介護・福祉

「徘徊」は死語にせな　佐々木医師が語る認知症ケアの失敗と挑戦

　40年前に全国初となる認知症専門病院を岡山県に開設し、施設などで先進的な認知症ケアを実践してきた佐々木健医師（76）が毎日新聞の取材に応じた。「認知症の人は徘徊（はいかい）するもの」と誤って思い込み、病院内を歩いて回れるように回廊式の廊下を整備するなど特殊な対応をした「失敗」の歴史を隠さず語り、本

「私は若年性認知症の本人です」　外出の不安を消したヘルプカード

　道に迷ったり、買い物のレジで手間取ったり、誰にでも起きる出来事が認知症の人の不安を膨らませ、外出することへのバリアー（障壁）になる。どうすれば安心して外に出られるか。自分の望むことや分かってほしいことを記載したヘルプカードを使って外出を続けている男性を取材した。　後ろに並ぶ女性から舌打ちする音が聞

人生の筋トレ術

やさしくされるとお返しをしたくなる人は危ない！ 詐欺に遭う前に知っておきたい「だまされる心」のメカニズム

　一向に減らない詐欺被害。国内外の集団からさまざまな手口で狙われ、ターゲットになりやすい高齢者に対しては、警察などから盛んに注意喚起も行われています。しかし、立正大学心理学部教授の西田公昭さんは「詐欺に注意したところで被害は防げない」と強調します。その理由は、脳が持っているある仕組みに潜んでいるそう

理由を探る認知症ケア

3分前のことを忘れるAさんがサ高住の“看板娘”になるまで

　自宅での暮らしが難しくなった高齢者が介護施設などに移り、新しい環境に慣れるのは簡単なことではありません。認知症の場合は、入居の経緯を説明しても忘れてしまい、不安や怒りにつながることもあります。でも、もの忘れが本人の社交的な人柄とうまく作用して、思いがけない効果をもたらすこともあるようです。職員が知

令和の幸福論

高齢者を狙う特殊詐欺と同根　急増する「福祉ビジネス」の罪

　障害者や高齢者の福祉サービスで補助金の不正請求や不適切な運営が目立っている。収益重視の会社の参入が急増していることが主な原因だが、背景にはコンサルティング会社などが「福祉はもうかる」と喧伝（けんでん）し、福祉のことをよく知らない会社に参入を促している実態がある。　「不正」とまでは言えなくても、サー

弔いのカタチ

お墓は「あの世の住まい」　オリジナルデザイン墓石が根強い人気

　お盆、お彼岸にはお墓参りをする人も多い。お墓といえば縦長の四角い墓石の「和型」が一般的だが、オリジナルデザインのお墓にこだわる人もいる。　少子化と過疎化により墓石を撤去する「墓じまい」が増える中、工夫を凝らしたお墓を建てる人々にはそれぞれの思いと理由がある。　◇弁護士バッジ、アメ車のお墓も　「自ら

最期まで私らしく～知っておきたい 在宅の医療・ケア～

「する/される」関係を変える介護民俗学～「聞き書き」を通じて生きることを応援

　人生の終盤、多くの人が関わる可能性があるのが介護です。最初は親の介護、次は配偶者、そして自分自身……。介護をめぐる状況は一人ひとり違いますが、自身の体験も含めて数多くの例を見る中で感じてきたことがあります。それは、本人の人生はずっと続いているのに、介護を受けるようになると、そこだけが切り取られ、そ

超高齢化時代を生きるヒント

がんでの最期、苦しさより前面に立つのは？　在宅医療の専門家が教える、治らないがんになった時、知っておきたいこと

　「残念ながら、あなたのがんはステージIV、つまり根治が難しい段階にあります」　「もうできる治療はありません。緩和医療を考えた方が、人生が豊かに過ごせると思います」　突然、こんなふうにいわれてしまったら、私たちは仰天してしまい、きっと正常な判断ができなくなるのではないでしょうか。何とかならないかと怪

「ダブルケア×ケアマネ」調査　会員10万人の情報サイトが結果公表

　ケアマネジャー向けの情報サイト「ケアマネジメント・オンライン」（会員約10万人）は13日、子育てと介護が重なる「ダブルケア」の実態を探った全国調査の結果を公表した。内容はホームページ（https://www.caremanagement.jp/news/detail/26954)で閲覧することがで

「何でも屋じゃない」ケアマネの悲鳴　ダブルケア支援は必要、でも…

　ケアマネジャーの5人に3人が、子育てと介護が重なる家庭を担当していた。「『何でも屋』じゃない」「無償のシャドーワークはもう限界だ」。毎日新聞などが実施した全国調査からは、ケアマネがダブルケア支援を巡る理想と現実との間で苦悩する実態が浮かぶ。　子育てと介護が重なる「ダブルケア」が、超高齢社会や晩婚・

引き算の介護しませんか？　ダブルケア研究者が憂う「呪縛」

　超高齢社会に突入する今、子育てに介護も重なるダブルケアに私たちはどう向き合っていけばいいのだろうか。支援団体「ダブルケアパートナー」（名古屋市）で代表理事を務め、毎日新聞などによるケアマネジャーへの全国調査を監修した沢田景子・名古屋学院大講師（45）は投げかける。「家族介護の『呪縛』も見つめ直しま

ケアマネ6割「ダブルケアを担当」　支援不十分97％　本紙調査

　在宅の介護家族と向き合うケアマネジャーの約6割が、子育てと介護が重なる「ダブルケア」の家庭を担当した経験があることが、毎日新聞と介護・ヘルスケア事業会社「インターネットインフィニティー」（東京都）の共同調査で明らかになった。ダブルケアラーはその重い負担から自分の時間を持てず、心身の不調や働けない悩

医療プレミア特集

「死ぬまで現役」でなくても満たされるのか?　80代女性は「気乗りのしない性交渉」をしない?　論文掲載で世界が注目する日本人シニアの性と人生の満足度

　「セックスレス大国」の日本で、高齢者がどんな性意識を持ち、どんな性行動をしているのか――は、長らく世界の謎だった。それが昨年8月、「日本人の高齢男女におけるセクシュアリティと人生満足度」という論文が英医学誌に掲載されるや、にわかに注目が集まっているという。週刊誌が火を付けた「死ぬまでセックス」ブー

ケアマネが見たダブルケアの現実は？　独自調査の結果を13日配信

　子育てと家族の介護を同じ時期に担う「ダブルケア」が広がっています。　高齢化で介護が必要な人が増える中、晩婚化や晩産化も重なって「育児を終えたら介護」という流れが崩れる社会の変化が背景にあります。あなたも近い将来、ダブルケアと向き合う日がくるかもしれません。　子育てと介護という異なる負担と向き合うこ

きょうも響く笑い声　被災住民と知的障害者、同じ“居場所”の利用者

　「まあくん、どこに行くの。暑いから気をつけてね」。がれきの横を歩いて仕事場へ向かう、知的障害を抱える男性に、地域住民が優しく声を掛けた。能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市門前町にあるNPO法人を訪ねると、生活上の困難を抱える人たちと共に暮らす地域共生社会の実現に向けたヒントが見えてきた。

偉人たちの診察室

生類憐みの令を出した「犬公方」　徳川綱吉をあっけなく死に至らしめた人獣共通感染症の皮肉

　近年、動物の権利が注目されている。昭和の時代に比べるとミンクや銀狐のゴージャスなコートを見ることはまれだし、狩猟人口も減少しているという。もちろん、我々は肉や魚など動物性食品を摂取することなしに生きてゆくことはできないし、狩猟者の減少はシカやクマなど野生動物による被害にもつながるので難しいところで

弔いのカタチ

墓じまいで「暴利をむさぼるな」　住職兼ジャーナリストの視点

　「信教の自由があるのだから、引き留めたり、『出て行くには金を払え』と要求したりしてはいけない」　そう語気を強めるのは鵜飼秀徳さん（50）。寺院などを取材するジャーナリストで、京都で約400年続く浄土宗正覚寺の住職でもある。　批判の対象は「離檀料（りだんりょう）」を求める一部のお寺だ。墓石を撤去する

最期まで私らしく～知っておきたい 在宅の医療・ケア～

特養でどこまでできる？～医療ケアが必要な人が、普通の暮らしを続けるために知っておきたいこと

　たんの吸引、酸素吸入、透析、胃ろうなどの経管栄養……。高齢になればなるほど、こうした「医療ケア」が必要になる人が増えてきます。　2019年7月に自宅で転倒し検査入院した私の父(当時95歳)は、入院中に誤嚥（ごえん）性肺炎を起こし、たんの吸引が必要となりました。入院中に寝たきりとなり、生活の一部にサ

総合診療医の視点 -命を救う5分の知識-

炎熱の地球を生き延びる知恵～その3・暑さで低下する脳機能　試験の成績は落ち、犯罪も増える？～

　熱中症で起こり得る症状は多彩で、いつも同じような経過をたどるわけではありません。我々医療者は熱中症の分類を把握し、特徴的な症状を念頭に置いて診察しますが、一般の人はそこまで学んでおく必要はありません。大切なのは、倦怠（けんたい）感（だるさ）、動悸（どうき）、頭痛、めまい、しびれ、息苦しさ、嘔気（お

人生の筋トレ術

診療所どう選ぶ？臨終前の症状とは？　今知っておきたい　在宅医療の基礎知識

　一昔前は病院で死ぬのが当たり前でしたが、医療・介護制度の整備などを背景に在宅死を望む人が増えてきました。実際、家で亡くなる人の割合は、新型コロナの感染拡大期をきっかけに上昇しつつあります（注1）。ただ、急な症状の変化や家族の負担に対し、不安を抱く人も多いようです。今知っておきたい、もうひとつの最期