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JP2003013048A - 撥水性物品の製造方法、撥水性物品および撥水性被膜形成用溶液 - Google Patents

撥水性物品の製造方法、撥水性物品および撥水性被膜形成用溶液

Info

Publication number
JP2003013048A
JP2003013048A JP2002107047A JP2002107047A JP2003013048A JP 2003013048 A JP2003013048 A JP 2003013048A JP 2002107047 A JP2002107047 A JP 2002107047A JP 2002107047 A JP2002107047 A JP 2002107047A JP 2003013048 A JP2003013048 A JP 2003013048A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
water
repellent
group
solution
coating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2002107047A
Other languages
English (en)
Inventor
Toyoyuki Teranishi
豊幸 寺西
Kazutaka Kamiya
和孝 神谷
Takashi Sunada
貴 砂田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Sheet Glass Co Ltd
Original Assignee
Nippon Sheet Glass Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Sheet Glass Co Ltd filed Critical Nippon Sheet Glass Co Ltd
Priority to JP2002107047A priority Critical patent/JP2003013048A/ja
Publication of JP2003013048A publication Critical patent/JP2003013048A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

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  • Materials Applied To Surfaces To Minimize Adherence Of Mist Or Water (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水滴の接触角が大きく、さらに水滴の転がり
性が優れており、加えて高い耐擦傷性、耐候性を有する
撥水性物品、その製造方法および撥水性被膜形成用溶液
の提供を目的とする。 【解決手段】 クロロシリル基含有化合物とフルオロア
ルキル基含有シラン化合物を、アルコールおよび/また
は水を含む溶媒に溶解し、前記クロロシリル基含有化合
物のクロロ基を、アルコキシル基または水酸基に置換し
た溶液を基材表面に塗布した後乾燥し、撥水性被膜を形
成する工程を含むことを特徴とする撥水性物品の製造方
法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はガラス、セラミック
ス、プラスチック或いは金属等の基材表面に撥水膜を形
成した撥水性物品の製造方法、撥水性物品および撥水性
被膜形成用溶液に関する。
【0002】
【従来の技術】ガラスその他の基材の表面に撥水性被膜
を形成させる際に、基材と撥水性被膜との結合強度を向
上させること、および基材がアルカリ成分を含む場合に
アルカリ成分の拡散を防止し、撥水性被膜の耐久性能を
高めることを目的として、基材と撥水層との間に酸化珪
素等の下地層を形成する技術が知られている。
【0003】この下地層を有する撥水性被膜を形成する
技術としては、基材に酸化珪素等の下地膜を形成した後
に、さらに撥水膜を形成し2層膜構造とする技術と、下
地成分と撥水性成分を混合した液を基材に塗布成膜し、
単層膜で下地層と撥水層を形成させる技術の、2つの技
術が知られている。後者の方が製造工程が少なく、生産
性に優れている。後者の技術としては、例えば特公昭6
3−24554号、特開昭61−215235号、特開
昭64−68477号、特開平4−338137号、特
開平8−239653号に開示されているものがある。
以下に、それぞれの特長を示す。
【0004】特公昭63−24554号には、シラノー
ルオリゴマー(20〜40重合体)をフルオロアルキル
シランで変性した撥水性表面処理剤が開示されている。
【0005】特開昭61−215235号には、フルオ
ロアルキル基含有シラン化合物とシランカップリング剤
を、アルコール系溶媒中で酢酸および有機錫化合物の触
媒を用いて加水分解反応させ、共縮合体を形成させた液
を基材表面に塗布、加熱硬化させた撥水性、防汚性を有
する低反射率ガラスが開示されている。
【0006】特開昭64−68477号には、鋼板表面
に酸化珪素等のアルコキシドとフルオロアルキルシラン
を含有するアルコール溶液を塗布した後、加熱すること
を特徴とする撥水性鋼板の製造方法が開示されている。
【0007】特開平4−338137号には、シリコン
アルコキシドとアルコキシル基の一部がフルオロアルキ
ル基で置換された置換シリコンアルコキシドと、アルコ
ールと、水と、酸または塩基とを混合した溶液をガラス
基板表面に塗布して、焼成することを特徴とする撥水性
ガラスが開示されている。
【0008】特開平8−239653号には、ペルフル
オロアルキルアルキルシランと完全に加水分解可能なシ
ランとの混合物からなる組成物で処理された撥水性物品
が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述した特公昭63−
24554号、特開昭61−215235号、および特
開平4−338137号に開示される方法にあっては、
アルコール溶液中で触媒を利用して、フルオロアルキル
基含有シランとシリコンアルコキシドを加水分解し、縮
重合体および共縮合体を形成させている。この結果、重
合体同士の結合となるため、隙間ができやすくなり、撥
水性被膜の緻密性は低くなってしまう。このため、緻密
性を上げるために焼成工程が必要であり、コスト上昇の
要因となる。
【0010】特開昭64−68477号に開示される方
法にあっては、触媒を添加していないために反応性が劣
り、撥水性被膜の緻密性は低くなってしまう。このた
め、緻密性を上げるために焼成工程が必要であり、コス
ト上昇の要因となる。
【0011】特開平8−239653号に開示される技
術にあっては、その被覆用組成物にクロロシランと非水
系溶媒が好ましく用いられている。しかし、非水系溶媒
は高価である。また、この被覆用組成物を追試したとこ
ろ、空気中の水分と反応してゲル化し不安定であるの
で、雰囲気の湿度を10%RH以下、望ましくは0%R
Hに近く維持する必要があり、環境条件の管理が難しい
ことがわかった。またこの技術を追試したところ、撥水
性被膜の表面は、微細な凹凸が形成されており、前記被
膜の耐擦傷性が低い欠点を有していることもわかった。
【0012】さらに、上述した技術を追試したところ、
いずれの撥水性物品においても、水滴の転がり性がよく
ないことがわかった。
【0013】そこで本発明は上述した事情に鑑みて、優
れた撥水性を有する撥水性物品、具体的には水滴の接触
角が大きく、さらに水滴の転がり性が優れており、加え
て高い耐擦傷性、耐候性を有する撥水性物品、その製造
方法および撥水性被膜形成用溶液の提供を目的とする。
さらに本発明は、保管および塗布作業中の雰囲気の湿度
管理が容易な、撥水性物品の製造方法および撥水性被膜
形成用溶液の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の手段は以下のようである。すなわち、請求項1とし
て、クロロシリル基含有化合物とフルオロアルキル基含
有シラン化合物を、アルコールおよび/または水を含む
溶媒に溶解し、前記クロロシリル基含有化合物のクロロ
基を、アルコキシル基または水酸基に置換した溶液を基
材表面に塗布した後乾燥し、撥水性被膜を形成する工程
を含むことを特徴とする撥水性物品の製造方法である。
【0015】請求項2として、シリコンアルコキシドま
たはその加水分解物が単量体または19量体以下の重合
体で含有し、さらにフルオロアルキル基含有シラン化合
物および酸を含有する溶液を、基材表面に塗布した後乾
燥し、撥水性被膜を形成する工程を含むことを特徴とす
る撥水性物品の製造方法である。
【0016】請求項3として、請求項1または2記載の
方法で得られる撥水性物品であって、前記撥水性被膜の
表面が算術平均粗さ(Ra)=0.5nm以下、かつ十
点平均粗さ(Rz)=5nm以下の粗さを有することを
特徴とする撥水性物品である。
【0017】請求項4として、請求項1または2記載の
方法で得られる撥水性物品であって、前記撥水性被膜の
表面におけるフッ素濃度が、フッ素原子と珪素原子との
原子比で表して0.8以上である撥水性物品である。
【0018】請求項5として、クロロシリル基含有化合
物とフルオロアルキル基含有シラン化合物を、アルコー
ルおよび/または水分を含む溶媒に溶解させ、前記クロ
ロシリル基含有化合物のクロロ基を、アルコキシル基ま
たは水酸基に置換させたことを特徴とする撥水性被膜形
成用溶液である。
【0019】請求項6として、シリコンアルコキシドま
たはその加水分解物が単量体または19量体以下の重合
体で含有し、さらにフルオロアルキル基含有シラン化合
物および酸を含有することを特徴とする撥水性被膜形成
用溶液である。
【0020】請求項7として、クロロシリル基含有化合
物とフルオロアルキル基含有シラン化合物を、アルコー
ルおよび/または水を含む溶媒に溶解させ、前記クロロ
シリル基含有化合物のクロロ基を、アルコキシル基また
は水酸基に置換させて、シリコンアルコキシドまたはそ
の加水分解物が単量体または19量体以下の重合体で含
有することを特徴とする撥水性被膜形成用溶液である。
【0021】さらに、上述した撥水性物品の製造方法に
おいて、前記溶液は酸および水分を、酸の濃度をS(規
定)で、水分の濃度をW(重量%)で表して、0.00
1≦S≦3、0≦W≦20 で表される濃度でそれぞれ
含有し、前記クロロシリル基含有化合物と前記フルオロ
アルキル基含有シラン化合物の比率を、前記クロロシリ
ル基含有化合物中の珪素原子の数Si(Cl)とフルオロア
ルキル基含有シラン化合物中の珪素原子の数Si(F)で
表して、Si(Cl):Si(F)=100:(0.05〜5
0)の比率で溶解する撥水性物品の製造方法である。
【0022】前記酸の濃度と前記水分の濃度がそれぞ
れ、0.01≦S≦1、0≦W≦10であり、前記比率
が、Si(Cl):Si(F)=100:(0.05〜30)
である撥水性物品の製造方法である。
【0023】前記酸の濃度と前記水分の濃度がそれぞ
れ、0.1≦S≦1、0≦W≦2であり、前記比率が、
Si(Cl):Si(F)=100:(0.05〜3)である
撥水性物品の製造方法である。
【0024】前記溶液は、前記クロロシリル基含有化合
物および前記フルオロアルキル基含有シラン化合物を、
それらの合計で0.01〜10重量%の濃度で、溶解す
る撥水性物品の製造方法である。
【0025】前記クロロシリル基含有化合物は、テトラ
クロロシランである撥水性物品の製造方法である。
【0026】前記フルオロアルキル基含有シラン化合物
は、フルオロアルキル基を含有し、かつアルコキシ基、
アシロキシ基、または塩素基を含有するシラン化合物で
ある撥水性物品の製造方法である。
【0027】前記フルオロアルキル基含有シラン化合物
は、3−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン
または3−ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン
である撥水性物品の製造方法である。
【0028】前記溶媒は、親水性溶媒である撥水性物品
の製造方法である。
【0029】前記溶媒は、アルコール系溶媒である撥水
性物品の製造方法である。
【0030】前記基材は、該表面に親水性基を有してい
る基材である撥水性物品の製造方法である。
【0031】さらに前記溶液に酸を添加溶解する撥水性
物品の製造方法である。
【0032】前記溶液は、該溶液の水分含有量の0.3
倍以上の濃度を有する酸を含む撥水性物品の製造方法で
ある。
【0033】前記酸は、塩酸である撥水性物品の製造方
法である。
【0034】前記溶液のpHは、0〜3である撥水性物
品の製造方法である。
【0035】前記撥水性被膜の膜が5〜200nmの厚
みである撥水性物品の製造方法である。
【0036】また上述した方法で得られる撥水性物品で
あって、前記撥水性被膜の表面が算術平均粗さ(Ra)
=0.5nm以下、かつ十点平均粗さ(Rz)=5nm
以下の粗さを有することを特徴とする撥水性物品であ
る。
【0037】また上述した方法で得られる撥水性物品で
あって、前記撥水性被膜の表面におけるフッ素濃度が、
フッ素原子と珪素原子との原子比で表して0.8以上で
ある撥水性物品である。
【0038】さらに、基材と、該基材表面にゾルゲル法
により被覆された、酸化珪素を主成分としフルオロアル
キル基を含有する撥水性被膜からなる撥水性物品であっ
て、前記撥水性被膜の表面が算術平均粗さ(Ra)=
0.5nm以下、かつ十点平均粗さ(Rz)=5nm以
下の粗さを有することを特徴とする撥水性物品である。
【0039】基材と、該基材表面にゾルゲル法により被
覆された、酸化珪素を主成分としフルオロアルキル基を
含有する撥水性被膜からなる撥水性物品であって、前記
撥水性被膜の表面におけるフッ素濃度が、フッ素原子と
珪素原子との原子比で表して0.8以上である撥水性物
品である。
【0040】さらにまた、上述した撥水性被膜形成用溶
液において、前記溶液は、酸および水分を、酸の濃度を
S(規定)で、水分の濃度をW(重量%)で表して、
0.001≦S≦3、0≦W≦20 で表される濃度で
それぞれ含有し、前記クロロシリル基含有化合物と前記
フルオロアルキル基含有シラン化合物の比率を、前記ク
ロロシリル基含有化合物中の珪素原子の数Si(Cl)とフ
ルオロアルキル基含有シラン化合物中の珪素原子の数S
i(F)で表して、Si(Cl):Si(F)=100:(0.0
5〜50)の比率で溶解している撥水性被膜形成用溶液
である。
【0041】前記酸の濃度と前記水分の濃度がそれぞ
れ、0.01≦S≦1、0≦W≦10であり、前記比率
が、Si(Cl):Si(F)=100:(0.05〜30)
である撥水性被膜形成用溶液である。
【0042】前記酸の濃度と前記水分の濃度がそれぞ
れ、0.1≦S≦1、0≦W≦2であり、前記比率が、
Si(Cl):Si(F)=100:(0.05〜3)である
撥水性被膜形成用溶液である。
【0043】前記溶液は、前記クロロシリル基含有化合
物および前記フルオロアルキル基含有シラン化合物を、
それらの合計で0.01〜10重量%の濃度で、溶解す
る撥水性被膜形成用溶液である。
【0044】前記クロロシリル基含有化合物は、テトラ
クロロシランである撥水性被膜形成用溶液である。
【0045】前記フルオロアルキル基含有シラン化合物
は、フルオロアルキル基を含有し、かつアルコキシ基、
アシロキシ基、または塩素基を含有している撥水性被膜
形成用溶液である。
【0046】前記フルオロアルキル基含有シラン化合物
は、3−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン
または3−ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン
である撥水性被膜形成用溶液である。
【0047】前記溶媒は、親水性溶媒である撥水性被膜
形成用溶液である。
【0048】前記溶媒は、アルコール系溶媒である撥水
性被膜形成用溶液である。
【0049】さらに前記溶液に酸を添加溶解している撥
水性被膜形成用溶液である。
【0050】前記溶液は、該溶液の水分含有量の0.3
倍以上の濃度を有する酸を含んでいる撥水性被膜形成用
溶液である。
【0051】前記酸は、塩酸である撥水性被膜形成用溶
液である。
【0052】前記溶液のpHは、0〜3である撥水性被
膜形成用溶液である。
【0053】以下に本発明に用いられる化合物、溶媒な
どについて、詳細に説明する。本発明に用いられるクロ
ロシリル基含有化合物とは、クロロシリル基(−SiC
n3-n、ここでnは1,2,または3である。Xは水
素、またはそれぞれ炭素数が1〜10のアルキル基、ア
ルコキシ基、またはアシロキシ基である)を分子内に少
なくとも1個有する化合物である。
【0054】そのなかでも、少なくとも2個の塩素を有
する化合物が好ましく、シランSi n2n+2( ここでn
は1〜5の整数)のなかの少なくとも2個の水素を塩素
で置換し、他の水素を必要に応じて前記アルキル基、ア
ルコキシ基、またはアシロキシ基で置換したクロロシラ
ン、およびその部分加水分解物、およびその縮重合物が
好ましい。
【0055】例えば、テトラクロロシラン SiC
4、トリクロロシラン SiHCl3、トリクロロモノ
メチルシラン SiCH3Cl3、ジクロロシラン Si
2Cl2、 およびCl−(SiCl2O)n−SiCl3
(nは1〜10の整数)等を挙げることができる。これ
らのなかから、単独でまたは複数を組み合わせて使用す
ることができる。最も好ましいクロロシリル基含有化合
物は、テトラクロロシランである。
【0056】また、本発明に用いられるフルオロアルキ
ル基含有のシラン化合物としては、フルオロアルキル基
を含有し、かつ、アルコキシ基、アシロキシ基、または
クロロ基を含有するシラン化合物を好ましく使用するこ
とができる。例えば、下記化学式(1)、(2)で示さ
れる化合物を挙げることができる。これらのなかから、
単独でまたは複数の化合物を組み合わせて使用すること
ができる。
【0057】
【化1】 CF3−(CF2n−R−SiXp3-p (1) (ここで、nは0から12の整数、好ましくは3から1
2の整数、Rは炭素原子数2〜10の二価の有機基(例
えばメチレン基、エチレン基)、または珪素原子および
酸素原子を含む基、Xは炭素原子数1〜4の一価炭化水
素基(例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリル
基)もしくはこれらの誘導体から選ばれる置換基、また
は水素、pは0、1または2、Yは炭素原子数が1〜4
のアルコキシ基又はアシロキシ基)
【0058】
【化2】 CF3−(CF2n−R−SiXpCl3-p (2) (ここで、nは0から12の整数、好ましくは3から1
2の整数、Rはメチレン基、エチレン基、または珪素原
子および酸素原子を含む基、XはHまたはアルキル基、
シクロアルキル基、アリル基またはこれらの誘導体から
選ばれる置換基、pは、0、1または2)
【0059】前記化学式(1)の化合物の例としては、
以下のものが挙げられる。
【化3】CF3CH2CH2Si(OCH33
【化4】
【化5】C817CH2CH2Si(OCH33
【化6】
【化7】C817CH2CH2Si(OC253
【化8】C817CH2CH2Si(OC(CO)CH3
3
【化9】
【0060】これらのなかでは、C817CH2CH2
i(OCH33 (3−ヘプタデカフルオロデシルトリ
メトキシシラン )およびC817CH2CH2Si(CH
3)(OCH32が特に好ましい。
【0061】また、前記化学式(2)の化合物の例とし
ては、以下のものが挙げられる。
【化10】CF3CH2CH2SiCl3
【化11】
【化12】C817CH2CH2SiCl3
【化13】
【0062】これらのなかでは、C817CH2CH2
iCl3 (3−ヘプタデカフルオロデシルトリクロロ
シラン)、およびC817CH2CH2Si(CH3)Cl
2が特に好ましい。
【0063】つぎに溶媒について説明する。溶媒として
は、クロロシリル基含有化合物のクロロ基を、アルコキ
シル基または水酸基に置換し脱塩化水素反応を起こしう
る、アルコールおよび/または水分を含む溶媒が用いら
れる。例えば、アルコール系の親水性溶媒、ケトン系の
親水性溶媒などが好ましく用いられる。
【0064】そのなかでもアルコール系、例えばメタノ
ール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノー
ルのような炭素数が3以下の鎖式飽和1価アルコール
は、常温における蒸発速度が大きいので、さらに好まし
く用いられる。
【0065】ケトン系の親水性溶媒としては、アセトン
やメチルエチルケトンなどを挙げることができる。
【0066】なお溶媒には、前記脱塩化水素反応を起こ
しうるに必要な水分を含む溶媒であれば、必ずしもアル
コールを含む必要はない。さらに溶媒は、親水性溶媒の
みで構成される必要はなく、炭化水素系やフッ素系等の
非水系溶媒を含んでいてもかまわない。
【0067】製法発明においては、前記クロロシリル基
含有化合物、フルオロアルキル基含有シラン化合物を親
水性溶媒に溶解した溶液を基材、例えばガラス基板の表
面に塗布する。そのときに、基材表面の−OH基と、塗
布された膜中のフルオロアルキル基含有シラン化合物、
クロロシリル基含有化合物および親水性溶媒の間で、種
々の化学反応が起こる。
【0068】すなわち、以下に詳述するように、クロロ
シリル基は溶液内において、その調合中、貯蔵中および
成膜中に反応して、シロキサン結合(−Si−O−Si
−)に変化する。その変化したシロキサン結合の一部が
フルオロアルキル基含有のシラン化合物と、他の一部が
基板表面とそれぞれシロキサン結合を形成する。
【0069】例えば、溶媒としてアルコール系溶媒を使
用した場合、溶液中のクロロシリル基含有化合物は、式
(14)に示すように、アルコール系溶媒と脱塩化水素
反応により、アルコキシドを形成する。また、クロロシ
リル基含有化合物は、アルコール系溶媒中や雰囲気中に
微量含まれる水分によって、加水分解反応を起こし、式
(15)に示すように、塩化水素がとれる(脱塩化水素
反応)。このときに、シラノール(・・Si−OH)が生
成される。なお、式中のRはアルキル基である。
【0070】
【化14】 (・・Si−Cl)+(ROH)→(・・Si−OR)+(HCl) (14)
【化15】 (・・Si−Cl)+(H2O)→(・・Si−OH)+(HCl) (15)
【0071】アルコール溶媒中で、式(14)、式(1
5)により生成した塩酸は、式(16)の反応の触媒と
して作用し、(・・Si−OR)の一部はさらにシラノー
ルを生成する。
【化16】 (・・Si−OR)+(H2O)→(・・Si−OH)+(ROH) (16)
【0072】そして、式(15)および式(16)で生
成されたシラノールの一部は、式(17)のように反応
して、シロキサン結合(−Si−O−Si−)形成をす
る。また生成されたシラノールのある一部は、式(1
8)に示すように脱水縮合反応して、やはりシロキサン
結合を形成する。
【0073】
【化17】 (・・Si−Cl)+(・・Si−OH)→(・・Si−O−Si・・)+(HCl) (17)
【化18】 (・・Si−OH)+(・・Si−OH)→(・・Si−O−Si・・)+(H2O) (18)
【0074】クロロシリル基含有化合物のクロロ基の反
応性は極めて高い。このため、アルコール溶媒中のクロ
ロシリル基含有化合物は、クロロ基のほとんどが反応し
て、(・・Si−OR)、(・・Si−OH)、(・・Si−
O−Si・・)、(HCl)に変化している。つまり、上
述の溶液では、アルコール溶媒中にシリコンアルコキシ
ドまたはその加水分解物、フルオロアルキル基含有シラ
ン化合物のほかに、塩酸も含有していることになる。ま
た、溶媒がアルコール系以外の親水性溶媒の場合でも、
前記クロロ基は親水性溶媒中に不可避的に含まれる水分
と反応して、式(15)、式(18)のように(・・Si
−OH)、(・・Si−O−Si・・)、(HCl)に変化
する。
【0075】したがって、反応性の極めて高いクロロ基
は、ほとんど残存しないことになるので、溶液のポット
ライフを長くすることができる。さらにまた、作業中の
雰囲気の湿度の影響も受けにくくなるので、その管理も
容易となる。
【0076】ところで前記溶液中において、式(16)
の加水分解反応を起こすかどうかと、式(18)に示す
ような脱水縮合反応を起こすかどうかは、前記溶液の酸
濃度、前記シリコンアルコキシドまたはその加水分解物
の濃度、含まれる水分量によって大きく左右される。
【0077】製法発明と溶液発明においては、溶液中の
シリコンアルコキシドを、上述した脱水縮合反応を抑制
し、極力単量体のままあるいは重合度の低いまま保持す
ることを特徴の1つとしている。この溶液を基板表面に
塗布、乾燥する時に、急激に式(16)および式(1
8)の反応を起こさせて、シロキサン結合を形成させる
ため、常温で緻密な被膜を形成することを可能にした。
【0078】したがって、製法発明と溶液発明におい
て、溶液中のシリコンアルコキシドまたはその加水分解
物は、単量体または19量体以下の重合体であることが
望ましい。しかし、単量体、加水分解物、および19量
体以下の重合体の合計の割合が、シリコンアルコキシド
全体に対して80重量%以上であれば、20量体以上の
重合体が含まれていてもかまわない。
【0079】溶液中の酸について説明する。例えば、ア
ルコール溶媒中にテトラクロロシランを1重量%溶解さ
せた場合、式(14)の反応で塩酸が生成される。溶液
中の酸濃度は約0.2規定となり、また溶液のpHは約
0.7となる。したがって、アルコール溶媒を用いる
と、上述のように塩酸が生成されるので、特に酸を添加
溶解しなくてもよい。
【0080】この塩酸は、その濃度を0.001〜3規
定に保つと、溶液のpHは0〜3となって、式(16)
および式(18)の反応が起こり難くなる。その結果、
シリコンアルコキシドおよびその加水分解物の状態で、
溶液を長時間安定に保持することができる。
【0081】また、溶液中の酸触媒の濃度が0.001
規定未満あるいは3規定を越えると、液中のシリコンア
ルコキシドの部分加水分解物の縮合反応が起こりやすく
なり、溶液のポットライフが短くなる。しかも、溶液塗
布後の被膜の乾燥過程で、酸は揮発して膜外へ出ていく
ため、酸濃度はある程度高い状態が維持されることが必
要である。
【0082】したがって酸濃度の下限値は、0.001
規定以上を必須とし、0.01規定以上がより好まし
く、0.1規定以上がさらに好ましい。一方、酸濃度の
上限値は、3規定以下を必須とし、1規定以下がより好
ましい。なお、前記縮合反応が進行する前に塗布するの
であれば、前記範囲を超えてもかまわない。
【0083】もし、溶解するクロロシリル基含有化合物
の量が少ない等の理由で、溶液中の酸の濃度が低い場合
は、別途酸を添加溶解して、溶液中の酸の濃度を調整す
ることが望ましい。
【0084】別途酸を添加溶解する場合は、水分含有量
の0.3倍以上の濃度を有する酸を使用することが望ま
しい。もし、使用する酸が水分含有量の0.3倍未満の
低濃度の酸である場合には、前記溶液のpHを3以下に
保つことが困難となるからである。すなわち、水溶液の
状態の酸を使用するときは、23.1%以上の濃度を有
する高濃度の酸である必要がある。
【0085】また、酸をエタノール溶媒に添加溶解した
状態で使用するときには、エタノールが例えば0.5重
量%の水分を含有しているとすれば、溶液中の酸の濃度
は0.15重量%以上である必要がある。
【0086】なお酸を添加する場合、その種類として
は、常温の乾燥で揮発して膜中に残らないという観点か
ら、塩酸、弗酸、硝酸、酢酸等の揮発性の酸が好まし
い。なかでも、高い揮発性を有し、取り扱う際にも比較
的安全な、塩酸が特に好ましい。
【0087】また、溶液中のシリコンアルコキシドまた
はその加水分解物および縮合物の濃度については、でき
るだけ低いほうが、式(16)および式(18)の反応
を起こりにくくすることができる。このため、クロロシ
リル基含有化合物およびフルオロアルキル基含有化合物
は、それらの合計で10重量%以下であることが望まし
い。
【0088】さらに塗布、乾燥後の撥水性被膜の膜厚
を、5nm以上200nm以下とすると、前記被膜の耐
久性を向上させることができる。このため、クロロシリ
ル基含有化合物およびフルオロアルキル基含有化合物の
合計の濃度は、コーティング方法によっても異なるが、
0.01重量%以上10重量%以下が適当である。な
お、縮合反応が進行する前に塗布すれば、前記範囲を超
えてもかまわない。
【0089】もし、クロロシリル基含有化合物およびフ
ルオロアルキル基含有化合物の合計の濃度が0.01重
量%よりも低いと、塗布、乾燥後の撥水性被膜の膜厚
は、コーティング方法によっても異なるが、5nmより
も薄くなる。その結果、基材にアルカリ成分を含む場
合、該アルカリ成分の拡散を防止する能力が殆どなくな
り、被膜の耐久性が劣ることになる。
【0090】一方10重量%よりも濃度が高いと、前記
膜厚はコーティング方法によっても異なるが、200n
m以上となる。この場合、撥水性被膜に傷がつき易くな
り、強固な被膜を得ることができなくなる。
【0091】さらにまた、光干渉による好ましくない着
色を生じないように、前記濃度は0.1重量%以上5重
量%以下がさらに好ましい。前記被膜の膜厚でいうと、
10nm以上100nm以下がさらに好ましい。
【0092】溶液中の水分量については、低いほど式
(16)および式(18)の反応が起こり難い。他方、
溶液中に多量の水が存在すると、溶液中でシリコンアル
コキシドの部分加水分解物の加水分解反応が促進され、
かつ脱水縮合反応が起こりやすくなる。このため、溶液
のポットライフが短くなり、また、溶液の塗布後の乾燥
の際に膜厚のムラが生じやすくなる。
【0093】したがって、溶液のポットライフを長く
し、塗布後の乾燥の際の膜厚のムラをなくするために
は、溶液中の水分の濃度はできるだけ小さい方が好まし
い。ゆえに、溶液中の水分の濃度は0〜20重量%であ
ることが好ましく、0〜10重量%であることがさらに
好ましく、0〜2重量%であることが最も好ましい。
【0094】このように溶液中の水分の濃度を維持調整
することにより、式(16)および式(18)の反応を
起こりにくくすることができる。
【0095】また例え、溶液中の水分の濃度がゼロであ
っても、基材に塗布された後の塗布膜には空気中の水分
が吸収されるので、加水分解反応が阻害されることはな
い。
【0096】なお、親水性溶媒の場合、例えばアルコー
ル溶媒には通常、空気中の水分を吸収するなどして、若
干の水分が不可避的に含まれている。その結果、前記溶
液中の水分の濃度は0.1重量%以上となるので、特に
水分を添加しなくてもよい場合がある。
【0097】前記溶液を基材に塗布すると、形成された
被膜中の溶媒が蒸発して、シリコンアルコキシドまたは
その加水分解物の塗膜中濃度が急に高くなり、それまで
抑制されていた加水分解反応および脱水縮合反応(上記
19量体以下の重合体のさらなる縮重合反応を含む)
が、急激に起こる。つまり、シロキサン結合(・・Si−
O−Si・・)が前記被膜中に多数生成される。その結
果、基材表面と撥水膜との間の結合が強固である、酸化
珪素を主成分とする被膜を形成することができる。
【0098】上述したように製法発明によると、被膜形
成時における加水分解および脱水縮合の反応性が非常に
高いので、室温でも十分に反応し、非常に緻密な被膜が
形成される。このため通常の用途では、その後に焼成工
程を必要としない。
【0099】つぎに、フルオロアルキル基の配向に関し
て述べる。溶液中におけるフルオロアルキル基含有シラ
ン化合物中のアルコキシ基(またはアシロキシ基、塩素
基)は、上述のシリコンアルコキシドとほぼ同じ反応が
進行する。ところで、フルオロアルキル基の表面エネル
ギーが低いために、溶液を塗布すると、自然にフルオロ
アルキルシラン成分が、形成された被膜の外側に移動
し、フルオロアルキル基部分が被膜の外側に向かうよう
に、規則的にフルオロアルキル基含有シラン化合物が配
向することになる。
【0100】そして被膜の外側表面層では、被膜の内層
に比して、フルオロアルキル基が高い濃度で存在するこ
とになる。前記被膜の乾燥が進行していくと、フルオロ
アルキル基含有シラン化合物がその配向を保ったままの
状態で、シリコンアルコキシドのアルコキシ基と、フル
オロアルキル基含有シラン化合物中のアルコキシ基(ま
たはアシロキシ基、塩素基)は、式(16)、式(1
8)に示した反応が進行していく。さらに、フルオロア
ルキル基含有シラン化合物が、シリコンアルコキシドと
シロキサン結合を介して強く結合し、最終的にフルオロ
アルキルシラン変性シラノールポリマーのゲル層を形成
する。
【0101】形成された被膜の乾燥が進んでいくと、基
板上には強固に結合した酸化珪素を主成分とする層が形
成され、その酸化珪素層の上にフルオロアルキル基が、
高い密度でしかも規則的に配向した状態で結合される。
【0102】製法発明において、前記フルオロアルキル
基含有シラン化合物は、溶媒中にシリコンアルコキシド
と共存することで、溶液中および被膜形成時に式(1
6)、式(18)のような反応を経て、シリコンアルコ
キシドとシロキサン結合を形成し、被膜形成時に撥水基
であるフルオロアルキル基が、被膜の外側に向かうよう
に配向されることにより撥水膜が形成される。
【0103】製法発明では、被膜形成時の反応性を上げ
るために、溶液の酸濃度を高くしている。このため、室
温で被膜形成可能でありながら、非常に緻密な膜の形成
が可能である。また、式(16)および式(18)の反
応、すなわち、シリコンアルコキシドの珪素同士がシロ
キサン結合を形成する反応、および基板表面の珪素とシ
リコンアルコキシド中の珪素がシロキサン結合を形成す
る反応は、フルオロアルキル基含有のシラン化合物が、
シリコンアルコキシドとシロキサン結合を形成する反応
よりも起こり易く、結果として被膜の最表面にフルオロ
アルキル基が集まり易くなる。したがって、被膜の最表
面の撥水基密度が高い、撥水性被膜となる。
【0104】前記溶液中のクロロシリル基含有化合物に
対する、フルオロアルキル基含有シラン化合物の含有量
が小さすぎると撥水膜の撥水性能は低下し、また多すぎ
ると撥水性被膜の耐久性能が低下する。したがって前記
溶液は、前記クロロシリル基含有化合物と前記フルオロ
アルキル基含有シラン化合物の比率を、前記クロロシリ
ル基含有化合物中の珪素原子の数Si(Cl)とフルオロア
ルキル基含有シラン化合物中の珪素原子の数Si(F)で
表して、Si(Cl)100に対し、Si(F)が0.05以
上で50.0以下の比率で含有することが好ましく、
0.05以上30以下がさらに好ましく、0.05以上
3以下が最も好ましい。
【0105】なお上述した溶液中で、加水分解、縮重合
反応を進めた場合には、緻密な被膜は得られない。被膜
を緻密にするためには、250℃、1時間程度以上の焼
成工程が必要となる。この焼成時における温度上昇によ
り、基板中のアルカリ成分が膜中に拡散して、フルオロ
アルキル基の撥水作用を阻害する傾向がある。しかし、
本発明により得られた被膜は、十分な緻密性を有してお
り、基本的に焼成工程は不要である。
【0106】さらに、本製法発明では、撥水膜の緻密性
をさらに高くする目的で、前記撥水性被膜形成用溶液を
基材表面に塗布し、室温または150℃以下の温度で乾
燥した後、または乾燥せずに、その温度よりも高く30
0℃以下の温度で焼成することも可能である。この場
合、焼成前の被膜は十分に緻密であるので、アルカリ成
分が被膜中に拡散し、被膜の耐久性に悪影響を及ぼすこ
とは少ない。
【0107】また、本発明で得られた撥水性物品の撥水
性被膜は、その表面の平滑性が非常に優れているという
特徴を有する。前記撥水性被膜の表面粗さ特性は、算術
平均粗さ(Ra)=0.5nm以下、かつ十点平均粗さ
(Rz)=5nm以下である。なお、この表面粗さ特性
Ra、Rzは、二次元で定義されるJIS B 060
1−1982を三次元に拡張した方法により測定するこ
とができる。
【0108】前記撥水性被膜が、優れた水滴の転がり性
と耐擦傷性を有する理由の1つとしては、上述した表面
の平滑性によると考えられる。そしてこの平滑性が得ら
れる理由は、以下のようである。前記溶液内において、
シリコンアルコキシドおよびフルオロアルキル基含有シ
ラン化合物、特にシリコンアルコキシドが、単量体(加
水分解物を含む)または19量体以下の重合体で存在す
るので、溶媒に対して均一に溶解させることが可能とな
る。したがって、前記溶液を基材表面に塗布すれば、均
一な膜厚の状態とすることができる。
【0109】さらに塗布された被膜で乾燥が進むと、均
一な膜厚の状態のままで、膜形成反応が短い時間で急速
に進行するので、結果として平滑性に優れた被膜が形成
されることになる。
【0110】さらに、本製法発明では、成膜時に自然に
撥水基を配向させるため、従来のように後から化学吸着
や手塗り等で撥水処理するよりも、配向性の良い撥水層
を形成することができると考えられる。したがって本発
明によれば、撥水性被膜表面の撥水基密度が高く、撥水
基の配向性も優れ、さらに表面の平滑性の効果が合わさ
って、優れた水滴の転がり性および耐候性、耐擦傷性が
得られる。
【0111】本製法発明における溶液は、アルコールお
よび/または水分を含む溶媒にフルオロアルキル基含有
シラン化合物を添加し、10〜60分間撹拌し、ついで
これにクロロシリル基含有化合物を添加し、10〜60
分間撹拌することにより調製される。この溶液の寿命は
非常に長い。しかし、比較的酸の量が少ない、または多
い場合や、クロロシリル基含有化合物、水分量が多い場
合は、溶液中で加水分解、縮重合反応が進む可能性があ
るので、調整後2時間以内に処理した方が好ましい。上
述のように調整された溶液を基板表面に塗布した後、室
温で10秒〜10分間乾燥して溶媒を蒸散させることに
より、撥水性物品が得られる。
【0112】また、本製法発明では、被膜形成時に自然
に撥水基を配向させるため、溶液の塗布方法としては、
塗布膜をある程度ゆっくり乾燥させることができる方法
が好ましい。例えばディップコーティング、フローコー
ティング、カーテンコーティング、スピンコーティン
グ、スプレーコーティング、バーコーティング、ロール
コーティング、刷毛塗りコーティングなどが挙げられ
る。
【0113】このため、形成された被膜の緻密性が高
く、しかも表面の平滑性および撥水基密度、撥水基の配
向性が優れる撥水性被膜が形成された撥水性物品を得る
ことが可能となる。さらに本発明による撥水性物品は、
水滴の転がり性が優れ、高い耐擦傷性および耐候性を有
している。
【0114】本発明に用いられる基材としては、該基材
の表面に親水性基を有するものが用いられる。具体的に
は、ガラス、セラミックス、プラスチックあるいは金属
等が挙げられる。もし、これらの基材の表面に親水性基
が少ない場合には、その表面を予め酸素を含むプラズマ
またはコロナ雰囲気で処理して親水性化したり、あるい
は、基材表面を酸素を含む雰囲気中で200〜300n
m付近の波長の紫外線を照射して、親水性化処理を行っ
た後に、本発明を適用することが好ましい。
【0115】以下に本発明の実施の形態を説明する。 [実施例1]エタノール 100g(含有水分率0.3
5重量%)に、3−ヘプタデカフルオロデシルトリメト
キシシラン(CF3(CF27(CH22Si(OC
33 信越シリコーン製)0.02gを添加し、3
0分間撹拌し、次いでテトラクロロシラン(SiC
4、 信越シリコーン製)1.0gを撹拌しながら添加
し、撥水性被膜形成用溶液を得た。この溶液は、Si(C
l)100に対し、Si(F)が0.6の比率で含有し、約
0.2規定の塩酸濃度、0.35重量%の水分濃度を有
しており、約0.7のpHを有していた。
【0116】さらにこの溶液をフーリエ変換核磁気共鳴
装置(FT−NMR:日本電子社製「EX270」)を
用いて、測定したところ、テトラエトキシシラン(およ
びその(部分)加水分解物)の存在を表すケミカルシフ
ト−82ppmの吸収ピーク、およびテトラエトキシシ
ランの3量体の存在を表すケミカルシフト−96ppm
の吸収ピークが観察され、4量体以上の重合体の存在を
示す吸収ピークは検出されなかった。
【0117】この溶液を洗浄したガラス基板(150×
150mm)の表面上に、湿度30%、室温下でフロー
コート法にて塗布し、室温で約1分乾燥させて撥水性ガ
ラス板を得た。Si(Cl)100に対するSi(F)の比
率、塩酸の規定度、水分量(重量%)、溶液のpH、お
よび重合体の重合度を、それぞれ表1に示す。
【0118】得られた撥水性ガラス板について、水の接
触角を接触角計(CA−DT、協和界面科学(株)製)
を用いて、2mgの重量の水滴による静的接触角(以
下、CAと記す場合あり)として測定した。なおこの接
触角の値が大きいほど、静的な撥水性が優れていること
を表している。
【0119】また、水滴が撥水性ガラス板の表面を転が
る性能を示す尺度としては、水平に配置した撥水性ガラ
ス板表面に直径5mmの水滴を置き、撥水性ガラス板を
徐々に傾斜させて、その表面に置かれた水滴が転がり始
めるときのガラス板の傾斜角度(臨界傾斜角、以下IA
と記す場合あり)を測定した。IAが小さい程、動的な
撥水性が優れており、例えば走行中の自動車のフロント
ガラス窓に付着した雨滴が飛散しやすくなって、運転者
の視界が妨げられないことを表している。
【0120】また、得られた撥水性ガラスの平滑性は、
原子間力顕微鏡(AFM)(セイコー電子工業(株)
製、走査型プローブ顕微鏡「SPI3700」、カンチ
レバー;シリコン製「SI−DF20」)を用いて、試
料の測定面積1μm×1μmの正方形、測定点数512
×256点、スキャンスピード1.02Hz、DFM
(サイクリックコンタクトモード)にて表面形状を測定
し、ローパスフィルターによる補正と、測定データのレ
ベリング補正(最小二乗近似によって曲面を求めてフィ
ッティングし、データの傾きを補正し、更にZ軸方向の
歪みを除去する)を行い、表面粗さRa、およびRz値
を算出した。
【0121】さらに、得られた撥水性ガラスの被膜表面
のフッ素濃度は、X線光電子分光法(5600Ci、ア
ルバックファイ製)を用いて、被膜表面のF/Siの原
子比率として求めた。X線光電子分光法の測定条件は、
X線光電子分光法(ESCA)の試験条件は、X線源と
して、モノクロ化したアルミニウムのKα線を用いて、
アノードエネルギー;1486.6eV、アノード出
力;150W、加速電圧;14kV、試料に対するX線
入射角;45度、分析面積;直径800μmの円、測定
厚み;数nmである。
【0122】次に、耐候性試験として、耐紫外線試験機
(「アイスーパーUVテスター W−13」、岩崎電気
製)を用いて、紫外線強度76±2mW/cm2 とし、
ブラックパネル温度48±2℃、照射20時間、暗黒4
時間のサイクルで、 1時間毎に30秒間イオン交換水シ
ャワーリングをする条件で400時間紫外線を照射し
た。そして照射後に水のCAおよびIAを測定した。
【0123】また、耐摩擦性試験として往復摩耗試験機
(新東科学(株)製)に乾布を取り付けて、荷重0.3
kg/cm2 の条件で撥水膜表面を3000回往復摺動
させ、その後に水のCAおよびIAを測定した。また撥
水膜の厚みを透過型電子顕微鏡により測定した。撥水膜
の膜厚、初期のCAとIA、被膜表面のフッ素濃度F/
Si値、表面粗さ Ra、Rz値、耐候性試験後のCA
とIA、および耐摩擦性試験後のCAとIAの測定結果
を表2に示す。
【0124】[実施例2]実施例1で得られた撥水性ガ
ラス板を、さらに250℃で1時間焼成して撥水性ガラ
スを得た。実施例1と同様に測定した結果を表1および
2に示す。
【0125】[実施例3および4]撥水性被膜形成用溶
液の調合で、3−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキ
シシランを0.005g、0.05g添加した以外は、
実施例1と同様にして撥水性ガラス板を得た。3−ヘプ
タデカフルオロデシルトリメトキシシランの添加量が
0.005gおよび0.05gの場合を、それぞれ実施
例3および実施例4とする。なおこの溶液は、テトラク
ロロシランと3−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキ
シシランを、Si(Cl)100に対し、Si(F)が0.1
5(実施例3)および1.5(実施例4)の比率で含有
していた。実施例1と同様に測定した結果を表1および
2に示す。
【0126】[実施例5および6]撥水性被膜形成用溶
液の調合において、実施例1におけるテトラクロロシラ
ン添加量の1.0gに代えて、0.5g、または2.0
g添加した以外は、実施例1と同様にして撥水性被膜付
きガラス板を得た。テトラクロロシランの添加量が0.
5gおよび2.0gのガラス板をそれぞれ実施例5およ
び実施例6とする。なおこの溶液は、テトラクロロシラ
ンと3−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン
を、Si(Cl)100に対し、Si(F)が1.2(実施例
5)および0.3(実施例6)の比率で含有していた。
実施例1と同様に測定した結果を表1および2に示す。
【0127】[実施例7]エタノール 100g(含有
水分率0.35重量%)に、3−ヘプタデカフルオロデ
シルトリメトキシシラン 0.1gを添加し、30分間
撹拌し、次いでテトラクロロシラン 5.0gを撹拌し
ながら添加し、撥水性被膜形成用溶液を得た。この溶液
は、テトラクロロシランと3−ヘプタデカフルオロデシ
ルトリメトキシシランを、Si(Cl)100に対し、Si
(F)が0.6の比率で含有していた。洗浄したガラス基
板(150×150mm)を、湿度30%、室温下で、
前記溶液に浸漬させディッピング法にて、10cm/分
の速度で引き上げて、室温で約1分乾燥させて撥水性被
膜付きガラス板を得た。実施例1と同様に測定した結果
を表1および2に示す。
【0128】[実施例8]実施例1の溶液の調合におい
て、3−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン
0.02gを添加する代わりに、3−ヘプタデカフル
オロデシルトリクロロシラン(CF3(CF27(C
22SiCl3) 0.02gを添加した以外は、実
施例1と同様にして撥水性被膜付きガラス板を得た。な
おこの溶液は、テトラクロロシランと3−ヘプタデカフ
ルオロデシルトリクロロシランを、Si(Cl)100に対
し、Si(F)が0.6の比率で含有していた。実施例1
と同様に測定した結果を表1および2に示す。
【0129】[実施例9]エタノール 100g(含有
水分率0.35重量%)に、3−ヘプタデカフルオロデ
シルトリメトキシシラン(CF3(CF27(CH22
Si(OCH33 信越シリコーン製)0.02gを
添加し、30分間撹拌し、次いでテトラクロロシラン
(SiCl4、 信越シリコーン製)0.3gを撹拌しな
がら添加し、次いで濃塩酸(35重量%、関東化学製)
2gを撹拌しながら添加し、撥水性被膜形成用溶液を得
た。この溶液は、テトラクロロシランと3−ヘプタデカ
フルオロデシルトリメトキシシランを、Si(Cl)100
に対し、Si(F)が2.0の比率で含有していた。この
溶液を洗浄したガラス基板(150×150mm)の表
面上に、湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布
し、室温で約1分乾燥させて撥水性被膜付きガラス板を
得た。実施例1と同様に測定した結果を表1および2に
示す。
【0130】[実施例10]実施例1の撥水性被膜形成
用溶液の調合において、エタノール(含有水分量0.3
5重量%)100gの代わりに、エタノール(含有水分
量0.35重量%)90gとイソパラフィン系炭化水素
溶媒(アイソパーL、エクソン製)10gとした以外
は、実施例1と同様にして撥水性被膜付きガラス板を得
た。撥水性被膜形成用溶液の組成を表1に示し、実施例
1と同様に測定した結果を表1および2に示す。
【0131】[実施例11]実施例1の撥水性被膜形成
用溶液の調合において、エタノール(含有水分量0.3
5重量%)100gの代わりに、エタノール90gと水
10gとした以外は、実施例1と同様にして撥水性被膜
付きガラス板を得た。撥水性被膜形成用溶液の組成を表
1に示し、実施例1と同様に測定した結果を表1および
2に示す。
【0132】[実施例12]実施例1の撥水性被膜形成
用溶液の調合において、テトラクロロシラン添加量1.
0gに代えて0.05gとした以外は、実施例1と同様
にして撥水性被膜付きガラス板を得た。撥水性被膜形成
用溶液の組成を表1に示し、実施例1と同様に測定した
結果を表1および2に示す。
【0133】以上の実施例1〜12で得られた撥水性被
膜付きガラス板は、100度以上の初期CAおよび9度
以下の初期IAを示し、優れた撥水性を有することがわ
かった。耐候性試験後の撥水性はやや低下するものの、
CAは80度以上であり、耐磨耗性試験後のCAは98
度以上であり、優れた耐久性を有することがわかった。
【0134】また撥水膜の厚みは5〜100nmであ
り、その膜の表面粗さはRaが0.5nm以下、Rz=
5nm以下であり、撥水性被膜表面の平滑性は優れてい
ることが確かめられた。
【0135】さらに、被膜表面のフッ素濃度について
は、溶液中での上述した加水分解物および脱水縮合反応
を抑制していたため、それぞれFはF/Siが0.8以
上であった。また、撥水性被膜外側表面層にはフルオロ
アルキル基が多量存在し、内部層は実質的に酸化珪素か
らなることが確かめられた。
【0136】また、以上の実施例で用いた撥水性被膜形
成用溶液は、いずれもゲル化することなく、適用するこ
とができた。
【0137】[比較例1]エタノール(含有水分量0.
35重量%) 81.2gに、テトラエトキシシラン
9.5gと3−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシ
シラン 0.26gを添加し、30分間撹拌し、次いで
水4.04gと0.1N塩酸5.0gを加えて10日間
撹拌し、エタノールで5倍に希釈して撥水性被膜形成用
溶液を得た。この溶液を洗浄したガラス基板(150×
150mm)上に、湿度30%、室温下でフローコート
にて塗布し、乾燥後、250℃で1時間焼成して、撥水
性被膜付きガラス板を得た。その結果を表1および2に
示す。
【0138】なお、表1における比較例1と比較例2の
Si(F)については、テトラエトキシシランの珪素原子
の数を100としたときの、フルオロアルキル基含有シ
ラン化合物中の珪素原子の数の比率である。
【0139】この比較例1は、上記実施例に比べて塩酸
の含有量が少ない例である。この例では、シリコンアル
コキシドおよびフルオロアルキル基含有シラン化合物の
加水分解物および脱水縮合反応が、溶液中で進行してい
た。なお、この比較例1と下記の比較例2は、上述した
特開平4−338137号を追試したものである。
【0140】[比較例2]エタノール(含有水分量0.
35重量%) 85.3gに、テトラエトキシシラン
40gと3−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシ
ラン 1.92gを添加し、20分間撹拌し、次いで水
16.6gと0.1N塩酸 20.8gを加えて2時
間撹拌し、これを密閉容器に入れ、25℃で24時間放
置して、撥水性被膜形成用溶液を得た。この溶液には、
テトラエトキシシランの30量体が含まれていた。洗浄
したガラス基板(150×150mm)をこの溶液に浸
漬し、ディッピング法で塗布し、乾燥後、250℃で1
時間焼成して、撥水性被膜付きガラス板を得た。その結
果を表1および2に示す。
【0141】この比較例2は、上記実施例に比べて水分
の含有量が多い例である。この例では、シリコンアルコ
キシドおよびフルオロアルキル基含有シラン化合物の加
水分解物および脱水縮合反応が、溶液中で進行してい
た。
【0142】[比較例3]フロン系溶媒として、CF3
CF2CHCl2(アサヒクリンAK−225、旭硝子
製)を40gにテトラクロロシラン1gと、3−ヘプタ
デカフルオロデシルトリクロロシラン1gを添加し、3
0分間撹拌して撥水性被膜形成用溶液を得た。この溶液
を洗浄したガラス基板(150×150mm)上に、湿
度30%、室温下で木綿パッドにて塗布し、乾燥後、9
3℃で1時間焼成し、焼成後に過剰のシランを溶媒洗浄
によりガラス表面から除去し、撥水性被膜付きガラス板
を得た。その結果を表1および2に示す。なお、この比
較例3と下記の比較例4は、上述した特開平8−239
653号を追試したものである。
【0143】[比較例4]イソパラフィン系炭化水素溶
媒(アイソパーL、エクソン製)を79.24gにテト
ラクロロシラン0.36gと、3−ヘプタデカフルオロ
デシルトリクロロシラン0.4gを添加し、30分間撹
拌して撥水性被膜形成用溶液を得た。この溶液を洗浄し
たガラス基板(150×150mm)上に、湿度30
%、室温下でフローコートにて塗布し、乾燥後に過剰の
シランを溶媒洗浄によりガラス表面から除去し、撥水性
被膜付きガラス板を得た。その結果を表1および2に示
す。
【0144】その結果を表1および2に示したように、
比較例1から4で得られた撥水性ガラス板はいずれも、
初期CAは101度以上であり優れているものの、IA
が15度以上と実施例に比べて高く、転がり性が悪かっ
た。
【0145】また、得られた撥水性被膜表面の平滑性に
ついては、比較例1と2では比較的優れているものの、
比較例3と4では平滑性が劣っていた。
【0146】さらに耐候性試験については、比較例1と
2ではCAとIAとも実施例のそれに比して劣ってい
た。また、比較例3と4ではCAは実施例のそれと同等
であったが、IAは劣っていた。
【0147】またさらに耐摩耗試験については、いずれ
の比較例でもCAとIAとも実施例のそれに比して劣っ
ていた。
【0148】また被膜表面のフッ素濃度については、上
述の比較例1、2では、上述した加水分解物および脱水
縮合反応が溶液中で進行していたため、それぞれF/S
i=0.5、0.6と低い値を示し、フルオロアルキル
基が少ないことが確かめられた。また、被膜内部層にも
フッ素が検出された。
【0149】以上より、本発明で得られた撥水性物品
は、その撥水膜表面のフッ素濃度が非常に高いことが確
かめられた。
【0150】
【表1】 =============================サンフ゜ル Si(F)* HCl 水分 pH 重合体の (N) (wt%) 重合度 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 実1 0.6 0.19 0.35 0.73 1〜 3 実3 0.15 0.19 0.35 0.73 1〜 3 実4 1.5 0.19 0.35 0.73 1〜 3 実5 1.2 0.09 0.35 1.03 1〜 3 実6 0.3 0.37 0.34 0.43 1〜 3 実7 0.6 0.92 0.33 0.04 1〜10 実8 0.6 0.19 0.35 0.73 1〜 3 実9 2.0 0.21 1.61 0.68 1〜 3 実10 0.6 0.19 0.31 0.73 1〜 3 実11 0.6 0.19 10.23 0.72 1〜 5 実12 12.0 0.009 0.35 2.03 1〜 3 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 比1 1.0 0.008 2.14 3.09 4〜30 比2 1.8 0.014 22.8 1.86 4〜30 比3 29.3 -- -- -- 1 比4 32.4 -- -- -- 1 ============================= * Si(F)は、Si(Cl)100に対する、Si(F)の比率を示す。
【0151】
【表2】 =================================== 初期 表面粗さ 耐候性試験 耐摩耗試験サンフ゜ル 膜厚 CA IA F/Si Ra Rz CA IA CA IA (nm) (度) (度) (原子比) (nm) (nm) (度) (度) (度) (度) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 実1 60 111 5 1.2 0.4 2.9 83 20 106 8 実2 60 110 6 1.1 0.4 3.8 85 18 107 9 実3 60 104 9 0.8 0.3 2.8 80 21 103 10 実4 60 111 5 1.3 0.3 3.1 85 19 99 10 実5 30 110 6 1.1 0.5 4.6 80 22 98 12 実6 100 109 6 1.0 0.2 1.8 88 17 105 9 実7 80 111 4 1.3 0.3 2.6 87 17 106 8 実8 60 111 5 1.2 0.4 3.3 84 19 105 10 実9 20 110 5 1.2 0.5 4.8 82 20 98 11 実10 60 110 6 1.2 0.4 4.2 84 19 104 10 実11 60 109 6 1.2 0.4 4.3 80 20 105 9 実12 5 106 8 1.0 0.5 4.7 86 18 98 11 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 比1 60 101 15 0.5 0.3 6.2 65 35 96 18 比2 100 102 18 0.6 0.6 8.6 67 38 97 20 比3 10 112 34 1.3 7.9 29.8 85 33 71 39 比4 10 110 18 1.1 3.2 19.3 83 22 38 46 ===================================
【0152】
【発明の効果】以上に説明したように本発明によれば、
常温での処理おいても、緻密で強固な撥水膜が被覆され
た物品が得られる。本発明では、撥水膜の成膜後に焼成
を行う必要が基本的にない。その結果、焼成設備も不要
となり、製造コストも低減される。
【0153】また、撥水性被膜形成用溶液のに撥水基と
なるフルオロアルキル基含有のシラン化合物を添加して
いるので、1種類の溶液を塗布するだけで、シリカを主
とする層と撥水層を形成できる。したがって、生産性が
優れている。
【0154】さらに、被膜形成時に基材表面にシリカ分
が集まり易く、他方撥水基は被膜の最表面に配向し易く
なるため、最表面の撥水基密度が高い、緻密で耐久性の
優れる撥水膜を得ることができる。
【0155】常温で緻密な撥水膜を形成するため、その
被膜の表面は、極めて平滑性の優れた撥水膜となる。こ
の良好な撥水基の配向性と表面平滑性、最表面の高撥水
基密度の効果で、本発明における撥水性物品は、非常に
優れた水滴の転がり性と耐擦傷性、耐候性を可能にし
た。
【0156】さらに、本発明の製造方法および撥水性被
膜形成用溶液は、保管および塗布作業中の雰囲気の湿度
管理が容易である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 砂田 貴 大阪府大阪市中央区道修町3丁目5番11号 日本板硝子株式会社内 Fターム(参考) 4H020 BA36 4J038 DL071 JA16 JC31 MA07 NA07 PC03 PC08

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロロシリル基含有化合物とフルオロア
    ルキル基含有シラン化合物を、アルコールおよび/また
    は水分を含む溶媒に溶解し、前記クロロシリル基含有化
    合物のクロロ基を、アルコキシル基または水酸基に置換
    した溶液を基材表面に塗布した後乾燥し、撥水性被膜を
    形成する工程を含むことを特徴とする撥水性物品の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 シリコンアルコキシドまたはその加水分
    解物が単量体または19量体以下の重合体で含有し、さ
    らにフルオロアルキル基含有シラン化合物および酸を含
    有する溶液を、基材表面に塗布した後乾燥し、撥水性被
    膜を形成する工程を含むことを特徴とする撥水性物品の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の方法で得られる
    撥水性物品であって、 前記撥水性被膜の表面が算術平均粗さ(Ra)=0.5
    nm以下、かつ十点平均粗さ(Rz)=5nm以下の粗
    さを有することを特徴とする撥水性物品。
  4. 【請求項4】 請求項1または2記載の方法で得られる
    撥水性物品であって、 前記撥水性被膜の表面におけるフッ素濃度が、フッ素原
    子と珪素原子との原子比で表して0.8以上である撥水
    性物品。
  5. 【請求項5】 クロロシリル基含有化合物とフルオロア
    ルキル基含有シラン化合物を、アルコールおよび/また
    は水分を含む溶媒に溶解させ、前記クロロシリル基含有
    化合物のクロロ基を、アルコキシル基または水酸基に置
    換させたことを特徴とする撥水性被膜形成用溶液。
  6. 【請求項6】 シリコンアルコキシドまたはその加水分
    解物が単量体または19量体以下の重合体で含有し、さ
    らにフルオロアルキル基含有シラン化合物および酸を含
    有することを特徴とする撥水性被膜形成用溶液。
  7. 【請求項7】 クロロシリル基含有化合物とフルオロア
    ルキル基含有シラン化合物を、アルコールおよび/また
    は水を含む溶媒に溶解させ、前記クロロシリル基含有化
    合物のクロロ基を、アルコキシル基または水酸基に置換
    させて、シリコンアルコキシドまたはその加水分解物が
    単量体または19量体以下の重合体で含有することを特
    徴とする撥水性被膜形成用溶液。
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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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JP2013170088A (ja) * 2012-02-20 2013-09-02 Asahi Glass Co Ltd 防汚膜付き基体

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