JPH09176675A - アルミ材の加工油 - Google Patents
アルミ材の加工油Info
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- JPH09176675A JPH09176675A JP34120895A JP34120895A JPH09176675A JP H09176675 A JPH09176675 A JP H09176675A JP 34120895 A JP34120895 A JP 34120895A JP 34120895 A JP34120895 A JP 34120895A JP H09176675 A JPH09176675 A JP H09176675A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 アルミ材の高度加工が可能であり、かつ大気
圧下における加熱脱脂が可能なアルミ材の加工油を提供
する。 【解決手段】 最大分子量Mが282以上378以下の
炭化水素からなるベース油と、最大分子量Mが378以
下のアルコールまたはカルボン酸からなる添加剤3重量
%以上とからなる加工油を用いてアルミ材の加工を行
う。ベース油および添加剤の最大分子量Mを378以下
とすることにより、完全蒸発温度Tが低いので大気圧下
で容易に加熱脱脂を行うことができる。また、ベース油
の最大分子量Mが282以上であることにより、常温に
おける蒸発速度Vが十分に遅いので設備停止時の油膜切
れが生じにくい。しかも、添加剤として3重量%以上の
アルコールまたはカルボン酸を加えることにより、従来
の加工油と同等以上の加工性を得ることができる。
圧下における加熱脱脂が可能なアルミ材の加工油を提供
する。 【解決手段】 最大分子量Mが282以上378以下の
炭化水素からなるベース油と、最大分子量Mが378以
下のアルコールまたはカルボン酸からなる添加剤3重量
%以上とからなる加工油を用いてアルミ材の加工を行
う。ベース油および添加剤の最大分子量Mを378以下
とすることにより、完全蒸発温度Tが低いので大気圧下
で容易に加熱脱脂を行うことができる。また、ベース油
の最大分子量Mが282以上であることにより、常温に
おける蒸発速度Vが十分に遅いので設備停止時の油膜切
れが生じにくい。しかも、添加剤として3重量%以上の
アルコールまたはカルボン酸を加えることにより、従来
の加工油と同等以上の加工性を得ることができる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミ材のプレス
加工等に用いられる加工油に関する。
加工等に用いられる加工油に関する。
【0002】
【従来の技術】プレス加工を行う際には、型材と被加工
材との間の摺動性を良くするため、加工油が用いること
が知られている。従来、鋼材のプレス加工においては、
加工度の高い加工を行う際には高粘度の加工油が用られ
ている。ここで、「加工度」とは、プレス加工による被
加工材の変形の度合いをいう。また、「加工度の高い加
工」とは、例えば径が小さく絞り深さの深いプレス加工
のように加工条件の厳しい加工をいう。この鋼材用加工
油には、比較的分子量の大きな有機酸やエステルなどの
油性向上剤および塩素化脂肪酸などの極圧剤が添加され
ていることが多い。このような加工油として、例えば、
第3石油類に属するベース油に分子量880程度の油脂
を加えたものがある。また、被加工材がアルミ材である
場合にもこの従来の鋼材用加工油を用いることが多い。
材との間の摺動性を良くするため、加工油が用いること
が知られている。従来、鋼材のプレス加工においては、
加工度の高い加工を行う際には高粘度の加工油が用られ
ている。ここで、「加工度」とは、プレス加工による被
加工材の変形の度合いをいう。また、「加工度の高い加
工」とは、例えば径が小さく絞り深さの深いプレス加工
のように加工条件の厳しい加工をいう。この鋼材用加工
油には、比較的分子量の大きな有機酸やエステルなどの
油性向上剤および塩素化脂肪酸などの極圧剤が添加され
ていることが多い。このような加工油として、例えば、
第3石油類に属するベース油に分子量880程度の油脂
を加えたものがある。また、被加工材がアルミ材である
場合にもこの従来の鋼材用加工油を用いることが多い。
【0003】プレス加工後、ろう付、塗装、溶接、表面
処理などの後工程における品質を保証するために、被加
工材には前記加工油を除去する脱脂工程が施される。こ
の脱脂工程は、ベース油および高分子量の油脂をともに
除去する必要があるため、水溶性洗浄により加工油を
除去する方法、被加工材を加熱することで加工油を蒸
発除去する方法、などにより行われる。
処理などの後工程における品質を保証するために、被加
工材には前記加工油を除去する脱脂工程が施される。こ
の脱脂工程は、ベース油および高分子量の油脂をともに
除去する必要があるため、水溶性洗浄により加工油を
除去する方法、被加工材を加熱することで加工油を蒸
発除去する方法、などにより行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】アルミ材のプレス加工
において上記の方法で脱脂を行う場合について、図6
を用いて説明する。アルミ材をプレス加工することによ
り成形された部品1、2からなるユニット3を組立てた
のち、ユニット3を水溶性洗浄することによりプレス加
工時に付着した加工油を脱脂する。この水溶性洗浄工程
において、ユニット3はまずウォーターバス11内で湯
洗される。次いで、複数の隔室121、122、12
3、124をもつアルカリバス12中を、図6の左端に
位置する隔室121から右端に位置する隔室124側に
ユニット3を順番に移動させる。ユニット3をウォータ
ーバス11から隔室121へ移すとき、およびユニット
3を隔室121、122、123、124から引き上げ
たときには、次槽への付着液の持ち込みを減らすために
エアブロー14によりユニット3にエアを吹きつけ付着
液を除去する。アルカリ性の洗浄液を満たしたアルカリ
バス12には、隔室124側から脱脂剤が補給されてお
り、隔室124から溢れ出た洗浄液は隣接する隔室12
3に流入し、隔室123から溢れ出た洗浄液は隣接する
隔室122へと流入する。油分により汚れた洗浄液は隔
室121から排水処理場15へ排出される。そして、ユ
ニット3は、隔室121から隔室124側に移動する間
に徐々に脱脂される。その後、隔室131、132、1
33を有し隔室131側から洗浄水が供給されるウォー
ターバス13内において、アルカリバス12で付着した
洗浄液をユニット3から洗い落とす。最後に、ユニット
3を乾燥炉16で加熱乾燥して脱脂工程を終了する。脱
脂工程後、ユニット3からコア4を組立ててろう付を行
う。
において上記の方法で脱脂を行う場合について、図6
を用いて説明する。アルミ材をプレス加工することによ
り成形された部品1、2からなるユニット3を組立てた
のち、ユニット3を水溶性洗浄することによりプレス加
工時に付着した加工油を脱脂する。この水溶性洗浄工程
において、ユニット3はまずウォーターバス11内で湯
洗される。次いで、複数の隔室121、122、12
3、124をもつアルカリバス12中を、図6の左端に
位置する隔室121から右端に位置する隔室124側に
ユニット3を順番に移動させる。ユニット3をウォータ
ーバス11から隔室121へ移すとき、およびユニット
3を隔室121、122、123、124から引き上げ
たときには、次槽への付着液の持ち込みを減らすために
エアブロー14によりユニット3にエアを吹きつけ付着
液を除去する。アルカリ性の洗浄液を満たしたアルカリ
バス12には、隔室124側から脱脂剤が補給されてお
り、隔室124から溢れ出た洗浄液は隣接する隔室12
3に流入し、隔室123から溢れ出た洗浄液は隣接する
隔室122へと流入する。油分により汚れた洗浄液は隔
室121から排水処理場15へ排出される。そして、ユ
ニット3は、隔室121から隔室124側に移動する間
に徐々に脱脂される。その後、隔室131、132、1
33を有し隔室131側から洗浄水が供給されるウォー
ターバス13内において、アルカリバス12で付着した
洗浄液をユニット3から洗い落とす。最後に、ユニット
3を乾燥炉16で加熱乾燥して脱脂工程を終了する。脱
脂工程後、ユニット3からコア4を組立ててろう付を行
う。
【0005】しかしながら、このの方法で行う水溶性
洗浄によると、ウォーターバス11、アルカリバス12
およびウォーターバス13から多量の廃液が発生するた
め環境保護上好ましくなく、また排水処理設備の設置費
用および排水処理費用が比較的高価であるという問題が
ある。また、上記の方法によると、加工油中の高分子
量成分は蒸発しにくいため、真空中での加熱設備が必要
であったり、蒸発しやすい軽質油で加工油を洗浄置換し
て、加熱することが必要となる。したがって、設備コス
トや原材料費の増大を招くことになる。
洗浄によると、ウォーターバス11、アルカリバス12
およびウォーターバス13から多量の廃液が発生するた
め環境保護上好ましくなく、また排水処理設備の設置費
用および排水処理費用が比較的高価であるという問題が
ある。また、上記の方法によると、加工油中の高分子
量成分は蒸発しにくいため、真空中での加熱設備が必要
であったり、蒸発しやすい軽質油で加工油を洗浄置換し
て、加熱することが必要となる。したがって、設備コス
トや原材料費の増大を招くことになる。
【0006】その一方で、加工度がそれほど高くなけれ
ば低粘度の加工油を用いることも可能であり、この場合
には軽質油による置換を行うことなく加工油を加熱脱
脂する方法、あるいは、自然乾燥により加工油を蒸発
させる方法、などが脱脂方法として挙げられる。上記
の方法は、加工油に含まれるベース油および添加剤の沸
点が十分低ければ大気圧下で実施可能である。また、上
記の方法は加熱が不要であるという利点がある。上記
〜の方法を比較すると、設備費やエネルギーを含め
た総コストは、>>>の順に安価になる。
ば低粘度の加工油を用いることも可能であり、この場合
には軽質油による置換を行うことなく加工油を加熱脱
脂する方法、あるいは、自然乾燥により加工油を蒸発
させる方法、などが脱脂方法として挙げられる。上記
の方法は、加工油に含まれるベース油および添加剤の沸
点が十分低ければ大気圧下で実施可能である。また、上
記の方法は加熱が不要であるという利点がある。上記
〜の方法を比較すると、設備費やエネルギーを含め
た総コストは、>>>の順に安価になる。
【0007】ところが、上記およびの方法に用いら
れるような低粘度の加工油は常温における蒸発性が高い
という性質を有する。そのため、従来用いられてきた低
粘度加工油によると、休日などで設備が2〜3日に渡っ
て停止したとき、加工油が蒸発して型材等の摺動部の油
膜切れを生じることがある。これにより、型材と被加工
材との間の摩擦係数が増加することから、型材を繰り返
し使用するうちに設備摺動部や型材の破損を引き起こす
恐れがある。また、加工油の蒸発により型材に錆が発生
したり、設備に必要な油分までが加工油によって取り除
かれてしまったりするという不具合を生じる。
れるような低粘度の加工油は常温における蒸発性が高い
という性質を有する。そのため、従来用いられてきた低
粘度加工油によると、休日などで設備が2〜3日に渡っ
て停止したとき、加工油が蒸発して型材等の摺動部の油
膜切れを生じることがある。これにより、型材と被加工
材との間の摩擦係数が増加することから、型材を繰り返
し使用するうちに設備摺動部や型材の破損を引き起こす
恐れがある。また、加工油の蒸発により型材に錆が発生
したり、設備に必要な油分までが加工油によって取り除
かれてしまったりするという不具合を生じる。
【0008】本発明の目的は、アルミ材に対して加工度
の高い加工を行うことが可能であり、かつ大気圧下にお
ける加熱脱脂が可能なアルミ材の加工油を提供すること
にある。本発明の他の目的は、安価でかつ自然環境に与
える影響が少ない脱脂方法により除去可能なアルミ材の
加工油を提供することにある。
の高い加工を行うことが可能であり、かつ大気圧下にお
ける加熱脱脂が可能なアルミ材の加工油を提供すること
にある。本発明の他の目的は、安価でかつ自然環境に与
える影響が少ない脱脂方法により除去可能なアルミ材の
加工油を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明のアルミ材の加工油は以下の特性を満足す
ることが望ましい。 (1) 第3石油類に属すること。 これは、従来の加工油には第3石油類に属するものが多
いことから、本発明の加工油も第3石油類に属すると従
来どおりに管理を行うことができて都合がよいためであ
る。
めに、本発明のアルミ材の加工油は以下の特性を満足す
ることが望ましい。 (1) 第3石油類に属すること。 これは、従来の加工油には第3石油類に属するものが多
いことから、本発明の加工油も第3石油類に属すると従
来どおりに管理を行うことができて都合がよいためであ
る。
【0010】(2) 完全蒸発温度が常温以上200℃以下
であること。 大気加熱脱脂は、その加工油の発火点未満の温度で実施
される。第3石油類に属する引火性液体の発火点は20
0℃〜300℃程度であるため、本発明の加工油の完全
蒸発温度は200℃以下であることが好ましい。また、
エネルギーの節約および脱脂時間の短縮のためにも、完
全蒸発温度は室温以上の温度範囲であってなるべく低い
ことが好ましい。なお、本明細書において「完全蒸発温
度」とは、試料10mgを用いた示差熱分析により室温か
ら10℃/minの速度で昇温して残留重量が0となった温
度をいう。このとき、プレス加工の後に行われるろう
付、塗装、溶接、表面処理などの工程に影響を及ぼさな
い程度に加工油が除去されたとみることができるため、
大気圧において脱脂可能な加熱温度の下限の目安として
この「完全蒸発温度」を用いる。
であること。 大気加熱脱脂は、その加工油の発火点未満の温度で実施
される。第3石油類に属する引火性液体の発火点は20
0℃〜300℃程度であるため、本発明の加工油の完全
蒸発温度は200℃以下であることが好ましい。また、
エネルギーの節約および脱脂時間の短縮のためにも、完
全蒸発温度は室温以上の温度範囲であってなるべく低い
ことが好ましい。なお、本明細書において「完全蒸発温
度」とは、試料10mgを用いた示差熱分析により室温か
ら10℃/minの速度で昇温して残留重量が0となった温
度をいう。このとき、プレス加工の後に行われるろう
付、塗装、溶接、表面処理などの工程に影響を及ぼさな
い程度に加工油が除去されたとみることができるため、
大気圧において脱脂可能な加熱温度の下限の目安として
この「完全蒸発温度」を用いる。
【0011】(3) 加工性が従来の加工油程度以上である
こと。 (4) 常温72時間放置後に油膜が保たれていること。 これは、休日などで設備が停止したとき、型材などの表
面を覆う油膜が破れることを防止するためである。例え
ば、金曜日の午後5時から翌週月曜日の午前8時までの
間設備を停止させた場合、設備停止時間は64時間とな
る。この64時間に油膜切れまでの時間の余裕度(8時
間)を加算した72時間後にも、良好な油膜が保たれて
いるものが好ましい。
こと。 (4) 常温72時間放置後に油膜が保たれていること。 これは、休日などで設備が停止したとき、型材などの表
面を覆う油膜が破れることを防止するためである。例え
ば、金曜日の午後5時から翌週月曜日の午前8時までの
間設備を停止させた場合、設備停止時間は64時間とな
る。この64時間に油膜切れまでの時間の余裕度(8時
間)を加算した72時間後にも、良好な油膜が保たれて
いるものが好ましい。
【0012】上記(1) 〜(4) の条件を考慮して、本発明
の請求項1記載のアルミ材の加工油は、最大分子量28
2以上378以下の炭化水素からなるベース油と、最大
分子量378以下のアルコールまたはカルボン酸からな
る添加剤3重量%以上とからなることを特徴とする。
の請求項1記載のアルミ材の加工油は、最大分子量28
2以上378以下の炭化水素からなるベース油と、最大
分子量378以下のアルコールまたはカルボン酸からな
る添加剤3重量%以上とからなることを特徴とする。
【0013】ここで、ベース油および添加剤の最大分子
量を378以下としたのは、これらの最大分子量が37
8を超えると完全蒸発温度が過剰に高くなり、脱脂に要
する総エネルギーコストや脱脂時間が増大するためであ
る。また、ベース油の最大分子量が282未満であると
常温における蒸発速度が過剰に速くなり設備停止時の油
膜切れを生じやすいので、ベース油の最大分子量は28
2以上とする。また、添加剤として3重量%以上のアル
コールまたはカルボン酸を加えるのは、従来の加工油と
同等以上の加工性を得るためである。ここで、「加工
性」とは、プレス加工可能な加工度を決定する加工油の
性質を表す。加工性のより良好な加工油を使用すること
により、被加工材に対して加工度のより高いプレス加工
を行うことができる。添加剤量が多くなるにつれて加工
性は向上するが、一般に、炭化水素に比べてアルコール
およびカルボン酸は高価であるため、添加剤量は20重
量%以下とすることが好ましく、10重量%以下とする
ことがさらに好ましい。
量を378以下としたのは、これらの最大分子量が37
8を超えると完全蒸発温度が過剰に高くなり、脱脂に要
する総エネルギーコストや脱脂時間が増大するためであ
る。また、ベース油の最大分子量が282未満であると
常温における蒸発速度が過剰に速くなり設備停止時の油
膜切れを生じやすいので、ベース油の最大分子量は28
2以上とする。また、添加剤として3重量%以上のアル
コールまたはカルボン酸を加えるのは、従来の加工油と
同等以上の加工性を得るためである。ここで、「加工
性」とは、プレス加工可能な加工度を決定する加工油の
性質を表す。加工性のより良好な加工油を使用すること
により、被加工材に対して加工度のより高いプレス加工
を行うことができる。添加剤量が多くなるにつれて加工
性は向上するが、一般に、炭化水素に比べてアルコール
およびカルボン酸は高価であるため、添加剤量は20重
量%以下とすることが好ましく、10重量%以下とする
ことがさらに好ましい。
【0014】また、アルミ材の加工度がそれほど高くな
い場合には、加工性よりも脱脂性を重視した加工油が望
ましいことがある。請求項2記載のアルミ材の加工油は
このような場合に適した加工油であって、最大分子量2
82未満の炭化水素からなるベース油と、最大分子量2
82以上378以下のアルコールまたはカルボン酸から
なる添加剤3重量%以上とからなることを特徴とする。
い場合には、加工性よりも脱脂性を重視した加工油が望
ましいことがある。請求項2記載のアルミ材の加工油は
このような場合に適した加工油であって、最大分子量2
82未満の炭化水素からなるベース油と、最大分子量2
82以上378以下のアルコールまたはカルボン酸から
なる添加剤3重量%以上とからなることを特徴とする。
【0015】請求項2記載のアルミ材の加工油による
と、ベース油の最大分子量を282未満とすることによ
り、請求項1記載の加工油に比べて加工油の完全蒸発温
度が低くなるので脱脂性が向上する。添加剤としてのア
ルコールまたはカルボン酸の最大分子量を282以上と
することにより、最大分子量の小さいベース油が蒸発し
た後にもこの添加剤は残留するため設備停止時の油膜切
れを防止する効果がある。この添加剤の最大分子量は3
78以下であるので、大気加熱脱脂により容易に除去す
ることができる。なお、アルコールまたはカルボン酸の
含有量が増すにつれて加工性は向上するが加工油の完全
蒸発温度は高くなる傾向にあり、また一般に炭化水素に
比べてアルコールおよびカルボン酸は高価であるため、
添加剤量は20重量%以下とすることが好ましく、10
重量%以下とすることがさらに好ましい。
と、ベース油の最大分子量を282未満とすることによ
り、請求項1記載の加工油に比べて加工油の完全蒸発温
度が低くなるので脱脂性が向上する。添加剤としてのア
ルコールまたはカルボン酸の最大分子量を282以上と
することにより、最大分子量の小さいベース油が蒸発し
た後にもこの添加剤は残留するため設備停止時の油膜切
れを防止する効果がある。この添加剤の最大分子量は3
78以下であるので、大気加熱脱脂により容易に除去す
ることができる。なお、アルコールまたはカルボン酸の
含有量が増すにつれて加工性は向上するが加工油の完全
蒸発温度は高くなる傾向にあり、また一般に炭化水素に
比べてアルコールおよびカルボン酸は高価であるため、
添加剤量は20重量%以下とすることが好ましく、10
重量%以下とすることがさらに好ましい。
【0016】また、請求項3に記載のアルミ材の加工油
は、さらに脱脂性を重視した加工油であって、最大分子
量282未満の炭化水素からなるベース油と、最大分子
量282未満のアルコールまたはカルボン酸からなる第
1添加剤3重量%以上と、最大分子量282以上378
以下のエステルからなる第2添加剤0.25重量%以上
とからなることを特徴とする。
は、さらに脱脂性を重視した加工油であって、最大分子
量282未満の炭化水素からなるベース油と、最大分子
量282未満のアルコールまたはカルボン酸からなる第
1添加剤3重量%以上と、最大分子量282以上378
以下のエステルからなる第2添加剤0.25重量%以上
とからなることを特徴とする。
【0017】請求項4記載のアルミ材の加工油による
と、ベース油および第1添加剤の最大分子量がいずれも
282未満であるため加工油の完全蒸発温度が低いので
脱脂性がよい。また、第2添加剤として最大分子量28
2以上378以下のエステル0.25重量%以上を含有
することにより、最大分子量の小さいベース油が蒸発し
た後にもこの第2添加剤は残留するため設備停止時の油
膜切れを防止する効果がある。この第2添加剤の最大分
子量は378以下であるので、大気加熱脱脂により容易
に除去することができる。なお、エステルの含有量が増
すにつれて油膜切れを防止する効果は高くなるが、その
一方で加工油の完全蒸発温度は高くなる傾向にあり、ま
た一般に炭化水素に比べてエステルは高価であるため、
エステル含有量は10重量%以下とすることが好まし
く、5重量%以下とすることがさらに好ましい。また、
第1添加剤量が多くなるにつれて加工性は向上するが、
一般に、炭化水素に比べてアルコールおよびカルボン酸
は高価であるため、第1添加剤量は20重量%以下とす
ることが好ましく、10重量%以下とすることがさらに
好ましい。
と、ベース油および第1添加剤の最大分子量がいずれも
282未満であるため加工油の完全蒸発温度が低いので
脱脂性がよい。また、第2添加剤として最大分子量28
2以上378以下のエステル0.25重量%以上を含有
することにより、最大分子量の小さいベース油が蒸発し
た後にもこの第2添加剤は残留するため設備停止時の油
膜切れを防止する効果がある。この第2添加剤の最大分
子量は378以下であるので、大気加熱脱脂により容易
に除去することができる。なお、エステルの含有量が増
すにつれて油膜切れを防止する効果は高くなるが、その
一方で加工油の完全蒸発温度は高くなる傾向にあり、ま
た一般に炭化水素に比べてエステルは高価であるため、
エステル含有量は10重量%以下とすることが好まし
く、5重量%以下とすることがさらに好ましい。また、
第1添加剤量が多くなるにつれて加工性は向上するが、
一般に、炭化水素に比べてアルコールおよびカルボン酸
は高価であるため、第1添加剤量は20重量%以下とす
ることが好ましく、10重量%以下とすることがさらに
好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基
づいて説明する。まず、本発明の加工油の選択について
述べる。 〔1〕最大分子量Mと完全蒸発温度Tとの関係 表1に示す炭化水素をベースとした加工油試料A〜Fに
ついて完全蒸発温度Tを測定した。測定は試料10mgを
用いた示差熱分析により行い、室温から10℃/minの速
度で昇温して残留重量が0となった温度を完全蒸発温度
Tとした。また、この試料A〜Fについてはベース油で
ある炭化水素と最大分子量Mが183〜880である種
々の油脂、脂肪酸、エステルおよびアルコールから選択
された添加剤20重量%以下とからなる試料を複数作製
し、完全蒸発温度Tを測定した。
づいて説明する。まず、本発明の加工油の選択について
述べる。 〔1〕最大分子量Mと完全蒸発温度Tとの関係 表1に示す炭化水素をベースとした加工油試料A〜Fに
ついて完全蒸発温度Tを測定した。測定は試料10mgを
用いた示差熱分析により行い、室温から10℃/minの速
度で昇温して残留重量が0となった温度を完全蒸発温度
Tとした。また、この試料A〜Fについてはベース油で
ある炭化水素と最大分子量Mが183〜880である種
々の油脂、脂肪酸、エステルおよびアルコールから選択
された添加剤20重量%以下とからなる試料を複数作製
し、完全蒸発温度Tを測定した。
【0019】
【表1】
【0020】上記の測定結果から、各試料中に含まれる
物質の最大分子量Mと完全蒸発温度Tとの関係をプロッ
トした特性図を図1に示す。そして、この特性から次に
示す回帰式(a)が得られた。 T=0.36M+63.851 ・・・(a) この回帰式(a)から、ベース油として最大分子量Mが
378以下の炭化水素を用い、これに最大分子量Mが3
78以下の油脂、脂肪酸、エステルおよびアルコールか
ら選択された添加剤を加えた加工油であれば完全蒸発温
度Tが200℃以下となる。したがって、200℃以下
で大気加熱脱脂が可能となる。また、第3石油類に属す
るベース油に添加剤として分子量880程度の油脂を加
えた従来の加工油は、完全蒸発温度Tが400℃にも達
するため、200℃以下では大気加熱脱脂できないこと
が図1により判る。
物質の最大分子量Mと完全蒸発温度Tとの関係をプロッ
トした特性図を図1に示す。そして、この特性から次に
示す回帰式(a)が得られた。 T=0.36M+63.851 ・・・(a) この回帰式(a)から、ベース油として最大分子量Mが
378以下の炭化水素を用い、これに最大分子量Mが3
78以下の油脂、脂肪酸、エステルおよびアルコールか
ら選択された添加剤を加えた加工油であれば完全蒸発温
度Tが200℃以下となる。したがって、200℃以下
で大気加熱脱脂が可能となる。また、第3石油類に属す
るベース油に添加剤として分子量880程度の油脂を加
えた従来の加工油は、完全蒸発温度Tが400℃にも達
するため、200℃以下では大気加熱脱脂できないこと
が図1により判る。
【0021】〔2〕加工性の検討 加工油のベース油には鉱物油および合成炭化水素が用い
られるが、このベース油のみの組成では極性基がないた
め、アルミ材の表面への吸着性が不足して十分な加工性
が得られない。加工性を向上させるためには、カルボキ
シル基、水酸基、エステル基などの極性基を有する化合
物からなる添加剤を加えることが有効である。このよう
な添加剤として、従来の鋼材用の加工油では油脂、脂肪
酸、エステル、アルコールなどが用いられており、加工
性の向上効果はアルコール<エステル<脂肪酸<油脂の
順に大きくなるとされている。
られるが、このベース油のみの組成では極性基がないた
め、アルミ材の表面への吸着性が不足して十分な加工性
が得られない。加工性を向上させるためには、カルボキ
シル基、水酸基、エステル基などの極性基を有する化合
物からなる添加剤を加えることが有効である。このよう
な添加剤として、従来の鋼材用の加工油では油脂、脂肪
酸、エステル、アルコールなどが用いられており、加工
性の向上効果はアルコール<エステル<脂肪酸<油脂の
順に大きくなるとされている。
【0022】上記のうち、分子量の大きい油脂は対象外
とし、最大分子量Mが378以下の脂肪酸、エステルお
よびアルコールについて加工性の向上効果を調べた。ベ
ース油としては平均分子量183(最大分子量Mが21
2)のパラフィン系炭化水素を使用した。また、加工性
向上効果は円筒深絞り試験により評価した。すなわち、
被加工材としてアルミ円板を用意し、このアルミ円板に
対してポンチにより円筒深絞り加工を行った。「絞り加
工可能な最も大きいアルミ円板の直径D」を「ポンチ直
径d」で割って絞り比を求めた。絞り比が高いほどアル
ミ円板に対して加工度の高い加工を行うことが可能であ
り、したがって加工性が良好なことを示す。
とし、最大分子量Mが378以下の脂肪酸、エステルお
よびアルコールについて加工性の向上効果を調べた。ベ
ース油としては平均分子量183(最大分子量Mが21
2)のパラフィン系炭化水素を使用した。また、加工性
向上効果は円筒深絞り試験により評価した。すなわち、
被加工材としてアルミ円板を用意し、このアルミ円板に
対してポンチにより円筒深絞り加工を行った。「絞り加
工可能な最も大きいアルミ円板の直径D」を「ポンチ直
径d」で割って絞り比を求めた。絞り比が高いほどアル
ミ円板に対して加工度の高い加工を行うことが可能であ
り、したがって加工性が良好なことを示す。
【0023】添加剤の種類および添加量と絞り比との関
係を図2に示す。なお、図2において「従来油レベル」
とは、鉱物油に最大分子量Mが880の油脂を添加した
従来の鋼材用加工油を用いて同様にアルミ円板の円筒深
絞り加工を行って求めた絞り比を示す。図2より、ベー
ス油に脂肪酸またはアルコールからなる添加剤を3重量
%以上添加することにより、従来油レベル以上の加工性
を得られることが判る。
係を図2に示す。なお、図2において「従来油レベル」
とは、鉱物油に最大分子量Mが880の油脂を添加した
従来の鋼材用加工油を用いて同様にアルミ円板の円筒深
絞り加工を行って求めた絞り比を示す。図2より、ベー
ス油に脂肪酸またはアルコールからなる添加剤を3重量
%以上添加することにより、従来油レベル以上の加工性
を得られることが判る。
【0024】なお、この添加剤として、脂肪酸以外のカ
ルボン酸を用いてもよいが、アルミ材の表面に極性基を
密に吸着させるためには、脂肪酸、特に直鎖モノカルボ
ン酸を用いることが好ましい。さらに、型材の腐食防止
および原材料費低減のためには、カルボン酸よりもアル
コール、特に鎖式アルコールを用いることが好ましい。
また、アルコールとカルボン酸との混合物を添加剤とし
て用いてもよい。
ルボン酸を用いてもよいが、アルミ材の表面に極性基を
密に吸着させるためには、脂肪酸、特に直鎖モノカルボ
ン酸を用いることが好ましい。さらに、型材の腐食防止
および原材料費低減のためには、カルボン酸よりもアル
コール、特に鎖式アルコールを用いることが好ましい。
また、アルコールとカルボン酸との混合物を添加剤とし
て用いてもよい。
【0025】〔3〕蒸発速度Vの検討アルミ板材を最大
分子量Mの異なる各種の炭化水素に浸漬したのち取り出
し、重量の減少速度から蒸発速度Vを求めた。最大分子
量Mと蒸発速度Vとの関係をプロットした特性図を図3
に示す。そして、この特性から次に示す回帰式(b)が
得られた。
分子量Mの異なる各種の炭化水素に浸漬したのち取り出
し、重量の減少速度から蒸発速度Vを求めた。最大分子
量Mと蒸発速度Vとの関係をプロットした特性図を図3
に示す。そして、この特性から次に示す回帰式(b)が
得られた。
【0026】 V=−0.00076M+0.33 ・・・(b) アルミ材のプレス加工において、設備部品への加工油の
付着量は500〜2000mg/dm2程度である。また、設
備に付着した加工油の一部が設備停止から72時間後に
も残留していれば、休日の設備停止時の油膜切れを防止
できると考えられる。下記式(c)により、72時間、
すなわち4320分未満で最小付着量500mg/dm2の加
工油が蒸発する蒸発速度Vを求めた。
付着量は500〜2000mg/dm2程度である。また、設
備に付着した加工油の一部が設備停止から72時間後に
も残留していれば、休日の設備停止時の油膜切れを防止
できると考えられる。下記式(c)により、72時間、
すなわち4320分未満で最小付着量500mg/dm2の加
工油が蒸発する蒸発速度Vを求めた。
【0027】 500[mg/dm2]/4320[min] =0.115[mg/(dm2min)] ・・・(c) 図3に示すように、最大分子量Mが282以上であれば
蒸発速度Vが0.115mg/dm2min 以下となる。したが
って、最大分子量Mが282以上であれば、最小付着量
500mg/dm2においても72時間後にも加工油の一部が
残留するため油膜切れを防止できることが判る。
蒸発速度Vが0.115mg/dm2min 以下となる。したが
って、最大分子量Mが282以上であれば、最小付着量
500mg/dm2においても72時間後にも加工油の一部が
残留するため油膜切れを防止できることが判る。
【0028】上記〔1〕〜〔3〕の検討結果より、最大
分子量Mが378以下の炭化水素からなるベース油と最
大分子量Mが378以下のアルコールまたはカルボン酸
からなる添加剤3重量%以上とからなる加工油であっ
て、ベース油または添加剤のいずれか一方の最大分子量
が282以上であれば、設備停止時の油膜切れを防止す
るとともに大気加熱脱脂が可能であり、かつ従来油と同
程度の加工性を有することが判る。
分子量Mが378以下の炭化水素からなるベース油と最
大分子量Mが378以下のアルコールまたはカルボン酸
からなる添加剤3重量%以上とからなる加工油であっ
て、ベース油または添加剤のいずれか一方の最大分子量
が282以上であれば、設備停止時の油膜切れを防止す
るとともに大気加熱脱脂が可能であり、かつ従来油と同
程度の加工性を有することが判る。
【0029】〔4〕脱脂性向上の検討 アルミ材の加工度がそれほど高くない場合には、加工性
よりも脱脂性を重視した加工油が望ましいことがある。
例えば、部品形状が比較的複雑な場合や図6に示す後工
程であるコア組付けを行った後に脱脂を行う場合などに
は、部品の隅々まで脱脂することが困難であるために良
好な脱脂性が必要である。また、加熱コストの低減や加
熱時間短縮の点からも、用途に応じて必要な加工性が得
られ、かつ設備停止時の油膜切れが防止できる範囲であ
れば、脱脂性は高いことが好ましい。
よりも脱脂性を重視した加工油が望ましいことがある。
例えば、部品形状が比較的複雑な場合や図6に示す後工
程であるコア組付けを行った後に脱脂を行う場合などに
は、部品の隅々まで脱脂することが困難であるために良
好な脱脂性が必要である。また、加熱コストの低減や加
熱時間短縮の点からも、用途に応じて必要な加工性が得
られ、かつ設備停止時の油膜切れが防止できる範囲であ
れば、脱脂性は高いことが好ましい。
【0030】脱脂性を向上させる手段の一つは、完全蒸
発温度Tを低くするために加工油の大半を占めるベース
油として最大分子量Mが282未満の炭化水素を用い、
油膜切れを防止するために常温における蒸発速度Vが十
分小さい最大分子量Mが282以上のアルコールまたは
カルボン酸を加えることである。また、完全蒸発温度T
を200℃以下とするために、このアルコールまたはカ
ルボン酸の最大分子量Mは378以下とする。このよう
な組成に使用可能な最大分子量Mが282以上378以
下のカルボン酸として、例えばステアリン酸(分子量2
84)が挙げられる。
発温度Tを低くするために加工油の大半を占めるベース
油として最大分子量Mが282未満の炭化水素を用い、
油膜切れを防止するために常温における蒸発速度Vが十
分小さい最大分子量Mが282以上のアルコールまたは
カルボン酸を加えることである。また、完全蒸発温度T
を200℃以下とするために、このアルコールまたはカ
ルボン酸の最大分子量Mは378以下とする。このよう
な組成に使用可能な最大分子量Mが282以上378以
下のカルボン酸として、例えばステアリン酸(分子量2
84)が挙げられる。
【0031】さらに脱脂性を向上させるためには、ベー
ス油としての最大分子量Mが282未満の炭化水素と、
第1添加剤としての最大分子量Mが282以下のアルコ
ールまたはカルボン酸との組合せが考えられる。しか
し、この組成によるとベース油および第1添加剤の蒸発
速度Vがいずれも速いため、設備停止時の油膜切れが発
生しやすいという問題がある。
ス油としての最大分子量Mが282未満の炭化水素と、
第1添加剤としての最大分子量Mが282以下のアルコ
ールまたはカルボン酸との組合せが考えられる。しか
し、この組成によるとベース油および第1添加剤の蒸発
速度Vがいずれも速いため、設備停止時の油膜切れが発
生しやすいという問題がある。
【0032】図4に示すように、鉱物油に最大分子量M
が880の油脂を添加した従来の鋼材用加工油(従来
例)と、最大分子量Mが212のパラフィン系炭化水素
に最大分子量Mが282以下のアルコール5重量%を加
えた加工油(比較例1)について、油膜切れを比較し
た。油膜切れ発生の有無の評価は、試験片に従来例およ
び比較例1の加工油を塗布し、塗布直後、24時間後お
よび72時間後の最大摩擦係数をバウデン試験法により
測定することとした。従来例では72時間後にも摩擦係
数は0.2程度と低いが、比較例1では24時間後には
摩擦係数が0.5程度にまで上昇している。このことか
ら、比較例1では24時間以下の時間で油膜が切れてい
ることが判る。
が880の油脂を添加した従来の鋼材用加工油(従来
例)と、最大分子量Mが212のパラフィン系炭化水素
に最大分子量Mが282以下のアルコール5重量%を加
えた加工油(比較例1)について、油膜切れを比較し
た。油膜切れ発生の有無の評価は、試験片に従来例およ
び比較例1の加工油を塗布し、塗布直後、24時間後お
よび72時間後の最大摩擦係数をバウデン試験法により
測定することとした。従来例では72時間後にも摩擦係
数は0.2程度と低いが、比較例1では24時間後には
摩擦係数が0.5程度にまで上昇している。このことか
ら、比較例1では24時間以下の時間で油膜が切れてい
ることが判る。
【0033】そこで、比較例1の組成に最大分子量Mが
299のエステルを0.25重量%加えた加工油(実施
例1)、同じエステルを0.5重量%加えた加工油(実
施例2)および同じエステルを1.0重量%加えた加工
油(実施例3)について同様に摩擦係数の経時変化を観
察し、従来例の示した最も高い摩擦係数である24時間
後の摩擦係数0.25と比較した。その結果、図5に示
すように、最大分子量M299のエステルを0.25重
量%以上加えることにより、72時間後にも摩擦係数が
0.25以下に保たれることが判った。これは、エステ
ルの最大分子量Mが299であり、常温72時間後に完
全に蒸発する最大分子量Mである282よりも大きいた
めと考えられる。したがって、最大分子量Mが282以
上378以下のエステルを1重量%以上添加することに
より、脱脂性が良好でありかつ油膜切れを防止できる加
工油が得られる。エステルの添加量が多くなると脱脂性
が低下するため、エステルの添加量は10重量%以上と
することが好ましく、5重量%以下とすることがさらに
好ましい。
299のエステルを0.25重量%加えた加工油(実施
例1)、同じエステルを0.5重量%加えた加工油(実
施例2)および同じエステルを1.0重量%加えた加工
油(実施例3)について同様に摩擦係数の経時変化を観
察し、従来例の示した最も高い摩擦係数である24時間
後の摩擦係数0.25と比較した。その結果、図5に示
すように、最大分子量M299のエステルを0.25重
量%以上加えることにより、72時間後にも摩擦係数が
0.25以下に保たれることが判った。これは、エステ
ルの最大分子量Mが299であり、常温72時間後に完
全に蒸発する最大分子量Mである282よりも大きいた
めと考えられる。したがって、最大分子量Mが282以
上378以下のエステルを1重量%以上添加することに
より、脱脂性が良好でありかつ油膜切れを防止できる加
工油が得られる。エステルの添加量が多くなると脱脂性
が低下するため、エステルの添加量は10重量%以上と
することが好ましく、5重量%以下とすることがさらに
好ましい。
【0034】なお、最大分子量Mが282未満のアルコ
ールとしては、ラウリルアルコール(分子量186)、
イソトリデシルアルコール(分子量200)、セチルア
ルコール(分子量242)およびこれらの混合物などが
使用可能である。また、最大分子量Mが282未満のア
ルコールとしては、例えばラウリン酸(分子量200)
が使用可能である。さらに、分子量282以上378以
下のエステルとしては、オレイン酸モノグリセライド
(分子量344)、モノオレイン酸グリセリン(分子量
330)、セバチン酸ジブチル(分子量314)および
これらの混合物などが使用可能である。
ールとしては、ラウリルアルコール(分子量186)、
イソトリデシルアルコール(分子量200)、セチルア
ルコール(分子量242)およびこれらの混合物などが
使用可能である。また、最大分子量Mが282未満のア
ルコールとしては、例えばラウリン酸(分子量200)
が使用可能である。さらに、分子量282以上378以
下のエステルとしては、オレイン酸モノグリセライド
(分子量344)、モノオレイン酸グリセリン(分子量
330)、セバチン酸ジブチル(分子量314)および
これらの混合物などが使用可能である。
【0035】上記〔1〕〜〔4〕の結果から、本発明の
加工油として可能な組成を表2に示す。表2中の数字
は、各物質の最大分子量Mを示す。
加工油として可能な組成を表2に示す。表2中の数字
は、各物質の最大分子量Mを示す。
【0036】
【表2】
【0037】組成1は最も加工性を重視した加工油であ
り、組成2および組成3は脱脂性をより重視した加工油
である。大気加熱脱脂が可能であればそれほど高い脱脂
性を要求されない場合には、組成1の加工油を使用する
ことが原材料費低減のためには有利である。これは、最
大分子量Mが282以上378以下の炭化水素からなる
ベース油としては、合成炭化水素に替えて、この合成炭
化水素よりも一般に安価な鉱物油を用いることができる
ためである。
り、組成2および組成3は脱脂性をより重視した加工油
である。大気加熱脱脂が可能であればそれほど高い脱脂
性を要求されない場合には、組成1の加工油を使用する
ことが原材料費低減のためには有利である。これは、最
大分子量Mが282以上378以下の炭化水素からなる
ベース油としては、合成炭化水素に替えて、この合成炭
化水素よりも一般に安価な鉱物油を用いることができる
ためである。
【0038】従来の鋼材用加工油においては、加工度の
高いプレス加工を行う場合には高粘度の加工油を用いて
いた。このような加工油では、粘度の高いベース油とし
て一般に平均分子量の高い炭化水素が用いられていた。
本発明者は、鋼材用加工油とは異なり、アルミ材の加工
油としては、平均分子量183程度の低粘度なベース油
を用いた場合にも、3重量%以上のアルコールを添加す
ることにより従来の高粘度の加工油と同等の加工性が得
られることを見出した。したがって、平均分子量の制約
を受けることなく、完全蒸発温度Tに関係する最大分子
量Mに基づいてベース油を選択すればよい。
高いプレス加工を行う場合には高粘度の加工油を用いて
いた。このような加工油では、粘度の高いベース油とし
て一般に平均分子量の高い炭化水素が用いられていた。
本発明者は、鋼材用加工油とは異なり、アルミ材の加工
油としては、平均分子量183程度の低粘度なベース油
を用いた場合にも、3重量%以上のアルコールを添加す
ることにより従来の高粘度の加工油と同等の加工性が得
られることを見出した。したがって、平均分子量の制約
を受けることなく、完全蒸発温度Tに関係する最大分子
量Mに基づいてベース油を選択すればよい。
【0039】なお、本発明の加工油には、表2に示した
材料以外に完全蒸発温度200℃以下の材料を添加する
ことができる。次に、上記の検討により得られた本発明
の加工油を脱脂する方法について説明する。図5は、表
2に示す本発明の加工油を用いてアルミ材のプレス加工
を行った後に行う大気加熱脱脂工程の一例を示す。
材料以外に完全蒸発温度200℃以下の材料を添加する
ことができる。次に、上記の検討により得られた本発明
の加工油を脱脂する方法について説明する。図5は、表
2に示す本発明の加工油を用いてアルミ材のプレス加工
を行った後に行う大気加熱脱脂工程の一例を示す。
【0040】大気圧の蒸発室20において、プレス加工
されたアルミ材である被脱脂材21を熱風により200
℃以下の温度まで加熱し、加工油を蒸発させる。蒸発し
た加工油はアフタバーナ22により燃焼され、外部へ排
出される。加工油の燃焼により生じた熱の一部は蒸発室
20の温度制御に再利用する。また、蒸発させた加工油
を回収して再利用してもよい。
されたアルミ材である被脱脂材21を熱風により200
℃以下の温度まで加熱し、加工油を蒸発させる。蒸発し
た加工油はアフタバーナ22により燃焼され、外部へ排
出される。加工油の燃焼により生じた熱の一部は蒸発室
20の温度制御に再利用する。また、蒸発させた加工油
を回収して再利用してもよい。
【0041】図5に示す大気加熱脱脂工程によると、脱
脂工程を大気圧下で行うため真空加熱設備を必要としな
いので、脱脂にかかる総コストを低減することができ
る。また、常温における蒸発速度が所定値以下のベース
油または添加剤を用いることにより、設備停止時の油膜
切れを防止することができる。さらに、従来の水溶性洗
浄とは異なり廃液が発生しないので環境に及ぼす影響が
少ないという利点がある。
脂工程を大気圧下で行うため真空加熱設備を必要としな
いので、脱脂にかかる総コストを低減することができ
る。また、常温における蒸発速度が所定値以下のベース
油または添加剤を用いることにより、設備停止時の油膜
切れを防止することができる。さらに、従来の水溶性洗
浄とは異なり廃液が発生しないので環境に及ぼす影響が
少ないという利点がある。
【図1】最大分子量Mと完全蒸発温度Tとの関係を示す
特性図である。
特性図である。
【図2】添加剤濃度と加工性との関係を示す特性図であ
る。
る。
【図3】最大分子量Mと蒸発速度Vとの関係を示す特性
図である。
図である。
【図4】添加剤濃度と摩擦係数の経時変化との関係を示
す特性図である。
す特性図である。
【図5】本発明の加工油を用いた大気加熱脱脂工程の一
例を示す模式図である。
例を示す模式図である。
【図6】従来の脱脂工程を示す模式図である。
20 蒸発室 21 被脱脂材 22 アフタバーナ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松下 晴彦 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 日本電 装株式会社内
Claims (5)
- 【請求項1】 最大分子量282以上378以下の炭化
水素からなるベース油と、最大分子量378以下のアル
コールまたはカルボン酸からなる添加剤3重量%以上と
からなることを特徴とするアルミ材の加工油。 - 【請求項2】 最大分子量282未満の炭化水素からな
るベース油と、最大分子量282以上378以下のアル
コールまたはカルボン酸からなる添加剤3重量%以上と
からなることを特徴とするアルミ材の加工油。 - 【請求項3】 前記添加剤の含有量は3〜20重量%で
あることを特徴とする請求項1または2記載のアルミ材
の加工油。 - 【請求項4】 最大分子量282未満の炭化水素からな
るベース油と、最大分子量282未満のアルコールまた
はカルボン酸からなる第1添加剤3重量%以上と、最大
分子量282以上378以下のエステルからなる第2添
加剤0.25重量%以上とからなることを特徴とするア
ルミ材の加工油。 - 【請求項5】 前記第1添加剤の含有量は3〜20重量
%であり、前記第2添加剤の含有量は0.25〜10重
量%であることを特徴とする請求項4記載のアルミ材の
加工油。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34120895A JPH09176675A (ja) | 1995-12-27 | 1995-12-27 | アルミ材の加工油 |
US08/777,185 US6004911A (en) | 1995-12-27 | 1996-12-27 | Processing oil suitable for aluminum materials and removable via heating |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34120895A JPH09176675A (ja) | 1995-12-27 | 1995-12-27 | アルミ材の加工油 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09176675A true JPH09176675A (ja) | 1997-07-08 |
Family
ID=18344220
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP34120895A Pending JPH09176675A (ja) | 1995-12-27 | 1995-12-27 | アルミ材の加工油 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH09176675A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006225595A (ja) * | 2005-02-21 | 2006-08-31 | Nippon Oil Corp | 潤滑油組成物 |
US20120032543A1 (en) * | 2009-01-26 | 2012-02-09 | Baker Hughes Incorporated | Oil composition comprising functionalized nanoparticles |
JP2014181286A (ja) * | 2013-03-19 | 2014-09-29 | Jx Nippon Oil & Energy Corp | 塑性加工用潤滑油組成物 |
-
1995
- 1995-12-27 JP JP34120895A patent/JPH09176675A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006225595A (ja) * | 2005-02-21 | 2006-08-31 | Nippon Oil Corp | 潤滑油組成物 |
US20120032543A1 (en) * | 2009-01-26 | 2012-02-09 | Baker Hughes Incorporated | Oil composition comprising functionalized nanoparticles |
JP2014181286A (ja) * | 2013-03-19 | 2014-09-29 | Jx Nippon Oil & Energy Corp | 塑性加工用潤滑油組成物 |
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A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20040525 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |