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JPH09316597A - 耐水素脆性に優れた高強度鋼およびその製法 - Google Patents

耐水素脆性に優れた高強度鋼およびその製法

Info

Publication number
JPH09316597A
JPH09316597A JP13395896A JP13395896A JPH09316597A JP H09316597 A JPH09316597 A JP H09316597A JP 13395896 A JP13395896 A JP 13395896A JP 13395896 A JP13395896 A JP 13395896A JP H09316597 A JPH09316597 A JP H09316597A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hydrogen
less
steel material
steel
diffusible hydrogen
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP13395896A
Other languages
English (en)
Inventor
Yuuichi Namimura
裕一 並村
Toyofumi Hasegawa
豊文 長谷川
Hiroshi Kakou
浩 家口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP13395896A priority Critical patent/JPH09316597A/ja
Publication of JPH09316597A publication Critical patent/JPH09316597A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

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  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼材中の拡散性水素量そのものから耐遅れ破
壊性を評価するのではなく、特定の方法によって測定さ
れる拡散性水素量から遅れ破壊を起こす拡散性水素量の
限界値を割り出し、該限界拡散性水素量を基準にして安
定且つ確実に優れた耐水素脆性を発揮し得る様な高強度
鋼を提供し、更にはその製法を提供すること。 【解決手段】 本発明で規定する特有の方法によって求
められる限界拡散性水素量が0.15ppm以上であ
る、耐水素脆性に優れた高強度鋼とその製法を開示す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐水素脆性に優れ
た高強度鋼およびその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋼製部材に応力がかかってからある時間
を経過した後に発生する遅れ破壊は、種々の要因が複雑
に絡み合って起こると考えられており、原因を特定する
ことは難しい。しかしながら多くの遅れ破壊には、大抵
の場合水素脆化現象が関与しているという点で共通の認
識を得ている。従って、もし鋼中に存在する水素量を定
量的に正確に知ることができれば、遅れ破壊を防止する
大きな手がかりになると考えられる。
【0003】水素脆化現象が未だ解決されてない大きな
原因として、水素分子(原子)は非常に小さな元素であ
り、現状の分析技術では鋼中における水素の存在形態が
明確に把握されていないことが挙げられる。一方、鋼中
の水素量を定量するためのガス抽出法として現在主流と
なっているの真空加熱法であるが、真空にする際に水素
が逃げてしまうことが懸念され、水素量を必ずしも正確
に定量できるとは限らない。
【0004】また特開平2−267243号、特開平5
−255738号、特開平6−25745号には、真空
加熱法により測定される水素量から耐遅れ破壊特性を評
価する方法が開示されており、殊に特開平6−2574
5号には、真空加熱法に属する熱的分析法によって求め
られる拡散性水素量と遅れ破壊の関係から、遅れ破壊を
起こさない限界拡散性水素量を推定し、限界拡散性水素
量が高いものを耐遅れ破壊性に優れた鋼材と評価する一
応の基準が示されている。
【0005】ところがこれらの方法にしても、そのベー
スとなる拡散性水素量の定量値が前述の如く不安定且つ
不正確であるところから、実際には鋼材の耐水素脆性を
正しく評価することはできず、その結果、耐水素脆性が
良好と評価されたものの中にも満足な耐水素脆性を有し
ていないものが多数含まれ、実用製品としての信頼性を
欠く。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、鋼材
中の拡散性水素量そのものから耐遅れ破壊性を評価する
のではなく、特定の方法によって測定される拡散性水素
量から遅れ破壊を起こす拡散性水素量の限界値を割り出
し、該限界拡散性水素量を基準にして安定且つ確実に優
れた耐水素脆性を発揮し得る様な高強度鋼を提供し、更
にはその製法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明にかかる耐水素脆性に優れた高強度鋼と
は、下記方法によって求められる限界拡散性水素量が
0.15ppm以上であるところにその特徴を有してい
る。
【0008】[限界拡散性水素量測定法] 25mmφに鍛造した鋼棒を、1200℃で30分間
溶体化処理した後、焼ならし処理し、引張強度が約10
00〜2000N/mm2 となる様に最終熱処理を施
す。 次いで、上記鋼棒の一部を用いて図1に示す様な遅れ
破壊試験片に加工し、15〜35%HCl水溶液に10
〜75分間浸漬した後、30分以内に引張強さと同等の
応力を負荷し、遅れ破壊を生じない水素チャージ条件を
見つけ出して、その条件を限界水素チャージ条件と定義
する。 一方、上記の鋼棒から、500mgの試料片を切り
出す。 上記の試料片をアセトンで脱脂清浄化した後、前記
限界水素チャージ条件下に酸浸漬し、再びアセトンで脱
脂清浄化した後、試験片の温度が上がらぬ様に乾燥し、
秤量して抽出管へ装入する。 次いで上記の試料片を、室温から600℃まで昇温
速度12℃/分で加熱しつつ、毎30秒間隔で放出水素
量を測定する。キャリアガスにはArガスを使用し、流
量は800リットル/分とする。 上記の方法において、室温から250℃まで昇温す
る間に放出される水素量の総和を「限界拡散性水素量」
とする。
【0009】上記の要件を満たす本発明に係る高強度鋼
の好ましい成分組成は C :0.15〜0.60%(質量%を意味する、以下
同じ) Si:2.00%以下(0%を含む) Mn:0.3〜2.0% P :0.025%以下(0%を含む) S :0.025%以下(0%を含む) を満足すると共に、 Al:0.05%以下(0%を含まない) Cr:2.0%以下(0%を含まない) Mo:2.0%以下(0%を含まない) Ni:2.0%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される元素のうち1種以上を含有
し、あるいは更に他の元素として Ti:0.20%以下(0%を含まない) Nb:0.20%以下(0%を含まない) V :0.20%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される1種以上を含み、あるいは更
に B:0.003%以下(0%を含まない) を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避不純物から
なる鋼材である。
【0010】また上記の限界拡散性水素量を満足する高
強度鋼は、好ましくは上記成分組成の要件を満たす溶鋼
を使用し、その凝固過程の1500℃から1300℃ま
での温度域を25℃/分以上の速度で冷却することによ
って、容易に得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】前述のごとく鋼材の遅れ破壊に
は、鋼材中で動き回っている水素(拡散性水素)が大き
く影響を及ぼしていると考えられるが、たとえ拡散性水
素量が同じであっても、鋼材の拡散性水素に対する抵抗
力によっては水素脆性が著しく変わってくる。即ち鋼材
の成分組成によっては、たとえば拡散性水素のトラップ
効果がかなり変わり、水素トラップ効果の小さい鋼材で
は、極く少量の拡散性水素の存在によって水素脆化を起
こし、一方水素トラップ効果の大きい鋼材では、拡散性
水素量がかなり多くなっても水素脆化を起こさない。
【0012】従って、鋼材中の拡散性水素量の絶対値を
求めたとしても、耐水素脆性の程度を正確に評価するこ
とはできず、前述のごとく拡散性水素量の正確な測定法
が見い出されていないこととも相まって、現在のところ
耐水素脆化に起因する耐遅れ破壊性の程度を正確に評価
する方法は確立されていない。
【0013】そこで本発明者らは、鋼材の成分組成等に
よって変わってくる拡散性水素に対する感受性も加味し
て、耐水素脆性に直接的に影響を及ぼす拡散性水素量の
正確な定量法を確立し、それにより鋼材の耐水素脆性を
正確に評価することのできる方法、ひいては、優れた耐
遅れ破壊性を確実に発揮し得る様な鋼材の開発を期して
研究を進めてきた。
【0014】その結果、下記の方法によって求められる
鋼材中の限界拡散性水素量は、鋼材の耐水素脆性を正確
に反映しており、鋼材の成分組成等の違いに拘らず該限
界拡散性水素量が0.15ppm以上であるものは、優
れた耐水素脆性を確実に発揮することを確認した。
【0015】[限界拡散性水素量測定法] 25mmφに鍛造した鋼棒を、1200℃で30分間
溶体化処理した後、焼ならし処理し、引張強度が約10
00〜2000N/mm2 となる様に最終熱処理を施
す。 次いで、上記鋼棒の一部を用いて図1に示す様な遅れ
破壊試験片に加工し、15〜35%HCl水溶液に10
〜75分間浸漬した後、30分以内に引張強さと同等の
応力を負荷し、遅れ破壊を生じない水素チャージ条件を
見つけ出して、その条件を限界水素チャージ条件と定義
する。 一方、上記の鋼棒から、500mgの試料片を切り
出す。 上記の試料片をアセトンで脱脂清浄化した後、前記
限界水素チャージ条件下に酸浸漬し、再びアセトンで脱
脂清浄した後、試験片の温度が上がらぬ様に乾燥し、秤
量して抽出管へ装入する。 次いで上記の試料片を、赤外線イメージ炉で室温か
ら600℃まで昇温速度12℃/分で加熱しつつ、毎3
0秒間隔で放出水素量を測定する。キャリアガスにはA
rガスを使用し、流量は800リットル/分とする。そ
うすると、例えば図2に示す如く加熱温度に応じて放出
される水素量を求めることができる。 上記の方法において、室温から250℃まで昇温す
る間に放出される水素量の総和を「限界拡散性水素量」
とする。
【0016】ちなみに図3は、後述する実施例を含めた
多くの実験から、限界拡散性水素量と遅れ破壊の関係を
整理して示したグラフであり、このグラフからも明らか
である様に、鋼材の成分組成等には関わりなく、限界拡
散性水素量が0.15ppm以上であるものは、いずれ
も、耐遅れ破壊性が優れたものの基準とされている15
00N/mm2 以上の値を示しており、限界拡散性水素
量が0.15ppm未満であるものは、例外なく150
0N/mm2 未満の低い耐遅れ破壊強度しか得られてい
ない。
【0017】この様に本発明では、限界拡散性水素量の
測定法を規定することにより、鋼材の拡散性水素に対す
る感受性を加味した上で遅れ破壊を起こすことのない限
界の拡散性水素量を正確に把握することができ、その値
が0.15ppm以上であるものは、真に耐遅れ破壊性
に優れた高強度鋼と評価できるのである。
【0018】即ち、鋼中の拡散性水素量が遅れ破壊特性
を劣化させることは明白であり、従って耐遅れ破壊性を
高めるには、鋼中に侵入する水素量をできるだけ低減す
ると共に鋼材自身の水素トラップ能を高め、拡散性水素
量を低減することが絶対条件であるが、拡散性水素量が
少なくても、水素に対する抵抗力の低い(即ち、感受性
の高い)鋼材の耐遅れ破壊特性は不良であり、同様にそ
の逆の現象も生じてくる。ところが本発明では、上記の
様に拡散性水素量と遅れ破壊試験を組み合わせて求めた
限界拡散性水素量によって遅れ破壊性の良否を正確に判
断することができ、如何なる成分組成の鋼材について
も、該限界拡散性水素量を0.15ppm以上に規定す
ることによって、優れた耐遅れ破壊性を確保することが
可能になるのである。次に、本発明で好ましく用いられ
る鋼材の化学成分を定めた理由を説明する。
【0019】C:0.15〜0.60% Cは高強度鋼として必要な引張強さを確保する上で欠く
ことのできない元素であり、0.15%未満では焼入効
果が不十分となり所定の引張強度を確保することができ
ない。一方0.60%を超えると、靭性低下により耐遅
れ破壊性が著しく劣化する。よって、好ましいC量は
0.15〜0.60%の範囲と定めた。尚、C量のより
好ましい範囲は0.25〜0.45%、更に好ましい範
囲は0.30〜0.40%である。
【0020】Si:2.0%以下 Siは溶製時の脱酸に有効な元素であるが、Si量が多
くなるにつれて冷間加工性が悪くなる傾向を示すだけで
なく、焼入れなどの熱処理時における粒界酸化を助長
し、耐遅れ破壊性を劣化させる。こうした観点から、好
ましいSi含有量は2.0%以下、より好ましくは1.
0%以下である。上記の障害を起こさせないで脱酸効果
を有効に発揮させるための最も好ましいSi含有量は
0.03〜0.25%である。
【0021】Mn:0.30〜2.0% Mnは、Siと同様に溶製時の脱酸剤として有効に作用
する他、強化元素として作用して鋼材の高強度化に寄与
する。これらの効果を有効に発揮させるには、0.30
%以上含有させるべきであるが、多過ぎるとMnの正偏
析によって粒界強度を下げて靭性を悪化させるので、
2.0%以下に抑えるべきである。Mn量のより好まし
い範囲は0.50〜1.30%である。
【0022】P:0.025%以下 Pは粒界を脆化させる有害な元素であり、しかもP濃度
が高くなると、限界拡散性水素量が低下して耐水素脆性
を劣化させる。従って、P量は0.025%以下、より
好ましくは0.010%以下、更に好ましくは0.00
5%以下に抑えるべきであり、可能な限り低減すること
が好ましい。
【0023】S:0.025%以下 Sは、その殆どがMnSとして鋼中に存在し、MnS量
が多くなると耐水素脆性を著しく劣化させる。こうした
障害を起こさせないためには、S量を0.025%以
下、より好ましくは0.010%以下、更に好ましくは
0.005%以下に抑えるべきであり、可能な限り低減
することが好ましい。
【0024】Al:0.01〜0.05% Alは、鋼中のNと結合してAlNを形成し結晶粒を微
細化させて耐遅れ破壊性の向上に寄与する。こうした効
果は0.01%以上含有させることによって有効に発揮
されるが、0.05%を超えると酸化物系介在物を生成
し、かえって耐遅れ破壊性を劣化させる。従って、Al
量は0.01〜0.05%、より好ましくは0.02〜
0.04%の範囲とするのが良い。
【0025】Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以
下、Ni:2.0%以下の1種以上 これらの元素は、焼入れ性を高めて鋼材の強度・靭性の
向上に寄与する点で同効元素であり、更にCrは、耐食
性の向上により耐水素脆性を高める作用も発揮する。ま
たMoは、遅れ破壊強度を直接的に支配する拡散性水素
量に影響を与え、遅れ破壊発生までに鋼材が許容し得る
限界拡散性水素量を増大させるうえでも有効に作用す
る。またNiは鋼材の靭性を高めるのに極めて有効な元
素である。即ち、鋼材の耐水素脆性を向上させるのに限
界拡散性水素量の増大が有望であることは前述の通りで
あるが、限界拡散性水素量が増大しても遅れ破壊を発生
しにくくするには、鋼材自体の靭性を高めることが肝要
であり、こうした観点からしても、靭性向上に寄与する
Niは有望な元素といえる。
【0026】こうした効果は、Cr:0.10%以上、
Mo量:0.05%以上、Ni:0.10%以上の添加
で有効に発揮されるが、Crの上記効果は約2.0%で
飽和し、Moの効果は約2.0%で飽和するばかりでな
く変形抵抗の増大により圧造工具寿命の低下をもたら
し、またNi量が2.0%を超えて過多になると、例え
ばボルトなどに加工する際の冷間圧造性を阻害すると共
に、大幅なコストアップを招く。こうした利害得失を考
えて、上記選択元素のそれぞれのより好ましい含有量
は、Cr:0.3〜1.5%、更に好ましく0.50〜
1.05%の範囲、Mo:0.3〜1.5%、更に好ま
しくは0.6〜1.05%の範囲、Ni:0.3〜1.
5%、更に好ましくは0.50〜1.05%の範囲であ
る。
【0027】Ti、Nb、Vの1種以上:各々0.20
%以下 Ti、Nb、Vはオーステナイト結晶粒の粗大化防止や
焼入れ性向上に有効に作用し、鋼の強度・靭性の向上に
寄与する他、炭・窒化物を形成して耐水素脆性を高める
作用も発揮する。こうした効果は、各々0.01%以上
含有させることによって有効に発揮されるが、各々0.
20%を超えて添加しても添加量の増加の割りにはその
効果が少なく、不経済となる。経済性も加味してこれら
元素の好ましい含有量は、それぞれ0.01〜0.20
%、より好ましくは0.03〜0.10%、更に好まし
くは0.04〜0.06%の範囲である。
【0028】B:0.003%以下 Bは、粒界に集散して鋼の焼入れ性を高めると共に、粒
界へのMnやPの偏析・析出を抑える効果があり、これ
らの効果は0.0005%程度以上含有させることによ
って有効に発揮される。しかし、各々0.003%を超
えて過剰に添加するとかえって靭性を阻害する。B量の
より好ましい含有量は0.0010〜0.0025%の
範囲である。
【0029】なお本発明で使用される鋼材の残部成分は
実質的に鉄であり、製造上、微量の不可避的不純物が混
入してくるが、それらは本発明の効果を損なわない限度
で許容される。
【0030】上記した鋼材の好ましい化学成分は、拡散
性水素に対する遅れ破壊感受性を低減して限界拡散性水
素量を増大する上でも有益となるが、この様な成分組成
に加えて、鋼材の圧延条件や熱処理条件などを下記の様
に調整してやれば、得られる鋼材の限界拡散性水素量を
大きくすることができ、その値が0.15ppm以上で
ある高強度鋼を効率よく得ることが可能となる。
【0031】即ちその条件として好ましいのは、鋼材を
製造する際に、凝固過程で1500℃から1300℃の
温度域を10℃/分以上、より好ましくは20℃/分以
上、更に好ましくは30℃/分以上の速度で冷却する方
法であり、それにより粗大な化合物の析出が抑制されて
微細な化合物が多く生成し、鋼の強度・靭性に好影響を
与えると共に、耐水素脆性も効果的に高められ、遅れ破
壊強さで1650N/mm2 程度以上、あるいは170
0N/mm2 程度以上、更には1900N/mm2 以上
といった卓越した性能の高強度鋼を得ることができる。
【0032】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限
を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範
囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であ
り、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含され
る。
【0033】実施例 表1に示す成分組成の鋼材を150kgfの真空溶解炉
で溶製し、150kgfのインゴットに鋳造してから冷
却した。このとき一部については、凝固時の冷却速度を
変化させるため、50〜150kgfのインゴットに鋳
造し、一部は保温しながら冷却した。その後直径25m
mの棒状に鍛造し、1200℃で30分の溶体化処理を
施した後焼ならし処理を行ない、引張強度が約1000
〜2000N/mmとなる様に最終熱処理を施した。
【0034】得られた各鋼材について、前述の方法で限
界拡散性水素量を求めると共に、引張強さおよび遅れ破
壊強度を測定し、表2,3に示す結果を得た。尚、遅れ
破壊強度は下記の方法によって測定した。 《遅れ破壊強度測定法》ループ型定歪み遅れ破壊試験機
を使用し、図1に示す遅れ破壊試験片を水中で応力負荷
し100時間後の遅れ破壊強さを測定した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】表1〜3からも明らかである様に、限界拡
散性水素量が0.15ppm以上である本発明鋼は、い
ずれも1500N/mm2 を超える優れた遅れ破壊強度
を有しており、それらの鋼材は、いずれも本発明で推奨
する成分組成の要件も満足していることが分かる。これ
に対し限界拡散性水素量が0.15ppm未満である比
較鋼は、いずれも遅れ破壊強度が1500N/mm2
満の低い値を示しており、それらの鋼材は、いずれも本
発明で推奨する成分組成の要件を満たしていない。
【0039】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、特
定の方法によって求められる限界拡散性水素量を基準に
して鋼材の遅れ破壊性を評価することにより、安定して
優れた耐遅れ破壊性を備えた高強度鋼を確実に得ること
が可能となった。また、鋼材の成分組成を前述の様に特
定し、或は更に熱処理条件などを適正に制御してやれ
ば、本発明に係る優れた耐遅れ破壊性を備えた高強度鋼
をより確実に得ることができ、また本発明の評価法によ
れば、あらゆる種類の鋼材の拡散性水素に原因する遅れ
破壊性の良否を正確に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】限界拡散性水素量の測定および遅れ破壊強度の
測定に用いた試験片の寸法、形状を示す図である。
【図2】限界拡散性水素量の算出基準の一例として、加
熱温度と放出水素量の関係を示したグラフである。
【図3】限界拡散性水素量と遅れ破壊強度の関係を示す
グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/58 C22C 38/58

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記方法によって求められる限界拡散性
    水素量が0.15ppm以上であることを特徴とする耐
    水素脆性に優れた高強度鋼。 [限界拡散性水素量測定法] 25mmφに鍛造した鋼棒を、1200℃で30分間
    溶体化処理した後、 焼ならし処理し、引張強度が約1000〜2000N/
    mm2 となる様に最終熱処理を施す。 次いで、上記鋼棒の一部を用いて図1に示す様な遅れ
    破壊試験片に加工し、 15〜35%HCl水溶液に10〜75分間浸漬した
    後、30分以内に引張強さと同等の応力を負荷し、遅れ
    破壊を生じない水素チャージ条件を見つけ出して、その
    条件を限界水素チャージ条件と定義する。 一方、上記の鋼棒から、500mgの試料片を切り
    出す。 上記の試料片をアセトンで脱脂清浄化した後、前記
    限界水素チャージ条件下に酸浸漬し、再びアセトンで脱
    脂清浄化した後、試験片の温度が上がらぬ様に乾燥し、
    秤量して抽出管へ装入する。 次いで上記の試料片を、室温から600℃まで昇温
    速度12℃/分で加熱しつつ、毎30秒間隔で放出水素
    量を測定する。キャリアガスにはArガスを使用し、流
    量は800リットル/分とする。 上記の方法において、室温から250℃まで昇温す
    る間に放出される水素量の総和を「限界拡散性水素量」
    とする。
  2. 【請求項2】 鋼材が、 C :0.15〜0.60%(質量%を意味する、以下
    同じ) Si:2.00%以下(0%を含む) Mn:0.3〜2.0% P :0.025%以下(0%を含む) S :0.025%以下(0%を含む) を満足すると共に、 Al:0.05%以下(0%を含まない) Cr:2.0%以下(0%を含まない) Mo:2.0%以下(0%を含まない) Ni:2.0%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される元素のうち1種以上を含有
    し、残部が実質的にFeおよび不可避不純物からなるも
    のである請求項1に記載の高強度鋼。
  3. 【請求項3】 鋼材が、更に他の元素として Ti:0.20%以下(0%を含まない) Nb:0.20%以下(0%を含まない) V :0.20%以下(0%を含まない) よりなる群から選択される1種以上を含有するものであ
    る請求項2に記載の高強度鋼。
  4. 【請求項4】 鋼材が、更に他の元素として B:0.003%以下(0%を含まない) を含有するものである請求項2または3に記載の高強度
    鋼。
  5. 【請求項5】 鋼材を製造するに際し、凝固過程の15
    00℃から1300℃までの温度域を10℃/分以上の
    速度で冷却し、請求項1〜4のいずれかに記載の高強度
    鋼を製造することを特徴とする、耐水素脆性に優れた高
    強度鋼の製法。
JP13395896A 1996-05-28 1996-05-28 耐水素脆性に優れた高強度鋼およびその製法 Withdrawn JPH09316597A (ja)

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JP13395896A JPH09316597A (ja) 1996-05-28 1996-05-28 耐水素脆性に優れた高強度鋼およびその製法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2001288539A (ja) * 2000-04-05 2001-10-19 Nippon Steel Corp 耐水素疲労特性の優れたばね用鋼、およびその製造方法

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