JP2002294391A - 建築構造用鋼及びその製造方法 - Google Patents
建築構造用鋼及びその製造方法Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 塑性変形能力が大きく、かつショートビード
溶接が行われたときやパス間温度が高くなったときにお
いても高い継ぎ手性能が得られる建築構造用鋼及びその
製造方法を提案する。 【解決手段】 C:0.01〜0.07mass%、Si:0.6mass%以
下、Mn:0.6〜1.6mass%、P:0.030mass%以下、S:0.030
mass%以下、Al:0.1mass%以下、Nb:0.005〜0.05mass
%、Ti:0.003〜0.020mass%、B:0.0010〜0.0030mass%、
N:0.0030〜0.0070mass%、残部:Fe及び不可避的不純物
からなり、かつ下記(1)および(2)式を満足する鋼組成を
有するとともに降伏比が72%以下となっている。 1.0≦Ti/N≦3.0 (1) 0.0005≦B−0.785(N−Ti/3.4)≦0.0025 (2)
溶接が行われたときやパス間温度が高くなったときにお
いても高い継ぎ手性能が得られる建築構造用鋼及びその
製造方法を提案する。 【解決手段】 C:0.01〜0.07mass%、Si:0.6mass%以
下、Mn:0.6〜1.6mass%、P:0.030mass%以下、S:0.030
mass%以下、Al:0.1mass%以下、Nb:0.005〜0.05mass
%、Ti:0.003〜0.020mass%、B:0.0010〜0.0030mass%、
N:0.0030〜0.0070mass%、残部:Fe及び不可避的不純物
からなり、かつ下記(1)および(2)式を満足する鋼組成を
有するとともに降伏比が72%以下となっている。 1.0≦Ti/N≦3.0 (1) 0.0005≦B−0.785(N−Ti/3.4)≦0.0025 (2)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、H形鋼に代表され
る建築構造用鋼及びその製造方法に係り、特に点付け溶
接を含むビード長さが40mm以下のショービード溶接が行
われてもそのHAZ靱性の低下が小さく、かつ溶接の際の
パス間温度が高くても高い継ぎ手性能を有する建築構造
用鋼及びその製造方法に関する。
る建築構造用鋼及びその製造方法に係り、特に点付け溶
接を含むビード長さが40mm以下のショービード溶接が行
われてもそのHAZ靱性の低下が小さく、かつ溶接の際の
パス間温度が高くても高い継ぎ手性能を有する建築構造
用鋼及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】地震に対する建築構造物の安全性向上に
関する検討が精力的に進められており、その一環として
使用鋼材の材質、たとえば塑性変形能力、溶接施工条件
が建築構造物に及ぼす影響が明らかにされてきている。
関する検討が精力的に進められており、その一環として
使用鋼材の材質、たとえば塑性変形能力、溶接施工条件
が建築構造物に及ぼす影響が明らかにされてきている。
【0003】まず、使用鋼材の塑性変形能力の面から
は、建築構造が地震エネルギーを効率よく吸収するよう
にするために一部鋼材の塑性化が許容されており、その
ため、建築材料として使用される鋼材、たとえばH形鋼
は降伏比が低いことが好まれている。
は、建築構造が地震エネルギーを効率よく吸収するよう
にするために一部鋼材の塑性化が許容されており、その
ため、建築材料として使用される鋼材、たとえばH形鋼
は降伏比が低いことが好まれている。
【0004】一方、溶接施工条件の面からは、日本建築
学会によりJASS-6として、溶接ビード長さを40mm以上に
管理すること、さらにパス間温度を250℃以下に管理す
ることが指針として示されている。これは、点付け溶接
を含む溶接ビード長さが短くなると、溶接時の冷却速度
が過大となり、溶接熱影響部(HAZ)がマルテンサイト
化するために過度に硬化して靱性が低下すること、ま
た、溶接の際のパス間温度が高くなると、HAZを含む溶
接部の冷却速度が遅くなり、HAZのミクロ組織が粗大化
するばかりでなく、そのミクロ組織が上部ベイナイト化
して靱性が低下することを防止するためである。
学会によりJASS-6として、溶接ビード長さを40mm以上に
管理すること、さらにパス間温度を250℃以下に管理す
ることが指針として示されている。これは、点付け溶接
を含む溶接ビード長さが短くなると、溶接時の冷却速度
が過大となり、溶接熱影響部(HAZ)がマルテンサイト
化するために過度に硬化して靱性が低下すること、ま
た、溶接の際のパス間温度が高くなると、HAZを含む溶
接部の冷却速度が遅くなり、HAZのミクロ組織が粗大化
するばかりでなく、そのミクロ組織が上部ベイナイト化
して靱性が低下することを防止するためである。
【0005】しかしながら、これらの溶接条件を満足す
ることは、溶接施工性を阻害する。また、現地建設現場
においては全ての溶接箇所において上記の厳しい溶接条
件を遵守することが困難でもある。そのため、上記基準
を満たさない溶接条件下で溶接しても継ぎ手靱性が高い
建築構造用鋼、特にH形鋼が求められている。
ることは、溶接施工性を阻害する。また、現地建設現場
においては全ての溶接箇所において上記の厳しい溶接条
件を遵守することが困難でもある。そのため、上記基準
を満たさない溶接条件下で溶接しても継ぎ手靱性が高い
建築構造用鋼、特にH形鋼が求められている。
【0006】一般に、溶接性を向上させるためには、炭
素当量やPcmの低減が行われ、併せていわゆるTMCP技
術、すなわち制御圧延や制御冷却が採用され、組織の微
細化によって強度確保を図ることが行われている。ま
た、特開平8-144019号公報、特開平9-310117号公報、特
開平10-72620号公報には、鋼材の厚み方向及び鋼材間で
の材質ばらつきが少なく、かつ溶接性に優れる鋼材及び
その製造方法が提案されている。
素当量やPcmの低減が行われ、併せていわゆるTMCP技
術、すなわち制御圧延や制御冷却が採用され、組織の微
細化によって強度確保を図ることが行われている。ま
た、特開平8-144019号公報、特開平9-310117号公報、特
開平10-72620号公報には、鋼材の厚み方向及び鋼材間で
の材質ばらつきが少なく、かつ溶接性に優れる鋼材及び
その製造方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の技術における溶接性は、通常の溶接条件におけるHA
Zの靭性の向上のみが目的とされており、上記建築構造
用鋼にとって必要なショートビード溶接が行われたとき
やパス間温度が高くなったときの靱性低下に対処するも
のではない。また、降伏比にも注意が向けられていない
ためその値は比較的高い。このように、従来提案されて
いる鋼材は、地震に対する安全性の高い建築構造物を効
率よく構築するための要求を十分満たしていない。本発
明は、このような事情に鑑み、塑性変形能力が大きく、
かつ厳しい溶接施工条件においても高い継ぎ手性能が得
られる建築構造用鋼及びその製造方法を提案することを
目的とする。
来の技術における溶接性は、通常の溶接条件におけるHA
Zの靭性の向上のみが目的とされており、上記建築構造
用鋼にとって必要なショートビード溶接が行われたとき
やパス間温度が高くなったときの靱性低下に対処するも
のではない。また、降伏比にも注意が向けられていない
ためその値は比較的高い。このように、従来提案されて
いる鋼材は、地震に対する安全性の高い建築構造物を効
率よく構築するための要求を十分満たしていない。本発
明は、このような事情に鑑み、塑性変形能力が大きく、
かつ厳しい溶接施工条件においても高い継ぎ手性能が得
られる建築構造用鋼及びその製造方法を提案することを
目的とする。
【0008】
【課題を解決するために手段】本発明者等は、前述の点
付け溶接等のショーとビードを含む溶接ビード長さが短
くなることや溶接パス間温度が高温化することに伴うHA
Z靱性の低下を抑制する手段について鋭意研究を行い、
ショートビードにおけるHAZ靱性にはC量の低減によって
対応し、一方溶接パス間温度の高温化によるHAZ靱性の
低下防止にはTi、N、B、さらにはCa、REM、S、Oの適正
化が有効であることを見極め、これに加えて、建築構造
用鋼に必要な低降伏比を得るための条件を確定して本発
明を完成した。
付け溶接等のショーとビードを含む溶接ビード長さが短
くなることや溶接パス間温度が高温化することに伴うHA
Z靱性の低下を抑制する手段について鋭意研究を行い、
ショートビードにおけるHAZ靱性にはC量の低減によって
対応し、一方溶接パス間温度の高温化によるHAZ靱性の
低下防止にはTi、N、B、さらにはCa、REM、S、Oの適正
化が有効であることを見極め、これに加えて、建築構造
用鋼に必要な低降伏比を得るための条件を確定して本発
明を完成した。
【0009】具体的には、本発明の建築構造用鋼は、
C:0.01〜0.07mass%、Si:0.6mass%以下、Mn:0.6〜1.6
mass%、P:0.030mass%以下、S:0.030mass%以下、Al:
0.1mass%以下、Nb:0.005〜0.05mass%、Ti:0.003〜0.0
20mass%、B:0.0010〜0.0030mass%、N:0.0030〜0.0070
mass%、残部:Fe及び不可避的不純物からなり、かつ下
記(1)および(2)式を満足する鋼組成を有するとともに降
伏比が72%以下となっている。 1.0≦Ti/N≦3.0 (1) 0.0005≦B−0.785(N−Ti/3.4)≦0.0025 (2)
C:0.01〜0.07mass%、Si:0.6mass%以下、Mn:0.6〜1.6
mass%、P:0.030mass%以下、S:0.030mass%以下、Al:
0.1mass%以下、Nb:0.005〜0.05mass%、Ti:0.003〜0.0
20mass%、B:0.0010〜0.0030mass%、N:0.0030〜0.0070
mass%、残部:Fe及び不可避的不純物からなり、かつ下
記(1)および(2)式を満足する鋼組成を有するとともに降
伏比が72%以下となっている。 1.0≦Ti/N≦3.0 (1) 0.0005≦B−0.785(N−Ti/3.4)≦0.0025 (2)
【0010】上記建築構造用鋼は、鋼組成としてさらに
Ca:0.0010〜0.0050、O:0.0010〜0.0030を含有すると
ともに、(3)式を満足することが好適である。 0.2≦(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/S/1.25≦0.8 (3)
Ca:0.0010〜0.0050、O:0.0010〜0.0030を含有すると
ともに、(3)式を満足することが好適である。 0.2≦(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/S/1.25≦0.8 (3)
【0011】上記建築構造用鋼は、鋼組成としてさらに
REM:0.003〜0.015mass%、S:0.003mass%以上を含有す
るか、あるいはCu:1.5mass%以下、Ni:1mass%以下、C
r:1mass%以下、Mo:0.5mass%以下、V:0.1mass%以下の
1種又は2種以上若しくはこれらをともに含有することが
好ましい。
REM:0.003〜0.015mass%、S:0.003mass%以上を含有す
るか、あるいはCu:1.5mass%以下、Ni:1mass%以下、C
r:1mass%以下、Mo:0.5mass%以下、V:0.1mass%以下の
1種又は2種以上若しくはこれらをともに含有することが
好ましい。
【0012】また、上記の建築構造用鋼は、ウェブ及び
フランジの厚さが6mm以上、125mm以下のH形鋼とするの
が使用上便利である。
フランジの厚さが6mm以上、125mm以下のH形鋼とするの
が使用上便利である。
【0013】本発明の建築構造用鋼は、C:0.01〜0.07m
ass%、Si:0.6mass%以下、Mn:0.6〜1.6mass%、P:0.03
0mass%以下、S:0.030mass%以下、Al:0.1mass%以下、N
b:0.005〜0.05mass%、Ti:0.003〜0.020mass%、B:0.0
010〜0.0030mass%、N:0.0030〜0.0070mass%を含有し、
残部:Fe及び不可避的不純物からなり、かつ下記(1)お
よび(2)式を満足する鋼素材を1100℃以上に加熱後、前
記鋼素材のオーステナイト領域において圧延を終了し、
しかる後、降伏比が72%以下となるように冷却すること
によって製造される。 1.0≦Ti/N≦3.0 (1) 0.0005≦B−0.785(N−Ti/3.4)≦0.0025 (2)
ass%、Si:0.6mass%以下、Mn:0.6〜1.6mass%、P:0.03
0mass%以下、S:0.030mass%以下、Al:0.1mass%以下、N
b:0.005〜0.05mass%、Ti:0.003〜0.020mass%、B:0.0
010〜0.0030mass%、N:0.0030〜0.0070mass%を含有し、
残部:Fe及び不可避的不純物からなり、かつ下記(1)お
よび(2)式を満足する鋼素材を1100℃以上に加熱後、前
記鋼素材のオーステナイト領域において圧延を終了し、
しかる後、降伏比が72%以下となるように冷却すること
によって製造される。 1.0≦Ti/N≦3.0 (1) 0.0005≦B−0.785(N−Ti/3.4)≦0.0025 (2)
【0014】その際、建築構造用鋼の肉厚を6mm以上、1
25mm以下とするとともに、該建築構造用鋼の肉厚方向に
硬度差が生ずるように冷却するか、あるいはフェライト
−ベーナイト組織が生ずるように冷却するのが降伏比を
72%以下とするのに好都合である。
25mm以下とするとともに、該建築構造用鋼の肉厚方向に
硬度差が生ずるように冷却するか、あるいはフェライト
−ベーナイト組織が生ずるように冷却するのが降伏比を
72%以下とするのに好都合である。
【0015】上記製造方法において、鋼素材はさらにC
a:0.0010〜0.0050mass%、O:0.0010〜0.0030mass%を
含有するとともに、(3)式を満足することとするのが好
ましい。 0.2≦(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/S/1.25≦0.8 (3)
a:0.0010〜0.0050mass%、O:0.0010〜0.0030mass%を
含有するとともに、(3)式を満足することとするのが好
ましい。 0.2≦(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/S/1.25≦0.8 (3)
【0016】さらに、鋼素材にREM:0.003〜0.015mass
%、S:0.003mass%以上を含有させるか、Cu:1.5mass%以
下、Ni:1mass%以下、Cr:1mass%以下、Mo:0.5mass%以
下、V:0.1mass%以下の1種又は2種以上を含有させるか
あるいはこれらをともに含有させるのがよい。また、上
記建築構造用鋼はウェブ及びフランジの厚さが6mm以
上、125mm以下であるH形鋼とするのが使用上好ましい。
%、S:0.003mass%以上を含有させるか、Cu:1.5mass%以
下、Ni:1mass%以下、Cr:1mass%以下、Mo:0.5mass%以
下、V:0.1mass%以下の1種又は2種以上を含有させるか
あるいはこれらをともに含有させるのがよい。また、上
記建築構造用鋼はウェブ及びフランジの厚さが6mm以
上、125mm以下であるH形鋼とするのが使用上好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を、本発
明鋼の化学組成、特性値、及びその製造方法について具
体的に説明する。
明鋼の化学組成、特性値、及びその製造方法について具
体的に説明する。
【0018】(化学組成) C:0.01〜0.07mass% C含有量はHAZの粒界割れを抑制させる働きがあるので0.
01mass%以上とするが、その含有量が多くなりすぎると
ショートビート溶接時にHAZが硬化し、また溶接パス間
温度が高くなったときHAZに島状マルテンサイトの生成
量が増大するので、0.07mass%以下とする。
01mass%以上とするが、その含有量が多くなりすぎると
ショートビート溶接時にHAZが硬化し、また溶接パス間
温度が高くなったときHAZに島状マルテンサイトの生成
量が増大するので、0.07mass%以下とする。
【0019】Si:0.6mass%以下 Siは鋼中固溶元素として強度上昇に有効であるが、0.6m
ass%を超えて含有させると溶接パス間温度が高くなった
ときHAZに島状マルテンサイトが生成し、その靱性を低
下させる。よって、上限は0.6mass%とする。下限につい
ては特に限定する必要がないが、Siは脱酸元素として有
効であり、その観点から0.05mass%以上とすることが好
ましい。
ass%を超えて含有させると溶接パス間温度が高くなった
ときHAZに島状マルテンサイトが生成し、その靱性を低
下させる。よって、上限は0.6mass%とする。下限につい
ては特に限定する必要がないが、Siは脱酸元素として有
効であり、その観点から0.05mass%以上とすることが好
ましい。
【0020】Mn:0.6〜1.6mass% Mnは第2相をベイナイト化させ、低C鋼の強度を上昇させ
るが、0.6mass%未満ではその効果が小さく、一方1.6mas
s%を超えて添加しても強度は飽和する。したがってその
含有量は0.6〜1.6mass%の範囲とした。
るが、0.6mass%未満ではその効果が小さく、一方1.6mas
s%を超えて添加しても強度は飽和する。したがってその
含有量は0.6〜1.6mass%の範囲とした。
【0021】P:0.030mass%、S:0.030mass%以下 これらは不純物元素であり、いずれも低いことが望まし
い。その上限は、Pについてはγ粒界への偏析による粒
界強度の低下、HAZの粒界割れの助長等の観点から0.030
mass%とし、Sについては母材の靱性および延性を低下の
観点から0.030mass%とする。
い。その上限は、Pについてはγ粒界への偏析による粒
界強度の低下、HAZの粒界割れの助長等の観点から0.030
mass%とし、Sについては母材の靱性および延性を低下の
観点から0.030mass%とする。
【0022】Al:0.1mass%以下 Alは脱酸剤として添加されるものであるが、0.1mass%を
超えて残留しても脱酸効果が飽和するだけでなく、母材
の靱性や延性を低下させるので、上限を0.1mass%とす
る。なお、脱酸にSiを利用する場合は、Alの添加は必要
でない。
超えて残留しても脱酸効果が飽和するだけでなく、母材
の靱性や延性を低下させるので、上限を0.1mass%とす
る。なお、脱酸にSiを利用する場合は、Alの添加は必要
でない。
【0023】Nb:0.005〜0.05mass% NbはMnと同様に焼入れ性の向上させ強度上昇に有効であ
るが、0.005mass%未満ではその効果が小さく、一方0.05
0mass%を超えると、HAZの粒界割れを助長するので0.005
〜0.05mass%の範囲で含有させる。
るが、0.005mass%未満ではその効果が小さく、一方0.05
0mass%を超えると、HAZの粒界割れを助長するので0.005
〜0.05mass%の範囲で含有させる。
【0024】Ti:0.003〜0.020mass% Tiは、TiNを形成し、特に溶接パス間温度が高い場合にH
AZの組織微細化に寄与してHAZの靱性向上に有効であ
る。しかし、その含有量が0.003mass%未満ではその効果
が小さく、一方、0.015mass%を超えると、TiNが粗大化
しHAZの組織を微細化する効果が低減する。したがっ
て、Tiの含有量は0.003〜0.020mass%の範囲とする。
AZの組織微細化に寄与してHAZの靱性向上に有効であ
る。しかし、その含有量が0.003mass%未満ではその効果
が小さく、一方、0.015mass%を超えると、TiNが粗大化
しHAZの組織を微細化する効果が低減する。したがっ
て、Tiの含有量は0.003〜0.020mass%の範囲とする。
【0025】B:0.0010〜0.0030mass% 固溶Bはオーステナイト粒界に偏析し、鋼の焼入れ性を
向上させる元素であり、強度上昇に有効な元素である。
その含有量が少ない場合は、BNの生成による固溶Bの減
少により、焼入れ性が不十分となり、強度不足を招く。
また、高パス間温度にて溶接され、その冷却速度が低下
した際に、一部TiNが固溶し、フリーNがHAZ(特にボン
ド部)に存在し、靭性を劣化させるが、Bを含有させる
とBNが形成され靭性低下を防止する効果も生ずる。一
方、その含有量が多すぎるときには、ショートビード溶
接時にHAZ靱性を著しく低下させる。これらを勘案してB
の含有量は0.0010〜0.0030mass%の範囲とする。
向上させる元素であり、強度上昇に有効な元素である。
その含有量が少ない場合は、BNの生成による固溶Bの減
少により、焼入れ性が不十分となり、強度不足を招く。
また、高パス間温度にて溶接され、その冷却速度が低下
した際に、一部TiNが固溶し、フリーNがHAZ(特にボン
ド部)に存在し、靭性を劣化させるが、Bを含有させる
とBNが形成され靭性低下を防止する効果も生ずる。一
方、その含有量が多すぎるときには、ショートビード溶
接時にHAZ靱性を著しく低下させる。これらを勘案してB
の含有量は0.0010〜0.0030mass%の範囲とする。
【0026】N:0.0030〜0.0070mass% NはTiNの形成によりオーステナイト粒を微細化させる効
果があり、特に溶接時にパス間温度が高い場合にオース
テナイトの細粒化効果を発揮し、HAZの靭性の向上に有
効である。しかし、その含有量が多いと、Tiと結合して
いないフリーNが増加してHAZの靱性の低下や、焼入れ性
の向上に寄与するBをBNとして固定化して母材強度の低
下を招く。これらの効果を総合的に考慮してBの含有量
を0.0030〜0.0070mass%とする。
果があり、特に溶接時にパス間温度が高い場合にオース
テナイトの細粒化効果を発揮し、HAZの靭性の向上に有
効である。しかし、その含有量が多いと、Tiと結合して
いないフリーNが増加してHAZの靱性の低下や、焼入れ性
の向上に寄与するBをBNとして固定化して母材強度の低
下を招く。これらの効果を総合的に考慮してBの含有量
を0.0030〜0.0070mass%とする。
【0027】Ti、N及びBの相互関係: 1.0≦Ti/N≦3.0 (1) 及び 0.0005≦B−0.785(N−Ti/3.4)≦0.0025 (2) 本発明では、TiNの形成によりオーステナイト粒の微細
化を図る一方、Tiの含有量を化学量論的にNを完全に固
定する量以下に留め、TiNの粗大化を防止している。そ
して、Tiによって固定されなかったフリーNはBによって
固定することとしてHAZの靭性の低下を防止する。他
方、BにはこのフリーNの固定を行わせる一方、焼き入れ
性向上の機能を持たせる。したがって、Nによって固定
されないフリーBが一定量存在していなければならな
い。これらの関係を満足させるため 1.0≦Ti/N≦3.0 (1) 及び 0.0005≦B−0.785(N−Ti/3.4)≦0.0025 (2) とする。
化を図る一方、Tiの含有量を化学量論的にNを完全に固
定する量以下に留め、TiNの粗大化を防止している。そ
して、Tiによって固定されなかったフリーNはBによって
固定することとしてHAZの靭性の低下を防止する。他
方、BにはこのフリーNの固定を行わせる一方、焼き入れ
性向上の機能を持たせる。したがって、Nによって固定
されないフリーBが一定量存在していなければならな
い。これらの関係を満足させるため 1.0≦Ti/N≦3.0 (1) 及び 0.0005≦B−0.785(N−Ti/3.4)≦0.0025 (2) とする。
【0028】上記(1)式においてTi/Nを1.0以上とするの
は、フリーNの増大によるHAZの靭性の低下を防止するた
めであり、Bを焼入れ性に寄与する固溶Bとして残留させ
るためである。一方、Ti/Nを3.0以下とするのは、TiN粒
子が粗大化し、オーステナイト粒の微細化を阻害するの
を防止するためである。上記(2)式のB−0.785(N−Ti/
3.4)は、上記フリーNによって固定されず、焼入れ性の
向上に寄与するフリーBの量であるが、その量が少なす
ぎるときには母材の強度が不十分となり、一方、多すぎ
るとショートビード溶接の際にHAZの靱性が低下する。
これらを考慮してフリーB量、すなわちB−0.785(N−Ti
/3.4)を0.0005〜0.0025mass%の範囲とする。
は、フリーNの増大によるHAZの靭性の低下を防止するた
めであり、Bを焼入れ性に寄与する固溶Bとして残留させ
るためである。一方、Ti/Nを3.0以下とするのは、TiN粒
子が粗大化し、オーステナイト粒の微細化を阻害するの
を防止するためである。上記(2)式のB−0.785(N−Ti/
3.4)は、上記フリーNによって固定されず、焼入れ性の
向上に寄与するフリーBの量であるが、その量が少なす
ぎるときには母材の強度が不十分となり、一方、多すぎ
るとショートビード溶接の際にHAZの靱性が低下する。
これらを考慮してフリーB量、すなわちB−0.785(N−Ti
/3.4)を0.0005〜0.0025mass%の範囲とする。
【0029】鋼の組成を上記のようにすることによりシ
ョートビード溶接時におけるHAZの過度の硬化を防止す
るとともに、パス間温度が高いときのHAZの靱性低下を
抑制することができ、また、母材の強度と靱性もJISに
規定するSN規格を満足できるものとなる。しかしなが
ら、本発明鋼の特性をさらに向上させるためには、以下
に示す諸元素を選択的に含有させることとするのがよ
い。
ョートビード溶接時におけるHAZの過度の硬化を防止す
るとともに、パス間温度が高いときのHAZの靱性低下を
抑制することができ、また、母材の強度と靱性もJISに
規定するSN規格を満足できるものとなる。しかしなが
ら、本発明鋼の特性をさらに向上させるためには、以下
に示す諸元素を選択的に含有させることとするのがよ
い。
【0030】Ca:0.0010〜0.0050mass%、O:.0030mass
%以下、かつ0.2≦ACR≦0.8 Caは、OおよびSと溶接時に結合してCa(O,S)を形成
し、溶接の際にHAZにおいて一旦固溶したMnSの析出サイ
トとして機能し、HAZにおけるフェライト変態を促進さ
せ、靱性の向上に寄与する。Caが0.0010mass%未満では
その効果が小さく、逆に0.0050mass%を超えると、鋼の
清浄性を阻害するので、その含有量は0.0010〜0.0050ma
ss%の範囲とする。Oは低い方が望ましい。特に0.0030ma
ss%を超えると、CaOの形成によりCaのMnSの析出サイト
としての機能が失われるので0.0030%の範囲とするのが
よい。なお、Oの下限は特に設定する必要はないが、一
般的な製鋼上の要請から0.0010mass%程度とする。
%以下、かつ0.2≦ACR≦0.8 Caは、OおよびSと溶接時に結合してCa(O,S)を形成
し、溶接の際にHAZにおいて一旦固溶したMnSの析出サイ
トとして機能し、HAZにおけるフェライト変態を促進さ
せ、靱性の向上に寄与する。Caが0.0010mass%未満では
その効果が小さく、逆に0.0050mass%を超えると、鋼の
清浄性を阻害するので、その含有量は0.0010〜0.0050ma
ss%の範囲とする。Oは低い方が望ましい。特に0.0030ma
ss%を超えると、CaOの形成によりCaのMnSの析出サイト
としての機能が失われるので0.0030%の範囲とするのが
よい。なお、Oの下限は特に設定する必要はないが、一
般的な製鋼上の要請から0.0010mass%程度とする。
【0031】さらに、パス間温度温度が高いときにHAZ
の靱性を一層の向上させるためにはCa、OおよびSの相互
関係を下記(3)式のように制御するのがよい。 0.2≦(Ca−(0.18+130)×Ca)×O/S/1.25≦0.8 (3) この(3)式における(Ca−(0.18+130)×Ca)×O/S/
1.25はACR(Atomic Concentration Ratio)と呼ばれる
が、これが0.2〜0.8の範囲にあるとパス間温度が高いと
きにもHAZにおいてフェライト変態が促進され、靱性が
向上する。しかしながら、ACRが0.2未満のときには、HA
Zにおいて溶接時に溶解したMnSが再析出しないためにHA
Zの組織中にフェライト生成が少ななり、0.8を超える
と、HAZにおいて溶接時に溶解したMnSがフェライト生成
能がほとんど認められないCa(O,S)主体の介在物とな
るため、ともにフェライト変態が不十分となり、HAZの
靭性が劣化する。
の靱性を一層の向上させるためにはCa、OおよびSの相互
関係を下記(3)式のように制御するのがよい。 0.2≦(Ca−(0.18+130)×Ca)×O/S/1.25≦0.8 (3) この(3)式における(Ca−(0.18+130)×Ca)×O/S/
1.25はACR(Atomic Concentration Ratio)と呼ばれる
が、これが0.2〜0.8の範囲にあるとパス間温度が高いと
きにもHAZにおいてフェライト変態が促進され、靱性が
向上する。しかしながら、ACRが0.2未満のときには、HA
Zにおいて溶接時に溶解したMnSが再析出しないためにHA
Zの組織中にフェライト生成が少ななり、0.8を超える
と、HAZにおいて溶接時に溶解したMnSがフェライト生成
能がほとんど認められないCa(O,S)主体の介在物とな
るため、ともにフェライト変態が不十分となり、HAZの
靭性が劣化する。
【0032】REM:0.003〜0.015mass%であり、かつS:
0.003mass%以上 REMは、REM(O,S)を形成し、HAZのオーステナイト細
粒化効果を有する。その効果は、Sが0.003mass%以上で
特に顕著であり、パス間温度が高いときにおけるオース
テナイト細粒化の機能を一層高め、これによりHAZの靱
性を向上させることができる。しかしながら、0.003mas
s%未満では、その効果が認められず、逆に0.015mass%を
超えて含有させるとクラスター系の介在物を増加させ、
かえって靭性を劣化させるので、REMの含有量は0.003〜
0.015mass%の範囲とするのがよい。
0.003mass%以上 REMは、REM(O,S)を形成し、HAZのオーステナイト細
粒化効果を有する。その効果は、Sが0.003mass%以上で
特に顕著であり、パス間温度が高いときにおけるオース
テナイト細粒化の機能を一層高め、これによりHAZの靱
性を向上させることができる。しかしながら、0.003mas
s%未満では、その効果が認められず、逆に0.015mass%を
超えて含有させるとクラスター系の介在物を増加させ、
かえって靭性を劣化させるので、REMの含有量は0.003〜
0.015mass%の範囲とするのがよい。
【0033】Cu:1.5mass%以下、Ni:1mass%以下、Cr:
1mass%以下、Mo:0.5mass%以下、V:0.1mass%以下 これらの元素は、母材の強度調整を行うために選択的に
含有させることができる。特にフランジ厚が40mmを超え
るような極厚H形鋼おいては、冷却速度の低下による強
度低下を補うために一定量含有させるのが好ましい。し
かしながら、いずれの元素も高価であるからその含有量
を抑制することが望ましく、Cu:1.5mass%以下、Ni:1m
ass%以下、Cr:1mass%以下、Mo:0.5mass%以下、V:0.
1mass%以下が好適範囲である。また、この範囲であれ
ば、ショートビード溶接においてHAZの異常な効果を招
くこともない。
1mass%以下、Mo:0.5mass%以下、V:0.1mass%以下 これらの元素は、母材の強度調整を行うために選択的に
含有させることができる。特にフランジ厚が40mmを超え
るような極厚H形鋼おいては、冷却速度の低下による強
度低下を補うために一定量含有させるのが好ましい。し
かしながら、いずれの元素も高価であるからその含有量
を抑制することが望ましく、Cu:1.5mass%以下、Ni:1m
ass%以下、Cr:1mass%以下、Mo:0.5mass%以下、V:0.
1mass%以下が好適範囲である。また、この範囲であれ
ば、ショートビード溶接においてHAZの異常な効果を招
くこともない。
【0034】(特性値)本発明の建築構造用鋼は、構造
物として用いられたときの耐震性を確保するため、降伏
比が72%以下であることが求められる。また、母材の強
度及び靭性についても、たとえばJISに規定するSN規格
あるいはSM規格を満足することが求められる。そのおよ
その目安は以下のとおりである。 引張強さ:490〜720Mpa 降伏点:295〜420Mpa 母材vE0:27J以上(好ましくは100J以上) 再現HAZvE0:27J以上(好ましくは100J以上) 継手HAZvE0:27J以上(好ましくは100J以上)
物として用いられたときの耐震性を確保するため、降伏
比が72%以下であることが求められる。また、母材の強
度及び靭性についても、たとえばJISに規定するSN規格
あるいはSM規格を満足することが求められる。そのおよ
その目安は以下のとおりである。 引張強さ:490〜720Mpa 降伏点:295〜420Mpa 母材vE0:27J以上(好ましくは100J以上) 再現HAZvE0:27J以上(好ましくは100J以上) 継手HAZvE0:27J以上(好ましくは100J以上)
【0035】(製造方法)本発明に係る建築構造用鋼
は、所定の組成を有する鋼スラブやブルームを通常の方
法で圧延し、必要に応じて熱処理することによって製造
することができる。すなわち、所定的の成分組成に調整
された溶鋼を連続鋳造法あるいは造塊−鋼片圧延法によ
ってスラブやブルームとした後H形鋼や厚板等の所定の
形状に圧延加工する。その際、成形性、製品の表面性状
さらには加熱の際のスケールロスや加熱炉、耐火物の原
単位を考慮して、加熱温度を1100〜1320℃とするのが好
ましい。圧延終了温度は、降伏比を低くするためオース
テナイト領域とする必要がある。特にH形鋼をユニバー
サルミルによって圧延するときには、粗ユニバーサル圧
延の圧延終了温度を800℃以上とするのがよい。
は、所定の組成を有する鋼スラブやブルームを通常の方
法で圧延し、必要に応じて熱処理することによって製造
することができる。すなわち、所定的の成分組成に調整
された溶鋼を連続鋳造法あるいは造塊−鋼片圧延法によ
ってスラブやブルームとした後H形鋼や厚板等の所定の
形状に圧延加工する。その際、成形性、製品の表面性状
さらには加熱の際のスケールロスや加熱炉、耐火物の原
単位を考慮して、加熱温度を1100〜1320℃とするのが好
ましい。圧延終了温度は、降伏比を低くするためオース
テナイト領域とする必要がある。特にH形鋼をユニバー
サルミルによって圧延するときには、粗ユニバーサル圧
延の圧延終了温度を800℃以上とするのがよい。
【0036】圧延終了後、鋼材は冷却されるが、その
際、所期の材料特性、特に低い降伏比が得られるように
する必要がある。そのためには、鋼材の表面と裏面、あ
るいは鋼材の表面と肉厚中心部との間に硬度差が生ずる
ように冷却するのがよい。たとえば、図1(a)に示すよ
うにH形鋼のフランジ1の外面側のみをノズル9から噴出
する冷却水によって冷却することによって、該フランジ
の組織を外面側1Aでは硬質なものとし、内面側1Bでは比
較的軟質なものとし、これによりH形鋼の降伏比を低く
することができる。図1(b)は、フランジ内外面から水
冷する方法であり、内外表面(1A,1B)と内部とで硬
度差を付与し、降伏被72%以下とするものである。ま
た、厚板を冷却する際、水冷ノズルからの冷却水量を調
節して、その表面近傍のみが硬質化し、板厚中心部は軟
質のまま残るようにすることもできる。
際、所期の材料特性、特に低い降伏比が得られるように
する必要がある。そのためには、鋼材の表面と裏面、あ
るいは鋼材の表面と肉厚中心部との間に硬度差が生ずる
ように冷却するのがよい。たとえば、図1(a)に示すよ
うにH形鋼のフランジ1の外面側のみをノズル9から噴出
する冷却水によって冷却することによって、該フランジ
の組織を外面側1Aでは硬質なものとし、内面側1Bでは比
較的軟質なものとし、これによりH形鋼の降伏比を低く
することができる。図1(b)は、フランジ内外面から水
冷する方法であり、内外表面(1A,1B)と内部とで硬
度差を付与し、降伏被72%以下とするものである。ま
た、厚板を冷却する際、水冷ノズルからの冷却水量を調
節して、その表面近傍のみが硬質化し、板厚中心部は軟
質のまま残るようにすることもできる。
【0037】低い降伏比をもつ製品は、製品の肉厚が小
さいときには圧延後の冷却を制御してフェライト−ベー
ナイト組織とすることによっても可能である。その場合
は、鋼の組成と組織,さらにこれらと圧延後の冷却速度
との関係を予め調査しておき、適当な組織が生ずるよう
にすればよい。
さいときには圧延後の冷却を制御してフェライト−ベー
ナイト組織とすることによっても可能である。その場合
は、鋼の組成と組織,さらにこれらと圧延後の冷却速度
との関係を予め調査しておき、適当な組織が生ずるよう
にすればよい。
【0038】
【実施例】以下、本発明をH形鋼に適用した場合を例に
とって具体的に示す。表1、表2に示す種々の組成に調
整した鋼を表3に示す条件に従って処理してH形鋼を製
造した。得られたH形鋼について、図1に示すようにフ
ランジ幅5の1/4の部位3から全厚引張試験片およびフラ
ンジ厚7の1/4の部位4からシャルビー衝撃試験片を採取
し、機械的性質を調査した。また、フランジ幅5の1/4の
部位3より溶接再現熱サイクル試験片を採取し、最高到
達温度1400℃および800〜500℃間の冷却時間5sの急冷冷
却を行い、ビード長さ20mmのショートビード溶接に相当
する冷却サイクルを付与した後、シャルピー衝撃試験片
を採取し、靱性を調査した。さらに、CO 2溶接を入熱4kJ
/mm、予熱温度500℃の条件で溶接を行い、HAZ 1mmより
シャルピー衝撃試験片を採取し、パス間温度が高い(50
0℃)場合におけるHAZの靱性を調査した。なお、この試
験方法は鋼構造論文集第7巻第27号(2000年9月)、第23
ページに記載されている溶接1ビード試験に準拠したも
のである。
とって具体的に示す。表1、表2に示す種々の組成に調
整した鋼を表3に示す条件に従って処理してH形鋼を製
造した。得られたH形鋼について、図1に示すようにフ
ランジ幅5の1/4の部位3から全厚引張試験片およびフラ
ンジ厚7の1/4の部位4からシャルビー衝撃試験片を採取
し、機械的性質を調査した。また、フランジ幅5の1/4の
部位3より溶接再現熱サイクル試験片を採取し、最高到
達温度1400℃および800〜500℃間の冷却時間5sの急冷冷
却を行い、ビード長さ20mmのショートビード溶接に相当
する冷却サイクルを付与した後、シャルピー衝撃試験片
を採取し、靱性を調査した。さらに、CO 2溶接を入熱4kJ
/mm、予熱温度500℃の条件で溶接を行い、HAZ 1mmより
シャルピー衝撃試験片を採取し、パス間温度が高い(50
0℃)場合におけるHAZの靱性を調査した。なお、この試
験方法は鋼構造論文集第7巻第27号(2000年9月)、第23
ページに記載されている溶接1ビード試験に準拠したも
のである。
【0039】試験結果は表4に示す。本発明例では、シ
ョートビードを模擬した再現HAZ靱性およびパス間温度
が高い溶接条件下において、優れたHAZ靱性を示してい
る。また、降伏比も低く耐震建築構造用鋼として優れた
特性を示している。一方、比較例では、(3)式で示すB−
0.785(N−Ti/3.4)が低いH鋼では強度が低く、Nbが高
いI鋼では溶接時に割れを生じていた。また、Tiの高いJ
鋼およびBの高いK鋼ではパス間温度が高い時におけるHA
Z靱性が低かった。さらにJ鋼では降伏比も高くなってい
た。従来鋼Lでは、ショートビードHAZ靱性およびパス間
温度が高い場合におけるHAZ靱性がどちらも低かった。
ョートビードを模擬した再現HAZ靱性およびパス間温度
が高い溶接条件下において、優れたHAZ靱性を示してい
る。また、降伏比も低く耐震建築構造用鋼として優れた
特性を示している。一方、比較例では、(3)式で示すB−
0.785(N−Ti/3.4)が低いH鋼では強度が低く、Nbが高
いI鋼では溶接時に割れを生じていた。また、Tiの高いJ
鋼およびBの高いK鋼ではパス間温度が高い時におけるHA
Z靱性が低かった。さらにJ鋼では降伏比も高くなってい
た。従来鋼Lでは、ショートビードHAZ靱性およびパス間
温度が高い場合におけるHAZ靱性がどちらも低かった。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】以上本発明の実施例を特にH形鋼に適用し
た場合について具体的に説明したが、本発明は例えば厚
鋼板にも適用することができ、その場合にも本発明の効
果が失われるものではない。
た場合について具体的に説明したが、本発明は例えば厚
鋼板にも適用することができ、その場合にも本発明の効
果が失われるものではない。
【0045】
【発明の効果】この発明の建築構造用鋼は、降伏比が低
いことに加え、ショートビードHAZ靱性およびパス間温
度が高い場合におけるHAZ靱性に優れており、建築物を
構築する際の施工性に極めて優れている。
いことに加え、ショートビードHAZ靱性およびパス間温
度が高い場合におけるHAZ靱性に優れており、建築物を
構築する際の施工性に極めて優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 H形鋼を本発明にしたがって製造する際の冷
却方法及び試験片の切りだし位置を示す説明図である。
却方法及び試験片の切りだし位置を示す説明図である。
1:(H形鋼の)フランジ 3:フランジ幅の1/4の部位 4:フランジ厚さ(t)の1/4の部位 5:フランジ幅 7:フランジ厚さ(t) 9:ノズル
フロントページの続き (72)発明者 天野 虔一 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 4K032 AA01 AA02 AA04 AA08 AA11 AA14 AA15 AA16 AA19 AA21 AA22 AA23 AA26 AA27 AA29 AA31 AA35 AA36 AA40 BA00 CA02 CA03 CC03 CC04 CD06
Claims (12)
- 【請求項1】 C:0.01〜0.07mass%、Si:0.6mass%以
下、Mn:0.6〜1.6mass%、P:0.030mass%以下、S:0.030
mass%以下、Al:0.1mass%以下、Nb:0.005〜0.05mass
%、Ti:0.003〜0.020mass%、B:0.0010〜0.0030mass%、
N:0.0030〜0.0070mass%、残部:Fe及び不可避的不純物
からなり、かつ下記(1)および(2)式を満足する鋼組成を
有するとともに降伏比が72%以下であることを特徴とす
る建築構造用鋼。 1.0≦Ti/N≦3.0 (1) 0.0005≦B−0.785(N−Ti/3.4)≦0.0025 (2) - 【請求項2】 鋼組成は、さらにCa:0.0010〜0.0050、
O:0.0010〜0.0030を含有するとともに、(3)式を満足す
ることを特徴とする請求項1記載の建築構造用鋼。 0.2≦(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/S/1.25≦0.8 (3) - 【請求項3】 鋼組成は、さらにREM:0.003〜0.015mas
s%、S:0.003mass%以上であることを特徴とする請求項
1又は2記載の建築構造用鋼。 - 【請求項4】 鋼組成は、さらにCu:1.5mass%以下、N
i:1mass%以下、Cr:1mass%以下、Mo:0.5mass%以下、
V:0.1mass%以下の1種又は2種以上を含有することを特
徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の建築構造用
鋼。 - 【請求項5】 建築構造用鋼は、ウェブ及びフランジの
厚さが6mm以上、125mm以下のH形鋼であることを特徴と
する請求項1〜4のいずれかに記載の建築構造用鋼。 - 【請求項6】 C:0.01〜0.07mass%、Si:0.6mass%以
下、Mn:0.6〜1.6mass%、P:0.030mass%以下、S:0.030
mass%以下、Al:0.1mass%以下、Nb:0.005〜0.05mass
%、Ti:0.003〜0.020mass%、B:0.0010〜0.0030mass%、
N:0.0030〜0.0070mass%を含有し、残部:Fe及び不可避
的不純物からなり、かつ下記(1)および(2)式を満足する
鋼素材を1100℃以上に加熱後、前記鋼素材のオーステナ
イト領域において圧延を終了し、しかる後、降伏比が72
%以下となるように冷却することを特徴とする建築構造
用鋼の製造方法。 1.0≦Ti/N≦3.0 (1) 0.0005≦B−0.785(N−Ti/3.4)≦0.0025 (2) - 【請求項7】 建築構造用鋼の肉厚を6mm以上、125mm以
下とするとともに、該建築構造用鋼の肉厚方向に硬度差
が生ずるように冷却することを特徴とする請求項6記載
の建築構造用鋼の製造方法。 - 【請求項8】 冷却をフェライト−ベーナイト組織が生
ずるように行うことを特徴とする請求項6記載の建築構
造用鋼の製造方法。 - 【請求項9】 鋼素材はさらにCa:0.0010〜0.0050、
O:0.0010〜0.0030を含有するとともに、(3)式を満足す
ることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の建
築構造用鋼の製造方法。 0.2≦(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/S/1.25≦0.8 (3) - 【請求項10】 鋼素材はさらにREM:0.003〜0.015mas
s%、S:0.003mass%以上を含有することを特徴とする請
求項6〜9のいずれかに記載の建築構造用鋼の製造方
法。 - 【請求項11】 鋼素材はさらにCu:1.5mass%以下、N
i:1mass%以下、Cr:1mass%以下、Mo:0.5mass%以下、
V:0.1mass%以下の1種又は2種以上を含有することを特
徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の建築構造用
鋼の製造方法。 - 【請求項12】 建築構造用鋼は、ウェブ及びフランジ
の厚さが6mm以上、125mm以下であるH形鋼であることを
特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載の建築構造
用鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001095776A JP2002294391A (ja) | 2001-03-29 | 2001-03-29 | 建築構造用鋼及びその製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2002294391A true JP2002294391A (ja) | 2002-10-09 |
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ID=18949784
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CN102400053A (zh) * | 2010-09-07 | 2012-04-04 | 鞍钢股份有限公司 | 屈服强度460MPa级建筑结构用钢板及其制造方法 |
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-
2001
- 2001-03-29 JP JP2001095776A patent/JP2002294391A/ja active Pending
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