以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
なお、以下で説明する図8、図9は、コネクタCのハウジング、保護部材を外した状態を図示している。また、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「軸方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。軸方向Xは、典型的には、金属端子が設けられる電線の延在方向に相当し、金属端子と相手端子との挿抜方向に相当する。幅方向Yと高さ方向Zとは、軸方向Xと交差する交差方向に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。
[実施形態1]
図1、図2に示す本実施形態に係る端子付き電線100は、導電性を有する電線Wと、電線Wの端末に設けられる金属端子1とを備える。本実施形態に係る端子付き電線100は、例えば、車両等に使用されるワイヤハーネスWH1等に適用される。
電線Wは、例えば、導電性を有する線状の導体部W1と、当該導体部W1の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆部W2とを含んで構成される。電線Wは、絶縁被覆部W2で導体部W1を被覆した絶縁電線である。導体部W1は、導電性の金属、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の素線を複数束ねた芯線である。導体部W1は、複数の素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆部W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆部W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。電線Wは、少なくとも導体部W1の一方の端末において、絶縁被覆部W2が剥ぎ取られており、当該導体部W1の一方の端末が絶縁被覆部W2から露出しており、当該露出している導体部W1の端末に金属端子1が設けられる。金属端子1は、電線Wの導体部(芯線)W1と導通されるものである。金属端子1は、例えば、後述するコネクタC(図7等参照)等に保持される。本実施形態の金属端子1は、電線Wの端末に圧着される圧着端子であるがこれに限られない。
ここで、図7、図8を参照して端子付き電線100が適用されるワイヤハーネスWH1について説明する。ワイヤハーネスWH1は、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品(電線束)とし、コネクタC等で複数の電線Wを各装置に接続するようにしたものである。ワイヤハーネスWH1は、少なくとも1つの端子付き電線100と、端子付き電線100を構成する電線Wに接続される接続相手電線WAと、電線Wと接続相手電線WAとが電気的に接続された分岐接続部JTとを備える。ワイヤハーネスWH1は、この他、さらに、コルゲートチューブ、グロメット等の外装部材、電気接続箱、固定具など種々の構成部品を含んで構成されてもよい。
本実施形態のワイヤハーネスWH1は、複数(ここでは、4つ)の端子付き電線100を備える電線束であり、当該複数の端子付き電線100の各電線Wが分岐接続部JTで相互に接合されている。この分岐接続部JTは、複数の電線Wのつなぎ部分(ジョイント部分)を構成するものであり、言い換えれば、複数の電線Wが分岐する分岐部分を構成するものであるということもできる。この場合、ワイヤハーネスWH1は、各端子付き電線100において、残りの他の端子付き電線100の電線Wが接続相手電線WAに相当することとなる。言い換えれば、各端子付き電線100は、電線Wと接続相手電線WAとが接続される分岐接続部JTを備えているということもできる。
本実施形態の各電線Wは、両端部において、導体部W1が絶縁被覆部W2から露出している。そして、各電線Wは、一方の端部に金属端子1が設けられ、当該金属端子1がそれぞれコネクタCのハウジングに保持される一方、他方の端部同士が分岐接続部JTで相互に接合されている。
本実施形態の分岐接続部JTは、電線Wと接続相手電線WAとが超音波接合された超音波接合部UW1を形成する。超音波接合部UW1は、各電線Wにおいて、絶縁被覆部W2から露出した導体部W1同士を超音波接合した部分である。超音波接合部UW1は、各導体部W1の当該接合部分が絶縁性を有する保護部材JTHによって覆われ、保護されている。
ここで、超音波接合とは、図9に例示するように、超音波接合機の振動子を構成するホーンM1によって接続対象に対して超音波振動を印加し、当該印加された超音波振動を用いて行う金属間接合である。この場合、接続対象である複数の電線Wは、露出した各導体部(芯線)W1を重ねた状態で、受け治具を構成するアンビルM2と上記ホーンM1とによって当該各導体部(芯線)W1が挟持され、当該重なった導体部W1に対してホーンM1により超音波振動が加振される。この結果、複数の電線Wは、典型的には、重ねられた導体部W1の接合面が超音波振動によって互いに擦れ合うことで塑性変形により固相状態で接合され、超音波接合部UW1が形成される。
上記のように構成されるワイヤハーネスWH1は、超音波接合部UW1の形成過程で導体部W1に超音波振動が加振された際、当該振動が端子付き電線100の電線Wを伝播し金属端子1に印加される。本実施形態の端子付き電線100は、このような構造にあって、上記のように振動が加わる金属端子1に対して後述する硬化樹脂40を設けることで、適正な導通性能の確保を図ったものである。以下、再び、図1、図2を参照して金属端子1の各構成について詳細に説明する。
金属端子1は、図1、図2に示すように、電線Wが電気的に接続され、導電性を有する相手端子Tが挿抜される端子金具である。本実施形態の金属端子1は、雌型の端子形状として形成され、雄型の端子形状の相手端子Tと電気的に接続される。相手端子Tは、中心軸線が軸方向Xに沿う略矩形柱状に形成されている。
具体的には、金属端子1は、電線接続部10と、箱状部20と、バネ接点部30と、硬化樹脂40とを備える。電線接続部10、箱状部20、及び、バネ接点部30は、全体が一体で導電性を有する金属、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等によって構成される。金属端子1は、例えば、電線接続部10、箱状部20、バネ接点部30等の各部に対応した形状に打ち抜かれた一枚の板金をプレス及び折り曲げ成形することにより各部が立体的に一体で形成される(図3等参照)。金属端子1は、軸方向Xに沿って一方側から他方側に向かって、電線接続部10、箱状部20の順で並んで相互に連結され、箱状部20の内部にバネ接点部30が設けられる。
電線接続部10は、電線Wが接続され、当該電線Wの端末の導体部W1と金属端子1とを電気的に接続する部分である。本実施形態の電線接続部10は、電線Wに加締められて圧着される電線圧着部を構成する。電線接続部10は、導体圧着部11と中間部12と被覆圧着部13とを含んで構成される。電線接続部10は、軸方向Xに沿って箱状部20側から反対側に向かって、導体圧着部11、中間部12、被覆圧着部13の順で並んで相互に連結される。
導体圧着部11は、電線接続部10において軸方向Xの一端側、ここでは、箱状部20側に設けられ電線Wの導体部W1に対して加締められ圧着される部分である。さらに言えば、導体圧着部11は、導体部W1に対して加締められ圧着されることで、当該導体部W1と電気的に接続される部分である。導体圧着部11は、基部14、及び、当該基部14から幅方向Yに帯状に延びて形成されたバレル片(加締片)部11aによって、電線Wの導体部W1の外側を包んで当該導体部W1に対して加締められ圧着される。バレル片部11aは、図示していないが基部14から幅方向Yの両側にそれぞれ帯状に延びて一対で形成される。ここでは、基部14は、軸方向Xに沿って延在し導体圧着部11、中間部12、被覆圧着部13のそれぞれの一部を構成する。基部14は、軸方向Xの一方側に箱状部20が連結される。金属端子1は、電線接続部10と箱状部20とが基部14を介して電気的に接続され、当該基部14を介して箱状部20と電線Wの導体部W1とが電気的に接続され導通される。
中間部12は、導体圧着部11と被覆圧着部13との間に介在し、当該導体圧着部11と当該被覆圧着部13とを連結する部分である。
被覆圧着部13は、電線接続部10において軸方向Xの他端側、ここでは、箱状部20側とは反対側に設けられ電線Wの絶縁被覆部W2に対して加締められ圧着される部分である。被覆圧着部13は、上記基部14、及び、当該基部14から幅方向Yに帯状に延びて形成されたバレル片(加締片)部13aによって、電線Wの絶縁被覆部W2の外側を包んで当該絶縁被覆部W2に対して加締められ圧着される。バレル片部13aは、図示していないが基部14から幅方向Yの両側にそれぞれ帯状に延びて一対で形成される。
なお、本実施形態の電線接続部10は、導体圧着部11の各バレル片部11aと被覆圧着部13の各バレル片部13aとの間に中間部12が介在することで各バレル片部11aと各バレル片部13aとが分断されたいわゆる別体バレル型の圧着部を構成する。また、電線接続部10は、例えば、導体圧着部11の一対のバレル片部11a同士が互いに重なり合わず(オーバーラップせず)、いわゆるBクリンプと称する加締め圧着がなされるものとして形成することができる。しかしながら、電線接続部10の形式は、これらに限らない。電線接続部10は、導体圧着部11、中間部12、被覆圧着部13において、一対のバレル片部が軸方向Xに沿って連続し一体化されたいわゆる一体バレル型の圧着部を構成してもよい。また、電線接続部10は、一対のバレル片部11a同士が互いに重なり合って(オーバーラップして)加締め圧着がなされるものであってもよい。また、電線接続部10は、そもそも電線圧着部でなくてもよく、圧着以外の形式、例えば、溶着、締結等の形式で電線Wに対して電気的に接続されるものであってもよい。
箱状部20は、相手端子Tと電気的に接続される部分である。箱状部20は、上述したように雌型の端子形状に形成され、雄型の端子形状に形成された相手端子Tと電気的に接続される。本実施形態の箱状部20は、電線接続部10に連結されて箱状に形成され、内部の端子挿入空間部24に軸方向Xに沿って相手端子Tを挿入可能な部分を構成する。
箱状部20は、中心軸線が軸方向Xに沿う筒状に形成される。本実施形態の箱状部20は、略矩形筒状に形成された中空の箱部を構成する。箱状部20は、軸方向Xに沿って延在し、軸方向Xの一方側が開口して端子挿入口24aを形成し、他方側に電線接続部10が連結される。そして、箱状部20は、内部の空間部が端子挿入空間部24を構成する。端子挿入空間部24は、略矩形柱状に形成された相手端子Tが挿抜される空間部である。
より具体的には、箱状部20は、底体21、及び、一対の壁体22、23を有し、これら底体21、及び、一対の壁体22、23によって箱状に形成される。底体21、及び、一対の壁体22、23は、一体となって略矩形筒状の箱部を形成する。
底体21は、板厚方向が高さ方向Zに沿う略矩形板状に形成され、軸方向Xに沿って延在する。底体21は、軸方向Xの一方の端部(端子挿入口24a側とは反対側の端部)が電線接続部10の基部14に連結される。言い換えれば、電線接続部10は、この底体21に連結される。
一対の壁体22、23は、底体21において幅方向Yの両端からそれぞれ突出して形成される。より詳細には、一対の壁体22、23は、それぞれ、側壁部22a、23a、及び、天面部22b、23bを有して形成される。
側壁部22aと側壁部23aとは、それぞれ、壁体22、23において、底体21から高さ方向Zに沿って延在する部分である。側壁部22aと側壁部23aとは、板厚方向が幅方向Yに沿う略矩形板状に形成され、軸方向Xに沿って延在する。そして、側壁部22aと側壁部23aとは、幅方向Yに沿って端子挿入空間部24を挟んで間隔をあけて対向する。
天面部22bと天面部23bとは、それぞれ、壁体22、23において、壁体22、23の側壁部22a、23aから幅方向Yに沿って延在する部分である。天面部22b、23bは、上述の底体21と同様に、板厚方向が高さ方向Zに沿う略矩形板状に形成され、軸方向Xに沿って延在する。そして、天面部22b、23bと上述の底体21とは、高さ方向Zに沿って端子挿入空間部24を挟んで間隔をあけて対向する。
そして、本実施形態の一対の壁体22、23は、一部が重複部25を構成する。重複部25は、一対の壁体22、23において相互に重なり合う部分である。本実施形態の重複部25は、一対の壁体22、23において天面部22bと天面部23bとによって構成される。つまり、一対の壁体22、23は、天面部22bと天面部23bとが高さ方向Zに沿って相互に重なり合うことで重複部25を構成する。ここでは、天面部22bと天面部23bとは、一対の天面部22b、23bのうち、天面部22bが内側(端子挿入空間部24側)に位置し、天面部23bが外側(端子挿入空間部24側とは反対側)に位置して、高さ方向Zに対して重なっている。天面部22bと天面部23bとは、相互に重なり合った状態で、高さ方向Zに沿って対向する。
端子挿入空間部24は、上述のように形成される底体21、及び、一対の壁体22、23によって区画される。すなわち、端子挿入空間部24は、高さ方向Zが底体21と壁体22の天面部22b、23bとによって区画され、幅方向Yが壁体22の側壁部22aと壁体23の側壁部23aとによって区画される。これにより、端子挿入空間部24は、箱状部20の内部に軸方向Xに沿って延在して形成される。そして、箱状部20は、底体21、側壁部22a、23a、天面部22bの軸方向Xの一方の端部(電線接続部10側とは反対側の端部)によって、端子挿入空間部24に対する端子挿入口24aが形成される。箱状部20は、軸方向Xの一方の端部に形成された当該端子挿入口24aを介して内部の端子挿入空間部24に軸方向Xに沿って相手端子Tが挿入される。
バネ接点部30は、端子挿入空間部24内に位置し箱状部20に弾性変形可能に片持ち状に支持され相手端子Tとの接点を形成する部分である。バネ接点部30は、板厚方向が高さ方向Zに沿う略矩形板状に形成され、軸方向Xに沿って延在する。バネ接点部30は、高さ方向Zの一方側で底体21と対向し、他方側で天面部22b、23bと対向して位置する。そして、バネ接点部30は、軸方向Xの端子挿入口24a側の端部が底体21に連結され支持される。つまり、バネ接点部30は、軸方向Xの端子挿入口24a側の端部である基端部が底体21に連結されて支持され、軸方向Xの端子挿入口24a側とは反対側の端部である先端部が自由端となる。ここでは、バネ接点部30は、軸方向Xの端子挿入口24a側の端部が底体21から連続して折り返されることで当該底体21に支持される基端部が構成される。これにより、本実施形態のバネ接点部30は、底体21に高さ方向Zに対して弾性変形可能に片持ち状に支持される。
なお、バネ接点部30は、軸方向Xの中腹部分が天面部22b側に突出するように屈曲することで接点形成部30aが形成されている。接点形成部30aは、端子挿入空間部24に挿入された相手端子Tと接触し当該相手端子Tとの間に接点を形成し導通される主たる部分である。またここでは、バネ接点部30は、軸方向Xの端子挿入口24a側の端部が底体21に連結され支持されるものとして説明したがこれに限らない。バネ接点部30は、箱状部20の全体形状によっては、例えば、幅方向Yの端部の一部で底体21に連結され支持される構成であってもよい。また、バネ接点部30は、例えば、天面部22b、23b側に支持されていてもよい。
上記のように構成される金属端子1は、相手端子Tが端子挿入口24aを介して軸方向Xに沿って端子挿入空間部24に挿入される。このとき、金属端子1は、当該相手端子Tがバネ接点部30を底体21側に撓ませながら端子挿入空間部24に挿入される。そして、金属端子1は、バネ接点部30が接点形成部30a等を介して相手端子Tと接触し自身の弾性復元力によって当該相手端子T側に押圧され、当該相手端子Tとの間に接点を形成する。この結果、金属端子1は、接点形成部30a等を介して相手端子Tと導通され、電線Wと相手端子Tとを導通接続することができる。
そして、上記のように構成される本実施形態の金属端子1は、さらに、箱状部20に硬化樹脂40が設けられることで、適正な導通性能する構成を実現している。硬化樹脂40は、箱状部20に設けられ、一対の壁体22、23の相対変位を規制する変位規制部として機能する。
硬化樹脂40は、一対の壁体22、23において相互に重なり合う部分である重複部25に介在するものである。硬化樹脂40は、重複部25に施された後に硬化する樹脂が用いられる。本実施形態の硬化樹脂40は、例えば、大気中の水分と反応して硬化する湿気硬化性樹脂である。湿気硬化性樹脂としては、例えば、シアノアクリレート系の樹脂やウレタン系の樹脂を用いることができるがこれに限らない。硬化樹脂40は、典型的には、大気雰囲気下で成り行きで硬化を進行させることができる。
硬化樹脂40は、一対の壁体22、23の重複部25において、相互に対向する面の間に介在する。重複部25は、上述したように天面部22bと天面部23bとによって構成される。硬化樹脂40は、この重複部25を構成する天面部22bと天面部23bとにおいて、高さ方向Zに沿って互いに対向する対向面22ba、23baの間に介在する。対向面22baは、天面部22bにおいて、端子挿入空間部24側とは反対側に位置する面である。対向面23baは、天面部23bにおいて、端子挿入空間部24側に位置する面である。硬化樹脂40は、一対の壁体22、23の重複部25において相互に対向する当該対向面22ba、23baの間に形成された隙間25aに介在する。
硬化樹脂40は、壁体22の対向面22baと壁体23の対向面23baとの間に介在した状態で硬化し当該重なり合う部分を相互に接着して当該一対の壁体22、23の相対変位を規制する。すなわち、硬化樹脂40は、重複部25において、高さ方向Zに対して相互に対向する対向面22baと対向面23baとの間に形成された隙間25aに設けられ、対向面22baと対向面23baとに接触した状態で硬化する。この構成により、硬化樹脂40は、一対の壁体22、23において相互に重なり合う重複部25を構成する天面部22bと天面部23bとを相互に接着して当該一対の壁体22、23の相対変位を規制する。
硬化樹脂40は、例えば、図3、図4に示すように、電線接続部10、箱状部20、バネ接点部30等の各部に対応した形状に打ち抜かれ、キャリアCRに連結された展開状態の一枚の板金から金属端子1を成形する過程で所定の箇所に施されてもよい。この場合、硬化樹脂40は、例えば、箱状部20の天面部23b以外の部分が折り曲げ成形され、天面部23bが天面部22bと重なり合う位置に折り曲げられる前の状態で、ディスペンサM3等によって当該箱状部20の所定の箇所に塗布される。ここでは、硬化樹脂40は、成形後に隙間25aを形成することとなる部分、図4の例では、対向面22baに塗布される。硬化樹脂40は、対向面22baと対向面23baとの間の隙間25aにおいて、軸方向Xに沿って全面に渡って塗布されてもよいし、スポット的(局所的)に点在するように塗布されてもよい。その後、箱状部20は、天面部23bが天面部22bと重なり合う位置に折り曲げられる。
また、硬化樹脂40は、例えば、図5に示すように、電線接続部10、箱状部20、バネ接点部30等の各部に対応した形状に打ち抜かれた一枚の板金から金属端子1を成形し各部が立体的に一体で形成された後に所定の箇所に施されてもよい。この場合、硬化樹脂40は、例えば、対向面22baと対向面23baとの間に形成された隙間25aに対して側壁部22a側の開口部分からディスペンサM3等によって充填される。硬化樹脂40は、隙間25aにおいて、軸方向Xに沿って箱状部20の全長に渡って充填されてもよいし、スポット的(局所的)に点在するように充填されてもよい。
そして、硬化樹脂40は、図6に示すように、金属端子1の各部が立体的に一体で形成され、壁体22の対向面22baと壁体23の対向面23baとの間に介在した状態で大気中の水分と反応して硬化する。この結果、硬化樹脂40は、一対の壁体22、23において相互に重なり合う重複部25を構成する天面部22bと天面部23bとを相互に接着して当該一対の壁体22、23の相対変位を規制する。
以上で説明した端子付き電線100、金属端子1は、電線接続部10に連結された箱状部20の端子挿入空間部24に相手端子Tが挿入される。そして、金属端子1は、当該端子挿入空間部24内に支持されたバネ接点部30によって当該相手端子Tとの間に接点が形成される。このような構成において、金属端子1は、箱状部20を構成する底体21、及び、一対の壁体22、23のうち、一対の壁体22、23において相互に重なり合う部分に硬化樹脂40が介在する。この硬化樹脂40は、一対の壁体22、23において相互に重なり合う重複部25に介在した状態で硬化し当該重複部25を相互に接着して当該一対の壁体22、23の相対変位を規制する。この構成により、金属端子1は、硬化樹脂40によって一対の壁体22、23の相対変位を規制することで箱状部20自体や当該箱状部20に弾性変形可能に支持されたバネ接点部30の変形を抑制することができる。この結果、端子付き電線100、金属端子1は、適正な導通性能を確保することができる。
例えば、金属端子1は、分岐接続部JTを構成する超音波接合部UW1の形成過程で振動が電線Wを伝播し金属端子1に伝わっても箱状部20自体や当該箱状部20に弾性変形可能に支持されたバネ接点部30が当該振動によって変形することを抑制することができ、振動に対する耐性を向上させることができる。これにより、金属端子1は、例えば、振動に伴う箱状部20とバネ接点部30との相対変位を抑制することができ、バネ接点部30が過剰に弾性変形したり当該バネ接点部30の基端部に大きな応力が作用したりすることを抑制することができる。したがって、金属端子1は、当該金属端子1に超音波振動が伝達されても、バネ接点部30を介して相手端子Tとの間に接点を形成し導通接続することができる構成を適正に維持することができる。この結果、端子付き電線100、ワイヤハーネスWH1は、上記のように適正な導通性能を確保することができ、接続信頼性の低下を抑制することができる。
また、以上で説明した端子付き電線100、金属端子1は、硬化樹脂40が軸方向Xに沿って箱状部20の全長に渡って延在、または、軸方向Xに沿ってスポット的(局所的)に点在するように設けられる。この構成により、端子付き電線100、金属端子1は、軸方向X周り方向に捻じれるような変形も好適に抑制することができる。この結果、端子付き電線100、金属端子1は、より適正な導通性能を確保することができる。
なお、以上の説明では、端子付き電線100の各電線Wは、一方の端部に金属端子1が設けられ、他方の端部同士が超音波接合部UW1で相互に接合されるものとして説明したがこれに限らない。例えば、各電線Wは、両端部にそれぞれ金属端子1が設けられていてもよい。そして、超音波接合部UW1は、各電線Wの中腹部分において、絶縁被覆部W2から露出した導体部W1を超音波接合した部分であってもよい。
以上の説明では、ワイヤハーネスWH1は、各端子付き電線100において、残りの他の端子付き電線100の電線Wが接続相手電線WAとなるものとして説明したがこれに限らない。ワイヤハーネスWH1は、少なくとも1つの端子付き電線100を備えた上で、当該端子付き電線100に対する接続相手電線WAは、端子付き電線100の電線Wでなくてもよい。
以上の説明では、端子付き電線100は、超音波接合部UW1を備え、超音波接合部UW1の形成過程で金属端子1に振動が加わる構造であるものとして説明したがこれに限らない。端子付き電線100は、超音波接合部UW1を備えず、金属端子1に超音波振動等が伝達されないものであってもよい。同様に、端子付き電線100は、分岐接続部JTを備えるものとして説明したがこれに限らず分岐接続部JTを備えない構成であってもよい。これらの場合であっても、端子付き電線100、金属端子1は、適正な導通性能を確保することができる。
以上の説明では、端子付き電線100は、例えば、車両等に使用されるワイヤハーネスWH1等に適用されるものとして説明したがこれに限らない。
以上の説明では、電線接続部10は、電線Wに加締められて圧着される電線圧着部を構成するものとして説明したがこれに限らず、圧着以外の形式、例えば、溶着、締結等の形式で電線Wに対して電気的に接続されるものであってもよい。
例えば、図10に例示する変形例に係るワイヤハーネスWH2は、端子付き電線200を備え、当該端子付き電線200は、金属端子201を備える。そして、ワイヤハーネスWH2、端子付き電線200、金属端子201は、電線接続部10にかえて電線接続部210を備える点で上述したワイヤハーネスWH1、端子付き電線100、金属端子1と異なる。ワイヤハーネスWH2、端子付き電線200、金属端子201のその他の構成は、上述のワイヤハーネスWH1、端子付き電線100、金属端子1と略同様の構成である。
本変形例の電線接続部210は、板厚方向が高さ方向Zに沿う略矩形板状に形成される。ここでは、箱状部20の底体21(図1等参照)は、当該板状に形成された電線接続部210に連結される。そして、電線接続部210は、絶縁被覆部W2から露出した電線Wの導体部W1と超音波接合されることで超音波接合部UW2を形成する。つまり、この端子付き電線200は、金属端子201自身にも超音波接合部UW2を備えている。ここでの超音波接合部UW2は、端子付き電線200において、金属端子201の電線接続部210と電線Wの導体部W1とを超音波接合した部分である。
端子付き電線200は、図9の例と同様に、電線接続部210と導体部W1とを重ねた状態で、アンビルM2とホーンM1とによって電線接続部210と導体部W1とが挟持され、当該重なった部分に対してホーンM1により超音波振動が加振される。この結果、端子付き電線200は、典型的には、重ねられた電線接続部210と導体部W1との接合面が超音波振動によって互いに擦れ合うことで塑性変形により固相状態で接合され、超音波接合部UW2が形成される。これにより、端子付き電線200は、電線接続部210に電線Wを導通接続することができる。
上記のように構成される端子付き電線200、金属端子201は、金属端子201自身に超音波接合部UW2が形成されるような場合であっても、上記と同様に、箱状部20に硬化樹脂40が設けられていることで適正な導通性能を確保することができる。
また、以上の説明では、硬化樹脂40は、湿気硬化性樹脂であるものとして説明したがこれに限らない。硬化樹脂40は、露光することで硬化する樹脂、例えば、紫外線を照射することで硬化するUV(Ultraviolet、紫外線)硬化型樹脂であってもよい。UV硬化型樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート系の樹脂を用いることができるがこれに限らない。この場合、硬化樹脂40は、例えば、金属端子201の成形後にUV-LED(Light Emitting Diode)等によって紫外線が照射されることで硬化し、一対の壁体22、23において相互に重なり合う部分を相互に接着する。また、硬化樹脂40は、例えば、熱を加えることで硬化する熱硬化型樹脂であってもよい。この場合、硬化樹脂40は、例えば、金属端子201の成形後にヒータ等によって熱が加えられることで硬化し、一対の壁体22、23において相互に重なり合う部分を相互に接着する。
[実施形態2]
実施形態2に係る端子付き電線、ワイヤハーネスは、箱状部が注入口、溜まり部を有する点が実施形態とは異なる。以下では、上述した実施形態と同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する(以下同様。)。
図11、図12に示す本実施形態のワイヤハーネスWH3は、端子付き電線300を備え、当該端子付き電線300は、金属端子301を備える。ワイヤハーネスWH3、端子付き電線300、金属端子301は、箱状部20にかえて箱状部320を備える点で上述したワイヤハーネスWH1、端子付き電線100、金属端子1と異なる。ワイヤハーネスWH3、端子付き電線300、金属端子301のその他の構成は、上述のワイヤハーネスWH1、端子付き電線100、金属端子1と略同様の構成である。なお、図11に図示したバネ接点部30は、図1等で図示したバネ接点部30と若干形状が異なるが基本的な構成は略同様である。
本実施形態の箱状部320は、注入口326、及び、溜まり部327を有する点で上述した箱状部20と異なる。箱状部320のその他の構成は、上述の箱状部20と略同様の構成である。
注入口326は、金属端子201の成形後に、隙間25aに対して硬化樹脂40を注入するための開口である。注入口326は、箱状部320において、底体21と対向する面に露出して形成され、一対の壁体22、23において相互に重なり合う部分の間に形成された隙間25aと連通する。ここでは、注入口326は、箱状部320において、高さ方向Zに沿って底体21と対向し、かつ、端子挿入空間部24側とは反対側に位置する天面部23bの外面に露出して形成される。
より詳細には、本実施形態の壁体22は、側壁部22aと天面部22bとの交わり部分(角部分)が底体21側に折り返された後に、天面部22bが天面部23bの端子挿入空間部24側に入り込むような形状に形成されている。箱状部320は、この天面部22bと天面部23bとが重複部25を構成する。そして、本実施形態の注入口326は、天面部23bの壁体22側の端面と、壁体22の上記折り返し部分との間にスリット状の空間部として形成される。この注入口326は、軸方向Xに沿って箱状部20の全長に渡って延在して形成される。そして、注入口326は、対向面22baと対向面23baとの間に形成された隙間25aと連通する。
溜まり部327は、隙間25aに形成され、注入口326と連通し注入口326から注入された硬化樹脂40を貯留可能な部分である。ここでは、溜まり部327は、例えば、図11に示すように、軸方向Xに沿って間隔をあけて位置するスポットPに点在して設けられるものとして説明するが、これに限らず軸方向Xに沿って箱状部20の全長に渡って延在して設けられてもよい。
溜まり部327は、天面部22bにおいてスポットPに応じた部位が端子挿入空間部24側に突出するように押し出されて形成されることで、当該スポットPに応じた部位において隙間25a側の面が端子挿入空間部24側に凹部状に窪んだ形状に形成される。この構成により、溜まり部327は、当該凹部状に窪んだ形状の部分に注入口326から注入された硬化樹脂40を貯留することができる。
以上で説明した端子付き電線300、金属端子301は、端子付き電線100、金属端子1と同様に、箱状部320に硬化樹脂40が設けられていることで適正な導通性能を確保することができる。
その上で、以上で説明した端子付き電線300、金属端子301は、箱状部320において底体21と対向する面に露出して硬化樹脂40の注入口326が形成されている。この構成により、端子付き電線300、金属端子301は、金属端子301の成形後であっても、硬化樹脂40を、ディスペンサM3から当該注入口326を介して、一対の壁体22、23において相互に重なり合う部分の間に形成された隙間25aに注入し易い構成とすることができる。
そして、端子付き電線300、金属端子301は、当該注入口326から注入された硬化樹脂40を、隙間25aに形成された溜まり部327に確実に貯留することができる。この構成により、端子付き電線300、金属端子301は、一対の壁体22、23において相互に重なり合う部分の間に形成された隙間25aに硬化樹脂40を確実に保持した上で硬化させることができる。これにより、端子付き電線300、金属端子301は、硬化樹脂40によって一対の壁体22、23を確実に接着することができると共に、例えば、隙間25aに注入された硬化樹脂40がバネ接点部30側に液だれすることも防止することができる。したがって、端子付き電線300、金属端子301は、確実に適正な導通性能を確保することができる。
この結果、端子付き電線300、金属端子301は、例えば、製造効率を向上した上で、より確実に適正な導通性能を確保することができる。
なお、以上の説明では、溜まり部327は、スポットPに応じた部位が端子挿入空間部24側に突出するように押し出されて形成されるものとして説明したがこれに限らない。
例えば、図13に例示する変形例に係るワイヤハーネスWH4は、端子付き電線400を備え、当該端子付き電線400は、金属端子401を備える。そして、ワイヤハーネスWH4、端子付き電線400、金属端子401は、箱状部320にかえて箱状部420を備える点で上述したワイヤハーネスWH3、端子付き電線300、金属端子301と異なる。箱状部420は、溜まり部327にかえて溜まり部427を備える点で上述した箱状部320と異なる。ワイヤハーネスWH4、端子付き電線400、金属端子401、箱状部420のその他の構成は、上述のワイヤハーネスWH3、端子付き電線300、金属端子301、箱状部320と略同様の構成である。
本変形例の溜まり部427は、天面部22bにおいてスポットPに応じた部位に、天面部23b側に突出するように突部427aが形成されることで、当該スポットPに応じた部位において隙間25a側の面に形成される。突部427aは、天面部22bの対向面22baから天面部23bの対向面23baに向かって突出するように形成され、先端部が当該対向面23baと当接する。溜まり部427は、対向面22baと対向面23baとの間に形成される隙間25aにおいて、当該突部427aと壁体22の上記折り返し部分とによって区画された空間部として形成され、注入口326と連通する。この構成により、溜まり部427は、当該突部427aと壁体22の上記折り返し部分とによって区画された空間部に注入口326から注入された硬化樹脂40を貯留することができる。
この場合であっても、端子付き電線400、金属端子401は、端子付き電線300、金属端子301と同様に、例えば、製造効率を向上した上で、より確実に適正な導通性能を確保することができる。
また、以上の説明では、注入口326は、壁体23の天面部23bの壁体22側の端面と、壁体22の上記折り返し部分との間にスリット状の空間部として形成され、軸方向Xに沿って箱状部20の全長に渡って延在して形成されるものとして説明したがこれに限らない。
例えば、図14に例示する変形例に係るワイヤハーネスWH5は、端子付き電線500を備え、当該端子付き電線500は、金属端子501を備える。そして、ワイヤハーネスWH5、端子付き電線500、金属端子501は、箱状部320にかえて箱状部520を備える点で上述したワイヤハーネスWH3、端子付き電線300、金属端子301と異なる。箱状部520は、注入口326にかえて注入口526を備える点で上述した箱状部320と異なる。ワイヤハーネスWH5、端子付き電線500、金属端子501、箱状部520のその他の構成は、上述のワイヤハーネスWH3、端子付き電線300、金属端子301、箱状部320と略同様の構成である。
本変形例の注入口526は、天面部22bにおいてスポットPに応じた部位に点在して設けられる。つまり、注入口526は、軸方向Xに沿って間隔をあけて位置するスポットPにそれぞれ設けられている。ここでは、注入口526は、壁体23の天面部23bの壁体22側の端面に略矩形状の切り欠きとして形成されている。言い換えれば、注入口526は、天面部23bの壁体22側の端面に形成された切り欠きと、壁体22の上記折り返し部分との間に略矩形状の空間部として形成される。そして、注入口526は、対向面22baと対向面23baとの間に形成された隙間25aと連通し、溜まり部327と連通する。
この場合であっても、端子付き電線500、金属端子501は、端子付き電線300、金属端子301と同様に、例えば、製造効率を向上した上で、より確実に適正な導通性能を確保することができる。
加えてこの場合、端子付き電線500、金属端子501は、注入口526がスポットPに応じた部位に点在して設けられることで、硬化樹脂40を注入する箇所を明示することができ、予め定められた位置に確実に硬化樹脂40を設けることができる。この結果、端子付き電線500、金属端子501は、製造効率をさらに向上した上で、より確実に適正な導通性能を確保することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る端子付き電線、及び、金属端子は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係る端子付き電線、及び、金属端子は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。