以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザービームプリンターである。画像形成装置100は、画像情報に従って、記録材P(例えば、記録用紙、プラスチックシート)にフルカラー画像を形成することができる。画像情報は、画像形成装置100に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどのホストコンピュータから、あるいは画像形成装置100に接続された画像読み取り装置などから画像形成装置100に入力される。なお、記録材Pのことを「紙」ということがあるが、記録材Pは紙に限定されるものではない。
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdを有する。本実施例では、第1、第2、第3、第4の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdは、鉛直方向と交差する方向に一列に配置されている。なお、第1、第2、第3、第4の画像形成部Sa、Sb、Sc、Sdにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用に設けられた要素であることを示す符号の末尾のa、b、c、dを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部Sは、後述する感光ドラム1(1a、1b、1c、1d)、帯電ローラ2(2a、2b、2c、2d)、露光装置3(3a、3b、3c、3d)、現像装置4(4a、4b、4c、4d)、ドラムクリーニング装置5(5a、5b、5c、5d)などを有する。
第1の像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1は、図1中の矢印R1方向(反時計回り方向)に回転駆動される。感光ドラム1は、駆動手段を構成する駆動源としての駆動モータ(後述するメインモータ70(図2))から伝達される駆動力により回転駆動される。回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2によって一様に帯電処理される。これにより、感光ドラム1の表面に非画像部電位(暗電位、非画像形成電位)Vdが形成される。帯電ローラ2は、感光ドラム1に当接して配置されており、感光ドラム1の回転に伴って従動回転する。帯電工程時に、帯電ローラ2には、帯電電圧印加手段(帯電電圧印加部)としての帯電電源(高圧電源)18(図2)から所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。本実施例では、帯電工程時に、帯電電圧として負極性の直流電圧が帯電ローラ2に印加される。なお、感光ドラム1の回転方向における帯電ローラ2による感光ドラム1の表面の帯電処理が行われる位置が帯電部(帯電位置)である。本実施例では、感光ドラム1の回転方向における帯電ローラ2と感光ドラム1との当接部の上流側及び下流側に形成される帯電ローラ2と感光ドラム1との間の微小な空隙のうちの少なくとも一方で発生する放電により感光ドラム1の表面の帯電処理が行われる。ただし、帯電ローラ2と感光ドラム1との当接部が帯電部(帯電位置)であると擬制してもよい。
帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段としての露光装置(レーザースキャナーユニット)3によって走査露光され、感光ドラム1上に静電潜像(静電像)が形成される。一様に帯電処理された感光ドラム1の表面が露光装置3によって露光されることで、感光ドラム1の表面の露光された部分(露光部)の電位の絶対値が低下して、感光ドラム1の表面に画像部電位(明電位、画像形成電位)Vlが形成される。露光装置3は、例えば、パーソナルコンピュータなどのホストコンピュータ199(図2)から入力された画像情報に基づいてCPU回路部150(図2)により演算されて生成された出力に従って、レーザー光Lを感光ドラム1上に照射する。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像(トナー画像、現像剤像)が形成される。現像装置4は、トナーを収容する現像容器42と、現像容器42に回転可能に設けられた現像剤担持体(現像部材)としての現像ローラ41と、を有する。本実施例では、現像装置4は、移動手段としての現像接離機構43(図2)により、現像ローラ41が感光ドラム1に当接する当接位置と、現像ローラ41が感光ドラム1から離間する離間位置と、に移動可能とされている。現像工程時に、現像ローラ41は、感光ドラム1に当接させられる。また、現像工程時に、現像ローラ41は、駆動手段を構成する駆動源としての駆動モータ(後述するメインモータ70(図2))から伝達される駆動力により回転駆動される。また、現像工程時に、現像ローラ41には、現像電圧印加手段(現像電圧印加部)としての現像電源(高圧電源)19(図2)から所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。本実施例では、現像工程時に、現像電圧として負極性の直流電圧が現像ローラ41に印加される。現像電圧は、感光ドラム1上の非画像部電位と画像部電位との間の電位に設定される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像方式)。本実施例では、現像時のトナーの主要な帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。
ここで、現像接離機構43は、例えば、次のような構成とされる。現像容器42は、感光ドラム1の回転軸線方向と略平行な回動軸線の周りを回動可能(揺動可能)とされ、現像ローラ41が感光ドラム1に当接する方向に回動するようにバネなどの付勢部材によって付勢される。現像接離機構43は、例えばソレノイドあるいはカム機構などによって、現像容器42を移動させる。例えば、現像接離機構43は、モータなどの駆動源を備えた駆動部、駆動部により駆動されて現像装置4を移動させるカムなどの移動部材を有する。そして、現像接離機構43は、現像容器42に対する上記移動部材の押圧及び押圧の解除を行えるようになっている。上記移動部材により上記付勢部材の付勢力に抗して現像容器42を押圧することで、現像ローラ41を感光ドラム1から離間させることができる。また、上記移動部材による現像容器42に対する押圧を解除することで、上記付勢部材の付勢力により現像容器42を移動させて現像ローラ41を感光ドラム1に当接させることができる。本実施例では、現像接離機構43は、概略、現像工程時に現像ローラ41を感光ドラム1に当接させる。また、現像接離機構43は、概略、現像工程時以外、例えば、画像形成装置100の停止時(スタンバイ状態、スリープ状態、電源OFF状態)などには、現像ローラ41を感光ドラム1から離間させる。なお、本実施例では、現像ローラ41は、現像装置4が当接位置に配置される際に回転駆動され、現像装置4が離間位置に配置される際に駆動が停止される。また、本実施例では、現像ローラ41は、現像装置4が当接位置に配置される際に現像電圧が印加され、現像装置4が離間位置に配置される際に現像電圧の印加が停止される。
4個の感光ドラム1に対向して、第2の像担持体としての、回動可能な無端状のベルトで構成された中間転写体である中間転写ベルト10が配置されている。中間転写ベルト10は、4個の感光ドラム1に当接可能である。中間転写ベルト10は、複数の張架ローラ(支持ローラ)としての第1、第2、第3の張架ローラ11、12、13に掛け渡されて、所定の張力で張架されている。本実施例では、第3の張架ローラ13が二次転写対向ローラ及び駆動ローラを兼ねている。以下、第3の張架ローラ13を「二次転写対向ローラ」ともいう。また、本実施例では、第2の張架ローラ12が中間転写ベルト10に所定の張力を付与するテンションローラとして機能する。二次転写対向ローラ13は、駆動手段を構成する駆動源としての駆動モータ(後述するメインモータ70(図2))から駆動が伝達されて図1中の矢印R2方向(時計回り方向)に回転駆動される。これにより中間転写ベルト10に駆動力が伝達されて、中間転写ベルト10は図1中の矢印R3方向(時計回り方向)に回動(周回移動)する。なお、本実施例では、中間転写ベルト10の周長は約700mmである。中間転写ベルト10の内周面側には、各感光ドラム1a、1b、1c、1dに対応して、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ14a、14b、14c、14dがそれぞれ配置されている。一次転写ローラ14は、中間転写ベルト10を感光ドラム1に向けて押圧し、感光ドラム1と中間転写ベルト10とが当接する一次転写部(一次転写ニップ部)N1を形成する。本実施例では、一次転写ローラ14は、外径が6mmの円筒形状の金属ローラであり、素材にはニッケルメッキのSUSが用いられている。一次転写ローラ14は、その回転中心位置が感光ドラム1の回転中心位置に対して中間転写ベルト10の表面の移動方向において下流側に8mmオフセットされた位置に配置されている。これにより、中間転写ベルト10は、一次転写ローラ14に押圧されて感光ドラム1に巻き付くようになっている。一次転写ローラ14は、各感光ドラム1の中間転写ベルト10側の共通の接平面に対して中間転写ベルト10を感光ドラム1側に1mm持ち上げた位置に配置され、中間転写ベルト10を約200gfの力で押圧している。これにより、感光ドラム1への中間転写ベルト10の巻き付き量を確保できる。複数の張架ローラのうちの二次転写対向ローラ13以外の張架ローラ及び各一次転写ローラ14は、中間転写ベルト10の回動に伴って従動回転する。
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部N1において、一次転写ローラ14の作用により、回動している中間転写ベルト10上に転写(一次転写)される。一次転写工程時に、一次転写ローラ14には、一次転写電圧印加手段(一次転写電圧印加部)としての一次転写電圧電源(高圧電源)15から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。本実施例では、一次転写ローラ14には、一次転写電圧として、例えば+100Vの直流電圧が印加される。例えばフルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト10上に重ね合わされるようにして順次転写される。
中間転写ベルト10の外周面側において、二次転写対向ローラ(二次転写内ローラ)13に対向する位置には、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写ローラ(二次転写外ローラ)20が配置されている。二次転写ローラ20は、その回転軸線方向の両端部において、二次転写ローラ軸受22によって回転可能に支持されている。二次転写ローラ20は、二次転写対向ローラ13に向けて押圧され、中間転写ベルト10を介して二次転写対向ローラ13に当接し、中間転写ベルト10と二次転写ローラ20とが当接する二次転写部(二次転写ニップ部)N2を形成する。本実施例では、二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10に対して、50Nの加圧力(総圧)で当接し、二次転写部N2を形成する。また、本実施例では、二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10の回動に伴って従動回転する。また、本実施例では、二次転写ローラ20は、外径が8mmのニッケルメッキ鋼棒の外周を、体積抵抗率が108Ω・cm、厚さが4mmに調整された発泡ゴム層(発泡弾性体層)で覆った、発泡弾性体ローラである。本実施例では、発泡ゴム層は、NBR及びエピクロルヒドリンゴムを主成分とする発泡スポンジ体(発泡弾性体)で構成されている。本実施例では、二次転写ローラ20は、外径が16mm、回転軸線方向の長さが216mmである。中間転写ベルト10上に形成されたトナー像は、二次転写部N2において、中間転写ベルト10と二次転写ローラ20とに挟持されて搬送されている記録材P上に転写(二次転写)される。二次転写工程時に、二次転写ローラ20には、二次転写電圧印加手段(二次転写電圧印加部)としての二次転写電圧電源(高圧電源)21から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。記録材Pの種類や環境などに応じて適宜変更されるが、二次転写ローラ20には、二次転写電圧として、例えば+1000Vの直流電圧が印加される。なお、本実施例では、二次転写電源21は、絶対値が100V~5000Vの範囲の正負両極性の電圧を出力することが可能である。本実施例では、二次転写対向ローラ13は、電気的に接地(グラウンドに接続)されている。記録材(転写材、記録媒体、シート)Pは、記録材収容部としてのカセット51に収容されており、給送部材としての給送ローラ50などによってカセット51から送り出される。この記録材Pは、搬送部材としての搬送ローラ60によって中間転写ベルト10上のトナー像とタイミングが合わされて二次転写部N2へと搬送される。
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置(定着部)30へと搬送される。定着装置30は、熱源を備えた定着ローラ31と、定着ローラ31に圧接する加圧ローラ32と、により形成される定着ニップ部において、未定着のトナー像を担持した記録材Pを加熱及び加圧する。これにより、例えば4色のトナーが溶融混色して記録材Pに定着(固着)される。トナー像が定着された記録材Pは、画像形成装置100の装置本体110の外部に排出(出力)される。本実施例では、定着ローラ(定着部材)31は、金属素管の周囲に絶縁シリコーンゴムの弾性層を形成し、更に弾性層の外周を絶縁PFAチューブで被膜した、外径が18mmの弾性体ローラである。また、この定着ローラ31は、中空部に加熱手段としてハロゲンヒータ(図示せず)を内包している。ハロゲンヒータは、定着ローラ31とは非接触であり、電源(図示せず)により電圧が供給されることで発熱する。また、本実施例では、加圧ローラ(加圧部材)32は、芯金の外周に、導電性シリコーンゴムの弾性層を形成し、更に弾性層の外周を導電性PFAチューブで被膜した、外径が18mmの弾性体ローラである。定着ローラ31と加圧ローラ32とは、10kgfの力で押圧されることで定着ニップ部を形成している。加圧ローラ32は、駆動手段を構成する駆動源としての駆動モータ(図示せず)により回転駆動され、定着ローラ31は、加圧ローラ32の回転に伴って従動回転する。記録材Pは、定着ニップ部において定着ローラ31と加圧ローラ32とにより挟持搬送される。加圧ローラ32は、芯金から1000MΩの抵抗素子を介してグラウンドに接続されている。抵抗素子を介して定着ローラ31や加圧ローラ32上の電荷をグラウンドに逃がすことで、定着ローラ31や加圧ローラ32の表面が帯電することを抑制することができる。
一方、一次転写工程後に感光ドラム1の表面に残留したトナー(一次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置5によって感光ドラム1上から除去されて回収される。本実施例では、ドラムクリーニング装置5は、感光ドラム1に当接し、感光ドラム1の表面から一次転写残トナーを掻き取る、クリーニングブレード55を有する。また、中間転写ベルト10の外周面側において、二次転写対向ローラ13に対向する位置には、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置9が配置されている。二次転写工程後に中間転写ベルト10上に残留したトナー(二次転写残トナー)などの付着物は、ベルトクリーニング装置9によって中間転写ベルト10上から除去されて回収される。本実施例では、ベルトクリーニング装置9は、中間転写ベルト10を介して二次転写対向ローラ13に当接し、中間転写ベルト10の表面から二次転写残トナーなどの付着物を掻き取る、ベルトクリーニングブレード91を有する。本実施例では、ベルトクリーニングブレード91は、弾性材料としてのポリウレタンゴムで形成されており、85.0gf/cmの当接圧で中間転写ベルト10を介して二次転写対向ローラ13に当接している。
また、本実施例では、画像形成装置100は、中間転写ベルト10上のトナーを検知するトナー検知手段(トナー検知部)としての、反射型のフォトセンサで構成されたトナー検知センサ101を有する。トナー検知センサ101は、中間転写ベルト10の表面の移動方向において、最下流のブラック用の画像形成部Sdの一次転写部N1dよりも下流、かつ、二次転写部N2よりも上流の位置に配置されている。特に、本実施例では、トナー検知センサ101は、中間転写ベルト10を介して第1の張架ローラ11に対向する位置に配置されており、第1の張架ローラ11にバックアップされた中間転写ベルト10の表面のトナー像を検知する。このトナー検知センサ101は、キャリブレーションに使用されるものであり、中間転写ベルト10上に形成されたトナーパッチ(試験用のトナー像)の濃度や色ずれ量を検知する。本実施例では、トナー検知センサ101は、中間転写ベルト10の幅方向(表面の移動方向と略直交する方向)において2個配置されている。この2個のトナー検知センサ101は、それぞれ中間転写ベルト10の幅方向における中央部よりも両端部寄りに配置されている。
また、本実施例では、各画像形成部Sにおいて、感光ドラム1と、感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びドラムクリーニング装置5とは、一体化されて、プロセスカートリッジ17を形成している。プロセスカートリッジ17は、画像形成装置100の装置本体110に設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100の装置本体110に対して着脱可能となっている。
また、本実施例では、中間転写ベルト10、複数の張架ローラ11、12、13、各一次転写ローラ14、ベルトクリーニング装置9、これらを支持するフレームなどによって、中間転写ベルトユニット24が構成されている。中間転写ベルトユニット24は、画像形成装置100の装置本体110に設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100の装置本体110に対して着脱可能となっている。
なお、画像形成装置100は、4つの画像形成部Sのうち所望の1つ又はいくつかの画像形成部Sのみを用いて、単色又はマルチカラーの画像を形成することもできる。
また、本実施例の画像形成装置100は、プロセススピード(感光ドラム1、中間転写ベルト10の周速度に対応)148mm/sec、A4サイズ紙対応のプリンターである。
また、本実施例では、現像剤として粒子径5~10μm程度の非磁性のトナー(非磁性一成分現像剤)が用いられる。特に、本実施例では、トナーは、懸濁重合法により製造された、負帯電性を有する非磁性のトナー(非磁性一成分現像剤)であり、体積平均粒径が7.0μmである。また、本実施例では、トナーは、その表面に、粒子径が100nm程度の外添剤が外添されている。特に、本実施例では、トナーは、その表面に、主要な外添剤として、個数平均粒径が100nmのシリカ(SiO2)が外添されている。ここで、主要な外添剤とは、トナーに外添された外添剤のうち添加量が最も多い外添剤である。このトナーは、現像ローラ41上に担持された際に負極性に帯電する。トナーの体積平均粒径、外添剤の個数平均粒径は、ベックマン・コールター株式会社製のレーザー回折式粒度分布測定器LS230で測定した。
2.制御態様
図2は、本実施例の画像形成装置100の制御態様を示す概略ブロック図である。画像形成装置100は、その全体の制御を行う制御手段(制御部)としてのエンジン制御部210を有する。エンジン制御部210は、演算制御部としてのCPU回路部150、記憶部としてのROM151及びRAM152を内蔵する。また、CPU回路部150には、記憶部としての不揮発メモリ153が設けられていてよい。CPU回路部150は、ROM151に格納されている制御プログラムに基づいて、一次転写制御部201、二次転写制御部202、現像制御部203、露光制御部204、帯電制御部205などの画像形成装置100の各部を統括的に制御する。環境(画像形成装置100の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方)に応じた制御を可能とするための環境テーブルや、記録材Pの種類に応じた制御を可能とするための紙幅/紙厚さ対応テーブルなどは、ROM151に格納されている。そして、これらの情報は、CPU回路部150によりROM151から読み出されて制御に反映される。RAM152は、制御データを一時的に保持するのに用いられたり、制御に伴う演算処理の作業領域として用いられたりする。
一次転写制御部201、二次転写制御部202は、それぞれエンジン制御部210の制御のもとで、一次転写電源15、二次転写電源21を制御する。本実施例では、一次転写制御部201、二次転写制御部202は、それぞれの電流検知回路が検知する電流値に基づいて、一次転写電源15、二次転写電源21から出力する電圧をそれぞれ制御することができる。また、本実施例では、一次転写制御部201、二次転写制御部202は、それぞれ一次転写電源15、二次転写電源21から所定の値の電圧を出力するように制御することができる。帯電制御部205は、エンジン制御部210の制御のもとで、帯電電源18を制御する。現像制御部203は、エンジン制御部210の制御のもとで、現像電源19を制御する。露光制御部204は、エンジン制御部210の制御のもとで、露光装置3を制御する。また、本実施例では、エンジン制御部210は、現像接離機構43、後述する二次転写接離機構23を制御する。また、エンジン制御部210には、感光ドラム1、中間転写ベルト10及び現像ローラ41の駆動源としての駆動モータ(ここでは、「メインモータ」ともいう。)70が接続されている。さらに、エンジン制御部210には、操作部(オペレーションパネル)206、環境センサ300などが接続されている。操作部206は、エンジン制御部210の制御のもとでユーザーやサービス担当者などの操作者に情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示部と、操作者の操作に応じてエンジン制御部210に情報を入力するキーなどの入力部と、を有する。環境センサ300は、温度センサ301及び湿度センサ302を有し、本実施例では画像形成装置100の内部の温度及び湿度を検知して、検知結果を示す信号をエンジン制御部210に入力する。エンジン制御部210は、環境センサ300により取得された環境情報(温度情報、湿度情報)に基づいて、画像形成のプロセス条件の制御などを行う。
コントローラ200は、ホストコンピュータ199からプリント情報(画像情報)及びプリント命令(開始指示、各種設定情報)を受信する。コントローラ200は、ホストコンピュータ199から受信した情報を、画像形成装置100における画像形成に係る情報に変換して、エンジン制御部210に入力する。すると、エンジン制御部210は、上記各制御部(一次転写制御部201、二次転写制御部202、現像制御部203、露光制御部204、帯電制御部205)などの画像形成装置100の各部を制御して、後述するプリントジョブを実行する。
なお、本実施例では、帯電電源18、現像電源19は、それぞれ4つの画像形成部Sa~Sdに対して共通化されている。そして、本実施例では、帯電電圧、現像電圧の印加の開始及び停止は、4つの画像形成部Sa~Sdで同期して行われる。また、本実施例では、一次転写電源15は、4つの画像形成部Sa~Sdのそれに対して独立して設けられているが、一次転写電圧の印加の開始及び停止は4つの画像形成部Sa~Sdで同期して行われる。また、本実施例では、4つの画像形成部Sa~Sdの感光ドラム1及び中間転写ベルト10の駆動源としての駆動モータ(メインモータ)70は共通化されている。そして、4つの画像形成部Sa~Sdの感光ドラム1の回転及び中間転写ベルト10の回動の開始及び停止は同期して行われる。また、本実施例では、各画像形成部Sa~Sdにおいて、現像ローラ41は、上記感光ドラム1の駆動源としての駆動モータ(メインモータ)70からの駆動力が伝達されて駆動される。ただし、各画像形成部Sa~Sdの現像ローラ41への上記駆動源からの駆動伝達はクラッチにより解除可能とされている。そのため、各画像形成部Sa~Sdで独立して現像ローラ41の回転の開始及び停止を行うことができる。また、本実施例では、現像接離機構43の一部の構成(前述の移動部材など)は、4つの画像形成部Sa~Sdで共通化されており、4つの画像形成部Sa~Sdで現像装置4は同期して当接位置又は離間位置に配置される。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、4つの画像形成部Sa~Sdの帯電電源18、4つの画像形成部Sa~Sdの現像電源19の少なくとも1つが独立して設けられていてもよい。また、4つの画像形成部Sa~Sdの感光ドラム1、4つの画像形成部Sa~Sdの現像ローラ41、中間転写ベルト10の少なくとも1つの駆動源が独立して設けられていてもよい。また、現像接離機構43は、少なくとも1つ画像形成部Sの現像装置4を独立して移動させることができるように構成されていてもよい。また、上記の駆動源、各種電源、現像接離機構の少なくとも1つが、カラー用(イエロー、マゼンタ及びシアン用)とブラック用といったように、4つの画像形成部Sa~Sdのうちのいくつかのみで共通化されていてもよい。
ここで、画像形成装置100は、1つの開始指示により開始される、単数又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるプリントジョブ(プリント動作)を実行する。本実施例では、開始指示は、画像形成装置100に接続されたパーソナルコンピュータなどのホストコンピュータ(外部装置)199から画像形成装置100に入力される。プリントジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電潜像の形成、トナー像の形成、トナー像の一次転写、二次転写を行う期間であり、画像形成時(画像形成期間)とはこの期間のことをいう。より詳細には、これら静電潜像の形成、トナー像の形成、トナー像の一次転写、二次転写の各工程を行う位置で、画像形成時のタイミングは異なる。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程(記録材間工程、画像間工程)は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時(非画像形成期間)とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。また、非画像形成時には、画像形成装置100のスタンバイ状態、スリープ状態、電源OFF状態が含まれる。なお、スタンバイ状態は、画像形成装置100が電源ONでプリントジョブの情報の入力を待機している状態である。また、スリープ状態は、画像形成装置100が電源ONでスタンバイ状態よりも電力消費量が少ない状態でスタンバイ状態などへの復帰を待機している状態である。
3.二次転写接離機構
図3(a)、(c)は、それぞれ本実施例における中間転写ベルトユニット24の周辺の概略断面図である。図3(a)は、二次転写ローラ20が中間転写ベルト10に当接した状態を示しており、図3(c)は、二次転写ローラ20が中間転写ベルト10から離間している状態を示している。また、図3(b)、(d)は、それぞれ図3(a)、(c)の状態における二次転写ローラ20の周辺の拡大である。
図3(a)及び図3(c)に示すように、二次転写ローラ20は、その回転軸線方向の両端部において、二次転写ローラ軸受22によって回転可能に支持されている。そして、本実施例では、二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10に当接する当接位置(図3(a)、(b))と、中間転写ベルト10から離間する離間位置(図3(c)、(d))と、に移動可能となっている。また、二次転写ローラ20は、その回転軸線方向の両端部において、付勢手段としての付勢部材である押圧バネ25により離間位置から当接位置に向かう方向に付勢されている。二次転写ローラ20の回転軸線方向の両端部において、二次転写ローラ軸受22及び押圧バネ25は、保持部材26によって保持されている。当接位置及び離間位置への二次転写ローラ20の移動は、移動手段としての二次転写接離機構23によって行われる。二次転写接離機構23は、例えばソレノイドあるいはカム機構などによって、二次転写ローラ20を移動させる。例えば、二次転写接離機構23は、モータなどの駆動源を備えた駆動部28、駆動部28により駆動されて二次転写ローラ20を移動させるカムなどの移動部材27を有する。そして、二次転写接離機構23は、二次転写ローラ軸受22に対する上記移動部材27の押圧及び押圧の解除を行えるようになっている。上記移動部材27により上記押圧バネ25による押圧力に逆らって二次転写ローラ軸受22を押圧することで、二次転写ローラ20を中間転写ベルト10から離間させることができる。また、上記移動部材27による二次転写ローラ軸受22に対する押圧を解除することで、上記押圧バネ25の押圧力により二次転写ローラ20を移動させて二次転写ローラ20を中間転写ベルト10に当接させることができる。
画像形成装置100は、二次転写接離機構23により、例えば、画像形成装置100の電源ON時、プリントジョブの実行時、キャリブレーションの実行時などに、二次転写ローラ20を当接位置に配置することができる。また、画像形成装置100は、二次転写接離機構23により、スタンバイ状態、スリープ状態、電源OFF状態などに、二次転写ローラ20を離間位置に配置することができる。本実施例では、画像形成装置100は、二次転写接離機構23により、メインモータの駆動を開始する際に二次転写ローラ20を当接位置に配置し、メインモータの駆動を停止する際に二次転写ローラ20を離間位置に配置するものとする。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、例えば、二次転写接離機構23は、上記カムなどの移動部材を操作者の操作により動作させて、手動により二次転写ローラ20を当接位置及び離間位置に配置させるようになっていてもよい。この場合、中間転写ベルトユニット24が装置本体110に装着された状態では、実質的に常に二次転写ローラ20は当接位置に配置されていてよい。そして、中間転写ベルトユニット24を装置本体110に対して着脱する際、あるいはジャム処理(紙詰まりした紙の除去)を行う際に、操作者が二次転写接離機構23を操作して二次転写ローラ20を離間位置に配置することができる。また、上記中間転写ベルトユニット24の装置本体110に対する着脱や、ジャム処理(紙詰まりした紙の除去)を終了する際に、操作者が二次転写接離機構23を操作して二次転写ローラ20を当接位置に配置することができる。また、本発明は、二次転写接離機構を有しておらず、二次転写ローラ20が実質的に常に中間転写ベルト10に当接した構成の画像形成装置にも適用できるものである。
4.キャリブレーション
図4は、本実施例における中間転写ベルト10上のキャリブレーション用のトナーパッチ(濃度調整用のトナーパッチ、色ずれ調整用のトナーパッチ)を示す模式図である。本実施例では、トナー検知センサ101は、中間転写ベルト10の幅方向において2個配置されている。この2個のトナー検知センサ101は、それぞれ中間転写ベルト10の幅方向における中央部よりも両端部寄りに配置されている。これらのうちの一方を第1のトナー検知センサ101e、他方を第2のトナー検知センサ101fとする。
キャリブレーションでは、複数のトナーパッチが中間転写ベルト10の表面の移動方向に沿って列状に形成される。本実施例では、トナーパッチは、中間転写ベルト10の幅方向において、第1のトナー検知センサ101eに対応する第1のトナーパッチ列102と、第2のトナー検知センサ101fに対応する第2のトナーパッチ列103と、の2列に形成される。図4に示す例では、第1のトナーパッチ列102には、濃度調整用の複数のトナーパッチと色ずれ調整用の複数のトナーパッチとが一列に形成されており、第2のトナーパッチ列103には、複数の色ずれ調整用のトナーパッチが一列に形成されている。
なお、キャリブレーション用のトナーパッチの列数は、2列に限定されるものではなく、1列あるいは3列以上であってもよい。トナー検知センサ101は、トナーパッチ列の列数に応じた数だけ配置すればよい。
エンジン制御部210は、キャリブレーションを、例えば、所定の画像形成枚数ごと、あるいは所定の環境条件の変化が生じた場合などに、前回転工程、前多回転工程、後回転工程、紙間工程などの非画像形成時に実行することができる。また、エンジン制御部210は、操作部206あるいはホストコンピュータ199における操作者による操作に応じて、キャリブレーションを上記のような非画像形成時に実行することができる。図4に示す例では、一のキャリブレーションの実行タイミングにおいて、濃度調整用のトナーパッチと色ずれ調整用のトナーパッチとが同期して形成される場合を示しているが、これらは別のタイミングで形成されてもよい。
本実施例では、キャリブレーションは二次転写ローラ20が中間転写ベルト10に当接させられた状態で実行される。これは、画像形成時と略同一の条件でキャリブレーションを実行することでキャリブレーションの精度を向上させるためである。また、二次転写ローラ20の接離動作にかかる時間を削減してダウンタイム(調整などのために画像の出力ができない期間)を低減するためである。そのため、本実施例では、トナーパッチは、中間転写ベルト10に二次転写ローラ10が当接させられた状態で二次転写部N2を通過する。このトナーパッチは、二次転写部N2を通過させてベルトクリーニング装置9へと送る必要がある。そこで、本実施例では、トナーパッチが二次転写ローラ10に静電的に付着することを抑制するために、少なくともトナーパッチが二次転写部N2を通過する際にトナーの正規の帯電極性と同極性の電圧が二次転写ローラ20に印加される。これにより、二次転写ローラ20の表面の電位とトナーの電荷との電気的な斥力により、二次転写ローラ20にトナーが静電的に付着することが抑制される。本実施例では、キャリブレーション時に少なくともトナーパッチが二次転写部N2を通過する際に例えば-1000Vの電圧が二次転写ローラ20に印加される。
ここで、キャリブレーションの精度の観点では、トナーパッチ列の搬送方向の後端がトナー検知センサ101による検知部を通過した後には、二次転写ローラ20を中間転写ベルト10から離間させることができる。ただし、中間転写ベルト10の表面の移動方向におけるトナー検知センサ101による検知部から二次転写部N2までの距離との関係などから、トナー検知センサ101による検知中に少なくとも一部のトナーパッチが二次転写N2を通過することが多い。本実施例では、上記キャリブレーションの精度、ダウンタイムの低減などの観点から、トナーパッチの搬送方向の先端から後端までの全領域が二次転写部N2を通過する全期間で、二次転写ローラ20は中間転写ベルト10に当接させられる。
なお、キャリブレーションにおける濃度調整や色ずれ調整の具体的な方法については、例えば公知のものを適宜任意に用いることができる。したがって、ここでは、濃度調整や色ずれ調整の具体的な方法についてのこれ以上の説明は省略する。
5.二次転写ローラへの保護剤の塗布
<概要>
前述のように、トナーによる二次転写ローラ20の汚れが発生することがある。例えば、トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を二次転写ローラ20に印加しても、二次転写ローラ20の表面とトナーとの間の物理的な付着力が電気的な斥力よりも高い場合は、トナーパッチによる二次転写ローラ20の汚れが発生する場合がある。特に、二次転写ローラ20が新品状態又は新品に近い状態の場合、二次転写ローラの表面とトナーとの間の付着力が高い場合があり、トナーパッチによる二次転写ローラ20の汚れが発生しやすくなることがある。トナーにより二次転写ローラ20が汚れると、次のような現象が発生する場合がある。つまり、画像形成時に記録材Pが二次転写部N2へ突入する際や二次転写部N2から抜ける際の衝撃により、二次転写ローラ20に付着したトナーが記録材Pの先端コバや後端コバに付着して記録材Pが汚れる現象(「紙コバ汚れ」)が発生する場合がある。
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、二次転写ローラ20を中間転写ベルト10に当接させた状態で二次転写ローラ20の表面に保護剤Zを塗布するシーケンス(塗布シーケンス、塗布モード)を実行可能とされる。本実施例では、塗布シーケンスにおいて、少なくとも二次転写ローラ20の回転軸線方向における第1、第2のトナーパッチ列102、103が通過する位置を含む位置の二次転写ローラ20の表面に保護剤Zを塗布する。これにより、二次転写ローラ20がブラックなどの目立つ色のトナーが含まれるトナーパッチによって汚れることを抑制することができる。
ここで、二次転写ローラ20のトナーによる汚れをより良好に抑制するためには、保護剤Zは、「二次転写ローラ20の表面と保護剤Zとの間の物理的な付着力F1」が「保護剤Zとトナーとの間の物理的な付着力F2」よりも大きいものであることが好ましい。また、塗布シーケンスは、好ましくは少なくとも二次転写ローラ20が新品状態又は新品に近い状態(使用履歴の少ない状態)において実行される。これにより、特に二次転写ローラ20が新品状態又は新品に近い状態であり二次転写ローラ20の表面とトナーとの間の付着力が高い状態で起こりやすいトナーパッチによる二次転写ローラ20の汚れを抑制することができる。また、保護剤Zとしては、仮に記録材Pに付着しても目立ちにくいものを用いることが好ましい。また、保護剤Zを二次転写ローラ10に塗布する際(本実施例では保護剤Zが二次転写部N2を通過する際)には、二次転写ローラ20は画像形成時と略同一の条件(当接圧などの押圧状態)で中間転写ベルト10に当接させられることが好ましい。これにより、画像形成時の条件で物理的に二次転写ローラ10に付着した状態を維持し記録材Pに移動しにくい保護剤Zを、二次転写ローラ20に塗布することができる。
以下では、まず、塗布シーケンスの動作について説明し、その後、保護剤Zの付着力及び付着力の測定方法について説明する。
<塗布シーケンス>
二次転写ローラ20に塗布する保護剤Zは、上述のように、仮に記録材Pに付着しても目立ちにくいことが好ましい。これは、画像形成時に記録材Pが二次転写部N2へ突入する際や二次転写部N2から抜ける際の衝撃により、二次転写ローラ20に付着した保護剤Zが記録材Pの先端コバや後端コバに付着する現象(「紙コバ汚れ」)が発生する可能性があるためである。つまり、保護剤Z自体が画像形成時に記録材Pに付着する可能性があるからである。
そこで、本実施例では、保護剤Zとして、記録材Pに付着しても目立ちにくい色のトナーであるイエロートナーを使用する。特に、本実施例では、保護剤Zとしてのイエロートナーを、イエロー用の画像形成部Saから中間転写ベルト10に供給し、これを二次転写ローラ20の表面に塗布する。つまり、本実施例では、二次転写ローラ20に塗布する保護剤Zを供給する供給手段としての一例として、イエロー用の画像形成部Saを用いる。トナーを保護剤として用いることで、塗布装置を別途設ける必要がなくなる。そのため、装置の大型化、コストアップを抑制することができる。
なお、本実施例では、二次転写ローラ20の表層は、発泡ゴム層で構成されている。この場合、保護剤Zは、二次転写ローラ20の中間転写ベルト10と直接接触する発泡ゴム層の壁部分に付着させることが好ましく、発泡ゴム層の空隙内部までトナーを付着させなくてもよい。二次転写ローラ20への保護剤Zの塗布量は、後述するように、保護剤Zとしてのイエロートナーで形成する塗布用のトナー像の濃度や大きさによって調整することができる。
図5は、本実施例における塗布シーケンスの手順の概略を示すフローチャート図である。ここでは、画像形成装置100が停止している状態(スタンバイ状態、スリープ状態、電源OFF状態)から塗布シーケンスを開始し、塗布シーケンスの終了後に画像形成装置100が再度停止する場合を例とする。
エンジン制御部210は、塗布シーケンスを開始する(S11)。例えば、エンジン制御部210は、ユーザーやサービス担当者などの操作者による指示が入力された場合に、塗布シーケンスを実行することができる。操作者は、画像形成装置100に設けられた操作部206における操作により、あるいはホストコンピュータ199における操作により、手動にて塗布シーケンスを実行する指示をエンジン制御部210に入力することができる。例えば、操作者は、下記のように二次転写ローラ20を新品に交換した場合に、その交換の直後の装置本体110の起動時の前多回転などにおいて塗布シーケンスを実行するように、エンジン制御部210に指示を入力することができる。これにより、二次転写ローラ20が新品状態又は新品に近い状態の場合に、塗布シーケンスを実行することができる。あるいは、操作者は、実際に紙コバが発生した場合などの任意のタイミングで塗布シーケンスを実行するように、エンジン制御部210に指示を入力することができる。
また、エンジン制御部210は、塗布シーケンスの実行の直接的な指示ではなくても、操作者による情報の入力に応じて、塗布シーケンスを実行することができる。例えば、画像形成装置100の装置本体110が新品でなくても、サービス担当者などの操作者により二次転写ローラ20が新品に交換される場合などがある。このような場合に、サービス担当者などの操作者が、操作部206やホストコンピュータ199から二次転写ローラ20を交換したことを示すコマンドをエンジン制御部210に入力するようにすることができる。そして、エンジン制御部210がこのコマンドの入力により二次転写ローラ20が新品に交換されたことを検知して、その交換の直後の装置本体110の起動時の前多回転などにおいて(最初の画像形成よりも前に)、塗布シーケンスを実行することができる。
また、エンジン制御部210は、予め設定された塗布シーケンスの要否判定の結果に基づいて塗布シーケンスを実行することができる。例えば、エンジン制御部210は、キャリブレーションの実行要求に基づいて塗布シーケンスの要否判定を行うことができる。つまり、エンジン制御部210は、キャリブレーションを実行する場合に、キャリブレーションの実行前に塗布シーケンスを実行することができる。ここで、エンジン制御部210は、キャリブレーションを上述のような所定のタイミングで実行する。また、塗布シーケンスは、毎回のキャリブレーションの実行時にキャリブレーションの実行前に実行することに限定されるものではない。例えば、エンジン制御部210は、予め設定された二次転写ローラ20の新品状態又は新品に近い状態に対応する所定の期間として、例えば新品の二次転写ローラ20(画像形成装置100)の使用開始から所定の回数目までのキャリブレーションの実行前に、塗布シーケンスを実行することができる。この場合、例えばエンジン制御部210にキャリブレーションの実行回数カウンタとして機能する不揮発メモリ153を設けて、キャリブレーションを実行するごとにこの不揮発メモリ153にキャリブレーションの実行回数を更新して記憶させる。そして、所定の回数目までのキャリブレーションの実行前に塗布シーケンスを実行するようにする。上記所定の回数は、二次転写ローラ20へのトナーの付着のしやすさなどに応じて適宜設定することができるが、1回~数回(例えば3~10回)程度とすることができる。なお、上述のように二次転写ローラ20が交換された場合に、上記キャリブレーションの実行回数カウンタを初期値(例えば0)にリセットして、上記同様に所定の回数目までのキャリブレーションの実行前に塗布シーケンスを実行するようにしてもよい。
エンジン制御部210は、塗布シーケンスを開始すると、メインモータの駆動を開始する(S12)。ここで、保護剤Zとしてのイエロートナーを物理的に二次転写ローラ20に塗布するために、少なくとも保護剤Zとしてのイエロートナーが二次転写部N2を通過する際には、二次転写ローラ20は中間転写ベルト10に当接した状態とされる。特に、本実施例では、画像形成時と略同一の条件で保護剤Zとしてのイエロートナーを物理的に二次転写ローラ20に塗布するために、二次転写ローラ20は画像形成時と略同一の条件で中間転写ベルト10に当接するように当接位置に配置される。なお、本実施例では、エンジン制御部210は、メインモータの駆動を開始するのと略同時に、二次転写接離機構23により二次転写ローラ20を中間転写ベルト10に当接させる。
次に、エンジン制御部210は、各種高圧電源からの所定の電圧の印加を開始する(S13)。具体的には、保護剤Zとしてのイエロートナーで所定の画像(塗布用のトナー像)を形成するので、帯電電源18、一次転写電源15から帯電ローラ2、一次転写ローラ14への通常の画像形成時と略同一の帯電電圧、一次転写電圧の印加を開始する。また、保護剤Zとしてのイエロートナーを静電的な斥力に勝る物理的な付着力で二次転写ローラ20に塗布するために、二次転写電源21から二次転写ローラ20への、塗布電圧としてのトナーの正規の帯電極性と同極性の電圧の印加を開始する。なお、この塗布電圧は、少なくとも保護剤Zとしてのイエロートナーが二次転写部N2を通過する際に二次転写ローラ20に印加される。なお、塗布電圧は本実施例のようにトナーの正規の帯電極性と同極性の電圧の印加に限定されることなく、トナーの正規の帯電極性と逆極性の電圧の印加や、電圧を印加しなくても本発明の作用効果は得ることができる。しかしながら、後述する理由により、二次転写ローラ20への塗布剤の塗布量が多すぎることは望ましくなく、必要最小限にするためにもトナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を塗布電圧として印加することが好ましい。
エンジン制御部210は、上記各種高圧電源から印加される電圧が所定の値まで立ち上がり、電圧が安定した後に、塗布用のトナー像の形成に備えて、現像接離機構43により現像ローラ41を感光ドラム1に当接させる(S14)。なお、本実施例では、エンジン制御部210は、現像ローラ41を感光ドラム1に当接させる際に、現像電源19から現像ローラ41への通常の画像形成時と略同一の現像電圧の印加を開始する。その後、エンジン制御部210は、保護剤Zとしてのイエロートナーで塗布用のトナー像を形成するために、イエロー用の画像形成部Saにおいて露光装置3aにより感光ドラム1aを露光する(S15)。これにより、イエロー用の画像形成部Saにおいて、感光ドラム1a上にイエロートナーで塗布用のトナー像が形成され、この塗布用のトナー像が中間転写ベルト10に転写される。エンジン制御部210は、イエロー用の画像形成部Saでの塗布用のトナー像の現像が終了したら、現像接離機構43により現像ローラ41を感光ドラム1から離間させる(S16)。なお、本実施例では、エンジン制御部210は、現像ローラ41を感光ドラム1から離間させる際に、現像電源19から現像ローラ41への現像電圧の印加を停止する。保護剤Zとしてのイエロートナーは、中間転写ベルト10の回動に伴い二次転写部N2に到達し、二次転写ローラ20の表面に塗布される(S17)。
エンジン制御部210は、保護剤Zの塗布が終了した後(保護剤Zとしてのイエロートナーが二次転写部N2を通過した後)に、次のような清掃動作を実行する(S18)。つまり、二次転写ローラ20の表面に付着した保護剤Z(イエロートナー)のうちの一部として存在する可能性のある正規の帯電極性とは逆極性に帯電した保護剤Zを二次転写ローラ20から除去するための清掃動作である。具体的には、清掃動作では、二次転写ローラ20に少なくとも保護剤Z(イエロートナー)の正規の帯電極性とは逆極性の電圧を印加して、二次転写ローラ20の静電的な清掃を行う。特に、本実施例では、清掃動作において、二次転写ローラ20に、保護剤Zの正規の帯電極性とは逆極性の電圧と、保護剤Zの正規の帯電極性と同極性の電圧と、を交互に印加する。その後、エンジン制御部210は、各種高圧電源及びメインモータを停止させて(S19)、塗布シーケンスを終了させる。なお、本実施例では、エンジン制御部210は、メインモータの駆動を停止するのと略同時に、二次転写接離機構23により二次転写ローラ20を中間転写ベルト10から離間させる。
ここで、本実施例では、装置構成の簡易化などの観点から、前述のように駆動源、各種電源、現像接離機構の構成の共通化が図られている。そのため、本実施例では、塗布シーケンスにおいて、イエロー用の画像形成部Sa以外の画像形成部Sでも感光ドラム1及び現像ローラ41の駆動、現像ローラ41の感光ドラム1への当接、並びに、帯電電圧、現像電圧及び一次転写電圧の印加が行われる。ただし、イエロー用の画像形成部Sa以外の画像形成部Sでは、感光ドラム1及び現像ローラ41の駆動、現像ローラ41の感光ドラム1への当接、並びに、帯電電圧、現像電圧及び一次転写電圧の印加を行う必要はない。例えば、イエロー用の画像形成部Saと他の画像形成部Sとで感光ドラム1の駆動源が別個に設けられているなどして、これらの駆動及び停止を別個に制御できる場合には、該他の画像形成部Sにおいては感光ドラム1を停止した状態とすることができる。この場合、該他の画像形成部Sでは、例えば一次転写ローラ14を感光ドラム1から離れる方向に移動させることで、感光ドラム1から中間転写ベルト10を離間させる。このために、該他の画像形成部Sの一次転写ローラ14を感光ドラム1に対して離れる方向及び近づく方向に移動させることが可能なベルト接離機構を画像形成装置100に設けることができる。また、該他の画像形成部Sでは、現像ローラ41を感光ドラム1に当接させないようにすることができる。また、該他の画像形成部Sでは、帯電電圧、現像電圧及び一次転写電圧の印加を行わないようにすることができる。
図6は、本実施例における塗布シーケンスにおける各部の動作タイミングを示すタイミングチャート図である。ここでは、図5のフローチャートに従って、画像形成装置100が停止している状態から塗布シーケンスを開始し、塗布シーケンスの終了後に画像形成装置100が再度停止する場合を例とする。
図6には、メインモータの駆動状態、帯電電圧の印加状態、一次転写電圧の印加状態、二次転写ローラ20に対する電圧の印加状態、現像ローラ41の感光ドラム1に対する接離状態、露光装置3aの露光タイミングが示されている。なお、メインモータの駆動状態は、感光ドラム1が停止した状態(OFF)と、プロセススピードに応じた目標回転速度で回転している状態(ON)と、OFF状態からON状態及びON状態からOFF状態に遷移する状態と、が示されている。また、現像ローラ41の感光ドラム1に対する接離状態は、現像ローラ41が当接位置にある状態と、離間位置にある状態と、これらの間の状態と、が示されている。
時刻t0に、塗布シーケンスが開始される(S11)。その後、時刻t1に、メインモータの回転が開始される(S12)。なお、本実施例では、メインモータの回転開始と略同一の時刻t1に、二次転写ローラ20が中間転写ベルト10に当接させられる。また、メインモータの回転開始と略同一の時刻t1に、帯電電圧の印加と、二次転写ローラ20に対する電圧の印加と、が開始される(S13)。帯電電圧としては、通常の画像形成時と略同一の電圧が印加される。本実施例では、この際に-1300Vの帯電電圧が印加される。また、二次転写ローラ20には、保護剤Zが静電的な斥力に勝る物理的な付着力だけで二次転写ローラ20に塗布されるように、トナーの正規の帯電極性と同極性の塗布電圧(塗布電圧_負)が印加される。本実施例では、この際に-500Vの塗布電圧が印加される。また、帯電処理を開始した際に帯電部を通過した感光ドラム1の表面が一次転写部N1に到達するまでの間の時刻t2に、一次転写電圧の印加が開始される(S13)。一次転写電圧としては、通常の画像形成時と略同一の電圧が印加される。本実施例では、この際に+100Vの一次転写電圧が印加される。以上の帯電電圧、二次転写ローラ20に対する電圧、一次転写電圧の立ち上げまでが各種高圧電源からの電圧の立ち上げである(S13)。各種高圧電源からの電圧が立ち上がった後、時刻t3に、現像ローラ41が感光ドラム1に当接させられる(S14)。なお、本実施例では、現像ローラ41が感光ドラム1に当接させられるのと略同一の時刻t3に、通常の画像形成時と略同一の現像電圧の印加が開始される。次に、時刻t4~時刻t5の期間に、イエロー用の画像形成部Saの感光ドラム1aが露光されることで該感光ドラム1a上に静電潜像が形成され、この静電潜像が保護剤Zとしてのイエロートナーで現像されて塗布用のトナー像が形成される(S15)。なお、本実施例では、塗布用のトナー像がベタ画像となるように露光装置3aの露光強度が調整される。時刻t5に露光が終了した後、時刻t6に、現像ローラ41が感光ドラム1から離間させられる(S16)。これは現像ローラ41や感光ドラム1の劣化を抑制するためである。なお、本実施例では、現像ローラ41が感光ドラム1から離間させられるのと略同一の時刻t6に、現像電圧の印加が停止される。時刻t4~t5の期間に露光が行われ、その後現像されることで感光ドラム1上に形成された塗布用のトナー像は、時刻t7~t8の期間に二次転写部N2に到達(通過)する。この際に、二次転写ローラ20に保護剤Zが塗布される(S17)。
二次転写ローラ20の表面に保護剤Zが存在していると、トナーパッチが二次転写部N2を通過しても二次転写ローラ20にトナーが物理的に付着しにくくなる。二次転写ローラ20がトナーパッチのように二次転写ローラ20の回転軸線方向の特定の位置にだけ形成されるトナー像のトナーで汚れた場合、トナーパッチに含まれるブラックなどの目立つ色のトナーによる紙コバ汚れが目立ちやすくなる。特に、二次転写ローラ20が新品状態又は新品に近い状態の場合、二次転写ローラ20の表面とトナーとの間の付着力が高い場合があり、トナーパッチによる二次転写ローラ20の汚れが発生しやすくなることがある。これは、例えば、二次転写ローラ20の弾性層の材料や成分、更には弾性層の表面の形状(毛羽など)に起因して、新品状態又は新品に近い状態では二次転写ローラ20に対するトナーの物理的な付着力が大きくなりやすいことによる。二次転写ローラ20を使用していくと、二次転写ローラ20の表面は、カブリトナーなどが徐々に付着していくこと、あるいは徐々に摩耗していくことなどにより、トナーとの付着力が小さくなっていく傾向がある。そこで、本実施例では、好ましくは少なくとも二次転写ローラ20が新品状態又は新品に近い状態において、塗布シーケンスを実行する。これにより、特に新品状態又は新品に近い状態の二次転写ローラ20の特定の位置のトナーによる汚れを抑制して、紙コバ汚れを抑制することができる。
なお、上述のように、保護剤Z自体による紙コバ汚れは、保護剤Zとして記録材Pに付着しても目立ちにくい色のトナーを用いているので抑制することができる。また、二次転写ローラ20に塗布した保護剤Zが記録材Pに付着することがあるとしても、塗布した保護剤Zのすべてが記録材Pの先端コバや後端コバに付着するわけではなく、少量の保護剤Zが付着するだけである。そのため、仮に記録材Pの保護剤Zが付着した箇所にブラックなどの目立つ色のトナーが付着したとしても、少量の目立つ色のトナーであれば紙コバ汚れは目立ちにくい。
図7は、本実施例における塗布シーケンスでの二次転写ローラ20上の保護剤Zの塗布領域を説明するための、保護剤Zが塗布された状態の二次転写ローラ20の模式的な側面図である。図7に示すように、本実施例では、二次転写ローラ20の幅方向(主走査方向、回転軸線方向)における保護剤Zの塗布領域は、少なくとも第1のトナーパッチ列102及び第2のトナーパッチ列103に対応する位置を包含する領域とされる。なお、二次転写ローラ20の幅方向(主走査方向、回転軸線方向)は、中間転写ベルト10の表面の移動方向と略直交する方向に沿う方向(本実施例では略平行な方向)である。つまり、二次転写ローラ20は、その回転軸線方向において、保護剤Zが塗布される領域と、塗布されない領域とを有し、塗布される領域は、少なくとも第1のトナーパッチ列102及び第2のトナーパッチ列103に対応する位置を包含する領域とされる。ここで、二次転写ローラ20の幅方向におけるトナーパッチ列に対応する位置を包含する領域とは、二次転写ローラ20の幅方向におけるトナーパッチの位置の変動を考慮しても、十分にトナーパッチが形成される領域よりも広い(内側にトナーパッチが形成される領域を含む)領域である。これにより、トナーパッチによる紙コバ汚れを抑制しつつ、保護剤Zの消費量を削減することができる。また、本実施例では、二次転写ローラ20の周方向(副走査方向、表面の移動方向)における保護剤Zの塗布幅(時刻t4~時刻t5の期間に対応)は、二次転写ローラ20の周方向の略1周分の長さ(周長)である51mmとされる。なお、本実施例では、二次転写ローラ20の周方向(副走査方向、表面の移動方向)における保護剤Zの塗布幅は、二次転写ローラ20に保護剤Zを塗布する中間転写ベルト10上の領域の中間転写ベルト10の表面の移動方向における長さに対応する。二次転写ローラ20の周方向における保護剤Zの塗布幅が二次転写ローラ20の周長未満の場合、二次転写ローラ20の周方向の略全域で保護剤Zによる効果を得ることが難しくなる。そのため、二次転写ローラ20の周方向における保護剤Zの塗布幅は、二次転写ローラ20の周長と略同一の長さであることが好ましい。このように、二次転写ローラ20の幅方向におけるトナーパッチ列が通過する位置を含む領域において、二次転写ローラ20の表面の略全周に保護剤Zを塗布することで、二次転写ローラ20へのトナーパッチのトナーの付着力を低減することができる。
図6に戻って保護剤Zの清掃動作に関して説明する。時刻t9に、二次転写ローラ20に塗布された保護剤Zのうち、静電的に二次転写ローラ20から除去しやすい保護剤Zを静電的に除去する清掃動作が開始される(S18)。上述のように、二次転写ローラ20には、保護剤Z(イエロートナー)の一部として正規の帯電極性とは逆極性に帯電した保護剤Zが付着している場合がある。本実施例では、保護剤Zとしてトナーを用いている。そのため、静電的に二次転写ローラ20から取れやすいトナーは、トナー像を記録材Pに二次転写する際に記録材Pの裏面にトナーが付着して記録材Pの裏面がトナーで汚れる現象(以下、「紙裏汚れ」ともいう。)や紙コバ汚れの要因になるおそれがある。本実施例では、保護剤Zが記録材Pに付着したとしても目立ちにくいように、保護剤Zとして明度の高いイエロートナーを用いている。しかし、二次転写ローラ20に塗布された保護剤Zの量が多すぎることは好ましくない。これは、明度の高く目立ちにくい色の保護剤Zによる紙裏汚れや紙コバ汚れであっても、汚れが多すぎるとユーザーが気付く可能性があるからである。また、二次転写ローラ20の全体の電気抵抗への影響は少なくても、長手方向における保護剤Zが付着した位置の電気抵抗が局所的に上昇してしまうことにより、二次転写電圧の制御の精度が低下して画像品質に影響することが懸念されるからである。そこで、本実施例では、静電的な力(静電力)で二次転写ローラ20から除去できる保護剤Zを除去する清掃動作を実行する(S18)。
静電的に二次転写ローラ20から除去する保護剤Z(イエロートナー)は、静電的に二次転写ローラ20に付着している保護剤Zである。上述のように、本実施例では、保護剤Zが二次転写部N2を通過する際に二次転写ローラ20には保護剤Zの正規の帯電極性と同極性の塗布電圧(塗布電圧_負)が印加される。そのため、正規の帯電極性とは逆極性に帯電した保護剤Zが二次転写ローラ10の表面の近傍に付着している。また、わずかながら、その正規の帯電極性とは逆極性に帯電した保護剤Zに電気的に引き付けられた、正規の帯電極性に帯電した保護剤Zも二次転写ローラ20上に存在している。このような静電的に二次転写ローラ20に塗布された保護剤Zの性質に鑑みて、本実施例では、清掃動作において、二次転写ローラ20に正極性及び負極性の清掃電圧(清掃電圧_正、清掃電圧_負)を交互に複数回ずつ印加する。これにより、静電的に二次転写ローラ20に付着した正極性及び負極性のそれぞれ帯電した保護剤Zが二次転写ローラ20から除去されて二次転写ローラ20の清掃が行われる。また、清掃電圧の絶対値は、塗布電圧の絶対値よりも大きいことが清掃強度の観点で好ましい。これは、塗布電圧の印加により静電的に二次転写ローラ20に付着した保護剤Zを、該塗布電圧の絶対値よりも大きい絶対値の清掃電圧を印加することで、より確実に二次転写ローラ20から除去するためである。また、正電圧と負電圧とを交互に繰り返し印加することで、正極性及び負極性の保護剤Zを電気的に除去できるとともに、機械的な振動を加えて保護剤Zをより良好に除去することができる。本実施例では、清掃電圧_正は+1000V、清掃電圧_負は-1000Vとした。
時刻t10に、二次転写ローラ20に対する電圧及び一次転写電圧の印加が停止されることで清掃動作が終了される。その後、時刻t11に、帯電電圧の印加及びメインモータの駆動が停止され(S19)、塗布シーケンスが終了される。なお、本実施例では、メインモータの回転停止と略同一の時刻t11に、二次転写ローラ20が中間転写ベルト10から離間させられる。
なお、例えば、塗布シーケンスに続いてキャリブレーションを実行する場合などには、塗布シーケンス(清掃動作を含む。)の終了後にメインモータを停止させることなく、キャリブレーションに移行するなどしてもよい。
このように、塗布シーケンスを実行することで、二次転写ローラ20が新品状態又は新品に近い状態であっても、トナーパッチによる二次転写ローラ20の汚れを抑制することが可能である。
<保護剤Zの付着力及び付着力の測定方法>
保護剤Zは、「二次転写ローラ20の表面と保護剤Zとの間の物理的な付着力F1」が「保護剤Zとトナーとの間の物理的な付着力F2」よりも大きいものであることが好ましい。すなわち、保護剤Zは、二次転写ローラ20(NBR及びエピクロルヒドリンゴム。「NBR/ヒドリンゴム」ともいう。)に対しては物理的に付着しやすく、トナー(表面のSiO2などの外添剤)に対しては付着しにくいものであることが好ましい。本実施例では、保護剤Zとしてのイエロートナーは、このような付着力の関係を満たしている。これにより、より効果的に二次転写ローラ20に保護剤Zを塗布することができ、またより効果的に保護剤Zが塗布された二次転写ローラ20へのトナーの付着を抑制することができる。
なお、本実施例で用いた保護剤Zは、表面に外添剤としてのSiO2が外添されたトナーである。また、トナーパッチや通常の画像形成時のトナー像を構成するトナーも同様に、表面に外添剤としてのSiO2が外添されたトナーである。ここでは、この表面に外添剤としてのSiO2が外添されたトナーを単に「トナー」ともいう。
本実施例における保護剤Zの付着力の測定方法について説明する。保護剤ZとNBR/ヒドリンゴム及びトナーとの付着力は、SPMを用いて測定した。測定は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)(商品名:Q-Scope250、QuesantInstrument Corporation社製)を用い、コンタクトモードで、以下のように行った。なお、測定環境は、温度23℃、相対湿度50%とした。すなわち、「SiO2-NBR/ヒドリンゴム間付着力F1」及び「SiO2-SiO2間付着力F2」を、SPMを用いて測定した。具体的には、カンチレバーを所定の押圧力で測定対象材料に押圧した後、カンチレバーを測定対象材料から脱離させるのに必要な力を、保護剤Zと測定対象材料との間の付着力Fとして測定した。上記測定対象材料は、NBR/ヒドリンゴム(二次転写ローラ20の表面に相当)、又はSiO2(トナーの表面の外添剤に相当)である。また、上記測定対象材料がNBR/ヒドリンゴムである場合の付着力Fが、「SiO2-NBR/ヒドリンゴム間付着力F1」である。また、上記測定対象材料がSiO2である場合の付着力Fが、「SiO2-SiO2間付着力F2」である。カンチレバーとしては、表面がシリコンの酸化膜で被覆された、シリコン製のラウンドチップ型の先端径100nmのものを用いた。このように、カンチレバーの表面の材質を、トナーの表面に外添される主要な外添剤と同じSiO2とし、更にカンチレバーの先端径を、外添剤の個数平均粒径に近い100nmとした。これにより、精度良くトナーの表面の外添剤と各部材(測定対象材料)との間の付着力を再現することができる。
図8は、本実施例における付着力F1、F2の測定結果を示すグラフ図である。図8において、横軸はカンチレバーの押圧力、縦軸は付着力を示している。図8に示すように、本実施例では、カンチレバーの押圧力によらず、付着力F1、F2の関係はF1>F2であり、「保護剤Z(トナー)と二次転写ローラ20の表面との間の付着力F1」>「保護剤Z(トナー)とトナーとの間の付着力F2」の関係を満たしている。したがって、本実施例では、この関係を満たす保護剤Zを二次転写ローラ20に塗布することができる。
本実施例では、カンチレバーの押圧力によらず、付着力F1、F2の関係はF1>F2となる。しかし、二次転写ローラ20、保護剤Z、トナーの表面に外添される主要な外添剤の材料などによっては、カンチレバーの押圧力によって付着力F1、F2の大小関係が入れ替わる場合がある。そのため、付着力F1、F2の大小関係を比較する場合には、カンチレバーの押圧力(図8の横軸)が実際に二次転写ニップ部(二次転写ローラ20と中間転写ベルト10との当接部)N2で外添剤の1個当たりが受ける押圧力であるときの付着力F1、F2で比較することが好ましい。
一例として、本実施例における二次転写ニップ部N2で保護剤Z(トナー)の表面に外添された外添剤の1個当たりが受ける押圧力F1’を算出する。押圧力F1’は、下記式(1)で算出することができる。
F1’=「二次転写ニップ部N2にかかる押圧力」/「二次転写ニップ部N2に存在する外添剤粒子の個数」・・・式(1)
また、上記式(1)中の「二次転写ニップ部N2に存在する外添剤粒子の個数」は、トナーが最密充填していると仮定し、またトナーの表面が外添剤によって満遍なく被覆されていると仮定すると、下記式(2)で算出することができる。
「二次転写ニップ部N2に存在する外添剤粒子の個数」=「二次転写ニップ部の接触部面積」/「1個当たりの外添剤粒子の断面積」×「最密充填比率」・・・式(2)
本実施例では、二次転写ローラ20の中間転写ベルト10に対する押圧力は50Nである。二次転写ローラ20の回転軸線方向の長さは216mm、二次転写ローラ20の表面の移動方向における二次転写ニップ部N2の幅は4mmである。そのため、二次転写ニップ部N2の接触面積は864mm2となる。本実施例では、外添剤の個数平均粒径は100nmであるため、1個当たりの外添剤粒子の断面積はπ×10-14m2となる。これらの値を上記式(1)と式(2)に代入することで算出した、二次転写ニップ部N2で二次転写ローラ20と保護剤Z(トナー)上の外添剤の1個当たりが受ける押圧力は、20.8(nN)であった。なお、二次元の円の最密充填比率であるπ/√12≒0.9069を用いた。
図8から、本実施例では、横軸の押圧力が20.8(nN)付近である場合も、付着力F1、F2の関係はF1>F2であり、「二次転写ローラ20と保護剤Z(トナー)との間の付着力F1」>「保護剤Z(トナー)とトナーとの間の付着力F2」の関係を満たしていることがわかる。
6.効果
本実施例の効果を確認するために、本実施例の構成と下記の比較例1、2の構成とについて、次のような試験を行った。常温常湿環境(温度23℃/相対湿度50%)においてキャリブレーション(色ずれ調整)を実行した後に、記録材PとしてXEROX Business 4200 LETTERサイズ(Xerox、商品名)の通紙試験を行い、画像不良の有無について検証した。
本実施例:塗布シーケンスあり
キャリブレーション時に二次転写ローラは中間転写ベルトに当接
キャリブレーション時に二次転写ローラに負電圧を印加
比較例1:塗布シーケンスなし
キャリブレーション時に二次転写ローラは中間転写ベルトに当接
キャリブレーション時に二次転写ローラに負電圧を印加
比較例2:塗布シーケンスなし
キャリブレーション時に二次転写ローラは中間転写ベルトから離間
ここで、二次転写ローラ20が中間転写ベルト10に当接した状態とは、図3(a)、(b)に示す状態であり、二次転写ローラ20が中間転写ベルト10から離間した状態とは図3(c)、(d)に示す状態である。
なお、比較例1、2の画像形成装置100の構成及び動作は、上記の点を除いて本実施例の画像形成装置100の構成及び動作と実質的に同じである。また、本実施例及び比較例1、2のそれぞれにおいて、試験は新品の二次転写ローラ20を用いて行った。また、本実施例では、キャリブレーションの実行前(実行直前)に塗布シーケンスを実行した。
表1に、キャリブレーションの精度及び二次転写ローラ20の汚れに起因する紙コバ汚れの評価結果を示す。キャリブレーションの精度は、キャリブレーション後の色ずれ量が50μm未満に収まっていた場合を「OK」、それ以上であった場合を「NG」とした。また、二次転写ローラ20の汚れに起因する紙コバ汚れは、実質的に未発生の場合を「OK」、目視で確認できる程度に発生した場合を「NG」とした。
比較例1の構成では、二次転写ローラ20を中間転写ベルト10に当接させて画像形成時と略同一の条件でキャリブレーションを実行したため、キャリブレーションの精度は問題なかった。しかしながら、ブラックを含む各色のトナーパッチが二次転写ローラ20に付着したため、記録材Pが二次転写部N2に突入した際の衝撃により記録材Pの先端コバ部がブラックを含む目立つ色のトナーで汚れる紙コバ汚れが発生した。
比較例2の構成では、二次転写ローラ20が中間転写ベルト10から離間した状態でキャリブレーションを実行したため、トナーパッチによって二次転写ローラ20が汚れることはなかった。しかしながら、キャリブレーション時に二次転写ローラ20が中間転写ベルト10から離間していると、通常の画像形成時と駆動トルクが変化してしまい、キャリブレーションの精度を維持することができなかった。
一方、本実施例では、キャリブレーションの実行前に塗布シーケンスを実行して保護剤Zを二次転写ローラ20に塗布した。そのため、二次転写ローラ20を中間転写ベルト10に当接した状態としてキャリブレーションの精度を維持しつつ、トナーパッチによる二次転写ローラ20汚れを抑制することができた。
なお、キャリブレーション時に二次転写ローラ20を中間転写ベルト10に当接させたままとすることで、接離動作に伴う時間を削減してダウンタイムを低減する効果も得られる。
以上説明したように、本実施例によれば、二次転写ローラ20が新品状態又は新品に近い状態であっても、塗布シーケンスを実行することで、トナーパッチによる二次転写ローラ20の汚れを抑制することが可能である。
7.変形例
本実施例では、保護剤Zとしてイエロートナーを用いたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。保護剤Zとして、記録材Pに付着してもイエロートナーよりも更に目立ちにくい、ほぼ無色の粒子、あるいはほぼ無色透明な粒子を用いてもよい。例えば、透明トナーを保護剤Zとして用いることができる。また、例えば、現像ローラ41の表面を保護するなどのために用いられるシリコーン樹脂微粒子(トスパール)を保護剤Zとして用いることができる。また、例えば、クリーニングブレード55と感光ドラム1との間、あるいはベルトクリーニングブレード91と中間転写ベルト10との間の摩擦力を低減するなどのために用いられる、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸を保護剤Zとして用いることができる。なお、金属石鹸としては、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、オクチル酸などの脂肪酸と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛などの金属が知られている。金属石鹸は、微視的には白色、淡黄色あるいは無色の粉末(微粉末)であることが多く、被塗布面上に略一様にコーティングすることができる。金属石鹸としては、上記ステアリン酸亜鉛の他、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛、オクチル酸亜鉛などが挙げられる。
図9は、二次転写ローラ20に塗布する保護剤Zを供給する供給手段としての一例として、感光ドラム1に金属石鹸8を塗布してクリーニングブレード55と感光ドラム1との当接部に金属石鹸8を供給する供給部材(塗布装置)を有する構成の模式図である。図9(a)に示すように、この構成では、供給部材としてのブラシローラ6のブラシ繊維に金属石鹸8を含侵させて、供給部材接離機構7によりブラシローラ6を感光ドラム1に当接させて、感光ドラム1の表面に金属石鹸8(粒子径1μm以下)を供給する。この金属石鹸8を保護剤Zとして用いることができる。つまり、感光ドラム1に付着した金属石鹸8の一部は、クリーニングブレード55と感光ドラム1との当接部をすり抜けて感光ドラム1の表面に塗布される。感光ドラム1の表面に塗布された金属石鹸8は、中間転写ベルト10を介して二次転写ローラ20に供給することが可能である。そこで、塗布シーケンスを開始したら、供給部材接離機構7によりブラシローラ6を感光ドラム1に当接させて、上述のように感光ドラム1、中間転写ベルト10を介して、保護剤Z(金属石鹸8)を二次転写ローラ20に塗布する。また、塗布シーケンスの実行時以外の期間には、図9(b)に示すように、供給部材接離機構7によりブラシローラ6を感光ドラム1から離間させることができる。なお、供給部材は、ブラシローラの形態に限定されるものではない。供給部材は、例えば、ソリッドローラ、スポンジローラなどであってもよい。また、供給部材は、画像形成部Sに設けられて感光ドラム1を介して保護剤Z(金属石鹸)を二次転写ローラ20に塗布する構成に限定されるものではない。例えば、保護剤Z(金属石鹸)を中間転写ベルト10に直接塗布することで、中間転写ベルト10を介して保護剤Z(金属石鹸)を二次転写ローラ20に塗布する構成としてもよい。あるいは、保護剤Z(金属石鹸)を二次転写ローラ20に直接塗布する構成としてもよい。
ここで、ステアリン酸亜鉛のような帯電しにくい中性の保護剤Zは、二次転写ローラ20には主に物理的な接触によって塗布されるので、本実施例のように保護剤Zを二次転写ローラ20に塗布する際に二次転写ローラ20に塗布電圧を印加する必要はない。したがって、静電的に除去しやすい保護剤Zを二次転写ローラ20から除去する清掃動作(図5のS18)を行う必要もない。そのため、ダウンタイムの低減が期待できる。なお、本発明者の検討によると、金属石鹸からなる保護剤Zの付着力F1-1、F2-1は、「保護剤Zと二次転写ローラ20の表面との間の付着力F1-1」>「保護剤Zとトナーとの間の付着力F2-1」の関係を満たす。図15は、トナーからなる保護剤Zの付着力F1、F2と、金属石鹸からなる保護剤Zの付着力F1-1、F2-1と、を対比して模式的に示すグラフ図である。金属石鹸からなる保護剤Zは、図15に示すような付着力F1-1、F2-1を示すことが多いと考えられる。上述のシリコーン樹脂微粒子からなる保護剤Zについても同様と考えられる。
また、本実施例では、保護剤Zとしてのイエロートナーを用いてベタ画像である塗布用のトナー像を形成して、二次転写ローラ20に保護剤Zを塗布したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。トナーによる二次転写ローラ20の汚れを抑制できればよい。例えば、図10に示すように、保護剤Zとしてのトナーを用いてハーフトーン画像である塗布用のトナー像を形成して、二次転写ローラ20に保護剤Zを塗布してもよい。なお、ハーフトーン画像は、ベタ画像の濃度を100%とした場合に、例えば濃度が20%~80%、典型的には濃度が50%の画像などとすることができる。この場合、保護剤Zの消費量を低減することができ、かつ、必要以上に保護剤Zが二次転写ローラ20に付着することを抑制することができる。そのため、清掃動作(図5のS18)の時間を短くして、塗布シーケンスによるダウンタイムを低減することができる。
また、本実施例では、二次転写ローラ20の周方向における保護剤Zの塗布幅を二次転写ローラ20の周方向の略1周分の長さ(周長)としたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。トナーによる二次転写ローラ20の汚れを抑制できればよい。例えば、二次転写ローラ20の周長分では保護剤Zが足りない場合などには、二次転写ローラ20の周方向における保護剤Zの塗布幅は、二次転写ローラ20の周長よりも長くてもよい。このとき、二次転写ローラ20の周方向における保護剤Zの塗布幅は、二次転写ローラ20の周方向における保護剤Zの塗布ムラを抑制するように、二次転写ローラ20の周長の略N倍(Nは1以上の整数)の長さであることが好ましい。これに限定されるものではないが、Nは、10以下で十分であることが多い。なお、この場合は、清掃動作(図5のS18)を省略してもよく、その場合ダウンタイムを低減することができる。
このように、本実施例では、画像形成装置100は、トナー像を担持する像担持体(中間転写ベルト)10と、像担持体10の表面に当接して像担持体10から記録材Pにトナー像を転写する転写部N2を形成する転写部材(二次転写ローラ)20と、転写部材20の表面に塗布される保護剤Zを供給する供給手段(画像形成部)Sと、供給手段Sを制御可能な制御部210と、を有し、制御部210は、像担持体10から記録材Pにトナー像を転写する画像形成時以外の非画像形成時に、転写部材20が像担持体10に当接した状態で、供給手段Sにより供給される保護剤Zを転写部材20の表面に塗布する塗布モードを実行可能である。本実施例では、画像形成装置100は、転写部N2に電圧を印加する印加手段21を有し、制御部210は、塗布モード中に転写部N2に電圧を印加するように制御する。また、本実施例では、印加手段21は、転写部材20に電圧を印加することで転写部N2に電圧を印加し、制御部210は、塗布モード中に保護剤Zの正規の帯電極性と同極性の電圧を転写部材20に印加するように制御する。
本実施例では、画像形成装置100は、転写部材20を像担持体10に押圧させる第1の位置と、転写部材20を上記第1の位置よりも像担持体10から退避させる第2の位置と、に転写部材20を移動させる移動手段23を有し、制御部210は、供給手段Sにより像担持体10の表面に保護剤Zを供給し、転写部材20が上記第1の位置にある状態で、像担持体10の表面に供給された保護剤Zを転写部N2において転写部材20の表面に塗布するように、塗布モードを実行する。なお、本実施例では、上記第1の位置は、画像形成時の位置と実質的に同じ位置である。また、本実施例では、上記第2の位置は、転写部材20が像担持体10から離間した離間位置であるが、第1の位置よりも像担持体10から離れた位置であれば、例えば第1の位置よりも小さい圧力で接触する位置であってもよい。特に、本実施例では、画像形成装置100は、上記印加手段21と、上記移動手段23と、を有し、制御部210は、供給手段Sにより像担持体10の表面に保護剤Zを供給し、転写部材20が上記第1の位置にあり、かつ、印加手段21により転写部N2に電圧を印加して保護剤Zの少なくとも一部を電気的に転写部材20から像担持体10に向かう方向に付勢する電界を転写部N2に形成した状態で、像担持体10の表面に供給された保護剤Zを転写部N2において転写部材20の表面に塗布するように、塗布モードを実行する。本実施例では、印加手段21は、転写部材20に保護剤Zの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加して上記電界を形成する。また、本実施例では、制御部210は、転写部材20に保護剤Zを塗布した後に、上記印加手段21により転写部N2に電圧を印加して転写部材20に塗布された保護剤Zの少なくとも一部を電気的に転写部材20から像担持体10に向かう方向に付勢する電界を転写部N2に形成するように、塗布モードを実行する。本実施例では、印加手段21は、転写部材20に保護剤Zの正規の帯電極性と同極性の電圧(更には保護剤Zの正規の帯電極性とは逆極性の電圧)を印加して上記電界を形成する。なお、画像形成装置100は、供給手段が保護剤Zを転写部材20の表面に直接塗布するように構成されていてもよい。
また、制御部210は、像担持体10の表面の移動方向と略直交する方向に沿う転写部材20の幅方向において、少なくとも像担持体10の表面に形成される試験用のトナー像に対応する位置を包含する領域の転写部材20の表面に保護剤Zを塗布するように、塗布モードを実行することができる。また、制御部210は、回転体である転写部材20の表面の周長の略N倍(Nは1以上の正の整数)の長さにわたり保護剤Zを転写部材20の表面に塗布するように、塗布モードを実行することができる。また、制御部210は、操作者の操作に基づいて入力された信号に応じて塗布モードを実行することができる。また、制御部210は、像担持体10の表面に試験用のトナー像が形成され、転写部材20が像担持体10に当接した状態で該試験用のトナー像が転写部N2を通過する調整モード(キャリブレーション)を実行する場合に、該調整モードを実行する前に塗布モードを実行することができる。また、制御部210は、新品の転写部材20の使用を開始してから所定の回数目までの上記調整モードを実行する前に塗布モードを実行することができる。また、制御部210は、転写部材20が新品に交換された場合に、該転写部材20を用いて最初のトナー像を像担持体10から記録材Pに転写する前に塗布モードを実行する。
ここで、本実施例では、転写部材20の表面と保護剤Zとの間の物理的な付着力をF1、保護剤Zとトナーとの間の物理的な付着力をF2としたとき、保護剤Zは、F1>F2を満たす。本実施例では、保護剤Zは、トナーである。特に、本実施例では、保護剤Zは、イエロートナーである。そして、本実施例では、上記像担持体20は、別の像担持体(感光体)1から転写されたトナー像を転写部N2で記録材Pに転写するために搬送する中間転写体であり、画像形成装置100は、上記別の像担持体1をそれぞれが備え、上記別の像担持体1にそれぞれ異なる色のトナーでトナー像を形成する複数の画像形成部Sを有し、制御部210は、供給手段としての、複数の画像形成部Sのうちのイエロートナーで画像を形成する画像形成部Sにより、中間転写体10にイエロートナーでトナー像を形成し、該トナー像のトナーを保護剤Zとして転写部N2において転写部材20の表面に塗布するように、塗布モードを実行する。なお、保護剤Zは、シリコーン樹脂微粒子であってもよい。また、保護剤Zは、金属石鹸であってもよい。
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
本実施例では、二次転写ローラ20の幅方向における保護剤Zの塗布領域は、少なくとも画像形成装置100が使用可能な最小サイズの記録材Pを使用した場合の非通紙部を包含する領域とされる。以下、更に詳しく説明する。
本実施例では、実施例1と同様に、保護剤Zとして粒子径5~10μm程度のイエロートナーが使用され、イエロー用の画像形成部Saで塗布用のトナー像が形成されることで、二次転写ローラ20に保護剤Zが供給される。
図11は、本実施例における塗布シーケンスでの二次転写ローラ20上の保護剤Zの塗布領域を説明するための、保護剤Zが塗布された状態の二次転写ローラ20の模式的な側面図である。本実施例では、二次転写ローラ20の幅方向における保護剤Zの塗布領域は、少なくとも画像形成装置100が使用可能な最小サイズの記録材Pを使用した場合の非通紙部を包含する領域とされる。つまり、二次転写ローラ20は、その回転軸線方向において、保護剤Zが塗布される領域と、塗布されない領域とを有し、塗布される領域は、少なくとも画像形成装置100が使用可能な最小サイズの記録材Pを使用した場合の非通紙部を包含する領域とされる。ここで、二次転写ローラ20の幅方向における最小サイズの記録材Pを使用した場合の非通紙部を包含する領域とは、最小サイズの記録材Pの通紙部の変動を考慮しても、十分に該通紙部(最小紙サイズ幅)以外の非通紙部の略全域を含む領域である。この領域は、実施例1と同様に、第1のトナーパッチ列102及び第2のトナーパッチ列103に対応する位置を包含する。また、本実施例では、二次転写ローラ20の周方向における保護剤Zの塗布幅は、実施例1と同様に、二次転写ローラ20周方向の略1周分の長さ(周長)である51mmとされる。
これによって、トナーパッチ以外のトナーによる二次転写ローラ20の汚れを抑制することができる。具体的には、A5サイズやハガキなどの二次転写ローラ20の回転軸線方向における幅の小さい小サイズ紙に画像を形成すると、二次転写ローラ20上の非通紙部に現像ローラ41からのカブリトナーが付着する。通紙部のカブリトナーは、紙上カブリとして記録材Pとともに排出されるが、非通紙部のカブリトナーは、プリントジョブの間、二次転写ローラ20上に蓄積することとなる。その結果、小サイズ紙に画像を形成した後に、例えばLTRサイズなどの二次転写ローラ20の回転軸線方向における幅の大きい大サイズ紙に画像を形成した際に、二次転写ローラ20に蓄積したカブリトナーにより紙コバ汚れや裏汚れが発生する場合がある。これに対して、本実施例では、概略、小サイズ紙の通紙部を除く二次転写ローラ20の略全域に保護剤Zを塗布することで、小サイズ紙に画像を形成する際にカブリトナーが二次転写ローラ20に付着して蓄積することを抑制することができる。
なお、本実施例では、少なくとも最小サイズの記録材Pの非通紙部を包含する領域に保護剤Zを塗布したが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。画像形成装置100が使用可能な任意のサイズの記録材Pを使用した場合の非通紙部を包含する領域に保護剤Zを塗布するようにすることができる。ユーザーなどの操作者が、操作部206やホストコンピュータなどから、二次転写ローラ20の幅方向における保護剤Zの塗布領域を変更(選択)できるようになっていてもよい。例えば、二次転写ローラ20の幅方向における幅が第1の幅の第1の記録材Pと、第1の幅よりも大きい第2の幅の第2の記録材Pと、を主に使用する場合には、第1の記録材Pを使用した場合の非通紙部を包含する領域に保護剤Zを塗布するようにすればよい。また、図12に示すように、二次転写ローラ20の幅方向、周方向の略全域に保護剤Zを塗布してもよい。例えば、現像ローラ41が常時感光ドラム1に当接している構成の場合は、紙間などのカブリトナーにより二次転写ローラ20の略全域が汚れる可能性がある。そのため、二次転写ローラ20の幅方向、周方向の略全域に保護剤Zを塗布することで、そのような汚れを抑制することができる。
このように、制御部210は、像担持体10の表面の移動方向と略直交する方向に沿う転写部材20の幅方向において、少なくとも所定のサイズの記録材P(典型的には画像形成装置100が使用可能な最小サイズの記録材P)に像担持体10からトナー像を転写する際に該記録材Pが通過しない領域を包含する領域の転写部材20の表面に保護剤Zを塗布するように、塗布モードを実行することができる。また、制御部210は、像担持体10の表面の移動方向と略直交する方向に沿う転写部材20の幅方向において、転写部材20の表面の略全域に保護剤Zを塗布するように、塗布モードを実行することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、トナーパッチや小サイズ紙に画像を形成する際の非通紙部のカブリトナーによる二次転写ローラ20の汚れを抑制することが可能である。
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明を省略する。
1.本実施例の構成及び効果
本実施例では、周方向に電流を流すことが可能な程度に電気抵抗値が低い低抵抗ベルトで構成された中間転写ベルト10を用いた場合について説明する。つまり、本実施例では、中間転写体は、周方向に電流を流すことが可能な電気抵抗値を有する無端状のベルトで構成されている。
図13は、本実施例における中間転写ベルト10の模式的な断面図である。本実施例における中間転写ベルト10は、周長が700mm、厚さが65μmの無端状のベルトである。また、図13に示すように、本実施例における中間転写ベルト10は、厚さが64μmの基層10eと、厚さが1μmの内面層10fとの2層からなる。基層10e側(外周面側)が感光ドラム1に当接し、内面層10f側(内周面側)が一次転写部材14と接する。
本実施例では、基層10eの材料としては、導電剤としてイオン導電剤を混合したポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いた。また、本実施例では、内面層10fの材料としては、導電剤として電子導電剤であるカーボンを混合したポリエステル樹脂を用いた。内面層10fは、基層10eの内周面側に形成され、第1、第2、第3の張架ローラ11、12、13に接触する。なお、本実施例では、第1の張架ローラ11が駆動ローラとして機能し、第2の張架ローラ12がテンションローラとして機能し、第3の張架ローラ13が二次転写対向ローラとして機能する。本実施例では、基層10eの材料としてポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いたが、他の材料を用いることも可能である。例えば、ポリエステル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)などの材料及びこれらの混合樹脂などを使用してもよい。また、本実施例では、内面層10fの材料としてポリエステル樹脂を用いたが、他の材料を用いることも可能である。例えば、アクリル樹脂などを使用してもよい。
本実施例では、中間転写ベルト10は、基層10eの電気抵抗値に比べて内面層10fの電気抵抗値の方が低い。本実施例では、中間転写ベルト10の体積抵抗率は1×1010Ω・cmである。また、本実施例では、中間転写ベルト10の内周面の表面抵抗率は1.0×106Ω/□である。なお、中間転写ベルト10の電気特性の測定環境は、室内温度23℃、室内湿度50%の環境(「NN環境」)である。
基層10eと内面層10fとの電気抵抗及び厚さの関係から、実際に中間転写ベルト10に関して測定した体積抵抗率は、基層10eの抵抗値を反映している。一方、実際に中間転写ベルト10に関して測定した中間転写ベルト10の内周面の表面抵抗率は、内面層10fの抵抗値を反映している。
なお、体積抵抗率は、三菱化学株式会社のHiresta-UP(MCP-HT450)に、リングプローブのタイプUR(型式MCP-HTP12)を使用して測定した。また、表面抵抗率は、体積抵抗率と同じ測定器に、リングプローブのタイプUR100(型式MCP-HTP16)を使用して測定した。体積抵抗率の測定は、中間転写ベルト10の外周面側からプローブを当て、印加電圧100V、測定時間10秒の条件で行った。また、表面抵抗率の測定は、中間転写ベルト10の内周面側からプローブを当て、印加電圧10V、測定時間10秒の条件で行った。
ここで、本実施例では、中間転写ベルト10の体積抵抗率は、1×109~1×1010Ω・cmの範囲が好ましく、中間転写ベルト10の内周面の表面抵抗率は、4.0×106Ω/□以下であることが好ましい(典型的には1.0×103Ω/□以上)。このような電気特性の中間転写ベルト10は、周方向に電流を流せる程度に電気抵抗値が低いため、一次転写電圧を低く(絶対値を小さく)しても、十分に一次転写電流を感光ドラム1へ流して、良好に一次転写を行うことが可能になる。そのため、一次転写部N1における放電量を低減することが可能になる。その結果、放電生成物の発生量を抑制することが可能になり、更には中間転写ベルト10上に転写されたトナーの帯電極性が反転するなどしてそのトナーが再度感光ドラム1に転写されてしまう再転写を抑制することが可能になる。
しかしながら、中間転写ベルト10としてのこのような低抵抗ベルトを用いた場合、キャリブレーション時に感光ドラム1に電流が流れて感光ドラム1の放電劣化が発生する場合がある。つまり、トナーパッチなどの記録材Pへ転写しないトナーは、二次転写部N2を通過させてベルトクリーニング装置9へと送る必要がある。そのため、実施例1で説明したように、二次転写ローラ20には、二次転写部N2に記録材Pがない状態で所定の電圧が印加される。中間転写ベルト10として低抵抗ベルトを用いた場合、この際に電流が中間転写ベルト10を伝って感光ドラム1へ流れてしまい、感光ドラム1の放電劣化が発生する場合がある。感光ドラム1の放電劣化が発生すると、感光ドラム1の帯電不良などに起因する画像不良が発生する場合がある。
これに対して、本実施例では、画像形成装置100は、好ましくは少なくとも二次転写ローラ20が新品状態又は新品に近い状態(使用履歴の少ない状態)において、典型的にはキャリブレーションの実行前に、塗布シーケンスを実行可能とされている。本実施例では、実施例1と同様に、塗布シーケンスでは、電気抵抗の高い保護剤Zとしてのトナーが二次転写ローラ20に塗布される。このトナーは電気絶縁性である。特に、本実施例では、図12に示すように二次転写ローラ20の幅方向、周方向の略全域に保護剤Zが塗布される。なお、塗布シーケンスの動作や実行タイミングなどは、実施例1、2と同様とすることができる。
このように電気抵抗の高い保護剤Zを二次転写ローラ20に塗布することで、二次転写ローラ20の電気抵抗値を上げることができる。そのため、キャリブレーション時に二次転写部N2に記録材Pがない状態であっても、中間転写ベルト10を伝って感光ドラム1に流れる電流量を少なくすることができる。その結果、感光ドラム1の放電劣化を抑制することが可能になり、帯電不良などに起因する画像不良を抑制することができる。なお、このとき同時に、実施例1、2と同様の効果も得られる。
なお、上記中間転写ベルト10を介して流れる電流による感光ドラム1の放電劣化は、二次転写ローラ20が新品状態又は新品に近い状態の場合に発生しやすい。二次転写ローラ20を使用していくと、表面にカブリトナーなどが徐々に付着していくこと、あるいは導電剤の偏在が生じることなどにより、二次転写ローラ20の電気抵抗は高くなっていく傾向がある。そこで、本実施例においても、好ましくは少なくとも二次転写ローラ20が新品状態又は新品に近い状態において、塗布シーケンスを実行する。これにより、特に新品状態又は新品に近い状態の二次転写ローラ20から中間転写ベルト10を介して流れる電流による感光ドラム1の放電劣化を抑制することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、トナーパッチやカブリトナーによる二次転写ローラ10の汚れを抑制しつつ、低抵抗ベルトを用いた場合の感光ドラム1の放電劣化を抑制することができる。
2.変形例
中間転写ベルト10として周方向に電流を流すことが可能な程度に電気抵抗値が低い低抵抗ベルトを用いた構成の変形例として、一次転写電源を持たない構成について説明する。一次転写電源を持たない構成の一例として、図14に示すような、一次転写電圧がグラウンドに接続されているドラム電圧構成が挙げられる。図14は、本変形例の画像形成装置100における高圧電源や接地状態を示す模式図である。
本変形例では、一次転写部材14はグラウンド(0V)に接続(電気的に接地)され、感光ドラム1の芯金(図示せず)に高圧電源200から基準電圧(例えば-300V)が印加されている。また、感光ドラム1の表面に、その基準電圧の絶対値よりも絶対値が大きい画像部電位Vl(例えば-400V)が形成される。そして、一次転写部材の電位(0V)と画像部電位Vlとの差分(一次転写コントラストΔV)によって、感光ドラム1上に形成されたトナーが中間転写ベルト10上に一次転写される。本変形例では、中間転写ベルト10は周方向に電流を流せる程度に電気抵抗が低い低抵抗ベルトで構成されているため、一次転写コントラストが小さくても一次転写電流を流すことができる。そのため、本変形例のように一次転写電源を持たない構成においては、上述のような低抵抗ベルトで構成された中間転写ベルト10を用いることが好ましい。
本変形例の画像形成装置100の構成及び動作は、上記の点を除いて本実施例の画像形成装置100と実質的に同じであり、本実施例と同様の効果を得ることができる。つまり、本変形例では、中間転写ベルト10として低抵抗ベルトを用いているため、本実施例と同様に、キャリブレーション中に二次転写電流が中間転写ベルト10を伝って感光ドラム1へ流れやすくなる。これに対し、本変形例では、本実施例と同様に、電気抵抗の高い保護剤Zを二次転写ローラ20の略全域に塗布しているため、二次転写ローラ20の電気抵抗値を上昇させることができる。そのため、感光ドラム1の放電劣化を抑制することができる。その結果、本変形例のように一次転写電源を持たないシンプルな構成を実現することができる。
このように、本変形例によれば、トナーパッチやカブリトナーによる二次転写ローラ10の汚れを抑制しつつ、低抵抗ベルトを用いた場合の感光ドラム1の放電劣化を抑制することができるとともに、一次転写電源を持たないシンプルな構成を実現できる。
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
上述の実施例では、二次転写対向ローラが電気的に接地され、二次転写ローラに電圧が印加されることで、二次転写部に電圧が印加されて、二次転写部に電界が形成されていた。これに対し、上述の実施例における二次転写対向ローラに対応する内ローラに電圧を印加し、上述の実施例における二次転写ローラに対応する外ローラを電気的に接地してもよい。この場合、内ローラには、画像形成時、塗布シーケンス(清掃動作を含む。)などの各タイミングで、上述の実施例において二次転写ローラに印加した電圧とは逆極性の電圧を印加すればよい。
また、上述の実施例では、現像装置が現像剤として非磁性一成分現像剤を用いる場合を例として説明したが、現像装置は、例えば、現像剤として磁性一成分現像剤や、トナー及びキャリアを備え二成分現像剤を用いるものであってもよい。いずれの場合も、トナーには上述の実施例と同様の外添剤が外添されることが多い。また、上述の実施例では、現像装置は、現像部材を感光体に接触させて現像を行うものであったが、現像部材を感光体に接触させずに近接させて現像剤を飛翔させて現像を行うもの、あるいは現像部材に担持された現像剤を感光体に接触させるものであってもよい。
また、上述の実施例では、画像形成装置がインライン方式、中間転写方式を採用したカラー画像形成装置である場合を例として説明した。このような画像形成装置において、キャリブレーションの精度の低下を抑制しつつ、キャリブレーションによる紙コバ汚れを抑制する手段として、本発明を特に好ましく適用することができるものと言える。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、像担持体としての感光体から記録材に直接トナー像を転写する、例えばブラック単色画像を形成するモノクロ画像形成装置にも本発明は適用できるものである。この場合、感光体と転写部との当接部である転写部に関して、本発明を適用することができる。つまり、このような構成においても、転写部材がトナーで汚れることがある。例えば、感光体上にトナーパッチを形成して濃度調整などの調整モードを実行することがある。このとき、転写部材の感光体に対する接離動作に伴うダウンタイムの低減などを目的として、転写部材が感光体に当接した状態でトナーパッチが転写部を通過する構成とされることがある。そのため、トナーパッチで転写部材が汚れることがある。また、カブリトナーで転写部材が汚れることがある。そして、転写部材がトナーで汚れると、紙コバ汚れが発生することがある。したがって、このような構成においても、本発明を適用することで、紙コバ汚れを抑制することができるといった、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。