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JPH10249945A - 微多孔フィルムの製法及び多層フィルム - Google Patents

微多孔フィルムの製法及び多層フィルム

Info

Publication number
JPH10249945A
JPH10249945A JP9059403A JP5940397A JPH10249945A JP H10249945 A JPH10249945 A JP H10249945A JP 9059403 A JP9059403 A JP 9059403A JP 5940397 A JP5940397 A JP 5940397A JP H10249945 A JPH10249945 A JP H10249945A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
stretching
thermoplastic resin
film
composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP9059403A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroshi Tajima
洋 田島
Isao Yoshimura
功 吉村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Chemical Industry Co Ltd filed Critical Asahi Chemical Industry Co Ltd
Priority to JP9059403A priority Critical patent/JPH10249945A/ja
Publication of JPH10249945A publication Critical patent/JPH10249945A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

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  • Processing And Handling Of Plastics And Other Materials For Molding In General (AREA)
  • Extrusion Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Molding Of Porous Articles (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の技術では微多孔フィルムを得ることが
できなかった樹脂組成、延伸条件においても均一な単層
または多層の微多孔フィルムを得る。 【解決手段】 多層ダイにより少なくとも1層の連続相
を形成する熱可塑性樹脂(A)を主体とする組成物より
なる微多孔形成前駆層(M層)と、さらに少なくとも1
層の成膜性向上を主目的とする、該前駆層とは異なる熱
可塑性樹脂(C)を主成分とする補助層(S層)とを積
層共押出しを行い、所定の厚みにした後、伝熱媒体によ
り急冷固化させて、15℃以上、該前駆層(M層)を構
成する組成物のビカット軟化点+50℃以下、の温度条
件で少なくとも1方向に面積倍率で1.1倍以上30倍
以下延伸し、微多孔を形成せしめて多層フィルムを得、
次に該補助層を剥離除去して微多孔フィルムを得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種の円筒型電
池、角形電池、薄型電池、ボタン型電池、電解コンデン
サー等の電池材料に使用されるセパレータ、精密濾過膜
等の分離膜、建築用結露防止用通気性フィルム素材、透
気性ジャンパー等の衣料品、おむつ、生理用品等の衛生
用品、通気性で細菌、ゴミ等の通過を阻止する包装用フ
ィルム、白化度の高い反射フィルム、印刷用紙材料等と
して有用な微多孔フィルムの製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性樹脂からなり、厚みが5〜10
0μ程度で、厚さ方向に一表面から他の表面に貫通す
る、孔径が0.01μから5μ程度の連通孔を厚さ方向
に垂直な面全面にわたって均一に有する微多孔フィルム
は、一般に透気度(秒/10cc)が0.1以上100
以下の気体透過性を有する一方で、耐水性を有し、この
ような性能が要求される数多くの分野で頻繁に使用され
ている。
【0003】従来、このような多孔質フィルムの製造方
法として、(1)結晶性樹脂を縦方向に流動配向させ、
その後冷間延伸と熱間延伸を続けて行う方法(例えば、
特公昭55−32531号参照)、(2)可溶性のフィ
ラーを添加しフィルムに成膜し、その後フィラーを溶出
させて微多孔化する方法(例えば、特開昭58−298
39号参照)、(3)フィラーを添加したフィルムを少
なくとも一軸に延伸して微多孔化する方法(例えば、特
開昭57−59727号参照)、(4)相溶性の小さい
二種類の樹脂を溶融混練することにより、片方の樹脂が
他方の樹脂に微分散したフィルムを形成し、次いで該フ
ィルムを少なくとも一軸に延伸して微多孔化する方法
(例えば、特開平6−263904号参照)等が知られ
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】分離膜や電池用セパレ
ータの分野では、特に高強度化や薄膜化が望まれている
が、補助層を用いず単独で高倍率の延伸を行ってフィル
ムの高強度化や薄膜化、均一化を行うことは困難であ
る。従来、例えば、充填剤を含まない場合、密度が0.
960g/cm3以上の高密度ポリエチレン(以下HD
PEという)をドローダウン比(以下DDRという)2
0〜200で押出して前駆体を形成し、該HDPEの結
晶融点より10〜25℃の低い温度で充分時間をかけて
30秒間〜1時間アニールして比較的大きなサイズの結
晶を成長させ、−20〜70℃の温度、75%/分以上
の速度(例えば171%/分の比較的低い速度)で一軸
冷延伸して該前駆体と比較して120〜160%の冷延
伸長にし、その後続いて該HDPEの結晶融点より10
℃〜25℃の低い温度、75%/分以下の速度(例えば
34%/分の非常に遅い速度)で一軸熱延伸して該前駆
体と比較して235〜310%の熱延伸長にすることに
よりHDPEからなる微多孔フィルムを得る方法が知ら
れている(特開昭62−121737号)。
【0005】しかし、この方法では延伸速度が遅く、効
率がよくないことに加え、気孔率を高めるために延伸倍
率を開示された範囲以上に上げる、もしくはフィルムの
強度を上げるためにヨコ方向に延伸しようとすると、延
伸中に前駆体が裂け、あるいはネッキング現象等が生じ
て均一な微多孔フィルムが得られないという問題があ
る。これらの問題が生じる原因の一つとしては、開孔時
の応力上昇がないか、または応力が低下するか、あるい
は応力の上昇が少なく、材質全体に有効な延伸配向が付
与できず、その結果、一枚のフィルムでは応力が不均一
に伝わり、フィルムが破れるか、あるいは不均一化する
ことが考えられる。
【0006】また、この方法を用いた場合、前駆体を構
成する熱可塑性樹脂もポリプロピレン、高密度ポリエチ
レンをはじめとする高結晶性樹脂に限定される。一方、
熱可塑性樹脂が無機充填剤を含む場合、従来、熱可塑性
樹脂90〜35体積%と充填剤10〜65体積%とを混
合し、押出してDDRが10を超えない範囲でシート状
に成形し、少なくとも一方向に1.5〜6倍に延伸して
微多孔フィルムにする方法が一般的に行われている。こ
の方法においても、充填剤が含まれるため、もろくなっ
たシートの面積延伸倍率は、2〜10倍に限定されると
いう問題がある。
【0007】これとは別に、薄膜フィルムの製造方法と
して、同質の樹脂を重ねるか、剥離性のもう一つの層を
ラミネートする・共押出する等の手段で延伸前の原反と
して用意し、これを延伸後剥離除去し、目的の層を得る
製造方法も知られている。これらの方法のうち、特開平
6−100719号では、微多孔フィルムの製造方法と
して、充填剤を含有する微多孔形成前駆層の両面に、微
多孔形成前駆層と熱融着しない熱可塑性樹脂の外層を共
押出して積層シートを得、外層の剥離を行った後、延伸
し微多孔フィルムを得る方法が開示されている。しかし
ながら、この公報では、微多孔形成前駆層の厚み方向に
おける充填剤の存在量を均一化するために外層を積層す
ることが開示されているのみであり、上記の問題点を解
決するための具体的手段については開示されていない。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点を解決するために、より幅広い種類の樹脂を原料とと
することができ、かつ、より高強度化、より薄膜化した
微多孔フィルムを幅広い条件で効率よく生産する方法に
ついて研究を重ねてきた。その結果、少なくとも1層の
熱可塑性樹脂を主成分とする微多孔形成前駆層(以下M
層)と、さらに少なくとも1層の成膜性向上を主目的と
する、M層に用いられる樹脂とは異なる熱可塑性樹脂よ
りなる補助層(以下S層)とを多層ダイにより(同時)
積層共押出して所定の厚みにし、伝熱媒体により急冷固
化させ、所定の範囲の温度、延伸倍率で少なくとも1方
向に延伸し、微多孔を形成せしめて多層フィルムを得、
次に該S層を剥離除去(場合により回収、リサイクル)
して微多孔フィルムを得ることにより、従来の技術では
微多孔フィルムを得ることができなかった樹脂組成、延
伸条件においても単層または多層の微多孔フィルムを得
ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】すなわち、本発明は、微多孔フィルムの製
造方法において、少なくとも1層の連続相を形成する熱
可塑性樹脂を主成分として含む組成物よりなる微多孔形
成前駆層と、さらに少なくとも1層の、該前駆層に用い
られる樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を主成分とする補助
層とを多層ダイにより積層共押出しを行うことにより所
定の厚みにした後、伝熱媒体により該前駆層を急冷固化
させて、15℃以上、かつ、該前駆層を構成する樹脂組
成物のビカット軟化点に50℃を加えた温度以下の温度
条件で、得られた積層体を少なくとも1方向に面積倍率
で1.1倍以上30倍以下に延伸することにより該前駆
層に微多孔が形成された多層フィルムを得、次いで該補
助層を剥離除去することにより、微多孔フィルムを得る
ことを特徴とする。
【0010】この方法により、M層単独では不可能だっ
た、均一で高度な流動配向を付与することが可能で、延
伸工程中に不均一になり裂けてしまう、厚み方向で孔形
成性、特性が異なる、幅方向で均一性に欠ける、更には
条件的により厳しいバブル法での延伸(特に横方向に高
度な延伸を加える目的の場合等には上記理由でのパンク
や不均一化の問題の他に、バブル内の空気が抜けて封入
できず、延伸が継続して出来ない等の問題がある)がで
きない等の理由で、いまだかつて達成することができな
かった樹脂組成や延伸条件でも、微多孔フィルムを効率
よく生産することができる製造方法(1)、及び該方法
の中間で得られる多層フィルムが提供される。
【0011】また、本願は、以下の(2)〜(19)の
発明も同時に提供する。 (2)前駆層(M層)の主成分である熱可塑性樹脂
(A)が、以下の(A1)と(A2)とから少なくとも
1種選択されることを特徴とする、上記(1)記載の微
多孔フィルムの製造方法。ただし、 A1:結晶化度が40%以上でかつ結晶融点が80℃以
上の熱可塑性樹脂; A2:結晶化度が40%未満でかつガラス転移点が50
℃以上の熱可塑性樹脂;である。
【0012】(3)前駆層(M層)が、熱可塑性樹脂
(A)99〜50体積%と、以下の(B1)、(B
2)、(B3)、(B4)から選択される、少なくとも
1種の物質(B)1〜50体積%から構成されているこ
とを特徴とする、前記(1)または(2)記載の微多孔
フィルムの製造方法。ただし、 B1:熱可塑性樹脂(A)との溶解度パラメータの差が
3以内で、かつ弾性率が熱可塑性樹脂(A)の140%
以上である熱可塑性樹脂; B2:熱可塑性樹脂(A)との溶解度パラメータの差が
3以内で、弾性率が熱可塑性樹脂(A)の140%未満
でかつ結晶化度が40%以上の、熱可塑性樹脂(A)と
は異なる熱可塑性樹脂; B3:熱可塑性樹脂(A)との溶解度パラメータの差が
3以内でかつM層とS層とを共押出する温度で少なくと
も液体である有機物; B4:粒子径が10μm以下である有機系または無機系
より選択される少なくとも1種の充填剤;である。
【0013】(4)前駆層(M層)が、(A1)99〜
50体積%と、(B1)、(B2)、(B3)、(B
4)から選択される成分を少なくとも1成分含む、少な
くとも1種の物質(B)1〜50体積とからなることを
特徴とする、上記(2)または上記(3)記載の微多孔
フィルムの製造方法。(上記(3)との違いは何ですか
?) (5)前駆層(M層)が、(A2)99〜50体積%
と、(B1)、(B3)、(B4)から選択される成分
を少なくとも1成分含む、少なくとも1種の物質(B)
1〜50体積%とからなることを特徴とする、前記
(2)または(3)の微多孔フィルムの製造方法。
【0014】(6)前駆層(M層)の主成分である熱可
塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド
系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹
脂、フッ素系樹脂、エチレンとビニルアルコールの共重
合体、C2〜C12のα−オレフィンと一酸化炭素の共
重合体及びその水添物、ポリオキシメチレン系重合体、
スチレンとα−オレフィンとの共重合体及びその水添
物、スチレンと脂肪族モノ不飽和脂肪酸との共重合体、
スチレンと共役ジエン系不飽和単量体との共重合体及び
これらの水添物からなる群から選択される少なくとも1
種の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする、前記
(1)ないし(3)の微多孔フィルムの製造方法。
【0015】(7)熱可塑性樹脂(A)を構成するポリ
オレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチ
レン系樹脂、ポリブテン−1系樹脂、ポリ4−メチルペ
ンテン−1系樹脂、エチレンとC3〜C12のα−オレ
フィンとの共重合体、異なるC3〜C12のα−オレフ
ィン同士の共重合体、エチレンと環状オレフィンの共重
合体及びその水添物、C3〜C12のα−オレフィンと
と環状オレフィンの共重合体及びその水添物から少なく
とも1種選択されることを特徴とする、上記(6)の微
多孔フィルムの製造方法。
【0016】(8)前駆層(M層)が、少なくとも2層
からなり、各層が同種または異種の樹脂組成物からなる
ことを特徴とする、前記(3)の微多孔フィルムの製造
方法。 (9)熱可塑性樹脂(C)が、ポリオレフィン系樹脂、
ポリエステル系樹脂とから選択されることを特徴とす
る、前記(1)の微多孔フィルムの製造方法。
【0017】(10)熱可塑性樹脂(C)が、ポリブテ
ン−1を主体とした結晶性樹脂であることを特徴とす
る、上記(9)の微多孔フィルムの製造方法。 (11)該熱可塑性樹脂(C)が、以下のC1ないしC
3をその構成成分とし、かつ(C1)、(C2)及び
(C3)からなる組成物、(C1)及び(C2)からな
る組成物、または(C2)及び(C3)からなる組成物
よりなる群から選択される混合組成物からなることを特
徴とする、前記(1)の微多孔フィルムの製造方法。た
だし、 C1:低密度ポリエチレン(但し、α−オレフィンが1
5モル%以下でかつビカット軟化点が80℃以上の、エ
チレンとC3〜C12のα−オレフィンとの共重合体も
含むものとする)、またはビニルエステル単量体、脂肪
族不飽和モノカルボン酸、該モノカルボン酸アルキルエ
ステルより選択される少なくとも1種の単量体とエチレ
ンとの共重合体、エチレン99〜82モル%とスチレン
1〜18モル%のエチレン−スチレン系共重合体、また
はこれらの誘導体から選択される少なくとも1種の共重
合体; C2:ビカット軟化点が80℃以下の軟質熱可塑性エラ
ストマー; C3:プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−
1より選択される少なくとも1種の単量体の単独重合
体、またはこれらの単量体とエチレンまたは別のα−オ
レフィンから選択される少なくとも1種の単量体との共
重合体、またはこれらの誘導体から選択される少なくと
も1種の共重合体;である。
【0018】(12)補助層(S層)が、前駆層(M
層)との界面までブリード可能な添加剤0.2〜5重量
%を含む熱可塑性樹脂(C)からなることを特徴とする
前記(1)の微多孔フィルムの製造方法。 (13)前駆層(M層)が、補助層(S層)との界面ま
でブリード可能な添加剤0.2〜5重量%を含む熱可塑
性樹脂(A)からなることを特徴とする前記(1)の微
多孔フィルムの製造方法。
【0019】(14)多層ダイの開口部断面積(S1)
と、前駆層(M層)と補助層(S層)とが積層されたま
ま急冷固化した結果得られる成形物の断面積(S2)と
の比で表されるドローダウン比(DDR=S1/S2)
が10以上になるように流動配向を加えることを特徴と
する、前記(1)の微多孔フィルムの製造方法。 (15)共押出しする多層ダイとして、環状ダイを使用
することを特徴とする、前記(1)の微多孔フィルムの
製造方法。
【0020】(16)15℃以上、該前駆層を構成する
組成物のビカット軟化点+50℃以下、の温度条件内で
各々異なる温度条件で二段階以上のステップで合計1.
1倍以上30倍以下に積層体を少なくとも一方向に、延
伸することを特徴とする、前記(1)の微多孔フィルム
の製造方法。 (17)二段階以上延伸することにより微多孔フィルム
を製造する方法において、各段における延伸開始部の温
度差が少なくとも10℃以上であることを特徴とする、
上記(16)の微多孔フィルムの製造方法。
【0021】(18)延伸開始部と延伸終了部の温度差
が5℃以上の条件下で延伸することを特徴とする、上記
(16)の微多孔フィルムの製造方法。 (19)延伸前、延伸後の少なくともいずれかに、前駆
層(M層)に、2〜15Mradの高エネルギー線によ
る架橋処理を行うことを特徴とする、前記(1)の微多
孔フィルムの製造方法。
【0022】本発明において、M層は、少なくとも1層
の連続相を形成する熱可塑性樹脂(A)を主成分とする
組成物よりなる。このような熱可塑性樹脂(A)として
は、比較的硬質の樹脂で、延伸配向により強度を付与す
ることを可能にするという観点から、以下の(A1)と
(A2)とから少なくとも1種選択されることが好まし
い。
【0023】また、最終的に得られる微多孔フィルムの
孔径を決定する、熱可塑性樹脂(A)中での分散状態を
適当にするという観点から、熱可塑性樹脂(A)99〜
50体積%と、以下の(B1)、(B2)、(B3)、
(B4)から選択される、少なくとも1種の分散相を形
成しうる物質(B)1〜50体積%から構成されること
が好ましい。
【0024】さらに好ましくは、下記の(A1)99〜
50体積%と、下記の(B1)、(B2)、(B3)、
(B4)から選択される少なくとも1種の物質(B)1
〜50体積との組み合わせ、あるいは、下記の(A2)
99〜50体積%と、(B1)、(B3)、(B4)か
ら選択される成分を少なくとも1成分を含む、少なくと
も1種の物質(B)1〜50体積%との組み合わせであ
る。 A1:結晶化度が40%以上でかつ結晶融点が80℃以
上の熱可塑性樹脂; A2:結晶化度が40%未満でかつガラス転移点が50
℃以上の熱可塑性樹脂; B1:該熱可塑性樹脂(A)との溶解度パラメータ(以
下SP値、秋山三郎らによる ポリマーブレンド 12
5頁〜(1981年 シーエムシー刊)に記載されてい
る方法や、Smallによる Journal of
AppliedChemistry 第3巻 71頁〜
(1953年)の方法により計算。なお、この方法によ
り計算できない場合は、ポリマーの各種溶媒への溶解性
により推定)の差が3以内で、曲げ弾性率(本願ではA
STM D790による曲げ弾性率のことを指す)が該
熱可塑性樹脂(A)の140%以上である熱可塑性樹
脂; B2:該熱可塑性樹脂(A)とのSP値の差が3以内
で、弾性率が該熱可塑性樹脂(A)の140%未満でか
つ結晶化度が40%以上の、該熱可塑性樹脂(A)とは
異なる熱可塑性樹脂; B3:該熱可塑性樹脂(A)とのSP値の差が3以内で
かつ該M層とS層とを共押出する温度で少なくとも液体
である有機物(有機物のSP値は、ポリマーハンドブッ
ク 第三版 VII−517頁〜(WILEY INT
ERSCIENCE刊)に記載の方法により計算); B4:粒子径が10μm以下である有機系または無機系
より選択される少なくとも1種の充填剤; なお、ここで言う「結晶化度」とはDSC法により測定
した値である。
【0025】結晶化度が40%以上でかつ結晶融点が8
0℃以上の熱可塑性樹脂(A1)は、特に限定されるも
のではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリア
ミド−6、ポリアミド−66、ポリアミド−6、66を
はじめとするポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリカ
プロラクトン、ポリ−α−ヒドロキシイソ酪酸をはじめ
とする結晶性ポリエステル及びこれらの共重合体、ポリ
フッ化ビニリデン、ポリ3フッ化塩化エチレンをはじめ
とするそれぞれ自由な共重合体を含むフッ素系樹脂、エ
チレンとビニルアルコールの共重合体、エチレンやプロ
ピレンに代表されるα−オレフィンと一酸化炭素の共重
合体及びその水添物、ポリオキシメチレン系樹脂、スチ
レンとα−オレフィンとの共重合体及びその水添物、ス
チレンと脂肪族モノ不飽和脂肪酸との共重合体、スチレ
ンと共役ジエン系不飽和単量体との共重合体及びこれら
の水添物等が挙げられる。
【0026】ここで挙げた「ポリオレフィン系樹脂」
は、結晶化度が40%以上でかつ結晶融点が80℃以上
であれば特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂、
低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、高密度
ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリ
エチレンをはじめとするポリエチレン系樹脂、ポリブテ
ン−1系樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1系樹脂、エ
チレンとC3〜C12のα−オレフィンとの共重合体、
異なるC3〜C12のα−オレフィン同士の共重合体、
エチレンと環状オレフィンの共重合体及びその水添物、
C3〜C12のα−オレフィンと環状オレフィンの共重
合体及びその水添物等であることが好ましい。
【0027】結晶化度が40%未満でかつガラス転移点
が50℃以上の熱可塑性樹脂(A2)は、特に限定され
ないが、エチレンとノルボルネン等の環状オレフィンの
共重合体からなる非晶ポリオレフィン及びその水添物、
酸成分がテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカ
ルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等から選択され、アル
コール成分として脂肪族(含環状)ジオール、芳香族ジ
オールより選択される成分を含む共重合体からなる非晶
ポリエステル、ポリカーボネート及びその共重合体、ポ
リスチレン及び同系共重合体等であることが好ましい。
【0028】なお、ここで言うガラス転移点とは、示差
走査型熱量計(DSC、パーキンエルマー社製 DSC
−7)を用い、サンプルの5mgを溶解、急冷した後、
所定の温度から10℃/分の昇温速度で昇温して測定さ
れたものである。また、本発明の微多孔フィルムを製造
する方法において、該熱可塑性樹脂(A)に加えて成分
(B)を使用することが好ましい。
【0029】成分(B)として熱可塑性樹脂を選択する
場合、先述のように前記(B1)または(B2)の中か
ら少なくとも1成分を選択することが好ましい。これら
は、熱可塑性樹脂(A)との適度な親和性を有し、か
つ、熱可塑性樹脂(A)よりも硬質で延伸により熱可塑
性樹脂(A)との界面を剥離させるようにすることがで
きる熱可塑性樹脂(B1)であるか、あるいは、熱可塑
性樹脂(A)との適度な親和性を有し、かつ、熱可塑性
樹脂(B1)のように硬質ではないが、延伸により結晶
とドメインの間を剥離させるようにすることができる熱
可塑性樹脂(B2)である。
【0030】熱可塑性樹脂(A)との適度な親和性がな
い、即ち、熱可塑性樹脂(B1)ないし熱可塑性樹脂
(B2)と熱可塑性樹脂(A)とのSP値の差が3を超
える場合、混練しても分散状態が一定にならず、結果と
して均一な微多孔フィルムが得られない場合がある。ま
た、SP値の差が3以内でかつ該(A)と比較して比較
的軟質(弾性率140%未満)で結晶性が低い場合は、
以後の延伸工程で均一に開孔しない場合がある。この場
合、先述のように熱可塑性樹脂(A1)と熱可塑性樹脂
(B1)ないし熱可塑性樹脂(B2)との組み合わせ、
熱可塑性樹脂(A2)と熱可塑性樹脂(B1)の組み合
わせが特に好ましい。
【0031】以下に熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂
(B1ないしB2)の具体的な好ましい組み合わせを挙
げる。例えば、熱可塑性樹脂(A)としてポリプロピレ
ン(以下PP、SP値7.6、弾性率(本願において、
弾性率とは、一般にはASTM D790に準拠して測
定された曲げ弾性率のことを指す)160kgf/mm
2、結晶化度40%以上・・・A1に相当)を選択する
と、成分(B)としてポリフェニレンエーテル(以下P
PE、SP値9.5、曲げ弾性率230kgf/mm
2、結晶化度40%未満、B1に相当)、高密度ポリエ
チレン(以下HDPE、SP値8.1、曲げ弾性率14
0kgf/mm2、結晶化度40%以上、B2に相当)
等が好適に使用できる。また、熱可塑性樹脂(A)とし
て共重合ポリエステル(テレフタル酸とエチレングリコ
ールとシクロヘキサンジメタノールの共重合体、SP値
10.3、曲げ弾性率200kgf/mm2、結晶化度
40%未満、A2に相当)を選択した場合には、成分
(B)としてポリスチレン(SP値9.1、曲げ弾性率
330kgf/mm2、B1に相当)等が好適に使用で
きる。
【0032】また、成分Bとして、熱可塑性樹脂(A)
とのSP値の差が3以内でかつ該M層とS層とを共押出
する温度で少なくとも液体である有機物(B3、なお、
本願でいう有機物とは、分子量5000以下、好ましく
は分子量3000以下の有機物を指し、オリゴマーや低
分子量重合体も含むものとする)を選択することもでき
る。
【0033】これら有機物(B3)としては、一般に相
分離法により微多孔フィルムを製造するときに使用され
るものであればよく、例えば、公知のフタル酸ジオクチ
ル(SP値8.7)、セバシン酸ジオクチル(SP値
7.9)、フタル酸ジシクロヘキシル(SP値8.
6)、トリフェニルホスフェート(SP値8.6)をは
じめとする脂肪族/芳香族のジカルボン酸やリン酸のエ
ステル類や、流動パラフィンやパラフィンワックスをは
じめとするパラフィンオイル、環状成分を含むミネラル
オイル、液状ポリブテンや液状ポリブタジエンをはじめ
とする液状ゴム等の常温で液体である有機液状体、常温
で固体であるパラフィンワックス、ロジン類、テルペン
樹脂及びその水添物、石油樹脂及びその水添物等、及び
これらの混合成分が挙げられる。これらの種類は特に限
定されないが、この選び方によって得られる熱可塑性樹
脂(A)と有機物(B3)との相分離状態が変化し、そ
の結果微多孔フィルムの孔径が変化する。
【0034】また、有機物(B3)の各成分と熱可塑性
樹脂(A)とのSP値の差は、熱可塑性樹脂(B1)、
(B2)の場合と同様、3以内であることが好ましく、
この範囲を超えると混練を十分に行っても均一に分散せ
ず、結果として均一な微多孔フィルムが得られない場合
がある。さらに、成分Bとして、粒子径(3次元投影法
により測定された平均粒子径を指す)が10μm以下で
ある有機系または無機系の充填剤(B4)を用いること
もできる。これら充填剤(B4)は、一般にゴムまたは
樹脂に使用される有機系または無機系の充填剤が用いら
れる。有機系の充填剤としては、木粉、パルプ粉等を原
料としたセルロース系粉末、スチレン系、アクリル系、
シリコーン系、その他の樹脂系架橋微粒子等が挙げられ
る。また、無機系の充填剤としては、例えば、炭酸カル
シウム、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグ
ネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリ
ウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜
鉛、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネ
シウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ガラス粉、ゼ
オライト、珪酸白土、カーボン等が使用される。これら
は、要求される最終孔径と延伸条件により単独または混
合して適宜使用される。
【0035】このように充填剤(B4)を成分(B)と
して用いる場合、熱可塑性樹脂(A)に対する充填剤の
分散性を改良する目的で、公知の界面活性剤や可塑剤を
はじめとする助剤を用いても差し支えない。なお、熱可
塑性樹脂(A)に対して物質(B)を複数用いてもかま
わない。さらに、製造時の延伸性、得られる微多孔フィ
ルムの引張強度、引裂強度や孔径分布等を向上させる目
的で、熱可塑性樹脂(A)、物質(B)に加え、全体に
対し、好ましくは0.05〜30体積%の範囲内で、結
晶核剤、相溶化剤、軟質樹脂、エラストマーをはじめと
する公知の加工助剤を用いても差し支えない。
【0036】本発明に用いられる前駆層(M層)は、得
られる微多孔フィルムの強度、耐熱性や厚み方向の孔径
分布等の性能面からの要求により、熱可塑性樹脂(A)
と物質(B)を成分とする組成物からなる層を二層以上
有し、各層が同種または異種の樹脂組成物からなる層か
ら構成される、異なる微多孔状態を有する多層構造をと
することも本発明の好ましい範囲に属する。
【0037】本発明において、S層を構成する熱可塑性
樹脂(C)としては、M層の成膜性を向上するものであ
れば、特に限定されないが、後にM層とS層とが容易に
剥離できるよう、M層を構成する熱可塑性樹脂(A)と
の溶解度パラメータの差が、例えば、0.3以上である
ことが好ましい場合がある。また、これに加え/これと
は別に、熱可塑性樹脂(C)の結晶化度が40%以上で
あることが好ましい場合もある。この要件を満足するた
めには、具体的には、ポリオレフィン系樹脂、ポリエス
テル系樹脂のいずれかを主成分とすることが好ましい。
このうちポリオレフィン系樹脂として、好ましい組成
は、ポリブテン−1を主体とした結晶性樹脂、あるい
は、以下のC1ないしC3をその構成成分とし、かつ
(C1)、(C2)及び(C3)からなる樹脂、(C
1)及び(C2)からなる樹脂、または(C2)及び
(C3)からなる樹脂からなる群より選択される混合組
成物である。 C1:低密度ポリエチレン(但し、α−オレフィンが1
5モル%以下でかつVSPが80℃以上の、エチレンと
C3〜C12のα−オレフィンとの共重合体も含むもの
とする)、またはビニルエステル単量体、脂肪族不飽和
モノカルボン酸、該モノカルボン酸アルキルエステルよ
り選択される少なくとも1種の単量体とエチレンの共重
合体、エチレン99〜82モル%とスチレン1〜18モ
ル%のエチレン−スチレン系共重合体、またはこれらの
誘導体から選択される少なくとも1種の共重合体; C2:VSPが80℃以下の軟質熱可塑性エラストマ
ー; C3:プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−
1より選択される少なくとも1種の単量体の単独重合
体、またはこれらの単量体とエチレンまたは別のα−オ
レフィンから選択される少なくとも1種の単量体との共
重合体、またはこれらの誘導体から選択される少なくと
も1種の共重合体; ここに挙げたポリブテン−1とは、ブテン−1含量93
モル%以上の結晶性で他のモノマー(例えば、エチレ
ン、プロピレン、C5以上のもの)との共重合体をも含
む高分子量のものとし、液状及びワックス状の低分子量
のものとは異なり、MI(ASTM D1238(E条
件):以後MIと言う)0.2〜10のものが好まし
い。また、ポリブテン−1に水添飽和炭化水素系樹脂
(好ましくは、その構成単位の一成分に環状部分を少な
くとも一部含む同樹脂)を混合した組成物も好ましく用
いられる。
【0038】以下に本発明のS層の成分として好ましい
混合組成物について説明する。 <成分(C1)>成分(C1)としては、主として延伸
性の観点から、硬質、軟質の中間程度の比較的低結晶性
(DSC法により35〜75%、好ましくは、40〜7
0%の結晶性)の重合体が選ばれる。このような重合体
としては、例えば、エチレン系共重合体グループ(前
者)として、低密度ポリエチレン[好ましくは直鎖低密
度ポリエチレン(LLDPE)、または、超低密度ポリ
エチレン(VLDPE)等のα−オレフィンが15モル
%以下でかつVSPが80℃以上の、エチレンとC3〜
C12のα−オレフィンとの共重合体も含むものとす
る。]が挙げられる。
【0039】また、極性官能基を有するグループ(後
者)としては、ビニルエステル単量体、脂肪族不飽和モ
ノカルボン酸、該モノカルボン酸アルキルエステル誘導
体から選ばれる少なくとも1種の単量体とエチレンとの
共重合体、エチレン99〜82モル%とスチレン1〜1
8モル%のエチレン−スチレン系共重合体、またはこれ
らの誘導体からから選ばれる少なくとも1種の重合体が
挙げられる。後者のグループとしては、好ましくは、エ
チレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ア
クリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタア
クリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アク
リル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタアクリル酸
共重合体(EMA)が挙げられる。また、これらには、
エチレンと不飽和モノカルボン酸アルキルエステルのア
ルコール成分のアルキル基の炭素数がC2〜C12のも
の、好ましくはC2〜C8のもの(例えば、プロピル、
ブチル、へキシル、オクチル等)、または上記いずれか
の少なくとも2種の単量体より選ばれる多元共重合体、
または、これらの少なくとも一部がケン化されたカルボ
キシル基を有し、その少なくとも一部分がアイオノマー
化された重合体(アイオノマー樹脂)も含まれる。
【0040】これらの共重合体のエチレン以外の単量体
の量は、好ましくは1.5〜12モル%で、より好まし
くは2〜10モル%である。この量が1.5モル%以上
の場合は、柔軟性、各強度特性等に優れてくる。また、
この量が12モル%を超えると、押出し加工性、他成分
との混合性等に劣ってきたり、またこのようなものを表
層(最外層)として使用した場合、面同士がブロッキン
グして取扱いに問題がでてくる場合がある。
【0041】また、これらの樹脂のMIは、通常、0.
2〜10で、好ましくは0.3〜5である。MIが0.
2未満では原料の混合性、押出し性に問題を生じ、ま
た、MIが10を超えると多層押出時にM層との層間の
乱れを引き起こしやすく、また、S層としての強度が不
足する場合があり、例えば、延伸時に破れやすくなる等
の悪い現象があり好ましくない。
【0042】以上の述べたもののうち、S層の1成分と
して用いる場合に、好ましいのはEVAであり、その酢
酸ビニル基(VAc)含量は好ましくは3〜8モル%、
更に好ましくは3〜7モル%である。前者のグループの
低密度ポリエチレンのうち、好ましい例である直鎖低密
度ポリエチレン(LLDPE)とは、中圧法、低圧法、
または場合によっては高圧法でも得られた、実質的に線
状のもの、または線状に近い所の低密度ポリエチレンを
意味し、エチレンに、特にα−オレフィンとしてプロピ
レン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、へプテン、オクテ
ン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数C3〜C12
のα−オレフィン類から選ばれる少なくとも1種のオレ
フィンを9モル%以下、好ましくは1.5〜8モル%程
度を共重合したものである。
【0043】また、これらLLDPE(含VLDPE)
のMIは、前述の後者グループの場合と同様の理由によ
り、通常、0.2〜15、好ましくは0.2〜10であ
る。また、これらLLDPE(含VLDPE)の密度
は、一般に0.890〜0.935g/cm3の範囲の
ものである。より好ましい超低密度ポリエチレン(VL
DPE)とは、上記の要因を含む比較的共重合比率の高
い領域のもの(但し、上述コモノマーのごとき短鎖分岐
は保有するも、それ以上の長鎖分岐は実質的に少ない
か、または含まない線状に近い領域を保持しているもの
を言う)を意味し、一般に密度が0.890〜0.90
5g/cm3程度で結晶化度が20〜35%程度のもの
を言う。また、上述のVLDPEを除く通常のLLDP
E部分の密度は、0.905〜0.935g/cm3で
あり、好ましくは、0.910〜0.935g/cm3
である。
【0044】また、これら樹脂のVSPは80℃以上、
好ましくは、85℃以上である。また、好ましいコモノ
マ一のα−オレフィンの炭素数は、C5〜C12であ
る。これらのものは、またDSC法(10℃/分のスキ
ャン・スピードで測定)での主ピーク(多数ピーク(2
〜3ケの)の場合は、最も高温側のピーク)の結晶融解
温度(Tm)が108℃以上125℃以下のものを言
い、通常の高圧法によリ得られる長鎖分岐した低密度ポ
リエチレン(密度0.915〜0.927g/cm3の
もの)で結晶融解温度が100〜108℃のものと区別
されるものである。
【0045】LLDPE、VLDPEと同様に好ましい
ものとしては、例えば、シクロペンタジエン誘導体から
なる配位子とジルコニウム、チタン等との錯体である単
一活性点触媒で、エチレンと、ブテン−1、ヘキセン−
1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等の炭素数
C3〜C12のα−オレフィン類から選ばれる少なくと
も1種のオレフィンを9モル%以下、好ましくは1.5
〜8モル%程度を共重合した、いわゆるシングルサイト
触媒重合熱可塑性プラストマー(SSC−PE)が挙げ
られる。
【0046】これらSSC−PEのMIは、LLDP
E、VLDPEの場合と同様の理由により、通常、0.
2〜15であり、好ましくは、0.2〜10である。ま
た、これらの密度は、一般に0.890〜0.935g
/cm3の範囲のものである。また、これら樹脂のVS
Pは、80℃以上、好ましくは85℃以上である。ま
た、好ましいコモノマ一のα−オレフィンの炭素数は、
5個〜12個であり、触媒の種類により生成される長鎖
分岐があってもよい。また、これらの樹脂は上記以外の
他の新しい触媒によリ得られた共重合体でもよい。成分
(C1)として、更に好ましくは、上述のEVA、EE
A、EAA、EMMA、EMA、また該エステルのアル
コール成分の炭素数がC2〜C8の共重合体、エチレン
99〜82モル%とスチレン1〜18モル%のエチレン
−スチレン系共重合体のグループ(Gf)から選ばれる
少なくとも1種の共重合体と、同様に上述のLLDP
E、VLDPE、エチレン−α−オレフィン共重合体、
SSC−PEから選ばれる少なくとも1種の共重合体の
グループ(G1)との混合組成である。この場合、よリ
好ましい両者の混合比率は0.10≦G1/(Gf+G
1)≦0.90、更に好ましくは、0.30≦G1/
(Gf+G1)≦0.70である。また、上記すべての
樹脂のカルボン酸基含有単量体でのグラフト変性樹脂を
使用しても良い。 <成分(C2)>次に、成分(C2)のVSPが80℃
以下の軟質、熱可塑性エラストマーとしては、α−オレ
フィンエラストマー、すなわち、異なったα−オレフィ
ン同士の少なくとも自由な2種以上の共重合体(炭素数
C3〜C12)、或いはエチレンと炭素数C3〜C12
のα−オレフィン共重合体、ブチルゴム系エラストマ
ー、スチレン−共役2重結合ジエン誘導体ブロック共重
合エラストマー、該エラストマーの共役2重結合または
環由来の部分の少なくとも1部を水素添加した共重合
体、熱可塑性ポリウレタン等から選ばれる少なくとも1
種の重合体が好ましい。また、(C1)の場合と同様
に、上記の樹脂のグラフト変性樹脂を用いてもよい。
【0047】これらのうち、α−オレフィンエラストマ
ー、づまりα−オレフィン同士の共重合体、またはエチ
レンとα−オレフィンとの共重合体よりなる熱可塑性エ
ラストマーが好ましく、前者は異なるα−オレフィン
(C3〜C12)同士の自由な少なくとも2種以上の共
重合体、後者は、エチレンと炭素数が3〜12のα−オ
レフィンから選ばれる1種またはそれ以上のα−オレフ
ィンとの軟質の共重合体のことを言う。このようなα−
オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ヘキセ
ン−1、へプテン−1、4−メチル−1−ペンテン、オ
クテン−1等が挙げられる。前者の場合の例としては、
プロピレンとブテン−1、プロピレンと4−メチル−ペ
ンテン−1、ブテン−1と4−メチルペンテン−1等の
共重合体が挙げられる。
【0048】また、後者の場合の好ましいα−オレフィ
ンとしては、プロピレン、ブテン−1であり、共重合体
のエチレンの含量は5〜95モル%、好ましくは40〜
93モル%、より好ましくは65〜90モル%の範囲で
ある。更に好ましくは75〜85モル%である。これら
のα−オレフィンエラストマー共重合体の密度は、一般
に0.860〜0.905g/cm3であり、好ましく
は、0.865〜0.900g/cm3である。これら
のα−オレフィンエラストマー共重合体のVSPは75
℃以下が好ましく、より好ましくは、70℃以下、更に
好ましくは、60℃以下である。これらは、これらのα
−オレフィンエラストマー共重合体は、一般にゴム状の
領域で実質的に非晶質のものから結晶化度30%程度以
下のものを含むが、結晶化度は20%以下が好ましく、
よリ好ましくは、15%以下、更に好ましくは、10%
以下の低度の部分結晶性のものである。また、その結晶
の融点は、DSC法(10℃/分の昇温スピード)によ
る測定で、120℃以下のものが通常好ましく、より好
ましくは、110℃以下、更に好ましくは、100℃以
下である。
【0049】α−オレフィンエラストマー共重合体の中
で好ましいのは、エチレンとプロピレンまたはブテン−
1、プロピレンと、ブテン−1または4メチルペンテン
−1または両者の混合物との共重合体で、例えば、バナ
ジウム化合物と有機アルミニウム化合物系の触媒で重合
したランダム共重合体であり、MIが0.1〜10であ
るが、MIとしては、0.2〜6の熱可塑性エラストマ
ーが好ましい。これらと同様に好ましいのは、例えば、
シクロペンタジエン誘導体からなる配位子とジルコニウ
ム、チタン等との錯体である単一活性点触媒で、エチレ
ンと、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン
−1、オクテン−1等の炭素数3個〜12個のα−オレ
フィン類から選ばれる少なくとも1種のオレフィンを共
重合した、密度が0.860〜0.900g/cm3、
MIが0.1〜10のものが挙げられるが、好ましくは
密度が0.865〜0.890g/cm3であり、MI
が0.2〜6の実質的に融点を持たないシングルサイト
触媒重合熱可塑性エラストマーである。
【0050】また、これらと同様に成分(C2)として
好ましいのは、密度が0.850〜0.900g/cm
3(好ましくは0.860〜0.890g/cm3)、
MIが0.1〜10(好ましくは、0.2〜6)のニッ
ケルパラジウム系金属錯体触媒(ブルックハート触媒)
により重合されたポリエチレン系エラストマーである。
また、これらの新触媒系で重合される、エチレン81〜
53モル%とスチレン19〜47モル%の軟質エチレン
−スチレン系共重合体、スチレン−ブタジエンブロック
共重合体(SBBC)及びその水添物、または希土類金
属等を有する触媒で共重合されたオレフィン−極性基含
有単量体のランダムまたはブロック共重合体等を用いる
こともできる。
【0051】これらの中でも、一般の非加硫ゴムのよう
にその形状がブロック状でなく、しかもコールド・フロ
ーを起こさない、ペレット状で供給され、単体でもフィ
ルム状に押出し加工できる程度の十分な熱可塑性を有す
るものが好ましい。 <成分(C3)>次に成分(C3)としては、成分(C
1)、(C2)よりも硬質で比較的結晶化度の高い成分
よりなる、ポリプロピレン、(高分子量)ポリブテン−
1、ポリ4−メチルペンテン−1、(以後それぞれ、I
PP、PB−1、PMT−1と略する)が挙げられる、
これらは、単体で使用する時はそれ自体で、混合して使
用する場合は、成分(C3)全体としてのVSPが80
℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは100
℃以上の比較的硬質の重合体よりなることが好ましい。
【0052】成分(C3)の一つであるIPPは、通常
市販されている様なアイソタクティシティの高い結晶性
PPを意味し、プロピレンの単独重合体、またはプロピ
レンと7モル%以下のエチレン、ブテン−1等またはそ
の他のα−オレフィンとの共重合体を含むものが好まし
い。または、上記以外のα−オレフィン同士の共重合体
(例えばプロピレン、ブテン−1、4メチルペンテン−
1等より自由に組合せた、また更にこれらに少量のエチ
レンを共重合体したもの等)で上記の特性を満たすもの
も用いることができ、また、それぞれを任意に混合して
もよい。
【0053】これらのメルトフローインデックス[AS
TM D1238(L条件)で測定。以後MFIと略す
る]は通常0.1〜30であり、好ましくは、0.5〜
20であり、より好ましくは、0.7〜15である。M
FIが上記未満では、加工時における混合性及び光学特
性等に問題が生じる様になり、上記を超えて多量に用い
る場合、押出安定性に問題を生じるようになる。
【0054】PB−1は先述したものと同じものであ
る。また、IPPとPB−1との混合物またはこれらの
どちらかまたは両者に水添飽和炭化水素系樹脂(好まし
くは、その構成単位の一成分に環状部分を少なくとも一
部含む同樹脂)を混合した組成物を用いることが好まし
い。また、上記の他に適度の相溶性、分散性がある硬質
のポリマーであれば、本発明二用いることができる。
【0055】PMT−1としては、4−メチルペンテン
−1含量85モル%以上の、結晶性で、少なくとも1種
の他のα−オレフィンモノマーとの共重合体を含むもの
が好ましい。更に、これらの重合体及び共重合体は、相
互に自由な割合で混合して用いることもできる。また、
前述のIPP、PB−1、または他の公知の樹脂を50
重量%を超えない範囲で混合して用いても良い。この量
は、40重量%を超えない量であることが好ましく、3
0重量%を超えない量であることがより好ましい。
【0056】次に、本発明の微孔性フィルムの製造時に
用いるS層における、上記の各成分の好ましい組合せと
しては、:(C1)と(C2)、:(C2)と(C
3)及び、:(C1)と(C2)と(C3)を主体と
する混合組成が挙げられる。これらの混合量の好ましい
範囲は以下の通りである。 0.05≦C2/(C1+C2)≦0.90、 0.30≦C2/(C2+C3)≦0.90または 0.05≦C2/(C1+C2)≦0.90でかつ
0.05≦C3/(C1+C2)≦2.0 より好ましくは、以下の通りである。 0.07≦C2/(C1+C2)≦0.70、また
は 0.40≦C2/(C2+C3)≦0.87、また
は 0.07≦C2/(C1+C2)≦0.70でかつ
0.07≦C3/(C1+C2)≦1.0 更に好ましくは、以下の通りである。 0.10≦C2/(C1+C2)≦0.50、また
は 0.50≦C2/(C2+C3)≦0.85、また
は 0.10≦C2/(C1+C2)≦0.50でかつ
0.10≦C3/(C1+C2)≦1.0である。
【0057】ここで軟質成分(C2)の混合量が少ない
場合は、、、の場合とも混合物としての、相乗効
果を発揮し難くなり、例えば、S層の延伸性向上効果が
低下する。また(C2)の混合量が多すぎても、フイル
ムが軟質化しすぎ、M層に十分に延伸配向を付与でき
ず、孔が全く、あるいは不均一にしか開かない傾向にあ
る。また、成分(C2)を好ましい重量の範囲から選択
することにより、、、の場合とも混合物としての
相乗効果が大きくなり、諸特性が向上してくる。例え
ば、フイルムの強度、延伸性等が段階を追って向上す
る。
【0058】以上の各混合組成組合せのうち、特に好ま
しい組合せは、の(C1)と(C2)と(C3)を主
体とするものである。この場合、成分(C3)は、混合
組成の押出し・延伸性を他の成分と相乗的に改良する効
果が大きい、(C3)の混合量が少ない場合は、例え
ば、フイルムの加工性に改良の効果が少なくなる。(C
3)の混合量が多すぎると、押出成形性に劣って来る等
のため、好ましくは上記の範囲である。ここで、成分
(C1)は、好ましくは特定のエチレン系共重合体より
なり、前述の3成分(C1)、(C2)、(C3)の混
合体の中で主成分となることが好ましい場合がある。
【0059】3成分のうち、成分(C1)と成分(C
3)のみの混合の場合は、通常混合性、相溶性があまリ
良くなく、前述の相乗効果も期待し難いが、成分(C
2)を加えると、それらの欠点を著しく改善するもので
ある。上記の作用機構としては、成分(C1)に含まれ
るエチレンと極性官能基に関係する構造からくる特性と
他成分の微妙な相互作用、または、混合体の結晶構造、
及び混合体の分散状態、処理による効果等、複雑な相乗
作用によるものと思われる。
【0060】さらに、成分(C1)が主体の場合、上記
各成分をペレット状でドライブレンドし、混練能力の優
れた押出機により溶融混練押出しを行なってフイルム原
反とした場合、成分(C1)に分散している成分(C
3)の内部もしくはその周囲近辺に、成分(C2)が複
雑に分散または反応し相互作用をしている状態等が考え
られる。
【0061】これらは、フイルム状成形物に加工して、
流動配向を与えた場合、成形条件によりその分散形状が
異なってくる。例えば、比較的高温230〜260℃で
上記混合物を小さなスリット(例えば1.5mm)を有
するフィルム、シート等用のダイからそのまま、または
一定のドロー比をかけて押出し、急冷してフィルムに加
工した場合は、硬質成分(C3)の種類、量にもよる
が、例えば、20重量%のPPを混合して行なった場合
には、成分(C3)、PPのある部分は主成分(C1)
の中で流れる方向に、その分散粒子を繊維状に配向させ
た、あたかもガラス繊維で強化した如き構造にもなり、
非常に強度等諸特性の改善された性質も発揮される場合
があると思われる。また、上記処理後エネルギー線、化
学処理、イオン注入等の加工を加えると更に特徴が発揮
される場合があるが必ずしも必須とは限らない。
【0062】また、:(C2)+(C3)の場合、特
に好ましく使用される(C2)熱可塑性エラストマー
は、エチレン含量65ないし95モル%(好ましくは7
5ないし93モル%)の非晶性または部分低結晶性の共
重合体であり、例えば、プロピレン、ブテン−1とのラ
ンダム共重合体等が挙げられ、ペレット状で供給される
ものである。
【0063】また、S層としては、上記〜の混合重
合体が少なくとも50重量%、好ましくは80重量%以
上になるよう、諸特性を害しない範囲でさらに他の公知
の樹脂を加えた層として用いても良い。このS層は、そ
れ自体のドローダウン性及び延伸性がよいばかりでな
く、多層にしたときに発揮する、M層に格段の(M層単
独では不均一化、破断してしまうような)高ドローダウ
ン性、(タテ、横方向に厚みムラのない)高均一性を発
揮し、更に原反パンク、延伸パンクをも防ぎ、更にM層
の延伸性及び延伸による開孔性を大幅に改良する効果が
ある。また、延伸中に前駆層にネッキングが発生するの
を防ぐ効果もある。また、共延伸中は適度な層間密着力
があり、両層を構成する樹脂の差による延伸歪(それぞ
れ単層では延伸条件が異なるために発生する歪)を生じ
させることなく、逆に全体として延伸最適条件が広が
り、全体としてより安定化する相乗効果を発揮する。そ
の結果、全層としての延伸特性(得られる微多孔フィル
ムの孔径制御及びその分布、空孔率等)がよくなるばか
りか、特に最終的に微多孔フィルムとして使用するM層
の延伸効果を著しく改良する。その改良点としては、た
とえば、M層単独では面積延伸倍率で2倍までしかいか
ないような延伸条件下でも、S層と積層することにより
10倍まで延伸可能となる。その結果例えば高配向によ
り孔径をコントロールして強度を保ったまま空孔率が増
大させることができる。
【0064】また、M層との剥離性または同時に延伸中
の密着性を高めるために、S層を構成する熱可塑性樹脂
(C)には、M層との界面までブリード可能な添加剤を
含有させることが好ましい。このような添加剤の例とし
ては、非イオン系の界面活性剤、例えば、脂肪酸と多価
アルコールとのエステル、ポリオキシエチレンアルキル
エーテル、または、高級アルコール、ワックス類、フッ
素系・シリコン系の添加剤、その他特殊な機能を有する
個々の目的に合致したものが挙げられ、これらを目的に
合わせて選択すればよい。
【0065】M層とS層を共押出して延伸した後、これ
らはすばやくM層との界面にブリードするため、両層の
剥離が容易にできると同時に、両層の間に適度な密着性
を保ちつつ、静電気の発生防止及びリーク対策も行うこ
とができる。また、これにより、エージングすることな
く、オンラインでも高速で破損することなく微多孔フィ
ルムを剥離して巻き取ることが可能となる。
【0066】また、ブリード可能な添加剤をM層に適用
してもよい。これら添加剤の添加量は、0.2〜5重量
%であることが好ましく、0.2重量%未満では、剥離
が容易になる効果等が十分に得られない場合があり、ま
た、この量が5重量%を超えると両層の間に適度な密着
性が保たれず、延伸中に剥離する場合がある。
【0067】M層とS層とを合わせた全体の層構成とし
ては、少なくとも両層が1層ずつ含まれていればよい
が、例えば、M層/S層、M層/S層/M層、S層/M
層/S層、M層/S層/M層/S層/M層等が挙げられ
る。生産性の面から複数のM層を含む層構成が望まし
い。また、先述したように、各M層及びS層はそれぞれ
多層構造であってもよい。特に、微多孔フィルムの高性
能化、高品質化を優先する場合、好ましいのは、S層/
M1層/M2層、S層/M1層/M2層/S層、S層/
M1層/M2層/M1層、S層/M1層/M2層/M1
層/S層、M1層/M2層/M1層/S層/M1層/M
2層/M1層等である。
【0068】次に、M層とS層を合わせた延伸前の全層
の厚みは、好ましくは、5〜1000μで、より好まし
くは、10〜700μである。この厚みの下限は、M層
中の結晶サイズやM層中に含まれるB成分の分散径によ
り決定され、この厚みの上限は、押出し、流動配向を付
与した後の急冷時、あるいは延伸中の加熱及び/または
冷却の際の温度ムラにより決定される。
【0069】また、S層の、S層とM層とを含めた全層
厚みに対する比率は、一般に10〜90%、好ましくは
20〜80%、よリ好ましくは30〜70%である。上
記範囲の下限は、S層の冷間延伸力で、M層それ自体単
独で冷間延伸による開孔を達成することのできない条件
下でも冷間延伸による開孔を特に安定に(フィルムの破
れ、サージングなしに)達成させ本発明の相乗効果を発
揮させるために必要な比率である。また、高温延伸域で
も同様な効果が認められる。その比は、M層の構成によ
り最適になるように決定すれば良い。例えば、M層が冷
間延伸により開孔せしめ難い組成層を含む場合は、ベー
ス層の該層比率下限は比較的高く、逆に開孔せしめやす
い組成層を含む場合は、加工上のみを考えると低い該層
比率レベルで良い。
【0070】本発明では、少なくとも1層のM層を構成
する熱可塑性樹脂を主成分とする組成物と少なくとも1
層のS層を構成する熱可塑性樹脂を主成分とする組成物
とが、それぞれ別々の押出機で熱可塑化溶融し、多層ダ
イより共押出後、伝熱媒体により急冷固化させ十分均一
なチューブまたはシート状原反とする。共押出の方法と
しては、多層のT−ダイ法、多層の環状ダイ法とが挙げ
られるが、後者の方法がその製法の一例として、原反効
率の良さ、流動配向の均一性等の点で好ましい。
【0071】この際、続いて行われる延伸によりM層の
開孔性を容易にするために、ダイから押出しして伝熱媒
体により急冷固化させる間に、多層ダイの開口部断面積
(S1)と、M層とS層とが積層されたまま急冷固化し
た結果得られる成形物の断面積(S2)との比で表され
るドローダウン比(DDR=S1/S2、ただし、T−
ダイを使用する場合はダイの両端のネックインの部分を
除いて算出する)が10以上になるように流動配向を加
えることが望ましい。
【0072】次いで、M層とS層とからなる原反は、1
5℃以上、M層を構成する樹脂組成物のVSPに50℃
を加えた温度以下の温度条件で少なくとも1方向に面積
倍率で1.1倍以上30倍以下延伸し、微多孔またはそ
の前駆状態を形成させる。延伸時にS層が存在すること
によって高配向がM層に付与され、M層中の異なる二
相、例えば熱可塑性樹脂(A)の結晶核とその周りのド
メインの間、あるいは熱可塑性樹脂(A)と物質(B)
の間に微細な剥離が生じ、これが微多孔のもととなる。
延伸温度は15℃以上、かつ、M層を構成する樹脂組成
物のVSPに50℃を加えた温度以下の範囲になけれ
ば、延伸ムラが発生する、あるいは開孔しないといった
問題が発生する。延伸倍率が上記の範囲外、例えば、
1.1倍未満であると、M層が均一に開孔しないか、あ
るいは全く開孔しない。また、延伸倍率が30倍を超え
ると原反が安定に延伸できず、時には破断してしまうと
いった現象が発生する。延伸方向はM層の組成ならびに
微多孔フィルムに要求される特性により決定されるが、
一軸でも二軸でもかまわない。
【0073】延伸の方法は、ロール延伸法、テンターフ
レーム法、(ダブルバブル、トリプルバブル等のマルチ
バブルプロセスを含む)チューブラー法等の各種方法が
あるが、以下の理由等からチューブラー法によるのが好
ましい。 1)先述したように原反をチューブ状で作成するのが好
ましい。 2)得られる微多孔フィルムの厚み方向、幅方向、長さ
方向における均一性、高流動配向を付与した結果開孔が
容易になる。 3)開孔サイズや分布の均一性がよい。 4)テンターでの延伸時のチャック部やネックインによ
る製品のロスがない。 5)孔の開いていないS層が存在するためエアー漏れの
心配がない。 6)開孔時のM層由来の(特に、M層単層では破断する
ような高延伸倍率、延伸温度、またはM層に含まれるゲ
ル、ボイド、組成ムラ、厚みムラに由来する)破断(パ
ンク)を防止する効果がある。 7)開孔時のM層の延伸応力上昇がない、または少ない
場合の破断(パンク)防止効果がある。
【0074】また、延伸は、1)延伸の際、より確実に
微多孔を形成させる、2)得られる微多孔フィルムの微
孔特性を使用される用途に合わせる、3)寸法安定性を
付与する、4)タテ/ヨコの延伸度合いを変換・移動す
る、等の目的で、多段階に分けて行ってもよい。この場
合、15℃以上、かつ、M層を構成する樹脂組成物のV
SPに50℃を加えた温度以下の温度で、かつ、合計面
積倍率が1.1倍以上30倍以下であれば特に限定され
ないが、各段における延伸開始部の温度差が少なくとも
10℃以上であることが好ましい。例えば、M層を構成
する樹脂組成物のVSPから10℃を引いた温度で1.
2倍の延伸後、M層を構成する樹脂組成物のVSPに3
0℃を加えた温度で2倍の延伸を行ってもよい。
【0075】また、同様な目的で、延伸開始部と延伸終
了部の温度差が5℃以上の条件下で延伸してもよい。な
お、ここでいう延伸温度とは、延伸開始部の温度のこと
をいう。また、寸法安定性を特に重要視する場合は、最
終延伸段の温度を高めにしてヒートセット効果を付与し
ても、または次工程としてヒートセット工程を加えても
よい。
【0076】さらに、M層とS層からなる積層原反の延
伸性、M層の延伸開孔性を高め、また微多孔フィルムの
強度、耐熱性、寸法安定性を向上させる目的で、延伸
前、延伸後の少なくともいずれかにおいてM層に2〜1
5Mrad、好ましくは2.5〜10Mradの高エネ
ルギー線により、架橋処理を行ってもよい。この際の方
法としては、電離性放射線、例えば電子線、放射性同位
元素から放射されるβ線、γ線を照射する方法、または
ベンゾフェノンやパーオキサイド等の増感剤をあらかじ
めM層に混合しておき、紫外線照射を行う方法等が挙げ
られ、これらのうち、工業的には高エネルギー電子線を
使用するのが好ましい。また、多層状のM層の所定層の
架橋度合いを、目的により、架橋されやすい、またはさ
れにくい樹脂を使用したり、分子量の高いもの、または
低いものを使用したり、架橋を促進する、または抑制す
る添加剤等を利用したり、エネルギー線の透過深度を制
御したりすることにより、コントロール(例えば、表層
の架橋密度を高くする、中間層の架橋密度を下げる、ま
たは実質的にゲル分率が測定できない程度の弱い架橋を
行う等)してもよい。さらにこれらの架橋処理をS層に
適用し、相乗効果を得てもよい。
【0077】上記の積層後延伸されたM層とS層の延伸
積層体からS層を剥離することにより、少なくとも1枚
の微多孔フィルムが得られる。この微多孔フィルムの厚
みは、好ましくは1〜150μ程度、より好ましくは5
〜100μ程度である。該延伸積層体は延伸歪を内蔵す
ることがあり、その除去のために、延伸後に該延伸積層
体を緊張状態あるいは緩和状態(収縮させる)に保ち、
所定温度、通常は延伸温度(複数段階延伸した場合はそ
の最高温度)の前後近くの温度で加熱することにより安
定化できる。また、場合により最後に多少の(自由方向
の)一軸延伸を加え配向移動処理を行ってもよい。この
歪除去のための加熱時間は、温度、該積層体に残存する
歪量等に応じて設定するが、通常約5秒間から2分間で
ある。必要に応じて、この熱処理を剥離後の微多孔フィ
ルムに対して行ってもよい。また、剥離により該延伸積
層体から除去されたS層は、リサイクルしてS層の少な
くとも一部に、または場合によりM層に混合して使用し
てもよい。
【0078】
【発明の実施の形態】次に実施例と比較例を挙げて本発
明具体的な例を説明する。以下の実施例で使用する熱可
塑性樹脂組成を表1、表2に示す。なお、実施例中に示
される透気度はASTM D−726(B)法に基づい
て測定したガーレー値(秒/10cc)である。
【0079】
【実施例1】内部層のM層として組成15を、外部層の
S層として組成21を使用し、それぞれ2台の40mm
径(L/D=37)押出機で、シリンダ部最高温度19
0℃で可塑化混練し、2種2層の環状ダイより共押出し
(厚み比:M層/S層=1/1)、ダイ先端と水の均一
に出る水冷リングの間の距離を調節してDDR72の原
反を安定に得た。この原反を、2対の送りニップロール
と引取りニップロールの間に通して熱風により52℃に
加熱し、そのまま内部に空気を入れ、整流接触ガイドを
用いて連続的に膨張させて機械方向(以下縦方向)の延
伸倍率が3倍、機械方向に垂直な方向(以下ヨコ方向)
の延伸倍率が3倍になるように延伸し、次いでもう一組
の2対の送りニップロールと引取りニップロールの間に
通して熱風により95℃に加熱し、タテ方向の延伸倍率
が2倍、ヨコ方向の延伸倍率が1.5倍になるように再
延伸し、さらにもう一組の2対の送りニップロールと引
取りニップロールの間に通してチューブ状にして周方向
より熱風により95℃に加熱してタテ方向に5%、ヨコ
方向に5%収縮させながら30秒間ヒートセットした。
最後に両端をスリットしながら、延伸されたS層をM層
から剥離することにより目的の微多孔フィルム(厚み1
5μ、透気度54)が得られた。また、剥離時には静電
気の発生もなく、高速剥離性(70m/分)もよかっ
た。更に、各工程中でも適度な密着性があり、剥離して
バラバラになることもなかった。
【0080】
【比較例1】M層として組成15を使用し、40mm径
(L/D=37)押出機で、シリンダ部最高温度190
℃で可塑化混練し、単層のT−ダイより押出し、ダイ先
端と通水した水冷キャストロールの間の距離を調節して
DDR72の原反を得ようとしたが、DDR20で揺れ
や不均一な伸びが発生し、DDR25で破壊してしまっ
た。結局、DDR23の原反を、52℃に加熱されたロ
ール延伸機に通して、機械方向の延伸倍率が3倍になる
ように延伸しようとしたが、原反は延伸倍率2倍以上に
は安定して延伸できず、目的の微多孔フィルムを得るこ
とはできなかった。また、このようにS層を用いない方
法で環状ダイを使用した場合でも、DDR30で揺れや
不均一な伸びが発生し、DDR33で破壊してしまっ
た。仮にこの方法でDDR30の原反を作成しても、延
伸中にパンクを起こし、また延伸されていても不均一
で、しかも内部空気が漏れて延伸不可能であることは明
らかであると思われた。
【0081】
【実施例2】M層として組成14(VSP120℃)
を、S層として組成25を使用し、それぞれ2台の押出
機で、シリンダ部最高温度200℃で可塑化混練し、二
種二層Tダイより押出し(厚み比:M層/S層=2/
1)、ダイ先端と冷却ロールの間の距離及び冷却ロール
の速度を調節してDDR18の原反を得た。この原反を
70℃に加熱されたロール延伸機に通してタテ方向の延
伸倍率が5倍になるように延伸し、次いで103℃に加
熱されたテンター延伸機に通してヨコ方向の延伸倍率が
5倍になるように延伸し、さらに120℃で30秒間加
熱してヒートセットし、これをスリットしながら、延伸
されたS層をM層から剥離することにより目的の微多孔
フィルム(厚み25μ、透気度2.3)を得た。
【0082】
【比較例2】実施例2と同様にして得た、DDR18の
原反を、0℃に冷却されたロール延伸機に通してタテ方
向の延伸倍率が5倍になるように延伸しようとしたが、
伸びが小さく破断し、延伸をすることは不可能であっ
た。
【0083】
【比較例3】実施例2と同様にして得た、DDR18の
原反を、175℃に加熱した二軸延伸試験装置(ストレ
ッチャー)でタテヨコ5×5倍に延伸し、その後延伸さ
れたS層を剥離してフィルムを得た。この延伸されたM
層(厚み25μ)の透気度は100秒以上と大きく、ま
た表面ならびに断面を走査型電子顕微鏡で観察したが、
微多孔は認められなかった。
【0084】
【実施例3】内部層のM層として組成16を、外部層の
S層として組成24を用い、実施例1同様、2種2層の
環状ダイより共押出し(厚み比:M層/S層=2/
1)、ダイ先端と水の均一に出る水冷リングの間の距離
を調節してDDR15の原反を得た。この原反を、2対
の送りニップロールと引取りニップロールの間に通して
熱風により78℃に加熱し、そのまま内部に空気を入
れ、整流接触ガイドを用いて連続的に膨張させてタテ方
向の延伸倍率が5.5倍に、ヨコ方向の延伸倍率が4.
5倍になるように同時二軸延伸し、冷却ゾーンで30℃
の冷風で冷却してバブル延伸した。次いでもう一組の2
対の送りニップロールと引取りニップロールの間に通し
て熱風により100℃に加熱して30秒間ヒートセット
した。最後に両端をスリットしながら、延伸されたS層
をM層から問題なく剥離することにより目的の微多孔フ
ィルム(厚み10μ、透気度1.6)が得られた。
【0085】
【比較例4】実施例3で得た原反を78℃に加熱した二
軸延伸試験装置(ストレッチャー)でタテ方向に7%延
伸し、その後延伸されたS層を剥離してフィルムを得
た。このフィルムの透気度は100以上と大きく、また
表面ならびに断面を走査型電子顕微鏡で観察したが、微
多孔は認められなかった。
【0086】
【比較例5】実施例3で得た原反を、2対の送りニップ
ロールと引取りニップロールの間に通して熱風により7
8℃に加熱し、そのまま内部に空気を入れ、整流接触ガ
イドを用いて連続的に膨張させてタテ方向の延伸倍率が
6.5倍に、ヨコ方向の延伸倍率が5.5倍になるよう
に同時二軸延伸し、冷却ゾーンで20℃の冷風で冷却し
てバブル延伸した。このとき、パンクが多発し、2〜3
mほどの長さの厚みの不均一なフィルムしか得ることが
できなかった。
【0087】
【比較例6】M層のみの原反を実施例3と同様に作成
し、実施例3同様延伸を試みたが、パンク多発、バブル
の揺れ、内部空気漏れ等の問題のため、タテ方向に3
倍、ヨコ方向に2.5倍延伸された不均一なフィルムし
か得られなかった。また、このフィルムを観察したが、
周方向に部分的に開孔し、大部分は未開孔のままであっ
た。
【0088】
【実施例4】M層として組成17を、S層として組成2
3を用い、実施例1と同様の方法により共押出し(厚み
比:M層/S層=1/5)、ダイ先端と水の均一に出る
水冷リングの間の距離を調節してDDR15の原反を得
た。この原反を、2対の送りニップロールと引取りニッ
プロールの間に通して熱風により124℃に加熱し、そ
のまま内部に空気を入れ、整流接触ガイドを用いて連続
的に膨張させてタテ方向の延伸倍率が3.9倍に、ヨコ
方向の延伸倍率が2.8倍になるように延伸し、次いで
もう一組の2対の送りニップロールと引取りニップロー
ルの間に通して熱風により120℃に加熱して30秒間
ヒートセットした。最後に両端をスリットしながら、延
伸されたS層をM層から剥離することにより目的の微多
孔フィルム(厚み10μ、透気度1.5)が得られた。
【0089】
【比較例7】M層として組成17を使用し、比較例1と
同様にして、単層Tダイより押出し、ダイ先端と冷却ロ
ールの間の距離及び冷却ロールの速度を調節してDDR
10の原反を得た。この原反を120℃に加熱されたロ
ール延伸機に通してタテ方向の延伸倍率が3倍になるよ
うに延伸しようとしたが、延伸中に原反が裂け不可能で
あった。
【0090】
【実施例5】M層として組成19を、S層として組成2
4と、組成22を用い、3台の押出機で、シリンダ部最
高温度230℃で可塑化混練し、3種5層環状ダイより
押出し、組成22層/組成24層/組成19層(M層)
/組成24層/組成22層の層構成(厚み比3/8/1
0/8/3)で共押出し、ダイ先端と水の均一に出る水
冷リングの間の距離を調節してDDR15の原反を得
た。この原反を、2対の送りニップロールと引取りニッ
プロールの間に通して熱風により104℃に加熱し、そ
のまま内部に空気を入れ、整流接触ガイドを用いて連続
的に膨張させてタテ方向の延伸倍率が5.5倍に、ヨコ
方向の延伸倍率が4.5倍になるように同時二軸延伸
し、冷却ゾーンで20℃の冷風で冷却してバブル延伸し
た。次いでもう一組の2対の送りニップロールと引取り
ニップロールの間に通して熱風により130℃に加熱し
て20秒間ヒートセットした。最後に両端をスリットし
ながら、延伸されたS層をM層から剥離することにより
2枚の目的の微多孔フィルム(厚み10μ、透気度1.
6)が得られた。
【0091】
【比較例8】M層として組成19を使用し、比較例1と
同様にして、単層Tダイより押出し、ダイ先端と冷却ロ
ールの間の距離及び冷却ロールの速度を調節してDDR
15の原反を得た。この原反を105℃に加熱されたロ
ール延伸機に通してタテ方向の延伸倍率が3倍になるよ
うに延伸しようとしたが、延伸中に原反が裂け不可能で
あった。
【0092】
【実施例6】M層として組成12を、S層として組成2
6を使用し、それぞれ必要数の押出機を用いて、シリン
ダ部最高温度230℃で可塑化混練し、3種5層の環状
ダイより、M層/S層/M層/S層/M層の構成(厚み
比1/2/1/2/1)で共押出し、ダイ先端と水の均
一に出る水冷リングの間の距離を調節してDDR12の
原反を得た。この原反を2対の送りニップロールと引取
りニップロールの間に通して熱風により60℃に加熱
し、そのまま内部に空気を入れ、整流接触ガイドを用い
て連続的に膨張させてタテ方向の延伸倍率が3倍、ヨコ
方向の延伸倍率が3倍になるように延伸し、次いでもう
一組の2対の送りニップロールと引取りニップロールの
間に通して熱風により95℃に加熱して30秒間ヒート
セットした。最後にこれをスリットしながら、延伸され
たS層をM層から剥離することにより6枚の目的の微多
孔フィルム(厚み8μ、透気度0.6)が同時に得られ
た。
【0093】
【比較例9】M層として、組成12を使用し、比較例1
と同様にして、単層Tダイより押出し、ダイ先端と冷却
ロールの間の距離及び冷却ロールの速度を調節してDD
R12の原反を得た。この原反を60℃に加熱されたロ
ール延伸機に通してタテ方向の延伸倍率が3倍になるよ
うに延伸しようとしたが、延伸中に原反が裂け不可能で
あった。
【0094】
【実施例7】M層として、組成11及び組成13を、組
成13/組成11/組成13となるように積層したもの
を、またS層として組成24を使用し、それぞれ、必要
数の押出機で、シリンダ部最高温度200℃で可塑化混
練し、4種7層の環状ダイより、組成13層/組成11
層/組成13層/組成24層(S層)/組成13層/組
成11層/組成13層の構成で共押出し(厚み比7/1
1/7/50/7/11/7)、ダイ先端と水の均一に
出る水冷リングの間の距離を調節してDDR80の原反
を得た。この原反を167℃で10分間アニールした
後、2対の送りニップロールと引取りニップロールの間
に通して熱風により32℃に加熱し、そのまま内部に空
気を入れ、整流接触ガイドを用いて連続的に膨張させて
タテ方向の延伸倍率が2.5倍になるように延伸し、次
いでもう一組の2対の送りニップロールと引取りニップ
ロールの間に通して熱風により105℃に加熱し、タテ
方向の延伸倍率が3.0倍になるように延伸し、さらに
もう一組の2対の送りニップロールと引取りニップロー
ルの間に通して熱風により125℃に加熱して30秒間
ヒートセットした。最後にこれをスリットしながら、延
伸されたS層をM層から剥離することにより4枚の目的
の3層積層構造の微多孔フィルム(厚み25μ:組成1
3層/組成11層/組成13層=7μ/11μ/7μ、
透気度31)が同時に得られた。
【0095】
【比較例10】M層として、組成11及び組成13を、
組成13/組成11/組成13となるように積層したも
のを使用し、それぞれ1台ずつ合計2台の40mm径
(L/D=37)押出機で、シリンダ部最高温度250
℃で可塑化混練し、2種3層のTダイより、組成13層
/組成11層/組成13層の構成(厚み比7/11/
7)で共押出し、ダイ先端と冷却ロールの間の距離及び
冷却ロールの速度を調節してDDR160の原反を得
た。この原反を167℃で10分間アニールした後、3
2℃に加熱されたロール延伸機に通してタテ方向の延伸
倍率が1.6倍になるように延伸し、次いでもう一台の
105℃に加熱されたロール延伸機に通してタテ方向の
延伸倍率が2.3倍になるように延伸し、105℃で1
分間加熱してタテ方向に弛緩させ、さらに緊張下で12
5℃に加熱して2分間ヒートセットし、目的の3層積層
微多孔フィルムを得た。このとき一度に1枚の微多孔フ
ィルムしか得られず、延伸倍率も実施例6と比較して小
さいため、延伸速度の差を考慮しても効率が悪かった。
【0096】
【実施例8】M層として組成18を、S層として組成2
7を使用し、それぞれ実施例1と同様に可塑化混練し、
二種二層Tダイより押出し(厚み比:M層/S層=1/
2)、ダイ先端と冷却ロールの間の距離及び冷却ロール
の速度を調節してDDR15の原反を得た。この原反の
S層側から、ファンデグラフ型電子加速器により常温で
500KVのエネルギーの電子線を5Mrad照射して
S層を架橋し、80℃に加熱されたロール延伸機に通し
てタテ方向の延伸倍率が3倍になるように延伸し、次い
で85℃に加熱されたテンター延伸機に通してヨコ方向
の延伸倍率が3倍になるように延伸し、さらに95℃で
30秒間加熱してヒートセットし、これをスリットしな
がら、延伸されたS層をM層から剥離することにより目
的の微多孔フィルム(厚み20μ、透気度45)を得
た。
【0097】
【比較例11】M層として組成18を使用し、比較例1
と同様に可塑化混練し、単層Tダイより押出し、ダイ先
端と冷却ロールの間の距離及び冷却ロールの速度を調節
してDDR15の原反を得た。この原反を実施例8と同
様に架橋後、80℃に加熱されたロール延伸機に通して
タテ方向の延伸倍率が3倍になるように延伸しようとし
たが、延伸中に原反が裂け不可能であった。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【発明の効果】本発明により、M層単独では不可能だっ
た、均一な流動配向を低いレベルから高いレベルまで付
与することが可能で、延伸工程中に不均一になり裂けて
しまう、厚み方向で孔形成性、特性が異なる、幅方向で
均一性に欠ける、更には条件的により厳しいバブル法で
の延伸(特に高度な延伸を加え低温の延伸条件で開孔さ
せる目的の場合等には上記理由でのパンクや不均一化の
問題の他に、バブル内の空気が抜けて封入できず、延伸
が継続してできない等の問題がある)ができない等の理
由で、いまだかつて達成することが出来なかった樹脂組
成や延伸条件でも、高強度の微多孔フィルムを効率よく
生産することができる製造方法(1)、及び該方法の中
間で得られる多層フィルムが提供される。
【手続補正書】
【提出日】平成9年6月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】(4)前駆層(M層)が、(A1)99〜
50体積%と、(B1)、(B2)、(B3)、(B
4)から選択される成分を少なくとも1成分含む、少な
くとも1種の物質(B)1〜50体積%とからなること
を特徴とする、上記(2)または上記(3)記載の微多
孔フィルムの製造方法。 (5)前駆層(M層)が、(A2)99〜50体積%
と、(B1)、(B3)、(B4)から選択される成分
を少なくとも1成分含む、少なくとも1種の物質(B)
1〜50体積%とからなることを特徴とする、前記
(2)または(3)の微多孔フィルムの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正内容】
【0042】以上述べたもののうち、S層の1成分とし
て用いる場合に、好ましいのはEVAであり、その酢酸
ビニル基(VAc)含量は好ましくは3〜8モル%、更
に好ましくは3〜7モル%である。前者のグループの低
密度ポリエチレンのうち、好ましい例である直鎖低密度
ポリエチレン(LLDPE)とは、中圧法、低圧法、ま
たは場合によっては高圧法でも得られた、実質的に線状
のもの、または線状に近いところの低密度ポリエチレン
を意味し、エチレンに、特にα−オレフィンとしてプロ
ピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オク
テン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数C3〜C1
2のα−オレフィン類から選ばれる少なくとも一種のオ
レフィンを9モル以下、好ましくは1.5〜8モル%程
度を共重合したものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正内容】
【0054】PB−1は先述したものと同じものであ
る。また、IPPとPB−1との混合物またはこれらの
どちらかまたは両者に水添飽和炭化水素系樹脂(好まし
くは、その構成単位の一成分に環状部分を少なくとも一
部含む同樹脂)を混合した組成物を用いることが好まし
い。また、上記の他に適度の相溶性、分散性がある硬質
のポリマーであれば、本発明に用いることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正内容】
【0063】また、S層としては、上記〜の混合重
合体が少なくとも50重量%、好ましくは80重量%以
上になるよう、諸特性を害しない範囲で更に他の公知の
樹脂を加えた層として用いてもよい。このS層は、それ
自体のドローダウン性及び延伸性がよいばかりでなく、
多層にしたときに発揮する、M層に格段の(M層単独で
は不均一化、破断してしまうような)高ドローダウン
性、(タテ、横方向に厚みムラのない)高均一性を発揮
し、更に原反パンク、延伸パンクをも防ぎ、更にM層の
延伸性及び延伸による開孔性を大幅に改良する効果があ
る。また、延伸中にM層にネッキングが発生するのを防
ぐ効果もある。また、共延伸中は適度な層間密着力があ
り、両層を構成する樹脂の差による延伸歪(それぞれ単
層では延伸条件が異なるために発生する歪)を生じさせ
ることなく、逆に全体として延伸最適条件が広がり、全
体としてより安定化する相乗効果を発揮する。その結
果、全層としての延伸特性(得られる微多孔フィルムの
孔径制御及びその分布、空孔率等)がよくなるばかり
か、特に最終的に微多孔フィルムとして使用するM層の
延伸効果を著しく改良する。その改良点としては、例え
ば、M層単独では面積延伸倍率で2倍までしかいかない
ような延伸条件下でも、S層と積層することにより10
倍まで延伸可能となる。その結果例えば高配向により孔
径をコントロールして強度を保ったまま空孔率を増大さ
せることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B29L 7:00

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微多孔フィルムの製造方法において、少
    なくとも1層の連続相を形成する熱可塑性樹脂を主成分
    として含む組成物よりなる微多孔形成前駆層と、さらに
    少なくとも1層の、該前駆層に用いられる樹脂とは異な
    る熱可塑性樹脂を主成分とする補助層とを多層ダイによ
    り積層共押出しを行うことにより所定の厚みにした後、
    伝熱媒体により該前駆層を急冷固化させて、15℃以
    上、かつ、該前駆層を構成する樹脂組成物のビカット軟
    化点に50℃を加えた温度以下の温度条件で、得られた
    積層体を少なくとも1方向に面積倍率で1.1倍以上3
    0倍以下に延伸することにより該前駆層に微多孔が形成
    された多層フィルムを得、次いで該補助層を剥離除去す
    ることにより、微多孔フィルム得ることを特徴とする、
    微多孔フィルムの製造方法。
  2. 【請求項2】 微多孔フィルムの製造方法において、少
    なくとも1層の連続相を形成する熱可塑性樹脂を主成分
    として含む組成物よりなる微多孔形成前駆層と、さらに
    少なくとも1層の、該前駆層に用いられる樹脂とは異な
    る熱可塑性樹脂を主成分とする補助層とを多層ダイによ
    り積層共押出しを行うことにより所定の厚みにした後、
    伝熱媒体により該前駆層を急冷固化させて、15℃以
    上、かつ、該前駆層を構成する樹脂組成物のビカット軟
    化点に50℃を加えた温度以下の温度条件で、得られた
    積層体を少なくとも1方向に面積倍率で1.1倍以上3
    0倍以下に延伸することにより該前駆層に微多孔を形成
    させることにより得られる多層フィルム。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6811865B2 (en) 2000-05-03 2004-11-02 Kimberly-Clark Worldwide, Inc. Film having high breathability induced by low cross-directional stretch
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