本開示の一側面に係る駆動回路は、それぞれ入力信号を入力する第1の入力端子および第2の入力端子と、それぞれ出力信号を出力する第1の出力端子および第2の出力端子と、電流を供給する電流源と、第1の入力端子に接続される第1の制御端子と、電流源を介して電源電位に接続される第1の電流端子と、第2の電流端子と、を有する第1のトランジスタと、第2の入力端子に接続される第2の制御端子と、電流源を介して電源電位に接続される第3の電流端子と、第4の電流端子と、を有する第2のトランジスタと、第1のバイアス電圧が印加される第3の制御端子と、第2の電流端子に接続される第5の電流端子と、第6の電流端子と、を有する第3のトランジスタと、第1のバイアス電圧が印加される第4の制御端子と、第4の電流端子に接続される第7の電流端子と、第8の電流端子と、を有する第4のトランジスタと、それぞれ第1のインダクタンスを有する第1のインダクタおよび第2のインダクタと、それぞれ第1のインダクタンスよりも大きい第2のインダクタンスを有する第3のインダクタおよび第4のインダクタと、第2のバイアス電圧が印加される第5の制御端子と、第6の電流端子に第1のインダクタを介して接続される第9の電流端子と、第1の出力端子に第3のインダクタを介して接続される第10の電流端子と、を有する第5のトランジスタと、第2のバイアス電圧が印加される第6の制御端子と、第8の電流端子に第2のインダクタを介して接続される第11の電流端子と、第2の出力端子に第4のインダクタを介して接続される第12の電流端子と、を有する第6のトランジスタと、を備える。
上記一側面によれば、入力された入力信号によって、第1および第2のトランジスタの第2および第4の電流端子における電流がそれぞれ変調され、第2および第4の電流端子における電流は、第3および第4のトランジスタ、第1および第2のインダクタ、第5および第6のトランジスタ、第3および第4のインダクタのそれぞれを介して、第1および第2の出力端子から出力信号としてそれぞれ出力される。このとき、第3および第4のインダクタの存在により、第1および第2の出力端子における電圧利得に高周波側においてピーキングを持たせることができるとともに、第1および第2のインダクタの存在により、増幅動作の線形性を維持しつつ、第1および第2の出力端子における電圧利得の高周波側のピーキングを効果的に増加させることができる。それに加えて、第5および第6のトランジスタの第10および第12の電流端子における電圧振幅が第5および第6のトランジスタと第3および第4のトランジスタで分圧されるため回路の信頼性の向上が可能となる。また、第1および第2のインダクタの存在により、第5および第6のトランジスタの第5および第6の制御端子の電圧振幅及び第9および第11の電流端子の電圧振幅を抑制することが可能になり、第5および第6のトランジスタの第10および第12の電流端子から見た寄生容量が小さくなる結果、駆動回路の広帯域化が可能となる。すなわち、上記一側面の駆動回路により、増幅動作の線形性を維持しながら高周波利得を向上させることができ、回路の信頼性も高めることができる。
ここで、上記一側面においては、第3の制御端子および第4の制御端子のそれぞれには、第1のバイアス電圧として、直流電圧が印加され、第5の制御端子および第6の制御端子のそれぞれには、第2のバイアス電圧として、第10の電流端子の電位および第12の電流端子の電位に応じて変化する電圧が印加される、ことが好ましい。この場合、第5および第6のトランジスタにおける第10および第12の電流端子の電圧振幅を第5および第6のトランジスタと第3および第4のトランジスタとでバランスよく分圧させることができ、第5および第6のトランジスタの2つの電流端子間の電圧振幅が第10および第12の電流端子における電圧振幅よりも小さくされる。その結果、駆動回路における増幅動作の信頼性をさらに高めることができる。
また、第2のバイアス電圧を生成するバイアス供給回路を備え、バイアス供給回路は、接続ノードと、第10の電流端子と第5の制御端子との間に接続される第1の抵抗素子と、第5の制御端子と接続ノードとの間に接続される第2の抵抗素子と、第5の制御端子と接続ノードとの間に接続される第1のキャパシタと、第12の電流端子と第6の制御端子との間に接続される第3の抵抗素子と、第6の制御端子と接続ノードとの間に接続される第4の抵抗素子と、第6の制御端子と接続ノードとの間に接続される第2のキャパシタと、接続ノードと電源電位との間に接続されるバイアス電源と、を有する、ことも好ましい。かかる構成を採れば、低周波における第5および第6のトランジスタの第10および第12の電流端子の電圧振幅が第1および第3の抵抗素子と第2および第4の抵抗素子とによって分圧されて、分圧された電圧振幅が第5および第6のトランジスタの第5および第6の制御端子に与えられ、高周波における第5および第6のトランジスタの第10および第12の電流端子の電圧振幅が、第1および第2のキャパシタと、第5および第6のトランジスタの第5および第6の制御端子と第10および第12の電流端子との間の寄生容量によって分圧されて、分圧された電圧振幅が第5および第6のトランジスタの第5および第6の制御端子に与えられる。これにより、低周波から高周波までの広い周波数帯域において、第5および第6のトランジスタの2つの電流端子間の電圧振幅が第10および第12の電流端子における電圧振幅よりも小さくされるため、第5および第6のトランジスタにおける第10および第12の電流端子の電圧振幅を第5および第6のトランジスタと第3および第4のトランジスタとでバランスよく分圧させることができる。その結果、駆動回路における回路の信頼性をさらに高めることができる。
さらに、第1のインダクタおよび第2のインダクタはそれぞれ配線をスパイラル状に形成した素子である、ことも好ましく、第3のインダクタおよび第4のインダクタはそれぞれ配線をスパイラル状に形成した素子である、ことも好ましい。こうすれば、回路の小型化を保ちつつ、高周波利得の向上を実現できる。
またさらに、第10の電流端子と第9の電流端子との間を流れる電流は、第10の電流端子から第9の電流端子に向かって流れ、第12の電流端子と第11の電流端子との間を流れる電流は、第12の電流端子から第11の電流端子に向かって流れるように第1のインダクタンスおよび第2のインダクタンスが設定されている、ことも好ましい。この場合、信号増幅の線形性を維持することができる。
さらにまた、一端が接続ノードに接続され、他端が第3の制御端子および第4の制御端子に接続される抵抗素子を備える、ことも好ましい。かかる構成を採れば、ESD電圧が第1および第2の出力端子に発生した場合、第3および第4のトランジスタの第3および第4の制御端子と第3および第4のトランジスタの2つの電流端子との間の電圧の上昇が抑制され、第3および第4のトランジスタの故障リスクを低減することができる。
あるいは、本開示の他の側面に係る駆動回路は、入力信号を入力する入力端子と、出力信号を出力する出力端子と、入力端子に接続される制御端子と、電源電位に接続される一方の電流端子と、他方の電流端子とを有する第1のトランジスタと、第1のバイアス電圧が印加される制御端子と、第1のトランジスタの他方の電流端子に接続される一方の電流端子と、他方の電流端子とを有する第2のトランジスタと、第1のインダクタンスを有する第1のインダクタと、第1のインダクタンスよりも大きい第2のインダクタンスを有する第2のインダクタと、第2のバイアス電圧が印加される制御端子と、第2のトランジスタの他方の端子に第1のインダクタを介して接続される一方の電流端子と、出力端子に第2のインダクタを介して接続される他方の電流端子とを有する第3のトランジスタと、を備える。
上記他の側面によれば、入力された入力信号によって、第1のトランジスタの他方の電流端子における電流が変調され、他方の電流端子における電流は、第2のトランジスタ、第1のインダクタ、第3のトランジスタ、及び第2のインダクタを介して、出力端子から出力信号として出力される。このとき、第2のインダクタの存在により、出力端子における電圧利得に高周波側においてピーキングを持たせることができるとともに、第1のインダクタの存在により、増幅動作の線形性を維持しつつ、出力端子における電圧利得の高周波側のピーキングを効果的に増加させることができる。それに加えて、第3のトランジスタの他方の電流端子における電圧振幅が第3のトランジスタと第2のトランジスタで分圧されるため回路の信頼性の向上が可能となる。また、第1のインダクタの存在により、第3のトランジスタの制御端子の電圧振幅及び一方の電流端子の電圧振幅を抑制することが可能になり、第3のトランジスタの他方の電流端子から見た寄生容量が小さくなる結果、駆動回路の広帯域化が可能となる。すなわち、上記他の側面の駆動回路により、増幅動作の線形性を維持しながら高周波利得を向上させることができ、回路の信頼性も高めることができる。
ここで、上記他の側面においては、第2のトランジスタの制御端子には、第1のバイアス電圧として、直流電圧が印加され、第3のトランジスタの制御端子には、第2のバイアス電圧として、第3のトランジスタの他方の電流端子の電位に応じて変化する電圧が印加される、ことが好ましい。この場合、第3のトランジスタにおける他方の電流端子の電圧振幅を第3のトランジスタと第2のトランジスタとでバランスよく分圧させることができ、第3のトランジスタの2つの電流端子間の電圧振幅が他方の電流端子における電圧振幅よりも小さくされる。その結果、駆動回路における増幅動作の信頼性をさらに高めることができる。
また、第2のバイアス電圧を生成するバイアス供給回路を備え、バイアス供給回路は、接続ノードと、第3のトランジスタの他方の電流端子と第3のトランジスタの制御端子との間に接続される第1の抵抗素子と、第3のトランジスタの制御端子と接続ノードとの間に接続される第2の抵抗素子と、第3のトランジスタの制御端子と接続ノードとの間に接続されるキャパシタと、接続ノードと電源電位との間に接続されるバイアス電源と、を有する、ことも好ましい。かかる構成を採れば、低周波における第3のトランジスタの他方の電流端子の電圧振幅が第1の抵抗素子及び第2の抵抗素子によって分圧されて、分圧された電圧振幅が第3のトランジスタの制御端子に与えられ、高周波における第3のトランジスタの他方の電流端子の電圧振幅がキャパシタと第3のトランジスタの制御端子と第3のトランジスタの他方の制御端子との間の寄生容量によって分圧されて、分圧された電圧振幅が第3のトランジスタの制御端子に与えられる。これにより、低周波から高周波までの広い周波数帯域において、第3のトランジスタの2つの電流端子間の電圧振幅が他方の電流端子における電圧振幅よりも小さくされるため、第3のトランジスタにおける他方の電流端子の電圧振幅を第3のトランジスタと第2のトランジスタとでバランスよく分圧させることができる。その結果、駆動回路における回路の信頼性をさらに高めることができる。
さらに、第1のインダクタは配線をスパイラル状に形成した素子である、ことも好ましく、第2のインダクタは配線をスパイラル状に形成した素子である、ことも好ましい。この場合、回路の小型化を保ちつつ、高周波利得の向上を実現できる。
またさらに、第3のトランジスタの他方の電流端子と第3のトランジスタの一方の電流端子との間を流れる電流は、第3のトランジスタの他方の電流端子から第3のトランジスタの一方の電流端子に流れるように第1のインダクタンスおよび第2のインダクタンスが設定されている、ことも好ましい。この場合、信号増幅の線形性を維持することができる。
あるいは、本開示の他の側面に係る半導体集積回路は、上述した駆動回路と、入力信号を増幅して駆動回路に出力する増幅回路と、を備える。
上記他の側面によれば、増幅動作の線形性を維持しながら高周波利得を向上させることができ、回路の信頼性も高めることができる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、実施形態に係る駆動回路200の構成を示すブロック図である。駆動回路200は、光送信モジュール等の光通信用のデバイスに内蔵され、例えば、SiGe BiCMOS(Bipolar Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスで製造された2mm×4mmのサイズの半導体集積回路(IC)であり、入力された電圧信号を増幅し出力する。駆動回路200は、一対の入力端子130a,130b、一対の出力端子131a,131b、入力回路110、及び出力回路(駆動回路)100を有している。
入力端子130a,130bは、振幅が同じで互いに位相が反転した2つの信号からなる差動信号の入力を受ける。入力回路110は、入力された差動信号を増幅して出力回路100に送出する。出力回路100は、入力回路110から送出された差動信号を更に増幅して駆動回路200の外部に出力する。
なお、駆動回路200の回路構成は適宜変更されてよく、入力回路110が省略されてもよいし、種々の他の回路が追加されてもよい。また、信号の伝達経路(チャネル)が1つの構成には限定されず、複数のチャネル(例えば、4つのチャネル)が並列に並ぶように構成されていてもよい。
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態に係る駆動回路である出力回路100の構成を説明する。
図2は、図1の出力回路100の構成を示す回路図である。図3は、外部負荷と接続された状態の出力回路100の回路図である。出力回路100は、入力された電圧信号である一対の差動信号を基に出力電流を変調する差動増幅回路であり、SiGe BiCMOSプロセスを用いてSi基板上に形成された集積回路である。出力回路100が搭載される集積回路の最大電源電圧は、例えば、3.3Vであり、入力される差動信号、及び出力信号は、例えば、直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)で変調された信号点数が32点の32QAM信号であり、これらの信号の変調速度は100GBaudである。出力回路100は、バイポーラトランジスタ10a,10b,11a,11b,12a,12b,13、抵抗素子20a,20b,21a,21b,22a,22b、キャパシタ31a,31b、インダクタ40a,40b,41a,41b、電流源50、信号入力端子91a,91b、信号出力端子92a,92b、接地端子70a,70b、バイアス供給端子93,94、及び接続ノード95を含む。これらの構成要素のうち、抵抗素子21a,21b,22a,22b、キャパシタ31a,31b、及び電流源50により、バイアス供給回路80が構成される。
以下、出力回路100を構成する構成要素について説明する。
バイポーラトランジスタ(第1のトランジスタ、第2のトランジスタ)10a,10bにおいては、それぞれのベース(制御端子)が一対の信号入力端子91a,91bに、それぞれのコレクタ(電流端子)がバイポーラトランジスタ11a,11bのエミッタに、それぞれのエミッタ(電流端子)が抵抗素子20a,20bの一端に接続されている。バイポーラトランジスタ10a,10bは、信号入力端子91a,91bから入力されるそれぞれの入力信号(例えば、周波数30GHz以上の信号)でコレクタ電流を変調する。バイポーラトランジスタ10a,10bは、例えば、NPN型のヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)であってよい。また、バイポーラトランジスタ10a,10bは、例えば、n型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタに置き換えられてもよい。なお、バイポーラトランジスタ10aの電気的特性はバイポーラトランジスタ10bの電気的特性と等しいことが望ましい。ここでいう電気的特性とは、ベース電圧(ベース-エミッタ間電圧)に対するベース電流(ベース-エミッタ間電流)や、特定のベース電流(ベース-エミッタ間電流)のときのコレクタ電圧に対するコレクタ電流といった、特にバイポーラトランジスタとしての基本的な電気的特性を意味する。電気的特性が等しいとは、例えば想定する製造ばらつきの範囲内で相違していてもよく、互いに完全に同一の値を有することに限定されるものではない。以下の記載においても同様である。
バイポーラトランジスタ(第3のトランジスタ、第4のトランジスタ)11a,11bにおいては、それぞれのベース(制御端子)がバイアス供給端子94に、それぞれのエミッタ(電流端子)がバイポーラトランジスタの10a,10bのコレクタに、それぞれのコレクタ(電流端子)がインダクタ40a,40bの一端に接続されている。これらのバイポーラトランジスタ11a,11bは、バイアス供給端子94に供給された直流電圧(第1のバイアス電圧)がベースに印加されたカスコードトランジスタである。第1のバイアス電圧としては、例えば、2.5Vである。このような構成により、バイポーラトランジスタ10a,10bのコレクタにおける電圧振幅が抑えられ、バイポーラトランジスタ10a,10bのミラー容量が小さくなるため、出力回路100の広帯域化が可能となる。また、バイポーラトランジスタ11a,11bの存在によって出力回路100の出力抵抗が大きくなるため、出力回路100の電圧利得の向上が可能となる。なお、バイポーラトランジスタ11a,11bは、例えば、n型のMOSトランジスタに置き換えられてもよい。なお、バイポーラトランジスタ11aの電気的特性はバイポーラトランジスタ11bの電気的特性と等しいことが望ましい。
バイポーラトランジスタ(第5のトランジスタ、第6のトランジスタ)12a,12bにおいては、それぞれのベース(制御端子)がバイアス供給回路80に、それぞれのエミッタ(電流端子)がインダクタ40a,40bの他端に、それぞれのコレクタ(電流端子)がインダクタ41a,41bを介して一対の信号出力端子92a,92bに接続されている。これらのバイポーラトランジスタ12a,12bも、エミッタにおける電圧振幅を抑えるように機能するカスコードトランジスタである。
抵抗素子20a,20bは、それぞれ、一端がバイポーラトランジスタ10a,10bのエミッタに接続され、他端がバイポーラトランジスタ13のコレクタに接続されている。これらの抵抗素子20a,20bは、ディジェネレーション抵抗であり、出力回路100の線形入力範囲の拡大を可能とする。抵抗素子20a,20bは、例えば、n型のポリSi抵抗である。なお、出力回路100の線形入力範囲が使用範囲に比べて十分広い場合には、抵抗素子20a,20bは、省略されてよい。
バイポーラトランジスタ13においては、そのコレクタが抵抗素子20a,20bの他端に、そのベースがバイアス供給端子93に、そのエミッタが接地電位(電源電位)に設定される接地端子70aに接続され、電流を供給する電流源として機能する。バイポーラトランジスタ10a,10bのエミッタはバイポーラトランジスタ13を介して接地端子70aに接続されているので、バイポーラトランジスタ13によって供給される電流が、2つのバイポーラトランジスタ10a,10bのエミッタ電流となる。バイポーラトランジスタ13により、バイアス供給端子93の電圧に応じた電流が生成され、その電流値は例えば60mAである。なお、バイアス供給端子93に、ダイオード接続された別のバイポーラトランジスタのベース電圧を印加するように構成されてもよい。この場合、カレントミラーが構成され、バイポーラトランジスタ13の生成する電流量の調整が容易となる。また、バイポーラトランジスタ13の代わりに、MOSトランジスタが使用されてもよい。また、バイポーラトランジスタ13に替えて、抵抗素子、あるいは、抵抗素子とインダクタとを含む回路が用いられてもよい。
バイアス供給回路80は、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースのそれぞれに直流バイアス(第2のバイアス電圧)を供給するとともに、それらのベースの電圧振幅を設定する機能を有する。抵抗素子(第1の抵抗素子)22a,22bは、それぞれ、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタとベースとの間に接続されている。抵抗素子(第2の抵抗素子)21a,21bは、それぞれ、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースと接続ノード95との間に接続されている。電流源(電源回路)50は、接続ノード95と接地電位に設定された接地端子70bとの間に接続され、定電流を生成する。キャパシタ31a,31bは、それぞれ、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースと接続ノード95との間に接続されている。
ここで、抵抗素子21aと抵抗素子21bとは抵抗値が略等しく、抵抗素子22aと抵抗素子22bとは抵抗値が略等しいことが好ましい。この場合、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースには、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタに比べて、抵抗素子22a,22bの抵抗値と電流源50の生成する電流の値の半分とで決まる電圧降下分だけ低い電圧が発生する。また、接続ノード95には、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースに比べて、抵抗素子21a,21bの抵抗値と電流源50の生成する電流の値の半分とで決まる電圧降下分だけ低い電圧が発生する。また、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ電圧の上昇に伴うコレクタ・ベース間接合におけるアバランシェ崩壊を防ぐために、抵抗素子21a,21b,22a,22bの抵抗値は、バイポーラトランジスタ12a,12bのベース抵抗に比べて十分低いことが望ましく、例えば、それぞれ200Ωである。また、キャパシタ31aとキャパシタ31bとでキャパシタンスは略等しいことが好ましく、例えば、それぞれ50fFである。
上記構成のバイアス供給回路80により、バイポーラトランジスタ12a,12b及びバイポーラトランジスタ11a,11bは、次のように動作する。
まず、接続ノード95においては、差動信号であるバイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタにおける電圧信号の中間電位から前述した電圧降下分だけ低い直流電位が生じるため、低周波帯域(例えば、1GHz以下の帯域)においては、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースの電圧振幅は、それぞれ、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタの電圧振幅を抵抗素子21a,21bと抵抗素子22a,22bとで分圧したものに設定される。本実施形態では、例えば、抵抗素子21aと抵抗素子22aとで抵抗値が等しく、抵抗素子21bと抵抗素子22bとで抵抗値が等しくされている。そのため、低周波帯域においては、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースの電圧振幅は、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタの電圧振幅の約半分に設定される。
一方で、高周波帯域(例えば、1GHz以上の帯域)においては、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースの電圧振幅は、それぞれ、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタの電圧振幅を、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ・ベース間寄生容量と、キャパシタ31a,31bのキャパシタンスとで分圧したものに設定される。本実施形態では、例えば、キャパシタ31a,31bのキャパシタンスは、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ・ベース間寄生容量と略等しく設定されている。そのため、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースの電圧振幅は、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタの電圧振幅の約半分に設定される。なお、キャパシタ31a,31bのキャパシタンスは、抵抗素子21a,21b,22a,22bにおいて生じる寄生容量に応じて調整されることが好ましい。また、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースと接地電位間の寄生容量が大きい場合等は、キャパシタ31a,31bは省略されてもよい。
上述のとおり、低周波帯域から高周波帯域までの幅広い周波数帯域において、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースの電圧振幅は、コレクタの電圧振幅の略半分に設定される。ここで、相互コンダクタンス(gm)の大きいバイポーラトランジスタではエミッタの電位変動がベースの電位変動と略等しくなるため、バイポーラトランジスタ12a,12bのエミッタの電圧振幅もコレクタの電圧振幅の略半分に抑えられる。その結果、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ・エミッタ間の電圧振幅は、コレクタの電圧振幅の略半分になる。
その一方で、上述したように、バイポーラトランジスタ11a,11bのベースには直流電圧が印加されている。これにより、バイポーラトランジスタ11a,11bのエミッタの電圧振幅が小さく抑えられる結果、バイポーラトランジスタ11a,11bのコレクタ・エミッタ間の電圧振幅はコレクタにおける電圧振幅に略等しくなる。
このようにして、低周波数帯域から高周波数帯域までの幅広い周波数帯域において、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタの電圧振幅は、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ・エミッタ間電圧と、バイポーラトランジスタ11a,11bのコレクタ・エミッタ間電圧とによって分圧される。
なお、バイポーラトランジスタ12a,12bのベース電位は一定ではなく、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ電位に対応して変動する。そのため、バイポーラトランジスタ12a,12bは動的カスコードトランジスタと称される。一方、バイポーラトランジスタ11a,11bのベース電位はノイズ成分を除いた成分は一定である。そのため、バイポーラトランジスタ11a,11bは静的カスコードトランジスタと称される。
インダクタ(第1のインダクタ、第2のインダクタ)40a,40bは、それぞれ、バイポーラトランジスタ11a,11bのコレクタとバイポーラトランジスタ12a,12bのエミッタとの間に接続されている。また、インダクタ(第3のインダクタ、第4のインダクタ)41a,41bは、それぞれ、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタと一対の信号出力端子92a、92bとの間に接続されている。インダクタ41aのインダクタンスはインダクタ40aのインダクタンスより大きく、インダクタ41bのインダクタンスはインダクタ40bのインダクタンスより大きい。また、インダクタ41a,41bのインダクタンス(第2のインダクタンス)は略等しいことが好ましく、インダクタ40a,40bのインダクタンス(第1のインダクタンス)は略等しいことが好ましい。例えば、第1のインダクタンスは50pH、第2のインダクタンスは150pHである。なお、第1のインダクタンスは、例えば、10pH以上であることが好ましい。また、第1のインダクタンスは、20pH以上であることがより好ましい。インダクタ40a,40b,41a,41bは、信号利得において高周波でのピーキングを生じさせるためのインダクタである。インダクタ40a,40b,41a,41bの存在により、出力回路100の高周波利得が向上し、信号利得の広帯域化が可能となる。これらのインダクタ40a,40b,41a,41bとしては、配線をスパイラル状にレイアウト(形成)したスパイラルインダクタを使用することができる。なお、インダクタ40bを形成する配線の線幅は、インダクタ40aを形成する配線の線幅と等しいことが望ましい。また、インダクタ41bを形成する配線の線幅は、インダクタ41aを形成する配線の線幅と等しいことが望ましい。
上記構成のバイアス供給回路80を含む出力回路100は、一対の信号入力端子91a,91bのそれぞれにベースが接続され、接地電位と一対の信号出力端子92a,92bとの間に並列に接続された一対のバイポーラトランジスタ10a,10bを含み、一対の信号入力端子91a,91bから入力された二つの差動信号を増幅して、増幅された二つの差動信号を一対の信号出力端子92a,92bに出力する差動増幅回路として機能する。ここで、出力回路100は、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタが未終端のまま、すなわち、内部(例えば、出力回路100を搭載したIC内部)の抵抗を介して内部の電源に接続されないままあるいは接地されないまま、信号出力端子92a,92bに接続されているため、オープンコレクタ回路と呼ばれる。なお、バイポーラトランジスタ12a,12bをMOSトランジスタに置換した構成の場合には、出力回路100は、オープンドレイン回路と呼ばれる。
図3には、出力回路100が外部負荷に接続された状態における構成を示している。図3に示すように、IC101に搭載された出力回路100は、信号出力端子92a,92bが、外部電源106によって所定電圧(例えば、5.0V)が印加された外部負荷102に接続される。すなわち、一対の信号出力端子92a,92bは、それぞれ、電気配線105a,105bを介して外部負荷102の接続端子103a,103bに接続される。外部負荷102は、2つの接続端子103a,103bと接続端子103cとのそれぞれの間に、所定の抵抗値(例えば30Ω)の負荷抵抗104a,104bを有し、接続端子103cは、電気配線105cを介して外部電源106に接続される。これにより、信号出力端子92aは負荷抵抗104aを介して外部電源106で終端され、信号出力端子92bは負荷抵抗104bを介して外部電源106で終端される。このような接続構成により、外部電源106の電圧、負荷抵抗104a,104bの抵抗値、寄生抵抗、容量、インダクタンス、及び出力回路100の出力電流によって、信号出力端子92a,92bにおける差動信号の電圧値が決定される。
上述した構成の出力回路100による信号変調動作について説明する。
信号入力端子91a,91bに入力された電圧信号によって、バイポーラトランジスタ10a,10bがコレクタ電流を変調する。変調されたコレクタ電流は、バイポーラトランジスタ11a,11b、インダクタ40a,40b、バイポーラトランジスタ12a,12b、及びインダクタ41a,41bを通って信号出力端子92a,92bから出力される。信号出力端子92a,92bにおける電圧利得は周波数依存性を有する。特に、インダクタ41a,41bのインダクタンスと、インダクタ41a,41bの両端に生じるキャパシタンス成分と、外部負荷の抵抗値と、によって主に決定される共振周波数において、大きな電圧利得(ピーキング)が得られる。
図4は、信号出力端子92a,92bにおける小信号利得の解析結果を示すグラフである。この結果より、1GHzの電圧利得に比較して50GHzの電圧利得は約11dB、すなわち、3.5倍となっていることが分かる。このことは、入力振幅が周波数変化に対して一定の場合、1GHzにおける差動出力の振幅が例えば1.7Vの場合は50GHzにおける差動出力の振幅は6.0Vとなることを意味する。
上記の小信号利得の例において、差動出力の振幅が6.0Vの場合、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタの電圧振幅は、それぞれ3.0Vとなる。バイポーラトランジスタ12a,12bを含まない構成の場合、バイポーラトランジスタ11a,11bは、静的カスコードトランジスタであるため、この電圧振幅を有する電圧信号がバイポーラトランジスタ11a,11bのコレクタ・エミッタ間に印加される。この結果、出力回路100の長期間(例えば10年)の使用後に、バイポーラトランジスタ11a,11bのベース電流が増大し、バイポーラトランジスタ11a,11bの利得減少、あるいは高周波性能(電流利得遮断周波数、最大発振周波数など)の劣化という信頼性に関する問題が生じる場合がある。
本実施形態では、動的カスコードトランジスタであるバイポーラトランジスタ12a,12bを備えているため、バイポーラトランジスタ12a,12bのエミッタ・コレクタ間の電圧振幅は、コレクタにおける電圧振幅の略半分となる(上記数値例によれば1.5V)。また、静的カスコードトランジスタであるバイポーラトランジスタ11a,11bのコレクタ・エミッタ間の電圧振幅は、バイポーラトランジスタ11a,11bのコレクタにおける電圧振幅に略等しい。このように、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタにおける電圧振幅が、バイポーラトランジスタ12a,12b及びバイポーラトランジスタ11a,11bによって分圧される。その結果、バイポーラトランジスタ12a,12b及びバイポーラトランジスタ11a,11bの信頼性に関する問題発生のリスクを低減することが可能となり、出力回路100の信頼性の向上が可能となる。
次に、バイポーラトランジスタ12a,12bとバイポーラトランジスタ11a,11bとの間に設けられるインダクタ40a,40bの効果について説明する。
図5は、出力回路100とプリバッファである入力回路110とで構成される駆動回路200の小信号利得の解析結果を示すグラフである。図5の(A)部は、出力回路100の信号入力端子91a,91bにおける差動信号の小信号利得、図5の(B)部は、出力回路100の信号出力端子92a,92bにおける差動信号の小信号利得をそれぞれ示し、グラフGAは、インダクタ40a,40bを除いた場合の利得、グラフGBは、本実施形態の構成における利得、グラフGCは、インダクタ40a,40bの挿入位置をバイポーラトランジスタ12a,12bとインダクタ41a,41bとの間に変更した場合の利得、グラフGDは、インダクタ40a,40bの挿入位置をバイポーラトランジスタ10a,10bとバイポーラトランジスタ11a,11bとの間に変更した場合の利得を、それぞれ示す。
これらの結果に示すように、本実施形態の信号出力端子92a,92bにおける小信号利得(図5の(B)部のグラフGB)は、インダクタ40a,40bを除いた場合のグラフGAと比較することで、インダクタ40a,40bの存在により向上していることが分かる。その一方で、本実施形態の信号入力端子91a,91bにおける小信号利得(図5の(A)部のグラフGB)は、インダクタ40a,40bを除いた場合のグラフGAとほとんど変わらない。
インダクタ40a,40bをバイポーラトランジスタ12a,12bとインダクタ41a,41bとの間に挿入した場合の信号出力端子92a,92bにおける小信号利得(図5の(B)部のグラフGC)は、50GHzにおいて上昇しているがピーク周波数が低下しており、本実施形態に比べるとピーキングの効果が小さい。この場合の信号入力端子91a,91bにおける小信号利得(図5の(A)部のグラフGC)は、本実施形態とほとんど変わっていない。インダクタ40a,40bをバイポーラトランジスタ12a,12bとインダクタ41a,41bとの間に接続する構成は、インダクタ40a,40bとインダクタ41a,41bとを直列接続する構成を意味する。この構成はインダクタ40a,40bを使用せずにインダクタ41a,41bのインダクタンスを増加させることと等価な構成であり、この構成により、共振周波数(ピーク周波数)が低下するものと考えられる。一方、本実施形態の構成の場合、動的カスコードトランジスタであるバイポーラトランジスタ12a,12bによって、インダクタ40a,40bで発生した起電力がコレクタ側に2倍されて出力される。さらに、本実施形態では、出力された起電力にインダクタ41a,41bの起電力が上乗せされて出力される。これにより、インダクタ41a,41bのみを使用する場合(図5の(B)部のグラフGA)に比較して大きなピーキングが得られたものと考えられる。
インダクタ40a,40bをバイポーラトランジスタ10a,10bとバイポーラトランジスタ11a,11bの間に挿入した場合の信号出力端子92a,92bにおける小信号利得(図5の(B)部のグラフGD)は本実施形態よりも大きくなっている。その一方で、この場合の信号入力端子91a,91bにおける小信号利得(図5の(A)部のグラフGD)が大きく変化し、ピーク周波数の低下とピークの高さの上昇がみられる。これは、インダクタ40a,40bによってバイポーラトランジスタ10a,10bのコレクタの電圧振幅が増加したことによりミラー容量が増加した結果、バイポーラトランジスタ10a,10bの入力インピーダンスが変化したためと考えられる。このように信号入力端子91a,91bにおける小信号利得が上昇すると、大信号が入力された際の出力回路100の入力振幅が増大し、出力回路100の線形入力範囲を超えて、出力回路100の信号増幅動作の線形性が悪化する可能性がある。この結果、出力回路100のSNR(Signal To Noise Ratio)が悪化するといった問題が生じるため、信号入力端子91a,91bにおける小信号利得の上昇は好ましくない。
このような解析結果により、本実施形態の構成におけるインダクタ40a,40bの挿入位置は、信号増幅動作における線形性の向上及び電圧利得の向上の両立の観点から最も効果的であることが明らかにされた。
ここで、本実施形態の構成において、インダクタ40a,40bが挿入されることにより、バイポーラトランジスタ11a,11bのコレクタの電圧振幅が増加する。これにより、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ・エミッタ間の電圧振幅とバイポーラトランジスタ11a,11bのコレクタ・エミッタ間の電圧振幅との比が変化し、バイポーラトランジスタ11a,11bのコレクタ・エミッタ間の電圧振幅の方が大きくなる。そこで、本実施形態では、インダクタ40a,40bが無い場合に比べて、キャパシタ31a,31bのキャパシタンスを増加させている。これにより、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースの電圧振幅及びエミッタの電圧振幅が減少し、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ・エミッタ間の電圧振幅が増加するため、両者のコレクタ・エミッタ間の電圧振幅の比が再び等しくなる。このとき、上記の通り、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースの電圧振幅及びエミッタの電圧振幅が減少することにより、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタから見た寄生容量が小さくなる。この結果、出力回路100の広帯域化が可能となるという効果も得られる。
なお、インダクタ40a,40bのインダクタンスが大きすぎると、電流振幅が増大してバイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ電流の最小値が0に達し、線形性が悪化する場合がある(コレクタ電流の極性は、コレクタからエミッタに向かう向きを正とする)。このため、本実施形態では、インダクタ40a,40bのインダクタンスはインダクタ41a,41bのインダクタンスよりも小さく設定される。例えば、インダクタ40a,40bのインダクタンスはインダクタ41a,41bのインダクタンスの半分以下であることが望ましい。
次に、図6を参照して、駆動回路200に含まれる入力回路110の構成例を説明する。図6は、入力回路110の構成を示す回路図である。入力回路110は、入力端子130a,130bに接続される入力端子96a,96b、出力回路100の信号入力端子91a,91bに接続される出力端子97a,97b、差動増幅器85、及びエミッタフォロア86を備える。
差動増幅器85は、バイポーラトランジスタ14a,14b,15a,15b、抵抗素子26a,26b,27a,27b、電流源56を含む。バイポーラトランジスタ14a,14bは、それぞれのベースが入力端子96a,96bに接続され、それぞれのコレクタがバイポーラトランジスタ15a,15bのエミッタに接続され、それぞれのエミッタが抵抗素子26a,26bを介して電流源56の一端に接続されている。これらのバイポーラトランジスタ14a,14bは、入力された差動信号である入力信号でコレクタ電流を変調する。バイポーラトランジスタ15a,15bは、それぞれのベースが所定の直流電圧に設定されるバイアス供給端子98に接続され、それぞれのエミッタがバイポーラトランジスタ14a,14bのコレクタに接続され、それぞれのコレクタが抵抗素子27a,27bを介して所定の電源電位(例えば、3.3V)の電源端子76a,76bに接続されている。これらのバイポーラトランジスタ15a,15bは、直流電圧がベースに印加された静的カスコードトランジスタである。抵抗素子26a,26bは、入力回路110の線形入力範囲の拡大を可能とするディジェネレーション抵抗である。電流源56は、一端が抵抗素子26a,26bを介してバイポーラトランジスタ14a,14bのエミッタに接続され、他端が接地電位に設定された接地端子71aに接続され、バイポーラトランジスタ14a,14bのエミッタ電流を供給する。抵抗素子27a,27bは、バイポーラトランジスタ14a,14bで変調されたコレクタ電流を電圧信号に変換するための負荷である。このような構成の差動増幅器85によれば、バイポーラトランジスタ14a,14bのコレクタ電流のそれぞれが、入力端子96a,96bから入力された差動信号である入力信号によって変調されることにより、バイポーラトランジスタ15a,15bのコレクタから差動信号である二つの出力信号が出力される。
エミッタフォロア86は、バイポーラトランジスタ16a,16b、及び電流源57,58を含む。バイポーラトランジスタ16a,16bは、それぞれのベースがバイポーラトランジスタ15a,15bのコレクタに接続され、それぞれのコレクタが所定の電源電位の電源端子76c,76dに接続され、それぞれのエミッタが出力端子97a,97b及び電流源57,58の一端に接続されている。これらのバイポーラトランジスタ16a,16bは、差動増幅器85の二つの出力信号に追随する信号を生成し、出力端子97a,97bのそれぞれから出力する。電流源57,58は、それぞれ、一端がバイポーラトランジスタ16a,16bのエミッタに接続され、他端が接地電位の接地端子71b,71cに接続され、バイポーラトランジスタ16a,16bのエミッタ電流を供給する。エミッタフォロア86は、低出力インピーダンスで差動増幅器85の二つの出力信号に追随する二つの出力信号を出力端子97a,97bから出力する。
図7には、本実施形態に係る光送信モジュール400の構成を示す。光送信モジュール400は、上述した駆動回路200と、光変調装置300とを含む。駆動回路200は、例えば、入力された4つの差動信号を増幅して出力し、光変調装置300は、駆動回路200から出力された4つの差動信号に基づいて変調される光信号を生成し、例えば、偏波多重QAM変調された1つの光信号を出力する。光送信モジュール400は、例えば、セラミックのパッケージに駆動回路200と光変調装置300を集積・実装した光モジュールであり、外形が例えば30mm×15mm×5mmである。上記構成の光送信モジュール400によれば、出力回路100を搭載した駆動回路200が使用されているため、高品質な高速変調が可能な高信頼度の光送信モジュールが実現される。
図8には、本実施形態に係る光送受信モジュール500の構成を示す。光送受信モジュール500は、上述した駆動回路200及び光変調装置300に加え、受信回路600と、受光装置700とを含む。受光装置700は、光伝送路を経由して外部から入力された光信号を受信し、例えば偏波多重QAM変調された光信号から、4つの信号(受光電流)を分離して出力する。受信回路600は、4つの受光電流を電圧に変換して増幅して出力する。上記構成の光送受信モジュール500によれば、出力回路100を搭載した駆動回路200が使用されているため、高品質な高速変調が可能な高信頼度の光送受信モジュールが実現される。
以上説明した本実施形態に係る出力回路100によれば、入力された入力信号によって、バイポーラトランジスタ10a,10bのコレクタ電流がそれぞれ変調され、そのコレクタ電流は、バイポーラトランジスタ11a,11b、インダクタ40a,40b、バイポーラトランジスタ12a,12b、及びインダクタ41a,41bのそれぞれを介して、信号出力端子92a,92bから出力信号としてそれぞれ出力される。このとき、インダクタ41a,41bの存在により、信号出力端子92a,92bにおける電圧利得に高周波側においてピーキングを持たせることができるとともに、インダクタ40a,40bの存在により、増幅動作の線形性を維持しつつ、信号出力端子92a,92bにおける電圧利得の高周波側のピーキングを効果的に増加させることができる。それに加えて、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタにおける電圧振幅がバイポーラトランジスタ12a,12bとバイポーラトランジスタ11a,11bで分圧されるため回路の信頼性の向上が可能となる。また、インダクタ40a,40bの存在により、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースの電圧振幅及びエミッタの電圧振幅を抑制することが可能になり、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタから見た寄生容量が小さくなる結果、出力回路100の広帯域化が可能となる。すなわち、本実施形態の出力回路100により、増幅動作の線形性を維持しながら高周波利得を向上させることができ、回路の信頼性も高めることができる。
また、バイポーラトランジスタ11a,11bのベースには、第1のバイアス電圧として、直流電圧が印加され、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースには、第2のバイアス電圧として、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ電位に対応して変動する電圧が印加される。かかる構成により、バイポーラトランジスタ12a,12bにおけるコレクタの電圧振幅をバイポーラトランジスタ12a,12bとバイポーラトランジスタ11a,11bとでバランスよく分圧させることができ、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ・エミッタ間の電圧振幅がコレクタにおける電圧振幅よりも小さくされる。その結果、出力回路100における増幅動作の信頼性をさらに高めることができる。
また、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースに第2のバイアス電圧を供給するバイアス供給回路80を備え、バイアス供給回路80は、接続ノード95と、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタとバイポーラトランジスタ12a,12bのベースとの間に接続された抵抗素子22a,22bと、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースと接続ノード95との間に接続された抵抗素子21a,21bと、バイポーラトランジスタ12a,12bのベースと接続ノード95との間に接続されたキャパシタ31a,31bと、接続ノード95と接地端子70bとの間に接続された電流源50と、を有する。このような回路構成により、低周波におけるバイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタの電圧振幅が抵抗素子22a,22b及び抵抗素子21a,21bによって分圧されて、分圧された電圧振幅がバイポーラトランジスタ12a,12bのベースに与えられ、高周波におけるバイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタの電圧振幅がキャパシタ31a,31bとバイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ・ベース間寄生容量によって分圧されて、分圧された電圧振幅がバイポーラトランジスタ12a,12bのベースに与えられる。これにより、低周波から高周波までの広い周波数帯域において、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタ・エミッタ間の電圧振幅がコレクタにおける電圧振幅よりも小さくされるため、バイポーラトランジスタ12a,12bにおけるコレクタの電圧振幅をバイポーラトランジスタ12a,12bとバイポーラトランジスタ11a,11bとでバランスよく分圧させることができる。その結果、出力回路100における回路の信頼性をさらに高めることができる。
さらに、インダクタ40a,40b,41a,41bには配線をスパイラル状に形成したスパイラルインダクタが使用されている。この場合、回路の小型化を保ちつつ、高周波利得の向上を実現できる。
またさらに、バイポーラトランジスタ12a,12bのコレクタにおける電流値が正となるようにインダクタ40a,40b及びインダクタ41a,41bのインダクタンスが設定されている。かかる構成により、信号増幅の線形性を維持することができる。
加えて、本実施形態の出力回路100と入力回路110とを備える駆動回路200においては、増幅動作の線形性を維持しながら高周波利得を向上させることができ、回路の信頼性も高めることができる。
以上、好適な実施の形態において本開示の原理を図示し説明してきたが、本開示は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本開示は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
図9は、変形例に係る出力回路100Aの構成を示す回路図である。出力回路100Aの上記実施形態に係る出力回路100との相違点は、静電気放電(ESD:Electro-static Discharge)電流が発生した際に出力回路100Aの内部回路を保護するESD保護回路82,84及び抵抗素子25を備えている点である。
ESD保護回路82は、信号出力端子92a,92bとインダクタ41a,41bとの間に接続され、ダイオード61a,61b,62a,62b,63a,63b、抵抗素子23a,23b、及びクランプ回路81を有する。
抵抗素子23a,23bは、信号出力端子92a,92bの間の差動信号の中間電位を発生させる電位生成回路を構成する。すなわち、抵抗素子23a,23bは、それぞれ、一対の信号出力端子92a,92bとノード(接続点)X2との間において、互いに直列に接続された抵抗値が略等しい抵抗素子である。抵抗素子23a,23bは、第2のノードX2を出力とする電位生成回路を構成する。電位生成回路は、ESDが発生していない時(出力回路100Aの内部回路が平衡状態(無変調状態)の時、または、変調動作を行っている時)、ノードX2において、出力コモンモード電圧を生成する。また、電位生成回路は、ESDが発生している時、後述のダイオード61a,61b,62a、62bがターンオンするまでは、第2のノードX2において、信号出力端子92a,92bの中間電位に略等しい電位を生成する。なお、ダイオード61a,61b,62a、62bがターンオンした後は、第2のノードX2における電位は、信号出力端子92a,92bの中間電位では無くなる。抵抗素子23a,23bの抵抗値は、外部負荷102の負荷抵抗104a,104bの抵抗値に比べて少なくとも10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。前者の場合、合成負荷抵抗が負荷抵抗104a,104bの抵抗値の約90%となり、後者の場合、合成負荷抵抗が負荷抵抗104a,104bの抵抗値の約99%となり、変調動作時に出力される信号電圧への影響が抑えられる。本実施形態では、例えば抵抗素子23a,23bの抵抗値は5kΩに設定される。また、抵抗素子23a,23bの生成する出力コモンモード電圧は、例えば、4.0Vである。
ダイオード61a,62aは、直列に接続されたESD保護用のダイオードであり、アノード側が信号出力端子92aに、カソード側がノードX1に接続されている。ダイオード61b,62bは、直列に接続されたESD保護用のダイオードであり、アノード側が信号出力端子92bに、カソード側がノードX1に接続されている。これらのダイオード61a,61b,62a,62bは、例えば、P型ウェルに形成されたPN接合ダイオードである。ダイオード61a,61b,62a,62bは、信号出力端子92a,92bに正のESD電圧が発生した際の放電経路となる。
ダイオード63a,63bは、ESD保護用のダイオードであり、それぞれ、カソードが信号出力端子92a,92bに、アノードが接地端子70d,70eに接続されている。これらのダイオード63a,63bは、例えば、N型ウェルに形成されたPN接合ダイオードである。ダイオード63a,63bは、信号出力端子92a,92bに負のESD電圧が発生した際の放電経路となる。
クランプ回路81は、抵抗素子24、コンデンサ32、MOSトランジスタ53,54,55を含む。このクランプ回路81は、ノードX2に正のESD電圧が発生した際、これをトリガーとして、ノードX1と接地端子70cとの間を低抵抗に設定することにより、ノードX1を接地電位に接続する機能を有する。ここで、本実施形態では、ノードX2とノードX1とは互いに電気的に接続されており、略等しい電位が発生する。クランプ回路81は、信号出力端子92a,92bにおけるESD電位の上昇を抑制することで、出力回路100A内の内部回路の絶縁破壊を防止するための回路である。一般的に用いられるクランプ回路は、内部電源と接地の間に接続して使用されることが多い。その一方で、本変形例の出力回路100Aは、オープンコレクタ回路であり、電源電圧が例えば5.0Vの外部電源で終端されている。また、出力回路100Aの内部電源電圧は例えば3.3Vであり、出力コモンモード電圧(例えば4.0V)よりも小さい。その結果、クランプ回路81を内部電源でバイアスする構成は、ダイオード61a,62a,61b,62bがターンオンして信号出力端子92a,92bから内部電源に大きな電流が流れてしまう可能性があるため、採用が困難である。ダイオードが複数段で直列接続された構成を採用することでダイオードのターンオンの回避を図ることも考えられるが、この場合は、ESD発生時の信号出力端子92a,92bにおける最大電圧が増大し、ESD保護が不十分となる恐れがある。そこで、本実施形態では、出力コモンモード電圧が発生するノードX1と接地端子70cとの間にクランプ回路81が接続された構成が採用される。なお、クランプ回路81には、ノードX1の電圧で使用できるように内部の素子選定及び回路設計が施された構成が適用される。
抵抗素子24及びコンデンサ32は、中間電位を基にESD電圧を検出するための検出回路であり、ローパスフィルタを形成する。すなわち、抵抗素子24及びコンデンサ32は、ノードX1と接地端子70cとの間に直列に接続されている。このような構成により、ノードX1にステップ状の電圧パルスが発生した場合に、抵抗素子24とコンデンサ32の間の接点(ノード)Yに、抵抗素子24の抵抗値とコンデンサ32のキャパシタンスとの積で決まる時定数程度の遅延時間後に、ノードX1と略等しい電圧が発生する。
MOSトランジスタ53,54は、インバータ回路を構成する。MOSトランジスタ53は、P型MOSトランジスタであり、ソースがノードX1に、ドレインがノードZに、ゲートがノードYに接続されている。MOSトランジスタ54は、N型MOSトランジスタであり、ソースが接地端子70cに、ドレインがノードZを介してMOSトランジスタ53のドレインに、ゲートがノードYに接続されている。このインバータ回路においては、ノードX1に電圧が発生して、ノードYの電圧がインバータ回路の閾値電圧よりも低いときに、MOSトランジスタ53がオンとなって、インバータ回路のノードZにおける出力がノードX1と略等しい電圧となる。一方で、ノードYの電圧が閾値電圧よりも高いとき、MOSトランジスタ54がオンとなって、インバータ回路の出力が接地端子70cと略等しい電圧となる。ここで、本実施形態ではインバータ回路は1段の構成となっているが、3段以上の奇数段の構成に変更されてもよい。
MOSトランジスタ55は、N型MOSトランジスタによって構成されるスイッチング素子であり、ドレインがノードX1に、ソースが接地端子70cに、ゲートがインバータ回路の出力ノードであるノードZに接続されている。MOSトランジスタ55は、インバータ回路の出力に応じてオン/オフするスイッチング素子(スイッチング回路)であり、ゲート-ソース間電圧がMOSトランジスタ55の閾値電圧よりも高いときにオンとなってドレイン-ソース間抵抗を低くするように動作する。一方で、MOSトランジスタ55は、ゲート-ソース間電圧がMOSトランジスタ55の閾値電圧よりも低いときにオフとなってドレイン-ソース間抵抗を高くするように動作する。このような構成により、MOSトランジスタ55は、ノードYの電位をトリガーとして、ノードX1の電位に応じてスイッチングして、ノードX1の電位が上昇した際にノードX1を接地電位に低抵抗で接続するように機能する。
上記構成の出力回路100AにおけるESD保護動作について説明する。なお、ESDは、信号出力端子92a,92bのいずれか一方、または両方に発生する可能性がある。例えば、図3において、電気配線105aを信号出力端子92aに接続する際、信号出力端子92aに対しESD発生の可能性がある。同様に、電気配線105bを信号出力端子92bに接続する際、信号出力端子92bに対しESD発生の可能性がある。また、電気配線105a,105bが接続された状態で、電気配線105cを接続端子103cに接続する際、信号出力端子92a,92bの両方にESD発生の可能性がある。いずれにおいてもESD保護動作は同様であるため、以後、区別せず説明を行う。
まず、信号出力端子92a,92bに負のESD電圧が発生した場合、ダイオード63a,63bを介して接地端子70d,70eから信号出力端子92a,92bに電流が流れる。これにより、信号出力端子92a,92bにおける負のESD電圧の増大を抑制し、出力回路100Aの絶縁破壊を防止することが可能である。
次に、信号出力端子92a,92bに正のESD電圧が発生した場合、ダイオード61a,62a,61b,62b及び抵抗素子23a,23bを介して、信号出力端子92a,92bからノードX1に電流が流れ、ノードX1の電圧が上昇する。クランプ回路81の検出回路によって、ノードYの電圧上昇はノードX1に比べて遅延する。これにより、クランプ回路81のインバータ回路のMOSトランジスタ53がオンし、ノードZの電圧が上昇する。その結果、MOSトランジスタ55がオンし、ノードX1の電圧上昇が抑制され、信号出力端子92a,92bの電圧上昇が抑制される。このようにして、出力回路100Aの絶縁破壊を防止することが可能である。
本変形例の出力回路100Aでは、上述したように、ダイオード61a,62a,61b,62b及び抵抗素子23a,23bを介して、信号出力端子92a,92bからノードX1に電流が流れる。このため、例えば従来文献(特開2015-173214号公報)に記載の出力回路のように抵抗素子23a,23bが無い場合に比べて、ノードX1の電圧上昇が速くなり、より速いタイミングでMOSトランジスタ55がオンする。その結果、ノードX1の電圧上昇をさらに抑制し、出力回路100Aの信頼性向上が可能である。
なお、出力回路100Aを通常使用している状態(図3に示す状態)では、ノードX1とノードYの電圧が一致し、MOSトランジスタ55はオフとなっている。このため、クランプ回路81によって出力回路100Aの使用に問題が生じることは無い。ここで、出力回路100Aを通常使用している状態であっても、例えば出力回路100Aの変調動作や外部電源106の電圧変動によって、ノードX1の電圧が変動する可能性がある。このため、このような電圧変動でMOSトランジスタ55が誤ってオンしないよう、クランプ回路81の閾値電圧等を適切に設計することが望ましい。
本変形例の出力回路100Aでは、クランプ回路81の電源電圧側(ノードX1)が、抵抗素子23a,23bで生成された出力コモンモード電圧でバイアスされている。これにより、出力回路100Aが平衡状態(無変調状態)のとき、ダイオード61a,62a,61b,62bのアノード-カソード間電圧は0Vとなる。このため、信号出力端子92a,92bの電圧変化がダイオード61a,62a,61b,62bの立ち上がり電圧(例えば0.6V)の合計(例えば1.2V)よりも小さければ、ダイオード61a,62a,61b,62bはターンオンせずに高抵抗のままである。信号出力端子92a,92bにおける電圧変化が±1.2Vのとき、出力信号の最大振幅はシングルエンドで2.4V、差動で4.8Vとなる。なお、ダイオード61a,62a,61b,62bがターンオンしない場合であっても、ダイオード61a,62a,61b,62bの順方向電圧が増大すると、空乏層が縮小し、寄生容量が増大する。このとき順方向電圧の増大に伴い出力回路100Aの動作帯域が減少するため、ダイオード61a,62a,61b,62bの順方向電圧は小さくなるように設定されることが望ましい。
一方、例えば上記従来文献に記載された出力回路のように、クランプ回路81の電源電圧側(ノードX1に相当するノード)がバイアスされずフローティングにされた場合、出力回路100Aの変調動作によってダイオード61a,62a,61b,62bがターンオンし、出力信号波形が歪むといった問題が生じる恐れがある。これにより出力信号の線形性が悪化する恐れがある。また、ダイオード61a,62a,61b,62bの順方向電圧が大きく寄生容量が大きいため、出力回路100Aの動作帯域が減少するといった問題が生じる恐れもある。
具体的には、ノードX1がフローティングにされた構成の場合、平衡状態の出力回路100Aにおいて、ノードX1の電圧は、ノードX1から接地端子70cへのリーク電流により、信号出力端子92a,92bに比べてダイオード61a,62a,61b,62bの立ち上がり電圧の合計だけ低くなる。この結果、ノードX1の電圧は出力コモンモード電圧(例えば、4.0V)から立ち上がり電圧の合計(例えば、1.2V)ほど低い電圧(例えば、2.8V)となる。この時点でダイオード61a,62a,61b,62bの各アノード-カソード間順方向電圧が大きい(例えば、0.6V)ため、寄生容量が増大して出力回路100Aの動作帯域が減少する恐れがある。
また、フローティングの構成の場合、出力回路100Aの変調動作によって信号出力端子92aまたは信号出力端子92bの電圧が上昇した場合、ダイオード61a,62aまたはダイオード61b,62bの各順方向電圧が大きく(例えば0.6V以上に)なるため、ダイオード61a,62aまたはダイオード61b,62bがターンオンする。これにより、信号出力端子92aまたは信号出力端子92bからノードX1に電流(充電電流)が流れるため、出力信号波形が歪むといった問題が生じる恐れがある。なお、充電電流は、ノードX1の電圧が上昇してダイオード61a,62a,61b,62bの各順方向電圧が立ち上がり電圧以下になったところで止まる。このため、この問題は特に、出力回路100Aが平衡状態から変調動作に入った直後に生じやすい。ただし、リーク電流によってノードX1の電圧は徐々に低下するため、ダイオード61a,62a,61b,62bの各順方向電圧が再び立ち上がり電圧以下になるまで、充電電流は一定の量及び頻度で発生し続ける可能性がある。
フローティングの構成の場合の上述の充電電流に伴う問題は、出力回路100Aの入出力信号が、デジタル信号(例えば矩形波)ではなくアナログ信号(例えばサイン波)の場合に、より深刻になる可能性がある。例えば、入出力信号が矩形波の場合、入出力信号は差動信号であるから、ハイ・ロー間の遷移を除くと信号出力端子92a,92bのいずれか一方がハイ(最大電圧)であり、ダイオード61a,62aまたはダイオード61b,62bを介したノードX1の充電が速い。一方、入力信号がサイン波の場合、入出力信号はほとんど常に遷移状態で最大電圧より低いため、ダイオード61a,62aまたはダイオード61b,62bを介したノードX1の充電が遅い。この結果、デジタル信号に比べてアナログ信号では、出力信号波形が歪むといった問題が長期間に渡って高頻度で発生する恐れがある。
同様に、フローティングの構成の場合の上述の充電電流に伴う問題は、出力回路100Aの入出力信号が、振幅一定の変調信号(例えばNRZ(Non Return to Zero)信号)ではなく、多値振幅の変調信号(例えば4-PAM(Pulse Amplitude Modulation)信号)の場合、より深刻になる可能性がある。これは、振幅一定の変調信号に比べて多値振幅の変調信号の方が、入出力信号が最大となる頻度が低いからである。この結果、ダイオード61a,62aまたはダイオード61b,62bを介したノードX1の充電が遅くなり、振幅一定の変調信号に比べて多値振幅の変調信号では、出力信号波形が歪むといった問題が長期間に渡って高頻度で発生する恐れがある。
本実施形態では、例えば、入出力信号としてQAM信号を用いる。すなわち、入出力信号が多値振幅のアナログ変調信号であるため、フローティングの構成の場合の上述の充電電流に伴う問題がより深刻になる可能性がある。しかしながら、本実施形態では、ノードX1がノードX2に電気的に接続されることにより、抵抗素子23a,23bによってノードX1が出力コモンモード電圧でバイアスされるため、そのような問題は生じにくい。なお、出力信号による信号出力端子92a,92bの電圧変化がダイオード61a,62a,61b,62bの立ち上がり電圧よりも大きい場合、ダイオードの段数を増やす構成を採る、例えば、ダイオード61a,62a,61b,62bを3段以上のダイオードを含むような構成に変更することで、ダイオードのターンオンを回避することが可能である。
このように、出力回路100Aの構成によれば、ESDが発生した際の放電経路がESD保護用ダイオードと抵抗素子とによって構成されることで、出力回路100AのESD保護がより確実になり、高信頼化が可能である。また、クランプ回路81を出力コモンモード電圧でバイアスすることにより、ESD保護用ダイオードの寄生容量の増加及びターンオンを防ぐことができ、高品質な高速信号変調が可能である。この結果、高品質な高速変調動作が可能な高信頼度の出力回路100Aが実現可能となっている。
ESD保護回路82内のクランプ回路81の構成は適宜変更されてよい。例えば、ローパスフィルタの構成の検出回路は、抵抗素子とコンデンサの接続位置を入れ替えたハイパスフィルタ、あるいは、コンデンサが直列接続された容量分圧回路の構成に変更されてよい。この場合、検出回路の出力電圧は、ノードX1とほぼ同時に変化し、一定期間経過後にゼロに戻る。そのため、クランプ回路81にいては、インバータ回路が省略されるか、インバータ回路が2段以上の偶数段で構成される。
また、本変形例の出力回路100Aには、さらに抵抗素子25及びESD保護回路84が設けられている。
抵抗素子25は、接続ノード95とバイアス供給端子94との間に挿入された所定の抵抗値(例えば、1kΩ)の抵抗素子である。このような素子の存在により、例えば正のESD電圧が信号出力端子92a,92bに発生した場合、抵抗素子21a,21b,22a,22b,25を介してバイポーラトランジスタ11a,11bのベースが充電されるため、バイポーラトランジスタ11a,11bのコレクタ・ベース間電圧の上昇が抑制される。また、バイポーラトランジスタ11a,11bのベース・エミッタ間電圧が上昇すると、コレクタ電流が流れてエミッタも充電されるため、バイポーラトランジスタ11a,11bのベース・エミッタ間電圧の上昇も抑制される。
ESD保護回路84は、ダイオード64,65、クランプ回路83、接地端子70f,70g、及び電源端子75を含む。ダイオード64は接続ノード95と電源端子75との間に、ダイオード65は接続ノード95と接地端子70fとの間に、クランプ回路83は電源端子75と接地端子70gとの間に、それぞれ接続されている。
上記構成の出力回路100Aでは、バイポーラトランジスタ11a,11bのベースが外部電源から切り離されているため、ESD発生時にベース-コレクタ間電圧が最大定格を超え、バイポーラトランジスタ11a,11bが故障する恐れがあった。ESD保護回路84の存在により、バイポーラトランジスタ11a,11bのベース電圧の上昇が抑制される。このようにして、バイポーラトランジスタ11a,11bの故障リスクを低減することが可能である。
ここで、接続ノード95には、例えば2.5Vの電圧が発生し、電源端子75には、内部電源から例えば3.3Vが供給されている。この場合、ダイオード64のアノード-カソード間の逆バイアス電圧は例えば0.8Vとなり、ダイオード64はターンオンしない。なお、接続ノード95と電源端子75との間に複数のダイオードを直列接続しても良い。
このように、本変形例では、上記実施形態に比べてバイポーラトランジスタ11a,11bの故障リスクの低減が可能である。これにより、高品質な高速変調が可能な高信頼度の出力回路が実現可能である。また、出力回路100Aは抵抗素子25を含んでいる。このような構成により、信号出力端子92a,92bに正のESD電圧が発生した場合、バイポーラトランジスタ11a,11bのコレクタ・ベース間電圧及びベース・エミッタ間電圧の上昇が抑制される。これにより、ESD電圧の発生によるバイポーラトランジスタ11a,11bの故障のリスクを低減することができる。
図10は、別の変形例に係る出力回路100Bの構成を示す回路図である。出力回路100Bの上記実施形態に係る出力回路100との相違点は、シングルエンド信号を増幅する構成、すなわち、出力回路100のうちの片相の信号を増幅する構成のみを含む点である。すなわち、出力回路100Bは、信号入力端子91、信号出力端子92、バイアス供給端子94、接続ノード95、接地端子70a、バイポーラトランジスタ10,11,12、抵抗素子20,21,22、キャパシタ31、インダクタ40,41を有する。ここで、シングルエンドの構成では、電流源50は必ずしも必要ではなく、バイポーラトランジスタ13は除かれている。また、バイポーラトランジスタ12のベースにバイアスを供給するための電源回路として接続ノード95と接地端子70bとの間に接続される直流電源59が設けられる。抵抗素子21,22、接続ノード95、キャパシタ31、及び直流電源59によってバイアス供給回路80Bが構成される。このような構成の出力回路100Bは、信号出力端子92が外部電源106によって所定電圧が印加された外部負荷102Bに接続される。
図11は、別の変形例に係る出力回路100Bの構成を示す回路図である。この変形例においては、図10に示す構成に比較して、バイポーラトランジスタ12のベースにバイアスを供給するバイアス供給回路80Bの構成が異なる。すなわち、接続ノード95と接地端子70bとの間に接続される電流源51と、接続ノード95と接地端子70hとの間に接続されるキャパシタ33とを含む。このようなバイアス供給回路80Bの構成によっても、バイポーラトランジスタ12のベースにバイアスを供給できる。
上記変形例にかかる出力回路100Bは、外部負荷として、LN変調器、EA(Electro-Absorption)変調器等が対象とされうる。
また、本実施形態の出力回路100は、オープンコレクタ回路の構成とされているが、出力回路100の動作に影響がない場合は、信号出力端子92a,92bと、内部電源あるいは接地端子との間に抵抗素子が挿入されてもよい。例えば、外部負荷102の負荷抵抗104a,104bの10倍以上大きな抵抗(例えば300Ω)を、信号出力端子92aと内部電源(例えば3.3V)、及び、信号出力端子92bと内部電源の間に挿入することが可能である。この場合、合成負荷抵抗は負荷抵抗104a,104bの約90%となる。このような回路も実質的にオープンコレクタ回路と見なすことができる。