JP2004000122A - アルカリプロテアーゼ - Google Patents
アルカリプロテアーゼ Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004000122A JP2004000122A JP2002304230A JP2002304230A JP2004000122A JP 2004000122 A JP2004000122 A JP 2004000122A JP 2002304230 A JP2002304230 A JP 2002304230A JP 2002304230 A JP2002304230 A JP 2002304230A JP 2004000122 A JP2004000122 A JP 2004000122A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- amino acid
- protease
- alkaline protease
- isoleucine
- mass
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Enzymes And Modification Thereof (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
- Detergent Compositions (AREA)
Abstract
【課題】複合汚れに対しても優れた洗浄性を有すると共に、分泌能の高いアルカリプロテアーゼを提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列の(a)65位、(b)101位、(c)273位、(d)320位、(e)359位、(f)387位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基が下記アミノ酸残基;(a)位置:プロリン、(b)位置:アスパラギン、(c)位置:イソロイシン、グリシン、スレオニン、(d)位置:フェニルアラニン、バリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、(e)位置:セリン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミン、(f)位置:アラニン、リジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、から選ばれたものであるアルカリプロテアーゼ。
【選択図】 なし
【解決手段】特定のアミノ酸配列の(a)65位、(b)101位、(c)273位、(d)320位、(e)359位、(f)387位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基が下記アミノ酸残基;(a)位置:プロリン、(b)位置:アスパラギン、(c)位置:イソロイシン、グリシン、スレオニン、(d)位置:フェニルアラニン、バリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、(e)位置:セリン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミン、(f)位置:アラニン、リジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、から選ばれたものであるアルカリプロテアーゼ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は洗浄剤配合酵素として有用なアルカリプロテアーゼ及びそれをコードする遺伝子に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
産業分野でのプロテアーゼ利用の歴史は古く、衣料用洗剤をはじめとする洗浄剤から繊維の改質剤、皮革処理剤、化粧料、浴剤、食品改質剤或いは医薬品としての利用まで非常に多岐にわたっている。中でも最も工業的に大量に生産されているものが洗剤用プロテアーゼであり、例えば、アルカラーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、サビナーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、マクサカル(登録商標;ジェネンコア社)、ブラップ(登録商標;ヘンケル社)、及びプロテアーゼK(花王)等が知られている。
【0003】
洗剤中にプロテアーゼを配合する目的は、衣料に付着した蛋白質を主成分とする汚れを分解して低分子化し、界面活性剤による可溶化を促進することであるが、実際の汚れは蛋白質だけでなく皮脂由来の脂質や固体粒子等、有機物と無機物が入り混じった複数の成分を内包する複合汚れであり、このような複合汚れに対する洗浄性の高い洗浄剤が望まれていた。
【0004】
かかる観点から本発明者らは、高濃度の脂肪酸存在下でも十分なカゼイン分解活性を保持し、蛋白質だけでなく皮脂等の混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性を有する分子量約43,000のアルカリプロテアーゼを数種見出し、先に特許出願した(特許文献1参照)。斯かるアルカリプロテアーゼ群は、その分子量、一次構造、酵素学的性質、特に非常に強い酸化剤耐性を有する点で、従来から知られているバチルス属細菌由来のセリンプロテアーゼであるズブチリシンとは異なり、新しいズブチリシンサブファミリーに分類することが提唱されている(非特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このようなプロテアーゼであっても、工業的レベルでの生産を考えた場合、その生産量は十分な量とは言えず、培地中に効率良く分泌されるアルカリプロテアーゼが求められていた。
【0006】
一方、目的のタンパク質(酵素)を多量に分泌させる試みとしては、宿主菌(生産菌)の変異育種による改良、酵素をコードする遺伝子あるいはその制御を行う遺伝子を改変して分泌量を高める方法が知られているが、ズブチリシンについては酵素の分泌量を高めるような改変の例は見当たらない。
【0007】
従って、本発明は複合汚れに対しても優れた洗浄性を有すると共に、分泌能の高いアルカリプロテアーゼを提供することを目的とする。
【0008】
【特許文献1】
国際公開第99/18218号パンフレット
【非特許文献1】
Saekiら, Biochem.Biophys.Res.Commun.,279,(2000),313−319
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記アルカリプロテアーゼの特性を保持しつつ、効率良く培地中に分泌できる新たな酵素の探索を行ったところ、ある種のアルカリプロテアーゼにおいて、当該アミノ酸配列中の特定位置に特定のアミノ酸残基が必要であることを見出した。
【0010】
すなわち、配列番号1の(a)65位、(b)101位、(c)273位、(d)320位、(e)359位、(f)387位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基が下記アミノ酸残基;
(a)位置:プロリン、
(b)位置:アスパラギン、
(c)位置:イソロイシン、グリシン、スレオニン、
(d)位置:フェニルアラニン、バリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、
(e)位置:セリン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミン、
(f)位置:アラニン、リジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、
から選ばれたものであるアルカリプロテアーゼ、及びそれをコードする遺伝子を提供するものである。
【0011】
また本発明は、該遺伝子を含有するベクター、該ベクターを含有する形質転換体を提供するものである。
【0012】
また本発明は、該アルカリプロテアーゼを含有する洗浄剤組成物を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のアルカリプロテアーゼは、上記のように、配列番号1の(a)65位、(b)101位、(c)273位、(d)320位、(e)359位、(f)387位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基が下記アミノ酸残基;
(a)位置:プロリン、(b)位置:アスパラギン、(c)位置:イソロイシン、グリシン、スレオニン、(d)位置:フェニルアラニン、バリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、(e)位置:セリン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミン、(f)位置:アラニン、リジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、から選ばれたものである。
【0014】
すなわち、本発明のアルカリプロテアーゼは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼにおける前記(a)〜(f)から選ばれる位置のアミノ酸残基又は他種アルカリプロテアーゼのアミノ酸配列の当該位置に相当する位置のアミノ酸残基が特定のアミノ酸残基であるプロテアーゼを意味し、これらは野生型、野生型の変異体或いは人為的に変異を施した変異体であってもよい。
【0015】
ここで、「他種アルカリプロテアーゼ」としては、野生型又は野生型の変異体であってもよく、酸化剤耐性を有し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)法による分子量が43,000±2,000であることが好ましく、配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有するものが挙げられる。特に好ましくは、配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有し、pH8以上のアルカリ性領域で作用する、酸化剤耐性を有する、50℃、pH10で10分間処理したとき80%以上の残存活性を示す、ジイソプロピルフルオルリン酸(DFP)及びフェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF)で阻害され、SDS−PAGEによる分子量が43,000±2,000である酵素が挙げられる。ここで、酸化剤耐性を有するとは、当該アルカリプロテアーゼを50mM過酸化水素、5mM塩化カルシウムを含む20mMブリットンロビンソン緩衝液(pH10)中で、30℃、20分間の放置後の残存活性が少なくとも50%以上を保持していることをいう。
【0016】
ここで、「配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼ」としては、KP43〔バチルス エスピーKSM−KP43(FERM BP−6532)由来、WO99/18218〕が挙げられ、「配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼ」としては、例えばプロテアーゼKP9860[バチルスエスピーKSM−KP9860(FERMBP−6534)由来、WO99/18218、GenBank Accession No.AB046403]、プロテアーゼE−1[バチルスNo.D−6(FERMP−1592)由来、特開昭49−71191、GenBank Accession No.AB046402]、プロテアーゼYa[バチルスエスピーY(FERMBP−1029)由来、特開昭61−280268、GenBank Accession No.AB046404]、プロテアーゼSD521[バチルスSD521(FERMP−11162)由来、特開平3−191781、GenBank Accession No.AB046405]、プロテアーゼA−1[NCIB12289由来、WO88/01293、GenBank Accession No.AB046406]、プロテアーゼA−2[NCIB12513由来、WO98/56927]や、配列番号1のアミノ酸配列の46位をロイシンに置換した変異体、57位をアラニンに置換した変異体、103位をアルギニンに置換した変異体、107位をリジンに置換した変異体、124位をそれぞれリジン及びアラニンに置換した変異体、136位をアラニンに置換した変異体、193位をアラニンに置換した変異体、195位をそれぞれアスパラギン、グルタミン酸、アルギニン、プロリン、スレオニン、バリン、ヒスチジン、セリン、リジン、グルタミン、メチオニン、システイン、アラニン、アスパラギン酸、トリプトファン、グリシン及びフェニルアラニンに置換した変異体、247位をそれぞれスレオニン及びアルギニンに置換した変異体、257位をバリンに置換した変異体、342位をアラニンに置換した変異体、66位をアスパラギン酸に置換し且つ264位をセリンに置換した二重変異体(特願平12−355166号)、配列番号1のアミノ酸配列の84位をアルギニンに置換した変異体、104位をプロリンに置換した変異体、256位をそれぞれアラニン及びセリンに置換した変異体、369位をアスパラギンに置換した変異体(特願平13−114048号)、配列番号1のアミノ酸配列の251位をそれぞれアスパラギン、スレオニン、イソロイシン、バリン、ロイシン及びグルタミンに置換した変異体、256位をそれぞれセリン、グルタミン、アスパラギン、バリン及びアラニンに置換した変異体(特願平13−329472号)又はこれらとアミノ酸配列において80%以上、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の相同性を有するアルカリプロテアーゼが挙げられる。
なお、アミノ酸配列の相同性は、リップマン−パーソン(Lipman−Pearson)法(Science, 227,1435,1985)によって計算される。
【0017】
また、「相当する位置のアミノ酸残基」を特定する方法としては、例えばリップマン−パーソン法等の公知のアルゴリズムを用いてアミノ酸配列を比較し、各アルカリプロテアーゼのアミノ酸配列中に存在する保存アミノ酸残基に最大の相同性を与えることにより行うことができる。プロテアーゼのアミノ酸配列をこのような方法で整列させることにより、アミノ酸配列中にある挿入、欠失にかかわらず、相同アミノ酸残基の各プロテアーゼにおける配列中の位置を決めることが可能である。相同位置は、三次元構造中で同位置に存在すると考えられ、対象のプロテアーゼの特異的機能に関して類似した効果を有することが推定できる。
【0018】
すなわち、上記方法でアミノ酸配列を整列させた図1より、(a)配列番号1の65位のアミノ酸残基はスレオニン残基であるが、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼKP9860においては65位のスレオニン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基はプロリン残基であるのが好ましい。
【0019】
(b)配列番号1の101位のアミノ酸残基はグリシン残基であるが、ここで、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼE−1においては100位のセリン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基はアスパラギン残基であるのが好ましい。
【0020】
(c)配列番号1の273位のアミノ酸残基はバリン残基であるが、ここで、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼA−2においては272位のバリン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基は、イソロイシン、グリシン、スレオニン残基であるのが好ましく、イソロイシン残基であるのが特に好ましい。
【0021】
(d)配列番号1の320位のアミノ酸残基はチロシン残基であるが、ここで、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼSD−521においては319位のチロシン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基は、フェニルアラニン、バリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン残基であるのが好ましく、フェニルアラニン残基であるのが特に好ましい。
【0022】
(e)配列番号1の359位のアミノ酸残基はスレオニン残基であるが、ここで、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼYaにおいては358位のスレオニン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基は、セリン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミン残基であるのが好ましく、セリン残基であるのが特に好ましい。
【0023】
(f)配列番号1の387位のアミノ酸残基はセリン残基であるが、ここで、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼSD−521においては386位のチロシン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基は、アラニン、リジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン残基であるのが好ましく、アラニン残基であるのが特に好ましい。
【0024】
プロテアーゼKP43のアミノ酸配列(配列番号1)の(a)65位、(b)101位、(c)273位、(d)320位、(e)359位、(f)387位に相当する位置及びアミノ酸残基の具体例を、上記「他種アルカリプロテアーゼ」のうちの好適に用いられるもので示す(表1)。
【0025】
【表1】
【0026】
また、本発明アルカリプロテアーゼにおけるアミノ酸残基の(a)〜(f)の選択は、酵素活性及び酵素特性が変化しない限り2個所以上が同時になされていていもよい。2箇所以上が同時になされた場合の好ましい具体例を以下に示す。尚、アミノ酸は3文字表記とし、「+」は1箇所の置換に対し付加された置換を表し、「/」については表記したいずれのアミノ酸を使用しても良いことを示している。
【0027】
二重置換体の例としては、Thr65Pro+Gly101Asn、Thr65Pro+Val273(Ile/Gly/Thr)、Gly101Asn+Thr359(Ser/Leu/Val/Ile/Gln)、Val273(Ile/Gly/Thr)+Tyr320(Phe/Val/Thr/Ieu/Ile/Gly)等が挙げられるが、Thr65Pro+Ser387Ala、Thr359Ser+Ser387Alaが特に好ましい。
【0028】
三重変異体の例としては、Thr65Pro+Gly101Asn+Val273(Ile/Gly/Thr)、Tyr320(Phe/Val/Thr/Ieu/Ile/Gly)+Val273(Ile/Gly/Thr)+Ser387(Ala/Lys/Gln/Glu/Arg/His)、Thr65Pro+Tyr320(Phe/Val/Thr/Ieu/Ile/Gly)+Thr359(Ser/Leu/Val/Ile/Gln)等が挙げられるが、Thr65Pro+Gly101Asn+Ser387Ala、Thr65Pro+Val273Ile+Tyr320Phe、Thr65Pro+Tyr320Phe+Ser387Ala等が好ましく、Thr65Pro+Val273Ile+Thr359Ser、Thr65Pro+Val273Ile+Ser387Ala、Thr65Pro+Tyr320Gly+Ser387Ala等が特に好ましい。
【0029】
四重変異体の例としては、Thr65Pro+Gly101Asn+Val273(Ile/Gly/Thr)+Tyr320(Phe/Val/Thr/Ieu/Ile/Gly)、Thr65Pro+Tyr320(Phe/Val/Thr/Ieu/Ile/Gly)+Thr359(Ser/Leu/Val/Ile/Gln)+Ser387(Ala/Lys/Gln/Glu/Arg/His)、Gly101Asn+Val273(Ile/Gly/Thr)+Tyr320(Phe/Val/Thr/Ieu/Ile/Gly)+Ser387(Ala/Lys/Gln/Glu/Arg/His)等が挙げられるが、Thr65Pro+Val273Ile+Thr359(Ser/Leu/Ile/Val/Thr)+Ser387(Glu/Ala)、Thr65Pro+Val273Ile+Tyr320(Val/Leu/Phe/Thr)+Ser387(Ala/His/Gln)等が好ましく、Thr65Pro+Val273Ile+Thr359Ser+Ser387(Ala/Lys)、Thr65Pro+Val273Ile+Thr359Gln+Ser387Ala、Thr65Pro+Val273Ile+Tyr320Phe+Ser387(Gln/Lys)、Thr65Pro+Val273Ile+Tyr320Ile+Ser387Gln等が好ましい。
さらに五重、六重変異体の各組合せでも良い。
【0030】
本発明のアルカリプロテアーゼが変異体である場合、変異を施す前のアルカリプロテアーゼ(親アルカリプロテアーゼということがある)としては、「配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼ」又は上述した「他種アルカリプロテアーゼ」として示したものが該当し、これに目的部位の変異を施すことにより本発明のアルカリプロテアーゼが得られる。例えばプロテアーゼKP43の配列番号1で示されるアミノ酸配列の前記(a)〜(f)より選ばれる位置のアミノ酸残基又は他種アルカリプロテアーゼのアミノ酸配列において当該位置に相当する位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することにより得られる。
【0031】
本発明アルカリプロテアーゼは、例えば以下の方法により得ることができる。すなわち、クローニングされた親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子に対して変異を施し、得られた変異遺伝子を用いて適当な宿主を形質転換し、当該組換え宿主を培養し、培養物から採取することにより得られる。親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子のクローニングは、一般的な遺伝子組換え技術を用いればよく、例えばWO99/18218、WO98/56927記載の方法に従って行えばよい。
【0032】
親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子の変異手段としては、一般的に行われているランダム変異や部異特異的変異の方法がいずれも採用できる。より具体的には、例えばSite−Directed Mutagenesis System Mutan−Super Express Kmキット(Takara)等を用いて行うことができる。また、リコンビナントPCR(polymerase chain reaction)法(PCR protocols, Academic press, New York, 1990)を用いることによって、遺伝子の任意の配列を他の遺伝子の該任意の配列に相当する配列と置換することが可能である。
【0033】
得られた変異遺伝子を用いた本発明プロテアーゼの生産方法としては、例えば当該変異遺伝子を安定に増幅できるDNAベクターに連結させ宿主菌を形質転換する、或いは当該変異遺伝子を安定に維持できる宿主菌の染色体DNA上に導入させる、等の方法が採用できる。この条件を満たす宿主としては例えばバチルス属細菌、大腸菌、カビ、酵母、放線菌等が挙げられ、これらの菌株を用い、資化性の炭素源、窒素源その他必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い培養すればよい。
【0034】
かくして得られた培養液中からのアルカリプロテアーゼの採取、及び精製は、一般の酵素の採取、及び精製方法に準じて行うことができる。例えば、培養液を遠心分離、又は濾過することで菌体を除き、培養上清液から常法の精製手段により目的酵素を得る。このようにして得られる酵素液は、そのまま用いることもできるが、更に公知の方法により精製、結晶化、粉末化、または顆粒化することもできる。
【0035】
得られたプロテアーゼは、酸化剤耐性を有し、高濃度の脂肪酸によるカゼイン分解活性の阻害を受けず、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であり、アルカリ性域で活性を有すると共に、形質転換体での分泌能が高い。
ここで、「分泌能が高い」とは、例えば親アルカリプロテアーゼと同一の条件下において(例えばポリペプトンS8%(w/v)、酵母エキス0.3%、マルトース10%、硫酸マグネシウム7水和物0.04%、リン酸2水素カリウム0.2%、無水炭酸ナトリウム1.5%、テトラサイクリン30ppmから成る培地に植菌(v/v)し、30℃、3日間振とう培養する)、生産したアルカリプロテアーゼ変異体について培養上清中のプロテアーゼ活性量、タンパク質量を測定した場合、一定量以上の活性量又はタンパク質量を示すことをいい、例えば親アルカリプロテアーゼの5%以上、望ましくは10%以上、さらに望ましくは20%以上の活性量又はタンパク質量の増大が認められることを意味する。特に、比活性等の変化が認められなければ活性量とタンパク量の比は、親アルカリプロテアーゼと変異アルカリプロテアーゼでは一定の値をとると考えられることから、活性量又はタンパク質量のどちらか一方を測定しても構わない。
【0036】
従って、本発明のアルカリプロテアーゼは、各種洗剤組成物配合用酵素として有用である。
洗浄剤組成物中への本発明アルカリプロテアーゼの配合量は、当該プロテアーゼが活性を示す量であれば特に制限されないが、洗浄剤組成物1kg当たり0.1〜5000PUが配合できるが、経済性等を考慮し、500PU以下が好ましい。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物には、本発明のアルカリプロテアーゼ以外に様々な酵素を併用することもできる。例えば、加水分解酵素、酸化酵素、還元酵素、トランスフェラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ、シンテターゼ等である。このうち、本発明以外のプロテアーゼ、セルラーゼ、ケラチナーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、プルラナーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、グルコシダーゼ、グルカナーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ等が好ましく、特にプロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、リパーゼが好ましい。プロテアーゼとしては市販のアルカラーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、エスペラーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、サビナーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、エバラーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、カンナーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、プロペラーゼ(登録商標;ジェネンコア社)、プラフェクト(登録商標;ジェネンコア社)、KAP(花王)等が挙げられる。セルラーゼとしてはセルザイム(登録商標;ノボザイムズ社)、ケアザイム(登録商標;ノボザイムズ社)、またKAC、特開平10−313859号公報記載のバチルス・エスピーKSM−S237株が生産するアルカリセルラーゼ、特願2002−116553号記載の変異アルカリセルラーゼ(以上、花王)等が挙げられる。アミラーゼとしてはターマミル(登録商標;ノボザイムズ社)、デュラミル(登録商標;ノボザイムズ社)、プラスター(登録商標;ジェネンコア社)、KAM(花王)等が挙げられる。リパーゼとしてはリポラーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、リポラーゼウルトラ(登録商標;ノボザイムズ社)等が挙げられる。
【0038】
洗浄剤組成物中で本発明のアルカリプロテアーゼ以外のプロテアーゼを併用する場合の配合量は、洗浄剤組成物1kg当たり0.1〜500PUが好ましい。また、セルラーゼを併用する場合は、特開平10−313859号公報の段落〔0020〕に記載の酵素活性測定方法より決定される単位(U)に基づき、洗浄剤組成物1kg当たり300〜3000000KUが好ましく、アミラーゼを併用する場合は、特開平11−43690号公報の段落〔0040〕記載のアミラーゼ活性測定方法より決定される単位(IU)に基づき、洗浄剤組成物1kg当たり50〜500000IUが好ましい。さらにリパーゼを併用する場合は、特表平8−500013号公報の実施例1記載のリパーゼ活性測定方法より決定される単位(LU)づき、洗浄剤組成物1kg当たり10000〜1000000LUが好ましい。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物には公知の洗浄剤成分を配合することができ、当該公知の洗浄剤成分としては、例えば次のものが挙げられる。
(1)界面活性剤
界面活性剤は洗浄剤組成物中0.5〜60質量%配合され、特に粉末状洗浄剤組成物については10〜45質量%、液体洗浄剤組成物については20〜50質量%配合することが好ましい。また本発明洗浄剤組成物が漂白剤、または自動食器洗浄機用洗剤である場合、界面活性剤は一般に1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%配合される。
本発明洗浄剤組成物に用いられる界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤の1種または組み合わせを挙げることができるが、好ましくは陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤である。
陰イオン性界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルコールの硫酸エステル塩、炭素数8〜20のアルコールのアルコキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩又は脂肪酸塩が好ましい。本発明では特に、アルキル鎖の炭素数が10〜14の、より好ましくは12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、対イオンとしては、アルカリ金属塩やアミン類が好ましく、特にナトリウム及び/又はカリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンが好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)エーテル、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーが好ましい。特に、非イオン性界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを4〜20モル付加した〔HLB値(グリフィン法で算出)が10.5〜15.0、好ましくは11.0〜14.5であるような〕ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
【0040】
(2)二価金属イオン補捉剤
二価金属イオン補捉剤は0.01〜50質量%、好ましくは5〜40質量%配合される。本発明洗浄剤組成物に用いられる二価金属イオン補捉剤としては、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、オルソリン酸塩等の縮合リン酸塩、ゼオライト等のアルミノケイ酸塩、合成層状結晶性ケイ酸塩、ニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、クエン酸塩、イソクエン酸塩、ポリアセタールカルボン酸塩等が挙げられる。このうち結晶性アルミノケイ酸塩(合成ゼオライト)が特に好ましく、A型、X型、P型ゼオライトのうち、A型が特に好ましい。合成ゼオライトは、平均一次粒径0.1〜10μm、特に0.1〜5μmのものが好適に使用される。
【0041】
(3)アルカリ剤
アルカリ剤は0.01〜80質量%、好ましくは1〜40質量%配合される。粉末洗剤の場合、デンス灰や軽灰と総称される炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、並びにJIS1号、2号、3号等の非晶質のアルカリ金属珪酸塩が挙げられる。これら無機性のアルカリ剤は洗剤乾燥時に、粒子の骨格形成において効果的であり、比較的硬く、流動性に優れた洗剤を得ることができる。これら以外のアルカリとしてはセスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、またトリポリリン酸塩等のリン酸塩もアルカリ剤としての作用を有する。また、液体洗剤に使用されるアルカリ剤としては、上記アルカリ剤の他に水酸化ナトリウム、並びにモノ、ジ又はトリエタノールアミンを使用することができ、活性剤の対イオンとしても使用できる
【0042】
(4)再汚染防止剤
再汚染防止剤は0.001〜10質量%、好ましくは1〜5質量%配合される。本発明洗浄剤組成物に用いられる再汚染防止剤としてはポリエチレングリコール、カルボン酸系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このうちカルボン酸系ポリマーは再汚染防止能の他、金属イオンを捕捉する機能、固体粒子汚れを衣料から洗濯浴中へ分散させる作用がある。カルボン酸系ポリマーはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のホモポリマーないしコポリマーであり、コポリマーとしては上記モノマーとマレイン酸の共重合したものが好適であり、分子量が数千〜10万のものが好ましい。上記カルボン酸系ポリマー以外に、ポリグリシジル酸塩等のポリマー、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、並びにポリアスパラギン酸等のアミノカルボン酸系のポリマーも金属イオン捕捉剤、分散剤及び再汚染防止能を有するので好ましい。
【0043】
(5)漂白剤
例えば過酸化水素、過炭酸塩等の漂白剤は1〜10質量%配合するのが好ましい。漂白剤を使用するときは、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)や特開平6−316700号公報記載等の漂白活性化剤(アクチベーター)を0.01〜10質量%配合することができる。
【0044】
(6)蛍光剤
本発明洗浄剤組成物に用いられる蛍光剤としてはビフェニル型蛍光剤(例えばチノパールCBS−X等)やスチルベン型蛍光剤(例えばDM型蛍光染料等)が挙げられる。蛍光剤は0.001〜2質量%配合するのが好ましい。
【0045】
(7)その他の成分
本発明品洗浄剤組成物には、衣料用洗剤の分野で公知のビルダー、柔軟化剤、還元剤(亜硫酸塩等)、抑泡剤(シリコーン等)、香料、その他の添加剤を含有させることができる。
【0046】
本発明の洗浄剤組成物は、上記方法で得られた本発明アルカリプロテアーゼ及び上記公知の洗浄成分を組み合わせて常法に従い製造することができる。洗剤の形態は用途に応じて選択することができ、例えば液体、粉体、顆粒、ペースト、固形等にすることができる。
かくして得られる本洗浄剤組成物は、衣料洗浄剤、漂白剤、硬質表面洗浄用洗浄剤、排水管洗浄剤、義歯洗浄剤、医療器具用の殺菌洗浄剤等として使用することができる。
【0047】
【実施例】
[プロテアーゼ活性測定法−カゼイン法]
カゼイン1%(w/v)を含む50mMホウ酸緩衝液(pH10.5)1.0mLを30℃で5分間保温した後、0.1mLの酵素溶液を加え、15分間反応を行う。反応停止液(0.11Mトリクロロ酢酸−0.22M酢酸ナトリウム−0.33M酢酸)を2.0mL加え、室温で30分間放置した後、濾過を行い、濾液中の酸可溶性タンパク質をLowryらの方法の変法により定量した。すなわち、0.5mLの濾液にアルカリ性銅溶液(1%酒石酸ナトリウム・カリウム:1%硫酸銅・5水和物:2%炭酸ナトリウム・0.1N水酸化ナトリウム=1:1:100)を2.5mL加え、室温で10分間放置後、フェノール溶液[フェノール試薬(関東化学)を蒸留水にて2倍希釈したもの]を0.25mL添加し、30℃で30分間保温した。その後、660nmにおける吸光度を測定した。プロテアーゼ1単位(1PU)は、上記反応条件で1分間に1mmolのチロシンに相当する酸可溶性タンパク質分解物を遊離させるのに必要な酵素量とした。
【0048】
実施例1
バチルス エスピーKSM−KP43株由来のアルカリプロテアーゼ構造遺伝子の終止コドンまでを含む約2.0kbの範囲に対しランダム変異を与えた。ランダム変異導入法としてはPCR中の塩基の取り込みエラーを利用するために、DNAポリメラーゼとしてエラー修復能が無いTaqポリメラーゼ:Takara Taq(Takara)を用いた。まず、上記約2.0kbのDNAを増幅できるプライマー1(5’−AAATGGATCCGTGAGGAGGGAACCGAATGAGAAAGAAGAAAAAGGTG−3’、配列番号2)及びプライマー2(5’−ATATTCTAGACGATTACCATATTAATTCCTCTACCC−3’、配列番号3)を用いPCRを行った。プライマー1はセンス鎖の5’末端側にBamHIリンカーを、プライマー2はアンチセンス鎖の5’末端側にXbaIリンカーを付与した。反応系として、鋳型DNA10ng、各プライマーを10pmol、各dNTPを20nmol、Takara Taq添付反応バッファー10μL、及びTaqポリメラーゼ2.5Uを含有する100μLの系とした。PCR条件は94℃で2分間鋳型DNAを変性させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で2分間を1サイクルとし、これを30サイクル行った。PCR産物をPCR product purification kit(ロッシュ)にて精製し、100μLの滅菌水で溶出した。次に溶出液1μLを鋳型DNAとして、2回目のPCRを行い、得られたPCR産物を精製し、以後の実験に供した。
【0049】
増幅した約2.0kbのDNA断片の末端制限酵素リンカーを、BamHI、XbaI(ロッシュ)により切断した。増幅DNAを組み込むべき発現ベクターとしてはバチルス属細菌内で複製可能であるpHA64(特願平8−323050:プロモーター64の下流にBamHI、XbaIサイトを有する)を用いた。BamHI、XbaI処理した増幅DNA断片及び同じくBamHI、XbaI処理したpHA64を混合した後、Ligation High(東洋紡)により、リガーゼ反応を行った。エタノール沈殿により、リガーゼ反応液からDNAを回収し,以後の形質転換用のDNAとした。
【0050】
形質転換すべき宿主としてバチルスエスピーKSM−KP43(以後KP−43株と略す)を用いた。形質転換法はエレクトロポレーション法により行い、SSH−10(島津製作所)及びジーンパルサーキュベット(バイオラッド)を用い形質転換を行った。
【0051】
KP43株の形質転換体をスキムミルク含有アルカリ寒天培地[スキムミルク(ディフコ)1%(w/v)、バクトトリプトン(ディフコ)1%、酵母エキス(ディフコ)0.5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%、無水炭酸ナトリウム0.05%、テトラサイクリン15ppm]に生育させ、ハローの形成状況により、プロテアーゼ遺伝子導入の有無を判定した。
プロテアーゼ遺伝子がpHA64に挿入されたプラスミドを保持している形質転換されたKP43株を選抜し、以後の培養に供した。
【0052】
各形質転換体について単集落分離、ハロー形成の確認を行い、試験管中の5mL種母培地[ポリペプトンS(日本製薬)6.0%(w/v)、酵母エキス0.1%、マルトース1.0%、硫酸マグネシウム7水和物0.02%、リン酸2水素カリウム0.1%、無水炭酸ナトリウム0.3%、テトラサイクリン30ppm]に植菌し、30℃、320rpmで一晩前培養した。この種母培養液を500mL容坂口フラスコ中の20mL主培地[ポリペプトンS8%(w/v)、酵母エキス0.3%、マルトース10%、硫酸マグネシウム7水和物0.04%、リン酸2水素カリウム0.2%、無水炭酸ナトリウム1.5%、テトラサイクリン30ppm]に1%植菌(v/v)し、30℃、121rpmで3日間培養した。得られた培養液を遠心分離し、培養上清中のプロテアーゼ活性を測定した。プロテアーゼ活性はカゼイン法により、タンパク質量はプロテインアッセイキット(和光純薬)を用いて測定した。野生型酵素遺伝子を有する形質転換体を同条件で培養した場合の培養上清の値と比較することにより、プロテアーゼ活性の向上が認められた変異プロテアーゼ遺伝子を選抜した。尚、培養上清中のタンパク質量はプロテアーゼ活性とほぼ比例して増加していることから、得られた変異体はタンパク質の分泌量が向上するのに必要な変異が導入されたことが、示唆された。
【0053】
選抜された形質転換体からHigh pure plasmid isolation kit(ロッシュ)を用いプラスミドを回収し、塩基配列を決定した。プラスミドDNA300ngを鋳型として、プライマーとBig Dye DNA Sequencing kit(アプライドバイオシステム)を用いて20μLの反応系でPCRを行い、DNA Sequencer 377型(アプライドバイオシステム)を用いた解析に供した。
【0054】
その結果、プロテアーゼ活性が向上した変異体は65位のスレオニンがプロリン、101位のグリシンがアスパラギン、273位のバリンがイソロイシン、320位のチロシンがフェニルアラニン、359位のスレオニンがセリン、387位のセリンがアラニンにそれぞれ置換されており、これにより約5%のプロテアーゼ活性の向上が認められた(表2)。
【0055】
更に上記変異部位を組合わせることにより、プロテアーゼ活性の向上を検討した。部位特異的変異の手段としては、Site−Directed Mutagenesis System Mutan−Super Express Kmキットを用い、以下のプライマーにより、変異部位の組み合わせを検討した。プライマー3:65位のスレオニン(T)をプロリン(P)に置換する(5’−AATGCCAATGATCCGAATGGTCATG−3’、配列番号4)
プライマー4:101位のグリシン(G)をアスパラギン(N)に置換する(5’−TCTATCATGGATAGCAATGGGGGACTTGGAGG−3’、配列番号5)プライマー5:273位のバリン(V)をイソロイシン(I)に置換する(5’−CTTCGTGAGCATTTTATCAAAAACAGAGGCATC−3’、配列番号6)プライマー6:320位のチロシン(Y)をフェニルアラニン(F)に置換する(5’−AACGTTGCCTTTGTGAACGAGTCC−3’、配列番号7)
プライマー7:359位のスレオニン(T)をセリン(S)に置換する(5’−GCGAGCACATCTGCTTCCGTAACG−3’、配列番号8)
プライマー8:387位のセリン(S)をアラニン(A)に置換する(5’−TGACTTTACTGCGCCATACAATGATAAC−3’、配列番号9)
【0056】
変異導入用鋳型プラスミドの作製は、カナマイシン選択用アンバー変異マーカーを有するpKF18kのマルチクローニングサイト中のBamHI、XbaIサイトに、前記スクリーニングで得られた変異プロテアーゼ遺伝子を導入することにより構築した。
【0057】
部位特異的変異導入用PCRにはTakara LA Taq(Takara)を用いた。5’末端をリン酸化したセレクションプライマー(Mutan−Super Express Km キット添付)及びプライマー3〜8の各変異導入プライマーを各々5pmol及び鋳型プラスミド10ngを用い変異導入PCRを行った。反応条件は94℃で2分間鋳型DNAを変性させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で4分間を1サイクルとし、これを30サイクル行った。得られたPCR産物を用い大腸菌MV1184株を形質転換することにより、変異プラスミドを得た。得られた変異プラスミドは先述の塩基配列決定法に従い変異部位を確認した。
【0058】
部位特異的変異により変異導入されたプロテアーゼ遺伝子をpHA64に導入し、KP−43株を形質転換し、先述の条件で培養することで、野生型酵素に比べプロテアーゼ活性が更に増大する変異部位の組み合せを検討した。
【0059】
その結果、T65P+S387A、T359S+S387A、T65P+V273I+Y320F、T65P+V273I+T359S、T65P+V273I+S387A、T65P+Y320F+S387A、T65P+G101N+S387A、T65P+V273I+T359S+S387Aの組み合わせにおいて10〜30%のプロテアーゼ活性の向上が認められた(変異部位の組み合わせは+で示した。表1)。
【0060】
更に以下のプライマーを使用し、65位、101位、273位、320位、359位、387位のアミノ酸を任意のアミノ酸に置換し、それぞれの位置のアミノ酸が上記置換アミノ酸とは別のアミノ酸に置換が可能か否かを検討し、更にその組み合わせを検討した。
プライマー9:65位のスレオニン(T)を任意のアミノ酸(X)に置換する(5’−CGAATAATGCCAATGATNNNAATGGTCATGGTACGC−3’、配列番号10)
プライマー10:101位のグリシン(G)を任意のアミノ酸(X)に置換する(5’−CTATCATGGATAGCNNNGGGGGACTTGGAGG−3’、配列番号11)
プライマー11:273位のバリン(V)を任意のアミノ酸(X)に置換する(5’−CGTGAGCATTTTNNNAAAAACAGAGGCATCACACC−3’、配列番号12)
プライマー12:320位のチロシン(Y)を任意のアミノ酸(X)に置換する(5’−CCCTGAACGTTGCCNNNGTGAACGAGTCC−3’、配列番号13)
プライマー13:359位のスレオニン(T)を任意のアミノ酸(X)に置換する(5’−CCCCTGCGAGCACANNNGCTTCCGTAACGC−3’、配列番号14)
プライマー14:387位のセリン(S)を任意のアミノ酸(X)に置換する(5’−GGAAATGACTTTACTNNNCCATACAATGATAACTGG−3’、配列番号15)
【0061】
その結果、273位のバリンはイソロイシン以外にグリシン、スレオニンへの置換、320位のチロシンはフェニルアラニン以外にバリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、グリシンへの置換、359位のスレオニンはセリン以外にロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミンへの置換、387位のセリンはアラニン以外にリジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジンへの置換により、野生型と比べ酵素の分泌が向上していることが認められ、それぞれの位置で上記アミノ酸置換が可能であることが確認された。
【0062】
その組み合わせの一部の結果を示すと、T65P+Y320F+S387E、T65P+Y320G+S387A、T65P+V273I+T359S+S387E、T65P+V273I+T359L+S387A、T65P+V273I+T359I+S387A、T65P+V273G+T359S+S387A、T65P+V273I+T359S+S387K、T65P+V273I+T359V+S387A、T65P+V273I+T359Q+S387A、T65P+V273I+Y320T+S387A、T65P+V273I+Y320F+S387E、T65P+V273I+Y320F+S387K、T65P+V273T+Y320F+S387A、T65P+V273I+Y320L+S387H、T65P+V273I+Y320V+S387Q、T65P+V273I+Y320I+S387Qの組み合わせにおいて10〜30%のプロテアーゼ活性の向上が認められた(表2)。
【0063】
【表2】
【0064】
上記変異部位の組み合わせにより得られる、アルカリプロテアーゼは形質転換体での酵素の分泌を向上させる以外は親アルカリプロテアーゼの特性、すなわち、酸化剤耐性を有し、高濃度の脂肪酸によるカゼイン分解活性の阻害を受けず、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であり、アルカリ性域で活性を有する性質を保持していることを確認した。
実施例2
(1)洗剤の調製
撹拌翼を有した1m3の混合槽に水465kgを加え、水温が55℃に達した後に40%(w/v)ポリアクリル酸ナトリウム水溶液135kgを添加した。15分間撹拌した後に、炭酸ナトリウム120kg、硫酸ナトリウム60kg、亜硫酸ナトリウム9kg、蛍光染料3kgを添加した。更に15分間撹拌した後に、ゼオライト300kgを添加し、30分間撹拌して均質なスラリーを得た(スラリー中の水分は50質量%)。このスラリーを噴霧乾燥塔の塔頂付近に設置した圧力噴霧ノズルから噴霧することでベース顆粒を得た(噴霧乾燥塔に供給する高温ガスは塔下部より温度が225℃で供給し、塔頂より105℃で排出)。次にレディゲミキサー(松阪技研(株)製、容量20L、ジャケット付)に上記ベース顆粒100質量部を投入し、主軸(150rpm)の攪拌下、非イオン性界面活性剤20質量部、直鎖アルキル(炭素数10〜13)ベンゼンスルホン酸ナトリウム22質量部、脂肪酸(炭素数14〜18)ナトリウム4質量部、ポリエチレングリコール2質量部、水4質量部の混合液を3分間で投入し、その後5分間攪拌を行った。更にこのミキサーに結晶性ケイ酸ナトリウム20質量部とゼオライト10質量部を投入し、表面被覆を行い洗剤ベースを得た。
洗剤ベース99質量%に本発明プロテアーゼ粒子0.5質量%、及び香料0.5質量%を混合して最終粒状洗剤Aを得た。
【0065】
(2)使用した原料
非イオン性界面活性剤:エチレンオキサイド平均付加モル数が8.5のエマルゲン108KM(花王(株)製)
ポリアクリル酸ナトリウム水溶液:平均分子量10000(特公平2−24283号公報の実施例に記載の方法に従って製造した)
炭酸ナトリウム:デンス灰(セントラル硝子(株)製)
ゼオライト:平均粒径が3.5μmのゼオライト4A型(東ソー(株)製)
ポリエチレングリコール:K−PEG6000(平均分子量8500,花王(株)製)
結晶性ケイ酸ナトリウム:粉末SKS−6(ヘキストトクヤマ(株)製)
本発明プロテアーゼ粒子:表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品から特開昭62−257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき調製した造粒物(6PU/g)
蛍光染料:チノパールCBS−X(チバガイギー社製)
【0066】
実施例3
(1)洗剤の調製
まず固形分50質量%のスラリーを熱風温度250℃で噴霧乾燥し、ポリアクリル酸ナトリウム(質量平均分子量10000)7質量%、炭酸ナトリウム26質量%、硫酸ナトリウム20質量%、塩化ナトリウム6質量%、蛍光染料0.5質量%、ゼオライト40質量%、水0.5質量%のベース顆粒を得た。
次にレディゲミキサー(松阪技研(株)製、容量20L、ジャケット付)に上記ベース顆粒100質量部を投入し、主軸(150rpm)の攪拌下、非イオン性界面活性剤20質量部、直鎖アルキル(炭素数10〜13)ベンゼンスルホン酸ナトリウム22質量部、脂肪酸(炭素数14〜18)ナトリウム4質量部、ポリエチレングリコール2質量部、水4質量部の混合液を3分間で投入し、その後5分間攪拌を行った。更にこのミキサーに結晶性ケイ酸ナトリウム20質量部とゼオライト10質量部を投入し、表面被覆を行い洗剤ベースを得た。
洗剤ベース95質量%に漂白剤粒子2.8質量%、漂白活性剤粒子1.2質量%、本発明プロテアーゼ粒子0.5質量%、及び香料0.5質量%を混合して最終粒状洗剤Bを得た。
【0067】
(2)使用した原料
非イオン性界面活性剤:エチレンオキサイド平均付加モル数が8.5のエマルゲン108KM(花王(株)製)
ポリアクリル酸ナトリウム水溶液:平均分子量10000(特公平2−24283号公報の実施例に記載の方法に従って製造した)
炭酸ナトリウム:デンス灰(セントラル硝子(株)製)
ゼオライト:平均粒径が3.5μmのゼオライト4A型(東ソー(株)製)
ポリエチレングリコール:K−PEG6000(平均分子量8500,花王(株)製)
結晶性ケイ酸ナトリウム:SKS−6(ヘキストトクヤマ(株)製)
本発明プロテアーゼ粒子:表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品から特開昭62−257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき調製した造粒物(6PU/g)
蛍光染料:チノパールCBS−X(チバガイギー社製)
漂白剤粒子:炭酸ナトリウム・過酸化水素付加物(特開2000−256699号公報の段落〔0019〕記載の漂白剤粒子と同様にして得た)
漂白活性剤粒子:ラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムの造粒物(特開2000−256699号公報の段落〔0018〕記載の漂白活性剤粒子と同様にして得た)
【0068】
実施例4
表3に示す液体洗浄剤組成物(洗剤C、及び洗剤D)を調製した。
【0069】
【表3】
【0070】
1)炭素数12〜14の2級アルコール由来のアルキル基を有するポリオキシエチレン(平均7モル付加)アルキルエーテル(ソフタノール70、日本触媒化学工業製)
2)炭素数12〜14の2級アルコール由来のアルキル基を有するポリオキシエチレン(平均12モル付加)アルキルエーテル(ソフタノール120、日本触媒化学工業製)
3)炭素数10〜14の直鎖第1級アルコールにEOを平均5モル、POを平均2モル、EOを平均3モルの順にブロック付加させたもの
4)ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOを平均8モル付加させたもの5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOを平均11.5モル付加させたもの
6)ナローレンジポリオキシエチレンアルキル(sec−C12/C13)エーテル
7)炭素数10〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
8)アミド/エーテル変性シリコーンポリマー(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製、BY16−906)
9)特開平10−60476号公報の11頁6行〜13行記載の方法で合成したフェノキシポリエチレングリコール、アクリル酸、マレイン酸共重合体(質量平均分子量10000、固形分51.2%)
10)ペンテン/マレイン酸(50/50モル比)コポリマーのナトリウム塩(質量平均分子量7000)
11)表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品(15PU/g)
【0071】
実施例5
下記の表4に示す組成のうち、過炭酸ナトリウムと炭酸ナトリウム(デンス灰)を攪拌混合しながら、ポリアクリル酸ナトリウム40%水溶液、及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、又は非イオン性界面活性剤、又はラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムを添加した。次いで特開昭62―257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき調製した本発明プロテアーゼ粒子を添加し、全体的に均一になる程度攪拌することにより、漂白剤を調製した。
【0072】
【表4】
【0073】
1)粒経500〜700μm
2)炭素数12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
3)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数12〜14、EO平均付加モル数12)
4)平均分子量8,000
5)表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品から特開昭62−257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき調製した造粒物(6PU/g)
【0074】
実施例6
下記の表5に示す全自動食器洗浄機用洗浄剤組成物(洗剤G、及びH)を調製した。
【0075】
【表5】
【0076】
1)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(平均分子量2,000)
2)炭素数12〜14のsec−アルコールのエチレンオキサイド7モル、及びプロピレンオキサイド8.5モル付加物
3)JIS 2号珪酸ナトリウム
4)アクリル酸−マレイン酸共重合体
5)デュラミル60T(TM)(ノボザイムズ社製)
6)表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品から特開昭62−257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき調製した造粒物(6PU/g)
【0077】
実施例7
下記の表6に示す各成分を用い、硬質表面用洗浄剤組成物(洗剤J)を得た。
【0078】
【表6】
【0079】
1)ポリオキシエチレン(EOP=4)アルキル(C12)エーテル硫酸エステルナトリウム
2)ポリオキシエチレン(EOP=8)アルキル(C12)エーテル
3)アルキル(C12)ポリグルコシド(縮合度1.3)
4)モノ長鎖第3級アルキル(C12)ジメチルアミンオキシド
5)アルキル(C12)ヒドロキシジメチルスルホベタイン
6)分子量10000
7)表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品(15PU/mL)
【0080】
実施例8
前記洗剤A(実施例2参照)を用いて下記表7記載の粒状洗剤を得た。
【0081】
【表7】
【0082】
1)表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品から特開昭62−257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき調製した造粒物(6PU/g)
2)特開平5−25492号公報に記載のプロテアーゼK−16を特開昭62−257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき、5PU/gとしたもの
3)KAC−500(花王(株)製)
4)リポラーゼ100T(TM)(ノボザイムズ社製)
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、高濃度の脂肪酸存在下でも活性を有し、蛋白質だけでなく皮脂等の混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性を有すると共に、分泌能の高いアルカリプロテアーゼを提供できる。
【0084】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアルカリプロテアーゼのアミノ酸配列を整列させた図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は洗浄剤配合酵素として有用なアルカリプロテアーゼ及びそれをコードする遺伝子に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
産業分野でのプロテアーゼ利用の歴史は古く、衣料用洗剤をはじめとする洗浄剤から繊維の改質剤、皮革処理剤、化粧料、浴剤、食品改質剤或いは医薬品としての利用まで非常に多岐にわたっている。中でも最も工業的に大量に生産されているものが洗剤用プロテアーゼであり、例えば、アルカラーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、サビナーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、マクサカル(登録商標;ジェネンコア社)、ブラップ(登録商標;ヘンケル社)、及びプロテアーゼK(花王)等が知られている。
【0003】
洗剤中にプロテアーゼを配合する目的は、衣料に付着した蛋白質を主成分とする汚れを分解して低分子化し、界面活性剤による可溶化を促進することであるが、実際の汚れは蛋白質だけでなく皮脂由来の脂質や固体粒子等、有機物と無機物が入り混じった複数の成分を内包する複合汚れであり、このような複合汚れに対する洗浄性の高い洗浄剤が望まれていた。
【0004】
かかる観点から本発明者らは、高濃度の脂肪酸存在下でも十分なカゼイン分解活性を保持し、蛋白質だけでなく皮脂等の混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性を有する分子量約43,000のアルカリプロテアーゼを数種見出し、先に特許出願した(特許文献1参照)。斯かるアルカリプロテアーゼ群は、その分子量、一次構造、酵素学的性質、特に非常に強い酸化剤耐性を有する点で、従来から知られているバチルス属細菌由来のセリンプロテアーゼであるズブチリシンとは異なり、新しいズブチリシンサブファミリーに分類することが提唱されている(非特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このようなプロテアーゼであっても、工業的レベルでの生産を考えた場合、その生産量は十分な量とは言えず、培地中に効率良く分泌されるアルカリプロテアーゼが求められていた。
【0006】
一方、目的のタンパク質(酵素)を多量に分泌させる試みとしては、宿主菌(生産菌)の変異育種による改良、酵素をコードする遺伝子あるいはその制御を行う遺伝子を改変して分泌量を高める方法が知られているが、ズブチリシンについては酵素の分泌量を高めるような改変の例は見当たらない。
【0007】
従って、本発明は複合汚れに対しても優れた洗浄性を有すると共に、分泌能の高いアルカリプロテアーゼを提供することを目的とする。
【0008】
【特許文献1】
国際公開第99/18218号パンフレット
【非特許文献1】
Saekiら, Biochem.Biophys.Res.Commun.,279,(2000),313−319
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記アルカリプロテアーゼの特性を保持しつつ、効率良く培地中に分泌できる新たな酵素の探索を行ったところ、ある種のアルカリプロテアーゼにおいて、当該アミノ酸配列中の特定位置に特定のアミノ酸残基が必要であることを見出した。
【0010】
すなわち、配列番号1の(a)65位、(b)101位、(c)273位、(d)320位、(e)359位、(f)387位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基が下記アミノ酸残基;
(a)位置:プロリン、
(b)位置:アスパラギン、
(c)位置:イソロイシン、グリシン、スレオニン、
(d)位置:フェニルアラニン、バリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、
(e)位置:セリン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミン、
(f)位置:アラニン、リジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、
から選ばれたものであるアルカリプロテアーゼ、及びそれをコードする遺伝子を提供するものである。
【0011】
また本発明は、該遺伝子を含有するベクター、該ベクターを含有する形質転換体を提供するものである。
【0012】
また本発明は、該アルカリプロテアーゼを含有する洗浄剤組成物を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のアルカリプロテアーゼは、上記のように、配列番号1の(a)65位、(b)101位、(c)273位、(d)320位、(e)359位、(f)387位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基が下記アミノ酸残基;
(a)位置:プロリン、(b)位置:アスパラギン、(c)位置:イソロイシン、グリシン、スレオニン、(d)位置:フェニルアラニン、バリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、(e)位置:セリン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミン、(f)位置:アラニン、リジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、から選ばれたものである。
【0014】
すなわち、本発明のアルカリプロテアーゼは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼにおける前記(a)〜(f)から選ばれる位置のアミノ酸残基又は他種アルカリプロテアーゼのアミノ酸配列の当該位置に相当する位置のアミノ酸残基が特定のアミノ酸残基であるプロテアーゼを意味し、これらは野生型、野生型の変異体或いは人為的に変異を施した変異体であってもよい。
【0015】
ここで、「他種アルカリプロテアーゼ」としては、野生型又は野生型の変異体であってもよく、酸化剤耐性を有し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)法による分子量が43,000±2,000であることが好ましく、配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有するものが挙げられる。特に好ましくは、配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有し、pH8以上のアルカリ性領域で作用する、酸化剤耐性を有する、50℃、pH10で10分間処理したとき80%以上の残存活性を示す、ジイソプロピルフルオルリン酸(DFP)及びフェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF)で阻害され、SDS−PAGEによる分子量が43,000±2,000である酵素が挙げられる。ここで、酸化剤耐性を有するとは、当該アルカリプロテアーゼを50mM過酸化水素、5mM塩化カルシウムを含む20mMブリットンロビンソン緩衝液(pH10)中で、30℃、20分間の放置後の残存活性が少なくとも50%以上を保持していることをいう。
【0016】
ここで、「配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼ」としては、KP43〔バチルス エスピーKSM−KP43(FERM BP−6532)由来、WO99/18218〕が挙げられ、「配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼ」としては、例えばプロテアーゼKP9860[バチルスエスピーKSM−KP9860(FERMBP−6534)由来、WO99/18218、GenBank Accession No.AB046403]、プロテアーゼE−1[バチルスNo.D−6(FERMP−1592)由来、特開昭49−71191、GenBank Accession No.AB046402]、プロテアーゼYa[バチルスエスピーY(FERMBP−1029)由来、特開昭61−280268、GenBank Accession No.AB046404]、プロテアーゼSD521[バチルスSD521(FERMP−11162)由来、特開平3−191781、GenBank Accession No.AB046405]、プロテアーゼA−1[NCIB12289由来、WO88/01293、GenBank Accession No.AB046406]、プロテアーゼA−2[NCIB12513由来、WO98/56927]や、配列番号1のアミノ酸配列の46位をロイシンに置換した変異体、57位をアラニンに置換した変異体、103位をアルギニンに置換した変異体、107位をリジンに置換した変異体、124位をそれぞれリジン及びアラニンに置換した変異体、136位をアラニンに置換した変異体、193位をアラニンに置換した変異体、195位をそれぞれアスパラギン、グルタミン酸、アルギニン、プロリン、スレオニン、バリン、ヒスチジン、セリン、リジン、グルタミン、メチオニン、システイン、アラニン、アスパラギン酸、トリプトファン、グリシン及びフェニルアラニンに置換した変異体、247位をそれぞれスレオニン及びアルギニンに置換した変異体、257位をバリンに置換した変異体、342位をアラニンに置換した変異体、66位をアスパラギン酸に置換し且つ264位をセリンに置換した二重変異体(特願平12−355166号)、配列番号1のアミノ酸配列の84位をアルギニンに置換した変異体、104位をプロリンに置換した変異体、256位をそれぞれアラニン及びセリンに置換した変異体、369位をアスパラギンに置換した変異体(特願平13−114048号)、配列番号1のアミノ酸配列の251位をそれぞれアスパラギン、スレオニン、イソロイシン、バリン、ロイシン及びグルタミンに置換した変異体、256位をそれぞれセリン、グルタミン、アスパラギン、バリン及びアラニンに置換した変異体(特願平13−329472号)又はこれらとアミノ酸配列において80%以上、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の相同性を有するアルカリプロテアーゼが挙げられる。
なお、アミノ酸配列の相同性は、リップマン−パーソン(Lipman−Pearson)法(Science, 227,1435,1985)によって計算される。
【0017】
また、「相当する位置のアミノ酸残基」を特定する方法としては、例えばリップマン−パーソン法等の公知のアルゴリズムを用いてアミノ酸配列を比較し、各アルカリプロテアーゼのアミノ酸配列中に存在する保存アミノ酸残基に最大の相同性を与えることにより行うことができる。プロテアーゼのアミノ酸配列をこのような方法で整列させることにより、アミノ酸配列中にある挿入、欠失にかかわらず、相同アミノ酸残基の各プロテアーゼにおける配列中の位置を決めることが可能である。相同位置は、三次元構造中で同位置に存在すると考えられ、対象のプロテアーゼの特異的機能に関して類似した効果を有することが推定できる。
【0018】
すなわち、上記方法でアミノ酸配列を整列させた図1より、(a)配列番号1の65位のアミノ酸残基はスレオニン残基であるが、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼKP9860においては65位のスレオニン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基はプロリン残基であるのが好ましい。
【0019】
(b)配列番号1の101位のアミノ酸残基はグリシン残基であるが、ここで、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼE−1においては100位のセリン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基はアスパラギン残基であるのが好ましい。
【0020】
(c)配列番号1の273位のアミノ酸残基はバリン残基であるが、ここで、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼA−2においては272位のバリン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基は、イソロイシン、グリシン、スレオニン残基であるのが好ましく、イソロイシン残基であるのが特に好ましい。
【0021】
(d)配列番号1の320位のアミノ酸残基はチロシン残基であるが、ここで、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼSD−521においては319位のチロシン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基は、フェニルアラニン、バリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン残基であるのが好ましく、フェニルアラニン残基であるのが特に好ましい。
【0022】
(e)配列番号1の359位のアミノ酸残基はスレオニン残基であるが、ここで、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼYaにおいては358位のスレオニン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基は、セリン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミン残基であるのが好ましく、セリン残基であるのが特に好ましい。
【0023】
(f)配列番号1の387位のアミノ酸残基はセリン残基であるが、ここで、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼSD−521においては386位のチロシン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基は、アラニン、リジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン残基であるのが好ましく、アラニン残基であるのが特に好ましい。
【0024】
プロテアーゼKP43のアミノ酸配列(配列番号1)の(a)65位、(b)101位、(c)273位、(d)320位、(e)359位、(f)387位に相当する位置及びアミノ酸残基の具体例を、上記「他種アルカリプロテアーゼ」のうちの好適に用いられるもので示す(表1)。
【0025】
【表1】
【0026】
また、本発明アルカリプロテアーゼにおけるアミノ酸残基の(a)〜(f)の選択は、酵素活性及び酵素特性が変化しない限り2個所以上が同時になされていていもよい。2箇所以上が同時になされた場合の好ましい具体例を以下に示す。尚、アミノ酸は3文字表記とし、「+」は1箇所の置換に対し付加された置換を表し、「/」については表記したいずれのアミノ酸を使用しても良いことを示している。
【0027】
二重置換体の例としては、Thr65Pro+Gly101Asn、Thr65Pro+Val273(Ile/Gly/Thr)、Gly101Asn+Thr359(Ser/Leu/Val/Ile/Gln)、Val273(Ile/Gly/Thr)+Tyr320(Phe/Val/Thr/Ieu/Ile/Gly)等が挙げられるが、Thr65Pro+Ser387Ala、Thr359Ser+Ser387Alaが特に好ましい。
【0028】
三重変異体の例としては、Thr65Pro+Gly101Asn+Val273(Ile/Gly/Thr)、Tyr320(Phe/Val/Thr/Ieu/Ile/Gly)+Val273(Ile/Gly/Thr)+Ser387(Ala/Lys/Gln/Glu/Arg/His)、Thr65Pro+Tyr320(Phe/Val/Thr/Ieu/Ile/Gly)+Thr359(Ser/Leu/Val/Ile/Gln)等が挙げられるが、Thr65Pro+Gly101Asn+Ser387Ala、Thr65Pro+Val273Ile+Tyr320Phe、Thr65Pro+Tyr320Phe+Ser387Ala等が好ましく、Thr65Pro+Val273Ile+Thr359Ser、Thr65Pro+Val273Ile+Ser387Ala、Thr65Pro+Tyr320Gly+Ser387Ala等が特に好ましい。
【0029】
四重変異体の例としては、Thr65Pro+Gly101Asn+Val273(Ile/Gly/Thr)+Tyr320(Phe/Val/Thr/Ieu/Ile/Gly)、Thr65Pro+Tyr320(Phe/Val/Thr/Ieu/Ile/Gly)+Thr359(Ser/Leu/Val/Ile/Gln)+Ser387(Ala/Lys/Gln/Glu/Arg/His)、Gly101Asn+Val273(Ile/Gly/Thr)+Tyr320(Phe/Val/Thr/Ieu/Ile/Gly)+Ser387(Ala/Lys/Gln/Glu/Arg/His)等が挙げられるが、Thr65Pro+Val273Ile+Thr359(Ser/Leu/Ile/Val/Thr)+Ser387(Glu/Ala)、Thr65Pro+Val273Ile+Tyr320(Val/Leu/Phe/Thr)+Ser387(Ala/His/Gln)等が好ましく、Thr65Pro+Val273Ile+Thr359Ser+Ser387(Ala/Lys)、Thr65Pro+Val273Ile+Thr359Gln+Ser387Ala、Thr65Pro+Val273Ile+Tyr320Phe+Ser387(Gln/Lys)、Thr65Pro+Val273Ile+Tyr320Ile+Ser387Gln等が好ましい。
さらに五重、六重変異体の各組合せでも良い。
【0030】
本発明のアルカリプロテアーゼが変異体である場合、変異を施す前のアルカリプロテアーゼ(親アルカリプロテアーゼということがある)としては、「配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼ」又は上述した「他種アルカリプロテアーゼ」として示したものが該当し、これに目的部位の変異を施すことにより本発明のアルカリプロテアーゼが得られる。例えばプロテアーゼKP43の配列番号1で示されるアミノ酸配列の前記(a)〜(f)より選ばれる位置のアミノ酸残基又は他種アルカリプロテアーゼのアミノ酸配列において当該位置に相当する位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することにより得られる。
【0031】
本発明アルカリプロテアーゼは、例えば以下の方法により得ることができる。すなわち、クローニングされた親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子に対して変異を施し、得られた変異遺伝子を用いて適当な宿主を形質転換し、当該組換え宿主を培養し、培養物から採取することにより得られる。親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子のクローニングは、一般的な遺伝子組換え技術を用いればよく、例えばWO99/18218、WO98/56927記載の方法に従って行えばよい。
【0032】
親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子の変異手段としては、一般的に行われているランダム変異や部異特異的変異の方法がいずれも採用できる。より具体的には、例えばSite−Directed Mutagenesis System Mutan−Super Express Kmキット(Takara)等を用いて行うことができる。また、リコンビナントPCR(polymerase chain reaction)法(PCR protocols, Academic press, New York, 1990)を用いることによって、遺伝子の任意の配列を他の遺伝子の該任意の配列に相当する配列と置換することが可能である。
【0033】
得られた変異遺伝子を用いた本発明プロテアーゼの生産方法としては、例えば当該変異遺伝子を安定に増幅できるDNAベクターに連結させ宿主菌を形質転換する、或いは当該変異遺伝子を安定に維持できる宿主菌の染色体DNA上に導入させる、等の方法が採用できる。この条件を満たす宿主としては例えばバチルス属細菌、大腸菌、カビ、酵母、放線菌等が挙げられ、これらの菌株を用い、資化性の炭素源、窒素源その他必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い培養すればよい。
【0034】
かくして得られた培養液中からのアルカリプロテアーゼの採取、及び精製は、一般の酵素の採取、及び精製方法に準じて行うことができる。例えば、培養液を遠心分離、又は濾過することで菌体を除き、培養上清液から常法の精製手段により目的酵素を得る。このようにして得られる酵素液は、そのまま用いることもできるが、更に公知の方法により精製、結晶化、粉末化、または顆粒化することもできる。
【0035】
得られたプロテアーゼは、酸化剤耐性を有し、高濃度の脂肪酸によるカゼイン分解活性の阻害を受けず、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であり、アルカリ性域で活性を有すると共に、形質転換体での分泌能が高い。
ここで、「分泌能が高い」とは、例えば親アルカリプロテアーゼと同一の条件下において(例えばポリペプトンS8%(w/v)、酵母エキス0.3%、マルトース10%、硫酸マグネシウム7水和物0.04%、リン酸2水素カリウム0.2%、無水炭酸ナトリウム1.5%、テトラサイクリン30ppmから成る培地に植菌(v/v)し、30℃、3日間振とう培養する)、生産したアルカリプロテアーゼ変異体について培養上清中のプロテアーゼ活性量、タンパク質量を測定した場合、一定量以上の活性量又はタンパク質量を示すことをいい、例えば親アルカリプロテアーゼの5%以上、望ましくは10%以上、さらに望ましくは20%以上の活性量又はタンパク質量の増大が認められることを意味する。特に、比活性等の変化が認められなければ活性量とタンパク量の比は、親アルカリプロテアーゼと変異アルカリプロテアーゼでは一定の値をとると考えられることから、活性量又はタンパク質量のどちらか一方を測定しても構わない。
【0036】
従って、本発明のアルカリプロテアーゼは、各種洗剤組成物配合用酵素として有用である。
洗浄剤組成物中への本発明アルカリプロテアーゼの配合量は、当該プロテアーゼが活性を示す量であれば特に制限されないが、洗浄剤組成物1kg当たり0.1〜5000PUが配合できるが、経済性等を考慮し、500PU以下が好ましい。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物には、本発明のアルカリプロテアーゼ以外に様々な酵素を併用することもできる。例えば、加水分解酵素、酸化酵素、還元酵素、トランスフェラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ、シンテターゼ等である。このうち、本発明以外のプロテアーゼ、セルラーゼ、ケラチナーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、プルラナーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、グルコシダーゼ、グルカナーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ等が好ましく、特にプロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、リパーゼが好ましい。プロテアーゼとしては市販のアルカラーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、エスペラーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、サビナーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、エバラーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、カンナーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、プロペラーゼ(登録商標;ジェネンコア社)、プラフェクト(登録商標;ジェネンコア社)、KAP(花王)等が挙げられる。セルラーゼとしてはセルザイム(登録商標;ノボザイムズ社)、ケアザイム(登録商標;ノボザイムズ社)、またKAC、特開平10−313859号公報記載のバチルス・エスピーKSM−S237株が生産するアルカリセルラーゼ、特願2002−116553号記載の変異アルカリセルラーゼ(以上、花王)等が挙げられる。アミラーゼとしてはターマミル(登録商標;ノボザイムズ社)、デュラミル(登録商標;ノボザイムズ社)、プラスター(登録商標;ジェネンコア社)、KAM(花王)等が挙げられる。リパーゼとしてはリポラーゼ(登録商標;ノボザイムズ社)、リポラーゼウルトラ(登録商標;ノボザイムズ社)等が挙げられる。
【0038】
洗浄剤組成物中で本発明のアルカリプロテアーゼ以外のプロテアーゼを併用する場合の配合量は、洗浄剤組成物1kg当たり0.1〜500PUが好ましい。また、セルラーゼを併用する場合は、特開平10−313859号公報の段落〔0020〕に記載の酵素活性測定方法より決定される単位(U)に基づき、洗浄剤組成物1kg当たり300〜3000000KUが好ましく、アミラーゼを併用する場合は、特開平11−43690号公報の段落〔0040〕記載のアミラーゼ活性測定方法より決定される単位(IU)に基づき、洗浄剤組成物1kg当たり50〜500000IUが好ましい。さらにリパーゼを併用する場合は、特表平8−500013号公報の実施例1記載のリパーゼ活性測定方法より決定される単位(LU)づき、洗浄剤組成物1kg当たり10000〜1000000LUが好ましい。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物には公知の洗浄剤成分を配合することができ、当該公知の洗浄剤成分としては、例えば次のものが挙げられる。
(1)界面活性剤
界面活性剤は洗浄剤組成物中0.5〜60質量%配合され、特に粉末状洗浄剤組成物については10〜45質量%、液体洗浄剤組成物については20〜50質量%配合することが好ましい。また本発明洗浄剤組成物が漂白剤、または自動食器洗浄機用洗剤である場合、界面活性剤は一般に1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%配合される。
本発明洗浄剤組成物に用いられる界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤の1種または組み合わせを挙げることができるが、好ましくは陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤である。
陰イオン性界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルコールの硫酸エステル塩、炭素数8〜20のアルコールのアルコキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩又は脂肪酸塩が好ましい。本発明では特に、アルキル鎖の炭素数が10〜14の、より好ましくは12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、対イオンとしては、アルカリ金属塩やアミン類が好ましく、特にナトリウム及び/又はカリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンが好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)エーテル、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数8〜20)フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーが好ましい。特に、非イオン性界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを4〜20モル付加した〔HLB値(グリフィン法で算出)が10.5〜15.0、好ましくは11.0〜14.5であるような〕ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
【0040】
(2)二価金属イオン補捉剤
二価金属イオン補捉剤は0.01〜50質量%、好ましくは5〜40質量%配合される。本発明洗浄剤組成物に用いられる二価金属イオン補捉剤としては、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、オルソリン酸塩等の縮合リン酸塩、ゼオライト等のアルミノケイ酸塩、合成層状結晶性ケイ酸塩、ニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、クエン酸塩、イソクエン酸塩、ポリアセタールカルボン酸塩等が挙げられる。このうち結晶性アルミノケイ酸塩(合成ゼオライト)が特に好ましく、A型、X型、P型ゼオライトのうち、A型が特に好ましい。合成ゼオライトは、平均一次粒径0.1〜10μm、特に0.1〜5μmのものが好適に使用される。
【0041】
(3)アルカリ剤
アルカリ剤は0.01〜80質量%、好ましくは1〜40質量%配合される。粉末洗剤の場合、デンス灰や軽灰と総称される炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、並びにJIS1号、2号、3号等の非晶質のアルカリ金属珪酸塩が挙げられる。これら無機性のアルカリ剤は洗剤乾燥時に、粒子の骨格形成において効果的であり、比較的硬く、流動性に優れた洗剤を得ることができる。これら以外のアルカリとしてはセスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、またトリポリリン酸塩等のリン酸塩もアルカリ剤としての作用を有する。また、液体洗剤に使用されるアルカリ剤としては、上記アルカリ剤の他に水酸化ナトリウム、並びにモノ、ジ又はトリエタノールアミンを使用することができ、活性剤の対イオンとしても使用できる
【0042】
(4)再汚染防止剤
再汚染防止剤は0.001〜10質量%、好ましくは1〜5質量%配合される。本発明洗浄剤組成物に用いられる再汚染防止剤としてはポリエチレングリコール、カルボン酸系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このうちカルボン酸系ポリマーは再汚染防止能の他、金属イオンを捕捉する機能、固体粒子汚れを衣料から洗濯浴中へ分散させる作用がある。カルボン酸系ポリマーはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のホモポリマーないしコポリマーであり、コポリマーとしては上記モノマーとマレイン酸の共重合したものが好適であり、分子量が数千〜10万のものが好ましい。上記カルボン酸系ポリマー以外に、ポリグリシジル酸塩等のポリマー、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、並びにポリアスパラギン酸等のアミノカルボン酸系のポリマーも金属イオン捕捉剤、分散剤及び再汚染防止能を有するので好ましい。
【0043】
(5)漂白剤
例えば過酸化水素、過炭酸塩等の漂白剤は1〜10質量%配合するのが好ましい。漂白剤を使用するときは、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)や特開平6−316700号公報記載等の漂白活性化剤(アクチベーター)を0.01〜10質量%配合することができる。
【0044】
(6)蛍光剤
本発明洗浄剤組成物に用いられる蛍光剤としてはビフェニル型蛍光剤(例えばチノパールCBS−X等)やスチルベン型蛍光剤(例えばDM型蛍光染料等)が挙げられる。蛍光剤は0.001〜2質量%配合するのが好ましい。
【0045】
(7)その他の成分
本発明品洗浄剤組成物には、衣料用洗剤の分野で公知のビルダー、柔軟化剤、還元剤(亜硫酸塩等)、抑泡剤(シリコーン等)、香料、その他の添加剤を含有させることができる。
【0046】
本発明の洗浄剤組成物は、上記方法で得られた本発明アルカリプロテアーゼ及び上記公知の洗浄成分を組み合わせて常法に従い製造することができる。洗剤の形態は用途に応じて選択することができ、例えば液体、粉体、顆粒、ペースト、固形等にすることができる。
かくして得られる本洗浄剤組成物は、衣料洗浄剤、漂白剤、硬質表面洗浄用洗浄剤、排水管洗浄剤、義歯洗浄剤、医療器具用の殺菌洗浄剤等として使用することができる。
【0047】
【実施例】
[プロテアーゼ活性測定法−カゼイン法]
カゼイン1%(w/v)を含む50mMホウ酸緩衝液(pH10.5)1.0mLを30℃で5分間保温した後、0.1mLの酵素溶液を加え、15分間反応を行う。反応停止液(0.11Mトリクロロ酢酸−0.22M酢酸ナトリウム−0.33M酢酸)を2.0mL加え、室温で30分間放置した後、濾過を行い、濾液中の酸可溶性タンパク質をLowryらの方法の変法により定量した。すなわち、0.5mLの濾液にアルカリ性銅溶液(1%酒石酸ナトリウム・カリウム:1%硫酸銅・5水和物:2%炭酸ナトリウム・0.1N水酸化ナトリウム=1:1:100)を2.5mL加え、室温で10分間放置後、フェノール溶液[フェノール試薬(関東化学)を蒸留水にて2倍希釈したもの]を0.25mL添加し、30℃で30分間保温した。その後、660nmにおける吸光度を測定した。プロテアーゼ1単位(1PU)は、上記反応条件で1分間に1mmolのチロシンに相当する酸可溶性タンパク質分解物を遊離させるのに必要な酵素量とした。
【0048】
実施例1
バチルス エスピーKSM−KP43株由来のアルカリプロテアーゼ構造遺伝子の終止コドンまでを含む約2.0kbの範囲に対しランダム変異を与えた。ランダム変異導入法としてはPCR中の塩基の取り込みエラーを利用するために、DNAポリメラーゼとしてエラー修復能が無いTaqポリメラーゼ:Takara Taq(Takara)を用いた。まず、上記約2.0kbのDNAを増幅できるプライマー1(5’−AAATGGATCCGTGAGGAGGGAACCGAATGAGAAAGAAGAAAAAGGTG−3’、配列番号2)及びプライマー2(5’−ATATTCTAGACGATTACCATATTAATTCCTCTACCC−3’、配列番号3)を用いPCRを行った。プライマー1はセンス鎖の5’末端側にBamHIリンカーを、プライマー2はアンチセンス鎖の5’末端側にXbaIリンカーを付与した。反応系として、鋳型DNA10ng、各プライマーを10pmol、各dNTPを20nmol、Takara Taq添付反応バッファー10μL、及びTaqポリメラーゼ2.5Uを含有する100μLの系とした。PCR条件は94℃で2分間鋳型DNAを変性させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で2分間を1サイクルとし、これを30サイクル行った。PCR産物をPCR product purification kit(ロッシュ)にて精製し、100μLの滅菌水で溶出した。次に溶出液1μLを鋳型DNAとして、2回目のPCRを行い、得られたPCR産物を精製し、以後の実験に供した。
【0049】
増幅した約2.0kbのDNA断片の末端制限酵素リンカーを、BamHI、XbaI(ロッシュ)により切断した。増幅DNAを組み込むべき発現ベクターとしてはバチルス属細菌内で複製可能であるpHA64(特願平8−323050:プロモーター64の下流にBamHI、XbaIサイトを有する)を用いた。BamHI、XbaI処理した増幅DNA断片及び同じくBamHI、XbaI処理したpHA64を混合した後、Ligation High(東洋紡)により、リガーゼ反応を行った。エタノール沈殿により、リガーゼ反応液からDNAを回収し,以後の形質転換用のDNAとした。
【0050】
形質転換すべき宿主としてバチルスエスピーKSM−KP43(以後KP−43株と略す)を用いた。形質転換法はエレクトロポレーション法により行い、SSH−10(島津製作所)及びジーンパルサーキュベット(バイオラッド)を用い形質転換を行った。
【0051】
KP43株の形質転換体をスキムミルク含有アルカリ寒天培地[スキムミルク(ディフコ)1%(w/v)、バクトトリプトン(ディフコ)1%、酵母エキス(ディフコ)0.5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%、無水炭酸ナトリウム0.05%、テトラサイクリン15ppm]に生育させ、ハローの形成状況により、プロテアーゼ遺伝子導入の有無を判定した。
プロテアーゼ遺伝子がpHA64に挿入されたプラスミドを保持している形質転換されたKP43株を選抜し、以後の培養に供した。
【0052】
各形質転換体について単集落分離、ハロー形成の確認を行い、試験管中の5mL種母培地[ポリペプトンS(日本製薬)6.0%(w/v)、酵母エキス0.1%、マルトース1.0%、硫酸マグネシウム7水和物0.02%、リン酸2水素カリウム0.1%、無水炭酸ナトリウム0.3%、テトラサイクリン30ppm]に植菌し、30℃、320rpmで一晩前培養した。この種母培養液を500mL容坂口フラスコ中の20mL主培地[ポリペプトンS8%(w/v)、酵母エキス0.3%、マルトース10%、硫酸マグネシウム7水和物0.04%、リン酸2水素カリウム0.2%、無水炭酸ナトリウム1.5%、テトラサイクリン30ppm]に1%植菌(v/v)し、30℃、121rpmで3日間培養した。得られた培養液を遠心分離し、培養上清中のプロテアーゼ活性を測定した。プロテアーゼ活性はカゼイン法により、タンパク質量はプロテインアッセイキット(和光純薬)を用いて測定した。野生型酵素遺伝子を有する形質転換体を同条件で培養した場合の培養上清の値と比較することにより、プロテアーゼ活性の向上が認められた変異プロテアーゼ遺伝子を選抜した。尚、培養上清中のタンパク質量はプロテアーゼ活性とほぼ比例して増加していることから、得られた変異体はタンパク質の分泌量が向上するのに必要な変異が導入されたことが、示唆された。
【0053】
選抜された形質転換体からHigh pure plasmid isolation kit(ロッシュ)を用いプラスミドを回収し、塩基配列を決定した。プラスミドDNA300ngを鋳型として、プライマーとBig Dye DNA Sequencing kit(アプライドバイオシステム)を用いて20μLの反応系でPCRを行い、DNA Sequencer 377型(アプライドバイオシステム)を用いた解析に供した。
【0054】
その結果、プロテアーゼ活性が向上した変異体は65位のスレオニンがプロリン、101位のグリシンがアスパラギン、273位のバリンがイソロイシン、320位のチロシンがフェニルアラニン、359位のスレオニンがセリン、387位のセリンがアラニンにそれぞれ置換されており、これにより約5%のプロテアーゼ活性の向上が認められた(表2)。
【0055】
更に上記変異部位を組合わせることにより、プロテアーゼ活性の向上を検討した。部位特異的変異の手段としては、Site−Directed Mutagenesis System Mutan−Super Express Kmキットを用い、以下のプライマーにより、変異部位の組み合わせを検討した。プライマー3:65位のスレオニン(T)をプロリン(P)に置換する(5’−AATGCCAATGATCCGAATGGTCATG−3’、配列番号4)
プライマー4:101位のグリシン(G)をアスパラギン(N)に置換する(5’−TCTATCATGGATAGCAATGGGGGACTTGGAGG−3’、配列番号5)プライマー5:273位のバリン(V)をイソロイシン(I)に置換する(5’−CTTCGTGAGCATTTTATCAAAAACAGAGGCATC−3’、配列番号6)プライマー6:320位のチロシン(Y)をフェニルアラニン(F)に置換する(5’−AACGTTGCCTTTGTGAACGAGTCC−3’、配列番号7)
プライマー7:359位のスレオニン(T)をセリン(S)に置換する(5’−GCGAGCACATCTGCTTCCGTAACG−3’、配列番号8)
プライマー8:387位のセリン(S)をアラニン(A)に置換する(5’−TGACTTTACTGCGCCATACAATGATAAC−3’、配列番号9)
【0056】
変異導入用鋳型プラスミドの作製は、カナマイシン選択用アンバー変異マーカーを有するpKF18kのマルチクローニングサイト中のBamHI、XbaIサイトに、前記スクリーニングで得られた変異プロテアーゼ遺伝子を導入することにより構築した。
【0057】
部位特異的変異導入用PCRにはTakara LA Taq(Takara)を用いた。5’末端をリン酸化したセレクションプライマー(Mutan−Super Express Km キット添付)及びプライマー3〜8の各変異導入プライマーを各々5pmol及び鋳型プラスミド10ngを用い変異導入PCRを行った。反応条件は94℃で2分間鋳型DNAを変性させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で4分間を1サイクルとし、これを30サイクル行った。得られたPCR産物を用い大腸菌MV1184株を形質転換することにより、変異プラスミドを得た。得られた変異プラスミドは先述の塩基配列決定法に従い変異部位を確認した。
【0058】
部位特異的変異により変異導入されたプロテアーゼ遺伝子をpHA64に導入し、KP−43株を形質転換し、先述の条件で培養することで、野生型酵素に比べプロテアーゼ活性が更に増大する変異部位の組み合せを検討した。
【0059】
その結果、T65P+S387A、T359S+S387A、T65P+V273I+Y320F、T65P+V273I+T359S、T65P+V273I+S387A、T65P+Y320F+S387A、T65P+G101N+S387A、T65P+V273I+T359S+S387Aの組み合わせにおいて10〜30%のプロテアーゼ活性の向上が認められた(変異部位の組み合わせは+で示した。表1)。
【0060】
更に以下のプライマーを使用し、65位、101位、273位、320位、359位、387位のアミノ酸を任意のアミノ酸に置換し、それぞれの位置のアミノ酸が上記置換アミノ酸とは別のアミノ酸に置換が可能か否かを検討し、更にその組み合わせを検討した。
プライマー9:65位のスレオニン(T)を任意のアミノ酸(X)に置換する(5’−CGAATAATGCCAATGATNNNAATGGTCATGGTACGC−3’、配列番号10)
プライマー10:101位のグリシン(G)を任意のアミノ酸(X)に置換する(5’−CTATCATGGATAGCNNNGGGGGACTTGGAGG−3’、配列番号11)
プライマー11:273位のバリン(V)を任意のアミノ酸(X)に置換する(5’−CGTGAGCATTTTNNNAAAAACAGAGGCATCACACC−3’、配列番号12)
プライマー12:320位のチロシン(Y)を任意のアミノ酸(X)に置換する(5’−CCCTGAACGTTGCCNNNGTGAACGAGTCC−3’、配列番号13)
プライマー13:359位のスレオニン(T)を任意のアミノ酸(X)に置換する(5’−CCCCTGCGAGCACANNNGCTTCCGTAACGC−3’、配列番号14)
プライマー14:387位のセリン(S)を任意のアミノ酸(X)に置換する(5’−GGAAATGACTTTACTNNNCCATACAATGATAACTGG−3’、配列番号15)
【0061】
その結果、273位のバリンはイソロイシン以外にグリシン、スレオニンへの置換、320位のチロシンはフェニルアラニン以外にバリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、グリシンへの置換、359位のスレオニンはセリン以外にロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミンへの置換、387位のセリンはアラニン以外にリジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジンへの置換により、野生型と比べ酵素の分泌が向上していることが認められ、それぞれの位置で上記アミノ酸置換が可能であることが確認された。
【0062】
その組み合わせの一部の結果を示すと、T65P+Y320F+S387E、T65P+Y320G+S387A、T65P+V273I+T359S+S387E、T65P+V273I+T359L+S387A、T65P+V273I+T359I+S387A、T65P+V273G+T359S+S387A、T65P+V273I+T359S+S387K、T65P+V273I+T359V+S387A、T65P+V273I+T359Q+S387A、T65P+V273I+Y320T+S387A、T65P+V273I+Y320F+S387E、T65P+V273I+Y320F+S387K、T65P+V273T+Y320F+S387A、T65P+V273I+Y320L+S387H、T65P+V273I+Y320V+S387Q、T65P+V273I+Y320I+S387Qの組み合わせにおいて10〜30%のプロテアーゼ活性の向上が認められた(表2)。
【0063】
【表2】
【0064】
上記変異部位の組み合わせにより得られる、アルカリプロテアーゼは形質転換体での酵素の分泌を向上させる以外は親アルカリプロテアーゼの特性、すなわち、酸化剤耐性を有し、高濃度の脂肪酸によるカゼイン分解活性の阻害を受けず、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であり、アルカリ性域で活性を有する性質を保持していることを確認した。
実施例2
(1)洗剤の調製
撹拌翼を有した1m3の混合槽に水465kgを加え、水温が55℃に達した後に40%(w/v)ポリアクリル酸ナトリウム水溶液135kgを添加した。15分間撹拌した後に、炭酸ナトリウム120kg、硫酸ナトリウム60kg、亜硫酸ナトリウム9kg、蛍光染料3kgを添加した。更に15分間撹拌した後に、ゼオライト300kgを添加し、30分間撹拌して均質なスラリーを得た(スラリー中の水分は50質量%)。このスラリーを噴霧乾燥塔の塔頂付近に設置した圧力噴霧ノズルから噴霧することでベース顆粒を得た(噴霧乾燥塔に供給する高温ガスは塔下部より温度が225℃で供給し、塔頂より105℃で排出)。次にレディゲミキサー(松阪技研(株)製、容量20L、ジャケット付)に上記ベース顆粒100質量部を投入し、主軸(150rpm)の攪拌下、非イオン性界面活性剤20質量部、直鎖アルキル(炭素数10〜13)ベンゼンスルホン酸ナトリウム22質量部、脂肪酸(炭素数14〜18)ナトリウム4質量部、ポリエチレングリコール2質量部、水4質量部の混合液を3分間で投入し、その後5分間攪拌を行った。更にこのミキサーに結晶性ケイ酸ナトリウム20質量部とゼオライト10質量部を投入し、表面被覆を行い洗剤ベースを得た。
洗剤ベース99質量%に本発明プロテアーゼ粒子0.5質量%、及び香料0.5質量%を混合して最終粒状洗剤Aを得た。
【0065】
(2)使用した原料
非イオン性界面活性剤:エチレンオキサイド平均付加モル数が8.5のエマルゲン108KM(花王(株)製)
ポリアクリル酸ナトリウム水溶液:平均分子量10000(特公平2−24283号公報の実施例に記載の方法に従って製造した)
炭酸ナトリウム:デンス灰(セントラル硝子(株)製)
ゼオライト:平均粒径が3.5μmのゼオライト4A型(東ソー(株)製)
ポリエチレングリコール:K−PEG6000(平均分子量8500,花王(株)製)
結晶性ケイ酸ナトリウム:粉末SKS−6(ヘキストトクヤマ(株)製)
本発明プロテアーゼ粒子:表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品から特開昭62−257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき調製した造粒物(6PU/g)
蛍光染料:チノパールCBS−X(チバガイギー社製)
【0066】
実施例3
(1)洗剤の調製
まず固形分50質量%のスラリーを熱風温度250℃で噴霧乾燥し、ポリアクリル酸ナトリウム(質量平均分子量10000)7質量%、炭酸ナトリウム26質量%、硫酸ナトリウム20質量%、塩化ナトリウム6質量%、蛍光染料0.5質量%、ゼオライト40質量%、水0.5質量%のベース顆粒を得た。
次にレディゲミキサー(松阪技研(株)製、容量20L、ジャケット付)に上記ベース顆粒100質量部を投入し、主軸(150rpm)の攪拌下、非イオン性界面活性剤20質量部、直鎖アルキル(炭素数10〜13)ベンゼンスルホン酸ナトリウム22質量部、脂肪酸(炭素数14〜18)ナトリウム4質量部、ポリエチレングリコール2質量部、水4質量部の混合液を3分間で投入し、その後5分間攪拌を行った。更にこのミキサーに結晶性ケイ酸ナトリウム20質量部とゼオライト10質量部を投入し、表面被覆を行い洗剤ベースを得た。
洗剤ベース95質量%に漂白剤粒子2.8質量%、漂白活性剤粒子1.2質量%、本発明プロテアーゼ粒子0.5質量%、及び香料0.5質量%を混合して最終粒状洗剤Bを得た。
【0067】
(2)使用した原料
非イオン性界面活性剤:エチレンオキサイド平均付加モル数が8.5のエマルゲン108KM(花王(株)製)
ポリアクリル酸ナトリウム水溶液:平均分子量10000(特公平2−24283号公報の実施例に記載の方法に従って製造した)
炭酸ナトリウム:デンス灰(セントラル硝子(株)製)
ゼオライト:平均粒径が3.5μmのゼオライト4A型(東ソー(株)製)
ポリエチレングリコール:K−PEG6000(平均分子量8500,花王(株)製)
結晶性ケイ酸ナトリウム:SKS−6(ヘキストトクヤマ(株)製)
本発明プロテアーゼ粒子:表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品から特開昭62−257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき調製した造粒物(6PU/g)
蛍光染料:チノパールCBS−X(チバガイギー社製)
漂白剤粒子:炭酸ナトリウム・過酸化水素付加物(特開2000−256699号公報の段落〔0019〕記載の漂白剤粒子と同様にして得た)
漂白活性剤粒子:ラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムの造粒物(特開2000−256699号公報の段落〔0018〕記載の漂白活性剤粒子と同様にして得た)
【0068】
実施例4
表3に示す液体洗浄剤組成物(洗剤C、及び洗剤D)を調製した。
【0069】
【表3】
【0070】
1)炭素数12〜14の2級アルコール由来のアルキル基を有するポリオキシエチレン(平均7モル付加)アルキルエーテル(ソフタノール70、日本触媒化学工業製)
2)炭素数12〜14の2級アルコール由来のアルキル基を有するポリオキシエチレン(平均12モル付加)アルキルエーテル(ソフタノール120、日本触媒化学工業製)
3)炭素数10〜14の直鎖第1級アルコールにEOを平均5モル、POを平均2モル、EOを平均3モルの順にブロック付加させたもの
4)ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOを平均8モル付加させたもの5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル、EOを平均11.5モル付加させたもの
6)ナローレンジポリオキシエチレンアルキル(sec−C12/C13)エーテル
7)炭素数10〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
8)アミド/エーテル変性シリコーンポリマー(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製、BY16−906)
9)特開平10−60476号公報の11頁6行〜13行記載の方法で合成したフェノキシポリエチレングリコール、アクリル酸、マレイン酸共重合体(質量平均分子量10000、固形分51.2%)
10)ペンテン/マレイン酸(50/50モル比)コポリマーのナトリウム塩(質量平均分子量7000)
11)表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品(15PU/g)
【0071】
実施例5
下記の表4に示す組成のうち、過炭酸ナトリウムと炭酸ナトリウム(デンス灰)を攪拌混合しながら、ポリアクリル酸ナトリウム40%水溶液、及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、又は非イオン性界面活性剤、又はラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムを添加した。次いで特開昭62―257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき調製した本発明プロテアーゼ粒子を添加し、全体的に均一になる程度攪拌することにより、漂白剤を調製した。
【0072】
【表4】
【0073】
1)粒経500〜700μm
2)炭素数12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
3)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数12〜14、EO平均付加モル数12)
4)平均分子量8,000
5)表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品から特開昭62−257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき調製した造粒物(6PU/g)
【0074】
実施例6
下記の表5に示す全自動食器洗浄機用洗浄剤組成物(洗剤G、及びH)を調製した。
【0075】
【表5】
【0076】
1)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(平均分子量2,000)
2)炭素数12〜14のsec−アルコールのエチレンオキサイド7モル、及びプロピレンオキサイド8.5モル付加物
3)JIS 2号珪酸ナトリウム
4)アクリル酸−マレイン酸共重合体
5)デュラミル60T(TM)(ノボザイムズ社製)
6)表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品から特開昭62−257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき調製した造粒物(6PU/g)
【0077】
実施例7
下記の表6に示す各成分を用い、硬質表面用洗浄剤組成物(洗剤J)を得た。
【0078】
【表6】
【0079】
1)ポリオキシエチレン(EOP=4)アルキル(C12)エーテル硫酸エステルナトリウム
2)ポリオキシエチレン(EOP=8)アルキル(C12)エーテル
3)アルキル(C12)ポリグルコシド(縮合度1.3)
4)モノ長鎖第3級アルキル(C12)ジメチルアミンオキシド
5)アルキル(C12)ヒドロキシジメチルスルホベタイン
6)分子量10000
7)表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品(15PU/mL)
【0080】
実施例8
前記洗剤A(実施例2参照)を用いて下記表7記載の粒状洗剤を得た。
【0081】
【表7】
【0082】
1)表2記載の本発明アルカリプロテアーゼの各精製標品から特開昭62−257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき調製した造粒物(6PU/g)
2)特開平5−25492号公報に記載のプロテアーゼK−16を特開昭62−257990号公報の実施例1に記載の方法に基づき、5PU/gとしたもの
3)KAC−500(花王(株)製)
4)リポラーゼ100T(TM)(ノボザイムズ社製)
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、高濃度の脂肪酸存在下でも活性を有し、蛋白質だけでなく皮脂等の混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性を有すると共に、分泌能の高いアルカリプロテアーゼを提供できる。
【0084】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアルカリプロテアーゼのアミノ酸配列を整列させた図である。
Claims (7)
- 配列番号1の(a)65位、(b)101位、(c)273位、(d)320位、(e)359位、(f)387位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基が下記アミノ酸残基;
(a)位置:プロリン、
(b)位置:アスパラギン、
(c)位置:イソロイシン、グリシン、スレオニン、
(d)位置:フェニルアラニン、バリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、
(e)位置:セリン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミン、
(f)位置:アラニン、リジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、
から選ばれたものであるアルカリプロテアーゼ。 - 配列番号1に示すアミノ酸配列又はこれと80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼにおいて、配列番号1の(a)65位、(b)101位、(c)273位、(d)320位、(e)359位、(f)387位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基が下記アミノ酸残基;
(a)位置:プロリン、
(b)位置:アスパラギン、
(c)位置:イソロイシン、グリシン、スレオニン、
(d)位置:フェニルアラニン、バリン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、
(e)位置:セリン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グルタミン、
(f)位置:アラニン、リジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、
から選ばれたものであるアルカリプロテアーゼ。 - 請求項1又は2記載のアルカリプロテアーゼをコードする遺伝子。
- 請求項3記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
- 請求項4記載のベクターを含有する形質転換体。
- 宿主が微生物である請求項5記載の形質転換体。
- 請求項1又は2記載のアルカリプロテアーゼを含有する洗浄剤組成物。
Priority Applications (8)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002304230A JP2004000122A (ja) | 2002-03-22 | 2002-10-18 | アルカリプロテアーゼ |
US10/385,662 US7368273B2 (en) | 2002-03-22 | 2003-03-12 | Alkaline protease |
CNB031074561A CN100494364C (zh) | 2002-03-22 | 2003-03-21 | 碱性蛋白酶 |
EP10006498.9A EP2284251B1 (en) | 2002-03-22 | 2003-03-21 | Alkaline protease with an enhanced specific activity to casein |
DK10006498.9T DK2284251T3 (da) | 2002-03-22 | 2003-03-21 | Alkalisk protease med forøget specifik aktivitet over for casein |
DK03006472.9T DK1347044T3 (da) | 2002-03-22 | 2003-03-21 | Alkalisk protease |
EP03006472.9A EP1347044B1 (en) | 2002-03-22 | 2003-03-21 | Alkaline protease |
US12/049,022 US7776578B2 (en) | 2002-03-22 | 2008-03-14 | Alkaline protease |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002081428 | 2002-03-22 | ||
JP2002304230A JP2004000122A (ja) | 2002-03-22 | 2002-10-18 | アルカリプロテアーゼ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004000122A true JP2004000122A (ja) | 2004-01-08 |
Family
ID=30445816
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002304230A Pending JP2004000122A (ja) | 2002-03-22 | 2002-10-18 | アルカリプロテアーゼ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004000122A (ja) |
Cited By (21)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1645632A2 (en) | 2004-10-08 | 2006-04-12 | Kao Corporation | Alkaline protease |
US7429642B2 (en) | 2003-04-10 | 2008-09-30 | Kao Corporation | Alkaline protease |
JP2009034063A (ja) * | 2007-08-03 | 2009-02-19 | Kao Corp | アルカリプロテアーゼの安定性向上方法 |
JP2010159424A (ja) * | 2004-01-13 | 2010-07-22 | Dsm Ip Assets Bv | 色素を直接変換することが可能な酵素の使用 |
WO2010134435A1 (ja) | 2009-05-22 | 2010-11-25 | 独立行政法人物質・材料研究機構 | 強磁性トンネル接合体およびそれを用いた磁気抵抗効果素子 |
JP2010273673A (ja) * | 2009-04-30 | 2010-12-09 | Kao Corp | アルカリプロテアーゼ変異体 |
JP2010285491A (ja) * | 2009-06-10 | 2010-12-24 | Kao Corp | 自動食器洗浄機用洗浄剤組成物 |
JP2011012219A (ja) * | 2009-07-06 | 2011-01-20 | Kao Corp | 医療器具の洗浄方法 |
JP2012140486A (ja) * | 2010-12-28 | 2012-07-26 | Kao Corp | 内視鏡洗浄機用洗浄剤組成物 |
US8309339B2 (en) | 2007-03-06 | 2012-11-13 | Kao Corporation | Alkaline protease |
WO2013154201A2 (en) | 2012-04-10 | 2013-10-17 | Kao Corporation | Method for improving solubility of alkaline protease |
CN103443848A (zh) * | 2011-03-25 | 2013-12-11 | 雅马哈株式会社 | 伴奏数据产生设备 |
JP2014129493A (ja) * | 2012-12-28 | 2014-07-10 | Kao Corp | 自動食器洗浄機用洗浄剤組成物 |
JP2015101650A (ja) * | 2013-11-26 | 2015-06-04 | 日華化学株式会社 | 医療器具用洗浄剤組成物 |
US9353334B2 (en) | 2010-12-28 | 2016-05-31 | Kao Corporation | Method for cleaning medical instrument |
EP3061817A1 (en) | 2009-04-30 | 2016-08-31 | Kao Corporation | Alkaline protease variants |
WO2017213168A1 (ja) * | 2016-06-09 | 2017-12-14 | 花王株式会社 | 変異アルカリプロテアーゼ |
JP2017221188A (ja) * | 2016-06-09 | 2017-12-21 | 花王株式会社 | 変異アルカリプロテアーゼ |
WO2019159991A1 (ja) | 2018-02-13 | 2019-08-22 | 花王株式会社 | 発酵生成物の製造方法 |
JP2020145938A (ja) * | 2019-03-11 | 2020-09-17 | 花王株式会社 | 変異プロテアーゼ |
JP2021097605A (ja) * | 2019-12-20 | 2021-07-01 | 花王株式会社 | アルカリプロテアーゼ |
-
2002
- 2002-10-18 JP JP2002304230A patent/JP2004000122A/ja active Pending
Cited By (29)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7429642B2 (en) | 2003-04-10 | 2008-09-30 | Kao Corporation | Alkaline protease |
JP2010159424A (ja) * | 2004-01-13 | 2010-07-22 | Dsm Ip Assets Bv | 色素を直接変換することが可能な酵素の使用 |
JP2011200249A (ja) * | 2004-10-08 | 2011-10-13 | Kao Corp | アルカリプロテアーゼ |
US7473544B2 (en) | 2004-10-08 | 2009-01-06 | Kao Corporation | Alkaline protease |
EP1645632A2 (en) | 2004-10-08 | 2006-04-12 | Kao Corporation | Alkaline protease |
US8309339B2 (en) | 2007-03-06 | 2012-11-13 | Kao Corporation | Alkaline protease |
JP2009034063A (ja) * | 2007-08-03 | 2009-02-19 | Kao Corp | アルカリプロテアーゼの安定性向上方法 |
JP2010273673A (ja) * | 2009-04-30 | 2010-12-09 | Kao Corp | アルカリプロテアーゼ変異体 |
EP3061817A1 (en) | 2009-04-30 | 2016-08-31 | Kao Corporation | Alkaline protease variants |
WO2010134435A1 (ja) | 2009-05-22 | 2010-11-25 | 独立行政法人物質・材料研究機構 | 強磁性トンネル接合体およびそれを用いた磁気抵抗効果素子 |
JP2010285491A (ja) * | 2009-06-10 | 2010-12-24 | Kao Corp | 自動食器洗浄機用洗浄剤組成物 |
JP2011012219A (ja) * | 2009-07-06 | 2011-01-20 | Kao Corp | 医療器具の洗浄方法 |
JP2012140486A (ja) * | 2010-12-28 | 2012-07-26 | Kao Corp | 内視鏡洗浄機用洗浄剤組成物 |
US9353334B2 (en) | 2010-12-28 | 2016-05-31 | Kao Corporation | Method for cleaning medical instrument |
CN103443848A (zh) * | 2011-03-25 | 2013-12-11 | 雅马哈株式会社 | 伴奏数据产生设备 |
JP2013233141A (ja) * | 2012-04-10 | 2013-11-21 | Kao Corp | アルカリプロテアーゼの溶解性向上方法 |
WO2013154201A2 (en) | 2012-04-10 | 2013-10-17 | Kao Corporation | Method for improving solubility of alkaline protease |
US9650623B2 (en) | 2012-04-10 | 2017-05-16 | Kao Corporation | Improving the solubility of an alkaline protease in a liquid detergent by amino acid substitution |
JP2014129493A (ja) * | 2012-12-28 | 2014-07-10 | Kao Corp | 自動食器洗浄機用洗浄剤組成物 |
JP2015101650A (ja) * | 2013-11-26 | 2015-06-04 | 日華化学株式会社 | 医療器具用洗浄剤組成物 |
JP2017221188A (ja) * | 2016-06-09 | 2017-12-21 | 花王株式会社 | 変異アルカリプロテアーゼ |
WO2017213168A1 (ja) * | 2016-06-09 | 2017-12-14 | 花王株式会社 | 変異アルカリプロテアーゼ |
US10717949B2 (en) | 2016-06-09 | 2020-07-21 | Kao Corporation | Alkaline protease variant |
WO2019159991A1 (ja) | 2018-02-13 | 2019-08-22 | 花王株式会社 | 発酵生成物の製造方法 |
JP2020145938A (ja) * | 2019-03-11 | 2020-09-17 | 花王株式会社 | 変異プロテアーゼ |
WO2020184410A1 (ja) | 2019-03-11 | 2020-09-17 | 花王株式会社 | 変異プロテアーゼ |
JP7245676B2 (ja) | 2019-03-11 | 2023-03-24 | 花王株式会社 | 変異プロテアーゼ |
JP2021097605A (ja) * | 2019-12-20 | 2021-07-01 | 花王株式会社 | アルカリプロテアーゼ |
JP7389640B2 (ja) | 2019-12-20 | 2023-11-30 | 花王株式会社 | アルカリプロテアーゼ |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5202690B2 (ja) | アルカリプロテアーゼ | |
JP4897186B2 (ja) | 変異アルカリセルラーゼ | |
US7776578B2 (en) | Alkaline protease | |
JP2004000122A (ja) | アルカリプロテアーゼ | |
EP1466962B1 (en) | Alkaline protease | |
US7405271B2 (en) | Alkaline protease | |
JP4324363B2 (ja) | 変異アルカリプロテアーゼ | |
US7101698B2 (en) | Alkaline protease | |
US8309339B2 (en) | Alkaline protease | |
JP2002306176A (ja) | アルカリプロテアーゼ | |
JP4787571B2 (ja) | アルカリプロテアーゼ | |
JP4210548B2 (ja) | アルカリプロテアーゼ | |
JP2009034062A (ja) | アルカリプロテアーゼ | |
JP2010273673A (ja) | アルカリプロテアーゼ変異体 | |
JP2010273672A (ja) | アルカリプロテアーゼ変異体 | |
JP2012228216A (ja) | アルカリプロテアーゼ | |
JP5202716B2 (ja) | 変異アルカリセルラーゼ | |
JP2024118710A (ja) | リパーゼの製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20041207 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080819 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20081020 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090106 |