JP2004091882A - 非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴、それによるめっき方法およびそのめっき皮膜を有する製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】装飾品のめっきの内、ボタン、ファスナー、ホック、アクセサリー、クリップ等のように直接に膚に触れる金属小物製品に広く使用されている黒色ニッケル系合金めっきの代替として、金属アレルギーの可能性の少なく、毒性のない物を用いる非シアン系ピロリン酸黒色銅−錫合金めっき浴で、安定した黒色の色調が出るもので、十分に工業化できる非シアン系ピロリン酸黒色銅−錫合金めっき浴とそれによるめっき方法並びにそれにより製造される製品を提供しようとするものである。
【解決手段】(1)2価の錫イオン及び
(2)2価の銅イオンを含有し、錯化剤として
(3)ピロリン酸塩を含有する溶液に、次の3種の添加剤;即ち、
(4)アミノカルボン酸;
(5)アンモニウム塩;および
(6)アルデヒド類を必須成分として、含有することを特徴とする黒色銅−錫合金めっき浴と、この黒色銅−錫合金めっき浴を用いるめっき方法およびそれにより製造された皮膜を有する製品。
【解決手段】(1)2価の錫イオン及び
(2)2価の銅イオンを含有し、錯化剤として
(3)ピロリン酸塩を含有する溶液に、次の3種の添加剤;即ち、
(4)アミノカルボン酸;
(5)アンモニウム塩;および
(6)アルデヒド類を必須成分として、含有することを特徴とする黒色銅−錫合金めっき浴と、この黒色銅−錫合金めっき浴を用いるめっき方法およびそれにより製造された皮膜を有する製品。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴、非シアン系黒色銅−錫合金めっき方法および黒色銅−錫合金めっき皮膜が形成された製品に関する。即ち、本発明は、装飾用黒色めっきを得るための新規な黒色銅−錫合金めっき浴とそれによる黒色銅−錫合金めっき方法およびそれに得られた装飾黒色銅−錫合金めっき製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の装飾用黒色めっきは、黒色を得るためにニッケルめっきが使用されてきた。然し乍ら、金属アレルギーの問題が、特にヨーロッパを中心とする欧米諸国で、ニッケルめっき製品に対しても販売規制されるなどで、装飾めっき皮膜中のニッケルの問題が大きくなっている。日本でも商品の安全性についてメーカーに厳しい責任を求めたPL法が施行され、ニッケルフリーの製品の開発が急がれている。ニッケルに代わる黒色めっき材料は、多種の合金めっきについて考えられるが、その中でも工業的に入手し易く、安価で資源的にも問題のない金属として、銅−錫合金が、候補になっている。
【0003】
現在、黒色銅−錫合金めっきは、シアン化物のような有害な材料を使用しためっき浴が広く使用されているが、それらの浴から得られる銅−錫合金の色調は、銀白色、黄金色などであった。また、非シアン化物浴としてピロリン酸銅−錫合金めっき浴が、提案されている(特開平10−102278号及び特開2001−295092号参照)。然し乍ら、このめっき浴では、安定した黒色の色調のめっき物を得ることができなく、装飾用の黒色めっき皮膜としては、安定生産の見通しがなく、工業化が困難であると思われる。
【0004】
特開2001−295092号では、添加剤として、アミン誘導体とエビハロヒドリンとの1:1反応生成物とカチオン界面活性剤を含有させためっき浴を用いているが、アミン誘導体とエビハロヒドリンとの1:1反応生成物もカチオン界面活性剤も、本発明の非シアン系めっき浴で用いる添加剤の成分とはまったく異なるものである。
また、特開平10−102278号では、アミン誘導体とエビハロヒドリンとの1:1反応生成物とアルデヒド誘導体と、所望により表面張力調整剤とを含有させためっき浴を用いているが、本発明の非シアン系めっき浴と添加剤成分の組合せがまったく異なる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、装飾めっきの内、ボタン、ファスナー、ホック、アクセサリー、クリップ等のように直接に膚に触れる金属小物製品に広く使用されている黒色錫−ニッケル合金めっきの代替として、金属アレルギーの可能性が少なく、毒性のない物を用いる非シアン系ピロリン酸黒色銅−錫合金めっき浴とそれによるめっき方法並びにそれにより製造される製品を提供しようとするものである。即ち、本発明は、非シアン系ピロリン酸黒色銅−錫合金めっき浴で、安定した黒色の色調が出るもので、十分に工業化できる非シアン系ピロリン酸銅−錫合金めっき浴を可能にしようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、次のような手段により、それを解決したものである。
(1)(1)2価の錫イオン及び
(2)2価の銅イオンを含有し、錯化剤として
(3)ピロリン酸塩を含有する溶液に、次の3種の添加剤;即ち、
(4)アミノカルボン酸;
(5)アンモニウム塩;および
(6)アルデヒド類を必須成分として、含有することを特徴とする非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴である。
【0007】
(2)更に、(7)下記に規定するアミノ化合物類を含有した非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴である。
(3)ラックおよびバレルのいずれものめっき処理に使用できる、電気めっき皮膜形成のための、非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴である。
(4)以上の(1)〜(3)のいずれかの黒色銅−錫合金めっき浴を用いて、黒色銅−錫合金めっき皮膜を形成する非シアン系黒色銅−錫合金めっき方法である。
(5)以上の(1)〜(3)のいずれかの黒色銅−錫合金めっき浴を用いて、黒色銅−錫合金めっき皮膜を形成した非シアン系黒色銅−錫合金めっき製品。
【0008】
以下、本発明の非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴の例を説明するが、本発明は、それにより限定を受けるものではない。
本発明は、基本的に、次の(1)〜(6)の6つの成分を必須成分とする、非シアン系黒色銅−錫合金めっきのため浴組成物であり、それを用いる黒色銅−錫合金めっき皮膜の製造方法とその黒色めっき皮膜による製品である。すなわち、
(1)2価の錫イオン(2価の錫化合物、例えば、塩化スズ(II)、硫酸スズ(II)、ピロリン酸スズ(II)、メタンスルホン酸スズ(II)を用いる)
(2)2価の銅イオン(2価の銅化合物、例えば、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、ピロリン酸銅(II)を用いる)
、および、
(3)錯化剤としてピロリン酸塩(具体的には、例えば、ピロリン酸カリウムまたはピロリン酸ナトリウムを用いる)、含有する溶液に、
添加剤として、
(4)アミノカルボン酸(例えば、モノアミノモノカルボン酸、モノアミノジカルボン酸、ジアミノモノカルボン酸、オキシアミノ酸、含硫黄アミノ酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種以上の成分)
(5)アンモニウム塩(無機アンモニウム塩またはアンモニア水)
(6)アルデヒド類(脂肪族飽和アルデヒド、脂肪族不飽和アルデヒド、芳香族アルデヒド、複素環式アルデヒド、アルデヒド誘導体からなる群から選択された少なくとも1種以上のアルデヒド類)
さらに、(7)アミノ化合物類;アミノ化合物、イミノ化合物および1分子内に2つ以上のアミノ基、イミノ基を有するポリアミンからなる選択された少なくとも1種以上のアミノ化合物類を意味する。これは、めっき皮膜表面を平滑、均質にするための添加剤として、含有させる。
【0009】
本発明によると、以上挙げた(1)〜(6)の6つの成分を必須成分として含有する黒色銅−錫合金めっき浴によるめっき処理では、広い範囲の電流密度で、均一な色調の黒色銅−錫合金めっき皮膜が得られる。
【0010】
従って、以上のような、本発明の黒色銅−錫合金めっき浴では、バレルめっきによる一括生産が可能であり、ボタン、ファスナー、ホックなどの装飾品、アクセサリーなどを始めとする小物製品のめっき皮膜形成には、最適なめっき浴である。それは、電流密度の変動による外観変化が、ほとんど無く、常に、均一な外観のめっき皮膜が得られる。さらに、めっき浴中の金属濃度変化による外観変化が非常に少ないことが特徴である。
【0011】
更に、本発明の非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴は、例えば、0.05A/dm2〜0.2A/のような微小の電流密度で行われるバレルめっきに加えて、例 えば、0.5〜2.0A/dm2のような比較的に大きい電流密度で行われるラッ クめっきでも使用できるものである。即ち、本発明の非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴は、微小電流密度でも、比較的に電流密度の大きいめっき処理でも使用することができる。従って、クリップや他の表面の大きい製品に対しても、本発明の非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴は、有効に使用できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の黒色銅−錫合金めっき浴に必須成分として、用いられるものは、以上の(1)(2)(3)(4)(5)(6)の成分であり、さらに、製品化に必須の添加剤(7)を含有する。
以下、その各々について説明する。
【0013】
(1)2価の錫イオンを提供する化合物としては、水溶性の2価の錫化合物が使用でき、具体的には、上記のように、塩化スズ(II)、硫酸スズ(II)、ピロリン酸スズ(II)、メタンスルホン酸スズ(II)等である。
【0014】
(2)2価の銅イオンを提供する化合物としては、具体的には、塩化第2銅、、硫酸第2銅、硝酸第2銅、酢酸第2銅、ピロリン酸銅(II)等を使用する。
【0015】
(3)以上の必須の2種のイオンと錯塩を形成するために、ピロリン酸塩(ピロリン酸カリウム又はピロリン酸ナトリウム)を添加した溶液を作成する。
【0016】
以上の基本の3つの成分を配合した溶液の好適な組成範囲は、次の通りである。すなわち、第2錫イオンは、0.0005〜0.25モル/Lの範囲であり、より好適には、0.001〜0.1モル/Lの範囲である。
第2銅イオンは、0.0005〜0.17モル/Lの範囲であり、より好適には、0.001〜0.1モル/Lの範囲である。
ピロリン酸カリウムとして、計算した好適な範囲は、0.05〜1.5モル/Lであり、より好適には、0.1〜1.0モル/Lである。
【0017】
以上の基本的溶液に、(4)、(5)、(6)、(7)の添加剤を配合するが、そのうち、添加剤(4)、(5)、(6)は、共存することにより、効力を発揮し、析出めっき皮膜を黒色化する作用がある。
そして、添加剤(7)は、析出皮膜表面を平滑で均質にする作用がある。
【0018】
添加剤(4)、(5)、(6)が、共存され、めっき浴中にともに配合されていることが重要である。以下、添加剤(4)、(5)、(6)について説明する。
【0019】
添加剤(4)は、アミノカルボン酸の中から選択されたものであり、具体的には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸等を使用できる。また、含硫黄アミノ酸も使用することができる。めっき浴中の添加量範囲は、0.0013〜1.3モル/Lであり、より好適には、0.066〜0.67モル/Lの範囲である。以上挙げたもののうちで、グリシンが最も好適である。
【0020】
添加剤(5)は、無機アンモニウム塩或いはアンモニウム水であり、無機アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等を使用できる。その添加量範囲は、アンモニウムイオン濃度として、0.1〜2.7モル/Lであり、より好適には、0.27〜1.66モル/Lである。アンモニア水でも同様に使用することができるが、pHの変動に注意が必要である。
【0021】
添加剤(6)は、アルデヒド類で脂肪族飽和アルデヒド、脂肪族不飽和アルデヒド、脂肪族ジアルデヒド、芳香族アルデヒド、複素環式アルデヒドおよびアルデヒド誘導体を使用できる。具体的には、脂肪族飽和アルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等である。脂肪族不飽和アルデヒドには、アクロレイン、クロトンアルデヒド等が挙げられる。脂肪族ジアルデヒドでは、グリオキサールが挙げられる。芳香族アルデヒドでは、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。複素環式アルデヒドでは、フルフラール等が挙げられる。めっき浴への添加量範囲は、0.01〜0.4モル/Lであり、より好適には、0.02〜0.2モル/Lである。更に、上記の他に、ホルムアルデヒドの誘導体であるヘキサメチレンテトラミンも使用することができる。
【0022】
次に、添加剤(7)のアミノ化合物類は、めっき皮膜の表面改質剤の役目をするものであり、添加剤(4)、(5)、(6)が必須添加剤に対して、表面改質剤の役目をする、任意の成分であるが、めっき皮膜の製品化には、必須の添加剤である。
【0023】
添加剤(7)のアミノ化合物類は、アミノ化合物およびイミノ化合物である。具体的には、脂肪族第1アミン、脂肪族第2アミン、分枝脂肪族第1アミン、分枝脂肪族第2アミン、脂肪族ポリアミンが使用することができる。脂肪族第1アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。脂肪族第2アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等が挙げられる。また、不飽和脂肪族アミンとしては、アリルアミン、ジアリルアミン等が挙げられる。分枝脂肪族アミンとしては、イソアミルアミンが挙げられる。イミノ化合物としては、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等が挙げられる。脂肪族ポリアミンとしては、エチレンジアミン四酢酸、テトラメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリエチレンイミン(平均分子量300〜70000)が挙げられる。本発明に従えば、添加剤(7)のアミノ化合物類の添加量の範囲は、0.01〜50g/Lである。
【0024】
本発明の非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴のpHは、6〜11の範囲で適応することができる。pH6以下では、ピロリン酸が、オルソリン酸に加水分解する速度が上昇し、浴寿命が短縮される。また、pH11以上では、良好な黒色めっき皮膜が得られなくなる。本発明のめっき浴において、pH調整は、pHが低い場合には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水を添加し調整するできる。pHが高い場合には、塩酸、硫酸、ポリ燐酸等を添加することにより、調整することができる。
【0025】
本発明の非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴を用いて、ラック、バレル処理等において、アクセサリーなどの小物製品の表面に、黒色めっき皮膜を形成することができる。本発明による、めっき浴の温度は、15〜60℃で行うことができ、より好適には、20〜35℃である。
めっき浴温度が高くなるほど、浴中に含まれる2価錫イオンが、4価に酸化されるために、めっき浴中の2価錫イオンの濃度が低下し、効率が下がる。
【0026】
本発明の黒色銅−錫合金めっき浴により、黒色銅−錫合金皮膜を形成する場合に、使用できる電流密度範囲は、0.01〜10A/dm2という非常に広い範囲 である。即ち、微小の電流密度でめっき処理するバレル法でも、比較的に大きな電流密度でめっきするラック法でも、容易にめっき処理することができる。更に、本発明によると、より好適な電流密度範囲は、0.05〜3A/dm2である。
【0027】
【実施例1】
(1)硫酸第1錫 6.7g/L
(2)硫酸第2銅 5g/L
(3)ピロリン酸カリウム 150g/L
(4)グルタミン酸ナトリウム 25g/L
(5)硫酸アンモニウム 25g/L
(6)ホルムアルデヒド 2g/L
(7)ジメチルアミン 2g/L
よりなり、pH=8.4に調整された、めっき浴を用いて、得られた皮膜は、淡黒色の均一な外観であった。
【0028】
以上の組成のめっき浴を用いて、内容量250mlのミニバレルを用いて、約40容量の鉄製品に銅めっきをした製品を投入し、浴温度25℃で、0.1A/dm2の電流密度で、10分間めっき処理した。このバレルめっき処理で得られた 製品の外観は、光沢のある淡黒色の均一な色調であった。
【0029】
【実施例2】
(1)メタンスルフォン酸錫 2価Snイオンとして3g/L
(2)塩化第2銅 2g/L
(3)ピロリン酸ナトリウム 60g/L
(4)グリシン 25g/L
(5)硫酸アンモニウム 25g/L
(6)グリオキサール 2g/L
(7)ピペリジン 1g/L
よりなり、pH=9.0に調整された、めっき浴を用いて、得られた皮膜は、暗黒色の均一な外観であった。
【0030】
以上の組成のめっき浴を用いて、装身具類(ネックレス、イヤリング等の樹脂製品の上にめっきした製品)を、ラッキングして、めっき浴温度30℃で、0.5A/dm2の電流密度で、5分間めっき処理した。得られた製品の外観は、光沢 のある黒色であり、皮膜のつき回り性も良好であった。
【0031】
【実施例3】
(1)硫酸第1錫 6.5g/L
(2)硫酸第2銅 3.7g/L
(3)ピロリン酸カリウム 150g/L
(4)アラニン 25g/L
(5)塩化アンモニウム 50g/L
(6)ベンズアルデヒド 2g/L
(7)ポリエチレンイミン 2g/L
よりなり、pH=8.7に調整された、めっき浴を用いて、得られた皮膜は、淡黒色の均一な外観であった。
【0032】
また、以上の組成のめっき浴を用いて、内容量250mlのミニバレルを用いて、約40容量の真鍮製品を投入し、浴温度25℃で、0.25A/dm2の電流 密度で、15分間めっき処理した。このバレルめっき処理で得られた製品の外観は、光沢のある淡黒色の均一な色調であった。
【0033】
【実施例4】
(1)塩化第1錫 6.7g/L
(2)ピロリン酸銅 3.7g/L
(3)ピロリン酸カリウム 150g/L
(4)シスチン 25g/L
(5)塩化アンモニウム 25g/L
(6)ベンズアルデヒド 2g/L
(7)トリエタノールアミン 2g/L
よりなり、pH=8.5に調整された、めっき浴を用いて、得られた皮膜は、淡黒色の均一な外観であった。
【0034】
また、以上の組成のめっき浴を用いて、内容量250mlのミニバレルを用いて、約40容量の真鍮製品を投入し、浴温度25℃で、0.05A/dm2の電流 密度で、15分間めっき処理した。このバレルめっき処理で得られた製品の外観は、光沢のある淡黒色の均一な色調であった。
【0035】
【比較例】
(1)硫酸第1錫 6.5g/L
(2)硫酸第2銅 3.7g/L
(3)ピロリン酸カリウム 150g/L
(4)アラニン 25g/L
(5)塩化アンモニウム 50g/L
(7)ポリエチレンイミン 6.5g/L
よりなるめっき浴を用いて、SBCCセミブライト鋼板表面にめっき皮膜を形成した。得られたサンプル皮膜は、白色であり、その薄膜X線回折を行った。また、実施例3の組成浴により、同様にめっき皮膜を製造すると、黒色銅−錫合金皮膜を形成した。この皮膜についても、薄膜X線回折を行った。
【0036】
以上の白色皮膜と黒色皮膜を比較する薄膜X線回折の結果を図1に示す。
白色皮膜の薄膜X線回折では、β−Snのピーク、η−相(Sn6Cu5)のピークが見られたが、黒色皮膜の薄膜X線回折では、Sn、Cu共にピークは観測されなく、僅かにSnOらしいピークとCuの(1,1,1)らしいピークが見られた。従って、本発明による非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴によってのみ、安定した黒色の合金皮膜を形成することができることが明らかにされた。更に、本発明者は、以上の2種の皮膜について、X線光電子分析装置(XPS)で、皮膜に存在する元素及び化学結合状態を比較観察した。その結果も、白色皮膜と、本発明の非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき皮膜とは、含有している化合物、結晶構造、化学結合状態が異なることが明らかにされた。
【0037】
【発明の効果】
本発明の非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴は、以上のような構成により、次のごとき技術的効果があった。
第1に、広い範囲の電流密度で安定して、電解黒色銅−錫合金めっき皮膜の形成が見られるめっき浴を提供でき、微小電流密度で行われるバレルめっきにも、比較的に大きい電流密度で行われるラックめっきにも、適応できる、非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴を提供した。
第2に、従って、金属アレルギー問題のなく、毒性の低いめっき方法で、一度に大量に生産でき、生産性を向上した、黒色銅−錫合金めっき浴を提供し、そのめっき方法が可能になり、そして、そのような金属アレルギー問題のないアクセサリーの小物製品が、低コストで品質安定して、生産できる。
第3に、従来の非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴に比べ、浴安定性が高く、長期にわたって生産作業が可能であり、良好な色調の電解黒色銅−錫合金めっき皮膜が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較のため、本発明の非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴で形成した黒色銅−錫合金めっき皮膜(実施例3−下側に薄膜X線回折パターンを示す)と、アルデヒドを含有しない同じ組成の浴(比較例−白色合金皮膜−上側に薄膜X線回折パターンを示す)を用いて作成した皮膜を各々薄膜X線回折パターンを測定した結果を示す。
【符号の説明】
Fe 基板の鉄の回折ピーク Sn 錫結晶の回折ピーク
Cu 銅結晶の回折ピーク η η相Cu6Sn5合金の回折ピーク
【発明の属する技術分野】
本発明は、非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴、非シアン系黒色銅−錫合金めっき方法および黒色銅−錫合金めっき皮膜が形成された製品に関する。即ち、本発明は、装飾用黒色めっきを得るための新規な黒色銅−錫合金めっき浴とそれによる黒色銅−錫合金めっき方法およびそれに得られた装飾黒色銅−錫合金めっき製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の装飾用黒色めっきは、黒色を得るためにニッケルめっきが使用されてきた。然し乍ら、金属アレルギーの問題が、特にヨーロッパを中心とする欧米諸国で、ニッケルめっき製品に対しても販売規制されるなどで、装飾めっき皮膜中のニッケルの問題が大きくなっている。日本でも商品の安全性についてメーカーに厳しい責任を求めたPL法が施行され、ニッケルフリーの製品の開発が急がれている。ニッケルに代わる黒色めっき材料は、多種の合金めっきについて考えられるが、その中でも工業的に入手し易く、安価で資源的にも問題のない金属として、銅−錫合金が、候補になっている。
【0003】
現在、黒色銅−錫合金めっきは、シアン化物のような有害な材料を使用しためっき浴が広く使用されているが、それらの浴から得られる銅−錫合金の色調は、銀白色、黄金色などであった。また、非シアン化物浴としてピロリン酸銅−錫合金めっき浴が、提案されている(特開平10−102278号及び特開2001−295092号参照)。然し乍ら、このめっき浴では、安定した黒色の色調のめっき物を得ることができなく、装飾用の黒色めっき皮膜としては、安定生産の見通しがなく、工業化が困難であると思われる。
【0004】
特開2001−295092号では、添加剤として、アミン誘導体とエビハロヒドリンとの1:1反応生成物とカチオン界面活性剤を含有させためっき浴を用いているが、アミン誘導体とエビハロヒドリンとの1:1反応生成物もカチオン界面活性剤も、本発明の非シアン系めっき浴で用いる添加剤の成分とはまったく異なるものである。
また、特開平10−102278号では、アミン誘導体とエビハロヒドリンとの1:1反応生成物とアルデヒド誘導体と、所望により表面張力調整剤とを含有させためっき浴を用いているが、本発明の非シアン系めっき浴と添加剤成分の組合せがまったく異なる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、装飾めっきの内、ボタン、ファスナー、ホック、アクセサリー、クリップ等のように直接に膚に触れる金属小物製品に広く使用されている黒色錫−ニッケル合金めっきの代替として、金属アレルギーの可能性が少なく、毒性のない物を用いる非シアン系ピロリン酸黒色銅−錫合金めっき浴とそれによるめっき方法並びにそれにより製造される製品を提供しようとするものである。即ち、本発明は、非シアン系ピロリン酸黒色銅−錫合金めっき浴で、安定した黒色の色調が出るもので、十分に工業化できる非シアン系ピロリン酸銅−錫合金めっき浴を可能にしようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、次のような手段により、それを解決したものである。
(1)(1)2価の錫イオン及び
(2)2価の銅イオンを含有し、錯化剤として
(3)ピロリン酸塩を含有する溶液に、次の3種の添加剤;即ち、
(4)アミノカルボン酸;
(5)アンモニウム塩;および
(6)アルデヒド類を必須成分として、含有することを特徴とする非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴である。
【0007】
(2)更に、(7)下記に規定するアミノ化合物類を含有した非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴である。
(3)ラックおよびバレルのいずれものめっき処理に使用できる、電気めっき皮膜形成のための、非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴である。
(4)以上の(1)〜(3)のいずれかの黒色銅−錫合金めっき浴を用いて、黒色銅−錫合金めっき皮膜を形成する非シアン系黒色銅−錫合金めっき方法である。
(5)以上の(1)〜(3)のいずれかの黒色銅−錫合金めっき浴を用いて、黒色銅−錫合金めっき皮膜を形成した非シアン系黒色銅−錫合金めっき製品。
【0008】
以下、本発明の非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴の例を説明するが、本発明は、それにより限定を受けるものではない。
本発明は、基本的に、次の(1)〜(6)の6つの成分を必須成分とする、非シアン系黒色銅−錫合金めっきのため浴組成物であり、それを用いる黒色銅−錫合金めっき皮膜の製造方法とその黒色めっき皮膜による製品である。すなわち、
(1)2価の錫イオン(2価の錫化合物、例えば、塩化スズ(II)、硫酸スズ(II)、ピロリン酸スズ(II)、メタンスルホン酸スズ(II)を用いる)
(2)2価の銅イオン(2価の銅化合物、例えば、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、ピロリン酸銅(II)を用いる)
、および、
(3)錯化剤としてピロリン酸塩(具体的には、例えば、ピロリン酸カリウムまたはピロリン酸ナトリウムを用いる)、含有する溶液に、
添加剤として、
(4)アミノカルボン酸(例えば、モノアミノモノカルボン酸、モノアミノジカルボン酸、ジアミノモノカルボン酸、オキシアミノ酸、含硫黄アミノ酸及びその塩からなる群から選択された少なくとも1種以上の成分)
(5)アンモニウム塩(無機アンモニウム塩またはアンモニア水)
(6)アルデヒド類(脂肪族飽和アルデヒド、脂肪族不飽和アルデヒド、芳香族アルデヒド、複素環式アルデヒド、アルデヒド誘導体からなる群から選択された少なくとも1種以上のアルデヒド類)
さらに、(7)アミノ化合物類;アミノ化合物、イミノ化合物および1分子内に2つ以上のアミノ基、イミノ基を有するポリアミンからなる選択された少なくとも1種以上のアミノ化合物類を意味する。これは、めっき皮膜表面を平滑、均質にするための添加剤として、含有させる。
【0009】
本発明によると、以上挙げた(1)〜(6)の6つの成分を必須成分として含有する黒色銅−錫合金めっき浴によるめっき処理では、広い範囲の電流密度で、均一な色調の黒色銅−錫合金めっき皮膜が得られる。
【0010】
従って、以上のような、本発明の黒色銅−錫合金めっき浴では、バレルめっきによる一括生産が可能であり、ボタン、ファスナー、ホックなどの装飾品、アクセサリーなどを始めとする小物製品のめっき皮膜形成には、最適なめっき浴である。それは、電流密度の変動による外観変化が、ほとんど無く、常に、均一な外観のめっき皮膜が得られる。さらに、めっき浴中の金属濃度変化による外観変化が非常に少ないことが特徴である。
【0011】
更に、本発明の非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴は、例えば、0.05A/dm2〜0.2A/のような微小の電流密度で行われるバレルめっきに加えて、例 えば、0.5〜2.0A/dm2のような比較的に大きい電流密度で行われるラッ クめっきでも使用できるものである。即ち、本発明の非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴は、微小電流密度でも、比較的に電流密度の大きいめっき処理でも使用することができる。従って、クリップや他の表面の大きい製品に対しても、本発明の非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴は、有効に使用できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の黒色銅−錫合金めっき浴に必須成分として、用いられるものは、以上の(1)(2)(3)(4)(5)(6)の成分であり、さらに、製品化に必須の添加剤(7)を含有する。
以下、その各々について説明する。
【0013】
(1)2価の錫イオンを提供する化合物としては、水溶性の2価の錫化合物が使用でき、具体的には、上記のように、塩化スズ(II)、硫酸スズ(II)、ピロリン酸スズ(II)、メタンスルホン酸スズ(II)等である。
【0014】
(2)2価の銅イオンを提供する化合物としては、具体的には、塩化第2銅、、硫酸第2銅、硝酸第2銅、酢酸第2銅、ピロリン酸銅(II)等を使用する。
【0015】
(3)以上の必須の2種のイオンと錯塩を形成するために、ピロリン酸塩(ピロリン酸カリウム又はピロリン酸ナトリウム)を添加した溶液を作成する。
【0016】
以上の基本の3つの成分を配合した溶液の好適な組成範囲は、次の通りである。すなわち、第2錫イオンは、0.0005〜0.25モル/Lの範囲であり、より好適には、0.001〜0.1モル/Lの範囲である。
第2銅イオンは、0.0005〜0.17モル/Lの範囲であり、より好適には、0.001〜0.1モル/Lの範囲である。
ピロリン酸カリウムとして、計算した好適な範囲は、0.05〜1.5モル/Lであり、より好適には、0.1〜1.0モル/Lである。
【0017】
以上の基本的溶液に、(4)、(5)、(6)、(7)の添加剤を配合するが、そのうち、添加剤(4)、(5)、(6)は、共存することにより、効力を発揮し、析出めっき皮膜を黒色化する作用がある。
そして、添加剤(7)は、析出皮膜表面を平滑で均質にする作用がある。
【0018】
添加剤(4)、(5)、(6)が、共存され、めっき浴中にともに配合されていることが重要である。以下、添加剤(4)、(5)、(6)について説明する。
【0019】
添加剤(4)は、アミノカルボン酸の中から選択されたものであり、具体的には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸等を使用できる。また、含硫黄アミノ酸も使用することができる。めっき浴中の添加量範囲は、0.0013〜1.3モル/Lであり、より好適には、0.066〜0.67モル/Lの範囲である。以上挙げたもののうちで、グリシンが最も好適である。
【0020】
添加剤(5)は、無機アンモニウム塩或いはアンモニウム水であり、無機アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等を使用できる。その添加量範囲は、アンモニウムイオン濃度として、0.1〜2.7モル/Lであり、より好適には、0.27〜1.66モル/Lである。アンモニア水でも同様に使用することができるが、pHの変動に注意が必要である。
【0021】
添加剤(6)は、アルデヒド類で脂肪族飽和アルデヒド、脂肪族不飽和アルデヒド、脂肪族ジアルデヒド、芳香族アルデヒド、複素環式アルデヒドおよびアルデヒド誘導体を使用できる。具体的には、脂肪族飽和アルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等である。脂肪族不飽和アルデヒドには、アクロレイン、クロトンアルデヒド等が挙げられる。脂肪族ジアルデヒドでは、グリオキサールが挙げられる。芳香族アルデヒドでは、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。複素環式アルデヒドでは、フルフラール等が挙げられる。めっき浴への添加量範囲は、0.01〜0.4モル/Lであり、より好適には、0.02〜0.2モル/Lである。更に、上記の他に、ホルムアルデヒドの誘導体であるヘキサメチレンテトラミンも使用することができる。
【0022】
次に、添加剤(7)のアミノ化合物類は、めっき皮膜の表面改質剤の役目をするものであり、添加剤(4)、(5)、(6)が必須添加剤に対して、表面改質剤の役目をする、任意の成分であるが、めっき皮膜の製品化には、必須の添加剤である。
【0023】
添加剤(7)のアミノ化合物類は、アミノ化合物およびイミノ化合物である。具体的には、脂肪族第1アミン、脂肪族第2アミン、分枝脂肪族第1アミン、分枝脂肪族第2アミン、脂肪族ポリアミンが使用することができる。脂肪族第1アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。脂肪族第2アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等が挙げられる。また、不飽和脂肪族アミンとしては、アリルアミン、ジアリルアミン等が挙げられる。分枝脂肪族アミンとしては、イソアミルアミンが挙げられる。イミノ化合物としては、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等が挙げられる。脂肪族ポリアミンとしては、エチレンジアミン四酢酸、テトラメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリエチレンイミン(平均分子量300〜70000)が挙げられる。本発明に従えば、添加剤(7)のアミノ化合物類の添加量の範囲は、0.01〜50g/Lである。
【0024】
本発明の非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴のpHは、6〜11の範囲で適応することができる。pH6以下では、ピロリン酸が、オルソリン酸に加水分解する速度が上昇し、浴寿命が短縮される。また、pH11以上では、良好な黒色めっき皮膜が得られなくなる。本発明のめっき浴において、pH調整は、pHが低い場合には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水を添加し調整するできる。pHが高い場合には、塩酸、硫酸、ポリ燐酸等を添加することにより、調整することができる。
【0025】
本発明の非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴を用いて、ラック、バレル処理等において、アクセサリーなどの小物製品の表面に、黒色めっき皮膜を形成することができる。本発明による、めっき浴の温度は、15〜60℃で行うことができ、より好適には、20〜35℃である。
めっき浴温度が高くなるほど、浴中に含まれる2価錫イオンが、4価に酸化されるために、めっき浴中の2価錫イオンの濃度が低下し、効率が下がる。
【0026】
本発明の黒色銅−錫合金めっき浴により、黒色銅−錫合金皮膜を形成する場合に、使用できる電流密度範囲は、0.01〜10A/dm2という非常に広い範囲 である。即ち、微小の電流密度でめっき処理するバレル法でも、比較的に大きな電流密度でめっきするラック法でも、容易にめっき処理することができる。更に、本発明によると、より好適な電流密度範囲は、0.05〜3A/dm2である。
【0027】
【実施例1】
(1)硫酸第1錫 6.7g/L
(2)硫酸第2銅 5g/L
(3)ピロリン酸カリウム 150g/L
(4)グルタミン酸ナトリウム 25g/L
(5)硫酸アンモニウム 25g/L
(6)ホルムアルデヒド 2g/L
(7)ジメチルアミン 2g/L
よりなり、pH=8.4に調整された、めっき浴を用いて、得られた皮膜は、淡黒色の均一な外観であった。
【0028】
以上の組成のめっき浴を用いて、内容量250mlのミニバレルを用いて、約40容量の鉄製品に銅めっきをした製品を投入し、浴温度25℃で、0.1A/dm2の電流密度で、10分間めっき処理した。このバレルめっき処理で得られた 製品の外観は、光沢のある淡黒色の均一な色調であった。
【0029】
【実施例2】
(1)メタンスルフォン酸錫 2価Snイオンとして3g/L
(2)塩化第2銅 2g/L
(3)ピロリン酸ナトリウム 60g/L
(4)グリシン 25g/L
(5)硫酸アンモニウム 25g/L
(6)グリオキサール 2g/L
(7)ピペリジン 1g/L
よりなり、pH=9.0に調整された、めっき浴を用いて、得られた皮膜は、暗黒色の均一な外観であった。
【0030】
以上の組成のめっき浴を用いて、装身具類(ネックレス、イヤリング等の樹脂製品の上にめっきした製品)を、ラッキングして、めっき浴温度30℃で、0.5A/dm2の電流密度で、5分間めっき処理した。得られた製品の外観は、光沢 のある黒色であり、皮膜のつき回り性も良好であった。
【0031】
【実施例3】
(1)硫酸第1錫 6.5g/L
(2)硫酸第2銅 3.7g/L
(3)ピロリン酸カリウム 150g/L
(4)アラニン 25g/L
(5)塩化アンモニウム 50g/L
(6)ベンズアルデヒド 2g/L
(7)ポリエチレンイミン 2g/L
よりなり、pH=8.7に調整された、めっき浴を用いて、得られた皮膜は、淡黒色の均一な外観であった。
【0032】
また、以上の組成のめっき浴を用いて、内容量250mlのミニバレルを用いて、約40容量の真鍮製品を投入し、浴温度25℃で、0.25A/dm2の電流 密度で、15分間めっき処理した。このバレルめっき処理で得られた製品の外観は、光沢のある淡黒色の均一な色調であった。
【0033】
【実施例4】
(1)塩化第1錫 6.7g/L
(2)ピロリン酸銅 3.7g/L
(3)ピロリン酸カリウム 150g/L
(4)シスチン 25g/L
(5)塩化アンモニウム 25g/L
(6)ベンズアルデヒド 2g/L
(7)トリエタノールアミン 2g/L
よりなり、pH=8.5に調整された、めっき浴を用いて、得られた皮膜は、淡黒色の均一な外観であった。
【0034】
また、以上の組成のめっき浴を用いて、内容量250mlのミニバレルを用いて、約40容量の真鍮製品を投入し、浴温度25℃で、0.05A/dm2の電流 密度で、15分間めっき処理した。このバレルめっき処理で得られた製品の外観は、光沢のある淡黒色の均一な色調であった。
【0035】
【比較例】
(1)硫酸第1錫 6.5g/L
(2)硫酸第2銅 3.7g/L
(3)ピロリン酸カリウム 150g/L
(4)アラニン 25g/L
(5)塩化アンモニウム 50g/L
(7)ポリエチレンイミン 6.5g/L
よりなるめっき浴を用いて、SBCCセミブライト鋼板表面にめっき皮膜を形成した。得られたサンプル皮膜は、白色であり、その薄膜X線回折を行った。また、実施例3の組成浴により、同様にめっき皮膜を製造すると、黒色銅−錫合金皮膜を形成した。この皮膜についても、薄膜X線回折を行った。
【0036】
以上の白色皮膜と黒色皮膜を比較する薄膜X線回折の結果を図1に示す。
白色皮膜の薄膜X線回折では、β−Snのピーク、η−相(Sn6Cu5)のピークが見られたが、黒色皮膜の薄膜X線回折では、Sn、Cu共にピークは観測されなく、僅かにSnOらしいピークとCuの(1,1,1)らしいピークが見られた。従って、本発明による非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴によってのみ、安定した黒色の合金皮膜を形成することができることが明らかにされた。更に、本発明者は、以上の2種の皮膜について、X線光電子分析装置(XPS)で、皮膜に存在する元素及び化学結合状態を比較観察した。その結果も、白色皮膜と、本発明の非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき皮膜とは、含有している化合物、結晶構造、化学結合状態が異なることが明らかにされた。
【0037】
【発明の効果】
本発明の非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴は、以上のような構成により、次のごとき技術的効果があった。
第1に、広い範囲の電流密度で安定して、電解黒色銅−錫合金めっき皮膜の形成が見られるめっき浴を提供でき、微小電流密度で行われるバレルめっきにも、比較的に大きい電流密度で行われるラックめっきにも、適応できる、非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴を提供した。
第2に、従って、金属アレルギー問題のなく、毒性の低いめっき方法で、一度に大量に生産でき、生産性を向上した、黒色銅−錫合金めっき浴を提供し、そのめっき方法が可能になり、そして、そのような金属アレルギー問題のないアクセサリーの小物製品が、低コストで品質安定して、生産できる。
第3に、従来の非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴に比べ、浴安定性が高く、長期にわたって生産作業が可能であり、良好な色調の電解黒色銅−錫合金めっき皮膜が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較のため、本発明の非シアン系電解黒色銅−錫合金めっき浴で形成した黒色銅−錫合金めっき皮膜(実施例3−下側に薄膜X線回折パターンを示す)と、アルデヒドを含有しない同じ組成の浴(比較例−白色合金皮膜−上側に薄膜X線回折パターンを示す)を用いて作成した皮膜を各々薄膜X線回折パターンを測定した結果を示す。
【符号の説明】
Fe 基板の鉄の回折ピーク Sn 錫結晶の回折ピーク
Cu 銅結晶の回折ピーク η η相Cu6Sn5合金の回折ピーク
Claims (5)
- (1)2価の錫イオン及び
(2)2価の銅イオンを含有し、錯化剤として
(3)ピロリン酸塩を含有する溶液に、次の3種の添加剤;即ち、
(4)アミノカルボン酸;
(5)アンモニウム塩;および
(6)アルデヒド類を必須成分として、含有することを特徴とする非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴。 - 更に、(7)アミノ化合物類を含有することを特徴とする請求項1に記載の非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴。
- ラックおよびバレルのいずれものめっき処理に使用できる、電気めっき皮膜形成のための、請求項1或いは2に記載の非シアン系黒色銅−錫合金めっき浴。
- 請求項1〜3のいずれかの黒色銅−錫合金めっき浴を用いて、黒色銅−錫合金めっき皮膜を形成することを特徴とする非シアン系黒色銅−錫合金めっき方法。
- 請求項1〜3のいずれかの黒色銅−錫合金めっき浴を用いて、黒色銅−錫合金めっき皮膜を形成したことを特徴とする非シアン系黒色銅−錫合金めっき製品。
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