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JPH0830241B2 - 加工性及び靭性に優れ、かつ焼入性の良好な鋼板と、その製造方法 - Google Patents

加工性及び靭性に優れ、かつ焼入性の良好な鋼板と、その製造方法

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Publication number
JPH0830241B2
JPH0830241B2 JP62178884A JP17888487A JPH0830241B2 JP H0830241 B2 JPH0830241 B2 JP H0830241B2 JP 62178884 A JP62178884 A JP 62178884A JP 17888487 A JP17888487 A JP 17888487A JP H0830241 B2 JPH0830241 B2 JP H0830241B2
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JP
Japan
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less
graphite
annealing
toughness
steel
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JP62178884A
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Inventor
正彦 森田
耕一 橋口
Original Assignee
川崎製鉄株式会社
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Filing date
Publication date
Application filed by 川崎製鉄株式会社 filed Critical 川崎製鉄株式会社
Priority to JP62178884A priority Critical patent/JPH0830241B2/ja
Publication of JPS6425946A publication Critical patent/JPS6425946A/ja
Publication of JPH0830241B2 publication Critical patent/JPH0830241B2/ja
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  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
  • Heat Treatment Of Strip Materials And Filament Materials (AREA)
  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 高炭素鋼のミクロ組織を、フェライト相とグラファイ
ト相を主体として成るものとすることによって、冷間成
形での加工性と靱性、さらに焼入性を併せて改善した鋼
板ならびにその製造方法に関連して、特に耕耘機爪用素
材として適合する材料を新規に開拓したものである。
(従来の技術) 耕耘機爪はその用途からも明らかなように、土砂や泥
土、粘土等に対する耐摩耗性が要求される。そのため現
在のところ、素材の多くは、耐摩耗性に優れるばね鋼
(JIS規格SUP6,C:0.55〜0.65%、Si:1.50〜1.80%、Mn:
0.70〜1.0%)が用いられている。
これら耕転機爪用素材となるばね鋼の製造方法はま
ず、電気炉もしくは転炉などによって上記のような成分
範囲に溶解精練した鋼から鋳造もしくは分塊圧延によっ
てブルームあるいはビレットとした後、加熱炉で加熱後
平鋼用熱間圧延機によって厚さ約6〜12mm、幅約50〜10
0mm、長さ6〜10mのフラットバーに仕上げる。
次に、耕耘機爪は上記のフラットバーを長さ約200〜2
50mmの小片に切断した後、一般的には、加熱して熱間成
形加工工程により所定の耕耘機爪の形状に加工し、続い
て耐摩耗性を付与させるためオーステナイト域まで再加
熱後焼入れした後、所定の硬度(爪基部:HRC45〜50、爪
刃部:HRC55〜60)及び所定の衝撃特性となるように、低
温焼戻し処理を施すのを通例としていたのである。
(発明が解決しようとする問題点) ところで近年、耕耘機爪の製造業界は製造コストのよ
り一層の低減を図るために、製造設備の連続化による省
エネルギー、省力などを指向するすう勢が強まりつつあ
る。
このような連続製造設備の一例として、従来熱間成形
によっていた一部の製造工程を、冷間打抜き成形に代替
することが有力が手段の一つとして考えられている。
このような冷間打抜き成形工程を採用する場合、爪素
材に要求される要件としては、次の2点が重要である。
第一に爪の成形加工工程では非常に加工し易く、一方
焼入工程においては焼入性が高く、しかも焼入後の硬度
も大きい材料であること。
第二には製造設備に高生産性を維持させるには製造ラ
イン入側における材料の供給を途切れることのないよう
にする必要があり、そのためには素材の長さが十分に長
く、しかも材料交換の際に材料供給装置への装填を製造
設備を停止することなくして容易に行い得る材料形態で
あることである。しかしながら、現状をまず第一の点か
らみてみると、現在用いられているSUP 6製フラットバ
ーは、熱間圧延後空冷されたままの状態で仕上げられる
ので引張強度が約90〜110kgf/mm2のように高く、この強
度のままでは冷間打抜き加工に不向きで無理にこれを行
うとすると工具の寿命が著しく短くなる上に打抜き後の
寸法精度を維持することもでき難いなどの問題が生じ
る。
第二の点についてみると、現行フラットバーの長さは
最大でも10mが限度であって、素材の供給を連続化する
ためには余りにも短か過ぎ、またかりに長いフラットバ
ーにしたとしてもこのような長尺物の材料に見合う供給
装置を作るには設備スペースおよび製作費用の点で不利
である。
このように、素材である材料の材質的、形態的制約に
よって、耕耘機爪の製造工程をより効率的かつ連続的な
ものとなし得ないのが現状である。
耕耘機爪製造工程の効率化阻害原因が素材に起因する
ものであるとの認識にたち、上記のような問題点を解消
した素材を与え、また、その製造方法を提供することが
この発明の目的であって、以下の観点に立脚している。
まず上記第一の要件を満たすために、 (1)素材の材質特性として、成形加工に際しては軟質
で冷間成形が容易で、しかも熱処理に際しては良好な焼
入性を有し、かつ熱処理後の耕耘機の爪製品の耐摩耗
性、衝撃特性に優れた特性を呈すること。
(2)このような材質特性を達成するためにミクロ組織
をフェライト相中に微細なグラファイト粒が均一に分散
する組織(以下フェライト・微細グラファイト組織と呼
ぶ)に調整すること。
(3)そしてこのようなミクロ組織を得るために必要な
製造条件として、鋼の化学成分の調整と、熱間圧延時の
圧延条件の調整と、焼鈍時の焼鈍条件の調整を行うこと
が肝要である。
ここでちなみに伝い添えるとフェライト相とグラファ
イト相を主体とする組織とした場合に冷間加工性が改善
されることは、例えば、特開昭60−128245号公報にて開
示提案されているが、この提案はこの発明に係るような
焼入処理に供する分野の材料を対象としたものでなくし
てむしろグラファイト相による制振性を利用する、構造
用の材料を対象としている。
制振性の観点から言うと組織中に存在するグラファイ
ト相の粒子径は大きいことが必要となるので、粗大グラ
ファイト粒をもつ組織が望ましい。これに反し、本発明
が対象とする熱処理用の分野においては、このような粗
大グラファイト粒をもつ組織は適さないのである。この
理由は次のとおりである。
一般に鋼をオーステナイト化温度まで加熱した時、鋼
中のCのオーステナイト相への溶解性は、Cが通常のセ
メンタイトの状態になっている場合に比べてグラファイ
トとなっている状態の場合の方が劣ることが知られてい
る。そしてグラファイト粒が粗大であればある程この傾
向が強くなる。そのためこのような粗大なグラファイト
化組織の場合にはオーステナイト化の際にグラファイト
を十分に時間をかけて溶解して置かないと所定の焼入硬
度を得ることができないので熱処理用鋼として使用出来
ないのである。
したがって、熱処理を施す用途に対しては上掲の特開
昭60−128245号公報のような粗大なるフェライト・グラ
ファイト組織の材料は適さないわけである。上記のほか
にも、フェライト・グラファイト組織であって冷間成形
性と焼入性とを同時に満たすような材料ないしはそのよ
うな材料の製造方法に関する提案について、先行技術は
見当たらない。
発明者らはフェライト・グラファイト化組織とした場
合、特に組織中のグラファイト粒を極めて微細にかつ均
一に分散させたフェライト・微細グラファイト組織とす
るとによって、焼入性の劣化を生じることなく、しかも
より冷間成形性に優れた材料が得られることを知見し、
この知見に基づいてこの発明を構成したものである。
次に前記第二の要件を満たすためには、素材の長さが
現行で用いられているフェライトバーよりもはるかに長
くすることができる熱延鋼帯を用意することとし、この
熱延鋼帯を板幅方向に分割して現行のフラットバーと同
じ程度の幅のスリットコイルとなすことにより、素材を
コンパクトな形態にして運搬並びに耕耘機爪の製造設備
への材料供給を容易ならしめることも必要である。
(問題点を解決するための手段) この発明の上掲した目的は、次の事項を骨子とする構
成によって成就される。
(1)基本成分として、 C:0.40〜0.80wt%(以下単に%で示す) Si:0.2〜2.00% Mn:0.50超〜1.50% Al:0.001〜0.150% P :0.018%以下 S :0.010%以下 N :0.0050%以下 で、残部Feおよび不可避的不純物からなり、フェライト
相とグラファイト相を主体としたグラファイト化比率が
40%以上かつグラファイト平均粒子径が10μm以下の組
織を有し、TS≦60kgf/mm2の軟質な材質を有しているこ
とを特徴とする加工性および靱性に優れ、かつ焼入性の
良好な鋼板(第1発明)。
(2)上記基本成分に加え、選択成分として、 Ti:0.10%以下、 Nb:0.05%以下、 Zr:0.050%以下、 B :0.01%以下 の内1種または2種以上をさらに含有するほかは上記
(1)と同様の鋼板(第2発明)。
C :0.40〜0.80%、 Si:0.2〜2.00%、 Mn:0.50超〜1.50%、 Al:0.001〜0.150%、 P :0.018%以下、 S :0.010%以下、 N :0.0050%以下 を基本組成として含有する鋼を、 仕上げ圧延温度800℃以下500℃以上の範囲で熱間圧延
し、コイルに巻取り熱延鋼帯となした後、 この熱延鋼帯を500℃〜750℃の温度範囲で1〜200時
間焼鈍することからなり、フェライト相とグラファイト
相を主体とするグラファイト化比率が50%以上かつグラ
ファイト平均粒子径が10μm以下の組織にて、TS≦60kg
f/mm2の軟質な材質を発現させることを特徴とする加工
性、靱性に優れ焼入性の良好な鋼板の製造方法(第3発
明)。
(作用) この発明においては、上記のように高C,Si添加を行
い、加えてP,S,Nを低減した鋼を用いて、フェライト中
にグラファイト微細粒を均一に分散させるために、熱間
仕上げ圧延温度を800℃以下500℃以上の低温として圧延
後の材料中の転位密度を増加させると共に微細変態組織
を増大させ、これによってフェライト中に不安定化せし
めたセメンタイトを生成させ、次に、500〜750℃の低温
で焼鈍することにより、上記不安定化したセメンタイト
から効率よくグラファイトの核生成と成長を起こさせる
点を要点としている。
この発明における数値限定の理由は次のとおりであ
る。
化学成分について: Cは焼入成形を確保する上で不可欠の元素であり、耕
耘機爪の耐摩耗性の点から0.40%以上必要である。一方
C量の上限を0.80%とする理由は、耐衝撃特性の観点か
ら定めた。すなわち、耕耘機爪は耕耘作業中の回転によ
って爪の基部に大きな衝撃力がかかるのでこれに対耐衝
撃特性が必要である。
C量が0.80%を超えると焼入性および焼入後の硬度に
対しての向上効果はほぼ飽和し、耐衝撃特性のみ劣化す
るので好ましくないためである。
Siは次の2つの理由によって不可欠の元素である。
まず第一には、固溶強化によって鋼素地を強化し、C
による焼入強化だけでは達成できない範囲の高強度を得
易く、これにより耐摩耗性の向上を図るためである。
また第二には良好な成形加工性を得るためであって、
上記したように中・高炭素鋼は元来熱延ままのミクロ組
織がフェライトとパーライト、もしくはこれらにベイナ
イトを含む組織であって通常は非常に高強度でそのため
成形加工性は著しく悪いのに対し、これを改善するため
にこの発明ではミクロ組織を焼鈍によってフェライトと
グラファイトを主体とする組織に変えるわけであって、
Siはこの焼鈍の際にグラファイト化に先行して起こるセ
メンタイトの球状化および続いて起こるグラファイト化
を促進する作用があるので、成形加工性の向上にも寄与
する。
以上の2つの効果をあわせ得るためにはSiは0.2%以
上を必要とし、一方上限を2.0%とする理由は製造コス
トの観点から定めた。即ち、2.0%を超えて添加しても
耐摩耗性および成形加工性の面での改善効果は飽和し、
製造コストが増加するのみだからである。
Mnは焼入性を向上させる元素であり、特に焼入処理工
程での臨界冷却速度を下げる効果が大きいので、焼入歪
防止等の観点から焼入時の冷却速度を遅くすることが可
能となり、このような効果を得るためには少なくとも0.
50%超とすることが必要な一方、1.5%を超えると、鋼
を鋳造したときにその後の冷却割れ感受性が大きくなっ
て表面欠陥が発生し易くなるから0.50超〜1.5%の範囲
に限定する。
Alは鋼中Nに作用し、AlNとして固定するので、鋼中
Nの悪影響を除く作用を持つ元素であり、この作用を利
用するためには0.001%以上必要でとくに0.005%以上含
有することが望ましい。しかし、0.150%をこえると焼
入性に悪影響がでてくるので、0.150%を上限とした。
Pは一般に鋼の変態特性に及ぼす影響ならびに偏析の
点から焼入性および成形加工性のいずれに対しても悪影
響を及ぼす元素として知られているとおりで、この発明
においてもまず第一にはこれと同様の理由で好ましくな
い元素である。第二にPはセメンタイト中に微量溶解し
てこれを安定化する作用があり、焼鈍の際にフェライト
とグラファイトを主体とする組織が得難くなって成形加
工性が阻害されることからも制限されねばならない。こ
のようなPの悪影響を避けるためには0.018%以下とす
る必要がある。
Sは非金属介在物を作り易く、これによって成形加工
性を悪化させるとともに、焼鈍の際にセメンタイトを安
定化して球状化及びグラファイト化を阻害する不利があ
る。S量の上限を0.010%以下とした理由はこれを超え
ると前記悪影響が著しく大きくなるためである。
Nはセメンタイト中に溶解しこれを安定化さす作用が
強く、焼鈍の際にフェライトとグラファイトを主体とす
る組織が得難くなるので好ましくない元素である。N量
が0.0050%をこえると上記悪影響が著しく大きくなるの
で上限とした。
以上のべたところのほかTi、Nb及びZrはいずれも、窒
化物形成傾向の強い元素であるから有害な固溶Nを窒化
物として固定し、その悪影響を減ずること、およびこれ
らの窒化物が焼鈍に際してセメンタイトの球状化および
グラファイト化の核として作用し軟化を促進すること、
さらには組織微細化作用によって最終製品に仕上げたと
きの衝撃特性を向上することなどの有益な作用を呈し、
選択成分として適正量使用した場合には品質を高める一
層の効果が得られる。
この作用を利用するためには、Tiの場合0.02%以上、
Nb及びZrの場合0.01%以上の添加が何れも必要である。
しかし、どの元素の場合でも0.10%を超えて添加したと
してもその効果は飽和し経済的でないので、上限を0.1
%とした。
BもまたTi,Nb及びZrの場合と同様に固溶Nを固定す
る作用があること、ならびに適正量含有する場合は焼入
性を向上する作用も有するので選択成分として使用すれ
ば製品の品質を高める効果が得られ、このような効果を
得るためには、0.0005%以上必要であるが、0.0100%以
上では効果が飽和し経済的でないので、上限を0.010%
とした。ミクロ組織について この発明は冷間成形性と焼入性を同時に満足させるた
めに、フェライト相とグラファイト相を主体とした組織
に限定するがこの理由を発明者らの研究結果に基づいて
説明する。
第1図はこの発明に従って成分範囲内の組成を有する
8mm厚さの熱延鋼帯より採取した小試片を用いて種々の
方法により、組織中のグラファイト化比率およびグラフ
ァイト粒の大きさを変化させ、残りのCについてはいず
れも球状化したセメンタイトとした組織に調整して引張
り特性とシャルピー衝撃特性および焼入性を調査した結
果である。また第2図はグラファイト粒子が異なった場
合の焼入性の違いを示すものである。焼入性の評価はグ
ラファイト化率80%以上のものであって平均グラファイ
ト粒子径が種々異なる材料を用いて860℃で加熱保持時
間を種々変更した後50℃/sの冷却速度で焼入れた場合の
断面平均硬度で示してある。
第1図および第2図の結果に従って、 (1)引張り特性、衝撃特性はグラファイト化比率に依
存し、40%以上の場合には引張り強度が低く、伸び特
性、衝撃特性が良好となる。
(2)一方、焼入性に関してはグラファイトの平均粒径
に依存し、10μmを超える大きいグラファイト粒の場合
オーステナイト化に要する加熱時間は著しく長くなる。
(3)このようにグラファイト化比率を高め、かつその
平均粒径を10μm以下に調整した微細グラファイト組織
とすることによって、冷間成形性と焼入性とを同時に満
たす特性を持つ。
との知見が得られた。
熱延条件について この発明では熱間圧延条件として熱延仕上げ温度を80
0℃以下500℃の範囲に限定するものであるが、この理由
は焼鈍工程において特別な焼鈍条件を採用することなく
極めて容易にセメンタイトの球状化ならびにグラファイ
ト化を進行させ、かつ均一性の優れた組織を得る目的で
行うものである。
以下に発明者らの調査結果をもとに上記熱延仕上げ温
度の効果についてのべる。
第3図は化学組成がC0.6%,Si1.64%,Mn0.86%,P0.01
5%,S0.007%,Al0.004%,N0.048%残部実質的にFeに成
る鋼を熱延仕上げ温度を900℃から600℃の範囲で変更し
た熱延鋼帯を、720℃で40時間焼鈍した後の引張り特性
および衝撃特性を示すものである。
これから明らかなように、熱延仕上げ温度が800℃を
超えるものでは強度が高く、伸び特性および衝撃特性が
悪いのに対し、熱延仕上げ温度が800℃を境にして低い
もの程強度の低下および延性、靱性の向上が著しいこと
がわかる。
このように熱延仕上げ温度を低下させることにより、
その後の焼鈍によって軟質化、および延性、靱性の改善
がもたらされる理由は次の機構による。
まず第一の機構としては800℃以下の圧延温度領域で
はγ粒の再結晶が非常に遅滞するので圧延後の変態組織
が微細化する。このように微細化された組織を次に焼鈍
するとセメンタイトの球状化ならびにグラファイト化の
ための核生成サイトが増加し、軟化が促進されるととも
に、生成した球状化セメンタイト粒およびグラファイト
粒が均一かつ微細分散した組織が得られるので延性およ
び靱性が向上する。
また、このような微細均一分散した球状化セメンタイ
ト粒およびグラファイト粒は、焼入処理の際の加熱時に
オーステナイト相に容易に溶解するので焼入性が向上す
る効果も有する。
第二の機構として、低温圧延によるγ粒の再結晶遅滞
によって圧延歪が変態組織中に導入され素地フェライト
相の転位密度の増加とセメンタイトに対する内部応力の
増大をもたらす。熱延仕上げ温度がさらに低くなり一部
γ+α領域で圧延されるような場合にはこの効果はさら
に増大する。この結果熱延後の変態組織中のセメンタイ
トは非常に不安定になるとともに転位がセメンタイト球
状化およびグラファイト化の核生成サイトとなるので、
焼鈍によって容易に球状化ならびにグラファイト化が起
り軟化が著しく促進される。また、熱延仕上げ温度の低
下は、後述するように黒皮スケール厚さが薄くなるの
で、後工程の焼鈍を黒皮スケールが付着したままの状態
で行っても表面脱炭が生じ難くなるという利点も有す
る。特に、黒皮スケールの厚さは熱延仕上げ温度が720
℃未満の領域で圧延を終了した場合に著しく薄くなるの
で、このような圧延条件の採択は表面脱炭防止の面で有
効となる。
この発明にあっては以上の知見に基づき熱延仕上げ温
度の上限を800℃に規定するものである。ところで、こ
のような熱延仕上げ温度の効果は、500℃未満で飽和す
るばかりでなく圧延荷重が大きくなり、圧延ロールの損
耗が大きくなるのでこれらの制約から500℃を下限とし
た。
焼鈍条件について、 焼鈍条件の範囲は軟質化および成形加工性に最も有利
な焼鈍組織を得ること、および焼鈍コストが安いことの
2つの観点から選択した。この発明が規定する焼鈍温度
範囲の下限は500℃未満での焼鈍では軟化の進行が著し
く遅くなり、経済的でないためである。また、上限は75
0℃を超えると焼鈍中にオーステナイト相となる割合が
大きくなり、この部分が焼鈍後にパーライト相として残
り、軟質化と組織の均一性を阻害する原因となり好まし
くないためである。
焼鈍時間としては約1〜200時間程度が適当である
が、焼鈍温度が低い程長時間を必要とする。なお、材質
的にみた場合焼鈍温度の最適な範囲は650℃〜A1変態点
の範囲であり、特にA1変態点直下の温度を選択すれば短
時間の焼鈍で良好な材質が得られる。また、焼鈍サイク
ルとして例えばいったんα+γ2相温度領域となる温度
まで加熱した後、非常に遅い冷却速度でA1変態点以下の
温度域まで徐冷するとか、あるいはA1変態点以下の温度
域で保持するとか、の方法を採用しても焼鈍時間の短縮
および材質の改善が図れる。
以下、この発明の鋼を製造するに際して、黒皮スケー
ルが付着したままの状態で焼鈍した場合、焼鈍中に鋼表
層部のCと、スケール組成中のFeO,Fe3O4,Fe2O3などと
が反応し、鋼板の表層に脱炭層が生じることがある。こ
のような脱炭層の深さがかなりに大きいと焼入後の表面
硬度が低下して耐摩耗性を悪くする。これを避けるため
には黒皮スケールを酸洗装置やメカニカルデスケーリン
グ装置を用いて除去した後、焼鈍すれば問題はなくなる
が、製造コストの点で不利となる。この点を解消するた
めには黒皮スケールのまま焼鈍しても表面脱炭が生じな
いような対策を講じる必要があり、その手段として次の
3点が挙げられる。
まず第一には、前記表面脱炭反応は焼鈍温度が高温に
なる程活発になり、特にα+γ領域になると反応速度が
著しく大きくなるので黒皮スケールのまま焼鈍する場合
はA1点以下500℃の範囲の焼鈍温度を採用することが望
ましい。
第二は焼鈍雰囲気ガス中にH2ガスが含まれている場合
とか、露点が高い場合には脱炭反応が促進されるので、
N2ガスやArガス等の不活性ガスを用いるのが良い。
第三は表面脱炭層の深さは黒皮スケールの厚さに比例
して大きくなるので、表面脱炭を少なくするには、前記
したように、熱延時の圧延仕上げ温度の低下あるいは巻
取り温度の低下等の対策を予め実施し、黒皮スケールの
厚さを十分に小さくしておくことが有効となる。
以上述べたように、焼鈍条件および熱延条件の面から
対策を講じることによって黒皮スケールの脱スケール工
程を省略しても前記表面脱炭の問題を回避することが可
能となるものである。
焼鈍後の熱延鋼帯はスリッター等の幅分割装置を用い
て所定の幅に分割した後スリットコイルとして巻取っ
て、耕耘機爪用素材として提供できるが、この幅分割す
る際にもこの発明による板は軟質で加工性に優れるた
め、極めて容易に剪断が可能であるのはもちろん、耕耘
機爪の加工のための冷間打抜きの加工性にもすぐれてい
るので従来のような、第4図に示すフラットバー1を剪
断した小片2の加熱を経た熱間ロール成形A,B,Cのよう
な手間のかかる加工を必要としない。
(実施例) 表1に供試鋼化学成分を示し、表2にはそれらについ
ての熱延及びその後の焼鈍条件とそれらに依存した成績
をまとめて示す。
(発明の効果) この発明によれば、耕耘機爪を代表例として、従来フ
ラットバーからの剪断小片に加熱を施した上で熱間ロー
ル成形の如き鍛造加工を必要とした耐摩耗性部品の熱間
加工に替わるより簡便な冷間加工を可能ならしめてしか
も、成形後の熱処理による焼入性の要請に順応すること
ができるのみならず、上記の冷間加工設備の稼働上も有
利な素材供給の円滑な安定化にも有用である。またこの
発明は耕耘機爪ばかりでなく、刃物、ばねその他処理用
途の各種機械部品の分野に広く使用でき大きな効果が得
られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、グラファイト比率が、機械的性質及び焼入性
に及ぼす影響を示すグラフであり、 第2図は、グラファイト粒の大きさを焼入性におよぼす
影響を示すグラフであり、 第3図は、熱間仕上温度と機械的性質の関係グラフ、 第4図は、従来の耕耘機爪の加工手順の説明図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C :0.40〜0.80wt%、 Si:0.20〜2.00wt%、 Mn:0.50超〜1.50wt%、 Al:0.001〜0.150wt%、 P :0.018wt%以下、 S :0.010wt%以下、 N :0.0050wt%以下、 で、残部Feおよび不可避的不純物からなり、フェライト
    相とグラファイト相を主体とした、グラファイト化比率
    が40%以上かつグラファイト平均粒子径が10μm以下の
    組織を有し、TS≦60kgf/mm2の軟質な材質を有している
    ことを特徴とする、加工性および靱性に優れ、かつ焼入
    性の良好な鋼板。
  2. 【請求項2】C :0.40〜0.80wt%、 Si:0.2〜2.00wt%、 Mn:0.50超〜1.50wt%、 Al:0.001〜0.150wt%、 P :0.018wt%以下、 S :0.010wt%以下、 N :0.0050wt%以下、 で、さらに Ti:0.10wt%以下、 Nb:0.05wt%以下、 Zr:0.050wt%以下及び B :0.01wt%以下 のうち1種または2種以上 を含んで、残部Feおよび不可避的不純物からなり、フェ
    ライト相とグラファイト相を主体とした、グラファイト
    化比率が40%以上かつグラファイト平均粒子径が10μm
    以下の組織を有し、TS≦60kgf/mm2の軟質な材質を有し
    ていることを特徴とする、加工性および靱性に優れ、か
    つ焼入性の良好な鋼板。
  3. 【請求項3】C :0.40〜0.80wt%、 Si:0.2〜2.00wt%、 Mn:0.50超〜1.50wt%、 Al:0.001〜0.150wt%、 P :0.018wt%以下、 S :0.010wt%以下、 N :0.0050wt%以下 を基本成分として含有する鋼を、 仕上げ圧延温度800℃以下500℃以上の範囲で熱間圧延
    し、コイルに巻取り熱延鋼帯となした後、 この熱延鋼帯を500℃〜750℃の温度範囲で1〜200時間
    焼鈍することから成り、 フェライト相とグラファイト相を主体とする、グラファ
    イト化比率が40%以上かつグラファイト平均粒子径が10
    μm以下の組織にて、TS≦60kgf/mm2の軟質な材質を発
    現させることを特徴とする加工性、靱性に優れかつ焼入
    性の良好な鋼板の製造方法。
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