JPH0425350B2 - - Google Patents
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- JPH0425350B2 JPH0425350B2 JP60129531A JP12953185A JPH0425350B2 JP H0425350 B2 JPH0425350 B2 JP H0425350B2 JP 60129531 A JP60129531 A JP 60129531A JP 12953185 A JP12953185 A JP 12953185A JP H0425350 B2 JPH0425350 B2 JP H0425350B2
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Description
<産業上の利用分野>
本発明は、食缶、飲料缶、一般缶用として、特
に電気抵抗溶接により缶胴を接合する方式に適し
た溶接性と塗装後耐食性にすぐれたシーム溶接缶
用表面処理鋼板に関するものである。 <従来技術とその問題点> 食缶用と素材として従来一般にぶりきと称され
る錫めつき鋼板が広く用いられてきた。この缶胴
の接合方式としては、以前は半田による接合方式
が採用されていたが、半田に含まれる鉛の毒性の
問題から、近年、純錫半田が使用されるようにな
つた。しかし、純錫半田は、接合時の濡れ性が劣
ることから半田接合の技術上の問題があり、更に
高価な純錫半田を使用することにより製造コスト
が上昇するという問題があつた。 一方、近年、食品容器は、例えば、ポリエチレ
ン、アルミニウム、ガラス、紙などの低価格競合
材料の進出に直面しており、上記の如き高価な錫
を付着量2.8〜11.2g/m2の如く厚くめつきしたぶ
りき缶は製造コストが高いので、耐食性には格段
すぐれた特性を有しているとはいえ、苦しい競合
的立場を強いられてきた。 ぶりき缶の上記欠点を解消する目的で、最近半
田接合法に代つて缶胴を電気抵抗溶接によつて接
合する方式が発展し、普及するようになつてき
た。そのためには電気抵抗溶接に適した缶用素材
が必要である。 従来から用いられている缶用材料としては、上
記ぶりきのほかにクロムタイプのテインフリース
チールがある。これは電解クロメート処理を施
し、表面に金属クロムとクロム水和酸化物層を形
成したものであり、経済性には優れているが、表
面に存在する厚いクロム水和酸化物被膜が高抵抗
であるために、溶接性が悪く、溶接部の強度不足
を生じ溶接缶用素材としては適当でない。 その他従来の缶用素材がいずれも溶接缶用素材
として不適切であることから種々の試みが提案さ
れている。例えば、アメリカのナシヨナルスチー
ル社によつて発表された「ニツケルライト」に代
表されるニツケルめつき鋼板があるが、これは鋼
板上に約0.5g/m2の目付量のニツケルめつきを施
した上、表面に在来のクロメート処理を施したも
ので、塗料の密着性が劣り、また30m/min以上
の高速溶接での溶接性が劣るために広く用いられ
るにいたつていない。 更に他の1つは、アメリカ、ジヨーンズ・ロー
リン・ステイール社によつて発表された「テイン
アロイ」に代表されるものである。これは約
0.6g/m2の薄目付の錫めつきを溶錫処理した後、
在来のクロメート処理を施したものであるが、耐
錆性、塗料の密着性、溶接性ともに不充分であ
る。 電気抵抗溶接に適する缶用素材の具備すべき要
件としては溶接性と塗装後の耐食性がすぐれたも
のであることが要求される。この要件を具体的に
説明すると、溶接の際に充分の溶接強度があり、
しかも溶接部にいわゆる「散り」などの溶接欠陥
を生じない適正溶接電流範囲を有し、缶内容物に
対して塗装して用いた場合、塗膜の有する耐食性
を充分生かすことができる塗膜の密着性を有し、
更に不可避的に生ずる塗膜欠陥部においては、素
材自体の優れた耐食性によつて腐食を防止できる
ものでなければならない。このような低コストで
溶接性と塗装後耐食性を満足する溶接缶用素材と
して、本発明者らは先に鋼板表面に多数の凸部を
有する金属錫層を有し、この金属錫層上にクロム
水和酸化物あるいは金属クロムとクロム水和酸化
物からなるクロメート被膜を有するシーム溶接缶
用表面処理鋼板(特願昭59−063883号)を提供し
た。 上記方法で得られるシーム溶接缶用表面処理鋼
板は、特に金属錫層を凸状に形成させることによ
る錫の節約効果が大きく、少ない錫量で適正溶接
電流範囲を有し、シーム溶接缶用素材として溶接
性、塗装後耐食性ともに優れたものであつた。し
かし、缶内容物によつては、非常に厳しい条件下
での塗装後耐食性が要求され、こういつた条件下
では、塗装後耐食性の充分でないものがあること
が判明した。 <発明の構成> 本発明は、鋼板表面に下記(i)〜(iii)の性状の多数
の凸部および凹部を有する金属錫層と、 各凸部の面積が1μm2〜800000μm2 凸部の占める面積百分率が20〜80% 凸部の金属錫の厚さが0.007μm〜0.7μm この金属錫層上に金属クロムとクロム水和酸化
物からなるクロメート皮膜層を有するシーム溶接
缶用表面処理鋼板において、金属錫凸部上の金属
クロム量をXMmg/m2、クロム水和酸化物量をXO
mg/m2、金属錫凹部上の金属クロム量をYMmg/
m2、クロム水和酸化物量をYOmg/m2とした時、 XM≧2、18≧XM+XO≧4 YM≧4、YM+YO≧8 となるように金属錫層上のクロメート皮膜層を分
布させることにより、溶接性と塗装後耐食性の非
常に良好なシーム溶接缶用表面処理鋼板を提供す
るものである。 また、本発明は、鋼板表面に下記(i)〜(iii)の性状
の多数の凸部および凹部を有する金属錫層と、 各凸部の面積が1μm2〜800000μm2 凸部の占める面積百分率が20〜80% 凸部の金属錫の厚さが0.007μm〜0.7μm この金属錫層上に金属クロムとクロム水和酸化
物からなるクロメート皮膜層とを有し、該クロメ
ート皮膜層が、前記金属錫凸部上に金属クロム量
をXMmg/m2、クロム水和酸化物量(以下クロム
換算量)をXOmg/m2、前記金属錫凹部上の金属
クロム量をYMmg/m2、クロム水和酸化物量をYO
mg/m2とした時、 XM≧2、18≧XM+XO≧4 YM≧4、YM+YO≧8 を満足するシーム溶接缶用表面処理鋼板を製造す
るに際し、鋼板表面に前記多数の凸部および凹部
を有する金属錫層を形成し、この金属錫層上への
クロメート皮膜形成の電解処理を行う前に、金属
錫層を形成した鋼板をクロメート処理液に浸漬処
理することを特徴とするシーム溶接缶用表面処理
鋼板の製造方法を提供するものである。 以下、本発明を更に詳細に説明する。 発明者らは、先に、溶接性と塗装後耐食性に優
れた薄目付ぶりきとして特願昭59−63883号に示
す鋼板を提案した。この鋼板は溶接性を塗装後耐
食性に優れた薄目付ぶりきとして画期的な製品を
提供するもので、しかも低コストであるという特
性を有するので、従来のぶりき材に代わるだけで
なくTFSにも代わつて用いられるようになつた。
この場合には、さらに金属Crの多いものが要求
されるようになつたが、単純に金属Crの量を増
やした場合には溶接性が悪くなり、クレームが発
生した。 従つて実ラインではSn量と金属Cr量を非常に
厳密な範囲で管理しなければならず、作業性、効
率が低いものとなつた。そこで本発明者らは、溶
接性は従来の性能を有し、安定して塗料密着性や
塗装後耐食性の優れた薄目付ぶりきについて考察
した。まず始めに同じCr量で塗装後耐食性の異
なる原因について表面皮膜構造の違いを調査し
た。 特願昭59−063883号に示すような表面に多数の
凸部および凹部を有するシーム溶接缶用表面処理
鋼板の構造は、摸式的に表わすと、第1a図また
は第1b図の様になつている。第1図において、
1は鋼板、2は金属錫層、3はクロメート皮膜
層、4は金属錫凸部、5は金属錫凹部である。金
属錫凹部5は、錫を節約するために、ほとんど金
属錫を有しないので塗装後耐食性は、上層のクロ
メート皮膜3が重要な役割をする。 そこで発明者らは、このクロメート皮膜の構造
と塗装後耐食性の関係を徹底的に調べたところ、
塗装後耐食性の非常に優れたものは、金属クロム
をある値以上有し、クロメート皮膜が金属錫凹部
に多いものであつた。 すなわち、種々のサンプルを用いて金属錫層上
のクロメート皮膜をAESのライン分析を用いて
分布を調べたところ、大きく分けると第2d図の
様にクロメート皮膜が均一なものと、第2c図の
様に金属錫の少ない部分の上にはクロメート皮膜
量が多いものとがあり、第2c図の分布を示すも
のは、塗装後耐食性が非常に優れていた。 第2c図および第2d図のAESライン分析結
果を摸式的に表わしたのがそれぞれ第2a図およ
び第2b図である。鋼板表面に多数の凸部4およ
び凹部5を有する金属錫層の場合、金属錫が多い
凸部4については、錫の犠牲防食用によつて塗装
後耐食性もあまり問題がない。 しかし凸部3以外の錫の少ない凹部5について
は、塗装後耐食性をクロメート皮膜でカバーする
必要があり、クロメート皮膜が重要な役割をす
る。一方、金属錫凸部上のクロメート皮膜は多す
ぎると溶接性が劣り、適正溶接電流範囲が得られ
ない。そこでクロメート皮膜が第2a図および第
2c図の様な分布をしていると凸部金属錫の溶接
性を損なうことなく、塗装後耐食性の優れたシー
ム溶接缶用表面処理鋼板が得られると考えられ
る。 そこで本発明者らは更にこのクロメート皮膜の
構造と、分布、量が溶接性と塗装後耐食性に与え
る影響について詳しく調べた。すなわち金属錫凸
部4上の金属クロム量をXMmg/m2、クロム水和
酸化物量をXOmg/m2とし、金属錫凹部5上の金
属クロム量をYMmg/m2、クロム水和酸化物量を
YOmg/m2とした時、このXM、YM、XM+XO、YM
+YOを変化させて、塗装後耐食性と溶接性を詳
しく調べた。その結果を第3図および第4図に示
す。 凸部金属錫部4上の金属クロム量(XM)が2
mg/m2未満の場合や、金属クロムとクロム水和酸
化物の合計量(XM+XO)が4mg/m2未満では塗
装後耐食性の劣るものがあり、またXM+XOが18
mg/m2を越すと溶接性が劣つた。 また金属錫凹部5は金属錫がほとんどないた
め、耐食性の良い条件は金属クロム量(YM)は
4mg/m2以上、また金属クロムとクロム水和酸化
物の合計量(YM+YO)は8mg/m2以上必要であ
ることがわかつた。 以上の構造を有するクロメート皮膜とすること
によつて、不良品の発生率が大幅に低減し、さら
に溶接性を悪くすることなく、これまでより優れ
た塗料密着性と塗装後耐食性を有する薄目付ぶり
きを実ラインで製造することができた。 また、クロメート皮膜を金属錫凹部上に多く形
成させる方法としては、金属錫凸部上のクロムの
電流効率を小さくするとか、金属錫凹部上のクロ
ム電流効率を大きくするとかの方法が考えられ
る。つまり、金属錫凸部よりも金属錫凹部のクロ
ムの電流効率が高ければ、クロムは凹部の方に多
く電着されることになる。 具体的に実施する際に現存の設備をそのまま用
いて行える最も簡便な方法は、錫めつきし、凸状
錫層を形成させた後、クロメート処理する前に、
同クロメート溶液に浸漬し、凸状錫部を酸化さ
せ、酸化錫を多く形成せしめることによつて凸状
錫部のクロムの電流効率を低くし、金属錫凹部に
クロメート皮膜を多く形成させることである。 クロメート電解処理前の浸漬処理は、第1番目
のクロメート処理層のダウンパスをoffとするの
が最も良い方法である。更に長い時間浸漬し、2
パス以上電解をoffとしても本発明の効果は認め
られるが、必要以上にoffのパスを設けることは、
設備コストの面からマイナスであり、さらにoff
パス数が多くなれば、クロムの電流効率が小さく
なりすぎるのでよくない。 さらにクロメート処理の電流密度が10A/dm2
以上とすると効果は大きくなる。電流密度が小さ
い場合には、下地の状態の影響を受けにくいた
め、前浸漬の効果が無くなつてしまうのではない
かと考えられる。 従つてクロメート処理を第1番目のクロメート
処理層のダウンパスをoffとし、クロメート浸漬
処理した後、10A/dm2以上の電流密度でクロメ
ート電解処理する事によつて本発明者らが先に提
案した多数の凸部を有する金属錫層を有するシー
ム溶接缶用表面処理鋼板(特願昭59−063883号)
の塗装後耐食性を、設備コストや管理コストをほ
とんど要することなく向上させるという大きな効
果を得ることができた。 本発明において、金属錫の効果は溶接性の向上
である。金属錫層は多数の凸部を有し、金属錫は
凸状もしくは凸凹状に分散して存在させるのが好
ましい。そして、 各凸部の面積が1μm2〜800000μm2 凸部の占める面積百分率が20〜80% 凸部の金属錫の厚さが0.007μm〜0.7μmとす
るのが好適である。 各凸部の面積を1μm2〜800000μm2に限定した理
由は、1μm2未満では溶接時の接触面積を広げる
効果が不十分であり、溶接性向上の効果がなく、
800000μm2超ではこの効果が飽和してしまい、不
必要に錫を使用することになり、経済的デメリツ
トを生ずる。 また同時に、凸部の面積百分率を20〜80%に限
定した理由は、20%未満では溶接時の接触面積を
広げる効果が不十分であり、溶接性向上の効果が
なく、80%超では凸状にする経済的優位性が失わ
れるからである。 また同時に、凸部の金属錫の厚さを0.007μm〜
0.7μmに限定した理由は、0.007μm未満では溶接
性向上効果が十分得られないからであり、0.7μm
超では溶接性向上効果が飽和し、経済的デメリツ
トを生ずるからである。金属錫の厚さは、下地金
属の種類、塗装後の焼付条件により上記範囲内で
任意に選べば良い。 金属錫を凸状もしくは凸凹状に分散して存在さ
せる方法としては、これらの限定されることはな
いが、代表的に次のようなものを挙げることがで
きる。 (1) フラツクスを用いた凝集 平坦に電気錫めつきを施した後、フラツクス
(ZnCl2、NH4Cl等の水溶液)を表面に任意の分
布状態に塗布した後、溶錫処理を行い、フラツク
スが塗布された所と塗布されていない所の溶融錫
濡れ性の差を利用して、凸状もしくは凸凹状に錫
を凝集凝固させる。 (2) 不活性表面への凝集 表面に溶融錫の濡れに対する不活性化処理
(Niの拡散処理等)を施した後、平坦に電気錫め
つきを施し、溶錫処理を行い、錫を凝集凝固させ
る。 この金属錫層の下にはニツケル拡散層(不活性
層)32をその重量比Ni/(Ni+Fe)が0.50以
下に、かつその厚さが5000Å以下になるように設
けることができる。ニツケル拡散層は平坦な錫層
を凸部状に処理するためあるいは局部的凸部を有
する薄い金属錫層を形成するための不活性層とし
て形成するものである。ニツケル拡散層が上記範
囲をはずれると上記の如く凸部を満足いくように
形成されにくくなる。 以下にシーム溶接缶用表面処理鋼板の品質特性
を把握するために用いたAES分析法、溶接法、
塗装後耐食性の評価方法を示した。 (1) AES測定 シーム溶接缶用表面処理鋼板表面の金属クロム
の分布と定量、金属クロムとクロム水和酸化物の
総和の分布と定量をAESにより調べた。 測定は、真空度1.0×10-9Torr、ビーム電圧
10.0KVの条件で分布は大まかにライン分析を用
いて調べ、特に厳密な定量値は、ライン分析と深
さ方向の分析を組み合わせ、検量線法で、すべて
の分析試料を同じ日に行つた。 金属クロムの分布と定量は、得られためつき板
を熱アルカリ(7.5N NaOH、90℃)に10分間浸
漬した後、上記方法で、金属クロムとクロム水和
酸化物の総和の分布と定量は得られためつき板を
そのまま上記方法で行つた。 (2) 溶接性の評価 溶接電極として約1.5mmφの銅ワイヤーを使用
し、これを移動しながら供試材試片を一定の加圧
下で重ね合わせ、溶接速度40m/分で電気抵抗溶
接を行い、溶接部が十分の強度を有し、かつ、い
わゆる「散り」の発生がないという条件から決め
られる溶接電流と加圧力の適正の範囲の大きさに
より素材の溶接性を評価した。 なお、溶接部の強度は溶接部を挾んだ円筒端部
からV字型の切込みを入れ、3角部をプライヤー
で握つて他端に向つて引つ張る、いわゆるピール
テストを行い、途中で溶接部分が切断しないこと
を必要強度とした。 (3) 塗装後の耐食性 供試材試片にエポキシ・フエノール系塗料を50
mg/dm2の厚さに塗装後、クロスカツトを入れ、
更に5mmのエリクセン張り出しを行つたものを、
端部と裏面をシールして塗装後耐食性の試験片と
した。この試験片を試験液として市販品のグレー
プフルーツジユース、トマトジユース、ミルクお
よびコーヒーを用いて55℃において1週間浸漬し
た後の加工部の腐食状態を総合的に判定した。 溶接性試験と塗装後耐食性の評価記号はそれぞ
れ第1表、第2表に示すとおりである。
に電気抵抗溶接により缶胴を接合する方式に適し
た溶接性と塗装後耐食性にすぐれたシーム溶接缶
用表面処理鋼板に関するものである。 <従来技術とその問題点> 食缶用と素材として従来一般にぶりきと称され
る錫めつき鋼板が広く用いられてきた。この缶胴
の接合方式としては、以前は半田による接合方式
が採用されていたが、半田に含まれる鉛の毒性の
問題から、近年、純錫半田が使用されるようにな
つた。しかし、純錫半田は、接合時の濡れ性が劣
ることから半田接合の技術上の問題があり、更に
高価な純錫半田を使用することにより製造コスト
が上昇するという問題があつた。 一方、近年、食品容器は、例えば、ポリエチレ
ン、アルミニウム、ガラス、紙などの低価格競合
材料の進出に直面しており、上記の如き高価な錫
を付着量2.8〜11.2g/m2の如く厚くめつきしたぶ
りき缶は製造コストが高いので、耐食性には格段
すぐれた特性を有しているとはいえ、苦しい競合
的立場を強いられてきた。 ぶりき缶の上記欠点を解消する目的で、最近半
田接合法に代つて缶胴を電気抵抗溶接によつて接
合する方式が発展し、普及するようになつてき
た。そのためには電気抵抗溶接に適した缶用素材
が必要である。 従来から用いられている缶用材料としては、上
記ぶりきのほかにクロムタイプのテインフリース
チールがある。これは電解クロメート処理を施
し、表面に金属クロムとクロム水和酸化物層を形
成したものであり、経済性には優れているが、表
面に存在する厚いクロム水和酸化物被膜が高抵抗
であるために、溶接性が悪く、溶接部の強度不足
を生じ溶接缶用素材としては適当でない。 その他従来の缶用素材がいずれも溶接缶用素材
として不適切であることから種々の試みが提案さ
れている。例えば、アメリカのナシヨナルスチー
ル社によつて発表された「ニツケルライト」に代
表されるニツケルめつき鋼板があるが、これは鋼
板上に約0.5g/m2の目付量のニツケルめつきを施
した上、表面に在来のクロメート処理を施したも
ので、塗料の密着性が劣り、また30m/min以上
の高速溶接での溶接性が劣るために広く用いられ
るにいたつていない。 更に他の1つは、アメリカ、ジヨーンズ・ロー
リン・ステイール社によつて発表された「テイン
アロイ」に代表されるものである。これは約
0.6g/m2の薄目付の錫めつきを溶錫処理した後、
在来のクロメート処理を施したものであるが、耐
錆性、塗料の密着性、溶接性ともに不充分であ
る。 電気抵抗溶接に適する缶用素材の具備すべき要
件としては溶接性と塗装後の耐食性がすぐれたも
のであることが要求される。この要件を具体的に
説明すると、溶接の際に充分の溶接強度があり、
しかも溶接部にいわゆる「散り」などの溶接欠陥
を生じない適正溶接電流範囲を有し、缶内容物に
対して塗装して用いた場合、塗膜の有する耐食性
を充分生かすことができる塗膜の密着性を有し、
更に不可避的に生ずる塗膜欠陥部においては、素
材自体の優れた耐食性によつて腐食を防止できる
ものでなければならない。このような低コストで
溶接性と塗装後耐食性を満足する溶接缶用素材と
して、本発明者らは先に鋼板表面に多数の凸部を
有する金属錫層を有し、この金属錫層上にクロム
水和酸化物あるいは金属クロムとクロム水和酸化
物からなるクロメート被膜を有するシーム溶接缶
用表面処理鋼板(特願昭59−063883号)を提供し
た。 上記方法で得られるシーム溶接缶用表面処理鋼
板は、特に金属錫層を凸状に形成させることによ
る錫の節約効果が大きく、少ない錫量で適正溶接
電流範囲を有し、シーム溶接缶用素材として溶接
性、塗装後耐食性ともに優れたものであつた。し
かし、缶内容物によつては、非常に厳しい条件下
での塗装後耐食性が要求され、こういつた条件下
では、塗装後耐食性の充分でないものがあること
が判明した。 <発明の構成> 本発明は、鋼板表面に下記(i)〜(iii)の性状の多数
の凸部および凹部を有する金属錫層と、 各凸部の面積が1μm2〜800000μm2 凸部の占める面積百分率が20〜80% 凸部の金属錫の厚さが0.007μm〜0.7μm この金属錫層上に金属クロムとクロム水和酸化
物からなるクロメート皮膜層を有するシーム溶接
缶用表面処理鋼板において、金属錫凸部上の金属
クロム量をXMmg/m2、クロム水和酸化物量をXO
mg/m2、金属錫凹部上の金属クロム量をYMmg/
m2、クロム水和酸化物量をYOmg/m2とした時、 XM≧2、18≧XM+XO≧4 YM≧4、YM+YO≧8 となるように金属錫層上のクロメート皮膜層を分
布させることにより、溶接性と塗装後耐食性の非
常に良好なシーム溶接缶用表面処理鋼板を提供す
るものである。 また、本発明は、鋼板表面に下記(i)〜(iii)の性状
の多数の凸部および凹部を有する金属錫層と、 各凸部の面積が1μm2〜800000μm2 凸部の占める面積百分率が20〜80% 凸部の金属錫の厚さが0.007μm〜0.7μm この金属錫層上に金属クロムとクロム水和酸化
物からなるクロメート皮膜層とを有し、該クロメ
ート皮膜層が、前記金属錫凸部上に金属クロム量
をXMmg/m2、クロム水和酸化物量(以下クロム
換算量)をXOmg/m2、前記金属錫凹部上の金属
クロム量をYMmg/m2、クロム水和酸化物量をYO
mg/m2とした時、 XM≧2、18≧XM+XO≧4 YM≧4、YM+YO≧8 を満足するシーム溶接缶用表面処理鋼板を製造す
るに際し、鋼板表面に前記多数の凸部および凹部
を有する金属錫層を形成し、この金属錫層上への
クロメート皮膜形成の電解処理を行う前に、金属
錫層を形成した鋼板をクロメート処理液に浸漬処
理することを特徴とするシーム溶接缶用表面処理
鋼板の製造方法を提供するものである。 以下、本発明を更に詳細に説明する。 発明者らは、先に、溶接性と塗装後耐食性に優
れた薄目付ぶりきとして特願昭59−63883号に示
す鋼板を提案した。この鋼板は溶接性を塗装後耐
食性に優れた薄目付ぶりきとして画期的な製品を
提供するもので、しかも低コストであるという特
性を有するので、従来のぶりき材に代わるだけで
なくTFSにも代わつて用いられるようになつた。
この場合には、さらに金属Crの多いものが要求
されるようになつたが、単純に金属Crの量を増
やした場合には溶接性が悪くなり、クレームが発
生した。 従つて実ラインではSn量と金属Cr量を非常に
厳密な範囲で管理しなければならず、作業性、効
率が低いものとなつた。そこで本発明者らは、溶
接性は従来の性能を有し、安定して塗料密着性や
塗装後耐食性の優れた薄目付ぶりきについて考察
した。まず始めに同じCr量で塗装後耐食性の異
なる原因について表面皮膜構造の違いを調査し
た。 特願昭59−063883号に示すような表面に多数の
凸部および凹部を有するシーム溶接缶用表面処理
鋼板の構造は、摸式的に表わすと、第1a図また
は第1b図の様になつている。第1図において、
1は鋼板、2は金属錫層、3はクロメート皮膜
層、4は金属錫凸部、5は金属錫凹部である。金
属錫凹部5は、錫を節約するために、ほとんど金
属錫を有しないので塗装後耐食性は、上層のクロ
メート皮膜3が重要な役割をする。 そこで発明者らは、このクロメート皮膜の構造
と塗装後耐食性の関係を徹底的に調べたところ、
塗装後耐食性の非常に優れたものは、金属クロム
をある値以上有し、クロメート皮膜が金属錫凹部
に多いものであつた。 すなわち、種々のサンプルを用いて金属錫層上
のクロメート皮膜をAESのライン分析を用いて
分布を調べたところ、大きく分けると第2d図の
様にクロメート皮膜が均一なものと、第2c図の
様に金属錫の少ない部分の上にはクロメート皮膜
量が多いものとがあり、第2c図の分布を示すも
のは、塗装後耐食性が非常に優れていた。 第2c図および第2d図のAESライン分析結
果を摸式的に表わしたのがそれぞれ第2a図およ
び第2b図である。鋼板表面に多数の凸部4およ
び凹部5を有する金属錫層の場合、金属錫が多い
凸部4については、錫の犠牲防食用によつて塗装
後耐食性もあまり問題がない。 しかし凸部3以外の錫の少ない凹部5について
は、塗装後耐食性をクロメート皮膜でカバーする
必要があり、クロメート皮膜が重要な役割をす
る。一方、金属錫凸部上のクロメート皮膜は多す
ぎると溶接性が劣り、適正溶接電流範囲が得られ
ない。そこでクロメート皮膜が第2a図および第
2c図の様な分布をしていると凸部金属錫の溶接
性を損なうことなく、塗装後耐食性の優れたシー
ム溶接缶用表面処理鋼板が得られると考えられ
る。 そこで本発明者らは更にこのクロメート皮膜の
構造と、分布、量が溶接性と塗装後耐食性に与え
る影響について詳しく調べた。すなわち金属錫凸
部4上の金属クロム量をXMmg/m2、クロム水和
酸化物量をXOmg/m2とし、金属錫凹部5上の金
属クロム量をYMmg/m2、クロム水和酸化物量を
YOmg/m2とした時、このXM、YM、XM+XO、YM
+YOを変化させて、塗装後耐食性と溶接性を詳
しく調べた。その結果を第3図および第4図に示
す。 凸部金属錫部4上の金属クロム量(XM)が2
mg/m2未満の場合や、金属クロムとクロム水和酸
化物の合計量(XM+XO)が4mg/m2未満では塗
装後耐食性の劣るものがあり、またXM+XOが18
mg/m2を越すと溶接性が劣つた。 また金属錫凹部5は金属錫がほとんどないた
め、耐食性の良い条件は金属クロム量(YM)は
4mg/m2以上、また金属クロムとクロム水和酸化
物の合計量(YM+YO)は8mg/m2以上必要であ
ることがわかつた。 以上の構造を有するクロメート皮膜とすること
によつて、不良品の発生率が大幅に低減し、さら
に溶接性を悪くすることなく、これまでより優れ
た塗料密着性と塗装後耐食性を有する薄目付ぶり
きを実ラインで製造することができた。 また、クロメート皮膜を金属錫凹部上に多く形
成させる方法としては、金属錫凸部上のクロムの
電流効率を小さくするとか、金属錫凹部上のクロ
ム電流効率を大きくするとかの方法が考えられ
る。つまり、金属錫凸部よりも金属錫凹部のクロ
ムの電流効率が高ければ、クロムは凹部の方に多
く電着されることになる。 具体的に実施する際に現存の設備をそのまま用
いて行える最も簡便な方法は、錫めつきし、凸状
錫層を形成させた後、クロメート処理する前に、
同クロメート溶液に浸漬し、凸状錫部を酸化さ
せ、酸化錫を多く形成せしめることによつて凸状
錫部のクロムの電流効率を低くし、金属錫凹部に
クロメート皮膜を多く形成させることである。 クロメート電解処理前の浸漬処理は、第1番目
のクロメート処理層のダウンパスをoffとするの
が最も良い方法である。更に長い時間浸漬し、2
パス以上電解をoffとしても本発明の効果は認め
られるが、必要以上にoffのパスを設けることは、
設備コストの面からマイナスであり、さらにoff
パス数が多くなれば、クロムの電流効率が小さく
なりすぎるのでよくない。 さらにクロメート処理の電流密度が10A/dm2
以上とすると効果は大きくなる。電流密度が小さ
い場合には、下地の状態の影響を受けにくいた
め、前浸漬の効果が無くなつてしまうのではない
かと考えられる。 従つてクロメート処理を第1番目のクロメート
処理層のダウンパスをoffとし、クロメート浸漬
処理した後、10A/dm2以上の電流密度でクロメ
ート電解処理する事によつて本発明者らが先に提
案した多数の凸部を有する金属錫層を有するシー
ム溶接缶用表面処理鋼板(特願昭59−063883号)
の塗装後耐食性を、設備コストや管理コストをほ
とんど要することなく向上させるという大きな効
果を得ることができた。 本発明において、金属錫の効果は溶接性の向上
である。金属錫層は多数の凸部を有し、金属錫は
凸状もしくは凸凹状に分散して存在させるのが好
ましい。そして、 各凸部の面積が1μm2〜800000μm2 凸部の占める面積百分率が20〜80% 凸部の金属錫の厚さが0.007μm〜0.7μmとす
るのが好適である。 各凸部の面積を1μm2〜800000μm2に限定した理
由は、1μm2未満では溶接時の接触面積を広げる
効果が不十分であり、溶接性向上の効果がなく、
800000μm2超ではこの効果が飽和してしまい、不
必要に錫を使用することになり、経済的デメリツ
トを生ずる。 また同時に、凸部の面積百分率を20〜80%に限
定した理由は、20%未満では溶接時の接触面積を
広げる効果が不十分であり、溶接性向上の効果が
なく、80%超では凸状にする経済的優位性が失わ
れるからである。 また同時に、凸部の金属錫の厚さを0.007μm〜
0.7μmに限定した理由は、0.007μm未満では溶接
性向上効果が十分得られないからであり、0.7μm
超では溶接性向上効果が飽和し、経済的デメリツ
トを生ずるからである。金属錫の厚さは、下地金
属の種類、塗装後の焼付条件により上記範囲内で
任意に選べば良い。 金属錫を凸状もしくは凸凹状に分散して存在さ
せる方法としては、これらの限定されることはな
いが、代表的に次のようなものを挙げることがで
きる。 (1) フラツクスを用いた凝集 平坦に電気錫めつきを施した後、フラツクス
(ZnCl2、NH4Cl等の水溶液)を表面に任意の分
布状態に塗布した後、溶錫処理を行い、フラツク
スが塗布された所と塗布されていない所の溶融錫
濡れ性の差を利用して、凸状もしくは凸凹状に錫
を凝集凝固させる。 (2) 不活性表面への凝集 表面に溶融錫の濡れに対する不活性化処理
(Niの拡散処理等)を施した後、平坦に電気錫め
つきを施し、溶錫処理を行い、錫を凝集凝固させ
る。 この金属錫層の下にはニツケル拡散層(不活性
層)32をその重量比Ni/(Ni+Fe)が0.50以
下に、かつその厚さが5000Å以下になるように設
けることができる。ニツケル拡散層は平坦な錫層
を凸部状に処理するためあるいは局部的凸部を有
する薄い金属錫層を形成するための不活性層とし
て形成するものである。ニツケル拡散層が上記範
囲をはずれると上記の如く凸部を満足いくように
形成されにくくなる。 以下にシーム溶接缶用表面処理鋼板の品質特性
を把握するために用いたAES分析法、溶接法、
塗装後耐食性の評価方法を示した。 (1) AES測定 シーム溶接缶用表面処理鋼板表面の金属クロム
の分布と定量、金属クロムとクロム水和酸化物の
総和の分布と定量をAESにより調べた。 測定は、真空度1.0×10-9Torr、ビーム電圧
10.0KVの条件で分布は大まかにライン分析を用
いて調べ、特に厳密な定量値は、ライン分析と深
さ方向の分析を組み合わせ、検量線法で、すべて
の分析試料を同じ日に行つた。 金属クロムの分布と定量は、得られためつき板
を熱アルカリ(7.5N NaOH、90℃)に10分間浸
漬した後、上記方法で、金属クロムとクロム水和
酸化物の総和の分布と定量は得られためつき板を
そのまま上記方法で行つた。 (2) 溶接性の評価 溶接電極として約1.5mmφの銅ワイヤーを使用
し、これを移動しながら供試材試片を一定の加圧
下で重ね合わせ、溶接速度40m/分で電気抵抗溶
接を行い、溶接部が十分の強度を有し、かつ、い
わゆる「散り」の発生がないという条件から決め
られる溶接電流と加圧力の適正の範囲の大きさに
より素材の溶接性を評価した。 なお、溶接部の強度は溶接部を挾んだ円筒端部
からV字型の切込みを入れ、3角部をプライヤー
で握つて他端に向つて引つ張る、いわゆるピール
テストを行い、途中で溶接部分が切断しないこと
を必要強度とした。 (3) 塗装後の耐食性 供試材試片にエポキシ・フエノール系塗料を50
mg/dm2の厚さに塗装後、クロスカツトを入れ、
更に5mmのエリクセン張り出しを行つたものを、
端部と裏面をシールして塗装後耐食性の試験片と
した。この試験片を試験液として市販品のグレー
プフルーツジユース、トマトジユース、ミルクお
よびコーヒーを用いて55℃において1週間浸漬し
た後の加工部の腐食状態を総合的に判定した。 溶接性試験と塗装後耐食性の評価記号はそれぞ
れ第1表、第2表に示すとおりである。
【表】
【表】
<実施例>
次に本発明を実施例をあげて具体的に説明す
る。 通常のブリキ原板を電解脱脂、酸洗した後、以
下の方法に従つて金属錫を凸状に存在させ、その
上にクロメート処理を施した。 (実施例 1) 硫酸ニツケル250g/l、塩化ニツケル45g/
l、ほう酸30g/lの液を用いてニツケルめつき
し、さらに硫酸第一鉄55g/l、フエノールスル
ホン酸(65%)35g/l、光沢剤適量の液を用い
て錫めつきを積層させ、錫の融点以上で加熱溶融
処理して錫を凝集凝固させ、凸状の金属錫層を得
た。このときの各凸部の面積は2〜170μm2で、
凸部の面積百分率は55%で、凸部の金属錫の厚さ
は0.10〜0.50μmであつた。また凹部の金属錫の厚
さは0〜0.005μmだつた。 さらにCrO340g/l、H2SO40.38g/lの溶液
に0.4秒浸漬後、20A/dm2の陰極処理を施した。 (比較例 1) 実施例1と同じ方法により、凸状の金属錫層を
得、さらにCrO315g/l液中でめつき前浸漬処理
することなく、直ちに5A/dm2の陰極処理をし、
CrO350g/l、60℃液に3秒浸漬した。 (比較例 2) 実施例1と同じ方法で凸状の金属錫層を得、さ
らにCrO3 100g/l+H2SO4 0.7g/lのクロメ
ート処理液に0.5秒浸漬後、35A/dm2の陰極処
理を行つた。 (実施例 2) 硫酸ニツケル250g/l、塩化ニツケル45g/
l、ほう酸30g/lの液を用いてニツケルめつき
し、10%H2+90%N2雰囲気中で700℃の焼鈍し、
Niめつきを拡散浸透させた。この鋼板を圧下率
1.5%の調質圧延をおこなつた後、脱脂、酸洗を
行い、塩化第一錫50g/l、フツ化ナトリウム
45g/l、フツ化水素ナトリウム10g/l、塩化
ナトリウム54g/l、黄血ソーダ0.8g/l、光沢
剤適量の液を用いて錫めつきをし、ひき続き錫の
融点以上で加熱溶融処理して錫を凝集凝固させ、
凸状の金属錫層を得た。このときの各凸部の面積
は2〜235μm2で、凸部の面積百分率は、70%で、
凸部の金属錫の厚さは0.08〜0.27μmであつた。ま
た凹部の金属錫の厚さは0〜0.001μmだつた。 さらにCrO3 50g/l、NaF 5g/lの溶液に
0.6秒浸漬後、30A/dm2の陰極処理を施した。 (比較例 3) 実施例2と同じ方法により、凸状の金属錫層を
得、さらに実施例2と同じクロメート処理液を用
いて、めつき前浸漬処理せずに、直ちに30A/d
m2の陰極処理を施した。 (比較例 4) 実施例2と同じ方法で凸状の金属錫層を得、さ
らにCrO3 20g/l+Na2 Cr2 O7 3g/l+
H2SO4 0.2g/lの液中でめつき前浸漬処理を行
わず、直ちに30A/dm2の陰極処理を行つた。 実施例1〜2および比較例1〜4で得られた鋼
板の金属錫凸部(第1図の4)上の金属クロム量
XM、金属クロムとクロム水和酸化物の合計クロ
ム量(XM+XO)、金属錫凹部(第1図の5)上
の金属クロム量YM、金属クロムとクロム水和酸
化物の総クロム量(YM+YO)と、溶接試験結
果、および塗装後耐食性試験結果を第3表に示し
た。
る。 通常のブリキ原板を電解脱脂、酸洗した後、以
下の方法に従つて金属錫を凸状に存在させ、その
上にクロメート処理を施した。 (実施例 1) 硫酸ニツケル250g/l、塩化ニツケル45g/
l、ほう酸30g/lの液を用いてニツケルめつき
し、さらに硫酸第一鉄55g/l、フエノールスル
ホン酸(65%)35g/l、光沢剤適量の液を用い
て錫めつきを積層させ、錫の融点以上で加熱溶融
処理して錫を凝集凝固させ、凸状の金属錫層を得
た。このときの各凸部の面積は2〜170μm2で、
凸部の面積百分率は55%で、凸部の金属錫の厚さ
は0.10〜0.50μmであつた。また凹部の金属錫の厚
さは0〜0.005μmだつた。 さらにCrO340g/l、H2SO40.38g/lの溶液
に0.4秒浸漬後、20A/dm2の陰極処理を施した。 (比較例 1) 実施例1と同じ方法により、凸状の金属錫層を
得、さらにCrO315g/l液中でめつき前浸漬処理
することなく、直ちに5A/dm2の陰極処理をし、
CrO350g/l、60℃液に3秒浸漬した。 (比較例 2) 実施例1と同じ方法で凸状の金属錫層を得、さ
らにCrO3 100g/l+H2SO4 0.7g/lのクロメ
ート処理液に0.5秒浸漬後、35A/dm2の陰極処
理を行つた。 (実施例 2) 硫酸ニツケル250g/l、塩化ニツケル45g/
l、ほう酸30g/lの液を用いてニツケルめつき
し、10%H2+90%N2雰囲気中で700℃の焼鈍し、
Niめつきを拡散浸透させた。この鋼板を圧下率
1.5%の調質圧延をおこなつた後、脱脂、酸洗を
行い、塩化第一錫50g/l、フツ化ナトリウム
45g/l、フツ化水素ナトリウム10g/l、塩化
ナトリウム54g/l、黄血ソーダ0.8g/l、光沢
剤適量の液を用いて錫めつきをし、ひき続き錫の
融点以上で加熱溶融処理して錫を凝集凝固させ、
凸状の金属錫層を得た。このときの各凸部の面積
は2〜235μm2で、凸部の面積百分率は、70%で、
凸部の金属錫の厚さは0.08〜0.27μmであつた。ま
た凹部の金属錫の厚さは0〜0.001μmだつた。 さらにCrO3 50g/l、NaF 5g/lの溶液に
0.6秒浸漬後、30A/dm2の陰極処理を施した。 (比較例 3) 実施例2と同じ方法により、凸状の金属錫層を
得、さらに実施例2と同じクロメート処理液を用
いて、めつき前浸漬処理せずに、直ちに30A/d
m2の陰極処理を施した。 (比較例 4) 実施例2と同じ方法で凸状の金属錫層を得、さ
らにCrO3 20g/l+Na2 Cr2 O7 3g/l+
H2SO4 0.2g/lの液中でめつき前浸漬処理を行
わず、直ちに30A/dm2の陰極処理を行つた。 実施例1〜2および比較例1〜4で得られた鋼
板の金属錫凸部(第1図の4)上の金属クロム量
XM、金属クロムとクロム水和酸化物の合計クロ
ム量(XM+XO)、金属錫凹部(第1図の5)上
の金属クロム量YM、金属クロムとクロム水和酸
化物の総クロム量(YM+YO)と、溶接試験結
果、および塗装後耐食性試験結果を第3表に示し
た。
【表】
アンダーラインは本発明の範囲をはずれたものを示す
。
実施例1,2は、金属錫を凸状に形成させたこ
とにより、少ない錫量で適正溶接電流範囲を有
し、また金属錫凸部上の金属クロム量、クロム水
和酸化物量、さらに金属錫凹部上の金属クロム
量、クロム水和酸化物量が本発明の適正範囲であ
るので、塗装後耐食性も非常にすぐれ、前述のシ
ーム溶接缶用表面処理鋼板としての要件を全て満
足するものが得られた。 比較例1は、金属錫凸部上のクロム水和酸化物
量が多いため、適正溶接電流範囲が存在せず、ま
た金属錫凹部上の金属クロム量も少ないため、塗
装後耐食性も悪かつた。 比較例2は、金属錫凹部上のクロム水和酸化物
量が少ないため、塗装後耐食性が少し劣つた。 比較例3は金属クロムを全く有しないクロメー
ト皮膜であるため、塗装後耐食性が悪かつた。 比較例4は、金属錫凸部上のクロム水和酸化物
量が多いため、適正溶接電流範囲が存在しなかつ
た。 <発明の効果> 上述したことから明らかなように、本発明によ
るシーム溶接缶用表面処理鋼板は、鋼板上に凸状
の金属錫層を有するために金属錫の節約効果が大
きく、充分な溶接性能をもち、さらに上層に塗装
後耐食性に有効な金属クロムとクロム水和酸化物
からなるクロメート皮膜を有し、しかも金属錫の
凹凸に合わせたクロメート皮膜の分布を厳密に限
定したのでその溶接性はもちろんの事、非常にき
びしい条件下での塗装後耐食性もきわめてすぐれ
ており、本発明者等が、先に挙げた溶接缶用素材
に要求されたすべての条件を満足するシーム溶接
缶用表面処理鋼板を提供することができた。
。
実施例1,2は、金属錫を凸状に形成させたこ
とにより、少ない錫量で適正溶接電流範囲を有
し、また金属錫凸部上の金属クロム量、クロム水
和酸化物量、さらに金属錫凹部上の金属クロム
量、クロム水和酸化物量が本発明の適正範囲であ
るので、塗装後耐食性も非常にすぐれ、前述のシ
ーム溶接缶用表面処理鋼板としての要件を全て満
足するものが得られた。 比較例1は、金属錫凸部上のクロム水和酸化物
量が多いため、適正溶接電流範囲が存在せず、ま
た金属錫凹部上の金属クロム量も少ないため、塗
装後耐食性も悪かつた。 比較例2は、金属錫凹部上のクロム水和酸化物
量が少ないため、塗装後耐食性が少し劣つた。 比較例3は金属クロムを全く有しないクロメー
ト皮膜であるため、塗装後耐食性が悪かつた。 比較例4は、金属錫凸部上のクロム水和酸化物
量が多いため、適正溶接電流範囲が存在しなかつ
た。 <発明の効果> 上述したことから明らかなように、本発明によ
るシーム溶接缶用表面処理鋼板は、鋼板上に凸状
の金属錫層を有するために金属錫の節約効果が大
きく、充分な溶接性能をもち、さらに上層に塗装
後耐食性に有効な金属クロムとクロム水和酸化物
からなるクロメート皮膜を有し、しかも金属錫の
凹凸に合わせたクロメート皮膜の分布を厳密に限
定したのでその溶接性はもちろんの事、非常にき
びしい条件下での塗装後耐食性もきわめてすぐれ
ており、本発明者等が、先に挙げた溶接缶用素材
に要求されたすべての条件を満足するシーム溶接
缶用表面処理鋼板を提供することができた。
第1a図および第1b図は、凸状の金属錫層を
有するシーム溶接缶用表面処理鋼板の線図的断面
図である。第2a図および第2b図は、凸状金属
錫層を有するシーム溶接缶用表面処理鋼板のCr
とSnのAESライン分析図である。第2c図およ
び第2d図は、それぞれ第2a図および第2b図
の模式図である。第3図および第4図は、それぞ
れ金属錫凸部と凹部上の金属クロム量、クロム水
和酸化物量が溶接性および塗装後耐食性に及ぼす
影響を示したグラフである。 符号の説明、1…鋼板、2…金属錫、3…クロ
メート皮膜、4…金属錫凸部、5…金属錫凹部。
有するシーム溶接缶用表面処理鋼板の線図的断面
図である。第2a図および第2b図は、凸状金属
錫層を有するシーム溶接缶用表面処理鋼板のCr
とSnのAESライン分析図である。第2c図およ
び第2d図は、それぞれ第2a図および第2b図
の模式図である。第3図および第4図は、それぞ
れ金属錫凸部と凹部上の金属クロム量、クロム水
和酸化物量が溶接性および塗装後耐食性に及ぼす
影響を示したグラフである。 符号の説明、1…鋼板、2…金属錫、3…クロ
メート皮膜、4…金属錫凸部、5…金属錫凹部。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1 鋼板表面に下記(i)〜(iii)の性状の多数の凸部お
よび凹部を有する金属錫層と、 各凸部の面積が1μm2〜800000μm2 凸部の占める面積百分率が20〜80% 凸部の金属錫の厚さが0.007μm〜0.7μm この金属錫層上に金属クロムとクロム水和酸化
物からなるクロメート皮膜層とを有するシーム溶
接缶用表面処理鋼板において、 該クロメート皮膜層が、前記金属錫凸部上の金
属クロム量をXMmg/m2、クロム水和酸化物量
(以下クロム換算量)をXOmg/m2、前記金属錫凹
部上の金属クロム量をYMmg/m2、クロム水和酸
化物量をYOmg/m2とした時、 XM≧2、18≧XM+XO≧4 YM≧4、YM+YO≧8 を満足するようにしたことを特徴とするシーム溶
接缶用表面処理鋼板。 2 鋼板表面に下記(i)〜(iii)の性状の多数の凸部お
よび凹部を有する金属錫層と、 各凸部の面積が1μm2〜800000μm2 凸部の占める面積百分率が20〜80% 凸部の金属錫の厚さが0.007μm〜0.7μm この金属錫層上に金属クロムとクロム水和酸化
物からなるクロメート皮膜層とを有し、該クロメ
ート皮膜層が、前記金属錫凸部上の金属クロム量
をXMmg/m2、クロム水和酸化物量(以下クロム
換算量)をXOmg/m2、前記金属錫凹部上の金属
クロム量をYMmg/m2、クロム水和酸化物量をYO
mg/m2とした時、 XM≧2、18≧XM+XO≧4 YM≧4、YM+YO≧8 を満足するシーム溶接缶用表面処理鋼板を製造す
るに際し、鋼板表面に前記多数の凸部および凹部
を有する金属錫層を形成し、この金属錫層上への
クロメート皮膜形成の電解処理を行う前に、金属
錫層を形成した鋼板をクロメート処理液に浸漬処
理することを特徴とするシーム溶接缶用表面処理
鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP12953185A JPS61288080A (ja) | 1985-06-14 | 1985-06-14 | シ−ム溶接缶用表面処理鋼板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP12953185A JPS61288080A (ja) | 1985-06-14 | 1985-06-14 | シ−ム溶接缶用表面処理鋼板およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS61288080A JPS61288080A (ja) | 1986-12-18 |
JPH0425350B2 true JPH0425350B2 (ja) | 1992-04-30 |
Family
ID=15011817
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP12953185A Granted JPS61288080A (ja) | 1985-06-14 | 1985-06-14 | シ−ム溶接缶用表面処理鋼板およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPS61288080A (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
FR2765891B1 (fr) * | 1997-07-10 | 1999-08-20 | Lorraine Laminage | Procede de traitement de surface de toles d'acier revetu au trempe d'alliage comprenant essentiellement du zinc et du fer |
JP4660626B2 (ja) * | 2009-02-04 | 2011-03-30 | 新日本製鐵株式会社 | レトルト後塗膜密着性に優れたスズめっき鋼板及びその製造方法 |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS61264196A (ja) * | 1985-05-20 | 1986-11-22 | Toyo Kohan Co Ltd | 溶接缶用表面処理鋼板の製造方法 |
JPS6254399A (ja) * | 1985-04-01 | 1987-03-10 | ホーチキ株式会社 | アナログ火災報知装置 |
-
1985
- 1985-06-14 JP JP12953185A patent/JPS61288080A/ja active Granted
Patent Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS6254399A (ja) * | 1985-04-01 | 1987-03-10 | ホーチキ株式会社 | アナログ火災報知装置 |
JPS61264196A (ja) * | 1985-05-20 | 1986-11-22 | Toyo Kohan Co Ltd | 溶接缶用表面処理鋼板の製造方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS61288080A (ja) | 1986-12-18 |
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