JPH0431180Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は自動車のシートベルト装置の改良に関
するものである。

（従来技術） シートに着座された乗員のシヨルダ部と腰部と
を支承する自動車のシートベルト装置にあつて
は、通常、車体側面下部に取付けられたリトラク
タより引き出されたシートベルトが、車体側面上
部に固定されたガイド部材を経由した後（ガイド
部材で折り返された後）、その先端部が、リトラ
クタ近傍において車体側面下部に取付けられてい
る（実開昭57−124457号公報参照）。そして、シ
ートベルトのうち、ガイド部材とシートベルトの
先端固定部との間の支承ベルト部に設けたタング
プレートを、車幅方向ほぼ中央部において車体下
部に取付けたバツクルに係合されることによつ
て、このタングプレートよりもガイド部材側部分
の支承ベルト部によつて、乗員のシヨルダ部をた
すき掛けの形式で支承する一方、タングプレート
よりも先端固定部側部分の支承ベルト部によつ
て、乗員の腰部を支承するようになつている。

このうよな自動車のシートベルト装置におつて
は、シートに着座した乗員がシートベルトを着用
する際に、シートベルト特に支承ベルト部を容易
にたぐり寄せることができるように、支承ベルト
部が、シート（シートバツク）よりもあまり大き
く後方へ離れないように当該ガイド部材と先端固
定部との位置を設定するのが好ましいものであ
る。

しかしながら、例えば、いわゆる１ボツクスカ
ーにおける車体前後方向中間にある中間シートの
ように、その前後スライド量が大きなシート用と
して用いる場合、そのスライド位置によつては、
前述した支承ベルト部が、シートよりもかなり大
きく後方へ位置してしまい、このため、シートベ
ルトをたぐり寄せるのに、半身になつて振り向き
つつ手を大きく後方へ伸ばされなければならなく
なり、シートベルト着用が極めて面倒になる、と
いう問題を生じる。

とりわけ、リトラクタ、ガイド部材およびシー
トベルトの先端固定部は、強度的に優れた車体の
ピラー部に取付けられて、シートベルトは、その
非使用時には、全体的にほぼ上下方向に直線状と
されるため、上述したような問題を生じることと
なる。

このような問題点を回避するため、例えばシー
トベルトの先端固定部を、リトラクタよりも、シ
ートに対する着座姿勢方向において大きく前方へ
位置させて設けること、すなわち支承ベルト部そ
のものをシート近傍へ位置させることも考えられ
る。しかしながら、この場合は、自動車によつて
は、シートベルトの非使用時に、シートの側方に
あるサイドウインドをシートベルトが横切つてそ
の視界を妨げてしまう、というような新たな問題
を生じてしまう。

とりわけ、最近では、１ボツクスカーにおいて
よく見られるように、前席シートの後方にある後
席シートが、乗員が前向きに着座される前向き位
置の他に、乗員が後向きに着座される後向き位置
をとり得るようにしたものがある。この場合、前
席シート用のシートベルト装置が、前席シートと
後席シートの間にあるピラー部に設けられる。そ
して、最近では、上記ピラー部に対してさらに、
後向き位置にある後席シート用のシートベルト装
置を設けることが考えられているが、このような
場合において前述の問題が特に顕著になる。

（考案の目的） したがつて、本考案の目的は、後向き位置にあ
る後席シート用の後シートベルト装置に対して、
当該後席シートに着座している乗員が容易に接近
でき、しかも非使用時における後シートベルト装
置が視界の邪魔にならないようにした自動車のシ
ートベルト装置を提供することを目的とする。

（考案の構成） 上記目的を達成するため、本考案にあつては、
次のような構成としてある。すなわち、 前席シート後方に配置された後席シートが、乗
員が前向きに着座される前向き位置と乗員が後向
きに着座される後向き位置との間で姿勢変更し得
るようにされ、前席シートと後席シートとの間に
ある車体ピラー部に対して、前席シート用の前シ
ートベルト装置が設けられた自動車において、 前記ピラー部に対して、前記前シートベルト装
置の直後方に並設して、後向き位置にある後席シ
ート用の後シートベルト装置が設けられ、 前記後シートベルト装置が、 車体側面下部に取付けられたリトラクタと、 車体側面上部に取付けられたガイド部材と、 前記リトラクタから引き出され、前記ガイド部
材を経由した後その先端部が前記リトラクタ近傍
において車体側面下部に取付けられたシートベル
トと、 車幅方向の中間部において車体下部に取付けら
れたバツクルと、 前記シートベルトのうち前記ガイド部材と該シ
ートベルトの先端固定部との間の支承ベルト部に
設けられ、前記バツクルに係脱されるタングプレ
ートと、 一端部が前記支承ベルト部に連結され、他端部
が前記リトラクタおよび先端固定部よりも後方に
おいて車体側面下部に取付けられ連結部材と、 を備え、 前記支承ベルト部が前記ピラー部に沿つてほぼ
まつすぐな状態とされる非使用状態で、後向き位
置にある後席シートに着座した乗員が容易に前記
連結部材に接近し得るように該連結部材の長さが
設定され、 少なくとも前記非使用状態で、前記連結部材が
前記後席シートの側方にあるサイドウインドより
も下方に位置されている、 ような構成としてある。

（実施例） 第１図、第２図において、１は１ボツクスタイ
プとされた自動車で、その側面には、Ｘ，Ｙ，Ｚ
の３つのサイドウインドを有するものとされてい
る。この自動車１は、前シート２、中間シート
３、後シート４の３列のシートを備え、前シート
２は、運転席側シート２Ａと助手席側シート２Ｂ
との２分割構成とされ、また、中間シート３と後
シート４とは、それぞれ３人掛け用とされてい
る。そして、中間シート２は、いわゆる回転対座
式とされて、着座される乗員が車体前方を向き前
向き位置（第１図一点鎖線および第２図で示す位
置）と、車体後方を向く後向き位置（第１図実線
で示す位置）と、を選択的にとり得るようになつ
ている。

このように、自動車１は９人乗り用とされてい
るが、各乗員に対して各々シートベルト装置が付
設されている。すなわち、シート２，３のうち、
車幅方向中央部に着座される２名の乗員用の後シ
ート４に着座される３名の乗員用との合計５名に
対するシートベルト装置Ａは、それぞれ乗員の腰
部のみを支承すタイプのものとされ、他の４名分
のシートベルト装置は、乗員のシヨルダ部と腰部
との両方を支承するタイプのものとされている。
そして、中間シート３用のシートベルト装置とし
ては、前向き位置用と後向き位置用とに別個に設
けられて、本実施例では、第１図に示すように、
前向き位置にある中間シート３用のシートベルト
装置Ｂは従来と同様のものが用いられ、後向き位
置にある中間シート３用のシートベルト装置Ｃ
が、本考案によるものとされている。なお、前シ
ート２の車幅方向端部に位置する２名用のシート
ベルト装置Ｄは、従来と同じものが用いられてい
る。

後向き位置にある中間シート３用のシートベル
ト装置Ｃについて説明すると、サイドウインドＸ
とＹとの間の車体側面すなわちピラー部５には、
その下部において、アンカボルト６によりリトラ
クタ７が回動自在に取付けられ、その上部におい
て、アンカボルト８によりガイド部材９が回動自
在に取付けられている。リトラクタ７は、既知の
ように、内部に巻取りローラが装備されて、シー
トベルト１０を巻取機能を有し、このリトラクタ
７より引出されたシートベルト１０は、一端上方
へ伸びて、ガイド部材９の案内リング９Ａを通つ
てここで折り返された後下方へ伸び、その先端
が、前記アンカボルト６により、リトラクタ７と
共にピラー部５の下部に取付け（共締め）られて
いる。勿論、このアンカボルト６，８の取付位置
は、強度的に優れたピラー部５であり、特にアン
カボルト６は、ピラー部５とサイドシル部との連
結部分あるいはこの近傍とされて、その取付強度
が十分に確保されている。

前記シートベルト１０のうち、ガイド部材９と
その先端固定部としてのアンカボルト６との間の
部分が、乗員を支承する支承ベルト部１０ａを構
成するもので、この支承ベルト部１０ａには、タ
ングプレート１１が摺動自在に取付けられてい
る。このタングプレート１１は、バツクル１２に
係脱されるものであるが、このバツクル１２は、
車幅方向の中間部において車体下部（実施例では
フロアパネル１３に固定された中間シート３の回
転台座１４）に取付けられている。勿論、このタ
ングプレート１１がパツクル１２に係合された際
に、後向き位置にある中間シート３に着座された
乗員に対して、タングプレート１１からガイド部
材９側部分の支承ベルト部１０ａによつて、たす
き掛けの形式で乗員のシヨルダ部を支承すると共
に、タングプレート１１から先端固定部としての
アンカボルト６までの支承ベルト部１０ａによつ
て、当該乗員の腰部を支承するものである。

シートベルト１０の支承ベルト部１０ａに対し
ては、連結部材としてのバンド１５が取付けられ
ている。このバンド１５は、ほぼ車体前後方向に
伸び、その一端部が、支承ベルト部１０ａに対し
て、例えばピンにより該支承ベルト部１０ａの長
手方向に不動状態として、あるいはリング等を介
して摺動自在に連結されている（この連結部を符
合１６で示す）。そして、バンド１５の他端部は、
ボルト１７を利用して、車体側面に回動自在ある
いは固定的に取付けられている。このボルト１７
は、中間シート３の側方にあるサイドウインドＹ
の下方に位置されて、バンド１５がサイドウイン
ドＹから外れて位置するようにされている。そし
て、バンド１５の支承ベルト部１０ａに対する連
結部１６は、支承ベルト部１０ａに対してその長
手方向に不動状態として連結された場合は、少な
くともシートベルト１０の非使用時に、サイドウ
インドＹの下方に位置するようにされている。ま
た、バンド１５をリング等を介して支承ベルト部
１０ａに対して摺動自在に連結した場合は、少な
くともシートベルト１０の非使用時に、上記リン
グ等の重量によつて、この連結部分がサイドウイ
ンドＹよりも下方へ位置するようにされている。

バンド１５の車体側面への取付位置となるボル
ト１７は、リトラクタ７よりも十分に後方、すな
わち後向き位置にある中間シート３の着座姿勢方
向前方に位置して、この中間シート３の前後スラ
イド位置をその前端（自動車１に対しては後方
端）とした場合にあつても、中間シート３に着座
した乗員のほぼ側方に位置するようになつてい
る。

したがつて、後向き位置にある中間シート３に
着座した乗員が、シートベルト１０を着用するに
際しては、手近にするバンド１５を引つ張ること
により、シートベルト１０の支承ベルト部１０ａ
を手近に引寄せ、この後は、引寄せられた支承ベ
ルト部１０ａに設けられたタングプレート１１
を、バツクル１２に係合させればよいこととな
る。なお、バンド１５は、シートベルト着用の際
の抵抗とならないように、ある程度余裕を身こん
だ長さとしておくのが望ましいものである。

以上実施例について説明したが、本考案はこれ
に限らず、例えば、１ボツスクカー用に限らず、
一般の乗用車用としても同様に適用し得るもので
ある。さらに、リトラクタ７はシートベルト１０
の先端部とは、共締めではなく、別個独立して固
定するようにしてもよい。

（考案の効果） 本考案は以上述べことから明らかなように、後
向き位置にある後席シート用の後シートベルト装
置Ｃは、その非使用状態では、ピラー部に沿つて
ほぼまつすぐな状態となつているので、そのシー
トベルト特に支承ベルト部がサイドウインドを横
切るようなことがなく、当該後シートベルト装置
そのものによつて視界を妨げることがない。ま
た、この非使用状態で、連結部材はサイドウイン
ド下方に位置しているので、この連結部材によつ
ても視界を妨げることがない。

そして、上記非使用状態においては、後向き位
置にある後席シートに着座した乗員は、連結部材
に容易に接近することができて、この連結部材を
たぐり寄せることにより支承ベルト部を身近かに
引き寄せて、後シートベルト装置による身体拘束
を容易かつすみやかに行なうことができる。

勿論、後シートベルト装置は、既存のシートベ
ルト装置に対して連結部材を付加するだけでよい
ので、容易に実施化し得るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案が適用された自動車の一例を示
す側面図。第２図は第１図に示す自動車の内部斜
視図。第３図は本考案の一実施例を示す側面図。 １……自動車、３……（中間）シート、６……
アンカボルト、７……リトラクタ、８……アンカ
ボルト、９……ガイド部材、１０……シートベル
ト、１０ａ……支承ベルト部、１１……タングプ
レート、１２……バツクル、１５……バンド（連
結部材）、Ｙ……サイドウインド。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 前席シート後方に配置された後席シートが、乗
   員が前向きに着座される前向き位置と乗員が後向
   きに着座される後向き位置との間で姿勢変更し得
   るようにされ、前席シートと後席シートとの間に
   ある車体ピラー部に対して、前席シート用の前シ
   ートベルト装置が設けられた自動車において、 前記ピラー部に対して、前記前シートベルト装
   置の直後方に並設して、後向き位置にある後席シ
   ート用の後シートベルト装置が設けられ、 前記後シートベルト装置が、 車体側面下部に取付けられたリトラクタと、 車体側面上部に取付けられたガイド部材と、 前記リトラクタから引き出され、前記ガイド部
   材を経由した後その先端部が前記リトラクタ近傍
   において車体側面下部に取付けられたシートベル
   トと、 車幅方向の中間部において車体下部に取付けけ
   られたバツクルと、 前記シートベルトのうち前記ガイド部材と該シ
   ートベルトの先端固定部との間の支承ベルト部に
   設けられ、前記バツクルに係脱されるタングプレ
   ートと、 一端部か前記支承ベルト部に連結され、他端部
   が前記リトラクタおよび先端固定部よりも後方に
   おいて車体側面下部に取付けられた連結部材と、 前記支承ベルト部が前記ピラー部に沿つてほぼ
   まつすぐな状態とされる非使用状態で、後向き位
   置にある後席シートに着座した乗員が容易に前記
   連結部材に接近し得るように該連結部材の長さが
   設定され、 少なくとも前記非使用状態で、前記連結部材が
   前記後席シートの側方にあるサイドウインドより
   も下方に位置されている、 ことを特徴とする自動車のシートベルト装置。