−187 1gを加え、さらに20℃、30分減圧攪拌した。最後に微細化した1,4−シクロヘキサンジオール1gを添加し、20℃、30分減圧攪拌し、1液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0048】
得られた組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0049】
実施例3
EPOTUF AD1046 90gに、サンマイドLH210 20g、キュアダクトL−07N 10g、アエロジルRY200 1g、Talc MS30gを加え、縦型ミキサーで20℃、30分減圧攪拌した。そののち、A−187 1gを加え、さらに20℃、30分減圧攪拌した。最後に微細化した1,4−シクロヘキサンジオール1gを添加し、20℃、30分減圧攪拌し、1液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0050】
得られた組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0051】
比較例1
実施例1で用いた1,4−シクロヘキサンジオールのかわりにコニオンRG−30 1gを用いた以外は、実施例1と同様にして1液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0052】
得られた組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0053】
比較例2
実施例1で用いた1,4−シクロヘキサンジオールを用いない以外は、実施例1と同様にして1液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0054】
得られた組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0055】
比較例3
実施例2で用いた1,4−シクロヘキサンジオールを用いない以外は、実施例2と同様にして1液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0056】
得られた組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、保存安定性が良好であり、かつ、保存温度+20℃という低温での硬化性が良好である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、1液型エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた1液型エポキシ樹脂系接着剤に関する。さらに詳しくは、結晶性アルコールの微細化物を使用することにより、保存安定性を損わさずに、従来よりも保存時の温度に近い低い温度で硬化させることができる1液型エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた1液型エポキシ樹脂系接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
1液型エポキシ樹脂組成物は、2液型エポキシ樹脂組成物の場合のように混合してから使用する必要がなく、使用しやすい。それゆえ、電気・電子部品の接着・接合、封止など、さまざまな用途に用いられている。
【0003】
前記1液型エポキシ樹脂組成物には、保存安定性をよくするために、使用する硬化剤として潜在性硬化剤が使用されているが、この場合、一般に、保存温度を低くして保存安定性をよくするとともに、硬化温度を保存温度+40℃程度の温度に設定することにより硬化性をよくして、保存安定性と硬化性の両立をはかっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記1液型エポキシ樹脂組成物の保存安定性をよくするために保存温度を低くすることは、保存コストが増大することを意味し、また、硬化性をよくするために硬化温度を保存温度+40℃程度の温度まで昇温することは、硬化コストが増大することを意味する。
【0005】
本発明は、前記硬化剤として潜在性硬化剤を使用した1液型エポキシ樹脂組成物の保存コストおよび硬化コストが増大するという問題を解消するためになされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(A)エポキシ樹脂、
(B)潜在性硬化剤および
(C)結晶性アルコールの微細化物が配合されていることを特徴とする1液型エポキシ樹脂組成物(請求項1)、
(A)エポキシ樹脂、
(B)潜在性硬化剤、
(C)結晶性アルコールの微細化物、および
(D)ホウ酸エステルが配合されていることを特徴とする1液型エポキシ樹脂組成物(請求項2)、
さらに、(E)フィラーを含有する請求項1または2記載の1液型エポキシ樹脂組成物(請求項3)、および
請求項1、2または3記載の1液型エポキシ樹脂組成物からなる1液型エポキシ樹脂系接着剤(請求項4)
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、基材樹脂であるエポキシ樹脂(A)、保存安定性のよい1液型エポキシ樹脂組成物にするために必須の硬化剤である潜在性硬化剤(B)、および1液型エポキシ樹脂組成物の保存安定性を維持しながら、潜在性硬化剤を使用した場合の、保存温度+20℃での硬化性を改善するために使用される結晶性アルコールの微細化物(C)を配合した組成物である。
【0008】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物が、前記エポキシ樹脂(A)、潜在性硬化剤(B)および結晶性アルコールの微細化物(C)を配合した組成物であるため、1液型エポキシ樹脂組成物であるにもかかわらず、良好な保存安定性を維持しながら、保存温度+20℃での硬化性を改善することができる。
【0009】
前記エポキシ樹脂(A)としては、一般にエポキシ樹脂として使用されている液状ものであればとくに限定なく使用することができるが、低粘度なものほど本発明の1液型エポキシ樹脂組成物の作業性を向上させることができる点から好ましい。また、固状〜ペースト状のものであっても本発明の1液型エポキシ樹脂組成物としたときに固状〜ペースト状にならない場合には用いることができる。さらに、接着剤として用いる場合には、脂肪族系のものより芳香族系のものの方が、反応性が高く、硬化物の耐熱性が高い点から好ましく、逆に、芳香族系のものより脂肪族系のものの方が、低粘度にすることができる点から好ましい。
【0010】
エポキシ樹脂(A)の具体例としては、たとえばビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテルなど)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジグリシジルエーテルなど)、ナフタレン型エポキシ樹脂(ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテルなど)、脂環式エポキシ樹脂(ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテルなど)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(フタル酸ジグリシジルエステルなど)、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、モノ−tert−ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテルなど)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂およびそれらの変性物などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうちでは、ナフタレン型エポキシ樹脂(ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂)が、耐湿性、接着性の点から好ましい。また、ベンゼン環を1個有する一核体芳香族ジエポキシ化合物類や脂環式ジエポキシ化合物類、とくにカテコールジグリシジルエーテルやレゾルシンジグリシジルエーテルが、粘度が低く、低粘度を要する用途に使用するのに適している。さらに、硬化による接着・接合の強度などの点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、とくに低粘度であることから、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0011】
前記組成物をさらに低粘度化するために、(A)成分の一部を1官能エポキシ化合物(A−1)(以下、(A−1)成分ともいう)におきかえてもよい。
【0012】
1官能エポキシ化合物(A−1)としては、たとえばp−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのベンゼン環を1個有する一核体芳香族モノエポキシ化合物類があげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうちでは、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテルが好ましい。
【0013】
(A)成分の一部を(A−1)成分におきかえて得られる混合物(以下、(A)/(A−1)混合物ともいう)を用いる場合には、組成物の性能を低下させることのないように(A)/(A−1)混合物中、(A−1)成分が30%以下であるのが好ましい。また、(A−1)成分を用いることによる粘度低下の効果が明確に得られる点から、5%以上であるのが好ましい。
【0014】
前記潜在性硬化剤(B)としては、従来から使用されている各種のもの、たとえば脂肪族アミン類、イミダゾール類、ウレア化合物などのアダクト化により固形化したものを微粉状にしたもの、具体的にはアミキュアMY−24、アミキュアPN−23(以上、味の素(株)製)、アデカハードナーEH−4070S、アデカハードナーEH−4338S(以上、旭電化工業(株)製)、フジキュアFXE−1000、フジキュアFXR−1080(以上、富士化成工業(株)製)、サンマイドLH−210(三和化学工業(株)製)などを使用することができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうちでは、アデカハードナーEH−4338S、フジキュアFXR−1080、サンマイドLH−210などが、1液性エポキシ樹脂組成物としては低温である60℃における硬化が可能であるなどの点から好ましい。さらに、サンマイドLH−210が、低温硬化での均一硬化性、接着性などの特性をバランスよく有する点から好ましい。
【0015】
前記結晶性アルコールの微細化物(C)は、エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)からなる1液型エポキシ樹脂組成物の保存温度での安定性を良好にし、潜在性硬化剤を使用した場合の、保存温度+20℃、たとえば60℃程度の低温での硬化性を改善するために使用される成分である。
【0016】
前記結晶性アルコールにおける結晶性というのは、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物の成分として加えられた場合にも保存温度では結晶として存在し、硬化温度では溶解し、樹脂組成物の液状成分と均一化することを意味する。硬化温度以下ではずっと結晶であってよい。
【0017】
また、前記微細化物というのは、結晶性アルコールの最大粒子径が200〜1μm、さらには50〜1μm程度になるまで微粉砕したもののことである。
【0018】
前記結晶性アルコールの微細化物(C)が前記のごとき特性を有するため、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物が保存温度で存在する場合には、エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)からなる1液型エポキシ樹脂組成物と、結晶性アルコールの微細化物(C)とは、実質的に異なった相として存在することになり、エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)からなる1液型エポキシ樹脂組成物の保存安定性は、結晶性アルコールの微細化物(C)を含まない場合と実質的に同じとなる。一方、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物が硬化温度以上に加熱されると、エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)からなる1液型エポキシ樹脂組成物中に微分散している結晶性アルコールの微細化物(C)が融解し、エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)からなる1液型エポキシ樹脂組成物とほぼ均質に混合し、(A)成分〜(C)成分からなる均一相の1液型エポキシ樹脂組成物となる。この状態になると、融解した結晶性アルコールは、樹脂と硬化剤との相溶化剤および触媒として作用するため、組成物の硬化性が促進され、エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)からなる1液型エポキシ樹脂組成物の保存温度+20℃での硬化性が改善される。
【0019】
前記結晶性アルコールの具体例としては、たとえば1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖、トリメチロールプロパンなどがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、1,4−シクロヘキサンジオールが40℃以下で樹脂に溶解せず(室温保存に適し)、60℃以上で溶解する点から好ましい。
【0020】
なお、前記結晶性アルコールの融点およびエポキシ樹脂に分散した状態での融解開始温度(結晶性アルコール50%を含むエポキシ樹脂(エピコート807)分散物を示差走査熱量計DSC110型(セイコー電子工業(株)製)を用い、5℃/分の昇温速度で測定)は、表1のとおりである。
【0021】
【表1】
【0022】
前記エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)の使用割合としては、エポキシ樹脂(A)100重量部(以下、部という)に対して、潜在性硬化剤(B)1〜30部、さらには15〜20部であるのが、硬化性と経済性のバランスの点から好ましい。
【0023】
また、エポキシ樹脂(A)および微細化物として存在する結晶性アルコール(C)の使用割合は、エポキシ樹脂(A)100部に対して、結晶性アルコール(C)の添加量0.5〜10部、さらには1〜3部であるのが、均一硬化性と貯蔵安定性のバランスの点から好ましい。
【0024】
前記のごとき本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、たとえばエポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)を混合、均一にしたのち、結晶性アルコールの微細化物(C)を加えて均一に分散させるのが、触媒成分である結晶性アルコールに長時間剪断力をかけることによる貯蔵安定性の低下を防ぐ点から好ましい。
【0025】
前記エポキシ樹脂(A)および潜在性硬化剤(B)を混合、均一に混合する場合の温度としては、5〜35℃、さらには15〜25℃であるのが好ましく、そののち、結晶性アルコールの微細化物(C)を加えて均一に分散させる場合の温度としては、結晶性アルコールの融解開始温度−25〜−55℃、さらには融解開始温度−35〜−45℃であるのが好ましい。
【0026】
前記(A)成分〜(C)成分からなる本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、(A)成分および(B)成分からなる1液型エポキシ樹脂組成物の有する保存安定性が良好であるという特徴を有し、かつ、(A)成分および(B)成分からなる1液型エポキシ樹脂組成物の場合の保存安定性+20℃での硬化性がよくないという欠点が改善された組成物であるが、さらに、保存安定性を良好にするためのホウ酸エステル(D)、剥離接着性を良好にするためのフィラー(E)、保存安定性を良好に保ちながら高温での硬化性をさらに促進するための潜在性硬化促進剤、カップリング剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、応力吸収剤などの1種以上を加えてもよい。
【0027】
前記ホウ酸エステル(D)としては、ホウ酸エステルを構成するアルコール成分の分子量が大きいものが、脱離したアルコールの揮発による発泡が少ない点から好ましい。
【0028】
前記ホウ酸エステル(D)の具体例としては、たとえばホウ酸トリベンジルエステル、トリス−o−フェニレンビスボレート、ビス−ジメチルトリメチレンピロボレート、キュアダクトL−07N(四国化成工業(株)製、商品名)などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、キュアダクトL−07Nが、既にエポキシ樹脂に溶解・混合されていて取扱いが便利な点から好ましい。
【0029】
前記ホウ酸エステル(D)を使用する場合の使用量としては、(B)成分100部に対して0.1〜10部、さらには1〜5部であるのが、潜在性硬化剤が本来有する硬化性能を損わせずに貯蔵安定性のみを向上させることができる点から好ましい。
【0030】
前記ホウ酸エステル(D)を使用した場合の組成物の製造は、(A)成分および(B)成分とともに(D)成分を配合、均一にしたのち、好ましくは10〜30℃程度で(C)成分を加えて均質に混合することにより行なえばよい。
【0031】
前記フィラー(E)としては、従来から使用されている各種のもの、たとえばアスペクト比が大きいものが、靭性付与、剥離接着性向上の点から好ましい。
【0032】
前記フィラー(E)の具体例としては、たとえば溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、チタニア、水酸化アルミニウム、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウオラストナイト、クレーなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、タルク、ウオラストナイトが、剥離接着性付与効果がとくに大きい点から好ましい。また、フィラー(E)として、銀、銅、ニッケル粒子、カーボンブラック、グラファイト粒子、カーボンナノチューブなども使用することができ、これらを使用する場合には、導電性付与、帯電防止効果の付与などの点から好ましい。
【0033】
前記フィラー(E)を使用する場合の使用量としては、(A)成分および(B)成分の合計量100部に対して、5〜400部、さらには10〜100部であるのが、作業性を維持しつつ、フィラー充填の効果を発現する点から好ましい。
【0034】
前記フィラー(E)を使用した場合の組成物の製造は、(A)成分および(B)成分とともに(E)成分を配合、均一にしたのち、好ましくは10〜30℃程度で(C)成分を加えて均質に混合することにより行なえばよい。
【0035】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物には、その他の添加剤として、シランカップリング剤、沈降防止剤、レベリング剤、顔料、消泡剤などを任意に添加することができる。これらの添加剤は、従来から一般に使用されている量使用すればよい。
【0036】
このようにして得られる本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、保存安定性に優れ、エポキシ系1液性接着剤としては極めて低温である保存温度+20℃においても硬化可能で、接着性を発現する特徴を有するものであり、主に電気・電子部品の接着用途に使用される。とくに、耐熱性の低い部品や素材が既に組み込まれたデバイスの接着、高い硬化温度からの冷却過程で生じる熱歪による寸法変化や反り、内部応力が問題となる精密部品の接着などに好適に使用することができる。
【0037】
【実施例】
つぎに、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
まず、実施例および比較例で使用する原材料および評価方法について説明する。
【0039】
[原材料]
(1)エポキシ樹脂
エピコート807:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製
AER250:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、旭化成エポキシ(株)製
EPOTUF AD1046:オレオレジン変性エポキシ樹脂、ライヒ ホールド ケミカルズ社(REICH HOLD CHEMICALS,INC.)製
(2)潜在性硬化剤
アデカハードナーEH−4338S:旭電化工業(株)製
サンマイドLH210:三和化学工業(株)製
(3)結晶性アルコール
1,4−シクロヘキサンジオール:東京化成工業(株)製、最大粒子径約6μm(樹脂とロール練りする工程で微粉化されたときの最大粒子径、グラインドメーター双溝(太佑機材(株)製)にて測定)
(4)液状アルコール
コニオンRG−30:ポリオキシエチレングリセリルエーテル型非イオン界面活性剤、新日本理化(株)製
(5)カップリング剤
A187:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、日本ユニカー(株)製
(6)フィラー
RY200:シリコーン処理したフュームド シリカ(fumed silica)、日本アエロジル(株)製
Talc MS:タルク、日本タルク(株)製
(7)ホウ酸エステル
キュアダクトL−07N:ホウ酸エステル化合物5%含有エポキシ樹脂、四国化成工業(株)製
【0040】
[評価方法]
(保存安定性)
回転粘度計(フィラー非含有系はE型粘度計、フィラー含有系はSSA型粘度計)にて初期粘度および40℃/1週間保存後の粘度をそれぞれ測定し、後者を前者で除した値を増粘倍数とした。
【0041】
(ゲルタイム)
安田精機(株)製のゲルタイマーを用いて60℃でのゲルタイムを測定した。ゲルタイムが短いほど硬化性が高い。
【0042】
(ガラス転移温度(Tg))
10mmφのアルミニウム製カップ中で約1gの試料を60℃で5時間加熱して硬化させたのち、示差走査熱量計DSC110型(セイコー電子工業(株)製)にてガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0043】
(表面硬化性)
10mmφのアルミニウム製カップ中で約1gの試料を60℃で5時間加熱して硬化させたのち、指触試験を行なった。表面にベタツキが残らないで硬化したものを「良好」とした。
【0044】
(引張剪断接着強さ)
150×25×1.5mmのアルミニウム試験片にラップ(重なり)が10mmとなるように樹脂組成物を塗布して貼り合わせ、クリップで圧締して60℃で5時間加熱して硬化させた。そののち、万能試験機インストロンを用いて引張剪断接着強さを測定した。
【0045】
実施例1
エピコート807 100gに、アデカハードナーEH−4338S 20g、アエロジルRY200 1gを加え、縦型ミキサーで20℃、30分減圧攪拌した。そののち、A−187 1gを加え、さらに20℃、30分減圧攪拌した。最後に微細化した1,4−シクロヘキサンジオール1gを添加し、20℃、30分減圧攪拌し、1液型エポキシ樹脂組成物を得た。
【0046】
得られた組成物を用いて、保存安定性、ゲルタイムを測定した。また、得られた組成物を60℃で5時間硬化させた硬化物のガラス転移温度(Tg)、表面硬化性、引張剪断接着強さを測定した。結果を表2に示す。
【0047】
実施例2
AER250 90gに、サンマイドLH−210 20g、キュアダクトL−07N 10g、アエロジルRY200 1gを加え、縦型ミキサーで20℃、30分減圧攪拌した。そののち、A−187 1gを加え、さらに20℃、30分減圧攪拌した。最後に微細化した1,4−シクロヘキサンジオール1gを添加し、20℃、30分減圧攪拌し、1液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0048】
得られた組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0049】
実施例3
EPOTUF AD1046 90gに、サンマイドLH210 20g、キュアダクトL−07N 10g、アエロジルRY200 1g、Talc MS30gを加え、縦型ミキサーで20℃、30分減圧攪拌した。そののち、A−187 1gを加え、さらに20℃、30分減圧攪拌した。最後に微細化した1,4−シクロヘキサンジオール1gを添加し、20℃、30分減圧攪拌し、1液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0050】
得られた組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0051】
比較例1
実施例1で用いた1,4−シクロヘキサンジオールのかわりにコニオンRG−30 1gを用いた以外は、実施例1と同様にして1液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0052】
得られた組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0053】
比較例2
実施例1で用いた1,4−シクロヘキサンジオールを用いない以外は、実施例1と同様にして1液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0054】
得られた組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0055】
比較例3
実施例2で用いた1,4−シクロヘキサンジオールを用いない以外は、実施例2と同様にして1液性エポキシ樹脂組成物を得た。
【0056】
得られた組成物を用いて、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、保存安定性が良好であり、かつ、保存温度+20℃という低温での硬化性が良好である。
Claims (4)
- (A)エポキシ樹脂、
(B)潜在性硬化剤および
(C)結晶性アルコールの微細化物が配合されていることを特徴とする1液型エポキシ樹脂組成物。 - (A)エポキシ樹脂、
(B)潜在性硬化剤、
(C)結晶性アルコールの微細化物、および
(D)ホウ酸エステルが配合されていることを特徴とする1液型エポキシ樹脂組成物。 - さらに、(E)フィラーを含有する請求項1または2記載の1液型エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1、2または3記載の1液型エポキシ樹脂組成物からなる1液型エポキシ樹脂系接着剤。
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