JP7615541B2 - 積層フィルムロール、それを用いたフィルム積層体ロール - Google Patents
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Description
また、このガスバリア性積層フィルムについては、包装用途以外にも、近年、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、新しい用途も注目されている。
例えば、透明性及びガスバリア性と共に、デラミネーション等の発生がない耐ボイル性及び耐レトルト性を持たせる観点から、プラスチック基材の少なくとも片面に、官能基含有シランカップリング剤又はシランカップリング剤の加水分解物とポリオール及びイソシアネート化合物との複合物からなるプライマー層、及び厚さ5~300nmの無機酸化物薄膜層を順次積層してなる蒸着フィルムが開示されている(特許文献1)。
例えば、ポリ乳酸フィルムの結晶、非晶領域の割合を調整することで、密着性とガスバリア性との両立を図ることが開示されている(特許文献4)。
本発明の実施形態の一例に係る積層フィルムロール(「本積層フィルムロール」と称する)は、基材フィルム(「本基材フィルム」と称する)の少なくとも片面側に、アンカー層および無機物層をこの順に積層してなる構成を備えた積層フィルムロールである。
本積層フィルムロールは、本基材フィルムの少なくとも片面側にアンカー層及び無機物層を順次積層してなる構成において、ガスバリア性と密着性との両立を図るために、熱処理時のフィルム変形量を小さくする。そのため、本基材フィルム上にアンカー層および無機物層を設ける際の加工温度雰囲気下におけるフィルムの寸法変化を抑制するようにした。さらに本発明は、熱機械分析(TMA)の測定温度を条件1~条件3の3区間に分けて、条件1を満足することを必須要件とするものである。それに加えて、条件2および/または条件3を満足するのが好ましく、最も好ましくは条件1~条件3を同時に満足するのがよい。
本積層フィルムロールを構成する本基材フィルムは、透明性を有し、且つ、必要十分な剛性を備えたフィルムであれば、材質及び構成を限定するものではない。
本基材フィルムが多層構成の場合、2層又は3層構成であってもよいし、4層又はそれ以上の多層であってもよい。
なお、本発明において、「ポリ乳酸フィルム」または「ポリオレフィンフィルム」とは、当該フィルムが単層構成であっても多層構成であっても、ポリ乳酸樹脂またはポリオレフィン樹脂を主成分樹脂とする層を備えたフィルムを意味する。好ましくは、ポリ乳酸樹脂またはポリオレフィン樹脂を主成分樹脂とする層が主層であるフィルムである。
その中でも、本基材フィルムが単層構成であっても、多層構成であっても、各層の主成分樹脂がポリ乳酸樹脂またはポリオレフィン樹脂であるものが好ましい。
また、「主成分樹脂」とは、各層を構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂を意味し、例えば各層を構成する樹脂のうち50質量%以上、特に70質量%以上、中でも80質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂である。
上記のポリ乳酸樹脂は、D-乳酸もしくはL-乳酸の単独重合体、またはこれらの共重合体である。すなわち、上記のポリ乳酸樹脂は、構造単位がD-乳酸であるポリ(D-乳酸)、構造単位がL-乳酸であるポリ(L-乳酸)、及び、L-乳酸とD-乳酸の共重合体であるポリ(DL-乳酸)のうちの何れか、又は、これらの混合樹脂であればよい。また、D-乳酸とL-乳酸との共重合比の異なる複数の上記共重合体の混合樹脂であってもよい。
当該共重合成分としては、例えば、乳酸以外のα-ヒドロキシカルボン酸、テレフタル酸等の非脂肪族ジカルボン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の非脂肪族ジオール、エチレングリコール等の脂肪族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
具体的には、乳酸と、乳酸以外のα-ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、または脂肪族ジカルボン酸との共重合体の共重合比は、乳酸/乳酸以外のα-ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、または脂肪族ジカルボン酸=「95/5」~「10/90」、好ましくは「90/10」~「20/80」、さらに好ましくは「80/20」~「30/70」である。
共重合比が上記範囲内であれば、剛性、透明性、耐衝撃性などの物性バランスの良好なフィルムを得ることができる。また、これらの共重合体の構造としては、ランダム共重
合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられ、いずれの構造でもよい。但し、フィルムの耐衝撃性および透明性の観点から、ブロック共重合体またはグラフト共重合体が好ましい。
上記のポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体などのエチレン系共重合体などを挙げることができる。中でも、熱収縮率と成形性との観点から、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。
中でも、延伸性、熱収縮特性、フィルムの耐衝撃性や透明性、剛性等の観点から、α-オレフィンとしてプロピレン単位の含有率が80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上のランダムポリプロピレンが特に好適に用いられる。また、共重合するα-オレフィンは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
本基材フィルムは、フィルム表面を粗面化して易滑性を付与する目的および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を含有してもよい。
当該粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではない。例えば、シリカ炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記粒子の形状は、特に限定されるわけではない。例えば球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれであってもよい。
また、上記粒子の硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
本基材フィルムは、必要に応じて、従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料、紫外線吸収剤などを含有することもできる。
本基材フィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではなく、9μm~100μmであるのが好ましく、中でも12μm以上或いは75μm以下、その中でも15μm以上或いは60μm以下であるのがさらに好ましい。
また、一軸延伸又は二軸延伸したものであってもよく、剛性の点から、二軸延伸フィルムであるのが好ましい。
本積層フィルムロールに関して所定の温度範囲おける平均線膨張率を上記のように調整するための観点から、本基材フィルムについて、分析(TMA)の測定温度を条件2-1~条件2-3の3区間に分けて、条件2-1を満足するのが好ましく、加えて、条件2-2および/または条件2-3を満足するのが好ましく、最も好ましくは条件2-1~条件2-3を同時に満足するのがよい。
なお、本積層フィルムロールの条件1,2,3と、本基材フィルムの条件2-1、2-2、2-3はそれぞれ対応するものである。
本基材フィルムの製造方法の一例を示す。
次に、当該未配向シートを、一方向、通常は長手方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。この際、延伸温度は、通常25~120℃、好ましくは35~100℃であり、延伸倍率は通常2.5~5.0倍、好ましくは2.8~4.0倍である。
熱機械分析(TMA)における各温度範囲の平均線膨張率を上記範囲にするためには、上述のように、100℃を超える温度で熱処理するのが好ましい。
なお、前記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。
本積層フィルムロールを構成するアンカー層(「本アンカー層」と称する)は、本基材フィルムと本無機物層との接着性を高める機能を備えた層である。
当該アンカー層乃至アンカーコート剤の主成分樹脂としては、溶剤性又は水性のポリエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂、アルコキシル基含有樹脂、変性スチレン樹脂及び変性シリコーン樹脂等を挙げることができ、これらを単独或いは2種以上組み合わせて使用することができる。中でも、密着性及び耐熱水性の点から、ポリエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。その中でも、ポリエステル、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂が好ましい。
この際、本アンカー層におけるイソシアネート系化合物の含有量は、前記主成分樹脂100質量部に対して、1~50質量部であるのが好ましく、中でも5質量部以上或いは40質量部以下、その中でも10質量部以上或いは30質量部以下であるのがさらに好ましい。
よって、本アンカー層は、硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を本基材フィルム上にコートした後、硬化処理して形成してなる層であるのが好ましい。
かかる観点から、本アンカー層の厚さは0.02~5.00μmであるのが好ましく、中でも0.03μm以上或いは3.00μm以下、その中でも0.05μm以上或いは1.00μm以下であるのがより好ましい。
中でも、熱硬化性樹脂として、イソシアネート系化合物を選択して用いるのが特に好ましい。
このように良好なバリア性を発現できるメカニズムは、次のように推測することができる。
一般的に、耐熱性に乏しい基材フィルムに無機物層を蒸着すると、蒸着時の熱ダメージにより、基材フィルムは収縮する傾向がある。
また、一般的に、アンカー層が基材と無機物層との間に介在する場合、往々にして基材フィルムと無機物層との密着性は良くなる傾向にある。そのため、基材フィルムが収縮しようとする力が、無機物層に直接伝播して、クラックなどを発生させることで、バリア性が低下する。
これに対し、本積層フィルムロールでは、基材フィルムおよびアンカー層、無機物層を設けた積層フィルムロールの平均膨張係数に着目し、該項目を一定範囲内に制御することにより、基材フィルムまたは積層フィルムロール自体の収縮しようとする力を抑制することで、無機物層のクラック発生を抑制することができ、加熱にも耐え得る良好なバリア性が得られるものと推察することができる。
本積層フィルムロールを構成する無機物層(「本無機物層」と称する)は、無機物、特に無機酸化物を主材として含有する層である。
該「主材」とは、本無機物層の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める材料という意味である。
ここでは、本無機物層の代表例として、PVD無機物層、プラズマアシスト蒸着無機物層、及び、CVD無機物層について説明する。
本無機物層が、物理的気相蒸着法(PVD)により形成されたPVD無機物層を少なくとも1層備えていれば、より高いガスバリア性を発揮させることができる点で好ましい。
上記組成であることはXPS分析などで確認することができる。
酸素の導入時の分圧は、全圧に対して10~90%の範囲であるのが好ましく、中でも20%以上或いは80%以下であるのがさらに好ましい。
本無機物層が、プラズマアシスト蒸着無機物層から構成されていれば、ガスバリア性を低下させずに透明性を向上させることができる。
「プラズマアシスト蒸着法」とは、真空蒸着中に、プラズマにより蒸着材料をイオン化ながら蒸着する、或いは別に設けたイオン源から気体イオンを照射する方法をいう。
プラズマアシスト蒸着法により本無機物層を形成すれば、効率的に酸素を本無機物層に取り込むことができ、上述したように、ガスバリア性を低下させずに透明性を向上させることができる。
通常の真空蒸着による薄膜は、スパッタリングなどにおける薄膜と比べて、飛来する粒子のもつエネルギーが小さく、膜の強度や密度において有利ではない。一方、プラズマアシスト蒸着法によれば、蒸着物質がエネルギーを得るため、真空蒸着においても強度、密度の高い薄膜を形成することができる。また、プラズマ中の励起種は、反応性に富むため、酸素、窒素、アセチレンなどのガスを導入することで、蒸発源を任意に酸化、窒化、炭化させた薄膜形成が可能となる。該方法により本無機物層を設けることで、スパッタリングやプラズマCVD法よりも速く製膜できるという利点も有している。
本無機物層が、CVD無機物層を少なくとも1層備えている場合、CVD無機物層は、金属、金属酸化物、金属窒化物及びケイ素化合物から選ばれる少なくとも一種を化学蒸着させてなる薄膜から構成されるのが好ましい。
前記金属酸化物又は金属窒化物としては、ガスバリア性、密着性の点から、前記金属の酸化物、窒化物及びこれらの混合物を用いるのが好ましい。また、有機化合物をプラズマ分解して得られる金属酸化物又は金属窒化物であってもよい。
また、ガスバリア性、密着性の点から、ケイ素、アルミニウム等の金属又は化合物を用いるのも好ましい。
上記ケイ素化合物としては、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、テトラt-ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4-ビストリメチルシリル-1,3-ブタジイン、ジ-t-ブチルシラン、1,3-ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1-(トリメチルシリル)-1-プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等を挙げることができる。
CVD無機物層が炭素を微量含有することで、応力緩和が効率よくなされ、バリアフィルム自体のカールを低減することもできる。その一方、ガスバリア性の観点から、CVD無機物層における炭素含有量は20at.%未満であることが好ましく、中でも10at.%以下であるのがより好ましく、その中でも5at.%以下であるのが最も好ましい。
炭素含有量を上記範囲とすることで、無機物層の表面エネルギーが大きくなり、無機物層同士の間の密着性が良好となるため、バリアフィルムの耐折曲げ性、耐剥離性が向上する。なお、「at.%」とは、原子組成百分率(atomic%)を示す。また、組成に関してはXPS分析などで確認することが可能である。
例えば化学蒸着(CVD)法により、ケイ素酸化物からなる層を形成する場合、そのための原料としては、ケイ素化合物であれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても使用することができる。気体の場合には、そのまま放電空間に導入できる。液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用するのが好ましい。また、溶媒希釈してから使用してもよい。該溶媒としては、メタノール、エタノール、n-ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒を使用することができる。
化学的気相蒸着法(CVD)により薄膜を形成する際の圧力は、緻密な薄膜を形成するため減圧下で行うことが好ましく、成膜速度とバリア性の観点から、10Pa以下であるのが好ましく、中でも1×10-2以上或いは5Pa以下、その中でも1×10-1以上或いは1Pa以下がより好ましい。
本無機物層は、単層構成であっても、2層以上の複層構成であってもよい。
例えば、2層以上の複層構成の一例として、そのうちの一層を無機物、例えば無機酸化物のみからなる無機物層とし、他の一層を、無機物例えば無機酸化物と有機物とからなる無機・有機混合層とする例を挙げることができる。
なお、ここで言う「柔軟な層」とは、例えばフレキシブル用途など、屈曲性が必要な用途に対応できるように、無機物層の応力を緩和する層の意味を包含するものである。
本無機物層の厚さ(無機物層が複層構成である場合はそれらの合計厚)は、0.1nm~500nmであるのが好ましく、中でも1nm以上或いは300nm以下、その中でも5nm以上或いは100nm以下であるのがさらに好ましい。
本無機物層の厚さが前記範囲であれば、所望するガスバリア性を確保することが可能となる。
本積層フィルムロールは、必要に応じて、本無機物層上に更に架橋樹脂層(「本架橋樹脂層」と称する)を備えていてもよい。
本架橋樹脂層は、主成分樹脂としてのバインダー樹脂およびその他の成分、例えば硬化剤又は架橋開始剤などを含む架橋性樹脂組成物が架橋して硬化してなる架橋樹脂構造からなる層であるのが好ましい。
この際、「主成分樹脂」とは、本架橋樹脂層を構成する樹脂の中で最も含有量(質量%)に多い樹脂の意味である。本架橋樹脂層を構成する樹脂の50質量%以上を占める場合、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める場合を挙げることができる。
前記バインダー樹脂としては、例えば、次に説明する、水溶性エポキシ樹脂、水分散性ポリウレタン樹脂、水分散型ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
前記の水溶性エポキシ樹脂としては、末端にエポキシ基を有するプレポリマーである水溶性エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
中でも、プレポリマー鎖が芳香族系であるものが好ましい。具体例としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1、3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位および/又はグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂などの樹脂を挙げることができる。これらの中でも、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂が特に好ましい。
前記の水分散性ポリウレタン樹脂としては、分子内にカルボキシル基を含まないポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物に界面活性を使用して水の中に強制乳化させて水分散性としたポリウレタン樹脂を挙げることができる。但し、これに限定するものではない。
前記の水分散型ウレタンアクリレートは、ウレタンアクリレート原料と、乳化剤、例えばアニオン系および/又はノニオン系の反応性乳化剤と、油溶性重合開始剤とを混合して、乳化機、例えば、ホモミキサー、超音波分散機などで加熱処理をしながら、分散する要領にて乳化重合して得られる、水分散体のウレタンアクリレートを挙げることができる。但し、これに限定するものではない。
ウレタンアクリレートの市販品として、ビームセット505A-6(荒川化学社製)、Ebecryl270(ダイセル工業(株)製)、UA-160TM、UA-7100、(新中村化学工業(株))などが例示される。
前記アニオン系反応性乳化剤としては、市販品として、例えばアクアロンシリーズ:KH-05,KH-10、AR-10、AR-20(商品名:第一工業製薬製)、Antox-MS-60、Antox-MS-2N(日本乳化剤社製)、アデカリアソープシリーズ:SE-10N、SE―20N、SR-10(アデカ製)を挙げることができる。その中でも、スルホン酸塩からなるものが好ましい。
前記ノニオン系反応性乳化剤としては、市販品として、例えばアデカリアソープシリーズ:NE-10、NE-20、NE-30、ER-10、ER-20、ER-30、ER-40(アデカ製)、ラテムルシリーズ:PD-420、PD-430、PD-450(花王)などを挙げることができる。
硬化剤又は架橋開始剤は、熱架橋及び光架橋のいずれの架橋方法を選択するか、さらにはバインダー樹脂として何を使用するかによって適宜使用するのが好ましい。
例えば、バインダー樹脂として水溶性エポキシ樹脂を用いる場合は、硬化剤として、アミン系化合物を用いるのが好ましく、中でも、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンが好ましい。
当該光重合開始剤としては、特に制限するものではなく、例えばケトン系光重合開始剤、アミン系光重合開始剤等を挙げることができる。
水性溶媒としては、水又はアルコール溶媒を主溶媒として用いることができる。
アルコール溶媒の具体例として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどを挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
本架橋樹脂層は、上述の材料以外に、他の成分乃至材料を含有していてもよい。
「他の成分乃至材料」としては、無機充填剤、酸素捕捉剤、カップリング剤、硬化促進剤などを挙げることができる。
カップリング剤としては、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤などのカップリング剤を添加してもよい。
カップリング剤としては、市販品が使用できる。具体的には、チッソ(株)、東レ・ダウコーニング(株)、信越化学工業(株)等から入手可能な、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N、N’-ビス[3-トリメトキシシリル]プロピル]エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤、東レ・ダウコーニング(株)製のSH-6026、Z-6050などのアミノシラン系カップリング剤、信越化学工業(株)製のKP-390、KC-223などのアミノ基含有アルコキシシラン等を挙げることができる。
中でも、本架橋樹脂層のバインダー樹脂組成物と反応する有機官能基を有するものが望ましい。
カップリング剤の添加量は、バインダー樹脂組成物の全質量を基準として0.01質量%~5.0質量%の範囲が好ましい。
架橋性樹脂組成物中の全固形成分(100質量部)に対するバインダー樹脂の割合は、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、一方、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましい。なお、バインダー樹脂を2種以上併用する場合、それらの合計量の割合が上記の範囲内であることが好ましい。なお、バインダー樹脂を2種以上併用する場合、それらの合計量の割合が上記の範囲内であることが好ましい。
本積層フィルムロールは、本基材フィルムの片面側(「表面側」と称する)に、アンカー層および無機物層がこの順に積層してなる構成を備えていればよいから、本基材フィルムの裏面側や、アンカー層と無機物層との間や、無機物層の表面側に例えば架橋樹脂層などの「他の層」を備えていてもよい。
本積層フィルムロールの全体厚みを調整することで、光透過性を確保しつつシワの発生などを抑制することができる。かかる観点から、本積層フィルムロールの全体厚みは10μm以上であるのが好ましく、中でも15μm以上或いは500μm以下、その中でも20μm以上或いは250μm以下、その中でも特に23μm以上或いは125μm以下であるのが好ましい。
(水蒸気透過率(WvTR))
本積層フィルムロールは、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率(WvTR)を6.0g/m2/day以下とすることができ、好ましくは4.0g/m2/day以下、その中でも特に好ましくは2.0g/m2/day以下とすることもできる。
また、本積層フィルムロールは、温度25℃、相対湿度80%の条件下で酸素透過率(cc/(m2・24hr・atm))を6.0cc/(m2・24hr・atm)以下とすることができ、好ましくは、4.0cc/(m2・24hr・atm)以下、その中でも特に好ましくは2.0cc/(m2・24hr・atm)以下とすることもできる。
本積層フィルムロールの製造方法の一例として、基材フィルムの片面に必要に応じてアンカー層を形成し、該アンカー層の表面に本無機物層を形成する方法を挙げることができる。但し、この方法に限定するものではない。
本無機物層の形成は、上述したように、例えば物理的気相蒸着(PVD)法、プラズマアシスト蒸着法、化学蒸着(CVD)法、或いは、無機粒子を有機ポリマーに分散させて塗布する方法などにより、形成することができる。
次に、本積層フィルムロールを用いた実施形態の一例として、本積層フィルムロールを用いたフィルム積層体ロール(「本フィルム積層体ロール」と称する。)について説明する。
なお、本フィルム積層体ロールは、長尺フィルムからなるロール体であるが、当該ロール体を適宜大きさにカットしたフィルム積層体についても、以下説明する本フィルム積層体ロールと同様である。よって、以下の説明において本フィルム積層体ロールをフィルム積層体に置き換えることができる。
基材フィルム(2)としては、基材フィルム(1)すなわち本基材フィルムとして説明したものを使用することができる。
生分解性樹脂としては、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート(PES)、3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート重合体(PHBH)などの生分解性脂肪族ポリエステル、例えばポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)などの生分解性脂肪族芳香族ポリエステルを挙げることができる。
本フィルム積層体ロールの接着剤層は、公知の接着剤組成物を用いて形成することができる。接着性とバリア性との両立の観点からは、バインダー樹脂および硬化剤又は架橋開始剤を含む接着剤組成物を用いるのが好ましく、当該バインダー樹脂として、例えば水溶性エポキシ樹脂、水分散性ポリウレタン樹脂、水分散型ウレタンアクリレートオリゴマーなどを用いるのが好ましい。
本フィルム積層体ロールの全体厚みを調整することで、光透過性を確保しつつシワの発生などを抑制することができる。かかる観点から、本フィルム積層体ロールの全体厚みは40μm以上であるのが好ましく、中でも50μm以上或いは500μm以下、その中でも50μm以上或いは250μm以下、特に50μm以上或いは125μm以下が好ましい。
(水蒸気透過率(WvTR))
本フィルム積層体ロールは、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率(WvTR)を3.0g/m2/day以下とすることができ、好ましくは2.0g/m2/day以下、その中でも特に好ましくは1.0g/m2/day以下とすることもできる。
また、本フィルム積層体ロールは、温度25℃、相対湿度80%の条件下で酸素透過率(cc/(m2・24hr・atm))を2.0cc/(m2・24hr・atm)以下とすることができ、好ましくは、1.0cc/(m2・24hr・atm)以下、その中でも特に好ましくは0.5cc/(m2・24hr・atm)以下とすることもできる。
本積層フィルムロールおよび本フィルム積層体ロールは、必要に応じて適宜の大きさにカットするなどして、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする用途、例えば各種ガスの遮断を必要とする包装材料、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の変質防止用包装材料として広く利用することができる。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、EL用基板、カラーフィルターなど、各種部材に好適である。
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シート及びフィルムを包含するものである。
また、本積層フィルムロール又は本フィルム積層体ロールにおいて、基材フィルム側を下側又は裏面側と称し、その反対側を上側又は表面側という。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
また、下記実施例及び比較例で作製した積層フィルムロール又は積層フィルム体ロールについては、それぞれ適宜大きさにカットした積層フィルム又は積層フィルム体を、下記測定法および評価方法の測定サンプルとした。
DSC測定装置(NETZSCH社製 DSC204F1)を使用して、0~200℃の測定温度範囲にて、昇温速度10℃/分の条件下で測定して、ポリ乳酸フィルム(基材フィルム)のTg(ガラス転移温度)を求めた。
アンカー層の表面をRuO4で染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片を再度RuO4染色し、アンカー層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H-7650」、加速電圧100kV)を用いて、アンカー層の厚みを測定した。
無機物層の膜厚の測定は、蛍光X線を用いて行った。この方法は、原子にX線を照射すると、その原子特有の蛍光X線を放射する現象を利用した方法で、放射される蛍光X線強度を測定することにより原子の数(量)を知ることができる。具体的には、フィルム上に既知の2種の厚みの薄膜を形成し、それぞれについて放射される特定の蛍光X線強度を測定し、この情報より検量線を作成した。そして、測定試料について同様に蛍光X線強度を測定し、前記検量線からその膜厚を測定した。
ポリ乳酸フィルム又は積層フィルムについて、日立ハイテクサイエンス社製の熱機械的分析装置「TMA/SS7100」を用いて、昇温速度2℃/分、測定温度30~165℃の条件でTMA測定を行い、75~90℃、90~105℃、105~120℃における平均線膨張率をそれぞれ求めた。
実施例・比較例で得た積層フィルム又は実施例6で得たフィルム積層体を測定サンプルとして、水蒸気透過率測定を測定した。
積層フィルム又はフィルム積層体を、水蒸気透過率測定装置 DELTAPERM(Tech nolox社製)に積層フィルムが検出器側(基材フィルムが水蒸気暴露側)になる向きにセットし、温度40℃、相対湿度90%RHの条件で水蒸気透過率(g/m2/day)を測定した。
実施例6の生分解性フィルムとのラミネートしたフィルム積層体以外は、得られた積層フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)をラミネートしたフィルム積層体を作製し、酸素透過率測定に用いた。
JIS K 7126 B法に準じ、酸素透過率測定装置(MOCON社製「OX-TRAN 2/21型酸素透過率測定装置」)により、各積層フィルム又はフィルム積層体について、温度25℃、相対湿度80%の条件下で酸素透過率(cc/(m2・24hr・atm))を測定した。
ラミネート用フィルムとして、厚さ60μmの無軸延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(東洋紡(株)製「P1146」)を用いたガスバリア性積層体を幅15mmの短冊状に切り出し、端部を一部剥離し、引っ張り試験機((株)オリエンテック製「STA-1150」)を用いて、300mm/minの速度でCPPフィルムを180°剥離することにより、レトルト後のラミネート強度(g/15mm)を測定した。
酸素透過率の測定同様に、実施例6については、作製したフィルム積層体(サンプル)を測定サンプルとし、他の実施例及び比較例については、上記のように測定サンプルを作製した。
第1層(表裏層)としてL-乳酸:D-乳酸=98.5:1.5の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)58℃のポリ乳酸(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)25質量%、L-乳酸:D-乳酸=88:12の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)56℃のポリ乳酸(商品名:NatureWorks4060D、米国カーギル・ダウ社製)75質量%を混合して、合計100質量部のポリ乳酸に乾燥した平均粒径1.4μmの粒状シリカ(商品名:サイリシア100、富士シリシア化学(株)製)0.10質量部混合して58mmφの同方向二軸押出機にて、脱気しながら210℃でマルチマニホールド式の口金より表裏層として押出した。
また、第2層(中間層)として上記L-乳酸:D-乳酸=98.5:1.5の構造単位を持つポリ乳酸重合体(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)100質量%を75mmφの同方向二軸押出機にて、上記口金より210℃で中間層として押出した。
表層、中間層、裏層の厚み比は1:10:1になるよう溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出シートを約35℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。続いて長手方向に76℃で2.5倍のロール延伸、次いで、幅方向にテンターで74℃の温度で2.9倍に延伸した。テンターの熱処理ゾーンは等間隔の3ゾーンあり、順番に90、140、120℃に設定し、3ゾーン合わせての熱処理時間は30秒になる。弛緩は熱処理の3ゾーン目で4%行った。最後に冷却して、熱処理したフィルムを作製した。
フィルム厚みは25μmとなるように押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整し、ポリ乳酸フィルム1を得た。
ポリ乳酸フィルム1のガラス転移温度(Tg)は62℃であった。
第1層(表裏層)としてL-乳酸:D-乳酸=98.5:1.5の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)58℃のポリ乳酸(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)25質量%、L-乳酸:D-乳酸=88:12の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)56℃のポリ乳酸(商品名:NatureWorks4060D、米国カーギル・ダウ社製)75質量%を混合して、合計100質量部のポリ乳酸に乾燥した平均粒径1.4μmの粒状シリカ(商品名:サイリシア100、富士シリシア化学(株)製)0.10質量部混合して58mmφの同方向二軸押出機にて、脱気しながら210℃でマルチマニホールド式の口金より表裏層として押出した。
また、第2層(中間層)として、上記L-乳酸:D-乳酸=98.5:1.5の構造単位を持つポリ乳酸重合体(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)100質量%を75mmφの同方向二軸押出機にて、上記口金より210℃で中間層として押出した。
表層、中間層、裏層の厚み比は1:10:1になるよう溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出シートを約35℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。続いて長手方向に77℃で2.8倍のロール延伸、次いで、幅方向にテンターで78℃の
温度で3.3倍に延伸した。テンターの熱処理ゾーンは等間隔の3ゾーンあり、順番に85、115、100℃に設定し、3ゾーン合わせての熱処理時間は35秒になる。弛緩は熱処理の2ゾーン目で1%行った。最後に冷却して、熱処理したフィルムを作製した。フィルム厚みは25μmとなるように押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整し、ポリ乳酸フィルム2を得た。
ポリ乳酸フィルム2のガラス転移温度(Tg)は62℃であった。
非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡(株)製 バイロン200)とイソシアネート化合物(東ソー(株)製 コロネートL)を10:10質量比になるように配合し、アンカーコート液1を調製した。
非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡(株)製 バイロン200)とイソシアネート化合物(東ソー(株)製 コロネートL)を10:1質量比になるように配合し、アンカーコート液2を調製した。
アクリルポリオール(大成ファインケミカル(株)製 アクリット6AN-6000)とイソシアネート化合物(東ソー(株)製 コロネートL)を10:10質量比になるように配合し、アンカーコート液3を調製した。
水添XDI(1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)439.1g、ジメチロールプロピオン酸35.4g、エチレングリコール61.5g及び溶剤としてアセトニトリル140gを混合し、70℃の窒素雰囲気下で3時間反応させて、カルボキシル基含有ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次いで、このカルボキシル基含有ポリウレタンプレポリマー溶液を50℃で、トリエチルアミン24.0gにて中和させた。このポリウレタンプレポリマー溶液267.9gを、750gの水にホモディスパーにより分散させ、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタノール35.7gで鎖伸長反応を行い、アセトニトリルを留去することにより、固形分25質量%のポリウレタン系樹脂の水性分散液を得た。この水性分散液に、市販品の3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを質量比で4質量%添加し、架橋樹脂層組成物を調整した。
ポリ乳酸フィルム1の片面にコロナ処理を行い、該コロナ面にアンカーコート液1を塗布、80℃、1分で乾燥させて、厚さ(乾燥後)0.03μmのアンカー層を形成した。
次いで、真空蒸着装置を使用して2×10-3Paの真空下でSiOを加熱方式で蒸発させ、アンカー層上に厚さ30nmのSiOx層を形成し、積層フィルムロールを得た。
実施例1において、アンカー層の厚み(乾燥後)を0.10μmとした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムロールを得た。
実施例2において、アンカーコート液1の代わりにアンカーコート液2を用いた以外は、実施例2と同様にして積層フィルムロールを得た。
実施例2において、アンカーコート液1の代わりにアンカーコート液3を用いた以外は、実施例2と同様にして積層フィルムロールを得た。
実施例1において、SiOx層上に架橋樹脂層組成物を塗布、100℃、1minで乾燥して、厚さ(乾燥後)0.5μmの架橋樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムロールを得た。
実施例1の積層フィルムと、ラミネート用フィルムとして厚み30μmのポリブチレンサクシネート(PBS)フィルムを用いてラミネートを行い、フィルム積層体ロールを得た。
実施例1において、ポリ乳酸フィルム1の代わりにポリ乳酸フィルム2を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムロールを得た。
比較例1において、アンカー層の厚み(乾燥後)を0.10μmとした以外は、比較例1と同様にして積層フィルムロールを得た。
比較例1において、アンカー層の厚み(乾燥後)を0.01μmにした以外は、比較例1と同様にして積層フィルムロールを得た。
実施例1において、アンカー層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムロールを得た。
上記実施例および比較例におけるポリ乳酸フィルム(基材フィルム)、積層フィルムおよびフィルム積層体の特性を下記表1~表2
に示す。
比較例1~3は、積層フィルムの平均膨張係数が所定範囲を満足していないため、積層フィルムの収縮による影響を受け、バリア性が低下することがわかった。また、比較例4は、アンカー層を設けていないため、積層フィルムの平均膨張係数が所定範囲を満足しているが、アンカー層がないためにバリア性と密着性(ラミネート強度)が共に低下することがわかった。
これに対して、実施例1~6はいずれも、アンカー層が存在し、積層フィルムの平均膨張係数が所定範囲を満足しているため、バリア性と密着性(ラミネート強度)が共に良好であった。
予想通り、本積層フィルムでは、基材フィルムおよびアンカー層、無機物層を設けた積層フィルムの平均膨張係数を一定範囲内に制御することにより、基材フィルムおよび積層フィルム自体の収縮または膨張しようとする力を抑制することで、無機物層のクラック発生を防止することができ、加工工程中の加熱にも耐え得る良好なバリア性が得られるものと推察される。
Claims (10)
- 基材フィルム(1)の少なくとも片面に、アンカー層及び無機物層が順次積層してなる構成を備えた積層フィルムであって、
基材フィルム(1)がポリ乳酸フィルムであり、
熱機械分析(TMA)における105~120℃の平均線膨張率が、長手方向-7×10-4~0/℃であり、且つ幅方向-1×10-3~0/℃である積層フィルムロール。 - 熱機械分析(TMA)における90~105℃の平均線膨張率が、長手方向-5×10-4~0/℃であり、且つ、幅方向-3×10-4~0/℃である請求項1に記載の積層フィルムロール。
- 熱機械分析(TMA)における75~90℃の平均線膨張率が、長手方向-2×10-4~0/℃であり、且つ、幅方向0~2×10-4/℃である請求項1又は2に記載の積層フィルムロール。
- 基材フィルム(1)のガラス転移温度(Tg)が55~65℃である請求項1~3の何れかに記載の積層フィルムロール。
- 前記アンカー層が、ポリエステル、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を主成分樹脂とする層である請求項1~4の何れかに記載の積層フィルムロール。
- 前記アンカー層が、イソシアネート系化合物を含有する層である請求項1~5の何れかに記載の積層フィルムロール。
- 前記無機物層が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム及び酸化炭化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の無機化合物を主材として含有する層である請求項1~6の何れかに記載の積層フィルムロール。
- 前記無機物層上に更に架橋樹脂層を有する、請求項1~7の何れかに記載の積層フィルムロール。
- 請求項1~8の何れかに記載の積層フィルムロールを構成する積層フィルムと、基材フィルム(2)とが、接着剤を介してラミネートされてなる構成を備えたフィルム積層体ロール。
- 前記基材フィルム(2)が、生分解性フィルムである請求項9に記載のフィルム積層体ロール。
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