JPS6312581B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は、魚肉冷凍すり身の品質改良法に関す
る。 魚肉冷凍すり身は、魚肉ねり製品（かまぼこ、
ちくわなど）の原料として広く使用されている
が、近年魚肉冷凍すり身用の原料魚（スケソウダ
ラ、グチ、ホツケ、タチウオ、アジ、サバなど）
の資源の減少により、漁場の遠隔地化が進み、冷
凍すり身加工までの日数の長期化による原料魚の
鮮度の低下などにより、冷凍すり身の品質の低下
をきたしているのが現状である。 冷凍すり身の品質は、それを加工して得られる
かまぼこなどのねり製品の弾力（あし）、白度に
よつて評価される。良好なあしを有し白度の高い
製品を製造するには、新鮮な原魚を原料として製
造した冷凍すり身を用いなければならない。しか
し前記のように、現在は鮮度の高い原料魚を入手
することが困難であるので、冷凍すり身の品質改
良技術の開発が強く要望されている。 従来、食用油をねり製品に添加するとその風味
の改善にはなるが、弾力はほとんど改善されず、
逆に添加量が多くなると弾力が低下する傾向が認
められ、さらに原料魚の鮮度が低いと弾力も低
く、しかも食用油を添加すると弾力が急激に低下
することが知られている（日水会誌20巻９号814
〜815頁1955年、同25巻141〜143頁及び144〜146
頁1959年参照）。また特公昭53−23388号明細書に
は、冷凍すり身に食用油を３〜10％添加すること
により、風味及び冷凍変性を防止する方法が記載
されている。 本発明者らは冷凍すり身に対する食用油の効果
についてさらに鋭意研究した結果、冷凍すり身中
に食用油を均一な微粒子状で添加して分散させる
ことにより、これから得られるねり製品の白度及
び弾力を改良しうることを見出した。 本発明はこの知見に基づくもので魚肉すり身に
0.1〜１重量％の常温で液状の食用油を微粒子状
の形で添加し、すり身中に食用油を均一な微粒状
分散状態で存在させることを特徴とする、魚肉冷
凍すり身の品質改良法である。 前記の文献及び特許出願明細書においては、す
り身中に食用油を滴下しながら混合するか、ある
いは少量の乳化剤を食用油にあらかじめ混合し、
次いですり身中に添加混合するなどの手段が用い
られている。しかしすり身はペースト状であつて
水のように粘度の低い液体ではなく、またその混
合は通常は擂潰器、ニーダーなどのゆるやかに撹
拌する混合機中で行われ、ホモミキサー、ホモジ
ナイザーなどの激しく撹拌する装置は用いられな
い。従つてこれらの普通の手段及び装置を用いて
混合することにより、すり身中に食用油を微粒子
の状態で存在させることは困難である。このよう
に従来は単に食用油をそのまますり身に添加し、
肉眼で油滴が認められなくなるまで混練していた
が、実際には充分均一に混合されていなかつたと
思われる。 本発明方法により、食用油をすり身中に均一な
微粒状分散状態で存在させることによつて３％以
下の少量の食用油添加量においても効果が認めら
れることは予想外のことであつた。これは、従来
は食用油が比較的大きな粒子としてすり身中に存
在していたため、３％以下の添加量では効果が現
われなかつたものと考えられる。 本発明において用いられる食用油は、常温で液
状のものであり、例えば綿実油、米ぬか油、コー
ン油、大豆油、ナタネ油、オリーブ油、落下生油
などの白絞油、サラダ油などを用いることができ
る。すり身に対する添加量は0.1〜１重量％、好
ましくは0.2〜１重量％である。これらの食用油
は好ましくは30μ以下、特に10μ以下の微粒状水
性分散物として、あるいはこの微粒状水性分散物
を乾燥し粉末としてすり身に添加される。すり身
中に食用油を微粒状に均一に存在せしめることが
重要であり、前もつて食用油を微粒状にしても、
すり身への添加時に食用油の粒子が大きくなる状
態で添加することは、意味がない。食用油の添加
量が１％より多くなると、すり身中に微粒状で存
在させても、弾力が低下し、0.1％以下では顕著
な品質改良効果は得られない。 食用油を魚肉すり身中に微粒子状に均一に分散
させるためには、食用油の水性分散物にして添加
する方法が好ましい。食用油水性分散物の製造法
としては、例えば水に食品添加用界面活性剤及
び／又は食品添加用糊料を溶解し、これに食用油
を加え、ホモミキサー又はホモジナイザーを用い
てはげしく撹拌し、微粒子状の食用油を含有する
水性分散物にする方法がある。 食用油水性分散物の分散媒として水だけを用い
てもよいが、単に水だけでなく糖類例えばしよ
糖、麦芽糖等及び／又は糖アルコール類例えばソ
ルビツト、マンニツト等の水溶液を用いることも
できる。冷凍すり身の製造においては、水晒、脱
水後の魚肉すり身に多量の水を加えることは好ま
しくないので、分散媒として水の代わりに糖及
び／又は糖アルコールの水溶液を用いることが好
ましい。食用油水性分散物は、すり身中に食用油
が微粒子状に分散しうるものであれば液状、ペー
スト状ないし固形物のいずれの状態のものでもよ
い。 また食用油水性分散物を、食用油の微粒子状態
を維持しながら乾燥して粉末化したものを魚肉す
り身に添加することもできる。例えば食用油、カ
ゼイン、しよ糖脂肪酸エステル、レシチン、プロ
ピレングリコール、脂肪酸エステル、しよ糖、殿
粉などを含む食用油水性分散物を乾燥して粉末化
することができる。乾燥方法としては真空乾燥、
熱風乾燥、ドラム乾燥、噴霧乾燥などの方法を用
いることができるが、直接に細かい粉末が得ら
れ、粉砕する必要がない点で噴霧乾燥法が好まし
い。 食用油を分散させるため、あるいは分散の安定
化のために用いられる少量の食品用界面活性剤と
しては、例えばしよ糖脂肪酸エステル、プロピレ
ングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸
エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン
などを単独で又は混合して用いることができる。
さらに分散安定化のため、食品添加用糊料例えば
カルボキシメチルセルロース、メチルセルロー
ス、アラビヤゴム、グアガム、殿粉、寒天、ゼラ
チン、カゼインなどを単独で又は混合して添加し
てもよく、あるいは前記の界面活性剤と併用して
もよい。界面活性剤又は糊料は冷凍すり身の品質
に悪影響を及ぼさない量で使用でき、食用油に対
しそれぞれ一般に20％以下、好ましくは10％以下
の量で添加される。これ以上の添加量ではすり身
に対し好ましくない影響を与える場合がある。 本発明による食用油分散物は、原料魚体より採
肉、水晒、細切ないし擂潰して得られるすり身に
しよ糖などの糖類、ソルビツトなどの糖アルコー
ル類、ピロリン酸ソーダ、ポリリン酸ソーダなど
の重合リン酸塩を加え、次いで冷凍する従来の冷
凍すり身の製造法において、糖類、糖アルコール
類、重合リン酸塩を添加する工程ですり身に添加
される。食用油をすり身中に微粒状に均一に分散
させるための特別の手段及び装置を用いる必要は
なく、一般に用いられる擂潰機、ニーダーなどの
普通の装置中ですり身と混合することができる。 実施例 １ 新鮮なスケソータラから採肉し、水晒及び脱水
したすり身を20Kgずつに分け、それぞれにピロリ
ン酸ナトリウム（無水）20ｇ（0.1％）、ポリリン
酸ナトリウム（無水）20ｇ（0.1％）、並びに第１
表に示す量の食用油（米ぬかサラダ油）を70％ソ
ルビツト水溶液中の分散液として加え、ニーダー
で15分間混練したのち−24℃で凍結することによ
り冷凍すり身を製造する。 食用油とソルビツト液からの分散液の調製法： 70％ソルビツト水溶液にしよ糖脂肪酸エステル
を0.1％の量で加え、90℃に加熱して溶解し、次
いで米ぬかサラダ油を加え、ホモミキサーで撹拌
して乳化液とする。乳化液中の油粒子は、顕微鏡
観察によれば大部分が１〜2μの粒径を有する。
ソルビツト液と米ぬかサラダ油の比率は、すり身
に対しソルビツト液を常に10％添加した場合に、
第１表に示す量の米ぬかサラダ油（0.05〜5.0％）
が添加される比率にする。例えば米ぬかサラダ油
をすり身に１％添加する場合は、ソルビツト液10
部に対し米ぬかサラダ油１部の比率で混合する。 凍結後１か月間保存したのち室温で解凍し、通
常の方法によりかまぼこを製造する（食塩2.4％
及び殿粉５％添加）。 冷凍すり身については水分及びハンター白度、
かまぼこについてはハンター白度及びゼリー強度
を下記のようにして測定した。得られた結果を第
１表に示す。 ハンター白度： ND―101型デジタル色差計（日本電色工業製）
を用いて測定した。 ゼリー強度： フードレオメーター（日本精密製）で直径５mm
の球形プランジヤーを用いて測定した。Ｗ（ｇ）
は破断時の荷重、Ｌ（cm）は破断時のプランジ
ヤー侵入長さを示す。

【表】 第１表から明らかなように、食用油の添加量が
すり身に対し0.1％以下の場合は食用油の効果は
全く認らられず、また１％より多くなると逆に弾
力の低下が認められ、0.1〜１％の範囲で良好な
結果が得られる。 実施例 ２ 実施例１と同様にして、スケソータラから採肉
し、水晒及び脱水したすり身にピロリン酸ナトリ
ウム（無水）0.15％、ポリリン酸ナトリウム（無
水）0.15％及びしよ糖５％、ならびに第２表に示
す70％ソルビツト水溶液と綿実白絞油からの分散
液１％を加え（本発明）あるいは綿実白絞油0.3
としよ糖脂肪酸エステル0.001％の単なる混合物
及びこれと別に70％ソルビツト水溶液0.699％を
加え（比較）、あるいは70％ソルビツト水溶液の
みを加え（比較）、それぞれニーダーで15分間混
練し、−24℃で凍結することにより冷凍すり身を
製造する。 ソルビツト液と綿実白絞油からの分散液の調製
法： 70％ソルビツト水溶液69.9部にしよ糖脂肪酸エ
ステル0.1部を加えて加熱溶解し、これに綿実白
絞油30部を加え、ホモミキサーで撹拌して分散液
とする。 冷凍後２日目及び３か月目にそれぞれ室温で解
凍し、実施例１と同様にしてすり身の水分及びハ
ンター白度、かまぼこの白度及びゼリー強度を測
定した。その結果を第２表に示す。この表中、各
試験区の上段の数値は冷凍後２日目、下段の数値
は３か月目の値である。

【表】 ＊ すり身に添加する前に両成分をあらかじめ混
合する。
注） 試験区１及び２の食用油添加量はすり身に
対し0.3％、しよ糖脂肪酸エステル添加量は
0.001％である。また試験区1〜3において70
％ソルビツト水溶液添加量は0.699％である。
冷凍２日後及び冷凍３か月後いずれにおいて
も、綿実白絞油を微粒子の状態で添加した試験区
１が、全く同じ添加物を同じ添加量で加えた試験
区２及びソルビツト液のみを加えた試験区３より
も品質が最も優れており、しかも冷凍変性が少な
い結果が得られる。 実施例 ３ 70％ソルビツト水溶液2697ｇにカゼインナトリ
ウム３ｇを加え、80℃で加熱溶解した。これを綿
実サラダ油を300ｇ加え、ホモミキサーで撹拌し、
油の粒子が5μ以下の微粒子状の分散液とする。 新鮮なタチウオを原料として、採肉、水晒した
すり身を準備し、20Kgずつの３区に分ける。それ
ぞれにしよ糖１Kg、ピロリン酸ナトリウム20ｇ及
びポリリン酸ナトリウム20ｇを加え、さらに第１
区（本発明）には上記の分散液600ｇを加え、第
２区（比較）には70％ソルビツト液540ｇと綿実
サラダ油60ｇをそのまま加え、第３区（比較）に
は70％ソルビツト液540ｇを加え、それぞれ15分
間混練したのち凍結して冷凍すり身を製造する。
これらの冷凍すり身を１か月冷凍保存後及び５か
月冷凍保存後に取出し、白度の測定、かまぼこ製
造後の白度及び弾力の測定を行つた。その結果は
第３表に示すとおりで、本発明区が１か月保存後
においても５か月保存後においても、白度及び弾
力のいずれの点においても優れている。

【表】 実施例 ４ (a) 水10に第二リン酸ナトリウム（無水）33ｇ
及びクエン酸ナトリウム15ｇを加えて溶解した
のち、カゼイン219ｇを加え、加熱して溶解し、
さらにしよ糖1000ｇを加えて溶解し、この溶液
を50℃に保持する。一方、綿実白絞油5000ｇと
大豆レシチン200ｇ及びプロピレングリコール
モノステアレート200ｇとをあらかじめ混合し、
加熱溶解し、これを前記の水溶液に少量ずつ加
えながら撹拌し、次いでホモジナイザーを用い
て分散液となし、この分散液を噴霧乾燥する
と、油脂含有粉末が得られる。この油脂含有粉
末は綿実白絞油75％、レシチン３％、プロピレ
ングリコールモノステアレート３％、カゼイン
3.28％及びしよ糖15％（その他0.72％）を含有
する。 (b) 新鮮なスケソウタラから採肉、水晒したすり
身60Kgを準備し、20Kgずつの３区に分け、それ
ぞれの区にピロリン酸ナトリウム（無水）２ｇ
（0.1％）及びポリリン酸ナトリウム（無水）２
ｇ（0.1％）を加え、さらにそれぞれの区に第
４表に示す添加物を加え、ニーダーを用いて15
分間混練したのち、凍結して冷凍すり身を製造
する。 凍結保存３か月後に冷凍すり身を解凍し、水
分及びハンター白度の測定、かまぼこ製造（殿
粉５％、食塩2.4％）後のハンター白度及びゼ
リー強度の測定を行つた。その結果を第５表に
示す。

【表】

【表】 この結果から明らかなように、本発明区は比較
の試験区２及び３に比較してハンター白度及びゼ
リー強度において優れている。同じ油脂の添加量
でも微粒子状にして添加した場合（本発明による
試験区１）とそうでない場合（試験区２）におい
ては大きな差が認められる。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 魚肉すり身に0.1〜１重量％の常温で液状の
   食用油を微粒子状の形で添加し、すり身中に食用
   油を均一な微粒状分散状態で存在させることを特
   徴とする、魚肉冷凍すり身の品質改良法。 ２ 食用油を水に微粒子状に分散させた状態にし
   て添加することを特徴とする、特許請求の範囲第
   １項に記載の方法。 ３ 食用油水性分散物を乾燥し、微粒子状の食用
   油を含む粉末として、魚肉すり身に添加すること
   を特徴とする、特許請求の範囲第１項に記載の方
   法。 ４ 食用油水性分散物の分散媒が糖類及び／又は
   糖アルコールの水溶液であることを特徴とする、
   特許請求の範囲第２項に記載の方法。 ５ 食用油水性分散物が食品用界面活性剤を含有
   することを特徴とする、特許請求の範囲第２項に
   記載の方法。 ６ 食用油水性分散物が食品添加用糊料を含有す
   ることを特徴とする、特許請求の範囲第２項に記
   載の方法。 ７ 食用油分散物中の分散粒子が30μ以下の粒径
   を有することを特徴とする、特許請求の範囲第２
   項に記載の方法。