JPH06240409A - 耐火性に優れたボルトおよびナット用鋼 - Google Patents
耐火性に優れたボルトおよびナット用鋼Info
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- JPH06240409A JPH06240409A JP2668793A JP2668793A JPH06240409A JP H06240409 A JPH06240409 A JP H06240409A JP 2668793 A JP2668793 A JP 2668793A JP 2668793 A JP2668793 A JP 2668793A JP H06240409 A JPH06240409 A JP H06240409A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】従来の高力六角ボルト(F10T)、六角ナット(F1
0) 鋼や高力トルシア形ボルト(F10T)鋼と同等の常温特
性を示し、高温特性がこれらのボルトおよびナット鋼よ
りも遙かに高いボルトおよびナット用鋼の提供。 【構成】C:0.10〜0.35%、Si:1.2%以下、Mn:0.
30〜1.50%、Cr:0.45〜1.50%、Mo:0.25〜1.00
%、V:0.01〜0.25%、Nb:0.001〜0.050 %、Al:
0.005〜0.10%およびN:0.003〜0.020 %を含有し、残
部がFeおよび不可避不純物からなり、焼入れ焼戻し組
織を有する耐火性に優れたボルトおよびナット用鋼。上
記の成分に加えて更に、0.0003〜0.0050%のBと0.15%
以下のZrの中から選ばれた1種以上および/または0.
01〜0.60%のNiと0.05〜0.60%のCuの中から選ばれ
た1種以上を含有していてもよい。 【効果】 600℃の高温でも 441N/mm2以上の耐力を有す
る鋼で、耐火被覆なしで使用することが可能である。
0) 鋼や高力トルシア形ボルト(F10T)鋼と同等の常温特
性を示し、高温特性がこれらのボルトおよびナット鋼よ
りも遙かに高いボルトおよびナット用鋼の提供。 【構成】C:0.10〜0.35%、Si:1.2%以下、Mn:0.
30〜1.50%、Cr:0.45〜1.50%、Mo:0.25〜1.00
%、V:0.01〜0.25%、Nb:0.001〜0.050 %、Al:
0.005〜0.10%およびN:0.003〜0.020 %を含有し、残
部がFeおよび不可避不純物からなり、焼入れ焼戻し組
織を有する耐火性に優れたボルトおよびナット用鋼。上
記の成分に加えて更に、0.0003〜0.0050%のBと0.15%
以下のZrの中から選ばれた1種以上および/または0.
01〜0.60%のNiと0.05〜0.60%のCuの中から選ばれ
た1種以上を含有していてもよい。 【効果】 600℃の高温でも 441N/mm2以上の耐力を有す
る鋼で、耐火被覆なしで使用することが可能である。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建築構造物に使用され
るボルトおよびナット用鋼であって、詳しくは、常温で
は高力六角ボルト(F10T)、六角ナット(F10) (JIS B 118
6)鋼や高力トルシア形ボルト(F10T) (JSS II 09)鋼と同
等の特性を示し、高温、特に 600℃で441 N/mm2以上の
耐力を有する耐火性に優れたボルトおよびナット用鋼に
関するものである。
るボルトおよびナット用鋼であって、詳しくは、常温で
は高力六角ボルト(F10T)、六角ナット(F10) (JIS B 118
6)鋼や高力トルシア形ボルト(F10T) (JSS II 09)鋼と同
等の特性を示し、高温、特に 600℃で441 N/mm2以上の
耐力を有する耐火性に優れたボルトおよびナット用鋼に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、建築構造用鋼材の締結にはJIS B
1186に定められる高力六角ボルト(F10T)、六角ナット(F
10) やJSS II 09 に定められるトルシア形ボルト(F10T)
などが使用されているが、この種の鋼材は 350℃以上の
高温にさらされると著しく耐力が低下するため、建築物
に火災が発生した場合でもこれらの鋼材の温度が 350℃
を超えないように耐火被覆を施すことが法令によって義
務付けられている。
1186に定められる高力六角ボルト(F10T)、六角ナット(F
10) やJSS II 09 に定められるトルシア形ボルト(F10T)
などが使用されているが、この種の鋼材は 350℃以上の
高温にさらされると著しく耐力が低下するため、建築物
に火災が発生した場合でもこれらの鋼材の温度が 350℃
を超えないように耐火被覆を施すことが法令によって義
務付けられている。
【0003】一方、昭和51年〜昭和61年に建設省で実施
された総合技術開発プロジェクト「建築物の防火設計法
の開発」の結果、「火災時の安定性」が数値シミュレー
ションおよび実験で確認されれば、耐火物の被覆厚さ
を薄くすること、鉄骨を無被覆で使用すること、が可
能となり、従来よりも鉄骨建築における耐火工法の選択
の自由度が大きく拡大された。この新耐火設計法によれ
ば、高温強度に優れた鋼材を使用することにより、法令
で義務付けられる耐火被覆を削減或いは省略することが
可能となり、鉄骨建築の施工コストと工数の削減が期待
される。
された総合技術開発プロジェクト「建築物の防火設計法
の開発」の結果、「火災時の安定性」が数値シミュレー
ションおよび実験で確認されれば、耐火物の被覆厚さ
を薄くすること、鉄骨を無被覆で使用すること、が可
能となり、従来よりも鉄骨建築における耐火工法の選択
の自由度が大きく拡大された。この新耐火設計法によれ
ば、高温強度に優れた鋼材を使用することにより、法令
で義務付けられる耐火被覆を削減或いは省略することが
可能となり、鉄骨建築の施工コストと工数の削減が期待
される。
【0004】しかしながら、ステンレス鋼や熱間金型用
の合金工具鋼で代表される周知の耐熱鋼材は、高温強度
に優れるものの常温強度が高すぎて加工性に劣るほか、
価格も非常に高いため経済性の面からも建築構造物の耐
火ボルトおよびナット用鋼としては適用が難しい。ま
た、JIS G 4107に定められている高温用合金鋼ボルト材
は、従来の高力六角ボルト(F10T)、六角ナット(F10) 鋼
や高力トルシア形ボルト(F10T)鋼と同等の常温特性を示
すものの、新耐火設計法を満足できるような高温強度を
有しておらず、同じく建築構造物の耐火ボルトおよびナ
ット用鋼としては適用し難い。
の合金工具鋼で代表される周知の耐熱鋼材は、高温強度
に優れるものの常温強度が高すぎて加工性に劣るほか、
価格も非常に高いため経済性の面からも建築構造物の耐
火ボルトおよびナット用鋼としては適用が難しい。ま
た、JIS G 4107に定められている高温用合金鋼ボルト材
は、従来の高力六角ボルト(F10T)、六角ナット(F10) 鋼
や高力トルシア形ボルト(F10T)鋼と同等の常温特性を示
すものの、新耐火設計法を満足できるような高温強度を
有しておらず、同じく建築構造物の耐火ボルトおよびナ
ット用鋼としては適用し難い。
【0005】特開平2−247355号公報には、新耐火設計
法に基づく締結部材として、高温特性に優れたボルトお
よびナットと、これらの経済的な製造方法が提案されて
いる。しかし、この発明のボルトおよびナットでも 600
℃での耐力は高々 351N/mm2程度しかなく、耐火物
被覆を最小限にして用いる建築構造物用耐火ボルトおよ
びナットとしては高温耐力が十分であるとは言い難い。
法に基づく締結部材として、高温特性に優れたボルトお
よびナットと、これらの経済的な製造方法が提案されて
いる。しかし、この発明のボルトおよびナットでも 600
℃での耐力は高々 351N/mm2程度しかなく、耐火物
被覆を最小限にして用いる建築構造物用耐火ボルトおよ
びナットとしては高温耐力が十分であるとは言い難い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、高温
耐力をより高めたボルトおよびナット用鋼、具体的に
は、新耐火設計法に基づく建築用耐火鋼材の締結にあた
り、従来の高力六角ボルト(F10T)、六角ナット(F10) 鋼
や高力トルシア形ボルト(F10T)鋼と同等の常温特性を示
し、火災時における高温特性がこれらのボルトおよびナ
ット用鋼よりも遙かに高い、600 ℃で441 N/mm2以上の
耐力を有するボルトおよびナット用鋼を提供することに
ある。
耐力をより高めたボルトおよびナット用鋼、具体的に
は、新耐火設計法に基づく建築用耐火鋼材の締結にあた
り、従来の高力六角ボルト(F10T)、六角ナット(F10) 鋼
や高力トルシア形ボルト(F10T)鋼と同等の常温特性を示
し、火災時における高温特性がこれらのボルトおよびナ
ット用鋼よりも遙かに高い、600 ℃で441 N/mm2以上の
耐力を有するボルトおよびナット用鋼を提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記(1) 〜
(4) のボルトおよびナット用鋼を要旨とする。なお、合
金成分の含有量を示す%は重量%である。
(4) のボルトおよびナット用鋼を要旨とする。なお、合
金成分の含有量を示す%は重量%である。
【0008】(1) C:0.10〜0.35%、Si:1.2%以下、
Mn:0.30〜1.50%、Cr:0.45〜1.50%、Mo:0.25
〜1.00%、V:0.01〜0.25%、Nb:0.001〜0.050 %、
Al:0.005 〜0.10%およびN:0.003 〜0.020 %を含
有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、焼入れ
焼戻し組織を有する耐火性に優れたボルトおよびナット
用鋼。
Mn:0.30〜1.50%、Cr:0.45〜1.50%、Mo:0.25
〜1.00%、V:0.01〜0.25%、Nb:0.001〜0.050 %、
Al:0.005 〜0.10%およびN:0.003 〜0.020 %を含
有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、焼入れ
焼戻し組織を有する耐火性に優れたボルトおよびナット
用鋼。
【0009】(2) 上記(1) に記載の成分に加えて更に、
0.0003〜0.0050%のBおよび0.15%以下のZrのうちの
1種以上を含有し、焼入れ焼戻し組織を有する耐火性に
優れたボルトおよびナット用鋼。
0.0003〜0.0050%のBおよび0.15%以下のZrのうちの
1種以上を含有し、焼入れ焼戻し組織を有する耐火性に
優れたボルトおよびナット用鋼。
【0010】(3) 上記(1) に記載の成分に加えて更に、
0.01〜0.60%のNiおよび0.05〜0.60%のCuのうちの
1種以上を含有し、焼入れ焼戻し組織を有する耐火性に
優れたボルトおよびナット用鋼。
0.01〜0.60%のNiおよび0.05〜0.60%のCuのうちの
1種以上を含有し、焼入れ焼戻し組織を有する耐火性に
優れたボルトおよびナット用鋼。
【0011】(4) 上記(1) に記載の成分に加えて更に、
0.0003〜0.0050%のBおよび0.15%以下のZrのうちの
1種以上、ならびに0.01〜0.60%のNiおよび0.05〜0.
60%のCuのうちの1種以上を含有し、焼入れ焼戻し組
織を有する耐火性に優れたボルトおよびナット用鋼。
0.0003〜0.0050%のBおよび0.15%以下のZrのうちの
1種以上、ならびに0.01〜0.60%のNiおよび0.05〜0.
60%のCuのうちの1種以上を含有し、焼入れ焼戻し組
織を有する耐火性に優れたボルトおよびナット用鋼。
【0012】
【作用】以下、本発明において鋼の化学組成および組織
を上記のように限定する理由を作用効果とともに説明す
る。
を上記のように限定する理由を作用効果とともに説明す
る。
【0013】A)鋼の化学組成 C: Cは所望の強度を確保するために添加するが、そ
の含有量が0.10%未満では強度が不足する。一方、F10T
クラスのボルト、ナット用鋼には優れた靱性が必須とさ
れが、C含有量はこの靱性に大きく影響し、Cが0.35%
を超えると靱性の低下が甚だしくなる。従って、その含
有量は0.10〜0.35%の範囲が適当である。
の含有量が0.10%未満では強度が不足する。一方、F10T
クラスのボルト、ナット用鋼には優れた靱性が必須とさ
れが、C含有量はこの靱性に大きく影響し、Cが0.35%
を超えると靱性の低下が甚だしくなる。従って、その含
有量は0.10〜0.35%の範囲が適当である。
【0014】Si: Siは鋼の脱酸および強度増加の
ために有効な元素である。しかし、 1.2%を超えて含有
すると靱性および冷間加工性が劣化するので、その含有
量を 1.2%以下とした。
ために有効な元素である。しかし、 1.2%を超えて含有
すると靱性および冷間加工性が劣化するので、その含有
量を 1.2%以下とした。
【0015】Mn: Mnは鋼の脱酸剤として、また、
強度および靱性を確保するのに有効な元素である。しか
し、その含有量が0.30%未満では所望の強度が得られ
ず、1.50%を超えると強度および靱性の向上効果が飽和
し、コストのみが上昇することになるので、その含有量
を0.30〜1.50%とした。
強度および靱性を確保するのに有効な元素である。しか
し、その含有量が0.30%未満では所望の強度が得られ
ず、1.50%を超えると強度および靱性の向上効果が飽和
し、コストのみが上昇することになるので、その含有量
を0.30〜1.50%とした。
【0016】Cr: Crは常温強度および高温強度を
向上させる作用がある。特に、Mo、NbおよびVとの
複合添加で著しく高温強度を向上させるが、その含有量
が0.45%未満では所望の効果が得られず、1.50%を超え
ると冷間加工性が劣化するようになるので、その含有量
を0.45〜1.50%とした。
向上させる作用がある。特に、Mo、NbおよびVとの
複合添加で著しく高温強度を向上させるが、その含有量
が0.45%未満では所望の効果が得られず、1.50%を超え
ると冷間加工性が劣化するようになるので、その含有量
を0.45〜1.50%とした。
【0017】Mo: Moは高温強度の向上に極めて有
効な元素であり、特に、Cr、NbおよびVとの複合添
加でその効果が著しい。しかし、その含有量が0.25%未
満では所望の高温強度が得られず、1.00%を超えると前
記の効果が飽和し、経済的に不利を招くことになるの
で、その含有量を0.25〜1.00%とした。
効な元素であり、特に、Cr、NbおよびVとの複合添
加でその効果が著しい。しかし、その含有量が0.25%未
満では所望の高温強度が得られず、1.00%を超えると前
記の効果が飽和し、経済的に不利を招くことになるの
で、その含有量を0.25〜1.00%とした。
【0018】V: Vは鋼の常温強度および高温強度を
向上させる作用を有している。その作用は特に、Cr、
Mo、NbおよびNとの複合添加で大きく発揮される。
しかし、その含有量が0.01%未満では所望の効果が得ら
れず、0.25%を超えるとその効果が飽和するばかりかか
えって高温強度の低下をきたし、また、靱性の劣化を招
くようになるので、その含有量を0.01〜0.25%とした。
向上させる作用を有している。その作用は特に、Cr、
Mo、NbおよびNとの複合添加で大きく発揮される。
しかし、その含有量が0.01%未満では所望の効果が得ら
れず、0.25%を超えるとその効果が飽和するばかりかか
えって高温強度の低下をきたし、また、靱性の劣化を招
くようになるので、その含有量を0.01〜0.25%とした。
【0019】Nb:Nbは本発明鋼において特に重要な
成分の一つであり、微量の添加で高温強度を向上させる
作用を持つ。Cr、Mo、VおよびNと複合添加した場
合に、特に高温強度が著しく向上する。その効果を確保
するためには、0.001 %以上の含有量を必要とするが、
0.050 %を超えて含有してもその効果が飽和するのみな
らず、熱間加工性および冷間加工性が劣化するようにな
るので、その含有量を 0.001〜0.05%とした。
成分の一つであり、微量の添加で高温強度を向上させる
作用を持つ。Cr、Mo、VおよびNと複合添加した場
合に、特に高温強度が著しく向上する。その効果を確保
するためには、0.001 %以上の含有量を必要とするが、
0.050 %を超えて含有してもその効果が飽和するのみな
らず、熱間加工性および冷間加工性が劣化するようにな
るので、その含有量を 0.001〜0.05%とした。
【0020】Al: Alは鋼の脱酸の安定化および均
質化を図るのに有効な元素である。しかし、その含有量
が 0.005%未満では所望の効果を得ることができず、0.
10%を超えるとその効果は飽和してしまい、逆に介在物
の増大により疵が発生し、靱性を劣化させることになる
ので、その含有量を 0.005〜0.10%とした。
質化を図るのに有効な元素である。しかし、その含有量
が 0.005%未満では所望の効果を得ることができず、0.
10%を超えるとその効果は飽和してしまい、逆に介在物
の増大により疵が発生し、靱性を劣化させることになる
ので、その含有量を 0.005〜0.10%とした。
【0021】N (窒素) : Nは、焼戻し後にVおよび
Nbとの窒化物を析出させる。この窒化物 (VN、Nb
N) は、鋼の結晶粒の微細化に寄与し、常温靱性を向上
させ、高温での軟化抵抗の増大による高温強度の確保に
役立つ。Nが0.003 %未満ではこのような効果が十分で
ない。一方、Nの含有量が 0.020%を超えると、かえっ
て鋼の靱性が低下する。
Nbとの窒化物を析出させる。この窒化物 (VN、Nb
N) は、鋼の結晶粒の微細化に寄与し、常温靱性を向上
させ、高温での軟化抵抗の増大による高温強度の確保に
役立つ。Nが0.003 %未満ではこのような効果が十分で
ない。一方、Nの含有量が 0.020%を超えると、かえっ
て鋼の靱性が低下する。
【0022】本発明のボルトおよびナット用鋼には、上
記の成分に加えて更にBとZrの1種以上または/およ
びNiとCuの1種以上を含んでいてもよい。これらの
合金元素の作用効果と望ましい含有量は下記のとおりで
ある。
記の成分に加えて更にBとZrの1種以上または/およ
びNiとCuの1種以上を含んでいてもよい。これらの
合金元素の作用効果と望ましい含有量は下記のとおりで
ある。
【0023】BおよびZr: BおよびZrには鋼の焼
入れ性を一段と向上させる作用があるので、特に製品寸
法が大きい場合に高強度を確保する目的で1種以上を添
加してもよい。しかしBの場合には0.0003%未満の含有
量では所望の効果が得られず、0.0050%を超えると鋼の
靱性および高温強度が劣化するようになる。一方、Zr
の場合には0.15%を超えると前記の作用が飽和するばか
りか、鋼の靱性および被削性が劣化するようになる。従
って、これらの合金元素を1種以上添加する場合、Bは
0.0003〜0.0050%、Zrは0.15%以下の含有量とするの
がよい。
入れ性を一段と向上させる作用があるので、特に製品寸
法が大きい場合に高強度を確保する目的で1種以上を添
加してもよい。しかしBの場合には0.0003%未満の含有
量では所望の効果が得られず、0.0050%を超えると鋼の
靱性および高温強度が劣化するようになる。一方、Zr
の場合には0.15%を超えると前記の作用が飽和するばか
りか、鋼の靱性および被削性が劣化するようになる。従
って、これらの合金元素を1種以上添加する場合、Bは
0.0003〜0.0050%、Zrは0.15%以下の含有量とするの
がよい。
【0024】NiおよびCu: NiおよびCuには強
度と靱性を向上させる作用があるので、特に高強度や高
靱性を求められる場合は、必要に応じて1種以上添加し
てもよい。しかし、Niの場合には0.01%未満の含有量
では所望の効果が得られず、0.60%を超えて含有させる
と冷間加工性の劣化をきたす。一方、Cuの場合には
0.05%未満の含有量では所望の効果が得られず、0.60%
を超えると熱間加工性の劣化をきたす。従って、これら
の合金元素を1種以上添加する場合は、Niは0.01〜0.
60%、Cuは0.05〜0.60%の含有量とするのがよい。な
お、NiおよびCuは必要に応じて1種以上添加するこ
とができるが、NiにはCuによる熱間加工性の劣化を
防止する作用もあるので、Cuを添加する場合にはNi
も同時に添加する方が望ましい。
度と靱性を向上させる作用があるので、特に高強度や高
靱性を求められる場合は、必要に応じて1種以上添加し
てもよい。しかし、Niの場合には0.01%未満の含有量
では所望の効果が得られず、0.60%を超えて含有させる
と冷間加工性の劣化をきたす。一方、Cuの場合には
0.05%未満の含有量では所望の効果が得られず、0.60%
を超えると熱間加工性の劣化をきたす。従って、これら
の合金元素を1種以上添加する場合は、Niは0.01〜0.
60%、Cuは0.05〜0.60%の含有量とするのがよい。な
お、NiおよびCuは必要に応じて1種以上添加するこ
とができるが、NiにはCuによる熱間加工性の劣化を
防止する作用もあるので、Cuを添加する場合にはNi
も同時に添加する方が望ましい。
【0025】B)鋼の組織 上記の化学組成を有する鋼であっても、その組織がフェ
ライト、パーライト、高温ベイナイトといったいわゆる
高温変態生成物からなるものでは目的とする常温強度お
よび高温強度が得られない。常温強度が従来のボルトお
よびナット用鋼と同等以上で、高温強度、特に 600℃で
の耐力が 441N/mm2以上のものとするためには、焼入れ
および焼戻し処理して、鋼の組織を焼入れ焼戻し組織と
する必要がある。焼入れ処理は、熱間加工後の高温の鋼
を直ちに急冷して焼入れするいわゆる直接焼入れ法によ
って行ってもよく、熱間加工後の高温の鋼を一旦室温ま
で冷却した後、再加熱して焼入れする方法によって行っ
てもよい。
ライト、パーライト、高温ベイナイトといったいわゆる
高温変態生成物からなるものでは目的とする常温強度お
よび高温強度が得られない。常温強度が従来のボルトお
よびナット用鋼と同等以上で、高温強度、特に 600℃で
の耐力が 441N/mm2以上のものとするためには、焼入れ
および焼戻し処理して、鋼の組織を焼入れ焼戻し組織と
する必要がある。焼入れ処理は、熱間加工後の高温の鋼
を直ちに急冷して焼入れするいわゆる直接焼入れ法によ
って行ってもよく、熱間加工後の高温の鋼を一旦室温ま
で冷却した後、再加熱して焼入れする方法によって行っ
てもよい。
【0026】
【実施例】表1の(1) および(2) に示す化学組成の鋼を
通常の方法によって溶製した。表1において、鋼A〜O
は本発明鋼、鋼P〜Wは成分のいずれかが本発明で規定
する含有量の範囲から外れた比較鋼である。
通常の方法によって溶製した。表1において、鋼A〜O
は本発明鋼、鋼P〜Wは成分のいずれかが本発明で規定
する含有量の範囲から外れた比較鋼である。
【0027】次いで、これらの本発明鋼および比較鋼を
連続鋳造法或いは造塊−分塊法によって鋼片となした
後、1200〜1250℃の温度に加熱してから、25mm径の丸棒
に熱間圧延し、一部のものは熱間圧延後、 950〜1020℃
の温度から直ちに焼入れを行った。他のものは熱間圧延
後、一旦室温まで冷却し、920 〜1050℃の温度に再加熱
して焼入れを行った。しかるのち、全ての丸棒に 400〜
650 ℃の温度で焼戻しを施し、その組織が焼入れ焼戻し
組織になるように調整した。
連続鋳造法或いは造塊−分塊法によって鋼片となした
後、1200〜1250℃の温度に加熱してから、25mm径の丸棒
に熱間圧延し、一部のものは熱間圧延後、 950〜1020℃
の温度から直ちに焼入れを行った。他のものは熱間圧延
後、一旦室温まで冷却し、920 〜1050℃の温度に再加熱
して焼入れを行った。しかるのち、全ての丸棒に 400〜
650 ℃の温度で焼戻しを施し、その組織が焼入れ焼戻し
組織になるように調整した。
【0028】こうして得られた焼入れ焼戻し後の丸棒か
ら試験片を切り出し、常温及び 600℃における引張
特性を調査した。その結果を焼入れおよび焼戻し温度と
ともに表2の(1) および(2) に示す。
ら試験片を切り出し、常温及び 600℃における引張
特性を調査した。その結果を焼入れおよび焼戻し温度と
ともに表2の(1) および(2) に示す。
【0029】表2(1) から本発明鋼は常温強度および高
温強度ともに良好な特性値を有しており、新耐火設計法
に基づく締結部材(ボルト、ナット)用鋼として優れた
鋼であることがわかる。これに対して表2(2) の比較鋼
は、常温強度は本発明鋼とほぼ同等であるが、高温強度
が著しく低い。
温強度ともに良好な特性値を有しており、新耐火設計法
に基づく締結部材(ボルト、ナット)用鋼として優れた
鋼であることがわかる。これに対して表2(2) の比較鋼
は、常温強度は本発明鋼とほぼ同等であるが、高温強度
が著しく低い。
【0030】
【表1(1)】
【0031】
【表1(2)】
【0032】
【表2(1)】
【0033】
【表2(2)】
【0034】
【発明の効果】実施例からも明らかなように、本発明鋼
は高温特性が著しく改善されている上に、常温強度も高
いから、新耐火設計法に基づく建築用耐火鋼材の締結の
ためのボルトおよびナット用鋼として極めて有益なもの
である。
は高温特性が著しく改善されている上に、常温強度も高
いから、新耐火設計法に基づく建築用耐火鋼材の締結の
ためのボルトおよびナット用鋼として極めて有益なもの
である。
Claims (4)
- 【請求項1】重量%で、C:0.10〜0.35%、Si:1.2%
以下、Mn:0.30〜1.50%、Cr:0.45〜1.50%、M
o:0.25〜1.00%、V:0.01〜0.25%、Nb:0.001〜0.
050 %、Al:0.005〜0.10%およびN:0.003〜0.020 %
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、焼
入れ焼戻し組織を有する耐火性に優れたボルトおよびナ
ット用鋼。 - 【請求項2】請求項1に記載の成分に加えて更に、重量
%で、0.0003〜0.0050%のBおよび0.15%以下のZrの
うちの1種以上を含有し、焼入れ焼戻し組織を有する耐
火性に優れたボルトおよびナット用鋼。 - 【請求項3】請求項1に記載の成分に加えて更に、重量
%で、0.01〜0.60%のNiおよび0.05〜0.60%のCuの
うちの1種以上を含有し、焼入れ焼戻し組織を有する耐
火性に優れたボルトおよびナット用鋼。 - 【請求項4】請求項1に記載の成分に加えて更に、重量
%で、0.0003〜0.0050%のBおよび0.15%以下のZrの
うちの1種以上、ならびに0.01〜0.60%のNiおよび0.
05〜0.60%のCuのうちの1種以上を含有し、焼入れ焼
戻し組織を有する耐火性に優れたボルトおよびナット用
鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2668793A JPH06240409A (ja) | 1993-02-16 | 1993-02-16 | 耐火性に優れたボルトおよびナット用鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2668793A JPH06240409A (ja) | 1993-02-16 | 1993-02-16 | 耐火性に優れたボルトおよびナット用鋼 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06240409A true JPH06240409A (ja) | 1994-08-30 |
Family
ID=12200313
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2668793A Pending JPH06240409A (ja) | 1993-02-16 | 1993-02-16 | 耐火性に優れたボルトおよびナット用鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06240409A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1167561A2 (en) * | 2000-06-28 | 2002-01-02 | Mitsubishi Steel Muroran Inc. | Carburizing and carbonitriding steel |
WO2013105344A1 (ja) * | 2012-01-11 | 2013-07-18 | 株式会社神戸製鋼所 | ボルト用鋼、ボルトおよびボルトの製造方法 |
JP2015501384A (ja) * | 2011-10-26 | 2015-01-15 | アールウーデー ケッテン リーガー ウント ディエッツ ゲーエムベーハー ウー. ツェーオー. カーゲー | 揚重、締結、締付け、及び/又は固縛手段、及び接続要素のための焼入鋼、揚重、締結、締付け、及び/又は固縛技術のための部材、接続要素、並びにそれらの製造方法 |
CN107217201A (zh) * | 2017-06-27 | 2017-09-29 | 包头钢铁(集团)有限责任公司 | 一种含稀土海洋钻井平台桩腿用600MPa无缝钢管及其生产方法 |
-
1993
- 1993-02-16 JP JP2668793A patent/JPH06240409A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1167561A2 (en) * | 2000-06-28 | 2002-01-02 | Mitsubishi Steel Muroran Inc. | Carburizing and carbonitriding steel |
EP1167561A3 (en) * | 2000-06-28 | 2009-03-04 | Mitsubishi Steel Muroran Inc. | Carburizing and carbonitriding steel |
JP2015501384A (ja) * | 2011-10-26 | 2015-01-15 | アールウーデー ケッテン リーガー ウント ディエッツ ゲーエムベーハー ウー. ツェーオー. カーゲー | 揚重、締結、締付け、及び/又は固縛手段、及び接続要素のための焼入鋼、揚重、締結、締付け、及び/又は固縛技術のための部材、接続要素、並びにそれらの製造方法 |
WO2013105344A1 (ja) * | 2012-01-11 | 2013-07-18 | 株式会社神戸製鋼所 | ボルト用鋼、ボルトおよびボルトの製造方法 |
US9695488B2 (en) | 2012-01-11 | 2017-07-04 | Kobe Steel, Ltd. | Steel for bolt use, bolt, and method for manufacturing bolt |
CN107217201A (zh) * | 2017-06-27 | 2017-09-29 | 包头钢铁(集团)有限责任公司 | 一种含稀土海洋钻井平台桩腿用600MPa无缝钢管及其生产方法 |
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